競争的研究費改革に関する検討会(第1回) 議事録

競争的研究費改革に関する検討会(第1回)議事録

1.日時

平成27年2月20日(金曜日)14時00分-16時00分

2.場所

文部科学省東館3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 競争的研究費改革に関する検討会の設置と運営について
  2. 大学における競争的研究費等の現状について
  3. 競争的研究費改革について
  4. その他

4.出席者

委員

濵口主査、井関委員、甲斐委員、小安委員、角南委員、竹山委員、知野委員、橋本委員、藤巻委員、若山委員

文部科学省

常盤研究振興局長、安藤大臣官房審議官(研究振興局担当)、義本大臣官房審議官(高等教育局担当)、村田科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官、松尾振興企画課長、豊岡高等教育局国立大学法人支援課長、行松基礎研究振興課長、鈴木学術研究助成課長、中野振興企画課学術企画室長、髙山振興企画課競争的資金調整室長、岩渕基礎研究振興課基礎研究推進室長、前澤学術研究助成課企画室長

オブザーバー

筑波大学 永田学長
学術分科会学術の基本問題に関する特別委員会 西尾主査

5.議事録

【濵口主査】
 それでは、定刻となりましたので競争的研究費改革に関する検討会を開催したいと思います。委員の先生方におかれましては、御多用中、大変恐縮です。御出席いただきまして、ありがとうございます。
 それでは、まず事務局から配付資料の確認をしていただき、続いて議題1「競争的研究費改革に関する検討会の設置と運営について」の資料の説明を続けてお願いします。

 

【松尾振興企画課長】
 説明させていただきます。議事次第をまず御覧いただきたいと思うのですが、そこにいろいろあって大変恐縮でございますが、配付資料の一覧が下半分に書いてございます。個別には申し上げませんけれども、資料1から資料8までございまして、参考資料として、参考資料1から10までございます。なお、参考資料4は、枝番を付けてもよかったのですが、冊子と1枚紙と2種類のものが参考資料4としてございますので、御留意いただきたいと思います。途中でも結構ですので、もし欠けているものがあれば御指摘いただければと思います。
 それが資料の確認でございまして、恐縮ですが、続きまして、主査から御指示のございました資料1と資料2の御説明をさせていただきたいと思います。資料1がこの検討会の設置についてのペーパーでございます。もう詳しい御説明は割愛させていただきますけれども、めくっていただきまして、1枚目の裏でございますが、ここに先生方の名簿を付けさせていただいております。恐縮ですが、濱口先生に主査をお願い申し上げてございます。
 2枚目でございますが、ここにスケジュールの案というのを書いてございます。今日、1回目の検討会ということで、委員の先生方の日程調整におきましては、先生方に御不便をお掛けして大変申し訳なかったところがございますけれども、よろしければ、第2回は3月4日、第3回は3月13日に開催し、この第3回検討会あたりで論点等の整理を1回できればなと思っております。その後、4月から5月に合わせて2、3回程度、そして、6月頃に中間的な取りまとめということを目指していってはどうかという案を書かせていただいております。欄外に「なお」ということで2行書いてございますが、ここはあくまでも競争的研究費の御議論ではございますが、大学改革との一体的改革に関しまして、文科省内で別途、体制を作って検討をしっかりするということにしてございます。その御紹介が書いてございます。以上が資料1でございます。
 続きまして、資料2でございますが、「競争的研究費改革に関する検討会の運営について(案)」という1枚紙を、御用意しております。ポイントだけ申し上げますと、第2条の第2項でございますが、主査代理の指名を主査ができるということを書いてございます。そして、第3条でございますが、この会議は原則公開ということでしてはどうかということが書いてございます。なお、「ただし」ということで、主査が、非公開が適当だと思うことがあれば、一部又は全部非公開にすることできるということが書いてございます。
 それから、第4条、第5条でございます。会議の配付資料、そして、議事録につきましては、原則公開なのですが、主査が適当だと認めるときには、一部又は全部を非公開にすることができるという規定にしてございます。
 御説明は以上でございます。

 

【濵口主査】
 ありがとうございます。それでは、検討会の運営に関しては、特に御意見なければ、原案どおりとさせていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 それでは、運営規則に従って主査代理の指名をさせていただきます。大垣委員にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。
 続きまして、議題2「大学における競争的研究費等の現状について」に入らせていただきます。
 本日は、大学の現状をまずお聞きするということで、筑波大学の永田学長と名古屋大学の藤巻委員にプレゼンテーションをお願いしています。お二人に続けてお話しいただき、質疑はまとめて行います。
 それでは、短い時間で恐縮ですが、15分ということで、永田先生、よろしくお願いします。

 

