国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議素粒子原子核物理作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成26年8月27日(水曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 素粒子原子核物理作業部会(第2回)の議事録について
  2. 欧州、米国における素粒子物理学の動向について
  3. 今後の議論の進め方等について
  4. その他

4.出席者

委員

梶田座長、中野座長代理、岡村委員、小磯委員、駒宮委員、徳宿委員、初田委員、山内委員、松本委員

文部科学省

山脇大臣官房審議官(研究振興局担当)、常盤研究振興局長、土屋文部科学審議官、安藤振興企画課長、嶋崎素粒子・原子核研究推進室長、成相加速器科学専門官

オブザーバー

東京大学大学院理学系研究科吉田教授

5.議事録

【梶田座長】  それでは、時間になりましたので、国際リニアコライダーに関する有識者会議素粒子原子核物理作業部会の第3回を開会いたします。
 本日は御多忙のところお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
 では、早速ですけれども、本日の出席状況につきまして、事務局の方から報告をお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  それでは、本日出席状況についてお知らせいたします。
 酒井委員、清水委員、棚橋委員、中家委員、山中委員、横山委員におかれましては、本日、所用のために御欠席です。
 出席は全部で9名でございまして、定足数8名ですので、有効に成立しております。
 また、本日は、天文学分野で素粒子に関連した研究動向に関して説明を頂くために、東京大学の吉田直紀教授に御出席を頂いております。
【吉田教授】  よろしくお願いいたします。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 それでは、続いて、事務局より本日の配付資料の確認をお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  本日の資料について、御確認をお願いいたします。
 資料1が、素粒子原子核物理作業部会(第2回)の議事録(案)についてでございます。資料2が、素粒子原子核物理作業部会における論点(イメージ)、資料3が、素粒子原子核物理作業部会今後のスケジュール、資料4、超対称性理論の現状と展望について、宇宙論等の観点から概観、資料5、宇宙線研究の動向、資料6、望遠鏡と加速器と衛星を使って素粒子の性質に迫る、資料7、素粒子原子核物理作業部会(第1回)資料6に関する質問への回答でございます。
 そのほか、机上に配付しておりますが、青色のドッチファイルにつづっております資料、こちらは前回同様でございますので、資料の中身については、御説明を省略させていただきます。
 それから、本日の配付資料として机上にお配りしておりますが、資料7の次に、初田委員からの提出された御意見というのがございますので、そちらについては、本日御議論いただくというところまではございませんが、一度配付させていただいております。
 以上でございます。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 まず議題1、素粒子原子核物理作業部会(第2回)の議事録案ですけれども、これにつきましてお諮りしたいと思います。既に事前に確認の依頼が事務局の方から回っているかと思いますけれども、もし何かこの場で御意見があればお願いいたします。
 よろしいでしょうか。では、特に御意見がなければ、資料1につきましては、このとおりで決定とさせていただきます。
 引き続きまして、次の議題で、議題2、宇宙物理、天文学分野における研究動向についてということで、前回の会議でアナウンスしておりました、宇宙物理、天文学分野における素粒子に関連した研究動向について、関係者等から報告を頂き、議論を行うということを考えています。
 では、まずは超対称性理論の現状と展望について、宇宙論等の観点からの概略を、松本委員から報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【松本委員】  前回、こういうタイトルでお話をまとめてくれと言われまして、こんな感じでお話ししていきたいと思います。
 どういうことをお話ししたいかというと、LHCのファーストランが終わって、超対称模型について、主に理論の人ですけれども、どのように考えているのかというのを、多少概略ですけれども、まとめさせていただきたいと思います。ページ数は少ないんですけれど、よくしゃべるので、もしかして時間がかかるかもしれませんが。
 超対称性模型をなぜ考えるか。いろんなモチベーションはあると思うんですけれども、コライダーに関係している話ですと、やはり電弱対称性の破れの背後にある理論を探るという、これが一番大きいことになります。ちなみに、ここに書いた線が、標準模型できちんと計算したヒッグスのポテンシャルです。ここに山があって、この後ずっと落ちていくんですけど、これがいわゆるちょっと前に駒宮先生からお話があった不安定性に関係するものですけれども、トップマスに非常にセンシティブで、この山はトップマスが軽くなると右上に、重くなると左下に下がって、我々のバキュームの安定性に話がつながる。ただ、今回の話は、更にこのすごく小さい丸のところを拡大してみますと、よく見るこういうElectroweak symmetry breakingのバキュームがあるわけです。これは何を意味しているかというと、一義的には、ほとんどポテンシャルがなくて、どこからかこのヒッグスの原点における質量項がタキオニックになるという構造が生成されるような物理が背後にあるだろうということです。ここが山になるような。
 このようなタキオニックな質量が出るような例というのは、別に素粒子に限らず、もちろんいろいろあるわけです。一番よく知られていて、今回のケースに最も類似する例というのは、超伝導です。この場合ですと、実はヒッグス場と言われているものは、いわゆる電子のクーパーペアになるわけですけれども、なぜこのような山ができるかというのは、電子間に働く相互作用で理解されていて、超伝導の方の物理はよく分かっているわけです。
 一方、電弱対称性の破れで何が知りたいかというと、このポテンシャルが大体ここら辺でどういう形をしているかというのは分かったんですけれども、なぜこれがこういう形をしているかということを知りたい。もちろん、先例がありますから。ちなみに、超伝導の場合は、対称性が破れた結果、いわゆる電磁力の対称性であるU(1)が破れて、光が質量を持って、磁場が超伝導体のように侵入しなくなるという効果になるわけですけれども、これをシンプルに拡張したのが、いわゆるテクニカラー模型というやつです。何か新しいフェルミオンがあって、それが凝縮することによって電弱対称性が破れるだろうと。だけど、このアイデアは余りうまくいかない、現状うまくいってないという話になっています。
 そこで、みんなは何を、僕よりもっと前の世代の人たちですけれども、何を考えたかというと、ツーステップで電弱対称性を破ろうと。何かというと、何か最初対称性があって、そいつが破れる。破れると、ヒッグスの質量項というのを理論が持てるようになって、更に何らかの理由で、主には輻射補正によってなんですけれども、によって、その質量項がタキオニックになると、こういう2段階を。最初の対称性を破った段階では、電弱対称性が破れないんですけれども、ここからの輻射補正の効果によって破れると。
 このアイデアは、これまで考えられてきたほとんどの電弱対称性の破れの模型と共通の構造で、超対称性が一番有名ですけれども、他にもコンポジット・ヒッグス模型、Gauge-Higgs unification等のExtra Dimension模型、あるいは、最近では、スタンダードモデルでプランクスケールでバウンダリーコンディションを置く模型等々あります。これらは本質的には全部同じで、それぞれここで破る対称性が違うだけです。
 今回の話は、この話(超対称性の話)をさせていただきます。こう見ると、みんな同じ、似たような構造で、似たようなことを考えて、品を変え頑張っています。でも、この中で1つ言いたいのは、超対称性が一番、これまでのニュートリノ振動であるとか、宇宙のバリオン数であるとか、あるいはインフレーションであるという、様々な標準模型を超える物理を示唆する証拠を非常にシステマティックに、かつコンシステントに入れられる唯一の模型と言っても過言ではないと思います。こう大きなスケールの絵を描きましたけど、問題はここで、ピックアップするとこんな感じになっていて、この原点周りのヒッグスポテンシャルというのは、基本的には2つのパラメータで記述されます。それは、ここの一番ミニマルの点と原点からの距離、これがいわゆる電弱スケールを与えるわけで、あと、ここのカーバチャーですね。ここの曲率がヒッグスマスの自乗を与えるということになります。もちろん、これはもう何回も何回も過去数十年にわたって議論されてきたことですけれども、超対称性理論を考えると、この2つのパラメータに関係がつきますよ。びしっと、すごく厳密な関係ではありませんけど、大体の関係がつきますよという話で、これは日本人が非常に大きな役割を果たしたところでもあります。
 ちょっと字が小さくて申し訳ないんですけれども、縦軸がヒッグス質量です。この線が、現在LHCで得られた情報の125から6GeVぐらい。横軸が、これはSUSYスケールと言われているものですけれども、パラメータと思ってください。ヒッグスマスとSUSYスケールの間には、大体このぐらいの幅はありますけど、関係があって、超対称性を考えると、ヒッグスが比較的軽く出る。少なくともせいぜい140から50GeV以下ぐらいに出るという非常に大きな予言があって、LHCはこれを見事に満たしたわけですね。このことを意外にみんな忘れて、SUSYがいい悪いを議論し出すことがあるんですけど、唯一ヒッグスマスを予言して、うまくいった理論というのは、超対称模型です。
【駒宮委員】  すいません、そこの下の何乗というのが読めないんですけれども、左から幾つかと言っていただけますか。
【松本委員】  4、6、8、10、12、14です。
【駒宮委員】  ありがとうございます。
【松本委員】  SUSYスケールがどこで破れているかというのはもちろん分からないのですが、どのスケールにわたっても、大体軽いところに出てくるということが私の主張したいことであります。
 そうすると、このエレクトロウィークスケールが分かったらヒッグスマスが大体分かるという構造を超対称性は持っているわけですけど、では、このエレクトロウィークスケールは幾つぐらいか。これはもう実験的には、はるか昔から分かっているわけですね。これはフェルミコンスタントの値のことですから。それは大体100GeV自乗です。
 超対称模型の範囲内では、この距離というのは、1個式を書かせてもらいましたけど、このように、専門的に言うと、リーディングタームがあって、輻射補正の1次があって、2次があって、ブラブラブラという構造になっておりまして、左辺のvというのがこれです。これは、ゲージカップリングコンスタントの重みがついていますが、この値は分かっていますので、大体左辺は65の自乗ぐらいです。
 そうすると、最初SUSYが考えられた頃というのは、LEPが始まる前の話ですけれども、みんなこの右辺にある各項が数十GeVの自乗で、全部足し合わさって65GeVの自乗ぐらいが出るだろうと、もう非常に自然な考え方で思っていたわけです。ただし、LEPをやってみて、LEP2の実験の最後の段階で、100GeVぐらいの粒子まで発見できるはずでしたのが、発見できませんでした。だから、少なくとも左辺の各項が100GeV自乗ぐらいになっている――左辺の各項のm数字というのは、大体超対称性パートナーの超対称性粒子の質量だと思ってくださって結構です。見えなかったわけですね。
 本来だったらば、これ、いわゆるナチュラルネスという問題を議論するんだったら、この段階でSUSYをあきらめてしかるべきだったはずなわけです。でも、あきらめなかった。それはなぜかというと、これが分かってしまったからですね。ここで、実は、これはよく見るゲージカップリングコンスタントのユニフィケーションの話ですけれども、標準模型も大体合っているんだけど、いまいち厳密には合っていない。でも、超対称性模型が10の6乗GeV以下にあれば合うということが分かって、これはすごいぞということで、やっぱりSUSYは本当じゃないかということで、話は続いていったわけです。
 ここでみんなはどう考えたかというと、各項が数百GeVの自乗で、足し算して、ちょっとキャンセレーションがあって、65GeVの自乗が出ていただろうという話になっていたわけです。ただし、LHCが走れば、ここら辺は絶対見つかるはずだと期待していたけれど、見つからなくて、そうすると何をするかというと、100GeVではなくて、数TeVぐらいのやつが足し算して、65GeVが出てもいいじゃないかと。多少質的に悪くなるけど、定性的には別にいいという感じの話になるわけです。だから、本当のギャップというのは、実はここであったはずなんですね。これが、言ってみれば、超対称性模型の――ここでキャンセレーションしなければいけないということを、いわゆるSUSY超対称性模型におけるナチュラルネスの問題が定義されていました。
 どういうことかというと、超対称性がない標準模型と、ここら辺、数百GeVぐらいにSUSYパーティクルがいるというシナリオは、まだ完全に死んだわけではありません。これからLHCの13TeV、14TeVが走って、更に、high-luminosity runningとかも走るかもしれませんけど、まさしく徹底的に調べ尽くそうとしているSUSY模型と、あるいは、もう超対称性模型の全ての超対称性粒子が重いかどうか分かりませんけど、幾つかは加速器で作れないほど重くなっているかもしれないと言われている模型、それをそれぞれ比較してみたいと思います。
 これが標準模型と、Electroweak SUSYというのは、ここら辺の感じでSUSYを考えているもので、これがHigh-scale SUSY、あんまり名前がよくないんですけど、ハイスケールといっても、そんなにハイスケールなわけではないんですけれども、ちょっとTeVスケールぐらいのSUSY、これがここら辺ですね。なので、素粒子論に対するいろんな成績表をつけてみました。
 このfine-tuningレベルというのは、どのぐらいの桁、チューニングして、65GeVを出さなければいけないかという量で、数が小さければ小さいほど厳しい。例えば、10のマイナス自乗というのは、100引く99で1を出しましょうという話ですし、10のマイナス32というのは、32桁の数と32桁の数を引いて1桁出す、そういう話です。
 超対称性模型を入れると、幾つかカップリングユニフィケーションというのが実現できるという話をしまして、それはスタンダードモデルのときには合いませんけど、SUSYの場合はうまくいくと。あるいは、これ、超対称性模型を入れると、ダークマターの候補が自然に出てくる。標準模型ではないですけれども、こういうSUSYではある。SUSYを入れることによって得られるメリットというのは、SUSYを入れる限り、ほぼいつでもあるわけです。ただ、これは理論の人が悪いんでしょうけど、超対称性模型を売るときに、入れたことによって出てくるデメリットというのを余り強調せずに話を進めてしまうんですけど、実は、結構あるんですね。
 例えば、超対称性を導入することによって、いわゆるフレーバーCPのソースというのか、それを破るソースというのが現れて、それが実験といまいち合わない。あるいは、せっかくカップリングがユニフィケーションしても、プロトンが余りにも速くディケイしすぎて、これも神岡の実験と合わない。あるいは、グラビティーノ問題、これは宇宙の問題。ポロニー問題というのは後で説明しますけど、宇宙の問題があるんですけれども、宇宙論とのコンシステンシーが非常に悪くなる等々というのがあって、Electroweak SUSYのときにはこういう問題があるんですけれども、ここは一旦目をつぶって、あるいは、別のメカニズムによって解決しておいて、それでもSUSYはelectroweakに合って、LHCが走ればみんなハッピーになると、そういうふうに思っていたわけです。ただし、SUSYスケールをちょっと重くすると、ここら辺のデメリットがどんどん消えてきまして、その点では、非常にシンプルなモデルでメリットだけをゲットできるという構造になっています。
 ここら辺のフレーバーCP問題とかプロトンディケイというのは、超対称性模型の粒子が軽くなればなるほど強くなります。だから、それを重くしていくと、どんどんその効果が弱くなって、デメリットが消えてくるのは、言ってみれば、当然の結論と言えば当然の結論です。定量的に言うと、10TeVとか100TeVぐらいで十分なんですけれども。
 ポロニー問題は説明するのが余りにも複雑なので、グラビティーノ問題に行きますけど、超対称性模型というのは、重力子の超対称性パートナー、グラビティーノというのを予言します。グラビティーノというのは、他の超対称性粒子と同じぐらいの重さですけれども、相互作用は極めて弱いというような粒子です。これが、ここはそうなんですけれども、宇宙初期でインフレーションが起こって、その後は宇宙が熱化されて、いわゆるビッグバンが起こると考えて、それがCMBやプランクの実験でほぼ証明された形になっているわけですけれども、そういう宇宙の非常に高い温度の時代がありますと、幾ら相互作用が弱いといえども、少しは作られる。その作られたグラビティーノが非常に長い寿命を持って――なぜかというと、相互作用が弱いからです――標準模型の粒子や、あるいはダークマターに崩壊する。そうすると、非常に遅い時間で、例えば、宇宙が始まってから1秒後とかですけれども、崩壊されると、宇宙初期で作った、例えば、軽元素とか、そういうものを壊してしまう。あるいは、ダークマターがたくさん出すぎて、宇宙をオーバークローズしてしまうという問題があって、それをグラビティーノ問題といいます。
 このグラビティーノの寿命というのは、このスケールに非常によります。Electroweak SUSYの場合だったら、1分、10分、100分とか、そんな感じになりますけれども、10倍、100倍重くしていきますと、あっという間に0.1秒、0.001秒等々になって、1秒よりもずっと前に崩壊してくれる分には、宇宙論的には全く問題がありません。というわけで、高くすると、非常に宇宙論と相性がよくなるというのは、ここにあります。
 あと、これは単なる楽しみのために書いたものですけれども、カップリングがユニファイすると言いましたけれども、ここはSUSYはよく合っている。ここは合っているといいますけど、拡大してみると、こんな感じになって、実は、スケールがちょっと高くなった方が、もっと合うんですね。これは、このぐらいの差だから、別にこれだけずれていてもかまわないんですけれども、例えば、Electroweak scale SUSYでちょっとずれても、このぐらいのずれというのは、ガットスケールの粒子がほどよく1桁ぐらいの範囲で分布していて、そのスレショールドコレクションで合わすことができるから、だめとは決して言いませんけれども、ハイスケールのSUSYは、そんなことをしなくて、大体非常にナチュラルに全部いくというのがちょっと面白いところです。
【初田委員】  すいません、ちょっとスケールが、さっきの2ページ目の、駒宮さんが聞かれた横軸10の4乗でしたね。
【松本委員】  そうですね。10の4乗、10の6乗、8乗、10乗、12乗。
【初田委員】  だから、ヒッグス粒子の質量とコンシステントな超対称性のスケールは10TeVから100TeVということですね。それと、今の後半のHS-SUSYでの超対称性のスケールは1TeVぐらいなので、そのあたりの整合性を聞かせてください。
【松本委員】  これは、実は、Aタームというもう1個パラメータがあるものを、1つ固定して書かせてもらっています。その値を今ゼロと仮定して書かせてもらっているんですけど、その値を少し上げていくと、この線がぐっと左に移動する形になっています。そうすると、100GeVから1TeV、数TeVぐらいのSUSYスケールでヒッグスマスを説明することができて、これを僕はエレクトリックスケールSUSYと定義しています。
 それに対して、ハイスケールというのは、ここら辺ですね。10TeVから100TeVとか、そこら辺は、タンジェントベータを変えていくことによって、もともとこのパラメータをゼロして、Aタームというのをゼロにしておいても、きちんとヒッグスマスが説明できますという感じです。
【駒宮委員】  すいません、これ、どっちがタンジェントベータが大きいんですか。左の方が大きいの?
