ジャーナル問題に関する検討会(第5回) 議事録

1.日時

平成26年7月22日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省15F特別会議室

3.出席者

委員

浅島主査、安達委員、加藤委員、佐野委員、白石委員、竹内主査代理、谷藤委員、田村委員、永井委員、林委員

文部科学省

下間参事官(情報担当)、安藤振興企画課長、長澤学術基盤整備室長、松本参事官補佐、その他関係官

4.議事録

ジャーナル問題に関する検討会(第5回)

平成26年7月22日


【浅島主査】  それでは、時間になりましたので、ただいまより第5回ジャーナル問題に関する検討会を開催いたします。御多忙中、御出席くださいましてありがとうございます。本日は、ジャーナル問題に関する検討会の最終回になりますので、これまでの審議の最終的な取りまとめを行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局より配付資料の確認及び傍聴登録者等について報告をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  配付資料につきましては、議事次第のとおりでございます。資料1がジャーナル問題に関する検討会の議論のまとめということで、「審議まとめ(案)について」というものでございます。机上の資料としまして、オレンジの冊子、それから、これまでの資料につきましては紙ファイルにとじておりますので、適宜御覧いただければと思っております。それから机上で、番号は付してございませんけれども、科研費に関する要望ということで、永井委員の方から出していただいた、資料番号なしの1枚物をお配りさせていただいております。漏れ等ございましたら、事務局の方までお願いいたします。
 それから、傍聴登録、本日は38名となっております。以上です。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、早速ですが、審議のまとめ(案)について審議に入りたいと思います。この審議のまとめ(案)につきまして、前回の委員会におきまして提示しました、たたき台をベースに、先生方から頂いた御意見を踏まえまして、事務局で修正案を取りまとめた後に、改めて委員の皆様方に御意見を照会させていただいた上で作成しております。御協力いただきました先生方には、厚く御礼を申し上げます。
 それでは、事務局より、御説明をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは、事前にもお配りをさせていただいておりますけれども、少しお時間を頂きまして、資料1の説明をさせていただきます。
 こちらは、この検討会の審議まとめ(案)ですけれども、まず1ページ目に「問題意識」でございます。学術研究の成果というものは、論文がジャーナルに掲載されるという形で発信・共有されるということ、またジャーナルというのは、研究の進展を支えるということだけではなくて、産業界に関する技術移転の手段としても機能して、結果的に社会発展にも寄与するというものでございます。研究成果の社会還元につながるということで、ジャーナルは研究の推進におきましても研究成果の社会での応用を実現する上でも不可欠な情報資源であるというのが、一つ目のパラグラフでございます。
 その次ですけれども、ただそのジャーナルの刊行・流通におきまして、主体となる学協会や出版社の体制が欧米諸国の後塵(こうじん)を拝しておるということで、我が国の研究成果の実績に見合うものになっていないということ。それから、学協会が自発的に細分化する傾向がございまして、新たな学会を立ち上げる傾向が強く、運営体制も脆弱(ぜいじゃく)であり、そのために、海外の有力出版社に依存しているケースが多いということでございます。一方、研究成果というものは、他の論文への引用とか登載されたジャーナルの質によって評価される傾向がございますので、研究者の方々は海外を中心とした国際的なジャーナルに研究成果を投稿せざるを得ない事情があるということでございます。
 こういう状態でございますので、ジャーナルの整備というのは、半世紀にわたりまして学術基盤構築における最も重要な政策的課題の一つであり続けているということでございます。
 これまでの対応といたしましては、紙媒体主体の時代におきましては、総合目録の形成や図書館相互貸借の効率化によりまして、図書館間の学術情報の共有化を促進させてまいりました。それから、今世紀に入ってからは、ジャーナルの電子化が急速に進展する中で、図書館等の努力によりまして、ジャーナルの今日のビッグディールというものが実現して、これで各大学における学術情報のアクセス環境を大幅に改善させたというのも事実ございますということです。
 その下の「しかしながら」ですけれども、これらの対応は、ジャーナルの価格上昇自体を抑制する対策ではないということで、今般、またこの価格の継続的な上昇、結果包括的購読契約に依存しているということで、予算が硬直化している。それから、為替変動(円安)の影響。さらには今後、海外からの電子的サービスが課税対象になっていくということで、消費税が課税されますと、今のジャーナルのアクセス環境の維持というのは非常に厳しくなってきているというような現状がございます。
 こういう背景がございますので、要因は複雑なんですけれども、やはり購読の予算の増額以外の方法で、こういった学術情報資源としての重要な役割を担っているジャーナルを、どのようにして維持発展させていくか。それを主体的な問題として、次の2ページでございますけれども、本質的に考え直す時期に来ているということで、この検討会を作って議論している根拠になっているということでございます。その結果、健在している諸問題について討議した結果を取りまとめたというのが、この審議まとめの内容だということでございます。
 2が、ジャーナルの利用状況と価格上昇への対応ということでございますけれども、現状としましては、まず電子ジャーナルの利用というものは、自然科学だけではなくて、人社系の領域でも進んできておるということでございます。ジャーナルの購読価格につきましては、大学等の諸経費、総経費に占めます資料購入費の割合が減少し、図書館経費も減少する中で、ジャーナルの平均値上げ率は年7.8%ということで、平成24年度のジャーナル講読経費は総額で227億円に上っていると。
 こういった価格が上昇し続ける要因といたしましては、一つが国際的な論文の増加。二つ目が、ニーズに対して代替品が存在しない、競争が成立しない。3番目が、研究発表の場であるジャーナルの刊行が、商業出版社に依存している傾向にある。それから4番目として、利用者の研究者と購入者、図書館等が異なっているために、需要を超えて利用環境を求めるモラルハザードとか、そういったものが複雑に影響しているということでございます。この対応としまして、JUSTICEというコンソーシアム連合で対応して、一定の成果を上げていますけれども、やはり価格競争の要因そのものを取り除くのにはつながっていませんので、限界があるということでございます。
 ジャーナルの購読形態の現状でございますけれども、いろいろなパターンがあります、ということで、ジャーナルごとの購読、それから出版社の刊行する全てのジャーナルを利用可能とするビッグディールと言われる購読契約。それから、論文単位の購読。それから、ジャーナルごと、若しくは論文単位を組み合わせて、購読料を事前に支払するような契約。それから、出版されている出版社のジャーナルを横断的にパッケージしたものの購読、アグリゲータ系。それから、バックファイルを購読するようなもの等いろいろございます。
 それから、包括的購読契約に対する問題点でございますけれども、これの内容につきましては、過去のある時点の購読契約を、購読金額を基礎に、上乗せなし、若しくは相当額を上乗せすることによりまして、全てのジャーナルへの電子的アクセスを可能にするというものでございますので、このジャーナルが利用できるものであったとしましても、過去の契約金額や大学の規模によって支払が異なるという特徴がございますので、もともと購読していたジャーナルタイトル数が少ないほど、この利点が大きいということ、又は解消した場合には、再度その利点を得ることはできないということが、この契約見直しを慎重にさせる要因になっているということでございます。
 大学の対応としましては、こういった状況でございますけれども、ジャーナルに対するニーズとか利用状況をデータに基づいて分析した上で、このビッグディールの見直しを行っている大学がある一方で、そのメリットが大きいので契約継続している大学、様々ございます。購読経費の負担方法につきましても、本部・図書館経費から、あるいは部局負担等様々ございます。さらには基盤的経費で払えなくて、他の経費からの支出を余儀なくされるところもあるということでございます。
 具体的な対応につきましては、委員の先生方の所属大学の状況を御報告いただいた内容を、大学名は一応伏した形でABCDE、それからF研究機関という形で、一応記入をさせていただいてございます。こういった状況がございます、ということの御紹介でございます。
 それから、今後の課題及び対応の方向性といたしましては、ジャーナルの購読契約の見直しに当たりましては、こういったことが必要だということで、一つはデータをとること。それから2番目は、必要とするジャーナルを把握すること。3番目は、購入予算の裏付けを明確にすること。4番目、選定するルールを明確にする。5番目は情報をオープンにするということが、見直しに当たって必要だということでございます。各機関の取組事例とか情報を、可能な範囲で共有するということが有用だということでございます。
