国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議 人材の確保・育成方策検証作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成27年12月21日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 5階 5F1会議室

3.議題

  1. 人材の確保・育成方策検証作業部会(第1回)の議事録について
  2. 大型研究プロジェクトの推進に係る建設、必要人員の確保及び人材育成の状況等について
  3. その他

4.出席者

委員

中野座長、小関座長代理、池田委員、大熊委員、岡本委員、熊田委員、中家委員、山本委員、横山委員

文部科学省

小松研究振興局長、生川大臣官房審議官(研究振興局担当)、行松基礎研究振興課長、萩原素粒子・原子核研究推進室長、吉居加速器科学専門官

オブザーバー

高エネルギー加速器研究機構佐藤名誉教授、理化学研究所放射光科学総合研究センター田中部門長

5.議事録

【中野座長】  それでは、国際リニアコライダーに関する有識者会議、人材の確保・育成方策検証作業部会(第2回)を開会いたします。
本日は、御多忙のところをお集まりいただき、誠にありがとうございます。
本日の出席状況について、事務局から報告をお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  御報告いたします。横山先生が少し遅れていらっしゃるようですが、本日の出席は9名となってございます。浅井委員と横溝委員におかれましては、所用により御欠席でございます。当作業部会の定足数は6名ですので、会議は有効に成立しております。また、本日はこれまでの大型プロジェクトの推進に関わる建設、人員の確保等について御発表いただきますため、理研の田中部門長、それから、高エネ機構から佐藤名誉教授に御出席をいただいております。
以上でございます。

【中野座長】  ありがとうございました。
それでは、事務局より配付資料の確認をお願いします。

【吉居加速器科学専門官】  配付資料の確認をいたします。お手元の資料を御覧ください。
資料1が前回、第1回の議事録(案)でございます。2点目が、これまでの主な意見(案)としまして、前回の主な意見をまとめたものでございます。3点目が本日プレゼンいただく田中先生の資料。資料4が同じく佐藤先生の資料でございます。資料4の参考としまして、SuperKEKB加速器の職員構成を1枚もので付けております。資料の5点目が今後のスケジュール(予定)となってございます。
それから、前回も御説明いたしましたが、机上に参考資料としましてファイルを置いておりますので、適宜御覧をいただければと思います。
以上、不足がありましたらお願いいたします。以上でございます。

【中野座長】  それでは、議事に入ります。
議題1として、前回の議事録(案)についてお諮りしたいと存じます。既に事務局から確認があったと思いますが、もしこの場で何か御意見があればお願いします。
御意見、ございませんようですので、これで承認されたことといたします。
それでは、前回の議事録につきましては、資料1のとおりで決定します。
続いて、前回の会議の主な意見を資料2にまとめておりますので、これについて事務局から説明をお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  御説明いたします。資料2を御覧いただければと思います。
資料2は、議事録とは別に前回の主な意見をまとめたものでございます。これから毎回議論を重ねていく上で、毎回の会議での主立った御意見をこの資料に追記していきまして、最終的に報告書としてまとめる際の参考資料となるようにしたいと考えているものでございます。できるだけポイントを絞った記述としておりますので、御意見等ございましたら御指摘いただければと存じます。
簡単ではございますが、資料2に載せております御意見を概観したいと思いますので、資料を御覧ください。
1としまして、まず本部会での議論について、どのようなことを議論していくかという点で、1ポツ目、ILCの建設期の必要人員約1,000人の職種の構成、若手の割合、国内外で必要となる人数、日本人研究者の割合、海外から呼び寄せる根拠、外国人研究者やリーダー格の研究者を招聘等する場合の給与水準等の設定、インフラ整備、ILC完成後の技術者等のキャリアパスなどについて、本部会で知りたいという御意見がございました。
2つ目、海外企業がどれぐらいILCに参加をしているのか、それから、国内の中小企業の技術をどう取り込んでいくのかという御意見がございました。
3つ目、加速器建設が近年止まっており、いつ頃、どれくらいといった次の加速器建設の見込みがないと企業では人員の確保が困難であるという御意見。
4つ目、近年加速器科学の教育が弱体化しており、ILC計画を基に大学の役割がどうなっていくのかを議論したいという御意見がございました。
それから、2としまして、TDRにおける人材の確保・育成についてでございますが、これは、前回山本委員から御発表をいただきまして、それに基づく議論の部分でございます。
一つ目のポツが、各国のラボが拠出する人員についてどこで作業をするのかという点で、クライオモジュールの試験までは各ラボで作業を行うことを想定しているという御意見。
それから、人員の増について、超伝導はゼロからのスタートである。ILCは国際協力で実施するので、海外の事例を転用することが可能と想定しているという御意見。
3つ目、加速器人員の国際化について、SuperKEKBやJ-PARCは国内計画として進んでおり、組織や人を含めた考え方の変革が必要ではないかという御意見。
それから、一番下の、加速器人材の育成についてでございますが、大学には加速器技術を専門とした講座がほとんどなく、育成につながっていないということが課題であるという御意見。
裏面に参ります。
量産化の技術について、日本ではこの10年間で30台しか作っておらず、OJT等により人材を育成するためには、建設期間前に準備や生産体制をどうするかを並行して考える必要があるという御意見。
それから、建設には約1,000人が必要という点について、ピーク時には1,600人の体制を作らなくてはいけないということを見据えての議論が必要であるという御意見。
3つ目、人材のキャリアパスについて、欧米からはある程度成熟した方が参加するけれども、日本はゼロから人材を育成して、その後どうなるのか、見通しが立っていないという御意見。
それから、ILCのキーテクノロジーはナノビームと超伝導である。ナノビームはKEKBで人材が育っているが、超伝導を初めて加速器に取り入れたのは日本のトリスタンであり、我が国にもポテンシャルはあるという御意見。
それから、ILCに学術的な魅力があれば、研究者、学生、企業と人は集まってくるけれども、その展開をどうやって考え、見せていくかが重要であるという御意見。
最後ですが、CERNは多国籍機関であり、地政学的にも日本とは異なるため、容易にそのまま援用できない部分もあるのではないかという御意見がございました。
以上でございます。

【中野座長】  それでは、ただいまの御説明に対して何か御意見はございませんでしょうか。

【山本委員】  裏側の「日本はゼロから人材を育成し」という、そういう議論はなかったと思います。実際にATF、STFにおいて、既に20年の歴史を持って人材を育成しているということと、それから、世界のメッカとしてATFでは50名のドクターを輩出しているということも補足で御説明させていただいたので、「ゼロから人材を育成」というのは少し言い過ぎだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
育成がもっと必要だというのはよく分かることなので、それはもっともなことなのですけれども、ゼロからというのは。

【中野座長】  構成品によってというか、部品によって。

【山本委員】  いや、そんなことないと思います。

【中野座長】  違いがあるのではないですか。どうぞ。

【中家委員】  今の、確かに山本さんの言うとおりで、これは、超伝導が人材がないというとすごい言い過ぎな感じがしまして、議論があったのは、超伝導加速空洞のところの今後の量産や、そっち側のところが主だったと思います。

【山本委員】  だから、工業化とか、XFEL計画に比べて工業化に対するのはこれからですけれども。

【中野座長】  多分そこの議論だったと思います。

【山本委員】  でも、これはそうは読めないのではないでしょうか。これは全部がゼロからと読めますから。

【中野座長】  もちろんそういうことは、その次にナノビームのことについて書いてあるところにも明らかなので、ここは言葉が足りないと思いますから、後ほど足していただくということでよろしいでしょうか。

【吉居加速器科学専門官】  もう一度確認をして修正をさせていただきます。

【山本委員】  よろしくお願いいたします。

【中野座長】  そのほか、前回、欠席されていた委員から、趣旨が不明確であるかと、あるいはこういうことを加えた方が良いということがあれば、この場でも御意見を付け加えていただけると思いますけれども、ございませんでしょうか。
よろしいですね。
それでは、議題に入りたいと思います。
本日は、これまで実施されてきた大型研究プロジェクトについて、建設や構成品の組上げ、必要人員の確保がどのように行われてきたか、また、人材育成の現状等について、お二方から御発表いただき、議論を行うこととしております。お一人目は、理化学研究所放射光科学総合研究センターXFEL研究開発部門、田中均部門長から、主にSACLAに関するお話をいただきたいと存じます。お二人目は、高エネルギー加速器研究機構、佐藤康太郎名誉教授から、KEKBに関するお話をいただきたいと存じます。質疑は後ほどまとめて行いたいと思います。
それでは、田中先生、よろしくお願いいたします。

