戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会(第2回) 議事録

1.日時

平成26年5月8日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省16階 科学技術・学術政策研究所会議室
〒100-8959東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 戦略的な基礎研究に関するファンディング施策について
  2. その他

4.出席者

委員

大垣座長、阿部委員、有信委員、大隅委員、笠木委員、片岡委員、近藤委員、角南委員、辻委員、西尾委員

文部科学省

小松研究振興局長、山脇大臣官房審議官(研究振興局担当)、安藤基礎研究振興課長、岩渕基礎研究推進室長、浅井基礎研究推進室長補佐

オブザーバー

笹月科学技術振興機構戦略研究推進部長、湯本科学技術振興機構研究開発戦略センター企画運営室長、松原科学技術・学術政策研究所企画室長

5.議事録

【大垣座長】
 それでは、定刻となりましたので、ただいまより戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会の第2回を開会いたします。
 本日は、御多忙の中、また、少し暑くなったというのはちょっとあれですが、温かくなりましたが、お集まりいただき、誠にありがとうございます。
 本検討会は、前回と同様に、原則公開としております。
 まず、本日御出席いただいております委員の皆様の中には初めて出席される方もいらっしゃいますので、事務局より御紹介をいただければと思います。なお、御紹介された委員の皆様は、紹介されましたら一言御挨拶いただければ幸いでございます。よろしくお願いします。

【浅井室長補佐】
 では、本日初めて御出席いただいております2名の委員の方について御紹介します。東レ株式会社代表取締役専務取締役、阿部委員でございます。

【阿部委員】
 東レの阿部でございます。東レで研究・技術開発全般を担当しております。どうぞよろしくお願いします。

【浅井室長補佐】
 東京大学大学院工学系研究科教授、片岡委員でございます。

【片岡委員】
 片岡でございます。私、材料、特に高分子系の有機材料、特にバイオマテリアル、生態系への展開ということを研究させていただいております。どうぞよろしくお願いします。

【浅井室長補佐】
 なお、竹山委員、中小路委員につきましては、本日欠席の御連絡を頂いております。

【大垣座長】
 ありがとうございました。それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【浅井室長補佐】
 本日の資料は、資料1及び資料2、そして参考資料1から8までを用意させていただいております。過不足ございましたらお申し付けください。

【大垣座長】
 よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
 それでは、議題に入る前に、本検討会の主目的について一言申し上げます。前回の検討会におきましては、その最後に小松局長からもお話がございましたとおり、具体的な仕組みの話に入る前に戦略的な基礎研究に関する普遍的な在り方についてある程度押さえることが必要であるという考え方のもとで理念を中心に御議論を頂いたわけであります。しかしながら、本検討会の主目的といたしましては、具体的な仕組みに関するフレームワークを議論するところにございますので、本日はこのフレームワークを中心に議論をいただければと考えております。
 普遍的な在り方につきましては、具体的なものを議論する中で、必要が出てくれば、また議論する時間を設けたいと思いますので、あらかじめ御了承いただければと思います。
 一方、前回の検討会において議論のございました「出口」という言葉ですね。「出口」につきましては、これから具体的な仕組みを議論する上でも重要な概念であり、事務局においてこの「出口」について整理をし、資料を作成したとのことでございますので、事務局からの説明を伺った後で少しだけ御意見を頂きたいと思います。
 それでは、事務局より説明をお願いいたします。

議題1:戦略的な基礎研究に関するファンディング施策について

【岩渕室長】
 それでは、参考資料3を見ていただければと思います。「戦略的な基礎研究に関するファンディング施策について」ということで、前回の会合でお配りした資料ですが、前回御欠席の方もいらっしゃいましたので、この紙の説明を簡単にさせていただいた上で別の資料の説明に移らせていただきます。前回御説明申し上げましたとおり、この検討会では用途を考慮した基礎研究といったところに関心を持っておるわけですが、用途を考慮した基礎研究にはおよそ2つのアプローチがあるのではないかというお話を前回させていただきました。
 左側に赤い字で書いてある「出口を見据えた研究」と、右側の青い字で書かれております「出口から見た研究」と、この2つのアプローチによって用途を考慮した基礎研究が行われるべきではないかと整理させていただきました。
 「出口を見据えた研究」とは、研究者が主体となって社会的な価値を有する目標、出口を見据えた基礎研究を推進するもの。右側の「出口から見た研究」とは、研究者ではなくPMのような方が主体となって、直面する明確な課題の解決、出口のために必要な研究を行うもの。
右側の「出口から見た研究」は、例えば最近総合科学技術会議を中心に設立されたImPACTあるいはSIPのように、国が課題を定めて、そのために課題について深い知見を有するPMの方が推進する研究制度といったもの。一方、「出口を見据えた研究」は、研究者が主体となるものであり、ファンディング施策としては、JSTが行っている戦略的創造研究推進事業のようなものがある。本検討会は、「出口を見据えた研究」に関するファンディングの在り方を議論することが主たる関心事項であるという説明を前回させていただきましたと。
 前回の御議論では、「出口を見据えた研究」というときにいう「出口」と「出口から見た研究」という場合の「出口」というのは、同じ「出口」という言葉を使っているけれども、非常に差異があるのではないかと。出口の粒度であるとか、そうしたものについて違いがあるのではないかと。この辺をきちっと押さえた上で、今後「出口を見据えた研究」という議論をしないと混乱するのではないかという御指摘を頂いたところです。
 そうしたところを整理するため、1枚資料を作らせていただきました。参考資料の1番です。前回の御指摘を踏まえまして、「出口を見据えた研究」における「出口」のイメージと「出口から見た研究」における「出口」のイメージというものを対照的な形で表現したらどうなるかということをまとめたものです。
 左が、本検討会における関心事項である「出口を見据えた研究」における「出口」のイメージです。これは、研究者が主体となって行われる研究であって、未来社会のあるべき姿の達成を見据えて行う研究というふうに言えまる。すなわち、研究者が見据える先にある未来社会のあるべき姿、これを達成することというあたりが出口ということになってくる。
 一方、右側の「出口から見た研究」は、研究者ではなく、PM、ニーズ、課題を認識されている方が主体となってくる。PMの方が認識されている現在直面している課題、これを解決すること、これが出口ということになる。
 「出口」の粒度という観点で見ますと、「出口を見据えた研究」における出口の粒度というのは、恐らく広がりがあるもので、未来の社会のあるべき姿というような形で設定される出口ということになる。「出口から見た研究」といった場合の「出口」の粒度というのは、非常にシャープなものになってくる。直面する課題として具体的に切り出される、明確に切り出されるような粒度の出口ということになる。このような相対的な差があるのではないか。
 また、「出口」の実現までのプロセスも、若干の違いがある。「出口を見据えた研究」においては、出口の実現までの時間が相対的に長いと想定される。出口への道のりとしても、研究者の優れた着想から広がりを持って、点から広がっていくような形で発展していく。一方、「出口から見た研究」における、「出口」の実現というのは、出口の実現までの時間は相対的には短い。また、出口が明確に切り出されており、出口の1点に向かって収束するような形で研究が進捗していく。このような出口の実現の仕方がなされるものではないか。このような差があるのではないか。
 出口の具体的な例ですが、「出口を見据えた研究」のタイプの例ですと、「イノベーション25」という閣議決定が2007年当時にございました。当時2007年から見て18年後に当たる2025年におけるイノベーションで拓く日本の姿というものが出口としてこの文書では言われておりました。人工知能を有するロボットによる家事負担軽減のような形で出口が示されていました。また、我々の例で申しますと、JSTの戦略的創造研究推進事業という中で、戦略目標、まさにこの議論をこの検討会ではしているわけですが、例えばエネルギー利用の飛躍的な高効率実現とこのための相界面現象の解明や高機能界面創成等の基盤技術創出という出口を設定させていただいておりました。
 一方、「出口から見た研究」における出口のイメージということで、最近の出口の例を幾つか例示させていただきました。例えば最近の閣議決定の中から見てみますと、世界最先端IT国家創造宣言の中には、8Kのテレビ放送を2016年に放送を開始する、このための技術実証というものを進めていく必要があるという形で、技術開発の目標設定がなされている。これは2013年の文書で、2016年をターゲットにしたもの。
 あるいは、総合科学技術会議の議員でもあられる内山田トヨタ自動車会長が「月刊経団連」の最近の「『出口』から引っ張る科学技術イノベーション」という寄稿の例で申しますと、プリウスの例で、1994年段階で、97年中、3年後に燃費を2倍にした車を発売する、これを出口と設定して、そのための技術開発を進めていくという例を挙げておられる。
 この検討会におきましては、出口を見据えた研究についての戦略を今後議論いただくわけですが、そこでいう「出口」とは、この表に表されたようなイメージを我々としては持っており、こういう考え方がそもそも良いのかどうかを含め少し御意見をいただければと思います。
 以上です。

【大垣座長】
 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明の内容につきまして、10分程度でございますが、時間を押さえて、委員の皆様から御意見をいただければと思っております。参考資料の1と参考資料の4でございます。主に参考資料の1でございます。いかがでございましょうか。どのような観点からでも、御注意の点、あるいは御感想でも結構ですが、いかがでしょうか。