 その上でどういうふうに対応すべきかということでございますが、大学の特徴というものを視野に入れまして、教育研究に不可欠な情報資源として、ジャーナルを責任を持って整備するということを第一に考える必要があるということでございます。その上で、いろいろな購読契約がありますけれども、最も合理的なものを各大学が判断して選択することが求められるということで、そのために必要な情報、データの収集・情報提供等々につきましては、大学等の図書館が責任を持って行って、機関内で意思決定者と十分な情報の共有を行う必要があるというふうなまとめにしてございます。
 5ページのナショナル・サイト・ライセンスに関する記述でございますけれども、国として出版社と包括的購読契約を行うナショナル・サイト・ライセンスによってジャーナルの提供をしてほしいという声もございます。しかしながら、これは結局、様々な大学、研究機関のニーズを一律に調整して決定するということが必要になってきますので、こういったことは困難であると。それから、既に様々な契約を行っている大学がありますが、それらを全てフルパッケージとするということでございますので、経済的な観点から、合理的かどうかも議論のあるところである。さらにはこの方法も、ジャーナルの価格上昇を抑える対策ではなくて、結局この契約が固定化して、予算の硬直化を招くということには変わらない対応であるということでございます。結果として、この財源をどこに求めるのか、それから、このライセンスを導入することによりまして、結果的に研究費本体への圧迫を招くことになれば本末転倒だということでございまして、やはり購読の規模のメリットを追求するということであれば、既存のコンソーシアムの中で、より合理的な購読契約の在り方について、問題を共有する機関間で検討した方がいいということでございます。
 一方で、オープンアクセス化の動きということも関係しておりまして、研究成果に無償でのアクセスをするオープンアクセス化の動きが顕著になってきておりますけれども、この包括的購読契約の見直しの流れとオープンアクセスの促進というものが、この現行のジャーナル出版の体制に変化をもたらす可能性が強いということでございます。さらに、セーフティネットとして論文を機関リポジトリで公開するオープンアクセスを全国的に推進して、研究成果にアクセスするルートを複数確保するということは、大学等が知識を共有できる環境を創出するという意義として非常に大きいということでございます。そういう観点から、各図書館が積極的にこういったリポジトリの運用、それから環境整備に関与することが望まれるという形にしてございます。
 3番目が、オープンアクセスの推進についてでございます。オープンアクセスというものは、誰もがインターネットを介しまして無料でアクセスすること、及び再利用を可能にするということでございまして、オープンアクセス出版という形と、セルフアーカイブという、ゴールドとグリーンという二つのやり方がございます。
 オープンアクセスを推進する意義というものですけれども、単にジャーナル価格の継続的な上昇への対処だけではございませんで、6ページですけれども、研究成果の共有と再利用を促進するということで、研究開発の費用対効果を上げて、学際的な機運を促して、イノベーションの創出を促すという側面があるということで、情報アクセスの不平等の解消というだけではなくて、科学そのものの発展、産業の創出という潜在的な波及効果を有しているということで、この意義をまとめております。
 世界的な動向といたしましては、25年5月のグローバルリサーチカウンシルにおきます、オープンアクセスに関するアクションプランとか、G8の科学技術大臣・アカデミー会長会合におけますこういった基本的な方針というものが確認されまして、更に26年3月には、フォローアップをする場も設置されたということでございます。
 諸外国におきましては、アメリカではNIHによる助成を受けた研究成果についてPMCという主題リポジトリで公開することが義務化されていると。イギリスでも、Wellcome Trustという財団が義務化しています。ドイツではAPCを補助するようなプログラム。EUにおきましては、研究成果のオープンアクセス化を原則とする方針を示しているということでございます。
 片や日本の状況でございますけれども、基本計画におきまして、オープンアクセスジャーナル、リポジトリの構築という、オープンアクセスを促進するということが求められておりまして、具体的な方策としましては、科研費を改善するとか、JSTのプラットフォーム(J-STAGE)の高機能化ということで対応してきております。JSTにおきましては、研究成果のオープンアクセスの推奨を表明しておりまして、今後の義務化に対する議論も行っております。
 NIIにおきましては、機関リポジトリの開設を促して、コンテンツを流通する各種事業や、JAIRO Cloudという共用のプラットフォームを提供しております。また、理解増進のためのセミナー開催等、SPARC Japanという取組も実施しております。
 国の関係では、学位規則の改正によりまして、博士論文のインターネット公開をリポジトリで義務化しましたので、結果としてその構築が進むということと、論文の利活用の促進と質の向上という、その役割に対する認識が改めて広がったということを書いてございます。
 今後の課題と対応の方向性でございますけれども、学術論文のオープンアクセス化は世界的な潮流でございますが、我が国の研究者等にオープンアクセスの意義が十分浸透しているとは言い難いという現状でございます。こういった課題を解決して、研究成果の共有化と利活用を促進すると。それでイノベーションを創出するという観点で、オープンアクセスが重要だということにつきまして、研究者や学協会の関係者の理解を促して、コミュニティに定着させることが肝要ということでございます。
 オープンアクセスの義務化ということで、我が国におきましても、JSTの支援事業とか、科研費等で行われた研究成果の学術論文について、オープンアクセスの義務化を図るなど、こういったオープンアクセスが公的研究費を受けたものは当然だという意識を研究者に普及させていくことも重要だという書き方をしてございます。
 オープンアクセスの拡充方法といたしまして、やはり我が国といたしましては、機関リポジトリのグリーンOAというものを基盤に拡充していくということがふさわしくて、それと同時にオープンアクセスジャーナルの育成にも努める方法が妥当だということでございます。機関リポジトリにおきましては、NIIの先ほど申し上げましたJAIRO Cloudを提供しておりますけれども、これを拡充していくことが望ましいということでございます。
 OAジャーナルにつきましては、やはり掲載する論文の質を保証するということが重要だということでございまして、学協会に対しては、信頼に足る査読制度の構築に取り組むことを推進する必要があるということでございます。その支援策といたしましては、やはり評価の定着していないジャーナルの立ち上げ期を支援するための科研費の助成の充実とか、それから、出版プラットフォームであるJ-STAGEを強化することによりまして、学協会等が協同して、質が高くて研究者が負担するAPCを低額に抑えることが可能なオープンアクセスジャーナルというものを構築していくことが望ましいという書き方にしてございます。
 8ページでございますけれども、その上で、商業出版社が新たなビジネスとしてオープンアクセスを位置付けているというところがございまして、このAPCの高額化に対する懸念とか、購読型ジャーナルにおけますオープンアクセスオプションということで、APCと購読料の二重取り(ダブルディッピング)になっているのではないかというふうな御指摘に対するウォッチが必要だということでございます。この点に対しては、図書館と出版社・学協会双方で、こういった妥当性とか、算出根拠の検証等に注意していく必要があるということでございますし、また学会の会費も含めて多重払いが生じているということも留意すべきだということでございます。
 さらなる展開といたしましては、単に論文のアクセスのオープン化にとどまるものではなく、自由な利活用を求めるということでございますので、学協会の方で、著作権ポリシーを明確にしていただかないと、リポジトリの登載が進みませんので、こういうことをしていただく必要があるということでございますし、論文の根拠となるデータにつきましても、機関リポジトリに載せていただくということで、研究成果の信頼性の向上にも努めていくということが重要だということでまとめさせていただいております。
 それから、4番目、日本発のジャーナルの強化でございますけれども、別の視点で見ますと、少子化が進んできておりますので、こういった中で日本がこれまでどおり知的存在感を保っていくためには、国内外の優れた研究成果を日本から発信・流通させる体制の一層の強化が必要だと。このことが海外の優秀な人材を引き付けることにつながるということでございます。
 しかしながら、日本はやはり有力なジャーナルの発行は決して多いとは言えないような現状とか、それから、優れた研究活動の成果というものを国内外に力強く発信していく体制が必要だということが、審議会や学術会議から指摘をされているところでございます。
