国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議 素粒子原子核物理作業部会(平成30年1月~)(第3回) 議事録

1.日時

平成30年3月1日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 250GeV国際リニアコライダーの物理の意義について
  2. その他

4.出席者

委員

中野座長、梶田座長代理、駒宮委員、酒井委員、棚橋委員、陳委員、徳宿委員、中家委員、初田委員、早野委員、松本委員、山中委員、横山委員

文部科学省

板倉大臣官房審議官(研究振興局担当)、渡辺振興企画課長、轟素粒子・原子核研究推進室長、吉居加速器科学専門官、三原科学官

オブザーバー

高エネルギー加速器研究機構 藤井教授

5.議事録

【中野座長】  ただいまより国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議素粒子原子核物理作業部会(第3回)を開会いたします。本日は、御多忙中のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。
冒頭のみカメラ撮影を行いますので、御承知おきください。撮影希望の方はお願いします。
では、本日の出席状況について、事務局から御報告をお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  本日は、全員の委員に出席いただいておりますので、会議は有効に成立しております。また、質疑に御対応いただくため、高エネルギー加速器研究機構教授の藤井先生にも御出席いただいております。
事務局からは以上です。

【中野座長】  それでは続いて、配付資料の確認をお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  本日の資料について御確認をお願いします。資料1、議論のポイント(案)、資料2、LHCの13TeV運転の成果に応じた500GeVILCのビジョン(前回報告書別添資料)、資料3、500GeVILCと250GeVILCの科学的意義の比較(案)、資料4、今後のスケジュール(予定)。このほか、参考資料として机上にドッチファイルを置いております。前回御発表いただいた浅井先生、ヴァイグレン先生のプレゼン資料もとじておりますので、適宜ごらんください。
以上、不足がありましたら、お知らせ願います。

【中野座長】  ありがとうございました。
カメラ撮影はここまでとさせていただきます。
それでは、議題に入ります。本会議第1回では、CERNにおける実験状況と、ILC計画の見直しについて、第2回では、高エネルギー物理学研究者会議における議論と、250GeVILCの物理的ポテンシャルについて、それぞれ御発表いただき、議論しました。
その議論の中で様々な意見がありましたので、ここで一度、本作業部会の趣旨である250GeVILCの科学的意義について整理したいと思います。これまでの議論の内容について、梶田座長代理、三原科学官、事務局とも相談し、本日の資料1から3を作成しました。これらについて議論したいと思います。この3つの資料は、今後本作業部会報告書の骨子となるものでもありますので、その点を踏まえて御議論いただければと思います。
先ほど事務局からの資料確認の際にもありましたように、これまでの資料はドッチファイルにとじられておりますので、それも適宜ごらんになりながら議論できればと思います。
それでは、資料1から3について御説明いたします。
資料1をごらんください。まずこれが、国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議素粒子原子核物理作業部会の議論のポイント(案)です。短いですので、初めからざっと読んでいきたいと思います。
まず再検討することになった経緯が来まして、その後、CERNにおける実験結果について、前回報告書及び「これまでの議論のまとめ」において、ILCの性能・成果は、CERN LHCにおける2期実験結果に基づき見極めることが必要とされている。この2期実験結果というのは、13TeV運転のことです。2期実験は2018年末まで延長されているが、2017年末までの結果として、新粒子・新現象の兆候は捉えられていないこと、これが前提となります。前回報告書のシナリオについては、後ほど表でもお見せしますが、(3)新粒子の兆候が見られないということになります。ただし、250GeVILCは、当初計画の500GeVILCから衝突エネルギーが半減したことから、内容については修正を要します。これは4に書くことになります。
2番となって、250GeVILCの科学的意義についてです。前回の報告書では、この四角の括弧の中にまとめられている科学的意義、ヒッグス粒子やトップクォークの詳細研究によるヒッグス機構の全容解明で標準理論を超える物理を探索、(2)超対称性粒子などの新物理の探索、及び発見された場合その詳細研究、(3)その他(暗黒物質や余剰次元)となっております。
今回、(2)について、LHCにおける実験結果から、当初計画の500GeVILCでも到達可能なエネルギー領域で新粒子を発見できる可能性は低く、見直し後の250GeVILCでは新粒子の発見は非常に困難であるということになっております。(1)について、250GeVILCではトップクォークは生成できないが、ヒッグス粒子の生成断面積が最大化されること、13TeVLHCで新粒子の兆候が観測されず、250GeVILCでのヒッグス粒子の精密測定に有効場理論が利用できることが明らかになったことから、ヒッグス粒子の精密測定の実現可能性が明確になったことがあります。250GeVILCにおける最重要課題は、ヒッグス粒子と素粒子の結合定数の精密測定であり、新しい物理の性質に関する情報を得られる可能性があること、その結果が今後の素粒子物理学が進む方向性に示唆を与えることが期待されているということとなります。
次のページに入ります。(3)その他の粒子についてですが、これについては、直接探索というよりも、質量欠損法等の間接的な探索方法をとるため、250GeVILCにおいてもその意義は変わらないこと、それから、新粒子探索は、衝突エネルギー1TeVを超えるエネルギー範囲での探索を必要とするため、新しい技術開発も視野に入れるべきこととなっております。
3は、他の計画の実例を挙げるところで、前回はSSCとLHCがそれぞれ入っておりました。今回、XFELとFAIRの実例。これはLCBの声明において欧州XFEL及びFAIRが例示として取り上げられたことがありますので、これについて書きたいと思っております。
4番で、250GeVのILCのシナリオ(13TeVLHCの結果を踏まえて)となります。四角の括弧の中が前回の報告書の抜粋です。13TeVLHCで新粒子や新現象が観測されない場合に、方針としては、ヒッグス粒子やトップクォークの精密測定から標準理論を超える物理(超対称性理論、複合ヒッグス理論等)を探索する。また、ILCはLHCでは検出が困難なタイプの新粒子にも感度があるため、これらの新粒子の探索も行う。LHCで未発見の原因を精査し、ILCで発見できる新粒子を探索するとともに、将来のエネルギーアップグレードの必要性を検討するという方針になっております。その効果として、標準理論からのずれが観測された場合は、そのずれの大きさとパターンから、標準理論を超える物理の方向性と関連する新物理のエネルギースケールが明らかになる、新粒子が発見された場合にも大きな研究の進展が期待されるとなっております。
今回、13TeVLHCの成果を考慮に入れた当作業部会の議論を踏まえ、前回報告書のシナリオ(3)は、今般の250GeVILCにおいては以下のように修正されます。方針。ヒッグス粒子の精密測定から標準理論を超える物理の解明の端緒となる事象を観測し、その結果が今後の素粒子物理学が進む方向に示唆を与えることが期待される。LHCの結果から、新粒子直接探索による発見についての見通しは得られなかった。また、トップクォークの精密測定を行うためには、350GeV以上の電子・陽電子衝突エネルギーが必要であり、250GeVILCでは実施できない。効果としましては、標準理論からのずれが観測された場合は、そのずれの大きさとパターンから、標準理論を超える物理の方向性と関連する新物理のエネルギースケールが明らかになる。これは精密測定に関しては前回の効果とほぼ同じとなっております。
これがまとめ(案)でありますが、これを踏まえて、表にまとめたのが資料3になります。
その前に、資料2をごらんください。資料2は、前回作ったまとめのポンチ絵ですが、これは何も変えておりません。当作業部会別添なんですけれども、その後のLHCにおける実験結果を踏まえるとどうなるかということのみ赤枠で加えております。今回、新粒子の発見がない場合に相当しますので、この赤で囲んだ部分が入ってきます。上段の赤の方を見ていただきますと、これ、精密測定の方なんですが、精密測定に関しては、発見がない場合、ILCの科学的意義、それが上がる又は変わらないという両論併記になっております。それから、直接探索に関してですが、一番下の段ですけれども、これは13TeVLHCで見つからなかった場合は下がるというふうになっております。詳細については省きます。
以上を踏まえて、資料3を作成しました。これを基に本日議論したいと思っています。まず一番最初に、500GeVILC(当初計画)で期待されていた成果が記述されております。大きく分けて、新粒子直接探索、それから、ヒッグス粒子精密測定による新たな物理の探索、宇宙の物質・反物質非対称性起源の解明、標準理論真空安定性の検証、1から4になっております。
それぞれに対する実験における観測量が書かれておりまして、その次の段にその実験の可否です。これは加速器の能力だけというよりは、LHCの結果を踏まえた上での実験の可否です。新粒子の直接探索に関しては、250GeVにしようが500GeVにしようが、非常に困難であると。ヒッグス粒子の結合定数については、どちらも測れるということです。250GeVで一部測れないものがありますが、それは有効場理論を使って求めることはできるというふうになっております。それから、CP対称性、物質・反物質の非対称性の起源に関しては、それはどちらもできる。真空安定性に関しては、これはヒッグスの方はかなり質量が精密に決まっておりますので、トップの質量の測定が必要なんですが、それに関しては500GeVが必要であるということで、実験の可否については500 GeVが丸、250 GeVでバツということになっております。
科学的意義については、皆さんもちろんいろいろ御意見あって、僕も意見あるんですけれども、まず最初の段に関しては、新粒子の直接探索に関しては、これはもう、前回も下がるであろうと言われていましたが、これは下がったというふうに付けざるを得ないのではないかと思います。
精密測定による新たな物理の探索は、前回両論ありでしたので、今回も両論から進めたいと思います。新粒子がない場合に、ほかの手がないので精密測定の意義が上がるという意見と、それから、新粒子が見つかったらその正体を見極めたいというので意義が上がるという意見がありました。一方で、見つからなかった場合、見つかった場合、それぞれの場合で意義が変わらないという意見もあったんです。だから、そのことが書かれています。今回、それだけじゃなくて250GeVと500GeVの比較ということもあるんですけれども、500GeVのILC作りましたら250GeVで運転することもできますので、その場合も上がる。コストパフォーマンスだけ見たら上がるかもしれないけれども、能力的に見たら変わらないという、そういう見方もできるかと思います。
その次の段は下がったとなったとなっておりますけれども、備考欄を見ていただきましたら分かりますように、回避策はあるということです。
それから、宇宙の物質・反物質非対称性の起源、それから、真空の安定性に関しては、今回多分メーンのところではありませんので、読んでいただいて、その後議論していただければと考えます。
大体以上で資料の説明です。
ここから議論を始めます。きょうはここに本日の会議の虎の巻があるんですけれども、ここからもうエンドレスじゃないですけれども、最後までほとんど議論に使ってよいということになっておりますので、ただいま私がしました説明に関して、御意見でも結構ですし、御質問でも結構ですので、どんどん御意見を発言していただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
どうぞ、初田委員。

【初田委員】  今回、有効場理論という話が出てきましたが、500GeVのILCを議論した委員会ではそういう議論はなかったと思います。

【中野座長】  はい、なかったですね。

【初田委員】  今回初めて出てきた話ですね。

【中野座長】  今回初めて。

【初田委員】  第一回の委員会を欠席したので、有効場理論の議論を復習させていただければありがたいです。私自身の専門であるQCDだと、1960年代に、QCDを知らずにパイオンの有効場理論を一生懸命作って係数を決めようとしたわけですが、それがQCDの発見に直接繋がるわけではありませんでした。さて、今回の議論で、有効場理論で解析してその係数を決めるということと、標準理論を超える理論を作るということとの距離に関して、もう一度どなたか専門家の方にお聞きしたいんですけれども。

