国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議素粒子原子核物理作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成26年7月29日(火曜日)16時00分~19時00分

2.場所

文部科学省5階 5F3会議室

3.議題

  1. 素粒子原子核物理作業部会(第1回)の議事概要について
  2. 欧州、米国における素粒子物理学の動向について
  3. 今後の議論の進め方等について
  4. その他

4.出席者

委員

梶田座長、中野座長代理、岡村委員、小磯委員、駒宮委員、酒井委員、清水委員、徳宿委員、中家委員、初田委員、松本委員、山内委員、山中委員

文部科学省

常盤研究振興局長、山脇大臣官房審議官(研究振興局担当)、安藤振興企画課長、嶋崎素粒子・原子核研究推進室長、成相加速器科学専門官

オブザーバー

東京大学素粒子物理国際研究センター 森教授

5.議事録

【梶田座長】  それでは、これから、国際リニアコライダーに関する有識者会議、素粒子原子核物理作業部会の第2回会合を開会いたします。
 まず、本日は御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 では、本日の出席状況につきまして、事務局の方からお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  本日の出席状況についてお知らせいたします。本日、棚橋委員と横山委員におかれましては、所用により御欠席ということでございます。なお、出席13名でございまして、当作業部会の定足数は8名ということですので、会議は有効に成立しております。また本日は、米国の素粒子物理の将来計画優先順位付け会議の報告ということで、当会議の委員でございました東京大学の森教授に御出席いただいております。
【森教授】  森です。よろしくお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  以上でございます。
【梶田座長】  ありがとうございました。続きまして、事務局側に異動があったとのことですので、報告の方、お願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  7月25日付けで研究振興局長の小松が初等中等教育局長へ異動しまして、後任として、高等教育局私学部長であった常盤が就任いたしております。
【常盤研究振興局長】  ただいま御紹介いただきました、研究振興局長、常盤でございます。先週の25日に前・小松局長から交代いたしましたので、是非よろしくお願い申し上げたいと思います。
 この会議におきましては、既に第1において、素粒子物理学の理論面から見た将来像とか、あるいはILC計画の目指す、物理をはじめとした概要の説明がありまして、議論が行われたと伺っております。本日の会議でも、また欧州や米国における中期的な将来戦略に関する説明を関係の先生方から行っていただくと承っております。この計画につきましては、宇宙創成の謎を探求するという点で、非常に大きな、壮大な、夢のある計画であると承知しておりますけれども、他方で極めて多額の経費を要するということもございますので、この計画の実現に向けて、いろいろ御議論を重ねていただくべき部分があると聞いております。是非、先生方、御多忙の中、誠に恐縮ではございますけれども、引き続きの御議論、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【成相加速器科学専門官】  それから、7月7日付けで、素粒子・原子核研究推進室長の大土井が、科学技術・学術政策局の政策課へ異動しまして、後任として、研究開発局の開発企画課の嶋崎が就任いたしております。
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室長】  大土井の後任として、素粒子・原子核研究推進室長に就任いたしました嶋崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 素粒子物理ということで、大変難解な学問分野でありますけれども、皆様の御議論をしっかりサポートできるようにしっかり勉強してまいりたいと思います。本部会は、特にILC計画について、投資に見合った科学的意義は何なのかということについて御議論いただくという点にしてございますが、それのみならず、素粒子分野、物理分野における課題に対して、どういった研究に取り組んでいくべきなのかという、少し広い観点からも御議論いただくという構えになってございますので、また引き続きよろしくお願いいたします。お世話になります。
【梶田座長】  ありがとうございました。それでは事務局より、本日の配付資料の確認をお願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  本日の配付資料でございます。資料1が、前回の第1回議事録(案)でございます。2点目が「素粒子原子核物理作業部会における論点」。こちらは前回もお配りしたものです。それから3点目が今後のスケジュール。こちらについては、少し改定しております。後ほど御説明します。資料4が「European strategy and CERN Medium Term Plan」でございます。資料5が、「Building for Discovery」(2014 P5 report)でございます。資料6が、「US DOE P5 reportについて」でございます。7点目が「素粒子原子核物理作業部会(第1回)資料6に関する質問への回答等」でございます。このほか、机上に配付しております参考資料、こちらのドッチファイルの資料でございますが、1点目がILCの概要、2点目が「国際リニアコライダー計画に関する所見」、それから3点目がILC計画に関する今後の進め方、4点目が、学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ、5点目がILC立地評価会議の立地評価結果です。6点目が、高エネルギー物理学の将来計画検討小委員会の答申。7点目がCERNの概要。8点目が素粒子物理学における欧州の未来戦略。9点目が、米国素粒子物理学プロジェクト優先順位付委員会報告書の概要、こちら和文のもの。それから10点目がその英文です。11点目が、国際リニアコライダー計画の概要ということで、前回、駒宮先生からプレゼンいただいた資料を配付させていただいております。資料は以上でございます。不足の資料がございましたら、お知らせ願います。
【梶田座長】  よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。それでは議事の方に入りたいと思います。
 まず、議題の1ですけれども、本作業部会(第1回)の議事概要についてということで、議題の1として、前回の議事概要(案)についてお諮りしたいと思います。既に事務局から事前に確認依頼が行っていると思いますけれども、もし何かこの場で意見等あれば御発言をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
【小磯委員】  よろしいでしょうか。
【梶田座長】  はい。お願いします。
【小磯委員】  この議事概要、非常に詳しく書いてありますが、後から全体の流れを追うという意味で、省略して良い部分は、問合せがあったときにどんどん省略して構わないのでしょうか。議事録にこの会議の会話が全部そのまま残っていますが、論旨を追うのに必要ではないところは、当人の考えで省略してもかまわないのでしょうか。
【梶田座長】  事務局の方にお伺いした方がいいかと思うのですけれども。
【成相加速器科学専門官】  正確を期す上で残している部分もございますが、もし適切な表現でないものであれば、それは落としていきたいと思いますので、そこは御意見いただければと思います。
【小磯委員】  「質問に答えていただいてありがとうございます」とか、そういう非常に単純なやりとりの部分が全部克明に残っている必要があるのかと、疑問に思いましたので、この場で御質問しております。
【成相加速器科学専門官】  分かりました。
【駒宮委員】  済みません。あと、スライドがないと全く分からないと思うんです。だから、ただ言ったことをずらずら書いても余り意味がない。
【清水委員】  ただ、私もこれを読んでいて、これで議事録になるのかなと思ったのですけれども、取捨選択するのも多分、大変なんですよね。それで、普通の議事録の形にすると、多分、また何かいろんな人からいろんなことを言われるのではないかというのでやっているのではないかと思うのですけども。まとめられますか、もう少し。少なくとも言葉のやりとりの、「それでは」とか何とかは要らないわけですし、趣旨が伝わればいいと思うのですけれど。
【成相加速器科学専門官】  そこはうまく整理したいと思います。
【山中委員】  あと、ちょっと補足を。先ほどスライドの話が出ましたけれども、前回のスライドが期限付で、ウエブページでも見られなくなっています。あれは、期限を切らないといけないのでしょうか。
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室長】  基本的には、ウエブページで会議の資料は全て閲覧できるようになっているはずですので、もし今見られない状況になっているとすると、不備ということになりますので、対処させていただきたいと思います。
 前回、駒宮先生の方から配付していただいた資料を掲載する際に、こちらに掲載していますというリンクを張らせていただいて、そのリンクの期限が何かあったようなのですけれども、文科省のページには、掲載を見られるようにしているということですので、御確認いただいて、もし、なおかつ不備があれば、お知らせいただければ、すぐに対処させていただきたいと思います。
【山中委員】  分かりました。
【梶田座長】  では、まずプレゼンファイルは見えるようになっているということで、あとは議事概要ですけれども、ちょっと要点を絞れるような形でできるかどうか、事務局の方で御検討をお願いするということでよろしいでしょうか。
 特に内容につきまして、何か誤りその他ございましたでしょうか。よろしいですか。
 では、内容につきましては、資料1のとおりで了承ということで理解させていただきます。どうもありがとうございました。
 続きまして、議題2「欧州における素粒子物理学の将来戦略報告について」ということで、これから議論をしていきたいと思います。前回の会議でアナウンスしておりました、欧米における素粒子原子核物理の将来的な検討状況について、関係者等からの報告を頂き、議論を行うことを考えています。まず、欧州の将来戦略について、徳宿委員の方から御説明をお願いしたいと思います。
【徳宿委員】  よろしくお願いします。それでは、ヨーロピアンストラテジーとCERNのMedium Term Planという形で徳宿がお話しします。
 ヨーロピアンストラテジーというのは、欧州戦略と訳すのでしょうけれども、欧州の高エネルギー物理に関するロードマップのようなものをずっと策定してきました。それの状況をお話しした上で、それを受けて今年の6月にCERN研究所の中期プランというのが出ましたので、その2つをお話しします。
 ヨーロピアンストラテジーについては、私自身は直接策定には関与しておりませんので、書類の中には、後でまた説明しますけれども、直接関与したローザンヌ大の中田さんからスライドを少しもらっていまして、それを入れています。CERN MTPに関しましては、私はCERNの科学政策委員会の委員などをしておりまして、これを承認する前の議論などにはちょっと入っておりますので、それについて少し話します。きれいな絵を余り用意しないで、ほとんど文字だけで、申し訳ありませんが、それで進めさせてもらいます。
 まず簡単にCERNについてですが、1954年に発足した、欧州の素粒子原子核研究のための研究所です。欧州の素粒子原子核研究のためということはちゃんと書いてはいるのですが、だからといって欧州のメンバーに限るということにはなっていません。最初からそう書いていないということと、加盟国は欧州には限らないのだということを改めて2014年に確認しています。ですから、基本的には加盟に関しては欧州ではない国も加盟できるということになります。現在の加盟国は21か国で、昨年の12月にイスラエルが加盟しています。イスラエルは、この前のワールドカップでお分かりのように、場合によってはヨーロッパですし、場合によってはアジアになることがありますから、その辺は微妙なところですが、何にせよ、今、21か国です。国際関係という意味でも、最近のニュースで特筆すべきこととして1つ挙げておいたのは、2012年にUnited NationのGeneral Assembly、国連総会のオブザーバーステータスというのを得た国際機関になっています。研究関係でオブザーバーステータスを得た初めての研究機関ではないかと思います。年間予算は、後のMTPのところでも出てきますが、1,000億円ぐらい。職員が2,400人ぐらい、ユーザーは世界中から1万人を超える人が来ております。
 それがCERNなのですが、最初にEuropean Strategy for Particle Physicsということで、素粒子物理における欧州戦略というのをどういう経緯で立てたかというのをまず話します。これは、先ほど申し上げましたように、高エネルギー分野の欧州のロードマップと言えるものです。最初に策定したのは2006年になります。これはCERNが勝手に決めたのではなくて、CERN及びECFAといいまして、ヨーロッパの高エネルギーコミュニティーの草の根団体みたいなものだと思いますけれども、そこと協議して、ロードマップというのを取りまとめようということになりまして、最初は2006年に作りました。2006年に作ったもののところに、そう頻繁にアップデートするものではないということで、アップデートするとしても5年以内には変えないようにしようと決めました。それを受けますと、本当は2011年からやってもいいのですが、その頃にLHCが動き出しましたので、LHCの初期の結果を見てからやった方がいいということで、比較的遅めに始めることになりました。2012年から見直しが始まって、最終的な答申が去年の6月にできました。最終的な承認は、普通はCERNのカウンシル、CERN理事会というのはCERNジュネーブでやるのですが、ブリュッセルで特別なカウンシルを開きまして、そこで承認するというセレモニーをやりました。
 先ほどもちょっと申しましたが、この見直しに当たっては、ローザンヌ大の中田さんがチェアパーソンを務めました。後ろの添付ファイルの中にメンバーリストがざっと書いてありますが、メンバー国から基本的には、CERNのメンバー、ここから1人ずつ及び欧州の大きな研究所の代表がメンバーに入っています。それから、非加盟国からもオブザーバーが出席しました。日本からは、その非加盟国のオブザーバーとしては、東大の浅井さんが入っています。それから、FALC、Funding Agencies for the Large Collidersの議長がやっぱりオブザーバーとして参加されますので、その当時の議長であったKEKの岡田氏も入っています。また、ストラテジーを決めるグループのほかに、そこへ資料を渡すためのグループが結成されまして、そこはプレパラトリーグループというところなのですが、そこには日本からは大阪大の久野さんが参加して貢献してきました。
 レポートは公開されていますので、こちらに書いてあります。最初のイントロダクションの後、a)からq)までの17のリコメンデーションがあります。最初の2つの一般的なものの後、4つのハイプライオリティー条項を挙げています。それで、基本的には、これは非常によく練られた文章で、文章をバイオレートするわけには本当はいかないので、基本的にはその後、そのまま載せているだけになります。ただ、チェアパーソンである中田さんはある程度書けますので、中田さんが書いたものを、この後、4枚渡して、まず紹介します。
 中田さんからの資料です。彼が英語で書いた上で日本語の解説をちょっと加えてあります。最初に言っているのは、もうほぼ話したとおりなのですが、ヨーロピアンストラテジーの中身です。読んで3ページですので、ちゃんと読んでくださいということだと思います。最初のイントロダクションの後、17のステートメント。ゼネラルイシューが書いてあった後に、ハイプライオリティーのlarge scale scientific activitiesということで、4つ挙げられています。それが、LHCとaccelerator R&Dとe+e-コライダー(ILC)及びニュートリノに関する4つをハイプライオリティーとして挙げております。そのほかにも、いろんなアクティビティーが素粒子物理学のプログラムでは重要であるということが触れられておりまして、理論も含めて、あるいはいろいろなハイプレシジョンフィジックス等が重要であると。その後、オーガニゼーションイシューとアウトリーチに関してという形で構成されています。
 先ほど言いましたように、プレパラトリーグループが準備のためのフィジックスインプットのドキュメント等を作っていますので、そういうものがたくさん、あちこちに書いてありますので、それも参考くださいということだと思います。
 多分、ここは結構重要なのでいきますが、このストラテジーを決めるに当たってどういうことを考慮したかというのが中田さんからのコメントだと思います。まずは、その時点での分かっている科学的に非常に重要な項目のまとめです。LHCが非常にうまく運転してヒッグスの発見に至ったというのが1つの重要なポイントです。それから、ニュートリノに関しても、ミキシングで、今まで見つからなかったほぼぎりぎりのところに、つまり大きな値でθ13が見つかったということも重要なインプットであると。さらに、ヒッグスは見つかりましたが、ほかのパーティクルが、まだ見つかっていないという、この3点というのがヨーロッパの今後の戦略を考えるに当たって重要なポイントであるというステートメントです。私もそのとおりだと思います。