 また、新興国の状態でございますけれども、トムソン・ロイターの提供するWeb of Science Core Collectionというものに載っているジャーナルは、日本も増えていますけれども、韓国、中国、ブラジル等の伸びの方が大きいということでございますし、9ページのところでございますが、中国とか韓国では自前で用意したデータベースによりまして、トムソン・ロイターのWeb of Scienceで提供するというふうな、積極的な自国の研究成果の流通が進んでいるところでございます。
 こういうことに対して、我が国の支援の取組ですけれども、科研費の研究成果公開促進費の「定期刊行物」を「国際情報発信強化」に変更いたしまして、ジャーナルのグローバル化を推進する取組を支援しておりますし、J-STAGEにおきましては、こういった国際的な利活用を促進するための使用言語のXML対応とか、そういった機能改善を進めておるところでございます。また、その論文流通の際に必要となる引用情報につきましては、未整備のものに付与するという事業もJSTの方で開始したところでございます。
 今後の課題と対応の方向性でございますけれども、これまで日本の学協会のジャーナルというものは、国内のコミュニティを主たるターゲットとしていたところが多く、細分化も進んで運営体制も脆弱(ぜいじゃく)であり、それとまた研究者にとりましては、世界的なジャーナルに論文を発表する方が評価の上でプラスになるということで、国内ジャーナルに投稿するインセンティブが働かないということが、国内ジャーナルの評価が向上しない構造につながっているということでございます。
 こういったことを一朝一夕に変えることは難しいですけれども、やはりこういったものを変えていかないといけないということで、先ほどの流れでございますけれども、若年層の減少を見据えて、ジャーナルの評価を高めるということで、国内外から優れた成果が日本に集まる体制を構築して、グローバルな研究コミュニティとして活性化を促していく必要がある。そのためには、我が国のジャーナルの質的向上は不可欠だと。そのため、複数の学協会が協力して、質の高い魅力的なジャーナルを刊行しようという取組や、ジャーナルを刊行する学協会、編集委員長などが情報交換をする場を設けて、編集体制の強化やジャーナルの国際流通力を高めるための情報・ノウハウの共有等、相互の連携を強める取組を推進していくことが必要だということでございます。
 また、人社系ジャーナルの流通の強化というところも力を入れるべきだということでございまして、自然科学系のみならず、人社系についても強化が必要だと。海外からのアクセスが円滑に行われるように、人社系のジャーナルにつきましても電子化を一層促進させるということと、国際的に流通する二次データベースへの収録を進める必要があると。和文誌につきましても、英文抄録を作成して併せて掲載することで、海外からの確実なアクセス向上が期待できる。このことで、論文の盗用(日本語で発表されている論文を翻訳して自分の論文として英文誌に投稿するような行為等)の防止にも寄与するということでございます。
 10ページでございますけれども、ジャーナル支援の充実という観点からしますと、これまでも言ってきておりますけれども、科研費の研究成果促進費の見直しによりまして、国際発信力の強化が必要な方向性として明確に示され、オープンアクセスジャーナルについて支援が行われるようになったことは特筆できるということでございまして、この補助金の成果が効果的に上がるように、計画調書の見直しや、適切な審査員の配置を進めること、中間評価を厳しく行って国際発信力の強化に真摯に取り組む学協会を適切に評価する体制を整えた上で、複数年採択数の増加を図るなど、支援の充実を図るべきということにしてございます。
 また、プラットフォームの強化というところで、J-STAGEにおきましては、やはり戦略的なマーケティングなど、国際水準での論文流通のための機能強化、プラットフォームとしての国際的な存在感を増すということを検討すべきであるということでございます。国内だけではなく、海外のジャーナルも受け入れることによりまして、海外からの有力論文を日本から発信・流通する可能性に道を開く。また、日本のハイレベルな論文を紹介するためのレビュー誌をJ-STAGEから発信すること等によりまして、登載論文の利活用の促進及びJ-STAGEの国際的な存在感の向上が期待できるということでございます。
 また、評価指標等の整備でございますけれども、こういった評価におきまして、特定の指標に過度に依存することなく、例えばインパクトファクター以外の指標を用いるなど、分野間の相違の補正値など複数の手法の導入や多角的評価をすることが必要だということでございます。一方で、大学等のランキングにおきましては、論文の引用数が評価指標の一つになってございますので、世界的な引用データベースに収録されないジャーナルとか、人社系など日本語で成果を発表する分野についても適切に評価することが求められるということでございまして、JSTが開始しました引用情報の整備というのは重要になってくるだろうということでございます。
 一方で、日本のジャーナルは、やはり情報分析というものが不十分で、国際発信した結果を定量的、定性的に評価できていませんので、こういったことができる人材の育成も併せて必要だということでございます。
 また、日本のジャーナルといいますのは、国際的には後発でございますので、特にいろいろなことを考えなくていいということだと思いますけれども、情報発信を考える上で、新しい評価手法の整備とか、学術情報流通モデルを構築して、この学術情報流通を改革するような取組が求められるということで、こういった指標の策定につきましては、関係する全てのステークホルダーが参画して考えるべきだということでございます。
 11ページで最後のところでございますけれども、これまで現在のジャーナル価格の継続的な上昇などは、長年にわたって形成された世界的に共通な問題でございまして、短期的にこれを解決する方法は見当たらないということでございます。だからといって、ジャーナルの購読コストに膨大な予算を支出し続けるのは適当ではないということでございます。
 当面の策といたしましては、引き続き研究成果としての論文や関連データのオープンアクセス化を推進するということが重要だと。そのために機関リポジトリの構築・収録コンテンツの充実を図るとともに、日本のジャーナルについてもオープンアクセス化を推進していくことが肝要だと。
 大学等におきましては、各機関の状況に応じましたジャーナルの契約形態の見直し、学問領域ごとの需要に応えるジャーナル・論文取得の最適化、新たな購読方法の創出とか、併せてセーフティネットとしてのオープンアクセスの推進ということで、包括的購読契約等の従来のジャーナル購読モデルに過度に依存しない環境整備への転換が必要だということでございます。
 このような取組のためには、やはりステークホルダーの意識改革が何より必要だということでございます。研究者が有力ジャーナルへ論文数を競って、それを国も評価するという状況が変わらない限り、価格の上昇基調というのは継続していくと。国としても評価に関する姿勢を改めて、オープンアクセスを推進していることを研究者に積極的にアピールして、意識改革に努めることが重要だと。大学におきましても、教員・研究職員の評価の際に、研究成果の評価を多面的な指標を活用する体制を整備すべきであるということであります。
 ただ、日本のジャーナルにつきましては、刊行する学協会の環境が異なりますので、画一的な対応を求めるものではないというふうなことを一応前置きした上で、科研費の充実とかJSTが提供するプラットフォームのJ-STAGEを活用したりして、民間出版社を含む我が国における学術出版市場の活性化とか、官民協同による国際発信力の強化とか、オープンアクセスを推進して、やはり海外の出版社に過度に依存しない体制に転換していく必要があるということでございます。
 今後は、やはり国とかこういった学術情報流通に関わる諸機関で、NII、JST、ファンディングエージェンシーとか学協会、大学、研究機関、図書館等がそれぞれの課題の改善に向けて責任ある取組を評価していただきたいということでございまして、特にNII、JST、それからJSPSが各大学、各学協会のニーズを踏まえながら、連携して課題に取り組む体制を構築することが不可欠だということでございます。大学等におきましても、オープンアクセスを含みます、オープンサイエンスを包括的に捉えた学術基盤の創出に取り組むべきであるということでございます。
 最後に、こういったジャーナルの環境や学術情報の流通体制の変化は激しいので、こういった動向を踏まえながら、適切に対策を講じていく必要がございますので、こういった各ステークホルダーが協同して、継続的な討議の場を持つことが必要だというふうなまとめにしてございます。
 ちょっと説明が長くなりましたけれども、以上でございます。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。ジャーナル問題に関する検討会の審議のまとめ(案)でございますけれども、今、長澤室長に説明していただきましたように、このまとめの結果は5章からなっております。第1章は問題意識というので、1ページ目にありますね。第2章がジャーナルの利用状況と価格上昇への対応ということであります。第3章が、5ページにあるオープンアクセスの推進ということで、そしてずっといきまして8ページ、日本発のジャーナルの強化についてということ。そして11ページ、「おわりに」ということで、5章から成り立つものでございます。
 まず最初に各先生方に、これについて何か御質問、御意見等あれば述べていただきたいと思います。どうぞ、自由にまず述べていただきたいと思います。はい、どうぞ。

