資料4-2 HPCIコンソーシアムからの提言

提言
ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題とこれに関するアプリケーション研究開発体制,及びポスト「京」のシステムについて

平成26年(2014年)7月14日
一般社団法人 HPCIコンソーシアム

1.提言の背景

 一般社団法人HPCIコンソーシアムは,平成26年1月30日付で文部科学省に将来のスーパーコンピューティングのあり方についての提言(最終報告)を行った.その中で,頂点に立つ次期システム(フラッグシップシステム)については,「今後,社会的・科学的課題の解決に必要なシステム構成の詳細を国が決定するにあたり,HPCIコンソーシアムはその内容を確認する」と明言するとともに,頂点に立つ次期システムにおけるアプリケーション開発プロジェクトについて,既存の分野再編成,新分野の設定も検討しつつ,三つの類型で進めることを提案している.
 現在,国においては,ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題とこれに関するアプリケーション研究開発体制について,平成26年8月に報告書をとりまとめるべく,有識者による委員会(ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題についての検討委員会)にて議論を進めているところである.システム構成についても,有識者によるワーキンググループ(次期フラッグシップシステムに係るシステム検討WG)の活動がはじまっている.
 そこでHPCIコンソーシアムでは,ポスト「京」のアプリケーション研究開発体制,フラッグシップシステムの検討の双方についてコミュニティの意見を集約するため,平成26年6月に「ポスト「京」のアプリケーション,システムに関する意見集約WG」を立ち上げた.さらに同年7月4日には,広く関連分野コミュニティを対象とした「ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題とこれに関するアプリケーション研究開発体制,及びポスト「京」のシステムに関する意見交換会」を実施し,文科省から現在の検討状況に関する説明を受け,意見交換を行った.こうして集約された計算科学・計算機科学コミュニティの意見に基づき,以下の通り提言を行うものである.

2.提言

 国家基幹技術としてのポスト「京」のシステム開発,ならびにアプリケーション研究開発は,国家として重要な社会的・科学的課題の解決に向けて,世界を先導する成果創出と科学的なブレークスルーや産業・経済への波及効果が見込まれるものでなければならない.そのためには,研究者コミュニティのみならず産業界も含む,幅広いコミュニティからの参画とサポートを得られる体制作りが必要である.また社会的・科学的課題の解決に向けて,計算科学の役割が今後さらに重要になると予想されることから,計算科学,計算機科学の人材育成・分野振興について,ポスト「京」の次の世代も見据えた展望が必要である.このような観点から,以下の諸点を提言する.

(1)ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題(以下,重点課題)に関するアプリケーション開発・研究開発推進体制の構築に遅れることなく,人材育成・分野振興体制の構築を進め,両者の実質的な連携を図るべきである.そのために,これまで戦略プログラム等で培ってきた人材育成・分野振興の成果を踏まえつつ,分野横断的視点を加え,ピラミッド型のHPCI環境を活かしたHPC利用者層の拡大,関連研究者の育成,各分野が自律的に成長・拡大する体制作りなど,人材育成・分野振興に関する今後の施策を企画・立案すべきである.

(2)重点課題に係る実施機関の公募にあたっては,公募の趣旨を明確にし,応募側が適切な目標設定やグループ構成を提案できるようにすべきである.また,産業界の参入の在り方を可能な限り明確にすべきである.

(3)頂点に位置するシステムであるポスト「京」だけでなく,裾野のシステムもあわせたHPCI総体を有効活用することで,より大きな成果の創出が期待される.ポスト「京」の重点課題や,それと連携した分野振興においては,第二階層以下の計算機も含めたHPCIの利用やそのためのアプリ開発も想定して,制度設計を行うべきである.

(4)ポスト「京」のシステム検討にあたっては,頂点に立つこのシステムには,多くの利用者に利便性に優れた高度なシミュレーション環境を提供することで,最大の成果を出すことが求められている点に留意いただきたい.また,我が国の計算機科学の振興にも配慮し,ポスト「京」を補完する第二階層のシステムの整備・開発の検討を遅滞なく進めるべきである.検討においては,HPCI総体で成果を創出するため,ポスト「京」と相補的なアーキテクチャを持ったシステムを含め,我が国として取り組むべき技術要素を幅広く議論すべきである.

(5)ポスト「京」の開発で培われつつある,ハードウェア・システムソフトウェアの設計開発とアプリケーションの設計開発を協調して行うCo-designの考え方は,我が国のHPCの財産として,ポスト「京」以降の世代に向けて継承すべきである.

(6)国がポスト「京」のシステム構成の詳細を決定する本年秋以降適当な時期に,遅滞なくHPCIコンソーシアムと関連コミュニティに対する説明会を開催することを要望する.

以上.

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