国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議 体制及びマネジメントの在り方検証作業部会(第4回) 議事録

1.日時

平成29年5月23日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. ILC-PIPにおける加速器の工業化・量産構想
  2. これまでの大型国際共同プロジェクトにおける体制及びマネジメント事例について(欧州合同原子核研究機関(CERN))
  3. その他

4.出席者

委員

観山座長、徳宿座長代理、飯嶋委員、伊地知委員、市川委員、川越委員、北村委員、佐藤委員、高津委員、田中委員、中野委員、永宮委員、山本(明)委員、山本(均)委員、横山委員

文部科学省

関研究振興局長、板倉大臣官房審議官(研究振興局担当)、渡辺振興企画課長、岸本基礎研究振興課長、轟素粒子・原子核研究推進室長、吉居加速器科学専門官
三原科学官

5.議事録

【吉居加速器科学専門官】  それでは、定刻になりましたので、よろしいでしょうか。本日もよろしくお願いいたします。
 それでは、開会に先立ちまして、事務局よりご連絡をさせていただきます。本日の会議は公開としております。本日はプレス1社から撮影の希望がございましたので、冒頭の撮影を許可したいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【吉居加速器科学専門官】  ありがとうございます。撮影希望の方はお願いします。
 よろしいでしょうか。それでは、撮影につきましてはここまでとさせていただきます。
 観山座長、よろしくお願いいたします。

【観山座長】  それでは、国際リニアコライダーに関する有識者会議、体制及びマネジメントの在り方検討作業部会(第4回)を開会いたします。
 本日は、お忙しい中、お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。
 それでは、本日の出席状況等について事務局よりお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  本日は、委員全員に御出席いただいており、定足数を満たしておりますので、会議は有効に成立しております。
 以上です。

【観山座長】  それでは、続いて、事務局より配付資料の確認をお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  お手元の資料をごらんください。本日は資料の5点となってございます。資料の1番が、本日御発表いただく山本委員の資料、資料の2が、同じく徳宿委員の資料、資料の3が「今後のスケジュール(予定)」、それから、参考資料の1と2は前回の本作業部会の資料でございますが、参考資料1が前回野村総研から御報告を頂きました報告書の概要、参考資料の2が現在研究者コミュニティで想定されているILCの概要という1枚ものです。
 このほか、関連資料といたしまして、机上に白い表紙の野村総研報告書といつものドッチファイルを置いてございますので、適宜ごらんください。
 以上、不足がありましたら、お知らせ願います。
 また、前回も申し上げましたが、議論の時間を十分確保するため、発表者におかれましては、御発表を予定時間内に収めていただきますよう、よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上です。

【観山座長】  それでは、議題に入りたいと思います。議題1は、ILC-PIPにおける加速器工業化・量産構想についてです。本作業部会の第1回で、これまでの研究者コミュニティにおける検討状況として、東京大学の駒宮先生から、ILCプロジェクト・インプリメンテーション・プランニング、ILC-PIPについて御発表いただきましたが、その際に、現在研究者コミュニティにおいてコストダウン案が検討されており、様々な検討の前提となる数値は変わることから、加速器の工業化と量産については御説明はありませんでした。ただ、体制とマネジメントを考える上で、産業界との連携というのは重要なテーマでありますので、佐藤委員からも御指摘ありましたけれども、企業の位置付け、人材、コスト、スケジュールなど、様々な管理の課題もありますので、今回は加速器に係る産業との関係にお詳しい山本明委員に、今後様々な数値の変更があり得るという前提でPIPの該当部分について資料をまとめていただきました。本日はまずこのILC-PIPにおける加速器工業化・量産構想について御発表いただき、議論を行いたいと思います。
 それでは、山本先生、よろしくお願いいたします。

