戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会(第3回) 議事録

1.日時

平成26年6月2日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省16階 科学技術・学術政策研究所会議室
〒100-8959東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 科学技術・学術政策研究所及び有識者からのヒアリング
  2. 議論のとりまとめ
  3. その他

4.出席者

委員

大垣座長、有信委員、大隅委員、笠木委員、片岡委員、近藤委員、角南委員、辻委員、西尾委員

文部科学省

小松研究振興局長、山脇大臣官房審議官(研究振興局担当)、磯谷大臣官房審議官(研究開発局担当)、安藤基礎研究振興課長、岩渕基礎研究推進室長、浅井基礎研究推進室長補佐

オブザーバー

松原科学技術・学術政策研究所企画課長、七丈科学技術・学術政策研究所上席研究官、阪科学技術・学術政策研究所主任研究官

5.議事録

【大垣座長】
 それでは、定刻となりましたので、ただいまより戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会の第3回を開会いたします。
 本日は、御多忙のところ、また大変暑い中というか、最近、天気予報が暑い、暑いと言うものだから、必要以上に暑いような感じがしますが、お集まりいただき、まことにありがとうございます。
 今回も前回と同様に、原則公開としております。
 まず、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 本日の資料は、資料1から5までと参考資料1から12までを御用意しております。過不足がございましたら、お申し付けください。
 なお、大隅委員は諸事情により多少遅れて出席されるとの御連絡を頂いております。また、阿部委員、竹山委員、中小路委員につきましては、本日、欠席の御連絡を頂いております。

【大垣座長】
 ありがとうございました。本日は、科学技術・学術政策研究所より、ドイツにおけるフォーサイトプロセス及びサイエンスマップについて御説明いただいた後に、笠木委員より未来創発型アプローチ及び研究開発課題のプライオリティセッティングの試みについて御紹介をいただきます。その後、これまでの議論を踏まえ、本検討会の報告書の骨子(案)について御議論をいただきたいと思っております。
 それでは、議題1の「科学技術・学術政策研究所及び有識者からのヒアリング」に入りたいと思います。
 ドイツにおけるフォーサイトプロセス及びサイエンスマップについて、科学技術・学術政策研究所より御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

議題1:科学技術・学術政策研究所及び有識者からのヒアリング

【松原課長】 
 科学技術・学術政策研究所の松原と申します。このほか、フォーサイトを担当している七丈研究官とサイエンスマップを担当している阪研究官の3名で御説明をさせていただきます。
 まず、簡単に資料1と資料2に基づきまして御説明をさせていただきます。
 まず、資料1について、ドイツ研究教育省のフォーサイトプロセスの概要についてでございます。まず1ページめくっていただきまして、全体の概要を見ていただければと思いますが、ドイツで行われているフォーサイトなんですけれども、目的といたしましては、研究開発のアジェンダ設定や優先順位付けのための新しい研究開発テーマ、分野横断領域、あるいは戦略的に協調すべき領域などを探索することを目的にして始められたものです。
 この予測自体は、2007年から2014年頃まで行われていますが、その将来予測展望の期間としては、その後の15年間、2030年頃までをターゲットとしております。このフォーサイト、技術予測の特徴といたしましては、科学技術のサイド、技術的なところからのものと、需要サイドの2つの視点から検討をしていると。そういうものを行き来しつつ、周期的に実施することが特徴となっております。需要としては、今のニーズというよりも、将来の人口の変化ですとか資源枯渇などに起因するようなニーズに着目をしているところでございます。また、既に十分な支援とかされているようなところは対象としておらず、これから推進すべき領域を取り上げているというような特徴がございます。
 次のページですが、サイクルとしては2つのサイクルがあります。まず、2007年から2009年に科学技術の視点からの検討を行っていると。さらに、その後、展開期間ということで政策展開等を行った後に、今度は需要の視点からの検討を行っていると。下に図がありますが、まずはTechnology Pushということでテクノロジーサイドから、1サイクル行って、その後、時間をおいて、それに基づいて、今度は需要の視点からの検討を行っているという形で、2つの双方向からサイクルを回しています。
 次のページを見ていただければと思いますが、第1サイクルの工程がどのような形になっているかといいますと、この中でも細かく段階には分かれていますが、まず、研究の新しい方向性を探索するために14分野を仮に設定いたしまして、設定したものを基にしてワークショップを開催するとか、あるいは議論をしています。
 その上で、第2段階としては、新領域・研究課題の調査分析を行うということで、まず、第1の段階で見いだされた領域や研究課題の動向等についてインタビューなどを通じて詳細に分析するとともに、横断的な6分野を新たに設定してオンライン調査を行うということで、かなり多くの専門家に依頼をして回答をもらっています。そういうものに基づいて、最終的に、新たな未来分野を導出するというような、そういうプロセスをたどっているところでございます。
 次の5ページですが、ここに載っている7つの分野が第1サイクルで新たに導出された分野ということで、人間と技術の協調ですとか加齢研究など7つの分野を抽出しています。これは、これまでにないような、余り重点を置いて研究をされていないような分野だけれども、将来重要になってくるというような学際的な分野を抽出していると聞いております。
 さらに、それに基づいて政策展開を行った後に、第2サイクルの工程を行っているということで、最後、6ページになりますが、今度は研究やイノベーション政策に向けた情報収集のために、社会のトレンドとかニーズを明確化しています。工程といたしましては、まず、需要とかトレンドを把握するために、インタビューとかワークショップを通じて新しい視点を取り入れています。さらに、第1サイクルの、先ほど、科学技術の視点からのものについて、新たな人文科学とか社会科学とか政治学といった分野も加味しつつ、そういうものを更新いたしまして、最終的に需要と技術の両方の視点を統合した形でシナリオを作成しています。本来であれば、この後に、先ほどの第1サイクルのような分野や結果が出てくるべきなんですけれども、まだ第2サイクルの報告書が出ていないということで、それについては、また出たところでまとめていきたいと思っております。
 引き続きになりますが、資料2をごらんいただければと思います。サイエンスマップについても御説明をさせていただきます。1枚めくっていただければと思いますがこれまでもサイエンスマップについては御議論いただいていると思いますが、サイエンスマップを簡単に御説明させていただくと、論文分析によって国際的に注目を集めている研究領域を定量的に把握して、それがお互いにどのような位置関係にあるのか、どのような発展を見せているのかを示した科学研究の地図であると考えております。
 下のところの表がありますが、これまでほぼ定期的に成果を公表しているところでして、サイエンスマップ2002から2008まで4つについては公表済みで、現在、それ以降のサイエンスマップについては取りまとめ中でございます。
 次のページですが、論文データベースの分析を用いて、どのように抽出をしているかでございますけれども、まず、注目する2つの論文が、その他の論文により同時に引用されるという共引用関係に基づきまして、トップ1%論文のクラスタリングを2段階行って研究領域を抽出するというようなプロセスをたどっています。
 ここでの特徴というのは、最初に決まったキーワードからスタートしないのが特徴であり、下にある図を見ますと、例えば、2003年から2008年までの約5万6,000件のトップ1%の被引用の論文がありますが、そこから共引用関係を用いて、最初にクラスタリングをすると、6,000弱ぐらいのリサーチフロントが出てきます。さらに、もう一度同じように共引用関係によるクラスタリングを行いますと、世界的に注目を集めていると考えられる研究領域が650弱ぐらい出てきています。
 めくっていただいて、そういう形で作られたサイエンスマップ2008を右手のところに掲載させていただいています。このサイエンスマップの見方といたしましては、それぞれの小さな丸が研究領域になりますが、この中で黒丸というのが、特にその中でも論文数が多い領域です。位置というのは、上下左右ということよりも、共引用度が強ければ近くに、弱ければ遠くに配置されるということで、近いか遠いかが特に重要であるということでございます。研究領域間を結ぶリンクは、共引用度が0.02以上のものについて図示してあるということです。こういうサイエンスマップに、ほかの情報をオーバーレイさせて使うことによって、更によく活用することができます。例えば、主要国のシェアとか参画状況とか、そういうものをオーバーレイさせることによって、より使い勝手のよいものになります。また、次のページの5ページ目になりますが、分析事例といたしましては、サイエンスマップによる日本の状況ということで、サイエンスマップ全体を見ると、日本のシェアというのは下降基調です。個々の研究領域を見ると、下に載っているような、高温超伝導体とか、あるいは免疫とか、そういう幾つかの分野では高いシェアを持っていることが分かります。
 あるいは、サイエンスマップを用いて日本の状況を見てみますと、例えば、英国やドイツの状況と日本の状況だと、学際的・分野融合的な領域とか、あるいは臨床医学の研究領域については差があるということが見て取れるところでございます。
 6ページで見ていただければと思いますが、例えば、研究開発法人の研究領域がどのように分布をしているかとか、研究者の考えを取りまとめるツールとしてもサイエンスマップというものが有効に活用できるのではないかと考えております。
 7ページ目に、最後にサイエンスマップを御活用いただくに当たってのコメントのようなものを付させていただきました。サイエンスマップの特徴と留意点というようなものを以下のようにまとめさせていただいていますが、まず、サイエンスマップの特徴といたしましては、既存の学問領域にとらわれない研究領域全体の俯瞰的な分析が可能である。統計情報に基づく客観的な研究領域の分析が可能である。あるいは、同一の手法を用いた継続的な分析が可能であるというようなメリットがあると考えています。一方、留意点といたしましては、基本的には論文を調査対象としてクラスタリングを行っているというところで、見えるものが未来ではなくて近過去の状況であるというのが、まず一つの留意点でございます。
 また、論文を調査対象としているというところのもう一つの部分で、論文として発表することが盛んな分野もありますが、応用開発が中心で論文発表が少ない研究分野もあるというところで、そういうところに該当する分野、例えば、コンピューターとかそういう部分については、十分に抽出できていない可能性があります。対象としている部分が、論文数として一定の規模に達しないような研究領域や、最近数年の動きが活発な研究領域ですとか、まだ小規模で小さい研究領域については十分には抽出ができていない可能性があるというような留意点があると考えております。
 このような特徴と留意点を踏まえまして、また簡単にコメントさせていただきますと、ビジョンの策定のプロセスにおいては、サイエンスマップは御活用いただけるというような場面があるとは考えていますが、戦略ビジョンとサイエンスマップでの研究領域は必ずしも1対1対応をしない場合もあると考えています。一方で、サイエンスマップについては、例えば、そういう領域を抽出するためのディスカッションを誘発するためのエビデンスとして活用いただけるところもあるのかなと考えております。
 簡単ですけれども、以上になります。

