競争的研究費改革に関する検討会(第3回) 議事録

競争的研究費改革に関する検討会(第3回)の議事録について

1.日時

平成27年3月13日(金曜日)10時00分-12時00分

2.場所

東海大学校友会館「望星の間」(霞ヶ関ビル35階)

3.議題

  1. 研究成果の持続的最大化に向けた具体的取組事例~主に間接経費の活用の観点から~
  2. 論点整理に向けて
  3. その他

4.出席者

委員

濵口主査、大垣主査代理、有信委員、上山委員、甲斐委員、小安委員、佐藤委員、角南委員、竹山委員、知野委員、橋本委員、藤巻委員

文部科学省

常磐研究振興局長、安藤大臣官房審議官(研究振興局担当)、義本大臣官房審議官(高等教育局担当)、村田科学技術・学術総括官、松尾振興企画課長、豊岡高等教育局国立大学法人支援課長、行松基礎研究振興課長、木村学術機関課長、鈴木学術研究助成課長、中野振興企画課学術企画室長、髙山振興企画課競争的資金調整室長、岩渕基礎研究振興課基礎研究推進室長、前澤学術研究助成課企画室長

オブザーバー

東京工業大学三島学長、東京農工大学千葉副学長、熊本大学発生医学研究所西中村副所長

5.議事録

【濵口主査】
 それでは、おそろいになっておりますので、競争的研究費改革に関する検討会を開催させていただきます。
 委員の皆様におかれましては、御多用中、御出席頂きありがとうございます。また、今日は御発表頂く先生方にも大変御多忙中のところ、お時間を頂きありがとうございます。まず、最初に事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【松尾振興企画課長】
 議事次第に配付資料として資料1から資料4-4、参考資料1と2というところまで書いてございますが、資料1から資料2、資料3というのがパワーポイントの横型の資料でございまして、資料4-1、4-2、4-3、4-4、そして参考資料1、2という1枚紙も入って、くっついていると落ちているように見えてしまうところがあるかもしれませんけれども、A4縦の資料が順次付いております。
 配付資料は以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 では、最初の議題、「研究成果の持続的最大化に向けた具体的取組事例~主に間接経費の活用の観点から~」に入ります。本日は東京農工大学、熊本大学、東京工業大学からプレゼンテーションをお願いしております。続けてお話を頂き、その後、質疑応答をまとめて行いたいと思います。大変短い時間で恐縮ですが、10分間ということでお願いしたいと思います。また、間接経費に論点をなるべく絞っていただいてプレゼンをお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 最初に、東京農工大学の千葉副学長からお願いいたします。


【千葉副学長】
 東京農工大学の千葉と申します。本日はありがとうございます。それでは、東京農工大学の活動、特に間接経費のところにポイントを絞った形でのご紹介をさせていただきたいと思います。まず、お手元の資料1の2ページをごらんください。本学の学長ビジョン、農工大のミッションとしては、下の方に赤い文字で世界に向けて日本を牽引するとありますが、その下、日本の産業界を国際社会に向けて牽引というのを第1番目に掲げさせていただいております。これは農工大、それぞれ農学、工学というのが産業リテール型の学問分野であるということもありまして、産業界との連携を密接にしながら、いかに研究と教育を発展させるかというミッションで大学を運営しているところでございます。
 3ページをごらん頂きたいのですが、これは多くの大学で今取り組まれているテニュアトラックですが、本学では平成18年、最初のところからスタートさせていただきました。この数字をごらん頂くとお分かりのように、直接経費を頂きました初年度22名のテニュアトラック、それで最終的には運営費交付金や間接経費を投入させていただいて、ずっと継続的に発展させて最終的に76名のテニュアトラックを任用するということをしております。これで一番特徴的なのは、全てのテニュアトラックの教員のテニュアポストを全て用意してこの事業を始めました。これは実に大学としては非常に大きな決断が必要なところでしたが、この若手に代わっていくというところで、要するに定年する教員が抜けて若手が増えるということで、基本的には人件費がトータルで確実に減ってまいりました。
 これはそのようなことを選択的に行いまして、人件費が減りつつ、アクティビティの高い教員を増やしていくことが大事だろうということで、大学の中で合意して進めたことでございます。さらに人事の在り方も学科が通常人事権を持って人件費を固定しているところ、それを払拭しまして全部学部で統一的に管理するというやり方にしました。そういうことをしないと、こういうシステムはなかなかうまくいかないのですが、こういう思い切ったことをすることによりまして、優秀な若い研究者がたくさん来てくれまして、科研費の採択率、あるいは論文数も非常に増えたという一つの事例になってございます。
 次の4ページですが、これは女性研究者の採用の実績ですが、これもグラフを見ていただくと、緑色の部分、大幅に伸びていることがお分かり頂けると思います。ただ、これも当初、女性の研究者を増やすというところでいろいろ学内的な理解を得る上では非常に苦労いたしました。そこで、間接経費を使い、1人女性研究者を雇用した場合はプラス1の人件費をその専攻につけるというようなかなり思い切った施策をした結果、多くの専攻が理解を示し、これは非常に専攻自身も活性化するということで皆さん協力的になりまして、最終的には女性比率が大幅に増えるということになりました。
 5ページ目がその最終的な数値ですけれども、教職員631名の中規模の大学ではございますが、女子学生の比率が農学系で38から42、それから、工学系が15から18、工学系では18%というのは、これは日本でトップクラスのかなり高い数値になっております。それから、女性教員の比率は農学系、工学系ともに12%を超えるということになりまして、今や女性教員が増えていくということにつきましては、大学の中では当たり前の形になっておりまして、非常に大きな効果が出たと考えております。
 6ページでございますが、これはイノベーション人材養成ということで最近始まりましたEDGEというプログラム、アントレプレナーを育成するというものですが、これは3年間のプログラムですが、それが終了した後は自立的にというミッションが掲げられております。それで、初年度から私どもでは特別な基金を制度化いたしまして、この人材養成に関して民間企業さんから基金を頂くというシステムを作りました。初年度はまだ3か月ぐらいしか活動しておりませんが、770万円、これは多くの企業さんから頂きましたが、ここで分かったことは、企業さんがこういうイノベーションを牽引する人材の養成、単に大学で養成するだけでなく、企業さんもこういうニーズが非常に高いということが分かりました。ということで、最終的に2年後ですけれども、平成29年度からは自立して進めるべく、この基金を集めているところでございまして、これは間接経費というよりも、むしろ、自主財源というか、民間企業さんから間接経費に相当するものを集めていくというような考え方で進めています。
 7ページは、これはイノベ人材、イノベ若手という事業を5年間やらせていただいたところでございますが、実は農工大の博士課程を活性化するというミッションでも良かったのですが、この博士の問題は全国規模の問題ということを考えまして、いち早く全国の大学、最終的には40大学の教授会にお邪魔しまして、この理解を得て最終的に204名の学生さん、博士人材が農工大で研修を受ける。特に優秀な学生さんはスタンフォード大学の研修プログラムに参加するなどして6割程度の学生さんが卒業後、民間企業に就職するという目標を達成いたしました。この活動は多くの大学の協力が必要で、そこに事務局、あるいは専門の人材を配置するというようなところ、この部分は間接経費を使わせていただいて、要するに当初想定していなかった新しいチャレンジをさせていただいた結果、このような取組ができたと考えております。
 先ほどスタンフォードの研究所と申し上げましたが、8ページがシュタインバイス大学とスタンフォード大学の研究所、SRIというところでの研修をしているところでございまして、直接経費では、実はこういうのは最初実施するのは非常に難しい状況でございました。例えばスタンフォードの研究所では2日間の研修費が1,500万円かかります。それ以外に旅費がかかりますので、通常、最初の段階ではこういうものを実行するのは非常に難しかったのですが、間接経費及び先方との交渉で、日本で初めてであるということであれば、日本中に広めますから、定価ではなく破格の値段でやってほしいという交渉もした結果、幸いにも実施することができたわけでございます。
 9ページが実際にどれぐらいの人数を教育したかということですが、右下にトータル342人とございますが、これは他大学の学生さん、それから、本学の教員、職員も含めた形で実施した人数でございます。これはスタンフォードとしても、これは全く想定していなかった陣容でございまして、教員や職員もこのイノベーション教育をするということは、アメリカでも例がなかったということで、これは一つ大きな成果につながったものと考えております。
 それから、10ページでございますが、これはベンチャー企業の出口に向かうプロセスを書いたものでございますが、これは実際、私自身が10年前に起業したベンチャーのプロセスを簡単にまとめさせていただいたものです。何を申し上げたいかといいますと、この黄緑色の部分がいわゆる基礎研究の力でございます。通常、基礎研究をしっかりやるとベンチャーがうまくいくというふうに思うものではないかと思うのですが、私も実はそう思っていたのですが、最初の5年間、全くうまくいきませんでした。
 どうしてうまくいかないかというと、この基礎研究の力を顧客価値に変えない限りは、決してベンチャーはうまくいかない。私はそのことも知らずに始めて、途中でいろいろ勉強いたしました。そのときに間接経費を使いながら、大学がいろいろな形でサポートをしてくれまして、いろいろな人脈も作ってくれました。それから、特許の出願もサポートしてもらいました。その結果、最終的に、つい先日、M&Aまで持ち込むことができまして、いろいろ投資をしていただいた方にはお返しすることができたわけでございます。それから、一度このようにサイクルがうまくいきますと、大学の家賃の支払い、あるいは共同研究、1,000万円以上の共同研究が毎年こういうベンチャー企業から大学に入ってくるというようなサイクルが回るようになります。これは一つの産学連携のプロセスの在り方かと思っているところでございます。
 11ページが最後になりますが、基本的に先ほど申しましたように多くの大学、一番下のところに国内の大学、海外の大学が書いてありますが、この協力を得まして、それから、少し上に食料エネルギーシステム科学専攻とございますが、これは大学院の専攻としてこの4月から設置することが決まった、これはイノベーション人材を作る大学院でございます。5年一貫制です。これもいち早く大学のコンセンサスを得て設置をいたしまして、さらに上段にありますのが東京農工大学総合研究所、これが基金を集めるための活動拠点になっております。このようなものを設置して先ほど申しました外部資金、また、間接経費を増やしながら新しい取組をするという体制を整えることができております。是非とも間接経費、うまく使っていきますと、このような波及効果のある、大学が活性化する方向に進められるのではないかと考えておりますので、こういうところを御配慮頂きまして、それぞれの大学の知恵を最大限出すようなところを御支援頂ければと思っております。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 それでは、続きまして熊本大学発生医学研究所の西中村副所長、10分間ではございますが、よろしくお願いします。

