ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題についての検討委員会(第2回) 議事要旨

1.日時

平成26年5月30日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省東館3階3F1特別会議室

3.出席者

委員

土居主査代理,大隅委員,城山委員,住委員,関口委員,瀧澤委員,土屋委員,林委員,平尾委員,樫根喜久氏(内山田委員代理)

文部科学省

岩瀬政策評価審議官,小松研究振興局長,山脇大臣官房審議官,下間参事官,川口計算科学技術推進室長,田畑情報科学技術推進官,遠藤参事官補佐

オブザーバー

(HPCIコンソーシアム)
藤井理事長,常行副理事長
(理化学研究所計算科学研究機構)
宇川副機構長,石川プロジェクトリーダー,富田チームリーダー

4.議事要旨

(1)第1回委員会における委員からの主な意見等について

川口計算科学技術推進室長より,資料1-1と資料1-2に基づいて第1回委員会における委員からの主な意見と対応について説明。

(2)ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題の選定方針について

川口計算科学技術推進室長より,資料2-1に基づいてポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題に関する意見募集結果について説明,資料2-2に基づいてポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題の選定プロセス及び全体推進スケジュールについて説明,資料2-3に基づいてポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題の選定方針(案)について説明。

【土居主査代理】  それでは,ただいまの説明を受けまして御議論をお願いしたいと思います。資料2-1は国民からの意見ということですがよろしいでしょうか。資料2-2の課題選定プロセス及び全体推進スケジュールに関して,御質問あるいは御意見ありますでしょうか。
【住委員】  資料2-2の中で,現在のHPCI戦略プログラムと新しいものが並列になっていて,この関係が非常に分かりにくいと思う。それから,現在のHPCI戦略プログラムが5年で終わるということは,私はおかしいとは思うが,それは置いておいても,研究において,人と施設に余裕がない中で,もう少し具体的に二つの関係を説明する必要がある。
【土居主査代理】  ありがとうございます。その点に関しまして何か。
【川口計算科学技術推進室長】  新しい課題を実施するにしても,現在HPCI戦略プログラムで取り組まれている研究者の寄与は大きいと思いますし,確かに研究者のリソース面を考えていくと,本格的な実施はHPCI戦略プログラムが終わった後の平成28年度以降ということでは考えていますが,ただ一方で,コデザインという点や平成28年度までの間でもポスト「京」の設計は進んでいきますので,そういうところから考えていくと,調査研究,準備研究という位置付けで,将来を見据えた課題としての取組は今年度,来年度のうちに着手しておいた方が良いと思い,このようなスケジュールにさせていただいています。
【住委員】  資料2-2の図では,現在のHPCI戦略プログラムが終わってしまって,その先はないように見え,ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの戦略がたかだか5年で終わってしまうように見える。将来,ダイナミックに統合されていくというイメージはそれで良いと思うが,その辺の図を作るときには注意が必要だと思う。
【土居主査代理】  御指摘のとおり。平成27年度が終わったら全く違ったもので走るというようなことを意図されたものではないわけで,どう図を描いたら良いのかという点は大変工夫を要すると思う。
【川口計算科学技術推進室長】  分かりました。