【永田学長】
 お手元の資料3を御覧ください。大体タイトルはこんなのでいいかと思いましたが、いつものスライド、パワーポイントを使ってプレゼンテーションのつもりで作ったのでこういうことになっています。真実は一部入っていて、「『知』は『財』を生む」という部分は間違いないだろうと思います。
 次のページを御覧ください。今日、お話ししたい大学の研究力強化を最大化するために、特に文部科学省が所管している研究費についてのみ意見を言わせていただこうと思っています。
 1つ目は、基盤的な教育研究費というのは運営費交付金を中心としたものです。2番目は、科研費。それから、最終的には文部科学省全体の所管に入っている各種の競争的資金等について、現在、考えていることを申し上げます。筑波大学長という御紹介がありましたが、現在、まだ新学術領域の領域代表もやっている学者の端くれとして、実は御紹介したいと思っております。
 3ページを御覧ください。これはよく使われる図でありますけれども、ざっと見ていただきたいのは、RU11と言われる大学の青いところが減って、赤いところは増えている。すなわち運営費交付金が削減をされつつ、赤い競争的資金の割合が増えている。その中で緑色の部分は、つまり、間接経費ですが、意外に増えていないということが分かると思います。
 それでは、次のページを御覧ください。パワポで作るつもりだったので、ページ4は余分なんですが、最初に、研究費という観点から一般運営費交付金の部分についてだけ簡単に述べさせていただきます。
 5ページ目のところを御覧ください。これは我が大学の例を取っておりますけれども、左側に収入、右側の真ん中に支出でございます。今までこういう割合でやってきていて、残念ながら、見ていただければ分かると思いますが、教育研究の基盤的な経費、つまり、学生実習をやったり、コピーを取ったり、それが6%程度であります。これが来年度からは中にミシン目が入りまして、ちょっと色合いが悪いかもしれませんが、点線の下に学長裁量の経費がぐっと伸びてきております。したがって、人件費や管理運営費や教育研究を一部、裁量的に、計画的に行っていくということになります。更に教育研究費は減るということになります。
 次のページ、これは文科省の方の資料を拝借させていただきましたが、学長裁量と言われるものを使って、これまで世界水準の教育研究活動の改革、あるいはいろいろな分野での研究・教育の改革というものをそれぞれの大学が機能を、特色を前面に出していろいろなことを行ってきたというものであります。
 もう1ページめくっていただきますと、これは余分だったかもしれませんけれども、現在、効率化係数1%ずつの削減、病院を持っているところは1.3%ずつの削減でございますから、あと数年すれば、さらに10%減るという前提で考えたときに、東北大学の場合には、先ほど申し上げたように、減らすところというのは、基本的に大学が行う経常的な教育研究のお金というわけでありまして、東北大学の場合、10%というのは41億円の削減になりますが、それはどこから削るかというと、教育研究の基盤から削ることになり、76%の教育研究費がなくなります。
 次のページは長崎大学の場合でありまして、同じく50%が教育研究からなくなります。
 次は我々の大学ですが、我々も、50%ほど教育研究費を削減しなければなりません。解剖実習なども満足にできなくなるということで、医学を持っている大学としては非常に問題のある段階に入っております。
 次のページを見てください。これは先ほど最初にお見せしたものに、外部資金の部分の直接経費と間接経費を乗せて書いたものであります。見ていただきますと、運営費交付金や授業料といったもののほかに、外部資金として教育、あるいは主に研究に関するお金というのがこういうぐあいに入ってきております。これが収入ですけれども、支出の部分を見ていただくと、先ほどの上に、だんご状に2つが乗ったわけです。ここで直間比率が変わる、若しくは間接経費が増えるということであるとすれば、実は先ほど言った削減分のところに外部資金からの間接経費が乗ってくるということです。一見良さそうですけれども、大学の根本的な教育研究費は御覧のとおり、黄色のように減ったままでありまして、この部分を不安定な間接経費に頼るというのはどうであろうかというのは、大変重要な論点の1つだと思います。
 その次のページを見ていただくと、これは後でもう一度、出てきますけれども、現在の任期制教員と承継職員枠の先生方全体の年齢構成をプロットしたものであります。御覧いただければ、若い方がどんどん減っているという現状がお分かりいただけるかと思います。結局、我々としては、学問を未来につないでいくというためには、当然若い方々がどんどんと育っていただかなきゃいけないわけですから、ここを少しずつ変えたいわけです。しかし、なぜこういうことになったかというと、もう10年以上前になりますけれども、人件費の上限枠というものに沿って定数削減をすると、年を取った方がいなくなった後、採れないという状況がありまして、結局、若者が増えず、そのまま承継職員だった人が今もだんだん上に詰まっているという状況であります。是非とも研究をやるという意味においてはここを変えたいなと思います。
 次に、科研費について簡単に述べさせていただきます。14ページを御覧ください。これも競争的資金と運営交付金、どちらが効率的かという挑戦的なことを書いておりますけれども、3人のノーベル賞科学者、受賞者の方々の赤線で引っ張ったところを注意していただくと、当時はのんびりしていたという御反論もあるかもしれませんけれども、実はこういう自発的に自由な発想の下に使えるお金というのは非常に重要だったということを白川先生、小林先生、益川先生はおっしゃっていらっしゃいます。この当時の認識としては、運営費交付金と科研費が多分、基盤的な研究費であるという認識であったと思います。
 次のスライドを御覧ください。これはパワポのつもりでアニメーションだったんですが、1枚ずつ出すことになります。1枚目の15ページを御覧ください。これは本学の山海教授によるロボットスーツの開発がどういう順序で行われたということを研究費と一緒にお見せしているものです。大変面白いなと思うのは、1990年代前からスタートしておりまして、初めの頃は奨励研究、萌芽的研究、基盤研究(B)、基盤研究(A)といったものが獲得されていて、これによって研究の基盤的なところが立ち上がり、そこからいよいよ社会に実装するという段階になりますと、NEDO、それから厚生労働省、内閣府FIRST、今現在、ImPACTまでたどり着いていて、これが1つのモデルかなと思います。実際、私自身の場合もこのようなスライドを用意しようとすれば、用意できるわけですが、若い頃は、なぜお金が来ないんだろう、研究費をもっと早く欲しいなというのを盛んに思った次第です。科研費の枠内でのピアレビューを経て育つものは、最終的に20年近くを掛けてImPACTまでたどり着いているということであります。私個人的には、この若い世代の研究費を本当は増やしてやってほしい。年を取ったら、もっと目的ごとに研究費の競争的な獲得があってもいいであろうと思っております。
 18ページを御覧ください。これは間接経費に対して問題提起のために作った図であります。これは科研費の事業の中の直接経費をどんなものに使っているかを充てたものであります。このほかに間接経費があります。間接経費も、大学の方ではいろいろな用途に使っているわけでありますけれども、直接経費の中のおおよそ半分が物品費ですが、4分の1程度、あるいは最近では、2割ぐらいまで来ていると思いますが、少なくとも15%から20%は人件費として使われています。つまり、これの科研費で間接経費を付けているけれど、直接経費の内側で既にこういうふうになっているという状況を知っておいていただきたいと思うわけです。
 次に、全体の研究費全体を見たときに、これからはどういうことになっていってくれればいいのかということに対する基本的な資料を提出させていただきます。20ページは、先ほども出しましたが、もう一度、自然科学の分野だけを見てみると、明らかに外部資金が年々増えているということになります。
 その次は、文部科学省が御自身で作られているものを拝借してきましたが、ここに言うところの競争的資金というのは、高等教育局の例えば大学教育改革支援経費等を指すと書いてあるとおりでありまして、そういうものは青色で示してあります。それから、緑は、研究3局が持っている競争的な経費であって、赤いところは科研費も含めたものです。こういう割合で推移してきているということです。これは配分ベースということです。
 そこで、こういう研究費の中で、大学をマネージしていると非常に気になることがあります。若手研究者の流動性とポジションを確保するということが、いかにこれからこの国の研究を強めていくかということです。少し申し上げようと思います。
 23ページは、これは大学の序列というものを国際比較したものであります。日本もアメリカも、元々、高等教育のひな型というのはドイツから入っています。後発型である日本、後発型である米国がどのように違う道筋をたどったかということですが、日本は大学に序列を作って支援をして伸ばしてきました。一方、後発型米国は、当然のことながら自由競争ということで、大学ランキングを既に1920年代に始めているということです。1960年代になりますと、日本では大学の格差が既に定着してしまっています。アメリカの方は、大学ランキングが完全に定着している。この結果、こんなふうに割り切っていいかどうかは問題として、非常に競争力の弱い日本の大学と競争力の強い米国の大学という構図に、今、なっているということです。その後も、1990年代終わりから2000年を経て、いよいよグローバル大学ランキングの時代に入っているわけですが、いまだに我々は学問中心地を模索して、これまでと同じように選択と集中という考え方でやっているわけです。米国はもう既に学問の中心地としては一角を作っていて、それを今、自由競争で維持をしているという状態であります。
 次を御覧ください。次は、これはライデン大学が出している論文だけの視点からみたランキングであります。こうした結果、どういうことが今、起こっているかというと、論文数の方を御覧いただきますと、東京大学は論文数では世界4位を誇っております。ところが、下の方を御覧ください。同じランキングを並べ替えます。今度はトップ10%の論文、つまり、非常によくサイテーションされる論文、トップ10%というのを見ると、日本で最上位が東京大学で世界ランキング342位ということです。これは一体どういうことでしょうか。つまり、単打とバントヒットとフェアボールを積み重ねて論文を書いたけれども、ホームランとかいうのは余りないというのがこの結論であります。このような観点から見ると、今までとは違うものが見えてきます。
 次は、先ほど申し上げたように、日本の若手の流動性についてです。若手の方だけではなくて、年寄りも含めた、移動回数というグラフがあります。日本は徐々に伸びておりますが生涯移動期待値というのがそこの上に調査が出ておりますけれども、1.5回平均のところにあります。左の方を見てください。アメリカでは1.9、ドイツで2.17、イギリスでも2.79、そういう回数をみんな職場を移り渡っているということです。この移動回数と大学ランキングというのは、なかなかいい相関があるということだそうです。若手はいい仕事をして、どんどんといろいろなところを渡り歩いていただきたいと思います。
 次は飛ばしますが、これはインブリーディングの実態、日本のものです。それから、その次も後で見てください。インブリーディングがいかに良いか、悪いかということを日本と米国の例にずらっと並べております。
 そこで、28ページでいきなり国立大学86大学を示しています。流動性をどこで確保するかということです。もちろん企業等もあります。今、ここで問題にしているのは、アカデミアでの研究のことを私は問題にしているつもりなので、例えば大学で立派に育った人たちはやがて社会に出ます。それはアカデミアにも行くし、それから、大学にも行きます。そのときに、誰が受け手になるかをよく考えた方がいいと思います。日本の大学の実績が上がることによって、全体が上がることによって、優秀な人たちがいろいろなところを移り歩ける環境を作れるのではないかと思っていて、そのために、わざわざこんなところで86大学を出しているわけでありますけれども、総体で我々は若者を、研究者を育てていくという考え方があってもいいのではないでしょうか。
 その次は、そういう中で地方大学の存在感を1つだけ言っておこうかと思います。これも後で御覧ください。その地方から大学をなくしたら、国立大学をなくしたら、どうなるかがよく想像できます。つまり、赤い部分がなくなったときに、誰が高等教育に携わるのかということがこのグラフから見て取れます。
 次、30ページと31ページは結構重なりがありますので、31の方を御覧ください。地方の国立大学の研究力が弱いかどうかという問題ですが、右下の中小企業との共同研究に伴う研究費受入れの上位30大学というのを見てみると、国立大学の場合、3大都市圏の大学で9つ、その他で15大学あるということであります。民間企業との共同研究上位30も、見てみるとこういうことになっています。
 最後、32ページですけれども、どのように優秀な若手を、研究の底力を上げるという意味でどのように、僕らが雇用して回していくかということを日本株式会社として考えないといけないというつもりで置いております。国立大学だけではなくて、公立・私立大学も含めて、我々は研究者の層をこれから厚くしていかないといけないと思っているところです。
 33ページは以上をまとめて、未定稿プラス私案の文です。タイトルが筑波大学長になっているのでわざわざ私案と書きました。運営費交付金での教育は、必ず削減を行わないで担保していただきたい。
 それから、基盤的な研究というものに関しても、運営費交付金は、先ほど述べたとおり、もうかつかつです。10%下がると、多分教育費は切れませんので、研究費を削らないとやっていけないということは先ほどお示ししたとおりです。
 それから、科研費です。これについては、これは私案ですけれども、基盤Bや若手A、若手B、この種目の採択数を何とか増やす。その代わり、大型をつぶさなきゃいけなくなるかもしれませんけれども、若い層にチャンスを与えて、その中から芽が出たものを暫時、大型の資金で支援していって欲しいというのが本音です。
 それから、次のところは、運営費交付金の一部は、これは特別経費等を含めてもちろん競争的に使われてもいいのですが、これは大学や大学連携で取りに行けるような仕組みになっているといいのではないか。各省庁、そのほかにもありますけれども、個人単体でもちろん支援するというのは結構なことでありますけれども、大学じゃなきゃできないような、例えばスーパーコンピューターの「京」を今、支えているのはT2Kと言われているコンピューターのグループです。筑波、東大、京都が参加して、「京」の次のコンピューター作成のための例えばプロジェクトをやっている。これは1大学じゃできないんです。そういうぐあいに、それぞれの特徴を持ったところが連携してサポートされれば、お金も少し節約できるんじゃないかというふうには思っているところです。
 以上です。済みません。少し長くなりました。

 

【濵口主査】
 ありがとうございました。それでは、続いて、藤巻委員、10分という短い時間で恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

 