【松本委員】  タンベータが大きくなると、ヒッグスが大きくなる方向に動きます。
【駒宮委員】  ヒッグスマスが大きくなる?
【松本委員】  大きくなる。これが一応僕が知っている限り、ほぼ最新に近い計算で、もちろん、はるか昔から似たような計算は何回もやっていますけど、これが2ループかなんかで計算して、3ループの繰り込み群を使ったものです。
 実は、だから、このカップリングユニフィケーションは単なるお遊びですけれども、もうちょっとシリアスなのは、やっぱりプロトンディケイで、こういう次元5型の相互作用があると、エレクトロウィークスケールSUSYはもう完全に死んでしまうということが知られていますけれども、実はちょっと重くする、10TeV、100TeVにすると全然問題ないですよ、むしろ次の実験なんかで面白い領域に入りますよという感じにはなってきます。
 さて、ここら辺を踏まえて、もちろんエレクトリックスケールSUSYは、まだまだパラメータ領域が残っていて、それは調べられてしかるべきで、それはみんな楽しみに待ってはいるんですけれども、もしそれでも見つからなかった場合、どんなことをみんな考えているかというと、スーパーシンメトリーで、こんな感じのスペクトルになっているんじゃないかと。実は、全ての超対称性粒子が重いと仮定するのは都合が悪いんですね。それは、ダークマターが少なくとも含まれていると思っていますので、ダークマターが1TeVを大きく超えてきますと、どう考えても対消滅断面積が小さくなりまして、そうしますと、ダークマターが初期宇宙で残りすぎる、いわゆる量が多く残りすぎるという現象が起こります。そうすると、宇宙をオーバークローズしてしまいますので、合わない。だから、昔、SUSYパーティクルは全部TeVぐらいにごそっといると思っていたんですけれども、ではなくて、ある種の粒子は重くて、ある種の粒子はまだそこにいるという考え方が、現在主流になりつつあります。それで、1、2、3というのは、比較的、現在アーカイブとかを見ると、この3つの大体どれかに分類できるのではないかと。もちろん、これには入らないやつも幾つかありますけど。
 これは、ほとんどのSUSYパーティクルは重いけれども、いわゆるゲージ場の超対称性パートナーは軽い。これはヒッグスの超対称性パートナーは軽いけど、ほかはちょっと重い。あるいは、これはスクォークと呼ばれているクォークのスーパーパートナーは重いけど、それ以外は軽いという、こういう3つですけれども、これ、勝手に書いたわけではなくて、それぞれきちんとモチベーションがあります。
 細かいことを言うと話がちょっとややこしくなりますけど、1番目は、超対称性模型というのは、超対称性がどう破れたかまで含めて理論が完成します。その理論の最も簡単な、ミニマルな模型というのは、このスペクトルを予言します。これは現在、ピュアグラビティメディエーション、あるいは、ミニマルスプリットと言われていて、IPMUで大はやりしていますけど、あるいは、アメリカのバークレー、プリンストンあたりは、ここら辺が好きです。
 2個目は、いわゆるフォーカスポイントと言われているシナリオですけど、これは現在はelectroweak naturalnessなんていう名前で呼ばれたりもしています。これはどういうことかというと、この式に戻ってもらって、ミュースクエア以外の項というのは、実はもっと高いスケールの物理で関係していて、かつ少ない数のパラメータで書かれていて、例えば、この最初の項というのは、xというパラメータが関数で、こっちもxというパラメータが関数で、以下も全部xというパラメータで書かれているという、いわゆる関係があって、そのxのパラメータで見ると、その前の係数が非常に小さくなっている。つまり、一個一個が独立と思うのは間違いではないかという考え方です。全部足したものが小さければ、更に、このミューというのが小さければ、別に電弱スケールをチューニングしていないじゃないかという考え方です。そうすると、右辺の右側の項というのは、一個一個のスーパーパートナーが重いんだけど、そのマスというのは上の物理でコントロールされていて、それを全部電弱スケールの寄与に足したときには、きちんとキャンセルするような形になっている。ということで、これは重くてもナチュラルネスを保つ。ただし、この最初の項もやはり小さくないと話が成り立たなくなりますので、これは実はヒグシーノマスと呼ばれていて、ヒッグスの超対称性パートナーの質量です。なので、こんなスペクトルになります。
 最後の3個目というのは、実験モティベーテッドな話でして、ミューオンの異常磁気能率というのが測られていまして、それがどうやら標準模型とずれているかもしれないと。もしそれがずれていて、それを超対称性の枠内で説明しようとすると、やはりある程度、いわゆるカラーを持たない粒子は軽くなければいけないという要求になりまして、それが軽ければ十分将来の加速器実験で見える範囲にあって、面白いではないかという議論です。
 これ、最後のトラペになりますけど、これを踏まえて、こういうことが本当に実現したら加速器実験に対してどんなインプリケーションがあるんだろうかという、ここでの部会のメーンテーマになるわけですけれども、それは、やはりLHC、ハドロンタイプのコライダーとILCを比較しながら見ると、非常に物事がすっきりします。
 ハドロンタイプのコライダーというのは、プロトンとプロトンをぶつけて、この場合、カラードパーティクルはとても重くて作れないとしても、ノンカラードパーティクルでしたら、LHCは十分作る能力を持っています。作ったものが、いろんな崩壊をして、最後ダークマターに崩壊するようなことが起こるわけですけれども、その崩壊の過程で出てくる標準模型の粒子たち、レプトンであるなり、Wボソンであるなり、たまにはタウレプトンだったりもするでしょうけれども、そういうのをきちんと測ってやって、探査することは可能です。
 ただし、1つ条件があります。ここで新しい粒子ができて、ダークマターまで崩壊される際に出てくるエミットされる粒子が十分目立っている、ビジブルであるというのがもちろん条件になります。もしそれが目立たない場合、例えば、ミッシングと書いてあるのは、この粒子があって、何か崩壊しているけれど、崩壊している粒子が、例えば、ダークマターとの縮退が強いため、非常にエネルギーが弱いとか、クォークとか、そうした見づらいものであると、これらからシグナルの情報を得られませんから、ここからイニシャルからグルーオンを引っ張ってきて、このグルーオンを見ることによって、シグナルを測ろうと頑張るわけです。ただし、LSCですので、バックグラウンドはなかなか強い。敵が強いので、このクロスセクションが非常に非常に大きくない限りは、やっぱり厳しくなる傾向にはあるという話になります。
 レプトンコライダーも、実は同じです。eプラス、eマイナスをぶつけて、こういうシグナルを見て、このシグナルが目立てば十分オーケー。だけども、目立たなかったら、今度はこれ、イニシャルに飛んで挿入しているのは、ぶつけているのはエレクトロンですから、それはここからフォトンを出して、このフォトンをシグナルとして見ましょうと。考え方は同じです。何が違うかというと、こういう場合でも、フォトンは、レプトンコライダータイプは、バックグラウンドがハドロンコライダーに比べると、シグナル比で見て少ないので、十分見ることができ、あるいは、イニシャルのエネルギーモーメントがきちんと分かっていることによって、その情報も十分使える、あるいは、イニシャルのポラリゼーションもコントロールできるから十分に使える等々のことがあって、この方法が非常によくワークするという形になります。
 この中で一番大事で言わなければならないのは、こういうことです。ここに新しく出てくるパーティクルとダークマターの質量差がある程度大きければ、LHCでもかなりリーチは高いです。小さくなってくると、リーチは本当になくなります。ILCは、一方、これが何であろうともいけます。けれども、エネルギーに上限がありますので、その半分ぐらいまでしか作れないという話になります。
 そうすると、非常に縮退しているなんて、そんな偶然みたいなものだから、まずは気にしなくてもいいだろうと思われる方がいるかもしれませんけど、話は逆です。実は、こういうものが縮退するというのは、例えば、ヒグシーノだったり、ウィーノだったりすると、もともとスタンダードモデルのゲージ対称性の同じマルチプレットに入った違う成分同士の質量です。だから、いろんな表現の場があり、それらが縮退し出すと、非常に混ざったりして、質量差が大きくなって、表現同士が非常にヒエラルキカルに、そんなに詰まっていなくて、縮退していないと、逆に、表現の中のコンポーネント間の質量差というのはどんどん小さくなります。だから、例えば、ここでヒエラルキカルになっている場合というのは、一番軽い粒子はダークマターとの縮退が強くなる傾向にあり、その方がパラメータ的にはヒエラルキーのときは自然になる。だから、縮退しているときは、「そんなのはアクシデンタルなのだから、まずはLHCでがんがんやって、縮退が大きいところを調べればいいじゃないか」というわけにはなかなかいかないと僕は感じています。
 最後これが、非常に簡単にですけど、現状をまとめさせていただいたものです。
 サマリーですけれども、超対称性模型というのは、様々な電弱相対称性の背後にある物理の模型の中で、一番コンシステントで、いろんな問題に対して、ほぼ完璧な形で記述している模型であると。
 LHCの始まる前、今言ったエレクトロウィークスケールSUSY、あるいは、もう少し重い、ハイスケールSUSYというのは、LHCの結果を見て作られたわけではありません。それより前にきちんとありました。そこは言っておきます。例えば、IPMUの柳田さんがいますので話を聞くと、2つはもちろん知っていたと。ただし、すぐ後にLHCが控えていたことは確かですから、そうすると、LHCで見える物理にみんな集中した。それは、そうですね。見える物理の方。それがだめだったから、じゃ、こっちの方かなと思って、下の方に軸足も置きつつ、こっちもまだ続けるみたいな形の理論屋さんは多いと思います。
 実際に前者のシナリオというのはまだまだ魅力的でして、LHCのこれからの13TeV、14TeV、あるいは、もしかしたらハイルミノシティで十分検証されるべきですし、みんながどんどん注目すべきです。でも、そういうもので見られないとしても、実は、ハイスケールのSUSYというのはかなりナチュラルな形で存在していまして、しかも、それは電荷を持たない粒子をいかに効率的に探査するかということに焦点が当たってくると思っています。
 以上が、私が述べたいことです。
【梶田座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、今のプレゼンに基づきまして議論をお願いしたいと思います。何かあればお願いいたします。
【初田委員】  4ページ目で、軽いゲージーノとか、ヒグシーノとか、それ以外の軽い粒子があるから、それを探索できるんだということですね。質問は2つあって、1つは、軽い粒子が出てくるというのは、超対称性が存在する場合にはダークマターの候補として軽い粒子があるはずだからというふうに聞こえたのですが、理論の枠組みの中で軽いものが必ず存在するということが言えているのかということです。それから、もう1つの質問は、ダークマターが超対称性粒子で説明されないといけないという根拠がどれくらい強いのか。つまり、ダークマターというのが、本当に今まで我々が知らない物質でできているという根拠が、どれくらい宇宙論などから強く拘束されているのかという点です。
【松本委員】  1つ目の質問から。これは、ダークマターが軽いから、こういうスプリット型のスペクトルになっているのかという質問ですけど、それはノーです。どうしてこういうスプリット型のスペクトルになっているかというのは、一個一個理由は違うんですが、例えば、1個目だと、一番シンプルな超対称破れの模型を考えると、これ、ちょっと細かいテクニカルな話になりますけれども、こういうほとんどの粒子はSUSYブレーキングの破れをじかに拾って、あるマスをもらうと。だけど、ゲージーノだけは、1ループサープレスされた形で必ずもらって、100倍ぐらいの差がつくというのがまず前提にあるので、こういう形になる。前提のスケールがどこかというのは、ヒッグスマスで合わせています。
 2個目は、これは先ほど言ったとおりです。この式がありますので、ここが軽くなければいけない。これが重くて、これが軽いというのは、そもそもナチュラルネスに基づいて、このスペクトラムです。
 3個目は、これはg-2の話がありますので、これは実は、前の2つに比べると、もうちょっとアーティフィシャルではありますけれども、g-2に寄与するような超対称性粒子は軽くて、それ以外は重い。そうすると、自然に現在のLHCのリミットを逃れることができるという考え方でできたもので、その結果、ダークマターの候補としても役に立つという議論になっています。
 2つ目の質問は、SUSYでダークマターを説明しなければいけないのかといもの。端的に言うと、そう、まず何かニューフィジックスを入れないとダークマターの候補がないことは、ほぼ確立しました。昔は、プリモーディアルブラックホールがいいという話がありましたけど、どうやらそれも全領域が否定されつつあるようです。そうすると、何かは絶対入れなければいけない。入れなければいけないときに、SUSY以外の、また、ここで書かれたパーティクル以外にもダークマターの候補があってもいいんじゃないか。そのとおりだと思います。ただし、ここで言いたいのは、ここである粒子があって、いわゆるアールパリティというものが保存している場合、これはプロトン崩壊を起こさないためにも必要ですけれども、そうすると、これがダークマター粒子であるかどうかに限らず、この粒子が重くなると、宇宙で残りすぎて、宇宙をオーバークローズしてしまうので、そもそもこれがダークマターにどうかよらずに、もう理論的に死んでしまうという構造があります。
 だから、電気的に中性で安定な粒子がいて、それなりに相互作用を持つとすると、ある程度軽くないと宇宙論が破綻するという構造がある。破綻させないくらいぎりぎりだと、ちょうどダークマターに合っていて、ダークマターだと非常にエコノミカルに説明できるという考え方だと思います。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 ほかに何かありますでしょうか。お願いします。
【中野座長代理】  ここ、緑、ログスケールで書いてあるのがよく分からないんですが。理想的に、eプラスeマイナスコライダーでこういうものをサーチするとしたら、全くテクニカルとかお金のことを考えなかったら、どれぐらいのエネルギーがあると、この3つ全てについて確としたことになりますか。
【松本委員】  お金とか考えなくていいというコメントですると1TeVぐらいです。1TeV、数TeVぐらいですね。
【駒宮委員】  1TeVと数TeVで大分違う。
【松本委員】  すいません。理論家にとっては、1桁は同じようなもので。
 つまり、僕が言いたかったのは、10TeV、100TeVではないと言いたいんですけれども、それも場合によります。ここの3のケースですと、ダークマターのマスがどんなに重くなっても、せいぜい多分800GeVか700GeVぐらいだと思います。このヒグシーノの場合は、1TeVです。ダークマターのマスがどんなに重くなっても。もちろん、先ほど言ったナチュラルネスの話で、ミューは小さければ小さいほどいいですので、軽い方が見つかる可能性が大なんですけれども、そんなことを忘れて、宇宙論が破綻しないためには、1TeVです。左の場合は、3TeVです。
【中野座長代理】  eプラスeマイナスコライダーでそれを見つけようと思ったら、エネルギーが掛ける2で。
【松本委員】  掛ける2が本当に必要かどうかは分かりません。ダイレクトに作るには2倍ですけれども、インダイレクトの兆候でも十分見つかればいいと思うと、例えば、eプラスeマイナスコライダーがあって、ガンマZがあって、その間にダークマター及びそいつのSU(2)パートナーが回って、更にまたガンマZに行って、ミュープラスミューマイナスに行くとか考えたとします。そうすると、スタンダードモデルでは、そういうプロセスが起こります。でも、ニューフィジックスからの輻射補正という形で寄与があって、それがちょっと見えれば、もちろん、見えたらもっとエネルギーを頑張って上げようという話になるとは思いますけれども、最初の段階で見えればいいと思うと、2倍弱にはなっているはずなんですけれども。
【中野座長代理】  例えば、新聞発表で、これ見えたということになると、やっぱり新粒子を発見しないといけないと思うんですけど、そうなると2倍。
【松本委員】  そうですね。ただし、でも、標準模型からずれて、何かある、しかも、これとコンシステントだといったら、最後は何とか加速勾配を上げられないかとか、いろいろ考えるとは思うんです。だから、2倍までいかないと思います。
【中野座長代理】  先ほど、ダークマターにディケイする前の粒子とのエネルギー差がないと、なかなか見つからないということもおっしゃいましたが。
【松本委員】  LHCですね。
【中野座長代理】  ILCの場合は大丈夫ということですか。
【松本委員】  ILCは平気です。それはなぜかというと、バックグラウンドが少ないから。もし間違っていたら、コメントください。
【駒宮委員】  バックグラウンドが少ないだけじゃなくて、ほかの粒子がいないからですね。ハドロンコライダーの場合というのは、この絵は若干ミスリーディングで、プロトンとプロトンがぶつかって、新粒子生成に使われているみたいですので。
【松本委員】  そうですね。ほかのところでいろんな反応が起こっていて、だから、それも含めて、バックグラウンドになっているんだとしたらですね。
【駒宮委員】  これも、前方後方に物すごいジェットがびゅっと出て、真ん中のというのは、ビーム方向はふらふらになっていますよね。
【松本委員】  そうですね。スペースがないんで、こういう書き方にさせていただきました。
【梶田座長】  ほかにいかがでしょうか。お願いします。