【土居主査代理】  ほかにはいかがでしょうか。
【城山委員】  資料2-1ですが,社会的・科学的課題をどういう単位で整理していくか,意識的に行った方が良く,いろいろ違うレベルの話が今の整理の仕方では並んでいると思われる。防災・環境問題やエネルギー問題はまさにある種の社会的課題だが,他方,創薬や輸送機器設計というのはそのためのツールの設計というレベルの課題。また,社会科学となると社会的課題ではなく科学的課題の方になると思うが,課題の整理の仕方については,後々どういうふうな単位で10個を選んでいくのかにも関わるため,意識的に整理した方が良い。
住委員からの意見にも関わるが,先ほど紹介いただいた前回委員会での委員コメントを伺っていると,フラッグシップシステム単体の話ではなく,フラッグシップシステムと計算科学インフラ全体とで何ができるかということを考えることが大事だという点が,前回の議論で一つ大きなポイントだったと思うが,今度課題を選ぶときの評価基準とどうつながってくるかというところが余り見えていないという気がする。そういう意味で言うと社会への波及効果や投資効果など,大きい話はどんと出てくるが,次のステップで根付かせていくために,ある課題を実施することがどういう意味を持つのかという点も評価基準に入れた方が,前回の議論を踏まえた形になると思う。
【土居主査代理】  課題の切り口については,現在のまとめ方以外に,例えば,何かアイデアはありますか。
【城山委員】  いろいろ整理してみないと何とも言えないが,これが一人歩きしないようにしていくことが今の段階で大事だと思う。課題の整理の仕方と,経済波及効果のデータをまとめるときの切り口も若干違っていて,例えば社会科学とは言わずに社会経済予測と言っていたと思う。予測であればある種のツールの側面もあるし,社会課題みたいな形になるため,大きな話としては広い意味での社会課題的なところで拾えるものはなるべく拾っていって,ただし,それを解決するためのツール的なところに焦点を当てるものも一部出てくる。恐らく,医薬品や創薬はそういうレベルの話だと思うため,階層構造を考えて意識的に整理した方が良いと思う。
【土居主査代理】  分かりました。ほかにはいかがでしょうか。それでは次に,資料2-3について御意見あるいは御質問をいただければと思いますが,(1)から(5),及び留意事項のどこからでも結構です。課題の選定基準として五つのポイントが書かれてあり,こういう基準で良いかということ,及び具体的な指標として掲げられていることが良いかという点に関していかがでしょうか。
【土屋委員】  我が国の産業や経済への波及効果が期待されるという点は,産業界として非常に歓迎すべきことであって,成果を期待したいと思う。しかし,ポスト「京」の能力といったときに,これをフラッグシップシステムと限定する話なのか,それとも計算科学インフラ全体として捉えて,これらが我が国の産業界へどのような効果をもたらすのかという観点から議論するべきなのか。
【川口計算科学技術推進室長】  確かに日本全体としていろいろなスーパーコンピュータを活用していくという話は重要と考えていますが,本委員会での議論については,その中のフラッグシップシステムでシミュレーションや解析を行っていって,その成果を産業,経済,ほかの効果等につなげていくというところで考えていて,このような書きぶりにさせていただいています。
【土屋委員】  前回も議論になったが,100台の「京」が必要なのか,「京」の100倍の能力の「エクサ」が必要なのかという話の中で,システムとしてどういうふうに捉えて必要性を議論するのか。まず,「エクサ」という演算能力ありきの話なのか,あるいはフラッグシップシステムは「エクサ」には到達しない「エクサクラス」でもいいがシステム全体として最適な形を実現するといった話に持っていくのか,その辺のところもいろいろ関係してくると思い質問したが,それは後で整理していただきたいと思う。
【土居主査代理】  特段今はよろしいですか。