【佐野委員】  最初に軽微なことから。11ページの下から6行目です。「研究資料の収集・利用・オープンアクセス」と、ずっと中ポツが続きますが、多分中ポツが混同しているんじゃないかと思うんですね。「研究資料の収集と利用・」、ずっときて、「オープンサイエンスとして包括的に捉えた学術と研究」、ここのところが中ポツがちょっとどういうふうになるのか分からんのですが、中ポツを使うんだったらコンマにした方がいいのか、ちょっとここら辺のところが混同されているのかなというふうに思っています。
 それから、あと私の方は、もうよくまとめられて大変結構だと思うんですが、一つは、なぜジャーナル問題が起こってきたかを考えますと、外国の出版社に学術情報の主導権を握られてしまった。それが価格上昇にはね返ってきているということで、なぜ主導権を取られてしまったかというと、学協会の脆弱(ぜいじゃく)さにある。じゃ、なぜ学協会が脆弱(ぜいじゃく)かというと、日本国内だけでの会員数によっているというような問題があって、これを強化しようということを言っているんですが、多分それを強化しても、余り構造は変わらないだろうと。もちろん国が多大なお金を出せば、その構造は維持できますが、国の財政状況から考えて、持続可能な財政支出は無理だろうというふうに考えます。
 そうなると、人材がどこに非常にあるかというと、実は図書館にかなりいい人材がたくさんそろっています。つまり、図書館というのは従来は、学術情報の収集・蓄積というのに重点を置いておったんですが、そこに新たな機能として、学術情報の発信というのを付け加えて、機関リポジトリという形になるんですが、更にそれを学協会と連携して、図書館が学術情報の発信を行う。あるいは、そういう機能を新たに持つことが求められるとか、そういうふうな形が私は望ましいんだろうと。そうすると、これは日本発ジャーナルの強化についてのところの(2)の今後の課題と対応の方向性のところで、例えば学協会活動の強化と新たな図書館の役割とか、そういうので図書館のそういうような学術情報に関して、機関リポジトリのみならず、学協会と連携しながら学術情報の発信というような役割を新たに担うとか、そういうのがいいのではないかというふうに私自身は思います。
 それからもう1点、やはり中国等がやっているような、いわゆる二次データベースを作るというのは非常にいいと思うんですが、それをどこまで書き込むかなんですが、Web of Scienceを使って提供するというような、そういうような文言まで一歩踏み入れることが、僕は必要なんだろうと。ただ、ここに書き込むかどうかというのはちょっと微妙なところがあるんですね。ここは非常に賢くやらないといけない。以上です。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。それでは、一つずつちょっと対応していきたいと思いますけれども、まず11ページのところですね。このカンマの入れ方について、何かございますでしょうか。例えば、「収集・利用」でカンマして、オープンアクセスを…。