【有信委員】
 閣議決定の内容の説明がありましたけれども、例えば4K、8Kと、こうあるんだけど、4K、8Kという言葉はいいんですが、こういうところで表現するときは、例えば4Kというのは意味があるんですよ。つまり、ハリウッドが実際の映画館で銀塩フィルムレベルの映像を映画館で見るのに十分だと言われているのが4K、2Kなんです。8Kというと、これはもう意味がない、そういう意味からすれば。だから、8Kというのはまた別の目的がなければいけないんですね。つまり、伝送量の問題だとか、その克服のターゲティングの仕方が違っているんですよね。言葉からすると、4K、8Kというと2倍になっているから分かりやすいんだけど、こういうところに書くときはそこを注意して書いてもらわないといけないなという気がするのは、なぜかといいますと、科学者というのは基本的にはエクストラポレートにやるわけですよ、技術とか科学というのは。つまり、数字が2倍、4倍、8倍というようにね。そのエクストラポレートな目標を立てがちなので、そちらに引きずられていくと、本来のイノベーションの方向と外れてしまうんですね。それが現代起きているいろんな問題になっていると私は個人的には思っているので、是非この辺の表現はもう少し注意深くやってください。よろしくお願いします。

【大垣座長】
 ありがとうございます。それでは、笠木委員。

【笠木委員】
 参考資料の1ですけれども、出口について2つの意味合いをここに書いていただいたので、大分はっきりしてきたと思って伺っていたのですが、一方で若干懸念があります。片方は研究者が主体で、片方はPM、PDが主体だというところですね。これがまず第1点。「出口から見た研究」の場合も、PMが1人いたら、あとは自然に研究者が集まって動くかというと、そんなことはなくて、やはり主力はそこに参加する研究者ではないかという点でね。一方、「出口を見据えた研究」の場合も、先ほどCRESTの例を出していただきましたけれども、ここにも領域総括がいて、これをPDというのか、POというのかわかりませんけれども、そういう方がいて、統括をして、ある方向に持っていこうとしているわけですね。ですから、絵にして描けばこういうふうに分けられるのかなと思ったんですが、一方でそれほど単純ではないということかと。
 もう1点は、「出口から見た研究」にImPACTとSIPが該当するということになっていますね。SIPの方は、それでいいのかなと思いますが、ImPACTの方は、5つの領域で、研究者の側からはむしろPMを募集したところ。そして、その中身は、必ずしも短期的なことを狙っているわけではなくて、やはり飛びの大きい、しかも社会経済的に非常にインパクトの大きいブレークスルーを狙うような研究を募集したわけですね。そうだとすると、当然5つの分野で、ものづくりとか、エネルギーとか、ICTとか、あるいは健康ですかね、それらはやはり未来のあるべき姿の大括りな狙いを示していて、そこに研究者が応募した形になっているので、このように左右に分けたときに、右側の方はSIPとImPACTで、左側は従来の戦略創造事業だと、切り分けられるかどうか少し懸念があるんですね。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。ほかには御意見いかがでしょうか。どうぞ。

【片岡委員】 
 僕はこの前ちょっと出てこなかったんですけれども、出口はすごくよく分かって、だけど、研究の場合は、当然入り口があると。それで、入り口は何なんだろうというと、普通のリニアモデルだと知的好奇心とかという話になるんですけれども、でも、いつもそうとは限らないというか、つまり、入り口、社会経済的な課題が入り口の場合もあるのかなと思うんですね。だから、右と左と分けてありますけれども、どっちかというと、現在直面している課題を解決しようということで、総力を挙げてそれを解決すると。だけど、もちろんそうなんですけど、これをもうちょっと長期的に見たときに、例えば山火事か起きていると。そうすると、すぐ消さなきゃいけないというのもあるけれども、一方においては、何でそこで山火事が起きるんだろうかということを考えると、例えば地形が悪いんじゃないかとか、それから、植林の仕方が悪いんじゃないかとか、例えばもっと根本的な問題に行く可能性もあるんですよね。そうすると、それを解決すると、もっと広がりのある出口が出てくるというか、まあ、左側のイメージですね。
 だから、要するに、右と左というふうに分けたんですけれども、一方においては、現在直面している課題を解決しようということでスタートして、多分笠木先生が言われていることにも対応するのかもしれませんけれども、そこからよく考えていくと、もっと根本的なところを変えるべきであると。それを要するに出口と設定することによって、もっと未来が変わるという、循環するというんですかね、何かそういう考え方もあるのかなと。ですから、入り口もやっぱり必要なんじゃないかという気がするんですけれども。

【大垣座長】 
 どうもありがとうございました。どうぞ。

【角南委員】 
 今のお話とも関連しますが、出口というものの定義は大分クリアになってきたかなと思いますが、「出口」の粒度と「出口」の実現というところで、これが余りにもきれいに分かれ過ぎてしまうと、いわゆる省庁の役割分担みたいに整理されすぎてしまいます。最もやらないといけないのは、国がハイリスクな研究をどうサポートしていくかです。
 一番重要なのは、出口というものは何かを基本的には共有していれば、あとは柔軟に運用していけるような制度設計になっていることだと思います。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。もしも特にあれば。よろしくお願いします。

【阿部委員】 
 こういう基礎研究で出口を余りイメージし過ぎると、かえって余りよくないのではないかなというような気がいたします。というのは、我々の企業の中におきましても、例えばカーボンファイバーの研究は1961年から始めたわけで、そのとき明確な出口があったかというと、なかったと思うんですね。ただ、カーボンファイバーというのは強くて軽くてさびないから構造材料にはいいだろうなというぐらいのことと、当時から飛行機は飛んでいましたけれども、更に飛行機はたくさん飛ぶだろうと。それぐらいの大きな時代観はあったかもしれないけれども、余り出口志向ではなかったということだと思うんですね。本丸は航空機だったんだと思うんですけれども、なかなかそれだけではつないでいけないので、ゴルフシャフトとか、目先の事業を作りながらやってきたと。それから、水処理膜も同じだと思うんですね。人口はだんだん増えていくから、水は将来足りなくなるだろうなということで、1968年から研究を始めて今に至っていると。企業でこういう状態ですから、大学が余り出口、大学に限らないかもしれませんけれども、出口志向をし過ぎると、実につまらない研究しかできないと思うんですね。
 ですから、我々の企業の中でも、25%ぐらいは、何に使えるか分からないけれども、とにかく技術的には世界で一番になれるという技術を目指しているということですから、その辺、出口のイメージの分類学もいいんですけれども、やはり先の見えない研究をどう進めるのかと、どういうモチベーションで研究者のモラルを上げていくのかということが一番重要なんだろうなと思っております。
 前回出ていないのでピントの外れた意見かもしれませんけれども、以上でございます。

【大垣座長】 
 ありがとうございました。ちょうど皆さんが発言された内容が次の議論にそのままつながっていくと思いますので、この議論はこのぐらいにさせていただいて、次のものに移りたいと思います。
 それで、事務局で今の参考資料1の考え方は改めて整理していただくということで、冒頭に申し上げましたとおり、戦略的な基礎研究というものの普遍的な在り方に関する部分につきましては、本検討会では具体的な仕組みについて議論する過程で、必要があればまた立ち返るということにいたしたいと思います。
 そこで、本来の仕組みに関連するところでありますが、議題1の「戦略的な基礎研究に関するファンディング施策について」に移りたいと思います。事務局よりまず資料1について説明を頂き、その後、委員の皆様から御意見を伺いたいと思います。
 それでは、説明をお願いいたします。

