国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議素粒子原子核物理作業部会(第7回) 議事録

1.日時

平成27年2月17日(火曜日)9時30分~12時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 素粒子原子核物理作業部会(第6回)の議事録について
  2. ILCにおける超対称性粒子と暗黒物質の探索について
  3. 投資に見合う科学的意義について
  4. その他

4.出席者

委員

梶田座長、中野座長代理、岡村委員、小磯委員、駒宮委員、酒井委員、清水委員、棚橋委員、中家委員、初田委員、松本委員、山内委員、横山委員

文部科学省

土屋文部科学審議官、常盤研究振興局長、安藤大臣官房審議官(研究振興局担当)、松尾振興企画課長、行松基礎研究振興課長、嶋崎素粒子・原子核研究推進室長、成相加速器科学専門官

5.議事録

【梶田座長】  おはようございます。それでは時間になりましたので、国際リニアコライダーに関する有識者会議、素粒子原子核物理作業部会の第7回を開催いたします。
 本日は御多忙のところ、お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
 まず、本日の出席状況につきまして、事務局の方からお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  本日の出席状況についてお知らせいたします。徳宿委員と山中委員におかれましては、所用により御欠席です。それから、横山委員は少々遅れられております。
 本日、出席は13名で、当作業部会の定足は8名ですので、会議は有効に成立しております。
 以上でございます。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 続きまして、事務局より本日の配付資料の確認をお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  本日の配付資料について御確認をお願いします。資料1が前回議事録(案)でございます。資料2、「ILCにおける超対称性粒子と暗黒物質の探索」、資料3、「LHCの13TeV運転の成果に応じたILCのビジョン」、資料4、「素粒子原子核物理作業部会報告(案)」でございます。資料5、「素粒子原子核物理作業部会 今後のスケジュール」の5点でございます。
 それから、参考資料としまして、参考資料1が「素粒子原子核物理作業部会進捗報告」、参考資料2が、「技術設計報告書(TDR)検証作業部会進捗報告」、参考資料3が「第2回有識者会議での指摘事項」、参考資料4、「投資に見合う科学的意義について(たたき台)」、これは前回の資料でございます。以上を配付しております。
 それ以外に、机上にはこれまでと同様に、参考資料の一覧として青色のドッチファイルに11点の資料をとじたものをお配りしております。
 以上、不足の資料がございましたら、お知らせいただければと思います。
【梶田座長】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 それでは、議事に入りたいと思います。まず議題の1番で、素粒子原子核作業部会第6回の議事録についてです。既に事務局の方から事前に確認の依頼が行っているかと思いますけれども、もし何かこの場で御発言があればお願いしたいのですけれども、いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、資料1のとおりで決定ということにさせていただきます。
 続きまして、議題の2で、「ILCにおける超対称性粒子と暗黒物質の探索について」です。前回も説明いたしましたが、当作業部会の今後の進め方としては、有識者会議が来年度早々に中間まとめを行いたい旨、有識者会議の座長から話を頂いております。
 このため、前回の作業部会で投資に見合う科学的意義について御議論いただいたところですけれども、初田委員からILCで行う研究目標と加速器以外によるアプローチとの関係について、これまでの作業部会で様々な方々から説明を頂いた内容を踏まえて方向性を整理できるのではないかとのお話がありました。特にSUSY及びダークマター探査機におけるILCの位置づけを理解することは本部会での検討にも有益と思われますので、ここで時間をとって議論をしておきたいと思います。
 それでは、初田委員、資料2に沿ってかと思いますけれども、説明の方をよろしくお願いいたします。
【初田委員】  はい、よろしくお願いします。近隣分野の立場から、ILCにおける大きな目玉の一つである超対称性粒子と暗黒物質の探索に関して、これまでのお話を横に眺めると、その中からある程度見えてくるものもあるのではないかということで、12名の方々のスライドから何枚かずつ抜き出してみました。
 私が何かを主張するとかいうわけではなく、「投資に見合う科学的意義について」という議題につながる資料提供という意味でお話をさせていただきます。
 このスライドは皆さんが既に一度見られたものですので、細かい説明は必要ないと思いますが、私自身が、どこを見てほしいかということを黄色にハイライトしたものを10分、15分程度でお話しします。机上の配付資料には、黄色のハイライトは入っておりません。
 さて、2ページ目は第1回作業部会での駒宮委員の発表に対する質問への回答の中で、ILCで重要な測定として挙げられている4点です。ヒッグス結合定数の測定精度向上、ヒッグスの自己結合、トップクォークの測定精度向上、SUSY粒子探索、それに加えて新たな粒子の探索もあり得るということが書かれております。ILCではヒッグス粒子及びトップクォークなど既知の粒子の精密測定を通して標準理論を超えた物理を探ること、道の新粒子を発見することという2つのミッションがあると思います。多くの加速器でそうであるように、見つかるか見つからないか分からないようなチャレンジングなミッションも非常に大事でありますし、一方で、それが見つからなかった場合に、どのように確実に物理を進めるかというストラテジーも必要であると思います。
 今回はの私の話では、主要ミッションの一つであるヒッグスの測定精度向上に関しては一切触れておりません。むしろSUSY探索やダークマターに関して、皆さんがこれまで発表されたものの共通部分は何かということをお話ししたいと思います。
 3-4ページにありますように、棚橋委員が標準理論の現状と残された課題ということをお話しになりました。その中で、超対称性は非常に理論的に美しく、しかもダークマターの説明もできる可能性があるという意味で1つの有力な考え方である。一方で、自由度を2倍に増やすことにより、パラメーターの数が激増してしまうので、実験や観測により可能な理論の範囲を狭めていくという作業が必要になってくる。そういうことが主なメッセージだったと思います。この2つがこれからのお話でも重要な要素になると思います。
 5-7ページにありますように、松本委員からは、宇宙論等の観点から超対称性粒子に関す概観がありました。特にダークマターが超対称性と関係しているとすれば、1TeV以下のところにダークマターとなる軽い粒子があると同時に、1TeV以上のところ重い超対称性粒子が存在するというシナリオが描けるということです。
 LHCでは、高いエネルギーのハドロン衝突で、この重い超対称性粒子を直接作って、その崩壊などを通じて、軽い粒子も重い粒子もひっくるめて調べるという方向である一方で、ILCでは当面500GeVまでのレプトン衝突で軽い粒子を見つけて、理論予想と組み合わせて重いところに何があるかを推測し、最終的にはLHCの結果と合わせて全体像を明らかにするという方向性になっていくのだと思います。
 したがって、6ページのような図で、モデルはいろいろありますが、、ILCではダークマター候補となる軽い超対称性粒子をクリーンな実験を通して探索する、しかしエネルギーは限られているので、重い粒子は直接探索できない、ということになります。特に、
 重心系エネルギーが500GeVであれば、超対称性粒子はペアで生成されるので、半分の250GeVが探索の限界になるということです。
 8-10ページにあるのは、ILCのTDRのオーバービューをTDR検証作業部会で山本先生が行われたスライドの一部です。横軸にエネルギーをかきますと、重心系のエネルギーで500GeV以下の物理というのは基本的にはヒッグスやトップクォークの精密測定を通して標準理論から先を推測するというものであり、500GeVを超えると、ニューフィジックスの直接探索が本格的に視野に入ってくるということが明快にまとめられています。
 もちろん、ここでダークマターの候補などが軽いところに見つかると、そこからこちらが推測できますが、しかし直接何かを見るというのはまた違うエネルギー領域に入ってくるということです。
 10ページの図では、上記の観点を考慮した上で、200GeVから500GeV、更に将来的には1TeVに伸ばす可能性が述べられております。
 11-15ページは、駒宮委員が6月に発表されたスライドの一部です。12ページに私が黄色でハイライトした部分にあるように、電気的に中性かつ超対称性粒子の中で最も軽いもの暗黒物質の候補になり得て、それらが、Bino、Wino、Higgsinoなどであるというわけです。いずれにしろ、先ほど松本委員の図にありましたように、エネルギーはILCは限られていますから、その範囲で生成できるもの、重心系エネルギーが500GeVだったら250GeV以下の超対称性粒子を電子陽電子対消滅で生成して、反応に伴って出てくる光子やレプトンなどを観測して未知の生成物の質量などを引き出すのがILCの1つ方向性になります。
 14ページはILCで250GeV以下のところで何か発見された場合には、超対称性が本格的に現れるTeV領域の物理(この図ではグルイーノの質量)を、理論を媒介にして推測している図になっています。
 つまり、実際にグルイーノの質量をILCで測れるわけではなく、より軽い粒子の観測により1TeVを越えた物理を推測するというのがILCの基本的な考え方であり、一方でLHCはいきなりドンと重い粒子を作るという方向性になります。
 15ページは、駒宮委員の発表への質問に対する回答の中の図で、縦軸を中性のダークマター候補の質量、横軸を電荷を持っている超対称性粒子の質量としたプロットです。一番軽い粒子が中性だとすると、図の左上はもともと想定していないところなので、物理的に意味があるのは、右下の領域になります。色つきの線の内側は、LHCで排除されている、又は排除が期待されている領域です。
 最初に言いましたように、超対称性模型というのは非常に多くのパラメーターがありますから、理論の予言がこの図のどこに来るのかということは実は明らかでなく、モデルによってはこの図の中でものすごくスキャッターしている場合もあるし、モデルによっては対角線上に値が集中する。LHCでは、まだ排除されていないこの直線上の近傍で、250GeV以下のところを精密に探るということが1つのターゲットなのだろう思います。
 ILCのエネルギーや、LHCで排除されている領域を加味する、ILCがカバーできる領域がこの図の中で見えてくるわけです。ここら辺がLHCでイクスクルードされていて、それでILCで見るのはこの線上の近くで、アッパーリミットがここら辺まで、そういう領域であろうというふうに思います。
 私が間違ったことを言っている可能性がありますから、そのときは専門家の委員の皆様に後で修正していただければと思います。
 16-21ページは浅井氏がLHCでの将来ということを語られて、幾つかの可能性を提示されたものの一部です。浅井氏によれば、一番期待していているのは超対称性の発見とその研究ということでした。
 実際、LHCの場合にはエネルギーが高いですから、数TeVあるような重い超対称性粒子を作ることを目指す。存在するならばドンと作るし、なければ理論のパラメータ領域を排除していくという方向性が、18ページの図から分かります。
 一方、19ページは、縦軸に中性の超対称性粒子の質量、横軸には、先ほどは電荷を持った軽い粒子でしたけれども、今度はグルイーノのような重い超対称性粒子の質量をとったプロットです。、例えば2.7TeVまでLCHのエネルギーを上げると、ここまで排除できますという図になっています。
 軽い超対称性粒子をILCで探るというのは実際には左下のこのコーナーに多王します。250GeV以下のこのコーナーのところで精密測定をやるのがILCの特徴だと思われます。