【田中部門長】  御紹介にあずかりました理研の田中です。本日は、私もこういうものは初めての試みですが、私たちが行ったSACLAの建設プロジェクトを、プロジェクト・マネジメントと人材確保という切り口で簡単に説明したいと思います。
私のきょうの話はこの4つから構成されておりまして、まず、イントロダクションとしてSACLAの建設プロジェクトがどんなものかを簡単に説明いたします。もちろん予算や人の実際の時系列の増減等もここに入っております。2番目に、我々のプロジェクトにおける課題、それをどういうアプローチで克服してきたかということ、この部分にフォーカスして我々の経験を述べて最後にまとめます。
このパワーポイントはSPring-8の航空写真でございまして、SPring-8の蓄積リング、周長約1.5キロのものがここにありまして、SACLAというのはこの長細い施設で、SPring-8から出ています1キロの長尺ビームラインに沿う形で建設されております。
そこの施設の中身がここに模式的に書かれておりまして、大きく3つのパートからなっています。このSACLAというのは、基本的に自発光ではなくてX線領域のレーザーを発生させる、それも電子ビームをレーザー媒体として発生させるものでありますので、まずこの最上流部にレーザー増幅に足る非常に質の良い電子ビームを作って、それをある程度加速できる状態に時間方向にバンチングするという、熱電子銃を中心とした加速器の入り口部があります。ここの400メートルの部分は、ある意味ではILCの副産物でできています。今では超伝導システムがILC計画で採用されていますけれども、ILC計画で不採用となったCバンド、常伝導加速器というハイグラーディエントで効率よく電子を加速する、そういうシステムをSACLAでは採用しました。その結果、400メートルで80億電子ボルトまで電子を加速できるようになっています。目的のエネルギーまで加速された非常に高品質の電子ビームを使って、この約200メートルの、少し広がっている部分ですけれども、ここに高エネルギーの電子ビームを用いてレーザー増幅をするための増幅器が並んでおります。後ろに100メートルほどの、レーザーを使って実験する設備が設置されています。
さて、我々のプロジェクトは、ここに書いてありますように、高性能で安定、日本は高性能のものを小さくしていくという技術にたけておりますが、我々のレーザーも性能はよく、かつ非常に小さくということを目標に掲げてやってまいりました。それを実現するために、どういう技術開発を行ったか、主に3つここにまとめてあります。
一つ目は、これは日本のある意味では技術的にかなり優位な部分ですが、非常に短くて磁石列が真空槽に入って電子ビームに強い磁場を与えることができる、短周期の高精度なアンジュレータを開発しました。それによって実際に同じレーザーの波長、光子エネルギーでも必要な電子ビームのエネルギーを下げることができます。電子ビームのエネルギーが下がれば、もちろん施設規模は小さくできます。2つ目は、先ほどお話しましたように、ILCには採用されませんでしたが、非常にすばらしい常伝導の高効率加速システムが日本で開発されましたので、それを使って下がったエネルギーまで効率的に加速できると更に施設規模をコンパクトにできる、そういうシナリオです。
ただし、ここまでは良い方向の話ばかりですが、実際にほかの研究所でなぜこういうことをやらなかったのかというと、低エネルギーのX線レーザーをこういうシナリオでワークさせるためには、今では多分ほかの方法でも可能だと思いますけれども、当時としては非常に高品質の電子ビームが、その当時のアメリカのLCLSのシステムでも実現できない性能の電子ビームが、実は必要でした。ここが最後の3つ目の開発項目ですが、私達のスキームを現実のものとするためには独自の電子銃を開発する必要がありました。これら3つを組み合わせることで、LCLSの約3分の1の、今、建設中のヨーロピアンXFELの約5分の1の、ヨーロピアンXFELが3.4キロメーターでSACLAは700メーターですが、そういうコンパクトなXFELを実現するというプロジェクトでした。
ここの年表には、着想から実際にできるまでがまとめてありますが、ほぼ10年かかっています。まず2000年に着想されて、それから研究開発が始まり、一番重要である、このシナリオに必要な高性能の電子ビームを生み出す電子銃、その電子ビームの質を維持して主加速器で加速可能な形に電子ビームを整えるインジェクター部というものの開発に力点が置かれました。この部分があってはじめて、こういうステップでプロジェクトを進めることができました。当時は、実際に計算機上では何でも言えますから色々なことが言われました。そんな短周期の真空封止アンジュレータにしたら電子ビームがぼろぼろになって(劣化して)レーザーなんかできるのかというような、いろいろな御批判を頂いたものですからプロトタイプを作りました。実際にこういうスキームで、EUVですね、深紫外の自由電子を媒体するレーザーができるということを実証し、最終的にユーザー運転まで行いました。原理実証のめどがついたところで実機の建設に入る、そういうプロジェクトの流れとなって現在に至るということでございます。
ここには、その建設プロジェクトで予算がどういうふうについてきたかということが簡単にまとめられております。総額として約400億円弱という予算がこのように5年間でつきました。補正で多少増えております。このように予算を頂いて実際に作っていきました。
どういうふうに人材を集め、どうやってマネジメントをしたのかという話をして欲しいと文科省の方からリクエストがあり、データをまとめ直してこの図を作りました。2006年に5年間のSACLAの建設プロジェクトがスタートし、5年で実際に人員は100弱までトータルとして伸びていっております。理研の場合、定年制のスタッフを増やすということが基本的にできないので、定年制のスタッフというのは、こういう状態で最大で30名ぐらいになりましたが、ほとんどフラットです。客員、派遣、研修生なども含めたアウトソースの人材でまかなっています。建設が終わったところで、建設に携わっていた方たちが元に戻っていくというプロセスがあって、そこからレーザー利用を推進するために新たな人集めが始まっているので、ここが極小になっています。次の図に示されているのですが、後半の、建設後の利用フェーズの人員の伸びというのは、利用系の客員スタッフが増えて膨らんでおりまして、逆にいうと、加速器系の研究者はここがピークで、建設完了とともに半減しております。現在の定常状態の運転では大体20名ぐらいのスタッフで運転と高度化を行っております。
X線のビームラインから検出器、実験をサポートする研究者は、建設とともに徐々に増えていって、最終的には、研究者の数は加速器系とほぼ同数になっています。エンジニアに関しては、加速器系、利用系、水色とグリーンで示してあるように、もともと余り大きな数ではありませんで、どちらかというとかなりアウトソースに依存しているということがよく分かると思います。
ここに、我々、大規模というほど大規模ではないのですが、400億規模のSACLAと、それに比べてかなり大きなILCの建設プロジェクトの比較を簡単にまとめております。プロジェクトの形態としては、SACLAは基本的にドメスティックで、ILCは国際色がかなり強い。また、SACLAは地上に建設しておりますが、ILCは地下ですので、多分より難しいのかなと。トンネルを掘って、中に物を運んで、そこでクリーンブースを設置してということですので、我々の方がILCに比べると易しいのかなと個人的には感じております。
サイトとしては、SACLAは既に動いているSPring-8のサイトの中に作っておりますので、いろいろな意味で、実際にSPring-8に携わっているスタッフのサポートが受けられるという利点があります。ILCは、母体としてKEKがあるので、立地が違ってもKEKがかなり大きくコミットしますので同じことなのかもしれませんが、多分新しいサイトに作るということでいろいろ大変ではないかと思います。
建設額、ここに示すとおりです。
建設のスケールは、どういうユニットで比較するかによりますが、長さで言うならば、ILCは31キロメートルということで40倍ぐらい大きい。エネルギー、これはコライダーなので250GeV掛ける2ですけれども、60倍ぐらいのスケールになる。こういうユニットで比較するとそうなります。
先ほど示しましたが、SACLAはかなり小人数で、もちろんそれは建設の労務、役務を外に、メーカーに投げているということがあって、このぐらいの人数で実際にできました。その人数に比べると桁違いに大きな人数が必要と見込まれるというふうにかなり大きく違っております。
次に、ILCとは違うかもしれませんが、我々の建設プロジェクトでの課題を4つに分けて簡単に説明します。加速器物理的な課題。中身はILCとは違いますが、同様の課題がILCにも多分あると思います。それと、機器の大量生産とそれを非常に限られた時間でどう据え付けてどう調整していくのかという課題。もちろんプロジェクト・マネジメントにおける課題。それと、これは多分ILCでも同じでしょうけれども、建設後に早期の成果創出をどうやって実現していくか。それに向けた種まきというか準備。これら4つの課題がありました。
加速器物理的な課題は、今回の趣旨と大きく関わらないのでさらっと流します。もちろんプロトタイプをやりましたといっても、プロトタイプから実機までのジャンプがあります。そこをどうやって埋めていくか。それと、特にジャンプの中でも一番我々が最後まで大丈夫かなと思ったのは、現実にハードウェアができる、できないというのがありまして、ハードウェアができる精度と、実際にプロジェクトが必要としている精度がきちんと折り合いがつくのかという、その部分の評価。それともう1つ、これも前々からかなり議論になっておりましたけれども、非常に精密に直線を出すということを、地球上のジオイド面に沿ってやるのですが、実際にできるんですか、どうやってチューニングするんですか、どういうレスポンスを見ながらそれを追い込んでいくんですかという問題がありました。もちろん、それらは現在できているので、全て解決したわけですが、ここではこれ以上踏み込まないことにします。
それと、製作・据え付け・調整、これらを限られた建設の時間内にどうやって納めるかという問題がありました。多分ILCでも同じでしょう。我々もCバンド加速管の量産化が問題でした。もちろんプロトタイプではCバンド加速管を、4本だと思いました、4本かな、10本以下です、を作りました。それは一品物の生産でした。もちろんSACLAでもCバンド加速管の生産は間に合ったのですがぎりぎりでした。プロジェクトの後半の2年間で作ったと記憶しております。144本のCバンドを2年間で作ると年間72本作らなければいけない。三菱重工さんの協力でこれが可能になりました。当初は、溶接用の真空炉が1台しかなく、月産たしか3台だったと記憶しております。それだともちろん間に合わないので、それを2倍に増やしていただきまして、月産6台にすると1年間で72台と、休みなく作ってそういう数になり、144本を2年で製造しました。その他のラインの増強等も実際には行われたのだと思います。また、FELは、非常に精密に電子ビームの加速位相と振幅を制御しないと安定なレーザーが出ません。RFのタイミング系、LLRFと呼んでおりますけれども、ローパワーでローレベルのRFシステムをもともと動いていた試験加速器のものから約5倍性能を上げる開発をどう間に合わせるか、ここも色々な工夫をいたしました。