【佐野委員】  多分これは、「研究資料の収集と利用・」なんだろうと思うんですが、違いますかね。

【浅島主査】  研究資料の収集利用…。

【佐野委員】  と利用。

【浅島主査】  と利用ですね、はい。

【佐野委員】  それから、「オープンアクセスを含む発信」、これはいいですね。「イノベーションを創出するオープンサイエンスとして包括的に捉えた学術・研究情報」というのは、これはちょっとどういうふうに。学術の創出、学術情報流通基盤ですかね、これがちょっとどういうふうに結びついているのかが私も分からないのですが。

【浅島主査】  これは何か御意見ございますでしょうか、ここのところ。文章で、何か案があれば。

【竹内主査代理】  今、佐野先生から御指摘があったように、下から6行目の「研究資料の収集と利用、オープンアクセスを含む発信、イノベーションを創出するオープンサイエンスとして包括的にとらえた学術」、次は中黒のままでよろしいのではないかと思いますが、「学術・研究情報流通基盤の創出に取り組むべきである」ではいかがでしょうか。

【浅島主査】  では、今の皆様方の御意見だと、確認しますと、「研究資料の収集と利用、オープンアクセスを含む学術・」このままで、「研究情報流通基盤の創出に取り組む」ということで、これでよろしいですか、佐野先生。

【佐野委員】  はい。

【浅島主査】  2番目の問題は、この4ページの今後の課題及び対応の方向性という中で、一つ付け加えてほしいといったのは、学協会の役割と図書館の強化ということですかね。

【佐野委員】  はい。それを例えば、二つ三つの可能性があるんですが、一番適切なのは、やはり4の日本発ジャーナルの強化のところの(2)今後の課題と対応の方向性のところの学協会活動の強化の中に、図書館の役割をもし盛り込むならば、学協会活動の強化と新たな図書館の役割とか、そういうようにするのか。あるいは、もう一つの方法としては、5ページのところのジャーナルの利用状況と価格上昇への対応のところで、オープンアクセス化の動きの中で図書館の役割を盛り込むのか、そのくらいのところなんですが、一番適切なのは、さっき言った9ページのところに盛り込むのがいいんだろうと思うんです。
 ただ、これは果たしてそこまで図書館に求めるかというのが若干議論は必要になるだろうと。ただ、私自身としては、図書館というものが従来は学術情報の収集・蓄積だけになっていた結果として、学協会の活動が脆弱(ぜいじゃく)になってしまって、それが今の事態を招いているというのが私の分析です。そこに一番資源を効率的に、またコストパフォーマンス良くやるならば、優秀な図書館職員がそういうふうな方向に目を開いていただければ、一番うまくいくだろうというのが、私の感覚です。

