国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議素粒子原子核物理作業部会(第6回) 議事録

1.日時

平成27年1月8日(木曜日)9時30分~12時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 素粒子原子核物理作業部会(第5回)の議事録について
  2. 有識者会議での指摘事項について
  3. 過去に検討がなされた大型計画について
  4. 投資に見合う科学的意義について
  5. 今後の進め方について

4.出席者

委員

梶田座長、中野座長代理、岡村委員、小磯委員、駒宮委員、酒井委員、棚橋委員、初田委員、松本委員、山内委員、山中委員、横山委員

文部科学省

土屋文部科学審議官、常盤研究振興局長、安藤大臣官房審議官(研究振興局担当)、松尾振興企画課長、行松基礎研究振興課長、嶋崎素粒子・原子核研究推進室長、成相加速器科学専門官

オブザーバー

高エネルギー加速器研究機構近藤名誉教授

5.議事録

【梶田座長】  それでは、国際リニアコライダーに関する有識者会議、素粒子原子核物理作業部会の第6回を開会いたします。
 本日は、御多忙のところ、お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
 まず、本日の出席状況につきまして、事務局の方から報告をお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  それでは、本日の出席状況についてお知らせいたします。清水委員、徳宿委員、中家委員におかれましては、所用により御欠席でございます。
 それから、酒井先生は、電車の遅延によって遅れて出席されると伺っております。
 なお、出席は11名でございまして、作業部会の定足数は8名ですので、会議は有効に成立しております。
 また、本日は、昨年11月に開催されました有識者会議において、過去に検討がなされた大型計画の事例も考慮するよう意見がございましたことから、かつて米国で検討がなされたSSC計画について御説明いただくために、当時SSC計画の日本グループの中心におられた近藤敬比古KEK名誉教授に御出席いただいております。
 続きまして、文部科学省から前回以降人事異動がございましたので、紹介したいと思います。11月25日付で研究振興局担当の大臣官房審議官の山脇が国際統括官に異動し、その後任として、研究振興課長の安藤が就任いたしました。
【安藤大臣官房審議官】  安藤でございます。引き続きよろしくお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  その同日付で振興企画課長の安藤の後任として、環境エネルギー課長の松尾が就任しております。
【松尾振興企画課長】  松尾でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【成相加速器科学専門官】  以上でございます。
【梶田座長】  それでは、続きまして、事務局より本日の配付資料の確認をお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  本日の資料について御確認いただきたいと思います。資料1が、前回、第5回の議事録(案)でございます。資料2が当部会の今後のスケジュールでございます。資料3「第2回有識者会議での指摘事項」、資料4「SSC計画の経緯と中止について」、資料5「投資に見合う科学的意義について」のたたき台でございます。
 また、参考資料としまして、資料1が前回の有識者会議に配付しました「素粒子原子核物理作業部会進捗報告」、参考資料の2が、技術設計報告書(TDR)検証作業部会の進捗報告を配付しております。
 このほか、机上には、参考資料としまして、青いドッチファイルで前回同様の11点の資料をお配りしております。
 以上でございます。
【梶田座長】  ありがとうございます。不足等、ないでしょうか。
 それでは、議事に入りたいと思います。まず議題1、「素粒子原子核物理作業部会(第5回)の議事録について」となっておりますけれど、これについてお諮りしたいと思います。既に事務局の方から事前に確認依頼が行っていると思いますが、もし何かこの場で意見等あれば御発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。
 よろしいですか。
 では、これにつきましては、資料1のとおりで決定とさせていただきます。
 続きまして、議題2で、「有識者会議における指摘事項について」ということで、これについて少し議論したいと思います。昨年の11月に開催されましたILCに関する有識者会議において、私の方から当部会での進捗状況の報告をいたしました。その際に、数名の委員の方からILCの意義があることは理解されたが、様々な課題があるとの指摘を頂いております。それらの事項につきまして、本日御紹介するとともに、各委員の方々から御意見を頂きたいと思います。これを踏まえて後ほど議論をしたいと思います。それを中間報告に盛り込んでいきたいと思っております。
 それでは、資料3に基づきまして、私から前回の有識者会議であった御意見を紹介させていただきたいと思います。まず、一番我々に関係あります素粒子原子核作業部会の報告に関する意見ですけれども、読み上げるという形にさせていただきたいと思います。
 最初の丸ですが、観山委員から、専門外の人、ましてや一般の国民から見た場合、どのような場合において、何が言えるのかという点について全く理解できないものとなっている。時間軸の観点も踏まえ、どのような場合にどうするべきかという点について、もっと分かりやすく、端的に示す努力をしてもらいたい。
 それから、2番目、平野座長からですけれども、ILC計画がどういう意味を持つかを国民に理解してもらうことが重要であり、その点に留意して更に整理を行ってほしい。
 3番目、横山委員ですが、端的な説明によって、逆に不正確に伝わるおそれがある。ILCも、ヒッグス粒子の発見の内容とともに、その本質が何かということについて正しく理解することに留意して議論することが必要である。
 4番目、また観山委員ですが、ILCにオリンピックより大規模な経費がかかるとすれば、一般国民によってILCの科学的意義が理解され、支持されることが必要である。
 5番目、これは神余委員ですが、ILCにはLHCから研究者が移ってくるのか、また、各国の賛同が得られないとどうなるのか。物理学的に意義のある計画として進めるべきとの考えと、国際協力が得られないというギャップをとのように埋めるのか今後とも検討すべき。
 続いて、森委員、予算面での他の分野も含めた考えの整理が必要で、他分野への影響等を勘案した戦略が必要。
 続いて横山委員、1980年代の米国SSC計画や、独・米で検討されたILCが中止となった理由を整理して示していただきたい。
 それから、次の裏のページに行きますと、これはTDRの検証作業部会の報告に対する意見ですけれども、一応紹介させていただきたいと思います。
 京藤委員から、50キロメートル、ただしILCの計画は31キロですけれども、もの加速器には大量のヘリウムを用いる必要がある。ヘリウムを消費する構造である場合、投機の対象となり、実験を進めることで、ヘリウムの高騰につながり、産業界に大きな影響を与えるのではないかと。
 同じく京藤委員から、超伝導加速空洞部分は、金属製材料を用いて直線30キロ分作る計画だが、途中で止まってしまう確率も考慮に入れる必要がある。これをコントロールするには民間を活用するのが良い。これが成功すれば民間に大きな影響を与える。
 3番目、森委員。コストの見積りに用いられた購買力平価は、国内の取引には優位だが、海外との取引には実勢を反映しないおそれがある。例えば、中国は実勢価格との乖離が生じている。実際のキャッシュフローを押さえないといけない。
 4番目、観山委員。巨額の施設計画であり、国際協力でないとできない。技術的にも運営費をどうするか。海外の人材を入れる際に注意が必要。コンティンジェンシーも高く見ておく必要がある。研究所のマネジメントに関する部分などは、研究所のスタッフでは難しく、民間の方に任せた方がよい。国際機関の長となると、学術分野のリードだけでなく、組織マネジメントが大きな業務となる。
 更に次のページに行きまして、その他の意見がこのページにまとめられておりますので、紹介させていただきます。
 平野座長から、両作業部会の議論については、今年度に中間まとめを行い、本有識者会議で一度整理を行いたい。国際協力の観点も非常に重要である。
 伊地知委員から、ILCが持つ新機能がどのように社会に還元できるかを調査すべき。
 3番目、京藤委員。巨大化する傾向のある科学施設においては、計画そのものだけでなく、多面的にも使われるという意義をもとに計画を深めるしっかりした戦略が必要。
 4番目、大町委員、日本でILC計画に取り組むなら、地震の被害を考慮することが必要。その前提として、施設がどのようなものか、また、東日本大震災での影響がどのようであったかについても知りたいので、部会で一度KEK等に調査に行くことを提案したい。
 続いて観山委員、国際的組織が日本にできるインパクトもも広い意味での社会的インパクトとなるので、その点も考慮すべき。
 最後、神余委員、予算について、日本経済の長期見通しを考えないといけない。二、三十年後の海外の動向も押さえて、判断することが重要。経済関係の長期予想のデータはあるので、整理してほしい。
 全部ではありませんけれども、このような意見が出されております。
 それでは、このような意見が出されているということですが、これにつきまして、本作業部会の皆さんの御意見をお伺いしたいと思います、いかがでしょうか。
 では、前回も御発言いただいた横山先生から何か御意見等、口火を切るということでお願いいたします。
【横山委員】  明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしく御指導をお願いいたします。
 私は、物理の内容に関しましては本当不勉強で、立ち入ったこと、よく理解しないままで大変恐縮でございますが、先日の有識者会議では、今、梶田先生からも御説明がございましたように、国民に分かりやすく説明せよという声を非常に多く頂いた印象を持っております。先生方がこの場できちんとまとめてくださったことを、有識者会議の先生方、ひいては多くの皆様にきちんと分かっていただくような資料作成というのが多分今後非常に重要になってくるのかなと拝見しておりまして、委員の先生方から端的に説明せよというのは、例えば私の印象では、第2の地球を見つけようとか、それくらい単純化されたものを期待されていらっしゃると思うんですけれども、なかなか素粒子に関してはそうしたところが難しいのかなという印象を持っております。私も是非お手伝いしていきたいと思いますが、その点、強く御指摘いただいていることが印象に残っております。
 すいません。感想になってしまいました。よろしくお願い申し上げます。
【梶田座長】  ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。お願いします。
【初田委員】  当部会についてではないのですが、TDR検証作業部会の2つ目の途中で止まってしまう確率も考慮する必要があり、民間を活用するのが良いというのは、何を意味しているのか説明いただけますか。
【梶田座長】  私、実は、説明ができるほど、ここの部分のコメントについて理解できていないのですけれども。
【小磯委員】  これは、建設が途中で止まってしまうということですか。
【梶田座長】  という、御趣旨だったのではないかとは思うのですけど。
【初田委員】  SSCみたいなこと?