【山本(明)委員】  御紹介ありがとうございます。報告を始める前に、いま一度、駒宮先生のお話のあった部分と私が今日加える部分についての関係を、補足資料のところの1ページ目に付いておりますが、これだけ確認をしてから始めさせていただきます。
 PIPというのは、Project Implementation Planということですが、駒宮先生の方から全体像を御説明いただいておりますが、この9項目目、Industrialization and Mass Production of the SCRF Linac Componentsということで、この部分については、今後ステージングで量産の計数が変わったような場合のことも含めて、慎重に宿題として残していただいたということでありまして、その点について私の方から補足したいと思います。
 なお、具体的な数値につきましては、現在、鋭意調査・調整中でありまして、ここで拙速に具体的な数値を資料としてお出しすることは差し控えるべきかと思っておりますので、私が口頭でお話しできる範囲内についてはお話しし、また質疑の中で御質問いただければ、答えてよいと判断できる範囲内でお答えをしたいと思っております。
 全体として、加速器の工業化とありますが、単純化した名前でありますけれども、実際にはその中の要素をどういうふうに考えていくかということで、量的なイメージをつかんでいただくために、どのくらいの超伝導加速空洞という、こういうものがあるかということなんですが、これが1.2メートルぐらいの1つのユニットに9つのセルがあるものですけれども、これがクライオモジュールという1つの大きな真空容器ですね、長さ12メートルぐらいでありますが、この中に基本的には9個入るスペースがございます。四極磁石を入れるところもありますので、モジュールによっては8個、ほかのものについては9個ということで、こういったものが重なり合っていくとどれだけの数字になるかというと、全体として、ベースラインとしているときは、ステージングをかける前のベースラインとしては約1万6,000台必要なんですが、量産のときのコストエスティメート上も、成功率というものをきちんと入れておりまして、90%の成功率ということを言っておりますので、1万8,000台という数値が工業化のときの1つの目安になると。これが実際にクライオモジュールに入っていきますと、クライオモジュール数として、大きな真空の容器ですね、1メートルぐらいの容器で長さ12メートルのものとしては2,000台弱のものになります。
 これがステージングがもしかかった場合、これはコミュニティで検討中でありますが、半分のエネルギーでまずスタートするということになった場合は、細かい数字というのは必ずしも完全に半分にならないとか、いろいろありますけれども、おおよそのオーダーが大切かと思いますので、全体としては9,000台、クライオモジュールとしては950台。そのほかに、ここに高周波の電力を供給するものが1つのまた目安になりますけれども、大体400台あったものが200台強という形になってくると。
 こういったイメージがありまして、こういったものを、当初6年から7年かけて製造するという、これは工業化の立ち上げ、発注させていただいた場合に、企業における準備から定常的な量産に至るところまで含めて6年から7年。もしこれがステージングの場合は、1年程度縮小される可能性はあると考えております。準備のところは余り変わりませんから、そういった点で、完全に半分になるということは余り想定していません。
 それで、どういうふうに分担をしていくかということでありますが、この後のビジブルなチャートはございますけれども、まず文章で少し御説明しますと、基本的にこれだけの数がありますことと、それから、この部分については、現在検討に参加しているほとんど全ての地域の研究所が、ここに次世代に受け継いでいくべき技術として参加したら分担をしたいという希望を持っていらっしゃいます。ただし、研究者の中での希望であり、政府がどうするかは別の判断です。
 そういう状態ですので、基本的な考え方は、国際各地域において、製造から試験までを分担すると。各地域においていろんなレベルの研究所が当然ございますので、その中で中心となって、中核となっていただく研究所が必要で、それを私たちは、ハブラボ、または日本語でハブ研究所という形で呼んでいます。これがまたコンソーシアムを組む場合も想定します。建設の場合でもよく企業間でコンソーシアムを組み1つのプロジェクトをするということがございますが、特にヨーロッパの場合は、これまでの経験を踏まえると、ハブのコンソーシアムを作るということが考えられます。
 ハブ研究所、またはコンソーシアムの責務でありますが、加速器要素・製造及び試験実施に責任を持つということで、特に更に主要な性能ですね。例えば電場の勾配、それから共振特性、これはどういうふうに損失を少なくできるかといったことに対する責任は研究所にあり、企業にあるものではないと考えています。
 それから、企業の責務は、国際入札に応募し、受注した上で、地域に縛られず応札ができると考えています。ハブ研究所は必ず地域ごとでないわけにいかないわけですけれども、企業は、どこの企業であっても、どの地域のものに対しても応札できるというのを基本原則にすべきではないかと考えています。
 基本構造仕様及び図面に基づく製造。これはよくテクニカルタームとして、英語の場合、build-to-printという言い方が一般的に通用しておりますが、要するに、具体的な製造仕様と図面に基づいて作る。そうすると、当然、企業に作っていただく場合に、完成検査、受け入れ検査というのがあって、そのときの条件というのは、例えば寸法とか外観、機械的・電気的特性、強度ですとか、それから、高圧ガスの場合ですと、圧力試験ですとか、そういったことは企業として責任を持っていただくべきことで、また、電気的な絶縁特性といったことは企業に責任を持っていただきますけれども、冷やして、試験して、電場勾配を出してから納入していただくということは求めません。これはいかにプロジェクトを全体として効率よく経済的に作るかということから考えられている方策で、基本的なこういった考え方は、これまで高エネルギー物理学の大きな加速器では常にとられてきた方法です。インハウスでまず実際にほとんど近いものを作って、技術的に必要なことを検証した上で性能が出るということを見て、また、その検証設備はそれぞれの研究所が持って、最終的に受け入れたものを試験して、性能を出すところは自分で責任を持つと。こういう形で作ればできるはずですということをお願いするということです。そのことによって、企業に対するリスクもできるだけ低減いただけるようにしたいということですね。
 研究所・企業の協力(パートナーシップ)ということが第1回目の作業部会の中で議論されておりますが、研究所内努力(力量)で、工業技術開発を先行し、試作技術検証を行った上で企業に技術移転することが大切であると考えています。企業のリスクを減らすこと、このことに対する協力が大切なパートナーシップであると認識しています。
 各ハブ研究所が一貫した試作・検証能力を持ち、迅速に企業への技術情報提供を行うことが大切。これはどういうことかというと、いろんな問題がもし発生した場合に、研究所の中には、それを迅速に実験し、また検証し、こういう形で対応すればうまくいくはずであるということが言える力量をハブ研究所は持つべきであると考えています。
 これを「人の健康」に例えますと、お医者さんの役割として、患者さんが来たときにきちんと適切なアドバイスを与え、また処方をさせていただいて、良い方向に効率よく持っていく、ということに通じると思います。または、その準備をきちんとして、レシピをお渡しすれば、それでできるはずであるということに対して責任を持つということです。
 そういった意味で、世界的な協力がどういう、ここで全ては書けていませんけれども、大きく分けると、大きく整理するとこういうことになるだろうと。例えばアジアで言えば、やはりそれは現在のKEKが責任を持つべきものであり、またこれがもしグリーンライトが頂けて、建設が始まっていった場合においては、段階的にはILCラボというものがそういったものの中心になっていくことは将来は考えられますが、当初立ち上げたときには、それだけの歴史と実力がいきなりそこに集中できることはありませんから、やはり既存の研究所がハブラボとしての力を最初は発揮し、徐々に移行することが必要であろうと思います。
 ヨーロッパの場合ですと、特にXFEL計画が昨年末までに全てのハードウェアを完成し、今年の2月からビームが実際に出されているという状況にありますが、それをどういうふうにして成功に導いているかというと、特にフランスのCEA Saclay研究所、それから、すぐ近くにあるLAL-Orsay研究所、その2つが協力しつつ、また、実質的なホスト役になっているDESYがあり、それらをまとめた形でXFELという会社組織が出来上がっているという、そういう形があります。ただ、やはり基盤にDESY、CEA Saclayといった研究所がコンソーシアムを組んでいたということが非常に大きな事実であり、成功の基であったと考えております。
 アメリカの場合でありますと、何といっても高エネルギーの中心として、フェルミラボがハブラボラトリーであるべきだと思いますが、原子核分野の中から、特に超伝導加速空洞技術に対して長い歴史と実績を持っていらっしゃるJLABがどういうふうにコンソーシアムを組んでいただけるかというのは、今後の検討課題だろうし、そのモデルとして、現在LCLS2(欧州XFELに続く計画)がSLACをホストとして行われておりますが、現在、アメリカで建設中のものが、LCLS2計画に対して、フェルミとJLABがコンソーシアムを組んでSLACをサポートしていると、そういう形が実際として起きています。
 それをもう少し分かりやすいチャートで説明いたしますと、ネットワークとしてハブラボラトリーが、たまたま5つ書いてありますが、5つに限ったことではなくて、今後の政府間等の協議の中で、もしグリーンライトが与えられた場合においては、この数を含めてそこで固めていくべきものであり、ILCホスト研究所というのは、そのところに必ずしも同じレベルで入るものではないかもしれないですが、全体の調整機能というのをこういったハブラボとILC(国際)研究所が担っていくと考えています。そして、企業は、マーケットとして世界共通のマーケットがあるという考え方で、build-to-printで作っていただき、先ほど言ったように、研究所が性能に責任を持ち、企業が製造に責任を持つこと、市場は世界共通であるということを大切なコンセプトとしたいと考えています。
 簡単にどういう流れがあるかということを見てみますと、例えば、購入で済むところ。それは例えば材料ですね。そういった部分から、それから、機械的製造がある部分、それから特に加速空洞の場合は、内面の表面に対する処置が非常に重要なプロセスになりますので、そこを含めて、XFELの成功も踏まえ、恐らく企業にそこはお願いしていけると思うんですけれども、性能を検証するところは、やはり研究所が、ハブラボラトリーが担わなければいけない。まず空洞単体として試験して、それがうまくいったら、それをもう一度組み込む作業に入って、これはどういう形でやるかというのはこれから御説明いたしますけれども、必ずサブコントラクトをするような人的貢献を会社に求めつつ、会社で組み立てるのか、ないしはハブラボラトリーで組み立てるのか、ハブ研究所が組み立てるのかということがチョイスとしてあると考えています。
 ただ、組み上げた後、もう一度ハブ研究所で試験をして性能に責任を持つためには、性能を試験していただかなければ、ILCラボに運んでいただくというわけにいかないので、こういった薄い青で描いてある部分というのは非常に重要なハブラボラトリーの担う責任になります。
 これをもうちょっと流れとして見てみますと、工業界にお任せするところ。これは例えば材料、これは購入ですが、恐らくハブラボラトリーが材料を一旦購入した後、その材料を、もう一度別な契約として、超伝導加速空洞を作っていただける企業に対して支給して作っていただくというのが1つの方法になります。もちろん材料を含めてここで購入していただくという方法もありますが、材料の管理は非常に重要なプロセスになるのと、できる限り統一的な考え方で均一な材料がそろう必要があるので、ハブラボが責任を持って、その性能についての責任を持っていくという意味で購入していただくというのは1つの方法です。
 これはCERNのLHC計画においても、また高エネルギー研が今まで行ってきた超伝導磁石の製造においても、基本的にはこういうやり方がうまくいっておりまして、超伝導の線材は、一旦研究所が購入してから、超伝導磁石メーカーに支給させていただくというやり方をしてきています。
 そして、それがもう一度ハブラボに納入されて、そこで個々の単体試験が行われる。ここには必ず非常に重要な大きな設備が必要です。まず冷却ができる。それから、これは必ず、ただ液体ヘリウムを足せばいいという状態ではできない。非常に大量なヘリウムを使いますから、クローズドサイクルできちんと循環して使えるような大きな設備が必要です。それから、大きな電源が必要です。今回の場合は、高周波を出す電源。
 そういったものというのは、短期的に企業に負担していただくのは非常にコスト要因になりますので、これは研究所が持つべきものと考えています。性能の責任を持つ上でも不可欠ですね。
 それがうまくいったら、もう一度別な会社、ないしは同じであっても構わないんですけど、特質としては少し違った、より配管や高圧ガスといったようなことに対して長けた企業の方々にお願いする必要があります。まず要素として作っていただいて、これには幾つか高圧ガス法にのっとった、法令に従った作り方ができる会社であることが必要ですが、それを作っていただいてから、実質的にはここに一旦ハブラボラトリーに納入してから、また試験の方に持っていくことになるんですけれども、コンポーネントとして作ってから、実際今度は組み立てという形になります。
 先ほどのところで、コンポーネントと言っているのは、こういう真空容器や高圧ガスの配管ですね。こういったものが、高圧ガスの規則にのっとった作り方をされていなければいけないので、まずそれを作っていただいてから、今度はこの中に組み込んでいくということですね。ここに組み込む作業というのが1つの大きな流れになります。ここは会社にお願いするんですけれども、可能性としては、会社の工場で行うというチョイスもあるし、ハブラボラトリーで行うサイトを用意し、設備を用意し、提供して、人的なサブコントラクトを結ぶというやり方がございます。これは実際European XFELではとられている方法で、それをハブラボラトリーで性能試験すると。ILCラボの場合は、一旦100%の試験をここで行っておりますので、組み込んだものについては、最初の5%から100%全て試験した後、それがうまくいっているということが確認できた場合は、サンプル試験ということで、約3分の1を考えるというモデルが想定されていて、そしてそこで組み上げられたものが最終的にILCラボに組み込まれる。
 ここのところで大きな搬送がございます。海を渡った搬送が入ってくるので、実際にはここにもう少しファインなストラクチャーが必要で、最初に運んだものについては、例えば日本がホストした場合は日本のハブラボラトリーで一旦性能を確認してからILCラボに最初の部分については入れて、その後の作業が円滑にいくということを確認するとか、サンプルで試験していくとかといったことが入ってまいります。
 工期でありますが、これはベースラインの場合のことが書いてありますけれども、最初に説明しましたように、準備があって、ものによって当然シフトしていくわけで、超伝導加速空洞自身が先に走り、クライオモジュールの組み立てが後を追うような形になりますが、実際にそれぞれが6年、5、6、7といったような数字になります。そして、半数になった場合は、この部分が少し減ってくることになりますが、実際のILCの建設のスケジュールというのは、ここに全てよるわけではなくて、シビルエンジニアリング、土木・建築等に大きく依存してきますので、ここで全て1年縮むということは言えません。ただ、その後の工程も全て含めますと、1年以内の範囲内では短縮が可能であるレベルと考えています。
 ここで、ちょっとだけ例を御説明しますと、欧州のXFEL計画における状況がどうであったかというと、私たちが構想したものとほぼ同等のことが行われています。今まで御説明したことは、XFEL計画が実際に計画として走り出す前にILCのGDE、グローバル・デザイン・エフォートとして既に方針を出していたものでありますが、幸いなことに、XFEL計画ではほぼ同様な進み方がされています。
 DESYが基礎開発を行い、実証し、その上で要素発注を行っています。そして、性能試験をして組み立てる。これは空洞に関して、単体の部分ですね。ここにはポーランドの研究所、政府間の協定、研究所間の協定ですけれども、それにより、多くの人的な資源の貢献をポーランドから受けて成り立っています。
 それから、空洞ストリングというのは、多連にするという意味なんですが、そして、それをクライオモジュールに組み立てるところについては、CEA-Saclayがサイト・組み立て設備を用意し、そこに企業との契約で人的な貢献を企業にサブコントラクトしています。そして、それがDESYに運ばれて、最終的なクライオモジュール試験をしました。
 企業の役割は、例えば材料はドイツと日本と中国の企業が受け持っていますが、日本が50%でした。ドイツと中国が25%ずつという形で、入札の結果、分担されています。超伝導加速空洞については、ドイツとイタリアがほぼ半分ずつ分け合っています。これは工場での製造です。それから、クライオモジュールについては、要素部品についてはイタリア。これはここと同じ会社ですけど、両方担当されていて、あとは中国がコンポーネントとしては貢献されています。そして、組み立てをフランスで、Saclayで行って、性能試験にはポーランドが協力をして、DESYで行われたという形になっておりまして、先ほどのチャートに当てはめますと、繰り返しは省きますけれども、それぞれの企業のイニシャル等がここに書いてありますので、どういうふうに私たちが考えた方法と非常にマッチしていたかということが御理解いただけると思います。
 もう一つ、日本の場合の例として、ハブラボラトリーに向けた努力を御説明したいと思います。高エネルギー研には、将来的にハブラボラトリーの機能が十分に発揮できるよう、超伝導加速空洞製造施設というものが、前機構長の時代の御判断として出されておりまして、機械工学センター長を筆頭としたチームが非常に大きな貢献をされております。もちろん大きな量産ができる設備ではありませんが、一応1つのラインとして、本当に材料の部分から実際に空洞をこういう形で作り上げて、プレスをして、電子ビーム溶接をして、表面処理をして、組み上げてというシステムの構築が、実際に約5年間ぐらいかけて行ってきておりまして、1号機が幸いにして、勾配として、ILCの要求を超すことができ、2号機では、更にこれから目指そうとしているニオブの材料のコスト削減を図る上で、インゴットを直接、パン切り、ハムを切るようなスライスをしていくという技術があるわけですけれども、実験的には外国で検証されていることをKEKでも実際にインハウスで試行しております。 そういったラージグレンという、グレンのサイズも大きくなったりという、いろんな効果があるんですけれども、そういう効果を入れて、実際に試作した2号機目が、更に高い性能を示しています。これは縦軸方向はQ値といって、Q値が上がれば損失が減ってくれて、冷凍パワー、冷却をする設備が節約できるというコスト削減効果があるんですけれども、そういったことが方向性として正しいということを実際に検証しています。
 こういったことをハブラボラトリーがきちんと実例として示して、こんなやり方をすれば性能が出るはずですというところを検証してから、企業にそれをお願いし、もし企業の方々がここに来ていただけると一緒に作っていくこともできます。それが私たちの考えるパートナーシップの1つの方策です。
 実際にKEKにおける企業とのパートナーシップの例ですが、これは大きな企業とももちろん協力をしておりますし、更にそれぞれの技術の技としては、個々のところで非常に得意技を持っていらっしゃる中堅の企業の方々がもし来られて、一緒にここで設備を作ってみたいといった場合は、それを受け入れてできるようになっていて、実際に今その1つの例が進んでおります。
 そういう形で、この場合は、1つのセルの空洞ですが、これを作ったものが31メガボルト/メートルまで実際に達成されたという実例を持っていて、ここでKEKとパートナーシップを組むことによって、企業における開発努力が非常に効率的に、それから節約された設備で行うことができて、R&D効果を入札の費用に入れるということがなく、リスクを減らした入札をしていただくということができるようになる。これがコスト削減に対する重要なパラメータであると考えております。
 現在、更に、ここには入っておりませんが、ニオブ材をインゴットでスライスしたもので、更に9セル空洞をつくって、それをある程度の数を出していくということはKEKとしては計画をしていて、そういったノウハウについても企業に公開されていくことになると思います。
 「まとめ」とありますが、ライナック要素の工業化・量産モデルについて、国際的に製造、性能試験を分担すると、ハブ研究所が統括し、最終性能(勾配)に責任を持つことが重要なコンセプトです。そして企業は、製作仕様に基づく製造責任を持つということです。引き渡し条件を明確にして、責任を持つということです。その上で、各地域で性能試験を経た上で移送、ILC(国際)研究所において組み込んでいただくことになります。
 今後の検討課題ですけれども、量産の国際的分散による品質、コストの管理。分散による原理的単価の変動と、広い競争を奨励することによるコスト低減のバランス、そして、リスク回避への見通しということになります。
 ここには具体的な文言としてありませんが、ここにステージングをかけた場合に、約半数の量になるというのがございます。よくこういう議論をいたしますと、量産数が減るから単価が上がるでしょうということがあります。それは実際に私たちもサーベイをしておりまして、今までの経験から、ある一定の効果があることは承知しておりますが、一方で、健全な競争を保つことによってコストが下がるということは、文科省の御指導も頂きながら実践してきていることで、その効果は確実にあるわけでありまして、個数が半分になって単価が上がるような効果よりも、健全な企業とのパートナーシップを保ち、絶えず多くの企業の方々が興味を持っていただいて入札に参加していただけるという環境を最後まで保ち続けることで、場合によるとコストを安くできるということは、実際に私たちが幾つか経験していることです。、半分になるから単価コストが上がるでしょうとか、そういった議論をここで余り拙速にするべきことではないと思います。
 これは今後、青信号が出していただけるような場合においては、更にその先において、予備的な工業化という言葉を使っておりますが、プリインダストライゼーションの状況の中でそういったものを精査し、戦略をきちんと練っていく。また、企業と新しいパートナーシップを持って、健全な関係を保ち、競争も協力もしていくということが必要だと思っております。そういったことが本日のステージングに対する私の委員としての見解になります。
 それから、国際間のクライオモジュール長距離輸送技術については、これはまだヨーロッパ内の移動は実際欧州計画の中で行われておりますけれども、まだILCラボのスケールでは行われていないので、もし青信号が得られた場合においては、そういったことをきちんと準備期間の中で検証していくことになるのではないかと思います。
 以上で私の報告を終わります。