【中野座長】  これ、私の理解では、全てのカップリングを測ることは250GeVでできないので、カップリングの一部、特にWとのカップリングをほかの測定を全部参考にして決めて、全幅を決めたら、測定のあるものに関しては絶対値が精度よく求まるという、そういうような議論だったと思うんです。きょう藤井先生いらっしゃっていますので、詳しくお伺いしたいと思います。よろしいですか。

【藤井教授】  はい。藤井です。標準理論を超える物理があった場合に、その効果というのは、基本的にQ square over new physics scale square (反応の典型的エネルギーの自乗を新しい物理のエネルギースケールの自乗で割ったもの)のベキ級数展開の形で現れてくるというふうに考えられていて、その最初のオーダーのイフェクティブラグランジアン(有効ラグランジアン)というのはディメンション6(次元6)の部分から現れてくるというふうに考えられます。そのディメンション6(次元6)のオペレーター(演算子)を考える際に、SU(2)×U(1)シンメトリー(対称性)は、基本的にニューフィジックス(新しい物理)があったとしても、エレクトロウィークシンメトリーブレーキング(電弱対称性の破れ)が起こる前にはイグザクト(厳密)なシンメトリー(対称性)としてあっただろうということを前提にして、その有効場理論のラグランジアンにもそのSU(2)×U(1)のシンメトリー(対称性)はあるということで、そのシンメトリー(対称性)だけを仮定してディメンション6(次元6)のオペレーター(演算子)を全部書き出したときに、その全部書き出したオペレーター(演算子)の中で250GeVのヒッグスプロダクション(ヒッグス生成)、あるいは250GeVでのゲージボソンプロダクション(ゲージボソン生成)に関係するオペレーター(演算子)だけを全部取り出したときに、ILCの測定では、そのオペレーター(演算子)の係数を基本的に実験だけで全部決めることができるということです。
それを実際に行うと、250GeVではWフュージョン(W融合反応)でヒッグスを作る断面積が非常に小さいために、500GeVのときに比べるとヒッグスとWのカップリング(結合定数)がうまく決められないというような、そういう問題が以前は指摘されていて、そのためにヒッグスの全幅が決まらないということがあって、そのためにヒッグスといろいろな粒子とのカップリング(結合定数)が完全にはモデルインディペンデント(モデル非依存)に決められないので、250GeVだけだと難しいというのが言われていたことなんですけれども、新しい粒子がどうもありそうもないということもあって、さっき言ったようなセットアップのディメンション6(次元6)の有効場理論、標準理論の対称性を持つ有効場理論による解析というのが正当化されるという状況下においては、SU(2)かけるU(1)シンメトリー(対称性)でヒッグスとWのカップリング(結合)と、ヒッグスとZのカップリング(結合)がディメンション6(次元6)のオペレーター(演算子)の範囲で関係が付くということで、その問題を克服できるということで、基本的にどれかのオペレーター(演算子)の係数が0だと仮定するというようなそういうことをやらずに、実験データだけで完全に全部決められるということです。だから、そういう意味でモデルインディペンデント(モデル非依存)に解析できるということ。

【初田委員】  分かりました。QCDのときのパイオンのカイラルラグランジアンと全く同じ考え方で、対称性を仮定して結合定数間の関係をつけるということだと思いますが、そこで仮定される対称性というのは、新しい粒子が見つかっていない以上、現在知られている対称性しかないだろうという理解ですね。

【中野座長】  ほかに。御質問でも御意見でも構いませんので。 徳宿委員。

【徳宿委員】  多分一つ一つやっていった方がいいとは思うんですが、一番上のまず(2)についてというところで。これ、「500GeVILCでも到達可能なエネルギー領域で新粒子を発見できる可能性は低く、見直し後の250GeVILCでは非常に困難である」と書いてありますけれども、500よりは250の方が発見の確率が少なくなるという、そういう当たり前の論理ではそうだと思うのですが、前回及び前々回に聞いた話では、どちらでもかなり非常によく、同じようにできるというか、ある意味ではみんなが狙っているところというのは結構同じように考えられるという議論になっていたと思うのです。だから、片方が可能性が低くて、片方が非常に困難であるという印象は、前回、前々回ので見られなかったと私は思います。
だから、書き方としては、「当初計画の500GeVILCでも見直し後の250GeVでも可能性は低く」でピリオドでいいのではないかと思うのですが。この2つを比較して、かつ片方を非常に困難であるというような言い方をするような発表は私は見られなかったと思います。

【中野座長】  その点について、別の意見を持っていらっしゃる方とかございませんか。どうぞ。

【梶田座長代理】  これは、でも、直接、生成についての議論ですよね。そういう意味ではパラメータスペースは非常に小さいので、やっぱり違うんじゃないかなと思うんですけれども。

【徳宿委員】  違うんです。違うのは当たり前で、500GeVより250GeVの方が狭いというのも当たり前で……。

【梶田座長代理】  当たり前のことを書いたというつもりでいたんですけれども。

【徳宿委員】  でも、それは可能性が片方が低くで、片方が非常に困難であるというぐらいの差が科学的に見たときに思えたかというのは、多分ここの委員の人たちが評価すべきことだとは思います。AよりBが小さいというのは当たり前の自明のことなので、ここでやるべきことはこの表現ぐらいの違いがあると判断したかどうかというので、私の感じは、むしろ直接探索でも、ここでやっぱりもし新粒子が出てくるとするならば、縮退しているSUSYとかの場合で、その場合には質量が低いところもかなりあるわけだから、250GeVでもやれるところは結構あるというのが、私から見た発表の結果だと思うのですが、ほかの人の意見もあると思います。

【中野座長】  多分賛成意見で、次。反対意見、賛成意見って、何となく分かりますよね。
では、中家委員から。

【中家委員】  今のことと関係してなんですけれども、きょうのさっきのをまとめると、例えば500GeVILCの科学的意義を考えたときに、やはりLHCで新粒子がないという時点で、500GeVのILCの科学的意義が新粒子発見に関しては下がったのかなと。特に資料2だと、高いところは、資料2の2の上から2つ目ですかね、LHCで新粒子の発見があり、対応する新粒子がILCで直接見える可能性が高かった場合には、非常に高い、SUSYを調べたりとか、ILCがドリームマシンみたいになったと思うんですけれども、今それがなくて、見つかる、さっきの縮退していたときとかを除くと、なくなったときに、500GeVのILCの科学的意義が下がって、その下がったものと比べると、250GeVはほぼ互角の性能を持っているので、新粒子の発見に対しては500GeVと250GeVを比べたときには余り下がってないという結論なのかなというのが僕の理解です。

【中野座長】  松本委員。

【松本委員】  僕は単純にある矛盾を指摘しようと思っただけなんですけれども。

【中野座長】  どうぞ。

【松本委員】  まず2番の最初で、“LHCにおける実験結果から、500GeVでも発見できる可能性は低くて、したがって、250でも低い”と書いてある一方、前回の議論の4番の抜粋の(3)のところで、“ILCはLHCでは検出が困難なタイプの新粒子にも感度があり、これらの新粒子の探索も行う”と書いてあって、つまり、前回の結論はこれだったわけですね。これの言葉が意味することは、別にLHCで結果が出なかったからといって、そこで感度がないタイプの新粒子の(ILCにおける)探索には影響しないことを意味します。だから、その2つが矛盾しているということです。

【中野座長】  きょう時間たっぷりありますので、意見をどんどん聞こうかなと思います。
どうぞ。

【駒宮委員】  それでは、比較的軽いところからです。この2ページ目ですね。

【中野座長】  どちらですか。資料1?

【駒宮委員】  資料1の2ページです。その一番上に、(3)については、質量欠損法という間接的な探索方法をとるため、250GeVILCにおいてもその意義は変わらないとあるんですけれども、ここでは「間接的な探索方法をとるため」という意味が一般の人には分からないですね、これ、何のことか。間接的というのは何かネガティブな感じを受けるんです。これはそういうことではなくて、見えない崩壊モードも含めて全ての崩壊モードについてこの方法によって観測できるわけですよね。だから、「間接的な」という言葉をやめて、「全ての崩壊モード(見えない崩壊モードも含めて)が観測できるためにこの探索方法をとる」というふうに書き換えていただきたいと思います。それがまず第1点です。
それからもう1つ、軽い第2点なんですが、これはその次のページの3ページ目、トップクォークの精密測定。トップクォークの精密測定の対象は2つありまして、1つは質量ですね。それは350GeVでできるわけですね。でも、これはLHCでかなりいいところまで行くんです。
その証拠は、ドッチファイルの15番か。15番というのは、これは藤井先生の話ですね。藤井先生の話のずっと後ろの方の一番最後、「まとめ」というところです。藤井先生の発表資料の26、27ページかな。「まとめ」というところのすぐ前に、この下にページが書いてあるんですけれども、26の次ですから27だと思います。ここのところに図があります。下の図のところに、ILCがトップの質量の測定精度が50MeVのときは、ほとんど米粒のようなこの赤い点なんですね。これが50MeVです。これの精度の数倍大きくても結論は余り変わらないですよね、どこにいるかという。だから、多分これはLHCでもできることなんです。だから、その意味で、例えばLHCで300MeVとか400MeVとか測定精度を持っていれば、LHCでできるので、こんなことを議論してもしょうがないと。
それから、もう1つは、今度はもっと高いエネルギーですね。500GeVでもって今度はトップクォークとヒッグスボソンのカップリング、ライト・レフトのカップリングを測ると。それによっていろいろなモデルを分けられるというのが1つございます。でも、これはこの前も申し上げたんですけれども、多分私の言っていることが何言っているかよく分からなかったと思いますが、これはこいつのですね……。

【中野座長】  どれですか。

【駒宮委員】  10番。これは私の話です。これは2014年の私の話の27ページ。そこにありますとおり、これは標準理論とかスーパーシンメトリーの場合は原点にとどまっているので分からないんです。一方、ヒッグスボソンが複合粒子だと、それに伴ってトップクォークも複合粒子になるという理論がいっぱいございまして、そういう場合はばらけるんですね。ですから、これはヒッグスボゾンが複合粒子の場合にどのモデルかを分けられると思います。だから、トップクオークの物理はずっと先の物理であり、まず最初にヒッグスボソンのカップリングのプリサイズメジャメントによって、SUSYに行くか、それとも、複合ヒッグスに行くかというのを先に見極められたら、その後に来る物理なんですね。だから、これはセカンダリーなんです。そういう意味で、トップクォークの2つのプリサイズメジャメントというのはそれほど重みが高くないということを言いたいんです。
この表の分け方を見ますと、あたかもこれらが一つ一つ同じウエートでもって書かれていますが、これはおかしい。特にヒッグス粒子の結合定数、これ今、資料3のことを言っているわけですが、資料3のところは、これ、みんな、あたかもイコールウエートでもってこういうのをお書きになっているけれども、ヒッグス粒子の結合定数に全部まとめてしまうのはおかしい。結合定数っていっぱいあるわけです。トップクォークの質量は1つしかないんです。だから、これをもっとばらさないと話にならないですよね。少なくとも500GeVとの比較というのはこれでもいいですが、もう一発ちゃんとした表を作って、それで、どういうカップリングがどういう精度で計るんだということをきちんとやった方がいいと思います。
以上です。