【藤巻委員】
 名古屋大学の藤巻でございます。私の方は、10分間という限られた時間ですので、できるだけ資料を少なくしようということで、おおよそ10枚という形でまとめてございます。
 名古屋大学の大学運営・改革状況、それから研究力向上への取組について、話してくださいということで、様々なことを行っておりますが、限られた時間でございますので、今後の日本を支えていく大学として、イノベーションの創出、大学としての研究力強化、この点に絞ってお話をしたいと思います。
 結論から申し上げますと、今の永田先生のお話とかぶるところはございますが、当然必要なのは若手の育成、それから、何と言っても多様性の確保、そして、基盤的研究と戦略的研究の双方の支援、こういったようなものが必要になってくるだろうと考えております。
 1枚、先に進んでいただいて、3ページ目。ノーベル賞の適齢期と書いてございます。これは、最大のイノベーションというのが今回の本学の青色発光ダイオードにも代表されるようなノーベル賞といったようなものだと思いますが、そういったようなものはよく御存じのように、若いときの自由な発想に基づいて行われるということでございます。ただ、見ていただくと、ピークは35歳から39歳にございますが、そこで急激に落ちるというわけでも必ずしもなくて、比較的広く分布しているとも取れるということでございます。
 ここからは、2つ言えて、若手の育成というようなことと、それから、やはり全体の底上げをするということが研究力強化に求められるということになってこようかと思います。
 1枚めくっていただいて、4ページ目。イノベーションを生み出す元はアイデアだと思っておりますが、そのためには何が必要かというようなことが述べられたものでございます。右の方の図を見ていただくと、横軸が言ってみれば、グループの中の多様性を示しており、縦軸がイノベーションの新しさ、強さといいますか、上に行くほど大きなブレークスルーを起こす可能性が高いということを示しております。ですから、1つのチームに多様な人たちがいると、その中のディスカッションによって本当にイノベーションとか、独創性の高いアイデアが出てくるというようなことを示している。ただし、横軸、すなわち多様性の度合いに関わらず、縦軸の平均値は一緒ですので、そう考えると多様性が高いと当然外れも多いということも示しているということでございます。これは、このグラフの中のどこにセールス点を持っていくことを目標とするかは、それぞれの機関が考えるということだろうかと思います。
 ただ、当然のことながら、競争的な社会になってきておりますので、ブレークスルーを導くような非常に高い独創性が求められ、それを考えると様々な多様性が必要だろうと、我々は考えております。ここで言う多様性というのは、それぞれの専門分野だけではなくて、例えば基礎研究と応用研究とか、それから、人も日本人だけじゃなくて、外国人、あるいは女性、若手、年配の方といったような、様々な面から見た多様性も当然必要になってくると思っております。
 1枚、先に進んでいただいて、5ページです。本学の話で恐縮ですけれども、青色発光ダイオードが実は今のように実用化、普及するまでには30年掛かっているということを御理解いただきたいということです。ですから、30年前に赤﨑先生がガリウムナイトライドを始められた当初は、ほとんど研究費がないというような状況で、外部資金として科研費を少し頂いておりました。この頃は、実は運営費交付金でもそれなりのお金をもらっていたという時代で、そういったような運営費交付金と科研費というようなところで、まずはアイデアを詰めていったというのが、最初5年間ぐらい続いております。その後に、JSTといった支援機関から、研究を発展させるために支援していただき、これが10年間、さらに橋渡しのような研究をサポートしていただいて、より大きなものに飛躍していくという形になっております。
 大学として何ができるかということですが、この最初の5年間というのは、なかなか大学の方でコントロールしてできるものではありません。できるとすれば、刺激を与えるというようなところ、あるいは基盤的なサポートをするといったことが必要ではないかと思います。残りの20年間ぐらい、ここは場合によっては加速することができます。例えば、今回の窒化ガリウムで言うと、応用は発光ダイオードに留まらないわけで、パワートランジスタ等への応用は、天野先生や赤﨑先生のグループだけではなく、ほかのグループも巻き込んでいけばもっと加速できるだろうと思っております。広い視野から新しい芽を見るといった意味の多様性というようなものを大学に導入する必要があるだろうと思っております。
 ここで、ちょっと話ががらっと変わってしまうんですが、研究力の評価でよく言われているのは、ランキングでトップ100に入りなさいというようなことを言われております。では、トップ100に入るために何をするんだというようなことを我々の中でも、現在、分析をしています。今からお示しします6ページ以降3枚ぐらいの紙は、まだ分析の途中ということで、最終的なものではないということは御理解いただければと思います。実は6ページの左側の図が国際共著率と、それからトップ10%のサイテーションの論文というようなことになりますが、これを見ていただきますと、国際共著率と今言ったトップ10%のサイテーションの論文というのは相関がございます。ということは、国際共著率を上げれば、トップ10%の論文が上がるということになるということでございます。
 ところが、よく見ていただくと色が付いていて、日本、中国、韓国、こういったようなところは実は左側の方にあるんですね。右側にあるのはオーストラリア等々で、実はこれは英語がネイティブの国ということになっております。ですから、なかなか言語の壁というのがあって、この結果はそういったところも示しているということになります。
 それから、実はランキングの指標にはレピュテーションというようなものが大きなウエートを占めております。いわゆる評判ということになるわけですが、これと実は国際共著率を調べてみると実はあまり相関がないということになります。ですから、レピュテーションを上げようと思っても、国際共著率を上げたところでそんなに思ったほど上がらない。本当は、これはもっとあるんじゃないかと思っていたんですが、余り大きな相関がないということでございます。
 では、そのレピュテーションと何が相関があるかというようなことを調べたものが次の8ページということになりますが、実は論文の総引用数あるいはh-indexです。これらは実績を積んだら高くなるような指標です。結局、レピュテーションに関しては大学の総合力、すなわち知名度ですとか、歴史だとか、伝統だとか、そういった地道な努力に依るものが意外とスコアに反映されているということになってまいります。ここになると、例えば色が付いたところが右に寄っているというようなことがなくなりますので、ここには言語の壁が実は出てきていないということになります。
 名古屋大学の強化方針というようなところにちょっとまた戻りますが、強みを強化し世界的研究拠点形成することが求められており、これに対してある程度の試みをしている。そこでの課題ですけれども、先ほどの永田先生の話ではないですが、ある程度育ったものに関しては大型の研究費が必要であるということと同時に、研究に専念する時間を確保するということも求められるであろうと考えております。
 それから、何といっても次世代を担う若手をいかに刺激をして伸ばしいくかということが重要です。これに関しては、多様性を高める形で刺激を与えて新しい分野を伸ばしていくというようなことを考えています。ただし、彼らはお金がないと常に言っておりまして、ここにはある程度の基盤的経費が必要だろうと思いますし、もう一つは、安定なポジション、安心して研究できる環境、こういったようなものが必要だろうと思っております。
 さらに、大学全体の底上げとしては、部局に組織としての競争力、競争的環境を導入するということですとか、あるいは今、スーパーグローバル大学構想の中で進めておりますジョイントディグリーといったもので地道に知名度を上げていくというようなことが必要だろうと考えております。
 最後のページになりますが、問題提起として1枚のページにまとめております。デュアルサポートの必要性と書いておりますが、まずは間接経費についてお話しします。間接経費は、先ほども御指摘がありましたが、いわゆる変動するお金ということになります。ただ一方で、いろいろなことを大学の裁量で行おうとすると、今や間接経費をベースに考えなければいけない時代に入ってきました。
 そうしますと、競争的資金のみならず、競争的経費、例えば教育にかかわるようなリーディングプログラムなどには間接経費は付いていないですが、こういった競争的経費全般に間接経費を是非付けていただきたい。さらには、その間接経費を大学の裁量で使える、何も制限のないお金にしていただければと考えています。こうすることによって、組織としての競争的環境を導入するですとか、優秀な人材を安定に確保するとか、あるいは若手の支援、研究を加速化する、こんなようなこともできるだろうと考えております。
 一方で、基盤的経費というのも重要です。先ほども御指摘ございましたが、教育にかかわるところというのは、なかなか間接経費のように年によって変動されては困るという部分です。これは図書、電子ジャーナル等のお金も含むということになります。
 それから、同様に、優秀な研究者は特に確保しておきたいですし、マネジメント・知財・国際・広報・法務人材、こういった専門的な方というのは基盤的な経費で雇用するというのが当然のことではないかなと考えています。これらは専門性が高いですので、任期のないポジションで雇用するべきだろうと思っております。
 さらには、様々な面で大学は変わりなさいと言われているわけです。具体的には、海外の大学との連携ですとか、あるいは大学間の再編も考えなさいと言われているわけですが、そのような変革に必要な経費については、変革を常に進めていくということであれば、基盤的経費の中で賄うべきであろうと考えております。
 以上でございます。

 

【濵口主査】
 ありがとうございます。それでは、お二人の発表に関して質疑応答に移りたいと思いますが、御意見、御質問ありましたら、どうぞ御自由に発言していただければと思います。いかがでしょうか。どうでしょう。どうぞ、橋本先生。

 

【橋本委員】
 今の2大学の取組に対し、私も大学に所属する一人として、全く異論はありませんし、また現状認識も共有しております。ですので、今、両大学からご説明くださったようなことを是非とも今後、しっかり進めていかなければいけないと思います。
 一方で、私は今、大学人の中でたぶん最も政策決定に近いところ、フロントにおり、政府や産業界からの風を直接に受ける立場にあると感じております。そういった場ではアカデミアを必死に守るほうの立場にあり、実際その努力をしています。しかし、本日のような場所に来ると今度は逆に、アカデミアに対し、政府や産業界の意向を伝えなければならないこととなり、立ち位置が苦しいところというのをご理解ください。
 そのような立場で2点、申し上げます。1つめは、科研費の重要性。その重要性は比較的、政策決定の場でも認識されています。例えば永田先生のお話で、ノーベル賞を取った3人の先生方が、自由な発想の下に使える研究費の重要性を言っておられたとありましたが、全くそのとおりです。実際、科研費の予算額は増えてきていますよね。科学技術基本計画ができた20年前と比較すると、今は2倍以上ですね。科研費はほかの経費に比べて非常に伸びています。それは国としても科研費の重要性というのは認識しているということを意味しているのだと思います。
 さらに科研費は研究者の自由発想型の研究費であるということの重要性も認識されていると思います。来年度予算もこの厳しい中、科研費は少しだけど伸びましたね。財務当局も理解してくれている証ではないでしょうか。一方で、自由発想型の研究に対しても、もう少し民間の希望を入れるべきだとか、そういう意見があることも事実です。そのような意見に対しては、絶対そうすべきじゃないと、科研費は自由発想のところがポイントで、それを守っていくということが重要なんだということを、みんなで声をそろえて言い続けていくことが必要と思いますし、またそれは受け入れられるのではないでしょうか。ただし、改革は必要で、例えば、審査分野の枠をできるだけ広げて、融合研究とか、新しい分野の研究が発展していくような仕組みにどんどん展開していく努力を、研究者自らがしっかりやっていくような制度に進化させていくべきでしょう。今、文科省で科研費改革を検討されているかと思いますが、ぜひともしっかりと進めていただきたいと思います。
 一方、運営費交付金の方は少し状況が異なります。大学の言い分と、政府や産業界からの見方とはだいぶ異なるようです。私は大学側の言い分を十分理解しています。すなわち教育は基盤的経費でサポートするべきだし、いろいろな改革をするには経費が必要で、そのために基盤的経費である運営費交付金をしっかり手当てすることが必要だということは、そのとおりだと思っています。しかし一方で、政府や産業界は、この苦しい国家財政状況の中で、みんなが痛みを分かちあいながら経費節約、効率化を進めているわけだから、大学もただお金を要求するだけではなく、まずはしっかりと自己改革を進めてください、ということを強く大学側に要求しているわけです。
 それに対し大学側は、基盤的経費のほとんどが人件費になっているという点を主張します。東大においても9割弱が人件費ですし、大学によっては120%が人件費だというようなところがあって、だから、改革しようにも、とても無理、人員削減で精いっぱいと言うわけですね。
 それに対して、民間から聞こえてくる意見は、民間は必死に人件費を減らす努力をしてきたということです。たとえば、55歳を過ぎると給与は頭打ちどころか下がり出し、60歳過ぎると再雇用で、一般的には半分以下の給与になる。そういった痛みを伴う改革を進めることによって、若手雇用を守り、新陳代謝を進めて生き残りを図ってきた、というものです。これは役所も同じです。公務員も60歳を過ぎると一般的には再雇用ですよね。大学だけがそういった改革をせずに、人件費削減で若手雇用を減らすという安易な方策を続けてきているのではないか、といった批判が聞こえてきます。
 政府では給与制度改革を促すため、年俸制やクロスアポイントメント、混合給与などを新たな制度を導入してきています。
 このような民間等からの指摘に対し、永田先生はどのようにお考えられますか?

 

【永田学長】
 おっしゃることはすごくよく分かっていて、来年の話をすると多分そういう話になると思うんです。僕らが一番言いたいのは、この国の高等教育のロードマップを本当にどう考えるかによってなんだと思うんです。ですから、例えば国立大学協会の方からも、やがてコメントが出ると思いますけれど、何も20年後、10年後、今の状態をキープしろという問題じゃなくて、我々の考えているロードマップというのは、人口も減る、ニーズも変わっていく中で、それを見越す段階としては、いつだろうということですね。そのときから逆算を、今、し始めているわけです。つまり、バックキャストを始めているわけです。そのときに、今やることは何なのかというと、今はこの日本のこれまで作ってきたいろいろな教育や研究の成果を最大活用して、やがて縮小していかなきゃいけない日、予算的にですが、その日に向かって、今は最後の体力を蓄える時期じゃないかなと僕は思っています。そういう考え方をしたときに、どこからか何を起こせるのかです。それはいずれ、ここではない運営費交付金の話をするところでさせていただきたいと思います。20年後というところからバックキャストした今、現時点というのは、持てるものを全て活用してこの国の将来を作るという考え方を僕はしたい。
 したがって、ずっとこのままやってくれと言っているわけではありません。一定の、これからこの実力が発揮できる何年間かの間、もう少しという議論になるのでは。政財界も説得もして、皆で考えませんか。その後、「ここを切ります」、「ここを切ります」ということを大学側がおのずと考えているわけですから、それを言わせてほしい。その上で回答としては、つまり、今現在、何年間かというのは最大限、今、国が持っている国立大学という財産を活用してほしい。その後、おのずと、自らも削減ということをちゃんと言うようにしよう。それを聞いていただきたいなと実は思います。
 その最大限という意味は、実際問題、人社系がどうだとか、教育系がどうとか、つまり、橋本先生が言われるところの、「儲からないけど、頑張っているところ」は、そのガバナンスをやらないといけないと思います。それを支え、考えていくのは、この国の将来を考える人でなきゃいけない。教育系について、もう人間が減るから減らせばいいというのは、それは賢くはないですね。ここまで投資して作ってきた教育系の資産というのは、実はこれから打って勝てる材料の一つです。ただ、あと15年程度だと思いますが。それから人口が本当に減少していくからです。その間、何をやるかと言ったら、例えば日本の小学校・中学校の教育方式をたっぷり教え込んだ発展途上国の人を育てて、例えば戻してあげたらどうでしょうか。15年経てば、その人たちが育てた、今度は高等教育に来る子は日本に来ますというようなことを話せないといけないのでは。人をどれだけ切るかとか、今この研究費をどうするかだけではないと思います。そういう根本的な議論を本当にやっていただく必要があります。その後、もちろん利活用という意味では、86大学が今のサイズのままでずっといることがいいと僕も思いません。責任があると思います、税金でやっている限りは。ここで議論しているのは多分、平成28年以降の研究費の在り方だと思いますけれども、大学としては残念ながら、経営権が会社とは異なります。人事権はあるけれども、首にできない学長は、一定のスパンがあれば、ある程度は人は減らして若手を増やすと言い切れると思います。あと3年後と言われても無理ですね。