【浅島主査】  これは非常に重要なことですので、これについて御意見ございますでしょうか。では、竹内先生。

【竹内主査代理】  学協会に関してこういうふうに書くことについては、やっぱり学協会及び出版をやっていらっしゃる方の御意見をお聞きしたいと思います。その前の話として、今回のこの審議まとめでの人材に関する扱いですが、学術コミュニケーションに関わる人材養成の話が何回か意見として出ていたような記憶はあるんですけれども、この最後のまとめになってしまうと、人材のことが評価の指標などを作るというところに小さくまとまってしまっている印象があります。
 なので、佐野先生から御提案があったように、図書館員が出版という活動にまで学協会と協力して関わるといったことも含めて、学術コミュニケーション全体を担う人材の育成の必要性というのをどこかに入れておく必要があるのではないかと思います。その中の具体的な事例としては、例えば十分な能力を持っている図書館員が、例えば学協会と協力して出版もできるような方向性といったような具体的な事例を挙げるというのが、一つの解決策としてはあるかなというふうに思います。ただ、どこに入れるんだと言われると実はかなり難しくて、すみません、そこについてはアイデアがまだありません。

【浅島主査】  人材育成は非常に重要でありまして、どこの分野でも最近、人材の育成がなかなかうまくいっていないというところが日本ではありますので、どこかここのところの、今後の課題と対応の方向性の中の、先ほど佐野先生は、学協会の活動の強化と新たな図書館の役割と述べましたけれども、これはこのままにしておいて、そして図書館にいる人材も含めて、新しい人材育成というようなものについては、例えば10ページの下あたりのところですね。「おわりに」の前に人材の育成ということで、図書館にいる人たちや学協会の人たちを含めて、人材育成をこれからやっていかなきゃならないというような文章を付け加えることでよろしいでしょうか。

【佐野委員】  はい。

【浅島主査】  それはある面でいうと、JSTの中でも人材育成というのが起きてきますので、あるいはNIIも。ですから、人材育成の部分については、新しく付け加えるということでよろしいでしょうか。安達先生、何かありますか、御意見。

【安達委員】  特にありません。ただ、どの分野でも人材が不足していると言っているので、具体的に説明しませんと、少子化の中で何ともならないのではと思います。

【浅島主査】  いろいろな分野で言うことがやはり重要で、ある面でいうと、ここでもどういう人材を育てるかということも含めて、若い人たちも含めて、もう一つは、異分野の人の人材育成も重要なので、そういうものをちょっと入れておくというようなことでいかがでしょうか。一応書いておくと。

【竹内主査代理】  どこに入れるかということを考えたんですが、一つは、第2章の一番最後、5ページの下から十一、二行目というか、3の直前ということになりますが、実際にここで「各図書館は」ということで、「その支援のため、機関リポジトリの運用のみならず」ということが書かれておりますけれども、この後に図書館員、言ってみれば学術コミュニケーションの担い手としての人材の強化といったようなことを加えるというのが、一つ考えられると思います。
 それから、日本発のジャーナルの強化という観点からも、人材の問題というのは当然出てくるわけで、その人材については、評価指標等の整備ということが10ページの下から8行目のあたりに書かれていますけれども、ここを単に評価・分析をできる人材ということではなくて、そのジャーナルの出版のことに関して十分な知識を持った人材の育成ということをここに加えるというような形で一応入れておいて、もし必要があれば、「おわりに」の中でもう一度人材の問題が重要だということを繰り返すというふうにしてはいかがかと思います。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。どうぞ。

【谷藤委員】  佐野委員の御提案について、もう少し具体的にお聞きしたいのですが、ここで人材育成とはどのようなイメージでしょうか。例えば大学図書館員と、学会ジャーナル編集者では専門性が異質のものですが、二者の最大公約数はいずれも学術コミュニケーションに関わる職業であるということかと思います。
 人材育成の別の側面では、科学界も少子化に向かっているので、学術コミュニケーションに関わる人を継続的に育成し増やしていこうということだとすると、図書館と学会が人事交流を通して専門的なノウハウを分かち、かつ新しい経験を積むことによって、作って売ることと、買って管理することの二面性を共有するメリットがあるかもしれません。前回の会議で提案しましたけれども、若い人だけではなく、これからはシニアの人も含めて、総体として学術コミュニケーションに携われる人を増やすことも考えてはどうかと思います。

【佐野委員】  多分、理系の場合は、日本化学会、日本物理学会、応用物理学会、それぞれのジャーナルを既に出しておられて、それが世界的な評価も得ているということで、その部分については、私、それほど今のところで問題にしていないんですが。人文社会系の場合ですと、多くの場合は大学、企業という形で、極めてドメスティックな形でしか展開されていないということで、それをいわゆるインターナショナルジャーナルに持ってくるような形ですから、実を言うと学協会もない状態でいるというのが現在の状況です。
 化学会、物理学会、それからもうちょい、高分子学会とかそういうのはいろいろありますが、そこら辺のレベルの大きさであれば何とか人を抱えてジャーナルを出していくということまではいけるんですが、そうじゃない理系の分野も、極めて脆弱(ぜいじゃく)な体制になっている。特に私の言いたいのは、インターナショナルジャーナルじゃないものをインターナショナル化していくための支援というのは、やはりエディターと非常に密接に結びついた、その部局の図書館職員がやらざるを得ないんだろうというのが現実的な対応なんだろうと。つまり、学協会が新たに人を雇ってなんていうお金がないわけですから。将来的にも、サラリーがしっかりとずっと出せる、給料が上がっていって出せるという状況ではないわけですから、それを誰かが支援しないとしっかりとした体制には、学協会の体制にはならないだろう。
 そうすると、その資源をどこから持ってくるかというと、一番簡単なのは図書館職員がそういう専門職を作ってそういう支援をするのが一番効率的だろうというふうに考えています。
 したがって、今、それなりに動いている日本化学会にしても、幾つかのものがありますし、物理学会も応用物理学会も幾つかのものがあるんですが、そういうところではないところの支援をどうするかということを、私自身は考えて言っております。