【岩渕室長】 
 資料1をごらんいただければと思います。
 戦略的な基礎研究、特に出口を見据えた研究をやる上で、出口といいますか、未来社会のあるべき姿というものを目標として掲げていく必要があるわけです。「戦略ビジョン」とここでは仮称しておりますけれども、こういう戦略ビジョンを文科省は策定してこういうファンディングを運営していかないといけないわけです。この戦略目標、戦略ビジョンの策定の仕方については、これまで明示的なレシピ、策定方針というものがなかったわけです。戦略目標は毎年度文部科学省において決めてきたわけですが、この戦略目標、戦略ビジョン、この策定に関する方針を、この検討会では是非御議論を頂きたいと思います。
 戦略目標の立て方についてこの検討会でいろいろ御意見を頂きましたならば、その戦略目標の立て方のレシピを踏まえて、文部科学省の方でその目標を実際に作る仕事をしていきたいと考えています。
 この検討会、6月まであと2回の開催を予定しておるわけですが、議論の主たる部分は、戦略目標を文部科学省がどう作ればいいのかという作り方のところに集中していただくということかと思っています。この資料1でいいますと、一番上のコマでございます。「本検討会における対象」ということで、「戦略ビジョン(仮称)策定に係る基本方針」の部分を御議論いただいているわけです。文部科学省が戦略目標、戦略ビジョンを策定するに当たってのプロセスは、どのようなものであるべきか、あるいは、文部科学省が戦略ビジョンを策定する際に留意すべき事項はどういうものなのかについてこの場で様々な御議論をいただければと思っています。
 全体の戦略的な基礎研究、JST戦略創造事業のフレームワークをこの資料1の全体で表現させていただいていますが、この検討会で策定基本方針を作っていただきましたならば、文部科学省としては、戦略ビジョンの策定基本方針を踏まえて、個々具体的な戦略目標、戦略ビジョンを今後策定していきたい。例えば今年の場合でいいますと、今年の6月までにここで基本方針をこの検討会で御議論いただき、7月以降、直ちに来年どのような目標を立てるべきかという議論を文科省内で、NISTEPやJST、あるいは研究開発戦略センター、そうしたシンクタンクの方々とともにしていきたい。
 文部科学省がこうした戦略目標、戦略ビジョンを具体的に策定しますと、それに基づき、ファンディングの実施機関である科学技術振興機構、JSTが実際に研究領域を設定し、研究総括を選任し、具体的な研究のプロポーザルを募集する、公募のプロセスを行う。公募のプロセスによって具体的な研究者が選任され、各研究領域におきまして研究が推進される。
 ここまでがPLAN、DOのところです。右側に行きまして、研究が行われれば評価が行われる。研究領域ごとの評価というプロセスをJSTで行うことになっております。PDCAを回すには、その後に、戦略目標の立て方自体が正しく行われたのかどうかというレビューが恐らく必要だと考えております。これはこの検討会で行うのか、別の審議会で行うのかというのはあるかもしれませんが、戦略ビジョンそのものの評価と、戦略ビジョンの立て方の評価も、審議会あるいはこの検討会の中で行っていただくということで、評価のプロセスを設ける。その評価の結果、戦略目標、戦略ビジョンの策定の方針、作り方に変更を迫るような評価結果が得られましたら、ここで今、6月まで御議論いただく基本方針を、さらに、来年、再来年と見直していく。こういう形で、この戦略目標の策定のプロセス、PDCAを回していきたいと思っております。
 これが全体のPDCAサイクルで、この検討会、6月までのあと2回の会合におきましては、一番上の戦略ビジョン策定に関する基本方針の部分を議論していただくということで、後ろの資料を用意しています。
 以上でございます。

【大垣座長】 
 ありがとうございました。それでは、ただいまの資料1に関する説明の内容につきまして御意見をいただければと思います。ちょっと言葉を足しますと、今対象となっている「戦略ビジョン(仮称)策定に係る基本方針」のところの中身については、次の資料でまた説明がございますが、資料1の全体の位置づけに関しまして御意見があれば頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。
 よろしいですか。続けて策定の資料2に入りましょうか。それで併せて御議論いただくということで、それでよろしいでしょうか。
 それでは、資料の2について説明をお願いいたします。

【岩渕室長】 
 資料2を御説明しますが、前回御欠席の方もいらっしゃいましたので、参考資料4を先に見ていただければと思います。これは前回の資料です。今申し上げました出口を見据えた研究へのファンディングを進めるに当たって、戦略目標、戦略ビジョンを策定していくプロセスを体系化していく必要がある。体系化された策定基本方針を確定する必要がある。こういう議論が前回あったわけです。
 参考資料4では、戦略ビジョンの策定のプロセスとしては、STEP1、STEP2、STEP3と3つぐらいのプロセスから成るのではないかということを前回御説明させていただきました。
 「出口を見据えた研究」は、まず優れた研究者の着想に起点を持ちながら出口を見据えていくというタイプですので、目標作りの第1ステップは、まず研究者の優れた発想がどこにあるのかというところ。「我が国の研究動向及び世界の研究動向の俯瞰」というふうに書かせていただきましたが、まずここをやるのが出口を見据えたタイプの研究の目標作り。
 STEP1はいわゆるエビデンスベースで、研究動向を俯瞰するという部分でしたが、なかなかエビデンスだけでは研究者の優れた着想のありかを突きとめることは困難ということもまた言われているわけです。STEP1を補うために、STEP2として「最先端の研究者等の知の糾合」というプロセスがあるのではないかと前回御説明させていただきました。これはエビデンスというよりはインタビューのような形で有識者の方の御意見を伺いながら、サイエンスのフロントラインはどこにあるのかヒアリングなどをしながら、文科省として注目すべき研究動向を同定する必要がある。
 ここまでは優れた研究の着想のありかを探していたわけですが、これは「出口を見据えた研究」の目標策定プロセスですので、出口とマッチングするというプロセスが目標作りにおいても必要です。STEP3、目標作りのSTEP3としては、「科学的な価値と社会経済的な価値の創出を両立するビジョンの抽出」ということで、研究者と産業界等のユーザーの対話というプロセスの中から、社会経済的価値と両立するようなもの、そういうビジョンを抽出するプロセスが必要だと前回紹介させていただき、御議論を頂きました。
 その御議論も踏まえながら、参考資料4の1枚紙を更に詳しく書かせていただいたものが資料2でございます。1枚目は、ほぼ、参考資料4と同じことを書かせていただいております。STEP1として、1-1、1-2ということで、我が国の研究動向の俯瞰と世界の研究動向の俯瞰ということを赤い字で書かせていただいております。先ほどSTEP2と紹介させていただいた最先端の研究者の知の糾合というプロセスをこのローマ数字の2というところで、書かせていただいております。STEP3と先ほど御紹介した社会経済とのマッチングにつきましては、ローマ数字の3のところで書かせていただいております。
 この議論を前回させていただくときに、それとは別に、出口の粒度というものが大事ではないか、戦略目標をどのような粒度で設定するのかが大事だという御指摘がありましたので、資料2では、ローマ数字の4ということで、「出口を見据えた研究」を推進するに当たり、適切な戦略ビジョンを設定する。そのときに、研究者のモチベーションを高めるようなものを設定するということの中で、目標の粒度論のようなものも論点の1つとして挙げさせていただいておりました。
 前回の繰り返しになりますが、我々としては、「出口を見据えた研究」に関するファンディング施策における戦略目標、戦略ビジョンの策定基本方針については、このようなSTEP1、2、3粒度に関する留意事項、こうしたものを定式化して戦略目標の策定レシピにするということを考えているわけです。こうした考え方が基本方針だということでいいのか、欠けている観点などがないのか、まずこれが御議論いただきたいことの1点目とになります。
 このSTEP1、2、3という考え方がよろしければ、それぞれのSTEPごとにSTEP1-1、1-2、STEP2、STEP3、4ということで、5枚の紙をそれぞれ付けています。個々のSTEPについて、こうした形で戦略目標作りをしていくということでよいのかどうかということで紙を付けておりますのでこのそれぞれについても御議論をいただければと思います。例えば、1-1、「我が国における大学等の研究動向を網羅的に把握する」というSTEPについて、具体的にその目標の策定方法について我々のイメージを書かせていただきました。ここは我が国の大学等の研究動向を網羅的に把握するための手法で例えば我が国の科研費等で得られる成果報告書であったり、論文、こうしたものを隈なく収集する。データベースのような形でこれを整備し、このデータベースをマクロ的な視点で解析する。キーワード解析、トピックマップの作成、そうした形で科研費の成果等の情報を収集、分析・解析することで、我が国の研究動向を網羅的に把握できるのではないか提案させていただいています。こうしたことについて妥当なのかどうか。
 次の紙ですが、1-2、「世界における大学等の研究動向を網羅的に把握する」ということで、サイエンスマップについての紙を書かせていただいております。世界における大学等の研究動向を、我が国における動向と同様に把握する必要があるわけですが、世界における研究動向の網羅的把握ということについては、我が国においては、科学技術・学術政策研究所の方で、サイエンスマップという形で、世界の研究動向を可視化する手法を既に開発しておられます。既にこうした方法が手元にございますので、こうしたものを最大限活用しながら、世界における大学等の研究動向、これを把握してはどうかここでは提案させていただいております。
 サイエンスマップについて説明がこのページの下の方に書かれておりますけれども、サイエンスマップとは、このようなステップで科学研究の世界の動向変化を定期的に観測することを目的に策定されているものです。具体的にはトムソンロイターの論文のデータベースをもとに、被引用数が上位1%であるような高被引用度論文、こういうコアペーパーをもとに、そのコアペーパー同士の関係を共引用関係をもとに類推しながら、注目すべき研究領域がどこにあるのかをサイエンスマップという形で可視化する手法であります。こうした方法を我々の「出口を見据えた研究」の目標作りに活用できるのではないかということの御提案です。
 次に、2、「着目すべき研究動向を同定する」ということです。今の科研のデータベースや、あるいはサイエンスマップは、いわゆる形式知に基づく分析ですが、形式知のみでなく、着目すべき研究動向を同定する際には、やはり生きた知を取り込む必要があるのではないか。シンクタンク機能を有するような機関や最先端の研究者などに対するヒアリングを行って、より生きた知を吸収した上で、最終的に着目すべき研究動向を同定すべきではないかということ、STEP2のことを書かせていただいております。ここで課題になりますのは、ヒアリングという際に、どのような母集団、対象に対してどのような問いかけをなすべきか。ここはエビデンスベースではないところですので、問いの立て方、あるいはヒアリング対象の設定の仕方が目標作りにおいて重要な要素となるのではないかと考えております。ここでは仮にヒアリング項目の例として4つぐらい挙げさせていただいております。例えば現在の日本における研究で強み、弱みというのはどこにあるのか、あるいは、最近最も着目される研究領域を挙げるとしたらどういうものなのか、あるいは、日本として力を入れるべき領域というのはどういうものなのか、あるいは御自身の専門分野以外で注目されるべき研究動向はあるのか。こうしたヒアリングを最先端の研究者の方々に行うことによって、エビデンスだけでは得られないような優れた着想のありかを見いだしていくことはできないかということです。
 どのような対象に対してヒアリングを行うべきかという例を下の方に書かせておりますが、今議論しています「出口を見据えた研究」としては、JSTの戦略創造研究事業がありますが、JSTの中にも研究開発戦略センターというシンクタンク機能があり、そこに吉川弘之センター長はじめ、我が国の英知が集まっておられます。そうした知見、そうした方々に意見を聞く、あるいは学振の学術システム研究センター等々、我が国には優れたシンクタンク機能が多数ございますので、こうしたところにお伺いしながらエビデンスベースの補完をきちっと行うということをしてはどうか。ということで、ヒアリング項目、あるいは対象についても御議論いただければと思っております。
 STEP3、「社会経済への貢献を推量する」というステップですが、「出口を見据えた研究」においては、研究として優れていることや注目が集まっていることのみでは不十分であり、社会経済にどのような形で貢献し得るのかを推量するということが極めて重要なわけです。
 こうした社会経済への貢献を推量する手法については、例えばJSTの研究開発戦略センターの方で吉川弘之先生のもとで未来創発型のアプローチといったことが行われているわけです。未来創発型のアプローチとは、注目すべき先端的な研究動向から洞察される社会像を描き出し、さらに、その社会像の実現に必要な技術シーズや社会制度等と結び付ける、これを「邂逅」と呼んでおられますが、これにより研究開発戦略のテーマ候補を選定するプロセスということです。このアプローチは、下の方に書かれておりますが、今考えている「出口を見据えた研究」における目標設定のプロセス、社会経済への貢献を推量する仕組みとして非常に参考になるのではないかと考えております。
 下のほうに書いてありますのがJSTの研究開発戦略センターで作られていることの抜粋でございますけれども、「未来創発型アプローチにおける検討枠組」ということで、社会と研究者の邂逅というのは3つの段階からなると御提案されています。第1段階としては、研究者と産業界等のユーザーを混合したワークショップを行うことにより、研究動向から端を発して、将来、5年から20年後の間に実現するトレンドを推定するというプロセス。第2段階としては、第1段階のワークショップの結果を踏まえて、さらに、邂逅の場を設けて、トレンドから実現し得る社会の姿、ビジョンを想定する。第3段階として、ビジョンからまた一旦研究動向に立ち戻りながら、ビジョンを達成するためにどのように進めていけばいいのかデザインをする。そういう形で、順次、ニーズ側とシーズ側の邂逅を図ることによって、優れた研究の着想が社会経済に貢献する仕方を推量することができるという御提案で、こうしたものを我々の目標作りのプロセスとして取り入れられないかということを思っているわけです。
 最後の4「適切な戦略ビジョンを設定する」というタイトルですが、以上のSTEP1、STEP2、STEP3までのプロセスを取るにしても、最終的に設定する戦略目標、戦略ビジョンの粒度をどのように設定するかという課題が残るわけです。冒頭の出口論で言えば、出口の粒度ということで、この出口の粒度をどのように設定すべきか非常に悩ましいところです。この検討会で御議論いただければと思いますが、一般的には、戦略ビジョンが求める内容が過度に先鋭化されていれば、研究が萎縮してしまうことがあり、成果が矮小なものになってしまう。先ほど阿部委員の方から御指摘があったような懸念がある一方で、逆に戦略目標が求める内容が曖昧になり過ぎますと、この研究が制度の趣旨と異なるものになってしまうという可能性がまたある。恐らく戦略目標、戦略ビジョンに求められる粒度には、適切な水準があって、それをうまく見いだすことが必要。こうしたものを御議論いただければと思います。
 下の方に戦略ビジョンの粒度ということで模式図的に書かせていただきました。戦略ビジョンは、ここは「出口を見据えた研究」ですので、社会経済的な出口の側の粒度と出口を見据えていく研究者の着想の粒度の組合せになると思いますが、例えば社会経済的な目標、出口といっても、青い右上にありますように、地球温暖化の防止といったような、非常に広い、あるいは抽象的なこうした社会経済的な出口のイメージもあり、あるいは左側の青い丸、左上の青い丸のように、水素の貯蔵密度50%の向上というような形で、非常に具体的な目標を描くことも可能なわけです。
 また、取り組むべき研究、着目すべき優れた研究者の着想ということについても、この赤いところにありますように、ただ右下の薄い赤い色で書いてあるエネルギーシステムの構築といったような研究領域を設定するのか、はたまた左側の下の方にある濃い色の赤い字で書いてある新規有機ハイドライドの合成といった形で研究領域を設定するのか。こうした青い丸のレベルでどの粒度を設定するのか、赤い丸のレベルでどのような粒度を設定するのか。こうしたデザインというのは極めて大事になってくるわけで、この粒度についても御議論をいただければ有り難い。
 用意した資料の説明は以上でございます。