 

【橋本委員】
 今、国大協でそういうことを検討しているということも聞いています。

 

【永田学長】
 そうです。

 

【橋本委員】
 個人の意見を申し上げますと、とにかく今の状況を改善するために、我が国の持っている財産をうまく使うようにするために、我々は今、一歩踏み出そうとしているのだということを具体的に見せることが重要と思います。変革していく姿を見せることで大学を守っていくべきなのではないかと思うのです。この会議では競争的研究資金の在り方の議論を行っています。文科省の別の会議では運営費交付金の在り方の議論もやっています。さらにこれらの統一的な議論をするような場も文科省内に作るとも聞いています。
ですので、こういう議論をしっかりやっていただいて、それらを積み上げていくことが必要だと思います。ただし、だからといって、じっくり進めてしばらくは何もしないというわけにはいかない。できるだけ早く大学自らが動かないと駄目ですよ。いろいろできた新たな制度など使って、とにかく改革方向に進むんだという強い意志をもってをみんなで議論することが重要だと申し上げました。

 

【永田学長】
 おっしゃるとおりで、別に僕も橋本先生を個人的にどうのと言っているわけではないし、いろいろな産業に競争力が要るなというのは当然だと思うんです。だから、そこで高等教育に携わっている我々としては、今みたいなメッセージを出すのは必要だけれども、こういう機会にある程度、考え方を表明させていただきたい。
 案はいろいろできるでしょう。きっとこんなことを言うと怒られてしまうかもしれませんけれど、大きな予算とかでそこから給料を払えるようになる、直接経費から払えるようになれば、その分は、運営費交付金を節約できるというのは大分違います。若手にまで直接経費から給料を払えと言うのは不可能で、先ほどありましたように2年間で500万円以下しかもらっていない科研費の中から直接経費で給料はないでしょう。大きな研究費の時には可能ですが。それから、間接経費はさっき言ったように、もっと自由度の利く使い方をさせてくれということは当然あると思います。ただ、何度も申し上げますが、教育にかかわる部分の基盤的な部分まで間接経費が入り込まない程度にならないといけない。たとえば、それが確定しないと3年後の電子ジャーナルすら予約できない。そういう現状になっているので、長いスパンから考えれば、本当に必要なことを大学もやっていくという決心はある。少なくとも、最後、私案、未定稿の部分の永田恭介としてはそう思っています。


【濵口主査】
 藤巻さん、何か御意見はないですか。

 

【藤巻委員】
 今の橋本先生、永田先生の御意見というのは共通する部分もございますし、すぐにはなかなか変えるのは難しい。それも大学にいる人間としては納得できるようなところもございます。ただ、メッセージが少し足りないかなというのは正直感じているところはあって、大学も実はいろいろな形で変わろうとしている。産業界のリクエストに応えて、いろいろな形で相当ひずみも生みながら変わろうとしている。これは、どこの大学もそうじゃないかと思うんですが、そういった努力をもっと明確にメッセージとして伝えるべきかなというふうに今、考えているところです。

 

【濵口主査】
 ありがとうございます。ちょっとここでこの議論を打ち切らせていただきまして、次の議題に移って、また、この後のフリーディスカッションで御意見がある方は御意見を頂ければと思います。
 議題3の「競争的研究費改革について」へ進めさせていただきたいと思います。競争的研究費改革については、これまで様々な場で検討がされてきておりますので、まず、これまで議論されてきた内容について御紹介を頂きたいと考えております。
 そこで、橋本先生から、主に産業競争力会議の場で議論されている内容について、それから、まだお着きになっておりませんが、西尾先生からは、科学技術・学術審議会の学術分科会で議論されていた内容について、それぞれ御説明を頂ければと思います。
 それでは、まず橋本先生から、10分で恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

 

【橋本委員】
 産業競争力会議での議論を紹介するようにと言われて、産業競争力会議の事務局に資料の提供をお願いしたのですが、まだ確定したものがないということでしたので、私の方で概略を作成いたしました。資料5を御覧いただきまして、今日は5ページ目までを使ってお話しさせていただこうと思います。それ以降は、産業競争力会議で私が議員やワーキンググループ主査として提出したものです。全て公開されているものですが、ここにまとめて参考資料として置かせていただきました。
 私は産業競争力会議のほかに、総合科学技術・イノベーション会議の議員もしておりますけれども、今日は産業競争力会議の議員の立場で話させていただこうと思います。資料に沿って簡単に紹介させていただきますが、産業競争力会議は日本経済再生本部の中にありまして、ミッションは国の成長戦略の策定とフォローアップであります。よく言われるのですが、何で産業競争力会議が大学のことに口を出すんだと思っている方も多いと思います。大学のミッションというのはたくさんあって、産業競争力だけではない、そんなのは小さいものだと思われると思います。全くそのとおりでありまして、大学にはもちろん様々なミッションがあり、その様々なミッションの全体で大学は成り立っているわけです。しかしながら、イノベーションの基を作るといいますか、イノベーションにかかわるというのも大学の1つの役割であるのは間違いないわけでして、その観点でイノベーション政策の中でこの話をしているということであります。
 それから、もう一つ、今の議論でもあるわけですけれども、今、大学は非常に苦しい状況にあり、そういった中で、更にこの大学改革で迫ってくるのはひど過ぎるじゃないか、と。これもよく耳にすることであります。それについても、今、大学は極めてピンチであるということは、私も認識を共有しているものであります。しかし、逆に、ピンチこそチャンスだとも思っています。なぜかといいますと、今、政府が大学に対して極めて興味を持っているんですね。興味を持ってくれているということは大変重要なことでして、全体政策を決定する場にいますと、ものすごくいろいろな案件が上がってきて、それらはみんな重要なんです。みんな重要な中でプライオリティー付けして議論する中で、大学改革とか科学技術政策が極めて現在プライオリティーが高いところに上がっているのです。この時期にプライオリティーが高いということは、政府が真剣にいろいろ考えていて、いい案を出せばちゃんとやってくれる可能性が高いということですので、このチャンスを逃す手はないというのが私の考えです。このようにプライオリティーが高い時期はそんなに長く続かないとも思います。ですからこの時期に、とにかく前に進むことが重要と思います。
 資料1ページ目の1番目、一昨年の1月25日、日本経済再生本部の中で成長戦略を作るに向けて、総理が10項目のことを指示されました。1番目に規制改革の推進があって、10番目にクールジャパン。この10項目が今後、政府として重要視して進めていくということの2番目にイノベーションの話が出ているわけです。これは1丁目2番地にイノベーションが入っているということであります。これに基づいて成長戦略が作られたわけですけれども、初年度は、科学技術・イノベーション立国を実現するために、主に総合科学技術会議の司令塔機能強化をやるということで、そちらの方に注力されました。大学改革も一部議論されましたけれども、主に司令塔機能強化を進めました。
 大学のことがぐっと頭に出てきたのは昨年の2回目の日本再興戦略の策定においてです。日本再興戦略は2013年に出されましたけれども、昨年、改訂版が6月24日に閣議決定され、その中に大学改革のことと、それから競争的資金改革のことがしっかりと書き込まれております。資料1ページめの『2.「日本再興戦略」改訂 2014』をご覧いただきまして、まずその1で、「大学改革の着実な実施と更なる改革の実現に向けた取組」とあります。これは文科省の国立大学改革プランが一昨年の11月に出ましたが、それを受けて、その取組を着実に進めつつ、2014年中に、来年からの大学の第3期中期目標期間における運営費交付金や評価の在り方の抜本的な見直しに向けた検討を開始し、2015年、つまり今年の年央までに一定の結論を得ると、ここで書かれております。
 次のページを御覧いただきまして、ここにもいろいろ書いていますが、これだけのものが日本再興戦略の大学改革に関わるところで、53ページ目に記載されています。それを抜粋してきましたので、御覧いただければと思います。
 その次に、資料の中ほど、3のところにあります「研究資金制度の再構築」ということも、昨年の成長戦略の中に書き込まれています。イノベーション創出のためには、どうのと書いていまして、それで、この最後の行ですけれども、このことが可能な競争的資金の在り方など研究資金について検討し、次期科学技術基本計画に反映させる、とあります。これは来年から新しい科学技術基本計画ができますので、それに反映させるということが書き込まれているわけでして、つまり、政府として、こういう決定をして、それを文部科学省に対して、そういう指示を出したということであります。政府から文部科学省に対し、こういう指示があり、それを受けてこの委員会も行われているということと認識しております。
 競争力会議におきましては、新陳代謝イノベーション・IT・エネルギーに関する実行実現点検会合と、新陳代謝・イノベーション分野ワーキンググループの「イノベーションの観点からの大学改革の基本的な考え方」を検討するグループ、この2つの会合で大学改革、競争的資金に関わる改革などが議論されていますが、主に後者の方で具体的な議論が進められております。実際、これまで4回会合が行われています。私はここの主査をしておりまして、その主査ペーパーを本日の資料に全て付けておりますので、それを御覧いただければと思います。ここでの検討を基に、文部科学省に対して具体的に詰めるよう依頼している内容が次の4.です。3ページ目の上ですが、「イノベーションの観点からの大学改革の基本的考え方」ということで、ワーキンググループから文部科学省への提案がされております。大学間・大学内の競争の活性化と、それから、グローバル競争を勝ち抜くための制度整備と、2つありまして、5ページ目はその概要であります。
 上の方には大学改革のことが書いてありまして、大学の機能強化で3類型の話が出ております。その右下あたりに、大学へのデュアルサポートということで、ここに競争的資金との一体的改革が必要だということが書かれております。これが今、ここで議論していただくにあたって、是非一体的な改革の議論をしていただきたいという基になっているところと言っていいかと思います。それで、ここに「優れた研究者の支援と優れた研究拠点の形成支援(直接経費の使途の柔軟化、間接経費の改善等)」ということが書かれておりまして、すなわち、こういうことを文部科学省に検討してほしいとお願いしたというわけです。
 その下、5ページ目の下の方には2つです。大学間・大学内での競争の活性化とグローバル競争を勝ち抜くための制度整備ということで、まず左の方の競争の活性化の中には、大学の機能強化、客観的な評価手法の話、評価結果の資源配分への反映、それから4番目に、今申し上げた競争的資金との一体的改革がありまして、こういうことを通じて大学間・大学内の競争の活性化をしてもらう。そして右の方には、グローバル競争を勝ち抜くために制度を新しく作ってほしいということで、特定研究大学制度、卓越大学院制度、さらに、今日も随分議論になりましたけど、若手研究者の安定的雇用に向けた新しい制度を作るとか、こういうようなことに対して是非とも検討していただきたいという提案をしております。ですから、ここの会議で申し上げますと、競争的資金との一体的改革ということが強くうたわれているわけであります。
 しかしながら、産業競争力会議がルールを作るわけではありませんので、これはあくまでも、こういった方向性を示し、文部科学省にそれに沿った検討を依頼しているということです。文部科学省におかれては、私の出しているペーパーにも書いていますけれども、現場の研究者と大学の経営者としっかりとした意見交換の上、制度を作っていただきたいということをお願いしているわけです。
 それで3ページ目に戻っていただいて、なぜ運営費交付金と競争的資金の一体的改革が必要になるかということ。ここから先は私の責任で書かせていただいたものであります。ここで順番に読みますと、最初は問題意識でして、運営費交付金は法人化後10年間にどんどん減っていて、大学の予算状況が厳しくなっています。そして2番目の丸ですが、人件費抑制のしわ寄せが特に若手雇用環境悪化に来ている。若手研究職ポストの多くが任期付きになっていて、研究職が魅力的でないポストに急激になってきている。さらに、グローバル化に乗り遅れてしまっていて、政府からマネジメント改革を強く要請されているけれども、この厳しい余裕のない予算の中では、方法が見いだせず、経営陣は途方に暮れている。
 一方で、文部科学省では運営費交付金の減額分を新たな競争的資金プログラム創設で補ってきたという歴史があります。過去10年間です。だから、たくさん新たな競争的資金のプログラムができたわけですけれども、これらは3年から5年の時限の付いたプログラムで、それらが出ては消え、出ては消えしているので、時限終了後の財源確保が課題になるなど、いろいろな問題が出てきている。個々の競争的資金のプログラムはしっかりと制度設計されていても、全体としての戦略性が欠けていた部分があるのではないか。いわゆる合成の誤謬ですけれども、さらに、時限付きプログラムばかりだったので、次々とテーマを変えていく必要があって、腰の据わった研究ができない。そして、多くの競争的資金プログラムは個人獲得型であり、運営費交付金が減って競争的資金が増えたといっても、それは教育研究インフラの構築のためには使われない。しかも、一部の特定分野の研究者に資金が過度に集中することとなり、多くの研究者の不満となっている。
 こういった背景から、運営費交付金と競争的資金を合わせた額は実は国全体で見ると微増ですけれども増えているにもかかわらず、大学執行部、多くの研究者、行政、社会と、研究費が必要以上に集中しているごく一部の研究者を除くすべてが不満を持つ構造になっている。これは非常に不幸であります。
だから、全体的に考えていただきましょうということで、ここから先は全くの私案ですが、せっかくですので御紹介させていただきます。最初に、将来的には科学技術関連予算の総額の増額を目指すというのは、私も同じであります。しかし、当面は現在配分している国費、運営費交付金と競争的研究資金をしっかりと守って、これをアロケーションすることによって、より効果的・効率的なシステムを作る自助努力をしましょうという提案であります。
 でも、総額を増やさないで変えるというのは極めて難しいわけです。身を切る部分が必要です。そのための提案なのですけれども、全ての競争的資金において直間比率を見直して、間接経費を付ける。それを研究システム強化など大学執行部のマネジメント経費とするべきではないか。更に組織獲得型の競争的資金制度を充実させる。個人ではなくて、組織獲得型のものです。その際に既存のプログラムを大括り化し、研究支援や若手研究者育成や研究環境整備など、大学の実情に応じた使い勝手の良い資金とすることを検討する。大学運営のための経費を運営費交付金と間接経費のデュアルサポートシステムと位置付ける。
 そして、これも大変重要なのですが、間接経費の位置付けを文科省以外の府省の競争的資金及び民間からの共同研究資金、財団からの研究補助金にも拡張する。本会議では文科省資金に限定して議論をされていますが、総合科学技術・イノベーション会議において文科省だけでなく全省庁の研究資金や民間からの研究資金に関しても議論してもらっているところです。
 さらに、大学の機能グループ別にデュアルサポートシステムを設計する。これはいろいろ議論があるかと思いますけれども、例えば世界水準大学は交付金割合を減らす。その財源を使って地域拠点大学は交付金割合を増やす。特定分野はバランス支援。どういうことかというと、東大とか京大とか阪大とか、そういうところの運営費交付金を削って地域の大学に回す。研究大学としての類型を選んだら、その大学は競争的資金で必死に頑張る。そういう構造を一つの考え方として提示してあります。
 これらの改革により、大学が自己改革を強力に進めるための基盤を作るというような方向に持っていくべきと思っております。ちょっと長くなりましたが、以上です。