【西中村副所長】
 よろしくお願いします。熊本大学発生研は、前身は戦前に遡るわけですけれども、改組を重ねまして2000年から現在の形になっております。(2ページ)ラボが12個で教員が30名、学生と合わせても100名ぐらいの非常に小さい研究所ではございますけれども、(3ページ目)最近非常に成果が出ておりまして、私の研究室はヒトiPS細胞から腎臓の立体構造を試験管内で作ることに成功しました。これは大学院生が1人でやった仕事です。あと、粂昭苑教授はES細胞からインシュリン分泌細胞を作っており業績が非常にありますし、男女共同参画の旗頭でもあったのですけれども、東京工業大学に引き抜かれましてラボごと移ります。
 さらにもう一つのラボが阪大に移りますので、また私たちは次の教授を今リクルートしております。そもそも十数年前に発生研の教授が複数名中央に引き抜かれまして、そのときにリクルートされたのが所長を含む、大体30代後半から40ぐらいの我々の世代です。それから10年たってまた同じことが起きているということで、登竜門というのですか、結局、そうやって頑張っております。ここ20年ぐらい発生研で定年退職を迎えた教授はいないという現状になっております。
 (次のページ)その理由の一端としてリエゾンラボという共通施設があります。これはCOEを10年間連続して得られたときに、原型はでき上がったのですけれども、COEが終わったときに間接経費等を使って改組してリエゾンラボ研究推進施設を作りました。コンセプトは共通化・分業化して研究を支援することによって大学院生を含めた若手の人材育成を実現するということで、それが現在のこのリーディングプログラムにもつながっているわけです。また発生研は文科省指定の共同利用・共同研究拠点にもなっていて、外部の人も私たちの研究所に来て研究しますので、こういった人たちを支えるシステムともなっています。
 (次のページ)リエゾンラボの機器、ここから物、人、金の順番で説明しますけれども、物はこれだけのものがそろっております。一口に顕微鏡といいましても、現在は横幅3メートルのワークステーションで1台数千万円しますので、そういったものを1個1個そろえてきましたが、基本は全ての共通機器を共通のフロアに配置するということです。共通機器が各ラボの中に入っていると、どうしても気兼ねして使えないので、すべて共通フロアに置いておく。そして、予約もWebでやるということで完全に共通なシステムでオープンに使えるようにしています。
 (その次のページ)とはいっても、機器を共通に置いておくだけでは動かないことが分かりまして、やはりここに人が必要でした。共通の支援員を6名雇用しております。そのうちの2名は博士を出て、さらに10年間研究をやったような人をリクルートしてきています。彼らが支援と教育に専念しておりまして、共通機器ごとに講習会を開催しています。1台、1台について講習会を開催して教えてから使ってもらう。留学生には英語で教える。しかし、1回教わっただけでは使えるようにならないわけなので、その後個別に支援していくし、機械が壊れてしまう前にちゃんと毎週、毎週メンテを入れる。
 どうしても壊れたときは直ちにメールを全員に送って、あと3日後に直りますといったことを周知する。
しかし、支援員だけで動くわけでは結局なくて、支援員を支援する必要があって、それは教員がやる。支援員全員と各ラボから1名ずつ教員が集まって支援会議をやる。そういうことによって支援員だけでは解決しないようなことを解いていく。そして、教員には研究の方向性が見えますので、その方向性を踏まえてどの機械をバージョンアップするか、どの機械を買っていくかということを決めて教授会に上げていくというシステムになっています。
 (次のページ)各研究室によって得意分野、不得意分野が当然あるのですけれども、基本的に得意な研究室が支援員を支援しますので、全ての機械が一番得意なラボのレベルにそろうというメリットがありました。それから講習会、これは直接指導が効果的でした。例えば2年生が1年生に教え、その1年生が次の1年生に教えという伝言ゲームではどんどん情報が劣化して機械が壊れるといった事態が頻発したのですけれども、そうではなくて新人には必ず支援員たちが直接教えるということで技術が均等化して機械も維持できるようになりました。
 もっと大事だったのは人が育つということで、大学院生が下駄を履いた形でスタートするので結果が出るということです。自動車が作れなくてもよくて、ちゃんと運転できて目標のところまで行けばいいわけなので、それができるようになったということです。大学院生という新人だけではなくて、共同研究者が外からやって来ても同じことが起きますし、教員も同じことができる。例えば特任とか新任の准教授とか教授が着任しても、共通機器がそろっているので、ちょっとした周りの冷蔵庫とかを買えばそれなりに実験が始まる。発生研は15年以上前から新任の教授にはちゃんとスタートアップ経費を出していますので、今から振り返ると自分自身がテニュアトラック教員だったなと思っています。スタートアップ資金があって、ちゃんと再任審査があって、そしてそれが10年たつと、一部がまたどこか中央に引き抜かれていくというのを繰り返しているんだなと思いました。
 もう一つ研究支援員の新たなキャリアパスになってきていると思います。つまり、大学院を出て博士を取って、研究をしても、全員が全員独立した研究者になるわけではなくて、支援をやりたいという人も当然いるので、そういった人たちの新たなキャリアパスになるのだなということを感じています。
 次、金の話なのですけれども8ページ、共通の機器と共通の支援員というのは、結局、共通の予算で賄うべきであると考えています。ここに個別の科研費が投入されると、どうしてもこの機械は俺のものだという話になり、それだとなかなか使いづらいので。共通の予算としては、間接経費、運営経費、学長裁量経費などになります。さらに、博士を取っている支援員たちは、最終的に、技術職員という大学固有のポストで終身雇用に踏み切りました。これはURAの先駆けみたいな形になっていると思います。
 間接経費には、そこに書いてあるようにいろいろと問題はあるのですけれども、やはり重要な財源でありまして、これを我々は部局で一括管理しています。大学によって状況は多少異なると思いますが、間接経費というのは大学本部が半分以上取って、その後、部局がまたちょっと取って、最終的には個別の研究者に戻るといったことがよくあると思うのですけれども、僕らは部局に下りてきた分を個人に返さなくて、全部部局で管理して回しております。
 (次のスライド)このシステムをほかのところに導入するとしたときにどういったことが問題になり得るか。当たり前ですけれども、機器が増えると膨大な維持費、修理費が必要になりまして、1,000万円以上かかることもあります。それにバイオの分野というのは進歩が非常に速くて、きのうまで見えなかったもの、例えば細胞の細かい構造など、が見えるようになる顕微鏡とかが開発されるわけです。例えば今年のノーベル賞とかはそうなのですけれども。そうすると、そういうものを購入してまた次のサイエンスを進めないといけないので、常に何か買っていないといけないし、アップデートしないといけない。そうすると、どうしてもこの共通予算というのは取り続ける必要があります。
 そして、さらにそれを支える人を雇用し続ける必要があって、共通予算を取るのですけれども、非常勤だとやはり厳しい。優秀な人をリクルートするには安定を担保する必要があります。というのは、例えば10年研究をした人が、独立の研究者になるのを諦めて支援に回ろうとして決意して来るからには、やはりそれなりに安定したものを供給しないと、いい人が来てくれないということです。完全な非常勤の公募ではあまりいい人は来ないですけれども、1年後に常勤にしますよといって公募するとたくさん来ます。また例えば支援員になっても非常勤で3年後に解雇されたというのを見れば後続は絶対来ないわけなので、支援員としてのキャリアパスを形成するためにも、安定した雇用が必要だなと思いました。
 あとは、間接経費を部局の共通経費として管理できるか。自分が取ってきたのだから、自分に権利を寄越せという人が当然出ます。幸い、うちにはそういうわがままな先生がおられなかったのでよく回っていますけれども、ここのところは多分難しいかなと。また、発生研は発生医学に分野が特化していますので、何が共通か分かりやすいのですけれども、分野がばらけると何が共通かよく分からなくて多分喧嘩が起きる。あとは、高所得、多人数の研究室は共通のシステムにはあまり興味がない。そういう研究室は、自分たちのお金で機械を買えるし、自分たちのラボの中で分業が成立するので要らない。だから、むしろ、このシステムというのは地方大学の弱小ラボが「弱くても勝てます」というのを実現するために有効なシステムだと考えています。
 さらにもう一つ、バーチャルな共通施設との判別が難しい。つまり、よくあるパターンは、機器とか支援員が実際は各ラボの所属なのですけれども、組織図で共通の機器であるとか、共通の支援員であるというふうに形を整えて出されてしまうと、ほとんど区別がつかない。ここら辺、難しいかなと思っています。
 以上、簡単ですけれども、我々の現状を報告させていただきました。

【濵口主査】
 ありがとうございました。
 それでは、続きまして東京工業大学の三島学長、10分間で恐縮ですが、よろしくお願いします。

【三島学長】
 それでは、東工大は東工大の新のグローバル化、これをこれから目指していくわけでございますけれども、そのためには、いかにガバナンス改革が重要かということに絞ってお話をしたいと思います。1ページ目は非常に細かい字がいっぱいあるものでございますが、これは私が学長になりましてから、2年半前ですけれども、それから進めてまいりました、左側が教育改革の骨子、一番右端が研究改革の骨子、そして真ん中に国際化と社会連携とございますが、この辺は後でごらん頂ければと思います。
 一番下にこれらを共通してガバナンス改革をしないと、これらは決してうまく動かないということ、それから、今の共通的基盤経費と、それから、競争的資金をいかに有効に学内で使うかということについてもガバナンス改革が必要だということで、一番下のオレンジ色のコラムでございますけれども、運営組織、キャンパスの機能改革、それから、人事改革、財務改革といったところで非常にガバナンスの問題があるということをまず前置きに置きまして、次の2ページ目、これが東京工業大学のスーパーグローバル大学が目指すものでございます。
 本学の伝統と実績に基づく教育研究の質と実、これは高度な理工系分野の教育と人間力養成の重視、物作りの伝統、産学連携、高度な研究を通した実践的教育、こういったものをTokyo Tech Qualityとしまして、これを世界水準で深化させて、この人材と研究成果を世界に浸透させるということが目的でございまして、3ページ目をごらん頂きますと、これを実行するときに突き詰めますと徹底したガバナンス改革が必要だということでございます。真の国際化に必要な施策を強力に推進するためには、人材面、スペース及びインフラ面、それから、財政面に係るガバナンスを徹底して改革するのだということでございます。そのために4ページにございますような形でこのスーパーグローバル大学を運営していこうということでございますが、これまで教育研究、国際というふうに分かれていた企画部門を企画戦略本部という形で一元化をするということと、IR室を設置して、そのデータに基づく企画戦略を立てていこうというのが骨子になります。
 さて、それでこの事を進めていくために必要なガバナンス改革のまず先頭が5ページ目でございまして、まず、学長の意向、これをしっかりと部局で進めていくという上で、部局長の選考方法を変更してございます。これは学長が指名するということに、いろいろ議論した後、やはりこれがベストであろうということで決まりまして、変更の理由は法令改革もございますけれども、学長のリーダーシップを発揮するためにビジョン、大学の経営方針を共有し、その職責を果たすにふさわしい人材を選考することができるということですが、当然、備考の留意事項のところにございますけれども、しっかりと部局の意見を聞きながら学長がその中で誰にするということをするということでございます。これにつきましては、この4月から就任予定の部局長から学長が指名を済ませてございます。
 次が人事ポストでございますが、これの全学管理をするということと、それから、競争の選考フローを全く改めるということで、各部局での競争選考、もちろんそれはボトムアップであるわけですけれども、そこで設定してきたこの図の学長、部局長、教授会とございます矢印の一番左側、教育研究分野についての方針を提出とございますが、これは部局長等がボトムアップで上げてくる場合のやり方で、これを上の人事委員会に上げる。そこで、その適正を、大学の方針に合っているかどうかを判断して選考委員会の設置という形で、1番という形でまた元へ戻すというような形。それから、大学全体の人事の方針、研究分野の設定等については、人事諮問委員会というのを新しく作りまして、ここから年に1回か2回、東工大の分野についての御意見を頂く。これをベースに人事委員会で部局からの案を検討し、その善し悪しを判断した上で選考委員会を設置していく。
 それから、同時にトップダウン型の人事を可能にするために、やはりこの1番の下向きの矢印でございますけれども、学長、人事委員会から部局へ選考委員会の設置を指示ということもできるようにしてございます。選考委員会には部局長等が指名した委員に学長が指名した委員を加えるというようなことをいたしますし、これからは決定の場合も教授会へは報告という形で、教授会での可否投票は行わないで、報告を済ませた後、人事委員会に戻って、そこで最終決定をするというような形にします。それから、一番下の教員選考の助教のところがございますが、ここも助教には年俸制、任期制を適用いたしますけれども、テニュアトラック制度をいかに活用して若手の助教が将来を見据えながら、将来に希望を持って進めるような仕組みを助教に対してはするということでございます。
 それから、次がスペースのマネジメントでございますが、7ページでございます。スペースマネジメント体制の移行ということで左側に現状がございますが、これを右側の点線で囲ったところ、すなわち全てのスペースは共有財産であるという発想の下に全学共通のスペースと、それから、部局運用のスペースというものを分けまして、部局運用スペースにつきましてはスペースチャージを導入する。非常に小さな部局につきましては、スペース配分、チャージを導入しないでやるということでございますけれども、こういうことをしまして、学長裁量スペースを全体の約30%のスペースを学長のリーダーシップで使えるようにするというシステムを先月の教授会、役員会、評議会で決定してございます。
 スペースチャージの実施方法、これは細かいことはまだ決まっておりませんけれども、部局の運用スペースというのは一定のルールを決めまして一律課金にする。それから、部局間のスペースのアンバランスを解消する手だてとしては、スペース配分基準を超過する部分には累進課金をするということで、この累進課金の部分はかなり値段を一律に比べれば高くする。こういったような形で学長裁量スペースを多く捻出し、学長の裁量でこれを使用していくということを考えようということでございます。
 それから、9ページ目、これが最後のページでございますけれども、間接経費の充実による機能強化ということで、東工大の間接経費の現状を右上のところに書いてございます。現在の東工大の26年度の収入予算でしますと、間接経費がこのピンクのところの割合になっております。これは研究インフラの整備、運用等の研究活動支援に欠かせない経費でございまして、この財政基盤の充実ということでは理工系の総合大学として本学の目指すべき方向は政府系、あるいは企業等を問わない各種研究経費と間接経費の増額確保というのが非常に重要になってくるだろうということでございます。間接経費の充実による機能強化、これを進めていきたいと思いますけれども、この円グラフで言いますと受託事業等収入の部分が減って間接経費収入が増えるのですと、ある意味ゼロサムということになりますので、ここの部分を現在30%措置されていないものも増額で措置していただけるとありがたいなと思うところでございます。
 新たな施策の例といたしましては、最先端研究設備を大学として戦略的に導入・管理・共有化をし、当該設備をハブとした国内外の大学・企業研究者によるオープンイノベーションを推進していく。こういったことで基盤経費と間接経費を合わせまして、学内でいかに有効にこれを使っていくかということを最初の方でお話ししましたガバナンス改革をベースに東工大としては進めていきたい。それによって東工大の真のグローバル化を是非達成していきたいと思うところでございます。
 以下、参考のところは1ページ目にございました教育改革と研究改革の若干どんな内容かを見ていただけるような資料をつけておきましたので、後ほどごらん頂ければと思います。以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございました。
 それでは、これまでのプレゼンテーションについての質疑応答に入りたいと思います。なお、西中村副所長はこの後御予定がありまして、10時45分までに退席されると伺っておりますので、熊本大学についての質問はまず先にお願いしたいと思います。
 では、小安先生。