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室長】  事務局から失礼いたします。恐らく京藤委員から御指摘があったのは、建設自体が止まるということではなくて、オペレーションの最中に、ビーム自体が途中で不具合があった場合に、最後まで届かない、衝突点まで行かないようなこともあるので、きちっとしないといけないという御指摘だったかと記憶をしてございます。
【小磯委員】  ありがとうございます。
【駒宮委員】  すいません。それをコントロールするのが民間の活力活用というのは、もっと分からないですね。
【初田委員】  先ほど第2の地球という話がありましたけれども、説明された資料では、新粒子の発見というようなことは端的に書かれていたように思うのです。説明資料の科学的意義でヒッグスの詳細解明とか、新粒子の探索、それではまだ不十分で、理解いただけないということですか。
【梶田座長】  恐らく、端的に申しまして、最初の観山委員の意見を見ていただくと良いのですが、1つには時間軸の観点が今のところないと。どういうようなタイミングで、やるか、やらないかの決定をするのかという、そういうような議論が今のところ全くなされていなくて、これが一番、1つ重要な観点だという、そういうふうに理解しました。
【中野座長代理】  分からないと言っている方の頭の中、探るわけにいかないので、これも印象でしかないのですが、実際、私は素粒子物理の専門家ではないので、ILCの計画についてここで勉強させていただいたような形ですけれども、この作業部会に出て非常によく分かった。非常によく分かって、まとめを見ると、忘れていたことも思い出すぐらいきちっとまとめられている。ただ、これをもっと短い時間で分かろうとすると、結構大変。そのギャップじゃないかなと思います。物理の専門家でなくても、普通にこういうことが分かりたいという非常に強い意欲があって、時間をかけたら分かるだけの内容には既になっているのではないかと。それをもう少し分かった気になるレベルを下げる努力をきちんとしなさいということではないかと思うのですが、違うのでしょうか。
【梶田座長】  お願いします。
【山内委員】  この有識者会議の議論をお聞きしまして、私も大変思うところあったのですが、前回までに我々がまとめた数ページのものというのは、あれはあれで非常に重要な到達点だと思います。ただ、この作業部会は、大多数の委員の方が、当該分野の専門家の方であったということで、あれはあれで重要なのですが、完全に一般の方がお読みになるということを仮定していなかったように思います。多少独りよがりになってしまったところがあったのかなという思いがいたします。
 例えばヒッグス粒子というのが新しく見つかって、これをしっかり調べるのは重要だというのは、これは言わずもがなですよねというのは大前提として我々にはあるわけですけれども、一般の方にはそういうことはないわけですよね。そういうことも含めて、もう少し一般の方が分かる、ああ、なるほど、そうですねと言ってもらえるようなものというのは、あれとは別にまとめる必要があるのかなと痛感いたしました。
【梶田座長】  ありがとうございます。ほか、何か御意見その他ございますでしょうか。お願いします。
【中野座長代理】  時間軸についていうと、この部会でも結構時間をかけて議論をしていて、特にLHCでエネルギーが上がったときにどうなるかによって状況が変わってくるということに関しては、かなり丁寧に話をして、そのことについて、合意とまではいかないけれども、大体この部会の中ではどういうことが起こるだろうなということは、共通認識にまでなっていたと思います。それがやはり有識者会議への資料という形でまとめて出すと、全く伝わらないというところが問題で。
【梶田座長】  ただ、これはまとめた我々がいけないのですが、多分そこら辺はエクスプリシトに書かれていないので、もう少しエクスプリシトに書いていかないといけないのかなというのは、僕が感じた印象です。
【中野座長代理】  気になるのは、エクスプリシトに書くことによって、不正確になる部分も出てくるので、本当はもう少し言葉を尽くさないといけないところが乱暴になってしまったり、大ざっぱに切ってしまうというところが出てくるので、そこを勇気を持ってやるかどうかというのもあると思います。そういうところは危惧されているのではないですか。できれば避けたいとか。
【梶田座長】  お願いします。
【岡村委員】  私はこの意見が出た有識者会議の場にいて、こちらの作業部会にもほとんど出ています。今まで出た意見とほとんど同じなのですが、この作業部会に出ていて、専門家の方の間でも最初のころはいろいろ認識が違っていたのが、すごい議論の積み重ねで、一応専門家と言われる方の間ではクリアというか、コヒーレントな見方が作られたような気がしていて、それはとても重要だったと思っています。しかし、この報告資料を見ると、確かにもう一歩必要な気がします。観山さんからオリンピックの話がありましたが、これだけの予算の計画を進めるには、さあ、これをやろうって国民全員が招致活動に入るというようなことはないにしても、その一歩手前くらいにはならないと難しいという意見だったと思います。非常に広い分野の人たち、国民一般の人もいるし、生物、医学など他の分野の方々が、これをなるほど、やろうという形にならないと難しいと私も思います。結局この作業部会で非常にいい部会内での認識はできたのですが、これをその次のステップにどうやっていくのかということが課題なのかなと思います。それで、横山委員のコメントにもありましたが、そうしようとすると、どんどん不正確になったり、やさしくやり過ぎて、「それ、おかしいじゃないか」というふうに専門家の人は思われるかもしれない。そこら辺のバランスをいかにうまく取って、ひどくおかしくはないけど、みんなには訴えるという、そういう形のものを作るというのが今後の課題なのかなという印象を持っています。
【梶田座長】  ありがとうございます。ほかに何か。お願いします。
【初田委員】  コヒーレントなピクチャーが出てきたというのは賛成ですけれども、分かりやすくて、さあ、やるべきかどうかというのは、実は必ずしもコンセンサスか得られているとは限らないと思います。科学的観点ではきちっと共通認識があっても、そこから先は実はいろいろな要素が入ってきて、本当にさあやろうと思うか、思わないかというのは、多分この委員会の中でも意見が割れるところだと思うので、いきなりそういうことが書けるかと言われたら、書けないような気がします。それは、これからの課題だと思います。
【梶田座長】  分かりました。ありがとうございます。
【駒宮委員】  この作業部会としては、やはりサイエンスに重点を置いて、それを比較的きちんと専門的な観点からまとめるという作業をやってきたわけですね。それに関しては、比較的コヒーレントなピクチャーがきちんと最終的には得られたと私は思っています。これをどのように国民に分かるようにきちんと説明するかというところですが、やはり我々サイエンティストの間で話している分にはよろしいのですが、これを一般の人に向けて話すときは、相当話を簡単にしないといけない。それをどのように簡単にしたらいいかというのは、我々の力だけではなくて、広報に長けた横山先生とか、そういう方の力を借りないとなかなか難しいです。そういう人も交えて、今後このリニアコライダーの進むべき方向とプロジェクトの全貌をきちんと国民に分かるように説明するというのがこの次の段階だと思います。それには、もちろんこの作業部会というのは、サイエンスが主で、サイエンスでやってきましたが、そのほかのいろんな要素があるわけですよね。やはりそのほかの要素もきちんと勘案して、それとサイエンスを併せて全体像をきちんと把握するということが非常に重要だと思います。文科省の方で、例えば経済的な効果などの調査をやられていると思うのですが、それらをまとめて、このプロジェクトが日本にとって誘致したらいいかということは、やはりサイエンスだけではなくて、それらを全部含めて最終的には判断するということじゃないかと思います。
 以上です。
【梶田座長】  ありがとうございました。
【土屋文部科学審議官】  文科省の立場から申し上げさせていただきたいと思うのですが、先ほど中野先生が御指摘された、不明確というか、明確になっていない部分のこととの関連があって、今、駒宮先生がおっしゃったこと、国民にどう伝えるか、分かりやすく伝えるかといったところなのですが、不明確なものを伝える必要は全然なくて、今、文部科学省としてこの会議にお願いしたいのは、この時点で分かることは何であるか。不明確にせざるを得ないのではなくて、まだ分からないものであれば、それはどういう研究が行われれば、その結果として何が測定される、何が観測されれば、そこのところが明確になる。したがって、今の時点ではまだ分からないといったようなことをきちっと整理していただくことが必要ではないかと。
 それで、この投資について行うべきかどうかというのが最後の判断になるわけですが、結局、事業の意義が分かるかどうかということをもっと還元すれば、投資に見合う意義が得られるのかどうなのか、ここになってくるわけですから、それをクリアに是非科学的な側面で御議論いただければと思います。
 今、駒宮先生がおっしゃったような総合的な判断というのは、最後、文部科学省が行政責任として総合的に判断はいたします。もちろんこの会議でも、いろんな観点から御議論いただくというのは、我々、これをしっかり受けとめて、検討していこうと思っているのですが、先ほど申し上げた、繰り返しで恐縮ですが、今の時点で分からないことも含めて、えいやっと判断するのではなくて、分からないのだったら、そこはどういう段取りで明確化するかといったようなことをこの会議の結論にしていただければと思います。
【梶田座長】  ありがとうございます。
【中野座長代理】  先ほどの不明確という言葉がもっと不明確だったようなのですが、不明確なところをえいやっという意味でなくて、今御指摘のあった、段階を踏んで、いろんな進展の状況に応じていろんなオプションがあるということを伝える際にも、今のままでは分かりにくくて、それを分かりやすくするときに、ちょっと勇気を持って書き切ってしまわないと一般の方には伝わらない部分があるのではないかということを申したかったんです。それもなかなかの我々の力量では簡単にできることではないので、本当に横山さんのお知恵を借りてやっていかないといけないかなと。
【梶田座長】  山中先生、お願いします。
【山中委員】  これを通して見えてくるのは、オリンピックの話とか、他分野への影響とか、ほかのところもいろいろありますが、要は金がかかり過ぎるのではないかという、そういう色で埋められているように感じます。それに我々がどう答えられるのか。これは本当に科学の意義で攻めるしかないのでしょうか、という質問です。
【梶田座長】  ありがとうございます。この質問に対して、何かお考えはありますか。
【土屋文部科学審議官】  基本的には意義があることは大前提だと思うのですが、最後の判断は、日本の戦略というのが重要な要素になってくると思います。我が国の科学技術、直接的影響、あるいは間接的な影響も含めて、更には日本のブランド力みたいなことまで含めて、最後は日本の戦略として決定する事項ではないかと考えています。
【梶田座長】  ありがとうございます。今の山中先生の質問といいますか、御意見といいますか、これに関しての意見でも結構かと思うのですが、ほかに委員の先生から。では、初田先生。
【初田委員】  何が起こった場合、何をやるべきかというのは、5ページのところにある意味でしっかりと議論して書いてあるので、それは何も議論していなかったわけではなくて、十分議論したことですので、それに時間軸を入れてもう少し分かりやすくするというだけのことだと僕は思います。
【梶田座長】  多分そうだと思います。これには少なくとも何が起こりそうかというのはいつごろかということは書かれていないので、その辺は専門家として、これがいつごろ起こりそうかということは、ある程度このころだということは書かなければいけないのではないかと思っています。
【中野座長代理】  LHCの成果を踏まえたILC等のシナリオ。
【梶田座長】  参考資料1の、途中までパワーポイントで、4ページ目からワードファイルになっている、それの5ページ目ですね。
【中野座長代理】  この資料があると、もっと具体的に言いやすい。例えば「LHCで新粒子(超対称性粒子や複合ヒッグスと思われる粒子)」という、この言葉自体が全然分からないんですね。これはどれぐらいのインパクトかというのは、委員の方々の中には多分心の中にあって、これぐらいというのがあるのですが、それがこれだけでは全然多分通じない。一体新粒子ってそんなに大事なの、と言われたとき、大事ですとは言えるけど、どれぐらい大事と言われたら、これくらいというのはなかなか難しい。そういうことじゃないかなと思うのです。