【中野座長】  ありがとうございました。ジャブから始まって、いろいろフックとかも入ってきたんですが、話をまとめますと、まず質量欠損法というのをもう少しきっちりと分かりやすく書いてほしいということ。それから、トップクォークの物理に関しては、今の段階というか、150GeVで結果が出るまではそんなに大きな物理が出てきそうにないので、そんな大きく取り扱うべきではないという御意見と……。

【駒宮委員】  はい、そうです。

【中野座長】  それから、資料3に関しては、ヒッグス粒子の結合定数の測定とまとめているところが非常に重要だけれども、面積比でいうとそれほど重要そうに見えないので、もう少し面積を増やせと、土地争いみたいですが、そういう御意見という。

【駒宮委員】  いや、面積を増やせということじゃなくて、別の表を作ってほしいと。これはこれでもいいですよ、だから。

【中野座長】  別の表もいいんですけれども、どんどん表増えていきますとやっぱり分かりにくくなるということがあるので、その辺のところはどこかバランスを取ったところに持っていくしかないかなとは思います。もちろん表の中で重要でないというものが入っている場合はそれは省いていけばよいと思いますが、できるだけ分かりやすい表にはしたいと思います。できないかもしれないですけれども。
どうぞ。

【中家委員】  トップクォークのマスのことでちょっとはっきりさせておきたいんですけれども、それが大事かどうかというのはいろいろな観点があると思うんですが、先ほどの藤井さんのやつで、標準理論の適用限界の見極めをしたいと、真空の安定性を議論したいときに、トップクォークの質量の精度がどれぐらい要るかと。これは先ほど駒宮さんの10という資料の26ページ目に駒宮さんが昔言っています。さっき言った1個前ですね。いずれの場合も、約0.1GeVの精度が要求されるということで、真空の安定性、今、準安定のところにあるかもしれないんですけれども、それが安定かどうかをやるためには、ここに書いているような0.1GeV、若しくは藤井さんの発表の中では、ILCは3σぐらいで安定と準安定を見極められるということを、500GeVだったらできるけれども、250GeVだったらこれはできないという。ただし、この真空の安定性、適用限界の見極めが大事な物理じゃないと考えるんだったらと、そういうことですよね。それで合ってますか、理解。

【駒宮委員】  この27ページの図をよく見るんです。よく見て、それで、この点というのは、これは多分メジャメントが50MeVとか何とかのときなんですね。だから、これに比べてどのぐらい大きくなったらまずいかという。100MeVと私が言ったのは、これは50MeVで測れるので、100MeVと言っておけば安全だという感じで、それほど深く意味を持っていないです。ですから、これ多分、300とか400でも十分、数倍あっても大丈夫なんです。ということです。

【中家委員】  ただ、この間の藤井さんの発表のときも、先ほど書いてあった、LHCでは理論誤差500MeVでリミットで、そこの真空の安定性を議論するところではその辺りでもうリミットしちゃうと。藤井さんの先ほどの資料、15の最後の「まとめ」の前ですけれども、LHCでは理論誤差500MeVでリミット、そして、その下の、こういうよくある安定性と準安定と不安定のところでは、ILCだと3σで安定か準安定を識別できるというのが一応ILCのスタディの結果じゃなかったでしたっけ。

【藤井教授】  いや、そうじゃなくて、赤い点が3σのコントア(等高線)です。なので、圧倒的にすさまじい……。

【中家委員】  このコントアの位置、大きい方はLHCの500MeVですか。

【藤井教授】  もっと大きいですね。これ、このグラフが描かれたときはかなり昔なので。

【中家委員】  これ、500MeVでもなくて、今の1GeV……。

【藤井教授】  そうです。1.何GeV。

【中家委員】  CDFと今の最近のシングル、それのあれですね。なるほど。

【駒宮委員】  だから、少なくともこいつの半分以下にはなるわけです。LHCでは300とか何とかという数を今言っているので、だから、これの小さい黒い丸の3分の1ぐらいになるんです。

【中家委員】  分かりました。じゃ、逆に言うと、LHCだけで5σぐらいでできるということを言っているわけですね。

【駒宮委員】  はい、そうです。

【中野座長】  よろしいでしょうか。だから、トップクォークの質量の測定に関しては、もうLHCに任せましょうということですね。
ほかに御意見ありませんか。

【陳委員】  いいですか。先ほどの直接探索の話なんですけれども、ここに書いてある、(2)について、LHCにおける実験結果から、当初計画の500GeVILCでも到達可能なエネルギー領域で新粒子を発見できる可能性は低くとなっていて、先ほどの話だと、結局、LHCの場合、ある程度粗い測定しかできなくて、ILCの場合、もっと精密測定ができるから新粒子を発見できるかもしれないという話なんですけれども、可能性としては250GeVよりもやっぱり500GeVの方が高いわけですよね、結論としては。最後に書いてある「新粒子の発見は非常に困難である」という表現が私には余り納得できなくて。技術的に困難であるというふうに思われてしまうので、これはむしろ、更に可能性は低くなるというのが妥当じゃないかと思います。

【早野委員】  そういうことですね。

【中野座長】  ほかに御意見。
では、松本委員。

【松本委員】  整理させてください。同じ項目なんですけれども、今、LHCと500GeV ILCと250GeV ILCが3つ並んで、それぞれの場合の関係がどうなるのかというので、まずLHCではカバーし切れないところをILCが新粒子・新現象発見を行うということは前回も今回も変わらないはずで、その意味からちょっと誤解を生む表現になっています。一方、500と250を比べたら、やっぱり500の方が上ですよね。それは確か。もちろん変わらないようなモードもあるけれども、変わるモードもあるというのが多分正しい言い方だと思いますが。

【中野座長】  よろしいですか。今回一番のポイントは、13TeVのLHCの実験結果を受けてILCの状況がどう変わったか、ILCの役目がどう変わったかというところですので、新粒子に関しては、やっぱり直接探索というのは今回の場合かなりメーンのところから後退したのかという。それを使って精密測定を更に精度よくやろうという、そういう計画になったかと思います。
よろしいですか。
ほかに御意見ありますか。
早野委員。

【早野委員】  もともとのICFAの声明には、リニアコライダーの高エネルギーへの拡張性を重視しておりという文章が入っているんですよね、250GeVからの。それで、資料1の2ページでは、「将来のエネルギーアップグレードへの必要性を検討する」という文章が入っていて、今回の議論では、そのエネルギーアップグレードという議論はなかったというか、3ページ目では、エネルギーアップグレードのことに関しては触れないという構成になっているわけなんですけれども、そこは議論しましたっけ。

【中野座長】  少し議論して。これ、浅井先生の発表にあったかと思うんですけれども、やはり1TeVのマシンでもなかなか難しいということで、それよりも2倍3倍のマシンを作らないといけない。そのときに、例えば今作ろうとしているトンネルの長さではとてもそのエネルギーに達することができないので、新しい加速方法についてもやっぱり技術開発が必要じゃないかというような、そういうような議論はあったと思います。  それが1点と、きょうになりますけれども、精密測定でヒッグスがコンポジットであったときに、そのコンポジットを分けるときにはトップクォークとのカップリングを精密で測ってそれのモデルを決めるという、そういうようなことが駒宮委員からあったと思うんですが、それは今の段階では余り大きくないということですね。

【駒宮委員】  そうです。

【中野座長】  その2点ぐらいです。

【早野委員】  もう1点。そのICFAの声明と、それから、前回のDESYの先生のプレゼンテーション、議事録もちょっとチェックしていたんですが、LHC及びアップグレード計画とILCは、相補的あるいは補完的という、そういう表現がどちらにも使われている。この補完的とか相補的という表現は、一般の方にはある意味とても分かりにくい表現でありまして、じゃ、LHCがあればほどほどできるんじゃないかと。もしかしてILCを作れば喜ばしいけれども、LHC基本だねという具合に読める文章になっていると思うんですが、それはここには書かないということでよろしいのでしょうか。

【中野座長】  それも議論すればよいことだと思います。

【駒宮委員】  エナジーアップグレーダビリティーというのはリニアコライダーにとっては極めて重要なものなんですね、将来的には。それをするためには、まず250GeVで全体の物理がどういう方向に行くかというのを見極めて、それプラス、そのときのLHCの結果を見て、それでどこに行くか見るわけですね。
それで、今のトンネルだと、トンネルを継げば、現在の技術だったら1TeVぐらいまで行くわけです。だから、そこまでにカバーしている新物理が期待されたら、そこぐらいまでは行くと。これはサーキュラーコライダーとの比較ですね。サーキュラーコライダーの場合はもう半径で決まっているので、これは大きくするなんていうことはできないわけですね。もちろんシンクロトンラジエーションが回っている粒子のエネルギーの4乗に比例して欠損がありますから、もう大きくできないんです。でも、リニアコライダーの場合は足せば大きなエネルギーになる。
それから、なおかつ将来的には、スーパーコンダクティングの場合でもグラディエントは技術的にどんどん高くなるんですね。そういう新しい技術のものでもって継ぎ足せば、より高いエネルギーに行かれるわけです。それから、もっと将来は、ひょっとしたら、スーパーコンじゃなくて、多分ほかの方法でもって、ウォームキャビティの方法でもってもっと高いところに行かれるかも、既成のトンネルというものがあれば、いろいろなことができるわけですね。そういうことがリニアコライダーの将来的なアップグレーダビリティーです。
でも、将来的にどこまでアップグレードするかというのは今は分からないわけです。250GeVをきちんとやって、そのときのLHCのいろいろな物理を見て、その両方を見て、それで判断すべきものだと思います。だから、今は、どこまでやらなきゃいけないとかいうことは言えないんです。今確実にやらねばならないのは何かといったら、ヒッグス物理のヒッグスのプリサイズメジャメントですね。新粒子に関していえば、これはばくちなんです。どこにあるか分からないわけです。まず新物理の方向がどういう方向に行っているかというのを見るというのが極めて重要なポイントだと思います。

【中野座長】  どうぞ、徳宿委員。

【徳宿委員】  同じところなのですが、座長の方では、浅井さんのところでエネルギーアップグレードについてちょこっとだけあったとおっしゃっていますが、資料を見ますと、最後の本委員会の結論の一番最後のところにちゃんと……。

【中野座長】  資料何ですか。

【徳宿委員】  資料は17番の、これ、ページが書いてないので見づらいですが、「おまけ」と書いてある前の紙の本委員会の結論の一番最後のところで、「エネルギーアップグレードはリニアコライダーの先天的な長所であることから」というかという形で書いてありますし、その次のページで、どういう観点でエネルギーアップグレードのシナリオがあるかということに関しても次のページに書いてあって、それは今、駒宮先生が言ったことと同じことではあるので、それはやっぱりきちんとまとめておいた方がいいのではないかと思います。

【陳委員】  いいですか。

【中野座長】  どうぞ。

【陳委員】  エネルギーアップグレードの話が出たので、ここでは加速器の話は余りしないということなんですけれども、ちょっと言っておきたいんです。ステージングという話があって、それで、将来の350GeVのためにトンネルを長く掘っておいたらいいのではないかというのがあって、そのときの費用の計算があるんですね。350GeV用のトンネルを掘った場合と250でやめた場合の差は、全体の費用から見ると1パーセントぐらいしか変わらないという数字が出ている。

【駒宮委員】  1パーセント?