【小安委員】
 では、西中村先生、お帰りになる前に伺いたいのですけれども、先生方のところ、共通の設備を理想的に運営されていると思います。先ほど、良い人材がテニュアトラックで来られて、皆さん定年を迎える前にプロモートされていろいろなところへと出ていかれるというお話がありました。出ていかれるときに、出ていった先で皆さん困っているということはないのでしょうか。

【西中村副所長】
 ありますね。ちょうどきのう、そういう話を聞きました。一つ一つ機械を今から整備したりする必要があるだろうということでした。だから、全国の大学がそういうふうになると動きやすいのですけれども。基本的に自分たちはラボの中にあまり持っていなくて共通機器に頼っているので、外へ異動するときはやりにくいかもしれません。
【小安委員】
 分かりました。

【西中村副所長】
 だから、全国でそうなると。

【小安委員】
 全国的にやるべきということですね。

【濵口主査】
 橋本先生。

【橋本委員】
 3大学からのご説明、どうもありがとうございました。大変よい話を伺わせていただきました。3大学とも簡単な質問があるのですけれども、最初に熊本大学にお伺いいたしますが、これは、このリエゾンラボの共通の装置のお金をかなり、うまく取ってきているということなのでしょうね。

【西中村副所長】
 そうですね。はい。

【橋本委員】
 それで、個々のラボが獲得したお金で買った装置を、共通装置として動かしているということまではしていない。

【西中村副所長】
 はい。それはないです。

【橋本委員】
 それはしないで、だから、たまたまといいますか、うまいこと共通の装置のための予算をたくさん取って、個々のラボにはそれほどそういう大型装置はないということになっているわけですね。

【西中村副所長】
 はい。そうです。

【橋本委員】
 そうすると、おっしゃるように個々のラボですごくたくさん研究費を持っているようなところがあると、このシステムは破綻する可能性がある。

【西中村副所長】
 そうです。実際、高額の科研費を取っているところは、やっぱり自分たちで買った方が便利なので買ってしまって、結局、使わなくなります。

【橋本委員】
 分かりました。どうもありがとうございます。これは国全体のシステムを作るときに大変参考になる話かなと思います。
 あと2大学も続けて質問してよろしいでしょうか。

【濵口主査】
 どうぞ。

【橋本委員】
 農工大のお話も大変感心して伺っていました。質問は間接経費全体のイメージを頂きたいのですけれども、全体で30%得たもののうち、どれぐらいをこういうものに使っているのかという、そのイメージを教えていただけますか。

【千葉副学長】
 熊本大学さんと事情はよく似ておりまして、半分以上が本部で取りまして、それから部局に下ろして、それから、専攻によっては教員にという、そういう中で大学全体のものは本部でやるという形になります。

【橋本委員】
 今日の御説明ですと、そうするとほとんどは部局に配分される15%の中でやっているということになりますね。

【千葉副学長】
 そうですね。

【橋本委員】
 15%でやっているというのはすごくうまくできているなと思うのですけれども、これは何か工夫があるのですか。要するに、きちっとミシン目を入れて使途を決めているからできているという、そういうことなのですかね。

【千葉副学長】
 その部分と、あと運営費交付金でできるものと合わせて、要するに足りない部分は運営費交付金でやるということを実施しております。

【橋本委員】
 分かりました。
 もう一つは三島先生に質問です。三島先生のお話も大変すばらしく、特に人事制度については、とても感心して伺っていました。これは形式的にこういうことはできるのですけれども、実質的にやるのはかなり厳しいのかなという気もしまして、かなり工夫をされているのだと思います。例えば助教の人事がある意味で一番分かりやすいのですけれども、なかなか個々のことまで分からないですよね。ですから、かなり現場の意見をうまく吸い上げながら、かつ、全体的な方向で決めなければいけないということで、大分工夫が必要ではないかと思うのですけれども、その辺はどういうふうにされるのですか。

【三島学長】
 助教は大体、今、年俸制、10年任期プラス5年でいって、その中でいかにきちっと評価をするかということが鍵になろうかと思います。それで、その当面の評価方法をきちっと作って、そしてそれによって助教の技量みたいなものをS、A、B、Cみたいな形で評価をしながら、私、東工大のテニュアトラックはその評価が高い人に対して審査をして、通過した場合、准教授としてテニュアにする、そういうシステムを考えようということです。

【橋本委員】
 そういうふうにしている。分かりました。というのは、御存知ない方もいらっしゃると思うので申し上げますと、今、大学の場合は、助教はほとんど研究室内の人事になっているのですね。形式ではもちろん違うのですけれども、実質は教授が決めればほとんど決まるというのが一般的なものです。これを変えないといけないとすごく思っていまして、それでお伺いさせていただきました。

【三島学長】
 特に助手から助教に変わったことで、助手の役割というのは教育にも関わる非常に重要な、大学にとって非常に重要な教員だと思いますので、そこをしっかりと彼らがいかに独立しながら力を振るうことができるかということに腐心したいと思っているところでございます。

【橋本委員】
 どうもありがとうございました。

【濵口主査】
 ほか、いかがでしょうか。甲斐先生。

【甲斐委員】
 時間が限られているそうですので、熊本大学さん、1点だけ確認させてください。大変良いシステムでリエゾンラボを作られていると感心しているのですけれども、この場合の間接経費というのは本学に15%取られた後の残りの15%という意味でしょうか。


【西中村副所長】
 本学は、うちは半分以上取っていますけれども。

【甲斐委員】
 半分以上ですか。

【西中村副所長】
 大体そうなのではないですか。

【甲斐委員】
 何割ぐらいですか。

【西中村副所長】
 そこは大学によると思うのですが、半分弱が大体各部局に下りてきて、その中で部局が幾ら取るか、あと本人に幾ら返すかみたいな形になります。

【甲斐委員】
 それを自由にしているということですね。

【西中村副所長】
 はい。

【甲斐委員】
 そうしたら、いや、うちの研究所でも本人には全く戻ってこないので、部局が管理すると、こういうすばらしいことができるということで。

【西中村副所長】
 ただ、私が言っておきたいのは、いろいろな工夫をされるのはいいのですけれども、その工夫が増えれば増えるほど大学本部の取り分がどんどん増えていって、現場に下りてくるのは本当に少なくなってしまう。そうすると、機械は買えないし、一番割を食うのが支援員です。最終的に彼らの雇用ができなくなってしまうので、しっかり部局に残してほしい。そう所長からも言うように言われました。

【甲斐委員】
 はい。あとの質問は後にいたします。ありがとうございます。

【濵口主査】
 ほか、いかがですか。知野委員。

【知野委員】
 東京農工大さんにお伺いしたいのですけれども、このイノベーションリーダーの育成に向けた国際連携活動、これを間接経費でやっていらっしゃるということですね。9ページの表を見ますと、2009年以降、かなりやっていらっしゃって、これはアメリカにもない、スタンフォードにもないような教員なり、職員なりの方も参加されていると伺いましたけれども、2009年というともうかなり、6年ぐらいになりますので、実際にはどういう成果が、どのぐらい上がっているのでしょうか。例えばベンチャーの数がこんなに増えましたとか、実際の何か活動の評価みたいなものを教えてください。

【千葉副学長】
 具体的な数字、先ほど少し申し上げたかもしれませんが、博士人材が民間企業に向くようになったというのが大きな一つの目に見えた成果です。通常、農学も工学もやはり博士までいきますと、大学の教員のポストを待つということが圧倒的に多かったのですが、少なくともこういうものに参加した学生は参加しない学生の倍程度、民間企業に非常に意欲的に進むようになったということです。教職員も一緒に参加させているのは、実は博士の人材が企業に行くとか、あるいはこういうイノベーション活動をするところをなかなか理解しないで、研究室にずっといなさいという風潮が非常に強いのですけれども、そういうものを根本的に変えるにはやはり教員を連れ出すしかないということで、そういう意味でかなり固さがなくなってきたかなという、そういう成果が出ております。


【知野委員】
 この職員の方を参加させているという狙いは何なのでしょうか。

【千葉副学長】
 職員も御存知のように国立大学の職員の考え方というのは、自分の目の前の仕事、あるいは上司の言われたことをやるというような定型的な業務が多いのですけれども、イノベーションというマインドは学生のためにもっと新しいことをしなければいけなということを考えることだと我々は考えまして、それをいかに、特に若い職員が考え方を変えることが重要か。そういうところに学生と一緒にこういう新しいことをチャレンジするという、そういう研修を設けているということです。これは成果として多分、長期的なものになると思いますが、一定の効果があると思います。

【知野委員】
 分かりました。では、意識改革の面で大きな成果ということですね。

【千葉副学長】
 はい。そうです。

【知野委員】
 分かりました。

【濵口主査】
 では、佐藤先生。

【佐藤委員】
 農工大に質問させていただきたいと思います。大変すばらしいテニュアトラックシステムができているようでございますけれども、まず、お聞きしたいのは、これに関しては企業からの補助金が26年度にはありますけれども、その途中でないのですけれども、これら補助金の間接経費の寄与とかを一つお聞きしたいと思います。全教員に対する割合も非常に高いし、そうすると新しく新規に採用される方のかなりの部分がこのテニュアトラックで採用されているのかということ。それから、これによって若い人の割合がテニュアトラックを通じて任期のないポジションに大分回っているのか、それともやはり若い方々のポジションは、承継職員と同じように、減少しているのか、そのあたりをお聞きしたいと思います。

【千葉副学長】
 ありがとうございます。間接経費がどういうところに使われているかということですが、まず、このテニュアトラックをとりますと実数として増えてしまうわけですね。定年になっておりませんので。ですから、スペースの整備が必要になります。そういうところで間接経費が一番生きてまいります。その後、こういう取組を始めますと、やはり継続的にやらないと農工大に行くとテニュアになれる可能性の高いポストがある。これがだんだん広まっていくのが大学の戦略としては重要だと考えまして、それで間接経費並びに運営費交付金を投入して、このシステムを続けてきた。かなり自ら血を流しながらやってきたというところがございます。
 それから、教員ですが、少なくとも農学部につきましては、ほぼ新規採用はテニュアトラックだけでございます。その後どういう現象が起こってくるかといいますと、若手の方がずっと膨らんでまいりまして、それで、中間層のところがテニュアでない人がいます。今度、その人たちが本当に大学を支えていくかどうかということが実は新たに発生してきます。では、それはどう乗り越えるかというところですが、我々は実はキャリアチャレンジという新しい制度を今導入したところでございまして、教授になりたい人、皆さん、手を挙げてください。それで5年間様子を見ます。それで、よければ若くても、追い越してでも教授にします。駄目だったら元のポストに戻ってくださいという、そういうものです。こういう競争的環境を常に全教員に与えながら、切磋琢磨して教授席を取りに行くという、そんな環境を作るという、そんなアイディアにつながっております。

【佐藤委員】
 ありがとうございました。
 もう一つお聞きしたいのですけれども、イノベーション人材では随分民間からの資金が寄与しているようですけれども、一般的に委託研究とかの間接経費は、ある程度は寄与しているのでしょうか。
【千葉副学長】
 民間企業からですと、大体共同研究で1割から3割の間接経費を頂いております。ただ、考え方が全然違います。普通の共同研究ですと教員がこういう研究がすごく得意だというところで民間企業さんが、それを一部使いたいからとか、一緒にやりましょうということですが、この人材養成に絡んだものは、例えば企業さんが持っている、よく売り物にならなくなったようなプロジェクトとか、商品とかたくさんあるのです。それから、それをどうしたらいいかということが大体分からない状態にいる。
 要するに、それをちゃんと世の中に届けられるような人も企業の中で育てなければいけないのですが、これができていないという場合が非常に多いということが分かりました。これはやはりイノベーション人材の考え方を企業にも入れるべきだと考えまして、これを提案したところ、多くの企業さんが、それは是非人材の活性化と、それから、新しい販路の開拓とか、新しい事業というところも一緒に作り上げてほしいと。これは今までの共同研究、受託研究とは違う切り口だと思いますが、これはかなり日本の中でニーズが高いと思っております。