 例えばエレクトロン、ミューオンが見つかったとき、次にタウが見つかったというインパクトとこの新粒子はどちらが大きいかとか、では、初めて中性子が見つかったことに比べて、この新粒子はどれぐらいインパクトがあるのかとか、それが全く通じないというか、全く分からない。一体これは何の役割をする粒子なのかということも、これだけでは分からない。
【梶田座長】  そうですね。お願いします。
【山中委員】  例えば新粒子といったときに、結局動物で新しい魚が見つかりましたとか、そういうのと同じレベルと思われるかもしれないというわけですね。
【中野座長代理】  そういうことです。
【山中委員】  だから、本当にどういう物理に基づいた、全く物理の世界だよという、そういうことがしっかりと分かるようになっていないと、新粒子といってもどこかに新しい虫とかと同じように思われたらおしまいですよね。
【中野座長代理】  アマゾンの奥地に行けばいろいろいるだろうとか。
【梶田座長】  お願いします。
【小磯委員】  すいません。少し細かい視点ですけど、よろしいでしょうか。5番目のコメントの一番初めに、ILCにはLHCから研究者が移ってくるのかどうかという、こういう質問が出されていて、例えば国内の関係する研究者の方がILCにどのくらい本当に移っていこうと、自ら手を下して関わっていこうとしているかということをある程度きちんと調べておくという。それで非常に大きな部分の人たちがきちんと支えているということを示すということも大事なのではないでしょうか。
【梶田座長】  ありがとうございます。
【小磯委員】  以前に高エネルギー委員会などで意見分布を具体的に取ったらいかがですかという御提案をしたことはあったのですが、現実にそういうことはなされていなかったので、例えばこのチャンスにそういうことをやってみるというのも、広くコミュニティーの人たちがどのように考えているかというのを理解する上で重要なのではないかと思います。
【梶田座長】  ありがとうございます。今のは、この部屋の中での議論よりちょっと外へ出るような感じで、これについて具体的にどうやっていくかということは、ここでしっかり、このコメントを受け止めてどうするかというのを判断して、必要であればやはりやっていく。この作業部会の責任としてやっていくのかなと考えます。ありがとうございます。
【駒宮委員】  すいません。実際、実験というか、プロジェクトが始まる前と始まった後でその状況は多分がらっと変わります。ですから、今まで歴史的にいろんなプロジェクトがあって、前はそれほど賛同されなかったけれども、プロジェクトが始まったら人がわっと増えるということは当然ございますので、やはりそれも勘案してもらわないと、ただ現状だけを見て、現状というのは、すなわち今、自分たちがやっていることが非常に重要で、それに忙しいので、ほかのものに目を向けられないという人がほとんどなので、それはやはり将来性というのもきちんと見て、分野全体の将来を見て、話はしないといけないと思います。
【梶田座長】  ありがとうございます。こういうことをやる際、もう一つは、過去の例えば実験参加メンバーがどういうふうに時間とともに推移してきたか等についてもきちんと、プロジェクトがアプルーブされる前、後でどうなったか等々、そういうこともきちんと調べた上で、現在どのようにコミュニティーが考えているかをもしアンケート等を採るのであれば、そういう過去をきちんと知った上で、アンケート結果が誤解されないようにしないといけないということかと理解いたしました。
【中野座長代理】  ちょっとよろしいですか。本当にアンケートを採るときに、条件をきっちり示さないと、多分正しい意見は出てこないと思います。僕はかなり分野が離れているので、勝手な想像を言いますけれど、LHCで新粒子が見つかったら、LHCはルミノシティアップグレードに行って、LHCの人はかなりLHCに残るのではないかと思います。LHCで新粒子が見つからなかったら、この先ずっと苦しい状態が続くわけなので、日本に来るということが障壁にならないのだったら、かなりの人が移ってくるのではないか。同じように、LHCで新粒子が見つかって、あるいはスタンダードモデルを超えるような現象であったら、ただ単にスタンダードモデルの範囲外の現象を探しているという実験の方のうちのかなりの方が今度はILCに移ってくるのではないかと思います。それは今、きっとそうでしょうと言っても、いや、違うとおっしゃるかもしれないです。そんなやわな決心で実験を続けられるんですかと今度責められるので、正確な答えは得られないかもしれないけれど、大ざっぱに考えると、ビヨンドスタンダードモデルというのは、今、一番いろんな人がアタックしているところなので、その綻びが何らかの形ではっきりと見えたとなったら、今度はそれはなぜという方向に進むんだろうし、見えなければ、それを見ようとする方向に進む。それぞれでILCに来る人は違ってくるのではないかと思います。
【梶田座長】  ありがとうございます。ほか、何か御意見その他ございますでしょうか。お願いします。
【棚橋委員】  まだ理解できていないのですが、コメントで、「端的に」というキーワードと「分かりやすく」というキーワードがあって、ある意味矛盾しがちだと思うのですが、どちらを優先すべきかという議論はあったのでしょうか。
【梶田座長】  私が覚えている限り、その観点での議論はなかったのではないかと思いますが、資料に出てくる「端的に」、あるいは「分かりやすく」という、そういう言葉ですね。
【棚橋委員】  実際作業しようとすると、矛盾しがちです。分かりやすくしようとすると意を尽くして文章を作らないといけなくて、そうすると読んでいただけないということが起きるのですが、そちらの優先順位に関しては何か御議論はあったのでしょうか。
【梶田座長】  いや、テクニカルにどういうふうにやったらいいかというような、そういう議論はなくて、ともかくまず国民に理解をしてもらうように努力せよという、そういう観点だったかと思います。
【棚橋委員】  なるほど。分かりました。お願いします。
【横山委員】  補足で、多分両方を求められているように感じました。といいますのは、何人かの委員の方が「端的に」と言うのは、専門分野が違う、あるいはもっと言えば素粒子には興味がないという方たちが委員の中にたくさん恐らくいらっしゃって、言い方がちょっと言い過ぎかもしれませんが、サイエンス自体にあまり興味をお持ちでない方もいらっしゃる。それはひいては国民の皆様もそういう方、もちろんたくさんいらっしゃるわけで、そういう方たちにとっては、恐らく端的に一言で何なのかということを言ってほしい。もうちょっとサイエンスに興味を持って、このプロジェクトは何なのかと興味を持ってくださる方には、意を尽くした丁寧な説明をという、両方があるように思います。ですから、いろんなバリエーションのものを恐らく作る必要があるのだと思います。
【棚橋委員】  分かりました。
【横山委員】  それからあと、加えて、恐縮ですが、私は広報で常日ごろ先生方に大変お世話になっております。一方で、サイエンスコミュニケーションという分野も少し触らせていただいております。初田先生が先ほどおっしゃいましたように、いろんな意見を様々な観点から、あるいは国の観点からごらんいただいて、合意形成を進めていくという、そういう手法も最初に根底に分かりやすく意を尽くして説明する、あるいは端的にも表現するという、そういう手法が必ずございますので、私は両方に関わるような形になっておりますが、恐らくいろんなバリエーションが必要なのだと考えております。
【梶田座長】  ありがとうございました。いろいろ議論も進みましたけど、あと、何か是非言っておきたい。では、松本先生、お願いします。
【松本委員】  資料3の最初のページがこの部会に対する指摘事項で、1個1個に答えていく僕らの義務があるわけですけれども、6番目の項目というのは、この部会で議論する内容に含まれるのでしょうか。つまり、予算面とか、そういうのは、一旦切り離して、物理的な意義についてまず精査しようというスタンスで前半は進んでいたと思うので、この後、この6番目を入れ始めるのかどうかという。質問形式で申し訳ありません。
【梶田座長】  ありがとうございます。予算面については特に、もともとのこの部会で議論すべきことには入っていなかったと認識しているのですが、もし事務局の方からあればお願いします。
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室長】  事務局から若干補足させていただきます。予算が幾らだったらいいとか、悪いとか、予算を幾らにするべきとか、そういった議論は当然この部会で御議論いただく内容ではございませんが、科学的意義といっても、このILCプロジェクトは大変巨額の経費がかかるということが1つの、もちろん大きな科学的な意義があるということも併せて、巨額の経費がかかるということが特徴でございます。まさに先ほど文科省の方からもございましたけれども、巨額の投資に見合う科学的意義というのをどのように捉えて判断をしていくのかというのは、いい、悪いという判断ではなくて、その判断をする際に何に留意をしないといけないのかということは、まさに御専門の近い先生方に集まっていただいたこの作業部会でできる限り御指摘をいただければ、それをとらまえて、有識者会議なり、ひいては最終的には文部科学省の方で受け止めて、最終的な判断の際に参考にさせていただけると、こういうふうに考えてございます。
【梶田座長】  ありがとうございました。よろしいですか。
【松本委員】  つまり、例えば過去の計画とかも鑑みながら、1点は、上下を作るような、つまり、どれだけのインプットに対してどれだけのアウトプットが出てくるかというののはかりを作るということでしょうか?
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室長】  逆に言うと、そこはまさにこの部会の中で、この金額だったらいいというコンセンサスが得られるのでしたら、そういう御議論もあろうかと思いますし、決めるためにはこういうプロセスが大事だという御議論もあろうかと思いますし、まさに留意すべき点というのがございましたら、是非ここで全部出していただいて、留意点という形でコメントいただく、提言いただくというのが建設的ではないかと思いますが、そこはまさにこの観点で御自由に御議論を是非いただければというのがお願いでございます。
【梶田座長】  ありがとうございました。では、よろしいですかね。ほか、よろしいですか。
 では、大分御意見いただきました。有識者会議での指摘事項、あるいはその場の雰囲気等、ある程度御理解いただけたかと思います。もし言い足りない点等ありましたらば、事務局の方まで後ほど連絡いただければと思います。
 では、続きまして、議題の3、「過去に検討がなされた大型計画について」ということです。前回の有識者会議で御指摘がありました件ですけれども、過去に行われた類似の大型計画において中止になったものもある。それについてILCを検討する上で参考としてはどうかとの意見がありました。ということで、今回は、この会議で、米国で80年代後半に計画されたものの中止となったSSC計画につきまして、当時参画されました近藤先生の方からお話をお伺いしたいと思います。
 では、近藤先生、大体20分でよろしくお願いいたします。
【近藤名誉教授】  ただいま御紹介にあがりました近藤でございます。20年前にSSC計画というのがありまして、建設は途中まで進みましたけれども、それを資料にまとめました。お手元の資料4です。ちなみに今、私は、SSCがだめになったので、CERNに移ってLHCのアトラス実験をやらせていただいております。
 自分はSSC計画に直接関わったのですが、この資料を作るに当たって、自分のバイアスがかからないようにするため附属資料1の文献を参考にしました。SSC中止の資料としては文献1番が最も優れたレビューです。これは当事者のスタンレー・ウォジッキー(Stanley Wojcicki)がレビューしたので、引用文献とか、そういう数は、とにかく図書を回って全部の記録を調べて、それが全部書かれていますので、350もあります。当事者でもあるので、内部からみた感想なども書いてあります。ただし、「パーソナルな回想論文だ」とかと書いてあり、かつ長いです。文献2番は、これは素粒子に近い科学史の専門家が書いたものです。文献3番は短いですけれども、どうしてSSCが中止になったかとか、いろいろな面から広く書かれています。文献3番を読んでから、1番、2番を読むのがいいと思います。4番は少し専門的過ぎるので、時間があるときだけ。
 2ページ目にSSC計画の概要があります。SSC計画は、Superconducting Super Colliderの頭文字をとって、日本語では超伝導大型陽子衝突器です。加速器トンネルの周長が87キロメートルでビームエネルギーが20TeVの陽子・陽子コライダーで、アメリカのテキサス州で建設が始まりました。
 3ページ目に加速器パラメータなどがあります。計画の立ち上がりは、1982年にスノーマスでワークショップを研究者が開いて、そこで案が出ました。