【中野座長代理】  ファインチューニングの話がやっぱり気になるんですが、ファインチューニングというのは、理論家の立場からいくと、本当はもっと深い物理があって、結果的にファインチューニングのように見えているけど、今は説明できないからファインチューニングと呼んでいるのか、それとも、たまたまそういうことが確率的にこのうちで起こってしまわなくてはいけなかったから起こっているのか、どっちなんでしょうか。
【松本委員】  なかなか深い。答えはイエスでありノーであるんですけど。どういうことかというと、分かっていないからなんです。
 つまり、先ほど御指摘のとおり、高いスケールの、SUSYの更に上にあるスケールの物理で、あらゆるパラメータがコントロールしていて、たまたま低いエネルギーで見たらファインチューニングしているように見えるという、この可能性はあるわけですね。それの一端を使ったのが、まさしくこの2番目のフォーカスポイントと呼ばれているものですけど、これは、何回も繰り返しになりますけれども、こういう低エネルギーで見たら、一個一個独立な項というのは、実は、高いスケールで単純なパラメータで支配されていて、それのパラメータで見たら、チューニングしていないじゃないかという言い方です。これに更にミューを含めて、そういう関係式が成り立っていたら、チューニングなんていう話はなくなるわけですね。
 あるいは、全く別な考え方として、いろんなニュー、あるいは、いろんなMSUSYとか、いろんな項の値をとる宇宙がいろいろたくさんあって、その中で、僕らが住める宇宙がたまたまこういう宇宙だったという、ランドスケープ的な考え方があります。どちらが正しいのかと言われたら、すいません、この世の誰もまだ答えられないと思うんです。
 もう一つだけコメントさせていただきたいのは、ファインチューニングが、例えば、10のマイナス2乗から10のマイナス4乗になりましたといったときに、理論が100倍悪くなったのかというのも、あんまり自明ではないわけですね。2乗引く2乗というけれども、これは、例えば、ミューで見たら、ミューをチューンすればいいのか、それとも、ミュー自乗でチューンすればいいのか、あるいは、確率関数的に考えたら、それが100倍悪いから100倍悪いのか、それとも、それよりもっと悪くなっているのか、もっとましになっているのかというメジャーの問題もあるので、そこを含めて、議論が今まさしく進んでいる最中と言っても過言ではないと思います。
【駒宮委員】  SUSYの一番のモチベーションというのは、多分、理論的には、ラディエーティブコレクションで2次発散が相殺されるということですよね。
【松本委員】  そうですね。
【駒宮委員】  要するに、ソフトブレーキングタームというのは、それを破らないように、うまくやっているわけですよね。
【松本委員】  自然に、超対称性がスポンテイニアスに破れているからです。
【駒宮委員】  そうですね。だから、そうすると、やはりファインチューニングの問題というのは、非常に重要な、シリアスな問題になってきて、先生がおっしゃるように、10の4乗なんて本当にあったらまずいんじゃないかと思うんですけれども、それは違うんですか。
【松本委員】  少なくとも10の32乗と比べればいいのではないか。
【駒宮委員】  それはもちろん、それは論外ですよ。
【松本委員】  でも、10の4乗があっていいのかというけど、僕は、それは理論家に聞くと、多分、全員、理論家ごとに答えが違う質問だと思うんです。実際に4桁チューニングするのを気持ち悪いと思うか、こういうことが起こり得る、さっき言ったように、上の高い理論で、各パラメータにコリレーションがあるとすると、そんな話はそもそもなくなるわけです。そういうことは、もちろん期待していますけれども。
【駒宮委員】  分かりました。ありがとうございます。
【梶田座長】  お願いいたします。
【山内委員】  何とお聞きしていいか分からないんですが、私はもちろんSUSYは手の届くところにあってほしいと強く思っておりますが、かつて、これまでいろんな異論があって、何という粒子がどこにあるはずだという話というのはもう山のようにあったと思うんですね。その中には、もちろんあったものもありますが、実際にはそうでないものの方が多分多いと。
 非常にトラウマになっている例がトップクォークなんですよ。つまり、かつて、30年以上前ですけれども、10GeVだとか、15GeVだとか、あるいは30GeVだとかいう話がいろいろあって、そのたびにeプラスeマイナスコライダーというのを世界各地で作ったという歴史がありまして。ところが、全然手の届かないところにあるというのが後から分かったということもあるわけですよ。
【松本委員】  そうですね。
【山内委員】  そういう話に比べて、今のここで言っている定量的な予言というのは、そういうものとは質的に違う、信頼すべきものであるというふうに言えるとお考えですか。
【松本委員】  トップクォークは、10GeV、20GeVにあったという、あるいは、それがどんどん重くなっていったりしたというときには、みんなどんな議論に基づいてトップ質量を10GeV、20GeVと言っていたかによるんですけれども、少なくとも超対称性模型が、例えば、ここら辺はよく示唆されることですけれども、これをどのぐらいシリアスに受け止めるか。あるいは、ダークマターがあって、それが非常に宇宙論とコンシステントであることをどう受け取るか。あるいは、これはもっと最初にありますけど、この由来として、このフレームワークが非常にワークしているのを、どれだけシリアスに受け取るかという話になってくると思います。
 トップクォークの場合に、これに匹敵する議論があるならば同じことですし、なければ、SUSY、この議論の方が、よりバリアブルというか、信じている人が多いというぐらいしか言えないんです。すいません。
 トップクォークが数十GeVという、それは、その頃私はいなかったと思うので、ちょっと分からないです。
【駒宮委員】  その頃いたので。その頃は、新しい加速器ができるたびに、いろんな理論屋がそこにいるという論文を出してきて、ジョン・エリスという人がそれをプロットしたんですよ。そうしたら、ちょうどペトラという僕らがやっている実験の中心エネルギーのところにピークがあるんです。だから、その頃はそういうシリアスな議論ってなかったんですよ。今みたいな、こういう何かモチベーションがあってということはなかったんです。トリスタンが完成した後で、Bのライフタイムとか、Bのミキシングとかいうことから、トップは本当に重いのではということになった。
【松本委員】  Bとの差。
【駒宮委員】  そうです。そこら辺から、きちんとした理論が出てきたわけです。
【松本委員】  そうですか。もうちょっとアドホックな感じで、10GeV、20GeVで言っていた時代だったということですね。そうすると、大分違うと思います。
【駒宮委員】  そのとき日笠さんという人がいて、その人だけ200GeVと言っていたんです。
【松本委員】  そうですか。もちろん、日笠さんは知っています。そこの学生でしたから。
【梶田座長】  ほかにいかがでしょう。お願いします。
【初田委員】  1ページ目のスライドなんですけど、もともとヒッグスのポテンシャルって、超伝導の理論とのアナロジーで出てきたわけで、基本的にはヒッグスポテンシャルがあって、そこから粒子の質量が決まったり、凝縮値が決まるという構造ですよね。しかし、もともと本当にヒッグスポテンシャルって存在するのか、それとも、全く別の考え方というのはないのか。要するに、超伝導に引っ張られる理論を作る必要が本当にあるのかということに関しては、何か議論はあるのでしょうか。
【松本委員】  何かがコンデンスしているというのは、多分、確かだと思います。それは、ゲージ理論があれだけきちんと分かっていて、それにコンシステントにやるためには、確かこの方法しかないという証明がそもそもありません。繰り込み可能な範囲内で、スピン1の粒子を記述しようとすると、ゲージ理論しかない。ゲージ理論に質量を与えようとすると――次元を変えるとか、物すごいことをやれば別ですけど、でない限りは、何かのコンデンセーションでスポンテイニアスに破るしかない。
 つまり、何かがコンデンスするということは、オーダーパラメータに対応するポテンシャル、つまり、オーダーパラメータをずらしたときに、どれだけエネルギーを失うかということです。
【初田委員】  そこが本当かというところが質問です。全く未知の考え方がない、そういうことは誰も考えてはいないのか。
【松本委員】  僕の知る限りはないですね。たまにそういう話が出てきては、よくつぶされていますが。なので、逆に言うと、ないことを証明せよと言われていると思うんですけれども、ノーゴーセオリーにまで至っているかどうかはちょっと分からないです。今のところは。
【初田委員】  逆に言うと、ヒッグスポテンシャルが存在するという証明は、何をもって行えばよいのでしょうか。
【松本委員】  それは、ヒッグス3点を見るのが一番だと思います。だから、3点をみんな見たいと思っているんだと思います。
【岡村委員】  いいですか、1つ。
【梶田座長】  お願いします。
【岡村委員】  私はSUSYとか全く素人ですけれども、今のお話を聞いてちょっと思ったのは、宇宙の中でダークマターのエネルギー密度の割合というのは、割と精密に測られているので、その割合の数値だけから、何か粒子に対する制限はつかないのでしょうか。
【松本委員】  割合ということは、宇宙の中にダークマターが全質量のうち何%を占めているかということが、今、非常に精度よく分かっていて。
【岡村委員】  そうです。エネルギーの27%とかですね。かなり細かく決まっているというので。
【松本委員】  実は、それをもとにして推測されたダークマター候補のことをWIMPといいます。WIMPというのは、もっとジェネラルな概念なんですけれども、超対象標準模型を、たまたまダークマターのことは忘れて作ったら、WIMPにぴったり一致するものがあったという構造になっています。
 ただし、今の割合を説明する候補が唯一WIMPだけかというと、そんなことはないです。ただし、一番パラメータが少なくて、いろんなことの詳細によらずに決まる候補がWIMPであるということになっています。
【梶田座長】  大分議論もありましたけれども、いかがでしょう。よろしいですか。では、どうもありがとうございました。
 では、続いて、私の方から、宇宙線研究に関する動向について話すということになっております。
 では、報告させていただきます。きょうの報告の内容なんですけど、まず簡単にイントロダクションとして、この分野のことをちょっとだけお話ししまして、私の話は余り一個に絞られているものではなくて、本当に分野の動向ということで、そのうちテーマとして4つ、あるいは4.5ぐらいの項目につきまして、観測的あるいは実験的なお話をさせていただきたいと思います。どれだけこれがILCと関係あるかというと、あんまりない感じです。
【駒宮委員】  ダークマター。
【梶田座長】  ダークマターだけです。
 それで、まずイントロなんですけれども、1912年の宇宙線の発見以来、宇宙から飛来する高エネルギーの放射線、すなわち宇宙線のスペクトル、粒子の種類、発生天体、加速メカニズムなどが研究されてきています。宇宙線そのものの理解のために、宇宙線が地球で起こす現象の解明なども進められてきたと。
 一方、近年ですけれども、宇宙で起こっている、光ではその本質が観測できない(そして、多くの場合には激しい)現象があるということが判明してきています。例としては、連星中性子星の合体に伴う重力波ですとか、超新星爆発に伴うニュートリノ、あるいは、同じように言えば、(ビッグバンに伴う)ダークマターなどがあります。
 現在の宇宙線の研究というのは、この2つの大きな研究テーマを研究するような研究分野へと発展しておりまして、先ほど言ったように、きょうは重力波、ダークマター、高エネルギーガンマ線、最高エネルギー宇宙線について、特に2011年から12年の頃に、CRCと言っていますけれども、宇宙線分野のコミュニティですが、その将来計画の検討が行われましたので、それをもとに報告させていただきたいと思います。今ありましたように、ILCとの関係がちょっとあるのはダークマター関連です。
 それから、あと、宇宙線の分野でニュートリノはあるんですけれども、これにつきましては、別途、今後報告があるということなので、きょうは省きます。ただ、最高エネルギーと関連したニュートリノについてだけちょっとお話しいたします。
 それで、まず具体的な例として、重力波の観測ですけれども、目的としては、時空(うつわ)、それから、物体(なかみ)、これの動的な関係の解明と。重力波でしか本質的な理解が得られない天体現象の観測(例えば、ブラックホール生成の瞬間などを観測する)。あと、この分野の人たちの夢としては、将来は、インフレーションに起因する原始重力波を直接観測したいという夢があります。当面は、ただし、このインフレーションに起因する原始重力波の観測というのはターゲットにはなっておらず、もう本当に天体現象として、連星中性子星の合体ですとか、連星ブラックホールの合体、超新星爆発、これらに伴う重力波を観測したいというものです。これから述べますプロジェクトでは、具体的には、大体年間にこの連星中性子星の合体等が10例程度観測することが予想されております。超新星爆発ももちろん見たいんですけれども、こちらについては、我々の銀河内に限れば、数十年に一度程度しかないので、そんな頻度はたくさんないと。
 それで、世界的な動向ですけれども、現在、アメリカ、ヨーロッパではLIGOとVirgoというのが、3キロから4キロメートルスケールのレーザー干渉計が、これは2010年より前に動いていましたけど、現在はこれを高度化中、あるいは改良中ということです。日本では、KAGRA、これは3キロメートルの基線長ですけど、これを建設中です。そのほか、あとはちょっと付け足しみたいなものなんですけど、そのほかは、インドだとか、オーストラリアだとか、中国とかで、このクラス、大きさのレーザー干渉計を、建設計画だか希望だかは持っていると。あと、ヨーロッパでは、7~8キロメートルクラスの次期の計画、これはEinstein Telescopeと言っていますけど、これは計画中。また、スペースでのレーザー干渉計の計画等もあります。
 日本のKAGRAプロジェクトですけれども、これは現在建設中ですが、世界的に見て2つの特徴があって、1つは、干渉計全体を地下に設置しましょうと。これで表面に置いた場合に比べれば、地面振動がおおよそ100分の1になる。それから、あともう一つの特徴としては、干渉計の感度を制限する1つの大きい要因が鏡の熱運動なので、それを20ケルビンの極低温に冷やして、これを問題にならないレベルにしましょうということで、ちゃんとやれば量子力学的揺らぎで感度が制限されるような干渉計になって、これで年間10例程度の観測が可能になります。ただし、残念ながら、このイベントレートの予想誤差は1桁、あるいは1桁以上あるというような感じです。これについて、共同研究者は、今、約230人。
 では、いつこれらの干渉計で設計感度が達成して、重力波天文学ができるのかということなんですけれども、一応アメリカのLIGO、ヨーロッパのVirgoでは、大体の時期を言って、2019年LIGO、2021年Virgoというような感じで言っています。KAGRAについては、細かいことまで、そういうところまでやっている余裕がなくて、設計感度達成時期というのは明確にしていないんですけど、ともかく2017年度に低温の観測を始めて、可能な限り早く設計感度に持っていきたいと。
 世の中に何で3つも――3つあるいは4つなんですけど、アメリカのLIGOには2つ持っているので、そんなたくさんの干渉計が必要なのかということなんですけれども、この絵がそれを示していて、複数の干渉計を使って、それの観測データの時間差を用いて、重力波の発生天体の方向を知りたい、それで天文学に結び付けたいということです。これ、どうしてもKAGRAはちょっと後から始めているということで、こういう絵になっちゃうんですけれども、もしヨーロッパとアメリカだけであれば、超新星の重力波をS/N=10で観測したとして、どのくらいの確度で発生天体の方向を決められるかというのは、こんな感じで、基本的には2つなので、かなり円状に残ると。それが3つありますと、もう1個コンストレイントが入って、かなり点に近くなるという、そういうことで、世界中に3台が必須だという、そういうことになります。あと、それができれば、光の天文学、あるいは、もちろんニュートリノ等との共同観測へもつなげたいと思っています。
 続いて、ILCと唯一関係ありそうなダークマターのお話になるんですけれども、ダークマターに関連して、ダイアグラムを非常に一般的にこのように書くとします。ここはq、qバーとしたのは、もちろん、これ、l、lバーでも何でもいいんですけれども、加速器実験は、基本的には、普通の粒子からダークマターである恐らく数十のパーティクルを作るという方向。それ以外に、いわゆる直接探査というのがあって、これはダークマターと――ごめんなさい、こっちからこっちだね。矢印が逆です――普通の粒子をぶつけて、またダークマターと普通の粒子が出ていくという、そういう方向の探索です。それとともに、もう一つ、間接探索というのがあって、これはガンマ線やニュートリノでやりますけれども、これはこちらですね。ダークマター同士がアニヒレーションして、スタンダードモデルのパーティクルになって、それの最終的なものを見るという、そういう探索です。こういうことで、直接探索や間接探索というのは、加速器実験での探索と、全体があって全て理解が進むというような形で考えることができるかと思います。