 

【濵口主査】
 ありがとうございます。それでは、続きまして、西尾先生、短くて申し訳ありませんが、10分程度でお願いしたいと思います。

 

【西尾主査】
 西尾でございます。本日は、学術分科会で今般取りまとめました報告書について、特に本検討会に深く関係しますデュアルサポートシステムの再生についての説明を仰せつかっております。そこで、取りまとめの経緯や我々の問題意識等と併せて、報告書におきますデュアルサポートの再生についての内容をベースに説明をさせていただきます。
 まず、学術研究とは何かということにつきましては、表紙ページの下の部分に記述しております。個々の研究者の内在的動機に基づき進められるものでありまして、そこが戦略研究、要請研究とは大きく異なるところです。
 まず初めに、本報告書を取りまとめるに至った経緯をスライドの2ページから3ページを基に申し上げます。最近の我が国の学術研究を支えるシステムは弱体化してきております。特に、将来の人類社会の発展を支える苗床の傷みは尋常でないとの危惧が高まっております。昨年2月の学術分科会において、学術研究の衰退と、それが我が国の将来に及ぼす影響についての強い危機感を踏まえ、名古屋大学名誉教授の平野分科会長から、改めて学術研究の在り方等について抜本的な審議を行うことが提案されました。
 例えば、先般のノーベル物理学賞を受賞されました赤﨑先生は、企業から名古屋大学に移られて、大学という研究の苗床機関での研究継続によって、ほとんどの人たちが諦めていたGaN(窒化カリウム)系のLEDをものにされました。特に大学における初期の重要な研究段階は、講座費、つまり、運営費交付金で何とか研究をつないでいかれましたが、その基盤的経費の削減はずっと続いており、現在の状況については、私が申すまでもないところです。
 平野先生の御提案を受け、私が主査を務めてきました学術の基本問題に関する特別委員会を中心に、11回にわたり集中的な審議や、産業界をはじめとする各方面からヒアリングを行うことなど、議論を深め、今般、学術分科会として最終報告を取りまとめるに至りました。その報告書そのものは参考資料にございます。
 スライド4ページを基に、最終報告の問題意識と主旨について、ごく簡単に述べます。
学術研究は、これにより生み出される知と人材をもって、現在及び将来の人類の福祉に寄与するとともに、国際社会における存在感の向上に寄与しており、まさに「国力の源」であると認識しています。現在、知のフロンティアの急速な拡大や、企業等におけるオープンイノベーションの転換など、イノベーションの構造自体が変化し、熾烈な国際競争が展開される中で、卓越した知と人材を持続的に創出する学術研究への期待は今まで以上に増加しております。その一方、大学等の学術研究を支えてきた基盤的経費と競争的資金におけるデュアルサポートシステムは十分に機能しなくなっており、国全体の施策が短期的な、いわゆる出口指向の傾向にある中、教育研究現場が疲弊し、データ的に見ても学術研究が衰退の危機に瀕しています。
 以上のことを踏まえ、学術研究の社会的役割を改めて確認するとともに、その現状と課題を分析し、学術研究がより一層、社会における役割を果たすための国と学術界の改革の方向性を示したものです。
 学術研究を取り巻く現状と課題を見てみますと、まずスライド5ページのことが挙げられます。厳しい財政状態の中でも、科学技術関係予算は増加しているにもかかわらず、若手研究者のポスト不足を始め、大学等における研究環境は悪化の一途であり、人材育成にも影響を及ぼしております。また、ノーベル賞受賞に見られるような国際的に存在感を示す研究が行われてはきましたが、近年、論文指標の相対的低下や国際的に注目される研究領域への参画割合の低下等に見られるように、国際的優位性に陰りが見えております。これらの原因は、国と学術界双方の資源配分における戦略不足にあると考えられます。
 現状と課題を更に掘り下げていきますと、スライド6ページのことが挙げられます。具体的には、政府においては、予算、制度両面にわたって学術政策、大学政策、科学技術政策間の連携が乏しいと言えます。例えば基盤的経費、科研費、科研費以外の競争的資金について、学術研究の総合性や融合性を高めたり、国内外の優秀な若手研究者を育成・支援したりするために、それぞれの改革・充実、役割分担の明確化や連携を図るなど、全体最適化のための取組が十分にはなされてきませんでした。大学においては戦略的なビジョンに基づき、自らの教育研究上の強みの明確化と、学内外の資源の柔軟な再配分や共有を図る取組が十分に行われてこなかったといえます。これらのことが相まって、また、その帰結として、研究者や学術コミュニティーの意識が短期的視野で内向きになり、戦略的な対策が効果的には講じられてこなかったという課題があります。
 このような状況を打破し、学術研究が本来的役割を最大限に果たせるようにするための改革のための基本的な考え方として、スライド7ページに示す、以下のことが考えられます。
学術研究の現代的要請である挑戦性、総合性、融合性、国際性に着目し、多様性を進化させることにより、卓越した知の創出力を強化する。そのため、研究者の自立性を前提に、自由な発想を保障し、独創性を最大限発揮できる環境を整備するという基本に立ちつつ、これまでの慣習にとらわれず、人材や研究費等の資源配分に関する思い切った見直しを行うこと。
 若手研究者は柔軟な発想で多様な知の可能性に挑戦したり、国際的なネットワークへ参加したりする一方、中堅・シニアの研究者は学術界の先駆者として、率先して既存の伝統的な学問分野の枠を超えた領域を先導したり、若手研究者の挑戦を後押しし、次代の指導者となる研究者を育成したりするなど、各研究者がステージに応じた役割を意識して、学術政策、大学政策、科学技術政策が連携した施策を展開すること。
また、研究者養成だけでなく、広く社会でイノベーションを担う人材を育成し、知の創出・継承により国民全体の教養を高めるという学術研究の役割を重視すること。
 さらに、学術研究が社会からの期待に応えるため、社会と積極的な対話により、社会のニーズ等にも適切に対応した研究の一層の推進や効果的な情報発信を図るなど社会との交流を強化する、ということが重要です。
 これらの基本的な考え方を踏まえ、具体的な取組の方向性として、スライド8ページに挙げた9点について提言を行いましたが、本日は、今回の会議の議論に関係するデュアルサポートシステムの再生について紹介をさせていただきます。
 スライド9ページに示しましたように、まず、基盤的経費については、大学においてはIR機能の強化等を図り、明確なビジョンや戦略に基づいた配分により、その意義を最大化することが必要であり、その取組と相まって国が基盤的経費の確保・充実に努めることが必要です。
 科研費については、あらゆる学問分野について研究者に等しく開かれ、ピアレビューにより公正に配分されるなどの不易たる特徴を堅持しつつ、以下のような改革を進めることが必要です。
・ 分科細目表の見直しや大括り化、審査方式の再構築、科目の再整理等の基本的構造の見直し
・ 重複制限の見直しや海外在住者の帰国前の予約採択の導入等
・ 実力ある若手研究者の国際共同研究や国際ネットワーク形成の推進
・ 科研費の成果を最大にするための学術研究助成基金の充実
・ 研究成果の可視化と活用のためのデータベースの構築
科研費以外の競争的資金については、先ほど述べた基本的考え方を一つの横串として位置付けて改善を図ることが、各々の競争的資金の目的の最大化につながるという観点から、総合科学技術・イノベーション会議において改革について議論していただくことが必要です。本検討会は、総合科学技術・イノベーション会議における議論の前提として、競争的資金を多く担う文部科学省としての検討を行う重要な場であると理解いたしております。
 競争的資金による研究実施に伴う大学全体の管理費用として不可欠な間接経費については、競争的資金の拡充を図る中で確保・充実するとともに、大学において、より一層効果的に活用することが必要です。
 以上の観点から、学術政策、大学政策、科学技術政策が連携してデュアルサポートシステムの再生を図っていくということが必要であると考えます。
 説明は以上ですが、スライド10ページを参照ください。
最後に、繰り返しになりますが、国と学術界が一体となって、この待ったなしの状況を打破し、学術研究を推進していくことが是非とも必要です。学術界においても、我々自ら改革を積極的に進めなければなりませんが、文部科学省におかれましても、どうか、この1年を掛けて丁寧に議論してきました本報告書を正面から受け止めていただき、学術政策・大学政策・科学技術政策の一体的な推進を図り、大学等の教育・研究力の強化に努めていただきたい、と切に願う次第です。
 以上です。