 それから、ヨーロッパのgeopolitical environmentということで、ヨーロッパとしての特質というものがここに挙げられています。ヨーロッパにはLHCというものがあって、これはヨーロッパのフラッグマシンであると。これはhigh energyのenergy frontierだけではなくて、LHCb実験というのがありますが、フレーバーフィジックスでもやっていますし、ALICEという実験があるように、重イオンのフィジックスもやっていると。
 次のポイントは、それだけではないのだというポイントだと思います。CERNはヨーロッパのパーティクルフィジックスをやる中心ではありますが、そのほかにもたくさんのナショナルラボラトリーがあって、そこでいろんなプログラムをやっているのだということが2番目のポイントだと思います。
 3番目のポイントもまた重要で、後で森さんの方で、P5の方でも受け継がれてくる精神だと思いますけれど、ヨーロッパとしては、これからやっぱり高エネルギーをやっていく、パーティクルフィジックスをやっていく上では、全てをヨーロッパでやることというのはできないのだという認識だということです。ですので、ヨーロッパ以外のところのファシリティーをサポートしていかないと、共同していかなくてはいけないのだということです。この3つの観点というのが、ストラテジーのアップデートに関わった観点だということだと思います。
 それともう一つ、最後はコメントみたいなものですけれども、多分これも森さんのP5と対照的だということで書いてあるのだと思いますが、お金が幾らだからどうこうというようなロードマップではありませんということが書いてあります。つまり、お金が幾らだから、こういう具合にプログラムしましょうねというシナリオを作ったわけではありませんというものです。
 4つのハイプライオリティーの事象というのが、この4つになります。正確な文章は、この次にそれぞれそのままエクストラクトしていますので、そういう意味では、これは中田さんが長い文章を半分ぐらいにまとめると、どういう具合に書くかというものになりますので、それ自体としても考察の意味はあるかとは思います。最初に挙げているのが、LHCをとにかく使い尽くすということです。それには、ハイルミノシティのアップグレードをして、ヒッグスの精密測定をやり、フレーバーフィジックスをやり、ヘビーイオンフィジックスをやると。さらに、標準模型を超える粒子の直接探索というのをやるというので、これがヨーロッパのトッププライオリティーだというのが第1番です。
 その次は、その後、次のハイエネルギーのenergy frontierのマシンを作るための準備を進めましょうということです。そのためには、強い磁場あるいはハイグラディエントの加速器の開発というのをやっていかなくてはいけないと。それが2番目です。
 3番目が、この会議の話題になっておりますリニアコライダーに関してで、LHCに対応するハドロンマシンと電子・陽電子衝突マシンとの間の、双方性と僕は訳してしまいますけれど、駒宮さんは相補性と訳さない方がいいと前回言っていましたので。相乗性でしたか。相乗効果というのを理解しますと。それがどういうところにかというと、ヒッグスの精密測定及び新粒子の探索であると。ILCを日本がホストするのであれば、ヨーロッパは参加するというのが3番目です。
 4番目は、ニュートリノに関して、ニュートリノのdetector R&Dに関して、CERNはinfrastructure and technical supportを作らないといけないと。何のためかというと、将来のロングベースラインのニュートリノ実験。アメリカあるいは日本でやるというような形になっています。この4点を4つのハイプライオリティー事項として挙げているのが、今回のヨーロッパ戦略でのアップデートした結果です。
 その後、全体のステートメントを書いておきましたけれど、時間が余りないので省略します。イタリックになっているところは、そのままイタリックで書いてあり、それを更に僕が赤で付けただけです。これが、ヨーロピアンストラテジーのアップデートした結果についての主な内容です。
 それを受けて、今度はCERNのMedium Term Planの話をします。CERNのMedium Term Plan、MTPというのは何かというと、毎年、CERNは、6月の理事会、CERNカウンシルにおいて来年の予算案を承認するとともに、それにつけて今後の5か年計画というのを一緒に承認します。それのことをMTPといいます。普通は5月にSPC、Science Policy Committeeにドラフトを持ってきて議論して、それを少しリバイズした上で、6月のSPCで議論して、それをまずFinance Committeeで承認した上で、最終的にカウンシルで承認します。実際、6月19日のカウンシルで承認されている文書です。
 この文書は公開文書になります。ドキュメントナンバーがCERN/3117という形で出るはずなのですが、現在のところ、まだ出ていないようです。後ろに少し付けていますけれども、オブザーバーで参加したときにプリントアウトしたものは頂いておりますので、入れておいて問題ないと思っています。今回、これがある程度重要なのはなぜかといいますと、先ほど申し上げましたヨーロピアンストラテジーアップデートを去年6月に決定しましたので、今回のMidterm Planというのは、それを受けて初めてのMTPになります。さっき言ったように、ヨーロピアンストラテジー自体は予算がどうこう決まってやっているものではないので、それを、予算ががちがちに決まっているCERNの中でどういう具合にやっていくかということが見えるという意味では、非常に面白いドキュメントになります。それから、森さんが後で話すように、これが出たのは6月ですので、アメリカのP5レポートも出た後なので、その結果というのもある程度反映しています。
 何でMTPのようなドキュメントがあるかというのを考える上でちょっと役に立つと思ったので、事前配布資料にはないものを、1つだけ足しておきました。この前のこの会議の参考資料にあったと思うのですが、これは有識者会議でKEKの鈴木機構長が示したスライドで、いろんな国際組織の構造というのがあって、どういう観点でどういうところにいるかという図を説明したと思います。CERNはここにいるということで、これはどういう方向かというと、これは物資調達というので、国際的なインスティテュートを作ったときに、こっちがインカインドを中心にしたものに対して、こっちがお金をお互いに出し合うというものの極端で、CERNはその極端の方にいると。人員構成も、みんなが集まってくる方向か、あるいはそこが雇うかというので、CERNは当然、雇うので、こういうところにいると。法的基盤という意味でも、MOUで緩くやる場合と、条約で決まっているというので、CERNはある意味では、ここの極端なところにいるので、そういう意味では、国際的な仕組みを作る上で、ここの例という意味では非常に参考になると思いますので、とりあえずコメントしておきます。
 資料では後ろの方に置いてありますが、これが10年間のお金のプロファイルです。細かい話はしませんが、このページが収入に関してのページで、その次のページが、それに対して支出をどういう具合にしていくかというプロセス。実はこの絵を見ると、かなりいろんなことが分かるのですが、それのエクストラクトした説明をこの後からしておきます。ただ、1つ分かるのは、ここの一番上のところが加盟国からの収入というので、それが大体1,100ミリオンスイスフランですね。1.1ビリオンスイスフランという形です。1スイスフラン100円として、1,000ミリオンスイスフランは1,000億と考えていていいと思います。
 内容を、全部やる必要があるかどうか分からないのですが、とにかくざっと行きます。今回のハイライトは、ヨーロピアンストラテジーのアップデートで、LHCをとにかく使い尽くせということになりましたので、普通は5年間のものを見せるのですが、LHCアップグレードが完成するには5年以上掛かりますので、10年計画として提示したということが新しい点です。その中で、LHCアップグレードを入れて、この文書が承認されたということは、CERNがLHCのアップグレードを進めるということを理事会が承認したということにほぼ等しくなります。
 去年まではLHCのアップグレードに関してたくさんのオプションを書いていたのですが、今回は、その中で最大限のオプションという1つに絞る形で書いたということになっています。加速器だけではなくて、実験をする場合、実験については実は各実験グループがお金を持ち寄って測定器を作るわけですけれども、もちろんCERNのメンバーも実験グループにはいますので、その分のコストはCERNが払わなくてはいけません。その分もきちんと入れています。ただし、予算が非常に厳しいのもあるので、加速器実験とも、実は言い値の、これだけ掛かると言っている値段の、今は90%しか予算を付けていないという状況で10年計画を作ってあります。
 もう一つ特筆すべきなのは、Non-Member国からのLHCのアップグレードに関する貢献の期待額というのが収入に組み込んであります。先ほどの細かい数字のところにNon-Member States contributionsという形で書いてあると思いますが、全体で200ミリオンスイスフランぐらいになっています。これはやっぱり米国のP5でもコントリビューションすると書いてあったこと、あるいは日本でもKEKでR&Dをしているとかいうことからのアサンプションとして、これを収入に組み込んでいます。2,000ミリオンスイスフランで2023年までに終わっているということで、これはNon-Member Stateからの貢献というのは、あくまでも加速器の建設に関してであるということを示していることになると思っています。運転はとにかくCERNがやりますよという意思表示だと思います。
 今の説明がヨーロピアンストラテジーの1番に関係するものですけれども、ここからは2番に関係することで、将来計画です。LHCの後のenergy frontierに関してのR&Dをしなくてはいけないというのが、MTPにどう反映されているかというと、energy frontierのR&Dとして2項目を付けています。1つは「Linear Collider Studies」という題目で、CLIC、ILC detector R&Dという形で含まれています。及び、今回初めて、FCC、サーキュラーコライダーに関しての予算を付けています。CERNは、MTPに書いてある文章をそのまま取ってくると、「CERN has launched the FCC study in addition to its leading roll in the CLIC collaboration and participation in the ILC.」ということで、このリニアコライダー以外にfuture circular collidersに関するスタディーを始めますよということです。
 実際にどのぐらいお金を付けているかというと、両方合わせて30ミリオンスイスフラン、30億円ぐらいですね。FCCの予算が少しずつ増えていきます。どう増えていくかは、先ほどの表を見れば分かります。ポイントは、2020年までには、LHCの後どっちへ行くかというのが分かると考えて、そこからは、この2本の線を象徴的に1本に描いています。ただし、現時点ではその値というのは年間30ミリオンスイスフラン程度です。ということは、つまり今後10年間に何かこれに関して実際の建設がlaunchするというのは、今の予算プロファイルの中では考えていないということになります。
 FCCだけちょっと説明しますと、これが今、LHCが26キロぐらいでここに書いてありますが、プロトン・プロトンで14 TeVなのですが、80キロあるいは周長100キロのマシンをここに作るとしたら、多分、ここが唯一解なので、こういう形で作りまして、やろうということになりました。現在、ある程度使われているNb3Snという線材を使えば、16テスラの磁石はできるので、それだったら100キロで100 TeVのマシンが重心計のようにできるかなということです。更にアンビシャスに20テスラの磁石というのが開発できれば、80キロで100 TeV、あるいは100キロで更に上げられるということです。ですので、FCCのR&Dの1つの重要なところというのは、高強度磁場の加速器用の磁石をいかに開発するかというのが鍵になります。
 リニアコライダーに関しては、MTPでは、ほとんどCERNが独自に開発していますCLICというのがありますので、CLICに関連したものです。来年について言えば、しかもそのうちのほとんどは人件費です。いや、そうでもないですね。半分、人件費で、10ミリオンスイスフラン、物件費が12です。先ほど言いましたように、これと、あと残りのリニアコライダー関連の予算とFCCを合わせて全部で30ぐらいの予算ですので、FCCに掛けているお金というのは現時点ではほとんど少ないというのも分かると思います。ILCに関しては、CERNが現時点で特に独立した予算はしていません。ILCとCLIC研究とのシナジーが重要だということが文章の中に強調されていて、共通な加速器開発、測定器開発がうたわれています。ILCに関しては、ヨーロピアンストラテジーアップデートを受けて、日本の出方を待つという表現になっています。ほとんど、ヨーロピアンストラテジーアップデートに書かれた文章と同じになっています。
 4番目の柱のニュートリノに関しては、ストラテジーアップデートと米国のP5を受けて、CERNはニュートリノ研究をそこ自体でやるのではなくて、R&Dの基地となることを提案しています。今言ったとおりですね。ニュートリノの検出器の開発のためのテストファシリティーを整えると。今後5年間で55ミリオン程度をCERNとしては投資していこうということになります。で、CERNにおいて、欧州チームが開発したリキッドアルゴンを米国フェルミ研究所のビームに使ったロングベースラインあるいはショートベースラインのニュートリノ実験に使うことになります。
 これが4本の柱を入れた形での今回のMTPです。実はこれは非常に盛り沢山です。私が入っているSPCでも、非常にやり過ぎではないかというぐらい入っています。その結果どうなるかというと、収入だけでは足りません。ということで、今後、赤字が増えていきますよということが、MTPの中で言われています。先ほど見せた、資料では後ろに書いてあります支出の最後のところに、年間のcumulativeなbudget deficitが書いてあるはずですが、2018年頃、5年後ぐらいに最大の赤字になりまして、540ミリオンぐらいの赤字まで行きますと言っています。先ほど言いましたように、年間予算1,000ミリオンスイスフランぐらいですから、年間予算の50%ぐらいの赤字までいって、その後、徐々に回復して、10年後までには2040ぐらいの赤字になりますという形になっているのが現状です。
 ということで、これが全体のまとめです。全体のまとめは持ってきませんでしたけれども、要するにCERNは欧州戦略のアップデートを去年作りまして、それに向けた形での予算化という形を出してきています。ただ、LHCのアップデートというのが最重要事項で、それにやっぱり非常にお金は使っていますので、財政的には非常に厳しい状況だというのがCERNの状況だと思います。以上です。
【梶田座長】  ありがとうございました。それでは、今の報告に基づきまして御議論をお願いしたいと思います。何か特に委員の皆様方の方からございますか。お願いします。
【中野座長代理】  幾つか質問があるのですが、まず、MTPというか5か年計画というのは毎年リバイズされるのですか。
【徳宿委員】  毎年です。毎年、次の5年の計画を書いていく。
【中野座長代理】  終わったところは。
【徳宿委員】  そこはヨーロッパストラテジーと違う。ヨーロッパストラテジーは、もう、5年やったらしばらくやらないよと言っていたけれど、これは毎年見直して、要するに本来の目的は来年の予算を認めるのですが、それは、こういうプロファイルの中でのこの予算だからというので付けていると思っていいと思います。
【中野座長代理】  その際に、次の年になったら、先のことでも書き替わるという可能性はあるのですか。
【徳宿委員】  あります。例えば去年はそういう具合に書いてあって、MTPを書くときには言い訳がたくさん書いてあって、今回は前年までの方針をほぼ変えないと。なぜならば、今、ヨーロピアンストラテジーアップデートをやって、それを見たら大きく変えるので、「今年は大きなことは変えないで、とりあえず延長だよ」という言い方を去年はしていました。今年はアップデートが終わったから、ではドラスチックに、こういう具合にしましょうという書き方で始まっている。
【中野座長代理】  今回のMTPに出てきたものは、かなり、尊重されるというか、しばらくは守られる可能性は高いということですか。
【徳宿委員】  可能性は高いと思います。一応、これは言ってはいるので、縛るところはあるとは思います。ただ、そんなことを言っていていいのかどうか分かりませんけれども。所長も来年で替わったりしますので、そういうところである程度の方針が変わったりなどということはあり得るとは思います。ただ、何にしても、要は、毎年の予算を決めるに当たって5か年を見通して立てるというのがポイントなのだと思います。それで、今回は5か年では見通しが付きづらいので、10年をきちんと言おうとしたと。ヨーロッパストラテジーもあったので10年をやったということです。
【中野座長代理】  ヨーロッパのお金の動きというのをもう一つ知りたいのですけれど、1,000億円の予算というの自体は、意外なほど少ない感じがするのですが、それに付随して、いろんな国のいろんなお金が動くわけですか。
【徳宿委員】  これはCERNの予算だけですので。
【中野座長代理】  CERNの予算だけで、いろんな国からコントリビューションがあるわけですよね。
【徳宿委員】  はい。それはここで決まっていて、ほぼ10年間、コンスタントに決まっています。
【駒宮委員】  少なくはないですか。【徳宿委員】  1,000億円には、もう一つは人件費も入っています。だからCERNの給料は全部ここに入っています。
【中野座長代理】  1,000億にCERNの給与は全部入っている。これは、例えばLHCを作るお金などというのも、ならすとその1,000億の中に入っているということですか。