 20ページにありますように、LHCでもダークマターの候補をミッシングエネルギーで探ることもできます。ただ、強い相互作用が絡むために、ILCに比べて大きなバックグラウンドが発生します。暗黒物質の直接探索については、LHCでの加速器実験やその他の観測実験が排除している領域が描かれています比較的相互作用が普通の物質と非常に弱くて、それで軽いところから重たいところまである程度の範囲があって、何度も言いますが、ILCが貢献できるのは、この図の右下で質量が250GeV以下くらいの領域ということになります。
 22-23ページにありますように、山内委員からは、フレーバー物理からのアプローチというお話がありました。これはもちろん超対称性粒子を作るという話ではなく、超対称性が関わる量子補正を通じて標準理論からのずれが見えるはずなので、非常に精密な測定をやることで新粒子の寄与の検知ができるという方向性です。何かシグナルが見えた場合には、飽くまでそういう寄与があるはずだということを、大ざっぱに言えば示してくれるだけで、最終的にはLHCなどの加速器実験と組み合わせて、該当するこういう粒子を本当に作ることで完結した話になると思われます、ILCの場合にもTeV領域の非常に重たい粒子を探るという観点からは、ある意味ではこれと似たような状況ともいえます。
 24-26ページでは、ニュートリノ研究の動向ということで、中家委員が横軸をエネルギーとして、様々な観測がどの領域をカバーしているかというお話をされました。ILCというのは、10の三乗ですか、このあたりを精密にカバーするということです。
 特に、「一般的に実験研究者は予期せぬことが起こることに備えておかなければなりません。」というダイソン博士の教訓を引用されています。当然、予期せぬことが一番面白いわけで、それをどういうふうにこのILCの中で捉えていくかということが1つの重要な鍵になるのではないかと思います。
 宇宙線研究の動向に関しては、27-29ページに梶田委員のスライドを載せています。28ページは非常にうまい図で、加速器実験では普通の粒子をぶつけてダークマター粒子を作る。宇宙観測では、ダークマター粒子が対消滅して普通の物質になるものをとらえる。直接探索ではダークマター粒子が飛んできて、普通の物質と相互作用して跳ね飛ばすのを観測する。そういう3通りの観測の仕方があるということが一つの図で示されています。ILCは当然、加速器実験のカテゴリーに入るわけですが、他の2つの方向の研究も進んでいるわけです。
 29ページは、先ほどと同様の図ですが、物質との相互作用の強さを縦軸に、ダークマター候補の質量を横軸にとってあります。当初考えられていた、今、観測だとこのあたりがこっちですね。これで、こっち側の観測でこのあたりがイクスクルードを上はされているわけですけれども、もともと言われていた、このあたりにあるんじゃないかというふうに、何度も言いますが、超対称性の理論というのはパラメーターがいっぱいあるので、そのパラメーターを動かすことによって不定性が大きい。最初に一番簡単な超対称性模型の領域がだんだんと排除され、アップデートされた理論の領域が右下にシフトしています。だから100GeV以上からこのあたりというところが、まだ生き残っている領域で、こういうところを探していかないといけない。
 ILCでは右下の領域で、250GeV以下のあたりを精密に探索することになります。一方、LHCはより広い領域をカバーすることになります。ILCが狭く深くとすれば、LHCは広く浅く、という関係にあると思います。
 30-32ページは、ダークマターが対消滅して普通の粒子になったものを観測する間接探索に関して吉田氏が離されていたスライドの一部です。これからの宇宙論のキーワードはクロスコリレーション、つまり違う観測データを組み合わせて物理を探る、とのことです。例えば、暗黒物質の分布と、ガンマ線のマップを組み合わせるというようなことです。32ページには、ダークマター粒子が対消滅するときの断面積を縦軸に、横軸にダークマターの質量をとっていますが、ILCが関係する領域は右下の250GeV以下のところになります。
 それから海外の状況ということに関してもいろいろな話があったので、その中から超対称性やダークマターに関係したポイントをピックアップしました。European Strategy for Particle Physicsに関しては、徳宿委員がお話しになりましたが、34ページの「High priority large-scale scientific activivies」というところで、electron-positron colliderに関して、それはLHCと相補的で、Higgs bosonとその他の粒子を非常に高い精度で測ることができる。これが、だからある意味でEuropean Strategy for Particle Physicsが最も強調していることではないかと思います。このother particlesというのは、既知の粒子という意味で、トップクォークなどを指しているのだろうと思います。知られている粒子に関する精密測定を行うことによって、LHCとは相補的な精密実験により新しい物理を探るということがILCのミッションということです。
 35-36ページは、米国のP5レポートの内容を森氏がレビューされたスライドの一部です。アメリカの立場としては、「U.S. should engage in modest and appropriate levels」。この「modest」というのはアメリカのバジェットにディペンドしているという意味で、「appropriate」というのは、日本のどこにできるかとか、などにディペンドしているという意味とのことです。それで日本のガバメントのfurther discussionを待っていると。
 これに関しては、P5メンバーの相原氏の所見(37ページ)が明快です。LHCを踏まえたILCの科学的意義に関して、「ILCはまずヒッグスファクトリーであり、ヒッグスを手掛かりに新しいパラダイムを拓くための施設なので」ということが明言されています。確実にヒッグスファクトリーを作って、そこから精密測定で新しい物理を探るということがILCの第一義的な位置づけとなっています。
 最後にSSC計画の経緯と中止に関して、非常に示唆に富むお話を近藤氏がされました(38-40ページ)。教訓の一つは、米国社会(ILCの場合は日本社会)が基礎科学の価値を認識することの重要性。基礎科学が重要であるということをまず認識してもらって、それが重要なのだからこれを作るのであるということが必要で、明日の生活を改善するのに役立つというような表面的なものが前面に出てきては、後で間違ったことになるのではないかということ。
 それから、「新しい研究所をまっさらの地に起こすことは想像以上に難しかった」という教訓です。これは非常に大きなハンデであり、既存の研究所の中で進めることが望ましいということ。ILCに関して言えば、場所のこともありますから、既存の研究所に隣接して作るということは不可能ですが、逆に言えば、新しいところに作った場合のハンデをどのように克服できるのかというストラテジーを最初から良く考えておかなければいけない、ということになろうかと思います。
 また、オプティミズムは大変な害ということが言われています。
 さらにプロジェクトの反対者に、対して、それが事実からほど遠い攻撃であっても迅速に対処すること。これは、近隣分野も含めた科学コミュニティの意見を聞いて、納得できるような形にしておく必要性も含まれるでしょうから、ILCに関しても重要な観点ではないかと思います。
 以上です。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 では、今の初田先生からのレポートですけれども、これにつきまして少し意見交換をしたいと思います。どなたでも結構ですので、意見等ありましたらお願いいたします。
【酒井委員】  酒井ですが、どうもありがとうございます。私は半分くらいしか出席できなくてまことに申し訳ないと思っていて、いろいろな勉強をさせてもらう途中みたいなものだったのですが、そのまとめのまとめを初田先生にやっていただいて、分かりやすく有り難いです。大体想像してはいたのですが、このいろいろな図の中でILCが届く領域というのは結構狭くて、それを横軸にしていろいろな人のスライドをまとめて示していただけたのは、非常に理解の助けになりました。
 いろいろまとめをされたのですが、最後の近藤先生のスライドの説明がやはり示唆に富んでいると私も思いました。
 物理屋としては、ILCで可能になる研究領域が小さいのですけれども極めて重要だというのは非常によくわかりました。それなしには先へ行かないのも分かるのですが、トータルバジェットとともに建設時期の問題もあるように思います。そしてこの計画がちゃんと生き延びるようにするにはどういう方策を採るのが一番いいのかを考えるのが作業部会の委員の役割ではないかと考えます。強く推進されている駒宮さんでも、あしたやれというような話をされているのではないと思いますが、どういうストラテジーで全体を進めていくと本当に実現できるかをもっと議論するのは必要ではないでしょうか。
 長期的な視点で推進するにしても、最後に少し気になったのは、1兆円に近い計画を進めるのに、一言で物理が説明できないのがつらいということです。物理屋としては非常によく分かります。前の作業部会でオリンピックくらいの国民の理解が必要との話が出ていたと記憶しているのですが、これを見つけたらノーベル賞だと、こういう品のない言い方が僕は余り好きではないですけれども、ほかの人にILCの意義を伝える際にこういった言い方がやはり分かりやすいですね。
 横山さんも考えていただけると言っていたのですが、わかりやすい説明が難しいときに、ILCを残していくにはどういう方策をとったらいいかという戦略を、我々は考えた方がいいという気がします。
 バウンダリーコンディションを結局は考えざるを得ないのではないでしょうか。ただ、物理としてはすっきりとした物理が望ましいのですが、部会で整理した図表を通して何かが分かるというのを言われても、我々物理学者は理解できるけれども、一般の人には難しい。若干そこがつらいなという印象を持ちました。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 はい、お願いします。
【駒宮委員】  非常によくまとまっていたと思いますが、最後にSSCのお話をされましたが、SSCはやはり物性のいろいろな先生とか何とかがかなり強烈に反対したのです。SSCがなくなったら、自分の方にバジェットが来るというふうにお考えの方がいらっしゃったのですが、結局、SSCが潰れたということはサイエンス全体に対して非常にマイナスの打撃になったわけです。
 そういうことを考えますと、やはりサイエンスとしてどういうプロジェクトを押していくかというのは相当きちんと議論しないと、ただ単にお金がどうのこうのという話だけではないと思います。
 それから、若干細かい話ですけれども、確かにそのILCの直接探索の領域というのはそんなに大きくないです。しかしながら、非常に重要なポイントというのはヒッグスのプリサイズメジャメントです。それからトップのプリサイズメジャメントによって、今後の素粒子物理学が行く方向がかなり明確に分かるであろうという可能性が非常に高いということが、非常に重要なポイントです。ですからLHCで何も見つからなかったとしても、その測定というのは必ずできますし、それからスーパーシンメトリーの直接探索ですが、ここにある、例えば浅井さんの16ページの図を見ますと、この一番上の非常に大きなリージョンがあたかもエクスクルードされているように見えますが、これは全部がレプトンに崩壊する場合です。そんな場合はあり得ないですよね。それはもうスレプトンが非常に軽くて、全部がスレプトンに行くというような場合なので、ここで見ていただきたいのは、これも浅井君がこの前言っていましたけれども、下のブルーのところです。これがWとかZを通して崩壊するものですね。ここら辺が一番まあまあ起こるだろうというものなので、これを見ますとやはり左側が完全にがらがらに空いているのです。
 ですから、やはりLHCで探したのだけれども、探したというのは部屋の半分を探したのだけれども、それでなかったと言っているようなものなのですね。例えば子供が成績表がどこかへ行っちゃったという場合、「あなた、探してらっしゃい」と言って、子供が部屋の半分を探してなかったから、「なかったです」と言ったら、親はやはり怒り狂うわけですよね。LHCでのSUSYの探索は多分そういう感じのものなのですね。ですから、例えは余りよくないかもしれませんが、そういう感じです。