 

【濵口主査】
 どうも先生、ありがとうございました。
 それでは、ここでこれまでの説明を踏まえて質疑応答に入りたいと思います。その前に、事務局の方でも、これまでの議論と今後の検討に当たっての観点を資料としてまとめていただいておりますので、まず、その説明をお願いしたいと思います。

 

【松尾振興企画課長】
 承知いたしました。資料7と8につきまして、続けて簡単に、キーワードだけ御説明申し上げたいと思います。
 まず、資料7でございますけれども、2枚紙、3ページものでございます。最初のページ、今、西尾先生がお話になった最初のところで、学術分科会のことを研究部会のことも込みでまとめさせていただいたものでございますが、こういったもののこれまでの議論をまとめたものがこの検討での出発点、土台となるものだろうということで、改めてまとめさせていただいたものということでございます。
 1ページ、学術分科会のことは、西尾先生が正に今、御説明になったので、省略させていただきます。
 真ん中辺に、実は科研費のことが書いてありますが、科研費改革の具体的な中身につきましては、参考資料2で御紹介させていただいておりますので、後ほど御参照いただければと思います。
 1枚おめくりいただきまして、2ページ目、1枚目の裏でございますが、大垣先生にお取りまとめいただいた戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会報告書、これは参考資料6で本体は配らせていただいておりますが、ここでは、キーワードだけ追っていかせていただきます。総論の中で、学術研究、知とかイノベーションの源泉、イノベーションの種を生み出す学術研究というのが重要であるとともに、その種を大きく育てる戦略的な基礎研究も重要であるということから、戦略的基礎研究の仕組みの深化をしていくことが必要だろうということで御検討いただいたものであります。
 主な指摘事項に移りますが、戦略目標というものを国が策定していくわけなんですが、の策定に当たって、ちゃんと科研費の成果などを踏まえてしっかり分析をして、戦略目標を立てていく。そして、どんどん飛ばしながら行きますけれども、その戦略目標を年ごとにしっかり見直していくという評価のサイクルをしっかり確立することが大事だと。
 最後の丸ですけれども、更に出口を見据えた戦略的な基礎研究を進めるに当たって、真ん中以降書いてありますが、学術研究などとの他の類型とのかかわり、交差も念頭に全体設計を図るような柔軟な運営が必要だという御指摘を頂いているところであります。
 これを受けて、戦略創造の事業につきましては参考資料3で配らせていただいておりますけれども、改革を進めつつあるということでございます。
 最後、3枚目でございますが、つい先日、報告書を野依先生の下でお取りまとめいただいた総合政策特別委員会のもののエッセンスを1枚にまとめたものであります。ここもキーワードだけ追っていきますけれども、最初の総論のところですが、デュアルサポートが原則であるというのはそのとおりで、その中で基盤的経費の減少、ずっと御指摘がございますが、そういった様々な問題、課題というものが指摘をされている。このため、基盤的経費と競争的資金の双方についての改革と充実を図ることが大事だということとともに、最適な組合せが常に考慮されることが必要だということです。
 主な指摘事項ですけれども、まず、基盤的経費の充実を図っていくことが重要とする中で、とともに、競争的資金についても、いわゆる研究型経費とシステム改革型経費というものに分けて、それぞれの性格に応じて改革を進めながら充実を図るべきである。研究型経費については、もちろん充実を、改革、整理、統合を図りながら充実していくということなのですが、先ほどからお話が出ている間接経費というものを全ての研究型経費に措置されるべきである。
 1個飛ばしますけれども、総合科学技術・イノベーション会議に主導いただいて、そういった政府全体での検討を行うことを求めさせていただいてはどうかということであります。1個戻って、それから、利用のルールの統一化ということは、現場にとって使いやすさという観点から極めて大事なことでございます。これもやっていかなければならない。
 それから、その丸の一番下の黒ポツですが、共用設備・機器等の共用促進という観点から、競争的研究費の審査・採択において、こういったことを要件としていくことを考えてはどうかということであります。
 それから、システム改革型経費につきましては、そのシステム改革の目的を担保できる仕組みを内在化することを前提とするべきではないかということと、それから、最後に、若手人材育成の観点から、研究代表者等への人件費支出の一層の促進であるとか、人件費の合算使用の検討でありますとか、先ほどとある意味では同じなのですが、雇用する若手人材の育成環境やキャリアパスの確保に関する観点をしっかり事業の審査・評価において重視をするということが大事なのではないかということが触れられております。
 これらを踏まえて、これらの具体化を検討していただくに当たって、資料8に主な観点ということでまとめさせていただきました。上3つ、丸の3つに考え方をちょっと書かせていただいておりますけれども、先ほど申し上げ、繰り返しになってしまうところは飛ばしますが、デュアルサポートにおいてこういった課題が出ています。その一方で、こういった学術研究、それから戦略基礎研究というものには社会から一層の期待が寄せられている。そのためには、これを発展させていって、我が国の持続的な発展のために貢献していくことが必要だということであります。
 したがって、新たな知というものがたゆみなく生まれるような研究活動を活性化して、卓越した研究成果が持続的に創出されるということと、次世代の育成を同時に図っていくということを検討していくことが必要ではないかということを考えております。
 こうした点に関しまして、委員の先生方から事前に頂いた意見を、事務局で3点、3つの切り口で勝手ながらまとめさせていただきました。簡単に御紹介しますと、1つ目が投資の充実とシステム改革ということで、大学とか、研究への投資というものの強化が要は必要なのではないかという御意見。
 それから、その投資を一層効果的なものとするために、システム改革はどのようなものが必要なのかということ。ずっと出ますが、若手研究者の挑戦を促す環境をどうやって作っていくか。間接業務というものから生まれる価値をどのように向上させていくか。
 2つ目の観点が仕組みでございますが、キーワードだけ言いますが、若手研究者というキーワード。そして、科研費の文脈で出てきました現代的要請や社会的要請に応える研究をどのようにしていくのか。間接経費の役割というものが何なのか。その効果的な活用について検討していくべきではないか。それから、施設の共用の話とか、資金の過度な偏在・集中についての排除について検討していくべきではないかということ。最後はデュアルサポートということで、基盤的経費と競争的経費のそれぞれの役割、その役割分担は一体どうあるべきなのかということと、大学の財源の多様化のことと、大学内での自立的な資金配分の在り方はどうあるべきなのかというようなことの御意見を頂いたので、まとめさせていただきました。
 済みません。以上でございます。

 

【濵口主査】
 ありがとうございました。それでは、自由に御発言。では、小安先生、どうぞ。

 

【小安委員】
 いろいろな御発表を伺って、私が感じたのは、皆さん持っている危機意識は同じで、問題点の捉え方も恐らく同じなのだと思います。これにどうやってアプローチしていくかというのが一番の問題であって、そこが恐らく議論の本質だと思います。ひるがえって考えてみますと、我が国は科学技術立国を目指していて、それによって、最終的には産業につながるという道筋を描いていると思うのですけれど、そう考えたときに、教育や研究が国の土台であって、そこへの投資は未来への投資だということに対しては、皆さん全く異存はないのだと思います。そこから生まれる新しい知と人材を供給して、初めて科学技術立国が成り立つということであって、ここをどうやってきちんとやるかということです。そう考えたときに、今ここで考えていくのは、大学、あるいは学術、科学技術の研究をどうやって支えていくか、そこに競争的資金をどういうふうに生かしていくのかということを議論しているのですが、これはよくよく考えてみると、科学技術振興費全体の問題ではないかと思います。つまり、今ここで言われているような大学院の運営費交付金と競争的資金だけではないと思います。新しい知と人材供給が絶たれれば科学技術立国も何もなくて、それがまさに絶たれるわけです。したがって、私は、これは科学技術振興費全体をどうやってアロケーションするかという、もっと大きな話を文部科学省にきちんと考えていただかなければならないのではないかという思いを非常に強く感じました。
 ですから、そういう観点で、今、問題点は皆さん同じに持っているわけですけれども、そこを非常に狭いところで、うまくこねくり回そうとしている議論に思えたので、ちょっとそれが気になったので発言させていただきました。

 

【濵口主査】
 ありがとうございます。研究費というのは、科学研究費補助金だけじゃないという判断ですね。もっと全体でということで。

 

【小安委員】
 全体です。

 

【濵口主査】
 研究3局、横串を入れていただいて、お話をしていただくというお話にもなっておりますので。甲斐先生、お願いします。

 