それと、意外と見過ごされがちなんですが、限られた時間でRF機器を設置するということ。RF機器というのは、実は長さが位相でかなり厳密に決まっておりまして、付けるために伸ばしたりすることが基本的にできないのです。ですので、そういうリジットなものをどうやって、例えば、壁に付けて実際に締結して壁外のRFにつなぐのかというのは、ローテクなのですけれども、きちんと考えておかないと、実際に限られた時間の中できっちりとした仕事ができません。このため、設置テストを行うためのテスト壁ではないですけれども、そういうテストベンチを作って、実際に行う、設置からケーブルの引き回しに至るまで、プロジェクト工程に合わせて、研究所内のテストベンチにおいて、全部自分たちで確認、検証して手法を確立していきました。
ここから2枚は、プロジェクトマネジメントにおける課題についてまとめてあります。SACLAの建設では、先ほど388億円というお金が出ておりましたが、我々の欲しいという予算に比べて実は100億円ほど少ない額を頂いたわけです。この100億円が当初当て込んでいたよりも少なかったので、いろいろなことをしなければいけなかったということが実はここの主な話でございます。
まずは、もちろん予算額に合わせて機器システム製作から建設にわたるマネジメントの規模と質の適正化ということを強いられたわけです。当初、我々が考えていたのは、大手のメーカーさんに建設プロジェクトのメインコントラクターになっていただきまして、研究所が全ての工程管理等をしなくても良い方式でした。我々は三菱重工さんを想定していたわけですが、そこにお金を支払ってやっていただくということを考えていました。
ところが、もちろんそれはかなりお金がかかるわけで、そういうことはできないということです。ではどうするか。まず、もともと考えていたシステムを全てダウングレードするように、お金を減らすように検討する。例えば、最初から入れる予定のフィードバック系を削る。特にLLRFというのが非常に重要だと言ってきましたけれども、そのタイミング系に様々なフィードバックを導入することを当初考えておりました。それらはもちろん削りました。運転しながら少しずつ何とか工面しましょうと、そういうことになりました。ダウングレードすることが許容できるものは、全て行いました。
基本的には、メーカーさんにお願いしようとしていた建設のマネジメントも研究所でやりました。大きな固まりの仕事を幾つかの小さな仕事に分割して、それらが個別のメーカーに受けられる形に仕様書を作り、その仕事のつなぎもきちんと研究所でコントロールしました。結局、お金が足りなかったので、当初メーカーに頼むと想定していたところを全部自分たちでやらざるを得なかったという訳です。
少し違う側面ですけれど、人的にも、先ほど言ったように、理研の組織というのはパーマネントが採りにくく、アウトソースに頼らなければいけないということがありました。もともとの運転スタッフ、外部のエンジニアはもちろん、パートナーであるJASRIさんの加速器スタッフには、主業務のSPring-8の運転が大変な中、かなりのサポートを得ることができました。建設時は、そのようなアウトソースの方々に設置や各種試験等をやっていただきました。それから、機器調整時、RF機器コンディショニング、各種調整並びに必要なソフトウェア等の整備もお願いしました。SPring-8建設時は、もちろんこれらは研究者が全部やっておりましたけれども、この辺も研究者ではなく、主にSACLAの場合はオペレーターなのですが、オペレーターにかなりの部分をやって頂きました。ビームコミッショニングのときも、全てを研究者でやるというよりは、かなりの部分を運転スタッフに手伝っていただくということで、少ないリソースをカバーするということをやりました。
この部分の最後ですけれども建設後の早期成果創出に関しては、ここに書かれた方針で取り組んでまいりました。まず、これはILCでも共通かもしれませんが、SACLAは、基本的には道具です。ですので、それ自体が研究対象でもあるのですが、メインディッシュではない。道具ですから有効に活用されてこそ意味があるということでございますので、成果をどう出すかということが非常に重要です。そのために、SPring-8やプロトタイプ機を最大限使った先行的な研究開発、今回の場合は、光に質的なジャンプがありますので、ユーザーもなかなかSACLAの利用というのが難しい側面があります。なるべく速やかに利用の展開を図るための重点策、分野の重点化、選択と集中というのをやりました。更に、SPring-8は50本以上のビームラインがあって、多様な実験を同時にできるのですが、SACLAは、先ほど示しましたように直線であって、ビームラインの数もかなり制限されます。一つのビームラインで様々な実験を効率的に実施可能とするいろいろな工夫を行って、建設後の早期成果創出を目指しました。
引き続きまして、人材の確保・育成ということでございますが、建設プロジェクトのターゲットもコンパクトですが、実は、先ほどから何回も言っておりますように、実際にそれを建設するチームもかなり小さいチームということが世界的にも知られており、国際会議などでもよく指摘されております。この写真に写っているこの人物は、実はうちのセンター長の石川なのですが、センター長まで入れてもこのぐらいの人数しか集まらないというコンパクトさです。
我々が、特に考えたこととしましては、繰り返しになるかもしれませんが、SPring-8と同一サイトで建設するという長所。そこには、実際に加速器をよく知った人たちがいるわけで、そのメリットを最大限に活用するということでした。
それと、このようなリソースがあるということも大きいのですが、無理やり若い研究者を採用しない。これにはきっと異論があるでしょう。でも、問題が発生することがよくあって、ここが重要なのですが、レベルを下げてまでという点です。レベルを下げなければ良いのですが、無理に採用するのは駄目です。
SPring-8建設の経験を基に、というのは、建設プロジェクトには旬があり、その後ディケイしていくので、KEKさんのように建設プロジェクトが幾つも走っているというようなことがない限り、そのピークに合わせて人を採ると、いろいろとその後、そのやりくりが大変になるということを、実は1回経験しております。その反省に立って、今回はそこの部分をかなり注意してやったということです。
それと、建設予算の範囲で、もちろんこれとリンクしておりますが、うちのリソースというものがかなり抑制されているということがあり、仕事の出し方、役務を含めたアウトソーシングをどう最大限効率的に活用するかということを考えたわけです。
釈迦に説法でございますが、一般論として大型プロジェクトでは、こういう状況に陥るということがありますので、また、特にSPring-8の経験も生かして、我々、今回はSACLAの建設プロジェクトでは、この点注意を払ってやってきたということです。
少人数でプロジェクトを遂行可能にするにはということですが、今回こういうお題を頂いて我々もよく考えてみました。そしてまとめたのがこの3つでございます。もちろん値段を下げるということで、性能仕様にはならないわけで、構造仕様でメーカーに機器の発注をお願いするわけです。実際組み込んで性能を出していく時にきちんと性能が出るような、トラブルを最小化するような仕様書を書くことが大事。逆にいうと、十分開発をした上でポイントをつかんだ発注をすれば、建設時にチューニングの人手を少なくできる。
ケーブル配線、導通試験、機器の設置、真空パイプの締結と立ち上げ等、この辺ももちろん研究所の中の人達でもできるのですが、役務、それから設置等、こういうものをパッケージとして外に出せるような形にしておく。これを出せば、そのまま外部のメーカーの人達を活用できるわけなのです。結局、建設・調整、ビームコミッショニングにおける仕事の切り分けと分類をきっちりやっておくこと、研究者はどこをやるべきなのか、エンジニア、それから運転員、企業の行うべき仕事を、内容を精査した上で切り分けられれば、内部スタッフの数を軽くできます。プロジェクトの仕事を分割して発注する、このことは極めて重要であります。
あと、我々の経験としては、プロトタイプ機というのが非常に役に立ちまして、SACLAを建設する前に小さなプロトタイプ機を作ったのですが、これは作って、性能実証するだけではなく、実際にそこでユーザー実験までやりました。これは、かなり後のSACLAの運転には役に立っております。もちろんこれは機器設計のフィードバックや、SACLAの基本設計にもフィードバックされておりますが、実際にどうやってXFELを運転するか、その運転方法をプロトタイプ機の運転を通じて、運転というのはユーザー運転でございますが、確立することができました。それから、これがあったおかげで、運転維持管理スタッフをかなり鍛えることかでき、それがスムースなSACLAのテイクオフにつながっております。
これは最後から2枚目のスライドでございますが、今回の話の上では若干内容がずれております。釈迦に説法とは思ったのですが入れました。プロジェクトに限らず、国際会議等でもよく日本人と欧米人は違うのだなというのを痛感する事があります。コミュニケーション学でいうと、日本人は高コンテクストと言うらしく、欧米系は低コンテクストと言うようです。よくアメリカの人が、もうそんなことを話さなくても良いのに、長々と何でこんなことを回りくどく話すのかなと思う場面がありますが、実は、それは必要なことで、というのも話し手側の責任が重いのです。逆に、きちんと話さないことは責任を果たしていないという、そういう文化なのです。日本人は、島国で、かなり教育レベルもホモジニアスということもあって、常識の共通化というか、バックグラウンドがかなり同じ、似通っている。話さなくても実は伝わってしまうというところが国際性の薄れる原因かもしれない。国際プロジェクトでは、こういうコミュニケーションの点でもかなり苦労をするのではないかなと思って1枚ここに挟みました。
最後、まとめです。SACLAの建設プロジェクトは、減額された予算の範囲内で、スケジュールの遅延なく、目標の光源性能を実現するということが問われましたが、何とかその及第点の中に入ったのではないかと考えています。
コスト削減のために、機器やシステムのダウングレードのほかにプロジェクト・マネジメント等も自分たちで行う等、いろいろと工夫をした結果として、実際に所定のコストで建設を終えることかできました。
一時的に多くの人材が必要な期間は、SPring-8サイトの人材、企業、運転員、人材派遣のエンジニア等のアウトソースを有効に活用することで、建設チームの人員、理研の実際のパーマネントの人員は比較的少人数に抑えることができたということでございます。
以上です。