 以上です。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 ほかに何かございますでしょうか。お願いします。
【松本委員】  これも細かいかもしれないので、細かいから要らないという話だったら、後から無視してくれていいのですけれども。
 駒宮さんが書いた最初のページの下の方に、様々な現象をクリーンな実験環境において調べるんだということと、ダークマターとか新粒子のサーチに関係した話なのですけれども、確かに直接作ろうと思うと、エネルギーは限られていますので、その粒子ができる範囲というのにも限りがあるのですけれども、そういう粒子が、普通の標準模型の過程に影響を与えて、そのずれを見ることさえも可能なわけですよね。ILCというのは非常に精度が高くて環境がいい。
 そうすると、そのリーチは、この間ちょっと調べてみましたけれども、倍くらいには行きます。つまり500GeVのマシンがあったら、250GeVまでしか作れないじゃないかと思うのだけれども、そうではなくて、実は調べられる範囲は500GeVくらいまでは行くということはあるので、それはもう、倍違うわけです。
 一旦そういうものが見えたら、何としても頑張って、今度はそれを直接作ろうという話にもちろん行くと思うので、そこは余り直接作れるところ以外は全く見えないというようなことの印象を与えるような表現はやめた方がいいのではないかというのが、個人的な意見です。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 初田先生、お願いします。
【初田委員】  今回私がまとめたのは、飽くまでこのSUSYとかダークマターという切り口でスライドを全部眺めたので、もし時間があれば、ヒッグスの精密測定とか、トップクォークの精密測定などの、切り口で見て、それらがどのくらいインパクトがあるかということを議論しないといけないと思っています。それから、やはりヒッグス粒子の自己結合というのは極めて大事だと私自身は思っています。物性的な観点から見ると、それをきちんと押さえることで、初めてヒッグスポテンシャルというのが見えてくるはずです。ただ500GeVではなかなかそこまで見るのは難しいという議論だったようにも記憶しています。そのあたりも含めて、本来は別の切り口をもう1回見た方がいいかなという気がしています。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 ほかに何か御意見等ございますでしょうか。お願いします。
【岡村委員】  初田先生のまとめは、今までのいろいろな資料を使ってのまとめということもあって、とても分かりやすいというか、わかったような気にしていただけるので大変よかったと思っています。しかし一方で、私はちょっと酒井先生と似たような印象を持っています。一番印象的だったのは、最後のSSCの話にあった「米国社会が基礎科学の価値を認識すること」、これをだから「日本社会が」というふうに置き換えたときに、いかにどういう発信ができるかというのがポイントです。少し先走りして申し訳ないところもあるのですが、資料4で科学的意義というのを説明しようとしてありますね。
 それで、一番上の丸が「国際リニアコライダー計画は以下の事項について実験、探索を行う施設」とした後で、丸1、丸2、丸3と書いてある。まずこれがあって、その下の丸で「上記の検証は素粒子物理学の将来的な課題として重要な科学的な意義がある」とかいてある。これがまとめだと、普通の人は何を言われているか分からないという感じがあるような気がするのです。
 やはりまず初めに、今我々は世の中をどう認識しているのか、標準模型って何なのだ、それでこれをやったら世の中を認識することがこんなに変わるんだと、それをやるためにこれとこれとこれとをやるんだというようなストーリーの展開の報告が重要です。一般の人は、何かそういう方に向かっていけなくて、いつも何か土俵の上で専門家の人たちがすごい議論をしていて、「重要だよ、重要だよ、何でこれが分からないの」と言っているというふうな雰囲気に見えることがちょっと気になっています。何とかこの会の報告を最終的にまとめるときには、今言ったように「なるほど、そういう話か」という分かりやすい話から始まって、そのバックグラウンドにこの非常に複雑な精密な物理の論理が組み立てられていると、そういう形にするのがいいのではないかという印象があります。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 お願いします。
【駒宮委員】  全く岡村先生の意見に同意します。
 やはり我々が今まで作ってきたレポートというのは、この素粒子原子核の作業部会の中できちんとしたサイエンスのコンセンサスをとるということをやってきたので、それを一般の人たちにどういうふうに説明するかというのは、ほとんど何も考えないでやったわけですね。中野先生と一緒に少しは考えましたけれども、それはほとんどやってこなかった。
 ですから、そういうきちんとしたまとめの文章みたいなものを、この3月30日が次の回ですよね。それまでにある程度作ってこようと思うのです。いろいろなキャッチフレーズと、それから400字くらいの簡単なまとめと、それから1ページくらいの、2,000字から2,500字くらいのものを図を入れて、やはり最初は今の到達点、要するに歴史です。歴史がやはり分からないと、そこから先どうなっているか分からないので、今の到達点がどうなっているか。それからそれに対して将来は、ILCがあったら一体何が変わるのかということを、比較的簡単な言葉で普通の人にも分かるような、というのはかなり挑戦的なことですが、それを宿題として我々コミュニティに課してきちんとやってこようと思っております。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 横山さん、お願いします。
【横山委員】  今の先生方のおっしゃるとおりだと思います。今、駒宮先生がおっしゃってくださったことは、少しお話ししまして、そういうものを御用意されるといいのではないかというふうに申し上げたのですが、岡村先生、酒井先生がおっしゃった何だかよく分からないというのは、多分相場感
という言葉にまとめられるのではないかなと思います。ここのやろうとしている物理がどれほど重要なのかという相場感が社会とは全く共有できない、非常にしづらい。でもそのための挑戦をしないで、この議論を社会に通すことは決してできないので、そこはもう頑張っていただくしかないというふうに思っております。
 最も相場感を知るのに重要なことは、今、駒宮先生もおっしゃっていただいたように、歴史を共有するということで、これを抜きには絶対できません。経験上の話で申し訳ないのですけれども、素粒子や幾つかの複雑な理解しにくい分野については、直観的にこれはすごいと思う分野もたくさんありますけれども、非常に分かりにくい分野については、まず歴史を共有するということが最重要ポイントになります。
 したがいまして、事務局もこれから御努力していただけるということで、このポイントはお話ししてございますが、歴史をいろいろな形で語っていただく。時間もございませんので、非常に洗練された最終的なものを1つだけ用意するということは無理だと思います。なので、ILCの先生方はコラボレーション総出で、もう全員が1つずつ文章を書いていただきどれがヒットするか分からないけれども、たくさんやってみていただくという御努力をしていただく必要がこれまで以上にあると思います。これまでの蓄積もあるとおもいますので、まとめて出していただくと、それはそれで非常に重要な資料になるかと思います。
 もちろん、この素核部会でのミッションとは少し異なる形の文章の蓄積になるかもしれませんが、それはそれとして、多くの方にまずは見ていただく、相場感を持っていただくというためには、細かいところは後々でも、今のところ相場感を知るために必要な資料提供というのは是非関連する先生方に頑張っていただきたいと思っております。
 以上です。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 いろいろと意見が出てきたのですけれども、今日はほかにありますので、申し訳ありませんけれども、一度ここでこの件につきましては終了とさせていただきまして次に行きたいと思います。
 今、途中で打ち切りましたので、もしほかに御意見がございましたらば、この後でも、あるいは終わった後にでも事務局の方へ連絡いただければと思います。
 では続きまして、議題の3で「投資に見合う科学的意義について」です。前回も説明いたしましたように、当作業部会の今後の進め方としては、有識者会議が来年度早々中間まとめを行いたい旨、座長の方から話を頂いております。
 特に、前回の有識者会議において、実施の可否判断を行う際の優先事項や判断の時系列について明らかにするよう求められています。このため前回の会議で、本日の参考資料4のような形で議論を行っていただきました。今回は、その資料の内容を資料4として資料の方に落とし込み、次回の有識者会議に報告する形で整理を進めております。
 本日は、この資料を基に御議論いただきたいと思いますけれども、その前にILCに関する投資に見合う科学的意義におけるLHCの役割ということで、中野座長代理と駒宮委員との間で資料3を作成していただいております。ということで、まずこの資料の内容をお聞きして、それを資料4に反映させていきたいと思っております。
 ということで、資料3につきまして、まず中野先生の方から説明のほどお願いいたします。
【中野座長代理】  資料3を御説明します。これは駒宮委員と私が今日の議論のたたき台のために作ったもので、たたき台ですので完全な合意に至ったものではありません。これから説明いたしますが、この後の議論で我々が自由な発言を禁じられているわけではないということで、かなりの項目で意見が一致しまして、不一致のところは少ないです。
 まず、LHCがILCに及ぼす影響ということなのですけれども、LHCが最終的に全部終わってしまうまで待つわけにはいかないので、また、そのLHCの中で一番影響が多い部分というのは、やはり13TeV運転であろうという、そういうことで、まず議論を始めました。また、ILCについても、最終的に1TeVとかになった場合ではなくて500GeV、最初の段階ですが、その段階にどういう影響があるかということを話し合いました。
 影響の中身なのですが、科学的意義というものと、それから、これを作るときにはいろいろな国際協力が必要なのですが、国際的な求心力、この2つに対して影響があるだろうということでまとめました。
 ILCに関してはいろいろとテーマがあるのですが、その中でも、今日初田委員の説明にもありました新粒子の直接探索というものと、それからヒッグス粒子やトップクォークの精密測定と、この2点が非常に大きなテーマですので、それぞれについてまとめる形にいたしました。
 LHC13TeV運転ですが、まず精密測定に関しては余り大きな期待はできないだろうと。だから13TeV運転でヒッグスの結合定数が標準理論から大きくずれているというようなことは余り考えられないだろう、影響はあるとしたら、新粒子が見つかるかどうかであるということで、その新粒子が見つかった場合に、それぞれどういう影響があるかということでまとめてあります。
 直接探索に関しては、このLHCで見つけることができるのは、強い相互作用をする新粒子なのですけれども、それが見つかった場合に、そのパートナーとなる強い相互作用をしない、例えばSUSYですが、そういうものがILCで見つかる可能性が高い場合、それからLHCで見つかったのだけれども、余りにも質量が大きくて、ILCで見える可能性がない場合、そして全く見えなかった場合。この見えなかった場合は、アッパーリミットが付くことになります。それぞれの場合について科学的意義と求心力をまとめました。
 備考欄には、この「○」とか、「◎」、それから「△」がついた理由が書いてあります。それと理由だけではなくて、書き切れなかったものが書いてあります。例えばですが、一番真ん中のところで「◎」、これは景気がいいのでここを行きますが、LHCで新粒子の発見があって、対応する新粒子が500GeVILCで直接見える可能性がある場合、これは非常にコミュニティとしても行け行けの状態になって、期待が高まって、求心力も高まるだろうということで、両方とも「◎」になっています。