【甲斐委員】
 もう一つの観点からちょっとお話ししたいと思います。今日、皆様の参考として話してくださった方々の御意見にもありましたように、今は大学及び研究の根幹を担っている研究費問題、大学を担っている基盤的経費問題、そういうものが全て危機であるという観点は皆さん共通で持っていらっしゃると思います。橋本委員から御紹介のあった産業競争力会議でも、そういうことの危機からスタートしているということで、橋本委員御自身の感じられている危機は全く我々と一緒で、大変心強く思いました。
 それに対して、この委員会で議論しなきゃいけないことが、小安委員の言われたように、とても狭くなっているという感じがいたします。競争的資金と、あるいは間接経費と運営費交付金をどうするかとか、そういう問題をいきなり議論しなければならないのかなと。もう少し大きなところから話さないと、この危機は回避できないのではないかと思います。
 永田先生や藤巻先生のように、大学の方からの案というのも出てきました。橋本委員からも、そういう大学の案を聞きながら十分に検討すべきだと。これは大変いい方向性だと思います。この議論の最初の切り口になっています産業競争力会議から出ている大学の3類型化というのがありますね。これがこれからの議論にすごく影響してくると思います。運営費交付金と競争的資金をどうするかということに関しても、どこに集中するかとか、どういうふうにして選ばなきゃいけないのかということがかかわってきてしまうので、この問題も、各大学の意見を聞きながら検討すべき大きな課題ではないかなと思います。大学の形を変えるというのは、競争的資金とか、運営費交付金のお金の配分を考えるよりも、もっと大きな問題です。
 これまで日本が培ってきた大学の在り方というものがありまして、これを大きく改革してしまう。3類型化にするというのはそういうことだと思います。永田委員のお話にもありましたように、地方の大学の形が変わってきてしまいます。大学の形は100年の計ですので、ここ数回の議論で考える問題でもないし、今の時の政府が期限を切ったとしても、数か月で結論の出る話題なのでしょうかと思います。
 もっとじっくり各大学からの意見を聞きつつ、改革案を出しつつ議論すれば、ほかの改革案もあるのではないのかな。本当に3類型化が1つなのだろうかという気がいたします。
 橋本委員にお伺いしたいのは、この3類型化にすれば、今のどの問題が解決されるとお考えなのか。もう少しお話しいただけますか。

 

【橋本委員】
 まず、3類型化は、産業競争力会議が今、そういう方向性を出しましたけど、それは、元々は文部科学省の国立大学改革の中に出てきたものをベースに作っていますので、それは御理解ください。すなわち、素人が思い付きで提案したという話ではありません。一昨年11月の文部科学省の国立大学改革の中に出てきた3類型をベースに、産業競争力会議でもそういう方向が出ているので、この方向でしっかり考えてくださいとお返ししているわけです。今、高等教育局の方でこれと同じような会議をやっておりまして、私はその委員でもありますけれども、そこで、ついこの間、文部科学省においては86国立大学の学長全員と個々にお話をして丁寧な議論を進めるということを言っておられました。これは先週の産業競争力会議の分科会でも、国立大学86大学としっかりと検討してくださいとペーパーで出して文部科学省にお願いしてあります。本日の資料でもご確認いただけます。それを今、吉田高等教育局長が全ての国立大学との日程調整を終えて議論していると言っていましたので、しっかりとした議論をしていただけるものだろうと思っています。
 それで何が変わるのかということですけれども、もちろんそのことだけで全てが変わるとは思っておりません。まず第一歩として極めて重要なのが、86大学一体的に動かすということ、規模も特徴も大きく異なる大学がみんな同じような形で議論してくるということの限界を強く感じているわけです。ですので、似たような大学で類型化することを考えているわけです。それは大学にとっても、これから評価を通じていろいろ資源配分等も変えていこうという中において、似たところ同士で競っていただいた方が大学にとってやりやすいだろうと思いますし、その方が全体として良くなるのではないでしょうか。86大学全体を同じ土俵で評価するよりは、よりやりやすいのではないかということです。もちろん、類型化をすることで全部解決するわけではありません。またそれぞれの評価軸をどのように設定するのかということが決定的に重要です。これらについて今慎重な議論をお願いしているところです。

 

【甲斐委員】
 済みません。何が変わると。どこが改善されるか、もう少しお願いします。

 

【橋本委員】
 現状、大学はいろいろと問題を抱え、行き詰っているわけですよね。各大学でこれから今の状態をいろいろな意味で変えていただかないといけないわけです。いろいろな意味というのは、今日も申し上げましたけど、例えば運営費交付金。これが行き詰っている。だから運営費交付金の増額をお願いするといっても簡単には認めてもらえる状況にあるとは思えない。であるならば運営費交付金と競争的資金のデュアルサポートシステムをうまく使うような改革を進めていこう、ということを申し上げてきたわけです。これらの資源を一体的にとらえ、大学自らが最善を尽くして改革を進め、投資効率が上がったと社会から認めてもらえるような変革をし、それによって、さらなる資源を呼び込む、こういったストーリーを考えているわけです。そのためには、競争的資金の獲得が一つの大学の重要な力になるわけですが、これは、やはり東大のようなところの方が、地方の大学より強いわけです。ですから全ての大学が同じ土俵で競争するのではなく、ある程度グループ分けをしたうえで、機能の近い大学間で競争を促そうということです。すると各大学が自らどういうところを中心にやっていくのかを考えていく中で、さらに機能強化が図られていく、例えば、そういうことです。

 

【甲斐委員】
 ありがとうございます。済みません。今お答えになったことは競争的資金の制度を変えていけばいいことなのではないでしょうか。つまり、別に大学を類型化しなくてもいろいろな案が出てきそうな気がいたします。3類型化という案はどういう根拠で議論されたのでしょうか。まだまだこれからの議題ではないでしょうか。もし文部科学省から出た案であれば、文部科学省の方から説明していただきたいです。

 

【常盤研究振興局長】
 では、私の方から。本来であれば高等教育局の方から御説明した方が正確な御説明ができると思いますが、私も高等教育局の審議官をしていたということもありますので、私の方から。
 正確性という点で少し欠けるところはあるかもしれませんけれども、義本審議官は先ほどまでいたんですけれども、ちょっと都合で抜けていますので、私の方からお話をいたしますが、そもそも大学改革の議論については、さかのぼると平成24年の6月だったと思うんですが、大学改革実行プランというものがありまして、それは、大学自体が今、大学を取り巻く社会環境が大きく変化している中で、そういう環境の変化というものを踏まえながら、大学がより機能を強化していくためにはどう在らなければいけないのかということで文部科学省としてプランを作りました。
 そのプランに基づいて国立大学の部分について申しますと、いわゆるミッションの再定義というものが行われました。それはどういうものかといいますと、各大学が、今の86の大学が全く同じ目的を持って動いているわけじゃないわけですので、置かれている状況も違いますし、規模も違うので、その中でそれぞれの大学が強みとか、特色とか、あるいは社会的な役割というものをこの変化している時代の中でもう1回、再定義しようというような試みを確か1年ぐらい掛けて各国立大学とやり取りをしながら、しかも学部単位ぐらいのきめ細かさを持ってそういうやり取りを文科省と各国立大学で行わせていただいたという経緯がございます。
 それを踏まえて、これは一昨年の秋から冬にかけてだったと思いますけれども、先ほど橋本先生がおっしゃった国立大学改革プランというものを文科省としてまとめて、その中で各大学の機能強化の方向性ということで、例えば世界最高の教育研究の展開拠点とか、あるいは全国的な教育研究の拠点であるとかという、このときも3つの方向性が示されていたわけですけれども、そういう方向性を示して議論が進められてきているということがございますので、この間のプロセスについては、しかもそれを踏まえて先ほどお話がございましたように、国立大学の運営費交付金という立場については、高等教育局の方で昨年の秋の初めぐらいからでしょうか、第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会というものを設けて、より具体的に3つの大きな方向性というものを運営費交付金の中で具現化していくためにはどういう評価の軸があるのかというようなことを議論を重ねているというのがありますので、その間の経過等については、可能であれば次回にでも、また高等教育局の方から経過についてはお話をさせていただいた方がよろしいかと思いますけれども、そういう議論はそういう議論でこれまでの経過を持って進んできているというところがございます。それと競争的資金との関係をどういう形でより、まさに大学政策と学術政策と科学技術政策が連続するような形でどういうふうに考えていくのかということが競争的資金の側での御議論をこの場ではお願いできればということで進めさせていただいているということでございます。

 

【甲斐委員】
 済みません。各大学全部がこの3類型化をのんでいたというのは初めて知りました。

 

【永田学長】
 今の経緯そのものだと思います。つまり、初めの文言は拠点とか、観点だったものが大学に変わっているんです。それには大学は誰も合意をしてないんです。述べられている観点に重点を置いてやっていただくということについては、全然、問題ないと思います。これはここが強い大学、しかし、あなたは地域に貢献する大学というのはないと思います。そこの大学に誰が行きますか。

 

【橋本委員】
 いや、そういう議論にはなっていないです。それは間違っています。

 

【永田学長】
 いやいやいや、違いますね。それは、もしそうだったら、初めからこの3つの観点で、それに伴う指標でやるんだということではないのですか。大学に対する評価軸というのも出始めていますよね。

 

【橋本委員】
 それは、今、議論中ですよ。

 

【永田学長】
 議論であったとしても、大学という言い方はやめましょうよ。3つの観点から大学の機能を考えるというのが正しいと思います。

 

【橋本委員】
 言おうとされていることが分からない。

 

【永田学長】
 それは橋本さんの言っていることは、僕は分かりません。3つの大学じゃないですよ。3つ観点から、強い、弱いはあってもいいと言っているんです。3つの観点で考える部分については、誰も文句を言ってないです。賛成です。それは世界水準のこともあるだろうし、ナショナルセンターになる部分もある。地域に対しても貢献する部分もある。それらは大学の基本です。教育・研究と社会貢献をしなきゃいけないです、大学は。だから、それらは当然だと思います。ただ、各大学を個別の文言で縛ってどうするのでしょうか。本当にそうなったときに、学生の視点で考えてください。大学の一番のステークホルダーは学生だと思います。あるいは今後入ってくる学生たちです。地域の大学と言われて入る若者はいないです。我々が育てた学生たちはどこに研究に行くのでしょうか。みんな世界を狙って研究をやっています。そうであることに非常に力を入れている。しかし、同時にこれもやっている、あれもやっているというのが大学だと思います。

 

【橋本委員】
 そういう議論ですよ。何か誤解しているんじゃないですか。

 

【永田学長】
 いや、そういう議論は一度も聞こえてきません。

 

【橋本委員】
 そういう議論をしているんです。

 

【永田学長】
 僕にはそういうふうには聞こえていません。ですから、意見として申し上げています。そういう観点で考えることに関しては、個々の国立大学は当然考えていると思います。どんな小さなことでも世界と戦うことはできるし、あるいはどんな大きな大学でも地域に貢献をするのは当たり前だと考えているはずです。そういうふうな議論があって、その比率がどうのとか、あるいは何かが得意な大学というのはあっても構わない。そういう議論にはなっていないと思います。そこのところが一番の問題です。ですから、そういう背景で、ここに書いてあることはあり得なくて、一部の大学、世界水準の大学ですか、の交付金は減らすなんていうのはどうしてでしょうか。それは世界を目指すから減らす、それは競争的資金が取れるから。でも、その大学が教育ができなくなったら終わりです。東京大学こそちゃんとした教育をして、学生を立派に育ててほしい。その中で全部間接経費に頼らなくてはいけないような設計をするとしたら、おかしいのではないでしょうか。安定に絶対にここだけは譲れないという高等教育というのがあるはずで、それが大学が設置されたときのそれぞれの大学の要目です。このような考え方で、大学の機能を検討するのはいいと思います。だからといって、その観点だけを大学に張り付けるのは良くないと思います。

 

【橋本委員】
 だから、違いますよ。その観点だけでなんて言ってなくて、3つの大きな軸があって、大学によってどの軸を主とするのかということです。どれかだけを取るとは言っていません。

 

【永田学長】
 橋本さんは、世界基準大学は交付金を減らすとお考えになっているじゃないですか。

 