【大垣座長】 
 御苦労さまでした。ただいま資料1と資料2を説明していただきました。途中、最初に議論があった出口とか粒度とかいう言葉をそのまま使っていますが、その上で、この資料の1と2に関しまして御議論を頂きたいと思います。本日の予定は、議題はこれで全てですので、十分時間はございますので、御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。いろんな観点が入っていますけれども、多分それぞれ関係しますから、どのような点からでも結構ですが。どうぞ。

【西尾委員】 
 資料1のPDCAサイクルの図について確認をさせていただきたいのですけれども、私は説明とはもう少し違うことを考えていて、審議会というのは戦略ビジョンの策定の基本方針だけではなくて、策定そのものにもかかわってくるというようなイメージを持っていました。審議会というのはそうではなくて、基本方針、例えば今回示されているSTEP1からSTEP3のような方針で戦略ビジョンを策定するということを審議し、その後は、文部科学省の方にその方針の基での策定を委ねるというのがこの図の解釈と考えてよろしいですね。

【岩渕室長】 
 資料1はそういう趣旨です。

【大垣座長】 
 よろしいですか。ほかには。

【笠木委員】 

 少し話が戻って、最初のところで1点と、後半のことで1点。先ほど角南委員から、2つのスキームが混ざってやってもいいのではないかという指摘があったと思います。そこで、私も誤解していたかもしれないと思ったのですが、最初に示された、具体的な社会貢献を意識した研究開発はどうあるべきかということを「出口を見据えた」と、「出口から見た」の2つに分けたということが主旨であって、そこに現存のファンディング・スキームがどう入るかということは二の次の話で、無理やり当てはめる必要はないと理解すればいいでしょうか。つまり、そもそも出口を意識した研究開発というものは、社会的な期待の側から見たものと、いわば非常に動きの速い科学の方から見たものと2つあり得る、ImPACTもSIPも、最近は科研費も出口を意識している部分もあるわけですね。そうすると、それらを無理やり分ける必要はなくて、本来、社会貢献が期待される国の研究開発というのは、大きく分けると2つのスキームがあり得ると。したがって、文科省でおやりになるということであれば、特に基礎研究に重点を置いたスキームを探そうという、そういうふうに理解すればいいのかなと私は思いました。
 そうだとすれば、例えば内閣府でやるものであれば、分野横断的なことがあって、府省、省庁連携が当然求められるし、経産省でやるのだったら、開発に重きを置いたものになるかもしれない。文科省と経産省が連携すれば、そういう繋がりが重要となる。したがって、本日の御説明は、2種類の社会貢献を目指した研究開発の在り方があるということを、粒度も含めて示していただいたと理解すれば、非常に分かりやすくなるのかと思いました。
 もう1点は、先ほど審議会の役割もありましたけれども、この一連のサイクルの中で、政策ビジョンの決定プロセスのところが一番大事です。具体的に課題あるいは領域を抽出するというのは、我々CRDSの方でも経験があるので、これはある程度やっていけるかなと。ところが、それが複数出てきたときに、今までは省内検討プロセスの中で選択をされたと思うのですが、それは外の人には全然見えなかったわけです。なぜその課題が選ばれたのか分かりません。これについても、我々検討した経験がありますが、複数の課題の中でプライオリタイゼーションをどうするか、重点付けをどうするかということですね。それを論理的なプロセスで進める方法を検討したのですけれども、いわゆる科学技術としての視点だけで課題を評価するのではなくて、現在の政策との親和性とか、公的な資金を投入しなければ科学としての発展が望めないつまり、民間に任せるのではなく、国が率先して投資をして進めるべき課題なのかどうかとか、国際比較をしたとき、日本が非常に強いからもっと伸ばそうというのか、弱いから伸ばそうというのかとか、あるいは、この科学研究を進めることによって人材育成が大いに進むかどうかなど、様々な観点があると思うんですね。そういう複数の視点からも評価した上で、最終的に領域課題のプライオリタイゼーションをしていくことが重要です。文科省で最終的に責任を持ってお決めになるのは当然ですが、それが外からも分かりやすい形になっているということが非常に大事です。その際、審議会というようなものが、適切なアドバイスをする機能を果たせるかどうかも重要です。ただし、科学者自身が研究費を受け取る側なので、国民から見たときに、科学者がお手盛りでやっているように見えないこともないので、十分注意しなければいけないですね。
 いずれにしましても、そういう最終決定をするプロセスをもう少し明確に決めておかないと、これだけの仕掛けを作ってもうまく動かないのではないかという気がいたしました。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。今のお話は、資料1の左の上の2つの箱のうち、一番上は公開で今議論をやりますが、その下のところも少し透明性を高める必要があるというふうな御意見というふうにまとめてもよろしいでしょうかね。