【中野座長】  ありがとうございました。
それでは、引き続きまして佐藤先生、よろしくお願いいたします。

【佐藤名誉教授】
今の田中先生のお話で、日本人は高コンテクスターということなので、話し手の責任はなさそうなので、安心して話をさせていただきます。
今回こういう話をするのは、加速器の話とかそういう話はなれているのですけれども、申し訳ありませんがどうもポイントがよく分かっていません。中身も少し田中さんと比べますときちんとまとまっていないのですが、後で質問にお答えするということである程度は対応したいと思います。
まず、KEKBの建設ということですが、建設が始まったのは95年頃で、加速器の運転開始が98年です。今回は、99年の頃の人材の話をします。ここにKEKの加速器の歴史と書いてありますが、これは2010年の時点での歴史で、これを見ながら、KEKBがKEKの中で人材という観点でどういう状況で作ることになったかという話をします。
71年にKEKが立ち上がって、私はこの辺に入ったのですが、ここで最初に12GeV PSだけを作っているのですね。80年頃にトリスタン建設が始まって、加速器施設の直接の担当ではないのですが、この頃にフォトンファクトリー建設というのも始まったのです。加速器施設ではPS建設のための当初の人員から、トリスタン計画のために加速器の人員が大量に増えました。その大量の人員、もちろん皆若い方で経験もないのですが、これで94年、この頃にちょうどトリスタンの運転が終わります。ですから、この間に若い人が大量に入って育った。ただ、建設は、85年から86年に大体終わって、その後はルミノシティをためるために定常運転していたわけで、建設という期間ではなくなりました。そういうこともありまして、トリスタンで採用した若い人で結構元気な方は、実は別のプロジェクトへ移ったのです。
94年、95年、この辺でトリスタン計画が終わって、KEKBのスタートとしては、設計は94年頃に終わって、95年頃から作り始めています。それで、先ほど言いましたように、もともとトリスタンに配置された人というのは結構多かったのだけれども、KEKBが始まるときには、かなりの人が新たなプロジェクト、実はJLCなのですけれども、そちらの方に移って、実はKEKBをスタートしたときにはその分人が少なかった。その少ないままでKEKBを作りました。ビーム運転開始は98年頃で、この絵で行くと2010年頃にシャットダウンになるのですが、この今回の話で言うと、KEKBを作ったときには、足りない人数で作らざるを得なかった。それで、今回のテーマの良い例かどうかは分からないのですけれども、若手を育てたという意味では、あまり育てなかったというふうに思います。
KEKBの特徴というのは、もともと高ルミノシティを達成するためのファクトリーということで、大電流蓄積を多バンチで行う必要がありました。これまでも大電流蓄積はあったのですけれども、今回は多バンチで、かつ衝突させないといけないので、バンチの性質というものも悪くなってはいけない。例えば、低エミッタンスであって、バンチの長さも短くなければいけないと、そういう状況があります。それともう一つは、ルミノシティをためるためには、衝突点で非常に小さいビーム断面を作らなければいけない。ビーム断面達成のために、KEKBで特殊なオプティクスが開発されて、これを作るために非常に多くの若手が育ちました。それから、ルミノシティをためるために垂直方向エミッタンスが小さかったり、バンチレングスが短かったり。それからもう一つ、エネルギーが違う2-リングであって、有限な衝突角度でした。今まではHead-on衝突が多かったのですけれども、衝突角がついたもので運転する。こういったビームダイナミクス的に難しい問題と、ハード的にも衝突点機器の課題の2つの、衝突点に関する難しい問題がありました。
まとめますと、ここに先ほどの衝突点の問題、リング全体ではビーム物理の問題と、それから、ここは常伝導加速器で、これは大電流を多バンチで安定に動かすためです。ここが超伝導の加速空洞。それから、ここに書いていませんけれども、大電流をためるために、実はlinacも増強、すなわちlinacのエネルギーも、インテンシティも増強する必要があります。
まず最初の話は、常伝導のARESという空洞で、まず大電流をためなくてはいけないということで、ビームローディングという課題があります。そのビームローディングを避けるために、キャビティにたまっている蓄積エネルギーを大きくしなければいけない。そうしませんと、ビームが通るたびに中の空洞の電場が大きく変化して、それでビーム不安定を起こす可能性があるので、できるだけそのエネルギーをためなくてはいけないということです。
それからもう一つは、多バンチの課題で、たくさんバンチを入れますと、そのバンチがこの空洞の中の共振モードによって不安定性を起こすというものです。ですから、その高調波共振を減衰させるための装置を付け加えた空洞を持たなければいけない。
こういったことで、この開発は、実は数人の職員が製造や技術指導を担当したのですけれども、この一つの例が、KEKがどうやって加速器を作っていくかという非常に良い例題になっているので、もう少し詳しくこの部分に関して話します。
この話はKEKBのRFの影山さんにいろいろ話を聞いたものです。中の文章に関すると、彼特有の言い回しがあります。
加速空洞は、基本設計はKEK。実証機開発は三菱重工さん。量産機は重工さんと東芝さんで作りました。KEKは、先ほども田中さんのお話にもありましたが、こういうハードものに関しては製造仕様で発注して、性能はこちらの努力で達成しますということなのです。加速空洞に関する技術的なものとしては、旧ハドロン計画、今のJ-PARCの前身に基づいています。J-PARCの前の計画でLバンドのACS加速管用に開発された、無酸素銅を使ってそれを加工したり、表面処理したり、特に問題なのはこの多段ロウ付けです。ロウ付けをするのですが、何か所かロウ付けをしますので、温度の違うロウを使って順番にロウ付けをしないと、うまくいかないのですけれども、そういったことが既に開発されてあったのですが、これが有効に使われました。
それから、本体のほかに、隣にエネルギー貯蔵空洞というのがありまして、これも基本設計がKEKで、実証機は三菱重工と、メッキをしなければいけないので野村鍍金さん。それから、量産機もこういうメンバーで作りました。KEKでは、大きな空洞の内面に高性能な銅メッキをしてキャビティを作るというのが昔からよくやられまして、PSのlinacもそうですし、ここで言うとDAWとかAPS、これはトリスタンの主空洞ですけれども、そういった技術が既にありましたので、これも技術的にはKEKが技術を、人材も含めて持っていたということなのですけれども、それが使われて開発をされました。
これは作るときの体制ですけれども、実証機のときには、研究者が6名ぐらいで技術者が1人で、大学院生が1人おられたわけです。これまで何をやってきたかというと、この前にあったトリスタンRFです。トリスタンRFのグループが核になって、メーカー側が各社当たり数名くらい。量産になりまして、同じようにKEKの元々から中核におられた研究者4名、技術者1名、メーカー側も数名と。そのほかに、実際にこれは数十台程度できてくるわけですけれども、先ほど言いましたように要求性能まではこちら側が達成させなければいけないので、受入れ試験というのは非常に重要なのです。これは、KEKに昔から来ている外部委託のいろいろな会社、技術屋さんがおられますので、そういう方を頼んで受入れ試験をする。
それから、空洞据え付けに関しても、研究者、ここにおられた方々が担当して、メーカー側の派遣も来られて、そのほかに現地での外部委託の方もお願いして作ったということです。
宿題の中に建設監督をどうやって作ったのかということがあったのですけれども、KEKでは、とにかく建設監督というのは、ただ単に監督するのではなくて、ハードウェアを作っていないと、知っていないとできないのではないかと、そういうことがあって、結局開発、製造した人たちのうちの3名が監督に当たりました。ですから、特に建設監督だけをするような人をわざわざ育てるということはしませんでした。
それから、企業側との連携という意味では、このキャビティの開発は非常にうまくいった例で、ここで日本を代表する製造メーカーとあるのは東芝さんと重工さんです。基本的には、もちろん契約調達で文書だけなのですが、この契約書には書かれない信頼関係が重要でした。例えば、企業側の人材に関してはこちらから何も言えないわけですけれども、企業側の方が最適な方を集めて適材適所で担当していただけるという、そういう信頼感がありました。ここが非常に重要であったと思います。
それから、若手研究者という意味では、開発のときに最初に大学院生1名が参加して学位を取られたのですが、とにかく最初に申しましたように、非常に少ない人数でやったために、多くの若手を育てるということはできませんでした。
大量に重要なものを作る場合に大事なことは、要求仕様を満足するように、コストを削減しながら作る、理想と現実とのせめぎ合いだということです。これは影山さん流の口ぶりなのですけれども、芸術品ではないので、満足する装置をきちんと作るべきであって、結局これは妥協の芸術である。
この常伝導キャビティの開発で言えば、結局旧トリスタン計画の人的資源と物的資源、会社にもあったしKEK側にも人がいて、この遺産を有効に利用できた。これは非常にうまくいった例です。
もう一つのものは超伝導空洞キャビティで、これも高調波共振モード減衰が必要になります。ビームローディングに関して、超伝導キャビティの場合にはもともと加速電圧が高いので、蓄積エネルギーをあまり気にする必要はないのですが、高調波共振モードに関すると、少し見にくいですけれども、一つのセルの両側に高調波共振モードを吸収するためのフェライトを張った空洞を新たに開発しました。これに関しても製造の技術指導というのはKEKがやっていまして、例えばこのニオブの曲げ細工とか、ニオブの溶接、表面処理、そういったことは全てKEKがメーカーに技術指導をしていまして、ここで作っていたメンバーが今のILCの超伝導空洞の基本になっているメンバーになっています。
linacも増強することが必要になりまして、もともとはこの部分だけで、3GeVのlinacだった。それを、電子を8GeV、それからポジトロンを3.5GeVにしなくてはいけないということと、陽電子源の増強です。エネルギーに関するとSLACに採用されているスレッドを設置し、それからポジトロンの増強という意味では、ここにJ linacというこの部分を追加しまして、インテンシティの増強を行いました。最終的には、連続入射といってエレクトロン、ポジトロンを同時に、少しでも少なくなったら連続してリングへ入射し、常時高ルミノシティを保持する運転形態まで到達しました。
linacは、もともとのスタートはフォトンファクトリーのlinacで、加速器施設リングからすると、トリスタンのためのlinacじゃないかと思っているのだけれども、トリスタンの運転のときには、このlinacの運転で非常に連携がうまくいかなかったのです。今回、linacが重要なコンポーネントになるのですね、ファクトリーということですから。そういうことで、この建設開始から何年か後に組織変えしまして、linacは加速器施設へ移行しました。そのことによって、特にこのlinacのコミッショニングのときには、リングの方から大量に人を動員し非常に早く進んだことがあります。
もう一つ、ビームダイナミクスに関すると、力学口径の課題があって、非常に強く絞る必要があって、非線形効果が効いてくる、これをどうやって補正するか。そういうことで、オプティクス的に新たな方式が提案され、それが実際に実証されたということがあります。
そのほかに、実際の運転では、ILCにも関係するとは思いますが、非常に狭い細いビーム同士を当ててそれを保持させるためにどういうテクニックが要るかとか、こういったことが開発されました。
それから、これも多分ILCに関係あるかもしれませんが、今までの衝突型加速器はバンチの数がそれほど多くはなかったのです。ビーム不安定という意味で言うと、そのバンチの中での不安定と、非常に離れたバンチが、先ほど言いましたキャビティによる高調波共振によって多くのバンチがカップルして不安定になるという、そういうことはあったのですけれども、実は、KEKBはそのバンチ間隔が非常に短いために電子雲効果というのがあって、効果が数バンチの間しか影響しないのだけれども、結構性能を低下させるというのがありました。これは、多分ILCなんかでもそういうバンチトレインで運転すると起こるのではないかなと思うのですけれども、そういった新たな問題が発生しました。要するにこのルミノシティを上げて保持するというのは簡単ではなくて、徹夜で若い人たちもさんざん頑張っていたわけです。それで理論的にも技術的にもビーム力学の若手が育ちました。その人たちが今SuperKEKBの中核を担っていて、来年の早々にはコンディショニングが始まる予定になっています。
これは時間がないので外します。
次に、職員構成はこうなっていまして、1999年の値はこの値です。後で小関さんがSuperKEKBを作るときのメンバーを話されると思うのですけれども、これから更にまた減っているのですね、この教員のところは。それは、この99年の時点ではまだKEKBにいたのだけれども、この後、実は2001年からJ-PARC建設が始まりまして、この中から更に抜けていったのです。
まとめますと、職員の確保という意味では、トリスタンに合わせてもともとは増加され、それでトリスタンの建設では若手が育ちました。その後、一部の職員は新たな計画へ移って、実際にKEKBを作ったときには人員の増加はなくて、トリスタンの場合よりも少なかった。トリスタンの場合より少ないにもかかわらず、2-リング作ったわけです。これは非常に大変でした。それで、トリスタンの経験があったので、どちらかというと精鋭部隊、少数精鋭ということで非常に短期間にKEKBを作りました。ハードウェアの担当では若手があまり育たなかった。それから、建設中も忙し過ぎて大学院生を育てられなかったです。ビーム光学設計の観点では革新的であって、この分野に関しては多くの若手が育ちました。
あと、そのほかに、職員以外の人材という意味では、二十数名のlinacの運転員がおられまして、業務委託なのですけれども、実際に建設期間のときには運転していませんので手が空くわけで、そういう方々を補助者として使いました。この作業経験は、実際に運転をするときに非常に役立ちます。どこかが壊れたときにどういう状況で壊れたかというのが大体分かりますので、これは非常によかった。
それからもう一つは、長年KEKで仕事をしている方、業務委託の方を生かしました。特に加速器の組立てとか設置、それから、測量とかアライメント、磁場測定とか。それから、先ほど田中さんの方で設置するのに大規模にまとめて頼めというのですけれども、実際には、最終的に細かい配線とか配管とかというのが結構残るのです。ここまでは、仕様書で書き切れないところがあって、これがなかなかの仕事量なのです。これをそういった長年やってこられた方にやってもらった。こういうことで作業員を使ったのですけれども、今後更に将来の加速器のために育成するというような意識はありませんでした。
これは、ヒアリングで依頼された他の事項ということで書いてありますけれども、これは、共同利用者といっても物理の方の共同利用者なので、多分それほど直接は関係ないとは思うのですね。
それから、建設監督を行う人材の確保、育成方針ということなのですが、今回の場合、KEKBの先にまた大きな、あれを更に上回るような計画があるということがあれば人材を増やすとかということを考えたのですけれども、そういうことはないので、特にわざわざ増やすということはないし、もともと人がいませんので、今までの伝統で徐々に分担を増やして次の方にバトンタッチするということだったと思います。
それから、企業との連携という意味では、先ほどのノーマルのキャビティ、あるいはスーパーのキャビティというのは非常にうまくいったのですけれども、全てうまくいったわけでありません。例えば、真空チャンバーを、今までKEKで契約を取ったことがない会社が作ることになり、これは大変でした。そういうことがあるので、入札なので困難ですが、適切な会社を選ばないと、先ほどの影山さんの話ではないですけれども、会社との信頼性が欠けますと、もともと人が少ない上でやっていますから、これはとんでもないことになります。真空に関するとスケジュール遅れになり、かなりの課題がありました。
それから、リーダーの話ですけれども、リーダーは必ずしも全てを知っている人である必要はなくて、有能な担当者を見分けることができるということが大事なのではないかと私は思います。ただ、リーダーといっても、先ほどの田中さんの話にもありましたけれども、文化によっていまして、西欧式の力強いリーダーなのか、調整型のリーダーなのかによって組上げ方が変わってきます。リーダーの権限で部下を選択するというように、リーダーが決まったらリーダーが自分の気に入った人を、部下を全部選んで作るというのがもっともなのだと思うのですが、ただでさえ人材が不足しているということでは、多分そういう人材もいないと思うので、結局はどこかで妥協せざるを得ないのではないか。結局そういう方を使った場合に責任をどうとるのかというのがあって、結局責任と権限の問題というのは、なかなか人材が不足しているところでは難しいのではないかなと、そう思います。
若手の育成にまた戻るのですけれども、KEKB加速器では多数を育てられませんでした。それから、世代交代によって若手が育っているのですが、それはSuperKEKBですね。だけど、特にハードウェアの若手が不足しています。ハードウェアの若手というのは建設するときにしか育ちにくいのですけれども、KEKBのときにはあまり若手が育たなかったということもありまして、SuperKEKBのときには、リタイアして継続雇用になっている方が、実はそのハードウェアの代表者となってまだ頑張っているというのが、例えば真空とか、マグネットとか、そういったグループでは特にそういう状態です。
それから、この分野へ大学院生が来ない、研究者への門戸が狭いという課題があります。若い人にとっての将来展望の観点で見たときに、ILCのプロジェクトの時間スケールにおいて、建設期間というのが書いてあるのかもしれませんが、想定される運転期間はエクスプリシットに書かれてないように思います。数年、10年とは言わないけれども、その程度で建設して、その後二、三年のコミッショニングで性能が出て、その後10年程度運転するとは思うのですけれども、その後のビジョンがないのではないかなと思うのですね。だから、15年程度のプロジェクトだとすると、なかなか若い人は来ないのではないかな、その後の展望もつけないとなかなか魅力が出せないのではないかなという心配があります。
KEKB建設は非常に大変でした。それから、若手を入れて、特に大学院生ですけれども、プロジェクトの建設に絡んで育成する場合に、博士論文の完成がちょうどそれに合ってないとなかなか難しいことになります。R&Dマシーンだとそういうことはないのだと思うのですけれども。結局、先ほど山本さんもおっしゃっていましたが、R&Dの加速器、ILCのATF加速器では大量に若手が育っていまして、育てるチャンスがあれば加速器でも幾らでも育てられるのだということだと思うのです。
以上です。どうもありがとうございました。