【徳宿委員】  入っています。全部入っています。LHCの占める要素が非常に高いという形では見せています。
【岡村委員】  加盟国の分担金みたいなものがあると思うのですが、その金額というのはどういう基準で決まっているのですか。
【徳宿委員】  ちょうど、MTPはこれなのですが、GNP比という形です。本当はGNPではなくてNNI、Net National Incomeというのを使っています。これがまさに来年の分担を決めるための表なのですが、2010年から2012年までの各国のGDPに対応するものに合わせて計算して、各国のお金の分担というのが決まります。ですので、ここで見れば分かりますが、一番多いのが20%で、Germany、ドイツですね。その次がフランスの15%、UKの14%、イタリアの11%でほぼ50%近いお金を出しています。その次がスペインだと思います。
【岡村委員】  それから、もう一つ、加盟することとしないことは非常に大きな差があると思うのですけれど、何が一番大きな違いでしょうか。例えば日本は加盟していないとおっしゃいましたけれども、これを使って実験ができています。加盟しなくてもお金を出せば利用できるということですか。
【徳宿委員】  まず、CERN自体の運営には日本は関わりません。CERNに加盟していませんので、もちろんCERNに日本の職員は入れられないし、例えばCERNからの物資調達などというのもメンバー国に限られるとか、そういう縛りになります。ただ、そこでCERNでやっています加速器の利用に関しましては、基本的なガイドラインとしては世界中の国の人に使わせるということにはなっていますので、それはICFAのガイドラインだと思いますけれども、それによって、実験グループには、メンバー国ではないところからも入ってくるという形になっています。実験に使う費用というのは、実験をやっているグループが分担しますので、そこに関しては、例えば日本はLHCのアトラス実験には入っていますので、そのお金は分担しています。
 ただ、もう一つは、LHCは建設に当たっては、実はCERNだけではなくて、ほかの国からの貢献もありました。日本からも約140億を貢献しています。LHCへの貢献が加盟国以外で大きいのは、日本、アメリカ、カナダ、ロシア、インドぐらいだと思うのですが。ですので、それを受けまして、実は日本と米国とロシアとイスラエル。今、イスラエルはメンバーになってしまいましたけれど、その4か国だけは、実はobserver state with special rightと言いまして、LHCのことを議論するときには理事会に呼ばれて出席を許されるという形での参加がされていました。
【酒井委員】  赤字を許すというのは、どういう原理なのですか。そもそも、増えていくのを許すというのは、なかなかいいシステムのような気がするのですが。
【徳宿委員】  なかなかいいシステムで、これは僕らも冗談で言っているのですけれど、多分、CERN以外で赤字を許している研究所というのはないと思います。
【酒井委員】  ないですよね。
【徳宿委員】  ええ。ただ、そこは、赤字をしてもよいということが、駒宮さんの方が、古いことは知っているかもしれませんけれど、LHCの建設のときに、一時お金が足りなかったので、そのときローンするということを始めて。
【酒井委員】  ローンというのは銀行からのローンですか。
【徳宿委員】  銀行からです。基本的にはスイスの銀行で、多分、利子はほとんどない状態で借りられるという状況なのだと思いますけれども。その意味では、今回、赤字が非常にひどいので、これをカウンシルで認めるとは僕らはなかなか信じがたくて、次のバージョンを作らなくてはいけないのではないかと心配していたのですが、今回は理事会で非常に素直に認めてもらいました。でも、それはやはりヨーロピアンストラテジーにきちんとのっとっていると。ヨーロピアンストラテジーを決めたときにも、理事会の人たちがきちんとメンバーに入ってやっていたからだとは思うのですけれども。これだけの赤字で大丈夫だったというのは、僕も驚きました。実は、先ほど言いましたように5月にドラフトが来て、それをリバイズしていたのですが、5月で大赤字だったので、これは何とかしなくてはいけないのではないかという議論はしていたのです。それで6月に出してきたのがほとんど変わらないものなので、今回、CERNはかなり強気に出たかなと私は思っていました。でも成功しました。
【中野座長代理】  その大きな赤字を認めたという一番大きな理由というのは、長期のプランがある程度確定したということがあるのではないですか。
【徳宿委員】  LHCのアップグレードをちゃんとやるということに対しての。
【中野座長代理】  研究者がやりながら違うことを言い出す可能性は非常に小さくて、かなり長い期間にわたって、今言ったプランのまま進んでいくということを反映して、大きな赤字予算を認めたのか、それともそれとは関係なく、やはりヒッグスが見つかって、非常に行け行けになったから認めたのか。
【徳宿委員】  ヒッグスで行け行けになってということではないとは思いますけれど、きちんとしたプランだからということだとは思います。
【酒井委員】  この予算を見ると、5年で倍ぐらいに。この一番下を見たらいいのですよね、多分。
【徳宿委員】  そうですね。
【酒井委員】  5年で倍になりますよね。5年で半分になると、今のと同じになるわけですよね。
【徳宿委員】  はい。
【酒井委員】  で、バランスを考えると、更にその先5年掛けて0に持っていくのか、何かよく分かりませんけれど、どこが責任を取るのですか、何か起きたときに。母体はどこになるのか。
【徳宿委員】  これはメンバー国です。母体はカウンシルですから、メンバー国だと思います。
【駒宮委員】  済みません。このMedium Term Planというやつのハイライト3というところなのですけれども、CLICとありますよね。CLICは、CERNとしては、2017年にターミネートする、一回予算をなくすと言っていますよね。そこら辺のところはどうなのでしょうか。
【徳宿委員】  ターミネートするとは言っていないです。
【駒宮委員】  言っていなくても、それでも予算は終わりだと言っているじゃない。
【徳宿委員】  FCCとマージする形で、その後に。資料添付の方で出していますけれど、energy frontierということで、書かれています。リニアコライダーとして、CLICだけではなくて、ILCなどを全部ひっくるめた形で最近は書いていますので、それぞれへの配分が分かりづらいですが、今年が全体で34億ぐらいだったのが、来年28億です。これがずっと行って、5年間、だんだん下がっていく。で、FCCがこうなっていって、その後で、次の5年間からは1つにまとめるという形になっています。
【駒宮委員】  それは、ややこしいのではなくて、多分、リニアコライダーコラボレーションというのができたので、一緒のグループになったわけですよ。前は、CLICとILCが競争状態だったわけですよね。その競争状態が、ヒッグスが見つかることによって解消されたわけです。CLICとILCというのは一緒のグループになったわけですよね。
【徳宿委員】  そうですね。
【駒宮委員】  ということは、2017年以降は多分、ILCの方にもっとお金を出すということではないかと理解しているのですけれど。
【徳宿委員】  そこについて具体的には現時点では書いてありません。今あるのは、5年ごとのプロファイルです。だから、この中のディテールが、ILCに幾ら要る、CLICに幾らというのは出していないと思います。
【駒宮委員】  分かりました。
【徳宿委員】  さっき言ったのは、それを5年後からはFCCと一緒にした形で、年間30億ぐらいで出しているということです。
【初田委員】  お金の話がいっぱいあったので、ちょっと物理の話。European Strategy for particle physicsの、ハイプライオリティーで、c、d、e、fというのが4つあるわけですね。cがLHCのアップグレードで、dが将来のR&D。それからeにILCのことがあって、fがニュートリノ。これを読んでいて、ニュアンスがよく分からないのでお聞きします。dでは、ヨーロッパのCERNは将来もこのサイエンスに関して先頭に立たないといけないということで、プロトン・プロトンか、エレクトロン・ポジトロンの両方を視野に入れてR&Dをやると書いてあります。一方、eでは、ILCが非常に重要ということで、日本のことが書き込んであります。このdとeの関係はどのように理解すれば良いのでしょうか?、
【徳宿委員】  将来のR&Dというのは、今まだ実現できていないようなhigh energyのマシンというものの開発を続けるということです。e+e-に関しては、ここであらわには書いていませんけれど、1つはもちろん、今までCERNで開発してきたので、CLICを即座にはやめるとは言えないので、これは必ず、CLICというのは念頭にあるわけです。
【初田委員】  エレクトロン・ポジトロンのコライダーというのは、CERNではやらないというふうに読めてしまったのですけれど、それは間違いでしょうか。
【徳宿委員】  ここは、R&Dに関しては……。
【初田委員】  R&Dはやるけれども、ホストはしないということですか。
【徳宿委員】  全R&Dは全て可能性を持った形でちゃんとやりましょうということだと思います。
【初田委員】  特にe+e-に関しては、ホストはしないというニュアンスだと思っていいのでしょうかというのが1つ。
【徳宿委員】  CLICはまずR&Dですので、ホストするうんぬんのところまでいっていないことをやろうということだと思います。駒宮さん、それでいいですか。
【駒宮委員】  そのとおりだと思います。ずっと将来のことは、ここには書いていないですよね。それ以降のことは。
【初田委員】  eの項目で書いてあるのは、それはずっと将来のことではなくて、もうちょっと近い将来のことだと思えばいいでしょうか。
【徳宿委員】  そうですね。
【清水委員】  この予算のほとんどは、LHCのアップグレードに使うと。HL-LHCというのですか。ですけれども、ILCの計画も世の中にあるわけだし、それでちょっとディテクター関係のアップグレードに関する予算というか、そういうものをどういうふうに考えているのですか。というのは、この前の議論でも、ILCとLHCの10年後のやつを比べたときに、ディテクターのアップグレードというのがどのように取り込まれたかというのはよく分からなかったのですけれども。例えばILCの方は、グラニュラリティーが1,000倍になるとかいうような話もありますよね。
【徳宿委員】  はい。
【清水委員】  そのときにLHCの方は何もしていないのかということなのですけれども。
【徳宿委員】  そうですか。分かりました。まずLHCのこの予算の中で、LHCアップグレードの最後の2つはディテクターに関するお金が入っています。で、実験のアップグレード計画については、4実験ともletter of intentをもう作ってありまして、そういうぐあいにするかというのは大体決まっています。それの基本的な方針は、アップグレードすると輝度が高くなりますので、一度に当たる衝突が、今で20発ぐらいなのが100以上、200近くになるんです。その状態で今の測定器では非常に性能が劣化するけれども、基本方針は、今の精度を守る。
【清水委員】  そうなんですか。
【徳宿委員】  200いったときに、現在のレゾリューションを保つようなディテクターにしようというような形になります。具体的には、非常に大きな柄物であるカロリメーターのアップグレードなどはしないで、ただ、もともと放射線創傷で傷んでしまう内部のトラッカのアップグレードがアトラス、CMS等も中心になります。
【清水委員】  それが、先ほど言われていた、LHCから出せるものを全部出すということをやるときのストラテジーとして、最も有効なやり方だと。例えば、ディテクターにもうちょっとお金を掛けるなどということもあり得るわけですよね、原理的には。
【徳宿委員】  今よりお金を掛けても、現実的なところを僕らは今、探っています。ただし、それでも、アトラス、CMSそれぞれに、全体でのアップグレードのコストを、それぞれ300ミリオンスイスフランぐらいですので、非常に大きなお金になっています。CERNは、そのうちCERN分担の部分だけの費用がここには入っています。
【梶田座長】  ほかに何かありますでしょうか。
【酒井委員】  済みません。予算とこれを読み合わせると、ニュートリノフィジックスは予算がだんだん減っていって、ほとんどゼロに終息するということは、CERNではもうやらないと。今は人がいて、その人の人件費が残っているみたいな感じですか。
【徳宿委員】  いや、実はニュートリノのphysicistは今CERNにはゼロなので、逆に人はいないのですが。先ほど言いましたように、CERNは自分のところでニュートリノはやらないで、そのためのディテクターのファシリティーを作るというのが現在の方針です。ですので、これから二、三年掛けて、SPSのところのfixed targetのところにリキッドアルゴンのディテクターを3つぐらい置く設備をこれから投資します。それが全体50億ぐらいになるので、それをとりあえずは、それがニュートリノに関するCERNのコントリビューションだということです。
【清水委員】  それに関して、先ほどのFour High Scientific Priorityの最後の方に、今のR&Dの話があって、「in the US or Japan」と書いてあるんですよね。
【清水委員】  その「or」はどういう意味なのですか。何で「and」ではないのですか。
【中家委員】  その議論は僕もそう思っていました。徳宿さんの資料の4ページは「or」になっていて、主語は「CERNが」となっています。資料の12ページ目、ヨーロピアンストラテジーの文章は、主語がEuropeで、ここは「and」なんです。その主語の違いによるものかどうか分からないのですが、最後の方のヨーロピアンストラテジーの文章では、ヨーロッパの物理学者、物理屋を主語として書いているのだと思います。
CERNなのかどうか分からないですけれど、先ほどのCERNが主語になったところには「in the US or Japan」となっています。そして、徳宿さんのMTPのところの原文、ニュートリノのところを見ていたら、アメリカの計画が、US P5と対応して、アメリカの計画の方が起こりやすいみたいな文章がどこかにあったのですけれど。
【徳宿委員】  そうは書いてないと思う。起こりやすいとは書いていないとは思うのですけれども。
多分、ディテクターのR&Dをやらなくてはいけないのは、明らかに水ディテクターではなくてリキッドアルゴンであって、CERNがやるべきところは、リキッドアルゴンのディテクターのR&Dのプラットフォームだという立場なのだと思います。
【中家委員】  そうですね。もう一つ、先週、ニュートリノサミットという、フェルミラボであった会議で議論になったのは、ヨーロッパはフェルミの加速器のアップグレード、PIP2(Proton Improvement Plan 2)にインカインドのコントリビューションをすると、フェルミラボの所長が明言しましたね。
【徳宿委員】  森さんのトークもあるのだとは思いますけれども、これは先ほども言いましたように、P5を受けて即座というのもあるので、アメリカがその前に何と言ったかというのは、強く反映はされていると思います。Andとorについては、ちょっと僕は何とも言えませんが。
【駒宮委員】  でも、これはexclusive orではないからね。andも入っているんですよ。
【徳宿委員】  そうだと思います。この辺が、原文ではないく短くして書くところのリスクで、だから私はあえてやらないのですが。
【中野座長代理】  ILCに話を戻して、日本の出方を待って、CERNがどういうふうにコントリビュートするかというのを決めるといったときに。
【徳宿委員】  CERNじゃなくてヨーロッパがですね。
【中野座長代理】  ヨーロッパがね。金額的にはもう30億円なのですか。30億円の中の何割をILCに使うかというような、規模なのでしょうか。
【徳宿委員】  それは議論されていませんので。
【中野座長代理】  もっと大きくなる可能性もあるのですか。
【徳宿委員】  仮定するのは控えたいと思いますが、ただ、言えることは、現状のCERNの財政というのを考えれば赤字状況で、それほど余力がないというのは確かだとは思います。それだけは言えるけれども、だからここから、もし日本がILCをやったら、CERNの予算から幾ら出せるかというのは、ちょっと今の絵からは言えないです。
【中野座長代理】  分からないけれど、枠として今あるのは30億円。という枠ははっきりと、ILCが入っている枠なのですか。
【徳宿委員】  これはR&Dだから、30億円が全部ILCとも言っていませんので、分からないというのが正しいと思います。
【中野座長代理】  分からないというのが正しい。
【徳宿委員】  もう一つ、これもオフレコかもしれませんけれど、注意しなくてはいけないのは、これは理事会に出す文書ですので、例えば毎年200億円余るという予算プランを作れば、収入を減らすということにもなるわけです。だから、CERNとしては、もちろん常にマキシマムに、フィジックスが全てできるような形のプランというのを必ず作っているのも確かですから、状況が変わったときにどう絞るかというのは、また次の議論だと思います。
【中野座長代理】  先ほどESUが出て、MTPがそんなに急に変わることは考えられないとおっしゃったけれども、ILCがゴーになるかゴーにならないかというのはCERNにとってもかなり大きなことなので、それによってMTPが影響を受けるということはあり得るのですか。
【徳宿委員】  あり得ると思います。
【駒宮委員】  それじゃないと。
【中野座長代理】  それじゃないといけないですよね。
【梶田座長】  ほかに何か御議論がございますか。よろしいですか。では、ひとまずヨーロッパの方の報告につきましてはここまでとさせていただきますが。
【酒井委員】  済みません。1つだけ。先ほど、CERNに各国がコミットしている予算以外にも、ここで読むと、ニュートリノは例えばどこかの国が、日本だとか、個別に2国間のような形でコントリビューションするということがあるのですか。