【陳委員】  1パーセントぐらい、全体の。だから、34パーセント削減が33パーセントになるとかそのぐらいの話がちゃんと書いてある。

【駒宮委員】  ただトンネルを掘っておくということですよね。

【陳委員】  ええ、トンネルを掘っておいた場合。

【駒宮委員】  掘っておくだけでしょう。

【陳委員】  掘っておくだけの場合。

【徳宿委員】  それ、資料にありますよ。3の……。

【陳委員】  今から20年後、10年間建設して、10年間実験して、それからアップグレードしようというときに、相当やはり加速器の技術は変わっていると思うんです。そのときに本当に350GeVを達成するのに350GeVの今の技術を使ったトンネルが必要なのかというのは今のところよく分からないんです。
そういう観点から考えると、ここで費用を比較すべきは、将来本当に今の350GeVの長いトンネルが必要になったときに、新しい上流の部分から新たにトンネルをその分余分な分を掘ったときの費用が幾らなのかという、それと、今掘っておくということと、どのぐらい費用が違っているのかというのを比較すべきだと私は思うんです。でも、資料を見る分にはそれが出てこないんです。つまり、将来本当に必要かどうかというものに関して、今はもうとにかく掘っておくことが必要なのか、それとも、将来本当に必要だというときに掘ったとき本当の費用と比較するというのを、TDRの方の作業部会で出してほしいんです。

【中野座長】  ここの議論ではないと思うので、議論を250GeV、500GeV、その辺りに戻したいと思います。
初田委員。

【初田委員】  資料1の2ページ一番上の、間接的な探索方法で意義が変わらないというところは、前回、英語で講演された方にも私から質問した点でもあるのですが、資料3の中ではどこに書かれているのでしょうか。資料3には出てきていないようですが、あえて入れていないのでしょうか。

【中野座長】  そうですね、入ってないですね。

【初田委員】  全く入ってないですね。

【中野座長】  全く入ってないですね。

【初田委員】  前回の委員会でお聞きした感じでは、講演者ご本人は意義が高いと言っておられたけれども、そのあとで、委員のご意見を聞くと、間接的な方法で見つけることはばくちのようなものだと言われていました。なので、この点にどれぐらい重要性があるのか、この表の中に入れるべきものなのか、入れなくていいものなのかを確認したいのですが。

【中野座長】  多分、暗黒物質の探索が一番メーンになるかと思うんですけれども、これ、資料ないですけれども、間違っていたら訂正してほしいんですが、LHCの結果とかいろいろ踏まえると、非常に低いところと物すごく高いところに可能性が高いんじゃないかというシナリオがあって、100GeV辺りの非常に低いところというのはLHCの結果でかなり否定されたというか、調べ尽くされたというふうに思っている人が多いと。そうなると、なかなか間接的な方法で探しても、これ、250GeVでも500GeVでも一緒ですが、見つかる可能性はそんなに高くないんじゃないかというのが僕の印象ですけれども、そう思っているんですが、この辺のところはどうでしょう。

【駒宮委員】  浅井先生のこの前のプレゼンテーションの17番の21ページ、これは1つの紙に2つのページが載っています。その上のグラフを見ます。そうしますと、ILCとかLHCとかいうところに線が引っ張ってあるんですね。これ、何で2つあるのかというのは失念してしまったんですが、でも、何しろ低いところは、ILCの場合はモデルインディペンデントに棄却できるということですね。今、質量の低いところで実験結果の混乱が起こっているわけです。暗黒物質が見えたとか見えないとか言っている人がいるわけですね。そこら辺のところは、ILCの実験でそういうものが見えなければ、これは棄却できるということだと思います。これ、100GeV近くまで線が引っ張ってあるわけですね、大体、物理はログスケールでみるものです。今、低い質量の暗黒物質は、地上の実験で一生懸命見ようとしているところなんですね。そこら辺のところはILCでもカバーできるということですね。これがどのぐらい重要かというのはその人によると思います。

【中野座長】  多分強い意見が出れば、欄を大きくしますけれども、余り意見が強くなければ、小さな扱いというか、欄としては残すかもしれませんけれども、強調しない程度に残すということになるかと思います。

【駒宮委員】  それでよろしいと思います。

【梶田座長代理】  今のところに関連して。ダークマターはこれでいいと思うんですけれども、(3)をよく見ると、余剰次元が書いてあって、これ、全く気にしてなかったんですけれども、余剰次元については250でも500でも同じという、そういうことでよろしいんですか。これ、私、全然分からないので、ピュアに聞いているんですけれども。

【中野座長】  どなたが一番よろしいですか。松本先生あるいは藤井先生。

【松本委員】  余剰次元模型? 多分これは余剰次元模型を考えていて、カルツァー・グラビトンか何かの生成で、結局そいつはディテクターにはシグナルを残さないので、質量欠損になるということで。ただし、余剰次元のスケールの空間的なスケールが大きいと質量がすごく小さい、つまり軽いので、エネルギーに関係なく作れるだろうという話だと思います。ただ、(生成は)断面積によるから多少影響はするけれども、500が250になったからといって粒子が作れなくなるというわけではないという意味だと思います。

【中野座長】  三原科学官、どうぞ。

【三原科学官】  今の松本先生のお答えに関連してなんですけれども、余剰次元を直接見る、あるいは間接的に見るということはあるとは思うんですけれども、もう1つ、たしか藤井先生の議論でお話あったと思うんですけれども、余剰次元があった場合の影響というのは、ヒッグス粒子の結合定数の精密測定でも見えるかもしれないというのは、これは正しいんでしょうか。

【松本委員】  余剰次元の模型によっては、ヒッグスのカップリングに影響が出ます。出ない模型もあります。
あと、直接と間接検出の区別がちょっと難しくて、ここでも、質量欠損による間接検出という書き方をしていますけれども、質量欠損とは、多分、ダークマターとか余剰次元(粒子)が作られて、それが欠損に見えているということで、それは、ある意味直接作っているんですよね、加速器で。

【中野座長】  そうですね。精密測定という意味での間接測定ではないですね。何かいい言葉、これは駒宮委員からもクレームがありましたので、分かりやすく書いたらいいと思います。

【松本委員】  ここも言葉を変えた方がいいというのは賛成なんですけれども。
あと、暗黒物質に関しても、たしかに暗黒物質が直接作られた場合は質量欠損となって、それを見る、あるいは、暗黒物質粒子が輻射補正を通じて標準模型のプロセスに影響を通して見るという2種類の方法があって、前者は500GeVから250GeVにすることによってやっぱり見える範囲は狭まります、作れる範囲が。後者は、どっちかというとルミノシティに関係するので、それほど大きく変わらないというのが多分正しい。詳しく書き過ぎると読みづらくなるんでしょうけれども、一応整理をしておかないとすごく誤解を与えちゃうんじゃないかなと思います。

【中野座長】  いろいろなところに新粒子という言葉が出てきてしまうので、新粒子で間を全部省いて、変わらないとかなると、結局変わらないのかということになってしまうので。

【松本委員】  前回たしか、新粒子というと、だから、直接測定だけを取り上げちゃうので、新粒子・新現象みたいな書き方にしようとかいう話を……。

【中野座長】  ありましたね。

【松本委員】  うん。そうすると……。

【中野座長】  その辺のところも工夫して、ただ誤解を招かないように、やっぱりはっきり分かった点もありますので、どんどんその辺りは思い切って書いていきたいというふうには思います。

【徳宿委員】  今のとほとんど同じだと思うんですが、(3)というのは、暗黒物質や余剰次元その他で何でもありで、何でもありに対してその意義が変わらないというのは言えないはずだから、やっぱりここで言っているのは暗黒物質についてですよね。だから、ここの書き方は変えた方がいいと。

【中野座長】  方法についてももう少し限定的に書くということと、対象についてももう少し限定的に書くということですね。それでよろしいでしょうか。

【松本委員】  はい。

【中野座長】  どうぞ。

【山中委員】  これ、外に向けてちゃんと分かりやすく書くという文書はあると思うんですけれども、今のような割と細かい、もっとプロ用のいろいろな背景がありますよね。そういうものは何か別途まとめられるんですか。どういう形になるんですか。

【中野座長】  今のところ、別途まとめるということは考えておりません。あくまでも、ここでの議論は幾ら細かくなってもいいんですけれども、最終的にまとめるものに関しては、それだけ読んできちんとどなたにも分かっていただけるということを目指しております。ウィキペディアぐらいは見ないといけないかもしれません。

【酒井委員】  申し訳ありませんが、私この分野の専門家でもありませんが、前回もこの委員会の委員でした。今回も委員をさせていただいております。従ってお聞きした感想になるのですけれども、積極的に半分にした理由というのは、今回の1回目のときにもお聞ききしたのですが、ちゃんとお答えいただけなかった様に思います。その責任は、私が理解していただけるような発言をしていないことが後日議事録をみてわかりました。申し訳ないです。LHCで何も見えなかったということから、250GeVでも目的とする情報が十分得られるようになった。それはその間に理論の進展、つまりEffective Field Theoryの発展があったことが大きい、と私は理解しました。
私、そのときに述べましたが、何でエネルギーを変える必要があるのかがよく分からないのです。500GeVの加速器ができるのだから、エネルギーを下げて実験すればいいのですよね。500GeVからどうして250GeVに積極的に下げる理由がわかりません。僕は逆のことを言ったつもりです。
何でエネルギー上げる方向に行かないのですかと。何かやっぱりそこがどうしても引っ掛かるのです。どうして250GeVにしなきゃいけない積極的理由というのが読めないからです。本当にエネルギーを下げることを書くのなら、国民に分かりやすく言うには、そこの部分をきっちり書かないといけないのではないか。何で250GeVでよくて、500GeVじゃなくていいのかというのを積極的に書くことが必要でないですか。今の話を聞いていると、何やら字句をぐじゅぐじゅ言っているだけで、ちっともそこが伝わらない。それだけはきちんとお願いしたい。

【中野座長】  全く大切かつ真っ当な御意見という。僕が真っ当というのは失礼なんですが。500GeVのマシンがあって、それを250GeVでオペレートするというのはできますので、金額とかいろいろなことを忘れてしまえば、500GeVのマシンを作って250でオペレートすればいいんじゃないかというのは全くそのとおりだと。

【酒井委員】  日本国のためにというか、将来のためにやる、世界で唯一の加速器計画になり得るわけですよね。それが何となく250GeVにした方がいいみたいな議論というのが納得いかないのです。

【中野座長】  2点ありまして、ここでいろいろ議論されていることの中で今狙うべき物理として何が一番大事だということでいくと、ILC500GeVを250GeVでオペレートするのが第1という、そういう議論になっていますよね。だから、250GeVになると断面積は最大になると。

【酒井委員】  それは理解しました。

【中野座長】  先ほど理論の進展ということがありましたけれども、一番大きいのは、やっぱり新粒子が届く範囲にはなさそうだということが大きくて、それを使って理論も発展していますので、その2点を使って250GeV運転ということが出てきた。250GeV運転をするときに、500GeVを作って250GeVでオペレートするか、それとも、初めから250GeVでオペレートして、結果が出たときに500にエクステンドするかというのは、これはいろいろな意見の方がいらっしゃると思います。酒井委員が、世界のために日本がというとき、まずは500GeVから始めようというのも、そういう意見もあって……。

【酒井委員】  いや、違う違う。もちろんそれもあるのですけれども、僕はエネルギーを上げた方がいいと思う理由の1つは、理論の発展というのが、Effective Field Theoryという、そこが若干、気になっています。現在いいと言う理論は将来変わりますよね。