【観山座長】  どうもありがとうございました。それでは、ただいまの発表について御質問、御意見いただければと思いますが。

【山本(均)委員】  SSCとLHCの違い、1つは成功して、1つは失敗したわけですけれども、その1つとして挙げられているのが、プロジェクトマネジメントの違い、構造の違いというのがよく挙げられていると思うんですけれども、SSCの方は、命令系統がはっきりしていなかった。LHCの方はプロジェクトマネジメントがリン・エヴァンスの下に非常に明確に定義されていたということがあると思うんですが、このクライオモジュールを見た場合に、国際ILC研究所が出てくるというのが、最後の段階の組み込みで、少なくとも図の中では出てくる。そして、ハブ研究所というのが非常に大きな責任を持たされていて、それは本当にそれで大丈夫かなという気はするんですけれども、その辺はいかがなんでしょうかね。要するに、もしも1つのハブ研究所で問題が起こった場合に、全体として本当に調整をして、責任を持ってリスクを回避するというようなことが十分にできるかという。

【山本(明)委員】  御質問に対する答えとしては2つの要素があると考えています。よく大型計画を議論するときに、この文科省の委員会の中でもそういったコメントが出ていた可能性があったかと思いますけれども、研究者がプロジェクトマネジメントをするような計画ではないと。企業の方に、大きな計画を行ったビジネスに長けた方々にお願いすべきであると。そのことに対して、私は必ずしもそれが必ずしも的を射ていないというふうに思っています。
 SSCが残念ながら成功しなかった1つの要因は、そういう非常に大型計画であるので、非常に大きな会社にプロジェクトマネジメントをお願いした事実があると思います。そこで大胆ないろんな方策がとられたことも事実だと思います。ただ、サイエンスを実現するということに対する非常に強い信念を持ったリーダーシップを持った方が、研究所サイドから本当のトップに立ち、大きな科学目標とシステムエンジニアリングのパートナーシップを保つことがとても大切と思います。
 どうしたら、どこに行き着くか、どういうふうにビジネスマネジメントをしたら良いか、クオリティコントロールしたら良いか、それから、いろんなツールを導入して、システマティックにマネジメントをするということは、大きな企業での様々な経験が活かされるはずです。それは確かに機能するかもしれないけれども、それはタイアップとしてあるべきことで、そちらにお願いしたからできるというものではないというのが、私自身はSSC計画にも部分的に参加させていただく中で、強く感じたことです。
 ですから、やはり研究所が、全体、国際的なパートナーシップとしてきちんとしたネットワークを構築しているということが何よりも大切で、そういった意味で、LHC計画は、もちろんCERNという非常に強い強力なアカデミックなセンターがあったからこそできたんですけれども、更にそれを取り巻くネットワーク、それを取り囲むネットワークが非常にしっかりとして、いろんな失敗があった場合にお互いに補い合うということができる関係を作り続け、保ち続けられたということが成功に不可欠であったと思うのです。
 幸いにして、高エネルギー物理学の分野の本当にすばらしいところは、国際的なネットワークを非常にしっかりと持っていて、1つの計画が完成したときに、それは自分のノウハウとして閉じ込めてしまうことなく、次の別な地域での計画に対して、ほとんど全てのノウハウを提供し、それが全部そちらに生かされていくということです。それから、人もその中に移動しつつ、お互いに行き来しつつ行われているということによって成り立つと。
 最後に、ILC 研究所が、リーダーシップがとれるのかということがございますが、これはネットワークがしっかりしていることによってできると思います。そして一方で、いわばグリーンフィールドにILCの場合は作られることが考えられておりますから、現実的にILCラボに一気に強いリーダーシップを求めることはすべきではありません。発足当初、技術的には、本来それはできないことをお願いしていることになるので、円滑に段階的に移行するということをきちんと組み込むことが大切だと思います。
 もともとILCを国際研究所として作ろうとしているわけですから、Council(理事会)なり、運営体の中できちんとした国際的なリーダーシップを持てる方をそこに持ってきつつ、運営としての強いリーダーシップを発揮しつつ、それをハブラボラトリーという2番目の組織がきちんと技術的サポートすることによって、どちらかで問題が起きた場合においても、それがすぐにカバーできるという体制を作ることができるのではないかと私は思います。
 以上です。

【観山座長】  永宮さん。

【永宮委員】  非常にまとまった御報告で、大変に感心をいたしました。全く異なった観点からの質問ですけれども、企業との関係というのは、やっぱり国によって随分違うものがあって、特に高エネルギー物理の場合は、日本の場合は設計を研究所がして企業がそれを受け取って作るという風習がありました。しかし、アメリカなんかは、今は変わっているかもしれませんけれども、伝統的に研究所の中で作るという風潮があったんですね。だから、そこら辺は一体的に全てを企業とILCの関係という風には整理できないものがあるんじゃないかなと思いますが。

【山本(明)委員】  それにつきましては、多様性を認める必要があるというのも議論されていることです。つまり、ハブラボラトリーを取り巻く環境によって、研究所の中でのインハウスのアクティビティを尊重するか、ないしは企業とのパートナーシップを尊重するかということが、ある裁量として認められるべきであると考えています。その分、ハブラボラトリーは、性能に責任がありますから、性能に責任を持てる範囲内においてどういうふうにそこに持っていくかは、その裁量に任せるべきであると考えています。
 例えばLHC計画が立ち上がっていくまでのところというのは、どちらかというとアメリカの場合、テバトロンがよい例ですけれども、ほとんどインハウスで作られました。
 けれど、トリスタン計画が日本の中で行われたときに、日本の風土として、企業とのパートナーシップで、小さい政府、小さい研究所、そして企業と協力するという大方針の下に、できる限り企業に発注をしていくということをお願いしていくということを日本は行ってきたわけですが、そうしたトリスタン計画での経験が、今度はRHIC計画の中では、アメリカで企業に発注して協力をしていただくという形につながっていっていますね。ヨーロッパは日本と非常に似た風土がございます。
 そういう流れの中で、完全にインハウスで研究所の中で作るというのは、ある意味でその規模をもう既に超えているということと、それから、やはり長いレンジで見たときに、企業とのパートナーシップを大切にし、それがいずれ工業技術として生かされていくということも考えたときには、現在考えているやり方がより適切ではないかと思っています。
 ただ、それぞれのリージョンの中に、人は幾らでも多く出せるという研究所もある場合があるわけなので、そういった場合は、そこでインハウスで作ることも許容していくべきことで、地域の地域性というものを尊重していくべきではないかと思います。

【観山座長】  では、順番に。答えと質問はわりと手短にしていただいて、なるべく議論の時間をとりたいと思います。どうぞ。

【高津委員】  最初の山本先生の質問と同じ発想なんですけれども、きょうお話を伺っていまして、ILCの関わりというのが余り御説明なくて、メインはハブ研究所という御説明だったので、そこで確認させていただきたいんですけれども、例えば7ページの図で役割分担を分かりやすく書いていただいていますけれども、普通思えば、空洞とかクライオモジュールというのは、共通、世界で例えば4つの研究所が製作を担当するとすると、同一の仕様書になるんですよね。

【山本(明)委員】  はい。

【高津委員】  そうしますと、そういった共通の発注仕様書のようなものとBuild -to-Printのドローイングというのは、どこかで共通のものを作り上げるんだと思うんですけれども、それはILCが責任を持ってやっていくというふうに思っていたんですけれども、基本的にそういうことなんですね。

【山本(明)委員】  そうです。今もう一度この図面を出したいんですけれども、7ページのところで、そこのところ、ちょっと微妙な書き方で分かりにくいかもしれないんですけれども、ILC国際研究所が一番上にあって、ハブ研究所間の調整というところがあるんですが、そこにILC国際研究所はやはりそのループの中に入ってくるわけですね。そこで、一段上で、基本的にはITERの場合と同じような考え方になるかどうかはこれからの議論なんですけれども、このリンクの中で、このリンクを結ぶハブ研究所間の調整機能というのが必ずなきゃいけなくて、そこで非常に強いリーダーシップをILC国際研究所がとるということです。

【高津委員】  分かりました。それで、私もそういうことだろうと理解していたんですけれども、質問は、各研究所が自分が受けた仕様書と図面を基にメーカーさんと一緒になって試作開発をやって、技術を確立するというプロセスがあると思うんですけれども、その中では、詳細な構造で溶接のとり方とか、ノウハウ的なことで違ってくる可能性があると思うんですけれども、その場合には、元の仕様書に反映させて、それをまた世界各研究所が共有して物を作らないと同じ物ができないように思うんですけれども、そういったこともILCが調整をされると思ってよろしいんでしょうか。

【山本(明)委員】  そうですね。きょうの御説明の中にはスライドをちょっと加えなかったんですけれども、プラグコンパティビリティという考え方をもう一つ重要な形で持っていて、最低限世界共通にならなければいけないもの。それは例えば空洞同士がつながらなきゃいけないですから、インターフェースが共通でなきゃいけないとか、それから、既にこういう計画が始まる前段階から、例えばXFELもそうですし、営々として参加している研究所間の中で超伝導加速空洞の試作というのはずっと続いてきていて、相当深いところまでお互いに溶接を含めて共通な理解が進んでいます。
 ただ、それでもやはり各国、研究所により、技術者の流儀というのがありますよね。それについて、そこに任せてもいいと判断したものは、あえて共通仕様書には入れないようにして、その自主性、その方が性能が出ると思いますということに対しては尊重していくと。例えば溶接法とか、そういったところについて、特にエンベロープの中については認めると。

【高津委員】  分かりました。そうしますと、極端に言えば、電場勾配とか共振特性というような特性がちゃんと守られていれば、やや細かいところの作り方は、各極が違っていても、それは構わないという考えで進めるということなんでしょうか。

【山本(明)委員】  そうです。

【高津委員】  そのときにコストは当然各極で違ってくると思うんですけれども、それは調整する必要もないんですか。

【山本(明)委員】  いや、恐らく、これは私たちのところだけではカバーし切れないことですけれども、どういうマネジメントとしてのコントリビューションを決めるかなんですけれども、恐らく世界共通のコスト、例えばバーチャルなILCユニットというものが考えられていますが、そこで何%分担するというところまでは合意をすると、もしそれがより安く作れれば、それは認めるべきことと思います。各国、各企業との間では、例えば企業からも提案が来る可能性があるわけですね、実際に活動が始まれば。それを認めてあげれるような余地は残しておくことが正しいと考えています。そうすると、それでもしより経済的に作れれば、それはそこがよりベネフィット、よかったということですが、もし提案した内容が、私はこの技術が好きだから高くてもやるんだといったところは、そこは責任を持って、高い部分を自分で払ってくださいということにならざるを得ないと思います。そういった、金額でやってしまいますと、高く作った方が少なく作ることで済むような、そういった考え方は不公平にもなるので、今言ったような考え方を想定しています。

【高津委員】  ありがとうございます。

【観山座長】  田中委員。

【田中委員】  手短に2つコメントいたします。山本先生の説明にもあったように、研究所がかなりのコミットメントをしてやるということですね。もちろん価格を下げるという側面、それと、技術的な性能保証の側面もあると思いますけれども、このやり方ですと、かなりリソースを抱えることになります。ちょっと心配になるのは、ILCに携わった大量のリソースのその後といいますか、次の展開です。ある意味でILCがライフワークのように、相当の年数続くので、そこで吸収していくという考え方もあるかもしれませんけれども、ILCの後の大量のリソースの行く末が、若干心配だというのが1つ。
 2つ目は超伝導加速技術です。European XFELの話が何回も繰り返し出てきておりますけれども、それは逆に言うと、ILCがあるからあれだけの事がやれるという側面があって、ある意味ではEuropean XFEL はILCのためのテストベンチです。そういう位置づけですから、次はILCがあるわけですね。
 ILCの後は、じゃあ、何があるのかということなのですが、それは、この超伝導加速技術の持っているポテンシャリティに寄る訳であって、他の様々なフィールドに展開していくという可能性が1つあります。その見通しがないとすれば、ある意味加速器の次のプロジェクトで吸収していく、そういう話になります。
 何でこんな話をするのかと言えば、例えば、アクセラレーター・オン・ア・チップという計画、これは日本が乗り遅れ、アメリカとヨーロッパで盛んに進められていますが、手のひらに巨大なスケールのLCLSを入れましょうという開発計画です。そちらの方は、加速器としての広がりというよりは、そのテクノロジー(加速器を超小型化していくという技術)のインダストリアルな広がり、応用展開がすごく大きいわけです。
 アクセラレーター・オン・ア・チップという研究開発プロジェクトが終了した後、それに関わった企業は、そこで培った技術をいろんな形でビジネスに展開していけると思うのですが、それに比べ、超伝導加速技術のILC終了後の展開というのが、私としては不透明であり、この問題にどう取り組んで行くかは簡単ではないという気がいたします。
 以上です。