【中野座長】  ありがとうございました。
それでは、お話の中にもありましたが、参考までに15ページの職員構成について、現在のSuperKEKBについて、小関委員から補足説明をお願いいたします。

【小関座長代理】  それでは、資料4を御覧ください。これは、現在のSuperKEKBの職員構成ということになっておりまして、先ほど佐藤さんのプレゼンの中にありました、1999年におけるKEKB加速器の職員構成と直接比較できる形で整理されております。
現在のKEKBの職員構成は、教員が64名、技術職員が27名ということで、1999年の時点の職員に比べますと若干減少しているということです。
これは、先ほど佐藤さんからありましたように、J-PARCの建設が2001年から始まって、KEKBからJ-PARCに移った人が当然いるわけですけれども、ただ、一方でプロトン・シンクロトロンのグループからJ-PARCではなくてKEKBをやるということでKEKBに移った人もいるので、そういう意味では、相互の行き来があったというふうに僕は理解しております。
ただ、いずれにしても今から30年前のトリスタンの建設のときに、多くの方々がKEKに採用されてKEKの加速器で活躍されたわけですけれども、そういう方たちが徐々にここ毎年数名程度定年でお辞めになっております。そういう意味で人数がだんだん減ってきているんですけれども、そのポストを使って新人が採用できるようになっておりまして、資料4の過去10年間に採用された助教、ここに15名助教が採用されたという集計がありますけれども、この方たちは、定年されたポストを使って新たに採用された助教の人たちということになります。
もちろんKEKは、KEKBのほかにもJ-PARCや放射光、あるいはリニアコライダー、加速器理論のグループもありますので、定年で空いたポストをどのプロジェクトに付けるかというのは、その都度議論をしながら決めているわけですけれども、そういう意味で、現在のSuperKEKBの職員構成は、新たに採用された助教も含めて現在は64名プラス技術職員27名という体制でやっているということです。
それから、再雇用とありますけれども、これは、KEKの場合は、今定年が、技術職員の場合は60歳、教員が63歳ということになっておりますが、いずれの場合も65歳までフルタイムで活躍していただけるように再雇用というシステムがございまして、現在その再雇用で教員の方が7名、技術職員の方が7名、それぞれ在籍されているということです。
この職員以外にもちろん業務委託がありまして、今も業務委託のメンバーが多数活躍していますけれども、特にこのKEKB、linacとリング、SuperKEKBの業務委託という意味では、今年度の業務委託のメンバーは、大体linacとリングでそれぞれ10名程度ずつ、約20名の業務委託の方が、この職員にプラス20名の業務委託の方が関わっているということになります。
簡単ですけれども、僕からの御説明は以上です。何か御質問があったときにまたお答えします。

【中野座長】  ありがとうございました。
それでは、ただいまから議論を行いたいと思いますので、質問、それから御意見、いずれも結構ですので、御自由にどなたからでも。

【小関座長代理】  良いですか、では。

【中野座長】  はい。

【小関座長代理】  田中さんの御報告、大変興味深かったのですが、少しクリアにしておきたいのは、SPring-8との、特に加速器のメンバーという意味で、SPring-8とのコラボレーションがどの程度の規模だったのかということを知りたいんですけれども。大体何人ぐらいの人が、どの時点で何人ぐらいの人がSACLAの建設にSPring-8から加わったかという、その辺の数字が分かると参考になるかと思いますが。

【田中部門長】  私の話の8ページ目ですけれども、2006年の20人というのは、既にこの中にSPring-8からの人材も入っておりまして、理研のピュアな人材は多分この半分です。そこからずっと約50まで上がっているところというのは、特にSPring-8の制御、それから加速器、制御も実は加速器系に入れています。それらを足すと、30人以上にはなっていると思います。もちろん外部からもここに入ってきていますけれども、その数はSPring-8の本体から来ている数に比べると小さいので、30を多分超えるぐらいの数は制御と加速器から手伝いに来ていただいている、ピーク時はそのぐらいの数になっていると思います。もともとの理研の人員の3倍ぐらいです。

【小関座長代理】  そうすると、2011年に加速器系研究者がすとんと下がっていますよね。この差分というのは、大体SPring-8の方たちが戻った。

【田中部門長】  はい、戻ったということです。少なくともXFELの建設が1回終わったので建設プロジェクトが解散になった。別の組織に移るときに大部分は戻りました。もちろんその後も加速器系の人数が20人なので、一部の方はまだ理研の方に留まって定常運転のときも更に一緒にやっているという状況です。