【大垣座長】
 ありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明いただいた内容に関しまして質問など頂ければと思いますが、いかがでしょうか。どのような観点からでも。はい、どうぞ。

【有信委員】 
 どうもありがとうございました。サイエンスマップのところは、非常に面白い結果が可視化されていると思うんですけれども、これは飽くまで引用関係であって、引用という点に関して言うと、様々言われているような、いろんな要素もあって、限界があることは分かるんですけれども、それにしても、こういう意味で近い、遠いというか、それなりに注目されているのは分かります。これは単純に興味本位の話なんですけれども、例えば、MIMAサーチというエンジンがあって、これは社会技術の中で開発された、知識の構造化のためのエンジンで、例えば、東京大学のシラバスは今、MIMAサーチで、それぞれの分野間の関連が、いろいろ批判もありますけれども、表示されるようになっています。
 論文にはそれぞれキーワードがあって、そのキーワードについてMIMAサーチのようなものを掛けて、これと引用関係をオーバーラップさせるとどうなるかなみたいなところは多少興味あるんですが、何か検討されたことがあるかどうかをお聞きしたいんですけれども。

【阪主任研究官】 
 ありがとうございます。チャレンジしたことはこれまではありませんでした。サイエンスマップでは、キーワードを使わないで論文をクラスタリングするという手法を取っていますが、論文に書いてあるキーワード自体に意味がないとは考えておりません。現在用意しているサイエンスマップ報告書では、研究領域ごとに論文からアブストラクトとタイトルのところを取ってきて、テキストマイニングして、特徴を表すような語としてどういうものが出てくるかというものも、分析し公表しようとしているところでございます。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【西尾委員】 
 サイエンスマップの場合は、対象は論文誌ですよね。国際会議における発表論文は反映されているのかということなのですけれども。

【阪主任研究官】 
 御質問ありがとうございます。対象にしているのは、トムソン・ロイター社のWeb of Scienceに収録されているアーティクルとレビューですので、先生の御指摘のプロシーディングの部分は入っていないです。したがって、先ほど、最後に説明差し上げましたように、プロシーディングのような文献媒体で速く情報のやりとりをするような分野、例えば情報工学などの研究のモニターとしては若干弱いところがあるかと認識しております。

【西尾委員】 
 私の専門分野がコンピューター・サイエンスですけれども、我々の場合はどちらかというと、レベルの高い国際学会で発表をして会議録に掲載されている論文が非常に重要視されます。逆に言うと、国際学会で1回発表しますと、内容的な差異が相当ないと、論文誌の論文として採択されるのは非常に難しい分野です。同じ著者の論文でも重なりを厳格にチェックします。そのような事情がありますので、先ほどのようなお伺いをしました。

【大垣座長】
 ほかに。どうぞ。

【笠木委員】 
 サイエンスマップそのものではないことについて伺うので恐縮なんですけれども、この検討会でこれまで、出口を見据えた基礎研究ということで、ある程度議論が煮詰まってきています。そこで、サイエンスの分野で非常に動きが速いとかエマージング領域が生まれつつある、形成されつつあるというような、変化、勾配が見たいですね。ある年の分布形がこうだということだけではなくて、変化率などを追うことによって、新しいサイエンスの分野とか、できればサイエンスの延長線上に見えてくる新しい技術、そういうことを客観的に浮き彫りにするようなことは可能でしょうか。

【阪主任研究官】
 ありがとうございます。今の御質問に直接のお答えにならないかもしれませんが、研究領域の注目度の変化率・勾配の計算は既にやっておりまして、研究領域の中でも被引用回数という指標になりますが、急激に伸びているものをマークすることは可能です。
 もう一つとして、今までどういうふうに研究領域自体が成長してきたのかということに関しては、現在とりまとめておりますサイエンスマップ報告書にて研究領域をグループ分けしようと考えております。時系列のデータがそろってまいりましたので、今までずっと継続して大きくなってきたのか、急に出てきて大きくなったのか、分裂したのかということを、今、グループに分けて分析をしているところでございます。

【大垣座長】
 ありがとうございました。ほかにはよろしいですか。
 じゃあ、私から。知らないだけかも分からないですけれども、フォーサイトプロセスの方ですが、これは例えば、第1サイクルが終わった後の7分野ができて、これが何か政策に、あるいは予算等に直接反映されていたんでしょうか、それとも違うんでしょうか。ちょっと教えていただければ、有り難い。

【松原課長】
 第1サイクルから第2サイクルに行く間に政策展開のための時間があるんですけれども、そのときに、予算などにも反映されている形になっております。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【角南委員】
 今の質問に似たような質問なのですが、そもそも、ドイツでこうした取組が導入されるようなきっかけは、何だったのでしょうか。また第2サイクルということで、社会科学とか人文社会系の分野が加わるという話でしたが、どれくらいの規模的の参加になるのか教えていただければと思います。

【松原課長】
 将来の社会の需要とか潜在的な課題やニーズを想定することと、あとは将来社会からの要求に応える研究領域を見いだすことを特に目標といたしまして、このようなプロセスが導入されたと認識をしております。結局、新しい学際分野とか将来の社会変化とか、社会変化に対応する研究領域を着目して分析を進めるためには、このような双方向のプロセスが必要であったと認識しています。
 先ほどの社会科学の、どの程度考慮されていたのかということでございますけれども、どのぐらいのインパクトというか、人々にインタビューをしているかというところは分からなかったんですけれども、基本的には、オープントレンド、規範トレンド、隠れたトレンドという3つのトレンドにつきまして、11のニーズ領域を設定して、先駆者とか、あるいは博士課程の学生とかのワークショップを実施したということでございます。どのぐらいの人々に聞いたかというのは、今すぐには分からないです。
【近藤委員】
 今のことに関係するんですけれども、先ほど、第1サイクルだけでも、ある程度予算に反映させたと。普通に聞きますと、第1サイクル、第2サイクル合わさって1つの領域が見えてくるように思うんですけれども、その辺のプロセスの在り方ってどうなっているんでしょうか。

【松原課長】
 その質問について、私もここでお答えしたいのですが、第2サイクルの報告書が出ておらず、全体像が見えていない状況ですので、確かに第1サイクルで、まず一旦はやった後に、第2サイクルで多分本格的に応用していくのかなということは思います。まだ第2サイクルの全体像が分からないので、分かったら、何らかの形でフォローしていきたいと思います。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【片岡委員】
 サイエンスマップ、非常に情報が豊富だと思うんですけれども、例えば、コアペーパーとか抽出してきたときに、その中で、例えば、複数の研究機関が参画されているとか、あるいは国際的な共同研究の比率であるとか、そういうことまでここから読み取ることは可能なんですか。

【阪主任研究官】
 御質問ありがとうございます。各研究領域、どのペーパーが該当するかが分かりますので、先生のおっしゃるような分析というのは可能ですし、今までも幾つか例として出したりしています。近年、やはり国際共著論文がどんどん増えていますが、特にこのような注目を集める研究領域での国際共著率は高い傾向がございます。研究領域ごとに、どのような研究機関間の国際協調がなされているかを可視化してみますと、物理系、素粒子系の研究では、ある研究施設を持つ機関がハブになって、そこにいろんな研究機関所属の研究者が来るという形になりますが、ライフ系の研究ですと、何組かハブが違った研究機関ネットワークがあり、そこにリンクがつながるという形で発展しているようです。分野ごとの違いというのも見えてまいります。