【徳宿委員】  まずLHCの建設に当たっては、先ほど言いましたように、日本とかアメリカが出していまして。
【酒井委員】  ええ、そうなのだけれど。
【徳宿委員】  そういうのはあり得ます。
【酒井委員】  あり得るんですか。例えばイギリスがCERNに出している負担金以外に新しい予算を作って、どこかにコントリビューションするということもあるとおっしゃっている。
【徳宿委員】  CERNの中での問題。
【酒井委員】  違う、違う。
【徳宿委員】  CERNの外にですか。
【酒井委員】  例えばフェルミラボですよ。ここに書いてあるのは。
【徳宿委員】  ヨーロッパのお金が全てCERNを、高エネルギーが全てCERNを通していくのではないです。
【酒井委員】  ないということは。
【徳宿委員】  それはまた、各国の予算はあります。
【酒井委員】  だと思いますが、サイズはどれぐらいかというのをお聞きしたい。そのときのサイズというのはどのぐらいなのでしょうね。
【徳宿委員】  それは分かりませんね。国によって違いますし。
【酒井委員】  いや、もちろんそうだけど。
【徳宿委員】  ニュートリノに関しては中家さんが。
【中家委員】  ニュートリノに関しては、T2K実験のときに、ヨーロッパの総額が20億円ぐらいが測定器の検出器。
【酒井委員】  そんな安いの。
【中家委員】  はい。20億円ぐらいですね。恐らく、毎年、実験経費として、1億円ずつぐらいが各国の顧問ファンドとしてニュートリノ実験に生きている。
【酒井委員】  その程度ですか。
【梶田座長】  まだ議論は続くかと思いますけれども、一応この辺で、この議題については終了したいと思います。もしほかにこの件につきまして御意見がありましたらば、会議終了後、事務局の方まで御連絡いただければと思います。それでは次の議題に移りたいと思います。続きまして米国における検討状況について、東京大学の森先生の方から御説明いただき、先ほどの欧州の話も含めて更に御議論いただければと思います。では、よろしくお願いいたします。
【森教授】  それではP5のレポートについてお話しします。5月にP5、というのはここに書いてありますけれども、P5というのは、Particle Physics Project Prioritization Panelというのですけれども、そこが米国政府の諮問に応じて、アメリカの高エネルギー物理学の将来の戦略についてまとめたレポートを出して、それが認められて、政府に提出されて、それに応じて、今、アメリカ政府が動いているということで、その報告をさせていただきます。
 ちなみに、ここでお見せするスライドは、P5の議長を務めたスティーブ・リッツさんがP5のレポートを説明するのに使っているスライドを、基本的にそのまま使っています。なるべくバイアスの掛からないように、P5委員として発表させていただきます。
 まずP5ですけれども、P5というのは、アメリカのエネルギー省、DOEの諮問委員会であるHEPAPというのがあるのですけれども、これはHigh Energy Physics Advisory Panelという、基本的に政府に対して高エネルギー物理を代表している委員会の下にできたsub-committeeです。DOE及びNSF、National Science Foundation、日本の学振(日本学術振興会)に対応するところですけれども、DOEとNSFから諮問を受けて、諮問の内容としては、簡単に書きますと、今後10年間の米国の高エネルギー物理研究の戦略を答申しなさいと。コンテクストとして20年先までのプログラムを考えて、10年間の戦略を答申しなさいということです。
 まず、その背景には、昨年の夏まで、およそ1年間行われたSnowmass Processというのがありまして、これは、アメリカの高エネルギー物理のコミュニティーの中で、将来の計画をどうするかという議論が、スタディーグループが幾つもできて、研究会も数多く、10か月の間、何回も行って、議論を重ねて、最後はミネソタ大学でみんな集まって報告をまとめるというものです。これは米国のコミュニティーだけではなくて、欧州とか日本の研究者も参加して、将来計画の議論をするということが行われました。その結果はレポートとしてまとめられてウェブに載っていますので、興味がある方は見ていただくといいと思います。高エネルギーの、米国の研究者だけではなくて、世界中の研究者が参加しましたので、非常に詳しくいろいろなプロジェクトについて書かれています。P5では、そこでの議論をベースとして答申するということですね。
 P5は、昨年の10月から活動を始めて、今年の5月にHEPAPの委員会があって、そこで報告書を提出して、その日、丸1日、この答申について議論を行って、その後、全会一致で承認されて、すぐにDOEとNSFに提出されました。ちなみに、ここの参考資料に付いているレポートはドラフトバージョンで、最終バージョンではないので、最終バージョンをきちんとウェブから落としていただきたいと思います。微妙に変わっています。申し訳ございません。
 このアメリカのストラテジーの策定で特徴的な、要するに日本のストラテジーを作ったときやヨーロッパのストラテジーと一番違うのは、具体的な予算プロファイルを作るということが任務に入っている点です。今後10年間、ある仮定した予算のシナリオが3つ与えられまして、この3つの予算シナリオに応じたサイエンスプログラムを具体的に作りなさいという、非常に厳しいチャージ(任務)がありました。どうしてこういうことをやるかというと、これはチャージに書かれていますけれども、これらのシナリオは、文字通り将来の予算のガイダンスとして考えるのではなくて、実際にプライオリティーを付ける機会として使いなさい。要するにこれはエクササイズですね。単にプライオリティー付けをしなさいというと、どうしても盛ってしまいがちなので、本当に現実的な予算の範囲で実行可能なサイエンスプログラムを作りなさい。そのためにも、きっちりとしたプライオリティーを付けないといけないのですけれども、そういうことを実践するオポチュニティーとして予算シナリオを使いなさいということです。実際には、(具体的な予算シナリオを超えて、大きな科学的目標を達成するための)ハイレベルな戦略のリコメンデーションをしなさいというのがチャージであるわけです。
 具体的な予算のシナリオは3つありまして、1つは2013年度の予算をベースにして、最初3年間はフラット、その後は2%ずつ増やしていくというのが最初のAというシナリオです。これはまず1つに、2013年度の実際の予算をベースにするので、もともと少ないんです。最初の3年間フラットというのは、実際にはインフレーションを、普通、2%ぐらい考慮しますので、フラットというのは実際には、最初の3年間は減額、下がっていくという予算で、その後はフラットというのがシナリオAです。シナリオBは、2014年度の大統領予算案をベースにする。ここでAよりももともと基準がちょっと高い。これは予算案ですので。これも3年間フラット。だから3年間は減額して、その後は3%ずつ増やしていく。だから、これは少しずつ増えていく、1%程度増えていくプランです。最後のシナリオCというのは、unconstrained budget。unconstrainedということは、予算に制限は付けないで、ただし、ここにありますように、青天井のシナリオではない。とにかく好きなことをやりなさいというわけではなくて、本当にアメリカがリーダーシップを取って重要な科学的目標を実現するためのサイエンスプログラムとして必要なものを挙げなさいということです。だから、これは現実的なプログラムです。本当に最大限、アメリカのexpertiseやリソースを利用して、最大限の物理のアウトプットを得るためにはどういうサイエンスプログラムが必要かということです。一応、予算を考えないで作りなさいということです。
 パネルメンバーとしては、ここにある25名です。日本からは、東大の相原さんと私。それからあとヨーロッパからも2人ですね。CERNのFabiola Gianottiさん。これは元アトラスのスポークスパーソンだった人と、それから先ほども出ました中田さんですね。ヨーロピアンストラテジーの議長をやられた中田さんが入っています。
 P5はどういうふうに行われていたかというと、まず第1には、なるべくコミュニティーと情報交換・共有しながらやると。常にインプットを得ながらやるということで、最初に3回、コミュニティにオープンなタウンミーティングを、東海岸、西海岸と、あと真ん中のFermilab(フェルミ国立研究所)で行いました。そのときにクローズド(非公開)ミーティングもやったわけですけれども、それに加えて更に4回、クローズドミーティングをやりました。毎回、4日間ぐらい、朝から晩まで議論するわけです。それに加えて毎週1回3時間ぐらい電話会議をずっと数か月続けました。その間にも、電話会議システムを使って、コミュニティー向けのタウンミーティングを何回か、多分、四、五回やったと思うのですけれども、それでコミュニティーの意見を取り入れる努力をしました。
 先ほどの予算プロファイルを作らないといけないので、各プロジェクトから、どういう予算のプロファイルになっているかというのを出してもらって、これは何%削れるかとか、ちゃんとインタビューして、本当にすごい時間の掛かる作業でした。中の議論ですが、決めるときには全てコンセンサスで決めました。要するに投票を一切行わずに、最終的に全員が納得するまで議論するという、もう本当に厳しい委員会でしたね。だから、基本的にこのレポートは、委員全員が全て合意してできたレポートとなっています。
 それからもう一つ重要なのは、とにかく非常にばかげたストラテジーとか、多分、通常ではないオプションとか、そういうのも全部議論しようということで、だからもう、議論の時間はものすごく使ったわけですけれども、思いつくあらゆる可能性を議論した結果として、このレポートに至っています。これは先ほど言いましたように、5月22日にHEPAPの会議があって、そこでアクセプトされてDOEに出されました。
 そして、先ほどのヨーロピアンストラテジーでも出てきましたけれども、ここで、P5のレポートで一番重要なメッセージは、素粒子物理の研究というのはグローバル(国境を越えて全世界的)であるということです。信頼できる国際関係や国際的パートナーシップが、国際プロジェクトであるほとんど全ての素粒子物理プロジェクトの成功にとってエッセンシャルであると。こういうグローバルなピクチャーというのは、先ほど言ったように、ヨーロピアンストラテジーでも、それから日本でも将来計画検討小委員会というのが将来のストラテジーを出したわけですけれども、こういうところにもやっぱりグローバルな視野が一番重要であるというのは書かれていると。ですからP5レポートでは、ヨーロピアンストラテジーと日本のレポートをちゃんと参照して、それらの内容を鑑みた上でレポートを検討しています。順番で言いますと、日本が2012年にレポートを出して、その後、2013年にヨーロッパがストラテジーをまとめて、今年アメリカが出したということになります。
 グローバルな視野が重要だということで、リコメンデーションの最初は、「Pursue the most important opportunities wherever they are」と。つまり、最も重要なプロジェクトがあれば、どこででもやりましょうと。だから、米国国外であろうとなかろうと、重要なプロジェクトがあれば、そこへ行ってやると。だから、これは非常に重要。その一方、自分のところでも、何かユニークでworld-classなfacilitiesをホストしましょうと。それはもちろん、グローバルなコミュニティーを引き付けるような、world-class facilitiesを米国に持つ。つまり、自分のところでグローバルなプロジェクトを持って、かつ海外のグローバルなプロジェクトに参加するというのが、素粒子物理の研究を成功させる道であるという。これはアメリカとしては非常に画期的なものです。
このP5レポートが実際に米国政府とか議会に割と受けがいいのは、やはりLHCの成功が効いていると思われます。
 それから、先ほど言いましたSnowmass Processが2012年10月から昨年の8月まで行われまして、そのレポートというのがこのURL(http://www.slac.stanford.edu/econf/C1307292/)に出ています。P5としては、ここで議論されたことを吸い上げて、それでプライオリティーを付けなければいけないのですけれども、そこでP5では「サイエンスドライバー」というのを定義しました。これは、Snowmassで出てきたフィジックスクエスチョン(物理学の疑問)というものはもう、多分40個ぐらいあるのですけれども、それをカテゴリーに分けて、それをうまくまとめて、5つのサイエンスドライバーを定義しました。素粒子物理というのは、何か学問の枠が決まっていて、その中で一生懸命研究すれば目標を達成できるわけではなくて、基本的にやはりdiscovery drivenな学問なので、常に何か新しい発見のある方向に重点を置いて研究を進めなくてはいけないということで、サイエンスドライバーというのは、今後10年か20年のうちに、非常にディスカバリーの可能性が高いところということです。
 サイエンスドライバーの第1としては、ヒッグスボソンを発見の新しいツールとして使う。2番目としては、ニュートリノ質量に関係する物理を探求しなさい。3番目としては、ダークマターに関わる新しい物理を同定しろと。それから4番目は、宇宙膨張を理解しようと。宇宙膨張には2つあって、宇宙の最初に起こったインフレーションと、現在起きているダークエネルギーと両方ある。最後はちょっと何でもありなのですけれども、分かっていないものを探求しようと。要するに、新しい粒子とか、新しい相互作用とか、新しい物理原理というものを探求すると。この5つのサイエンスドライバーにアドレスするサイエンスプログラムを作ろうというのを、最初に決めました。
 これは、P5の将来戦略というのは、これまでも何回か行われているわけですけれども、前回行われたのでは、3つのフロンティアを同定して、コズミックフロンティアとエネルギーフロンティアとインテンシティーフロンティアと、3つに分けて議論したのですけれど、それはやっぱり駄目だと。やっぱり物理の議論でプロジェクトに、プライオリティーを付けていかないと駄目だというので、こういうことにしたわけです。
 ドライバーのそれぞれについてプライオリティーは付けない。というのも、5つのドライバーというのは実は絡み合っているので。それは、この絵は何だろうかと思うけど、これは5つのサイエンスドライバーが絡み合っているのを表した絵なのです。絡み合っているので、これはプライオリティーを付けてもしようがないわけですね。だから、全体として、10年、20年の実験プログラムで、ここ(サイエンスドライバー)から発見に至ることができるプログラム。だから、一つ一つの実験もそうですけれども、全体のプログラムとして、5つのドライバーから発見を目指せるようなプログラムを作ろうと。それを基準にして、プロジェクトにプライオリティーを付けていくということです。だから、ここに書かれましたように、要するにa selected set of experiments。これは、だから一つ一つのプライオリティーもあるのですけれど、やっぱり全体としてのプログラムが、ちゃんとドライバーをアドレスしているものになっているかというのが重要なポイントですね。あと、もちろんプライオリティーを付ける前に、それぞれのクライテリアですね。どうやってプライオリティーを付けるかというクライテリアを最初に決めてやりました。
 これが、プロジェクトのリスト。代表的なプロジェクトだけ表にしたもの。これは実際のレポートの中にある表なのですけれども。大型プロジェクトというのは、全体で200 million dollarを超えるプロジェクトを大型プロジェクトと呼んでいるのですけれども、今、これだけあって、ミューオンプログラムとハイルミノシティLHC(HL-LHC)と、これはロングベースラインのニュートリノ、それからILC。それからあと2つ、実はやるなと言っている2つがあるのですけれども、それを除いて基本的にこの4つの大型プロジェクトをやりなさいと。この表は、シナリオA、B、Cではどうしなさいというのと、それからあと、どのサイエンスドライバーに関係しているかというのが書かれています。
 ILCに関しては、どのシナリオでもやりなさい。ただし、ただし書がちょっとありますが、それは後で説明しますけれども、基本的にはどのシナリオでもILCはやりなさいということです。あと、これは中規模のプロジェクト。ここにあるのは、宇宙関係のプロジェクトが多いですけれども、これはダークマターです。ダークマターとか宇宙マイクロ波背景複写(CMB)とか。ここで1つ重要なのは、ここにSmall Projects Portfolioというのがあるのですけれども、これは、もっと小さい実験がいっぱいあるわけですけれども、そういう小さい実験一つ一つについてP5は一々判断するということはやらないで、これはポートフォリオという予算枠を作っておいて、その中で、小さい実験は競争して予算を獲得しなさい。競争する仕組みについては、実はHEPAPで最近議論されて、多分、新しいサブパネルとかができようとしていると聞いています。
 それから、これと同じように、ここの下にAccelerator R&D and Test Facilitiesというのがあって、これも同様です。これはaccelerator R&Dの個々についてP5は判断しないということです。だから、こういう枠を作っておいて、後で競争して取りなさいと。もう一つ、Short Baseline Neutrino Portfolioというのもあって、これはショートベースラインのニュートリノの実験をやりなさいというのですけれども、これもいっぱいプロポーザルがあって、それをいちいちP5では選ばないで、これは競争して選びなさいということです。
 それで、ここから3ページぐらいで、エグゼクティブサマリーについてまとめますけれども、基本的には5つのドライバーで選ぶと。このスライドは、配布資料に載っていないかもしれないですね。これは新しいスライドかもしれない。済みません。幾つか、この資料に間に合わなかったスライドがあるので、それは付け加えてあります。