【佐藤委員】
 ありがとうございました。

【濵口主査】
 上山先生。

【上山委員】
 まず、幾つかお伺いしたいのですけれども、今日、貴重なお話を聞かせていただいて、とてもありがたいと思っております。まず、東京農工大のケースでお伺いしたいのですけれども、非常にガバナンスが効いていて、かつ新しい試みがどんどんなされていると思いました。かつそれは民間に対するアピール能力が非常に高い試みがなされているとも思います。そういう意味で、こういうことをやった結果として、どのような形で民間の資金、あるいは民間の注目を浴びるようになってきたのか。それが大学の財務の中にどのような影響を及ぼしているのかということについてお伺いしたいですね。

【千葉副学長】
 一番特徴的な、農工大として特に心がけたことは、まず、大学の敷居を低くするということで、通常、民間企業さん、よくおっしゃるのですが、数十回に1回しか大学は企業に来てくれないと言うのですが、我々は話があったらすぐに企業さんを訪問して、本当に困っていることは何かということを同じ目線で相談するという形にしております。
 そのときに、あと資金、お金の交渉ですが、これも企業さんとしては自分で利益を上げたいということをゴールに必ず設定しているはずですので、例えば学生さんを共同研究に使う場合は卒論や修論発表の方が優先になりますので、それは秘密が必ずしも守られない。その場合にはやはりスタッフを雇わなければいけないとか、それから、教員は事実上、無料で働きますけれども、実際はこれだけの貢献をするのですということで価値を提案するのです。それを共同研究費に上乗せしてほしいという、そういうことでまず大きなゴールを共有して、これだけ資金がかかるのですよということを説明すると、多くの場合、理解を示してくださいます。そういう進め方がすごく大事ではないかと思います。

【上山委員】
 というのも、そういう努力の結果として大学のマルチファンディング化みたいなところにつながっていくのではないかなという気がするのです。一つの部局だけではなくて、あるいは一つの取組だけではなくて、大きな全体の大学としてのファンディングの在り方に影響を及ぼすのではないかと思っているのですが、それはいかがでしょうか。

【千葉副学長】
 今まさにそれを基金室、あるいは東京農工大に総合研究所を作ったところでございますが、通常、基金というと是非寄附をということで農工大ぐらいの規模のところですと、せいぜい御両親が子供のために1万円、5万円ぐらいしか寄附してくれないのですが、そうではなくてもっと意味のある基金集めというのはどういうふうにしたらいいのだろうかということで、今、大学の中で統一してそのような形で農工大が提案できる価値を企業さんにお届けして、それで一括して農工大に基金が集まるシステムをちょうど作ったところでございます。


【甲斐委員】
 今のに関連して一つだけいいですか。

【濵口主査】
 どうぞ。

【甲斐委員】
 農工大さん独自の方法は、いろいろな資金を集めてトライしていて大変すばらしいと思います。そこで、イノベーション人材養成事業特定基金というのは今まで我々が知っているような寄附とか、寄附講座の設定による収入とか、あるいは奨学寄附金とか、そういうものではないのですね。

【千葉副学長】
 はい。

【甲斐委員】
 新たな基金制度を農工大が独自に作ったと、そういうことでしょうか。

【千葉副学長】
 はい。そういうことでございます。

【甲斐委員】
 それは、法律上は何の問題もないのですか。各大学は基金制度を作って、それを収入源としてよろしいということですか。大変すばらしいなと思ったのですけれども。

【千葉副学長】
 これは文科省の今年から始まったEDGEプログラム、アントレプレナーの事業で。

【甲斐委員】
 ああ、それで取って。
【千葉副学長】
 最終的にはこういう人材養成を継続的に自前で、基金等でやっていくという一つの戦略に基づいたもので、基本的には大学の基金ですけれども、外向きには教育に使わせてもらいますということで交渉しています。

【甲斐委員】
 アメリカでは、各大学が結構大きな基金を持って自由なことを始めていますが、このようにすれば、同じようなことができるようになるということですばらしいなと思います。それで、この企業の参加方式ですけれども、寄附講座みたいに自分たちのやりたいことを一つのラボでやると、そういうことではないわけですよね。

【千葉副学長】
 はい。違います。

【甲斐委員】
 企業としてはただ基金としてお金を渡すのでしょうか。人材養成などの目標だけを言って。

【千葉副学長】
 基金は教育、農工大全般の活動を支えるためという意味でございまして、それから、企業さんから何かの事業をやる場合は別途ちゃんと、このための費目ということで事業基金という形でいただいております。これはそのための目的が明確化したもので、そういう形に発展するものであると考えております。

【上山委員】
 いいですか、もう一つ。

【濵口主査】
 どうぞ。

【上山委員】
 基金をこういう形で作っていくということは、将来的に、今は難しいかもしれませんけれども、それをどういう形で運用して増やしていくのかということも当然視野に入ってくると思うのです。それに関しては日本では非常に難しい、様々な規制があって、そもそも寄附金を受けるときの規制もあるし、使い方にもかなり規制がある。これに関しては結構、お考えになっていることがあるのではないかと思うのですが。

【千葉副学長】
 おっしゃるとおり、その基金を運用して拡大していくというのは、今、日本の制度の中では非常に難しいです。ですから、まず考えているのは、できる範囲のことです。要するに例えば学生さんにいろいろな活動のチャンスを広げるとか、あるいは学生さんにその活動のチャンスを与えながら、企業さんと一緒に新しい事業展開を勉強する機会を作るとか、これは企業さんとしては非常にウエルカムで、教育と、それから、学生さんの将来の発展という、そういう意味で大学の本来の仕事の一つではないかなと私たちは考えております。ですから、お金をただ増やすというのではなくて、継続的に、あまり税金をそれほど大量に投入していただかなくても企業さんが活性化しながら、学生さんの道を開くという、そういう道筋をつけるのが一つこの基金の役割かなと考えています。

【濵口主査】
 どうぞ。

【角南委員】
 千葉副学長にお伺いしたいのですけれども、一つはこの制度を変えたことで、おつき合いするようになった企業の方の性質がどのように変わったのか。つまり、今まで従来ずっとおつき合いのあった企業さん、大手のメーカーさんなのか、こういう分野に特化したメーカーさんなのか、制度を変えたことによっておつき合いがしやすくなったことでいろいろ動くようになったという話と、それから、新しい今までおつき合いがなかったのだけれども、いろいろなことをこれから考えなければいけないと思っていて、ただ産学連携のあまり経験がないという中型の例えば研究型企業が、これによっておつき合いをするようになったということで始まっているのか、その辺のところを1点お伺いしたい。
 新しいおつき合いをするときというのは、恐らくコンサルテーションみたいな、先生おっしゃったように教員が実際に企業に行ってまずはお話を聞くという作業だと思うのですけれども、ここって日本の大学の教授ってほとんど手弁当というか、これをやるという研究者って少ないと思うのです。それにインセンティブを与えるというのは非常に重要だと思って、これは文化を変えるだけでは多分済まないと思って、ここにシンクタンク機能の強化と書いてあるのですけれども、まさにこういうところにうまくビジネスが回るようにされているのが、もしここの総合研究所というものが作られたというのが基金運営だけではなくて、何かそういうところにも籍を置いてこういう活動をしやすくするとか、何かそういう工夫もされているのだったら教えてください。

【千葉副学長】
 ありがとうございます。まず、おつき合いする企業さんですが、農工大のイメージのとおり、今までは製造業が中心でございました。ただ、このような活動をすると具体的にはサービス業、あるいは旅行代理店とか、そういうところが非常に興味を示して、一緒にやりたいということになってきております。
 例えば旅行代理店がなぜ農工大かといいますと、食品を扱っている部門、農工大にありますが、では、この食品があるアジアの特定の国で全然これは使われていない、売れていない。そういったときに、では、それを抱き合わせて、もしかすると新しい旅行のプランができるのではないかという、そういう発想に学生も出しますし、旅行会社もそれは是非やってみたいという話になるのです。そうすると、おつき合いする会社はメーカーではございません。サービス業とか、そういうことになります。これは業種を問わない広がりが出てきておりまして、これは私も今非常に大きく広がるのではないかと期待しているところでございます。
 それから、何でしたっけ。

【角南委員】
 コンサル機能。

【千葉副学長】
 コンサルですね。コンサルは先ほどスタンフォードの研究所の話をさせていただきましたが、実は私も5年ぐらい前までこのようなことは全くセンスもなかったのですが、要するに自分の研究を世の中に届けるには何が必要かということをスタンフォードのビジネススクールのノウハウを随分頂きまして、これは基礎研究を進める上でも非常に重要であるし、それから、産学連携をする上でも非常に重要なことだということが自分で痛感した次第でございます。
 これを教員、あるいは職員を一緒に連れ出しているというのが実はそこにございまして、これは教員がこういうふうにすれば自分の研究をもっと認めてもらえるのだ、こういう話し方をしなければいけないのだということを勉強するのですね。通常、教員にはそういう機会が与えられませんが、我々はかなり強く学長や副学長もみんな連れ出して、私は言っているのですけれども、そうすることによって学内に行くのが自然だという形になってきまして、多少、敷居の低い大学に変わりつつあるのかなと思っております。

【濵口主査】
 どうぞ、竹山さん。

【竹山委員】
 今回、3事例のご紹介がありましたが、日本の大学の中では規模が小さめ、若しくは熊本大学では最小ユニット規模での成功例だったと思います。これらの成功例から、規模の大きな大学が参考にするべきところもあるのではないかと思います。農工大のご紹介の内容ですが、大学の教員がやはりそこまでやらなければいけないのかという印象が残ります。例えば千葉先生がマルチタレントで営業マンのように牽引していかなければいけない現状が見えてきます。それでこそうまくいくところもあるのでしょうけれども、とても大変なことかと思います。同様なことを多くの教員に強いると、研究ができなくなる教員もたくさん出てきてしまうことも懸念されますし、特に若手の教員等では研究とのバランスが必要かと思います。
 教員のイニシアティブは重要ですが、コーディネータが戦略的に動くことが重要かと思います。例えば、農工大内にも組織としてあるかと思いますが、URA等がもっとサポートするべきではないでしょうか。千葉先生もご自身のご研究、教育活動をお持ちだと思いますので、大学がどれだけきちんとプロフェッショナルとしたマネージングができる組織を設置、運営できるかが重要かと思います。先生がおっしゃるように、教員の意識改革は必要だと思います。まずは、それを行いつつ、一生懸命研究していただき、価値のあるシーズを作りながらも、教員の資質に合わせて営業が得意であればしていただければよいかと思います。
 折角よいシーズを持ってもそれをアピールするのが下手な研究者のために、URAのようなコーディネイト組織があるのではないでしょうか?URA制度も、今、国から補助金が出ていますけれども、いずれ大学組織として維持させることが必要不可欠かと思います。農工大の場合は、間接経費や企業等からの資金でサイクルを回す努力をされているようなので、このサイクルがうまく回れば、教員たちも落ち着いて研究をすることができるのではないでしょうか。現在の農工大のビジョンとしてどのような計画を立てていらっしゃるのでしょうか。

【千葉副学長】
 さすが竹山先生、農工大の内部事情もよく御存知で、ただ、多分、どこの大学も共通で抱えている問題だと思います。いい事例があったからといって、それが大学全体に広まるかどうか、これは非常に難しい問題だと思っておりまして、私自身もこれは次の課題だと考えて今取り組んでいるところですが、もちろんURAの制度、国に支えられていますが、私の考え方としてはURAだけに固定する必要はなくて、教員、職員、要するに母数の多いところからそれをやれる人を最終的にピックアップする以外に方法はないと思っています。
 例えばURAが10人いると、この10人がやるのだというと、逆にそこには過度の期待がかかり過ぎますし、その中でもそういう営業活動が得意な人とそうでない人もいると思います。ですから、そういう意味で私は多くの教員や職員にこういう学生と触れたり、将来の見通しを共有する、夢を共有する機会をたくさん作りたい。その中から恐らく20人に1人ぐらい、そういう人が出てきたらいいなと思っております。恐らく確率的にはそれぐらいだと思います。でも、それをやるとやらないでは大きな違いになりますので、これは地道な努力を続けるしかないと考えております。