【中野座長】  Effective Field Theoryは嫌いだという発言は覚えています。

【酒井委員】  変わるものをもってこっちの方がいいとおっしゃるのは、どうにも納得がいかない。

【徳宿委員】  よろしいですか。僕は酒井先生の言うことは全くそのとおりだと思います。1つは、多分資料1の2の250GeVILCの科学的意義についてというところでやっぱりきちんと書いておかなくちゃいけないのは、LHCでの結果を見た上で、「今やるべきことはヒッグスの精密測定が一番重要なのである」ということがはっきりしたということをまず最初に書いておくべきだとは思います。それがやっぱり一番の理由で250をやることだと僕は思っています。高い方がいいのはみんな思っていますが、浅井さんの話にもあったように、じゃ、500にするのか、600にするのか、400にするのか全然分からないわけです。だけども、250という明らかなやるべきところはあるからそこからやるというのが、これまで聞いてきたところの論旨だとは思うので、そこがやっぱりおっしゃられるように外に分からないようになっていては非常にまずいと思いますので、そういうところをきちんと書くというのは重要だと思います。
それから、250でできたのが有効場理論のせいだというのは、それも僕も酒井さんの言うとおりで、理論なんてもっとどんどん進展するものだと思います。それをことさらに強調する必要は全くないのではないかと思うので、有効場理論云々をこの中に書く理由が僕には余りありません。様々な実験データを総合的に扱うためのやり方の1つがあったということで、これから10年ぐらいの間にいろいろな方法が、これ、今後もあると思います。ですので、これを強調した形で書くというのは私も余り賛成ではありません。

【中野座長】  一方、精密測定と考えたときに、LHCの結果が、新粒子が出ていようが、出ていなかろうが、250GeVが本当はいいと分かっていたんだけど、500、500とみんな言ってたんじゃない?というようなところ、そういう意見が出たときに、きちんと答えられるような文章にしておく必要があると思うんです。だから、LHCで何も見つからなかったからやっぱり250GeVというアイデアが出てきたわけで、そこは有効場理論という言葉を使う使わないにかかわらず、何らかの分かりやすい説明が必要かと思います。
どうぞ。

【松本委員】  賛成です、すごく。僕の意見は、新粒子とか新現象の発見という博打の部分。博打の部分があったから500GeVにしたかったんですね。でも、LHCで(新現象が)見えなかったから、その博打の部分の重要性がある意味で減ったわけですね。なので、多分報告書でまず一番大事なのは、ヒッグスのプリシジョンがすごく重要であって、500から250にしたことによって博打の部分がどう影響されるかという議論はボーナスに関することなので、その次に来る、ある意味付随事項みたいな書き方になるんだと思います。

【中野座長】  どうぞ。

【駒宮委員】  やはり新粒子探索の必要性が減ったのが一番重要だと思います。250GeVにした理由でですね。

【中野座長】  精密測定ですね。

【駒宮委員】  そうですね。ですが、もう1つはやはり500GeVじゃないと、ヒッグスボソンのfull widthが測れないというのがあったんです。これは極めて致命的な問題でした。ですから、ノーマリゼーションが分からないとカップリングって分からないわけですね。そのノーマリゼーションを知るためには、ヒッグスのfull widthを測らなきゃいけない。そのためには、ヒッグスとWWのカップリングがきちんと測れないとノーマライズできない。これが有効場理論という言葉を使うかどうか分かりませんが、カストディアルシンメトリーとか何とかを使ってもいいんですが、でも、理論でもって……。

【中野座長】  分かりにくい言葉を使って何か……。

【駒宮委員】  いや、ちょっと言ってみただけですけれども。知っているというのを言ってみただけです。

【中野座長】  今の時点で却下です。

【駒宮委員】  まあいいや、却下してください。それで、だから、ヒッグスのfull widthをどうやってエスティメートするかという方法、それが理論的にきちんと確立されてきたということなんです。そこがやはり非常に重要なポイントだと思います。

【棚橋委員】  ただ、かなり、カストディアルシンメトリーとおっしゃいましたけれども、やっぱり仮定なんですよね。軽いところに何もないのでその仮定はもっともらしいんですけれども、一応仮定は仮定なので、その仮定の下でこれだけできるんだという話だと思います。それをこの文書にどこまで書くかなんですが、恐らく有効場理論という言葉は入れない方がよくて、あからさまにやはり軽いところに何もないので、もっともらしい仮定がいろいろできるのであると。その仮定の下で250GeVが最適なエネルギーであるということが分かりやすくなるようにすればいいんじゃないかと思います。

【中野座長】  どうぞ、松本委員。

【松本委員】  カストディアルシンメトリーを仮定しているんでしたっけ。してないですよね。してないです。だから、これはローレンツシンメトリーとゲージシンメトリーだけだから、つまり最もな仮定しかしてないんです。だけど、それまではただ単にカップリングごとに勝手に、ローレンツシンメトリーを破ってでも勝手に変えてデビエーションが何パーセントで見えるとやっていたんだけども、(今回は)場の理論には従っているはずだという仮定の下にやっているだけですよね。だから、もうちょっときちんとしている気がしている。

【棚橋委員】  いや、ただ多分、定義としてはディメンション6オペレーターで全部尽きていると。だから、ノンデカップリングな効果は何もないのであるというというのが多分恐らく正しい定義だと思うんですが、それも一応仮定は仮定なので。

【松本委員】  ただ、カストディアルシンメトリーほどはひどい仮定じゃない。

【棚橋委員】  軽いところに何もないというので非常にジャスティファイできる仮定ではあるんだけども、ある種の仮定をしていると。それはLHCの結果で何も新しい粒子が見えなかったので、皆さんがアグリーするようなものが出来てきたその結果として新しい解析ができるようになったということだと思うので、必ずしも理論が進展しているわけではなくて、今まであった理論を使って解析ができるようになったということだと思います。

【駒宮委員】  そうかもしれません。

【松本委員】  逆にこれまでは理論をきちんと使ってなかったと。どう書くか知らないんですけれども。

【中野座長】  どうせ測るから。

【松本委員】  そう、どうせ測るから、実験のオブザベーションベースで……。

【中野座長】  全部やればいいやという。

【松本委員】  本当はローレンツシンメトリーを満たしながら変えなきゃいけませんよねというのがあってという。

【中野座長】  分かりました。

【松本委員】  でも、理論的に発展と言っていいんじゃないでしょうか。

【中野座長】  どう書くかというのは工夫しなくちゃいけないところがありますけれども、やはり軽いところの新粒子がないという事実ないし非常に事実に近いだろうと思われる仮定に基いているというところを分かりやすく書いて、250GeVでの精密測定というふうにつなげたいと思います。
ほかに御意見ないでしょうか。
どうぞ。

【陳委員】  細かいことなんですけれども、資料3なんですが、ここに書いている、ヒッグス粒子結合定数の測定の前回両論ありとされていた部分なんですが、先ほどの話にあったように、500GeVのILCを作っても250GeVの運転ができるのですから、250GeVにしたことによって科学的意義が上がったということは多分ないと思うんです。よくて、変わらないということであって、上がるということは非常に難しいと思います。

【中野座長】  この表の部分も多分、一番最初に説明いたしましたけれども、500GeVと250GeVの比較という部分と、それから、当初の500GeVILCと、それから、LHCの計画を受けた後の見直し計画という、そういう側面があって、新粒子も発見されなかったので、今度は精密測定がメーンになるという意味で科学的意義が上がるかどうかという表にするか、それとも、500GeVと250GeVの比較にするかというのは考えるところです。だから、どちらかにするかでこのマークの位置は変わってくると思いますし、どちらかにしても議論は必要かもしれないです。

【駒宮委員】  この表なんですけれども、やはりどう見ても、ヒッグス粒子の結合定数の測定というところのこの幅が余りにも小さいです。幅が小さいだけじゃなくて、要するに、ほかと同じ1メジャメントになっている。もちろん一番上の新粒子というのはいっぱい種類がありますよね。でも、これはばくちですよね。その下のいろいろなメジャメントを見ますと、ヒッグスの結合以外はみんな1メジャメントなんです。このヒッグス粒子の結合定数の測定というのは、ほとんど素粒子の数だけメジャメントがあるわけです。素粒子の数だけここに書くわけにいかないですから、例えばレプトンとか、クォークとか、アップタイプクォークとか、ダウンタイプクォークとか、ゲージボソンとか、それから、グルオンとか、そのぐらいにちゃんと分けて、ここのところはやっぱり埋めてほしいと思います。これだと、極めてアンフェアですよ。

【中野座長】  最終的にはどちらの立場に立つとかそういうことじゃなくて科学的な意義を分かりやすく提示するということなので、もしこの表によって精密測定の意義が不当に小さく扱われているとか、あるいは今回の計画の見直しが何かというのが分かりにくくなっているというのだったら、表はどんどん変えていきます。ただし、そのときに、一般の方がウィキペディアを見ないと分からない粒子がいっぱい並んでいて、それで欄がどんどん増えていくことによって価値が上がるかといったら、それはそうじゃないと思うんです、やっぱり。だから、一体この計画あるいは装置によって何が最終的に分かるのかというところがメーンになる方がいいと思いますので、そういうところで工夫したいというふうには今のところ考えています。
はい。

【松本委員】  単なるアイデアなんですけれども、各ラインの背後の色を変えて重要度が分かるように。例えばヒッグスの精密測定のこの部分がすごく大事、それは多分みんなの意見が共通しているので、それはマジェンダでバンと書いて、だんだん背後を薄くしていってそれが分かるようにするとか、これが本当に重要なんだということが分かるような図にしたいという。

【中野座長】  まずはここの場で、何が重要で、何が重要でない、それから、何ができて、何ができないということをコンセンサスを得ることが大事だと思います。それさえ得られれば、それを表現するときに、分かりにくいとか、正確に表わしてないというのは順次変えていけばよいと思います。
どうぞ。

【駒宮委員】  ここでやっぱり非常に間違えやすいのは、ヒッグス粒子の結合定数の測定と書いてあるんですね。これ、1メジャメントに見えるんです。ところが、これ多くの結合定数の標準理論からのずれのパターンを見るわけですよね。

【中野座長】  はい、そうです。

【駒宮委員】  それのパターンを見るわけですね。だから、パターンを見るということをちゃんとここのところに書かないと分からないですね、重要性が。

【中野座長】  それは本当にそうかと思います。

【初田委員】  そもそも論で申し訳ないんですけれども、酒井委員がお話しされたので、この委員会のミッションを再度正確に理解したいのでお聞きします。この表にあるように、250GeVに見直した場合のサイエンティフィックな意義だけをを評価するのか、あるいは国際リニアコライダーコラボレーションのレポートにあるような250GeVから500GeVへ段階的に上げていく第1段階として250GeVから出発する、ということの全体の意義を評価すべきなのでしょうか。

【中野座長】  今の見直し案についての科学的意義というふうに考えていただいて結構です。

【初田委員】  そういう意味では、250GeVから500GeVまで全体を含めたという意味ですね。

【中野座長】  いや、そうじゃなくて。

【初田委員】  じゃなくて、250GeVだけで?