【山本(明)委員】  よろしいですか。ちょっと今日の資料にないんですけれども、2枚だけ、今のお答えにいいかなというスライドがありますので、お見せしてよろしいでしょうか。これは、超伝導高周波技術をベースにした、これまでに建設された加速器計画と、現在運転中、またはコンストラクト中、それから、将来考えているの、3つ、3列に並べて書いたものです。今御指摘のあった、XFELはILCをある程度念頭に置いているからできたという見方を紹介されましたが、実際に起きていることはどういうことかというと、これまで、現在の建設中のものを含めて、実は超伝導加速空洞が約2,000台というスケールでもう既に、実際European XFELが800台あるわけですけれども、それから、現在のLCLS2で作られているものとか、それから、欧州の中性子源で、実はXFELが終わった後、ILCがまだまだ来ないという状況の中で、各企業がどうされているかというと、実際に、今まさにおっしゃったように、いろんな展開が図られています。様々なサイエンス自身が展開されています。、高エネルギー物理学だけではなく、原子核、例えば重粒子ライナックですね、理研さん等がずっと努力されてきているものと同じ流れになりますが、アメリカのFRIGというものとか、それから、中性子源でいいますと、先ほど山本均さんの中で少し言及し損ねたんですけれども、欧州の中性子源(ESS)というのが現在国際協力で建設中です。
 こういったものが全部、XFEL計画で参画された企業が、その裾野を広げてここにどんどん伸びていっています。実はそれと同等に近いもの、2,000台とは言わないんですが、今後既に1,000台レベルでは見込みがあるという状況です。
 ですから、ILCが終わったらどうするかということに対するすぐの答えはないんですけれども、こういった技術が発展し、加速技術が発展していったときに、粒子、原子核物理だけではなく、放射光、光化学、それから、特に中性子、そしてそこから先は本当に皆が知恵を出す必要がありますが、いかに工業的に展開していくかということが控えていると思うので、プロジェクトが終わったら、例えばその施設、インベストメントがどうするんだというのは、少なくともXFELの計画からは余り心配されていない。それが本当にうまく活用されています。基本的にはXFEL計画のときも、その設備がその中で閉じるという形で設備投資がされているんですけれども、それが実際には残っていて、次の計画でより安価に次の計画が走るということに貢献をしているということです。ないしは、値上げをしないで、少ない数字でも同じコストで作っていただけるという状態が出ていますので、今、全てのお答えはできませんが、今言ったようなことから展開が図れるということは言えるのではないかと。

【観山座長】  ありがとうございます。中野さん、ちょっと手短にして。今回これで最後にして、もう1回、一番最後にまた返りますので。

【中野委員】  コストの削減という点で、ハブ研究所から企業への技術支援やいろんな情報提供は非常に重要だと思うんですけれども、ハブ研究所間でその面での連携、特に知財が発生したような場合にどういうふうに運用するかとか、そのような面も含めた連携のマネジメントについて、どのような工夫をしようとしているか教えてください。

【山本(明)委員】  2つの流れがあると思います。1つは、本当にトップマネジメントが行うべき本当のマネジメント。それから、もう一つは、技術者同士の連携がいかにきちんと世界的に図られるかということ。私がお答えできるのは、技術者レベルがどう連携し、そういったことを調整していくかですけれども、幸いなことに、欧州の自由電子レーザー計画が計画された10年以上前から、テスラ(TSLA) テクノロジーコラボレーションという技術者の集団の会議が継続的に年に2回開催されています。いわば非常に家族的な会議なんですが、全ての失敗を喜んで話し、議論する会議なんです。そのことによって、失敗例をみんなが紹介をして、だからこれからはこういう失敗をしないようにしようねということをずっと積み重ねてきています。ですから、ILCが始まる前から実はそういったネットワークが世界に出来ているんです。それを大切にしたいと思いますし、そのことで技術的に連携したマネジメントができると思います。
 これは私自身が超伝導磁石の世界から高周波の世界の方にも関与させていただく中で、歴史的に超伝導磁石が数十年かけてやってきたことが、高周波空洞で今それが非常に活発に起きているんですね。その歴史を見るとわかります。
 例えば加速器の技術が超伝導磁石で発達していったら、実際には工業界としてMRIでは数はまだまだ工業界のレベルからは小さいかもしれないけれども、きちっとした根付いたものになっていっているということを考えますと、そういったものが失敗例も全て反映された状態でカバーできると考えています。そういったことをトップマネジメントがちゃんとフォローすべきであって、これはこれからそういった関係がもし作られるようであれば、是非お願いしておきたいことです。
 以上です。

【観山座長】  ちょっと後でと思ったんですが、佐藤委員は企業の立場からですので、非常に関連が強いと思いますので。他の方からも質問があると思いますけれども、また最後に時間を設けますので。

【佐藤委員】  なかなか活発で、手を挙げる隙がなかったんですけれども、山本先生のお話、私の感覚的に思っていたことと非常にマッチしておりました。1つ、例えば空洞とクライオモジュールの組み立てを、これはハブ研究所で例えば持ちますというとき、これはそのコストは基本的にハブ研究所が、設備のコストは持つという理解で良いでしょうか。

【山本(明)委員】  そうですね。

【佐藤委員】  で、企業は人的な派遣をすると。

【山本(明)委員】  そうです。

【佐藤委員】  企業にとって、やはり設備のコスト、それからマンパワーのコスト、ここにつぎ込んだものが、先ほどありましたように、次のプロジェクトにどう生きていくかというのはものすごく大きな関心事でして、研究だけでなくて、できれば産業界へのスピンアウトがあると非常にありがたい。そうすると、会社としても、リソースをつぎ込みやすいということがあるんですけど。
 一方、空洞全体を作るという意味では、空洞とクライオモジュールの組み立てというところは中に持たないことになってしまうので、次の展開として、今度は、例えばハブ研究所と各企業が1つのジョイベンみたいなものを組んで、そこでもし新しい応用があって、空洞が非常に大きく売れるときは、そこをどんどん使っていくとか、そういうような仕組みももし考えられるのなら、早くから考えた方がいいのかなと思います。それは多分、アメリカやヨーロッパは結構上手にやっている点なのかなと思いまして。
 あともう一つは、ILC研究所のメインのミッションじゃないかもしれませんけれども、超伝導空洞の技術というのがどういうふうに産業界にスピンアウトしていけるか。これは企業も考えなきゃいけないんですけれども、一緒に考えていくような、そういう仕組みも是非是非考えていただけたらなと思います。

【山本(明)委員】  端的にコメントをそれに加えさせてください。組み立てがハブ研究所で行われると、そのノウハウが企業に残らないかもしれないという御懸念があるというお話だと理解しましたが、私はむしろ逆に考えられると思います。どういうことかというと、ハブ研究所で行った場合は、ある意味でそれがオープンにできます。ですから、企業は、自分のところに設備することなく、そこで次に企業として展開しなきゃいけない場合のいわばR&Dができることになります。本当に企業にとってメリットがあることがあった場合に、独自でやるときに、大きなコストをかけずにその準備ができるということになる。それを1つの企業だけではなくて、もちろんサブでとられた企業がより持つことが確かですけれども、実際、XFEL計画の中で非常に多くの方々がSaclay研究所を訪問し、細かに見ていらっしゃいます。これはSaclay研究所、日本の工業界の方も見学されているのを、私自身がお世話したりもしていますから。そういった点で、そういった情報は次の工業界の発展に対する知恵を出す源になるであろうと考えています。
 そこから先は、是非みんなで考えたい。例えば高周波というと、余りなじみがないようなんですけれども、一番なじみがあるのは恐らく電子レンジだと思います。本当にあんなものに適用できないのとか、それから電子顕微鏡ですね。直流で積み上げている電圧を、高周波で加速をすれば、電子加速器が工業的な目的に対して、コンパクトで小さなものとして作れるということ、そこまでは言えるわけです。そこからみんなでどういう新しいものを引き出していくか。超伝導磁石のときと似たような形で、そういった知恵をみんなで絞る必要があると思っています。
 以上です。

【観山座長】  ありがとうございました。それでは、一旦、次の議題に参ります。議題2は、これまで大型国際共同プロジェクトにおける体制及びマネジメントについてです。前回文部科学省から委託調査結果として、野村総研さんからCERN、ITER、ALMAなどの事例について説明がありましたけれども、今回と次回については、これら既に実施している大型国際共同プロジェクトについて個別に取り上げて、実際に運営等に関わってこられた研究者の方から発表いただいて、それらを参考としてILCの体制及びマネジメントに関する課題等について議論を深めてまいりたいと思います。
 まず本日は、欧州合同原子核研究機関(CERN)について、徳宿委員より御発表いただきたいと思います。先生は、長年CERNにおける最も大きな共同研究でありますATLAS実験に関わってこられましたし、これまでATLAS-JAPANの代表、また現在ではATLAS Collaboration Board Chairを務めておられます。
 なお、これからの検証に当たりましては、前回野村総研からの報告に使用しました参考資料1、参考資料2、また机上に資料が置かれています白い表紙の報告書を適宜参照いただければと思います。
 それでは、先生、よろしくお願いいたします。