【浅島主査】  この人材育成というのは、幅広い意味があるとは思いますけれども、ここではちょっと今言ったような編集体制なのか、それともジャーナルの、学協会とのつながりを求めているのか、図書館のいわゆる新たな役割の変化みたいなものを求めているかということがちょっとありますので、これについては、是非人材育成という言葉はいいんですけれども、その中身はちょっとまた御検討させてもらうということでよろしいでしょうか。はい、どうぞ。

【林委員】  2週間後に機関リポジトリ研修で(機関リポジトリから情報発信を積極的に行うための参考として)学協会編集者の心得とは何ぞやという話題提供を仰せつかっている私からすると、佐野先生のおっしゃりたいことは非常によく分かりまして、そのコンテキストは、竹内先生がおっしゃられている、ページ5のオープンアクセス化の動き、この論点と図書館の新たな役割という形で、佐野委員がおっしゃられたこと、あるいは竹内先生がまとめられたことを取り入れるべきだと思います。
 一方、学協会の方の発信というのは、どちらかというと確立されたフレームワークで、しっかりとした編集・審査体制でブランディングを行い、研究者に魅力的で研究評価につながるようなジャーナルを出すという、先ほどとはちょっと違うコンテキストが入りますので、こちらの方はそのまま独立させておいて、飽くまでその先の評価指標のところの整備のところで、図書館と学協会が一緒に考えていきましょう、とする流れが良いと思います。受信と発信の協働は日本学術会議の包括的学術誌コンソーシアムで出てきているコンセプトでもあるので、それも引き合いに取り入れるのが、一番きれいに収まるのかなと思って拝見しておりました。

【浅島主査】  そうしますと、あとはちょっと文章はどこに載せるか分かりませんけれども、どういうふうにしてこれを、日本発のジャーナルを強化していくときに、先ほどちょっと言いにくいんですけれどもとおっしゃっていましたけれども、例えばこの辺については、JSTさんがかなり大きな役割を担うと思うんですけれども、世界展開していくときのストラテジーみたいなものはございますかね。

【加藤委員】  先ほどのお話ですか。

【浅島主査】  ええ、そうそう。

【加藤委員】  先ほどのお話は、賢くやるためにはこの程度でよろしいんじゃないかなと。9ページのところに書いてありますけれども、そのところに書いてある程度の表現でよろしいかなと。現実には、佐野先生にいろいろアドバイスも頂きまして、少し総合的に、これをやりますというとこれだけが仕事になっちゃうので、総合的にちょっと検討いたしていますので、表現はこの程度でよろしいかなと思っております。

【浅島主査】  じゃ、このところについては、このままで。いいですか、佐野先生。では、そのぐらいにしておきます。
 ほかに何かあれば。はい、どうぞ。

【安達委員】  全体ですか。

【浅島主査】  何でもいいです。

【安達委員】  それでは、幾つかあるので言わせていただきます。まず第1ページ目の下から10行目ぐらいに、シリアルズ・クライシスについて書いてあるのですが、これは歴史認識に関わることになりまして、図書館の方の認識として、ビッグディールが実現したことによって、シリアルズ・クライシスの解消に貢献という認識で正しいでしょうか。シリアルズ・クライシスというのは、きちんと解消されないまま今に至っているのではないかと私は思います。たまたま円高などでしのいではきたものの、かなり本質的な問題であると思います。
 もしこの文章を尊重するのであれば、「シリアルズ・クライシスを多少とも解消し」ぐらいでしょうか。

【田村委員】  「緩和」ではいかがでしょうか。

【浅島主査】  緩和ね、はい。

【安達委員】  次は、よろしいでしょうか。

【浅島主査】  はい、どうぞお願いします。

【安達委員】  3ページ目の真ん中ほどの「(大学等における対応)」の上から6行目に、「研究経費を削って図書館予算に回す」というのはストレートな表現でして、図書館予算でないケースもあるので、「購読経費」にしてはどうかと思います。必ずしも図書館予算に研究費を回したというわけではないと思います。
 その下に、「A大学では」というケースがあるのですが、その2行目に、「パッケージ数件をインフラパッケージと見なして」という表現についてですが、この文書では、パッケージというのはアグリゲータ契約のものに使われていますので、ここのパッケージというのは、その上に出ている「包括的購読契約」の意味だと思います。誤解を避けるためには、日本語で包括的購読契約とするかビッグディールということにするのが適当ではないかと思います。
 次に8ページ目の上から5行目に、ダブルディッピングという言葉で、「APCと購読料の二重取り」というのが書いてあります。この文書には用語集はお付けになる御予定ですか。

【長澤学術基盤整備室長】  はい。

【安達委員】  そこにダブルディッピングの解説も書くのでしょうか。誤解が多くみられるのですが、私の理解では、ダブルディッピングというのは、ハイブリッドなオープンアクセスジャーナルにおけるグレーな問題だと理解しているので、ゴールドのオープンアクセスジャーナルにないと思っております。
 次に、9ページ目の一番下で、論文の盗用というかなりショッキングなことが書いてあります。論文の盗用は、以前私がいろいろな先生から聞いた話では、理工系の和文の論文を翻訳して、外国で出版するというようなケースがあったということは聞いております。ここは人社系の話なので、人社系で日本で発表している論文を盗用するということがよくあって、問題視されているのかどうか存じません。私の知る限りは、日本語の研究会資料というような、余り広く流通していないものについて、日本語のできるアメリカの学生がそれをネタに論文を書くというようなことがあったということは聞いております。というので、これは…。

【浅島主査】  これはじゃあ取りますかね。あるいは、二重投稿のことを意味しているんですかね、これは。

【佐野委員】  これは人社系はやっぱりあるんですが、実は日本語で書いた先生方が、こういうことに関して極めて無頓着ですので、余り大きな問題にはなっていないと。かなり頻繁に起こっています。