【中野座長】  250だけです。

【初田委員】  分かりました。

【徳宿委員】  いいですか。

【中野座長】  どうぞ。

【徳宿委員】  その意味では、だから、やっぱり資料3を新しくわざわざ作る理由が余り僕はないような気がするのです。このミッションは結局、この前の同じ委員会でこの資料2を作ったわけで、これで今、この資料2の方の赤枠のところになったというのがまずここの委員会で分かったというのと、この赤枠の中で両論併記みたいなところをはっきりさせたということが分かればいいのと、それが250になったときにどうかという、その3点だけ資料2をちょっとモディファイして作って、資料3をわざわざ作る必要はないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

【中野座長】  マシンとしてはやっぱり500から250に変わったというのは非常に大きな決断なので、250GeVに変わったときに当初やろうとしていたことが全くできなくなるんじゃないかという心配とか、そういうことは当然出てくると思うんです。我々はここで議論しているので、できるものもあれば、できないものもあるし、500でもできないものがあるというのは分かっているんですけれども、その比較はやはり表としてまとめる必要があると。

【徳宿委員】  だから、一番大事なのは、細かい各項目で丸バツではなくて、全体として500のときと250でLHCの結果を踏まえた上でどうなったかというのを書くと言うことです。最終結論というのをやっぱり外の人は知りたいわけですよね。それは、だから、資料3のようにいっぱいあって、丸バツがあちこちにあるのではなくて、表2の赤のところに2つ付けておいて、今確認したらここで、かつ250にしてもここだという表があるというのが僕は一番重要なことだと思います。

【中野座長】  表の内容については、欄を増やすという案と、それから、欄をもっとシンプルにして減らしてしまってまとめるという案、両方とも出ていますので、それはもう、先ほども申しましたけれども、この場でコンセンサスが得られましたら、それを反映する一番いい表にまとめていきたいと考えております。

【板倉大臣官房審議官】  ちょっとよろしいですか。

【中野座長】  どうぞ。

【板倉大臣官房審議官】  この資料3の意味合いなんですけれども、今、私どもがいろいろ素粒子物理学について知見のない方々と、しかし、非常に重要なステークホルダーの方と議論しなければいけないときに、このILCというのは一体何をやる施設なのかというところが実はまだ揺れているわけなんですね。要は、人によっては、これは暗黒物質を見るための装置だと思い込んでいる方もいらっしゃいますし、あるいは正しくと言ったらあれですけれども、ヒッグス粒子の精密測定というのが今は一番重要なんだと捉えられる方もいるんですけれども、やはり今500GeVから250GeVに変わったところで本当にILCというのは何ができて何ができないのかということをこの場でしっかり整理していただければ、私どもも素粒子物理学に余り知見のない方と議論するときに、なかなか暗黒物質というのは難しいかもしれませんけれども、ヒッグス粒子の精密測定はこの250GeVでできるんですよといったようなこともしっかり説明ができるので、そういった点も是非この場で御整理いただければと思います。

【徳宿委員】  もちろんそのとおりだと思いまして、そういうまとめをきちんとするというのは大事だとは思います。ただ、そのときに、この前の回で理論の人のトークとかでもありましたように、表を作って星取表と思ってはいけないとかそういうのは明らかにありまして、ここでも今、表をたくさん作り出すと、項目を幾つにするかとかいう、余り正しい方向でない方向に行く可能性はありますので、だから、結論を付けられるような形のものはきちんと作って、単にいっぱい表があって、ぱっと見て数で決められる、判断するというものには到底できないので、そういうものはできるだけ避けた方がいいのではないかと私は思います。

【板倉大臣官房審議官】  先ほどからこの表について非常に高い評価を頂いておりますけれども、私ども、できれば、正確な、正確なというのは、余り素粒子全部書いていただいても私も全然分かりませんので、やはり250GeVと500GeVの違いがどこにあるのか、それが本当に一般の方々にも、あるいは私も説明できるようなものができればいいと思います。そのときに、例えばヒッグス粒子の精密測定が非常に重要であるということであれば、この表で色を変えていただかなくても、そういうふうに報告書に書いていただければ、我々はそういうふうに説明ができるかなと思いますので、この表で全てが決まるということではなくて、素材をしっかり本当に科学的に整理いただければ、私どもとしては非常に助かるということですので、よろしくお願いいたします。

【中野座長】  表の書き方というか表の作り方というところに話が行ってしまいますと、結構好みもありますので、難しい問題になりますので。
時間は十分あると言いましたけれども、限りもありますので、1つ、この両論併記のところ、新粒子が見つからなかった場合に精密測定の科学的意義が上がるか変わらないかという、その両論併記あったんですけれども、この点について少し御意見頂いておきたいと思います。もう既に何名かの委員の方は発言されているんですけれども、500GeV、250GeVにかかわらず、精密測定というものはLHCの結果を受けて上がったのか、それとも変わっていないのかということについて御意見頂きたいと思います。

【棚橋委員】  よろしいですか。

【中野座長】  はい、どうぞ。

【棚橋委員】  私は確実に上がったと思っています。どうしてかというと、先ほどから出てきましたけれども、何もないという結果は非常に大きな結果だったんですね。そのおかげで、今まで実は有効場理論ってずっとあったわけですけれども、使えるかどうか分からなかった有効場理論が使えるということが分かって、それで正しい解析の下で精密測定ができるようになったという意味で、精密測定に関する評価はむしろ、悲しいことに結果がLHCで何もなかったことによって確実に上がったと私は判断しています。

【中野座長】  非常に強い意見の後に反対の意見を言うのは勇気が要るんですが、反対の御意見の方いらっしゃいますか。
どうぞ。

【横山委員】  反対ではございません。ちょっと素人的な目線で、この表の上の方の濃いバーのところは、LHC13TeVの運転の結果を踏まえてというふうにあるんですけれども、その下の薄いところは500GeVからの見直しによる科学的意義って、これ、違うことですよね。多分分野外の方が見ると、500が250になったら当然科学的価値は下がるだろうという前提の下で見るので、これ、LHCの結果を受けてなのか、それとも、500から250なのか、どっちか整理していただきたいです。

【中野座長】  その点はもう一番最初に表を御説明したときに、僕がこの二通り……。表自体、多分工夫しないといけないと思うんですけれども、今議論したいのは、精密測定の科学的な価値がLHCで新粒子が見つからなかったことによって我々は上がったと考えているのか、それとも下がったと考えているのかという、その点についてだけ。前回はそこ、両論併記になってしまったんですね。だから、そこをまず整理したいなと思うんです。
どうぞ。

【初田委員】  棚橋委員のご説明がよくわからなかったのですけれども、500GeVがもし作れたとして、それで……。

【徳宿委員】  LHCの結果を見て。

【初田委員】  LHCの結果を見た上で、かつ500GeVが作れたとして、250GeVが作れたとして、両方あった場合に例えば……。

【中野座長】  いや、250GeV、500GeV関係なく、精密測定そのものの科学的意義は上がったか、変わらなかったか、そういうこと。

【初田委員】  そうか。

【早野委員】  この表はそういうふうに出来てないから。

【中野座長】  そうなんです。そういう表になってないんですけれども、まず表は離れてということです。

【初田委員】  え?

【中野座長】  表を離れて。

【初田委員】  あ、表を離れて? この表は違いますね。そう書いてないですね。

【中野座長】  ええ。

【初田委員】  分かりました。

【中野座長】  どっちかというと、前回の資料2を見ていただいて、両論併記になっているところをまず整理しようということです。

【梶田座長代理】  ちょっといいですか。この科学的意義のことを考えるときに、もちろん精密測定が重要だということはそうなんだけど、一方でそれが実際精密測定をやったときにスタンダードモデルからのずれが見える可能性はどうかということを考えると、もちろんどんなハイエナジースケールまで見えるというわけじゃないので、やっぱり見える可能性ということについていうと、やっぱりそこら辺も少し考えないと、単に精密測定の重要性が上がったからそれで全てだというのだけでは科学的に正しくないんじゃないかなという気はします。

【中野座長】  フィージビリティという点ですね。

【梶田座長代理】  実際に見える可能性。

【中野座長】  それについて、これは駒宮委員ですか。

【駒宮委員】  それは多分500GeVでも250GeVでも変わらないと思います。

【梶田座長代理】  それは変わらないと思います。

【中野座長】  今、250GeV、500GeVじゃなくて、今の梶田さんの御意見は、LHCで新粒子が見つからなかった。だから、エネルギースケールが結構高いところまで行かないといけないんじゃないかと。それがどんどん高くなってしまったらずれないでしょう。だから、新粒子というものに対して可能性が低くなったように、精密測定に対してもハードルが上がったのではないかと、そういう御意見ですね。

【梶田座長代理】  そうです。

【中野座長】  それについて。

【駒宮委員】  ちょっと待って。

【中野座長】  ちょっと待って? どなたかどうですか。

【早野委員】  じゃ、そのちょっと待っての間に。資料2と資料3で、資料2にはあった、これもなかなか難しい表現ですけれども、国際的な求心力という欄が資料3はないんですけれども、これはどういう扱いをしているという理解でよろしいでしょうか。

【中野座長】  科学的意義が一段落したらこちらにも行こうかなと思っておりますが、意義と求心力を一遍に議論するとなかなか難しいことになると思いますので。

【早野委員】  分かりました。

【中野座長】  では、松本委員。

【松本委員】  多分に個人的な意見がはいっているかもしれませんけれども……。

【中野座長】  全員個人的な意見ですから。

【松本委員】  そうですか。じゃ、思い切って。LHCで見えなかったことによってヒッグスの精密測定でデビエーションが見える確率が減ったかというと、僕はそうは思っていなくて。見ているところが違うので。だから、それの点では変わらないというのが僕の意見です。LHCで見えたからといって、例えば仮に見えた世界があったとして、見えたとして、ヒッグスプリシジョンしたときも、見えなかった今の世界でヒッグスプリシジョンをしたときも、多分確率はそう変わらないんじゃないかなと。

【梶田座長代理】  非常に素人的に考えると、非常にナイーブな例えばスーパーシンメトリーのモデルを考えたときに、マススケールは基本的にどんどん上がっているわけですよね。ということは、基本的にはやっぱりデビエーションの見え方は小さくなる方向に、少なくとも大きいデビエーションは排除される方向に行っているんじゃないかというのがナイーブな考え方なんですけれども、それは違う?

【松本委員】  そこなんです。例えばSUSY模型でヒッグスのデビエーションを生み出すところのセクター、ちょっと専門的になりますが、このセクターというのは多分、2ヒッグスセクターであるとかそういうところから来ていて、そこはLHCの観測ではまだ制限されていないので。

【梶田座長代理】  そうですけれども、それは、でも、例えばあるモデルを仮定すると、そういう意味ではやっぱり何かしら制限は付くわけですよね。

【松本委員】  そうですね。だから、モデルによっては例えばグルイーノの質量と重いヒッグスが連動していて重くなると見えなくなるし、連動してなければ重くならないしという。

【梶田座長代理】  そうそう、そうです。もちろんそういういろいろな可能性はあるんだけど、非常にナイーブに考えて、モデルを考えてしまうと、連動があると思ったらば、やっぱりLHCの結果というのは……。

【松本委員】  連動があったら確かに重くなるから、見える確率が減りますよね、確かに。でも、連動があるモデルを仮定して……、難しいですけれども、そういう感じでしょうか?