 一方、その下ですが、500GeVのILCでなかなか新粒子を見つけることができないであろうといった場合には、この新粒子の直接探索という意味での科学的意義というものは、現在よりも下がらざるを得ないということで「△」がついております。
 次に精密測定ですが、ここは意見が合わなかったところで、LHCで新粒子の発見があった場合、それからなかった場合について、まず求心力については新粒子の発見がなかった場合、これは浅井先生の発表でもありましたけれども、なかなかLHCは苦しいことになるだろうと。結果としてILCに相対的に求心力が高まるのではないかと、これは一致したのですけれども、科学的意義についてはちょっと逆の意見になっております。
 まず初めに、「○」・「◎」になっているものが駒宮委員の意見で、なかなかほかに手がないということになると、相対的に科学的意義が精密測定のところに集まってくるのではないかと。だから精密測定の科学的意義というものは相対的に上がっていくのではないかというのが、この「○」・「◎」の並びです。
 その隣の「◎」・「○」というのは私の意見で、やはりその精密測定なのですが、ずれるに違いないと思っている方が意義が高いのではないかというので、「◎」・「○」となっております。ここは御議論いただきたいと思います。
 それから備考欄の下に欄外に(1)(2)(3)と書いております。これはなかなか有識者会議の場、それからいろいろな一般向けも含めて分かりにくいところだと思うので書いたところで、そのLHCで見つかる新粒子というようなSUSYというものと、ILCで観測しようとしているものは違うものであるというのはなかなかきっちり書かれていなかったので、それを書きました。
 それから数字的に見える可能性があるとかないとかいうのは、ある程度数字を入れたいということで、7分の1という数字を入れています。これは先ほどの駒宮委員のマスフォーミュラですと、1対6とかになっているのですけれども、1対6か、1対7かというのは、多分モデルの中でかなり差があって、推進派の方はできるだけこれを小さい数字にしたい、慎重な方はこれを大きくしたいというところはあるかもしれないのですけれども、大体7分の1というところが割と受け入れられやすいのではないかということで書いております。
 粒子混合によって、ミキシングによって軽くなり得るので、そのことも付け加えております。だから実際のところ、LHCで見つかった場合に、ILCで見つかるか、見つからないかというのはグレーな部分があるのですけれども、あえてここはそういうことが判断できるとして表を完成させました。
 以上で大体説明になります。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 では、この資料3、今後の議論をしていく上でかなり重要な資料となるかと思います。これにつきまして何か御意見等あればお願いします。では、初田先生、お願いします。
【初田委員】  質問ですが、最初の1のLHCで新粒子の発見があったが、対応する新粒子がLHCで直接見える可能性がない場合と可能性がある場合で、「△」とか「○」というのは大きく分かれているのですけれども、LHCの範囲の中だけで、そのILCで見えるか見えないかということがはっきりと分かるものなのでしょうか。
【駒宮委員】  大変いい質問ですね。分からないです。はっきり言って、これはどちらにフリップするか分からないのです。でも本当に可能性がない、本当に可能性があると言ったら、こういうふうになるのではないかという話で、ですからここはどちらも非常にファジーですよね。おっしゃるとおりだと思います。
 それから、もう1つ、この下の欄の一番上に書いてある「現在の科学的意義・求心力からの変動を表記」というのを、これはやはりこの一番下に書いておいても分からないので、この上の「科学的意義」、ここですね。この灰色のところ、ここに落とし込むようにしていただかないと、これはアブソルートな評価だというふうに人は見てしまうのです。我々は、現在のやつというのは、この進捗報告にあるやつで、ここでは一体何が書いてあるかというと、「現在LHCにおいて探索が進められている新しい物理現象が発見されるか否かに関わらず、電子・陽電子衝突型加速器の次世代計画として提案されているILCは、その特徴であるバックグラウンドの少ないクリーンな実験環境においてLHCでの実験の限界を超える研究能力のある実験施設であり、精密測定や新粒子・新現象の探索により新しい物理の全容解明に貢献し得る点で重要である」ということが明確に書いてあるのです。ですから、これが基本なので、これからのディビエーションなのです。
 だから決してLHCを最後まで待ってやれとか、そんなことをやったら、もう完全にコミュニティが潰れてしまいますので、ここで言っているのは要するに13TeVで、これは必ずしもその13TeVを待って判断しろということは書いていないわけです。13TeVの時点で科学的意義がこういうふうに変動しますと。13TeVである程度結果が出た頃に、こういうふうに科学的意義は変動しますということを、これはディビエーションを言っているにすぎないのです。
 以上です。
【中野座長代理】  はい、そうです。ディビエーションを言っているのですが、初田委員からの、はっきり言えないと、なぜこんなことを書いているかという点なのですけれども、やはりそのLHCで新粒子が発見され、非常に重いといったときに、その発見を基準にして、どのエネルギーのILCを作りたくなるか、だから500GeVなのだけれども、近い将来やはり600GeV、700GeVに持っていきたいという、そういうモチベーションが非常に高まるのかどうかというのは、やはりその見える・見えないというある程度の判断がきいてくると思います。そういう意味で、ここではもう、その時点での理論が進んではっきり分かると考えて書いておりますが、何らかの判断はそこでしなくてはいけないのではないかという意味で、3つに分けた中で一番上というのは、なかなかそういうところにすっぽりはまるような質量の粒子が見つかるという可能性は非常に低いかもしれませんが、あえて書いております。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 ほかにありますでしょうか。お願いします。
【松本委員】  今の意見に賛成なのですけれども、例えばLHCで2TeVのカラード粒子が作られて、その崩壊した先の粒子が1TeVで、その場合多分LHCではそれだけ質量差があれば分かると思います。
 逆に、2TeVとか1.5TeVのカラード粒子が作られて、その後、数百GeVの粒子を調べることは重要になります。これはその下の欄に対応しますが、ILCでこの数百GeVの粒子を調べることは重要になります。後者の場合は、質量の測定に関してはLHCでも可能ですが、他の性質についてはILCが大きな役割を果たすと期待されます。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 ほかに何かございますでしょうか。お願いします。
【松本委員】  これはさっき言ったことと同じなのですけれども、下の欄外で「上限は250GeV」と書かれると、一番下の(3)の説明ですけれども、「直接探索可能な」と書かれるのなら分かるのですけれども、「探索可能」と書かれると、全部を含めてしまう感じがあります。
【中野座長代理】  直接を入れたらいい。
【松本委員】  ええ、そうです。
【梶田座長】  お願いします。
【清水委員】  ちょっと分からないのでお聞きしたいのですけれども、その2番について、ILCの特徴というのはやはりヒッグスファクトリーと言う人もいるくらいなので、ヒッグスに関して徹底的にやるということだと思うのです。恐らくアピールするにしても、まずそれがあって、それにあと新粒子がどうのこうのという話になってくるのだと思うのです。
 この2番の「◎」とか「○」が、LHCでの新粒子の発見があった場合とそうでない場合で変わってくると。もちろんヒッグスにカップルするので、それは見える・見えないというのはありますけれども、ただそれだけのためにヒッグスをやるわけではないのだと思うのですけれども、その辺はどうなのですか。
 ただ単にスーパーシンメトリーか何か分かりませんけれども、新たな粒子との結合というか、ずれを見ることだけがヒッグスの精密測定なのですか。それももちろん重要なファクターであることはそうだと思うのですけれども。
【駒宮委員】  それが一番重要なポイントで、ヒッグスとの結合のパターンを見ることに、1つの種類の粒子ではなくて、いろいろな粒子との結合をみんな、総合的に判断するのです。それによってスーパーシンメトリーの方に行くか、それともヒッグス自体がコンポジットの方に行くか、非常に大きな分かれ目が分かるのです。そこが分かることによって、将来の素粒子物理学の方向が分かるというふうに我々は言っているのです。
【清水委員】  分かりました。そうすると、やはりLHCでの発見にかなりディペンドしてくるということを意味しているわけですね。どういうのが出て。この前駒宮さんが言われていたヒッグス場のシンメトリーブレーキングですね。それのオリジンを探るというような話もあったと思うのですが、それはどうやってここに結び付くのですか。
【駒宮委員】  それがまさにヒッグスの電弱相互作用の破れの原因というのが、一体どこにあるかというわけですよね。それがスーパーシンメトリーによって生じているのか、それとももっと全然違う、ヒッグス自体がコンポジットで、真空の中の陽子が質量を持つような形で質量を持っているのかという、そこに非常に大きな違いがあるのです。
 私よりも多分松本さんが説明した方がいいかもしれない。
【清水委員】  ヒッグス場のシンメトリーブレーキングというのと、スーパーシンメトリーが絡んでくるという話と、非常に混沌としていて分かりにくくて、例えばスーパーシンメトリーの方も、シンメトリーブレーキングというのは手で入れているようなものですよね。
【駒宮委員】  手で入れているというか、例えばグランドユニフィケーションというのがあって、そこからヒッグスの質量がどのように変遷するかを大統一エネルギーから引っ張ってくるわけです。スーパーシンメトリーがある場合は、μの2乗というパラメーターがヒッグスセクターにありますよね。あれがどこかでネガティブになるのです。そこでシンメトリーブレーキングが起こるのです。
 SUSYの場合は、μの2乗がネガティブになって、それでシンメトリーブレーキングを起こすような、メカニズムを作ることが自然にできるのです。ですから、SUSYはそうなっていると。
 それで、SUSYとは全く異なるヒッグス粒子がコンポジットの場合というのは、原子核の方がよく御存じのように、プロトンなどのバリオンがマスをもつような、そういう仕組みになっていいます。SUSYと複合粒子モデルではこのような非常に大きな違いがあるというわけです。
【清水委員】  私の質問は、やはりヒッグスを徹底的にやることによってどういうことが分かるかということを多分アピールしなければいけなくて、それを一番簡単に言うのはどういう言い方がいいかということなのです。それが新粒子の、要するにずれを見ることによって新粒子が発見されるのだと、あるいは新粒子の存在が分かるのだと、それだけではちょっと弱いのではないかなという観点で言いました。
【駒宮委員】  単にそれだけならば、おっしゃるとおりだと思います。
【梶田座長】  お願いします。
【中野座長代理】  その点ですが、精密測定の意義ですよね。これは山内さんの御意見だったかな、LHCで新粒子が見つかったからといって、それがSUSYとは限らない、SUSYと確定するには、ちゃんと精密測定があって初めてSUSYとして確立する。だからSUSYの発見というのは合わせ技なんだというような御意見を、どこかで聞いたと思うのですけれども、あると思うのです。
 だから、そういう意味での精密測定。だからLHCで新粒子が見つかったけれども、それが何者か分からない。何者か分からないものを精密測定をすることによって正体を暴くという意味での精密測定と、それともう1つは、LHCでいろいろやったけれども全く手掛かりがないと、だからこの先、標準理論を超える理論がどこに行くか分からないので精密測定するという、その2番目の理由とあって、2番目の方が強いと思えば、なかった場合が「◎」だし、その正体をあばくという方がモチベーションとして高いというのだったら、最初の方が「◎」。
【清水委員】  分かりました。
【梶田座長】  ほかに何か御意見は。お願いします。