【大垣座長】
 よろしいでしょうか。それでは、次の議題に移ってよろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、続きまして、未来創発型アプローチ及び研究開発課題のプライオリティセッティングの試みについて、笠木委員より御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【笠木委員】
 この2つの件について岩渕室長から御依頼がありまして、きょう、御紹介したいと思います。
 資料3と4ですけれども、補足資料として参考資料1と2がございます。参考資料の方は説明する時間がございませんので、もし詳しいことに御関心があれば、そちらを御参照いただきたいと思います。
 まず、資料3の方ですけれども、未来創発型アプローチということです。私が現在勤務しておりますのは研究開発戦略センターというところでございます。これはJSTの組織でございますけれども、いわゆる研究開発事業の推進、つまりオペレーションを担当するのではなくて、科学技術政策全般、特に研究開発課題の提案とか、そうした研究開発課題の推進体制をどうしたらいいかというようなことについて、我々からいろいろ提言をさせていただいています。それが文科省だけではなくて、内閣府はじめ他の省庁にも、その内容によって、いろいろ参照していただいているという状況にございます。そういう意味では、公的シンクタンクと我々は自負しておりまして、そういう中でやってきた仕事を、きょう御紹介するということであります。
 スライドの2ページですが、「未来創発型アプローチとは」。最初の黒ポツのところに、社会的期待に応えるための2つの戦略立案方法の1つであると書いてあります。我々のセンター、CRDSと省略して申し上げますが、現・吉川弘之センター長がセンターに着任されて以来、社会的期待に応えるための研究開発戦略はどうあるべきかということを、いろいろ検討してまいりました。
 第4期の科学技術基本計画でも、やはり課題解決型に向けて基本的な考えが大きくシフトした時期でございます。そういう中で社会的期待に応えるということになると、そもそも社会的期待というのは一体どこに、どんなふうな形であるのかということ自体が非常に大きな問題であるというところに、我々、気が付いたわけですね。社会的期待から出てくるものが、いわば社会的課題になるわけですね。つまり、課題の背後には、社会の人々が自分で気が付いている期待もあるでしょうし、気が付いてない、将来になって気が付くような期待もあるかもしれない。そういう認識から、我々は課題解決型アプローチと未来創発型アプローチという2つのアプローチを構想して、過去二、三年、議論し、試行してまいりました。
 一昨年は課題解決型アプローチということをやり、昨年度は未来創発型アプローチを試行したという状況にございます。今回の検討会で文科省さんから提案されている案は、未来創発型アプローチに大変近い考え方でスキームが練られていると私は理解しております。全く同じということではないんですが、基本的な考えで非常に似ているところがあるということです。
 3ページの絵を見ていただきたいんですが、これは概念的なことで非常に分かりにくいかと思うんですけれども、先ほど申し上げた2つの課題解決型アプローチと未来創発型アプローチ、どちらにおいても、このチャートの中に出てくるFACTS、TRENDS、VISIONがあります。実は、これらの間にDESIGNというフェーズがあって、それらの4つの概念を、具体的な検討のプロセスに落とすことをしてきました。FACTというのは、現状の社会の姿であります。これは、ほとんど変え難い、例えば、日本でいうと高齢化社会であるとか、多くの主要なインフラがかなり年を取ってきていて、今後、社会的なインフラに対して相当投資をしなければならない、それから、エネルギーでいうと、2011年に原発事故が起きて、現状、原子力に対しては、その推進とか維持について国民の意見が大きく割れているとか、こういうことは、今、にわかに何かやっても変えようがない現実であります。
 それから、そういう現実の姿から将来を見たときに、TRENDということがあるわけですね。これは、例えば、社会の情報化とかグローバリゼーションとか、あるいは女性の進出とかという、今後10年単位で起こってくるような大きなトレンドがあるはずですね。あるいは、新興国の経済の膨張とか。これらは、もしかすると少し変化はあるかもしれないけれども、大筋その方向に向かうだろうと。10年ぐらいは続くだろうというのがTRENDです。
 そういうことを丁寧に調べていくと、20年後、あるいは30年後に社会が行き着く姿が多分見えてくると思うんですが、しかし、それは多くの場合、社会が本来望む姿と一致するはずがなくて、そこにギャップができるわけですね。そのギャップを埋めるには、いろいろな方策が必要なわけですけれども、その1つとして、科学技術という非常に強力な助けがあり得ると理解をしています。そうした科学技術を今後、国として開発していくためにはどういう研究開発テーマがいいだろうかと、DESIGNとして考えるわけですね。
 そこで、先ほどの課題解決型アプローチの場合には、現状から先行きを演繹しまして先のところでのギャップを埋めようとしますから、言ってみれば、フォアキャストなんですね。一方、未来創発の場合は、現状の課題から議論を出発させるのではなくて、現在、サイエンス、特に基礎的な分野で非常に動きの速い、あるいは大きな変化の起きているサイエンスの分野は何だろうか、あるいは、今までにない全く新しい技術で、今見えつつある技術は何だろうかというところを見る。そういった科学や技術は、将来の社会の姿を大きく変える可能性があるわけです。つまり、我々が単に現状から演繹した社会ではなくて、非常に飛びの大きい先に見えてくる社会があります。それは、例えば医療の世界であったり、あるいは情報通信の世界であったり、ファイナンスの世界であったり、あるいは製造業の社会であったり、技術を基に非常に大きく変わる可能性がある。それはそれでいいと思うんですが、それを先導するための科学技術開発があり得るわけですね。ところが、その先に、つまり、そういう変革を遂げた社会で科学の光の部分だけが享受されるかというと、我々の経験はそうではないわけですね。科学技術というのは、必ず光と影の部分がある。その影の部分も含めて将来社会を見据えたときに、本来、我々が達成したい、あるべき姿の社会とは、やはりそこにずれがあるだろうと。その間を埋めるための科学技術というのも、同時に推進しなくてはいけないということになるわけですね。ですから、これはある意味では、新しい技術から将来を見て、将来からバックキャストをしているというようにも見えると思います。
 そこで、きょう御紹介するのは未来創発型アプローチで、バックキャストと言っていいと思います。3ページでは、FACTS、TRENDS、VISION。この細かい話をする時間がないんですけれども、これは様々、レポートとか、民間のテクノロジーアウトルックとか、そういう情報を我々は集めます。それから、専門家で非常に新しい研究をやっている人たちのヒアリングをするということで、ここである種のロングリストを作るわけですね。ただし、このサイエンスの状況把握が、我々、十分にできたとは思っていません。ですから、これをきちっとやるためには、先ほど御紹介のあった客観的な論文のデータ、そういうものも含めて考えなくてはいけないということになります。
 そこまでが最初のStep1であります。そこから描き出される幾つかのテーマを引っ張り出すと。さらに、その検討を進めると。そこから、更に実際の研究開発テーマを浮かび上がらせるわけですが、大事なことは、3ページの図の右の上の方に、「ドライビングフォースとなる科学技術」という表現がありますけれども、今、我々が注目しているのは、こういった科学技術です。現状の技術を改善する姿ではなくて、むしろ非常に大きな飛びのある社会変革を実現するようなドライビングフォースになり得る科学技術に注目するということであります。
 以上は、プロセスとしては、CRDSが大体50人、60人ぐらいの常勤の人間がいて、学識経験者で日頃応援していただける方が100人単位でおられるわけですけれども、そういう方々に声を掛けてワークショップをするとか、あるいは、データを系統的に整理するということを重ねまして、昨年の施行の中では、5ページ、様々な表現が出てきて、科学技術から描かれる社会の姿もいろいろ見えてきます。5ページのStep2のところで抽出された3つのテーマがあります。これは、特に基礎的な分野でのライフサイエンスの発達、情報分野あるいはコンピューターの発達、さらに、コンピューターが埋め込まれた機械の発達というようなことから、例えば医療とか病院が全く形が変わるのではないかと。それから、人と機械の新しい関係が生まれるのではないかと。それから、そういうことによって人の能力もエンハンスされ、あるいは人と人のコミュニケーションも大きく変わっていくだろうというような、新しい社会の姿がこの3つのテーマとして描き出されたということです。このあたりは、まとめ役としてのメンバーの主観がある程度入るわけですが、ただ、1人でやっているわけではなくて、このプロセスを経験している複数の人たちが集まって、いわば異なる主観を集めて、できるだけ客観に近付けるという主旨で、一連の作業をしたということであります。
 それから、6ページに、ドライビングフォースとなり得る科学技術としてどんなものが取り上げられたかということが、少し分野ごとに書いてございます。赤丸でいろいろ書かれています。統合生理モデルの研究開発とか3次元多細胞体構築技術とか、こういうところが新しい動きとして出てきていると我々は認識したということであります。最終的に7ページに、先ほどの3つのテーマと具体的な科学技術の分野の話が出てくるわけですね。