【川口計算科学技術推進室長】  ポスト「京」というのは,資料1-2でも記載していたとおり,ある程度大きいものを何台もという議論もあるのかもしれませんが,フラッグシップシステムとして考えているものは,まずは大きな一台かと考えています。ただ,当然その一つがそれで終わりではなく,資料2-3の(2)3でも書かせていただいたとおり,単にフラッグシップシステム一台が単独で何か成果を出すということではなく,我が国のコンピュータシステム全体に波及していくという役割も果たしていく。したがって,フラッグシップシステムで実施する課題のことを中心に議論はするが,必ずしもそこでおしまいではないという点は課題を考える上で重要だと考え,その点を記述しています。
【土屋委員】  最終的に高速計算機の開発というのは計算科学によって課題を解決するための手段であって目的ではないため,手段が目的化しないようにということが必要だと思う。
【土居主査代理】  ほかにはいかがでしょうか。
【樫根産応協企画委員長】  産応協企画委員長の樫根です。内山田の代理で出席させていただいています。今の話にも絡みますが,産業界における産業競争力の強化や経済への発展といった文言を入れていただいて感謝していますが,例えば,資料2-3の(2)のところに産業競争力の強化等が書かれてあり,特に(2)2のところで最後に成果を利活用する産業界や自治体等という形で,最終的に何か計算機ができて,その成果を産業界が受けて,あとは自分たちで経済,産業発展のために行うというニュアンスが強く,前回も発言させていただき,先ほどフラッグシップシステムの話もありましたが,ポスト「京」だけではなく全体としてのコンピューティングシステムを産業界としていかに使いやすく,それで本当に我々の製品開発,産業育成のために使える全体のシステムにするかという議論も産業界としてはしっかりさせていただきたい。出来上がったシステムをあとは産業界が使って何か成果を出すということではなく,やはり産業界としても技術開発,製品開発に使いやすいコンピューティングシステム全体の在り方といったところを考慮して,課題を選べるというニュアンスの記載も追加していただければと思う。
【土居主査代理】  ありがとうございます。(2)2も読みようによるわけですが,要するに成果の創出に向けて,いろいろな関係の各者が連携・協調していこうという中に産業界,自治体等が入っているわけですから,単に受け身として構えていてくださいという話ではないのだろうと思っています。より積極的に何か書きぶりを考えさせてください。ほかにはいかがでしょうか。
【関口委員】  五つの視点ということですが,五つもある必要があるのかどうか。いたずらに項目を多くして複雑にしてもどうかという気がする。(1),(2),(3)まではいいと思うが,(4),(5)というのは(1)から(3)と重複しているのではないか。例えば(5)の効率性の観点で言えば,これは(3)の話ともかなりリンクしているのではないかと思われるため,それは一緒にできるかもしれない。同様に(4)のポスト「京」が十分に活用されているかという点は,作った後に評価する話であり,その前段階で議論することは,(2)の有効性の観点の方が恐らく主になると思うため,その中にこの活用されているかどうかを包含することも考えられる。したがって,(1),(2),(3)は残して,(4)を(2)の方に,(5)を(3)に入れるような形で,具体的指標を入れ込むという案もあると思う。
【土居主査代理】  分かりました。ありがとうございました。
【住委員】  ポスト「京」というものが何を意味するのかということは人によってとらえ方が違い,そこは明確にしておかないと非常に議論がこじれるため,その点はそうしていただきたい。(1)や(2)は例えば現在の「京」であっても非常に大事なことであるし,割と網羅的な気がするため,明らかにフラッグシップシステムで実施する課題を選ぶときは,本当に「京」の100倍の性能のもので可能となる,それでなければできない問題を選ぶような方向にした方が良いと思う。今までも,多くのユーザが細かく使って,小さい計算機でも全然良いような問題もたくさん寄ってきており,そうではないというふうにする必要がある。また,大きな問題にするから非常に演算速度が出るという構造になっていると思われるため,やはり「京」の100倍の性能で初めて新しい知見が出てくるということを重点に置いて選んでいった方が良いと思う。