 ここでは、限定された、優先順位の高い、時間の順に並んだ実験をリコメンドしていると。重要なのは、小さい実験とか、中型とか大きい実験を様々にカバーして、それらが常に連続して物理の結果を出し続けるというようなプログラムを、20年間にわたってリコメンドするということですね。大きい国外プロジェクトとしてはLHCとILCがあるのですけれども、これらに対する米国のコントリビューションについては、国際的なパートナーと相談して決めなさいということですね。LHCとILCはやりなさいということです。それからLBNEというのはロングベースラインのニュートリノ実験ですけれども、これはプロポーザルも出ていて、米国の予算承認プロセスでCD1まで通っている実験で、アメリカの実験プロジェクトとして提案されているのですが、これを完全に国際的なプロジェクト(LBNF)としてやり直しなさい。それで、ちゃんと物理のゴールを達成するように設計し直しなさいという。詳細については後で出てきますけれども。
 この3つ(LHC,ILC,LBNF)がビッグプロジェクト。さっき出てきた、ミューオンもあるのですけれど、基本的にこの3つのプロジェクトのどれが最優先かというのは書いていないです。実際は、これらは時間の順番で予算のピークが少しずつずれていくので、それである時期はLHCのアップグレードが一番、予算としてhighest priorityで、ニュートリノの予算のピークがその後に来てという感じのリコメンデーションになっています。
 ということで、続けてもうちょっと細かい説明に行きますと、まず5 driversでやると。それから、最初LHCは、先ほど徳宿さんも言いましたように、LHCはしゃぶり尽くせと。これはヨーロピアンストラテジーと一緒です。次に、アメリカはworld-leadingのニュートリノプログラムをホストしなさいと。ニュートリノプログラムというのは、ロングベースラインのニュートリノプログラムだけではなくて、ショートベースラインも含めた総合的なニュートリノプログラムをホストしなさいということです。
 先ほども言いましたように、ロングベースラインの実験は、新しくLong Baseline Neutrino Facility、LBNFと。今まで提案されていた実験はLBNEと言うのですけれども、それとちょっと名前を変えて、LBNFというのを国際的なプロジェクトとしてやりなさいと。それで、このニュートリノプログラムを支えるために、加速器のアップグレードもやりなさい。これはProton Improvement Plan 2といって、PIP-2というのですけれども、これをフェルミラボでやって、ロングベースラインのニュートリノプログラムが始まる前に、1メガワットを超えるニュートリノビームを達成しようというのがリコメンデーションです。
 先ほど言いましたように、大きなプロジェクトというのは、建設経費がピークになる時期が順番に移っていくと。まずミューオンプログラム、その次がHL-LHCで、ロングベースラインニュートリノ。うまくいけば、その後、ILCが来るということです。日本でホストしたいという興味が示されているILCは、非常にエキサイティングな進展状況にあると。それで、実際にILCが始まるかとか、アメリカが参加するかというのは、P5の判断を超えたいろんな事情がある。それは当たり前。ただし、physics case(物理の意義・論拠)は非常に、極めて強いので、全てのシナリオにおいて必ずILCのサポートをしなさい。あるレベルでILCのサポートをしなさいということです。この図はプロジェクトの年表です。この後は、中規模、小規模の実験に関してですけれども、主に宇宙関係の、宇宙のサーベイ、銀河サーベイのプログラムなどに関するリコメンデーション。先ほど言いましたように、大きいのから中型、小型のプロジェクトを全てサポートして、常に物理の結果を出し続けるというプログラムをリコメンドしますということです。
 それから、このリコメンデーションの中で、これまでと大きく方向を変える点が幾つかあるので、それについて述べています。まず第1は、プロジェクトの建設に使う予算を増やしなさいと。これは今、アメリカの高エネルギー物理の予算というのは、ほとんどがオペレーションとかR&Dのお金になっていて、コンストラクションのお金は、多分10%とか、非常に低いレベルなので、それを20%とか25%ぐらいまで上げて新しいプロジェクトを立ち上げなさいと。
先ほど言いましたニュートリノのプログラムはreformulateしなさいと。Fermilabのproton accelerator complexをアップグレードすると。次のスライドは余り関係ないので。我々の分野で関係あるのは、ミューオン加速器のプログラム(MAP)というのはこれまでプライオリティーを高くしてやられてきたのですけれども、それは見直しなさいと。要するに、ミューオンのプログラムというのはニュートリノファクトリーとミューオンコライダーを目指すものだったのですけれども、ニュートリノの3番目のミクシングアングルが大きかったことと、ヒッグス粒子が比較的軽かったということで、プライオリティーが低くなったので、これは見直しなさいということになりました。
 ILCについてもう少し細かいことを少しだけ話したいと思いますけれども、ILCについて書かれているのは、まず重要なのは、ここに書かれているように、ILCというのはHL-LHCに続いて、ここにもcomplementaryとさっき書いてありましたのと同じですけれども、発見の可能性を大きく広げるもの、要するにLHC、HL-LHC、ILCが続いて、全体として同じ物理目標(5つのドライバーのうち3つ)を続けて何十年にもわたって研究していく総合的なプログラムである。だから、(競合するのではなく)そういう結合されたものとしてやりなさいということです。アメリカはもちろんILCに対して、これまで、リーダーシップの役割をして貢献してきましたので、そのための貢献を更に続けていきなさいということです。
 1つ、ILCについて重要なことは、先ほども言いましたけれども、とにかく全てのシナリオで、ILCのサポートをあるレベルでやりなさいと。ただし、「through a decision point within the next 5 years」、要するに次の5年以内に何かdecision pointがやってくると。それは5年以内に国際状況がはっきりするだろうという見込みですね。その際に、ILCが行くかどうかという、国際状況に応じてまた判断しなさいということです。これは多分、その頃に新しいP5を作って、また検討しなさいということです。
 ILCに関するリコメンデーションとしては、「Motivated by the strong scientific importance of the ILC and the recent initiative in Japan to host it, the U.S. should engage in modest and appropriate levels of ILC accelerator and detector design in areas where the U.S. can contribute critical expertise. Consider higher levels of collaboration if ILC proceeds.」。ILCは非常に重要なので参加しなさい。これは基本的に何を言っているかというと、米国政府は、ILCのテクニカルデザインレポート(TDR)が終わった時点でILCの予算を切りました。だから、現在、ILCの予算というのはないんです。だから、このリコメンデーションというのは、そのR&Dを再開しなさい。で、現在、ILCにおいて重要なのは、エンジニアリングデザインを作ることなので、それにアメリカはそういう重要なexpertiseを持っているので、しっかり貢献しなさいということです。それが「modest and appropriate level」なのですけれども、「modest and appropriate levels」についてDOEのJim Siegristという人は、文科省で言えば多分、課長レベルの人だと思うのですけれども、この人の言うには、modestというのはどういう意味かというと、要するに今まで、今はILCというのは予算が切られているけれども、予算を付けてまた始めなさいということだと。で、appropriateとはどういう意味かというと、さっき言ったように、site specificなエンジニアリングのR&Dとデザインをやると。それ以上のことは、「We await further discussions with the Japanese government」ということです。
 で、先ほどの最後のシナリオCですね。要するに、この予算のconstraintがない場合のハイライトはもちろんILCでして、シナリオCでは、もしILCが国際的に行くことになったら、シナリオCではアメリカは世界を率いる役割を果たす。測定器でも加速器でもということです。
 時間がないのでどんどん行きますけれども、このP5のレポートは、DOEに提出されたわけですけれども、政府、議会、ワシントンの受け取り方は非常にいいと。あと、アメリカの高エネルギーのコミュニティーの中の受け止め方も非常にいいと。これは実際に、P5レポートが出された1週間後に、2,000人のアメリカの研究者、これはアメリカの研究者の大体、約70%の人がサインしたサポートレターが議会などに送られました。非常にサポートされているのです。
 簡単にP5レポートの影響について。これはちょっと足したスライドですのでお手元の配付資料にはないと思いますけれども、米国内では既にILCの準備活動が再開されつつありています。それから、ILCに新たに参加する研究者が増えているということです。LCコラボレーション(LCC)の活動、さっき言ったsite specificなエンジニアリングデザインとか、あとこういう物理実験スケジュールの検討なども弾みがついている。国際協力、アメリカはこれまでP5レポートが出るまでは、今後どうなるか分からないというので、国際協力に関する交渉を止めていたわけですけれども、方針がはっきりしたので、国際協力に関する交渉が活発化している。それからLCボード(LCB)などでもいろんな議論が始まっています。
 ここで、ちょっと時間をオーバーして申し訳ないのですけれども、これは配布資料にないのですけれども、このP5レポートを受けて、今月、ICFAのステートメントが出ました。ICFAというのは、もう御存じの方が多いと思うのですけれども、International Committee for Future Accelerator、全世界の将来の大型加速器計画を議論する場所ですけれども、読みますと、「ICFA endorses particle physics strategy plans produced in Europe, Asia and the United States, and the globally aligned priorities contained therein.」。要するに、もうヨーロッパとアジア(日本)とアメリカで出された将来戦略は全部、全世界的に同じ向きにそろっているわけですね。ICFAとしてはそれをendorseすると。特に、「Here, ICFA reaffirms its support of the ILC.」と。ILCをサポートするのをreaffirmするということは、実はこの前に2月にもう一つICFAはステートメントを出しているのですけれども、それをreaffirmすると。で、ILCというのは、「ILC, which is in a mature state of technical development and offers unprecedented opportunities for precision studies of the newly discovered Higgs boson」。ここで「a mature state」というのはもう、建設readyの状態ということです。「In addition, ICFA continues to encourage international studies for circular colliders」、これは先ほど出てきたFCCとか、そういうものなのですけれども、「with ultimate goal of proton-proton collisions at energies much higher than those of the LHC」、要するにLHCよりもずっと高いエネルギーの陽子・陽子衝突を究極のゴールとする円形コライダーの国際的な研究、スタディーをencourageすると。ここの真意は、ICFAの議事録がもうすぐ出るのですけれども、議事録を見てもらえば分かるのですが、「a mature state」と「studies」というのは、ちゃんと違いを見てほしいということですね。まずreaffirmというのは、とにかくICFAがILCをサポートしているという点に関するconfusionをなくしたいと。ちゃんとICFAはしっかりとILCをサポートしていると。それからもう一つは、「It is essential that a field makes clear the difference between the mature project at the TDR stage and the study of some possible future accelerator.」単なる将来の加速器のスタディーと、matureなプロジェクトをちゃんと区別してほしいということを言っています。
 先ほどreaffirmすると言ったのですけれども、2月にICFAというのはILCをサポートするステートメントを出していまして、ICFAというのは、最近日本で起きている、リニアコライダーを実現しようとするグローバルコミュニティーのEffortの進展を喜んでいると。で、次に、「ICFA, which includes the Directors of the world’s major accelerator laboratories will evaluate the technical capabilities worldwide to build the ILC.」これは何を言っているかというと、学術会議から本当にILCを作るマンパワーとかリソースがあるのかという宿題が出ているわけですが、それはICFAが応えましょうということです。これは議事録にありますけれども、「ICFA’s expertise is available in evaluating the needed worldwide technical capabilities.」これは2月に出たICFAのステートメント。
 あとは簡単に終わらせたいと思いますけれども、その後、P5のレポートが出た後、P5のチェアパーソンやHEPAPのチェアパーソンは、大統領府の予算編成オフィス(OSTP/OMB)とか、議会の委員会に呼ばれて報告をしています。特にDOEの長官にもすぐに、数日後に呼ばれて報告しています。一応、P5というのはもう、リコメンデーション……P5とHEPAPとエージェンシー(DOE/NSF)の役割というのですけれども、P5というのはリコメンデーションを出して一応終わっていて、今後、HEPAPが、プランがちゃんと実行されているかどうかを見る。で、エージェンシーは可能な限りこのプランを履行するというのが一応、それぞれの役割であるということになっています。最後のスライドはいいです。
【梶田座長】  どうもありがとうございました。それから、あと参考としまして、資料6に、森先生と同じP5に参加された東大の相原先生がまとめた資料がありますので、御参照いただきたいと思います。それで、今、森先生から頂きました内容につきまして御議論を頂ければと思いますので、何か御意見その他あればお願いいたします。
【初田委員】  サイエンスドライバーが5つあるのですけれど、そのうちの下の方は宇宙物理とも関係が深いと思いますが、P5では宇宙観測とかそういうものは切り離して議論しているのですか。
【森教授】  一緒です。全部一緒です。
【初田委員】  では、このリストの中にはそういうのも本当は入っているのですね。
【森教授】  そうです。中型の、先ほど見ていた表の中型規模の計画のほとんどが実は入っています。
大体、ダークマターとかCMBとかですね。こういう宇宙関係のプロジェクトにつきましては、別の宇宙関係のもちろん分野があるわけですけれども、そこと協力して、予算もhigh energyの予算とアストロの予算から両方出て、プロジェクトをサポートする形になっています。
【初田委員】  さっきの予算シナリオのそこは、そこも切り分けられていて、素粒子に関係する宇宙は全部この予算の中というわけでもないわけですか。
【森教授】  例えばダークマターとかCMBは、当然、素粒子に関係していますので、素粒子の研究者もhigh energy physicsの研究者も参加しているわけです。それで、昔はこういう宇宙関係の予算というのは高エネルギーの方から出ていなかったのですけれども、だんだん、高エネルギーの研究者が素粒子物理の結果を出すためにやる宇宙プロジェクトとして、高エネルギーの方にも予算請求を出している。だから、両方が実はサポート。
【初田委員】  両方に。なるほど。
【森教授】  それは、どういうふうに分配しているかというのは、それぞれのやっぱりコミュニティーのウエートに。物理がどちらにウエートがあるかとか、参加者がどちらにウエートがあるかとか、そういうので判断します。
【初田委員】  分かりました。もう一個、ページ25を見せてもらえますか。 チャイナと書いてあったのが、ちょっと興味があるのですけれど。