【徳宿座長代理】  御紹介にあずかりました徳宿です。私のトークのメインは、CERNの体制及びマネジメントについて説明するということですので、最初にまずそれをやりますが、これまでの議論でもいろいろあったのは、CERNと、そこでやっている大きな加速器プロジェクトであるLHC、あるいは実験のプロジェクトという、いろんな体制がごっちゃになって議論されているところがありましたので、この機会に、CERNからその3つをできるだけきれいに分けた形で説明して、その辺と最終的にはILCとの対応というのを付けていきたいと思います。
 観山座長の方からもありましたように、野村総研が作りました調査分析書の方にCERNに関して非常によくまとめられております。それを読めば私のトークはほとんど必要ないと思います。私のスライドの下線を書いたところは報告書からの引用という形にしてあります。ほとんどのものは報告書の方に書いてあるということを御理解ください。
 それでは、CERNについて説明を始めます。CERNは欧州合同原子核研究機関でありまして、1954年に、当時欧州12カ国の国家間の協定の下で設立された国際研究機関です。目的としましては、素粒子の基本法則や現象を加速器により研究する研究所です。
 この設立に対する経緯というところで、素粒子実験等の科学活動というのが急速に巨大化する中で、ヨーロッパとして、米国、ソ連の国力に対抗するには共同で取り組むべきだという認識があったということがあると思います。
 だた、これは、単に対抗するだけというわけではなく、もちろんヨーロッパでこのCERNを作るに当たりましては、米国の科学者等も非常に貢献しておりますし、けんかをするために作るとか、そういう形のものではありません。
 ただ、何にせよ、共同で作ることによって、巨大化する科学の中で研究をリードしていこうとういモチベーションが科学者側にあったと思います。
 もう一つのポイントとしましては、設立に当たりましては、ユネスコが、つまり、別な大きな国際機関が最初の設立に関しまして非常に大きなサポートをしたということです。ユネスコの政府間の会議の下で協議を進めていって、最初の議決が採決されたということです。
 あともう一つは、ここは単に私の個人的な主観で書いているところですが、中学校ぐらいの社会の教科書で、第2次大戦が終わった後、ヨーロッパでの画期的なことというのでは、今まで戦争していた国で仲よくやり出したということで、ヨーロッパ経済共同体、EEC、後にECになって、EUになるわけですけれども、それが必ず挙がってきていると思うんですが、ECの設立が1957年に比べて、それよりもCERNの設立の方が前ですね。
 こういう点でも、この時期にもうヨーロッパが仲よくなっていた時期では決してなく、まだ大戦後の悪感情というのは非常に強い中、国家間でまだいろんなしこりがあったところで作られたというのも非常に重要な意義があると私は思っております。この辺も、やっぱり純粋科学の協力だから早くできたというような見方をよく聞きます。ただ、検証されるものではありませんので、主観的なものだとは思いますけど。
 場所は、スイスのジュネーブ郊外で、フランス国境の間にありまして、このぐらいの予算規模。予算規模は後で出しますので、読みません。
 一番大事なポイントは、CERNという組織は、加盟国がお金を拠出して進める国際機関です。現在22カ国ですが、それが、そこにありますように、平均国民所得、Net National Incomeというのに合わせた形で、対応した形で毎年お金を分担して運営している機関だということです。
 次のページが現在のメンバー国、22カ国です。いろいろ細かいことはありますが、時間が限られておりますので、省きますが、2番目に最後に入ったのがイスラエルでして、イスラエルがヨーロッパかどうかというのは定義でいろいろ変わりますけれども、CERNの協定の中ではメンバー国がヨーロッパに限るとは書かれておらず、加盟国が世界中のどこの国であっても構わないというのが現在のCERNの考え方です。
 次が年間予算の推移というので、ここのウェブページからとったのです。下に書いてありましたように、メンバー国の負担は基本的にはフラットバジェットにインフレ率を掛けたものなんですが、こうやって見て全然フラットじゃないので、きょう調べましたらば、これ、バジェットなんですが歳出で、毎年使った費用の遷移なのですね。ちょっと別なアニュアルプログレスレポートから、各メンバー国のコントリビューションの年間遷移というのをもう一つ新しい絵で描いておきました。青いものです。ここに描いてありますように、支出は大きく変わっていても、毎年のメンバー国の拠出金というのはフラットになっています。インフレ率でちょっとずつ変わってきます。2015年が減ったのは、実はスイスフランが非常に高くなったときがありまして、CERNはスイスでやっておりますので、予算は全部フランでやります。余りにもヨーロッパ諸国に厳しいというので、非常に例外的にちょっと減らしたという経緯が2015年にありますが、基本的にはスイスフラン建てで常にフラットな予算であります。
 これもさっと行きますが、CERNの職員数ですね。ここに書いてあるのは正規職員ですが、この辺、LHCが始まる前ですけれども、後で出てきますCouncilの方から人数をきちんと削減しろと言って、2,500人ぐらいにシーリングを付けるという話がこの辺で決まりまして、それに向けて委員を削減するというのをやっております。
 LHCの建設時期に減らしながらやるということの厳しい状況でLHCを建設することになりました。ただし、そこにつきましては、その分、テンポラルな人を増やすというような形によって対応したということが別な作業部会の山本委員の報告で前にあったと思います。
 運営体制に入ります。CERNの一番の決議機関はCouncil、CERN理事会と日本語で訳していますが、で出来ています。Councilが最高意思決定機関ですが、そこに向けてほかの委員会からの助言を受けます。1つは、科学者が主に入っていますScientific Policy Committeeで、もう一つは財政を担当するFinance Committee。その助言を受けた上で、Councilが決定するという形になります。
 構成ですが、加盟国から2人ずつ代表が出て、1人は政府を代表して、もう1人は国の科学面を代表する2人という形になっています。
 理事長がその中から選出されるわけですけれども、科学に代表になることが多いとは思います。ただ、必ずしもそうではないというのも確かです。ただ、2001年以後は全て科学代表の中から選ばれています。
 準加盟国等の定義を前でもしませんでしたが、ここでも省きましょう。
 Council自体は、通年、年4回開催されます。必ず、上に書いてありますように、Scientific Policy CommitteeとFinance Committeeの助言を受けますので、同じときに、月曜、火曜にSPCをやって、水曜にFCをやった上で、木曜、金曜にCouncilというような形になります。ということで、ほかのコミッティーもほぼ同じ回数集まることになっています。
 次の項目も今話したことですね。事前にSPCあるいはFCで議論が入り、その結論が理事会で説明された後で議決という形になります。
 それから、各加盟国はそれぞれが1票の議決権を持って、例外を除き単純多数で決まるという形に書いてありますが、実は、重要なものは全部例外になっています。重要なものはほとんど全会一致、あるいは3分の2になります。
 全会一致の例としましては、新規加盟国を決めるのは全会一致になりますし、この条約でありますしコンベンションを変更するのも全会一致になります。3分の2必要なのは、これはなかなか起こらないとは思いますが場所をジュネーブから移すということを決める場合とか、所長の任命、あるいは、大きなプロジェクト、例えばLHC、を作るとかいうところの承認、あるいは、細かいことを理事会でやれないので、所長に代表権を与える等のものに関しましては、3分の2があります。
 どの場合でも、各国が1票ずつという形になっていますが、設立時からではないですが、、予算の承認に関しましては、小さな国だけの半数で承認されてはかなわないというような議論が出まして、予算の承認に対して現在は、まず過半数は超えていることと、賛成した国の貢献金額を全部足したときに全予算額の70%は超えるということを条件として予算を承認するというルールになっております。
 そのような一番上にあるCouncilの下にあるんですが、実際の運営組織はDirector Generalがやります。CERNの所長、Director Generalというのは、理事会からの任命を受けて、通常5年の任期で当たります。で、最高経営者です。実行という意味での力はかなり強くなっています。まず就任したときに、下部組織を基本的には、Councilの承認の下、基本的には所長が決めます。ということで、所長が替わると、どういう形で下のディレクターを配置するか、その数等を変えることになります。
 これもコンベンションに書いてあるものですけれども、CERNに関する所長及びスタッフの責任は国際的なものとするということで、それぞれがどこの国から来たからその国の利益に従ってやるというようなことはしないということがコンベンションで書かれております。
 年に一度、通常6月のCouncilですが、次年度の予算と今後5年間の中期計画を提出して、最終的にCouncilで承認するという形になります。
 Director Generalは、SPC、FC全てに参加しておりますし、CouncilもSecretaryという身分で参加しております。
 したがいまして、いろんな決議のときには、当たり前ですけれども、議論に強く参加するということです。
 ということで、組織の特徴としましては、Councilに政府代表と科学代表者の両方が入っているということと、大きな決定以外は所長への委任が多く、所長の権限が非常に強くなっているということです。
 実際にCouncil及びSPC等での議論を私も聞いていますが、基本的には常にScience-Drivenな議論を中心にして物事を進めていこうという土壌が出来ております。
 次のページが今の組織です。細かいことは言いませんが、毎年Director Generalが替わることによって変わるという点だけ言っておきますと、新しい、去年、Fabiola Gianotti氏がDGになったところで、新しく変えたのは、International Relationsというのを新しく設けまして、ここに新しいディレクターを設けるという形にしました。
 このように、DGが替わるたびに、組織図が変わる形になっています。
 CERNにおいてこのような体制でやっていたところで、どのような問題が出てきて、それをどのように解決したかというのを何個か話せという課題を頂いておりますので、少し話します。
 CERNの最近の大きなプロジェクトという意味では、LHCを作るということがありました。それに関したいろんな問題とその解決策というのが実はこの報告書の方に書いてあります。一つ一つをやっていくと時間がなくなりますので、私の方では、その結果として、マネジメントのところだけ抽出した話にしておきます。結局、LHCを作ると決めてやり出したのですが、2001年にLHCの実機マグネットが出来始めてきて、見通しが立つところまで来たところで気が付いたのは、やっぱり当初のコストと時間の見積もりどおりにはいかないということが分かりました。
 それに対してどういう形で解決をしたかということですが、迅速にまず査察委員会を組織しました。そこに非常にいろいろなところの多彩な分野の専門家を集めた。委員長にはRobert Aymars氏。元ITERの所長ですが、この委員長の下に、どうすればいいかというのを真摯に議論しました。これも1つの対処方法だと思いますが、Aymars氏は、実はこの次のCERN所長となって、実際に緊縮財政の中で手腕を振るうことになります。
 どういう結論にしたかというと、1つは、完成が2004年の予定だったのですが、2008年まで延ばします。後でも言いますが、LHCの建設は基本的にはCERNのお金でやっていくわけですので、完成を延ばすことによって、その間の定常予算を使った建設費用が増えるということになります。それによって、まずコストが高くなった分を吸収すると。
 ただし、それでもフラットバジェットに対して実際にお金が必要なときは変わりますので、それに対応するように銀行からの借り入れを行って、先に借りて費用を賄うということをやる。それでも、2008年までには借金を返済するという約束をするという形で対処しました。
 また、借り入れと延期だけではなくて、CERNとしても、例えば2005年に1年間全加速器を停止する等、コスト削減も進めました。
 以上の形で対処をしました。この対処ができた要因の1つは、毎年一定の予算が保証されているからというのを、先週上海でありました国際会議でこの当時の所長でありましたマイアニさんが話していました。
 それともう一つ、コンスタントバジェットより先に、拠出金で、自分でお金をコントロールできる組織であるからできたことというのは考えられると思います。
 先週マイアニさんが見せたスライドも資料として出しておきますが、時間がないので全部は説明しませんが、LHCでの途中の困難にどうして対処できたかといいますと、基本的にはCERNが技術的に優れていたのに加えて危機管理がうまくできたということと、コミュニティのサポートがしっかりしていたということと、あと、予算が一定であるというので、ほかの科学コミュニティに安心感を与えていたというのもあるというようなことが3番目のところに書いてあります。
 これが実際にCERNの累積赤字の推移ですが、横軸は各年でして、下に行くのが、赤字ですので、マイナスに行きまして、今言ったように、2001年ぐらいにこれが発覚しまして、結局、借金が大きく増えていくことになります。最大では1ビリオンスイスフラン以上になります。
 2008年に返すという約束だったのですが、その後にまたヘリウム流出事故等もあったので、ここでの返済、借金ゼロには持っていけませんでしたが、数年遅れた形で、ほぼ借金ゼロまで回復することができています。
 今度上がっているのは、次のLHCのアップグレードに向けて、これからまた借金体制になりますということですが、これをやるマネジメントに当たっても、累積借金を400ミリオンは超えないようにというCouncilでの議論の下に進めています。
 もう一つの課題として、これも余りサイエンティフィックではありませんが、国際機関ですので、いろいろ全部自分で考えなくてはいけないという問題があります。その中の1つとして、僕らが余りよく分からないものとして、年金の積立等があります。若いうちは年金の積立というのは問題ないですが、やっぱり組織が古くなってくるとどんどん問題が出てくるのはどこでも同じです。
 2000年ごろから積立の不足が明らかになっていて、それをどうすればいいかというのが常にCouncilのたびに職員組合等が集まったりして議論になっていました。
 解決はお金を注入するしかないわけですけれども、2011年の理事会議決で、毎年60ミリオンスイスフランずつ補填するということになっています。それで、今、年金財政の改善が見られておりまして、2014年には4ビリオンスイスフランまで積立になっているということです。
 国際機関なので、自分で決めればいいのですが、基本的にはCERNが今潰れても、今渡している人たちにペンションが全部払えるだけお金を持っていなくてはいけないというルールだそうですので、結構積み立てておかなければいけないということです。
 次は、CERNの環境整備に関する報告ですが、CERNの周辺の自治体等がどのような環境整備をしてくれたかということですが、報告書の中には2点あります。ジュネーブ州より土地の有償租借。それから、催し物開催など、対応を継続的に実施というのと、地上の実験機器については、周辺地域に配慮した施設設計を実施。確かにそれぞれの建物を、環境に溶け込んで、余り目立たない施設にするようにという形で作っております。
 それから、ユーザー、職員向けという意味では、CERN敷地内に保育所、幼稚園を設置等あります。
 ということで、CERNが出来たことによって、周りの環境を自治体が配慮してくれたり、あるいは、CERNから配慮したりとか、いろいろあるとは思うのですが、ジュネーブはたくさんの国際共同機関がある都市なので、CERNのためだけにやったものかどうかということの切り分けは非常に難しいです。ここに書いてあることはそのとおりだと思いますけれども、どれだけがCERNのための環境整備かというのは私には判断がつかなかったところです。
 ここまでがCERNの全体の組織の説明で、次のスライド(14ページ)の一番上のところですね、CERNというのは、まとめますと、22カ国のメンバー国で出来ていまして、理事会で決議して、Director Generalが執行しています。
 運転経費は、90%ぐらいがメンバー国によるもので、年間1,500億円。これ、スイスフランのレートをかなり高くしての値で、大体1,000ミリオン、1ビリオンスイスフラン/年ぐらいというのが毎年の運転経費です。
 最初に申し上げましたように、ここからCERNとLHCとATLASという3つの構想を全部分けた形で少しサマライズしていきたいと思います。
 CERNが運営している加速器としてLHCというのがあるわけです。当然この運営はCERNがやるものですので、CERN理事会が決議機関になりまして、ちょっと関与しました日本、アメリカ、ロシアです。またイスラエルは今メンバー国ですけれども、メンバー国になる前まではオブザーバーとして参加していました。
 LHCの建設経費は基本的にはCERNの場合には運転経費から持ってきたものがほとんどです。ですが、スイスとフランスから特別支出というのがありました。それ以外に、メンバー国以外からの応援というのがありまして、具体的には、日本、アメリカ、ロシア、インド、カナダ、イスラエルから協力がありました。日本からは138.5億円という形で、現金という形での貢献でしたけれども、アメリカも一部現金貢献がありますが、基本的にはほかのところはin-kind、物納、あるいは労働力によるものという形になっています。
 LHCは、LEPトンネル、前にやった加速器のトンネルを使っていますので、トンネルの費用は既存分なので含まないですけれども、全体の価格として大体4,000億円の建設がかかっています。
 これを毎年運転するのにどのぐらいかかっているかというわけですが、まず運転経費自体はCERNの年間経費から支出していて、この野村総研の報告書には225億円/年と書いてありますが、これ、資料上では、2005年、運転が始まる前の資料で、かつ、多分LHC単体の毎年かかるコストだと思われます。LHCを動かすためには、その前段の加速器も動かさなくてはいけなくて、そういうことももろもろ含めれば、ちょっとCERNの人と話しながら見積もりますと、多分今かかっているのは年間820億円ぐらいだと思われます。どうやって計算したかは補足資料の方に書いてあります。(これは、年間運転経費から支出指されるわけで、上の段の1477億円に含まれています。)
 ということで、加速器はCERNが運営していて、基本的には、建設には各国のメンバー国以外の拠出もありましたが、運転に関しましてはCERNが運転するという形になります。
 それに対しまして、次の階層としまして、実験グループというのがありますが、それが例えばATLAS実験。4実験ありますけれども、ATLASの例でいいますと、これはCERNと38カ国、182大学の研究所の3,000人近い人が集まった実験です。
 これは基本的にはCERNと独立した運営になっていまして、各大学1票のCollaboration Boardが決議機関になります。CERNとの関係という意味では、CERNが主催するレビュー委員会できちんとレビューされて勧告を受けるということと、Resource Coordinator財政のものと、Technical Coordinatorの特別な職はCERN所属でなくてはいけないというルールになります。これ、実際外部の者が選ばれて、やっている間だけCERN所属になるということも含みます。
 実験グループの代表者のことを我々、Spokespersonといいますが、Spokespersonは基本的にはCollaboration Boardの投票になります。したがって、CERNも1票です。ただし、どういうぐあいにして投票するかというと、3人ぐらいに候補者を絞った上で投票するのですが、3人に絞った時点でCERNの所長にこの3人で投票するがいいかという了解はとります。
 ということで、どの人が選ばれてもCERNは文句言わないねということを確認した上での投票という形になります。
 建設に関しましては、in-kindがほとんどで、ATLASの場合で560億円ぐらいでした。(これは表の上の段のLHCの建設経費には含まれていません。)
 運転経費に関しましては、基本的にはin-kindですので、それぞれの担当した測定器のところはそれぞれが担当するというのが原則です。ただし、どうしても実験の共通の部分があります。その共通部分については、学生以外の著者数に応じて分担ということで、それが全体で現在27億円ぐらいになります。学生を除くと、ATLASは今1,856人ですので、1人当たり150万円ぐらいのコストを共通経費として各大学・研究所が払います。
 先ほど言いましたように、それぞれの分担したところはそれぞれが担当していますので、CERNも分担として担当している部分があります。その部分のCERNが払っている額というのがここにある22億円です。これは人件費も含みますので、ATLASをやっているCERNの職員の人件費も含んだ数ですが、CERNはこれプラス1人頭165万円を足した分を毎年ATLASのために使っているという形になります。
 ということで、ラボ全体と加速器全体と実験グループというのはそれぞれ違ったレベルにありまして、それぞれ違うマネジメントになっているということはこれで理解いただけたかと思います。
 これはほぼ全ての実験で同じでして、第2回に三原科学官の方からドイツのDESYもありましたけれども、DESYの研究所の中にHERAという加速器があって、その中に実験グループがある。例えばZEUS実験があるという形になります。日本のKEKの場合でも、SuperKEKBという加速器がありまして、そこにBelleⅡ実験というのがあるという形で、ラボのレイヤーと加速器のレイヤーと実験のレイヤーというのがそれぞれ別なマネジメントがあるということを頭に入れといた方がいいと思います。
 繰り返しになりますが、CERNの場合には、LHCは基本的にCERNですが、ノンメンバー国から約17%の貢献がありました。実は、DESYのHERAについては、インカインドで外国から50%を加速器の建設にはもらっています。ただ、運営においてはDESYだけです。日本のSuperKEKBは100%KEKから出しております。
 それに対して、実験に関しましては、実験に参加しているグループの人たちで運転も含めて分担するという形になっています。
 ここで「天文」と書いて、僕の勝手な解釈ですので、観山先生は全然違うとおっしゃられるかもしれませんけれども、加速器の場合は、加速器がぶつけて見るものが出来る。つまり、天文でいう星がそこでできるわけなので、星にお金は付けられないので、基本的には星はホストラボが用意しておいて、測定をするところに関しましては各国で分担するという形なのかなというのが私のイメージになっています。ただし、これ、明確に分かれているわけではなくて、ちょっとグレーゾーンはあります。