【平尾委員】  五つの観点が出ているが,ちょっと多過ぎるという気がしており,私自身は課題を選択するときには三つの観点しかないだろうと思っている。一つ目は科学的な卓越性があるかどうか,二つ目は社会的なインパクトがあるかどうか,三つ目は今度作ろうとしている世界最先端のポスト「京」を使わないといけない,それが必要かどうか,この三つが大きく観点としてあるわけで,そのあたりにまとめることが良いのではないかと思う。
【土居主査代理】  表現が多少違いますが,先ほどの関口委員からの意見とも関わりますが,今,平尾委員が言われたことは,(1)から(3)までということかと思いますが,よろしいでしょうか。
【平尾委員】  はい。
【土居主査代理】  ほかにはいかがでしょうか。
【林委員】  最後の留意事項にいきなりコデザインという横文字が出てきて,これは本当にみんなが常識として理解をしていることなのか,また,留意事項で言っていることと,(2)2で言っている連携・協調は何が違うのかよく分からないが,留意事項として特出しをする意義は何か。
【川口計算科学技術推進室長】  後ほど体制の議論もありますが,(2)2については,アプリケーションやスーパーコンピュータをどう使っていくかというところにフォーカスしたときに,実際にコンピュータプログラムを作ってコンピュータシミュレーションを動かす人だけではなく,実験を行っている人や産業界,自治体のような成果をより社会で使う人がちゃんとセットになってやっていきましょうというところです。留意事項のコデザインについては,説明をつけたいと思いますが,こちらの方はむしろ計算機であるポスト「京」のシステム設計とアプリケーションの開発をきちんと連携してやっていきますということであるため,性格は違うものとして挙げさせていただいています。
【土居主査代理】  今までの検討で,冒頭から,アプリケーションを踏まえた上でのアーキテクチャでハードを開発していかなければいけないし,ハードの方も考慮した上でアプリケーションを開発していかなければいけないというような,双方の知見を持ち寄りながらポスト「京」は作るべきであるということで進んできているため,ぽんと言葉だけが今回出てきてしまっており,この辺は補足するようにします。ほかはいかがでしょうか。
【城山委員】  先ほど議論もあったポスト「京」単体ではなくてシステム全体としての波及効果という観点でいうと,(4)は何かいかし方はあるのかなと思う。項目の数は減らしていただくということで問題ないと思うが,ポスト「京」単体でないとできないことという(3)だけではなく,ポスト「京」でやることでシステム全体としてどういうふうに有効に使えるかといったことが(4)の趣旨ではないかなと思うため,その点も考えていただければと思う。
【土居主査代理】  城山委員の解釈について,室長から何か。
【川口計算科学技術推進室長】  ふかん的にということは取組そのものだけではなく,もう少し幅広に見たときに,その課題を実施することでどういう意味があるのかということで,城山委員が言われたとおり,その課題を実施することだけではなく,もう少しシステムとしてというところもあるかと思うため,その点は記載を検討させていただきます。
【土居主査代理】  ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。いろいろな御意見を頂きましたので,この場は私の方で預からせていただいて,小宮山主査とも相談の上,頂いた御意見を基に,選定基準を五つではなく三つにするといった点など,もう少しまとめ方を考えさせていただいて,次回に御報告したいと思います。第三回では修正した選定方針に基づいて,事務局から具体的な課題の取りまとめ案を提示していただき,また御議論いただくということにしたいと思いますが,よろしいでしょうか。それでは,そのようにさせていただきます。