 だけど、そう簡単にはいかないよというのを次のページに示したんですが、ダークマターの探索というのは世の中でいっぱいやられていて、これはDAMAという実験で、毎年ダークマターと考えられる信号領域のイベントレートの変化をプロットしているんですが、それをプロットしていくと、地球がダークマターの海の中をある方向に向かって走っているということを使って季節変化を予想したのとまさに同じで、これは9シグマだと言っているわけですね。それから、これはCDMS2なんですけれども、信号の領域に予想されるバックグラウンドは0.41ぐらいなのに、3イベントあったとか、あるいは、マルチュウカーのいろんなものを見る実験では、これは陽電子の超過ですけれども、スタンダードモデルではこう減っていくはずだったのが、ここでぐわっと増えていると。まさにあるパラメータを仮定すれば、ダークマターとコンシステントと。それから、これは銀河中心からのガンマ線ですけれども、どうもexcessがあるというんで、あるパラメータを仮定して、フィットすれば合うというようなことで、こういう感じですので、要は、なかなか多分一筋縄ではいかないような分野だという感じを私は持っております。
 いずれにしても、ダークマター実験の直接探索の現状につきまして報告いたします。ここら辺に色がついている領域があるんですが、これが全てポジティブにここにありますといった領域なんですけれども、昨年、ラックスのデータが出て、これより上がエクスクルードということで、この実験で否定されたような感じはあります。それから、数字を仮定すると、ここら辺がダークマターだと。これ、私は分かっていません。LHCによって、あるアグリージョンが、この図で右下のように寄ったと言っているんですけど、これ、ちょっと私は分かりません。
 直接探索の実験の方法ですけど、今はやりは、液体のキセノンとかアルゴンを使って、それもダブルフェーズ、液体中から新ダークマターが、キセノンかアルゴンを反跳して、そのアイオナイゼーションを気相に取り出して見るという方法と、1相でシンチレーションだけを見るという方法があります。それから、そのほかにも、Cryogenicのテクニックを使ったり、非常にシンプルで、きれいなNalを使ったり、その他いろいろとあります。
 一応日本の研究を簡単に紹介しておきますと、XMASSという実験を今、神岡でやっていて、彼らとしては、今、有効質量100キロのものを観測していますけれども、将来は1.5と言って、有効質量1トンくらいに近未来にしたいと。更には、将来的には10トンにしたいというような希望を持っています。
 こちら、非常にビジーな絵で申し訳ないんですけれども、ここら辺が現在のエクスクルードリージョンですか。もし1.5という1トンの質量のXMASSを作れば、ここら辺までエクスクルードできる。2という10トンのもので、ここら辺までというような、そういう感度を持つものを将来やりたいということで提案しています。
 ともかく、これ、日本の一例ですけれども、ダークマター実験も非常にローバックグラウンドで難しいんですけど、ともかくトンから10トンスケールへと、恐らく世界的に大方がしてきます。要求バックグラウンドのレベルというのを10-2/ton/keVee/dayという物すごく低いレベルが要求されている。ということで、恐らくこのダークマターの実験というのも、非常に高度なもの、かつ高価なものになってきますので、世界的に集約の方向に向くというふうに考えています。
 次に、高エネルギーガンマ線の方に移ります。こちらの方は、もう既に次期の計画としては、世界協力でもうやりましょうという方向で、日本もこれに是非参加したいということで、準備をしています。
 これはどういうものかと言いますと、この絵にあるように、大きい望遠鏡、23メートル口径の望遠鏡を中心に4台ほど置き、その周りに12メートル口径の望遠鏡を置き、更に、その周りに6メートル口径程度の望遠鏡を置いて、巨大な範囲をカバーして、宇宙からの高エネルギーガンマ線の天文学を推進しようという、そういう研究です。サイエンスとしては、宇宙線の起源、宇宙の巨大加速器を探す、あるいは、ブラックホールに伴う宇宙の高エネルギー現象の研究。基本的には、これは天体物理の、あるいは宇宙線的な研究ですけれども、暗黒物質対消滅からのガンマ線の探索というのも項目として入っています。日本も積極的にこれに参加したくて、日本は、特にこの中心部の大きい望遠鏡の鏡と撮像装置を分担したいということで計画をしています。日本の参加は100人ぐらいで、全世界では1,200人が、今これに参加していると。
 ここら辺はあまり――これは、感度が全エネルギー範囲にわたって約1桁よくなりますよということなので、それはよくて、あともう一つは、これはどのくらいの天体が観測できるかということなんですが、今現在の装置で100数十レベルの高エネルギーガンマ線天体が観測されていますが、これが1,000レベルになり、もし銀河面スキャンをすると、これが現在のHESSの銀河面スキャンのデータなんですが、それがこの下側のレベルで、非常に細かく分かるようになるというようなものです。
 じゃ、これがダークマターとどう関係しているかなんですけれども、狙う対象は銀河中心。だけど、銀河中心そのものは非常にほかのバックグラウンドが高いので、それからちょっと離れたドーナツ状のところを探して、そこにexcessがあるかどうかということを探すことで、これ、横軸がダークマターWIMPの質量で、縦軸がアニヒレーションクロスセクションですが、多分ここら辺が……。もう分かりません。すいません、忘れてしまった。ともかくCTAでこのレベルまで探査できて、ある程度のパラメータ空間については探査ができるということだそうです。
 この絵なんですけど、これは直接観測と間接観測と加速器実験が、どういうところにそれぞれ感度を持っているかというのを見たもので、横軸がWIMPのマスで、縦軸が、今度はダークマターと物質とのスピンインディペンデントなクロスセクション、直接探索は、これのうちの上の部分について感度があって、ガンマ線は、主にハイマスのWIMPに感度があって、一方で、例えば、LHCでは、主にローマスのWIMP領域に探査の感度があると。ただし、これ全部じゃないです。100%は白抜きなんですが、そうではなくて、ほとんど紫とかで、黒よりは感度があるという、そういう意味です。
 続いて、以下はもう本当に宇宙線プロパーのお話です。最高エネルギー宇宙線のことについて、ちょっと現状をお話しいたします。これが宇宙線のエネルギースペクトルなんですけれども、最高エネルギー、10の20乗まできていると。よく知られていますけれども、ここら辺、20乗よりちょっと前のエネルギーで、宇宙線が3度Kの黒体輻射のフォトンと衝突して、パイオンを作って、この宇宙線のエネルギーは減るはずだということが分かっているので、したがって、ある意味、ここら辺が宇宙線の最高エネルギー上限になると。いずれにしても、ともかく宇宙のどこかでは、このような10の20乗電子ボルトというような粒子が加速されていますので、それがどこで、どのように加速されて、どう伝搬していくのかというのを知りたいという、そういう科学的なモチベーションがあります。
 それを探索するために、調べるために、現在、世界的に見て2つの大きい観測施設がありまして、1つは、南米にあるPierre Auger Observatoryで、これは2004年から動いていて、3,000平方キロメートルの面積をカバーするようなアレイになっています。もう一つは、こちらは日本も参加しているものですけれども、Telescope Arrayで、これはアメリカのユタ州で、700平方キロメートルを観測領域として持っている、こういう2つの装置があります。
 これでどういうサイエンスが得られているかというのをちょっとだけ御紹介いたしますと、これがエネルギースペクトルなんですが、これは10の20乗で、縦軸は、これ、Eの3乗がかかっているので、生のスペクトルではないんですけど、ともかく形を見ていただくと、20乗より前に急激にフラックスが落ちるところがあって、まさに予想されたGZKカットオフと矛盾ない形になっています。ただ、分かるのはどうも南天と北天で、もし全てがコンシステントであれば、何となくカットオフの位置が違うというような示唆が得られていて、これが本当なのかどうかというのは、これはどういう意味かというと、どれだけ近くにソースがあるか、どれだけ遠くにあるかという、そういう南天と北天の違いがあるかという問題なんですけれども、それが本当かどうかというのは、多分、今後詰めていく必要があると。化学組成は、これはちょっと飛ばします。
 あと、今年出たニュースとしては、最高エネルギー宇宙線の加速天体の今後調べる、そういう手掛かりが得られたのではないかと。これ、上側がTelescope Arrayのデータなんですけれども、天空のある方向からexcessがあって、単なるexcessという意味では5シグマですけれども、これがどこでも起こってもいいということで、そういうことを考えれば、3.4シグマのexcessと。これは南天のAugerですけど、こちらはそんなにexcessは今のところ見えていない。これ、昨日聞いたんですけど、これは去年のデータも増やすと、もうちょっと統計的有意性が上がっているということでした。
 こういうことで、最高エネルギー、特にこういうある1点から来ているような、そういう生成源の情報が得られ始めているような感じなので、コミュニティとしては、更に大きいものを作りたいというような話が出ていて、北米のTelescope Arrayについて言えば、それの4倍ぐらいのアレイを作りたいとか、あるいは、ISSに最高エネルギー宇宙線の観測装置を上げたいというような、そういう、以前はJEM-EUSOと言っていたんですけど、今はちょっと名前が変わっているようです。かつ、その次の世代の実験は世界的枠組みで進めたいというような形で、今、世界な議論が進んでいます。
 あと、最後、ちょっとおまけなんですけど、高エネルギー宇宙ニュートリノについて。もしGZKの効果、最高エネルギー宇宙線がなくなるという効果があるなら、その過程でパイが作られて、パイが崩壊してニュートリノができるはずなので、これが見つかるはずだと、これがあるはずだというので、これがあれば本当にGZK効果の非常に強い証拠だというので、かつ、一般に高エネルギー宇宙ニュートリノは宇宙線ハドロン加速現場の観測になるということで、世界的に今2つの大きいプロジェクトが走っています。日本は、IceCubeに少人数参加しているような感じです。もしGZKのニュートリノがあれば、10の18乗eVぐらいのニュートリノ、これもEの2乗かかっていますけど、ともかくそのくらいのエネルギーのニュートリノがあるはずです。
 これがIceCubeのデータなんですが、今まで分かったのは、大気ニュートリノのバックグラウンドではないexcessが、今、5.7シグマのレベルであると。だけど、残念ながら、GZKニュートリノはまだ見つかっていないというような状況で、これについても、これ自身も非常に大きい発見ですけれども、次世代の測定器の提案などがなされているような状況です。
 まとめますと、100年来の宇宙線の問題の解決に向けまして、大きく今研究は進んでいると思います。重力波やダークマターなどの研究も着実に進んでいます。あと、分野全体の感覚としては、宇宙線の観測研究も相当グローバル化が進んでいると思います。特に、このため、グローバルなコミュニティの一員として、プロジェクトをどう考えていくかというような考えが広がっているかと思います。
 以上です。
 今度は司会に戻ります。ということで、何か、余りILCとは関係ないのかと思いますが、一応近くの分野の状況として報告させていただきましたけれども、何か御質問その他ございますでしょうか。
【中野座長代理】  隣からいいですか。
 CTAによるダークマターサーチなんですが、方法がよく分からないんですが、これ、対消滅で出てきたガンマ線のスペクトルとピークサーチになって?
【梶田座長】  ピークサーチではないですね。だらんとした。
【中野座長代理】  だらんとした?
【梶田座長】  既に示しましたが、このような感じにです。
【中野座長代理】  何ページでしたか。
【梶田座長】  これは9ページ。excessがこんな感じになるだろうと。
【松本委員】  ピークサーチもしますよね。
【梶田座長】  しますけれども、多分、あると思っているのは、こんな感じですよね。そうでもない?
【松本委員】  ピークサーチの方が信頼性は高いと思います。
【梶田座長】  もちろん、それは高い。
【松本委員】  基本的には、ピークは、シグナルの強さが10分の1から100分の1ぐらいになるんですけれども、それでも、そちらの方が感度の点ではいいと思いますけど。

【中野座長代理】  それで、マスが重い方が見つかりやすいというのは、バックグラウンドの問題ですか。
【松本委員】  そうだと思います。バックグラウンドがどんどん落ちていくのはね。
【中野座長代理】  バックグラウンドが少ないから、マスが高いところの方が感度がいいということですか。
【松本委員】  はい。
【中野座長代理】  対消滅の頻度は下がるはずですよね。
【松本委員】  あとは、エナジーレゾリューションが関係してきますよね。エナジーレゾリューションが高い方が、全体的には……。
【中野座長代理】  高い方が、相対的なエネルギーレゾリューションがいいので。
【松本委員】  ちょっとずつよくなってくるんじゃないかなと。
【梶田座長】  ほんのちょっとずつですね。
【松本委員】  ほんのちょっとずつですけどね。
【中野座長代理】  分かりました。
【梶田座長】  初田先生、どうぞ。
【初田委員】  先ほどは説明を飛ばされた10ページで、水色の領域の100GeVから1TeVというところがダークマターが許されるところとだと思っていいんですよね。
【梶田座長】  はい。
【初田委員】  キセノン100などの線は、この下がエクスクルードされているということですか。
【梶田座長】  この上がエクスクルードされているということです。
【初田委員】  分かりました。
【梶田座長】  お願いします。
【駒宮委員】  先ほどのガンマ線の話なんですけれども、あれはモノクロマティックなガンマ線が出てくるということなんですか。
【松本委員】  はい。
【駒宮委員】  どうやって。アニヒレーションとか?
【松本委員】  1ループで。1ループダイヤグラムですね。
【駒宮委員】  それは非常に少ないでしょう。
【松本委員】  だから、100分の1なんです。
【駒宮委員】  100分の1なんてことはないですよ。
【松本委員】  それは、ちょっと構造があって、エンハンスすることがあると知られている。threshold singularityというので。
【中野座長代理】  同じことを聞こうかなと思ったんですけど。ニュートラルなのに、どうしてって。
【松本委員】  それは、こういうことです。ダークマターが、ウィークアイドルスピンを持つマルチプレットの中のニュートラル成分だとします。例えば、ヒグシーノやウィーノの場合です。そうすると、チャージドヒグシーノ、チャージドウィーノというスーパーパートナーが、ほぼマスが縮退しています。それは先ほど言ったLHCで縮退してくると見づらいという場合に対応していて、そうすると、ダークマターがWボソンを交換することによって、今度、チャージでガンマ線がつくということです。
【駒宮委員】  ありがとうございます。
【小磯委員】  非常に単純な質問で、KAGRAのことで教えていただきたいのですが、KAGRAを含めて、ほかの2台も、3キロから4キロのスケールですが、これは、どうしてそのサイズのものを作ることになったのでしょうか。
【梶田座長】  恥ずかしながら、そこまで深く歴史的な勉強をしていないので分からないんですけど、少なくともKAGRAについて言うと、山の大きさで基本的に決まってしまっていて、これが限界です。
【小磯委員】  作る場所の環境で、最大3キロになったと。
【梶田座長】  そうです。
【小磯委員】  更に、長期的には大きなものも計画されているということは、長くとればとるほど遠くが見られると言うことでしょうか。
【梶田座長】  もう単に比例して、例えば、200メガパーセク先だったものが、400メガパーセクというように、倍にすれば単に倍になります。
【小磯委員】  リニアに。
【梶田座長】  はい。
【小磯委員】  分かりました。
【初田委員】  10ページ目と12ページ目を比べて見ていたんですけど、例えば、XMASなどの観測で上からずっと押されてきて、更に観測が進んで、XMASS2となると、マイナス48乗のクロスセクションのところまで下がってくるということですね。これに対して、10ページ目の図の水色の領域というのは、下は底なしでどんなに小さいクロスセクションのものも、理論的にはあり得るんですか。
【松本委員】  あります。一例は、コアナリゼーションリージョンと言われているので、ダークマターが完全にシングレット、だけど、例えば、タウレプトンのスーパーパートが非常に縮退する場合は、宇宙初期には両方いるので、アバンダンス、ダークマターが作りすぎられるということはないですけれども、現在の宇宙ではスタウが全部いなくなって、何も反応しないダークマターだけが現在残る。そうすると、何もできないです。タウを加速器で作ればいいんですけど。だから、それはいいんです。
【中野座長代理】  CTAによる直接測定のときも同じようなことが言えるんですか。対消滅によるガンマ線のときも、ガンマ線は出てこなくてもいいということがあるんですか。
【松本委員】  そうです。その場合、コアナリゼーションリージョンのときには出てこなくて、そのときの唯一の方法は、縮退していると言いましたので、その1個上にある、だから、タウレプトンのスーパーパートナーとか、そういうものを作って、それがダークマターに崩壊する過程を見る。ただし、縮退はしていますので、そのときは、さっき言ったILCの最初の方からガンマ線が出るのが唯一の方法だと思います、今のところ。
【駒宮委員】  すいません。
【梶田座長】  お願いします。
【駒宮委員】  重力波なんですけれども、LIGOとかVirgoで今まで随分測っていましたが、まだ見つかっていないですよね。その条件を考えると、1年で10発、1オーダー違うかもしれませんけど、ということは、要するに、今までのやつとセンシティビティが100倍ぐらいいいということなんですか。
【梶田座長】  基本的に、今改造しているのは、今までよりも、いわゆる重力波干渉計のセンシティビティとして1桁上げているんですけれども、それはイベントレートで3桁上げているので。
【駒宮委員】  3桁上げているの?