 1983年にHEPAPによる答申が出ました。HEPAPというのは、下に注がありますが、ほとんど常設のエネルギー省の委員会で、研究者で構成される委員会ですが、直接DOEに答申するというもので、これは今も活動していて、将来計画など全部ここでまとめております。
 それから、SSC計画が出された主な理由は、これはヨーロッパ、特にCERNでの高エネルギー研究がすごく1980年代の初めに進み、明らかに追い越されるということが分かったので、アメリカにおけるエネルギーフロンティアの研究を復活させるためです。これはHEPAPの答申にもあります。
 3ページ目の表には現在稼働しているLHC計画を比較のために入れました。まずトンネル周長が87キロメートルと27キロメートルで相当違います。LHCの特徴は、既存のトンネルを使ったことです。それから、エネルギーはSSCが約3倍高いですが、ルミノシティつまり輝度は、今LHCが計画しているものの10分の1です。あと、超伝導マグネットの数なども表にあります。下の欄に書きましたが総建設費は$11ビリオンです。ビリオンは10億ですので、$1ビリオンは日本円で約1,000億円相当です。LHC計画は、物件費が$5ビリオンで、CERNの人件費が概算で$5ビリオンほどです。それから、SSC計画におけるコストの不足率については、最初に議会に出した$5.9ビリオンの計画が、最後のSSC中止時点で$11ビリオンになったので、86%のオーバーランになります。CERNのLHC計画の場合のコスト不足率18%というのは、物件費の部分のものです。それから、最後の欄はホストラボでの職員数でSSCでは中止時点で約1,900名までになりました。今、LHCの場合はCERNの職員数で大体2,500人です。
 4ページ目にSSCの計画の主な経過があります。詳細は附属資料の2にあります。3行目のにありますが1984年の7月にCDG(セントラルデザイングループ)がバークレーで発足し、ここで設計とR&Dをものすごい勢いで開始しました。CDR(Conceptual Design Report,概念設計提案書)が2年後に完成しました。それから、1987年1月にレーガン大統領がSSC計画を承認しましたが、このときはコスト概算は$4.5ビリオンでした。1987年には、アメリカの各州に候補地を応募して、最終的にはテキサス州ワクサハッチにSSC研究所が発足して建設が開始されました。当初連邦議会に提案したときの総建設費は$5.9ビリオンです。1991年には加速器の基本設計を変更したため、コストが$8.25ビリオンに増加しました。しかも1993年のクリントン政権になってから、7年ではできないというので、建設期間を3年に延ばしました。アメリカの場合はコストに全部人件費も入っていますので、延ばせば延ばすほど総建設費が増加して、$11ビリオンに膨らんでしまいました。最終的には1993年6月に、下院でSSC中止案が280対150で可決され、上院では否決されて、もう一度上院協議会で協議されましたが政治的バトルが議会でありまして、中止になりました。これは22年前のことです。
 本題からややずれますが、ページの19の附属資料3に中止時点でのSSCの様子を載せました。建設は結構スピーディーに進みました。これはテキサス州ダラス市から50キロメートル南のワクサハッチです。トンネルの周長は87キロメートルですので、山の手線をすっぽり十分に中に入れるぐらいの大きさの計画で、20ページの写真にありますように、トンネルは中止時点では87キロメートルの27%の23キロメートルまで掘削が進みました。掘削のスピードでは、世界記録と言われていました。
 それから、21ページ目にSSC研究所の写真があります。まっさらな土地に急ピッチで建設し、入射器のHマイナスイオンを2.5MeVまで加速に成功し、リニアックはあと1年半後に運転する予定でした。超伝導マグネットの開発では、最初のころはぎくしゃくありましたが一応終わって、半セル分(注:6台のダイポールと1台の4極マグネットのセット)の励磁テストも成功して、ジェネラル・ダイナミクスとウェスティングハウスの2社が500台ずつの製造を開始するところでした。超伝導マグネットは8,000台を越えますが、まず500台を作るということで、その大量生産装置もできていた時点でSSCが中止されました。
 22ページ目には、私も関与したのですが、実験グループの1つのSDC(ソレノイド・ディテクター・コラボレーション)の設計図とKEKで開いた実験グループ会合の写真があります。SDCグループはアメリカや日本・イタリアなど15か国から約1,000名が参加しました。
 5ページ目に戻っていただくと転機と中止の概要があります。SSCは、特に文献1に強調して書いてありますが、インサイダーから見ると、SSCはほとんど成功するところであったのです。特にCDGは、ティグナー(Maury Tigner)のもとで基本設計を短期間でまとめることに成功しました。この時代はDOE(エネルギー省)とCDGの役割分担が非常にはっきりしていました。それで、SSC研究所の発足当初はいろいろと問題がありましたが、建設はかなりのスピードで、先ほど紹介した写真のところまで進行しました。後にコメントしますが、国内プロジェクトということで進めたので、外国との交渉の必要なく全部自分たちで設計や決定できますので、どんどん早く進めることができた、と文献1にコメントされています。
 SSC計画の転機は、1991年から92年に起こります。当時ものすごい不況が襲い、連邦政府の財政赤字削減が大問題になりました。議会で連邦予算の上限案が通過し、それに従わざるを得なくなります。そうすると、国防費も含めて各分野で絶対に予算を増やすなということになり、ゼロサムゲームが始まります。SSCというのは特別予算でしたから、それが格好のターゲットになったのでした。
 もう一つは、SSCの総建設コストが、$5.9ビリオンが最終的には$11ビリオンに膨らみ、ちょうどこれと赤字削減のタイミングが合ってしまい、いい格好の削減対象になったためで、中止が決定されました。
 6ページ目からSSC計画の中止の原因についてです。中止理由にはいろいろ説がありますが、Stan Wojcickiによる文献1が一番良さそうなので以下引用しました。まず主要原因の第1は、建設場所の選定が間違っていたことです、後から見た解釈ですが。テキサスという”green site”、つまりまっさらな地に選んだのが間違いで、既存の施設が利用できないため、多くの予期しないコストが必要になった。とりわけ科学者をゼロから集めることがすごく大変で、一流の技術者を集めることの重要性がプロセスの上である程度認識に欠けていた。途中で建設費の不足が発生すると、建設計画が延長されてしまい、その分総建設費が更に上がるという悪循環が起こります。議会はトータルで総建設費を見ています。もし既存の研究所に付随していれば、建設費の不足も何らかの吸収ができたはずではないか。Fermilabの将来計画としてのSSCならば、連邦議会でのバトルも軽減できて簡単にはつぶされなかったのではないか?SSCはちょうど潰されやすいパッケージの1つの対象になっていた。既存の研究所なら連邦議会で一時的に予算が否決されても、数年後にまた復活が可能だったはずではないか。こういうことが文献1に書いてあります。
 7ページ目に主要原因の第2があります。これは経営関係についてです。SSC研究所の経営とCDGからSSC研究所に移行する過程で数々のミスがあった。これも後から見た解釈ではありますが。SSC研究所の経営母体に2いつの会社を入れたので、高エネルギー物理学分野の伝統と相当違ってしま、いろいろなトラブルが起こってしまった。特にこの背景には、こんな大きな建設は物理学者にできるはずないというような不信感がDOEはありました。不信感を打破するのは物理学者側だったかもしれませんが。そういうことで、途中から200名もの海軍関係者をテキサスの現地に派遣してマイクロマネジメントを行ったため、ものすごい軋轢が生じたのでした。それが報道を通じて悪者扱いの種になります。それでも、写真でお見せしたように、外から見れば建設は進んでいますが。
 SSC研究所の所長選考も問題でした。太平洋戦争はなぜ起こったかとか、どこでだめになったかとか、そういうのと似た後追いの結果論ですが。そのときはものすごい勢いで行っていましたのですが、後追いで考えると、所長を秘密裏に拙速に選んでしまったために、高エネルギー物理学者のものすごい反発を買ってしまった。そのため、多くの優秀な研究者がテキサスに行かなかったのです。SSC所長のRoy Schwittersが招いても、テキサス行きを辞退する人がどんどん続き、優秀な人が集まらなかった。これはグリーンフィールドに作るというのも1つの原因ではありますけれども。しかし、結局は持ち直してあれだけ建設が進んだわけですから、これは中止の主原因というより副次的な原因かもしれません。
 それから、CDGで非常にうまく開発し設計したその成果を過小評価してしまった。SSC研究所はCDGの組織をベースにすべきであったけれども、秘密裏に選ばれたSchwitters所長とCDGリーダーのM.Tignerの間のビジョンの相違が大きくて、2、3か月、2人で議論したようですが、Tignerは副所長を辞退してしまった。今から見れば、URA大学連合/BOOというSSC研究所の上位組織がもっと強く働くべきだったと悔やまれます。
 8ページ目、主要原因の3番目は、やはり途中で加速器の設計を変更したことです。CDR(概念設計)とSite-Specific CDRの比較があります。重要なのは、ビームを曲げるダイポールマグネットの口径を4センチから5センチにしたことです。更に、超伝導マグネットの入射エネルギーレベルでの残留磁場がかなり不安定なことが分かったので、入射加速器のエネルギーを上げるという変更も。もう計画はスタートしていますから失敗しては絶対だめだという心理背景があって保守的な設計になったと思われます。
 DOEもやはり心配して、設計変更がいいのかどうか、サブグループをHEPAPに作りまして、ものすごく検討させました。物理の面などいろいろな影響を。17TeVにするというエネルギー縮小案も出ましたが、最終的に20TeVに据え置いたということです。この変更に伴うコスト増がものすごくて、それがプロジェクト全体を破滅に追い込む可能性もあるということを、その当時はほとんど誰も考えていなかったと。設計変更で安全にしたからいいと思ったけれども、それが結局は後から見ると、中止の原因を引き起こす大きながんになっていきました。コスト増加は、当然建設期間の延長も意味しますので、更に全体コストが上がるというシステムになっておりました。
 9ページ目からは間接的な中止の原因を挙げてあります。全部読むと1日ぐらいかかりますが、3つの論文から取捨選択して、まとめました。
 まずナショナルプロジェクトか国際協力か、というキーポイントです。SSC中止に関する論評のほとんどが、国際協力がなかったことを主原因だとしています。Natureなどの雑誌によると。しかし、Stan Wojcicki自身はそうではないと主張しています。というのは、SSCはアメリカのナショナルプロジェクトとして始めたのです。とにかくアメリカはエネルギーフロンティアでずっとトップの国だったのに、後れを取ってしまうという危機感がありました。うたい文句は、高エネルギーだけじゃなくて、アメリカの科学技術を進歩させ、若い世代を刺激し、アメリカとハイテク企業の進歩に役立つものとして主張し、又はそのように受け取られました。最終的には1987年に大統領が計画を認めています。1988年のホワイトハウス・ローズガーデンでのレーガン大統領によると、「SSC is a doorway to new world of quantum change and quantum progress」と言っています。そのときの写真にはレーガン大統領と並んでリヒター(Burton Richter)とかワインバーグ(Steven Weinberg)とかそういう人たちが写っています。
 ナショナルプロジェクトとしてSSC計画が始められました。だから、スピーディーに行けた。ただし、後になって予算も厳しいというので、後追いで欧州との協力を模索しています。議会も公聴会を開き、ルビア(Carlo Rubbia)とか、ショッパー(Herwig Shopper, CERN所長(1981-1988))とか何人かの有名な人たちを呼んで、直接聞くのです。すごいと思いますが。そうすると、LHC計画はCERNの存続のためにも進めると彼らは証言して、結局欧州との協力は絶望的な状態になります。
 いろいろ模索した結果、インドは$50ミリオン相当のin-kind協力を約束し、韓国とロシアとは合同ワーキンググループを作り協力は始まりました。日本とは、附属資料4にありますが、多くの主要人物、ワインバーグなどの物理学者も、DOE長官も交渉のため来日します。日本側がとにかく大統領レベルまで上げなければだめだと言ったので、ちゃんと大統領レベルまで上げて、1,000億円レベルの協力目標で日米ワーキンググループができましたが、時期的に遅くなってしまいました。協力が遅れてしまうと、現地がどんどん建設が進みますから、日本企業も入れるところがどんどん少なくなってしまいます。