【梶田座長代理】  昔のこの井桁になっているところの議論をちょっと思い出して。

【松本委員】  そうですね。

【中野座長】  山中委員。

【山中委員】  駒宮さん待っている間。資料3の備考のところですけれども、ヒッグス粒子の精密測定により質量が2~3TeVの新粒子が介在する標準理論を超える新物理の探索が可能になる。でも、例えば2~3TeVの新粒子ってLHCで見えないんですかとかいう、そういう外から素朴な質問も出ますよね。だから、そこにちゃんと、先ほど250GeVでヒッグスの精密測定をして何ができるんだと。精密測定できます。でも、できたから何ができるんだ、それで本当にLHCでそれ見えないのかって、そこをやっぱりはっきりさせないと、何のためにやるんだというところが説得しにくいのかなと思います。

【中野座長】  だから、間接的にしろ、粒子がないといけないと。そのエネルギースケールが分かったときに、そのエネルギースケールの粒子というのは、LHCで見つけることができる手の届く範囲にあるのか、それとも、そうじゃないのかというところですね。そこをはっきりしろということですね。
何か御意見。
はい、どうぞ。

【駒宮委員】  そこは;藤井先生の話でいろいろなモデルに対してどのぐらい見えるかというフィージビリティがございましたね。そのグラフがございましたよね。それ、何ページでしたっけ、藤井先生。それを見ると、要するに……。

【中野座長】  資料番号は?

【駒宮委員】  資料番号? 資料番号15ですね。15の、ページがないな、これ。なぜヒッグス結合の精密測定は重要かというところですね。そこのところの、いろいろなモデルがあって、それに対して標準モデルとの違いとか、モデル間の違い、それが何σぐらいでデビエーションが出るかというのが、これ、何ページになるんだ?

【中野座長】  皆さん多分同じページ見ているので。

【駒宮委員】  ヒッグス結合測定の新物理への感度というやつ。ここで出ているモデルというのは全て、アップグレードしたLHCでも見えないモデルです。それが非常に重要なポイントで、そういうモデルでもかなりの場合、5σ以上で検証できるんです。少なくとも3σ以上では検証できるんです。だから、それが答えです。

【中野座長】  今の説明を受けて、聞こうと思っていたんですけれども、どう思われますか。

【山中委員】  ただ、見えないモデルが並んでいるけれども、これはどのぐらいの多くの中の9つなのかとかいうのが分からないと本当に小さな可能性だけ挙げているんじゃないですかなんて言われると困りますよ。

【駒宮委員】  これ、非常にティピカルな場合ですよね、このいろいろなモデルが載っているのは。ティピカルな場合でLHCで見えない範囲のところに行ったときにどうなるかということですね。

【山中委員】  だから、その辺を分母というか、それを明らかにしてあげた方がいいと思います。

【徳宿委員】  僕ばっかり話してすいません。LHCの結果を見て、やっぱりヒッグスの精密測定の価値というのはもちろん上がったと思いますというのはさっきから言っていることの繰り返しになりますが、それがどうしてかというと、LHCでもヒッグスのカップリングの測定がやれるわけですけれども、LHCで新粒子とかが見つかっていたならば、僕らのLHCでやれるレベルでのヒッグスの測定でも何か出てくるかなというところはあったわけですよね。ところが、やっぱりこれだけ新粒子の兆候がないと、本当に力を入れてヒッグス精密測定をやらなくてはいけないんだというところはあるんだと。だから、LHCレベルじゃなくて、やっぱりそれよりはるかにきちんとした精度でヒッグスをやるべきだという感じがヒッグス辺りをやっている人たちの感覚になってきているのではないかと私は思います。だから、そういう意味でやっぱりLHCで新粒子がなかったというのは、精密測定の意義というのはそういう意味で上がっているんじゃないかなと私は思います。
ただ、山中さんの言うのもそのとおりで、でも、また見つからなかったときにもそれも意義があるのだというのをきちんと言わなくてはいけないと思います。それは多分浅井さんのトークとかで出てきていたのだと思うのですが、あれも難しいトークだったので、どうサマライズ僕がすればいいのかよく分からないけれども、何かそういう表現は入れるべきだと思います。

【中野座長】  今の御意見は、LHCで新粒子が見つからなかったので、精密測定の意義は上がったと、すべきであると。さらに、精密測定をして、それでもすれが見られなかった、ILCの250GeVでもすれが見られなかったときの科学的意義もきちんと書くと。

【徳宿委員】  意義もきちんと書くと。

【中野座長】  これについて御意見ありますか。どなたか言うべきですね。

【駒宮委員】  それはもうちょっと待っててよ。

【中野座長】  では、待ちましょう。

【駒宮委員】  すいません、先ほど板倉審議官が非常に重要なポイントをおっしゃっていたと思うんですけれども、要するに、この最終的な目標は一体何かということですね、250GeVのILCの。これはやはり、一般の人にどういうふうに言うかというのは非常に難しいんですが、素粒子物理の将来的な方向がどういう方向に行くかというのをこれで見極めるというのがポイントなんですよね。そこで多分、標準理論とかそういう言葉を使ったんじゃ訳が分からなくなると思うんですね。非常に重要なポイントは、スーパーシンメトリーというのがあって、それから、コンポジットモデルがあるわけですね。この両方どちらの方向に行くかというので大きく分かれるわけですね。これを、一般の人にどうやって説明したらいいのか。
スーパーシンメトリーとか、エキストラディメンションとかは時空概念ですよね。だから、時空概念という言葉がわからないと大変困るんですけれども、我々の4次元の時空、この時空の概念を拡張するということ、それが1つの目標ですよね。それからもう1つは、コンポジットというのは、要するに、物質の階層性、つまり分子があって、原子があって、それで、プロトンがいて、エレクトロンがいて、クォークがいるという、そういう階層性ですね。その階層性をもっと深めるということなんです。このどっちかができるということです。そこはやっぱり非常に重要なポイントだと思います。だから、これをどうやったら簡単な言葉で一般の人に伝達できるか。
要するに、ヒッグス粒子の精密測定自身が目的じゃないんです。手段なんです。最終的な目的というのは、これからどういう方向に素粒子物理なり宇宙論が向かっていくかという方向を見極めるというのがヒッグスファクトリーの目的だと思います。
【中野座長】  精密測定によって道しるべの方向を決めるということで、僕はそれで構わないと思うんですけれども、今の山中さんの御意見は、その道しるべがどこも指さなかったときどうするんだという。それでも価値があるのかというところが。やっぱり新粒子の探索とかだと、あるかないかなので非常に分かりやすいんですけれども、やっぱり精密測定になると、道しるべの矢印の向きの正確さとか、どこも向いてないとか、そういうことが出てきますので、そういうのも含めてやっぱり意義を判断しないといけないんじゃないかなと私も思います。

【山中委員】  だから、例えばずれが見えなかったら、これ、失敗でしたというふうにとらわれないようにちゃんとしておかないといけないと。

【駒宮委員】  そうですね。それはそうですね。

【中家委員】  さっきの話で浅井先生のプレゼンテーションとかを思い出してみても、やはり次のエネルギースケールが2~3TeVのところにある場合に見える、若しくはそこには全くなくてずれないということがはっきりするということを次の戦略としてやるんだというのがポイントだったと思うんです。だから、2~3TeVに次のエネルギースケールがあるというのがどれぐらい道しるべになるものかなんだと思うんですけれども、浅井先生のトークだと、やっぱりヒッグス粒が125GeVにあり、エレクトロンウィークのあれがあるので、2~3TeVぐらいまでにはあるか、若しくはそこを超えてずっと。それがどれぐらい確からしいかなのかなと思うんですが。

【中野座長】  何か御意見ありますか。
松本委員とかどう思いますか。

【松本委員】  多分オーダー1TeV、2~3TeVまでにあるとみんながこれまで信じてきた理由は、いわゆるナチュラルネスにあって、これまでの物理ではナチュラルネスというか、何か新現象があったらそのすぐ上に何か起源があってと、こうやって進んできたんだけども、その研究スタイルを変えなきゃいけなくなってくるんですよね。浅井さんのトラペではそういう書き方をしているし、藤井さんのトラペでは、新しい考え方としていきなり人間原理にすっ飛ぶのかというのはあるんだけども、という(話です)。だから、それの境目が2~3TeVであるという。浅井さんのトラペによると、だから、もしそうなったら、ボトムアップで調べることはもう難しくなって、トップダウンで例えばもう上の方で全て決まっていて、下では不自然に見えるんだけども実は自然になっていますよとか、そういう方向性を探っていかなきゃいけなくなる。だけど、これをうまく言葉で説明するのは僕には無理です。

【中家委員】  なぜ今そんな話をしたか。例えば京都大学で河合さんとかは、もうこんな2~3TeVに縛られるなというような、近いようなことを、ずっと近くで言ってくる人がおるので。

【松本委員】  河合さんは第3の道の信者だと思います。もう最初からナチュラルネスなんかじゃなくて、上の方のストリングで全部決まっているんだという。だけど、それはワンオブゼムの意見だと思います。

【中野座長】  それが分かったときどれだけすごいかということですよね。だから、人間原理みたいなものでこの世の中決まっていると

いうことがもし分かるとしたら、それがどれぐらいすごいのか。本当に人間原理なのかというのも含めてですね。

【藤井教授】  よろしいですか。

【中野座長】  どうぞ。もちろんです。

【藤井教授】  今の、ずれが見つからなかった場合というので河合さんのお話が出たので。彼が言っていることは、もし彼のシナリオのような場合には、スタンダードモデル(標準理論)でずっとGUT(大統一理論)スケール、プランクスケールまで行っちゃうわけですけれども、スタンダードモデルの真空の安定性を見ると、非常にヒッグス場の値の大きいところにもう1つバキューム(真空)があって、それが今の我々のバキューム(真空)のエネルギーレベルと、完全に縮退しているというような予言をしていて。
そういう場合には、先ほどの真空の安定性のダイアグラム(相図)がありましたけれども、準安定と安定のぴったり境界のところに乗っかるという、そういう予言があって、その場合には、先ほど出てきた赤い点みたいなトップマス(トップ質量)の測定があれば、本当にその境界のところにぴったり乗っているのか、準安定の中にしっかり入っているのかというようなそういう見極めができて、もしぴったり乗っているというようなことが次のレベルで確かめられれば、それはもう本当に画期的な発見というか、そういうことになるんだと思います。

【中野座長】  今の話を聞くと、ずれが全く見えなかったときには、もしかしたらトップの質量の精密測定に興味が移るかもしれないという、そういうふうに考えてよろしいですか。

【藤井教授】  そうです。

【中野座長】  どうぞ。

【早野委員】  2~3TeVに何かあるかどうかって、これと、LHCのルミノシティアップグレード後に開けてくる何かが見える可能性の関係はどう理解すればよろしいですか。ILCは置いといて。

【駒宮委員】  LHCのアップグレード後というのはどういうこと?