(3)ポスト「京」におけるアプリケーション開発・研究開発推進体制について

川口計算科学技術推進室長より,資料3-1に基づいて「京」におけるアプリケーション開発・研究開発推進体制の現状と課題について説明。藤井HPCIコンソーシアム理事長より,資料3-2及び参考資料2に基づいて将来のスーパーコンピューティングのあり方についてのHPCIコンソーシアム提言について説明。川口計算科学技術推進室長より,資料3-3に基づいてポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題に関するアプリケーション開発・研究開発推進体制について説明。

【土居主査代理】  いろいろな資料の説明がありましたが,資料3-1は現在どのような形で「京」の利活用を推進しているかという説明,資料3-2がHPCIコンソーシアムからの提言の説明,資料3-3がそういうようなものを受けて,今後のポスト「京」でどのような推進体制をとったら良いかという説明。少し補足させていただくと,「京」のときにどうやって戦略五分野を決めたのかといいますと,当時,文部科学省内の次世代スーパーコンピュータ戦略委員会において,各分野の有識者から御意見を頂き検討した結果,戦略五分野が決まりました。その後,中心となってその分野を推進していく戦略機関の公募を行い,書面審査及びヒアリング審査を行って決定されています。資料3-1の4ページには,戦略機関が一つのところもあれば三つのところもありますが,これは応募の段階で初めから一緒に実施すると提案があったものだけではなく,それぞれが単独に応募し,審査の結果,一緒に実施することが適当だという判断で,最終的にこのような形で進めていただくことになったものもあります。御意見,御質問いかがでしょうか。
【住委員】  資料3-3のイメージ図のところで,代表機関がいるのは良いと思うが,いろいろなアプリケーション開発の場合は必ずしも計算科学のことをやっているところが代表機関にならなければならないことはないため,計算科学というかっこ書きは削除した方が良い。また,協力機関については,産業界だけ「等」とついているが,これは産業界の外側に「等」を付けるべき。これは例示として,いろいろな関係者が入るという意味であるので,この「等」は外側に出した方が良い。
【土居主査代理】  ありがとうございました。そのようにさせていただきます。ほかにはいかがでしょう。
【城山委員】  この委員会のミッションが何なのかということにも関わるが,従来の戦略分野と,今回の社会的・科学的課題,要するに課題解決型にシフトするということがどれだけ違うのかという話で,つまり分野という場合と課題という場合とで,中身のレベルがどれぐらい変わるのかということが一つ大きな話かなということ。資料3-3では,HPCIコンソーシアムの提言も踏まえて,課題で基本的に今回オーガナイズするが,課題だけではなく分野コミュニティの自立的なところも必要という形になっており,課題と分野は本当にどれだけ差別化するのかということと関わってくると思う。そのときに,例えばこの分野,課題の話というのは次回恐らく例示的には出てくると思うが,例えば先ほどコメントした意見募集結果の整理での課題のくくり方は,かなり分野と違うという感じになっている。どの程度の粒度のレベルの話なのか,あるいは戦略課題といったときに,今度は25ではなく10だとすると,恐らく絞り込むという部分と同時に,分野横断的な課題を作るという話もある。そうすると今回,課題というものをどのレベルのどういうものとして考えるのかというあたりの具体像,具体的なイメージがないと,なかなか議論が難しいと思う。次回の議論かもしれないが,もしお考えのところあれば少し教えていただきたい。恐らく重点課題だけでは拾えない分野コミュニティとの関係のところでどういうものを考えなければいけないかということとリンクしてくると思われる。
【土居主査代理】  ありがとうございます。これは室長の方から。
【川口計算科学技術推進室長】  まず分野のところでいえば,確かに具体的にはまだこれからといったところもありますが,例えば現在の分野1であれば,医療ではありますが,例えばこういうものが分子レベルとかというふうになっていくと,現在の分野2で実施しているようなところと関わってくるというところもあり,一方で,今回机上配布した防災・減災であれば,現在の分野3で実施しているものと変わらないのではないかと,確かにものによってはそうでないものもあるかもしれません。ただ一方で,先ほど御指摘あったとおり,その中でも社会経済予測のようなところはもともと分野としてもなかったところもあり,そういったところも取り組んでいくべきということで,従来の戦略プログラムの中では資料3-1の6ページにあるとおり,各分野という中で右側の方はコミュニティの育成,左が研究課題の実施というところがあったわけですが,そういうふうに分野ごとの体制の中で研究課題を実施していくと分野横断のところが少し弱くなるかと思い,そこはむしろ課題というのはこういう分野の話というふうに今回はあえて分けてはどうかということで,こういう姿とさせていただいているところです。また,資料の中には記載がありませんが,現在の各戦略分野の中にはそれぞれ四,五課題程度があり,HPCI戦略プログラム全体では25課題を実施しているのが現在の状況です。社会的・科学的課題というと,多少細分化されているところもあるのかと思い,もう少し大くくりで10課題程度ではということで考えています。いずれにせよ具体的には次回の議論というところもあるかもしれませんが,今のところはそのようなことで考えています。