【中野座長代理】  それも聞きたかった。ここである予想誤差1桁以上というのは、感度の問題と、それから、本当にそういう、例えば、ブラックホール連星がどれぐらいあるかという、その2つのことによっていると思うんですけど。
【梶田座長】  感度は仮定していますから。もう単に、本当にアストロフィジカルな予想誤差が1桁以上ありますよと。
【中野座長代理】  だから、その感度以外の、本当にそういう天体がどれぐらいあるかというところに1桁以上ばらつく。
【梶田座長】  はい。
【駒宮委員】  3桁というのは、視野のボリュームで勝つということですね。
【梶田座長】  そうです。
【中野座長代理】  分かりました。
【梶田座長】  ほかにありませんでしょうか。よろしいですか。
 では、最後ですけれども、天文分野における素粒子に関連した研究動向ということで、東京大学の吉田先生の方から御説明を頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【吉田教授】  それでは、私の方から、宇宙論と宇宙観測の今後10年-15年ぐらいの展望についてお話しさせていただきます。いくつか資料を追加したりしましたので、こちらの画面の方を御覧いただくと説明しやすくなります。
 はじめに、宇宙論というのは、随分素粒子あるいは原子核に関する情報を得ることができるんですけれども、若干雲をつかむような話の部分もありますので、原理を先に説明いたします。基本的には、これからやる天文観測で、大規模サーベイと呼ばれるような、宇宙の物質分布を探る探索を行います。それをもとにして、その物質分布の滑らかさを見ることで、例えば、軽い粒子、相対論的な粒子がどれぐらいいるのか、また、その質量、あるいは速度分散を測ることができます。典型的には、ニュートリノでありますとか、この会議のコンテキストで言うと、グラビティーノの質量や速度分散を測ることができると。この場合、実は、このすぐ次にお見せしますけれども、その変動分、差分が非常にわずかですので、その差分を捉えるために大規模サーベイというのを行います。
 2つ目ですけれども、もう既に何度か話題になりましたけれども、WIMPダークマターの生成物を検出したいと。検出そのものは、X線でも、ガンマ線でも、あるいは電子でもできるんですけれども、それがそもそもダークマター由来かどうかを判定するのは非常に困難ですので、X線それぞれはダークマターから来ましたとは言ってくれませんから、それを判定するために天文学的観測を使うということができるということになります。これが基本的な方針ですね。
 では、どれぐらいその差が小さいかです。これはコンピュータシミュレーションの結果です。左側が普通のダークマターのみ、今の標準的な宇宙モデルにのっとっています。右側に、ダークマターと、大体質量和で0.2eVぐらいのニュートリノを足したもので、間違い探しのように厳しい状況なのがよく分かると思います。3億光年ぐらいの範囲で探したいと。
 これ、見た目ではもちろん非常に難しいんですけれども、実際に統計量、例えば、パワースペクトルですね。最も基本的な統計量、パワースペクトルを用いますと、ここいら、ニュートリノがなかった場合、ダークマターだけだった場合に比べて、どれぐらい減衰するかというのを、揺らぎの波数、波長分の1の関数としてプロットしてあります。これは0.05eV、0.1eV。今後、興味深いのはこれぐらいですけれども、この差を検出するためには、大体パワースペクトル、揺らぎの振幅でいって5%ぐらいの変動を確かめなければいけないということになっています。ここは大体銀河団のサイズぐらいの波数、スケール。上に書いてありますのが、例えば、こういう大きなスケールを探るときには、マイクロ波背景放射を使いましょうと、この辺は銀河サーベイを使いましょう等々となっています。
 実際にはこんな感じで、宇宙の物質分布は様々な方法で測定します。今、天文学で一番主流になっているのは、この銀河分布ですね。スローン・デジタル・スカイサーベイで探るような銀河の分布です。これは5億光年の。それから、もう一つ、よく御存じだと思われますけれども、宇宙初期のマイクロ波背景放射、これはほとんどダイレクトに宇宙初期の物質分布を表していると。今後精力的に行おうとしているのは、このダークマター分布ですね。重力レンズという手法を用いまして、ダークマター分布を直接測っていきたい。ただし、このときには、2次元で今表示されていますけれども、若干のプロジェクション効果があって、なかなか3次元マップにするのが難しいという難点があります。更に将来にいきますと、電波観測を用いまして、水素ガスの分布を直接ほぼトレースすることができると期待されていて、私の講演の中ほどで、これが究極的な宇宙論サーベイになるであろうというお話をいたします。
 例えば、ニュートリノ質量に関して、現状ですけれども、これがプランクデータを解析して得られたニュートリノの質量の制限で、ざっくり言いますと、0.2eVよりもその和が小さいであろうという結論が得られています。今後ですけれども、ニュートリノ振動の質量差の結果も考慮すると、大体面白いことに0.05から0.1eVにいくと、質量階層がノーマルなのか、インバーティドなのかという示唆が得られるということで、次世代の銀河サーベイ、あるいは重力レンズサーベイでは、その辺を目指してやっていくということになります。ちなみに、こういう観測では、有効世代数、相対論的粒子がどれぐらいの種類があるのかというところまで情報を得られまして、現在のところ、3世代ということとコンシステントであるということが分かっています。
 例えば、銀河サーベイでこれを行いたい、つまり、物質分布の揺らぎを観測して見極めたいという場合、これは将来展望ですね。次世代の銀河サーベイ、大体2020年頃に始まる、あるいは遂行されるようなサーベイの統計エラーがこれぐらいですから、銀河サーベイをやって物質分布をたどると、トータルが大体0.1eVなのか、0.2eVぐらいなのかということが分かると。むしろ今は理論的に、線形理論を使っているだけでは、ここも微妙な差が少しずれてしまうので、摂動論、あるいはコンピュータシミュレーションをやって、ここを正確にしたいという研究が行われています。
 世界的な動向ですけれども、これから5年、10年で様々なサーベイが行われます。最も有名なのが、アメリカがチリで望遠鏡を使って行う――これは地上です――LSST計画ですね。これは伝統的な光学の望遠鏡を使ってサーベイを、ほぼ半天、半球分を、南半球ですけれども、サーベイしていきます。それから、同じような銀河サーベイと重力レンズサーベイを宇宙でやるというので、ヨーロッパのEuclidですね。銀河の撮像と分光観測を行って、宇宙の物質分布を3次元的に探ると。同様な趣旨の望遠鏡として、こちらは赤外線ですけれども、NASAのWFIRSTというものがあります。いずれにしても、私が説明しましたように、銀河分布、物質分布というものを測って、ダークエネルギーの性質でありますとか、はたまた重力理論の検証というのを行うことを目指しています。これは衛星計画はもちろん全天観測、これは半天に近いような観測を行います。
 今お話ししました、これはEuclid衛星で、今後こういう探索は、個々の銀河サーベイとかレンズ探索ではなくて、コンビネーションですね。銀河サーベイもやれば、重力レンズによって宇宙の構造形成の進化の度合いを探るというような、コンビネーションでもって様々なパラメータを制限していくというふうになっていきます。ちなみに、これは、これまでのサーベイ計画は現在進行中、あるいは、計画中、LSST計画はここですけれども、サーベイをはく、空の範囲と、それから、どれぐらい暗い天体まで探すかというものをプロットしたもので、先ほど御紹介したサーベイはなかなか最先端のところをいくということがよく分かると思います。日本の場合には、今、HSCサーベイというのが走っていて、この赤いところですね。これぐらい広く浅くはくものがあります。それから、今後、SuMIRe計画で、銀河の分光サーベイを行っていきます。
 ところで、これまで天文学では様々な電磁波の波長で探索してきたんですけれども、1つだけ未開拓の領域があります。時間軸です。Time Domain Astronomyというものなんですけれども、時間変動天体というのをこれまで探し尽くしていません。これまで見つかった、例えば、超新星爆発でありますとか、いわゆる新星、変光星、そういうのはここに位置するわけです。横軸が変動のタイムスケール、縦軸が明るさになっています。
 トラディショナルなそういう変光天体、こういう色塗りのところで現れていまして、こういうのは全て実はほかの印ですね。ごく最近発見されたものです。この図を見ても分かりますけれども、特に変動が1日、あるいは1日を切るようなものに関しては、全く未開のものとして残っています。残念ながら、どういうものがあるかという予想はなかなか難しいんですけれども、時間変動のタイムスケールからしますと、恐らくコンパクト天体、あるいは、高エネルギー現象に関わっていて、多分、素粒子とか原子核物理、中性子星の状態方程式などに関連することが発見されることだと思います。
 それから、今まで可視光、あるいは赤外を用いたサーベイのお話をしてきましたけれども、1つ、2020年代に大きなキーワードというか、ファシリティになると思われるのは、この電波望遠鏡群、Square Kilometre Arreyですね。これ、南アフリカとオーストラリアに作る予定のものですけれども、電波望遠鏡を並べて、変動天体も追いますし、水素ガスを追って銀河サーベイも行うという野心的なもので、ここにSquare Kilometre Arreyのサイエンス目標が掲げられていますけれども、重力のテストを行うでありますとか、私がやっているような宇宙初期の天体を探りたい、あるいは、宇宙論、ダークエネルギーサーベイを行いたいとか、磁場の起源、生命の起源を探りたいということで、今、天文学でやりたい、今後やっていきたいと思われることがほとんど大体このSKAでできるという、究極の望遠鏡群になると思います。
 特に宇宙論ですけれども、これは、例えば、SKAを用いて中性水素ガスの分布の3次元パワースペクトルを測ったとしましょう。そうしますと、黒で表したのが、これまでの最大規模の2dF銀河サーベイというもので得られたパワースペクトルをとると、そのエラーバーです。赤で示されたのが、このSKAを用いて、ほぼ半天領域にある水素ガスの探索をいたしますと、これぐらいのエラーバーになって、どんな微細なパワースペクトルの兆候も探ることができる。実際、cosmic variance limitedといいまして、人類が測定する限界に達することまでできます。
 これを用いますと、例えば、中性ガスの分布を測ります。それから、その中性ガスの分布から重力レンズ観測を行って、ダークマターの分布を測ります等々を組み合わせますと、例えば、これは予想ですので、フィリューシャンの値を決めていますけれども、ニュートリノの質量と、その有効世代数に関して、大体これぐらいのエラーバーでもって測定することができるということが考えられます。ですから、今プランクでやっているのが0.2よりも小さいという、それぐらいの制限ですけれども、もしここにある0.1に真の値があるとしたら、これぐらいの制限でばしっと決めることができます。
 暗黒エネルギーの方ですけれども、暗黒エネルギーのよくある状態方程式wに加えて、wの時間変化にまで迫ることができます。これがいわゆるアインシュタインの宇宙項で、wがマイナス1で、時間進化はないものと。それから、もし真の値がずれていた場合でも、SKの探索を用いますと、これぐらいの精度、例えば、マイナス0.9プラスマイナス0.0幾つ、時間進化の方は、0プラスマイナス0.1、2ぐらいまで迫ることができます。これは単なるバラメトライゼーションなんですけれども、いずれにしろ、ダークエネルギーが時間的に進化するかどうかということの判定に用いることができます。
 次に、宇宙マイクロ波背景放射の話をしたいと思いますが、原始重力波について、恐らくこの春から皆さんいろんなところで聞かれたと思いますので、割愛させていただきます。
 きょう特にお話ししたいのは、これまではマイクロ波背景放射の観測といいますと、とにかく密度揺らぎですね。温度揺らぎを測って、密度揺らぎの情報からいろんなことを決める、コスモロジカルパラメータを決めるということをやってきましたが、新たなフロンティアとして考えられるのは、このエネルギースペクトルです。マイクロ波背景放射というのは、最も美しいブラックボディのスペクトルをしていて、それを測定したCOBE衛星にノーベル賞が授与されましたけれども、実際には少しだけずれています。今のところ、その上限が与えられている程度ですけれども。
 このずれというのは、実は、宇宙の熱史、エネルギー注入史を反映しているはずです。大きく分けて、μタイプディストーション、あるいは、yタイプディストーションという、この2つのパラメータをもっとお話ししていきますけれども、これまでCOBE衛星の先ほどの観測によって得られた上限が、それぞれこういう値になっています。ここで重要なのは、この2つのものに対して、大体3桁ぐらい向上した制限を与えることができるだろうというのが、将来衛星の展望です。そうしますと、例えば、ここに書いてありますけれども、初期宇宙でダークマターが崩壊してしまった、それによるエネルギー注入が、スペクトルの黒体輻射からのずれとして残っている可能性があると。今、予想、あるいは目標の感度というのはここですから、そういうものが克明に測定できると。こちら、左側のダンピングと書いてありますけれども、これは宇宙の密度揺らぎがありまして、フォトン・バリオン流体がディシペーションを起こして、エネルギーを注入しますので、その分がスペクトルの変化として検出されるというものです。ここに掲げていますけれども、それぞれこの感度に対してどれぐらいの見積りがあるかというので、ダークマターのアナイレーションの場合には、これぐらいの――もちろんパラメータにもよるんですけれども――十分検出可能なぐらいの感度を持つことが可能であろうと考えられて、計画が進んでいます。
 特に面白いのは、μタイプ、あるいはyタイプのディストーションというものですが、例えば、PRISM衛星という、今計画中の衛星を考えますと、スペクトルのずれを観測すること。我々がふだんマイクロ波背景放射で観測するのは、宇宙が始まってから38万年の頃、それよりも以前に、宇宙のいわゆるプラズマガスにどういうエネルギー注入があったかというところをうかがい知ることができるというわけで、今まで見えてこなかったものが見えるようになるので、完全にディスカバリースペースであると思います。もちろん、多分、ここの部会で興味があるのは、何らかの粒子の反応によってCMBあるいは宇宙のガスがエネルギー注入を受けるという、そういうプロセスであると思われます。
 後半ですけれども、もう何度かダークマターの間接探索に関してお話がありました。現状ですと、例えば、これはフェルミガンマ線衛星を用いて、近傍の銀河にあるダークマターの量を予想して、そこからダークマター対消滅の消滅断面積というのに制限を与えるというのが、既に梶田先生からもお話がありました。
 例えば、同じこと、今、大体興味があるのはガンマ線領域なんですけれども、例えば、keV領域で崩壊するようなダークマターのモデルの場合には、X線でそういう痕跡をたどることも可能でありまして、実際に、この春に3.5keVぐらいで非常なアノマリーがあるという報告もありましたので、今後探索していくのに面白いターゲットであるとは思います。これは理論的な予想で、私たちの天の川銀河の中心付近を見ますと、ダークマターがたくさんあって、これぐらい崩壊生成物で輝いている可能性があると。それを、例えば、来年打ち上げます次期X線衛星、Astro-Hなんかで高感度、高エネルギー分解能で観測しますと、例えば、X線の崩壊のラインが見える可能性もあるということで、実際に探索計画が進んでいる。これはもう2年、3年、長くても5年ぐらいの直近の探索計画になると思います。
 次ですけれども、ここで強調したいのが、クロス相関といって、これまで私が赤外、あるいは可視光、それから、X、ガンマといういろんな観測計画をお話ししてきましたけれども、1つ、これから宇宙論のキーワードになると思われるのが、クロス相関というものです。例えば、今、フェルミによるガンマ線マップがこうあります。同じ、全く重なる領域で、ほかの観測で、これは光学の観測ですけれども、ダークマター分布をほぼ直接測ることができましたとします。そういう場合に、ここから出てくるガンマ線とダークマターの分布の相関があるんですかと、そういう問いかけが統計的に行えます。
 これが、実際にやった例ですけれども、この線で表しているのが重力レンズシア、重力ポテンシャル勾配だと思ってください。バックグラウンドの色がガンマ線輝度になっています。現状では少し狭い範囲でしかやっていないんですけれども、それでももう十分面白い結果が得られていまして、これは先ほどから何度か出てきたダークマターの対消滅断面積の制限の図です。上側が、制限排除されていると思ってください。フェルミチームが近傍の銀河で行った制限がこれで、現在の100スクエアディグリーですとこれぐらいにしかならないんですが、将来的には、今のこのフェルミ衛星チームの制限よりいいぐらいの、かなりいい制限が得られることが予想、これが1,400スクエアディグリーですので、すばるHSCで達成しようとしている、5年後ぐらいの成果のつもりです。
 LSSTの半天サーベイの時間になりますと、もしも例えばダークマター対消滅が、この場合ですと、カノニカルな値である場合には、例えば、10GeVの粒子マスに対して、3から5シグマぐらいで実際に検出可能である。単なる制限ではなくて、実際にそういうシグナルがあると、クロス相関から検出ということになることが期待されます。ちなみに、今のこの理論予想のところには現在のフェルミのデータしか使っていませんから、フェルミはこれが大体倍ぐらいデータをためることができるので、signal-to-noiseは実際にはもう少し上がると期待されます。
 最後ですけれども、ILCの部会ということで、少し面白いアイデアを紹介させていただきたいと思います。冒頭でお話ししましたように、相対論的粒子、この場合、軽いグラビティーノというのを考えまして、それが宇宙の物質にほんの少しだけ混ざっていると、物質分布の揺らぎが滑らかになります。パワースペクトルにすると、この振幅が落ち込んでいくということになります。例えば、グラビティーノマスが4eV、16eVの場合、それぞれこうなっているということですね。
 これは銀河サーベイでもいいですし、あるいは、今、HSCサーベイを考えていますので、重力レンズサーベイでもいいですけれども、その場合は、現在のサーベイの測定誤差に比べて、グラビティーノ粒子が引き起こす効果の方がはるかに大きいというわけで、今後5年ぐらいしまして、サーベイが完結しますと、こういう軽い相対論粒子が混じっているかどうかということが分かるということになります。
 現在、既に幾つか制限が得られています。これは横軸が、ライトグラビティーノマスで、縦軸は、これから宇宙論の観測で、どれぐらいの精度でもってそれを測定できるかだと思ってください。例えば、このHSCとプランクのデータを足しますと、例えば、4eVがその真の値であった場合に、これぐらいの精度で測定することができると。一方で、これまでの加速器から将来の加速器が、大体常にエネルギーの低い方、あるいは、粒子マスで言うと小さい方から探索していきますので、左側から制限をかけることができると。宇宙論では、大体多くの場合は、重い方、エネルギー密度が高い方から制限をかけていきますので、上と下から制限をかけて文字通り測定するということが可能であります。このライトグラビティーノ探索が面白いかどうかはともかくとして、こういう新たな基軸の探索もできるという1つの例です。
 これは隣にいる松本先生が提案されましたILCでも、stauが次に軽い粒子の場合に、その崩壊を見てグラビティーノマスを探索することができるというので、先ほどのような宇宙論サーベイと組み合わせて、相補的な探索ができる。それは、先ほど梶田先生が示されておられたLHCとガンマ線の相補性というのに非常に似ているかと思います。
 まとめます。2020年代になりますと、大規模な可視赤外サーベイを行って、様々なものの分布、究極的には物質分布というのを非常に精度よく探ることができます。
 それは、SKA、電波観測が稼働しますと、ほぼ究極的なことができるということが分かっていますし、また、この電波観測及び可視光サーベイでは、タイムドメインアストロノミー、非常に短い時間でエネルギーを放出するような天体を探ることができますから、様々な興味深い天体が見つかると思われます。
 CMB、これまで温度揺らぎの統計を測ってきましたけれども、エネルギースペクトルの方にも1つ面白い軸があって、黒体輻射からのずれを測ることで、晴れ上がり期前の宇宙の粒子反応を探索することができます。
 1つ、宇宙論サーベイのキーワードとしては、いろんなサーベイを行って、それぞれのデータの結果を足し合わせるだけではなくて、クロス相関という手法を用いて、見えなかったものを見ることができるようにすることができます。
 最後にお話ししましたのが、加速器、こういう組合せで、いろいろ素粒子について面白いことが得られるであろうということです。