【小磯委員】  この一覧表を見せていただきまして、ILCの国際的な求心力という意味では、いずれも「○」か、「◎」であると。つまり現状か、それよりよくなる場合であって、今より下がるということは想定しなくてよいという、そのようにまとめられているのかと思うのですが、それはそういう理解でよろしいのでしょうか。
【駒宮委員】  そういう理解でいいと思います。
【小磯委員】  先ほどオプティミズムが大変な害になるというのがありましたので、あえてお聞きしますが、求心力が仮に下がってしまうような場合というのは、あえて考えるとどのようなことなのでしょうか。
【梶田座長】  お願いします。
【駒宮委員】  それは判断の時期をどんどんずらしていくとそうなります。ヒッグスが発見されて、ある程度いろいろなものが見えてきて、そういう時期にスタートさせないと、こういうプロジェクトというのは完全に駄目になるのです。外国も乗ってこなくなる。何らかのポジティブなサインを、日本の政府なり何なりが送らないと、もう非常に危ないような時期に来ているのです。
 だからそういう意味で、ずっと待って、この後ろにあるように判断を遅らせるようなことがあったら、国際求心力を失います。
 以上です。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 お願いします。
【中家委員】  今の議論に関して、ちょっと僕も……。これは1番と2番で分けて、国際的な求心力とか書いているのですけれども、1番の例えば一番下のところで「LHCで新粒子の発見がない場合」、2番の下の「LHCで新粒子の発見がない場合」、これはどちらも同じ条件で、このときにILCの国際的な求心力がどうなるかというのは、別に2つの評価が実は存在するわけではなくて、ILCとしては多分本当は1つの評価しかないと思うのです。
 今の議論も分かるのですが、少しだけ気になるのは、ない場合にはLHCでやれないから相対的にILCの評価が高まるという言い方を、多分中野さんも駒宮さんもしているのですが、それは分野の中で研究者が同じ数で、こちらがやることがなくなったから集まるという言い方が正しいのですけれども、もう少し広い目で見ると、分野自身に求心力がなくなるというので、絶対的には、これは相対的評価というあれなのですけれども、もしかすると、小磯さんが言うように、求心力は絶対的評価だと下がってしまうこともあるのではないかというのは、少し危惧しているのですけれども、どうなのですか。
【駒宮委員】  物理がかなりLHCによってレストリクトされるわけですよね。これこれこの場合は実験結果と合わないと。そうするとだんだんいろいろなものが際立ってくるわけですよ。そうすると、この次はどういう方向に行ったらいいかというのが分かるわけです。
 LHCで何も発見されない場合は、ですから先ほども言ったように、部屋のもう半分を完全に探し切らないといけないという使命をILCが持つわけです。したがってそういう意味で、求心力かつ科学的意義も上がるというふうに考えたのです。
【梶田座長】  お願いします。
【山内委員】  今の求心力の話ですが、この親委員会でも一度議論がありまして、今LHCでたくさんの人がやっているのが、ILCができて、人が来るのですかと、そういう質問があったと思うのです。それに対する答えとして、この求心力というのを挙げられているのだとしたら、これは現在、求心力イコール、現在LHCをやっているたくさんの方々の関心がILCに向くのですかと、それが求心力であると思いますと、少しこの評価が違ってくるのではないかというふうに思うのです。
 つまりLHCで新粒子の発見があって、ILCでそれが直接見える可能性がないという場合には、これは残念ながら相当求心力が下がると思います。人は来ないと思います。
 という意味で、ここは「△」、むしろ「×」に近いのではないかと思うのですが、逆に、そのLHCで新粒子の発見がない場合、これは今「○」になっていますけれども、これは新しいものを直接見る手段として、ILCに限るという言い方は適当ではないかもしれませんけれども、そういう傾向はかなり出てくると思うのです。という意味で、ここはむしろ「◎」であるべきではないかなと。
 つまり、「△」・「◎」・「◎」くらいの求心力があるというのが、私の感覚です。
【駒宮委員】  それは左側の上の3個ということですね。
【山内委員】  はい。
【駒宮委員】  分かりました。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。特に「○」、「△」、「◎」は、ある意味目立つものなので、慎重にここら辺は議論していかないといけないのだと思うのですけれども。
【駒宮委員】  すみません。ここら辺の「○」「×」の数というのは、私は中野委員の御指導を受けまして、余りたくさん「○」とか「◎」があっても、信頼されなくなるということで、私はもう非常につらい思いをして、この2つ「△」を付けたのです。
 以上です。
【中野座長代理】  僕は駒宮委員との個別の打合わせのときは言わなかったのですけれども、これは多分全部「◎」にしてしまうと、13TeVを待ってから決めろと言われますから。これは今からの変動なので、13TeV運転が終わってから全部「◎」になるのだったら、13TeV運転が終わるまで待ちましょうと、もう、それで終わりです。
 だから、やはりそういう意味からも「△」というのはいろいろしっかりと勇気を持って入れておかないと。
【駒宮委員】  それは……。なかなかうまいことを言いますね。
【梶田座長】  では、初田先生、お願いします。
【初田委員】  素粒子物理全体の流れの中で、ILCがどれくらい重要なのか、それがないと先行き行かないものなのか、ILCがなくてもLHCができ、更にそのアップグレードが更にあって、いくものなのかというところを知りたいのですけれども、例えばこれを逆の通信簿じゃないけど、付けて、LHCの13TeVは動くのでしょうけれども、その先のプランを考えるときに、ILCが必要なのか、必要ではないのかということを書くと、必要性という意味ではどうなるのですか。全部「◎」ですか。それともやはりそうではないこともあるのか。ILCの必要性。
 例えば20年先にどれくらいILCが必要だったのかと思われるかというところで、逆にそこから見た必要性というのはどういうふうに考えていますか。
【駒宮委員】  すみません。
【梶田座長】  お願いします。
【駒宮委員】  それは今までの歴史を見ますと、やはりハドロンコライダーとe+e-の役割というのは明確に違うのです。ハドロンコライダーというのは、ここにはいろいろなイクスクルージョンの質量領域の図みたいなものだけしか出ていないので、本当の実験の物理量のプロットというのはどのようなものかを御覧になりますとよく分かりますように、探索は非常に難しいのです。バックグラウンドがものすごく大きくて、そのテールにあるシグナルを見ているような感じなのです。
 e+e-というのは、バックグラウンドが低くて、反応の素過程自体が見えるので、相当違うのです。やはりLEPと、それからLHC、この両方をやりますと、その違いというのは明確に分かるのです。今はLEPの後というのはe+e-では全くないわけです。
 だから、今LHCがやって、LHCと同時期にILCが走るというのは、極めて重要なのです。同時期に走りますと、今度はILCの結果をLHCにインプットして、両方の相乗作用が生まれるわけです。
 これがもしかして、先にILCができていたらどうかというと、やはり比較的軽いものは分かるかもしれないけれども、gluinoみたいなものはできないわけです。だからいろいろなものを総合して見るためには、ハドロンコライダーとe+e-のコライダー、この両方が必須だと思います。
 私は、今までのハイエナジーコライダーにはどんなものがあったかということを、一応表にしてきたのです。
 1970年代からコライダーというものができまして、ここにあるのは何しろ世界である一時期にハイエストエナジーになった、そういうエナジーフロンティアのコライダーだけを選んでいるので、例えばビーファクトリーなどはここにありません。
 それで、この紙には表と裏がありまして、一方の方はe+e-、それからこのHERAだけはepですね。それから一番下はハドロンコライダーというのがありまして、1990年代には実に5台も走っていたのです。e+e-が3つ、epが1つ、それからハドロンコライダーが1発走ったのです。今では全部LHCに行ってしまっているわけです。これはどうしてかというと、リニアコライダーのTDRがなかなかできなくて、リニアコライダーが比較的値段が高いということにもちろん原因があるわけですが、こういう状態なのです。ですから、これを見ますと、やはり次にはe+e-コライダーが非常に重要になると。
 それで、人の流れというのもこれから、LHCとか何とかからILCの方に流れていくというのはかなり明確だと思います。
 以上です。
【梶田座長】  お願いします。
【中野座長代理】  過度のオプティミズムのような気がするのですが。やはり昔の規模の小さな加速器、LHCとか、ILCとかと比べての歴史をそのまま延長していくことはなかなか難しいのではないかと思います。
 それで、先ほどの初田委員の質問にきちんと答えるならば、ILCはなくてもLHCだけでできるのかどうかというところで、例えばそのLHCで新粒子が発見されたと。それで答えが出ていない、SUSYかもしれないし、違うかもしれないといったときに、ハイルミノシティLHCまで行ったら精密測定ができて、それがSUSYだと分かるとか、分からないとか、そういうことではないかと思います。
【駒宮委員】  そうですね。それはハイルミノシティまで行っても、確実なことは分からない。やはりバックグラウンドが非常に高くて、ハイルミノシティに行くと、なおかつバンチ衝突あたりの反応がもっと増えるので実験としてはもっと難しくなるのです。
 ですから統計が増えてもシステマティックエラーに抑えられて、それはできないと思います。だから必ずe+e-が必要だと思います。
 それから、昔の実験とおっしゃいましたが、ここにある1990年代のLEPというのは、1つの実験が大体300人から600人くらいいたのです。それが4つあったのです。ですからこれは相当大きな電子陽電子の実験で、そういうところから、このTEVATRONとか、LHCに人が流れていったのです。ですからそういうダイナミズムを知っていると、本当に何か新しいことができるような実験にはみんな行くのですよ。これは過度のオプティミズムではなくて、ハイエナジーフィジシストの性質なのです。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 ほかにまだ議題があるので、申し訳ないのですけれども、ここでこの議論を終わりにしてよろしいでしょうか。
【岡村委員】  1つ、最後に少し違う観点で。
【梶田座長】  では、本当に最後に。
【岡村委員】  はい。先ほど駒宮先生が、この下に書いてある注が分かりにくいから、ここに書けとおっしゃいまし。これは大変重要な表なので、もちろん「◎」・「○」が重要なのですが、この項目とかをどのような言い方にするのかとかいうのも非常に注意をした方がよいと思います。今ですと、結構重複した表現があちらこちらに出ていて、新しい有用な情報が少し足りないとか、LHCの13TeVは例えば何年くらいだとか、そういうことがあります。これを見ただけで余り専門家でなくても「ああ、そういうことが書いてある表だ」というのが分かるようなタイトルとか、書き方を少し工夫されるといいと思っています。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 一応次の議題に移る前に簡単にまとめておきますと、細かいことはあるにしても、「○」「△」「×」ということに関して言うと、一応、大体皆さん何となく御了解されたかと思います。LHCで新粒子が発見されたけれども、ILCで見えない場合は国際的な求心力については「△」ではないかとのことですね。それから一方、LHCで新粒子の発見がない場合には「◎」ではないかという御意見もあったということで、ここについては両論併記というような形でアップデートするような形でよろしいですか。
 それからあと、1の可能性がない場合とある場合ですけれども、これは少ない場合と高い場合とか、少しぼやけているということを分かりやすくするということも合意されたのかなと思います。
 ほかはいろいろとあるかと思いますけれども、そのような形で少しアップデートをするような形でまとめていきたいというふうに思います。ありがとうございました。