【笠木委員】 
 はい。

【大垣座長】 
 どうぞ。

【大隅委員】 
 このようなプロセスで進めるという方向の大筋において合意いたしますが、1つ危惧いたしますことは、国民目線的な、本当に社会として皆さんがあるべき姿はこういうことだよねというのが理解されているようなことに関して、研究動向というものではかってしまうと、なかなかそれが見えてこないというか、置き去りにされてしまうような、そういった分野というのがあり得るのではないかということです。例えば具体的にどういうことを想定しているかと申しますと、少子化がどんどんとまらない状態になっていて、その影響というのがいろいろなところに恐らく表れていると思われるんですけれども、少子化と並行して起きていることで、例えば発達障害、自閉症等のお子さんが30年間で50倍ぐらいに増えているというデータがあり、このような子供たちの中には学習障害などがあって、将来的に就業困難な方もあり、少子化に加えて更に労働人口が減少することが懸念されます。そういったときに、子供が生き生きとした社会というようなのが例えばあるべき未来の社会像というのであったとして、でも、それをこういった、トムソンロイターでも、何でもいいんですけれども、形式的なやり方で見えてくるものというのは、本当に遠い将来の出口というものが見えるのではなくて、これは現在からほとんど数年後ぐらいまでのところしか見渡せないのではないかと思うんですね。やはり国の施策で立てるべき方針というのは、放っておいたら誰もやらないようなことに目を向けさせるということも非常に大事だと私は考えるんですけれども。つまり、研究者は、自分の次のポジションであったり、次の業績であったり、そういったことの競争にさらされながら生きておりますので、本当に目指すべき出口みたいなことを研究者側から、お題目として言葉で書くのはいいんですけれども、それはできるかもしれないんですけれども、本当にそういったことに向かうにはどうしたらいいか。しかも、それも、例えば自閉症児が30年で50倍増えたということの中の原因としては、社会的なこともあり、生物学的なこともあり、恐らくそういったことがミックスされているわけで、そういうこれまでの既存のアプローチではなかなか解けないような課題についてはどんなふうに攻めていったらいいかということに関して、御提案になったやり方だけで大丈夫かというあたりが少し気になりました。
 以上です。

【大垣座長】 
 よろしいですか。特に今の時点ではいいですか。

【岩渕室長】 
 「出口を見据えた」と「出口から見た」と、理念型として一旦分けますと、今議論しているものは「出口を見据えた」ですけれども、もちろんオーバーラップする部分もあって、そういう意味でいうと、府省連携の形が必要だろうと思います。ただ、あえて理念型とすると、こうなるだろうというもの。
 あえて理念型を御提案したのは、「出口から見た研究」と「出口を見据えた研究」で、目標の策定プロセスが若干順番が変わってくると思ったから。すなわち出口を見据えたタイプ、今議論したものは、まず研究動向を分析し、その後社会のニーズと邂逅する。こういう順番で目標を立てていくと。逆側の「出口から見た研究」になりますと、目標設定、典型的には業所管の官庁さんで言えば、まずトンネル必要、トンネルの強度を高めるためにはこういう掘削技術が必要、という形で、まず課題を抽出し、その後、それに必要な研究動向を類推するということで、多分目標の策定プロセスが違う。「出口を見据えた研究」に最適な目標策定プロセスは何なのかを理念型で一応整理しようと思い、あえて分けた。もちろん分け過ぎることはできないわけで、その辺は十分運用の中で注意しないといけない。
 大隅先生の観点で言えば、恐らくSTEP3として御説明したニーズとの対話ですが、この説明の中で、産業界等のユーザーというところだけが強く出てしまった感じもあって、恐らくより多様なユーザー層というのがおられる。社会団体みたいなものもあるかもしれない。ニーズ側の取り方をどのように工夫するのか、この邂逅のプロセスの設計の仕方に関する宿題なのかなと受けとめました。
 以上です。

【大垣座長】 
 どうも。今の3のところに公的な利益というか、公益とか、そういう部分が多分御指摘の1つとして入ってくるのかなという気がします。
 じゃあ、近藤委員、どうぞ。

【近藤委員】 
 全体としてはこれでこういう姿かなと思うんですけれども、その中でちょっと確認したいことが幾つかありまして、戦略目標、今まで戦略目標で、研究領域、今回、戦略ビジョン(仮称)、新しく戦略ビジョンとなったわけですけれども、この考え方の違いのイメージですね。戦略目標と戦略ビジョンの違い、これを作るのは非常に重要だということで今議論していると思うんですけれども、そこで今までの文科省の中の理解として、今まで言っていた目標というのと今回のビジョン、ここでは大きく変わったと考えているところをまず教えていただきたい。

【岩渕室長】 
 今までは目標という言葉について、「出口から見た研究」の目標なのか、「出口を見据えた研究」の目標なのかということを余り意識せずに使っていた部分もあった。こう明確に理念型を2つに分けて考えてみますと、目標という言葉が非常に具体的に現在の課題を指し示したような印象を与え、「出口から見た研究」に最適な言葉なのかという印象を受けた。何かほかの言葉で「出口を見据えた研究」における出口を表現できないか。目標ではない言葉ということで、ここでは戦略ビジョン(仮称)と書いた。そういう趣旨ですが、基本的に、今までやってきた戦略目標と違うことをあえて言おうとしているわけでもないということです。

【近藤委員】 
 そういうことですね。わかりました。それが1つ確認で、次のビジョンの策定のところというのは、1、2、3の複合的な仕事をかなりプロフェッショナル的にしていかなきゃいけない部分が出てくるかと思うんですけれども、ここをどういうふうな形でやっていくかというのは多分非常に重要なところだと理解するんですね。先ほどからありましたように、解析すればいろんな結果が出ますよね。さっきありましたように、じゃあ、強いところを強くするのか、弱いところを強くするのか、先駆け的なところを行くのか、それからある程度キーワードがたくさん出てくるところをやるのかというのは、多分そこが大きなところになりまして、ここを継続的にブラッシュアップできる仕組み、文科省と書いたこの箱の中ですね。それともう一つは、後ろの方でチェックするときのやり方なんですけれども、1つは、その年に作った、これはビジョン、戦略ビジョンというものがちゃんと策定されているかというチェックもあれば、しばらくしてしか分からない結果もあるわけですね。本当にそのときその段階でやったことが正しかったのかというのを、その段階では分からない。多分その年にやったって分からないというところがあるわけですね。
 ですから、このチェックというところも、違うレベルのチェックがないと多分このプロセスが、特にこの策定のところのインプルーブにおいては、その幾つかを混ぜてできないんじゃないかという気がするわけですね。今年作ったこれは、我々が例えば議論したこの基本方針と合っている、合っていない、あるいはそれに照らして非常に適切なものであるということがまず1つ。それは本当にそれでも中身が正しいのか、少し時間をかけないとわからない部分がある。だから、そこの仕組みがどうなのかなというところを少し思いました。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。

【岩渕室長】 
 これはまだ悩んでいるところですが、この検討会自体、臨時にこの基本方針の最初の1回、これを決めるためにお集まりいただいたわけですが、恐らく今のような形でPDCAをきちっと回していく上では、常設の審議組織がないと、このプロセスは、今年度限りではないわけですから、そういう常設の組織を何か設けないといけないのかなと。今課題として認識しました。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。