 以上です。ありがとうございます。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 それでは、今の説明に基づきまして御議論を頂きたいと思いますけれども、何かありますでしょうか。
【中野座長代理】  CMBのエネルギースペクトルからダークマターをサーチするといったときに、ダークマターの質量に対する何か情報は得られる可能性はあるんでしょうか。
【吉田教授】  この図を見ていただきたいんですが、スペクトルのずれに入ってきます兆候は、あくまで時間インテグレートされたものになってしまうので、モデルフィットが必ず必要になります。それから、もう一つ、例えば、ある波長のところでびこっとスペクトルが立ったりはせずに、必ずサーマライゼーションプロセスって少しは働きますので、モデルフィットは入るんですけれども、何か時期を決めるであるとかすれば、例えば、ここですと、粒子質量に対して制限をするということはできると思います。
【中野座長代理】  あるかないかというのは、かなりはっきり。
【吉田教授】  そうですね。我々が普通に知っているプラズマ内の反応に比べて、余分なものがあるかどうかというのは分かると思います。
【中野座長代理】  相互作用の仕方というか、どういう相互作用をするかということに制限はあるんですか。もちろん、モデルに入ってくるんでしょうけど。
【吉田教授】  そうですね。それは光子を含めた二体反応なのか、三体反応なのか、それは様々あると思います。ただ、具体的に、アンプリチュードだけじゃなく、各波長にわたって微細な構造まで知ることができるので、むしろモデルの方を決めてしまえば、それがイエスなのかノーなのかというようなことは判定できると思います。
【梶田座長】  お願いします。
【初田委員】  軽いグラビティーノの話が出てきて、松本さんのお話のときは、グラビティーノのライフタイムは十分小さくないといけないという話をされたように思います。一方、ここで出てきたグラビティーノというのは、軽くて、しかも、銀河の構造形成などに寄与してくるわけで、両者の関係が分からなくなったのですが、矛盾した話になっていないのでしょうか。
【松本委員】  グラビティーノはどうして質量があるかというと、超対称性が破れるからです。だから、ちょうど標準模型におけるWボソンみたいなのと全く同じです。
 僕が主に話したのは、重いSUSYの話だったので、グラビティーノが重いという意味と等価になっていて、宇宙論と非常に相性がいいという話で話をさせていただいたんですけれども、グラビティーノが物すごく軽いと、やはり宇宙論と相性がいい。その間が宇宙論と相性が悪いというようになっています。その軽いバージョン、時にはグラビティーノが非常に軽くなって、このときには非常に現象論のことがあります。
 僕がお話ししたときに3つパターンをお話ししましたけど、それの一番右側はこのケースに入る可能性があって、小さい括弧の中に、グラビティーノ、ダークマターかもと書いてあり、そういう軽いからグラビティーノになる場合が書いてありますけど、そういう場合です。
【初田委員】  分かりました。
【梶田座長】  ほか、いかがでしょうか。お願いします。
【松本委員】  yディストーションとかもそっちの方ですが、ダークマターが、初期宇宙ですごくちょびちょび崩壊している期を拾って。
【吉田教授】  そうですね。
【松本委員】  そういうことですか。
【吉田教授】  時期は少し限られます、実は。
【松本委員】  でも、どの時期でもちょびちょびが、かなりいつもダークマターとアナイレーションすると思うんですけれども。
【吉田教授】  ええ、そうですね。多分、ライフタイムを入れて。
【松本委員】  そうですね。アナイレーション・クロスセクションかなんかで。
【吉田教授】  そうですね。ここですと、1年とか、何万年までいかない、1年、何万年ぐらいのところで。
【松本委員】  そうですね。フリーズアウトした後にずっと続いている緩やかなものを。
【吉田教授】  そうですね。
【松本委員】  そのときにどのぐらいの感度があるかというときに、100GeV、オーバーeVの、Fガンマで、Fガンマは多分どれだけ寄与するコンディションになるかという。
【吉田教授】  そうです。バリエーションどれぐらいかですね。
【松本委員】  トータルの断面積の情報は、これは何かにフィックスして。
【吉田教授】  そうですね。
【松本委員】  多分、3掛ける10のマイナス26乗という標準。
【吉田教授】  恐らくそうだと思います。
【松本委員】  中には、非常にもっとアクティブなダークマターがいたら、もっと感度がよくなりますし、実際にヒグシーノとかウィーノというのはもっと見やすいと、あるんだと思います。
【吉田教授】  ちなみに、十分宇宙初期に行くと、もう感度は完全にサーマライズされてしまいますので、エレクトロン、ポジトロンのここにいってしまうと、もうディストーションほとんど発見されないはずですので。
【松本委員】  ちなみに、CMBの揺らぎの方でリコンビネーションのヒストリーが変わることによって、ダークマター対消滅の影響を調べられるという話があると思うんですけれども、それと比べて、感度はどちらが。違う時期だからあれだけど、例えば、標準的なダークマターを仮定して。
【吉田教授】  恐らく、これを見ますと、この下の波々というのが、再結合のときの原子線ですね。その痕跡が残っているんですけど、これが変動する程度だと思うと、横に、縦に、実は、今目指しているような感度では、なかなかここまでのフィーチャーは届きません。
【松本委員】  そうですね。
【梶田座長】  じゃ、お願いします。
【岡村委員】  宇宙のサーベイでは、制限が重い方からついていくという話がありましたけれども、そうだとすると、SKAのような非常に野心的な計画が全部実現できたとすると、例えば、今、加速器で見つけようと思っている粒子のマスは、これよりは下にはないんだみたいな方がそっちから決まってくるとか、もうこの加速器でこういう性能では見つからないとか、そういうのがはっきりするといったような、サーベイと加速器の相互作用みたいなのはあるんですかね。
【吉田教授】  そうですね。宇宙論のサーベイで分かるのは、あくまでも宇宙に、ダークマターはもちろんあるとして、それ以外に余分なものはあるのかないのかというのがまず分かります。ただし、宇宙論の弱いところは、もちろん、粒子そのものを探索してくるわけではないので、全く同じの、これ、例えば、グラビティーノを足してもこういう様子になりますし、ニュートリノを足してもこういう様子になりますので、どういうものがどれぐらいあるかということには分かりません。ただし、ニュートリノなどがあると分かった場合には、その質量までかなり正確に分かるということになりますので、ほかの粒子に対して、宇宙論のところで見つかっていないんだけど、何らかの制限をかけるというのは非常に難しくなってまいります。
【梶田座長】  お願いします。
【松本委員】  つまり、崩壊しない粒子に対する制限はつけやすいということですね。現在、余地に残っているんで。
【吉田教授】  そうですね。そうなります。
【松本委員】  ほぼ多くの質量はすぐ崩壊しちゃうから、どんどん。それの違いが一番大きいんじゃないかと。
【吉田教授】  すぐ崩壊する方は、初期宇宙の探索で何とか見たいということですね。
【梶田座長】  お願いします。
【中野座長代理】  クロス相関による暗黒物質の探索についてなんですけど、これは重力レンズとかで暗黒物質がたくさんあるところから対消滅によってガンマ線がたくさん出てくるだろうと、そういうアイデアですか。
【吉田教授】  そうです。
【中野座長代理】  そのときに、輝度の差が分かるんだったら、それこそピークは見えるんじゃないかと思うんですが、それは違うんですか。
【吉田教授】  本当はそうですね。フェルミの、例えば、我々もこの解析で行ったんで……。
【中野座長代理】  何で全部ならした輝度の方が感度がいいのかというのがよく分からない。
【吉田教授】  それは、ガンマ線、フォトン数がやっぱり少ないので、フォトン数の方で稼ぎたいということですね。これはイエス、ノーがやりたくて、物質がたくさんあるところから本当にガンマ線が出てきますか、そのイエス、ノーを統計量で測るというので、実際には、これ、ガンマ線の方のエネルギーごとのマップを作ることができれば、まさに今おっしゃったようなことはできるんですけれども。
【中野座長代理】  そうなの。今はできないんですね。
【吉田教授】  数が結構足らないですね。ただ、将来的には、少なくとも低エネルギー、高エネルギーで分けた解析というのはすることができると思います。
【中野座長代理】  相関を見るときに、同じ方向から来たということを確かめないといけないと思うんですが、今、どちらの精度の方がいいんですか。角として。
【吉田教授】  今、実はガンマ線の方は、低エネルギーで1度、サブディグリーぐらいが観測の解像度になっていて、光学観測とかでは1分角ぐらいですから、光学観測の方が非常にいいですね。
 これのいいところは、近傍銀河とかですと、ダークマターの分布そのものに仮定を置かなければならないんですけれども、クロス相関を用いますと、それは一切しなくて構いません。
【梶田座長】  お願いします。
【駒宮委員】  多分、松本さんに対する質問だと思うんですけど、グラビティーノが軽い場合というのは、昔、ゲージメディエーションとか、そういうのがはやりましたよね。
【松本委員】  はい。
【駒宮委員】  今の126GeVのヒッグスと非常に相性が悪いというので、みんな、それはほとんどやめちゃったような気がするんですけれども、ここで宇宙論で言っているグラビティーノの軽いやつ、それがあった場合、コライダーでできるような実験というのは何か考えられるんですか。
【松本委員】  最初に、軽いグラビティーノの予言する代表的な模型は、ゲージメディエーションです。そのとおりです。この場合というのは、10eVぐらいのグラビティーノですから、最もスケールが低いゲージメディエーションです。ヒッグスが126GeVと基本的には相性が悪いです。ただし、何とかすることはできます。僕はモデルビルダーではないので、すごく細かい話になっちゃうから、ここはスキップしますけど、モデルを少しいじることによって、ゲージメディエーションの枠内だけでも十分ヒッグスが重くするようなことをする、ちょっと複雑なSUSYの破れを考えることはできます。
 そうしたときに、じゃ、コライダーでどんなシグナルが見えるのかといったときには、グラビティーノを除いて最も軽いLSPが、しばしばstau、いわゆるタウレプトンの超対称粒子とか、そういうものになります。そのタウレプトンの超対称粒子が、タウレプトンとグラビティーノに崩壊する。グラビティーノのマスは、ほとんどマスレスみたいなものであるけど。それは、さっき言いましたけど、Gマイナス2の説明の枠組みと非常に相性がいい。
【駒宮委員】  スレプトンだからね。
【松本委員】  そうそう、スレプトン。だから、ほかのスレプトンも軽いですし。それは、ILCにとって物すごくラッキーなシナリオで、100GeVぐらいにスレプトンチャージーノ、ニュートラリーノがわんさといるような具合です。
 ちょっと頑張って、ヒッグスマスが重くするのをオーケーと呼べるかどうかは、やっぱりありますけど。
【駒宮委員】  分かりました。ありがとうございます。
【梶田座長】  お願いします。
【中野座長代理】  天体物理の分野からいって、もし加速器の方でこういう発見があったら、いろんな悩みが解決するというか、この情報さえ得られれば、今いろんなことをしているんだけど、もっと焦点の絞ったことができるのになというようなことがあれば教えていただきたい。
【吉田教授】  なかなか難しい質問なんですが。1つ、今、私、個人的にもそうですし、業界全体でもやろうとしているのが、やっぱりCosmic Dawnと呼ばれる第一世代天体が生まれるところがどうなるのか知りたいと。そこはやっぱり、このパワースペクトルで言うと、波数が高くて、細かい構造のところがどうなっているかが最も効いてくるわけですね。ですから、ダークマターの質量がばしっと決まる、あるいは、グラビティーノなりニュートリノなり、軽い相対論的粒子の存在量や質量がばしっと決まると、そこについての理論予想はかなり明確に立てることができます。それをSKAで観測するというシナリオは、十分楽しいものとして考えられます。
【梶田座長】  お願いします。
【松本委員】  それに関係して、多分、ダークマターの質量と同時に、どれだけ対消滅するかとかいうのが、すごくファーストスターの重さとかあれに効いてくると聞いたんですが。
【吉田教授】  そうですね。その場合でも、いわゆる通常の100GeVぐらいのWIMPがあるかどうかという。
【松本委員】  たしかクロスセクションというのは、みんなが考えているよりは変動が大きくて、すごいアクティブなものもあれば、すごいインアクティブなものがあって。
【吉田教授】  そうですね。中心集中させるかどうかという、むしろアストロフィジカルな話の方に不定性が入ってきてしまうので、それは難しいかもしれません。
【梶田座長】  いかがでしょうか。大分議論もありましたけれども。じゃ、最後ということで。
【松本委員】  Bモードの話は飛ばされましたけれども、それは前にもここでもお話が出ましたけど、これ、かなりうわさの段階ですけど、9月1日に何か出るという話がありましたけど、あれは何か。
【吉田教授】  そうですね。プランクチームは……。
【松本委員】  9月1日にプランクが出すという話を何か知っていたら、教えてください。
【吉田教授】  9月1日かどうかは存じ上げないんですが、大体秋、10月頃を目途に、プランクが解析を行うと。その図が恐らくあると思うんですけれども。もちろん、その図はないんですけれども。
【松本委員】  もちろん。
【吉田教授】  そんなものは持っていないんですが、それで決定的な。ありましたね。これですね。いわゆるBICEP2が測ったというのは、これくらいの角度スケールにしますと、これぐらいのところで、プランクは全天サーベイですから、これぐらいのところを見ることができると。これを見たら、BICEPのやつは、大体オレンジよりも少し大きいぐらいですので、プランクは、もしあるんだったらば、もちろんプランクで分かるだろうし、ないんだったら、やっぱり……。これ、たしか青がプランクなんですけれども、プランクで、ないんだったら、この近傍は0.01以下であるということが分かると思いますので。原始重力波については、もうしばらく待てば、随分と様子が分かると思います。
【梶田座長】  では、よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございました。
【吉田教授】  ありがとうございます。
【梶田座長】  それで、以上の議題2につきましては、これで終了したいと思います。もし何か御意見がこの後ありましたら、会議終了後、事務局の方まで御連絡いただければと思います。
 それで、議題3に入らせていただきたいんですが、今後の議論の進め方等についてということで、まず、前回途中になっておりましたけれども、第1回の駒宮先生のプレゼンに関する質疑につきまして、別途資料を提出いただいておりますので、御議論をお願いしたいと思います。
 まず、駒宮先生の方から説明をお願いいたします。
【駒宮委員】  分かりました。
 前回、4人の方から質問が参りまして、中野座長代理と、山内委員と、小磯委員と、山中委員ですね。一応小磯委員の質問までは簡単に答えたんですけれども、きょう、山中先生いらっしゃいませんが、まず最初、山中先生の質問で、ちょっと図を見せなければいけないのを先にやって、それから、またちょっと前に戻ろうと思うんですけれども、それでよろしいですか。
【梶田座長】  はい。
【駒宮委員】  私の質問への回答の構成というのをお話しして、それから、細部に入りたいと思います。
 まず、色々な質問が重複したり、それから、話題がばらばらだったりしましたので、話題ごとにまとめて、それで回答するということにいたしました。3つ主にございまして、まず1つが、ヒッグス粒子の精密測定です。特に、いろんなクォークとかレプトン、それから、ゲージ粒子とのカップリングです。それから、その次は、トップクォーク関係です。トップクォークの精密測定。これはマスだけではなくて、いろんなWとかZなどとの結合の精密測定です。それから、最後に、新粒子。スーパーシンメトリー等々です。
 山中先生の最後の質問は、この新粒子対策ということだったので、9ページを御覧ください。この9ページに、山中先生の質問で、SUSYも様々なモデルがあり、パラメータの範囲も広い。種々のモデルについて、どのパラメータの範囲ならば発見できるか、LHCとILCで比較するような図が欲しいという質問だったんですけれども、山内先生も似たような御質問があって、この3種類の比較――スーパーシンメトリーの3種類の比較ですね――をもってLHCとILCはSUSYに対して同等以上の感度があると結論してよいのでしょうか。もっと様々な模型ではどうなりますかということで、それについて、まず御回答したいと思います。
 その次の10ページを見ていただきたいと思います。まず、異なるコライダーにおけるSUSYの発見の感度というのを直接的に比較するというのは、これは簡単ではありません。SUSYのモデルの性質というのは、いろんなSUSYのブレーキングマスタームによるわけです。それらのソフトブレーキングタームというのは、標準理論の様々な素粒子群に対応して値が変わる可能性がございます。だから、いっぱいパラメータがあって、非常に複雑です。その中で、ラージハドロンコライダーの実験以前では、いろんなSUSY――大体SUSYというのは、普通のMSSMでもパラメータの数が、標準理論のいろんなパラメータを除いて、105個あるという話なんですね。それで、ゲージーノのマスとか、ヒグシーノのマスって、もちろんありますが、一番いっぱいパラメータがあるのは、フェルミオンのスーパーパートナーのマスと、それから、それのミキシングと、それのCPフェーズというのは、むちゃくちゃいっぱいあるんですね。それは、多分、合計97個あるんですね。ということで、これらのパラメータをそれぞれ振っていたら大変なことになりますので、ですから、ほとんどパラメータの数をうんと減らして、それで、モデルを作っていたわけですね。そういうモデルというのは、LHCの最初の実験で、かなりの部分がエクスクルードされて、少ししか残らなくなっちゃったんですね。これはやばいというので、ほかのパラメータもいびって、それで、いろんなことをやると。もちろん、このパラメータを4つに減らしたというのは、かなり物理的な意義もございますが、これ、かなり人口的に減らして、それで、予言能力を上げたんですね。予言能力を上げるということは、すなわち、LHCなんかで簡単に見つけやすいということになったわけです。理論のコミュニティの多くの人は、SUSYに愛想を尽かすのではなく、もっと一般的なパラメータの取り方を採択するようになりました。
 これは先日お話ししたように、LSPというのは、最も軽いlightest susy particleですね。これが何かという分類によって、非常に現象論が違います。一般的にスライドに挙げた三通りに集約されるということは、この前、松本先生がお話しになったとおりです。それで、LHCの場合なんですけれども、LHCが得意とするのは、グルイーノのサーチなんですね。グルイーノというのは、ストロングインターラクションをして、大量にできるということなんですが、これは、ディケイが非常に複雑なんです。その下にどんなスーパーシンメトリックパーティクルがいるかによって、行き先が物すごくいっぱいありますので、だから、一概に、本当に全てのことを網羅できるかどうかというのは、モデルのパラメータに非常によるんですね。
 一方、リニアコライダーでは、何しろ、ここにございますように、マスの低い方から攻めるということをするんですね。マスの低い方からというのは、要するに、一番軽いスーパーシンメトリックなパーティクルというのは、恐らくダークマターになっているでしょうから、そいつらは見えないわけですね。そうすると、一番下にございますように、一発フォトンを出して、それで2つの見えない粒子がいるというプロセス、このプロセスをやると。このプロセスが、一番軽いスーパーシンメトリックパーティクルの一番センシティブなやつですね。第2のパーティクルまで加速器で到達できるとしますと、今度は、一番軽いやつとその次に軽いやつのペア、これは両方ともニュートラルな場合ですね。これが、その一番上の場合ですね。それから、もう一つは、これは全く同じマスの電荷を持ったスーパーシンメトリックパーティクルが2つできると。これはカイ1、カイ2の場合ですね。これは、ここら辺のところをまずリニアコライダーでやって、それで、何しろマスを決めることと、それから、カップリングを決めることをやって、本当にこれらがダークマターになって、宇宙のダークマターも、どのくらいこれらが占めるかや、宇宙のどういう時期でこれらができてきて、ダークマターとなったかということまで、カップリングを調べれば、予言できるというわけでございます。