【森教授】  あれは、ACFAのステートメントで、アジアのストラテジーがあったのですけれども。日本のストラテジーというのが出ていますけれども、アジアのストラテジーというのも実は出ていまして、AsiaHEPとACFA、Asian Committee for Future Acceleratorですけれども、これが昨年の9月に、ILCに関するステートメントを出しています。これは引用ですけれども。例えば中国はこういうコンセンサスに至っていると。それはどういうことかというと、ILCは非常に強くサポートすべきであると。それからILCに対する予算請求もすぐに出すべきだというのを中国が言っている。それから、アジア全体としても、ILCは「the most promising electronpositron collider to achieve next generation physics objectives」。だから、「make every effort to promote the ILC」。こういうステートメント。これはアジアのストラテジーです。
【梶田座長】  ほかに何かありますでしょうか。お願いします。
【小磯委員】  多分スライド、18ページですが、ILCのことを書くときに、upgradable to 1 TeVとわざわざ書いているのは、ILCの魅力として、500 GeVと1 TeVを比べると、1 TeVまで行けるというところに非常に物理的な魅力があると考えているのでしょうか。
【森教授】  これは、だから基本的に、ILCといったときに、P5でもそうですけれども、どこでも多分そうだと思うのですけれども、P5の議論でILCと言ったときには500 GeVマシン。
【小磯委員】  500 GeVマシン。
【森教授】  500 GeVマシンのことです。だから、ILCで物理が非常に重要であるといった場合には、もちろん500 GeVマシンのことを言っています。ただし、やっぱりリニアコライダーの魅力というのは、そこで何かあったときにエネルギーを上げられるというのは、ほかのサーキュラーマシンに比べて圧倒的な魅力なわけで、それはちゃんとmentionしてあるわけですね。
【小磯委員】  では、物理としては、飽くまで500 GeVのところで十分魅力があるということですね。
【森教授】  そうです。
【小磯委員】  エクステンダブルというのは、リニアコライダーとしての特質を改めてここで主張しておくという意味合いだと。
【森教授】  そうです。
【梶田座長】  ほかにいかがでしょうか。お願いします。
【松本委員】  先ほどの初田さんの話にかぶるのですけれども、例えばフェルミラボの実験とか、アイスキューブも入って。
【森教授】  アイスキューブ(IceCube)は、個々の話をし出すと細かいのですけれど。
【松本委員】  そうですね。例えばアイスキューブだと、宇宙、天文の方の需要性もあるし、素粒子の需要も……。
【森教授】  アイスキューブは多分、ほとんどアストロで。
【松本委員】  そうですか。
【森教授】  アイスキューブについては、ピングー(PINGU)というアップグレードプロジェクトがありますけれども、それは実はhigh energyのここでも議論されていまして。ただし、見込みとしては、ほとんど多分、アストロの方で予算配分される見込みになっていると思います。
【松本委員】  そういう意味ですか。分かりました。
【森教授】  いろいろ、個々のプロジェクトについては、ウエートが大分、それぞれによって違う。
【中野座長代理】  ICFAが学術会議の宿題に応えると言っているのは、いつ頃そういうことが起こるのかというのと、それからP5の、どういったか、レポートだかに、シナリオCの場合にアメリカが、加速器に関しても測定器に関してもかなりのリーダーシップを取ると言っていた部分がありましたよね。それとの関係というのはどうなのでしょう。宿題に応えるといったときに、予算に関係なく宿題に応えられるのか、それとも予算がふんだんに、いろんなところに、アメリカに限らないのだけれども、いろんなところにふんだんに、どういったらいいか、余裕があったときに応えられるのかという。
【森教授】  いや、多分、一番聞かれていたのは、加速器のヒューマンリソースだと思うのですけども。それはもちろん研究所の所長がICFAにみんな入っていますので、どれだけの要するに現行のプロジェクトの人員とか、どういうエクスパティーズを持っているかから、何年頃にどれだけの専門家が、もしILCが行った場合に使えるかというエスティメートは出せると。それは、何というか、具体的な。だから、そのためには、何か実際にどういうタイムフレームを仮定してそういう計算をしなさいというか、そういうのがないとできないわけですけれども、そういう要求が来ればもちろんICFAとしてはそういうことは、やる準備がありますということを言っている。
【徳宿委員】  何か始めるというのではなくて、言われれば幾らでも協力しますよというステートメント。
【森教授】  そうです。
【中野座長代理】  そういう線ですか。
【森教授】  だから、エクスパティーズがあるので。だから、どういう仮定をするかによります。
【中野座長代理】  はい。
【森教授】  それは言ってもらわないと。例えば日本のプロジェクトとして、どういうものを想定しているならば、それに応じてちゃんと応えられるということですね。
【中野座長代理】  あと、P5。
【徳宿委員】  多分、ラボによっては、何かやってくれといっても、自分のジョブ範囲になかったらやれないということがあるわけだから、そういうのに対して、ちゃんと配慮して、やりますよということだと。
【森教授】  特に、だからILCは、もちろん全然、日本の業界だけでできるわけがないので。
【中野座長代理】  ですよね。
【森教授】  そこは、どういうふうに国際的にサポートできるかというのは、もちろん聞かれればちゃんと検討して案を出しますよということです。
【中野座長代理】  それから、何度も、今後5年間という表現がいろんなところに出てきたのですけれども、この5年間というのは、きっと5年以内に何か、どういったらいいか、decision pointが来るだろうという、ただの予想なのか、それともdecision pointが5年以内に来ないと何か判断できない、もうtoo lateになってしまうという意味なのか、どっちなのでしょう。
【森教授】  多分、両方あると思いますけれど、5年以内に多分decision pointがあるだろうというのは、いろんなこと、だから何の確証ももちろんないわけですけれども、いろんなところに、P5が委員会としていろんなところに問い合わせて、感触を得た上で一応言っているわけですね。で、5年以上。だから、本当は5年と決まっているわけではなくて、本当は国際状況の変化によるわけです。例えば今後3年後に何かもっとILCが行きそうになった状況であれば、もう少し待とうとか。もちろん、だから国際状況がどう発展していくかによるわけですけれども、一応、目安としては5年というのを、今現在の国際状況からの判断。だから日本の政府の対応とか、そういうのを見た上での判断。
【梶田座長】  お願いします。
【清水委員】  最後の方で、シナリオCというのが紹介されていますけれども、これは予算のシナリオCなのですか。
【森教授】  そうです。予算のシナリオCです。
【清水委員】  そうすると、A、B、Cと3つ並記しているというか、予算のシナリオとしてはあるのですけれども、これはA、Bについては、例えばILCとA、Bの関係などはどういうことになるのでしょうか。
【森教授】  Aというシナリオは、これは詳しくは言わなかったのですけれども、シナリオAというのはシナリオBに比べて、10年間で大体500 million dollarsぐらい違って、シナリオAでプログラムを実際組もうとすると、例えばロングベースライン・ニュートリノプログラムというのは1,000億以上掛かるプログラムなのですけれども、それはもう、本当にぎりぎりできるレベルなんです。だから、シナリオAというのは、高エネルギーの業界にとっては本当にぎりぎりの、アメリカがグローバルプロジェクトをホストしなさいというのがリコメンデーションなのですけれども、それができる本当にぎりぎりの予算ですね。でも、にもかかわらず一応、ILCにはちゃんと、R&Dは続けなさいというのは、実はかなり強いメッセージで、ILCをサポートするために潰れているプロジェクトというのもあるわけです。ほかにいっぱいプロジェクトを潰しているので。そういう状況にもかかわらず、ILCのR&Dはちゃんと。要するに、やっぱりILCというのはサイエンスとして非常に重要であるとともに、やっぱりグローバルなプロジェクトとして、アメリカがサポートしたいという強い意思があるのだと思います。で、シナリオBだと少し余裕があるので。ここに書かれています、シナリオB、ILCのところにちょっと書かれているのですけれども、シナリオBの場合は少し余裕があるので、もしILCがシナリオBでうまくいったら、とにかくできる範囲で参加しなさいということをリコメンドしています。
【梶田座長】  ほかに何か御意見。では酒井先生、お願いします。
【酒井委員】  小磯さんの質問に近いのですが、サイエンスドライバーの一番初めに出てくる、「use the Higgs boson as a new tool for discovery」と書いてあるのですが、これは何を言っているのでしょう。500 GeVから1 TeVにすることで何か開けるのですか。それとも。
【森教授】  いや、1 TeVは関係なくて。
【酒井委員】  関係ない。
【森教授】  これは、だからさっき言ったように、ILCというのは500 GeVプロジェクトで。
【酒井委員】  で、new tool。
【森教授】  これはヒッグスをtoolとして使う。
【酒井委員】  いや、一般的な意味では分かるのですが、下の方を見ると、ダークマターを見つけろだとか、ニュートリノマスを測りましょうとか、具体的ですよね。それが最初に出ているというのは何となく苦しいなという感じを受けざるを得ないというか。
【森教授】  皆、具体的ではないですけれど。これ、(例えば)ニュートリノ質量に関わる物理というのは全然具体的ではないと思いますが。
【酒井委員】  具体的じゃないですかね。
【森教授】  ヒッグスが一番具体的だと思います。
【酒井委員】  でも、それは間接的だよね。
【清水委員】  いや、すごい強いツールになると思うんですけど、ヒッグス。
【森教授】  だから、ヒッグスって、多分これは理論の先生に説明していただいた方がいいと思うのですけれど。
【松本委員】  今のこの意図はどう書かれたか、詳しい内容は知らないけれど、ヒッグスが見つかったから、その性質を調べまくりましょうということだと思うんです。
【酒井委員】  それは分かるんです。
【松本委員】  それで、そこから、例えば標準模型からのずれを見つけましょう。なるべく精度よく調べてということだと思います。それはツールという言葉に。
【森教授】  そうですね。やっぱりヒッグスというのは、これまで我々の知っている粒子と違うわけです。ゲージボソンとフェルミオンというのは、基本的に、シンメトリーに支配されて、もう理解されているわけです。ゲージシンメトリーとか、カイラル対称性というのがあって、ゲージボソン、フェルミオンについては、基本的に我々は性質を知っているわけです。ただし、ヒッグスというのはスカラー粒子で、基本的に我々は何も知らないです。もし標準模型のヒッグスだとしても、要するに、フレーバーの謎を作っているのはヒッグスなんです。だから、何か分からない。特にフレーバーというのは分からないところ。質量はどうしてずれているとか、3つも世代がなぜあるのかというのは全く分からないのですけれど、そういうところに全部ヒッグスが関係している。だから、ヒッグスというのはやはり何かあるのではないかというのは多分共通して持っている認識だと思うのです。
【中野座長代理】  ちょっといいですか。
【梶田座長】  はい。
【中野座長代理】  同じアメリカ外のビッグプロジェクトのハイルミノシティLHCと、それからILC。やっぱり現段階で温度差がありますよね。やっぱりハイルミノシティLHCの方が、どのシナリオでもY、Y、Yと。で、ILCはR&DオンリーとかスモールコントリビューションあるいはYとなっているのだけれども、この温度差というのは、現在の計画のやっぱり実現可能性というか、アメリカから見た実現可能性の差なのか。だから、5年間以内に例えば日本の政府が、すごい確とした決断をしてゴーサインを出したら、この温度差というのはある程度バランスが、あるいはひっくり返る可能性があるのか、それともそういう状況になっても、物理の面とか、そういうので、やはりハイルミノシティLHCが、どういったらいいか、プライオリティーが高いのか。起こっていないことなので予想にしかすぎないと思うのですけれど、どういう感触で。
【森教授】  P5の中の議論について口外してはいけないことになっているので。
【中野座長代理】  本当?
【森教授】  議論の中身については余り言えないのですけれども。だから、ここはP5委員ではなくて、私のインプレッションとして。
【中野座長代理】  それで結構です。
【森教授】  聞いていただきたいと思うのですけれども。P5委員としてではなくてですね。ILCについて弱い書き方になっているのは明らかで、それはプロジェクトがまだ行くかどうか分からない。それからもう一つは、アメリカが、やっぱり本当は、アメリカが本格的に参加するためには、エキストラな予算がやっぱりないと、だから、もっと政治的な高いレベルで動きがないと、本格的な参加というのはなかなか難しいという認識があるわけです。だから、プロジェクトがまだはっきりしていないというのと、予算と、その2つの障壁があるので弱く書いていますけれども、ただし物理に関してですと、実はアメリカというのはILCをやりたい人というのは非常に多い。ただ、実際にILCの予算というのは現状として切られているので、そういう人の多くというのは、やっぱりLHCをやっている人が多いわけです。それで、ハイルミLHCというのは、もちろん非常にみんな押しているわけで。これは、進行中のプロジェクトなのでみんな押しているわけですけれども、将来を例えば考えると、今、定義されているハイルミLHCというのは、ルミノシティを上げて、それでずっと例えば10年間走るわけです。ということは、毎年少しずつデータが増えていく。それをずっと10年間やるわけです。ところが、それと並行して、例えばILCが立ち上がるとするじゃないですか。すると、ILCではまた別のところからいろんな研究ができるわけです。そうすると、もしそういうことが起こったら、かなりの人が……かなりとはどのぐらいか人によって違うのですけれども、こういうハイルミLHCではなくて、リニアコライダーの研究に流れる研究者の割合というのはかなり多いだろうと、多くのアメリカの人は言っています。そこまでやっぱり物理のオポチュニティーとしては非常に高いという認識です。
【梶田座長】  お願いします。
【小磯委員】  シナリオCの場合に、制限がないといっても青天井ではないという御説明をされて、そのときに、アメリカがきちんとリーダーシップを取れるものについて検討したこと、また、議論の段階ではあらゆる可能性を検討したということをおっしゃったので、その2つから考えて、ILCの物理は非常に魅力的でそれをやりたいと思っている方が多いのであれば、予算制限がない場合、アメリカがリーダーシップを取ってILCをホストしたいとはっきり言った方が、ILCをサポートすることになるのではないかと想像するのですが、そういう議論はなかったのですか。
【森教授】  議論の中身については話せませんので。
【小磯委員】  済みません。そこは、ではお聞きしないで、そう思われませんかと。
【森教授】  私の印象で言いますと、当然そういう議論は多分あると思うのですけれども、やっぱりこれは、何というか、政府に対する答申ですので、これは現実的なものを提案しなければ意味がないわけです。こうなったらいいなというのでは。だからシナリオCでも、シナリオA、Bで駄目だと言ったプロジェクトは、シナリオCでいいなどとは言っていません。これは、読んでもらえれば分かるのですけれども。シナリオA、Bで駄目だったのをシナリオCならやるというようなことは、これは実は一切言っていないんです。だから、全然、青天井でも何でもないわけです。駄目なものは駄目で、シナリオCになってもやらないんです。
【小磯委員】  でも、ILCの物理は駄目ではないのでは。
【森教授】  だから、それは、今からそこに行こうと思うのですけれども。
【小磯委員】  済みません。
【森教授】  ただし現実、例えばILCを本当に実現したいと思ったときに、アメリカの人の、今、政府が……。アメリカは、もう、過去に1度ILCをやろうとして、もう潰れているわけです。1回、本当に動き出しながらも潰されているわけです。そして、何年かたって、今に至っているわけですけれども。アメリカの人の立場としては、多分、もう今、どんなに(頑張っても)。要するに、シナリオCに持っていくためには、それに魅力があって、かつお金を持ってこられなくてはいけないんです。幾らシナリオCで考えなさいといっても、現実はシナリオCのプランが非常に魅力的でも、アメリカ政府からILCのお金をぼんと持ってこられない。アメリカでホストするプロジェクトとしてアメリカでやるということに比べて、今、日本でホストしようとしているものにアメリカが強くサポートして実現させるのと、どちらが現実的かというのを考えたときに、やっぱり日本がやっているのを強力にサポートした方が現実的には残るだろうという判断なのです。
【山中委員】  また、ちょっと補足で。
【梶田座長】  お願いします。
【山中委員】  先ほど言われましたけれども、アメリカには一旦ILCを押して、結局それが潰れたわけで、だから、それをもう一回ホストするという解は多分ないです。あと、温度差があるというのは、やっぱりコミュニティーの大きさ。やっぱりLHCの方をやっているコミュニティーが圧倒的に大きいので、そこはやはり温度差があっても仕方ないと思います。あと、フェルミラボに行っていろいろ話を聞いたりしていますけれど、感触としてはやっぱり、まだアメリカとしては日本でICLが本当に行くかどうかは、まだ懐疑的には見ていると思います。もちろん、もしILCが行ったら、何らかのサポートをできればいいねという姿勢で、スタンスだとは思います。ただ、いろんなことがどこで起きていくかというのを考えると、やはり日本でILCが行くと、フェルミラブではこういうことができるしという、いろんな、協力関係はやっぱりだんだん見えてきてはいます。特に今回、P5のリコメンデーションが出たので、やっぱり方針としてはいろんなものがはっきりしてきたということはあると思います。