【濵口主査】
 はい。小安先生。

【小安委員】
 東工大のケースを三島先生にお伺いします。スペースチャージの考え方の部分なのですが、スペースチャージとして課金する際、その支払いのソースは、それぞれの運営費交付金を使うということなのですか。それとも各部局によって、努力してまた何か違ったソースを考えていらっしゃるのでしょうか。どういう考え方をされているのか教えていただきたいのですが。

【三島学長】
 スペースに対して教員が払う値段、価格の問題だとも思いますけれども。

【小安委員】
 資金のソースです。どの資金から出すか。

【三島学長】
 これは各教員の持っている教員当たりの経費とか、あるいは競争的資金を取っていればそこから出していただくということになると思います。それで、現状でも大きな間接経費を取っておられる場合には課金しない場合とかいうのもございますし、そういうことではなく単にスペースが必要でということであれば、その分の課金をしている、スペースチャージをしているというところは現状でもございますけれども、基本的にはこれは大学の施設整備等に使うお金がどんどん少なくなってくるので、そういうものをどうやって捻出するかということが一つございますけれども、もう一つはやはり学内にスペースが有効に使われていないというところがございまして、いかに学長裁量のスペースをこれによって集めていくかということも一つ大きな目的になっております。それで、部局には当然、配分があるわけですけれども、それ以上のものを持つところにできるだけ累進課金をするということによって、その部屋を学長裁量で差し出してもらうというような狙いもあってのことでございますので、当然、各教員が自分の持っている経費から払う。そういう形でございます。

【濵口主査】
 上山さん。
【上山委員】
 三島先生に一つお伺いしたいのですけれども、これ、今日さらっとおっしゃったけれども、一つ一つの改革、ガバナンス改革は大変ではなかったかなと。これ、例えば人事に手を入れ、かつスペースの問題もやり、学部長の任命も至っていますよね。まずお聞きしたいのは、これは内部でどういう議論があったのかということと、それと学長選挙に影響しませんかということを聞きたいことです。ちょっと生々しい話で申し訳ありませんが。それともう一つは、さっきスペースの話で、チャージをどうするか。これは基本的には恐らく間接経費的な観念から出されるものだと思うのです。つまり、間接経費というのは大学の施設を使っているということに対して支払わなければいけないお金という掲示をされるわけですから、日本の場合は間接経費、例えば大学本部は大体50%取ったりする。その50%という数字には実はほとんど根拠はないわけですよね。

【甲斐委員】
 そうそう。

【上山委員】
 自分が研究をやっていくときに、その研究のコストの内で、本部に依拠している費用のパーセンテージというものが幾らで、自分の属している学部に対するパーセンテージが幾らで、自分の属している研究所に対してはどれぐらいのコストを負っているのか、そういう判断で間接経費の配分というのは本来はなされるべきだと思うのですけれども、それではなくて現在では曖昧な形で何となく輪切りにされて決まっています。そこのところの意識を学内で変革するにはどのような議論があったのかお聞きしたいと思います。このスペースチャージの方針を打ち出した時の学内の反発のようなものですね、それがあったのかどうかお聞かせください。
 もう一つは、東工大はグローバルな大学を目指していくということを明確に打ち出しておられるわけで、恐らくこれだけガバナンスを確保してなさっているお考えの中には、グローバルな人材の獲得みたいなことをどれぐらい視野に置いておられるかということですね。そうすると、当然、アメリカを中心とする研究大学の状況を調べておられるでしょうか?例えば研究者は給料をもらっているかとか、研究環境はどれぐらいかということの明確なエヴィデンスを持った形でグローバル人材獲得みたいなのを考えないといけないと思うので、そういう努力をどの程度お考えになっているかという、この3点ぐらいを。

【三島学長】
 はい。分かりました。まず、第1点は、このガバナンス改革を進めていく上のプロセスでございますけれども、教育改革から手をつけてずっとスーパーグローバル大学の申請がある中で、教員の方にはできるだけ東工大がどういうふうに人材、財政面、スペースを有効に使って世界トップクラスを目指すかということについての議論は随分いたしましたし、全学説明会も随分いたしましたけれども、基本的には特にこの人事の問題は今まで部局ごとにポストを割り当てていたので、それを空きがないと動かせないという問題が非常に学内の中ではあったのです。
 ですから、それを全部まとめて大学が持って、そして必要だということを言ってもらったら、なぜ必要でどういう計画でそういう人事が必要かということをしっかり説明した場合はポンとそれをつけられるという、ある意味ポジティブな面、これについては非常に全学的に賛同を得られやすくて、そのことの中から、もう一つはその中に大学としての補強したい、強くしたい分野にどうやって人をつけるかということもこれでやりやすくなるので、どちらかというとWinWinみたいなところもあったかと思います。
 それから、部局長の指名でございますけれども、これは私自身、予想以上にすんなりと納得していただきました。これは多分、理工系の単科大学というか、理工系の総合大学であるために目指す方向をはっきり示して、そして部局に配分される額、経費であるとか、あるいは人事のことだとかいうものが全部全学的な視野でやろうということについては賛同が得られたと思っています。
 それで、そういうことからすると、学長が全てトップダウンで決めるということに対する反対が、そうなるのではないかという反対がありまして、その場合、学長の暴走を止めるシステムだけは作ってくれみたいな意見はありましたけれども、ただ、やはり東工大がどこへ向いて、どういうことをするのかということについて、各学部長、部局長がしっかりと学長と話をしながらやるのであって、決して人事権を学長が全部握るのではないというところでは納得していただいたということであろうと思います。ただ、これは相当の抵抗があるのだろうと思った割には、割にすんなり行ったところでございます。
 それが最初のところかと思いますが、二つ目が何でしたっけ。

【小安委員】
 スペースチャージです。

【三島学長】
 スペースチャージでございますね。

【上山委員】
 間接経費。

【三島学長】
 はい。スペースチャージは先ほど少し申し上げたように、現在では大きな研究費を取ってきて、間接経費をうんと取ってきた方は、当然、大学に今3割ですか、現状では。おっしゃるように何%どうするという話は、これからしっかりと部局と話し合いながらもう一度やりますけれども、とにかく大きな経費を取ってきた人は、間接経費をうんと大学に入れていただくのだからということでスペースチャージをしないで、ある程度の間接経費に応じた分というのは差し上げるようにはしております。そうでないところでスペースをもっと欲しいというところには、先ほども申しました教員の経費でやってくださいということで課金をしているということでございます。
 今回は先ほども少し申し上げたように学内で非常にスペースというのは、先生方、確保したがって、使っていないところも何とかして取られるのは嫌だというのが大学の中にはありますので、そういうところでスペースが足りない。これから新しい研究チームをワンルーフ型で作っていきたいとか、そういう新しい研究のスタイルのやり方をしていくのにはスペースを確保して、まとまった部屋を使えるようにしたいし、それから、研究機器の共通化などということでもやはりまとめて置けるような場所も欲しいしということで、ある意味、言葉は悪いのですけれども、使っていない部屋のあぶり出しみたいなことが非常に重要で、数年前に前執行部が一度やろうとしたのですけれども駄目だったのです。そういうことを今度しっかりとスペースチャージという形で大学の施設等の整備プラス部屋の本当に有効な使い方を今度はやりたいということで進めていこうということでございます。
 それから、最後、もう一つございましたね。
【上山委員】
 グローバルな人材育成。

【三島学長】
 グローバルな人材、これはもちろんでございます。その辺が人事諮問委員会、それから、人事委員会を立てて全学的な人員の獲得、あるいは人員の教員の選考をするということでございますけれども、グローバルな人を入れるための、そういうための予算措置といったものも非常に重要になりまして、その辺がやはり間接経費なり、学長の裁量で使える経費をどのぐらい確保できるかということになってくると思います。
 それで、先ほどおっしゃったように給与面では優秀な海外の人を呼ぼうとすればするほどものすごくお金がかかるわけですから、その辺はIR室等で学内の、今、お金がどう使われているかというデータをできるだけそろえて、その中から、限られた資金の中から人件費としてどれだけのものを捻出できるかを定量的に見ながら、分野の強くすべきところの御提案があればそこで考えるというやり方をしていこうと思っています。アメリカですと、何かやはり部局とか、大学がある文律で人件費を用意してということがあると思いますけれども、どこまでできるか分かりませんけれども、できるだけ大学主導でそういった経費を捻出していきたいと思っていますが、まだあまり定量的な御説明はできないかと思います。

【濵口主査】
 3番目の問題、給与体系そのものをどう設計するかということを議論しないと無理なのですよね。

【三島学長】
 そうですね。

【濵口主査】
 それから、アジアの大学でも、例えばアメリカから丸ごと持ってきたりするのが結構増えていますけれども、例えばチュラーロンコーン大学では、どこに外国人の給与を転嫁しているかというと授業料なのです。タイ、チュラーは年間100万取っています。だから、日本の方が安いのですよ。そこまで決断するか。そうすると、教育の機会均等という問題と触れてくる問題があるし、それから、学生と納付金を果たして研究力の高い人に投資するということが論理的に整合性があるかどうか。これはものすごく基本的な議論が必要で、バサッとはいかないですね。
 それから、2番目の問題は部局と大学当局との間のIRが必要なのです。どれだけ大学が部局に投資しているのか、投資に見合った貢献を部局がやっているかというのをはっきり出さないと、そこの数値がまだ出ないですね。

【三島学長】
 ですから、やはり全体的に人事もそうですけれども、非常に透明な評価システムをどう作るかというところで。

【濵口主査】
 まずそこですよね。

【三島学長】
 ええ。そこが非常に重要になってくると思いますので。

【濵口主査】
 当面は、テニュアトラックは非常に重要だと思います。全国的にも、これは非常に大きな課題だと思っているのですが、人材委員会でもかなり議論しておりました。大分普及してきているように思います。大学の教員の選考で一番ブラックボックスになっているのが助教なのです。教授、准教授は一応、選考委員会がありますから、ピアレビューはそれなりにやります。済みません、お時間が限られておりますので、質疑はここで一旦打ち切らせていただきたいと思います。三島先生、千葉先生、ありがとうございます。大変重要な情報を頂きまして感謝いたします。
 それでは、次の議題、「論点整理に向けて」に入りたいと思います。今回、これまでは本検討会での議論を踏まえた論点整理(案)について、事務局に作成していただきました。まず、資料について事務局から説明していただいた後、論点ごとに議論を行いたいと思います。時間が限られておりますので、よろしくお願いします。まず、資料4-1と4-2、それに続いて論点の一つ目である競争的研究費改革に関する総論のうちの間接経費の考え方に関する資料4-3について事務局から説明をお願いします。