 それで、LHCの方では、もちろんこういう軽いものも探しておりまして、これがサーチの様子なんです。もう既に700GeVぐらいまでリミットがいっているとお思いでしょうが、これは実は、ここにvia sleptonと書いてあるんです。これはディケイがほとんど全部レプトニックに崩壊した場合という場合なので、普通は、これ、WとかZにいきますので、この緑色の線が、今、現実的なリミットです。この非常にいいリミットというのは、これは恐らく、ほとんど全部スレプトンに100%崩壊した場合なので、レプトンにほとんど崩壊した場合なので、例えば、Zがレプトンに崩壊するというのは6%ですね。Wは22%。ですから、これを掛けたもの、ほとんど1.3%ぐらいです。だから、ほとんど100倍ぐらい生成断面積が大きいと仮定した場合には、これが成り立ちますが、リミットというのは、この緑色のものが実際のリミットになっています。
 それで、このあたりの状況は、3つのSUSYのシナリオで全然違いまして、これがパラメータをランダムに振ったときに、どこら辺のところにマスが来るかをやりました。先ほどのこの図の横軸というのは、これ、2番目に重い粒子です。LHCの場合は、2番目に重いニュートラルのやつと、このチャージを持ったやつが、マスが等しいと仮定しています。こちら側が一番マスが軽いlightest susy particleのマスですね。それで、これをよく見ますと、このあたりはがらがらに空いているわけですね。ここら辺は、LHCで非常に難しいんですね。ところが、リニアコライダーで500GeVだったら、ここより下は全部できると。1TeVまでいったら、これより下はできると。なおかつ、これはWinoというやつがlightest susy particleの場合の予言なのですが、その場合は、このマスが本当に等しいところ、ここら辺のところにびたっといっぱい来ているわけですね。ですから、本当なら、このあたりにセンシティビティがないと、これはできないんですね。その次のものもそうなんです。その次は、ヒグシーノが一番軽い場合ですが、これもやっぱりマスディファレンスが非常に小さいところにいっぱい来ていると。
【山内委員】  すいません、点々は何ですか。
【駒宮委員】  この点々は、ここにパラメータがあるということです。ここでM1、M2、ミューというのがあって、M1が、これはU(1)ゲージボゾンのスーパーシンメトリックパーティクルのマスです。Z0のマスにおける、ウィークスパーティクルにおける、それらはみんなランニングしますので。それから、M2が、SU(2)のゲージボゾンのマスですね。それから、ミューは、これはヒグシーノのミキシングパラメータというものです。このM1が一番軽いものをビーノライクといって、M2が一番軽いものをウィーノライクというんですね。それから、ミューが一番軽いものをヒグシーノライクと3つに分けたわけですね。
 この場合は、M2が一番軽いものですね。M2が一番軽いとすると、ほとんどのものが、このマスがカイ01とカイ1プラスのマスがほとんど同じようなところに来るということですね。
【徳宿委員】  その場合に、ILCでは測定できるかどうかのサーベイはまだしていないですよね。
【駒宮委員】  もちろん、それはしていませんが、これはチャージドパーティクルで、ここまでやれば、例えば、LEPの段階では、ほとんどもう100%、200GeVだったら、もう200GeVまでエクスクルードされているわけです。
【徳宿委員】  あそこのイコールマスのところですよ。
【駒宮委員】  イコールマスは、もちろんできませんよね。ぴったりのところだからね。
【徳宿委員】  だから、こういったイコールマスに近いところが残っていると言われていて、そこに向かって、もちろん、LHCよりもILCの方が行けるのは確かだけど、最後のところまでは行けないですよね。
【駒宮委員】  イコールマスまで行けます。
【徳宿委員】  ミッシングしかなくなるということですね。
【駒宮委員】  それはどうしてかというと、ガンマを使ってそこまで行けるという論文をもう出したんです。
【徳宿委員】  だから、initial state radiationを測るという話ですね。
【駒宮委員】  そうです。この一番端のスレショールドまではもちろん行けないけれども、こいつらはフェルミオンなので、ベータでスレショールドが上がるんですよ。結構スレショールドが上がるのが速いです。ですから、このすぐ近くまでは行けます。
 それから、このところは全部行けます。このところで、両方のマスがもしかして等しかったら、ディケイできませんよね。その場合は、stable charged particleになるんです。その場合は、アトラスはちゃんとやっているんです。アトラスは、その場合だけやっています。
 でも、例えば、マスに1GeVここで差があったら、もうそれはすぐにディケイするんです。その場合は、LHCではできません。この場合は、1GeVだったら、リニアコライダーではもちろんできます。それがほとんどなくても、100MeVぐらいでも多分できます。というのは、initial state radiationを使うか、又は、もちろんstable charged particleが走るのを見ると、その両方ですね。
 その次のヒグシーノの場合も、ほとんどそうなのですが、ビーノの場合、この場合は非常に均等に分布するので、この場合は、リニアコライダーよりもLHCの方が圧倒的にいいと思います。
 この場合ですが、ここより下のライン、ここというのは、これは500GeVでcenter of massの半分ですね。半分で、今、10GeV下げていますが、ここから下というのは、ずっと無限大までシングルガンマで見えます。リニアコライダーで。それから、重心エネルギーが1TeVまで行けば、ここから下はシングルガンマで見えます。ですから、こういうところもみんな見えるのですが、もっとマスが高いところはもちろんLHCでやることになります。
 それで、これがアトラスの予想ですね。これは、3アットバーンの場合です。これは究極の場合ですね。この点々々は、95%コンフィデンスレベルでのエクスクルージョンですね。ですから、発見は実際のところまでです。
 問題は、2つのシナリオがございましたよね。1つは、チャージーノライクとヒグシーノライクの。その場合、このマスに、結構この線上に沿っているという理論が、それはかなりがちがちな理論なんですが、この線上に沿っているんですね。そうしますと、このあたりはなかなかLHCで見つけられないんですね。このマスが近いところに近いので。そういう意味で、最初のこういうのを見ますと、いかにもここまで全部エクスクルードされているように見えますが、実は、こういうパラメータスペースで振ってみると、ただおまえらはここだけやるのかとよく言われるんですけれども、そんなことは全然なくて、話は全然違うんです。ですから、LHCでよい場合と、ILCでよい場合と両方あるわけです。以上が最初の山中さんの質問に対する回答です。
【山内委員】  すいません、1つお願いします。
 この2次元分布で、点が濃いところが、よりありそうなところであると、そういう意味なのでしょうか。
【駒宮委員】  そういう意味です。もちろん、それは仮定があります。それは、パラメータスペースで均一に振ったので、またパラメータを変なふうにパラメタライズすれば、違う分布にもちろんなるわけです。だから、今、一番素直に、この3つのパラメータ、それから、タンジェントベータ、この4つのパラメータを振ったらこうなるということ。ですから、実際見ている2つの粒子のマスプロットを見ると、こんなところをやってもしょうがないじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、実は、非常に重要なところだということを見ていただいたということでございます。
 
【徳宿委員】  いいですか。
 最後の言い方では問題ないから大丈夫だと思いますけれども、最初の言い方で、LHCが見てもしょうがないところを見ていたんだというようなニュアンスにとられると、それはちょっと心外なので、一応訂正しておきます。もちろん、この駒宮さんが言ってきた3つのシナリオというのは、LHCで今まで見てきて、この辺もないということから、ここに集中してきたんですよね。
【駒宮委員】  いや、そういうことではなくて。理論的に、このあたりのところに一応いっぱいあると。
【徳宿委員】  理論的に、この3つの場合でやってみたらば、そのうちの2つはあそこに集中していると言っているわけです。
【駒宮委員】  だから、3つの場合というのは、exclusive orなわけですよ。3つしか場合はないわけです。パラメータが3つあったら。だから、このマスのパラメータが3つあったら。だから、M1が軽いか、M2が軽いか、ミューが軽いか、それしかないわけで、その3つの状態、その3つに分けているわけですよ。
【徳宿委員】  だから、分けたらこうであるという。
【駒宮委員】  そういうことです。
【徳宿委員】  分けたら、ある場所に集中するものと集中しないものがあるということですよね。
【駒宮委員】  そうです。そういうことです。
【徳宿委員】  松本さんの方は、もうちょっと丁寧に説明されたような気がしますが。
【松本委員】  では、コメントだけ。
 M1、M2、ミューというのがそれぞれ3種類ある。3種類のマスが全部近いと、結構広範囲に散らばって、LHCで非常によく測れていて、もう制限されつつあって、非常に重要な情報を与えている。それがセパレートしてくると、実は、最初にWinoと書いたものの縦軸の横軸というのは、もともと同じマルチプレットに入った成分ですし、ヒグシーノと書いたものも同じです。ビーノは違うんですよね。だから、まだセパレートしたまま、いろいろ。というわけで、物理的には、LHCの欠陥のおかげで、ああいうところに焦点を絞ってきたものが大事になってきたという。そうすると、非常に縮退しているという話だと思います。
【徳宿委員】  なるほど。
【駒宮委員】  もちろん、徳宿先生は見識のある方なので、私が言ったのは、私が勝手にそういうふうに解釈しただけの話です。
【徳宿委員】  いえいえ。
【駒宮委員】  
 山中先生が質問されたものは5ページにあって、これは、相乗効果というような説明があったが、図の意味することは、IHCさえ作れば、LHCは不要であるということかという、質問ですね。
 1TeV程度まで拡張できるILCがLHCよりも先に建設されていれば、LHCの役割というのは低かったと思います。しかしながら、やはりILCの加速器というのは非常に難しいので、もちろんLHCが簡単とは申しませんが、比較的簡単なので、実際はLHCの方が先にできたわけですね。ここでは、非常にクリアなシグナルがあれば、非常に高いエネルギースケールまで探索可能なので、ILCの稼働前に物理の目星を付けるという点で非常に重要です。なおかつ、特に2012年のヒッグスの発見というのは、これはもうサイエンスにおける歴史的なエポックでありまして、これによってリニアコライダーで最初にやることが決まって、ILCの物理的意義を確固たるものにすることができたということですね。
 それから、基本的には、ILCにおけるヒッグスの質量とヒッグスの結合定数の測定精度というのは、かなり早い時期でLHCのそれを凌駕いたします。ILCは、電子陽電子衝突における系統誤差が非常に小さいということが本質的ですので、データをためるほど統計誤差が小さくなって、測定誤差がどんどん上がっていくと。LHCにおける測定誤差というのは、もちろん素過程――素過程というのは、要するに、クォークとかグルーオンのディストリビューションファンクションですね。それが分からないので、そこでも不定性がございます。それから、その後でのQCDのラディエーションとか何とか、そういう不定性もございます。ですから、最終的には大体5%程度の系統誤差で制約されてしまいます。
 LHCとILCの相乗効果として1つ挙げられるのは、例えば、ヒッグス粒子とフォトンとの結合ですね。これはリニアコライダーでは精度よく測れません。LHCで測れるのは、実は一個一個の測定よりも、この比はいろいろな不定性をキャンセルするので、例えば、ヒッグスが2つのフォトンに崩壊するものと、ヒッグスがZZに崩壊するものですね。この比というのは、いろんなことが相殺されて、非常に精度よく求まるんですね。それで、リニアコライダーの方では、ヒッグスとZZのカップリングが非常に精度よく分かりますので、両者を合わせるとヒッグスとガンマガンマの精度も、1%に近い精度で求めることができるということです。
 これが山中先生の2つの質問に対するお答えなのですが、そのほかに幾つか、きちんとアップデートしたところがあります。それは、例えば、3ページの山内先生の質問ですが、山内先生は、いろんなところで、5年間で一体何ができるか実例を示せという、非常に厳しい御質問をされて、要するに、5年間というからには、リニアコライダーができて、それから、ルミノシティがどういうふうにたまっていくかという、そういうシナリオをきちんと仮定しないとお答えすることはできないんですね。ですから、そういうのを一応次の様に仮定して、最初は、250GeVだけで走るという非常に厳しい仮定をして、本当はハイエナジーに行った方が、いろんな意味で、WWフュージョンでヒッグスボゾンができるので、高いエネルギーにすぐ行った方が本当はよいのですが、現実的に考えて、低いエネルギーだけでずっと走ったという仮定をしますとどうなるかということを、いろいろと研究しています。
 それが、4ページの真ん中辺にございます。TDR記載の設計ルミノシティ、これでは、積分ルミノシティ250フェントバーンインバースというのは、これは正味ずっと連続して走ったとすると1.1年ですね。もちろん、正味ずっと走ることはできませんので、もっと長くかかりますが。ですから、ランプアップのシナリオ、どうやってルミノシティを少しずつ上げていくかという、そういうシナリオを想定しないと、こういうのはお答えできないわけです。
 我々は、TDRのルミノシティの最初の年は10%だけ、次は30%、次は60%、そこから先は100%走れると。なおかつ、年間稼働率は50%と。ですから、半年は走れるということを想定して次のルミノシティを出しました。そうしますと、それは360フェントバーンインバースなんですね。このもとに、例えば、ヒッグスの質量を測ったとすると、それは26メガeVで精度が測れます。それから、Zhの断面積、これはヒッグスとZが同時にできる断面積は2.1%の精度になります。
 しかしながら、もちろん、ヒッグスの結合定数は、ハイエナジーに行きますと、WWフュージョンというのが起こって、ニューニューヒッグスというのができて、そうすると、Wとヒッグスのカップリングというのが分かるので、いろいろなものの精度がもっとうんとよくなるんですね。この場合ですと、この前に図がございましたね。MAbaバーサス・タンジェントベータというものですね。そこで、大体MAが350GeVぐらいまでは見えるということです。
【山内委員】  どの図でしたっけ。
【駒宮委員】  ちょっと待って。それはもうちょっと先に行ったのかな。
 すいません。ここで言っていることは、要するに、ここでの非常に初期で測るのは、ヒッグスの質量を精度よく測るということと、Zhを非常に精度よく測るということですね。
 それから、もう一つは、それと同じような質問が幾つかございまして、7ページの上の方ですね。この質問もやはり山内さんの質問で、このページのSUSYと複合模型の例は標準模型の何%コンフィデンスレベルで排除していることになるんでしょうか。また、これは積分ルミノシティ2750フェントバーンインバースを仮定していますが、この蓄積に対する時間はどのぐらいかかるかということですね。
 これ、実は、このルミノシティで測ると、SUSYの場合は、何%コンフィデンスレベルというのはちょっと分からないんですけれども、4.5シグマが期待されます。それから、複合ヒッグスモデルの場合は、11シグマが期待されます。
 このルミノシティをためるのにどのぐらい時間がかかるかと申しますと、ランプアップも全部考えると、最初250GeVで走って、それを2年間走って、その後、ルミノシティをアップグレードして2年走る。それから、500GeVに行って、ベースラインのルミノシティで2年走って、アップグレードで2年走る。これが、先ほど言った2700何とかインバースフェントバーンというやつのランニングなんですね。ですから、これを単純に足すと8年なのですが、これをやるのに恐らく10年以上かかります。ですから、これは10年以上の非常に長いプロジェクトになります。
 最初の5年で250GeVだけ走ると一体どうなるかというと、これは、SUSYの場合だと、1シグマぐらいしか見えません。それから、複合ヒッグスの場合は、大体4.5シグマぐらい見えるようになる。1シグマでも、大体LHCの究極の値ぐらい、そのぐらいまでは最初の5年間で行くということです。
 それから、もう一つぐらい最初の5年間という質問がありましたが、それはちょっと今見当たらないので割愛します。
 大体このぐらいですが、細かいところは、前よりもいろいろと詳細に、まじめに書いたので、皆様、これを御覧になって、また御質問があったら、またもっと詳細なものをお出ししますので、よろしくお願いいたします。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 今の駒宮先生の方からの御説明ですけれども、何かこの場で御質問その他ありますでしょうか。お願いします。
【初田委員】  松本さんにお聞きしますが、ヒッグスの3点カップリングというのは、標準理論を超えなくても重要なものだと思うのですが、そういうものは、今の評価の中では全然入らないということですね。エネルギーが足りないから全く無理だという。
【駒宮委員】  今、250GeVでは全然だめです。
【初田委員】  全然だめですね。
【駒宮委員】  500GeVになった場合、どのくらいいくかというのを今やっているんですが、まだあんまりだめですね。まだ50%ぐらいまでしかいってないですね。1TeVまでいくと、10何%までいきます。それは非常にWWヒッグスのプロセッションが大きくなるからです。
 その500GeVでどこまでいくかというのは、今、かなり多くの人がいろんなモードについて全部精査していますので、それは多分もうすぐ結果が出ると思います。
 今、簡単にやったものだと、大体50%ぐらいしかいかない。だから、それをもうちょっと何とかして上げようとしています。
【梶田座長】  ほかに何かありますでしょうか。お願いします。
【中野座長代理】  今のいろいろな回答の中に、500GeV足す500GeV 1TeVという話は全く出てこないのですが。
【駒宮委員】  1TeVというのは、アップグレードで、例えば、LHCで何か新しいものがあったとか、ないとか、いろんなことで判断して、500GeVが終わった後に、今から何十年もたってから判断することなので、1TeVの話はまだあまりしていません。我々のTDRに乗っかっているのも500GeVまでですね。
【中野座長代理】  1TeVのことは、今は全く考えていないということですか。
【駒宮委員】  全く考えていないことはないです。ヒッグスのセルフカップリングというのは、1TeVの方が圧倒的にいいですから。でも、それはいろいろな状況を見ないと、まだこのリニアコライダーも、できるかできないかも分かっていないのに、今から1TeVの話をしたら、みんなぼこぼこにされちゃいますよね。
だから、もちろん、非常に長いスパンの計画であるということで、10年ぐらいやって終わるような計画じゃないわけです。リニアコライダーの一番利点というのは、長さを長くすれば、それだけエネルギーを伸ばすことができるわけですね。それから、なおかつ、技術も、今からどんどん技術革新があれば、1メートル当たりの加速というのはもっと増えるわけですね。そうすると、もっと短くて、それでパフォーマンスがいいリニアコライダーが将来できるかもしれない。それを後ろにつなげていくという可能性があるので、もっと短くて1TeVまでいくようになるかもしれませんね。
 だから、そういうことも考えて、なおかつ、次のLHC、それから、アップグレードで出てくる物理もいろいろ見ながら、その次にどのようなアップグレードをしていくかということは、そこから先に考えることだと思います。
【中野座長代理】  分かりました。
【梶田座長】  では、お願いします。
【山内委員】  単に興味でお伺いしたいんですけど、9ページ目でお聞きしていることなんですが、ttバーZの測定でもって複合模型を研究するという件なんですが、これ、具体的には、ポーラライズさせたeプラスeマイナスでttバーを作るんですか。
【駒宮委員】  そうです。
【山内委員】  フォアザシンメトリーを測ると。
【駒宮委員】  そうですね。
【山内委員】  それで複合モデルかどうかというのがセンシティブだというんですか。
【駒宮委員】  ですから、Zを介するやつとガンマを介するやつがあるわけです、両方。それをやっぱり分離したいわけです。それを分離するためには、電子ポライゼーションを使えば、ガンマとZは分離できるわけです。それをやって、Zだけとトップクォークがカップルすると、そういうカップリングコンスタントを出すと。それも、なおかつ、ポライゼーションによって、レフトハンドとライトハンドと両方出せるということなので、そういう幾つかの情報を使って、先日御覧に入れたああいうプロットを作るわけですね。それから、いろんなモデルを分けるというわけです。