【小関座長代理】  分かりました。

【中野座長】  それに関して質問ですが、こういう方策をとられて、SACLAの方には非常によかったと思います。必要なときにたくさん来られて、必要なくなったら元のところに戻られると。そのそれぞれのフェーズでしわ寄せと言っては言い過ぎかもしれないですけれども。

【田中部門長】  そうですよね、プラスの方だけを語っている感じがしますよね。

【中野座長】  SPring-8側から見て問題はなかったのかということはどうでしょう。

【田中部門長】  誰に質問するかによって答えはきっと変わると思うのですが、というのを敢えて言わせていただいた上で、それは正しい、正しくないは別として、少し自分の考えているところを言わせて頂きます。SPring-8は、昔、原研とJASRIと理研の三者でやっていました、今は二者なんですがね。それでその2つの組織にまたがってどちらかに所属している研究者が加速器のアクティビティーを支えています。容易に分かる事ですが、SPring-8の加速器で研究テーマがいろいろあって、加速器の若手が、仕事をしながらその成果が研究につながるというフェーズがありました。加速器があって、加速器の下流に光のビームラインと検出器とかがあり、そして最下流に位置するのが、それを実際使って成果を出すエンドユーザー達です。そういう3つの層があるのですが、加速器が最初に研究のネタがなくなるのです。その次にやる事がなくなるのが加速器の後ろの層で、最終的にそこまで来ると、エンドユーザーが成果を出すしかなくなるフェーズになります。加速器に携わっている者がそのフェーズになってしまうと、なかなか研究していくのが困難な状況に実際になるわけです。SPring-8は、そういう意味では、二千数年にトップアップ・オペレーションというのが完成して、大体それが1997年から数えて五、六年。加速器の開発が一段落するという時期に、実はこのレーザーのプロジェクトがスタートしたということです。私の理解では、2つの組織にまたがって一体的に運用していくということでSACLAをやるのが一番よかったと思っておりまして、そういう形に多分なっていたのではないかと考えています。
逆に、今SACLAができてからもう4年ぐらい経つのですが、もちろん全く同じことがSACLAでも起きて、加速器系の開発案件がどんどん少なくなっていく。そういう状況で、人が沢山いたら何が起こるかというと、もうパイの食い合いになってしまう。なるべく人は我慢してでもコンパクトに抑えておいて、セクションに分けない。最近の私の理解としては、丸とか直線だとか、スパコンだとか、常伝導だとか、昔、人が多いときにはそれぞれに分けて人を付けて、その部分だけやっているという時代があったのですが、そういうことをやっていては、アクティビティーを維持できないですね。

【中野座長】  SACLA、SPring-8によらず加速器の何か開発があるなら。

【田中部門長】  SPring-8でのミッションはどうなっているんだということをおっしゃりたいのだと思うのですけれども。

【中野座長】  いやいや。

【田中部門長】  XFELをやっているときに。

【中野座長】  いや、人として、たまたまうまくフェーズが、フェーズトランジションが起こったというか、SPring-8で開発要素が少なくなったときに、その開発に携わっていた人がSACLAの開発に自然に移行したと理解していますけれども。

【田中部門長】  多分KEKのマネージャーも同じようなことを考えると思います。研究所のハイポジションの方々は、そういうことを常に考えている。

【中野座長】  考えていて。

【田中部門長】  考えて運営しているわけで、もちろんSACLAが取れていなかったら、どうやって回していくのかという問題に直面しているわけです。SuperKEKBの後が何か、どういうふうになるのか分からないけれども、もちろんそういうことは常に考えているわけです、KEKも。我々もそういうタイミングというのをきちんと認識し、SPring-8のリソースというのをかなりイメージしながら、絶妙なタイミングでXFELを持ってきたと理解しています。この後のSPring-8アップグレードというのも全く同じパターンで考えております。XFELでいろいろな人材が育って、でもXFELだけやっていられません。今度は逆ですね。SPring-8からSACLAに人が移ってSACLAができました。でも、SACLAで育った人材は、今度は多分SPring-8のアップグレードに参加する。

【中野座長】  SPring-8II計画ですね。

【田中部門長】  それを割ってしまうと、とてもではないけれども、ギャップを埋められないですね、時間のギャップを。

【中野座長】  同じような規模、それから同じような経験とか人材。

【田中部門長】  そもそもいる人材で、あとはいかにR&Dをやって、決められた時間スケールの中で全部を実際にやり切るかということを考えるしかないと思っていますけれども。

【中野座長】  そういうプロジェクトの切れ目が起こってしまうと人材がその時点で育たなくなって。

【田中部門長】  プロジェクトの切れ目があると人材を維持するのがすごく大変だと思います。

【中野座長】  分かりました。どうもありがとうございます。

【山本委員】  1点、全体の議論の中でコメントとして、また考えていただきたいことなんですが、こういう数字で人数を聞いたときに大体起きることが、加速器として何人ですという。そのときに、例えばそれを支える管理の方、それから共通支援的な方々は、ここでは議論に上ってこないんです。ところが、ILCの議論をするときは、全体に何人ですかと聞かれるんです。そこには、管理や技術支援の人たちが入っているんです。そこで、余りにもレベルが違います、極端に離れてますねという議論をされてしまうと、分母が違う議論をされていることになるので、そこはできる限り配慮を頂きたいなと思っています。
例えばここでも、KEKBとして何人ですかというのは、これは加速器にいるプロパーの人たちの人数なのです。計算機を支えている人もいれば、機械工学センターの人、低温センターの人、保守系の人もほかにいるんです。管理局の人もほかにいるんです。施設の人もほかにいるんです。それでは、KEKBを作るために何人行ったかというと、それは多分これより相当大きな人数が、もしILCの人数を1,000人とか1,100人とかという数字で議論をされる場合は、そういった人をどう比較するかというのが多分必要で、SPring-8の場合はどういった状態になっているのか、私はよく分かりませんが、もしかしたら似たようなことが起きているのか、ほかの方が一般的に入っているのか。例えば、SPring-8とSACLA、そういったものが共通になっていると、その共通なところというのは、大概抜き取られて、SACLAのために何人いただろうかとか、SPring-8のためにプロパーに何人いたかという議論になりかねないので、気を付けていただければなという気がいたしました。

【中野座長】  第1回目の発表の際にいろいろと内訳の数を出していただいて、それで、ILCに関しては何人というのが非常に詳しく出ていますので、比較する場合にはそういう比較をこれからしていきたいと思います。

【山本委員】  きょうは、別に絶対値を比較する議論ではないと思うので。

【中野座長】  数で1,000人だからできないとか、40人だからどうのこうのという、そういう話にはならないと思います。ただし、加速器というのは、人材の中でも一番専門性が高いというか、人材育成にも時間が掛かるという、ある意味非常に特殊な人材なので、そういう人材をどういうふうに確保してプロジェクトを立ち上げていくかというのは、議論の中で中心にはなると思います。だから、その点、どういう工夫がILCでもできるかとか、そういう議論はまた行っていきたいと思います。

【山本委員】  あともう一つ似たような議論があります。この人数以外にどのくらいの業務委託が要るのでしょうというのは、この表以外に議論としては出てくるわけなので、そうすると、大体お話を聞いていると20%であったり30%であったりという数字に大体なっているのかなと。例えば、その業務委託でも共通的な業務委託というのもまたありまして、例えば施設もそうですし、冷凍機の運転なども、これが加速器の人数の業務委託に数えられる場合もあるし、そうでない場合もあったりして、結局、こういう話をすると大体は落ちる場合が多いので、日本のいろいろな議論をされている場合には、こういうプロパーの少ない人数でやっていて外国の方から驚かれるという議論はたくさん必ずある。私たちもそういう中でやってきているわけなのですけれども、結局それは物件費として今は出ていってはいると思います。そういう意味で、例えば先ほどの予算の比較のところで、ILCの場合1兆1千億円という中には、人件費が逆にそこに入っていますし、業務委託として含まれるであろう人件費もそこに今は勘定としては入れさせていただいたという現状はありますので、一概に例えばこの何十倍ですという話にすぐなってしまいがちなんですけれども、そのときのファクターというのは、そういったことを考慮したファクターであるというのを理解した議論をしていただければありがたいなという気がいたします。
以上です。

【大熊委員】  少し補足しておきます。田中さんが言われたとおりで、こういうのは人によって考え方が違うので、その出てくる数字もまた少しずつ違ったりするところがあるのだろうと思います。ちなみに、田中さんはSACLAの話をされたのですが、今の8GeVのSPring-8の建設のときの、ちょうど加速器が大体建設がピークになりそうな少し手前ですけれども、そのときの、原研、理研、それから、ほかから来ている人達で、要するに大型放射光の共同推進チームというのを作ったのですが、そこの人数を数えたら大体150人います。これは加速器の研究者ばかりではないのですが、放射光というともちろん利用の方があるのですが、利用の方は余りここにはまだ含まれておりません。我々のところにいたコアの人数と、事務系の人たちも含まれてはいるのですが、大体150人ぐらいが企業の人を除いたスタッフの人数です。
それから、SACLAと、先ほどSPring-8の話が出てきたのですが、これは数え方によっては非常に難しいのですが、現在の我々のところのSPring-8を担当している加速器のスタッフというのは、実は、こちらには戻ってきてはいなくて、ほとんど人数は逆に減る方向で行っているんですね。戻ってきたというのは正しくないわけではないのですが、戻ってくると同時に我々のところからいなくなった人間もいて、だんだん加速器の方は人数が減っていくようになっております。
それから、非常に細かいことを言うと、所属はJASRI、要するにSPring-8の所属なのですが、初めからSACLAに行くことを前提として採用したスタッフというのも5人ぐらいいます。そういう人を含めるとなかなかこの数え方が難しくて、余り細かい人数の議論をするのは、僕は意味がないのではないかと思います。
もちろん理研と原研、それからKEKというところのスタイルの違いもある。例えば、我々のところには、田中さんのところもそうですけれども、大学院生というのは基本的に特に加速器の場合はほとんどいないと言って良い。たまに預っている場合があるのですが、基本的にはいないということです。それから、技術職あるいは技官職というのがあからさまにはないものですから、そこの数え方も非常に難しいことになる。大分スタイルが違うのです。
それから、お二人の話を聞いていると、日本の加速器建設のスタイルと海外のスタイルの違いというのもILCの場合にはかなり考慮しなければいけないのではないか。特に国際協力ですから。日本の加速器のスタイルというのは、もうざっくり言ってしまうと、少ない研究者、技術者、それでメーカーに大きないろいろなものを依存するというやり方が大きいのだと思うのですね。海外の場合だと、かなりの部分を自分たちのところでやるというスタイルをとるところも多い。例えば、最近動き始めた台湾の加速器なんですが、これは施設としては小さいものですが、加速器などでもスタッフの数がものすごく多いのです。僕は真空を担当していたのですが、SPring-8のときには、ピークでも6人しか専任のスタッフがいませんでした。ところが、台湾のその建設では、真空だけで20人ぐらいいるのです。自分たちのところで溶接まで何からみんなやってしまうと、そういうスタイル。しかし、既存の技術でもう確立しているものには逆に人を割かないし、お金を使わない。新しい加速器を作る場合には、必ずしも違うのですが、例えばマグネットなどは、もうTPSなどの場合には既存のものだというのでほとんど買ってくるというスタイルでやっています。だからそこにはスタッフを割かない。だから、ILCの場合も、特に国際共同ですから、その辺のスタイルをどういうスタイルをとっていくのかということをかなり議論しないと、日本だけでは収まらない。だけれども、海外のスタイルをそのまま持ってきても当然うまくいかないだろう。そこの議論が非常に大切なのではないかと思います。