【観山座長】  すいません。ちょっと急いでもらっていいですか。

【徳宿座長代理】  分かりました。ということで、加速器に関しましては、基本的にはホスト施設が出すということになっています。これ、この前までも議論が出ましたので、ここにICFAのガイドラインを一応原文で書いておきました。ここでホスト国がやるのではなくて、オペレーティングラボラトリーがやるのだということが書いてありますので、一応明記しておきます。
 実験はやっぱり各参加している人たちが全体で持つのですが、ここでポイントとしたかったのは、我々の場合には、全体で1つを作りまして、出来た成果をみんなで分け与えるわけにもいかないのですね。そういう意味で、建設に、実験グループに例えばある国が何%お金を出したから、研究成果が同じだけもらえるかとかいう議論をするのが非常に不可能なものが高エネルギーの実験です。
 それなのになぜホストをするかというのを考えますと、最先端のラボがあることによる波及効果、これは別な分科会でやったと思います。及び人類の知的好奇心への貢献だと思います。
 ということで、ILCでも同じことが起こるというのが次の図で、ここもスキップしますが、CERNがあると同時にILCラボがあるはずで、そこに作るILCという加速器があって、そこでやっている実験というのがあるわけです。TDRの検証のワーキンググループ、作業部会等で議論していた数というのがそれぞれにどこに対応するかというのを書いておきました。ですので、ほとんどTDRに書いてありますのは、ここのILCの加速器、LHCの加速器に対応するところで、そこの分担がどうなっているかということです。ちょっと省きます。
 経営組織のところにちょっと戻りまして、CERNの情報の下にもう1回まとめておきます。CERNのLHCではどういうマネジメントだったかといいますと、メンバー国の拠出金で運営して、LHCの建設も、その費用のほとんどが拠出金である。繰り返しになります。
 メンバー国以外の貢献は、日本はほぼ現金でしたが、in-kindが中心でした。
 LHCを建設するに当たってCERNがお金を直接使えることによって予算の最適化を図ることができました。これ、山本委員の発表にもありましたけれども、超伝導磁石ではCERNが材料調達をして、作る会社に供給する。また、製作治具も貸し出す等をやりまして、製作会社のリスクを減らしてコストダウンができたということが言えます。山本委員のところで、ハブラボの役割というのをCERNが一点管理してやったというところがありまして、それによって非常にコストを減らすことができたと思います。
 もう一つは、日本がお金で貢献したことは、CERNと日本にも大きかったということも言っておきます。これは日本が現金で渡すことによって、CERNから日本企業への直接調達というのが可能になりました。これによって、ヨーロッパの企業だけではないということによる競争の効果によって全体のコストを下げられたということがあります。更にお金の貢献であっても、一部の磁石等はKEKが請け負う、実際に製作しているという形で、in-kind的な使い方もできました。
 このような形がとれたというのは、やっぱりLHCが出来たときに作られた組織というわけではなくて、CERNが長く存在して蓄積があったというのも重要です。
 それに比べると、ILCの場合は新設ですので、同じような形がとれるかどうかは分かりませんが、そこはやっぱりプレラボが重要だということと、ここは山本委員が言っているのと同じだと思いますが、ハブラボが重要ではあると思います。それでも、ILCラボが中心になって進めることは重要だと考えます。
 これ、いろんな貢献の例ですが、これも省きます。1つだけ言いたいのは、お金だけてはなくて人的貢献というのも非常に重要で、例えばこれは建設のときではないですが、2014年のメンテナンスのときには、パキスタン、ギリシャ、ウクライナ、ロシア等からの大きな人的貢献もありました。2014年というのはクリミア危機が始まったところですが、CERNの中ではウクライナの人もロシアの人も仲よく作業していました。こういう人材交流をやれるというのも、基本的にはこれもやっぱり中心になっているラボの受け入れ体制がちゃんとしているからだと思います。
 最後のページになりますが、ILCで、CERNと大きく違うのは、拠出金を基に運営する組織ではないということです。In-kindが中心になります。その利点は明らかで、各国が持っているラボのインフラを有効に活用できると。特に山本委員の報告にありましたよう、欧州、あるいは米国もXFELの空洞を作った施設が活用できるというのがあります。
 CERNのLHC建設では、in-kindの貢献は少なかったが、受け入れ体制はしっかりしていました。それは今回果たせませんでしたが、DESYにおけるHERAでも、DESYがしっかり受け入れ体制を持っていたからin-kind協力ができたということです。
 そのためには、やっぱりILCラボにしっかりしたコア組織を作るというのが重要だと思います。ただの集合体であってはいけないというのは、PIPドキュメントにもありますし、マイアニCERN元所長のトークにもあります。後ろに付けてあります。
 ラボを強くするという意味でも、in-kindが中心になるかもしれないけれども、CERNのいいところをとるためには、各国の貢献の現金供出の比率を多くするというのは非常に重要だと思います。ここをどうやって国際的に取り決めていくかというのが鍵を握ると思われます。
 以上です。遅くなりまして、すいません。

【観山座長】  どうもありがとうございました。それでは、御質問や御意見がありましたら。では、まず、横山さん。

【横山委員】  御説明、全体は非常に学ぶことが多くございました。ありがとうございます。最初のポツにありますように、CERNのように大部分を拠出金を基にするのは現実的ではないとご説明いただきました。この点について確認なのですが、最初の方で、ILC研究所というのはDESY型を想定しているという指摘がございました。その点とご説明の内容についての整合性についてお伺いできればと思いました。

【徳宿座長代理】  いや、DESY型ではない。DESYは国際機関ではありませんので、国際機関という意味では、ITERのようなものに近い。In-kindが多いという意味では、ITERと同じような形になるというのが初回の山内機構長の話にあったと思います。
 ただ、その中でも、私のポイントは、現金の貢献というのはやっぱり大きく持っていないと難しい。できるだけCERN型に近づけるためには、in-kind貢献の比率に加えて、現金の分をかなりとるべきではないかというのが最後の主張になります。それは、初回の機構長の話にも、ITERと別なところの中間あたりに起きるというような図だと思いますが、それも同じようなことだと私は思っています。

【観山座長】  山本委員。

【山本(均)委員】  確認というか、質問ですけれども、今までいろんな課題が出てきて、例えば国際ILCラボ、それからハブラボの責任の集中と分散の問題とか、それから、世界的な環境の中で企業がどういうふうに関わるかというのは重要な問題だと思うんですけれども、この作業部会の目的として何らかの現実的でクレディブルな提案をするというのはゴールに入っているんでしょうか。それとも、検討だけして終わるんでしょうか。

【観山座長】  それはこの議論とか、これからの将来のことに依存すると思いますけれども、非常に皆さんがまとまった考えになれば、この作業部会としてこうすべきだとか、こうした方がよろしいということはあり得ると思います。今時点で、それをターゲットにするかどうかというのは、皆さんのお考えだと思います。