【橋本委員】
 はい。

 

【永田学長】
 どういう意味でしょうか。それぞれみんな世界基準のものを持っているという前提で、今、話をしていませんでしたか。

 

【橋本委員】
 そうですよ。だから。

 

【永田学長】
 どういう評価でこれを減らすんですか。文言に矛盾があります。世界基準を持つ分野に関しての運営費交付金を減らすというのは。

 

【橋本委員】
 ちょっと議論がかみ合わないですね。

 

【濵口主査】
 大前提として、この3類型にどうしてもみんな今、頭が行くのですけど、話を元に戻してみると、国立大学法人化当時は、むしろ言われていたのは大学の統廃合をどうするのかということなのですね。その次、言われたのはアンブレラ方式。これは2年ぐらい前に言われています。今、統廃合もアンブレラも全部吹っ飛んで、3類型になっている。これは大学の現場としては全く分からないのです。一体どうするのか、グランドデザインが決まっていないなと。統廃合をやるならやるで、本気でどこがどういうグランドデザインでやるかということを提示していただかなきゃならんのです。それがみんな逃げている。

 

【知野委員】
 よろしいでしょうか。大学の人間ではないので、少し戸惑って聞いていました。いろいろな理念の応酬であるとか、競争的経費だの、間接経費だとかの、いろいろなものが飛び交っていたためです。取材をしていて、大学の先生方から運営費交付金が削られて苦しいというお話なども耳にしておりますけれども、今日、配られた資料を見ますと、橋本先生の資料にもありましたけれども、財源の推移では、トータルでは増えているという数字が出ています。そうすると、では、苦しいと言われる理由や、どこに問題があるのかということがまず分かりにくいです。また、今回の会議では2つの大学からヒアリングされましたけれども、なぜこの2つの大学なのかが私にはよく分からなかったです。研究費に関して代表的な国立大学、あるいは典型的な大学ということでお呼びになったのか。今後、またどこか他の大学からもお伺いするのでしょうか。
 それから、未曾有の危機であるとおっしゃっていますけれども、それが具体的にどういう危機なのであるかというところが、いま一つ分かりにくいです。先ほど出された資料で、競争的経費、間接経費とか、競争的資金、競争的経費とかいろいろあって外から見ると分かりにくいです。間接経費に関していろいろと問題を書かれていますけれども、それができないのはどうしてなのか、心理的なものなのか、何か制度が引っ掛かっているのか、あるいは法律が引っ掛かっているのか、そこのところも含めて、まず皆が共通認識を持てるような、全体図を描くところから始めた方がいいのではないかと思います。
 以上です。

 

【濵口主査】
 御指摘のとおりであります。図をどういうふうに描くか、まだ、これから国立大学協会からも発表していただこうと思っていますし、それから、財界の方から、産業界の方からも御意見をストレートに頂かなきゃいかんと思いますが、あと、JSTとJSPSです。いわゆる科研費を配分しているマネジメントをやっている場からの御意見も聞くという方向で今、準備を進めております。大学側は、とりあえず周辺にあって、すぐお話を出していただけるところをちょっとお願いしたところでありますが、御発言いただいていない先生方で、まだ。角南先生、どうですか。

 

【角南委員】
 科学技術政策の観点からみると、若い研究者が将来、研究という道を選ばなくなってきて、その理由が安定的な職業じゃないと感じているところが問題だと思うんです。我々に突き付けられている課題はもう切実で、これをどういうふうに知恵を出して乗り切るのかということをみんなで議論するという目的に共有しておかないと、議論が絡み合わないような気がします。

 

【濵口主査】
 ありがとうございます。それでは、竹山先生。

 

【竹山委員】
 現在までの議論で困惑しております。各論の話をするのか、総論なのかをはっきりさせていただきたいと思います。様々な委員会が関連した内容をもちながら設置されていると思いますので、委員会の全体像を1回、見せていただいた上で、本検討会がここにいるのだということを皆様で認識したほうがよいと思います。本検討会では、開催時に研究費の枠組みの説明とともに討議するべき事柄の説明を受けており、委員の方々も理解しているかと思います。しかしながら本日の話を聞いていますと、それ以前に、この委員会の位置付けがどこにあるのかということも理解する必要がありそうです。本検討会の委員も様々な委員会に出ていらっしゃって今、検討が進んでいる事柄の情報量が異なるようです。情報共有の効率化を事務局も少し努力していただければと思います。

 

【濵口主査】
 どうぞ。

 

【竹山委員】
 あと1点だけ。若手への研究費に関してです。経験からしますと、科学研究費補助金も含めて確実に若手の研究費は増えていると思います。それでも足りないというお話かと思いますが、もう少し数値で示す必要があるかと思います。若手研究者数、その内訳として任期有り無し等、その増加率の数値情報があれば不足の状況もわかりやすいかと思います。また、「安定」という言葉がよく出てきますが、過度の安定は質の低下を招きますのでそれなりの考え方が必要だと思います。
 事務局で関連資料を準備できるのであればお願いしたいと思います。

 

【濵口主査】
 数値的なバックグラウンドをなるべくはっきりさせるということと、ターゲットとする議論の対象はどこまでか、境界点はどこなのか、ここはなかなか難しいところがあるのですけれども、なるべくもう一度、情報を整理していただくということをお願いしたいと思います。ほか、大垣先生、いかがですか。

 

【大垣委員】
 非常に広い議論をしておりますので、少し私なりの考えというか、整理の仕方を考えますと、言葉の使い方なのですが、西尾先生から御発表があったように、学術研究というのが大学の1つの基礎としてあって、その学術研究をどうやって維持し、大学というものを育てていくか、そのために何をしたらいいかということがまず先にあると思います。
 もう一つ、学術というキーワードは、ある場合には、実は学術分野というのは様々でありまして、私のいるところの工学系ですと、実はイノベーションのこの科学技術イノベーション政策というのはぴったりで、私もCRESTの研究総括をしていますが、それとは違う社会科学分野とか、人文学分野、あるいはいわゆる理系でもいろいろな分野がありますから、そういう学術分野ごとの実態が、何が苦しいのかということですが、それを少しクリアにするのは、データ上、出すのは大変難しいと思いますけれども、頭に置いて、まず日本の学術分野をどうするかということがあって、その上で産業政策としての科学技術イノベーションというのは当然やらなきゃいけないわけです。大学がそこに協力しない限り日本の科学技術イノベーションは起きないと思いますので、そこはやるわけです。そうすると、イノベーションの方から見ますと、超長期的な投資としての基礎研究へどうやって投資していくかということとして大学の学術研究というのを位置付けることもできます。ちょっと、それぞれゆがんじゃうかも分かりませんが。少し整理の仕方を、競争的資金の議論をするのですが、そのお金を何に使うのかというあたりをきちんと整理しないと議論が空回りするのではないかなという気がします。
 要するに、間接経費の議論は、実は学術研究にどうやって支援するか、あるいは競争的研究の中の超長期的な投資にどう使えるかという予算として位置付けるものではないかなという気がいたします。
 以上です。

 

【濵口主査】
 ありがとうございます。いかがですか。

 

【井関委員】
 私も、意見は今まで先生方が言われたことと同じなんですけれども、あと、もう一つ、本当に私が怠慢でいて申し訳ないのですけれども、この先、例えば10年後、20年後あたりの大学と学生数の関係というんですか、そういった試算というのはもう出ているはずで、本当に少子化だということで、これから大学は大変になるんだろうなと。入学者も減ってくる、入試倍率も減ってくる。今回も、国立大学の前期試験ですけど、倍率が平均では今までの中で一番低くなってしまいましたね。当然なんですが、ですから、そのあたりの試算というのを、簡単で構わないのでもう一度、出していただけるといいかと思います。私が現実を直視できず、夢を見ているのかもしれませんので、出せる範囲で出していただけると、少しどういうことが問題であるかということが見えてくるかなという気もいたします。

 

【濵口主査】
 そこの一番難しいところは、実は大学進学率が日本は50%ちょっとぐらいなんです。OECDでも低いのです。

 

【井関委員】
 本当はもっと上げたいというところですか。

 

【濵口主査】
 いや、上がるかもしれないし、上がる報告もあるかもしれない。例えば韓国並みに90%に持っていったら、すぐ倍になるわけですね。

 

【井関委員】
 はい。そうですね。

 

【濵口主査】
 ここは難しいのです。現状で固定して考えると、2032年までに17万人減ると考えられる。この17万人はどれぐらいのボリュームかというと、国立大学86校が大体8万人です。公立大学が2万人です。両方合わせて10万ちょっとなのです。それで吸収できない。それぐらいのすごい勢いで減っていきます、このまま行けば32年まで。だから、今から15年ぐらいで一気に行きます。これだけ未曾有の変化に対して、日本がどういう戦略を持ってやっていくのか。従来と不連続なことをやらないと、もうもたないと思います。
 単に縮小するために、例えば国立大学を小さくして、入学人口に合わせたサイズにしたら、ますます科学技術政策が衰えて、イノベーションはできなくて、借金だけが増大する。国立大学を私立化したって1兆円しかないのです。社会保障費は年間1兆円増えておりますので、1年分しかありません。ですから、結局、そこをのり代にすると言ったって、かすみみたいなものです、全体の赤字から言ったら。もっとグランドデザインが要るのですけど、それは、我々が考えることではないのです。

 

【井関委員】
 はい、それは。

 

【濵口主査】
 どういうオプティマルな研究費の設計をし直したら、我々はもっと活力を出せるのかというところに議論を絞りたいですね。そのためには、研究費と言われるところは、競争的資金は全部横断型で、例えばリーディング大学院みたいな、あれは教育だと言われているけれども、これも競争的に取っていますから、そこもどうするかというようなことも視野に入れて議論ができるか、できないか。そのためには文科省の局を横断して議論を受け止めていただけることが必要であるし、我々も、ベースラインの危機感は本当に共通ですし、橋本先生の言っておられることも、私はよく分かりますので、そこからどうすべきかというところをもうちょっと、もう一段、知恵を絞れることができるかどうか。それを数か月でできるかどうかというチャレンジを受けておるので、頑張っていただきたいと思います。済みません。大変マネジメントが悪くて、お時間になってしまったので、今日はこれでタイムアウトにさせていただきたいと思います。
 最後に、事務局から、第2回の会議の予定について連絡をお願いしたいと思います。

 

【松尾振興企画課長】
 恐縮でございます。次回でございますが、冒頭に申し上げましたとおり、3月4日、水曜日の5時から7時にお願い申し上げたいと思います。
 あと、1点だけ、知野先生からお話がございましたけれども、データに関しまして、今回、参考資料10ということでデータ集というのを配らせていただいております。これが全てだとは全く思っておりませんけれども、参考資料10の最初の方に、大学の財務、財政に関するデータを今、集められるものだけ集めております。全体でどうなっているか。それから、特徴的な大学に分けて、例えば東大と新潟大と学芸大でどうかとか、そういうものもデータ、とりあえず、今日の時点で付けさせていただいております。また充実していきますけれども、御参考にしていただければと思います。
 以上です。

 

【濵口主査】
 どうも今日はありがとうございました。非常に率直な議論ができたと喜んでおります。引き続きよろしくお願いします。

 

―― 了 ――

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