【片岡委員】 
 これは枠組みとしてはすごくよくできていると思います。で、1、2、3、4と。ただ、イメージとしては、3が一番難しいのかなという。先ほども委員の方から御発言がありましたけれども、社会経済への貢献、これをどういうふうに取り込んでいくか。ここに書いてあることとしては、ワークショップというのがありますけれども、多分ワークショップだけでは正しくこれを見積もることは結構難しいんじゃないかなということと、それから、予測可能なこともありますよね。例えば少子高齢化とか、これは明らかにこのトレンドが突然次の年から変わるということはないと思うんですけれども、一方においてはパラダイムシフトみたいなことが結局社会とか経済には起こり得るので、それを一体どうやって考えるのか。これを正しく作り込むということは非常に難しいんじゃないかと思いますし、そうなるとやっぱりある程度バッファーというんですかね、先ほどお話ありましたけれども、余りシャープに決めてしまうと、身動きが取れなくなる可能性があるんじゃないかということと、それから、1つの社会的な面だけを取り上げても、それが一方の今度別のところにも影響しますよね。例えばそういう医療の問題にしても何にしても、こういうことはしなくちゃいけない。でも、それをやることによって経済的に立ち行かなくなったらどうするのかと。ここのところが非常に難しいと思いますし、それから、グローバルな視点というのはすごく必要なのかなと。つまり、国内問題が実は国際問題になっているというんですかね、つまり、中国とか近隣の国々というのもまとまっていないですから、そうすると、5年、20年先というのは当然そういう国も変わるとしたときに、一体どういうことが起きているのかとかいうことも入れていかなくちゃいけないわけで、そうなると、ここの設計をどうするのかというのは、お聞きしていて一番重要というか、ここがぴしっと決まるとこのサイクルは非常にうまく動くのかなと思いました。
 それで、例えば例として、僕は最近これはなるほどなと思ったんですけれども、我々の分野は医療なんですね。そうすると、医療の分野、例えば希少疾患というのがあります。例えば100万人のうち20人しかいないとか。これは多分我々の今までの意識では、これはとても産業活動ではカバーできないだろうと。ですから、ある程度福祉的な観点でやるしかないだろうと。ところが、アメリカの準ベンチャー企業ですけれども、これは世界的なこの分野ですごい業績を上げているんですね。もちろん患者さんにも喜ばれていると。それはどうしてそういうことが可能になったかというと、1つの国の中で20人しかいない患者さんでも、世界で見るとかなり数おられるわけですね。それを要するに全てをスタンダードに把握できると、これはちゃんとそういう方に治療をするということ自体で、ちゃんと経済活動としてもきちんと回るし、患者さんも非常に救われるということが現実に起きているんですね。だから、そういうのって、ある意味では、僕には予測できなかったんですけれども、そうなると、そういう視点も入れていかなきゃいけない。
 だから、ある意味ではここの設計というのがどういうふうにされるのかなというのは、非常に興味があるというか、重要じゃないかと思います。

【岩渕室長】 
 おっしゃるとおり、STEP3が最も難しいと思っておりまして、次回の会合におきましては、研究開発戦略センターさんで今未来創発型のアプローチというものはどういうものかという報告書をまとめておられまして、恐らく次回のタイミングではその報告書が完成しているころですので、配付させていただいて、紹介させていただこうかなということも思っておりますが、なかなか確かにこれは難しい課題ですので、このレシピ作りの際に、報告書をまとめる際に、よく先生方の御意見も聞きながら取りまとめていきたいと思っております。

【大垣座長】 
 次回に宿題の回答が出てくる可能性があると。

【岩渕室長】 
 先生方の御意見を聞きながら。

【阿部委員】 
 この資料2で言われていることは、1つは、技術の棚卸しというか、今、あるシーズを探し出して、将来役に立ちそうなものにファンディングを伸ばしていこうということで、この考え方は、これはこれでいいと思うんですけれども、やっぱり研究ってそう画一的なものではなくて、多様な面が必要だと思うんですね。ですから、先ほども申し上げたように、何に使えるか分からないような研究もあり、あるいは、例えば太陽電池の研究というのはみんなやっていますけれども、その収率がものすごく上がるとか、ものすごくコストダウンできるとか、そういうハウツーでも、そこにブレークスルーがあれば、立派な基礎研究の成果だと言えると思うんですね。
 ですから、あるポートフォリオでいろんなタイプの基礎研究があっても悪くないし、それにしっかりファンディングをしていくということがやはり重要だろうなと。
 ただ、お題目だけのブレークスルーじゃなくて、やっぱり真のブレークスルーが伴うと見た研究にファンディングをしていくということが大事だと。そのとき、そのブレークスルーというのは、我々の会社でもそうですけれども、あした起こるかもしれないし、10年後かもしれないし、ずっと起こらないかもしれないと。ですから、その場合に、時間軸をどういうふうに見てファンディングしていくのかと。ブレークスルーをマネジメントするというのは極めて難しくて、そういう意味で、我々、研究と開発は全く違うと。研究開発ってつなげて言う人がいますけれども、全く違うと。開発というものは、さっきもありましたけれども、課題が明確で、目標も明確で、いつまでに作らなきゃいけないというのが明確なものが開発で、これは工程表が作れるんですね。ただ、研究というのは、工程表は作れないと思うんですね。ですから、研究者の評価もほとんど失敗ですから、減点主義で研究者を評価すると、誰もチャレンジしなくなる。大学もそうだと思うんですね。ですから、研究者の評価にも関わるし、研究の多面性を認めてやらないと、なかなか活性化しないのではないかと思っております。
 発言は以上でございます。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。辻委員、どうぞ。

【辻委員】 
 「出口を見据えた」と、「出口から見た」と、そういう仕分をしたということなんですが、「出口から見た」方のプログラムは、恐らく5年程度の、必ずしも永続的なシステムとして構想されたものではないのではないでしょうか。重複を避けることが迫られているということは分かるんですが、行き過ぎると、本来文科省としてやるべきミッションが見失われたり、あるいは制度がゆがんでしまうのではないかという危惧を持っております。
 文科省は、長い目で日本の研究を育てていくという大きなミッションがありますので、余り引きずられずに、本来のミッションを見据えてファンディングをやっていただきたい、やっていく必要があると思っています。
 そういった中で、文科省は何をやるかとなると、先ほど大隅先生がおっしゃったような、弱いけど伸ばさなければいけないところ、どうしても必要だというようなところなどそうしたところに目を向けていくという必要があるんだろうなと思います。
 阿部さんがおっしゃったことにも共感します。例えば、「出口を見据えた研究」に関わるファンディング施策の中から、iPSが出てきたとか、IGZOが出てきたとうたわれていますが、決して一本道できたわけではない基礎的な研究の広がりがあって、そうした中から拾い上げられて育ってきた。根っこのところでの多様性、一番根っこは科研費にしても、こちらのレベルでも、できるだけ多様性を確保するということが大切だと思います。将来何が起きるか分からないような研究、人間の頭で考えたビジョンを裏切るような形で出てくるもの、そういうものをどうやって育てていくのか、そういう芽をどう作り伸ばしていくか、そこをしっかり考える必要があるのではないかなと思います。
 そういう意味では、上で余り出口、出口と言い過ぎると、その出口がどんどんどんどん狭くなっていってしまう可能性もあるので、広く目標を掲げる必要があるでしょう。シャープに絞り過ぎるよりは、むしろ緩やかなくらいの方が良いと思います。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。ほかに。どうぞ。

【西尾委員】 
 先ほど申し上げたことにまだこだわっているようで恐縮なのですけれども、今まで戦略的経費において、文部科学省の方で大変尽力なされて戦略目標を作成されているのですけれども、本外から見たときに、そのプロセスがなかなか分からないという問題があったように思います。もう一つは、文部科学省による戦略目標の作成と、それを受けたJSTにおける研究領域の設定のプロセスがシームレスに繋がっているのかという問題が今まで言われてきたと思います。
 それに対して、二つ目の文部科学省とJSTのシームレスな連携については、最近、安藤課長、岩渕室長にも、JSTの研究主監会議などに御出席いただいたりして、両者が有機的に繋がるように御尽力いただいて、大変良い方向に向かっていると思います。
 そこで、最初の問題と関連して、今回おっしゃっている戦略ビジョンは、様々なデータなどを参照されて策定されるのでしょうけれども、そのプロセスを明示して、何らかの評価を受けることが大切に思います。つまり、図の右側に記されている審議会等の戦略ビジョン(仮称)の評価という部分での審議が非常に重要になってくると思います。そこでの審議においては、戦略ビジョンの策定において、文部科学省がどういうデータをもとに、どのような根拠でその策定が行われたのかということを明らかにしていただいて、そのプロセスを評価し、それが次の年度の戦略ビジョンの策定につながっていくようなサイクルを形成することが特に重要だと考えます。

【大垣座長】 
 ありがとうございました。どうぞ。

【岩渕室長】 
 おっしゃった点、非常に大事な点で、ありがとうございます。トランスペアレンシーを高めるための1つの方策は、まさに戦略目標の立て方自体をこうした公開の場できちっと議論していただいて決めると、明文化するということが第一歩だろうと思っております。また、その評価の仕組みを入れるということ、先生がおっしゃるとおりで、評価をする以上は、目標を立てるプロセスについての情報を見ていただきませんと、これは評価ができませんので、そういう意味でも、評価の仕組みを入れることイコール、トランスペアレンシーを高めるということになると思いますので、そこの点について非常に十分に意識をしながら今後進めていきたいと思います。