 紙がたくさんありますが、後ろの方の、ページが打ってないので恐縮ですが、別紙3の戦略スコープ案、テーマA「医療と病院の変容」というページがあります。左側が、FACT・TRENDS、科学技術のドライビングフォースが、FACT・TRENDSを支えているわけですが、それが左側の上の方にまとめてあります。そこから将来の社会像、VISIONというのが出てきて、そこに正の面、負の面というのがあります。ですから、非常にとんがった科学技術を推進していくと、将来こういうすばらしいことができるようになりますというのが正の面なんですが、医療に多様な選択肢ができるとか、病気を早期に予防・介入ができるとかという非常にすばらしいことも出てくるんですが、一方、負の面としては、そういうこと自体が社会に対してどういう影響を及ぼすかということもちゃんと考えなくてはいけないということが出てまいります。この負の面、正の面を、もう一回現状にバックキャストすると、先ほどの、非常に動きの速い先端的な科学技術分野だけではなくて、それに付随する様々な課題を解決するための科学技術の開発を推進していかなくてはいけないというような形でテーマが繰り出されるわけであります。
 この未来創発型アプローチの作業は我々の方でもまだ中途段階で、今年度、もう1年掛けて、先ほど出されたテーマのうち2つについて、深掘りの作業をするということで、検討チームがそれぞれ検討を始めたところであります。より詳しい話については参考資料1をごらんください。
 次に、資料4についてお話をいたします。これは複数の政策オプションが出てきたときに、どういうふうにして重点付けをするか、どの政策を採用するかということを、根拠ベースといいましょうか、あるいは、決める論拠を明らかにして進める方法がないかということで、我々考えたことであります。
 2ページに、「背景と目的」がございます。要は、政策に対する社会的合意形成の方法であるとか、あるいは客観的根拠に基づく政策立案・決定の要請等々ありますが、なかなか確立した手法がない。従来ですと、声の大きい人に委員会の決定が傾いてしまうというようなこともなきにしもあらずだったわけですが、要は、どういう論拠によって決められたのか、選択が行われたのか、そして、その結果、その政策が推進されて、例えば、5年、10年たったときに、その政策の成果として、それがよかったかどうかということが最終的に見えてまいりますけれども、それがうまくいったにせよ、余りうまくいかなかったにせよ、振り返ってみて、あのときにこの選択はどういう論拠でされたのだろうかということまでトレースバックできるようなことが本当は必要なわけです。
 それと、もう一つは、様々な政策の選択において、客観的な評価と主観的な判断がなかなか分けられてない状況がございます。例えば、先ほどのエネルギー問題は典型的なんですけれども、エネルギー供給のための1次エネルギーの選択というのは、化石資源も再生エネルギーも原子力もあるわけですけれども、さらに、それを細かく分けた分類もあると思います。それぞれ、どのエネルギー源を見ても、あらゆる面で他に勝るものはなくて、それぞれ長所も短所も持っているのが実情であります。そういう中で、どれをどれぐらい重点的に入れるのかという話になったときには、客観的な評価、つまり、科学的な技術評価と、さらに複数の技術オプションがあったときに、どれを採用するかという主観的な判断を分けておかないと、合意形成も何もできないことになるわけです。これは、客観的な評価の部分は科学者の責任であり、主観的な判断の部分は恐らく政策決定者の責任になるんだろうと思います。
 その様子が3ページに書いてあります。ここでは、ある種の開発目標となっている技術を、どういう順位付けをするかということを例として想定しています。まず、科学者が目標技術、これは複数あるわけですが、それを幾つかの指標、視点から客観的に評価をします。それを選定者である、一般的にいえば国民、実際には国民を代表する政策決定者に受け渡すと。そこで、選定者の側としては、科学的な根拠に使われた指標、あるいは、更に政策的な観点から付け加えられる指標に対して重み付けをするということをいたします。つまり、客観的なエビデンスに基づく評価というのは、これは本来誰がやっても変わらないはずのものであり、不確かさがあるとすれば、これは科学の進展とともに、小さくなっていくはずのものであります。
 しかし、どういう指標がどれぐらい重要かということについては、選定者が選ぶわけであります。したがって、3ページの下の方に計算式がありますけれども、個別の開発目標となる技術の評価点というのは、指標別評価と指標に対する重みを付けたものの重み付け平均値になるということで、このPという値が出てくるわけです。
 我々のセンターでは、去年、今年と研究開発テーマのプライオリティ付けをこの方法を用いてやっております。数量的な優位性が順番として出てきますが、もちろんそれをもって直ちに単純に決めてしまうということではなくて、さらに、それをもって合議をするわけですけれども、少なくとも何もなしで議論するよりは、議論の整理が大分つくような印象を持っております。
 我々が、まず具体的に試してみたのは、エネルギー分野、環境分野の研究開発の課題の選定作業であります。5ページが、エネルギー分野、環境分野の25件、12件の課題候補であります。この課題候補自体は、別途、専門家のプロセスを形成して選び出したものであります。ですから、我々のセンターとしては、エネルギー、環境分野でどういうテーマが重要だということを政策サイドに上げればいいかという、そういう話になるわけですね。これは、なかなかこのままでは決め難いわけです。どれもが、専門家は非常に重要だと言っているテーマですので、こちら側で、勝手にこれが一番大事だという話にはならないわけです。
 6ページが、先ほど申し上げた重み付きの評価をするということで、7ページから、先ほどの個別技術の評価指標という項目が出てまいります。エネルギーの分野ですと、例えば、安定供給性、環境性・持続性、その次のページの経済性、さらに、現状の科学技術政策との親和性はどうかというようなことで評価をしようと。20項目ぐらいあるんでしょうか。まず科学者サイドが、できるだけエビデンスに基づいて客観的な評価を、各技術オプションに対してするということをいたします。
 環境分野についても似たようなことをいたしましたけれども、11ページを見てください。ここではエネルギー分野だけを取り出してありますが、ここに一応、科学者サイドとして、安定供給性をはじめ4つの指標分野において、それぞれ点を付けると、こうなるというわけであります。ですから、単に科学的なエビデンスだけに基づいて評価すれば、このような結果になるわけです。ここで、もちろん大きく膨らんだ円に近いほど技術的には評価が高いと言えるわけですが、それをそのまま順位付けするというわけにはいきません。
 次のステップに行くわけですが、16ページをごらんください。そこで、評価指標に対して重みをどう付けるかということです。これは、主観なり、ある種の価値観が入るフェーズであります。これは模擬的にやった例でありますが、重み1、重み2は、それぞれ環境性を非常に重視した場合と、どちらかというと経済性に重きを置いた場合としてのモデルケースです。ですから、それぞれ重みが大きくなっている指標が違うわけですね。これは本来、政策決定者がこの重みを付けるはずであります。
 17ページ。先ほどの目標、技術がずらっと並んでいます。それらを単に、第1ステップの技術点だけで順位を付けると、17ページの図のグレーの線で表されます。これで見ると、燃料電池、2次電池、高温材料等々、この辺が技術評価としては非常に高いんです。恐らく、これを開発することによる、例えば、エネルギー効率の向上とか、そういう点では非常にインパクトが大きいだろうと評価されているわけであります。この表の右側、順位の低い方は、メタンハイドレート、温泉発電、生物機能解析、バイオ燃料等ありますね。メタンハイドレートは、恐らく技術的に非常に困難が大きいということで順位が低いんだろうと思います。温泉発電は、恐らく量的に余り大きくないということ。バイオ燃料は、経済性が余り高くなりようがないということで評価されて、この辺に来てしまった。ただ、ここに並んだものは、今、私が御説明しているように、上位がすごくよくて下位が非常に悪いというわけではなくて、全部が専門家が重要事項だとして選び出したものですので、たとえ順位が低い方であっても、重要技術であることは変わりありません。
 さて、その上で、先ほどの重み付けをした結果が薄い紫と濃い青になります。そうすると、今度はそれがガタガタしてきます。この重み付け、いわば考え方によって、順位に大分入れ替わりが出てくるということを示しています。
 基本的には技術評価で高いものは、概して上位の評価が与えられるんですけれども、中間段階を見ていただくと、相当順位が入れ替わることがお分かりいただけるかと思います。少なくとも、こうした形で技術的な評価、そして政策的な評価をきちっと分けて、ある種のデータを示すことができるので、この方法が有用であるということであります。
 19ページは飛ばしますけれども、もう一つ、各目標技術に対する投資リスクと、それから得られるベネフィットの関係の分析なども可能であります。今日は例として、こうしたエネルギーに関わる技術開発の課題の選定にプライオリティセッティングの方法を用いましたけれども、今後、いろんな場面で研究開発課題をどういうふうに決めるかということが重要になってくると思います。研究者側がこういう研究開発をやろうという陳情ではよくないし、一方で、単に政策的に目新しいからやりましょうという、国民に受けがいいからやりましょうというような形も余りよろしくないわけで、そういう意味で客観的に技術を捉えながら、なおかつき、ちっとした根拠に基づいた政策判断でプライオリティを付けるという1つの例を御紹介した次第であります。
 以上です。