【土居主査代理】  課題の粒度の問題が出てくると思いますが,この委員会自身はタイトルにあるとおり,重点的に取り組むべき社会的・科学的課題として一体何があるかというようなことで,昨年度までFSでいろいろと調査をされ,いろいろな課題,こういう重要な課題があると言われた説明が前回あったわけですが,ある意味において山のようにあるわけで,全部を拾うというわけにもいかないため,やはり我が国としてポスト「京」というものを考えたときに,どのような課題をまず重点的にやっていくべきかということを考えた上で,事務局案として例えば10程度なり,15程度なり出していただき,プライオリティを付けていただけると有り難い。それをもって次回議論し,それ以外のあるいは二次的な課題も出てきたりして,そこでまとまると分野のようになっていくという形で進むのではないかと考えてはいますが,そこでそれぞれの分野において粒度がまた変わってくるのだろうと思います。したがって,課題を決めていただくのに際して,なぜこの推進体制が出てくるのだということで,多少奇異にお感じになるかもしれませんが,出てきた課題を例えば進めるとすると,こういうようなイメージになる,今までの経験及び提言等を踏まえるとこのようになるのではないかという,そういうようなことでこれは見ていただければよろしいかと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
頂いた御意見を踏まえて,先ほどの住委員の御意見にありました代表機関の計算科学を取る点や,協力機関の中の産業界に記載があった「等」を外へ出すというようなこと等々勘案して,またその他の城山委員の御意見等も踏まえた上で,小宮山主査とも御相談して修正させていただくというようにしたいと思いますが,よろしいでしょうか。
本日,予定している議題は以上ですが,ほかに何かありますでしょうか。
【林委員】  机上配布の課題イメージ資料を見ていると,結構自分の研究に近い分野というか良く分かる分野であるため,こういうことも可能かというようなイメージを少しコメントさせていただきたい。前回の委員会でもコメントしたことと基本的には似ているが,大変計算量は多いかもしれないが,何かやっていることとしては貧弱なイメージを正直受ける。私たちとしては,是非お考えいただければ,あるいはシナリオに付けていただけたらと思っていることは,一つはマルチハザード化というものがあります。もちろん地震と津波もマルチハザードだと言えますが,これは連携している一つのハザードとして捉えられると思う。他方で,気候変動のいろいろなプログラムが走っている,あるいは雨が降るというようなこととを組み合わせてどうなるのかというのは,想像ベースではよく行う。また,驚かすことが好きな研究者の方は,何かというとそういう例を持ち出すが,本当にどうなるのかということはよく分からない。ただ確率的に言うと150年ぐらいに一遍ぐらいにいろいろなものが同期することはあるそうなので,例えば22世紀に海面上昇が大分進んでひどくなっているときに,例えば梅雨のときに地震が起きるなど,そういうシナリオも面白い視点になるのではないかというような意味で,マルチハザードを是非考えてみていただきたい。
二つ目は,せっかくこれをある種のモデルケースのように考えていただこうというのであれば,シミュレーションすべきところが建物の揺れと人間の避難では,言ってみれば何も新しいものがなく,分野創造的にならない。前回もコメントしたが,これから絶対に欲しいものは,都市というのは非常にたくさんのサブシステムの有機的な連携で成り立っているもので,その一つの例が建物の振る舞いだというふうに考えると,それ以外にもいわゆるライフラインと言われているような供給系,処理系,あるいは交通系のいろいろなものが複合に影響を受ける。それが3.11のときに帰宅困難者みたいな問題になるので,帰宅困難者の問題を本当に解こうと思った場合,実はいろいろなサブシステムがそれぞれに支障を受けて,それが相互に影響を増幅し合うようなところこそ,これはまた大変面白いシミュレーションになると思う。そういった状況に応じて人は避難するのであって,そういう周りのシナリオがリッチになってこそ本当の意味でのリアルな避難シミュレーションというものが出てくる。そういうことを考えていただくと,前に,新しい分野としてそういう都市のいろいろなインパクトを考えていく分野が必要だというような御指摘もあったが,そういうものをプロモートする文脈として,この災害を例にして考えていただくとすごく良いのではないかと思う。