【山本(均)委員】  僕自身の希望としては、是非ともそこまで行けばいいなと思っております。

【観山座長】  分かりました。ありがとうございます。ほかに。どうぞ、北村先生。

【北村委員】  CERNの話に戻りますけれども、要するに、CERNでLHCを仮に大規模実験施設のインフラストラクチャーと考えたときに、実験グループのATLASとかCMSはその上のユーザーという2層構造になっていると思うんですが、LHCでは、ユーザー側とLHCのお金のやりとり、すなわち、ユーザー側がLHCの加速器を使うときに、何らかの利用料とか、そういう形での金銭のやりとりとかというのは、会計上はそういう仕組みがあったのか、ないのかということをお聞きしたいのですが。また、そのとき、たとえばヒッグス粒子のときに、膨大な回数の陽子衝突実験をやったわけですが、衝突回数を決めるのはユーザー側なのか、LHC側なのか。要するに、どんどん衝突回数が多くなればなるほどコストがかさんでいくわけですよね。結局どちらかのコスト負担になると思うんですが、その辺のルールというのはどういうふうになっていたんでしょうか。

【徳宿座長代理】  まずコストの分離ですが、先ほど言いましたように、LHCと実験側というのは完全に分かれていまして、LHCに関しましては、運転に関しましてはCERNが100%やっているもので、実験グループは加速器の運転経費は全く払わないというルールになっています。その上で、どれだけ衝突を行うかというのは、基本的には、おっしゃられたように、できるだけ多く行うということでやるということです。LHCのゴールとして、年間どれだけ衝突をやるのを目指すという形に向けて立ち上げている状況ではありますので、そこに向けてできるだけやるということです。

【北村委員】  それを決めるのは、実験ユーザー側なのか、加速器インフラのマネジメントをやっているCERNのLHC側なのか、どっちなのかということなんですけれど。

【徳宿座長代理】  基本的には加速器をどれだけ運転するかということで決まりますので、そういう意味ではCERNが決める。LHCが決めて、CERNが決める形になると思います。今年は何カ月運転こういうぐあいにしますということ、最終的な決定権はLHC、つまり、CERN側にあります。ただ、それをどうしますかという議論の段階では、実験側の意見は聞く形になります。年間どれだけ運転するかは、CERNの年間計画・予算と関連しますので、予算書で所長が提案して、決議機関は、あくまでも最終的には理事会になると思います。

【北村委員】  ありがとうございます。

【観山座長】  1つ、私から質問させてもらいたいんだけど、簡単な質問とちょっと重たい質問。簡単な質問は、この図は非常にいいと思うんですが、CERNの運営経費が1,477億円で、大体LHCが、ざっと計算して800億ちょっとという。その差は何に使っているんですか。

【徳宿座長代理】  1つは、今、この中で入れていないものでLHCと関連するものとしては、LHCのアップグレード費用が残りの大きな部分を占めています。

【観山座長】  だから、運転しながら、ある部分はアップグレードしているわけですか。

【徳宿座長代理】  はい。それから、その他の実験があります。

【観山座長】  その他の実験というのは、LHC以外にも実験があるわけですか。

【徳宿座長代理】  はい。補足の27ページに書いてあるのが今年の予算の詳細ですけれども、新しいプロジェクト、LHCのアップグレード以外にも、ほかのR&D等に280ミリオンスイスフラン、全体の22%を使っているという計算です。それから、LHCに270と言っているんですけれども、この中には実は測定器分もありますので、この測定器分は、私の計算では引き算するという形にしています。コンピューティングも抜くという形にして、その部分は減っています。それがどのぐらいありますかと言われると、大体100ミリオンです。

【観山座長】  分かりました。もう一つは、この段階で聞くのがいいかどうか分からないですけれども、大体研究所、加速器、国際共同実験という形で分かってきて、ILCというのは、一番上の段階をまずやっていきたいということだと思うんですが、日本で建設したい理由がお聞きしたいです。つまり、日本の強みがどこにあるのでしょうか、それは人なのか、技術なのか、サイエンスなのか、お金がたくさんあるからなのか、それともサイトが非常にいいのかという面でしょうか。 
世界の中で、つまり、これだけの大きな部分を日本に作るというための、我が国の強みは何なんでしょうかね。これ、この作業部会の一番最後にもう1回聞いてもいいと思うんですけれども。

【徳宿座長代理】  それはILCの方なので、私が話すべきなのかどうかというのは難しいですが、山本さん。

【山本(明)委員】  私なりのコメントですけれども、まず、非常に大きな話としては、どんどんこういった高エネルギー物理の実験が大きくなっていく中で、最終的にCERN一極になってしまうことが健全かというのは1つあると思いますね。そして、それは単極化は終わりの始まりというのも一般的には文化としてあることで、きちっとした相補的な計画が世界の2つの地域において分担される。それがお互いに競争も協調もしながらサイエンスを発展させるというのは非常に重要なことというのが、単にILCを超えた、そういう考え方であって、基礎科学に対して、高エネルギー物理学に対してあってしかるべきだと思います。
 それから、日本の強みは何かということは、基本的には超伝導加速空洞の技術というのは、世界の中で最も最初に大型加速器で実用化をし、デモンストレーションしたのはトリスタン計画。このときは、今のような蓄積もない状態の中で、本当に一気に日本の研究者の方々がそれを作り上げた。これは工業界と協力をしてまさに作り上げた。そこに実際に技術的には強みがあります。その後、世界の潮流がもっと発展したので、今、相対的には日本がそれに対して小さい比率に見えるけれども、そのポテンシャルは十分に持っている。
 それから、私個人としていつも強調させていただきたいと思っていることは、こういった基礎科学が日本としてのとるべき世界に通用する強みであるべきだと考えています。これは決して高エネルギー物理学だけじゃなくて、天文も、その他の基礎科学、みんなそうだとは思いますけれども、私たちのいる立場から申し上げますと、そういったことが、日本が持つべき文化、財産であり、次の世代に引き継ぐべきものという点で、やっぱりこういった1つの求心力を持つ基礎科学の1つのコアであるところがそういうことを担っていくというモチベーションを持つこと自体は大切なことではないかと思います。

【観山座長】  ここは体制及びマネジメントの在り方の検証作業部会ですので、体制とかマネジメントという面で日本の強みというのが最終的に報告書にも書ければ書きたい。それから、もしかするとそれが提言になるかもしれませんけれども、そういう観点からはどうですか。

【山本(明)委員】  そういう観点からは、正直言って、日本がまだ本当のこういった真の国際組織というものを持ってきたことがない。そういった点では、強みは何ですかといったときには、そこはまだ強みとして言えない。ただし、だからこそ、日本が将来そういったことに対して世界のリーダーシップをとっていけるような強みを持つためにとても重要な計画ではないかということは言える。1つの重要な目標になる。そして、きっとそれは的を外れていない重要な目標になるのではないかと思います。それが私のコメントになります。

【徳宿座長代理】  私の方からも、ほとんど同じことになりますけれども、今、科学的なレベル、あるいは技術的なレベルという意味では、日本、欧州、アメリカと、みんなほぼ拮抗した状況にあると思います。それが、やっぱり僕ら国際協力でやってきたので、そうあるべきところであると思います。だから、唯一やっぱり日本でやるという意義というのは、今まで日本にない国際的な組織を日本に持つというのは非常に重要なポイントだと思っています。

【山本(明)委員】  追加させてください。とても重要なことです。日本の本当の強みは、研究所と企業間のパートナーシップだと思います。これは高エネルギー研が出来て、そしてトリスタンが出来ていく過程の中で、各国がまだ研究所主体で作って、工業界にそれほど期待していないという世界の潮流がある中で、こういった基礎科学の大型組織を、研究所は小さいけれども、企業の方と協力をしたらこれだけのことができることを実証したと思います。。短時間の最大風速であったかもしれないけれども、トリスタン計画は、エネルギーフロンティアを実際に(歴史に)記録したものです。それは企業とのパートナーシップがあって本当にできたことで、これは多分佐藤さんが言ってくださると思うんですが、そういったことは本当の強みだと思いますので、そこは加えていただいていいと思います。

【観山座長】  ほかに。

【横山委員】  恐れ入ります。徳宿先生の発表スライドの8ページの特徴のところの3ポツにあるところを詳しく伺いたいんですが、Science-Drivenな議論を中心に物事を決められる土壌がCERNは長い歴史の間に培われてこれて、体制や運営についても、これを強く持っていらっしゃるからうまくいっているのかなというふうに外から拝見するんですけれども、そうしたときに、各国の参加国のコミュニティは、自分たちの将来計画の一部分をどうしてもCERNの内部の議論に委ねるほかないという状況で、自分たちの、例えば日本で言えば、高エネ委員会の議題であるとか将来計画というのをCERNに寄せて考えるような体制を、各国コミュニティではCERNを支える形にしてとっておられるのでしょうか。
 というのは、例えば日本の素粒子、原子核分野の研究というのは、今、多様性を持っていろんな形で進んでいる中で、1つ大きな研究所を作るというときには、やはり高エネ委員会等の合意形成が非常に重要になってくる。そういうときに、じゃあ、ほかの研究はやめてこちらに寄せていきますねというようなことが、それは現実的ではないにしろ、そういう議論が将来起こってくるようなときに、例えばヨーロッパの各国の物理学会の中ではどういう将来計画をCERN研究所を中心にして合意形成を進めているのかというのが少し伺えたらうれしいなと思いました。

【徳宿座長代理】  はい、分かりました。将来計画につきましては、大型プロジェクトに関して、ヨーロッパの中の全体の将来計画戦略というのは、高エネルギーだけに限らず、どうやるかというので、いろんな組織が出来ていまして、特に大規模施設についてはESFRIという組織がある。そこで議論するかどうかを始めるときに、高エネルギーの将来に関しましては、基本的にはCERNが中心になってまとめるというようなことが欧州の国の間で決まっています。ただし、それはCERNが何でもやるというわけではなくて、日本の高エネルギー委員会とおっしゃいましたけれども、欧州にはECFAという組織があります。ヨーロピアン・フューチャー・アクセラレータ……。

【川越委員】  European Committee for Future Acceleratorsですね。

【徳宿座長代理】  将来計画を議論するところで、これは基本的には日本の高エネルギー委員会と同じように、下からのボトムアップ的な組織になっています。それで、6年に1回ぐらい欧州の将来計画を決めるのですが、それをやるときには、ECFAとCERNの人たちが協働しながら議論を進めるという形になります。キーになる委員は、ECFAからと、あとCERNのサイエンス・ポリシー・コミッティーのメンバーそれぞれから5人ぐらい出るという形が世話人になって、みんなの意見を集結しながら進めるという形をとります。
 ですので、CERNがいろんな意味で主導しますが、各研究者の声を聞きながら進めるという体制をヨーロッパはとっております。

【山本(明)委員】  ちょっと補足していいですか。CERNのSPC が決めるとおっしゃっている中で、実はSPCのメンバーはCERNの人が正式メンバーには入らないんですね。つまり、非常に外部の意見をきちんと聞くというの構造を原理的に持っています。CERNが決めるとおっしゃるけど、本当に重要なサイエンス・ポリシー・コミッティーは、ユーザーコミュニティが答申をCERNに出して、実施するのはDESYなりCERNですけど、そういった意味では、CERNが独断専行するということが全然できないような健全な組織になっていると思います。

【徳宿座長代理】  それはそのとおりです。

【観山座長】  当然です。

【永宮委員】  相変わらず僕が分かっていないことは、CERN的な研究所を目指すかもしれないけど、CERN的なものを目指すとすればやっぱりアジアの国をきちっと入れてやらないといけないと思うのです。中国がまた別の計画も持つし、また韓国がやるかもしれない、やらないかもしれないけど、ともかく各国がばらばらに動いている現状では、アジアはヨーロッパとは全く違う状況になっているわけですね。そのため僕は、ILCはDESY的な国際計画じゃないかなといつも思っているのです。そうじゃないという話を今日は言われたようなので、どういうスタイルがベストかを考えておく必要があると思います。要するに、CERNを目指すのだったら目指す体制はもっと作らないと、日本を中心にヨーロッパとアメリカだけを巻き込むだけでは良くない。中国はものすごい勢いでお金持っていますからね。