 それで、続きまして資料4の方なのですが、これにつきまして今の議題の(3)投資に見合う科学的意義についての中ですが、これにつきまして前回も御議論いただきまして、アップデートがなされております。
 それからあともう1つは、先ほどの資料3に基づいて少し詳細版の方で議論をさせていただきますけれども、これについては7で記載をしています。
 それから、本日の参考資料の4にある部分につきましては、前回の議論を基に赤でこの本日の資料4の中に入れ込んでいます。一部修正等が入っています。
 ということで、私の方で資料の4につきまして、時間もありませんので詳細版を基に進めさせていただきたいと思います。それから、資料4の概要版で、まず科学的意義につきまして、既に御意見があったところなので、これにつきまして今までの到達点がなくて今後何をやるかという大きいくくりが分からないということで、ここら辺については修正が必要だということを理解しております。詳細版につきまして少し説明させていただきたいと思います。
 1と2につきましては特段、新しくしていないので、3の必要経費のところなのですが、前回説明いたしましたが、8,300億円程度ですとか、1兆1,000億円程度というのが何を含んで何を含んでいないのか、どういう条件なのかが分からないということだったので、それについて今、青字で書いてあるような形で条件を書き込んでいます。
 それから続いて4、過去の加速器整備での予算の実例ですが、これはもう本当に丸1、丸2は事実を書き込んだもの。それからこの前、近藤先生にSSCについて御報告いただきましたので、それについて新たにここに書き込んでおります。これにつきまして、一応、新しいので読みましょうか。
「・LHCより少し前に米国で計画された大型加速器施設として、SSCがある。
 ・本計画では、米国の国家事業として開始されたが、以下の理由等に中止に追い込まれた。
 A)建設地の選定が妥当でなかったこと、
 B)設計変更等により巨額の経費がかかることが判明した。
 C)実験成果が誇張されており、反発を招いたこと」。
 続きまして5番、ILCの技術設計報告書で示された実施できる実験については、多少文言を修正しておりますが、これにつきましては既に議論されているなので、飛ばさせていただきます。
 6番、ここは重要かと思います。投資に見合うか判断の留意点ですが、修正あるいは修正ない部分もありますが、一応ちょっと重要かと思いますので、読ませていただきます。
「○日本学術会議も指摘しているILCでの研究の最適な戦略の見通しについて、ILCで期待される成果を最大化する観点から、LHCにおける強い相互作用をするSUSY等の探索結果を踏まえてILCの性能を検討すべき
 ○実施の可否についても、上記の検討を踏まえて判断すべき
 ○5.に掲げられた実験内容について、既存の加速器を用いた実験により探索領域がある程度絞り込まれている場合、現在、ILCの設計書として示されている技術設計報告書で規定されている性能で過不足がないか検証すべき
 ○ILCは巨額の経費を要する計画であることから、我が国の財政状況に鑑み、ILCにかかる経費について我が国がホスト国として負担をすることは限度があり、国際協力による応分の経費分担が必要不可欠
 ○ILC計画の投資額の規模に鑑みると、建設期のみならず運用期においても大型科学プロジェクト予算を含む他分野の予算に影響を及ぼすことは免れない可能性があり、その場合は、本プロジェクトを優先すべきとの他の科学分野コミュニティの理解・協力を得ることを前提とすべき」というような形でまとめております。
 それから7番、LHCの成果を踏まえたILC等のシナリオですが、これは先ほど申しましたように、資料3をベースに記載しておりまして、これについては大分既に議論がありましたので、ここでもう一度読むことはいたしませんけれども、これについてもお気づきの点、御意見等があれば、お伺いしたいと思います。
 このような形で、資料4の方を案としてまとめてみましたけれども、これにつきまして皆さん御意見はいかがでしょうか。
【駒宮委員】  すみません。この投資に見合うかの判断なのですが、これはサイエンティストがやることではないですよね。これはむしろ予算化の妥当性というのは、政府の財政上・政策上の判断であるべき問題ですよね。それをどうして、サイエンスを議論するこの場において、こういうことは大して議論していないのに、こういう文言を書かれるというのは全くおかしいと思います。
【梶田座長】  はい。
【酒井委員】  駒宮さん、それだと実現が難しくなるのではないでしょうか。どうやったら、これを実現できるかというのを考えるときに、バウンダリーコンディションを考えないのだったら、学術会議が出した答申と同じになってしまいます。業部会でILCの勉強をさせていただいて、それでいいのだったら楽でいいですが、私はそうは思いません。
【駒宮委員】  いや、違います。
【酒井委員】  そうですよね。作業部会の役割は、それを超えたことを考えざるを得なく、それが我々のミッションだと思うのです。
【駒宮委員】  いいですよ。でも、このサイエンスがどうかというのが我々の一義的なミッションですよね。我々は投資に見合う判断かどうかというのは、今までそれほど議論してこなかったわけです。
【酒井委員】  はい、だからこれから議論するのでは。
【駒宮委員】  これから議論するって、あと1回しかないですよ。
【酒井委員】  とても駒宮さんの気持ちは分かります。分かるという意味は、高エネルギー物理学のフロンティアが置かれている状態というのは、例えば1900年くらいの量子力学が生まれる前のある種混沌とした状態に似ていて、ILCを推進すればある種の新しいパラダイムが開けていくという、そのわくわく感というのがあるのが分かるということです。
 ただ、やはりそのときに、投資という言い方は余りよくないけれども、掛かる費用が例えば1,000億円だったら、感触が大分違うということです。1,000億円でも、国民1人当たり、お年寄りから若い子まで含めて、1人1,000円の税金を使うわけですね。それで、この計画になると、1人1万円の計画ですね。わくわく感だけで本当に納得してもらえるかということを心配しているわけです。
 それを突っ切ると、本当に潰れることになってしまわないかということです。
【駒宮委員】  突っ切るというのは。
【酒井委員】  駒宮委員が主張しているように、今すぐ決断してやらなきゃいけないとかいうことです。行政当局に判断をゆだねるのは良くなく、そうならないようにする方策を考える方が賢いのではないかと主張しているのです。
【駒宮委員】  もちろん、今すぐとは言っていません。
 やはりこれは非常に重大な日本の科学技術の政策なので、いろいろな日本の過去の科学技術政策と比較して、これがどういう科学的な意味があるとか、そういうことをきちんと議論しない限り、こういう問題はあるのだけれども、それは過去のものと比較してどうかというのを、やはりきちんと議論しないと、できないわけです。
 そういう議論は、あと1回では絶対できません。
【酒井委員】  難しくとも何とか境界条件も考慮した答申案を作るべきではないでしょうか。
【駒宮委員】  いや、ここでやるのは、サイエンティフィックな意義をきちんと議論するということが一義的な議論で……。
【酒井委員】  その先、誰かに委ねるの?
【梶田座長】  では、中野先生。
【中野座長代理】  よろしいですか。間を割って。
 投資に見合うか判断の留意点と言ったときに、ここで、投資に見合うかどうかを我々が判断するわけではないですよね。投資に見合うかどうかを判断するに当たって、どういうことに留意してほしいかということを議論するのだと思うのです。
 この場で科学的意義について話し合うということを、駒宮委員もおっしゃったのですけれども、科学的意義はその留意点の中に必ず入ります。それだけでいいのかということだと思います。それだと、この場で話し合うことができると思うのです。判断する際には、こういうことはきちんと考慮してくださいという、そういう留意点を挙げる。こういうのは重要であると。
【梶田座長】  お願いします。
【清水委員】  その留意点ですけれども、この最後に書いてある「本プロジェクトを優先すべきとの他の科学分野コミュニティの理解・協力を得ることを前提とすべき」というのがありますね。これが一番ポイントだと思うのですけれども、これは規模から言ってそういうことを要求してくるというのは非常に理解できるのですが、この留意点を入れると、多分まとまらないのではないかと私は思います。
 こんなことを、確かに予算規模は大きいけれども、ほかの分野がこぞって、例えばこの間みたいに電気代が上がったり何かしたときに、ほかは全部シャットダウンしてこれを優先しなさいということを言っているわけだけれども、そんなことはとても認めるわけにはいかないと私は思うし、だからこういう留意点をここに入れるというのは、多分、先ほど酒井さんが言ったように、潰れちゃいますよということになるのではないですか。
【酒井委員】  ちょっと待ってください。どっち方向へ行っているか、分からないけれども……。
【中野座長代理】  どっちに行っても潰れるみたいですよ。
【酒井委員】  いや、僕は潰さない方策を考えなければいけないと言っていて、駒宮さんの気持ちは分かるけれども、今、国の予算はゼロサムゲームをやっているようなものなのでそのことも現実的には考えざるを得ないのではないかということです。ILCの建設予算が文科省の予算枠外で純増するのであれば、別の考え方もあると思います。そうでない場合にはILCを推進する近道は、加速器の技術が10倍進んで、1,000億円では無理かもしれないけれども、3,000億円でできるところくらいまで行ったらば、話は随分と変わりますよね。
 やはりそういうバウンダリーコンディションというのはみんな感覚として持っているのではないでしょうか。それを無視して科学的意義があるということだけで、突っ切ったら、潰れてしまわないかというのを心配しているのです。
【駒宮委員】  それはもちろんそうだと思います。だから科学的意義以外の意義もやはり議論しないと、それはできないのです。
 ですから、ここでやっているのは、でも科学的な意義で押し通せと、常に我々は言われているわけです。だからそこのところはやはり相当矛盾があるわけです。
【梶田座長】  横山さん、お願いします。
【横山委員】  ここは科学的な意義の議論の場というふうに私も認識してきたのですが、ただ、今の御議論は私も非常にその通りだなとそれぞれに思うところがございまして、ただ、念のために最初に申し上げておくと、例えば同じくらいの規模だからといって、宇宙ステーションとかITERと比べるのは適当ではないと思います。それぞれに政治的背景が全く違う。
 宇宙ステーションは宇宙という場が国際政治の文脈で活用されてた産物でありますし、ITERについてはエネルギー問題という別の文脈がございます。
 同じ程度の規模だからといって、宇宙ステーション及びイーターと比較するのは不適切だと、私自身は思っています。なので、そういう方向に議論が行かないようにということだけは、最初にお願いしたいと思っています。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 ほかに何か御意見はございますでしょうか。お願いします。
【松本委員】  過去の加速器の整備の予算の実例でSSCの話を聞いたときに、SSCが失敗した理由というのは、ゼロサムゲームになったからという話がすごく大きかった気がするのですけれども、それは今話していることに関係すると思います。
 それがさっきの話にもつながって、ゼロサムゲームになったら、それは他分野の人は賛成しづらいのはもちろんで、そのことが気になりました。
【梶田座長】  ありがとうございます。
【駒宮委員】  すみません。あと非常に細かい点ですが、ここであるこの4番の丸2番、海外の実例というものがありますね。ここでLHC加速器が約5,000億円とありますけれども、これはLHCがLEPトンネルの中に入れた、あの本体だけですよね。多分全部入れたらほとんどILCと同じです。これはリン・エバンスもそういうふうに言っていますので、これはやはりそういうふうに直していただきたいと思います。
【梶田座長】  ありがとうございます。はい。
【松本委員】  海外の実例で、LHCが載っていますけれども、LEPみたいなものはどうだったのでしょうか。LEPの方がどちらかというとILCっぽい形の実例に近いと思いますけれども、精密測定でその次を探るという、で、お金もかなりかかって人数も多かったような……。