【山内委員】  ありがとうございます。
【徳宿委員】  これ、同じところですけど、LHCではスピンを見る必要はないんですよね。だから、LHCではできないと書いてありますけど、今、みんなttZのカップリングか。
【駒宮委員】  ttZは難しいですね。ttWは。
【徳宿委員】  ttHじゃなくて、ここはttZなんですか。
【駒宮委員】  Wは簡単に見えますけど、Zはなかなか見えない。
【徳宿委員】  Zでトップのポライゼーションも見ないとだめだということですね。
【駒宮委員】  そうです。そういうことです。
【徳宿委員】  分かりました。
【駒宮委員】  これはトップクォーク自身のファイナルステートの完全なリコンストラクションができないと、なかなかLHCではできないですね。リニアコライダーの場合というのは、例えば、4ジェットと1レプトン――1レプトンというのはWからいくんですけど、それはリコンストラクションできるわけです。Bタギングを使えば、どのクォークがBかというのが分かるので、ほとんど完全なリコンストラクションができるんです。なおかつ、ビームもポライゼーションできるということで、これは可能だということです。
【梶田座長】  ほかに何かありますでしょうか。よろしいですかね。
 それでは、一応この件につきましては、このくらいで本日は終わりにさせていただきたいと思います。あと、きょう、山中先生が御欠席ということですので、山中先生にも資料を確認していただいて、何かあれば再度事務局の方へということで理解していただきます。
 それで、そのほかに、次回以降の進め方につきまして、事務局の方から説明があるということですので、お願いいたします。
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室長】  多岐にわたって御議論いただきありがとうございます。
 資料2、資料3を改めて出していただければと思います。今後のスケジュールと、この場でどういうふうに御議論を進めていくかということについて、若干のサジェスチョンというか、御説明を差し上げたいと思います。
 資料2なのですが、もともと第1回目のときに、本作業部会における論点のイメージということでつけさせていただいておりましたけれども、今日も後半、駒宮先生の回答や資料に対するディスカッションでもあったように、ILC計画が焦眉の課題でございまして、それに対して、期待される成果は何かというところで、まさに駒宮先生の資料でもあったように、ヒッグス機構の詳細解明という大きなミッションと、あるいは、新粒子の探索というミッションと、あと、その他というのは、カテゴライズされるものが、トップクォークの話がここに入るのかどうかということもありますけれども、こういったものが大体ILC計画で期待される成果の大きなカテゴライゼーションだろうと事務局としても認識してございます。
 また、実は、今後の予定の方を先に御説明いたしますと、11月の中旬ぐらいに、親部会の方に、大体作業部会で、結論は何も出ないとは思うのですが、どういった議論をしてきたかという進捗の報告をまとめてするようなことをイメージしてございます。そういう中では、ここに書いているような、ILC計画で期待される成果は何かと。その中で、何回も議論があったのですが、今後、今年末から始まるLHCの第2期計画、これの結果によっては、役割とか位置付け、意義付けが、ある意味見方が変わってくる部分も多くあるだろうと。こういうところについて、どういうふうなシナリオの場合には、より役割、位置付けが大きくなるとか、ここはもういろんなケースがあると思うので、一概にこうだというふうには言えないとは思いますけれども、全体の認識を深める意味で、そういった議論も次回していただいてはどうかと考えてございます。
 あるいは、それぞれの成果を期待する、例えば、どのエネルギー領域にありそうだというふうに期待をするための理論的根拠は何かということが、今日も御議論があったように記憶してございますけれども、そういった各成果の根拠となる理論的仮説がどれぐらい有望かという話であるとか、あるいは、1TeV、500GeVという話もありましたけれども、本当に初期の成果、期待される成果を得るためには、性能として、今のTDRレベルの250GeVマシン、500GeVマシンで十分なのか、1TeVないとできないことはあるのかという話も少しありましたけれども、そういった観点ですね。
 あと、資料2の2枚目に、参考資料として、これはもう全くのファクトデータでありますけれども、一応本部会は、お金について高いとか安いとかは判断していただく場ではございませんけれども、投資に見合う科学的意義があるかということを御議論いただく際の参考として、個々の大型の、特に加速器プロジェクトの建設費について簡単にまとめたものを掲載させていただいております。ですから、例えば、SPring-8で1,100億円ですとか、J-PARCで1,500億円、RIビームファクトリー、KEKB等で380億円、400億円ぐらいとか、こういったものが過去の実績でございます。こういったものも参考にしていただきながら、やはり巨額の投資を伴うプロジェクトというふうに認識してございますので、それに見合うような科学的意義がしっかりあるということも、この部会の場で御議論をしっかりしていただけるといいのではないかと考えてございます。
 そういう意味では、なかなか盛りだくさんの内容になってございますけれども、資料3の方を見ていただいて、また誰にプレゼンテーションをお願いするか等は、事務局とまた各委員の方々と相談して決めていきたいと思います。第4回、9月22日に今設定させていただいてございますけれども、まず関連分野の動向の続きとして、フレーバー物理、ニュートリノ分野の最近の動向というものが1点、ILCの科学的役割については、LHC実験との関係、それぞれのヒッグスセクターの詳細解明というミッション、あるいは、新粒子の探索というミッションについて、どういうふうなシナリオになるのかというところを御議論していただいてはどうかと考えております。
 10月21日に、続きになるかもしれませんが、先ほど挙げさせていただいたようなところを中心に御議論いただいて、11月の半ばぐらいに、親部会の方に進捗の報告というところをまずはしていってはどうかと考えてございます。
 資料の説明は、以上でございます。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 これにつきまして、今の説明ですけれども、何か御意見、お考え等ありますでしょうか。お願いします。
【初田委員】  今朝になって少し追加の質問というか、意見を出しました。今の話と少し関係していて、今日議論してほしいということではないのですが、なぜこのような意見を出したかという説明だけ、1分ぐらいでさせていただければと思いますがかまわないでしょうか。
【梶田座長】  お願いします。
【初田委員】  最後の資料ですが、取扱注意というほどたいそうなものではないのですけど。
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室長】  これはまだ委員内のコミュニケーションの資料ということなので、本日は公開の配付資料には含めさせていただいておりません。まだ委員限りの机上配付資料という意味で取扱注意とさせていただいており、中身に対して判断しているわけではございませんので、誤解なきよう、よろしくお願いいたします。
【初田委員】  分かりました。前回の森さんの話をお聞きして、少し考えた上での意見です。
 1番目は、Kavli IPMUに、もちろん皆さんよく御存じのフリーマン・ダイソンさんが来られて、インタビューがあり、それをたまたま見る機会がありました。それが2ページ目にあります。もちろん、相当なお年の方で、この人が言うことを今更まじめに取り上げて議論する必要はないと思われる方もいるかもしれませんが、僕が読んだ限りでは、非常に真っ当な考えで、共感するところもあることを言っておられます。2枚目のところで、宇宙の観測、それから、アンダーグラウンドの実験というのは非常に大事だということを言われています。LHCについては、分かっているものを発見しただけだというような言い方で、ここは賛否両論あると思いますけれども。
 一番強調されているのは、将来の加速器を考えるときに、やはりR&Dをきちっとやって、新しい加速機構を開発してから、コストのかからない方法で次の物理に進むのがいいのではないかということです。だから、巨大加速器を考えるときに、まずは加速機構から考え直してやるのがいいのではないかということをサジェストされている。そういう意味で、今ILCをすぐ作るのがベストなのか、何か全く別の方法を考えてから進むのでもいいのではないかというようなことをサジェストしていると思うのですが、そういう点に関して、特にILCに関係した理論や実験の方々の御意見が是非お聞きしたいなと思いました。一度是非読んでいただいて、御意見を頂ければと思った次第です。
 それから、2番目は、森さんのヨーロッパとアメリカでのお話を聞いて、このような大型計画で、財政的な基盤と科学的意義を完全に分離して議論することはできないということが、森さんの話でよく分かりました。ここではそういう財政のことを議論する委員会ではないということではありますが、国内、国外からどれくらいのお金を期待していて、実際にP5のレポートにありましたように、こういう財政状況であればこの方向というようなシナリオを当然考えられていると思うのですが、そういうものも見せていただいた上で議論するのが良いのではないかと思いました。以上その2点です。
【梶田座長】  ありがとうございました。
【駒宮委員】  その新しい加速器機構を作った加速器に関する話は、やはり我々素人がやるのではなく、きちんと加速器を分かっている加速器の専門家を呼んでこないと、議論にならないと思います。
 それから、もう一つ、もちろん、お金のことを議論するのは非常に重要なのですが、ここではそのサイエンティフィックな意義をやっているわけですよね。でも、このリニアコライダーというものは、もっといろいろな経済効果とか、ほかの効果というのはあるわけですね。そういうものをみんな含めて、このお金が妥当かどうかということを最終的には政府が判断するわけですから、サイエンティフィックな意義だけで、あるないと、これは高いんじゃないかというのは、やはり少しおかしいのではないかと思うのです。もちろん、サイエンティフィックな意義があるということは、一義的に重要だと思います。それがなかったら、やる価値はないと思うのです。
 以上です。
【梶田座長】  これについても、きょうは、何となくこういう観点で今後議論すべきかという、議題としての提案かと理解したんですけれども、そういうことでよろしいですか。
【初田委員】  いずれこういうことも議論していただけたらいいなという提案です。
【徳宿委員】  初田さんの最初のものについては、何から取ってきたかがよく分かりませんけど、Kavli IPMUのPR誌の中で、IPMUがレビューしたときのインタビューという、ある意味ではPR誌ですよね。その中でダイソンが話しているわけで、それにおいては、もちろん、IPMUに乗ってやっているプロジェクトに関して、きちんと高く評価するというような言い方をするのは当たり前だと思います。だから、それが書いてあるのは当然という形で見なくてはいけなくて、科学的なステートメントだと思ってはいけないだろうというのが1つ思います。
 あと、やっぱりLHCがあるものしか見えないというのは、全くの――彼が実験屋ではないというのは分かりますけれども――間違いであって、科学的にこういうステートメントを出しているとしたらば、それは非常に間違ったものだと思って、それを信用して初田さんが持ってきているとしたら、それはちょっと見識が疑われると思います。
【初田委員】  そういうことも含めて、いろいろ御意見を伺いたかった。ただ、ダイソンさんというのが、非常にレベルの高い、理論の中の最高峰の理論家であるということは確かですので、僕は彼の見識を信じて持ってきたわけです。
【徳宿委員】  分かりました。皆さんも、いろんなところでインタビューされて、それが新聞なりに載ったときに何て書かれるかというのはよく分かると思いますので、特にインタビューの言葉をもって何か議論するのは、僕はあんまり好きではないと思います。
【初田委員】  このままでなくても、こういう考え方に関して議論していただければと思います。
【徳宿委員】  もう一ついいですか。
【梶田座長】  はい。
【徳宿委員】  先ほどので、資料2に関連して、大型加速器の総コストを参考というのがありましたけれども、先ほどからの議論で、この場所がコストを議論するところでないのは当然だとも思うのですが、それでも一つお願いがあります。先ほどの吉田さんのプレゼンテーションで、やっぱり宇宙関係で非常にいろんなプロジェクトが、これから魅力的なプロジェクトが世界中で起こっているわけですが、それらのコストというのもやっぱりきちんと見せてもらえると、比較にはなるのではないでしょうか。というのは、やっぱり加速器の中で一番高いのがILCなのは当たり前なので、当然、今までのをやってきてみたらば、断トツに高いはずです。だから、宇宙のプロジェクトがどのぐらいの費用なのか。多分、測定器だけではなくて、ローンチングのコストも含めた形で、どのぐらいのことをほかのところでやっていて、魅力的になっているのかというのは、見た方がいいのではないでしょうか。
【梶田座長】  ありがとうございます。
 今の徳宿先生からの御提案というか、質問ですけど、これって、どういうふうにしたらよろしいんでしょうか。もし比較するとした場合に。
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室長】  先ほどおっしゃった内容で、少し事務局で取りまとめられるかどうか、また一度見てみると。
【徳宿委員】  資料があればということですね。
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室長】  まとまったもので、また配付させていただいて、大体こういうことは参考になるということであれば、また配付をさせていただきたいと思います。
【梶田座長】  分かりました。よろしくお願いいたします。
【駒宮委員】  でも、その幾ら使うかという話なんですけれども、これはピュアなサイエンスのプロジェクトなんですけれども、そうじゃなくて、例えば、スペースステーションとか、ITERとか、もんじゅとか、そういうものにどのぐらいお金を使っているかということも、やっぱり参考のために知っておいた方がいいと思うんです。
【梶田座長】  多分、そちらの方が事務局としては分かりやすい数かな。
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室長】  そういう意味では、オンゴーイングのプロジェクトについては、確たるコストというのを出せる数字を我々の方で持ち合わせていない可能性がございますので、この場でもし、この資料もそうなのですが、紹介させていただくとすると、もう既に建設済みのプロジェクトについて、参考として紹介させていただくということになろうかと思います。
 あとは、ITERとか、例えば、原子炉開発とか、そういったものとピュアサイエンスと一緒にして比べるかどうかというのは、これはいろいろな御議論があるところだと思います。規模が大きいかどうかだけではなくて、やはり欧米とかでもそうですけれども、核融合いつできるか分からないといっても、最終的にはフィッションがなくなって、最後は太陽エネルギーしかないと思って、コストベネフィットをするとなぜかプラスになるという世界で高く評価をされるという世界があるので、基礎物理、純粋物理の世界のプロジェクトと、こういったエネルギー分野のプロジェクトで、どう比べるかというのは、またこれだけですごく大きな議論になってきますので、できれば同じ分野のもので参考にしていただくのがいいのではないかというのがもともとの意図で用意をさせていただきました。
 というのは、科学的意義があるかどうかということだけではなくて、やはりこれだけの投資をするための科学的意義は十分かという御議論は、できればしていただきたいと思ってございまして、そこのスレショールドというのはなかなか主観が入る部分でございますので、一義的に線は引けないとは思うものの、従前できてきたプロジェクトとの比較で、大体の相場感というのを持っていただきながら、それでもやはりやるべきだという御議論なのか、この規模だったら、こういう科学的意義がきちっとあることが確認できないといけないのかとか、そういった定性的な御議論ができるのではないかなという思いがありまして、こういった提案をさせていただいている。その中で、中の御議論は、また委員の先生方に御依頼しようと思ってございますので、よろしくお願いいたします。
【梶田座長】  ほかに、特に何か先ほどの資料2、資料3の関係でありますでしょうか。
 すいません、私の方から1点だけあるのですが、9月22日の議論の中身の2つ目で、ILCの科学的意義・役割について(LHC実験との関係)となっているのですが、具体的に、フリーディスカッションなのか、このあたりのイメージがまだ分からないのですけれども。
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室長】  もしどなたかプレゼンテーションをしていただける方がいらっしゃっいましたら、たたき台としてシナリオを幾つか提示をしていただいて、それをもとに、一義的にこうだと決まるシナリオはないと思いますので、その中でコンセンサスが得られそうなところ、アーギュメントが幾つか出るようなところというのを浮き彫りにしていくというところをやれればいいかと考えてございます。どなたにお願いをするか、どういうふうにできるかは、個々に当たって調整させていただければと思います。
【梶田座長】  分かりました。ありがとうございます。
 ほかに何かありますでしょうか。お願いします。
【小磯委員】  資料7に戻って、1ページ目にまとめて書いてくださったものについて、私自身の頭を整理するためにお伺いしたいのですが。
 中野さんからの質問で、重要な測定として1、2、3、4が挙げられ、更に5点目を追加して答えてくださっていますが、このうち確実にILCでできるものとしては、1番のヒッグスの結合定数のずれの精密測定と、それから、3番のトップクォークの質量の精度向上、この2つは確保されているということでしょうか。
【駒宮委員】  そうですね。
【小磯委員】  それ以外のものに関しては、自然がどうなっているかによって、情報が十分得られる可能性もあるし、手掛かりが余り得られない可能性もあると、そういう大ざっぱな理解で間違っていないでしょうか。
【駒宮委員】  新粒子の探索というのは、直接プロダクションですね。直接プロダクションは、もちろん、自然がどうかということになりますよね。この直接プロダクションができない場合、例えば、バーチャルでどういうふうなものが見えるかというのはできますよね。新粒子というのは、直接プロダクションの場合は、これはスレショールドに入っているか入っていないかなんですが、例えば、うんと高いところにレゾナンスがあった場合は、それの裾野というのは、断面積の精査によって、γとZ0が混ざったりして分かったわけです。だから、それと同じようにしてできると思います。
【小磯委員】  はい。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 ほかに何か特にありますでしょうか。よろしいですか。
 では、以上で、議題の3番目についての議論は、これで終わりにさせていただきたいと思います。
 そのほか、もし何か特にありますでしょうか。よろしいでしょうか。では、またほかに何か御意見等ありましたらば、事務局の方まで御連絡いただければと思います。
 以上で、本日の会議は終了といたします。
 最後に、事務局の方から連絡事項があるということですので、お願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  本日の議事録につきましては、後日、出席委員の皆様にメールにて内容の確認をお願いしたいと思っております。
 それから、本日の会議の中で、前回の議事録案について審議いただいたわけですが、そちらについては、できるだけ早めに本省のホームページの方に掲載したいと思っておりますので、御意見等ございましたら、お早めにお願いしたいと思っております。
 それから、次回の日程につきましては、先ほど御説明しておりますとおり、9月22日の9時半から開催する予定でございます。
 それから、会議資料につきましては、もし必要であれば当方の方から郵送いたしますので、そのまま机上に残していただいて構いませんので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【梶田座長】  ありがとうございました。
 それでは、本日の会議を終了いたします。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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