 更に次のページには、面白いというべきかどうかとは思いますか、外国によるin-kind貢献に対して、今度はアメリカの中で意見が割れるのです。もうスタートしている計画ですから、アメリカ内でかなりの国際協力に対して反発が起こります。SSCの強力な支援者であるBen Johnston上院議員が「SSCは純粋のナショナルプロジェクトである」と表明したり、連邦政府のある機関が「外国の供給は米国の経済に役立たない」とか、SSC建設に関与している企業も、「国際的な協力になると外国企業がハイテクを取っていく」とか、アメリカ国内でも結構な反対が出て、国際協力に対する態度が割れてしまいました。
 それから、建設場所や研究組織の決定や財源の確保において、ナショナルプロジェクトとして始めたから、複雑な国際交渉が必要なかった。これはStan Wojcicki(文献1)の意見ですけれども、当事者ですから結構正しいと思います。もし国際協力を前提としていたら、長い年月が必要で、一致に至らなかったかもしれない。SSCはアメリカのナショナルプロジェクトだと言ったので、アメリカ国内の支持も結構受けた。それから研究所組織が結構重要であり、もし国際協力でやるとなると、組織やマネジメントまでちゃんと交渉をしないとだめなので、非常に長い年月がかかってしまいます。
 それで、国際協力の形の一つとしてHERAモデルと呼ばれる形があります。HERAというのは、ドイツのハンブルグ市にあるDESY研究所の電子・陽子コライダー型加速器です。これはドイツが全部提案して、in-kindで物を作ってくれといって、ヨーロッパの各国に提案した計画です。これがHERAモデルと言う国際協力形式の一つです。こういう形ならば日本の協力は得られたかもしれません。実際、先ほど言いましたように、日本の協力はほとんど実現しそうだったのです。しかしそれが実現したとしても、経営に対する影響などを含めると、計画が遅くなってコストがかかるので、たかだか10から15%程度の節約だろう。その当時に緊縮財政をモットーにしていた反対議員たちを説得するには、日本の協力が実現したとしてもそれは(中止を止めるには)小さ過ぎたと思われる。だから、国際協力がないためにSSCが中止されたと、科学史の人とか言っていますが、反対派は言いわけとして使っているのだとWojcickiは主張しています。
 それから、アメリカの場合は、特に連邦議会が連邦予算をものすごくウオッチしています。11ページ開いてください。建設地の誘致合戦でSSC計画への関心が急速に高まりました。カリフォルニア州から、ニューヨーク州から、シカゴ、コロラド州から誘致の提案が出ました。ところが、一旦建設サイトがテキサスに決まったら、議員のほとんどが逆に反対に回るのです。とりわけニューヨーク州のBoehlert下院議員はものすごい弁が立つ人で、強硬で執念深く反対して、SSCの完全な敵になってしまいます。このような議員がいると、連邦議会ではどんどん自分の意見を言えるし、党議とか、そういうのがありませんので、どんどん反対議員自身が他の議員を説得します。先ほど述べたような議員提案に対して何対何という票の決議は、全部こういう人たちとテキサスの議員がバトルした結果なのです。Johnston議員がいましたのでSSC支持がすごく強いけど、下院がこの人がいて。
この当時、アメリカの連邦政府の巨額赤字は$200ビリオン、200兆円相当でした。1992年に大統領にクリントンが選ばれた選挙があり、百何十名もの多くの新米議員はみな財政の健全化を主張して当選しました。
 だから、1994年のSSC予算案が提案されたときに、これは財政赤字の0.3%相当でしかなかったのですが、SSCに反対することは新米議員たちにとって非常にいい響きだった。ワンパッケージで1つ葬れると。健全財政化を主張して選挙で上がってきたので、これでやったということで。議会は一人一人が投票しますので。
 Wojcickiによれば、SSC予算は十分に目立ってかつ大きかったと。だから、いい削減対象になった。しかも宇宙ステーションのように大き過ぎなかったということで、手ごろなスケープゴートであったと。実は宇宙ステーションの方が経営問題もあるし、赤字もSSCの10倍とかもっとだったと思います。大きなコスト超過を出していたのですけれども、宇宙ステーションは企業の参加が広範囲で、かつものすごいロビー活動があり、NASAもまたうまい。しかも宇宙ステーションは宇宙にありどの州にも属さないので、ちょうど公平になっているということまで書いてあります。それに加えて、カナダ、欧州、日本との協力協定が既に存在していたのです。しかも、議員たちは、2つも大きな科学計画を両方葬り去るのはちょっと忍びない。ちょうど手ごろなスケープゴートがSSCだったということでした。
 ちなみに、SSC否決の翌日には、下院は宇宙ステーション計画を、賛成216対反対215の1票差で可決しています。この票で分かるように、赤字削減の雰囲気がものすごかったのです。議会が全部の予算の承認権限を持っていますから。
 しかも、転機のところでも述べましたが、財政赤字と景気が悪くなると、1980年代にはSSCはものすごくいいとかニューヨークタイムズなどが言っていたマスコミが、どんどん変わって、SSCを魔女扱いして、はてはSSC研究所にあるクリスマスツリーの植木が税金の無駄遣いだとか何だとかまで書きます。SSCはそういうところまで悪者扱いにされたということです。マスコミは自分でちゃんと調べないで悪者扱いしているとWojcickiも怒っているのですが。
 12ページ目には、もう一つの間接要因です。物性物理分野と高エネルギー物理学分野が最終的には対立したこと。SSC構想をHEPAPに提案した時点では、「他の学問にネガティブな影響が出ることを望まない」、それから、「SSC建設期間中は高エネルギー物理学への年間予算を2倍にする必要がある」と答申には書かれています。レーガン大統領まで行ったので、特別予算的扱いだったのですけれども、1990年に予算調整法が実施されゼロサムゲームが始まると、今度は物理学分野内でも、SSCは特別予算にならないからか、深刻な対立の的になります。そうすると、どんどんぼろが出てきます。
 高エネルギー物理とSSC計画の効用を社会全体に対して誇大宣伝し過ぎ、SSC敵対者、特にニューヨークの下院議員などから反発を招きました。そして、公聴会にアンダーソン(Philip Anderson, 物性物理学者)などの学者をどんどん呼んできます。そうすると、レーダーマン(Leon Lederman)が言った、例えば「核磁気共鳴を使ったMRI(magnetic resonance imaging,核磁気共鳴画像法)は高エネルギー加速器が発展させた」とか、「加速器が超伝導を発展させた」とか、そういう昔の宣伝がどんどん掘り出されて、それをアンダーソンなど物性物理学者が招かれて、結局、「そんなことはない、加速器なんかなくたって発展した」と述べるわけです。ノーベル物理学賞受賞者が議会でちゃんと言っているのですから結構効果があって、マスコミもそういうところを見ています。
 それから、もう一つ重要なのは、アメリカの高エネルギー物理分野が一致してSSCを断固支持すべきだったのではなかったか、という反省です。3つの研究所、SLAC、フェルミラボ(Fermilab)、ブルックヘブン(BNL)があり、どうしてもSSCは他の研究所だという意識もあり、それらの研究所では短期のいろいろな研究プログラムをたくさんやっていました。この大変な時点でそれらのプログラムを犠牲にしてもSSCを支持するという覚悟が必要だったのではないかと。ただ、1991-1992年でどんどん建設が進んでいって、1992年に一度下院でのSSC中止案が通りましたが、上院で救われた。したがって、(高エネルギー物理分野が対処できる期間は1993年までの)1年ぐらいの短期間ですからね。これも事後の反省とはいえ、私もアメリカに頻繁に行き来して、フェルミラボとかSLACとかブルックヘブンでは、ほとんど物理学者は別なことをやっており、SSCに集中しなかったことは感じました。専門家、特にものすごく優秀な人たちが、テキサス行きを断ったのです。これはMaury Tigner率いるCDGからのつなぎがよくなかったということもありますが、SSC所長のパーソナリティーにも一因があったかもしれません。
 更にWojcickiによれば、他分野の科学者も、アンダーソンみたいに堂々と高エネルギー分野の発言を違うと言っただけかもしれませんが、結局彼らも近視眼的じゃなかったのかと。科学の専門家としては、もっと科学全体に及ぼす長期的な影響をもう少し考えてくれたら、と。彼の愚痴と言えば愚痴ですが。
 さて最後に、このWojcickiによる文献1では、アメリカにILCを招く場合を想定して提案が書いてあります。SSCの経験から、アメリカが重要な役割を担うような新しい大型研究プロジェクトが実現する前提条件としては、まずアメリカ社会が基礎科学の価値を認識すること。この認識は、多くの雇用が生まれるだとか、明日の生活が改善されるとか、そのような表面的なものであってはいけない。
 第2に赤字は明確に抑制されること。大きな赤字は、プロジェクトに対する反体者によって、破滅される、アメリカの場合ですけど。
 第3に建設予算の年次計画は十分練られていて、一旦スタートしたら、当初のスケジュールどおり進めること。会計年度ごとの予算承認は良くない。アメリカでも軍事の場合、例えば航空母艦を建造するときは、承認を1回でやって、建設途中はフォローしないのです。航空母艦はSSCより高いですからね、そういうのは毎年予算承認はしません。そういうシステムにすべきだけど、アメリカは、SSCの場合はそうじゃなかった。
 それから、既に述べましたが、新しい研究所をまっさらな地に起こすということは想像以上に難しかった。これも本当に当事者の経験です。既存研究所のフレームの中で進めることが格段に望ましいと。
 それから、全体コストとスケジュール、技術達成度、社会の利益などに関しては、過剰なオプティミズムは、結果的には大変な害になったと、SSCの場合ですけれども。
 最後のページですが、計画の最初からコスト評価は、特にアメリカの場合ですが、保守的であるべきで、コストの見積りのルールをちゃんと決めて、それは現行のルールに合致したものでなければならない。ただ、やはり年度ごとの予算承認というのは良くない。
 それから、ここには書いてありませんが、やはりトータルコストという概念がものすごくアメリカはあって、全部の期間を積算した予算ですから、建設期間が重要です。実は1990、91、92年の承認時に、下院議員が結構予算案を値引きする議案を出して承認されています。例えば600億円相当の予算が提示されると、それを500にしたり、400にしたり。議員は自分の成果として1人で提案できますからね。そして、議員根回しをする。600億が500億に減らされると、そのたびに実は建設期間が延びてしまいます。3年延ばす提案をせざるを得なかったのも、それが理由の1つにあります。
 それから、SSCの場合は非常に執拗で優秀な反対者がいました。大きな計画を進めるときは、プロジェクトの反対者に対しては、たとえそれが事実からほど遠い攻撃でも、迅速に対応できる準備をしていくべきだ。現在では大型の科学計画は国際協力にあることは、常識であると思っている。ただし、国際協力は非常に大変なので、ホスト国にとっては非常にチャレンジになることを立案段階から認識しておくべきである。
 最後になりますが、上記の3条件がアメリカで満たされたとして、可能な国際協力のモデルをWojcickiは記述しています。モデル1は、アメリカにサイトを持ってきて、この場合はILCのサイトですけれども、修正型HERAモデルです。立案段階から国際的に進めておく。インフォーマルな建設決定はするが、建設は他国の参加を待ってから開始する。しかし、SSC中止があったので、アメリカは、何をやるにしても完全に信用を失っており、このモデルは難しいだろうというのが彼の意見です。
 2番目はITERモデルです。ITERはいまフランスで建設中ですが、同じようにまっさらな地に国際研究所をゼロから作るケースです。交渉に少なくとも10年ぐらいはかかるのではないか、と見ています。
 それから、モデル3というのは既存の研究所、特にCERNのプロジェクトに参加するというケースです。ただ、CERNに参加してもアメリカは経営権を持っていませんから、今度は役割が果たせない。だから、そんなお金だめだと連邦議会が反対して承認を得るのは難しいと思われる可能性が高い。
 以上がSSC中止のこの反省を込めた論文です。
【梶田座長】  近藤先生、どうもありがとうございました。それでは、近藤先生のこの御報告をもとに、少し委員の間で議論、意見交換等したいと思います。何かありましたらお願いいたします。
【中野座長代理】  予算の額が、最初の2年で膨れ上がったのは、これは設計変更を伴うものですか?