 フェルミラブも、新しい所長は結構、かなり現実的です。だから、とりあえずもう本当に短期間、ここ数年間でできることは何かということで、ニュートリノプログラムを押しています。internationalization化として、ヨーロッパの計画とフェルミの計画を一緒にしようとか、あと、日本のハイパーカミオカンデとどういう関係にするのかとか、そういうところをきちんと具体的に詰めようという努力は非常にやっています。だから、その一環で、ICLもこれから検討していくのかなと思います。ひどい声で済みません。
【梶田座長】  ありがとうございました。ほかに何か。お願いします。
【徳宿委員】  今のにも関連して、やっぱりLHCアップグレードとILCはよく比べますけれども、やっぱりタイムスケールは少しずれているのも確かなので。やっぱりLHCアップグレードについては、今回CERNがMTPで出したように、今からゴーサインで始めないと……。で、始まるプロジェクトに対して、ILCはやっぱり建設を決めて、それから始まるというので、時間はずれていますので、AかBかという議論には、必ずしも僕はならないのではないかと思います。
【梶田座長】  ほかに何かありますか。
【山内委員】  よろしいでしょうか。
【梶田座長】  はい。
【山内委員】  簡単な質問をしたいのですが、ILCは非常に物理もすばらしいので。ということは何遍も出てきているのですけれど。だからアメリカが強くコミットできるようにシナリオCを是非とも実現してくださいというトーンが余りないのですが、これはP5も一緒ではないからだということでいいのですか。つまり、シナリオCを何とかして実現して、強いコミットメントができるようにしたいとは、多分、言っていないと思うのですが、それは、P5はそういうことを言うのが仕事ではないからということですか。
【森教授】  いや、多分、現実的に、DOEにこれを出したときに。だから非常に現実的に考えるわけです。これは現状では、DOEからは、シナリオAしかないと、普通、言われ続けている中で、こういう検討を実はやっていて。だから、そこでシナリオCでなければ駄目などというレポートは多分書けないです。だから、せいぜいシナリオBでなければ我々はやっていけないということは、多分、幾つか書いたのですけれども、それは主張していますけれど、そこぐらいが本当にやっぱり現実的な。だから本当にシナリオCでアメリカがリーダーシップを取ってILCをやるためには、もっとハイレベルの。だからDOEの、今言った課長さんレベルの話ではなくて。それはやっぱり、もっと高いレベルで予算を増やすことをしないと、なかなか難しいということです。それから、私、ちょっと相原先生の。
【梶田座長】  お願いします。
【森教授】  コメントがあるのですけれども。3番目にすごく大胆な金額が書いてあるのですけれど。これは、(P5委員としてではなく)基本的に相原先生の印象にすぎないと思いますけれども。確かに私もこういう数字をどこかで聞いたことはないことはないのですけれども、別にこれは公式な数値でも何でもなくて。だから現状の、現在のアメリカの予算枠がそういう高いレベルで変わったりしないという範囲においては、「現実的可能性のある解」というのは、そういう意味だと思います。それから、この1,000億という数字は多分、初期の250 GeVのILCに対する貢献で、実際、500 GeVの場合はもっと高いお金になっていると思います。
【徳宿委員】  P5レポートに書いてあるわけではないですよね。
【森教授】  全然書いていない。これは、だから相原先生の心象風景と思います。
【中野座長代理】  何と判断していいのか、よく分からない。
【梶田座長】  中家先生、お願いします。
【中家委員】  このP5レポートですけれど、僕はSnowmassの会議も参加していて、確かにグローバルだという観点で書いています。何がグローバルかと見ると、アメリカのLHCのコミュニティーがCERNに参加するときに、あれは外国の研究所ではなくて、アメリカはLHCをグローバルにプロジェクトを考えているからCERNは外にあっても、グローバルプロジェクトとしてアメリカ全体は押しているとの説明です。そのときに、例えば僕はニュートリノコミュニティーの人たちと話していると、アメリカのニュートリノコミュニティーは、いろいろなところからサポートをもらわないと、CERN/LHCの方のコミュニティーが非常に強いので、さっきのLBNEが、今のままでは駄目で、何とか国際化しろというすごいプレッシャーが掛かってきているという話があった。では、ここでアメリカのグローバリゼーションとは何かというと、LHCに参加し、ILCをサポートしますということは書かれているのですが、それ以外のプロジェクトに対して、本当にグローバルに考えているかというと、ちょっと疑問があります。例えばJ-PARCのことは一切書いていないですね。そこでもかなりオーバーラップしたプログラムがあったりします。スーパーBは書かれているのですか。グローバルと言いながらも、かなりLHCに偏ったグローバルな気がするというのがコメントです。間違っていれば。
【駒宮委員】  それは多分、どこのニュートリノのコミュニティーも、まだグローバリゼーションしていないんですよ。だから、アメリカだけがグローバリゼーションしていないわけではない。日本もヨーロッパもしていないと思います。
【中家委員】  いや、だからニュートリノ及びJ-PARCやインテンシティーフロンティアとか、そういうところも含めてグローバル化を議論すべきかと思うのですが。
【森教授】  J-PARCについては、おっしゃるとおり、アメリカと日本ですごくオーバーラップしています。ニュートリノだけではなくて、ミューオンプログラムが完全にオーバーラップしているのですけれども。これは議論の内容は言えないのですけれど。ここは非常に議論をしました。レポートはすごくすっきり、簡単にしか書いていないですけど。
【中家委員】  全く書いていない感じですね、逆に言うと。
【森教授】  mentionしているぐらいですね。ただ、不公平な記述はないように、非常にそれは気をつけました。だから、決してJ-PARCとか、特にハイパーカミオカンデとかCOMETとか、そういうのをdiscourageは絶対していないです。対等な立場で一応やるという。だからミューオンのプログラムというのは、非常に難しいわけです。もう既に両方とも走り始めているので。それからハイパーカミオカンデについて言えば、これは加速器プログラムではなくて、やっているのは一応、ハイパーカミオカンデというのはコライダーで言えばディテクターなわけです。アトラス実験とかCMS実験なので、やはり研究者レベルの議論なので、ハイパーKをやめろとかいうわけにはいかないわけです。世界的なニュートリノの研究者がハイパーKをやりたいと言えばハイパーKをやるわけだし。アメリカのLBNFというものに魅力があれば、みんな来るわけです。そこは、ストラテジーとして書けないわけです。
【駒宮委員】  済みません。サイズが違うので、何が何でも全てグローバリゼーションでやるというやり方もおかしいと思うんです。ある程度、競争しながら、小さいものはやっていくべきで、それで自然淘汰でやればいいと私は思いますけれども。
【森教授】  小さいのはいいんです。大きいのは、ミューオンとニュートリノですね。あと、小さいのは別にそんな。例えば私のやっているMEG実験なんて、一言も書かれていないですよ。アメリカ人もやっているのですが。
【梶田座長】  大分、議論がありましたけれども、先に進もうかと思うのですけれども。その前に特に何かこれはというのがあればですけれども。
【中家委員】  1点だけ。さっき徳宿さんの話で、ヨーロッパの話をしていたときに、ニュートリノの、T2Kのコントリビューションは幾らぐらいですかと酒井先生から聞かれて、答えたのですけれど、あれは非公式な値で、実際、各国のお金をカウントするということはものすごく難しい。20億円くらいのレベルで、測定器にコントリビューションがあったと考えておいてください。
【酒井委員】  インカインドですか。
【中家委員】  各国が実際、予算要求している額はもっと多いです。それは、彼らがポスドクを雇っていたりエンジニアを雇っていたりするので。各国のレベルというのは国によって違うので、あの数字が何か公式なものとしては扱わないでください。こんな感じですということでお願いします。議事録に残るので、一言弁明させてください。
【徳宿委員】  もう一つだけ。これはもう、余り大した案件ではないのですが、先ほどCERNの借金の話があったので説明します。見やすい絵というのだけをお見せしておきますけれど、これがCERNの借金の移り変わりです。今がここです。で、10年間のプランで出していたのが、こういう。これはちょっと古い絵なので、5月時点の絵なので、正しい絵ではないのですが、大体こういう印象でなっていくと。で、さっきも言ったように、LHCの建設のときにやはりお金が非常に足りなくなったので、ここでばんと借金したものを、今、言い方ですけれど、見事に返したわけです。見事に返したから、次の山もちゃんと返せるというようなビューです。
【酒井委員】  ということは、コントリビューションというか、各国の金額は増やしていないの。
【徳宿委員】  増やしていないです。
【酒井委員】  1,200億か何か知らないけれど。
【徳宿委員】  増やすのに対しては非常に抵抗があります。
【酒井委員】  それで。すごいね。
【中野座長代理】  一旦、信用を得たんだから、今度もうちょっと長いプランで、これを。
【梶田座長】  ありがとうございました。では、これでここの議論は終わりにしまして、次の議題の方に進ませていただきたいと思います。それで、先ほどの森先生の方の御報告ですけれど、こちらについても何か改めて御意見等あれば、事務局の方へお願いいたします。
 それで、今の2つの説明を踏まえまして、改めて論点や今後のスケジュールについて御意見を伺いたいと思っておりますが、まず事務局から、論点や今後のスケジュールについて、前回からの変更点の説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【成相加速器科学専門官】  資料2と3でございます。資料2の方については、特段、今回御意見を頂いておりませんでしたので、そのままとさせていただいております。資料3のスケジュールでございますが、当初、第3回を、フレーバー物理という形で書かせていただいておりましたが、初田委員の方からも、前回の棚橋委員の理論の話等もございまして、できれば超対称性理論に対しての現状と展望について、宇宙論からの観点から説明が欲しいという話ですとか、宇宙観測に関して、ILCの物理と深く関係する部分もあるので、その部分についても議論してはどうかという提案もございました。出席者のスケジュール等も考えますと、第3回に宇宙線や天文学について議論を頂くということで、第4回にフレーバー物理とニュートリノという形で進めさせていただいてはどうかと思っております。説明は以上でございます。
【梶田座長】  では、資料3の今後のスケジュールですけれども、このような進め方でよろしいでしょうか。よろしいですかね。
(「異議なし」の声あり)
【梶田座長】  では、このような形で今後、進めたいと思います。
 それから、前回の駒宮先生からのプレゼンに対して複数の質問が来ておりまして、これについては、一部、駒宮先生の方から回答を頂いているものもあります。そして、そういうことで、今回、資料7として配付しております。この資料に関して、まずちょっと駒宮先生の方から御説明いただければと思うのですけれども、よろしいでしょうか。
【駒宮委員】  この資料を全部説明する……。
【梶田座長】  いや、資料7の部分、駒宮先生の部分ですね。
【駒宮委員】  資料7、もちろんそうですけれども。前回の私のプレゼンに対して、4人の方がいろいろと質問してくださいまして、まず中野座長代理、それから山内先生、それから小磯先生、それから山中先生、4人。で、ここに出したのは、一応、中野さんからのやつは随分前に来たので、一応、回答を出したのですけれども。それから、一応、山内さんのも小磯さんのも回答のvery preliminary versionというのは作ったので。では、これはどうしましょうか。概略をお話ししてよろしいのですか。
【梶田座長】  もしあればお願いします。
【駒宮委員】  分かりました。では、まず中野さんの最初の質問から順番に行きたいと思います。発表スライドの15ページで、超対称性と複合模型の区別がつくとしているが、23ページにある精密測定を通して、それを区別する方法には、23ページのヒッグスの精密測定以外にどういう方法があるかという質問です。それに対しては、ヒッグス粒子が比較的軽いということが、スーパーシンメトリーの1つの特徴になっていますので、一応、スーパーシンメトリーはフェイバーだということになります。それから、複合粒子模型では、非常に大きな質量のスカラー以外のベクトル複合粒子がうんと高いところにできるので、それのテールだとか、そういうやつと、Z(0/)ボソンが混ざったりすると、そういうのがリニアコライダーで見える可能性がございます。そのほかには、あとトップクォークとZボソンとの精密測定と結合の精密測定によって、複合粒子の様々なモデルを識別できるというのが27ページにございます。
 その次の質問は、発表スライド32ページに対して、SUSY以外のダークマターの探索が可能かという質問で、これに似た質問を小磯さんからも頂いたのですが。
【小磯委員】  はい、私も。
【駒宮委員】  ここは、ダークマターには2つの種類があって、1つはWIMPというやつです。Weakly Interacting Massive Particleと、それからnon-WIMPの2つに分かれます。で、WIMPの方は、大体100 GeVから1 TeVぐらいの非常に重い質量を持つ、カラーとか電荷を持っていない粒子ですね。で、非常に安定な粒子です。そういう粒子は、いろいろとモデルがございますが、大体z(0/)とか何とかにカップルするので、リニアコライダーで、それが質量の範囲にあれば必ず見えます。もう一つ、non-WIMPというのは、例えばaxionとか、そういうものです。これも非常に軽い粒子で、ほとんど相互作用しない。そういうものは、リニアコライダーでもハドロンコライダーでも見えないです。
 その次の御質問は、発表スライド33ページに関連して、もしILC以前にLHCでSUSYが発見された場合はどのような戦略になっていたかという、非常にこれは仮想的なものですね。
【中野座長代理】  仮想ですね。
【駒宮委員】  これは、そこにございますように、まず2つに分けられると。これは、ILCの500 GeVで見えるか見えないかによって大きく分けて、もしくは見えそうだったら、250 GeVをすっ飛ばして、なるべく早く500 GeVに行って、そこでその粒子を見ると。それの詳細研究をやると。で、もし見えないということが明らかに分かっていたら、そうしたら250 GeVとか、低いエネルギーでまずヒッグスの詳細研究をやって、ヒッグスで、そのスーパーシンメトリーにconsistentかどうかというのを見て、それからhigh energyに行くというシナリオになると思います。最終的には多分、1 TeVとか何とかに行きたいということですね。それが見えるところまで行きたいということです。
 最後の質問は、総合して重要な測定として挙げられるのは以下の4点であるという理解でよろしいかというので、1つはヒッグスの結合定数のずれの測定精度向上、2番はヒッグスの自己結合の検証、3番はトップクォークの質量の測定精度向上、4番はLHCで見えにくいSUSY粒子探索と。まさにそのとおりなのですが、1つ、やはりhigh energy frontierなので、high energy frontierの電子・陽電子の衝突というのは、いろんなパターンを全て探索できるんです。だから、全てのイベントトポロジーを探して、それが標準理論に合っているかどうかというのを非常にシステマチックに検索すると。そういうことによって、新しい物理、標準理論から出ている物理を見るんだということが多分5番目にあると思います。これで中野さんの質問は大体よろしいですか。
【中野座長代理】  はい。
【駒宮委員】  その次は山内さんです。山内さんは、素核研の所長なのですけれど、質問が細かいんです。最初の質問は、反跳質量分布でヒッグス粒子を見る場合、年間何イベント期待されるでしょうかと。このページの図からは400イベント程度に見えますが、正しいでしょうか。もしそうなら、これでできる測定は非常に限られているのではないでしょうか。これを使って5年間で何ができるか実例を挙げてほしいとおっしゃっているのですが、これはそうなんです。これは1年に450イベントぐらいです。で、1年の秒数を10の7乗としますと、450イベントぐらいですね。それで、でも1年を大体、1.6掛ける10の7乗ぐらいで走るんですよね。それプラス、だからe+e-もあるわけですから。そうすると、1年、1,400イベントぐらいですね。これで大体5年でやると、例えば、これは非常に重要なのは、Zを見て、反対側のヒッグスを全く見ないわけですね。そういうプロセスというのは大体、Z崩壊の7%ぐらいあるんです。それによって、要するにヒッグスを全く見ないで、それで断面積を測ってしまうということをやりますと、これはtotal widthが分かるんです。ですから、それによって、いろんな精度というのは決まってくるわけです。branching fraction。だから、これは非常に重要なんです。だから、5年ぐらい……4年でやると1.3%ぐらいです。で、5年でやると0.7%ぐらいになるんですね。だから、精度は十分に得られるということだと思います。