【観山座長】  要するに、CERNというのは、ヨーロッパの各国の経済割合において出して作っているわけなので、そういう面からいうと、CERN的だと言うと、仮に、例えば中国、日本、東アジア、それからアメリカも含めてもいいけれども、そういうある分担を求めて、それで作り上げていくのがCERN的というふうに思ってしまうのだけれども、そこはどうなのかというと。いかがでしょう。

【山本(明)委員】  私のお示しした世界地図がありましたが、その中にきちんと中国、インド、韓国が入っています。韓国が明確じゃなかったかもしれないですけど、入っているんです。ただし、中国は、、ILCは応援したい、参加します、そういう意思を持つけれども、自国の計画も必要ですと言っているんです。それは両方はきっとできないでしょうというのは、中国の問題としてありますけれども、ICFAの立場から、歴史を重ねて、国際的な組織として、ヨーロッパリージョン、アメリカリージョン、アジアリージョンですね。日本ではないです。アジアリージョンとして、全員集まったところで、ICFAレベルでILCというものを議論してきたことは確かで、そこのメンバーにアジアの人が実際に入っていらっしゃる。日本だけが入っているわけではありません。中国の計画は、逆に言うと、ICFAレベルに審議を上げずに、これは自国の計画としてインターナショナルコラボレーションをやりたいと言っているわけです。つまり、それがほかの計画でいうDESY的という言葉があるかもしれませんが、それが必ずしも適切かどうかわからないので、例えばJ-PARCの場合においても、日本が作ったけれども、いろんな個々においてはインターナショナルコラボレーションを歓迎しますという言い方。それと近い形が中国で言われていますので、そこは混乱が余りないようにお願いいたします。中国は本当に経済力があるからそういうことを言えると言ってしまえば、そのとおりで、ヨーロッパの中でそういうことがなかったかというと、CERNがありながら、DESYはEuropean XFELを作っているということがありまして、ドイツはそういった両方のスタンスをきちんと持っているということがあるので、絶対それができないとも言えないという状態ですね。

【田中委員】  ちょっといいですか。今のコメントというのは、山本委員の発表資料の4ページ目に基づいての話ですか。

【山本(明)委員】  そのお答えのために用意したものではないので、適切ではなかったらすみません。

【田中委員】  でも、これはかなりスペシファイされた技術の話であって、今議論されている、CERNが22カ国ですか、そこで各国がそれぞれお金を拠出してという話とはちょっと違うように思えますが。

【山本(明)委員】  そのベースになる、興味を持っている機関はこういうところにありますということで、この方々が参加した22カ国のようなメンバーシップをとるかどうかは、ここの場を超えた政府間の協議の中でこれから議論されることだと思いますので、田中さんがおっしゃることは、十分に御指摘は理解いたしますし、そのとおりだと思っています。

【観山座長】  だから、将来的な見通しの部分と、それから、現実に目指す部分と、そこら辺の話はどうかということですね。

【山本(明)委員】  徳宿さんの前に一言だけ加えさせてください。CERN的と言ったときは、インカインドコントリビューションが非常に小さくて、みんな、キャッシュで徴収して、コモンファンドになっているというのが分かりやすいかと思うんです。今の世の中にそれが認められるかという議論があるために、ITERがある程度先例を作っているように、おおよそのマジョリティのお金が全部ITERラボに行くということは実際に実現できなかったわけですね。これはこれからお話聞かせていただけるんだと思いますけれども。そういう状況を踏まえて、ILCが勝手にCERN的に行きますと言っても、それはそういったものの後を付いていくわけですから、そういう厳しさも分かっていると。そういう中で、いかにコモンファンドを増やすかということが大切かということは私たちには言えると、そういうことです。

【観山座長】  非常に難しいところですね。お二人、では。

【佐藤委員】  先ほどの日本の強みで、企業と研究所、先生方のパートナーシップというお話が出たんですが、私もそれはものすごく感じています。先生方が企業の現場に非常に深く入ってきて、一緒に物を作り上げていくという、その歴史がいろんな日本のプロジェクトの、トリスタンから始まって、SPring-8、J-PARC、放医研なども、そういうことがやっぱりベースになって成功してきたと思います。
 ただ、これから国際協力になると、今ITERをやっていますし、こういう分野だけでなくて、発電プラントの分野でも、国内の電力会社とやるのと海外とではやっぱり契約書の重みが全然違っています。1つ、パートナーシップで一番いいところは、誤解を恐れず言いますと、国内の契約書というのは何とでも読める。そういう契約書の中で、議論しながら物を作っていくということがあったわけですね。それがいい結果だったわけですけれども、ところが、海外との契約書は、本当微に入り細に入り、ものすごい細かいことが書いてあって、それを1つ変えようとするだけで、結局、今でしたら、ITER機構に全て、QSTを通してお伺いを立ててというのは、かなり細かいところまでやらなきゃいけない。
 ただ、国際協力でやるには、こういう体制がどうしても不可欠になるので、それと、今まで非常にうまくいっていた国内の強み。人間も変わってきているので、昔のある程度年代がいった方と若い方とはまた違う考え方を持っているし、企業の側としてはやっぱりこの強みをいかにキープしたまま、こういう国際協力ができるかというのは非常に重要なことと考えて我々も努力しなきゃいけないなと、先ほどの山本先生のお話を聞いて思いました。

【観山座長】  ありがとうございます。北村委員。

【北村委員】  2点あります。1点目は、今のお話の延長なんですけれども、山本先生も強調されたとおり、ILC及び日本の強みというのは、研究所すなわちKEKと民間企業の、今、佐藤委員もおっしゃられたとおりのパートナーシップといいますか、密接な連携であるという点をおっしゃられたと思います。これについては、日本だけじゃなくて、ドイツにしても、DESYと空洞を作っている会社のRIとかZanonとは、ものすごい密接な本当のパートナーシップ関係にあるということで、それは日本に限らず、外国についても同じような状況かなと思います。私は、それは非常に良いことだと思っています。
 ただし、論点として、一方で国際競争入札の話が絡んでくると思います。山本先生の先ほどの説明では、国際競争入札の際には、どの地域であれ、世界のどの企業も、どの地域でも入札できるということを前提とした考え方に今あると言われましたけれども、そうすると、入札とパートナーシップの関係はものすごく微妙になってくると思うんです。パートナーシップを結んだ密接な関係になっている企業は、必ずしも国際競争入札、すなわちWTO政府調達の基準で入札したときに取れるという保証がない。逆に、じゃあ、WTO調達で入札かけて、受注した企業が、その後に研究所と密接な関係になるかというと、それは時既に遅しという感じとなります。
 ですから、その辺が、どうやって入札をやるか、あるいは企業が研究所との関係を作っていくかというのは非常に重要なポイントではないかと思います。山本先生に今この場でお答えいただく必要はないと思いますが、重要な論点ではないかと思います。というのが1点目。
 それから、2点目、簡単ですが、山本先生はILC国際研究所とハブ研究所のストラクチャーを非常に特徴的に考えているようにおっしゃられましたけれども、例えば日本で考えたときに、相当具体の話になりますけれども、KEKがハブ研究所になるのは恐らくはイメージとしてありますよね。そうしたときに、それ以外にILC国際研究所を、日本に置くということを前提に話したときに、ILC国際研究所のコアを担う人材とか組織的な部分というのは、KEKの先生方がそちらに移るということになるのかどうなのか。もしそうだとすると、ハブ研究所としてのKEK、それから実際のKEK、ILC国際研究所に貢献するKEKという3つの姿があると思うのですが、どういう整理になるのかなというのは、今のところ、非常に私は疑問なんですけれども、というか、イメージがつかないんですが、日本でやる場合には、ここも重要な論点ではないかというふうに思います。以上です。

【山本(明)委員】  よろしいですか。私の今日のお話の中でも少し触れましたけれども、例えば青信号が頂けたと。それから4年間準備をしたとして、4年間かけて準備期間があったとしても、ILC研究所自身がハブラボラトリーの役割を一気に果たすことは非常に難しいぐらい、技術は深く時間を要するものだと考えていますから、KEKが立ち上げのところでハブラボの役割を果たさなければいけないのは多分自明でしょうと。ただ、それが10年間の建設期間がある中で、徐々にILC研究所が実力を付けて、ハブラボラトリーとしてのファンクションも完成時には持っていかなきゃいけない。それは、だから、グラデュアルにやっぱり考えていくべきだと思うので、そうすれば解はきっとあるだろうと。
 それで、もう一つそこで申し上げたいことは、今非常に注目すべき、これに似た状況がヨーロッパにございます。それは、ESSです。欧州のニュートランスポレーションソースの研究所がスウェーデンのグリーンフィールドに今作られているわけです。これをヨーロッパの研究所が、XFELも経験した研究所みんなが応援して、それを作っています。CEA-Saclayもそうです。イタリアもそうです。イギリスもそうです。ESS研究所自身は、最初人材を当然のことながら持っていない。それが発足してから今多分4、5年だと思います。だけど、その間に着実に力を付けていって、その間、周りの研究所がみんな分担してものづくりをしているわけです。それを集結していく段階で、ESSには人材を、そこからだんだん育っていった人が新しい人材としてESSの研究所に入っていくというのを今まさに実践していて、先週もそういった国際会議の中でその様子を聞かせていただくことができましたが、少なくともそのやり方は期待した方向で進んでいると思うんです。これは田中先生からコメントいただいてもいいかもしれないんですけど、私はそういう注目をしている中で、決して解がないわけではない、きっとあると思っています。

【観山座長】  先ほどもちょっと私聞きましたように、ここは体制とマネジメントの作業部会ですので、最終的な報告書を親委員会に上げるときに、やっぱり体制とマネジメントの面で(日本の強みという言い方をしましたけれども)、具体的にどういうふうな計画を、持っているのか。人材がこれから育っていくであろうということはもちろんですが、しっかりとした計画や方向性がないと、なかなかみんなが納得する話ではないので、もっとしっかりとした話を最終のところまでに議論していきたいと思います。
 どうもありがとうございました。では、短く。時間も延びているので、すいません。

【川越委員】  きょうのテーマの1つは、研究所と企業のパートナーシップということで、山本明委員の講演、それから、佐藤委員のご意見、非常に貴重だったと思います。
 この部会の基本的な資料の1つにPIPという文書がありますが、これは恐らく基本的に研究者の視点から書かれたものだと思います。すなわち、企業、産業界の方からの視点が余り入っていません。そういう意味で、研究者と企業、産業界の方も含めて、全体のプログラムマネジメント、そういうことを考えるべきではないかと考えます。
 だから、PIPはすでにありますが、先ほど山本均委員から意見が出たように、この部会から何かを提示するならば、研究者側からの視点だけではなくて、産業界からの視点も含めたものを考えるべきであり、そういう方向に進めて行けたら良いと私は考えております。

【観山座長】  貴重な御意見ありがとうございました。
 それでは、すいません、少し時間が延びてしまいましたけれども、最後に、事務局から今後のスケジュール等々について、それからまた報告書のまとめ方、きょうも少し議論になりましたけれども、説明をお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  申し上げます。お手元の資料3をごらんください。今後のスケジュールでございます。資料3にございますとおり、次回は来週の6月2日、金曜日、13時からを予定しております。次々回は、最終回を予定しておりまして、6月27日となっております。
 次回の6月2日につきましては、本日同様にITERとALMA計画につきましてヒアリングを行いまして、会議の後半では本作業部会の報告書の骨子案につきまして御意見を頂戴したいと考えております。そのため、次回の会議時間を30分延長する御連絡をさせていただきましたが、御多忙のところ、大変恐縮でございますが、どうぞ御理解いただきますようお願い申し上げます。
 現在の予定としましては、今後、次回で骨子案について御意見を頂戴しまして、それを踏まえた報告書案を事務局で作成し、先生方に事前に送付した上で、最終回の6月27日を迎えられるように準備を進めてまいりたいと思っております。時間のない中での作業となりますが、どうぞ御協力いただけますようよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【観山座長】  10分長くなってしまいました。申し訳ありませんでした。本日の議題はこれで終了したいと思います。連絡事項、事務局からお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  本日の議事録につきましては、後日出席委員の皆様にメールにて確認をお送りさせていただきます。御了承いただきましたら、文科省のホームページにて公表させていただきます。
 以上でございます。

【観山座長】  それでは、本日の会合を終了いたします。どうも皆さんありがとうございました。


―― 了 ――

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課素粒子・原子核研究推進室

(研究振興局基礎研究振興課素粒子・原子核研究推進室)