【大垣座長】 
 どうぞ。

【小松研究振興局長】 
 先ほど来の御議論について、焦点化されるところがはっきりしてきていると思いますので、大変有り難く思っておりますが、今の岩渕室長からの説明を若干補うような感じで考えていることを申し上げたいと思います。実は私どもの間でも、別に上下の関係ではなくて、フラットに議論もしながら、こういった資料を作っています。その過程で生じたこともあるので、ちょっと御紹介しておきたいと思います。この資料1について、私どもが最初に作って御提案しようという議論をしたときには、この戦略ビジョンの策定の箇所で、文科省となっているところと、隣の審議会等となっているところを結ぶと言ったら変ですけれども、要するに、名義人は文科省になるけれども、実際には審議会にある意味で作成をしてもらうという実質を持たせるという図にしようかというような図を実は考えておりました。実態はそうあるべきだと思っています。ただし、図が分かりにくくなるので、一応ここに書いてある審議会、文科省、JST、研究者というものは、別に法人格の有無とかはそれぞればらばらなのですけれども、責任主体というか、最終的にここがメインの責任者という感じで表示をしてみると、こういう図になります。ですから、最初の戦略ビジョンの策定の基本方針でも、この検討会を設けてお願いをしているのは私どもですから、最終責任は私どもにあるかもしれませんが、ファンクションとしては、まさにここで検討していただいたものを我々が、その方針としますと言うこと。その次の文科省の箇所も、大なり小なりそのような位置づけがいいかなとは思うのですが、予算とかを立てて、実際に国民の税金を執行するという局面に入ってくると、最終的にそれは審議会がおっしゃったからですというだけでは済まないことなので、責任主体的にはここは文科省に移るのだろう。しかし、今、いろいろと伺っていると、先の説明のようにあえて外していますが、むしろ審議会等で形成というようにしてもいいのかなというように、思いながら聞いておりました。
 そして、その後、JSTの側へ実務が移っていって、研究者の方々とJSTとの間で一緒になって作りながら実務をやっていくと。そのプロセス、実務的な評価というのがあって、そして図の右側の審議会等へ戻ってくる。この審議会等は、私どものイメージでは、同じ人がやるのはおかしいというのであれば分けてもいいのですが、多分分ければ何でもうまくいくというものでもないのかなと思っております。最初にこういう方針を決めたときの事情とか、そういうものがよく分かっている人がやるべきかと考え、これは工夫の仕方があるのかなと。で、最終的に図の左上のもとの基本方針まで、果たしてそれがワーク、今から先もするのかなというのを検証する。このような感じで考えたらどうかということを考えましたので、また御議論も頂きたいと思うのですけれども、今の御議論を伺っていると、そのようなやり方があるのかもしれないので、そのようにまずは作ってみようかと、少し考えた次第でございます。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。資料1は、分かりやすくまとめてあるので、多分いろいろ抜けるところあると思うんですが。

【小松研究振興局長】 
 分かりやすくとは思ったんですが、今のような考え方で、責任主体的にやや形式的なところで統一したものですから、かえってファンクションの面で分かりにくい図になっているかもしれませんので、そうであれば、補って。しかし、それはそもそもそれがいいかどうかは、考え方がいいかどうかだとは思いますので、またそこも御指摘があればお聞かせいただきたいと思います。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。ほかに御意見はいかがでしょうか。

【近藤委員】 
 ちょっと違うところなんですけれども、先ほどのプロセスでいうと、3番、先ほど片岡先生から御指摘があったように非常に大切だと思うんですけれども、きょうの議論の中でいうと、4番といいますか、粒度というか、これをどう設定するかというのは、「出口から見た」、「出口を見据えた」という中では、結構ここの設定ですよね。例えば二酸化炭素排出20%として、エネルギーキャリアとまでいうのか、例えば省エネ技術の創成、この組合せですよね。上と下って必ずしも同じレベルにないんじゃないかと、設定のときですね。こういうところの絞り方によって、先ほどありました、拾えるか、拾えないかとか、そういうことになると、我々も実際やっていると、結構悩ましいことが多いんですね。POとかやってやろうとすると、できるだけ下は抽象的な方に寄せたいと思うわけですよね。余り寄せると、限りとかなくなっちゃうという指摘を受けたりするんですけれども、このあたりのところは、多分実際のオペレーションで、POなり、そういう人ができる部分もあるし、それから、ビジョンを作るときには、先ほどのような議論を踏まえますと、この辺の具体性、抽象性という、社会的、技術的という、このあたりも非常に重要じゃないかなと思うんですね。多分そういう意味では、そこら辺の議論も、実際決めるときには非常に重要になってくるかなというふうに、現場でやってみてもそういう気がします。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。

【岩渕室長】 
 粒度論のところですが、社会経済的な粒度という、青い丸の粒度については、冒頭の出口のイメージということで、そういう観点から突き詰めて決めていくようなことかなと。一方で、技術の粒度というか、研究領域の粒度についてはまた別の観点もあろうかと。具体的なファンディングの制度ですので、目標を決めれば、その目標に沿って、実際に研究プロポーザルを公募するプロセスになるわけです。余りに広い粒度の研究領域を設定しますと、応募倍率が100倍、200倍ということでは応募する研究者のモチベーションを失うようなことにもなりますし、また、余りに狭い領域を設定しますと、その分野に研究者がいないというようなことではいけないわけで、そういう現実的な側面も踏まえながら、この技術の方の粒度は設定する必要があるのかなと実務的には考えております。

【大垣座長】 
 笠木委員。

【笠木委員】 
 今の粒度とか出口についてですが、実際に研究推進体制を作って動かしていったときに、それがどういうふうに具体的に研究者に伝わるかということだと思うんですね。もちろん募集の段階もあると思いますけど。肝腎なことは、研究総括といいますか、そのような立場に立つ人がどういう形で研究チームを引っ張っていくかということが最も大事だと思うんですね。先ほども議論ありましたけれども、ビジョンの策定のプロセスで、実際の現場の研究者、これは大学や民間におられると思いますが、その中に、議論を経てPDや総括の役割を担えそうな人も入って、そして行政の方もですね、そういう方々がフラットに集まってこのプロセスを進めていくことが大事です。そして、その議論に参加した人が研究全体を総括することになると、ここでいう出口とか粒度に関しては、それほど心配は出てこないのではないかと思います。
 これは私の経験ですけれども、CRESTとさきがけやっていると、さきがけの方は若手研究者ですから、ポテンシャルを重要視して、ある範囲からはみ出たら駄目とか、そういうような指導はしないんですね。いろんな可能性を見て、是非こういうことでやってくださいということで、むしろエンカレッジすることになります。CRESTになるとシニアの研究者のチーム編成が多いので、これは具体的な出口をしっかり目指してほしいですね。我々が出口を見据えたという点から、これはイエローカードだなと思うのは、例えば、非常に希少な金属をたくさん使って性能を大きく上げようとか、これは多分アウトなんですね。それから、鉛など環境に毒性のあるような材料を使うことも。最近の色素増感電池の性能の顕著な向上では残念ながら鉛を使っているのです。けれど、それに飛びついてその方向で幾ら進めても将来使えないですね。
 ですから、世の中に入る可能性がほとんどないもので極みを求めていこうというのは、恐らく出口を見るということからすれば、イエローカードかレッドカードだと思うんですね。出口を見据えたというと、決められたテーマ以外駄目というようなトーンが大きいんですけれども、そうではないのだと思うんですよ。基礎研究で自由に原理だけを究めるのであれば、どんなことをやってもいいですが、それは科研費でそういうチャンスがあるわけですから、そこでやっていただけばいい。一方、出口を見据えた目的基礎研究でやるとすれば、むしろ全体でどういう方針で進めるかということが大事で、そのときにビジョンを作り上げるプロセスの中で、出口、粒度ということも含めて領域設定の議論を、研究者を交えてきちんとやっていくことが一番良い方法ではないかと思います。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。

【大隅委員】 
 もう一度発言できる時間がありそうなので、さらに、気になる点を2つ申し上げたいと思います。資料1の右側の方にPDCAサイクルのCのチェックのところがあるわけなんですけれども、これは研究領域の評価が終わって、さらに、戦略ビジョンを評価するということになると、相当先なわけですよね。それはいつ、どこで、どんな評価軸を使って評価するのかというあたりのことについては、どのタイミングでどんなふうに考えておくのでしょうかということが気になりました。特に、やはり複数の物差しが必要なんじゃないかと思います。単に、例えばインパクトファクターであるとか、サイテーションインデックスであるとか、そういったものだけではなく、どのように研究成果というのがインパクトがあったのかということの評価の仕方というのを、それは今からちゃんと考えておかないといけないのではないかなと思います。
 それと関連することなんですけれども、これ、かつてはCRESTは継続型といいますか、SORSTでしたかね、そういった仕組みがあって、評価を受けた上で、非常によかったものに関しては、その延長ができたということがあったと思います。それは研究者にとってはものすごくポジティブな御褒美であり、モチベーションにつながるようなことになると思います。そうじゃないと、例えば5年のサイクルで立てるようなこれまでのCRESTなどのパターンでいいますと、中間評価のところまでとにかく頑張ればという形になって、その次はまた違ったものを取りに行かないといけないということになります。本来であると、非常に時間のかかる基礎研究というのは当然のことながらあり得ます。それは例えば先ほど言った未来の将来に関係することで自閉症児の増加に触れましたが、そのための基礎研究として、親の世代の影響が子供に現れるという研究が今すごく盛んになりつつあります。そうすると、ネズミで仮にそれをやろうとしても、例えば2年かかってワンクールの実験ができるとか、そういったパターンの非常に長く時間のかかる研究があり得ると思います。ですので、そういったときに、5年でスパンと切れるものではない形の研究プロジェクトも作れないかどうかとか、そういったあたりのところも少し議論していただければと思いました。
 以上です。