【早野委員】  ルミノシティアップグレード。ハイルミ、ハイルミ。

【駒宮委員】  だから、先ほど言ったのはハイルミの話なんです。ハイルミでできないところを表にしたんです。

【早野委員】  さっきの表ね。

【駒宮委員】  そうです。

【中野座長】  大体今の点については御意見皆さん伺って、新粒子が見つからなかった場合の精密測定の意義は上がるということで大体よろしいかと思います。
次に、500GeVと250GeVの違いですね。何に集中して何を諦めたかというところなんですけれども、これ、精密測定について2つ意見があって、やっぱりコストパフォーマンス的に250GeVでやるべきだというのと、それから、500で作っておいて250で走ればいいじゃないというのがあるんですけれども、この点について何か御意見ありませんか。
これについてはこちらで案を考えてお出しするというのでよろしいですか。
どうぞ。

【松本委員】  ヒッグスの精密測定に関しては、500でも250でも必ずそれができます。

【中野座長】  できますよね。マシンとして200でも250でも、500のマシンで250GeVで走ることとか。

【松本委員】  できますよね、250でも。多分僕がいつも思うのは、違いが現れるのは、新粒子・新現象探査のところにわずかというか、やや違いが出るという意見です。

【中野座長】  やや違いが出ると。今の場合、小さな違いというところを重視して初めから500GeVを作るほどの違いではないというか、そこ、先ほどばくちというような……。

【松本委員】  そうですね。というのは、前回の会議は、多分LHCがまだ走っていて、LHCで見つけたものを500GeVまであれば見える可能性があるというのが残っていたわけですね。

【中野座長】  はい。

【松本委員】  でも、それがある意味なくなったわけです。そうすると、LHCでカバーしていないところの発見になりますけれども、そこの差はやっぱり多少あるというような(気がします)。

【中野座長】  どうぞ。

【駒宮委員】  あと、やはりヒッグスのプリサイズメジャメントですね。例えばヒッグスの質量だとか何とかはどういうふうにルミノシティを配分するかによりますが、全く同じルミノシティを全部250GeVで走らせたときと、半分ずつ250、500とやったときでは、やっぱり250で全部やった方がいいんです、低いエネルギーでやった方が。だから、そこはやっぱりヒッグスのプリサイズメジャメントに関しては250にデディケートしてやった方が、その方がルミノシティも高いですし、その方が数がいっぱい出る。

【中野座長】  どうぞ。

【山中委員】  これ、例えば500GeVだったら時間掛かるけれども、250だともっと実現可能性は高いって、だから、早期実現とかいう、そういうようなニュアンスというのはどこかに、これ、入れるんですか。

【中野座長】  建設に掛かる期間とか?

【山中委員】  うん。だから、早く物理に到達するためにはという、そういうような観点というのは入るのか、入らないのか。下世話過ぎるのか、ここには。

【中野座長】  というか、250GeVがヒッグスの生成断面積一番大きいところであるというのは、それは確実に入ると思います。

【酒井委員】  でも、それって前回から分かっていたのではないですか?

【中野座長】  前回から分かってます。前回から分かっていて……。

【酒井委員】  だから、何というか、自己矛盾というか。それだったら、何で前回、250GeVと言わなかったのと言われたときどうするのでしょうか。

【中野座長】  前回はWフュージョンで、Wとのカップリングを測らないといけないと思い込んでいた。

【駒宮委員】  そうです。そこがポイントですよ。

【酒井委員】  でも、次やったら、トップの350GeVを実は視野に入れとかなきゃいけなかったって、どんどんそうなっちゃう。だから、やっぱりどうして500GeVから250GeVに変更する積極的な理由を書かないとまずいのではないかと言っているのです。前回の結論と自己矛盾しちゃいますよね、このままだと我々が無能だったと言っているだけになりますよね。

【駒宮委員】  いや、無能だったわけじゃないですよ。

【酒井委員】  だって、前回との差というのは理論とLHCの結果が、まあもういいですか。

【駒宮委員】  1つは、理論的な進展があったわけです。もう1つは、一番大きいのは、やっぱりLHCの結果です。LHCの結果を見たというのが。この前はLHCの結果はまだ見られなかったんです。そこがやっぱり一番大きな違いです。

【酒井委員】  でも、500GeVだってできる、250GeVにすればいいんだから。理由がないですよね。

【中野座長】  多分酒井委員の御意見は、前回LHCの結果を見てから方向性を決めろということを、我々、科学的意義に関してもそこで決断しなさいということをまとめたわけですけれども、500GeVを作って250GeVで走るという、そのやり方というのは、もうLHCの結果が出る前から分かっていたと。だとしたら、その時点で500GeVのILCを作れということを決断して……。

【酒井委員】  言うべきだと。

【中野座長】  状況が変わったので、250GeVで走るというので構わないんじゃないかということですね。そういうことをおっしゃっているんです。

【酒井委員】  はい。

【中野座長】  あるかもしれないです。
はい、どうぞ。

【横山委員】  FAIRとかXFELの話が次回ヒアリングがあるというふうに伺って楽しみにしているんですけれども、こうした話がここに入ってくるのも、ICFAの御提案があってということで、日本が母体になってITERのような国際協力ではなくて、日本が主導のプロジェクトにしたらどうかという提案があって、250になり、こういう話が入ってきたと思います。そもそもこの部会が設置されているのは、先ほどからいろいろ御意見あるように、物理の意義をちゃんとコミュニティで合意形成していただいて、それを更に報告書としては一般の方にも分かるように書いていただくというところがミッションなので、3ポツの話がここの報告書の真ん中に入ってくるのは非常に違和感がございます。
もう少し言うと、体制・人材部会の方でITERを含めた体制についてはかなり議論して、そのときには、ITERをやるためにフランスは核融合のほかの分野を全部潰したんだとか、そういう踏み込んだ話まで入っていました。ここではそれはしないというふうに思ってはいますので、部会の中の活動としては、もちろん今のタイミングでXFELとかFAIRの実例は伺いたいところで、資料としては残したいんですけれども、3ポツの中に入れるのはやめておいた方がいいんじゃないかなというような印象です。そういう政治の話はまた置いといて、ここはやっぱり、ここで完成させていただいて、それを分かりやすく書くというのはまたその次のステップで。その次のステップは是非お手伝いしたいと思いますので、頑張って合意形成を進めていただければと思いました。感想みたいなのですいません。

【中野座長】  どうもありがとうございます。ここに3ポツ入っておるのは、一番最初に御説明しましたけれども、前回でもLHCとSSCの話を入れたということが、それにならった、前例にならったということで、それが1つと、それから、LCBの方の提言で、こういうやり方やりなさいと、この2つの計画が明示されていると、その2つの点なので、入っております。それで、次回ヒアリングしまして、もし入れる必要ないという結論になりましたらもちろん抜きますけれども、その中で何かしら残しておくべきことがあれば入れておいていいんじゃないかというふうに。

【横山委員】  ありがとうございます。残した方がいいと思うんですけれども、この3ポツという、素粒子の議論をしている真ん中に入れるのはやはり違和感がございます。だから、参考資料とか、そういう添付にしていただければと思います。

【中野座長】  あ、場所ですか。分かりました。場所については変えていくというか、一番いいところに収めたいと思います。
はい、どうぞ。

【駒宮委員】  やはりこの3ポツは、ここに入れるという理由が必要ですよね。ここというか、どこに入れるか分からないけれども。ここはやっぱりサイエンスの話にデディケートしているんだから、これはいくらICFAの声明にこういうものが脚注に載っていたとしても、これは全く載せない方がいいんじゃないかと思います。

【中野座長】  御意見は伺いましたということしか。今それは議論しないということにさせていただきたいと思います。
時間たっぷりあると思っていたんですが、あと5分ぐらいしかないんですけれども、何か。

【初田委員】  酒井委員の御質問に対する答えとして、松本委員が言われたことをもう一回言うだけなんですが、500GeVのときは二兎を追っていた。それは新粒子の発見と精密測定。しかし、そのうちの片方を追う必要がなくなったあるいは追う意義がなくなったので、エネルギーを下げて、残っている方の精密測定に集中する、そういうことだと僕は理解しました。この観点からは、 250GeVから500GeVに段階的に上げていくということに意義があるのかどうかは私にはよく分かりません。

【中野座長】  どうぞ。

【早野委員】  3ポツの議論を次回するということで、若干絡むんですけれども、要するに、250にしたときに40パーセントお得という、そのことはどこにも書かないという? これはそのことは外から降ってきた話で、ここは物理の話だけするという、そういう理解ですか。

【中野座長】  そういう理解で結構だと思います。

【早野委員】  でも、3を議論すると、そこに触れるわけですよね、多分。何で3が出てきたかというのは……。

【中野座長】  それは次回議論してからです。前回やはり議論した内容が科学的意義と国際的な求心力というその2点で、もしかしたら求心力にはコストも絡んでくるかもしれませんので、それが絡んでくるという文脈の中では例えば40パーセント削減ということが出てくるかもしれないです。ただ、議論すべきことは……。

【板倉大臣官房審議官】  コストの面については、これ、別途、もう1つ作業部会で、そちらの方で出された、250GeVが本当に40パーセント引きになるのかどうかということも含めて、検証を並行してお願いしておりますので、そちらの方で整理されると思っております。

【陳委員】  私はちょっと部外者なので、素朴な質問なんですけれども、表の2番目、ヒッグス粒子精密測定による新たな物理の探索ということで、先ほど駒宮さんも、全体の意義は物理の方向性を決めることであるという話だったんですけれども、私みたいな部外者から見ると、それは何かいかにも物理のための物理みたいな話で、一般の人から見たら、もう少し自分たちの世界観というか宇宙観、そういうものと結び付かないと、これ、何のためにやっているのかよく分からないところが私はあると思うんです。だから、もうちょっと表現をうまくして、もうちょっとみんなの普通の生活と結び付くような、そのためにやっていますよという表現に少し直した方がいいという気がします。

【中野座長】  ここのところは横山委員にも協力していただいて、分かりやすい言葉にしたいと思います。
よろしいでしょうか。大体皆さん言いたいことをおっしゃって、みんなから総反発を食らう意見もなかったようですので、大体いいところに収まったんじゃないかと考えております。これを基にもう少し案を深めていきたいと思います。

【棚橋委員】  ちょっとだけいいですか。

【中野座長】  どうぞ。

【棚橋委員】  すいません。資料3なんですけれども、これ、資料3と資料2の対応関係が多分、資料2の赤で囲ったものが資料3のどこに対応するのかというのが、必ずしも専門家じゃない人には明快じゃない気がして。しかも資料2と資料3で順番も入れ替わっているので、少なくとも資料2の順番で、もともと資料2の段階で精密測定が重要だと思っていたということが分かるように資料3をしていただければと思います。

【中野座長】  分かりました。
ほかに御意見ありませんか。よろしいですか。
そしたら、以上で本日の議題終了となります。本日頂きました大変たくさんの御意見については、整理して、もう少し文章化した形で次回の会議で更に議論を深められるようにしたいと思います。
次回第4回では、前回の作業部会でもILCの求心力ということがテーマになりましたので、今回ILCステージングレポートのLCB声明に例示されたFAIRとXFELについて事例紹介をしていただき、ILCのケースについて議論したいと思います。会議の後半では、本日の議論を踏まえた本文と表の修正版を、これ、かなり難しい宿題になってしまったんですけれども、議論したいと思います。
最後に、事務局から連絡事項があります。

【吉居加速器科学専門官】  お伝えします。本日の議事録でございますが、後日委員の皆様にメールにて内容確認をお送りし、その後、当省ホームページにて公表させていただきます。
次回の日程は、資料4にございますとおり、4月13日金曜日の14時からの予定でございます。会議は14時から16時で2時間としておりますが、議論の状況により延長の可能性もございますので、予定としましては17時まで時間の確保をお願いいたします。
以上でございます。

【中野座長】  それでは、本日の会合を終了いたします。ありがとうございました。


―― 了 ――

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