 その次は、もっと詳しくここには書いてあるのですけれども、こんなのを読んでいたら7時をとうに下ってしまいますので、その次は、ヒッグス粒子が質量の起源であることはLHCで確立されると考えますが、ILCによって質量の起源や真空の構造が分かるというのは何を示していますかというのは、実はLHCでヒッグス粒子が質量の起源であるということはまだ分かっていないです。ただ単に、電弱相互性の破れの原因として、SU2の二重スカラー項の、二重項スカラー場は、これを1つだけ入れるというのが標準理論で、これには全く必然性がないわけです。で、それに似た粒子が、ただ見えたということです。非常に重要なのは、要するに質量生成の起源がスーパーシンメトリーみたいなやつか、それから複合粒子みたいなやつか、そこのところをやっぱり分からないと、本当に質量の起源が何かというのは分からないわけです。というのは、ヒッグスポテンシャルはこういう格好をしていますが、これの原因が、どうしてこうなっているのかというのは、どの教科書にも全く書いていないんです。で、それの原因がSUSYなのか、複合粒子なのか。そこら辺のところをきちんとILCで分かるようにするというのが非常に重要で、特に真空構造という意味では、ヒッグス凝縮と直接関係があるのはヒッグスの自己結合です。で、相転移として電弱相互作用の破れがいかに起こったかということを知るのは、それをきちんと測定することであると思います。
 その次は23ページ。このページのSUSYと複合粒子の例は、標準理論、何%コンフィデンスレベルで排除していくということになるのでしょう。また、それは積分ルミノシティ2,750フェントバーンを仮定していますが、この蓄積に要する時間はどれだけかということですね。まず、250 GeVで1,150 fb-1というのは、大体4年です。それから1,600 fb-1、500 GeVというのは大体、これも4年ですね。3.7年ぐらいです。だから、両方足したら8年ぐらいです。もちろん、これには、コミッショニングとかランプアップとか、そういうのは含まれていません。何%コンフィデンスレベルで排除しているかというと、HBBの結合のずれというのは、このモデルでは3%ぐらいで。測定精度というのは0.7%です。0.7%というのは、ヒッグスのfull widthがネックになって、大体0.7%かな。そうすると、大体これが4シグマ。4.何シグマですね。それから複合粒子模型の方は標準理論からのずれが4%だとすると5シグマぐらいです。だから、そのぐらいでは分かるということですね。
 それからその次、24ページ。積分ルミノシティとして4,600 fb-1が仮定されています。23ページで仮定される積分ルミノシティと一致させるとどうなるでしょう。ここのところで、私がちょっと間違えてしまって、ここは実は、24ページに載っている図は、23ページと全く同じルミノシティを仮定した場合です。だから、それを増やした場合ではないです。だから、250 GeVでは1,150、500 GeVでは1,600というルミノシティを仮定した場合です。だから済みません。これは、だから。
【中野座長代理】  こっちが間違っている。
【駒宮委員】  そっちが間違っている。そんなにいっぱい使っていません。これは、だからもともとの図はこれを使ってやって、うんとよくなったのですが、しまったといって直したらルミノシティを直すのを忘れてしまったんです。
 その次。トップクォークの質量がSUSYや複合模型のスケールを決めるとのことですが、LHCで決まる精度を5倍改善することで、スケールはどの程度よく決まることになるのか。理論的不定性も含めて定量的に示してください。これは非常に嫌な質問ですよね。これは、どうして嫌な質問かというと、スーパーシンメトリーのスケールというのは、そもそもトップクォークのマスだけで決まるものではないですよね。それは多分、所長は御存じでこういう質問をしているのではないか。御存じのように、要するにトップクォークの質量だけでSUSYのスケールは決まりません。例えばトップクォークの超対称性パートナーのミキシングだとか、それからそういうパラメーター、ヒッグスの場合は非常に少数のパラメーターですけれど、そういうパラメーターによってSUSYのスケールが決まるんです。例えば、2つのスケーラートップの間にミキシングがない場合の3ループ計算まで、今、されておりまして、それのストップのマスのエスティメートというのは、3.8プラスマイナス0.8 TeVなんです。これが今のスケールです。トップクォークのマスが5倍よくなったら、これが3.8プラスマイナス0.16になるかどうかはよく分かりません。よく分かりませんが、多分その程度にはなるのではないかと思います。だから、かなり精度よくスケールが分かるということです。それからもう一つ、複合粒子の方はいろんなモデルがあるので、ここはちょっと宿題にしてください。ここはまだちゃんと勉強していないので。でも、このスケールとトップマスというのは非常に深い関係があるというのは、いろんな論文に書いてあります。
 その次、26ページ。我々の宇宙が安定であるかどうかが分かるという誤解を招くのではありませんか。これは、万が一、標準理論を超える一切の兆候が全く見られない場合、これは最後の手段としてトップマスを非常に正確に測って、それでプランクスケールまで、ヒッグスのラムダが正にならないかというのを見るわけです。で、もしかしてそこで何かあったら、あったらというのはネガティブになったりしたら、その前に必ず何か新しい物理があるということが分かるということなんです。ですから、宇宙が安定か安定ではないかと。現実の宇宙というのはもちろん安定なわけです、今は。だから、そういうスケールの話ではなくて、うんと高いエネルギーに行ったときにどうなるかという話です。だから、むしろ宇宙の非常に初期にどうだったかという話だと思います。
 それからその次。その次はどこだったかな。
【中野座長代理】  次のページです。
【駒宮委員】  次のページ。27ページですね。具体的にttZの何を測定しているのでしょうか。これが、系統誤差を含めて1%以下の精度で測れるとする理由を教えてくださいと。これは、ILCでのttZの結合の測定というのは、実際はオープントップの対生成、微分断面積を、いろいろビーム偏極を変えて、それで測定することになります。ビーム偏極によりSチャネルのγとzの寄与、BボソンとWボソンの寄与と言った方が適切かもしれません、それを分離して測ると。それによって、終状態分布をきちんと測定することによって、
Signal to Noiseのratioも非常によいので、統計誤差は最終的には無視できます。ただし、これは統計誤差は無視できるのですけれど、多分、システマチックが効くのですが、それは今、ちょっと日仏の共同研究として、higher orderの補正の効果の詳細な検討というのをやっております。ですから、これはまだ答えが出ておりません。
 それから33ページ。この3種類の比較をもって、LHCとILCはSUSYに関して同等以上の感度があると結論してもよいのでしょうか。もっと様々な模型ではどうなりますか。これは、この3種の模型というのは多分、SUSYのメジャーなモデルのはずですよね。これは多分、松本先生の方がよく知っていると思いますが、これ以外に何かモデルはございますか。
【松本委員】  モデルがあるかという質問に関しては、もちろんモデルはあります。
【駒宮委員】  モデルは幾らでも。
【松本委員】  理論屋さんがいる限り、ある程度、モデルは作ります。ただ、メジャーというか、例えば理論屋さんを1,000人集めて、信じているモデルを1つずつ絶対挙げてくださいといったら、この3つのどれかには大体落ち着くだろうという感じの意味です。で、だからSUSYは、もっとゼネラルにパラメーターを振ってやる研究もありますけれども、そのときに、同等以上というのは、何をもって同等を定義するかにもよるのですけれども、パラメータースペースが、例えば50%をLHCで測られて、残りの50%をILCで測るとかいう意味であるならば、桁は同じぐらいのはずです。ただ……。
【駒宮委員】  だから、見つけるものが違いますよね。
【松本委員】  そうなんです。
【駒宮委員】  多分、だからLHCはグルイーノの何とかに非常に感度があって。
【松本委員】  見るスペクターがちょっと違うので。
【駒宮委員】  リニアコライダーはもっと低い、チャージーノとか、それからニュートラリーノの軽いやつとか、そういうのに感度があるので。大体、そういうグルイーノに比べて、そういうニュートラリーノとか何とか、数倍軽いので、だからどっちが有利かというのはよく分からない。
【松本委員】  そうですね。だから、粒子の数で言ってということですか。スクォークとか、グルイーノは。
【駒宮委員】  だからポテンシャルには作れるという意味では、もちろんLHCで作れるわけですよね。それが見えるかどうかという話ですね。
【山内委員】  もちろん、そう。だからグルイーノとかは、最終的には2.3 TeVぐらいまでいくと。
【松本委員】  そうです。
【山内委員】  そうした場合に、LHCの500 GeVだとすると、半分の250 GeVですよね。
【松本委員】  はい。
【山内委員】  だから10対1ぐらいの比に大体なるんですと言っていいのかと。
【駒宮委員】  それはモデルによるわけです。
【山内委員】  その範囲がどのぐらいですかという質問です。
【松本委員】  3つ、モデルが挙げられていて。
【山内委員】  はい。
【松本委員】  最初に、後ろからいきますと、ヒッグシーノの場合は全くirrelevantになっているので、もう、一から無限大まである。無限大というのは言い過ぎですけれど、すごい大きいところまであります。で、ウィーノの場合ですと、これが基準で、1対8ぐらいですか、今。とか9とか、そんなものかな。それが、グルイーノがウィーノの3倍ぐらいから21倍ぐらいまでになります。だから8を挟んでちょうど。で、ビーノの場合は、ここに書いているのは1対7ぐらいですね、多分。でも、これはもっと離れたりもっと近付いたりして、これもほぼarbitraryになっています。だから、そういう意味ではすごく動いてしまうので、同等ということを何をもって示せばいいかというのは難しいですけれども。ただ、グルイーノがすごく重くてほかが軽いとILCが見やすくなりますし、ある程度近付いてくるとLHCが元気になりますし、近付き過ぎると、今度またLHCが見えづらくなるという定石なところしか言えないですけれど。
【駒宮委員】  以上が山内さんの質問です。次は小磯さんからの追加質問ですね。最初の質問は、ILCにおいては、ヒッグス粒子をプローブとする精密測定によって標準理論を超える新しい物理を探索するということだが、クォークやレプトンの精密測定(フレーバー物理)とどのように本質的な違いがあるのかというお話ですね。これは、そもそもヒッグス粒子というのは発見されたばかりの粒子で、さっき森さんがおっしゃったように、その詳細というのは分かっていません。フレーバー物理では、その対象であるフェルミオンですね。クォークとかレプトンに関しては、ゲージボソンと同様に相互作用も非常によく、長年の研究で分かっております。それからもう一つ違うのは、ヒッグス粒子の結合定数などの詳細測定というのは全部ツリーレベルなんです。それが基本的なものであり、これに対応するクォーク、レプトンのツリーレベルの結合定数なんて、もう完全に分かっているわけです。もちろん、湯川結合に関してはヒッグス粒子が関与するので、これはヒッグス粒子の測定にdependしてしまうわけです。一方、ベル2などでの測定で、新粒子の探索は、ツリーレベルを測るのではなくて、ループ効果とか、それからSUSYなどですね。それからバーチャルな効果、例えばcharged Higgsなどというのを測るので、それは直接的な測定とは異なり、非常に間接的なのです。ですから、非常にモデルdependだと。ここに本質的な違いがあります。多分、μ(ミュー)→eγ(イーガンマ)とか、τ(タウ)→μγ(ミューガンマ)なども、SUSYなどのループの効果によって生ずる過程なので、これもイベントはクリーンですが、でも間接的な測定ですよね。だから、モデルdependなわけです。
 それからその次の質問は、ILCで暗黒物質の解明ができるというのは、到達可能なエネルギー範囲に暗黒物質を形成する素粒子が存在すれば発見できるということのみを言っているのか、あるいは、それ以外にも暗黒物質を探索できる方法を想定しているのかと。暗黒物質の候補は超対称性以外にも考えられているのか。最後の質問は先ほどの、よろしいですね。
【小磯委員】  はい。
【駒宮委員】  本質的に、もちろんエネルギーが到達する範囲にないと見つかりませんよね。でも、唯一できるのは、例えばスーパーシンメトリーみたいなものがありそうだというのは、例えばヒッグスのb b-barのブランチ、フラクションを詳しく測ることによって分かって、SUSYがあったら恐らくダークマターはSUSYではないかという予想がつくと。そのぐらいのことはできますね。でも、やっぱりthresholdの中にないとできないと思います。松本さん、どうですか。
【松本委員】  基本的にはthreshold以下だったらもちろん作れるから、ですけれども。僕は実験屋さんではないから、余り定量的なことを言って間違える可能性が多いですけれども、ダークマターがウイークアイソスピンを持つか持たないかで話が変わると思っています。で、ウイークアイソスピンを持つということは、相対性理論からそいつに、電荷を持ったSU(2)パートナーが近くに存在しているということと等価です。そうすると、電荷を持った新しい粒子が標準模型のいろんなプロセスに複写補正で影響を与えることは十分に。それを通して間接的に調べると、もうちょっと重いところまで行けると思うのですけれども。まだきちんとしたことは調べられていないというのが多分、現状だと思っています。でも、少なくともthresholdを超えることはできるというのは。それが2倍に行くのか50%アップなのか等々というのは、見るプロセスと、あとそれに付随するシステマチックエラーとか、そういうのがどのぐらいあるとかなどということによってきますので、僕にはちょっと答えられないのですけれども。
【梶田座長】  そろそろ、実は7時に近付いてきたので、では。
【松本委員】  以上です。
【駒宮委員】  以上が、では山中さんの質問はこの次ということでよろしいでしょうか。
【山中委員】  はい。
【駒宮委員】  あとは、ここら辺のやつはちゃんと次回までに文章にしてきますので。文章にして、ちゃんと皆さんにお配りいたしますので。
【梶田座長】  よろしくお願いします。お願いします。
【山内委員】  どうも御回答、ありがとうございます。細かい質問で申し訳ございません。今の議論は非常に重要なポイントだと思うんです。で、各回に2ポツ目として、ILCの科学的意義・役割についてというのが毎回ありますが、そこでの議論にちょうどなっていると思うのですが、これをいろんな、言葉だけではなくて、グラフとか数字をちゃんとお示しいただいて、改めて御回答いただくというのが、ちょうどいい議論になるのではないかと思う。いかがでしょうか。
【駒宮委員】  いや、もちろん、よろしいですけれども、今までにそれを何回やってきたかですよね、我々は。何か、ちょっと、またもう一回、全部やらされるとなると、非常に腹立たしく思います、私は。今まで、だって将来検討小委員会でもやったし、KEKの、何でしたっけ、あれでも、いろんなところでやっているわけですよ。でも、やります。ここは初めてですもの。
【嶋崎素粒子・原子核研究推進室長】  事務局から。そのための会合でございますので、そこはこらえていただいて、議論を尽くしていただければと思います。特に学術会議の中の宿題にもありましたけれども、LHCとの関係というのは、我々みたいな素人から見ると、次にどういうところを、LHCの今からの実験の結果いかんでどういうふうに変わってくるのか、こないのかとか、そういうところも含めて引き続き御議論いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
【梶田座長】  ありがとうございました。それでは、本当はシナリオでは、ここでしばらく議論の時間があったのですけれども、申し訳ありません。それで、本日御議論いただいた論点につきましては、今後、随時アップデートして、次回お配りするということだとお聞きしております。ほとんど時間がないのですけれども、特に何か今の議論に関連して、特に今、この場で忘れないうちに聞いておきたい、発言しておきたいというようなことがあれば。では中家さん。
【中家委員】  今の最後の議論に関係するのですが、もちろん僕らも将来計画検討小委員会などで、いろいろ議論してきたのですが、LHCでSUSY粒子が見えないということで、やはり理論屋のコミュニティーの半分ぐらいの人が、低エネルギーのSUSYに悲観的な意見をもっていることは事実です。是非そういうところも踏まえて議論をしてもらいたい。もちろん、何年もやってきたということは分かるのですが、やはりLHCでSUSYは見えていないという現実があり、更にその場合にどのようにILCでディスカバリーをdrivenに持っていくかというところの観点から議論していけたらいいかなと思います。
【駒宮委員】  将来も見えないということ? だから13 TeVでも14 TeVでも見えない。それはまだ分からないですよね。
【中野座長代理】  まだ分からない。
【松本委員】  分からないですね。それだけしか言えないですけど。
【中野座長代理】  分かるけれど、すぐには分からない。
【駒宮委員】  そうですね。
【松本委員】  次回、それについて話すよう言われたので、それに言及するように作ってきます。
【梶田座長】  では、今、中家先生から発言いただいた点も踏まえ、今後の議論を進めていっていただきたいと思います。申し訳ないのですけれど時間となりましたので、本日の議題につきましては、これで終了とさせていただきたいと思います。最後に事務局の方から連絡事項があると聞いておりますので、お願いいたします。
【成相加速器科学専門官】  それでは、先ほど議事録につきましては、適宜修正して、もう一度紹介した上で掲載等を考えたいと思いますので、もう一度御協力をお願いしたいと思います。
 それから、本日お配りしている資料のドッチファイルの青い資料ですが、そちらについて、基本的には置いていっていただきたいと思っております。必要があれば、郵送なりということもあります。本日お配りしている資料についても、重たいということであれば、こちらの方から郵送させていただきますので、そのまま置いておいていただければと思います。以上でございます。
【梶田座長】  ありがとうございました。それでは、本日の会合はこれで終了いたします。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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