【中野座長】  日本の場合は企業に対する依存度がかなり高いのではないかと。

【池田委員】  今、大熊先生がおっしゃるとおりの状況だなと私も思います。特に海外の研究所は、研究所の中にファクトリーを持っています。そこにもう専任のスタッフがいて、工作センターのもう少し大規模なもので、あらゆるプロジェクトで使う機器は、基本的にその研究所の中のファブで生産をしてメンテナンスもやると。そこに専用の人員を抱えているというやり方のところが比較的多いと思います。特殊なものに関してはベンダーに発注するというやり方が多いのかなと。日本の場合は、おっしゃるように、研究者の方が基本仕様を決められて、生産設計のところから企業と。
ただ、加速器の場合は、これは別の機会にもう少しお話しすることになると思いますが、加速器技術、加速器製品という分野は非常に他の学問領域であるとか製品と違うというのが、研究がハードウェアなんですね。ですから、研究者の研究対象がもうハードウェアになっているケースが多いです。実際に最初の基本設計のところでシミュレーションをやって形状を決める、かなりの詳細形状まで決められるというところが研究テーマになってしまっているので、そこから物作りで引き継ぐときに、当然その計算した結果どおりのものが作れるというケースはほとんどない。実際に機械でつかむときにつかめない、あるいは地獄になっていてこれは組めませんというものを作れるように手直しをしています。ただ、その時点でもう一回シミュレーションに戻さないと形状を変え過ぎて問題が生じるということで、研究者とエンジニアのバウンダリーが重なっているというのが実態です。そういう意味で、メーカーであっても実態はかなりの部分、研究者とコミュニケーションができないと物が実現できない。しかも、最終製品として何が要求されるか、先ほどの真空の問題で、佐藤先生からお話がありましたけれども、最終製品がどういう目的で何に配慮しなければ加速器の部品として使えないかというのは、これはおっしゃるように仕様書にそこまで書いていません。当然最終目的、最終製品がどういうものであるかというのを理解した上で、そこは企業側のエンジニアがこうあるべきという生産設計をすると。そういうところでかなり密度の濃い連携をとりながら実現しているというところが、多分海外のベンダーとの違いかなというふうに思います。ただ、海外であってもそういう形でやっているところがゼロではないと思いますけれども。
そういう意味で、連携を緊密にやりながらやっているということなので、田中先生が言われたように、物を作っていく中で人を育てていくという要素が非常に大きいですね。ですから、机上でシミュレーションをやって、それでいきなり動くものというか、性能を出せるものが作れるかというとなかなかそうではなくて、そのためにプロトタイプを作って性能試験を、これは大抵の場合、ハイパワーを入れようと思うと、企業でそれだけの設備は持てませんので研究所にお願いすると。ローパワーの計測器のレベルのものは我々が持って、基本的な周波数がずれてないとか、基本特性はチェックした上でハイパワーの試験をしていただいて、放電しない、熱的にきちんとバランスがとれているというところを確認した上で、それで次の実機へ行くと。ですから、そういうプロトタイプで1回試験をするというところを一緒に経験をすることで人が育っていくということが非常に大きいと思います。それは、最初に申し上げたとおり、製品が、ハードウェアがもう研究の対象になっているという要素が非常に強いというのがこの製品の特質だと思っています。
そういう意味で、プロジェクトがある期間あいてしまうと、人材は、特に会社の場合は研究者ではないので、工事がないとその人は別の仕事に充てなければいけないというところで、なるべく近い仕事を用意するのですが、それでもなかなかタイミングによってはそういう仕事に充てられないこともあるので、その辺りのところが、プロジェクトの規模と、それからどの時期にどういうフェーズで始まるかというのが明確になっていないと、人の採用も含めて、計画的にどうやって育成して、どこできちんと活躍させるかというのが非常に難しいなと思います。
過去の例でいくと、例えば、SACLAが始まる前、KEKBが一段落して、我々、どうしようかというときがありました。そのときは、加速器のプロジェクトではなくて、当時、真空技術を応用できるということで、液晶の製造装置というのがちょうどピークになってきたので、そういうところへ人を充てた。そうすると、電子ビーム溶接も使えますし、あるいは超高真空の技術も使うということで、あと表面処理に関しても、種類は違いますけれどもそういうトレーニングもできるということで、うまく一般産業分野でそういうような仕事があると、そこで別の経験をさせて視野を広げて次のプロジェクトへ備えさせるということもできます。しかし、ここ数年、日本の産業全体に、液晶であるとか半導体というのはもう海外へ行ってしまったということで、裾野が少し狭くなってきているので、非常にそこが難しいかなというのが実態です。ただ、企業の場合は、そういうのでなくても、ある程度人に別の分野で近い技術をつけさせるということで、遠い範囲でもなるべくトレーニングになるようなところで教育するようにというのは考えていますけれども、時期と規模がある程度見えないと、どのぐらいの人数が戻ってこられるようにできるかというのが、非常に検討するのが難しいというのが現状だと思います。

【中野座長】  そういう意味では、ILCがゴーになれば、加速器の人材がこれからどんどん必要になるので採用も増えるかもしれないけれども、規模があまりにも大き過ぎると、それはそれでまた悩みの種にもなり得る。

【池田委員】  ただ、ILCの規模になってきますと、先ほどSACLAの例で量産というのがありましたが、ある程度の立ち上がりを過ぎると多分量産のスキームが確立してくるので、少し人の充て方というのが変わると思います。

【中野座長】  必要となる人の専門性などが。

【池田委員】  そうですね。あとは、全てを自社でというわけではなくて、部分に応じて協力していただける会社と分担をするということで、逆にいうと、協力していただくところの裾野をもう少し広げて生産性を上げていく。そうなってくると、今度はプロジェクト・マネジメントをどうするかという問題と、あとは、加速器の場合は特に最終製品がどういうもので、何に使われるのか、どういうところに注意を払わないといけないかという、要は暗黙知の部分ですね。そこを実際の部品を製造する実作業をしてもらう人にきちんと知ってもらってやっていかないと、何か分からないけれども部品を作るというのでは、すり合わせたときに問題が出るということが一番心配なことです。だからそういうやり方をするというのは、過去にも常伝導ではSACLAの場合も協力会社を含めてやってきましたので、やり方というのはある程度確立していますし、飛行機などでもそういうやり方をしています。
ですから、ベースはありますが、やり方をどうするかというのと、あと超伝導の場合は、常伝導と大きく違うのは、クリーンな環境で組まないといけない要素がある。そうすると横持ちですね。場所間の移動をするときにどうしても開梱と梱包というのが発生するので、あるいはその輸送間の品質をどう保つか、そういう問題を含めて考えていかないといけないという別の検討事項もある。あとは、時間とコストとのバランスですね。最も違うのは、我々、常伝導であるとか、超伝導以外の加速器製品に関しては、ここ数年で数回、もう100台規模の量産をしているので、どうやって回せばというのは大体イメージが湧くんですけれども、超伝導の場合というのは、どうしても、先ほど申し上げたとおり、途中の性能計測でも冷やす設備がないとできないので、それは冷やす設備を持っているKEKなのか、あるいは新たに作るのか、そういうところでやって確認をしなければいけない。プロセスが常伝導の加速器とは違うという。その中で最適なスキーム、手順であるとかどういう分担でやるかというのを考えていかないと、今までの常伝導加速器の量産をそのまま右へ倣えというわけにはいかない部分があるとは思っています。

【中野座長】  ありがとうございます。

【中家委員】  きょうの話は非常に興味深かったのですが、今回のこのSACLAとKEKBの話は、聞いているとものすごくドメスティック、国内プロジェクト的に進められていて、前回の山本さんの話は国際的な話であって、そこのギャップの大きさというのを非常に痛感する話でした。例えば、SACLAの計画が5倍ぐらい大きかったときでも同じ方法で成り立ちますかね。それか、マネジメントそのものを変えるようなことをしないとだめなのか。

【田中部門長】  正しいことを言えているかどうかは自信ありませんが、携わった者として考えるに、基本的に、ILCの場合少し違うかもしれませんけれども、XFELの場合の5倍というのは、多分そのエネルギーが5倍ということですよね。

【中家委員】  それか、XFEL、例えばヨーロッパのXFELのプロジェクトというのはそれぐらいの大きさではないですかね。

【田中部門長】  いや、20GeVなので2倍ちょっとです。基本的にその加速をする部分が増えるというだけだと理解するとすれば、新たな要素はない。そこの部分の大量発注のマスが増えるもので、人数は増えるとは思いますが、国内のメーカーさんが対応できればできるのではないかとは思います。規模が増えたことによってシステムが違ったものになって、新たな開発要素が出てくると多分違うと思います。XFELだからその5倍といったときの定義の仕方だと思いますけれども、エネルギーだけ伸ばすのだったら、でもダンプが難しくなるかもしれないですね。エネルギーが高くなったときにダンプの問題というのが出てきて、8GeVでもマルチバンチにすると固体のダンプが結構厳しかったという記憶があります。そういう問題が出るかもしれないです。が、そういうものを無視すれば、そのまま延長するということでかなりの部分は行けると思います。