【松尾振興企画課長】
 それでは、まず資料4-1をごらん頂きたいと思います。前回お出しした資料に加筆をさせていただいたものでございまして、論点1が総論、間接経費のことを含めた総論でございまして、論点2が人材育成の件で、その他というふうに箱で分けてございますが、つけ加えさせていただいたのが論点2の一番下の丸のところ、そしてその他のところの一つ目の白丸の後半部分、会計基準云々のところ、そして一番下の丸、これを加筆させていただいたものでございます。
 次に4-2でございますけれども、競争的研究費改革の必要性についてということで、これは第1回目の検討会にお出しした資料の――済みません、まず、上二つの白丸でございますが、第1回の検討会の資料から、そのまま引いてこさせていただいておりまして、こういう観点からこの検討をしなければならないということをもう1回繰り返しさせていただいております。新しいところが丸の三つ目からでございますけれども、先ほど申し上げたような目的といいますか、そういう趣旨に沿って検討していただくわけでございますが、三つ目の丸の1行目の後半から書いてありますけれども、関連する委員会等の議論の進捗状況も踏まえつつ、順次論点を整理していただきたいということなのですが、今、座長からお話がございましたとおり、まずは論点1の総論のうちの間接経費のところ、そして人材育成のところの論点2について方向性を示すために資料4-3と4-4を御用意申し上げている、こういうことであります。
 まずは資料4-3について御説明しますが、それに当たって資料4-2のこの下の絵をごらん頂きたいのですが、いろいろな言葉が飛び交っておりますので、日本語的な解釈は、変だなというところはさておき、とりあえずこの検討においてはこういうような整理を――整理といいますか、こういうような用語の使い方をさせていただきたいということで図にして整理をしてみました。一番小さい箱が競争的資金、内閣府の定義でこれは競争的資金という言葉になってしまっているので、そこはその言葉を踏襲させていただいておりますけれども、これがいわゆる科研費とか戦略創造とかのものが入っています。文科省部分で言いますと、これはざっくり3,500億、平成26年度予算を今から全部申し上げますけれども、ざっくり申し上げると約3,500億円の規模感であります。
 その外側に、まず、済みません、左側に出っ張った外部研究費というのは忘れておいていただいて、もう一つ大きくなったところに競争的研究費というのがあります。これは要は競争的な研究費なのですけれども、この場の議論で申し上げれば間接経費が30%措置されていない状態になっているものでありまして、いろいろなものがあるわけなのですが、ざっくりこれも申し上げますと、26年度予算で800億円から1,000億円ぐらいのものがここに入っています。それで、さらにその外に行くと競争的経費となっていますが、要するに研究費でないものをつけ加えて全体競争的経費ということで、済みません、さっき、800億から1,000億というのは、先ほど一番小さいところで申し上げた3,500以外に800億、1,000億がプラスされるという意味です。
 最後の競争的経費のところですけれども、ここには高等局の国公私を通じた教育改革支援の制度とか、リーディングのように、ああいうものがさらに足されて、ここのところが多分500億円弱ぐらいから650、700億円ぐらい、こんなイメージでありまして、今度は赤い箱をごらん頂きたいのですけれども、さらに外部研究費という競争的研究費と並んで公募でやらない企業からの受託研究みたいなのがさらにあって、こういうのも大学に入ってまいりますので、これを外部、非公募のやつを合わせて赤いところを横串で見て、これを外部研究費と呼ぶことにしましょうと、こういう整理の仕方をしております。
 先ほど数字で規模感を申し上げましたけれども、競争的研究費のところの箱で大体800億から1,000億円と、それから、一番コアのところの3,500億円を足して大体4,300から4,500億円という規模感になるのですけれども、この赤い箱の右側の部分、競争的研究費というところですが、これが科振費が大体8,500億円ぐらいですので、そこからJAXAとかの研究独法に措置されている予算、例えばITERとかいった国際共同の大型プロジェクト、1点物の。ああいうものを引いていくと大体ここの金額になるということで、科振費の中の議論すべきものがここのまな板に乗っているというふうに御理解頂ければいいかなと思っております。
 この絵をごらん頂きながら、次の資料4-3をごらん頂きたいのですが、済みません、時間を使ってしまって大変恐縮なのですが、間接経費のことについて書いてございます。現状分析のところを飛ばしながら行きますけれども、一つ目の丸に書いてあるように、過去、必要なオーバーヘッドというものが必要だという議論があって、第2期科学技術計画から30%を目安として導入がされましたと。そのときの趣旨というのは、三つ目の白丸の下の黒ポツ二つに書いてありますが、一般管理費的な内容の話と、それから、獲得した研究者の研究開発環境の改善とか研究機関全体の機能の向上に活用できるもの、合わせて30%が目安、こういうふうになっています。
 一番下の白丸ですけれども、昨今の厳しい財政状況の中で、基盤的経費も減少していく。最初の方に申し上げたのですけれども、競争的資金の要件の厳格化というものもあって、要するに30%の間接経費が措置されるものがあんまり増えないという状況になっているという現実がありまして、裏に行きますけれども、結果として間接経費で行うべき研究の質を高めるための活動というのが基盤的経費に頼らざるを得ないという状態があって、双方の取組が共に効果を十分発揮できなくなっているという現実があるのではないかということであります。
 したがって、(2)に書いてあるようなことを考えていってはどうかということでありまして、1)が間接経費の意義・必要性の再確認・徹底ということでございまして、これは使う側の内部における話と言ってもいいのですが、2行目あたりに書いてありますけれども、この発生する必要経費、外部資金による各研究を実施するに当たって発生する必要経費、これには教員をサポートする間接部門の経費というのももちろん入るわけなのですけれども、こういったものがどれぐらいどうなのかということを透明化して教員等に周知を努めるということが大事である。2)の論点とダブるところがありますけれども、加えて産業界等に対しても一層の理解、こういう経費がかかるのだということの理解を求めていくことが必要であって、こういうことを通じて大学等と産業界等のステークホルダーが対話を深めていくという観点が大事だということを書かせていただいております。
 2)が間接経費の措置対象経費の拡大ということで、30%が措置されていない競争的な経費、研究費というのが増えてきてしまっているというか、という状態の中で基盤的経費の役割というものの明確化というものも同時にしながら、CSTIや経済団体等に提案を行って、文科省の中はもちろんなのですけれども、間接経費の措置対象になる経費を広げていくことが必要ではないかということであります。二つ目の丸になお、この際、こういう引き続き検討が必要な論点、こういうものがあるのではないかということを四つほど黒ポツで書かせていただいておりまして、間接経費の使用に当たっての機関としてのガバナンスの発揮方法、そして説明責任を果たすための使途の透明化や使用実績の公表の在り方というものをどうすべきなのかということと、今日、三つの大学様からすばらしいプレゼンを頂きましたけれども、そういった間接経費の使用に係るグッドプラクティスを抽出して各機関に奨励していくことが大事なのではないかということです。
 それから、二つ目の黒ポツが研究の質を継続的に高めていく。要するに研究成果の最大化を持続的に図っていく上で、研究者と所属機関というのはどう適切な関係というか、どう役割分担をすべきなのかということ。そして、三つ目の黒ポツが先ほど箱の中で競争的研究費の外に競争的研究費でない競争的経費というものがあるわけなのですけれども、そういったもののどこまで30%の間接経費の措置というものを広げていくべきなのかという整理をしなければならない。最後の黒ポツがこの前、御指摘がございましたけれども、財源というものを併せて考えていかなければならないということであります。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 それでは、自由にこの点に関して御議論頂ければと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【大垣主査代理】
 大変きれいにまとめてあると思うのですが、資料4-3の今御説明頂いた(2)の今後の改革方策の1)に間接経費の意義・必要性に関してコメントを申し上げたいと思うのですが、競争的研究資金を取って行う研究機関に対して、あるいは大学に対してですけれども、キーワードとして例えば義務があるのではないか、「義務」というキーワード。何を言いたいかというと、知財の管理とか労働衛生管理とか、いわゆる一般的な共通的経費ですが、環境管理、倫理のコンプライアンスの問題、それから、広報、周辺コミュニティに対する社会的な広報、場合によっては合意形成、当然、国際的な発信というような、競争的資金の研究を行うに当たって、そこの機関が、あるいは組織が必要な義務を果たすための、その資金が要るのではないかというのが一つの話であります。
 それに関連して直接費と間接費で、直接費の方に乗せればいいのではないかという議論があるかと思うのですが、先ほどのグッドプラクティス、3大学のお話があったように各大学の規模とか、その学内のガバナンスの発展段階とか、それから、そもそも競争的資金の研究の分野による違いがあって非常に多様なわけですね。ですから、直接費などに項目を挙げて入れるような仕掛けにするのではなくて、間接費という形で、ある意味、各競争的資金を受ける研究機関が様々な工夫ができるという仕掛けの予算であるというような位置づけ、あるいは意義を強調する必要があるのではないかという気がいたします。
 したがって、この資料4-3の2ページ目の下から6行目ぐらいにあるグッドプラクティスを抽出し、各機関に奨励するということ、これは大変結構なのですが、これはこういうふうに工夫をしているということが重要であって、そのまねをすることが重要ではないという意味で間接費が非常に自由な――自由なというか、そういう有効な予算であるという位置づけを、意義を、強調する必要があるのではないかなと思いました。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 橋本委員。

【橋本委員】
 大変きちっと分かりやすく整理していただき、どうもありがとうございます。3点ありまして、まず1点目は、ここにもありますようにCSTIや経済団体等に提案を行うということが必要だと思っております。CSTIの方は私も議員をしていますので、こういう議論を既にしておりますが、前回も申し上げましたように、正式にしっかりと上げていただきたいなと思います。経済団体については、経団連等々の方などにこの話をかなり真剣に伝えていまして、こういうことを是非お願いしたいと強く申し上げているところであります。それに対する印象としては、大学の厳しい状況もよく分かっているようです。もちろん彼らは口に出した以上、それを守らないといけないので簡単にはうんとは言いませんけれども、随分理解を示してくれているようです。ただし、そのためにはやはり、まず大学の方でしっかりとした構造改革を含めた自助努力をするのが前提になっているということは非常に感じているところであります。ですので、ここのような議論が大変重要かなと思います。
 2点目ですが、この間接経費をどこから持ってくるのかということです。直接経費を減らさないで外枠で間接経費を増やしていただくのが最も重要だろうということは、私もそう思っております。しかし、最初からそれを言ったときに社会に了解していただけるかというと、外形的な状況は極めて難しいというのが印象であります。経団連等々の方と話していても、外枠で増やしてくださいという話と、外枠ではなくて内枠の中で我々が考えるからそういう部分を増やしてくださいというのでは、随分ハードルが変わってくるような気がいたします。
 併せて、財務当局の方と話した時の印象も全く同じでありまして、国の財務状況が厳しい中で、外枠でと言われてもそれは厳しい、という感じでした。逆に言えば、内枠でやれるように、ちゃんと積み上げをしているのであれば、それは俎上に載りうるというような印象を、非公式の話ですけれどもそういう印象を受けております。
 そうやって考えると、現実的なアプローチとしては、まずは内枠でうまくそういうのを設定するということを進めることが重要なのかなと思います。そのために、間接経費を一律何%というのは、どうもやはり先ほどもお話があったように難しいと思うのです。それぞれの大学の状況、あるいは予算に応じてケース・バイ・ケースで随分変わる話で、そこをフレキシブルにどのように設定するのかという、そういう仕組みを作ることが重要かなというのが個人的な意見であります。
 最後に3点目。今日、本当にすばらしいお話を3件伺って、非常に前向きな印象を持って、うまくやればこうなるのだなということで力づけられました。それで、これは文科省に質問なのですが、例えば今日、千葉先生の話で、間接経費でここまでできるのだと。すばらしいですよね。農工大と熊本大学、なぜこの二つはうまくいっているのですかね。今、あまりこういう前向きな話は聞かないわけです。間接経費、直接経費、運営費交付金が減っていて、大学側の財務はギリギリでと、こういう話しか聞かない中で、今日のお話を伺うと随分いいじゃないですか。これはたまたま大学のサイズがそういうことをするのに適した規模だからなのか、あるいはほかの要因があるのか、単に学長の意識の問題なのか。そんな単純な話ではないとは思うのですけれども、その辺の分析は文科省の方ではできているのでしょうか、いかがでしょうか。

【松尾振興企画課長】
 最後の御質問、なかなか難しいのですけれども、少なくとも農工大さんはやっぱり小回りが効くサイズでもあるし、分野的にもやはり農工という実学ベースのところでありますので、先ほど三島学長もおっしゃっていましたけれども、大きな方向性の共有というのがほかの大学、いろいろな分野がある大学に比べるとやりやすいという面は少なくともあるのかなとは思います。それで大きな方向性が共有できれば、過去のいろいろな文科省のテニュアトラックであるとか、女性事業でやっている補助金を使ってそれを内在化させていくというシステムに対して部局の理解も得られてやりやすくなっているという面は少なくともあるのだろうと思います。
【義本大臣官房審議官】
 補足です。

【濵口主査】
 どうぞ。

【義本大臣官房審議官】
 今の話に加えまして、ここ数年、機能強化ですとか、いわゆる補助金という形で各大学のマネジメント強化ですとか、いろいろな工夫を促すような形の取組をさせていただいているところでございまして、そういう形でやっぱり各大学の取組を把握する中において、いろいろな工夫をさせていただいているというところがあると思います。一般化できないですけれども、各大学の学長を中心としたリーダーシップが効いて人事制度、あるいはガバナンスも含めてしっかり取り組んでいこうというところが結果として表れているところでしょうし、また、先ほど松尾課長から話がありましたように、規模の問題ですとか、あれは理工系を中心にして構成されているというところも一つの大きな点ではないかなと思ってございます。