【近藤名誉教授】  はい。設計変更です。
【中野座長代理】  もう計画が実行に移されたから。
【近藤名誉教授】  計画が実行に移された、トンネルの掘削とか、いろいろ始めたけれども、加速器の設計をもう一度見直しました。これが成功しないとだめなのだということで。
【中野座長代理】  安全策を取るということですか。
【近藤名誉教授】  小磯さんにコメントいただけるかもしれませんが、非線形なビームの振る舞いが問題でした。その当時は20年前ですので、ビームは10時間、20時間蓄積できないとだめです。1秒間に1万回くらい回っていますが安定にずっとキープされないとだめなので。非線形効果で少しずつビームが減少します。ダイポールマグネットもその地場は完全ではないですから、ビームが同じところを何回も通過すると共鳴を起こしていて、ですか?そういうことがあるのでビームの振る舞いの予想がものすごく難しいので保守的になったのだと思います。それから先ほど述べたましたが、超伝導マグネットの磁場が低いところで、残留カレントの不安定性が問題だったのです。HERA加速器ではしっかり解決したはずなのですが、それでも危惧が残っていたのではと思われます。
【小磯委員】  恐らくノンリニアな影響を推定するために、シミュレーションコードを使って盛んに研究されたと思うのですが、シミュレーションコードが進化して、より現実的な物理的効果をどんどん取り入れてということをやると、結果が大体は厳しい方向に行く可能性が高くて、そういうシミュレーションコードの進歩などに伴って、ダイナミックアパーチャーに対する不安が増してということは十分起こり得たことだと思います。
【梶田座長】  ありがとうございます。
【近藤名誉教授】  CDGの基本設計時点で、マグネットの口径をどの大きさにするか3日間も大議論をやりまして、結局4センチにしました。これは1986年かな。CDRを作る前ですけどね。加速器の専門家がほとんど全部集まって、夜も寝ずに頑張ったことがあって、4センチに決まりました。とにかくマグネットの口径を決めなければ設計は進みません。口径を4センチから5センチにしただけで、何十億円に相当するほど設計が変わりますので、決めなくてはいけなかった。SSC研究所では新たにヘレン・エドワード(Helen Edward)らが設計に当たったのですが、CDRでの設計思想を継承できなかったのかなとは思います。
【小磯委員】  そもそも4センチというのが、厳しいけれど、不可能ということは証明できないというレベル。つまり、頑張ればできるかもしれないというので、かなり無理をした決断だったという可能性はあるのでしょうか。
【近藤名誉教授】  それは木村さん(木村嘉孝KEK名誉教授)とか、そういう方に聞かないと分かりません。最初のスノマース会議、の頃のコスト評価が$3ビリオンでしたが、今までの加速器のコストの10倍も高いですので、皆ものすごいチャレンジだと思ったのではないでしょうか。意識的でなかったにせよ、$3ビリオンが$4ビリオンとか$5ビリオンに増えるのは大変だ、口径は(コストのより少ない)4cmで行こうというアグレッシブな部分もあったのではと思います。だから、3日間も議論してやっと落ちついたところがありました。
【梶田座長】  ありがとうございます。では、初田先生。
【初田委員】  3ページ目のSSCとLHCの比較のところなのですが、時間的に見たときには、SSC計画に対してLHCはどのように並行して、計画とか建設が進んでいたのでしょうか。そのあたりの相互の関係が質問の1つです。もう一つは、SSCを提案したときの一番の物理目標は何だったのか。それはLHCとどういう関係にあったのか、物理の面での最大の目標をどのように位置づけてやっていたのかということをお聞きしたく思います。
【近藤名誉教授】  まず1番目の、CERNはどうだったかです。これも駒宮委員の方がよく御存じかと思いますが、1980年中ごろにやっとトンネルができて、LEPという電子・陽電子コライダーが1989年に運転を始めたばかりでしたので、CERNのほとんどの主力はそちらの方にありました。LEPではニュートリノの種類は3つしかないとう成果を出しましたが、LHCについての本格的な活動が始まったのは、1994年にLHC計画案が承認されてからです。ただし、お金がないので、ミッシングマグネットといって低いエネルギーでまず始める。後からマグネットを加える案です。それから、超伝導マグネットは、まだトゥーインワンという特殊な形なので開発は当時まだ進んでいませんでした。CERNの中心は、LHCでなく、LEPで大忙しでした。ただし、LEPはいずれLHCになるという計画でした。トンネルを作った段階でLHCをやるという構想があり、1984年からずっと続いています。駒宮さん、それでよろしいですか。
【駒宮委員】  そうです。
【近藤名誉教授】  それから、SSCの物理については、ヒッグスを含め、BSM(Beyond Standard Model)です。20TeVを要求したのは、ヒッグスが存在しない場合は1.5TeVほどで(WW散乱の)ユニタリティが1を越えます。ヒッグスがない場合も想定して、高いエネルギー領域も全部調べる必要があると。ただし、ユニタリティすなわち確率が1以上になることはありえないので、1.5TeVをカバーできる能力を持てば、ヒッグス粒子が見つからない場合でも必ず新しい何らかの成果が出る。要するに、加速器のエネルギーが低すぎて何も見つからないという事態はないということがSSCのうたい文句でした。LHCも、エネルギーは低くSSCの3分の1ですけれども、もちろんヒッグスの探索が主目的です。当然ながらBSMの現象、例えば超対称性粒子もエネルギーが高いほど見つけやすい。SSCの物理的なうたい文句は非常に大きかったと思います。ヒッグス粒子だけじゃなくて。
【梶田座長】  お願いします。
【棚橋委員】  質問なんですけれども、8ページ目に、17TeVにエネルギーを下げる議論が一時なされていて、ただ、20TeVのままということに最終的になったということになっているのですが、当時もうLEPは始まっていて、ある意味エレクトリックプレシジョンで、わりとエネルギーが低くないと標準模型だめだということが分かってきていると思うのですが、でも、ここで20TeVにどうしても作りたいという議論は、物理の議論は何かあったのでしょうか。
【近藤名誉教授】  その決定の記録はないですけれども、ワインバーグが強硬に反対したと、伝え聞いています。第一人者が。ヒッグス粒子が100GeV付近の低いエネルギー領域にありそうだという予測はLEPの成果ですから、1995年ごろからではないかと思っています。
【棚橋委員】  ちょうどこの時期ですよね。
【近藤名誉教授】  いや、SSC発足の後です。1995年とか94年とかです。1989年、LEPが始まるぐらいのときは、まだ低いエネルギー領域にあるとかまでは思っていなかった。
【棚橋委員】  いや、17TeVに議論した設計変更のころというのは。
【近藤名誉教授】  設計変更は1990年ころですよ。いいですか、駒宮さん。
【駒宮委員】  はい。
【梶田座長】  お願いします。
【中野座長代理】  最後の大型プロジェクトが実現するための3条件というのが出ていて、非常に興味深いのですが、最初の、米国社会なんですが、社会が基礎科学の価値を認識することということを挙げられているということは、SSCを進める上では認識が十分でなかったということをこの方はおっしゃっているのでしょうか。
【近藤名誉教授】  いや、1990年の転機以降はそれがキープできなかった。結局レーガン大統領まで行ったのです。レーガン政権はその前の政権から変わって、まずソ連を勝つことを目指して、ものすごく予算を出したのです。フロンティア科学技術に対して。それにエネルギー省のトップがものすごくSSCに興味を持って、やれやれと言って勧めた。$3ビリオンとか、それまでより10倍ぐらい大きいので、むしろ科学者のほうが少し遠慮していたところはあるような気がします。連邦政府側にはエネルギー省のトリブルピース(Alvin Trivelpiece, Office of Energy Research部長)とか、キーワース(George Keyworth, White HouseのOSTP(Office of Science and Technology Policy)の科学顧問)のような推進派の人がいました。強力に推す人の存在のおかげで、直接ホワイトハウス、レーガン大統領まで行って計画を認めさせたのです。ところがどんどん政権が変わり人も代わるので、1987~89年ぐらいになったら、そのように政府側に強力に推す人がいなくなってしまいました。
【中野座長代理】  当初の強力に推していて、決定に重要な役割を果たした人たちは、別に基礎科学の価値とか、そんなんじゃなくて、高エネルギーフロンティアで、もう誰も到達できないエネルギーだということが一番大きかったのですか。
【近藤名誉教授】  いや、そこまで理解しているかどうかは文献からは読めませんでしたけれども、とにかくレーガン大統領の科学技術推進です。SDI(Strategic Defense Initiative, 戦略防衛構想)とか、そういう気運に乗っかったのだと思います。基礎科学が80年代に認められていたかどうかは分かりません。Wojcickiの論文も10年後に書いていますので。だから、(基礎科学への理解が)なかったと言えばなかったかもしれません。しかし、ニューヨークタイムズなどマスコミは80年代、SSCに非常に好意的でした。好意的だけど、それは先ほど述べましたがアメリカの科学を推進させて、アメリカの科学全体を推進して、技術を推進するといううたい文句でしか受け取っていないので、基礎科学という論評は余り出てこなかったのではと思います。Physics Today(アメリカ物理学会の科学雑誌のような専門誌を全部読めば、どうだったかわかるかもしれませんが。
【中野座長代理】  一般のニュースペーパーでビヨンドスタンダードモデルとか、そういう言葉が出ることはなかった?
【近藤名誉教授】  いや、ニューヨークタイムズは、サリバン(Walter Sullivan)というしっかりと分かっている科学者がいました。Stan Wojcickiの文献にもニューヨークタイムズのSSC記事がいくつか引用してありますので、必要なら調べてきます。マスコミは、基礎科学が入っていたかどう分からないけれども、最初は非常に好意的だった。それが一転して変わったということです。
【梶田座長】  お願いします。
【山内委員】  大変興味深くお聞きしました。お聞きしたいことは実はたくさんあるのですが、1つだけ伺いたい。6ページ目に、まっさらなサイトであるために予期しないコストが必要になったとあるのですが、これは恐らく文献を読むと中身が書いてあるのだろうと思います。覚えていることがあったら幾つか挙げていただけませんか。つまり、科学者をゼロから集めなきゃいけないとか、技術者を集めることは重要などというのは、これは予期しないはずがないので、これを予期していなかったなら、これは余りにもお粗末で、そんなことはないと思いますので、予期しないことというのは何か別にあったのだろうと思うのです。
【近藤名誉教授】  CDGでのCDRはサイト(=建設場所)インディペンデントなコスト評価ですので、建設場所に直結しないもののみと思います。レーガン大統領が認めて、サイトが決まった直後に出した建設コストが$4.5ビリオンで、その後サイトが決まって議会に提案した全建設費が$5.9ビリオンになっているでしょう。そこの部分はちょっと私もよく分かりませんが、多分新しいサイトに関係する部分だとは思います。必要ならもうちょっと調べます。
【山内委員】  文献1に書いてあるなら自分で読みますが、具体的に何が予期しないコストかということは書いてありますか?