【大垣座長】 
 ありがとうございました。

【岩渕室長】 
 1点目、複数の観点がありました。このPDCAの絵は、一周回るように書いてしまいましたので、研究領域の評価が終わった後に戦略ビジョンの評価を行うという形のように読めてしまう。しかし、そこは、そういう趣旨でなく、先ほど西尾先生がおっしゃったように、毎年の戦略目標の策定がきちんとこのレシピどおりに行われたのかということの確認や、レシピそのものに不備な点があれば、これを毎年改善していくという意味での評価ということは必要だと思います。あと、実際に立てた目標に従って行われた研究の成果、これがちゃんと出ているかどうかというものをフォローアップしていくという評価があると思います。
後段、今申し上げた評価軸にも、サイエンスのインパクトの評価もあるし、社会へのインパクトの評価もあって、その評価軸をどう設定するのかは非常に大事な論点だと思いました。
 また、この評価の結果をどう使うのかということ、この研究領域の評価の仕方についても、研究者のモチベーションを与えるような形での評価というのを導入すべきじゃないかというのは非常にごもっともな御意見だと思います。そういうことをそのようにこの制度に入れていくということは1つの検討課題だろうと認識しました。

【大垣座長】 
 よろしいですか。ほかにはいかがでしょうか。

【阿部委員】 
 きょう、本検討会における対象である戦略ビジョンについては、先ほど申し上げましたように、やはり研究というのは画一的ではないので、多様性を考えて、あるポートフォリオで推進するということが重要だと思うんですけれども、実際の本検討会の対象ではないんですけれども、研究の推進についても、やっぱりいろんなやり方があると思うんですね。やはり研究って何やるかというのはもちろん非常に重要なんですけれども、方法論、やり方を変えるというのもイノベーションに通じることがあると思うんですね。
 1つは、例えば今ちょっとあれなんですけれども、公的研究機関を、文科省で言えば理研ですね、経産省で言えば産総研だと思うんですけれども、経産省にも同じ提案をさせていただいているんですけれども、やっぱり理研、ここでいうと理研をハブにした研究推進というのが、一部のプロジェクトでやってみるのが良いと思います。やはりこういう基礎研究においてハブになるのは、大学ではなくて、もちろん民間企業でもなくて、やはり公的研究機関、理研だと思うんですね。ですから、理研をハブにして、そこに足りない技術を、ある大学AとかBとか、それから、出口につながる、文字どおり出口につながる産業界を企業A、Bという形で入れて、そういう方法論を試すというのも、こういう新しい取り組みのときにはイノベーションにつながるのではないかなと。
 そのときに、垂直連携で企業は入れるというのは鉄則だと思うんですね。東レが入って、例えば競合他社が入ったりすると、本当のことをそこで出さないので、やっぱり知財権があるので、そこは垂直にですね。例えば東レだったら、エンジニアリングメーカーを入れるとか、そういう垂直連携で企業を入れて、そういうハブで研究を推進するというのも新しいやり方として面白いのではないかと。
 こういう話をすると、いやいや、研究組合って今までもよくやっていますよという話をされるんですけれども、より国が主導した形でのこういうハブの研究というのは余りなかったんじゃないかということと、もう一つは、今までの研究組合というのは、企業が水平で入っているために、なかなかうまくいっていないということもあるので、是非そういう方法論をこの新しい視点で仕掛けていただけたらなと思っております。

【大垣座長】 
 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。大体予定した時間がまいり……。どうぞ小松局長。

【小松研究振興局長】 
 本日の御議論、大体時間が近づいてきておりますけれども、私どもからの提案ではないのですが、すごく感じましたのは、先ほど来のSTEP3、STEP4のところをどうしたらいいのかなと。私どもとしてはこの資料に考え方を書かせていただいたわけですけれども、方法論とか体制とかを具体的に設計するのは結構大変だよというメッセージを期せずして頂いたような気がいたします。
 それで、1つの考え方としては、STEP1のところ、これは参考資料の4を使っていますけれども、STEP1のところで、例えば科研費等から、今回のこういう構想というか、考え方に沿ってエビデンスベースでいろいろ蓋然性が高いという意味で少し余裕を持って考えるべきだと思いますが、データベースを構築して、プールというか、それを作る。それに今度動向というのを合わせてサイエンスマップというのを活用して、さらに、エビデンスベースで次へ行く。ここまではいいわけですけれども、いいわけというか、一応皆さん、そういうのもあるべきじゃないかと。
 それで、そこから先なのですけれども、前回の議論でサイエンスマップは最新動向は説得力を持って分かるけれども、しかし、最新動向というのはあくまでも今までのものであるから、今後のものについてちゃんと拾える体制にしないと有効性を欠くのではないかと。そこで、それは、ここでいうとSTEP2、STEP3、さっきの資料でいうとSTEP3、STEP4のところでどうするかということになるかと思います。実際考えますと、片方の極では、極って極端の極ですけれども、一極では、そういうことでいろいろ皆さんの御意見を伺って、もちろん完全ということはあり得ないわけですけれども、そういったシーズ、社会的な希少性、自然的な希少性、そういったものも含めて拾っていくという機能が期待される。他方で、逆の極、理念型ですけど、逆の極に行くと、せっかくエビデンスを持って動向とか、そういうものを整理して世の中に分かるように選定したのだけれども、それが非常に恣意的に曲げられているのではないかという批判を浴びる。この間で、どういうふうにすると一番有効な、繰り返しますが、完全ということはあり得ないと思いますけれども、常に見直しながら有効にやれるかという仕組みを考えなければいけないと思うわけですね。もちろんそれは人選とか、会議の持ち方とか、準備の仕方とか、そういうことにかかる面も多いので、それでやっていけばいいのではないかということであれば、それはそれでまた御指導を受けながら考えていけばいいと思いますけれども、それを考えるにはこういうのが参考になるんじゃないかとか、こういう点は留意が必要ではないかということがもしありましたら、本日ではなくてもよろしいのですけれども、またお気づきの点なども寄せていただければ、それは非常に抽象的なものでも、具体的なものでもいいのですが、私ども、次の議論に、またその辺を少し突っ込んで議論すればいいなという感じもしております。問題意識を頂いて考えたことを申し上げました。

【大垣座長】 
 先ほどからお話が出ていますが、JSTなんかでもいろんな御経験があると思いますし、いろいろと集めていただければと思います。
 ほかに御意見はよろしいでしょうか。
 すいません、私、ちょっと一言申し上げたいんですが、ここで出てくる研究者というのが、1人の研究者のような感じが多くイメージとして浮かぶんですが、こういう戦略ビジョン領域を決めると、そこへいろんな研究、他の研究者分野から興味を持って参加してくるという。ある研究者のあるエフォートが、3割のエフォートがその分野に割かれてくる、あるいはそこに興味を持つ、あるいは若い人がそこに興味を持ってそこの研究者になると、そういう研究者群をリードする、あるいは連携するというような機能も、こういうCREST的なもの、CRESTというか、今後作るものにあるのではないかということで、でき上がった研究者を集めてやるというのと同時に、そうではなくて、新しい分野を作るとか、今欠けている分野を作り出す、あるいはそこに参加してもらうというような意識もこのビジョン設定では必要じゃないかと思うんですね。そうすると、この戦略ビジョンというのも広がりがもう少し出るんじゃないかなという感じが私はするものですから、一言加えさせていただきました。
 ほかに何か最後に御意見ございますでしょうか。
 なければ、それでは、どうも大変貴重な御議論ありがとうございました。また、いろいろ事務局に、宿題ではないですが、次回へ向けて整理していただくことがたくさん出たと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 それでは、最後に事務局より連絡事項がありましたらお願いいたします。

2:その他

【浅井室長補佐】 
 次回の戦略的な基礎研究の在り方に検討会の開催日時について御連絡いたします。検討会の第3回につきましては、既に御案内しておりますとおり、6月2日(月曜日)の16時からを予定しております。
 なお、机上にございます資料につきまして、郵送を御希望される場合は、あらかじめお伺いしております郵送先にお送りさせていただきますので、机上に置いたままにしていただければと思います。
 以上です。

【大垣座長】 
 それでは、どうも長時間にわたり御議論ありがとうございました。これで戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会の第2回を閉会いたします。次回もございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日はどうもありがとうございました。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

宮澤(内線4120)
電話番号:03-5253-4111(代表)
ファクシミリ番号:03-6734-4074
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