資料2-1 ILCに関する欧州との意見交換について

1.概要

 欧州において、EU(欧州連合)及びCERN(欧州合同原子核研究機関)の枠組みの中でも重要な役割を担っているフランス及びドイツと、国際リニアコライダー(ILC)計画に関して意見交換を行った。


2.意見交換概要

○フランスとの意見交換
開催:平成30年3月16日(金曜日)
出席:[日本側]文部科学省研究振興局担当審議官、基礎研究振興課長、素粒子・原子核研究推進室長
          在フランス日本国大使館書記官
    [フランス側]高等教育・研究・イノベーション省(MESRI)大型研究施設部長 他


先方の主な発言:

  • 欧州において大規模プロジェクトの実施の決定に当たっては、EUは判断する役割を持たない。CERNにおける欧州戦略改定※の議論が影響力はあるものの、あくまで科学的な答申であるため、それにより決定されるわけではない。 
  • フランスの大規模プロジェクトの意思決定においては、他の科学的プライオリティ、技術的・社会経済的インパクトに関連した財政課題などの他のパラメータを考慮する必要がある。
  • 仏国内の研究者の感触では、LHCの結果を受けて、500GeV ILCにおいても標準模型を超える新粒子が見つかる兆候は得られないだろうという印象。250GeV ILCではヒッグス粒子の精密測定がクリアにできるという意味では意義がある。一般的には、プロジェクトのコストと期待される科学的成果のバランスが取れている必要がある。

   ※次期素粒子物理欧州戦略は2020年5月策定




○ドイツとの意見交換
開催:平成30年5月9日(水曜日)
出席:[日本側]文部科学省研究振興局担当審議官、基礎研究振興課長、素粒子・原子核研究推進室長
          在ドイツ日本国大使館書記官
    [ドイツ側]ドイツ連邦教育研究省(BMBF)大型施設・基礎研究部長 他


先方の主な発言:

  • ILC計画が、CERNが調整する素粒子物理の次期欧州戦略に掲載されるためには、国際的なコンセンサスとコミットメントが必要である。また、仮にILC計画が掲載され、推奨された場合においても、第一には、CERNを通じた欧州からの貢献について検討すべきである。その上で、ILC計画へのさらなるドイツからの貢献の可能性を決定するためには、ドイツのロードマッププロセスにおいて十分な時間をかけて審議する必要がある。
  • ドイツの大規模プロジェクト意思決定システムについても、日本と同様の仕組みがあり、科学審議会(WR)の科学的な評価に基づき、ドイツ連邦教育研究省がロードマップを決定する。このプロセスでは、すべての分野の大規模研究プロジェクトが、期待される科学的・技術的メリットだけでなく、期待される社会経済的インパクトも考慮して優先順位付けされる。
  • ILC計画については、独国研究者は科学的な関心を有しているが、計画見直しで500GeVから250GeVになったことにより、可能性が制限されることから、本当に新しい物理が拓けるのか慎重な意見がある。
  • 大規模プロジェクトにおいては、いくつかの事例において、当初のコスト見積りが実際のコストとかなり差があり、予想外の追加経費がしばしば発生することが問題である。また、運営に当たっては、大規模プロジェクトを立ち上げて運用した際の知識や経験に基づくプロフェッショナルなプロジェクトマネジメントが要求される。

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研究振興局基礎研究振興課素粒子・原子核研究推進室

(研究振興局基礎研究振興課素粒子・原子核研究推進室)