【近藤名誉教授】  そこは書いていないかもしれません。文献1の引用文献には書いてあるかもしれないですが。したがってコストブレークダウンを得ることは可能だと思います。
 それから、アメリカはインフレーションファクターがありますので、増えた部分にかなりのインフレーションファクターが入るので、本当に単純に増えたと思わないでください。インフレファクター分を調整すると結構平らになっていて、ある時点で建設費がぼんと上がっています。サイトの関係で上がったのと設計変更のせいだと思います。
 それから、彼が言いたかったのは、こういう敵がいて逆風でも、既存の研究所フェルミラボみたいに20年、30年の実績があり人がいるというのだったら、簡単にはつぶせなかったであろう。まっさらなところに作るコストは、普通に考えたと思います。だけど、論文に書いてあるように、それでも予期しないコストが必要になったのでしょうね。予期しない部分のブレークダウンも調べられますけど。
【山内委員】  ありがとうございます。
【駒宮委員】  今のに補足しますけど、やはりお金が余計かかったというよりも、要するにフェルミラボという既存のラボがあって、そこでやったほうがいろんな点で非常に有利だったんですよね。それとまっさらの場所での計画を比較すると、フェルミラボに作った方が全体として非常に簡単だったのではないかというわけです。それはリニアコライダーと全然違うところで、リニアコライダーの衝突点をKEKの中に持ってきたら、昔そういうことで強引にいろいろと設計した人もいますが、それは地盤などの理由で絶対無理です。それはできないです。だから、フェルミラボに対応するものは、リニアコライダーの場合はないと思います。
 それからもう一つ、先ほど近藤先生が見せた3ページ目のSSCとLHCの比較ですが、もしかSSCができたら、完全にLHCは二番煎じになっていました。これは明らかです。というのは、エネルギーが高い、それから、ルミノシティが低い。実験がやりやすいんです。だから、1990年に僕がCERNに行ったときに、みんな、LHC、LHCと言っていましたけれども、SSCに絶対勝てるはずがないと。SSCがなくなってしまったから別ですけどね。そのように私は感じていました。
【近藤名誉教授】  それについては私もいろいろ聞いて、ほかの文献にもありますが、SSCが進んでいる間、1990年ごろですね、もうCERNはLHCだめだと思って、いろいろ考えていたようです。しかし、ルビア(Carlo Rubbia)だけが、ルミノシティを10倍にして、7TeVにすれば、物理的にはSSCと同じエネルギー領域をカバーできると強硬に主張しました。ルビアも連邦議会の公聴会に呼ばれています。彼が何を言ったかというと、90年ぐらいか少し前の時点ですが、とにかくLHCはSSCのコストの3分の1から4分の1でできるのだと。既存のトンネルも入射加速器群も存在するし。これはWojcicki論文にも引用してありますが、アメリカの議会で堂々とそれを言っているのです。
 だから、アメリカの場合は万が一計画が中止されるかもしれないという懸念をルビアは分かっていて、LHCのアイデアをキープしたのである、と聞いています。
 それから、SSC案を検討している1980年代初めのころに、HEPAPは外国、特にヨーロッパの専門家に意見を求めています。そこで、ジョン・アダムス(John Adams, CERN所長(1976-1980)))という、著名な加速器の専門家が書いた手紙には、2つの重要なポイントが書いてありました。アメリカの場合はキャンセルされることも考えておけ、というようなことがポイント2に書いてありました。ポイント1ちょっと忘れました。思い出したらまた。(追加注:文献1aのpage 266参照。ポイント1は「過剰なオプティミズムで大胆に始めて、結局それが非現実的だった場合には、物理コミュニティー全体が信用を失うという不幸な結果をもたらす」でした。)
【梶田座長】  ほかに何かございますでしょうか。
【初田委員】  2ページ目で、ブルックヘブンのISABELLEを中止し、SSCに向かうというのは、何か物理の背景があってと思うのですけれども、それは何か。それから、中止にかかるコストというのはどれくらいであったのか、もし分かったら教えていただきたく思います。
【近藤名誉教授】  ISABELLE計画についてはここに書きませんでしたが、1975年ぐらいに認められて、実際に建設が進んで、その地上トンネルは今RHIC加速器に使われておりますが、超伝導マグネットの開発が遅れて、建設はほとんど進んでいなかった。ISABELLEは500GeVのppコライダーで、1980年代はまだ見つかっていなかったZ、W粒子という弱い相互作用の伝搬役の粒子を見つけるという目的でした。一方CERNではSpbarpS加速器でルビアたちがやっている陽子・反陽子コライダーが開始され、ISABELLE計画では明らかに負けるだろうと思ったので、ISABELLEを中止したのです。これは非常に議論したみたいです。それまでHEPAPやDOEが強く推進したのに途中で変えるとは何だと結構アメリカ議会から叱られたのですが、それはやはりトップの長官とかがなんとか頑張ってうまく大型計画に切りかえた。大型のSSC計画に変わり非常に魅力的になったので、さっと研究者はみんなそちらの方に。
【梶田座長】  ありがとうございます。ほかに何かありますでしょうか。
【近藤名誉教授】  今もう一つ重要なことを思い出しました。サイトセレクションでなぜテキサスが選ばれたのかが書いていないのです。8州の候補地が残って、そのうち1つのニューヨーク州が2週間後に辞退しました、反対議員がいた州です。テキサス州が$1ビリオンを払うとプロポーザルの段階から行っていました。それが効いたのかどうか分かりませんが。それから、テキサス州選出の議員が非常に強力だったときに、サイトが1987年に決まりました。サイトの発表はブッシュ大統領が選出された次の日か、次の次の日ぐらいに。グリーンフィールドというよりも、政治的にこのサイトは決まったのではないかと推定されますが、ここについては(文献には)書いてありません。
 SSC研究所長選びは、なぜ秘密裏にやったかというと、Wojcickiが書いていますが、DOEが経営入札のときに、トップマネジメントも決め、それから、2社か1社、会社をしっかりとマネジメントに入れろと。背景には物理学者不信というのがあって。アメリカにマーチン・マリエッタとかEGGとか軍事が得意な大企業があり、そのような会社を想定したと思います。実際にEGGとSverdrupという会社が入っています。入札提案でそれを持ってこいと。つまり、入札中には内容は公開できないので、秘密裏に選んだとのことです。それで物理学者の間で非常に反発を買ってしまいました。Schwittersは人物がやわらかくて、議会に対していいだろうと選んだものと思われます。Maury Tignerの方は、ドライでずけずけと言うので。だけど結局、そのときに所長をTignerにしておけば全部変わっていたのでは、と反省の面はあります、Stan Wojcickiによる後追いの結果論ですが。秘密にしたのは、法律的にオープンにして選ぶわけにもいかないので。
【梶田座長】  ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。
 よろしいでしょうかね。今日、近藤先生の方から非常に貴重なことをお伺いし、我々の方の意見も出尽くしたかと思いますので、次に進めさせていただきたいと思います。また、これにつきましても、何か御意見がありましたら、会議終了後、事務局の方へ御連絡いただければと思います。
 では、続きまして、議題の4で、「答申に見合う科学的意義について」です。当作業部会の今後の進め方としまして、有識者会議が来年度早々に中間まとめを行いたいという旨、お聞きしております。特に前回の有識者会議において、実施の可否判断を行う際の優先順位ですとか、判断の時期、時系列等について明らかにするよう、求められております。
 ということで、今後の中間まとめに向けまして、コストと科学的意義を踏まえた可否判断における留意点等について、とりあえず資料のたたき台を作成しておりますので、これをもとに残りの時間と次回の会合で御議論いただきたいと考えております。
 では、たたき台を私の方から紹介させていただきたいと思います。資料の5をごらんください。資料の5は1枚ものですけれども、一応観点の方を並べさせていただいております。これに沿って読む形で説明させていただきます。
 まず科学的意義ですが、ILC計画は、以下の事項について実験、探索を行う施設であると。①ヒッグス粒子の詳細解明、②新粒子(超対称性粒子等)の探索、③その他で、ダークマターや余剰次元等ということで、この検証が素粒子物理学の将来的な課題として重要な科学的な意義があるということにつきまして、ここまでについては少なくとも我々の方で前回のまとめで報告をさせていただいた部分です。
 それから、2番の必要経費ですが、こちらは、具体的な数値はTDR作業部会の報告等からピックアップしておりますが、加速器本体及びそれを設置するトンネルの整備は8,300億円程度。これのほかに、実験の観測を行う測定器や建設等に関わる人件費が必要となる。加速器施設の建設の総計としては、1兆1,000億円程度、最低でもかかると。運転経費としては最低400億円/年というレベルである。
 続きまして、一応考えておかなければいけないこととして、過去の加速器整備での予算の実例ですけれども、国内の実例としては、これまでの加速器関連の施設は、一番大きい施設でも1,500億円程度です。海外の実例ですが、現時点で世界最大の加速器LHCで約5,000億円。LHCについては、CERNの方で整備し、日・米・ロシア等が参加している。LHCは、過去、例えばエレクトロン等の実験に基づいて、ヒッグス粒子の発見等について、明確なというか、見通しはあったと。
 続いて、4番目、TDRで示されたILCが実施できる実験ということで、一部、1番とかぶりますけれども、ヒッグス粒子が発見された今、素粒子物理学の次なる目標はヒッグス粒子の詳細解明である。エネルギーフロンティアの加速器として、超対称性粒子の探索も重要な候補である。ただし、我々として理解しておかなければいけないのは、SUSYの探索は、LHCで13TeVになった後でも引き続き実施予定である。
 それから、ダークマターや余剰次元の探索も候補である。
 最後、では、具体的に投資に見合うかの判断の留意点としてどういうものがあるかというたたき台ですけれども、一応ここでは4つ挙げさせていただきました。読み上げますと、最初ですが、日本学術会議も指摘している新粒子探索の最適な戦略の見通しについて、ILCで期待される成果を最大化する観点から、LHCにおけるSUSYの探索結果を踏まえてILCの性能を検討する必要があるのではないか。
 それから、2番目、上記のこの観点から、実施の可否判断の時期についても、現在稼働中のLHCでの成果を踏まえて判断することが必要ではないか。
 3番目で、ILCは巨額の経費を要する計画であることから、我が国の財政状況に鑑み、ILCにかかる経費については、我が国がホスト国として負担することには限界があり、国際協力による応分の経費負担が必要不可欠であると。
 それから、4番目、ILC計画の投資額の規模を鑑みると、大型科学プロジェクト予算を含む他分野の予算に影響を及ぼすことは免れない可能性があり、その場合は、本プロジェクトを優先すべきと、他分野のコミュニティーの理解・協力を得る必要があるのではないかと。
 このような留意点のたたき台の案ですけれども、出させていただきました。
 これにつきまして、本日御議論いただいた資料をもとに、中間取りまとめに向けて盛り込むべき内容を更に追記、あるいは改良していくことを考えておりますけれども、何かお気づきの点があれば、意見交換、まずここの場でしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【駒宮委員】  まず物理の観点ですが、この4番にTDRで示されたILCが実施する実験とありますが、この最初のヒッグス粒子が発見された今、素粒子物理学の次なる目標はヒッグス量子の詳細解明であるとありますが、これは少し矮小化されています。むしろヒッグス粒子自身の詳細解明で一体何が分かるかというと、これは標準理論を超えた物理の方向性が分かるわけです。それをやはり我々は一番知りたいわけです。だから、ヒッグス粒子の詳細解明ではなくして、標準理論を超える方向ですね。それを調べるというのがその次の目標だと思います。その手段としてヒッグス粒子の詳細解明があるというわけです。
 それから、もう一つ、番の必要経費ですけれども。最低というのは、これはどういう意味で最低なのか、少し意味が分からないです。今、多分エスティメートされている中間値がこの値で、これは最低だということは多分言っていないと思うんですね。ここに含まれていない何かがあるという意味では最低かもしれないので、最低という意味をもう少しきちんとするか、ここには何が含まれていないということを明確に書いて、これを中間値とするか。最低と言うと、このほかにものすごい額が背後にあるのではないかと思われるわけですね。それはやっぱりまずいですよね。
【梶田座長】  ありがとうございます。今の2番目のことについて、参考資料の2に、TDR検証作業部会の報告がありますけれども、不定性相当経費で約25%。これを含めた額が1.1兆円かというふうに私は理解しています。ただし、それには技術リスク、工事期間の延長リスク、市場リスクに伴うコスト増加分は含まれていないという、これが書いてあったので、少し言葉が足らなかったということですね。この辺をきちんと誤解を招かないようにしていきたいと思います。ありがとうございます。
 お願いします。
【初田委員】  投資に見合うかの判断の留意点のところで、「LHCにおけるSUSYの探索結果を踏まえて」とか、「現在稼働中のLHCの成果を踏まえて判断する必要が」と書いてあるのですが、多分これだけでは不十分で、先ほどのISABELLEとLEPとかいう話もありますけれども、LHCの次の計画も見据えて、それも考えた上で判断することが必要になるのではないかと思うので、LHCで何が見つかったかというだけでなく、更にLHCがその次に何をやるかということも勘案したほうがいいのではないかと思います。
【梶田座長】  LHCの次というのは?