【大垣座長】
 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に関しまして御質問等ありましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。

【有信委員】
 どうもありがとうございました。非常に勉強になる話だったと思います。ちょっと教えていただきたいのは、例えば、さっきの最後の20ページの例ですけれども、縦軸が技術評価点で横軸がリスク点になっていて、前の環境の部分も何ページだったかにありましたけれども、みんな右下がりになっていますよね。つまり、リスクが高いということと技術的に高評価だということが、逆向きになっているので、このときの技術評価点が高いことの意味はどういうことなんでしょう。

【笠木委員】
 こうなりましたとしか言えません。(笑)我々も、この結果、少し意外でした。例えばこれだと、2次電池というのは開発リスクが余り高くないけれども、現実的なインパクトは大きいという形が出ているわけですね。もしかすると、エネルギー分野の技術の特徴かもしれないですね。

【有信委員】
 環境も……。

【笠木委員】
 環境もそうでしたかね。だから、もう少しライフとか情報とか、そういう分野を含めてやってみるといいのかもしれない。それから、2次電池とか燃料電池というのは、既に国の施策が相当入って推進されている分野であるので、そういう意味で道が見えてきていると。したがって、それ自体が余り高リスクと見られてないのかも知れません。

【有信委員】
 逆に言うと、この分野は政策とうまく合っているということですかね。

【笠木委員】
 これは、もうちょっとほかの分野もやってみるなど、検討は必要かと思います。

【大垣座長】
 ほかにはいかがでしょうか。

【山脇審議官】
 資料4の16ページの例では2つの重み付けの例がありましたけれども、重み付けの付け方で大分感度が変わってくるのでしょうか。この場合は20と2とか15と10とか、そういうような形になっていますけれども、それで大分結果に影響するという形になるのではないかと思いますけれども、やはり分析の結果もそういう形でしょうか。それとも余り関係ないのでしょうか。

【笠木委員】
 この重み付けも、少し試行をしています。実際にこの作業をされる方が、これ、たしか総点では100にしたと思いますが、それで、100点をどの指標に何点振り分けますかということで調べたのです。人によっては、割とモデレートに重みを付け、ほとんど順位に影響がなかったり、極端におやりになる方は、幾つかは点を付けて、あと全部0点とかですね。0点とするということは、その指標を見ないということなんですね。そういうやり方、もちろん政策サイドの考え方次第だと思うんですね。ハイリスク・ハイインパクトでやりましょうというような話だったら、それは当然、そういうところだけを見ればいいというようなことになります、これは少し経験して、この方法の使い方ですけれども、それを学んでから実際に使っていただくことになるかと思います。
 それから、重み付けについては、このようなリニアじゃなくて、ログだとか、実はいろんな議論がございました。それから、このやり方も、応答法とか新しい考え方のものもあるんですけれども、あえて一番簡単な方法にいたしました。それは、広く使っていただくためになんですけれども。学会等では複数発表してまいりましたけれども、専門家の方々からも一定評価をしていただいたように思っています。

【大垣座長】
 ほかには。
 どうぞ。

【大隅委員】
 ありがとうございます。遅れてすみませんでした。私は専門が、どちらかというとバイオとかメディカルの方なので、そこのところを中心に拝見したんですけれども、具体的に、この生命・生体、脳とコミュニケーション、個人化というあたりのところで、どのような議論がなされて、こういったものにまとまっていったのかというのが、この中からだと見えにくくて、笠木先生がエネルギーや環境に関してやられたような、同じことがバイオに関してもそうなされたという理解なんでしょうか。何となく挙がってきているタイトルが、全て、ちょっととんがって見えるんですけれども。

【大垣座長】
 簡潔に。

【笠木委員】
 私の説明が悪かったかもしれません。資料3と資料4の話は全然独立な話として聞いてください。資料3を進めるときに、資料4の方法を使ったわけではありません。資料3の問題の抽出というのは、資料配としてスライドとか長手の表がありますけれども、こういうものをベースにして様々な議論をしたりワークショップをしながら、先ほどの3つの社会像にたどりついたと、そういうことであります。

【大隅委員】
 そうしますと、例えば、システム生理とかその辺は、さきに日本学術会議から出されたマスタープランの中にもそういったものが挙がっていたかと思います。つまり、それは学術会議というところが意見集約したボトムアップ的な、その分野の研究者たち、研究コミュニティーの中からも非常に大事じゃないかというようなことが挙がってきているものなんではないかと思うんですけれども、一方で、例えば、臓器形成の自律的メカニズムの医療への応用とかという、これがビジョンに載っているというのは、非常に唐突な感じがするんですけれども。

【岩渕室長】
 資料3と4を、きょう、CRDSの成果として御説明をしていただきましたけれども、これは研究戦略を立てる上での手法として、このプロセスが参考になるのではないかということで御紹介をしていただいたものであって、個別の技術の課題が挙がっていますけれども、これをそのまま文部科学省のファンディングの対象として云々するというようなことではなくて、そこは誤解のないように。こういう手法がよいということであれば、こういう手法に基づいて、今後、文科省できちっと議論をしていくというような趣旨で紹介したものでございます。

【大垣座長】
 よろしいですか。多分、科学者と政策立案者とのコミュニケーションというか、対話のよい材料にはなるという気はいたします。そんなところでよろしいですか。
 どうぞ。簡潔にお願いしたいと思います。

【辻委員】
 最初の資料3で簡単な質問ですが、ここでいう科学技術は、基本的に国内ということなんでしょうか。先ほどのサイエンスマップでも出てきたように、国内と海外とで技術のトレンドや重点の置き方が、変わってきますが。

【笠木委員】
 国内だけではなくて、国外ももちろんです。ですから、我々としては、現状のサイエンス、あるいは新しい技術の芽がどんなところにあるかということを、できるだけ網羅的に把握したいんですね。もちろん、それには時間も要りますし、材料も要りますし、マンパワーも要るということで、我々、今回の試行で十分にできたかというと余り自信がないところで、ただ、ここでは方法論として、こういうやり方があり得るということでやってきたということで御理解いただきたい。

【大垣座長】
 多分、私もそういう感じは持っていて、実際の個別の技術になると、地域性だとか、そういうものが決定的に重要度に影響してきますので、全体としての議論と個別地域とはまた異なってくるかと思います。
 それでは、よろしければ、次の議題に移りたいと思います。それでは、議題2の「議論のとりまとめ」に移りたいと思います。事務局より、まず資料5の「戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会 報告書骨子(案)」について説明をいただき、その後、委員の皆様から御意見を伺いたいと思います。それでは、事務局からお願いいたします。