【中野座長】  メーカー側からの御意見では、そのときにプロジェクト・マネジメントとか、そういう分担体制とか、そういうものの面倒を見れる人はきちんと育てて。

【池田委員】  そうですね。常伝導のプロジェクトと超伝導のプロジェクトというのは結構違うと私は思っていまして、SACLAの5倍というのであれば、多分ほとんど問題ないだろうと思います。数が増えるだけという感覚です。ただ、ある一定量を超えると設備自体の距離がものすごく長くなりますので、今度は、輸送であるとか、ストレージとか、そういうものの問題を含めて考えないといけなくなる。1キロ以内の場合は歩いて行ける範囲なので、それほど量産といっても目が届く範囲なのですが、それを超えるとエンドが目視できませんので、そうなったときに、全体の管理というのをどういう考え方でするのかというのはかなり変わってくるだろうなと。

【田中部門長】  あと、今のに一つ付け加えますと、SACLAの場合は144本を2年ということで、基本的には一つのチームで設置していくということでできたのですが、山本先生がいつも言われていますけれども、それが大きくなったときに、工期の関係で、例えば2チームでないと間に合わないとか、そういうことになると、人が余計に要りますよという話になる。

【山本委員】  多分それが、源流から送るというところがILCとSACLAやその他とどうしても違うところで、元も世界各国で分かれて作るというのが基本、これが国際協力ですから、そこにはマネジメントをする人も、それから作る人も、試験をする人もいて、その全体をコーディネーションして持ってきて動くんですかということもまた有識者会議等でも言われているわけで、そういったところの調整、相互理解のための人材というのは、少し質的に違ったものとしてリニアコライダーの場合はより求められるということだと思います。SACLAの場合、一つのチームということで最初から作って、会社側も一つのチームとして作ったものは、チームで全体としてはできたかもしれないけれども、最初から最低限大きく分けて3つというような国際的なチームが出来上がってなければいけない。

【中野座長】  ILCの場合、日本にはどのような日本の加速器の伝統というか強みがあるということがだんだん分かってきましたが、そういうものは最大限利用される形で今人材とかを考えられているわけですね。

【山本委員】  そうですね。

【中野座長】  だから折衷になるわけですか、やり方としては。

【山本委員】  それは更にもう一つ重なる、階層がもう一つ増えるということで、例えば、日本国内の場合であれば、KEKを中心としたところに先ほどおっしゃったようなチーム、全てのことが見えるチームがいなければいけないと思います。それが最初から3つ世界にあって、最終的には一つのところにどこかにまとまるわけですけれども、そこのところ、それぞれの地域によって中心となる研究所が必ず必要で、そこを注視した国際的なオーガニゼーションができなければいけない。

【中野座長】  その3か所の、日本以外の中心となるところは、またそのお国柄というか、その国なりの。

【山本委員】  ええ。ですから、今、既にそういったことを意識しながらこの10年間準備活動を国際的にしてきているので。

【中野座長】  日本にある中心の施設というのは、日本的なやり方が色濃いものになるということですか。

【山本委員】  そんなに大きくは違っていないと思いますが、先ほど池田さんがおっしゃったように、研究所の中にできる限りファクトリーを持ってやろうとするか、ないしは、日本のようにできる限り小さな政府、小さな研究所で企業の方と協力してやるかということですが、これまでの加速器建設の中では、そういう違いがより見えてきたなということを確かに思うのです。例えば、フェルミラボとKEKの場合のスタイルは明らかに違っていたと思いますが、このILCの規模になってきて、アメリカでそれが見えてきたのは、ブルックヘブンのRHICを作ったときからだと思います。今までのような研究所の中だけに閉じた作り方では作り切れない。例えば、先ほど台湾の加速器研究所では、中で全部作ってしまうというようなことがあると御紹介されましたが、それはブルックヘブンでも前はそうであったし、フェルミラボでもそうであったと思います。それが、それ以上の形になってきたときに、企業、工業界と協力をして作らなければいけないという文化になってきて、より日本のスタイルに今は近づいていると思います。ヨーロッパのXFELなどは特に見ていただくと分かりますが、空洞を作るのは完全に企業にお願いして作っていただいていて、そして組立てのところだけが研究所がホストしてファシリティーは用意する。だけど、企業の方に来ていただいて組立てていただくというスタイルになっていて、そういったスタイルは、例えばKEKがいろいろ今までトリスタン等を作ったときでやってきているスタイルに近づいてきていることなのかなと。KEKがまたそういうことに対して順応していかなければいけないのだと思います。また、新しいILCラボが順応していかなければいけないと思いますが、そこの外国と日本の文化の違いの中で最も良いスタイルを探していくと。その一つの見本は、XFELに今はあるのではないかなとは思っています。まさにヨーロッパは、研究所間のコンソーシアムを作ってハブラボラトリーを形成しているわけです。例えば、一つのDESYだけが突出して全部をやっているわけではない。そういうことがあります。
以上です。

【萩原素粒子・原子核研究推進室長】  ヨーロピアンXFELというのは、全部DESYが検収をしていると思うのですが。加速空洞ができているかどうかの性能試験を。

【山本委員】  試験設備としては、コンソーシアムとして試験の責任はDESYが全部負いますということをしましたね。

【萩原素粒子・原子核研究推進室長】  ですよね。だから比較的まだ国際プロジェクトといっても、まだ1か所に最後のところでは寄せられて、1人の人が品質保証すれば同じ質のものが設置できるという形になっていると思いますが、山本先生の御発表を聞いていると、3か所で作って現地でしか合わせないから、それぞれ品質保証する人も3か所あるというところですよね。

【山本委員】  そうです。ILCの場合もそうです。

【萩原素粒子・原子核研究推進室長】  それはだからヨーロピアンXFELから更にマネジメントとしては一段階上に行っているので。

【山本委員】  もう一つ上に行く構想。

【萩原素粒子・原子核研究推進室長】  そこはそのXFELでできているからではなくて、真面目にきちんと考えないと。

【山本委員】  そうですね。

【萩原素粒子・原子核研究推進室長】  三菱重工で作っているものを必ず日本で検収するのかどうかすら分からないですし、だからそこのやり方も含めて考えないといけないと思いますね。
既にできているからというよりは、技術としてはマチュアだけれども、マネジメントの難しさというのがあって、田中先生の御発表でもありましたが、何で理研が全部プライムを置かずにやったのかというと、コスト削減の関係で、間にプライムコントラクターが入るとマネジメント料が掛かるんですね。それを理研の運営費交付金で内在化できればその部分はある程度浮かせられるので、その理研の中の人が苦労すればかなりのコストダウンができるということで、我々が無理にお願いしてやっていただいていたというような経緯があります。そういうところもあって、マネジメントというのは非常にその技術の成熟度いかんによらず、そこだけで失敗する、うまくいかないこともあるところなので、そこの人材。技術員、当然作る人も大事ですけれども、マネジメントをきちんとやる人材が重要で、そこで、また佐藤先生のお話にありましたが、若いときに建設でいろいろな苦労をしながら、ああだこうだといろいろ苦労してやられた中で人が育っていくのだけれども、残念ながら日本には今そういう人があまりいないのではないかという問題があるので、どこかで何とかしないと、本当にやるとなったときに、実は日本で作るのかもしれないといったときに日本人が主導的な立場を取れなくて、日本のお金が海外に出ていくだけで、外国人の、サッカーと一緒ですね、外国人監督がいて日本人のコマを動かすというような形になるのではないか。それで本当に日本がホストすると言っている意味があるのかどうかということも含めて考えていかないといけないのではないかなということで、そういったところも含めて御議論をいただければと思います。

【山本委員】  その点、もう1点加えさせていただきたいのですが、前回御報告させていただいたときの、準備期間における人材の育成というのは、まさにそこに焦点を結んだお話を、計画、考えを述べさせていただいたつもりでおりまして、3か所、大きく分けると世界の中での3か所の地域で、今のちょうどXFELの一つのヨーロッパであったようなお手本のことをやるわけだけれども、それを全部併せたときにきちんと機能しますかということを、予算もある程度きちんとお互いに拠出しながらそういった練習をきちんと準備期間にするのだと。ヨーロッパでできたクライオモジュールを例えば日本に持ってきてそれがきちんと持ってこられますか、働きますか、同じクオリティーコントロールがお互いにできていますかということを検証する。これは絶対準備期間が必要で、まさにそのための準備期間を提案させていただいたというふうにお考えいただけると、これまでの流れからもう一段重ねなければいけない構想というのが人材育成というところでも見えてくると思います。

【中野座長】  議論は尽きませんが、実はもう予定の時間を過ぎております。1回目、2回目、こうやって話し合って、だんだんと人材という一言の中にどういう意味が込められているか、ILCというものがどの規模のプロジェクトで、今まで我々が経験したことのないことをいろいろと考えていかなければいけないということがだんだんと分かってきたと思います。
本日御議論いただいた論点については、資料2のこれまでの主な意見というもの、これを更新していきます。次回にお配りいたしますので、よろしくお願いいたします。
本日の議題は終了としたいと思います。最後に事務局から連絡事項がありますので、よろしくお願いいたします。

【吉居加速器科学専門官】  本日の議事録につきましては、前回同様、後日委員の先生方にメールで内容確認をお願いいたしますので、御了承いただけましたら、文科省のホームページにて公表させていただきたいと存じます。
次回の日程につきましては、お手元の資料5でございますけれども、第3回は来年の2月15日の月曜日、時間は13時から15時を予定してございます。場所は本省の17階の研究振興局の会議室の予定でございます。
それから、次回は、ここにも書いてございますが、企業の側からの御意見を頂く予定でございますので、座長とも相談いたしまして、会議は非公開とさせていただく予定です。
以上でございます。

【中野座長】  それでは、本日の会合を終了いたします。今後とも何とぞよろしくお願いいたします。


――了――

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研究振興局基礎研究振興課 素粒子・原子核研究推進室

(研究振興局基礎研究振興課 素粒子・原子核研究推進室)