【初田委員】  その先にLHC自身のアップグレードを含めてCERNが何を考えるかという、そういう意味です。
【梶田座長】  その次のページにLHCの実験・高度化に関するスケジュールで、今初田先生がおっしゃったのは、LHCの高度化も含めてどこかという、そういう観点が必要であると。
 お願いします。
【駒宮委員】  今の初田さんのおっしゃったのはそれなんですか。むしろ、FCCとか更に先の将来の計画のことをおっしゃっているわけですか。
【初田委員】  両方ですけれども、要するに将来にわたって戦えるかということをきちんと検討しないといけない。LHCで何かが見つかったら、CERNは更に何かやろうとするでしょうから、そこまで含めてという意味です。
【梶田座長】  ありがとうございます。それについてはいかがでしょうか。
【駒宮委員】  それは多分そのとおりだと思いますが、一番重要なのは、この次の13TeVのランですよね。そこから先の、アップグレードしてからというのは、ほんの少しだけなんです、見えるのは。だから、多分この13TeVのランで何か出るか出ないかというのが非常に大きなポイントになります。それは、もちろん比較的早く、あと、多分2年か3年で分かりますので、多分こういう議論は、必然的にその議論が、そこで何かあったか、ないかということが分かってからされることで、それを既定事実として認めても全然構わないと思います。だから、ILCの最終判断をするときには、その辺がかなり分かっていると思ってもよろしいと思います。
【梶田座長】  ありがとうございます。今の初田先生の御意見、御質問について、駒宮先生、これは具体的には我々も浅井先生の方から既にこの前聞いていることですけれども、大体は次の13TeVランの2、3年で分かるのではないかという、そういう認識かとは思いますけれども、そういう認識で今後、大体の時間軸を決めていっていいのかどうかという、そういうことかと思うのですが、いかがでしょう。
【初田委員】  2018年までの結果をもとにそこで判断というときに、そこまでのことと将来のCERNのことも考えて、判断するという意味ですよね。
【梶田座長】  そうです。ほかに何かポイント等、あるいは御意見等ございますでしょうか。
【駒宮委員】  すいません。
【梶田座長】  お願いします。
【駒宮委員】  CERNだけではなくて、要するに、この分野の将来的な発展といいますか、この分野に将来新しいものが何にもなければ、多分やめてもいいんですよ。でも、今、ヒッグスが見つかって、標準理論が完成して、これからどういう方向に行くかという、今、非常に重要な時期なわけです。そういう時期において、この分野をだめにしたら非常にまずいんです。その責任が我々にはあるんですよ。ですから、CERNだけではなく世界的な分野の動向を見て、そういう大きな流れの中でILCがどういう役割をするかということをきちんと見ていかないといけないと思います。
【梶田座長】  ありがとうございます。お願いします。
【横山委員】  全然違う方面から、少し考えがまとまっておりませんので、大変申し訳ございませんが、断片的に申し上げたいと思うのですが、1つは、学術機関課の研究環境基盤部会の下にある大型プロジェクトの委員会で、学術会議の方から上がってくるマスタープラン二百数十の計画を二十数個までに絞った優先的なプロジェクトの審査を行って、それが国としてのロードマップになっています。そういう過程を経て、日本国内の大型プロジェクトについては、順次、この数年間で整理がされているところでございますが、その中では、ILCは、学術会議から上がってくるものの中に入っていなかった。準備状況、これだけ巨大だからといういろんな理由があるかと思いますけれども、そういう意味で、ほかの国内のプロジェクトとはもちろん規模的にも年月的にも全く違うものではございますが、そこでの整合性はまだ全然取れていないというものが、ほかの分野の大型プロジェクトを一緒に見ている者からして、まずどういう整理なのかなというのがございます。
 もう一つ、また全然違う観点からですけれども、大学の機能強化などの議論がどんどん進んでいて、再来年度から大学が3分類に分類されるということがございます。そうすると、今、そちらの方の議論で非常に懸念されているのは、共同利用体制というのが大きく崩れてしまうのではないかという懸念が出ています。特に世界で戦えというふうに言われる大学に関しては結構なのですが、地域の教育活動に貢献せよというふうに3分類目に分類される大学における共同利用体制というのが維持できないのではないかというような議論が基盤部会の方では始まっております。その辺の議論が、今の流れからは随分ずれる話ではございますけれども、日本の大学の体制であるとか共同利用の体制及びほかの分野との議論というのは、すり合わせながらやっていかないと間に合わないという印象を持ちますので、早い段階に何らかの形で、この部会か、どの部会になるかはちょっとよく分かりませんが、すり合わせの議論を始めておいたほうがよろしいかという印象は持っております。
【梶田座長】  ありがとうございます。今の横山先生の御意見というのは、留意点のたたき台で示した最後の丸とも関連しているような、もう少し広い、他分野のコミュニティーの理解をきちんと得るようなことをやっていかないといけないという、そことも関わっているわけですね。
【横山委員】  はい。関連で。
【梶田座長】  はい。ありがとうございます。
 ほかに何かございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。いずれにしましても、この作業部会としましては、この前の親会議のいろいろな御意見をお聞きして、それにしっかりと応えていくような中間まとめを作っていかなければいけませんので、本日たたき台を示させていただき、皆さんの方から御意見いただいたので、それらについても順次入れるような形でこれをきちんとまとめていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 また更にこれは非常に重要な議題ですので、今日御議論、御意見いただいた以外にも、また意見がございましたらば、事務局の方まで連絡の方よろしくお願いいたします。
 では、一応本日のこのたたき台に関する議論はここまでとさせていただきたいと思います。
 では、続きまして、5番で、「今後の進め方について」ということですけれども、これにつきましては、事務局の方から説明をお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  失礼します。資料2番でスケジュールをお配りしておりますが。次回、第7回を2月17日に行う予定でございます。ここでは、先ほど御議論いただきました答申に見合う科学的意義の整理ということで、先ほど梶田先生の御説明のあった資料5について、更に今後意見を頂いた上で、リバイスしたものを御提示するという形で、更に議論をしていただこうと考えております。
 それを踏まえて、これまでの議論の取りまとめということで、今後、親委員会が、年度末、年度初めごろに開く予定でございますが、そこへのインプットする内容について御議論いただくということで考えております。
 もしそこでなかなかまとまらないということであれば、第8回も検討したいというふうには思っております。
 以上でございます。
【梶田座長】  ありがとうございます。このような予定でよろしいでしょうか。
 以上で一応当初予定しました議題は終わりですけれども、最初の有識者会議の報告をした際に、小磯委員の方から、特に有識者会議の資料3の本作業部会に対する意見の5番目、研究者がどのくらい移ってくるのかという質問に対して、アンケートを採ったほうがいいのではないのとかいう御意見がありましたけれども、これにつきましては、本日どうこうというわけではないのですが、考える方向で進めるかどうか。進めるとなれば、これに関してもいろいろな意見がありましたので、それも踏まえて、次回のこの会議にアンケート内容を提出するなどして進めることも可能かと思いますけれども、これについて皆さんの御意見を頂きたいと思います。
【駒宮委員】  それは多分分野の問題なので、高エネルギーの研究者会議でそれは議論する問題で、ここで議論して、それで高エネルギー研究者会議にやれとおっしゃるのでしたら、しょうがないですが、それはまずやはり我々コミュニティー代表が議論すべきことだと思います。
【梶田座長】  ありがとうございます。では、今のはこの委員会としてそれをやるべきかどうかという判断をして、高エネルギー委員会にやってくれというお願いをするかどうかと、そういうことですね。いかがでしょうか。
【駒宮委員】  しかし、それをやって一体どういう意義があるのでしょうか? 昔からそれをやれとおっしゃっている人はいるのですが、それをやって一体何が分かるのでしょうか? この時点でそういうのをやって一体何が分かるかということは私は非常に疑問に思います。
【梶田座長】  ただ、研究者が移ってくるのかという質問があって、それに対して、この委員会として、別にアンケートを採らなくてもいいのでしょうが、どういう形で答えるのかということについては考えなきゃいけないかと思うのですが。
 お願いします。
【山中委員】  アンケートというのは非常に危険なもので、聞き方によってどんな答えでも引き出せるんですね。だから、大抵の多くのアンケートというのは、こういう答えを引き出したいからこういう質問をしようという形で作るわけで、ですから、これはかなり慎重にならないといけないと考えます。
【梶田座長】  ありがとうございます。
【山内委員】  よろしいですか。ここで御質問があったのは、日本国内ではなくて、世界的にLHCに人が今集中していると。この方々がILCに移ってくるのでしょうかということだろうと思います。ですから、国内のアンケートでは多分だめだと思います。国際的にこれをやろうと思ったら、世界中でアンケートを採るわけには多分いきませんので、少し知恵を絞った、何か調べ方が必要だろうなとは思います。アンケートではないような気がします。
【梶田座長】  分かりました。ありがとうございます。具体的にどういう知恵を絞ったらいいでしょうか?
【中野座長代理】  世界の動向とか、起こるべき予想ができるだけ明確な方に、こういうふうになりますよというたたき台を出していただいて、それをこの場で議論するというのがいいのではないでしょうか。そんなに誤った予想にはならないような気がするので。LHCでどういう結果になったときにどういうことが起こりそうだということに関しては、わりと意見が一致するのではないかなと考えます。どなたかに書いていただかないといけないと思いますけど。
【山内委員】  意見書を求めるような形ですか。
【中野座長代理】  意見書というか、駒宮さんでも山内さんでも構わないですけど、こういうことが起こりそうだということをまず書いていただいて、それをこの場で議論する。
【梶田座長】  それは外国など、誰かに聞くわけではなくて。
【中野座長代理】  外国に聞くわけではなくて、単に予想して、こういうことが起こりそうだと。時間的にも無理ですよ、外国に聞くのは。
【酒井委員】  それまでにどういう物理が明らかになっているかとか、いろいろなことによるのでは?
【中野座長代理】  そうです。
【酒井委員】  だから、予想なんてつかないのでは。
【中野座長代理】  いや、そんなことはないのではないかなと。
【初田委員】  高エネルギー物理という枠で動くのでしたらそうでしょうけど、宇宙だってあるし、物理学者は、全然違うことをやり出す可能性は十分にあるので、予想ができるようなものなのかという危惧を持ちます。
【中野座長代理】  メーンのパートは、ハイエナジーフロンティアをやっている人や、ビヨンドスタンダードモデルの実験をやっている人たちではないかなとは思うのですが。そういう人たちが、LHCで今後2、3年でどういう結果が出たときにどういうふうに動くかというのはある程度予想はつくのではないかと思いますが。限定的に。宇宙の人とか、原子力をやめたとか、そういう人まで含めると、それは予想がつきませんが、そうでない人に関してもつかないですか。それもついていなかったら、どうやって国際協力を得ようとしているのか、逆に聞きたいですけど。
【駒宮委員】  もちろんラフなそういうエスティメートは多分できると思います。しかしそれが、この委員会で皆さんに納得していただけるかどうかというのは、別の問題ですけれども。それは多分できると思います。
【梶田座長】  例えばILCを今まで検討している中で、そのような公式なエスティメートをした結果とかはないのですか。
【駒宮委員】  それは多分今やっている最中だと思います。
【梶田座長】  では、これについていかがいたしましょうか。
【駒宮委員】  これについては、17日までに何か持ってこいというのはちょっと厳しいかもしれない。
【梶田座長】  少なくとも17日までにはどうするかは決められたらなとは思うのですが。17日が終わったら、ほとんどある程度こういう方向で、ということで合意できて、具体的に依頼をするなら依頼をするし。
【駒宮委員】  来週リニアコライダーコラボレーションの幹部が全員日本に来るんですよ。そのときに、少し話して、どのようにしたらいいかというのを少し相談してみます。
【梶田座長】  分かりました。では、そういうことで、来週の打合わせをもとにお聞きして、この委員会として判断するということでよろしいですか。
【中野座長代理】  推進派の方だけの意見というのは、少し信用できないかと。もう少し何か客観的というのは無理かもしれませんけれども、もう少し距離を置いた方から、きっとこうなるのではないかという意見も聞きたいです。
【駒宮委員】  それは、まず誰かが何かを作って、それを後でもんでいただくということではいけませんか?
【中野座長代理】  いやいや、そう言っているんです。
【駒宮委員】  分かりました。
【中野座長代理】  はい。そういうものがあったほうが議論しやすいので、どなたかに働いていただいて、こうなるのではないかという予想をしていただく。
【梶田座長】  では、具体的に働いていただくのは一応駒宮先生ということでよろしいですか?
【駒宮委員】  それはむしろ、問題は実験よりも加速器を作る方の人数ですね。多分そちらの方が重要だと思いますので。
【梶田座長】  おっしゃるとおりですね。それは来週のILCコラボレーションでは、加速器の方までは分からないということですか?
【駒宮委員】  多分リニアコライダーコラボレーションの中でそれを今やっている最中だと思うのですが。
【梶田座長】  では、とりあえず次回の委員会でその辺のことをお聞きして、更に議論をするということでよろしいでしょうか。
 では、そのようにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 ほかに本日何か議論することございますでしょうか。よろしいですか。
 では、これで本日の議論を終了したいと思います。最後に事務局から連絡事項がありますので、お願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  本日の議事録につきましては、後日出席委員の皆様にメールにて内容確認をお願いしたいと思います。
 それから、本日御了解いただいた部分についてはホームページにて公表したいと思います。
 また、次回の日程につきましては、先ほど御説明しましたとおり、2月17日の9時半からということでお願いしたいと思います。お忙しいところ、恐縮ですが、よろしくお願いいたします。会議資料につきましては、いつものとおりで、必要であればこちらの方から郵送させていただきますので、そのまま机上に置いていただければと思います。
 以上でございます。
【梶田座長】  それでは、本日の会合を終了いたします。本日はどうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

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