議題2:議論のとりまとめ

【岩渕室長】
 それでは、資料5に基づき御説明いたします。この資料5につきましては、前回までの検討会での御議論や、本日御紹介していただいた様々な有識者の方、NISTEPにおける取組などを参考にいたしまして、事務局で骨子としてまとめさせていただいたものです。事前に委員の皆様にも配付させていただいたものです。
 本日御議論いただきまして、これを基に報告書の形の取りまとめ案を作成し、次回、御議論いただいた後、フィックスするという段取りで進めていただければ、大変有り難く存じます。
 また、文部科学省としては、この戦略的な基礎研究の在り方の御議論の結果を踏まえて、報告書をおまとめいただいたならば、早速、この方法に基づいて戦略的創造研究推進事業の戦略目標の策定に活用させていただきたいと希望します。
 それでは、資料5の御説明を簡単にさせていただきます。1.と「はじめに」ということで、この報告書を起草するに至った背景、1つ目の丸で、今日の世界の成熟国において、知識の役割が非常に大きいということ。また、2つ目の丸におきましては、イノベーションへの期待ということで、特に科学技術に基づくイノベーションは非連続的な発展を生み出し、これが我が国の社会・経済に持続的な競争力をもたらすという意義。3つ目の丸ですけれども、こうした観点から、科学技術に基づくイノベーションには、知の創出を担う基礎研究の推進は極めて大事であるということ。この基礎研究の推進は政府の責務であること。
 4つ目の丸では、世界の中での日本の研究プレゼンスの低下という現象。5つ目の丸ですが、高度な知的基盤社会の構築においては、知の創出の多くの部分を担う学術研究が重要であることは言うまでもございませんけれども、それに合わせて、イノベーションに向けて、それを発展させるような戦略的基礎研究もまた大事であること。
 次の丸ですけれども、こうした戦略的な基礎研究のシステムの進化に向けて文部科学省は次のような課題に取り組むべきということで、3つ。1つ目のポツは、この戦略的な基礎研究というものが科学技術イノベーション政策全体の中でどのような意義を有するのか、明確化すべきこと。2つ目のポツで、様々な研究のファンディングという仕組みがあるわけですけれども、他のファンディングの仕組みとの関係を分かりやすく整理する必要があること。3つ目として、こうした戦略的な基礎研究の戦略を策定する仕組みについては、目的に照らして効果的であるとともに透明性の高い仕組みを用意すべきという課題。そうした観点で、この検討会が開催された。
 続きまして2.ですが、「戦略的な基礎研究に関する整理」ということで、この検討会で取り扱う事柄の範囲について、少し定義的なことが書いてあります。
 マル1ですが、「本検討会で取り扱う『戦略的な基礎研究』について」ということで、ここで議論する研究とはどういうところに位置付けられるのか。OECD Frascati Manualにおける分類やStokesにおける分類。そして、Stokesにおけるパスツール型研究、いわゆる用途を考慮した基礎研究が、この検討会の対象。特に、パスツール型研究、2ページの一番上ですけれども、パスツール型研究の2つのアプローチ、出口を見据えた研究、出口から見た研究ということで、ここは報告書の段階では出口の用語の整理も行う。この中で、本検討会においては、パスツール型研究のうちの出口を見据えた研究というところにフォーカスを当て、在り方について議論をする。
 マル2ですが、「『出口を見据えた研究』を推進する必要性」について書かれています。また、マル3で、「『出口を見据えた研究』を取り巻く現状と必要な政府の戦略」ということで、現状としては、こうした出口を見据えた研究が様々なイノベーションに貢献しているという実態、この出口を見据えた研究の推進主体は研究者であるということ、研究者の持つ発想と社会・経済的価値の創出をつなげるために政府の戦略が必要であること、戦略の必要性が書かれています。
 続きまして3.ですが、「『出口を見据えた研究』の在り方」です。1つ目の丸ですけれども、出口を見据えた研究については、JST(科学技術振興機構)の方で戦略的創造研究推進事業があります。ここに様々な分野の知見が蓄積しているわけで、そうした事業の中に具体的に活用していく。この在り方を具体的に生かしていく必要であり、大きく(1)と(2)と2つのことが、この在り方の中に書かれています。
 (1)「PDCAサイクルの確立」ということです。戦略的創造研究推進事業においては、戦略目標という、国、文部科学省の意思が書かれるわけですけれども、戦略目標の策定のプロセスをより透明性の高いものとし、また、戦略目標の策定等に係る評価に基づいて、常に改善が行われるようなものにするために、PDCAサイクルを確立することが必要であると書かれています。
 マル1、「確立すべきPDCAサイクルについて」ということで、一番最後のページに絵が1枚入っていますが、別紙のとおりで、これは前回の検討会の場で出させていただきましたけれども、この戦略目標の策定に関する一連のPDCAサイクルを1枚の絵に描いたものが6ページ目にある別紙の絵です。こうしたものを全体としてPDCAサイクルとして確立すべきであるといった上で、2ページから3ページのところで、PDCAのPの部分については、後ほど指摘するような戦略目標策定指針というものを作成すべきであると。また、PDCAのC、チェックの部分につきましては、前回も御議論いただいたところでけれども、この戦略目標策定サイクルのチェックの部分については、次のような評価が行われるべきではないかということで、3つのポツを書かせていただいております。
 1つ目のポツは、戦略目標策定指針自体に関する評価を、このPDCAサイクルのCの中で行うべきではないかということです。また、2つ目のポツですけれども、戦略目標がこの指針にのっとって策定されたかとのチェックが必要ではないかということで、戦略目標策定過程に関する評価、こうしたものが必要であると書かせていただいております。また、実施フェーズに関する評価を3つ目のポツとして書かせていただいております。これは、個々の研究課題の評価については、ファンディングエージェンシーである科学技術振興機構が行うわけですが、この結果を踏まえながら、目標の設定がそもそも適切であったのかここで評価をする必要があるということです。
 マル2ですが、「PDCAサイクルを確立するために必要な体制の整備」という部分です。出口を見据えた研究の趣旨を踏まえて、こうした戦略目標策定指針を策定・改定していくことに関して、きちっと検討の場を文部科学省の外の方に設ける必要があると書かれています。
 また、この検討の場につきましては、毎年度、この戦略目標について評価・改善を図っていく必要がございますので、こうした検討の場は常設のものである必要があると書かれています。
 (2)「戦略目標策定指針」です。先ほどのPDCAサイクルのPの部分ですけれども、「戦略目標策定指針の全体構成」ということです。戦略目標策定指針は、出口を見据えた研究という趣旨にかなうように、目標策定に必要な手順が適切な順序で流れていくように構成される必要がある。また、このため、目標策定は研究者の発想の体系的な探索から始まり、その研究領域が社会・経済にどのような貢献をもたらすかを推量することに至るような手順で行う必要があるということ。この順番については、本日、NISTEPから御紹介いただいたドイツのフォーサイトと手順としては似ている。あるいは、CRDSの説明にあったような未来創発の手順の順番に似ていると思っています。
 マル2ですが、「策定のための個別手順」ということで、Step1、2、3と書かれています。詳しい説明は省かせていただきますけれども、前回、前々回と、このStep1、2、3のそれぞれについて相当御議論いただいたことを書かせていただいております。特にStep1の世界の動向の俯瞰ということでサイエンスマップの話も書いていますけれども、これは本日、NISTEPから御説明があったようなところです。また、先ほどのサイエンスマップの議論でもありましたが、ペーパー、学術誌のみに頼るような戦略立案は非常に不完全であり、補う必要があるということで、プロシーディング集のようなものであるとか、あるいは最先端の知をどういうふうに俯瞰するかということで、Step2をあえてここに入れさせていただいている。そういう趣旨で、論文誌のエビデンスだけでは読めないような部分について、「知の糾合による注目すべき研究動向の特定」で補うことが書かれてい。
 また、4ページに移らせていただきますが、4ページの頭の方にStep3がございますけれども、Step3は「科学的価値と社会・経済的価値双方を追求する戦略目標の決定」です。ここでシーズを有する研究者とニーズを有する社会・経済の側との対話が必要と書かせていただいていますが、ここはCRDSの先ほどの未来創発のアプローチにおいても行われていた部分で、こういうものを参考にしたいと思ってございます。
 また、Step3の2つ目のポツで、最終的に戦略目標を決定するという部分ですけれども、ここは笠木先生から、最後、資料4で御説明いただいたような政策判断において、重み付けがあった上で決まるという部分。この目標の最終的な決定方法についても、先ほどのようなものを参考にしながら考えたい。
 マル3、「戦略目標策定に当たっての留意事項」ということで、これも先般、相当御議論いただきましたが、戦略目標においては適切な粒度で設定することが必要であると考えております。過度に先鋭化、抽象化させないことが必要だろうと思っております。
 また、その他、4ページの下の方、(3)のところで、留意事項について書かせていただいております。これは、前回までのここでの御議論でいろいろ挙げていただいた点です。例えば、個々の内発的な動機に基づく学術研究から展開して、出口を見据えるような最適な研究者群の形成を促すような運営に努めるべきではないか。あるいは、serendipityを重んじた制度であるべきではないか書かせていただいております。また、研究者のモチベーションを保つような制度であるべき、あるいは、他の研究類型と孤立して行われるものではないので、そうした他の研究類型との関わり、交差、こうしたものを念頭に置いた制度設計とすべきであるということが書かれている。
 出口を見据えた研究ということをここでは論じておりますけれども、他方、出口から見た研究との関わりもあるわけで、出口から見た研究を推進するプログラムマネジャー、そうしたものとの交流が大事ではないか。また、科学技術振興機構の事業ということで考えれば、科学技術振興機構全体では、こうした出口から見た研究を行っているような方、あるいはプログラム・マネジメント能力を有するような人材の育成も必要ですので、そうした人材の活用も大事ではないかということを書かせていただいております。
 最後のページ、5ページです。「今後求められる取組」で4.ですけれども、この報告書をまとめたならば、当面の推進方策として、こうあるべきということが書かれています。今年、平成26年は、本検討会の検討成果、この報告書において提言された戦略目標策定指針に基づいて、来年、JSTが戦略創造研究事業で取り組むべき戦略目標の策定を文部科学省において進めるということが書かれています。
 また、文科省が、この戦略目標を今年策定した際には、この検討会のメンバーの方に策定結果を一度フィードバックいたしまして、この報告書で意図したとおりの策定指針に基づいて、きちっと目標が策定されたかというようなことを検討する必要もあるのではないかと書かれています。
 また、来年以降は、科学技術・学術審議会のようなところに、何か検討の場を置く必要があるのではないかと書かれています。
 内容としては、大体以上です。

【大垣座長】
 ありがとうございました。先ほど、岩渕室長から説明がありましたように、本日、この骨子を御議論いただいて、次回、ほぼ確定しようということでございます。そういう意味で御議論いただきたいと思いますが、それでは、今の説明の内容に関しまして、御意見ありましたら。どうぞ。

