参考資料 第8回国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議議事録(抜粋)

国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議第8回(平成29年12月5日)議事録(抜粋)

議題2 ILC計画の見直しについて

中田教授・・・中田達也リニアコライダー国際推進委員会(LCB)議長、スイス連邦工科大学ローザンヌ校教授

【中田教授】
…(略)…
 さらに、そういう国際協力の場合、XFEL、ヨーロッパの自由レーザー加速器や、FAIR、これは重イオンの加速器ですが、それらを見ますと、両方ともドイツに建設されていて、ドイツのコミュニティがこういうものを作りたいと自国に提案して、国の方でも、もし外国から協力があるようなら、ドイツとしても進めてもいいという状況になりました。それで、ドイツが、まず自分たちがこれをやりたいんだ、自分の国に作りたいんだ、でも、国際協力でなければできないので、誰かほかに一緒にやりませんかという提案をし、お金を集めて作ったというのが歴史的な発展だったわけです。お金としても、free electron laserの場合には、ドイツ連邦、州、ハンブルク市、それが全部で58パーセントぐらい。FAIRの場合には、ドイツ連邦と州ですが、それが75パーセントぐらい。60パーセントぐらいの割合のお金をまず国内で集めた段階で、では、みんなで一緒にやりましょうという形ででき上がったという例があります。
 LCBとしては、現実的に考えた場合、今の段階では、ドイツが前にXFELやFAIRのときに行ったような原則に基づいて、加速器をホストするということをまず日本がそういうことをやってみたいんだということを提示されることが大事なのではないかと。それが提示されれば、ヨーロッパ、アメリカ、ほかのアジアの国でも、では、それで一緒にやりましょうという、そういう交渉が始まると思いますし、それから、特にヨーロッパの事情ですと、やりたいということで自分たちの国ともいろいろと話をします。そういう話をするときに、やはり具体的に、では、どのくらいの規模で、どのくらいの程度のコントリビューションをしたらいいのか、できるのかという話し合いをしようとする場合に、ホストのはっきりとした意思が出ていないと明確な議論ができない。だから、日本がやりたいということを明確にすることによって、有益な議論が始まるのではないか。それがLCBの考え方です。
 それを受けて、ICFAがコメントを出しました。そのICFAのコメントというのも、やはり我々の出した結論を支持して、日本が、日本のイニシアティブによって国際プロジェクトとして、250GeVのヒッグスファクトリーをなるべく早くできるような形でやっていただく、そういう奨励をしたということであります。

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【観山委員】  どうも、御報告ありがとうございました。
 資料3-1の結論という1枚の文章がありますね。これを見て、第1パラグラフ、第2パラグラフ、第3パラグラフと分かれていますけれども、今までのTDR等の資料から思うと、奇異に感じるのは第3パラグラフです。今、御質問にあった、「最近の同様の国際プロジェクトの例では」とまず引いてあって、それはXFELとFAIR計画とあります。それらは、ドイツと主にロシアが経費投入した計画で、ドイツが最初やりたいという計画だった。その計画の部品数などを考えるとILCの10パーセントぐらいなので、それなのに、同様のというのが。やはり一桁違うのではないかなということです。まず質問は、こういう第3パラグラフみたいなものは、もともとのILCが500ギガ電子ボルトの計画であったときにも、LCBからこのような表明があったのでしょうか。

【中田教授】  このような部分というのは、どういうことですか。

【観山委員】  要するに、ここでは「相当」と訳されておりますが、英文はmajority contributionですから、過半というか、大半のコントリビューションをホストが出さなければいけないととらえることが出来、その表明が日本からあれば、それに基づいて交渉が始まるとかいうような意味に感じます。そのような文章が以前のLCBからの表明にもあったのでしょうか。

【中田教授】  コストについては、前のLCBの結論を見てみますと、コストについては、インフラストラクチャーですね。いわゆるトンネルとか、建物とか、そういうもの。それは当然ホストがやらなければいけない。それから、加速器の部分があると。加速器の部分は、例えば、3つのリージョンでやるとしますね。その場合には、ホストが3分の1、残りを2つのリージョンでやる。そういう計算がいいのではないかという提案はしています。

【観山委員】  いや、提案はいいのですけれども、要するに、LCBとして、今後の方向性のようなものが第3パラグラフですよね。こういう部分があったのですか?

【中田教授】  それをLCBが出したかどうか?