【角南委員】
 今、補足のお話があったと思うのですが、人文社会系のところで、うまくいっているところがあれば是非、紹介していただきたいと思います。

【濵口主査】
 私の言いたいことを全部言っていただいた。総合大学の苦しみというのはあるのですよね。

【佐藤委員】
 そうですね。

【濵口主査】
 有信先生。
【有信委員】
 さっきの橋本先生の御意見にも関連してですけれども、逆の側から少し見た話をさせていただきます。例えば民間企業のホールディングカンパニー化だとか、あるいは各企業の中で分社化だとかいうことが進んでいます。そのときに例えば、本社は全然稼いでいないわけですよね。そうすると、その各事業部門からお金を吸い上げなければいけない。その吸い上げる根拠というのは、非常に大ざっぱに言って、概念的にはこういう根拠で吸い上げているということをお話しさせていただきますと、基本はブランドフィーとマネジメントフィーなのです。
 つまり、そのブランドによって事業、つまり、東芝であれば東芝というブランドによって事業を行っている部分の賦課金。それから、マネジメントフィーというのは、その中で人材等々を実際にトータルのマネジメントシステムの中でマネジメントしているということに関わる負担、その部分の負担ということで、それぞれ何%という形で決めて吸い上げています。それ以前は各工場で稼いだお金に配布という形で吸い上げるシステムにしていたのですけれども、これ自身が非常に分かりにくいし、逆に言うと分社化したときにお金のやりとりがはっきりしない。
 ですから、大垣先生が言われたように様々な必要な経費というのを、そういう形で付加する。そうすると、多分、企業サイドも理解しやすい話だし、教員の人たちもある意味では、例えば大学の名前を抜きにして、その仕事ができているわけではないし、それから、さっき東工大の話の中にありましたけれども、様々なマネジメントを中でやっていかなければいけない訳です。このためには、それなりの費用がかかるわけですよね。だから、そういうことを含めて、まずは大ざっぱにこういう思想で必要だとした上で、具体的に透明性という点で、大垣先生が言われたようなことをきちんと示していくということだろうと思います。

【濵口主査】
 小安先生。

【小安委員】
 2点申し上げたいと思います。一つは、今の話にもあった、企業さんとどうやっていくかということの中で、先ほどの千葉先生のお話は非常によく考えてやっていらっしゃると思いました。私も大学にいたときに企業の方といろいろやるときに、やはり受けて研究するのはいいのですけれども、その人件費とか、そういう細かい話になっていくと、なかなか詰めるのは難しく、1人の教授として企業の人と話しているだけではなかなか、そこら辺を詰めるのは非常に難しかったという経験があります。それを間接経費という形にするのが良いかは別にして、研究をやるに当たってどれだけの費用がかかるかということをきちんと主張して、それを根拠を持って交渉していくという習慣をどんどん広げていくということが非常に大事なのではないかなと今伺っていて思いました。それが最終的間接経費という形になるかどうか分かりませんが、周辺状況を理解していただくように持っていく必要があるのではないかなと思いました。
 もう一つは、今日、西中村先生のお話を感銘を持って聞いたのですけれども、大学の中で、これは人社系には当たらないのかもしれないのですけれども、理工系にしても、生物系にしてもやはり中央の研究機器をどうやってそろえて、どうやって運営するかということはものすごく重要なことだと思っております。間接経費を全部に外枠でつけてほしいというのは、もちろん僕らもいつもそう思いますが、橋本委員がおっしゃるように、それはなかなか難しく、そこからスタートするのは無理だというのも一方で理解できます。中央機器ということを考えたときに、文科省の別のところで、主張したことがあるのですけれども、例えば大型の予算であっても、それで自分のところに大型機器をそろえるという習慣をどこかでやめた方がいいと思っています。要するに基本的には、汎用品の機器や自分のところのランニングコストは賄うけれども、大型機器は中央でそろえる。
 大型の研究費を取ってきた人は、大型機器の設置を中央に申請して、そういうのを優先的に認めさせる。そして、間接経費を使って中央の施設をきちんと管理するという、こういうシステムを作っていくということが非常に重要だと思います。そうすることによって、先ほどの話のように、前任地では中央機器があって巧く研究が出来たのに、移動した瞬間に苦労するという方がなくなるはずです。こういうやり方をすると直接経費が若干少なくなっても、恐らく研究者の研究費は回るのではないかと思いますので、そういう工夫をして行くことが必要だと思います。ただ、これは皆が足並みを揃えないと全く成り立たないことなので、こういうことまで考えていった方がいいのではないかと私は思います。

【濵口主査】
 そうですね。中央へ出す代わりに、例えばそれのマネジメント、ランニングを中央側が出す。

【小安委員】
 そうです。

【濵口主査】
 それを間接経費でやるとかいう形にやると、お互いにバーターが成立する。
 知野委員、お願いします。

【知野委員】
 この論点、総論のペーパーのところで、2ページ目のところに間接経費の本来の役割を果たすことができるようにというふうにとありますけれども、産業界への説明が必要だということは言われていますけれども、もっと一般の人々、いわゆる納税者である国民への説明がまず必要ではないかと思います。というのは、研究費の不正が続いているということも一つありますけれども、やはり一般の人は、この間接経費の本来の役割とか、そういうのが分からない。まず、研究費の細かいことも分からないので、そういうものも含めて込みで研究費としてお出ししているのではないかというふうに思うのではないでしょうか。
 となると、これから懸念されるのは、じゃあ、一律3割取られるのだから、橋本先生は外枠という言葉でおっしゃいましたけれども、じゃあ、その分、全体の金額を増やさなくてはいけないというような、話にどんどんなっていくのではないかなというふうにも感じますので、まず、きちんと定義することが1点と、間接経費の本来の役割とは何かを明確にすること。それから、透明化ですね。先ほど東工大・三島学長のスペースチャージもとてもおもしろい大胆なやり方をされていると思いますが、もし間接経費がそういう形で回っていくとしたら、一体何に使われていくんだろうかとかいう疑問も沸いてきますので、何にどういうふうに使ったのかということもはっきりさせるという、その2点が、定義と透明化、その二つが必要であると思います。

【濵口主査】
 どうもありがとうございます。
【有信委員】
 今の件に関して。

【濵口主査】
 どうぞ。

【有信委員】
 それは確かに重要なのだけれども、使い方の問題と、それからもう一つ、間接経費の問題として非常に使い勝手が悪いという話がありますよね。その問題とがごっちゃにならないようにしておかないといけないので、何が何でも事細かにどこにどれだけお金を使いましたかということを一々ギリギリ絞るようでは、ある意味で間接経費の本来の意味が失われる部分があるような気がするのです。
 だから、そこをどう考えるかで、前回議論が出ていた、例えば海外と共同研究をやるようなときに、実際に競争的資金の使い方が極めて制限が多いためにうまく進まないという部分があって、これは間接経費ではなくて、いわゆる外部資金そのものが出資元というか、ファンディング元の規制によって様々規制がかかっているということも言われていて、それが逆に言うと、そこを事細かにギリギリとやられるためにものすごく使い勝手が悪くなっているわけですね。ですから、透明性を高めるという部分と具体的にどこにどう使ったかということの正当性を示す、そこは正当性を示すという観点が重要なので、具体的に細かいことが重要ではない。非常に難しいのだけれども、その辺の案分を是非よく考慮していただければと思っています。

【濵口主査】
 例えば先ほどのように人材育成でこれだけ投資ができたとか、それから、中央機器化ができたかというような見えるものが要点として出てくれば、ステークホルダーに対する説明としては十分だと思うのです。どこそこの誰それがどういう資金の間接経費をどういうふうに不正に使ったかどうかという、これはまたリスク管理上の問題で一般的にそこだけではない問題ですから、効果的に使われているかということは透明性高く説明される。今後の問題としてやればいいのではないかと思うのです。

【知野委員】
 そうですね。今、先生がおっしゃられたとおり、それで、今、有信先生の御指摘に対して一言つけ加えたいのは、まず、定義をしっかりというところが、まさにそこなのですね。使い勝手が悪いというのは、大学とか研究者のコミュニティでは常識なのかもしれませんけれども、そこからまず分からない。何が問題なのかが分からないという、そこからやっぱりきちんと定義とともにやっていく必要があると思います。

【有信委員】
 いや、あんまりここで議論するつもりはないのだけれども、そこの話になると、要するに物の考え方で基本的には成果管理という形で今資金が管理されていない。これが一番の問題で、成果管理という形で資金が管理されれば、納得性が出てくるわけですよ。それに対する説明責任が使用者側にあるとすれば、つまり、この成果に対してこれだけの費用がかかったことが正当であるという説明がきちんとできれば、使い方を事細かに、つまり、この成果を出すために何に幾ら使いましたという説明は要らないはずなのです。そういう合意を作っていかないと、研究費の使い方というのは効果的になっていかないと私は思っています。

【濵口主査】
 大垣委員、お願いします。

【大垣主査代理】
 透明性に関連して、もう一つ確認しておく必要があると思うのは、この今議論している間接経費というのは競争的資金に関するものですね。競争的資金というのは名前のとおり、公募して応募されたものを選考するという過程が入りますので、その過程の中で間接経費等の使い方、あるいはそれを受ける研究機関の体制とかいうものもある意味審査できると思うんですね。その後の使い道に関しては、今、御議論があるように細かにやろうとしたら、そのためのコストがかかってあまり有効ではないのではないかという気がいたします。もちろん、今、議論があるように難しい問題だとは思いますけれども。


【知野委員】
 誤解があるようなのでつけ加えておきますが、使い方云々の問題とはまた別に、その前に、まず今、研究費とはどういう状況であって、今、こういう形で渡されているけれども、ガス代なり、電気代なり、それから、部屋のスペースなりいろいろかかります。でも、そのお金は入っていないので、研究者として困っているんですよという、まずそこを、定義とともにそこをきちんと伝えることが必要だということを先ほど来申し上げているのですが、何か伝わっていないようなので、念のために申し上げます。

【大垣主査代理】
 失礼しました。

【濵口主査】
 済みません、時間がないので次の点に移りたいと思うのですが、もう1点残っておりまして、引き続きこちらも議論しつつ、論点2の競争的研究費改革を通じた人材育成について、資料4-4にまとめていただきましたので、これについて事務局から説明をお願いして、あとしばらく議論をお願いしたいと思います。お願いします。

【松尾振興企画課長】
 御説明申し上げます。資料4-4でございますが、(1)現状分析のところで、恐縮でございますが、濵口先生にお取りまとめ頂いた人材委員会のレポートのところから要点を抜き出させていただいておりますが、また要点だけいきますけれども、最初の黒ポツのところに、一番下に書いてありますけれども、若手研究者のポストの割合が年々減少していて、若手研究者の任期付任用も拡大している。二つ目の黒ポツで、ただ、若いうちは様々な研究機関を経験するということも大事なのですけれども、それが過度になるとキャリアアップにつなげることは難しいという指摘もある。三つ目の黒ポツ、「また」ということで、その雇用経費でありますけれども、多くは外部資金で雇われる場合だということで、そうしますと独創的な研究が実施しにくいという懸念もあると指摘されているということです。四つ目の黒ポツ、「一方」ということでシニアは任期付任用が若手に比べると拡大していない。これが若手の過度な流動性を生じさせる一因となっているのではないかという御指摘です。
 次のページの図をごらん頂きたいのですけれども、これは前回のこの検討会で科学技術政策局から説明をさせていただいたものから抜き出させていただいておりますけれども、RU11のデータを文科省でまとめたものでございまして、上が19年度、下が25年度でこの差異を見ていただきますと、若手教員の任期なしポストが減少して、任期付ポストが増加しているということが見て取れる。下半分の丸ですけれども、特に生命系につきまして、これは日本学術会議が調べられたものですけれども、左側の円グラフにあるとおり、任期制の職に就く若手研究者というのは56%が外部研究費によって雇用されているという状況があって、右側のグラフをごらん頂きますと、しかも、自分の研究費ではなくて上司や上司のグループに与えられた研究費がその雇用経費になっているという実態があるということであります。
 3ページ目に参りまして、では、今後の改革方策としてどうするかという案を1枚ちょっとにわたって書いてございます。まず、1)で前提ということでございますが、白丸の一つ目で、大学等の人事・給与システムというものを改革することがまず不可欠であって、丸の二つ目ですが、そういった改革を断行する大学等に対して基盤的経費が重点的に投入されるべきだという、これを前提として以下を検討してはどうかということであります。一つ目が2)なのですが、競争的経費における若手研究者雇用に係るルールの整備ということで、2行目ぐらいに書いてありますが、「例えば」ということですが、実際の現実的な規模感というのを十分に踏まえることが必要だとは思いますけれども、例えば研究プロジェクト修了後の若手研究者のテニュア化でありますとか、プロジェクト中の雇用している若手研究者のキャリアディベロップメントに関する一定のルールというのを整備するということを考えていってはどうかというのが一つ目の検討点であります。
 もう一つの検討点が3)でありますけれども、いわゆる直接経費の使途の柔軟化というやつでありまして、米国の例なども考えますと外部研究費の直接経費から、3行目にありますけれども、基盤的経費等によってベースとなる雇用が保障されている研究者、PI等の人件費の一部を直接経費から負担できるように、出すようにすることができるという制度を考えてはどうかということであります。白丸の二つ目に書いてありますが、「なおこの際」ということで引き続き検討が必要な論点をここでも黒ポツを四つほどにまとめさせていただいております。
 一つ目が、この大学改革といいますか、大学における人事・給与システムとの改革、その改革がセットであるべきということを申し上げたわけなのですが、そのセットで物事を考えたときに、このシステムが競争的経費を十分に獲得できない若手研究者に適用されるとなると本末転倒な話になってしまいますので、例えば一定年齢以上のシニア教員を対象とすることなどの一定のルール作りを考えなければならないのではないかということ。
 黒ポツの二つ目、三つ目を合わせて申し上げてしまいますと、外部研究費からテニュアの人件費というものを支出することとなることを含めて、基盤的経費の役割の変化を、変化するということをどう整理するのかということと、それから、こういうシステムを導入するに当たっては適切なエフォート管理というものを導入しなければならないだろうということであります。最後の黒ポツですが、長期的視点に立ってこの人材の流動性、セクター間であり、世代間でもありますけれども、この人材の流動性というのを持続的に担保していくということをほかのシステムと組み合わせて考えて設計していかなければならないのではないかという点でございます。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 科学技術・学術審議会ではレイバーからリーダーへという標語を出しておりましたけれども、現実はそれにほど遠いデータが出ていると思います。もうお時間か限られておりますので、3ページの(2)に関して御議論、10分程度しかありませんが、しっかり頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。橋本先生。