【駒宮委員】  LEPはそんなに高くないですね。
【松本委員】  すみません。LEPがむだだったと思う人は誰もいないわけですよね。
【駒宮委員】  そうですね。
【松本委員】  それはまさしくILCの目的とちょっとかぶっているところもあって、LHCにつながって現状になっているわけでしょう。
【駒宮委員】  そうなんです。
【松本委員】  ただ、安いと言われたら……。
【駒宮委員】  すみません。でもLEPの場合は、LEP1の目的というのは、Zのプリサイズメジャメントです。そして、いろいろなゲージ理論がそのエネルギーで働くかを調べました。やはりZというのは標準理論の中の粒子なので、標準理論をそこできちんと検証するということですね。ヒッグスを研究することが一体どういうことかというと、それはビヨンドスタンダードモデル、標準理論を超えるものをそこで見るというので、LEPと比べて随分価値が大きいと思うのです。
【松本委員】  そうです。だから今の方が面白いのですけれども。でも、非常にきちんと量って、次に進むのだというのが同じという意味です。
【駒宮委員】  はい。
【清水委員】  LEPの話は、これは加速器の建設費がどうかという話をしているわけで、だからトンネルを掘ってLEPを作ったわけでしょう。
【駒宮委員】  そうです。
【清水委員】  だからLEPがどれだけかかったかというのを書くのが自然ですよね。という話だと思うのですけれども。
【駒宮委員】  わかっています。
【清水委員】  わかっていますか。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 お願いします。
【棚橋委員】  すみません。投資に見合うかの判断の留意点のところですが、これは何か遅らせる方向のことしか書いていなくて、逆に余り遅れると投資に見合わなくなる可能性が、駒宮さんも先ほど指摘されましたが、あると思いますので、そのあたりの留意点も書いていただくことにした方がいいと思うのですが。
【梶田座長】  分かりました。おっしゃるとおりですね。はい。ありがとうございます。
 ほかに何かございますでしょうか。お願いします。
【清水委員】  先ほど述べたポイントですが、この留意点の幾つか挙げられていますね。これはどなたがここにこういう文章を挙げているのか。ここのコミッティがということなのですか。
【梶田座長】  本日までの間に、座長・座長代理と事務局の間でやり取りを、これについてはしております。
【清水委員】  その中身について、先ほど少し言いましたけれども、留意点のこの最後は、先ほどいろいろ言っていますが、非常にナイーブに考えると、こういうことを言うだろうなというのはありますけれども、こういったことを要求するのがリーズナブルかと言えばリーズナブルかもしれませんけれども、別の観点で見ますと、こういうことを入れると、至るところでこれを超えていくのが大変じゃないかというふうに思っているのです。
 それぞれの分野で、コミュニティでいろいろなことをやっているわけですよね。その人たちが、だからILCもワンノブゼムだと、少なくとも私たちは思っているわけです。にも関わらず、何か問題が起こったときにILCを優先しなさいと、これだけお金を使っているのですからと、こういう留意点ですよね。そういうことが果たしていろいろなコミュニティに受け入れられるかどうかですよね。
 これは私は非常に受け入れ難いと思っていまして、こんなことを書くのであれば、私は少なくとも私の分野からものを言うとすれば、受け入れられませんと。それはそれぞれ学問的な研究というのはいろいろな意味でやっていまして、これだけやればいいということはないのですよね。だから、こういうことを書くのですかということを、書くなら書くとうことで結構ですけれども、そこをお聞きしたいです。
【梶田座長】  分かりました。ありがとうございます。
 ここら辺はいかがいたしましょう。
【酒井委員】  これは前提としてILCプロジェクトというのは文科省が推進するものと考えているのですが、そうではなく日本国としてバウンダリーコンディションを考えずにエクストラで建設費が湧いて出てくるのであれば、もう大いに賛成です。僕はこれを日本国の誇りとしてやるというのに賛成です。でも、それが本当に説得できるかという議論をしないで……。
【駒宮委員】  そうですね。おっしゃるとおりだと思います。それは、でも、あと1回の議論ではなかなか収拾がつかないと思います。
【酒井委員】  そうかもしれません。
【駒宮委員】  すみません。これは先ほどそのSSCの議論があったのですけれども、やはりSSCが潰れたということによって……。いや、これはSSCをリニアコライダーに例えているのではなくて一般論です。サイエンス自体が、もちろんパーティクルフィジクスも含めて、やはりアメリカで落ち込んだのです。そういう非常に厳しい事実があるので、そういうサイエンスをできないような仕組みをここに書いてはいけないと思うのです。
 以上です。
【梶田座長】  ありがとうございます。
【初田委員】  すみません。細かい文言のことなのですけれども、投資に見合うかの判断の留意点の丸の2個目で、「実施の可否についても、上記の検討を踏まえて判断すべき」というのは、この文章の「上記の検討」というのは、その前の文章の検討なのですね。
 何だかこの2番目の文章が、ちょっとどこに何がかかっているのが、よく分からなくて、前の文章に入れてしまってもいいのだったら、入れてしまったらいいと思うのですけれども。文章上のことです。
【梶田座長】  分かりました。私は単に上の検討だと思っていましたけれども、確かに「上記」では分からないですね。はい。
 では、多分この一番いろいろな意見が出ている最後の丸のところ、これはそもそも入れるべきではないという意見もあるし、いや、そんなことをやっていてはそもそも駄目じゃないかという話もありますが、ここら辺はどういたしましょうか。多分なかなかまとまらないような感じかなという、そういう印象しか今はないのですけれども。
 はい、お願いします。
【中家委員】  先ほどから6番って、誰に言っている言葉なのでしょうか。判断は我々でするわけではない、留意点ですよね。この留意点というのは、この報告書を出したときに、誰に向かって言っていることになるのですか。
【中野座長代理】  判断する人です。
【中家委員】  それは文科省というか、政府のことを言っているのですか。
【中野座長代理】  有識者会議。
【中家委員】  有識者会議じゃなくて、その上の更に政府が何かするときに、ここまで、これをやりなさいと。
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室】  事務局から補足させていただきます。
 もともとこの本素粒子・原子核物理作業部会自体が文科省内のタスクフォースの下の有識者会議の下にできているということですので、広くは政府ということで捉えていただいてもかまわないと思いますけれども、一義的には文部科学省に対して御助言、答申、アドバイスを頂くということになると思います。
 冒頭から、第1回、2回の会合から繰り返し事務局からは説明差し上げているところですけれども、本作業部会のミッション自体ですが、ILCはプロポーザル自体が非常に重要な科学的意義があるという主張とともに、巨額の投資が必要となるということで、どれくらいその投資を正当化できるだけの科学的意義があるのかということを御議論いただくと。
 冒頭から御議論がありましたけれども、幾らだったらオーケーとか、幾らだったら駄目とか、そういうことをプリサイスに決めていただくということは現実的ではないということだと思います。ですので、実際に、行政府が最後に判断をするのだということになりますけれども、その際にどういうふうに判断をしていったらいいのか、科学的意義を中心に、これはもう制限はございません。どのような中身でもかまわないので、留意すべきであれば、こういうことに留意すべき、この金額でやれということであれば、極論で言えば、できないとは思いますけれども、それでも構わないと思います。
 そういう意味では、そこは議論に制限を掛けないで、我々が判断をする際にどういうふうに判断をしていったらいいかについて、ここにお集まりの委員の方々でしっかり御議論していただきたいというのが本部会設置の意義でございますので、よろしく重ねてお願い申し上げます。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 中家先生、よろしいですか。
【中家委員】  そのときに、僕は下から2つ目とかはよく分からないなと思って見ていたのですけれども、これはその留意をする判断する組織が、さっきは国か何か存在したとき、国として負担することには限度がありということで、そこで限度が何か出てくるわけですよね。その判断する人たちに対しては限度というものが出てきて、更に国際協力による応分の経費分担が必要不可欠だから、今度はそのあれが始まるというと、もしこれを書いて行政が判断するというときには、今のイーターみたいなことがスタートするということですか。昔に近いようなことが、これに留意しなさいと書いていて、それがそのまま判断の方に行けば、さっきの限度があって、国際負担をどうするかということが決まらない限りは、このプロジェクトというのはもう絶対に動かないものという縛りぐらいになっているのかという。これが出てしまったら。そういうのを駒宮さんは気にしていたりするのではないでしょうか。
【駒宮委員】  それはそうだと思います。それはそういうのが決まらない限り、できないと思います。
 でも、それをやるのを、これがまとまらないからといって、ずっとサボタージュするのはおかしいということを私は言っているのです。
【梶田座長】  よろしいですか。
 駒宮先生がおっしゃるように、多分この留意点についても、あと1回の議論でまとまるかというのは、なかなか。特に最後のポイントは難しそうなのですけれども。
 これはどうでしょうか。じゃあ、中野先生、お願いします。
【中野座長代理】  最後のポイントなのですが、やはり今、2つ意見が出ていて、ILCが走るからといって、他の分野に影響が全くないということはあり得ないと思いますが、過度の影響があることは好ましくないという意見と、それからそういう可能性があるときに、そういうことを全然考えずにILCを進めることは判断できないので、条件としてこういうことを考えるべきであろうという、そういう2つのことが出ているのですけれども、例えば文章ですが、「及ぼすことは望ましくないが免れない可能性があり」というふうに変えたら、どちらとも少しは……。
【梶田座長】  同じ。
【中野座長代理】  同じですか。駄目ですか。
 結局、この短い時間にどこまで想像力を働かせても、他分野にどれだけ影響があるかとか、そういうことは考え切れるものではないし、その場合、それはいいか、悪いかという判断もできないのだけれども、そういうことがあり得る。で、そういうことは誰も望んでいない。免れ得ないときには、そういう免れ得ない、そのことをILCを進めている人たちだけではなくて周りの分野も含めて判断に加わるべきであるということを、留意点として入れることは駄目でしょうか。
【駒宮委員】  すみません。これはやはり最終的には政府に委ねられるわけですよね。それで、今の完全にゼロサムゲームでほかのところからお金をむしり取っても作るという形では、多分できないと思います。やはりアディショナルなお金がきちんとないと、ある程度アディショナルなお金がないとできないと思うのです。だから、そこは政府の判断になるわけです。
【中野座長代理】  そこに対して一言、他の分野に対する影響は少ない方が望ましいということをきちんと書き込んだらと。でも、免れ得ない可能性が……。
【駒宮委員】  それだったら、これにはアディショナルのお金が必要であるということをもっと明確に書くべきだと思います。だって、学術会議ではやはり最終的にアディショナルなお金が必要だということをきちんと書いたらどうかという議論にもなったわけです。
 だから、それを考えますと、やはりILCは今の、もちろんぎゅっとできるところはたくさんあると私は思いますが、私が文部科学大臣だったらぎゅっとやりますが、そうではないので。
【酒井委員】  駒宮さん、文科省の中で議論していたら駄目だけど。
【駒宮委員】  もちろんそうだと思います。おっしゃるとおりです。だから、そういう意味でアディショナルなお金というのがないと、できないと思うのです。それでないと完全なゼロサムゲームになります。