【観山委員】  そうです。つまり、この250ギガ電子ボルトの提案に対するLCBからの結論というときに、この文章が入ってくるのだとすると、非常に奇異に思うのです。私は体制やマネジメントの部会で座長をやりましたので、そのときILCのいろいろな前提をお聞きし、まずは、ILCは国際協力事業であることでした。それから、もちろん、インフラストラクチャーとか、そういう部分については、結構ホスト国がコントリビューションしなければいけないのが加速器関係の国際事業の通例であることも報告を受けました。また、例として、いろいろな計画を部会で議論しましたけれども、マネジメントのことで。核融合のITAR計画では、ホスト国の建設地の引っ張り合いがあって、ホスト国のコントリビューションが大変高くなったというような事情も報告を受けました。しかし、ILCに関する我々の前提としては、国際協力事業であり、もちろん、ホストのコントリビューションは高いかもしれないけれども、全体として50パーセント以下に抑えて、非常にたくさんの国が参加するという計画であるとの感覚を持っていたのです。しかし、これだと、過半のコストをホストが払わないと話も進まないということを書かれているようで、前提として、今までの状況と大分変わったなという感じがするのですけど。
 だから、500ギガのとき、もっと高い計画のときに、どんな状況になっていたのか。それから、小さくなったとはいえ、ドイツでやられているような二つの計画よりも、今の計算で言うと、やはり一桁違う計画であると思います。したがって、一桁小さい計画と同様に、ホスト国が大半の寄与をするべきと言うのは、これまでの議論とはずいぶん変わったと思うのです。

【中田教授】  一桁じゃないですね。XFELが粗12億ユーロ、250GeVILCが粗48億ユーロだから、ファクター4ですよね。

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【観山委員】  私が言いたいのは、何を言いたいかというと、最近の同様の計画とあるところで、これはILCが規模的にXFELやFAIRと同様の計画なのかということです。

【中田教授】  同様の計画ということを言っているのは、LCBの解釈として……。

【観山委員】  つまり、反対に言うと、XFEL(1,600億円ぐらい)程度で、ドイツが最初に始めたいという計画と、ILCが同じような計画と考えられるので、ILCでも、ホストがたくさん出して、みんなを招待すれば協力の話になりますよというふうに読めるのです。でも、私はやはり、XFELなどはILCと同様の計画ではないし、もともとが国際的なプロジェクトなので、初めは日本が提案したのかもしれないが、すばらしい計画なので各国が多数参加したい計画となったと思っていたのです。計画を縮小したからと言って、過半出さないと今後の話になりませんよとLCBから言われるのは非常に奇異な感じがします。
 私の印象ですから、これ以上は結構ですけど。

【中田教授】  ただ、やはり誤解があるとまずいと思いますので、はっきりさせたいのですが、さっき言ったように、加速器の部分の中の特に超伝導に関した加速器の部分だけが10パーセントなのであって、それが全部の加速器を作るだけの10パーセントと取られると、これは間違いですね。全部の加速器。

【観山委員】  いや、コストのことだけを言っているのではなくて、先生は、このILCというのはXFELとかFAIRとかと同様の計画だと思われているのですか。

【中田教授】  同様の計画という……。まずこれは私が思っていることではないですから。これはLCBの結論として出たことで、まず私の個人的なことではありません。それははっきりさせておきます。
 LCBの観点では、これで議論して、こういう結論が出たというのは、つまり250GeVで作ろう、そういう計画、そういうイニシアティブというのは、日本の物理学者が明確に出してきたんですね。それが今までの前の500GeVのときに比べると、日本がこれを、少なくとも学者のレベルで、日本はこれでやりたいというのがはっきり出ていて、それは、そういう意味で、LCBで見た場合に、例えば、こういうリニアコライダーと、XFEL、free electron laserを一緒に掛けたようなものでテスラをドイツがやりたいとまず言い出して、FAIRの場合にもドイツがまずやりたいと言い出して、それを政府と話した場合に、全部うちでやるのは大変だから国際協力でやろう、それで発展していきました。ドイツがこれを提案して、うちでこういうことをやりたい、一緒にやりませんか、それで最終的にでき上がった。
 そういう意味で、LCBで議論したときに、今回の125GeVというのは、本当に日本が非常にイニシアティブを取っている、学者のレベルですけれどもね。そういう意味で、似ているのではないかということです。

【観山委員】  では、規模とか、そういう面では。

【中田教授】  規模は4倍程違いますよね。

【観山委員】  3倍なのか10倍なのか知りませんけれども。分かりました。その同様というのは分かりましたけれども。我々の認識としては、これまでのTDR等で説明された形としては、もちろん、国際的なコミュニティの中で日本が最初にアピールした計画だけれども、国際的な事業としてILCをやっていきたいというイメージが非常に強かったので、過半のコストをとにかく出しなさいというのは、日本が大半を主導する国際的プロジェクトとの認識をLCBは現段階ではしているということですよね。

【中田教授】  そうですね。日本がイニシアティブをまずやっていただくと。そうすれば、みんな一緒にやりますということになると。

【観山委員】  それは随分印象が変わりますよ。随分印象が変わります。今まで我々が議論していたものに比べればね。

【中田教授】  そうかもしれません、確かに。

以上

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