【橋本委員】
 一言だけ。この(2)は十分考えられて提案されていることだと思います。今何度も強調されたように、若手研究者の雇用環境を改善するという目的で、やはり大学の人事制度システムを変えるということが重要になってくると思います。そういう前提の下で最後の丸の四つのポイント、これをしっかりと検討する必要があるのかなと思いまして、ここへ出してきた論点をしっかり今後詰めていくことが重要と思います。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 ほか、いかがでしょうか。この四つの点、かなり踏み込んだ考えになってくると思います。

【橋本委員】
 では、ないようでしたら、私からもう少しいいですか。若手人材の育成については、私たち、今一生懸命考えなければいけないところで、例えば産業界においてもいろいろ苦労して人事改革制度等々やっているのは、やはり若手をどんどん入れていくということが一番の目的なのだそうです。これは産業界の方々とも話す中で、すごく感じました。そういう観点で考えるに、私たち、大学人は十分に考えていなかったように思います。すなわち、定年でやめた教員のポストを順次下から上げる形で埋めていった。その結果、最終的に若手の雇用にしわ寄せが来ているということになっているわけですね。
 それを、東工大も農工大も、今、これを変えようというふうに努力をしているわけです。非常によい事例があるわけで、こういうことにしっかりと取り込めるような制度を競争的資金改革の中で入れ込むことが重要かなと思います。その中に文化系の先生方のシステムをどう入れるのかという点については、これは単純には行かないですよね。ですから、やはりいろいろな形が組み合わせる必要があるのでしょうね。

【濵口主査】
 どうぞ。

【竹山委員】
 今回、東工大の学長からの御説明で、助教の年俸制で任期というのが10年プラス、あともう1回、5年可能ということでしたでしょうか。

【三島学長】
 5、5です。

【竹山委員】
 5年任期で、延長もう5年ということですね。了解いたしました。テニュアで安定した雇用ということと終身雇用ということに、いつも疑問があります。現在、「流動性」についても重要視されている中でそれらをどのように実現していくのでしょうか。一つの研究を成し遂げるには、見直しをするには10年ぐらいが一期間かと思います。特に、流動をしながら、ステップアップするには、1か所で少なくとも10年は必要だと思っており、研究の活性の維持も可能かと思います。終身雇用というのは、必要なのですが、なった後のアクティビティが下がるケースが良く見られると聞いています。現在のプロジェクト等で見られるような5年程度の任期では、安定というより落ち着いて研究をすることができずに実績を積むことができませんが、10年あればまずは落ち着いてできるという意味で安定しているといえるかもしれません。終身雇用ではないから非常に安心して研究ができないという話ではないかもしれません。理系の場合、一つの研究を確立する期間を皆さんは一体何年として任期をお考えでしょうか?海外のテニュア制度と日本の終身雇用制度は全く同じなのかも明確化する必要があるかもしれません。
 熊本大学からのご説明では、育てた人材が他の大学に引き抜かれる例が多いとありましたが、流動化の例とも言えるかと思います。そのときに彼らが一体何年間、熊本大学にいて、次に移られたのかを聞ければよかったのですが。出す側にしては、色々な思いがあったかと思いますが、それが成功事例であるならば、そこで何が起こっているのかを解析しつつ若手の安定した雇用だけでなく、安定した研究環境、流動化について、考えるべきかもしれません。

【濵口主査】
 いかがですか。有信委員、お願いします。

【有信委員】
 今の話、すごく重要だと思います。だから、一生同じ研究をやることに意味があるかという設定と同じような話で、それからもう一つは、人材育成のときに本当にこのテニュア制をちゃんと入れようとすると、これはかなり日本の現状の中で難しいところがあるのだけれども、ある部分はこれを入れなければいけない。ただし、今のテニュア制度の扱いだと、はっきり言って本当に正しくテニュア制が行われているかどうかということがかなり疑問になるということなのです。
 つまり、テニュア制でそこから雇用を終身雇用的な雇用に変えるというときに、さっき農工大さんだったか、東工大さんだったかの中にもありましたけれども、テニュア化するための条件をきちんと明確にしておいて、確実にそれをクリアした人はテニュア化される、こういうことになっていないと、いわゆる有期雇用の意図的選別と何も変わらないわけですよね。そういう意味の透明性がきちんと確保されているようにはなかなか思えない。
 それから、テニュア制のようなものを入れておく必要性があるのは、やはり流動性をどこかで確保しなければいけないということもあって、一つのところに延々といることがいいことだという価値観を変えるという意味でも、そういう考え方は必要だと思っています。

【濵口主査】
 先ほどのアメリカとの大きな違い、テニュア制といういかにもアメリカ的なキーワードを使って入れているのですけれども、現実にはかなり違うのです。今、日本で進行しているのは助教クラスのところです。全体ではございません。ただ、日本の場合、実際はもう一つチェックポイントがあって、教授になるときにかなり透明性の高い選考をやっていますね。だけど、専攻選考が細分化されているところでは結構タコつぼ化していて、そこをどういうふうに透明性を高めるかという問題があります。テニュア制も導入だけすればいいというのではなくて、その人事が透明性の高い、ちゃんと説明責任が付くような基準と、それから、それが公開されるということが大前提でないとタコつぼ化のちょっと違うパターンになってくると思います。そこが議論がまだ足りないように思います。それをやった上で、さらにアメリカの場合は定年がないのです。研究費を取れれば80でもやっておりますので、それはかなり日本とまた違いますよね。
 あと、この条件でかなり精密に議論しておかなければいけないのは、生涯賃金がどうなるかということでありまして、これは制度設計の根幹に関わるような問題もかなり含んでいるのですけれども、我々で調査した限りでは、いろいろ動いていかれる方、例えば熊本のようなケースでは生涯賃金が上がってくるのです。それからもう一つは、生涯といっても、例えば我々の世代ぐらいになると、もうそんなにリビングコストがかからなくなってくるのです。一番かかるのは40代から50代前半のところで、子供がおられて大学へ例えば2人も入ったりすると大変な状況。年俸制はそこのところに実は資金が投入できるのです。客観的に見ると。メリットは、実は結構ある。
 そういう総合的な議論がまだまだ実は足りなくて、実はこの直接経費が足りなくなってきて、運営費交付金が足りなくなってきたから、要するに給与をどこから取ってくるかというような姑息なアイディアでこの議論が進んでいると本質的な設計にはならないと思いますね。ですから、そういうところの議論もしっかりしなければいけませんけれども、そこはもう一つの方の委員会が考えていただかないと。どこまで厚みがある議論をしていただいているかはこれから聞かないかんですけれども、こちらはまず研究費が中心ですので。
 どうぞ。

【小安委員】
 このキャリアディベロップメントを考えるというのは非常に大事です。今日、熊本大のお話の中で非常に良いお話がありました。中央機器の支援する人たちをきちんとしたキャリアとして捉えてサポートして、そこにはPh.D.を持っている人が2人いるとおっしゃっていました。これは非常に重要で、今、生命系にはポスドクが非常に多くて、といつも言われるのですが、私の知っている人の中にも、それを職業としてやりたいという人は結構います。自分はPIを目指しているのではないという人は、結構いるのですが、こういう人たちにはちゃんとしたポストがないのです。でも、今日の熊本大のお話を聞くと、たとえPh.D.を持ってある程度ポスドクをやった後でも、中央支援という形で自分のキャリアを積めるという可能性を示していると思うのです。そういうのもやはりきちんと議論していって、どのぐらいの人がいるのかを調べることも必要かも知れません。かつては技官というと非常に嫌われて、まず、削減の対象になっていたようなことがありましたが、中央の施設をきちんと回す重要な人材という捉え方、これをやはりきちんと考える必要があるのではないかと思います。

【濵口主査】
 ほか、御意見ないでしょうか。

【角南委員】
 ケースとしてはそんなに大きくないかもしれないですけれども、先日、私の同僚でタイ人のうちの教員をテニュアに変えるということをやりました。外部資金で来てもらっていて、人文社会系もこれからグローバル人材ということになるとどんどん、これはアメリカだけではなくてアジアとかいろいろなところの人を採用し、テニュア制度にやっていかなければいけない。まさにテニュアイコール終身雇用ではないという前提がまさにここに効いてきて、当然、六十幾つまで彼らがここにいるということで来てくれというような話では全くない。だから、ここ、若手もそうなのですけれども、これから中長期的に見ればグローバル制度みたいな、何となく日本独自の中で閉ざされたあれをうまく回していくだけでは将来結構厳しくなるのではないかなという危機感が私はあるので、ここは竹山先生ではないですけれども、テニュアということの定義もある程度グローバルスタンダードみたいなものをイメージしながら、将来的にはそちらの方向に変えていくような議論をしておかないと難しいのかなと思いました。

【濵口主査】
 上山先生。

【上山委員】
 テニュアというのは日本の場合はずいぶんと凄惨なイメージになっていますが、アメリカではテニュアって本当に守られている制度ですよね。あるいはテニュアトラックに乗った時点で、これは相当守られているという感覚があって、日本の場合は首を切るためみたいな感じがあるので、全然考え方が違うと思うのですよ。例えば、スタンフォードなんかでテニュアトラックに乗っていたとすると、万一スタンフォードでテニュアが認められなくても、その後はミシガンに行けるかみたいな感じを持っているでしょうから、かなり安定した制度です。
それに、それはテニュアトラックに乗った人が、大体アソシエートプロフェッサーに昇進させるかどうかが、テニュアを与える判断になるわけですよね。つまり、テニュアを認めるかどうかというのは、すぐれて大学の財務的なマネジメントの問題なのです。だから、テニュアを与える、つまり、アソシエートとして認めるかどうかの人事に大学本部が何がしかの形で関わってくるわけですね。
 なぜなら、その人をテニュアにした途端に、まあ、終身雇用ではないけれども、長期にわたってその人を雇い続けなければいけないわけですから、財務的な問題が必ず発生する。それは大学本部がそれを考えないといけないので、したがって、アソシエートプロフェッサーとか、フルプロフェッサーにするかどうかは大学のマネジメントとして人事にちょっと口出ししますよという背景になるわけですよね。だから、テニュア制度というのは、単に首を切ったり、人的な異動を進めるためというより、むしろすぐれて大学マネジメントの在り方そのものなのだと思うのです。そういう視点が欠けているなと。日本のテニュアの人というのは守られていないですよね。

【濵口主査】
 そうですね。マネジメントの状況によって基準が結構きつくなったり、緩くなったりというのがありますものね。
 お時間が来てしまいましたので、特にこの3ページ下、3)の下の四つの黒ポツのところ、ここは継続的に議論が必要だと思いますので、引き続き御意見を頂ければと思います。今日は定刻となりましたので、本日の議論はここまでとさせていただいて、論点整理(案)につきましては、ただいまの議論を踏まえて、よろしければ座長預かりとさせていただいて、修正を加えた上で検討途上のものではあるとしつつ、CSTI等に提案させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【濵口主査】
 ありがとうございます。それでは、その方向で進めさせていただきます。
 最後に事務局から今後の会議の予定について連絡をお願いいたします。

【松尾振興企画課長】
 参考資料2に1枚だけ書いてはおりますけれども、4月、これからも継続的に御審議頂きたいと思っておりまして、具体的スケジュールはまず座長と御相談させていただいて、委員の皆様方に具体的に御相談させていただきたいと思っております。
 以上でございます。

【濵口主査】
 どうもありがとうございました。今日は長時間、ありがとうございました。

―― 了 ――

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