 だからそういう点もやはりここに書くべきだと私は思います。
【酒井委員】  何か駒宮さんは判断を先送りするのを非常におそれているようですが、技術的発展は期待できるのではないでしょうか。加速器が本当に10倍の性能が出たら建設費が安くなるし、事情は変わりますよね。だからそういうことを盛り込んだ方がいいのではないでしょうか。R&Dを日本国でやるかどうかは知りませんが、その方が何か健全なような気がします。
【駒宮委員】  多分それはこのILCというプロジェクトが潰れたら考える話ですね。今、やるというのは、今どうしてやらなければいけないかというのは、やはりコミュニティがLHCだけではもたないからやるわけです。もたないからだけではなくて、ヒッグスの発見によって、やはりそのサイエンティフィックに、この次のスタンダードモデルを超えるような物理というのが見えてきつつあるわけです。そういう非常に重要な時期に、やはりやるべきで。
【酒井委員】  駒宮さん、コミュニティがもたないとかいうのは通じないのでは。自分の分野の事情を説明しても、その程度のことなら潰れたらいいと言われかねません。
【駒宮委員】  ですので、サイエンティフィックなことを付け加えたのです。
 でも、そのハイエナジーフィジックスのコミュニティが潰れるというのは、かなりサイエンス全体に影響を及ぼすんです。要するに我々の分野というのは、はっきり言って、いろいろなところに人材を派遣しているんです。そういうこともございますので、パーティクルフィジックスの分野が本当になくなってしまったら、サイエンス自体がかなりまずいことになると思います。
【梶田座長】  はい、駒宮先生の方から今ありました、アディショナルな資金が必要である旨、もっとエクスプリシットに書いた方がいいのではないかという御意見ですけれども、いかがでしょう。
 はい。
【岡村委員】  まずは、今この項目自身について入れるべき、入れないべきみたいな話もありましたので、これを入れるか入れないかというのを、今日決めて、もし入れるということになったら、この表現をどうするかだけ重点的に次回議論するという進め方ではうまくいかないですか。
【梶田座長】  はい、分かりました。では、そもそもこの5番目の丸を完全に消してしまうかどうか。お願いします。
【初田委員】  投資に見合うという観点からコミュニティの理解を得るということを前提をすべきという、そういうものもありますけれども、それ以前の問題として、サイエンティフィックな面でコミュニティの理解を得ていないと、もう始まらない。
 それはもちろんここの項目ではないのですけれども、何かやはりそれは強調しても強調し過ぎない。なので、ここでなくても、ほかでもいいから、何かそういうことは入れておいた方がいいのかなと1つ思うのと、それからここの部分で言うと、「本プロジェクトを優先すべきとの」というような強いことを書かなければ、つまり「及ぼすこと」は「及ぼす可能性があり」、「その場合は、他の科学分野コミュニティの理解・協力を得ることが必要である」とか何か、これだとめちゃくちゃ強いから、これは多分誰も賛成しないというのは酒井さんと同じ意見なので。
 ちょっと小手先かもしれませんが、文言を少し修正してでも載せた方がいいと僕は思います。
【梶田座長】  分かりました。では岡村先生、とりあえずこれを残す方向だけれども、しっかり文言を、今日の御意見を踏まえて調整して、最終的に次回御議論いただき、それで最後にもう一度調整して、報告というような方向でよろしいでしょうか。
【駒宮委員】  すみません。サイエンスの投資に見合う価値というのをここに入れろとおっしゃいましたが、それはやはりそのサイエンスの価値というのは、我々自身でそれはなかなか判断できないですよね。
 だから何か行政から学術的な価値とお金を変換するような、そういう手法であるとか何とかを提示していただかない限り、我々はそれはできないと思います。だから、それをサイエンティストでやれというのは、なかなか難しい話です。
【酒井委員】  いや、さっきも言ったけれども、なかなかつらいところですね。トリスタンのときには、トップクォークを見つけるという分かりやすい標語がありました。結果としては残念ながら見つけられなかったけれども、一言で言える標語があると、説明が大分楽ですね。
 どうも部会での議論を聞いて分かったことは、ILCはそうではなくて、精密測定をすることによって、いろいろなリフレクションが分かるのだということ。それでは説明がなかなかつらくて、そのときに、僕は今学術的意義を含めたバウンダリーコンディションを考えて本当にそれが今有効なのかを考える必要があると思います。
【駒宮委員】  分かりません。
【初田委員】  すみません。僕が言ったことについて駒宮さんに誤解があるのかもしれないと思ったのですけれども、科学としての意義を他の科学コミュニティに理解してもらうということは、それ自身が重要なことで、それはここに入れるべきものではなく、ほかの項目に入れるか、何かの形できちんと委員会として理解しておくべきことであるという意味で言ったのです。
 一方で、バジェットのことに関しても理解をしてもらうという、2つ違う側面があって、それは必ずしも同じものではないという意味で言ったのです。
【梶田座長】  横山さん、お願いします。
【横山委員】  委員間の質問になって大変恐縮ですが、岡村先生に是非参考としてお伺いしたいのですが、例えば天文分野は、近年プロジェクトの数が大分多くなってきたという御指摘であったかと思います。すばるができた後にALMAが始まって、次はTMTが始まると。そういう指摘を受けたと、私の印象からすると、こういう問題は比較的早くその整理を始めたようにお見受けしておりまして、すばるを少し縮小しながらTMTの方に人を送り出しているように見受けているのですが、そのあたりの天文学コミュニティの中での合意形成というのは、どのように行われていらっしゃるのでしょうか。
【岡村委員】  天文学コミュニティの合意形成?
【横山委員】  研究者間での合意形成といいますか。
【岡村委員】  それは私も全部詳細を知っているわけではないのですが、何となく一定の共通認識が自然にできて行くところがあると思っています。例えば、すばるがあれだけやって十何年かたって、また新しい大計画を出すと、必ずそれは「何でまたそうなの」と言われます。それでやはりどこかを縮小しなければいけないということは基本的に我々コミュニティもそう思っています。だからすばるの予算やマンパワーが若干減るのは仕方がないみたいな、そういう共通認識が何となしにできていきます。みんなが議論して「いや、すばるは縮小するから、こっちをやるよ」とか、合意を形成する委員会を作ってやっているわけではありませんし、アルマの場合には、だから野辺山の予算とマンパワーは少し削られて、運用を考えなければいけないねというふうにはなっていっていますが、委員会を作ってこれをするとかいうふうなことは、余りやっていないと思います。コミュニティの中で何となしにそういう話をしているうちに、みんなしようがないなという感じになっていっているのかなという印象です。
【横山委員】  ありがとうございます。規模感は全然違うかもしれませんが、参考まで得られました。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 このポイントだけでなくてもいいのですけれども、ほかにこの報告案全体を通して何かお気づきになれば。
 はい、お願いします。
【山内委員】  全体では気になるところへ戻ってしまうのですけれども、ほかのコミュニティの方と話しますと、ISCに関しては警戒感を持っているという方が実はかなりいると思うのです。それだけではなくて、この委員会にしても、近隣分野の人たちだけが集まって議論して、それでいいのですかという意見も耳にします。
 ですから、我々としても、決して近い分野の人間だけで結論を出すということではなくて、この、ほかの科学分野コミュニティの理解・協力を得てやっていくべきなのだというところを、きちんとどこかに書いておくというのは、警戒感に対する緩和するということでも非常に重要なことだろうと思います。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 ほかに何か全体を通して御意見はございますでしょうか。
 よろしいですか。
【駒宮委員】  すみません。この6番のところは非常に重要なので、やはりもう少しきちんともんでやった方がよろしいと思います。
【梶田座長】  分かりました。今日いろいろと御意見を頂いたので、次回、可能な限りそれを反映したような案を持ってきたいとは思っております。
【中野座長代理】  多分この下から2番目の「経費分担が必要不可欠」と我々が言ってしまうから何か誰に向かって言っているか、分からない。例えばそれは何らかの状況で、財政状況はもう根本的に改善して、我々がこういうことを全く考えることなくお金がおりてくるのだったら、今の時点で我々が必要不可欠と言う必要はないわけです。
 だから、やはり表現の問題がかなり大きいかなという感じはします。
【梶田座長】  はい、分かりました。
 相当意見が出ましたけれども、では本日の意見を踏まえまして、この報告案を次回持ってまいりたいと思います。特にこの6番の「投資に見合うかの判断の留意点」については本日相当意見を頂きましたので、それを踏まえて大分書き直した形で持ってくるかと思いますので、次回、報告を出す前のほぼ最後の議論となるかと思いますけれども、そのときよろしくお願いいたします。
【駒宮委員】  ここは、事前にやはり文章をある程度作っていただいて、今は2月なので、3月の初めくらい、第1週か2週くらいまでには案を出していただいて、それをもむようにしないと、次の部会で一発で決めろと言ってもなかなか大変ですよ。
【梶田座長】  分かりました。では3月の1週から2週頃には出せるように準備したいと思います。ありがとうございます。
 それで、これにつきまして、一応3月の第1週か第2週頃に、次の案をお配りできるようにいたしますが、もしその前に何かお気づきの点がありましたら、事務局の方まで連絡いただければと思います。
 では、これで本日予定しました議題の方を終了いたしますけれども、最後に「その他」ということで、今後の部会につきまして事務局の方から説明をお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  資料5にスケジュールをお配りしておりますが、次回を3月30日の9時半から文部科学省で行いたいと思っております。
 内容としては、今、座長からお話があったとおり、これまでの議論の取りまとめという形で行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 それで、度々言ってきたとおりですけれども、来月の3月30日に本日の引き続きの議論を行い、有識者会議への報告の取りまとめを行いたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議題は終了となります。最後に事務局の方から連絡をお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  本日の議事録につきましては、後日、出席委員の皆様にメールでお送りしたいと思いますので、御確認をお願いいたします。
 それから、本日の議事録についてはホームページに公表したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 会議資料については、必要であればお送りいたしますので、その場に置いていただければと思います。
 以上でございます。
【岡村委員】  梶田さん、すみません。1つ忘れていました。
 国立天文台が運用している歴史のある観測所を閉鎖するとか、あるいは観測所の機能を大きく変えるというときは、コミュニティの代表も参加した天文台の委員会で議論して、その方針は決めています。しかし、予算が少しずつ減っていくようなときは何となしにしようがないというようなレベルの話で済ませてきたような気がしています。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 では、これで本日の会合を終了いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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