また,自治体に還元するということで高知市の例が挙がっていて,南海トラフだから高知というのは分かるが,南海トラフで我が国が本気で考えなければいけないのは静岡県だと思う。静岡は最悪直下地震の揺れが襲う,原発もある,新幹線と東名高速道路も走っている,言ってみれば東西の大動脈であり,そこに政令指定都市もあり,インパクトが大きい。モデルケースとして高知からアプローチするということは,いわゆるサイザブルで良いが,国への影響,それから長期的なことを含めて考えると静岡のような,できれば静岡県単位ぐらいをフィールドに置いたマルチエージェントの都市システム,あるいはいろいろな社会インフラの総合インターラクションのようなものをやっていただきたい。恐らくエクサを超えるぐらいの計算量が必要で,次の次と言われるかもしれないが,ハザードの方のシナリオはある程度最悪から始めて,ボリュームを調整するようなことで考えていただきたい。前回から大分刺激を受けて,防災分野でどうやってパワーコンピューティングをやろうかということをいろいろ考えているが,フロンティアはそっちにある。都市をどう再構成できるか,どのようにマルチハザードにつなげるか,非常に大きな社会インフラへの影響を,そこは国が関与しなければ直っていかないため,それを確実に知るというようなところを戦略目標に置くのが良いのではないかと思う。
【土居主査代理】  課題のまとめ方に関する御意見を頂いたわけですが,そういうことを考えた上で,また御相談しながら,改訂したいと思います。ほかには何かありますでしょうか。御意見,全体にわたりましてでも結構です。
【瀧澤委員】  資料2-3の(2)に書かれていることはもちろん良いが,「京」については,産業利用枠もあって,そこで具体的にいろいろな産業界の方々から利用されていて,いろいろな効果があると思うが,この委員会のミッションの重点的に取り組むべき課題というものは,その産業利用枠のこととは別であり,そうしたときに,基本的には理学的な研究の中で新しい課題,大規模なシミュレーションや予測の高度化,実験の困難な事象の代替としていろいろな複雑系の中で相互作用が生み出すシステムの創発性等,先ほど平尾委員が言われた科学的な卓越性がまず一つは大事だと思うが,基本的にはそこで出た成果というものは,科学論文の形で発表されていって,直接的にすぐに日本国内の産業界にというよりは,世界的に科学的な共有の知として成果が発表されるものだと思う。そういった中で経済,産業への波及効果を考えたときに,従来の「京」のこういった重点課題の中では,具体的にこういうところに留意したから経済や産業への波及効果が高かったなど,あるいはどういう課題があるかということがもしあれば,今ここですぐにではなくても良いので,是非教えていただいて,選定のときにも参考にさせていただきたい。
【川口計算科学技術推進室長】  先ほど五つの戦略分野と言いましたが,この産業・経済への波及ということについては,分野ごとに結構色彩が違うと思っており,一番その点をやっているのが,分野4の次世代ものづくりというところです。資料3-1の18ページには分野4の実施体制を記載しており,戦略機関として東大生産研,宇宙航空研究開発機構,日本原子力研究開発機構,その周りにいろいろな大学,民間企業,アプリベンダー等,かなり多くの人たちを交えたコンソーシアムというものを作って,その中でアプリケーションを開発するということと,アプリケーションを実際に提供していろいろなケースに適用していくというところもあり,こういうまさに民間企業も巻き込んだ上での開発体制もありますので,こういうものが参考になるかと思います。
一方で,19ページは基礎科学ということで,ここは必ずしももともとそういう分野ではないというところもありますので,確かに全てが同じような体制で同じようなモデルというわけではなく,そこは課題ごとに多少取り組みの仕方に違いがあると理解しています。
【瀧澤委員】  そうすると,これからのポスト「京」の議論の中でも,どういった意味での経済波及効果があるかということはある程度前もって分かるというか,理解できる,想像ができると捉えていて良いか。
【川口計算科学技術推進室長】  はい。改めて見ると,資料2-3の(2)1の記載は少し分かりにくいですが,科学的なブレークスルーや我が国の産業・経済への波及効果ということで,幾つかの目標があって,一つは科学的なブレークスルーというふうに追求していくものもあれば,より産業・経済への波及効果もあるということで,そこは幾つかのパターンがあり,必ずしも全ての課題がそれだけというわけではないということかと考えています。
【土居主査代理】  ほかに何かありますでしょうか。よろしいですか。

(4)その他

田畑情報科学技術推進官より,資料4に基づいて今後の進め方について説明。

土居主査代理より閉会発言

お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付計算科学技術推進室

電話番号:03-6734-4275
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