【有信委員】
 いろいろあちこち飛んだ議論をよくまとめていただいてというので感謝をしています。その上で、例えば、1ページの「はじめに」のところの丸の4番目の中で、単純に、「その原因の一つとして、基礎研究の軽視があるのではないかという懸念がある」とありますが、誰の懸念なんだかよく分からない。誰も基礎研究が重要でないと言っている人はいないんですよね。特に、産業界のことがもし頭にあるとすれば、産業界で、例えば、競争力懇談会から出ている基礎研究に関する報告書を読んでいただくとよく分かるんだけど、あれは例のクラゲの研究も重要だというぐらいの話もしているわけで、基本的に、みんな基礎研究は重要だと考えていますし、その中で、特にその前段の、日本の低下の部分がありますよね。トップ1%とかトップ10%の論文のシェアが低下していると、こういう話があって、これの原因が何であるかということについては、今、多分、学術審議会の中の学術分科会で特別のグループができて、そこで検討が進められている。多分、西尾先生も委員になっておられると思いますけれども、検討が進んでいると聞いています。だから、もうちょっと書き方を工夫してください。
 それから、もう一つ非常に重要だと考えているのは、もういいかげんに、リニアモデルの呪縛から解放された方がいいということで、1ページの2.で、OECDのこのモデルが今のリニアモデルの原型になっているわけですけれども、その中で、Stokesモデルのパスツール型研究というところにハイライトを当てましょうという、これはこれで非常にいいと思いますが、もう一つ、アメリカのクラインという人が、この人はもともと流体力学をやった先生なんだけれども、クラインモデルという研究開発のモデルをかなり詳細に分析をして発表しています。ここで完全にリニアモデルではないという話になったと多くは理解されているんですよね。是非そこを少し考慮されるといいかなと思います。

【大垣座長】
 ありがとうございます。何かコメント、特によろしいですか。基礎研究のところは、予算が競争的資金に動いているとかなんとか、そういうようなことがあると。ちょっとそれは整理していただいて。
 笠木委員。

【笠木委員】
 ありがとうございます。2ページの一番上の方の丸の2つ目、この検討会で論じる戦略的な基礎研究というのはパスツール型研究のうち「出口を見据えた研究」とするということ。この表現とか、その下のマル3の2番目のポツで、「推進主体というのは根本原理を追求する研究者」と非常に明確に書かれているんですね。私は、この辺が少し絞り過ぎの気がするんですね。やはり第4期基本計画以降、基礎研究も含めて、少なくとも科研費等は別として、社会的な課題を解決、あるいは達成するというような方向に政策の主軸が切り替わっていると思うんですよね。今後、第5期に移っても、やはりその方向は多分変わらないし、つまり、多大な科学技術研究開発費に税金を充当することに対する説明責任としては、そういう社会的な視点というのが外せない時代になってきていて、これはヨーロッパなんかでもそうですね。そうだとすると、社会的期待に応えて課題や問題が設定されるという視点は非常に重要で、やはりこれは欠かせないと。その上で、ここで前から御説明のあった、「出口を見据えた」というのと、「出口から見た」でしたか、2つありましたね。ちょうど、それは、きょう私が御紹介した、CRDSで施行した2つの方法に割と近いと思うんですけれども、我々から見ると、片方だけをここに取り上げることになるので、課題の取り上げ方として、それで十分かというのが心配ですね。ですから、非常に急速な科学技術の推進をドライビングフォースとして将来社会の課題が浮き彫りになるという話と、現状の社会の姿から将来を演繹したときに、そこに見えてくる課題は何かという、両方の視点がないと、ちょっと視野が狭くなるんじゃないかという懸念があります。
 もちろん、ほかの内閣府の新しい研究開発事業なども始まっていて、そちらとのある種のデマケということはあるのかもしれないけれども、やはり文科省としては、大きな主軸を据えて、堂々とこういう形で基礎研究が推進されるべきだということを、私は個人的には是非言ってほしいと思うんですね。ImPACTとかSIPというのは、ある意味では、時々押し寄せる大きな波のような感じで、やはりこれは丁寧に継続的に基礎研究を推進していく必要があると。そのための主軸は、揺るがないようにしたいということです。
 それから、3ポツ以降でPDCAの話が出てくるんですが、ここには余り時間軸が入ってないですね。我々の経験だと、これらを1つ1つやるのはかなり時間がかかるということですね。アメリカでDOEが新たなエネルギー関係のプロジェクトを設計したときも、七、八年という長さにわたって、いろんな検討とかワークショップを重ねたわけです。そうして初めて1つの大きな枠組みが出来上がったという経緯もあります。我々がやってみても、なかなか時間が掛かる作業だということを経験しているので、そのことを含めて、時間軸について今後お考えいただきたい。
 それから、この中で、普通の研究開発のPDCAと少し違う点は、ここで取り上げられる課題の多くが非常にハイリスクであるということだと思うんですね。特に未来創発型の方はハイリスクなので、成功の確率は割と低いわけですね。それから、このレポートの中でも、serendipityという話が出てきました。一体そういうものが、こういうルーティン的なPDCAに乗るかというと、実はそうではないのではないかという気がするんですね。もちろんPDCAが要らないと言っているわけではなくて、そういう点を含めてPDCAを設計しておかないと、本来持っている研究の性質が生きてこないという感じがいたしました。
 あわせて、PDCAというか、課題設定の中で、ある種のプロジェクトを組んだときのPD、あるいは動かしていく人、そもそもの領域をきちっとした考えに基づいて推進、統括する人を同時に育てることが大事で、それもどこかに書いておいていただいた方がよろしいかと思いました。
 以上です。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。PDCAに関しては、特にいいですか。
 どうぞ。

【片岡委員】
 今の笠木先生の御意見にも関係あるのかも分かりませんが、特に文科省でやる場合に、人材の育成、ここに実際携わる人がいるわけで、その場合に、出口を見据えた研究をやっていくことによって人材としての広がりが出ることが望ましいんじゃないかと思うんですね。これをやるのだという出口を決めて、それに向かって、やることも大事だし、一方において、このような研究を通じて大局観を持って物を考えることができると、これが結局、応用力にもつながって、別の分野で実際役に立つとか、そういう面も結構あるのかなと。
 科学技術というのは、もちろん技術に対する投資であると同時に、やっぱり広い意味での国民にとっての安全保障的な面もあって、その安全保障というのは、結局は人材じゃないかと思います。そういうこともどこかに書いてあるといいのかなと思いました。

【大垣座長】
 ありがとうございます。

【近藤委員】
 一言だけ。3ページのところ、さっきの評価のところをしっかり書いていただいていると思うんですけれども、策定のところ、Step1からのところ、ここのところが、もし可能であれば、先ほどの、どのような形でというところ、具体性、それと、そのときに、先ほど話もありました、そういうことを進める人材育成というのも入ってくると思うんですけれども、どこがどのような形でというのが、可能であれば、もう少し具体性があると見やすいかなという気はしました。
 後ろの図においては、戦略目標の策定、文部科学省ということにはなってはいるんですが、一体、先ほどの知の糾合はどこがどういう形でやるのかとか、あるいは、その後のStep3は、どこがどの規模でどうやるのかと、この具体性が多分、とても重要かなと思ったりするので、完全な形ではなくても、少し提言的に、こうすべきであるというようなところが書き込まれていた方がいいのかなと思いました。
 以上です。

【大垣座長】
 よろしいですか。
 西尾委員。

【西尾委員】
 この委員会が設立された大きな目的は、別紙の図において、プランのところの戦略目標の設定、文部科学省と書かれているところをいかに透明性を持って、またエビデンスベースで行うかということであったと思います。それを改善する観点からは、右側の方の審議会の設置と、プランのところの一番上にある審議会の設置が、今回の議論の具体的な成果としては大きなものであると考えます。戦略目標策定の指針というところは策定するためのプロセスを定義するところですので、今後、大きな役割を果たすのは右側の戦略目標の評価というところだと考えます。そこで、戦略目標の評価というミッションの中で、戦略目標の策定プロセスが問題なく行われているのかという確認にとどまるのか、あるいは、文部科学省の政策サイドとしてお決めになっている戦略目標そのものの具体的な内容に関して、ある程度物申すことができるのか、ということを明確にしておくことは重要であると考えます。つまり、策定された戦略目標自体が、客観的に見たときに少し問題があるのではないかとか、もっと別の戦略目標が重要なのではないかとか、そういうことが言えるような審議会なのか、そうではなくて、策定のプロセスに関して改善すべき点だけを議論する審議階なのかというところは、結構大切なところかと思います。
 あと1点、3ページの策定のための個別手順のStep1における、「基礎研究に係る研究動向の俯瞰」というところですけれども、ここに書いてあるような情報をエビデンスとしてきっちり使われるということは大事なことです。ただし、前々回も大隅先生からも言っていただいたのですけれども、学術のコミュニティーとしては、日本学術会議において、どのような内容の学術大型研究計画が重要なのかということについて、マスタープランを3年に1回改訂する形で鋭意議論しております。今回概要のところではまだ記載がなくても良いとしても、拡張版を書かれるときには、「日本学術会議のマスタープラン」を参照したいただけることを希望いたします。学術のコミュニティーがボトムアップにどのような内容の学術研究が重要かについて熱心に議論した結果ですので。
 以上です。

【大垣座長】
 前半は特に重要なところで、お願いいたします。

【岩渕室長】
 前半のところですけれども、3ページの上の方に、PDCAサイクルのCでどういう評価を行うべきか、3つのポツが書かれています。もちろん、1つ目のポツは戦略目標策定指針自体に関する評価、2つ目のところは戦略目標策定の過程に関する評価で、3つ目のところは、戦略目標自体が適切であったかということで、戦略目標が達成されたかどうかの評価は入るべきだと思います。今年、戦略目標を決めたとしても、その目標が達成されるのはかなり先のことになりますので、当面の審議会の事項ではないのかなということです。けれども、戦略目標自体が達成されたかどうか評価されるべきだと思っております。
 後段の部分につきましては、コミュニティーの意見というものを、エビデンスというよりは、むしろStep2の知の糾合ということで、様々な意見をお聞きする際に、参考にするようなスキームを工夫すべきかと思いますし、先ほどの先生の意見も踏まえますと、Step1、2、3の記述については、これは実際の報告書にする際には、もう少し具体性を持ったものにしないと、実際、文科省が目標を作るときの指針になりませんので、次回までにもう少し書き込めるようにしたいと、そこで御議論いただければと思います。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【大隅委員】  
 前回もPDCAサイクルのことについて、Cのところについてコメントさせていただいたんですけれども、これからやるのに関して、数年後にこれを済ますというのはもちろんいいんですけれども、例えば、これまでのCRESTだったりERATOに関しては、もう既に評価がなされ、それから、たしか追跡評価というのもなされていたと思うんですけれども、それに、例えば、実際にファンドを得た人もいろんなものを出し、それから、その評価をされた方々というのも、たくさんの時間を使って評価書も書きということがされているので、やはり今回、戦略目標を策定するというときにも、それは何らかの形で過去のものが生かされなかったら、結局、そういったことに使われた時間が無駄になります。時間というのはイコール税金ということにみなされると私は思うんですけれども。ですので、今こういうやり方にしていきましょうということで戦略目標を評価するのは、確かに後のことなんですけれども、今回の目標策定指針の中に過去の評価というのがやはり反映されるべきではないかと私は思います。

【大垣座長】
 何かコメントありますか。

【岩渕室長】
 過去の戦略目標の評価というのは極めて大事だと思いますけれども、非常に膨大な作業になりますので、この時点ではなかなか難しいというのが正直なところで、引き続き、こういう検討の場を常設で設けるということになれば、そこで議論をいただくということかと思っております。

【大垣座長】
 ほかには。
 なければ、ちょっと私の個人的な意見を言ってよろしいですか。別紙の図なんですが、戦略目標の評価ですが、戦略目標の策定の評価ではないんですか。何を言いたいかというと、研究領域の評価というのはJSTで今までもやっていますし今もやっていますし、それを再度やるかのように、ちょっと屋上屋の感じがするので。これは、戦略目標を透明性を高い中できちんと、先ほどの言葉を引いちゃうと、出口を見据えた研究として設定されたかということを、この審議会等で見るようなPDCAサイクルであると理解していたんですが、ちょっと違うんですか。確認だけ。先ほどの西尾委員と同じ意見か違うのか分からないんですが、関連していますので。

【岩渕室長】
 この戦略創造事業については、文部科学省が戦略目標を定め、その目標の下でJSTが研究領域を、1つの目標当たり1つか複数かということはありますが、領域を定めるということになっていました。今までJSTで行ってきたのは、JSTにおいて定めた研究領域、この研究領域の考え方が達成されたかどうかの評価ですけれども、その上位概念である、文科省がそもそも定めた戦略目標が達成されたのかどうかの評価は、補う必要があるので、戦略目標の評価と書かれています。

【西尾委員】
 私はその方が良いと思います。

【大垣座長】
 はい、分かりました。
 どうぞ。

【片岡委員】
 今のことに関連して、戦略目標の評価、毎年実施となっていますが、毎年実施して、例えば、戦略目標を軌道修正した方がいいとかとなったときに、一方においては、前の年の戦略目標に従って研究領域が設定されて、研究が推進されていますよね。それは、そこには影響を及ぼさないと考えていいんですか。

【岩渕室長】
 基本的には、一度始まった研究というのは、そのときの戦略目標に対して行われているもので、後からそのルールが変わるというのはおかしな話だと思います。その後に定める戦略目標の策定に当たって参考になるような評価を行うことになると思います。

【片岡委員】
 そういうことですよね。そうしないと、現場が多分、混乱すると思うので。

【大垣座長】
 よろしいでしょうか。
 ほかに。どうぞ。

【角南委員】
 ほかの委員の先生方と全く同じような意見ですけれども、やはり戦略目標をどう評価し、どう作っていくかというところが最も難しいところだと思います。恐らく阪さんのプレゼンテーションもありましたし、それからCRDSも同じですが、こうした分析を誰がどう評価して使い戦略を立てるかというところが最も大切です。また、そこが専門性が最も高くなるところです。
 ところが、ここで「戦略」という名前が付きますと、最も専門性が求められるにも関わらず、国家の意思決定がここで使われる専門性とは異なった正当性を求めることが多くあるというのが現実ではないでしょうか。
 そんな中で、多分、最も重要なのは、戦略目標というものは何を意味するのか、報告書ではその意味の範囲をなるべく幅広く読めるように工夫していただきたいと思います。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 どうぞ。

【辻委員】
 改めて、出口ということですが、ここに出口の定義などは記載するとあるのは、かつて配られた参考資料8、これをつけるということですか。注を見ると、「『用途』は『出口』とほぼ同義であり」と書いてあります。1枚目の「はじめに」のところには「戦略的な基礎研究は、用途を考慮する」と書いてあり、出口と同し意味で使っていると思いますが、さらっと「用途」と出てくると、やはり相当狭いイメージになるのではないかと危惧します。あくまでも、「基本的には科学的な根本原理を追求し、公共的・普遍的な性格を持つ新たな知を創出する活動である」ということなんですから。
 定義のところで、用途だとか、未来社会のあるべき姿の達成だとか、いろんな言葉が出てきて、研究者にどういうメッセージを与えるのかなということが気になります。
 それと、念のためですが、「はじめに」の5つ目「学術研究が重要であるとともに、生み出された多くの科学的知見」とあるのは、学術研究で生み出されるという意味ですか。それを発展させるのが戦略的基礎研究なんですね。

【岩渕室長】
 はい。前々回、ボーア、エジソン、パスツールの議論をする際に、ボーア型の非常に裾野の広い研究活動の中から、すぐれた研究者の着想というのが出てくる、その中で、社会・経済に貢献しそうなものを発展させる、展開させるというような意味で、出口を見据える研究という話があったことを、この辺に表しています。

【辻委員】
 これを読むと、なかなか難しいなという感じがいたします。いずれにしても、上の方で出口を限ってしまうと、伝わっていくうちに、どんどん狭くなっていく懸念もありますので、研究者に誤ったメッセージを与えないようにしていただきたいと思います。

【岩渕室長】
 はい。前回も前々回も、この「出口」という言葉をめぐって粒度をどのぐらいにするのかという議論がありましたので、最終的な報告書を書くときには、それが過度に広過ぎずも狭過ぎずもないものとして、我々、「出口」という言葉を使っているんだということは分かるように書き表したいと思いますので、いろいろ御指導いただければと思います。
 また、出口を意識しないということは、これは困るわけですので、「出口」という言葉を何らか使った形で、うまく作文をできればいいなと思っています。

【角南委員】
 パスツール型研究は、非常に基礎的な研究を推進させるのにも役に立っているという議論もあるんですね。ですのでパスツール型の研究、例えば、NIHがいい例かもしれませんが、出口を見据えた研究ですが、実際にはserendipityによりいろんな形で、基礎研究の発展につながるようなところもあることを踏まえてバランスよく書いていただいた方がいいのかなと思います。

【大垣座長】
 ありがとうございます。
 ほかにはよろしいでしょうか。いろいろと御意見、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま頂いた御意見を踏まえて、事務局で論点を再度整理していただくとともに、事務局と相談しながら、報告書(案)を作成したいと思います。次回の検討会においては、作成した報告書(案)の内容について、委員の皆様から御意見を頂ければと思います。
 それでは、最後に事務局より連絡事項がありましたら、お願いいたします。

議題3:その他

【浅井室長補佐】
 次回の検討会の開催日時について御連絡いたします。検討会(第4回)につきましては、既に御案内をしておりますとおり、6月27日(金曜日)、13時からを予定しております。
 なお、机上にございます資料につきまして、郵送を希望される場合は、あらかじめお伺いしております郵送先に送付いたしますので、机上に置いたままにしていただければと思います。

【大垣座長】
 それでは、これにて戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会の第3回を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

お問合せ先

基礎研究振興課

宮澤(内線4120)
電話番号:03-5253-4111(代表)
ファクシミリ番号:03-6734-4074
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