【浅島主査】  これは本人なんですか、それとも別の人がやるんですか。別の人が、ああ。じゃ、やっぱりあるんだね。

【安達委員】  そういうことであれば。ただ、人社系だけではないような気もします。

【佐野委員】  人社系だけではない、当然。理系の場合は非常によく分かるんですね、数値とかそういうので。それと先生方も主張されますので。人文社会系は、実は余り主張されない。

【安達委員】  では残しておくというので結構です。

【竹内主査代理】  いや、人社系特有の問題ではないということであれば、ここでは一応削除する方が安全ではないかと。

【浅島主査】  そうすると、削除してもいいんですけれども、こういう問題についてはどこで述べますかね。やっぱりちゃんとしておかなきゃならないので。どこにそういうものを入れるかと。入れなくてもいいですか。

【谷藤委員】  ここは人文社会の分野で(電子化)流通することを強化しよう、という趣旨なのでしょうか。

【浅島主査】  これは人社系だけの問題では確かにないので、もっと別のところですね、入れるとしても。ちょっとこれ、どこに入れるか検討ですね。

【安達委員】  すみません、最後のポイントは、10ページ目の下から10行目ぐらいに、日本のジャーナルについて情報分析が不十分でありというようなことが書いてありますが、少なくとも私どものところでも、少しは分析をやっておりまして、日本人研究者の論文の80%は外国雑誌に投稿しているなどの評価をしております。少しはやっているということで、「十分ではない」程度にしていただけませんでしょうか。

【浅島主査】  では、これは「十分ではなくて」にします。

【安達委員】  以上です。ありがとうございました。

【浅島主査】  いえ、どうもありがとうございました。
 では次に、一つずつやっていきましょう。今の文章でいうと、10ページのところは「情報分析が十分ではなくて」ということ。それから、9ページのところの下の文章については、「このことは、論文の盗用」云々(うんぬん)のところは、一応ここでは削除するということで、どこに持っていくかについては、ちょっと検討するということ。それから、8ページのAPCの二重取りについては、ダブルディッピングについては注釈を付けるということでいきたいと思っています。それから、7ページの機関リポジトリの、これはいいですね。

【安達委員】  はい。

【浅島主査】  それから、あとの先生の言われたところでは、3ページのパッケージのことですかね。ビッグディールとの関係を、ビッグディールとすればいいところですね。

【安達委員】  はい。

【浅島主査】  それから、1ページのところで、「『日本版シリアルズ・クライシス』(雑誌の危機)の解消に貢献し」は「緩和し」ということで、「貢献」を「緩和」にしますね。じゃ、それでいいですか。よろしいでしょうか。では、そのようにさせてもらって、次、谷藤先生。

【谷藤委員】  今の安達先生からの2段落目について御指摘に同感です。加えて、第3段落目の「日本のジャーナル出版は国際的には後発である」というのは適当ではないと思います。主旨としては、オンラインジャーナルの出版プラットフォームは(その技術力において)、国際的に見て日本が後れをとっている、ということなのでしょうか。日本の学術出版は1940年代、分野によっては30年代からありますので、少なくとも出版が後発ということはあり得ないと思います。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。今、谷藤先生から御指摘いただいたところは、先ほどの安達先生のところとも関係するんですけれども、この10ページのところの情報分析が不十分というところ、先ほど「十分ではなく」と変えたんですけれども、もっと「包括的な分析が不足しており」、そのようなことでいいですね。

【谷藤委員】  はい。

【浅島主査】  じゃ、そういうことで。そして、下の方の「後発」という言葉はやめまして、「日本のジャーナル出版はプラットフォーム作り等において国際的にやや遅れており」というぐらいにしておきますけれども、よろしいでしょうか。

【谷藤委員】  はい。

【浅島主査】  じゃ、この「後発」という言葉は取りますので、そのようにさせていただきます。
 じゃ、永井先生。

【永井委員】  私は、まず2ページ目ですけれども、是非とも聞きたいところなのですが、ジャーナルの購読価格のところの4番目で、利用者と購入者が異なり、需要を超える利用環境を求めてしまう。つまり、図書館員はできるだけたくさんのものを購読したいという意思なんでしょうが、これをモラルハザードと書くこと自体は、図書館の人は別に、そのようだとお考えでよろしいんでしょうか。私は図書館員ではないので何も申し上げなかったのですが、この1行は気になるのですが。是非とも現場の図書館員の方に、お話を聞いていただけたらと思います。マインドとして図書館員の方々はそういうものだと思うのですが。そのことと、確かにビッグディールというモデルは、非常にうまくマッチしたことは間違いないと思います。でも、こういう書き方をされると、図書館員の方は、これで良いとお考えなのでしょうか。どうなんでしょうか。それが一つです。
 それから次は、8ページです。8ページのオープンアクセスのさらなる展開があるのですが、国際情報発信強化の調書の中にも、著作権ポリシーを述べよと、ありますが、この著作権ポリシーは、この中での文脈で言えば、意図されているものはIRの著作権ポリシーなんでしょうか。それとも、もしオープンアクセスジャーナルを推進するとなれば、もちろんこれは両方の意味だとさっきからおっしゃっているので、そうなった場合は、IRのポリシーを書き、オープンアクセスジャーナルを刊行したときは、クリエイティブコモンズのCC-BYでいくのか、CC-NCでいくのかと、そういうことをお聞きなんでしょうか。この件は、国際情報発信強化の調書にも関わることなので、少し明確にされた方がいいと思います。
 例えば、IRのポリシーである著作権ポリシーを、例えば筑波大学が支援をするSCPJで著作権ポリシーを確認する、学協会はそれをもう一度確認するとか、またオープンアクセスジャーナルを刊行するに当たっては、そのライセンスを学協会自身が決めなければいけないので、そこはクリエイティブコモンズに依拠するのか。若しくは学会独自のライセンスを持つのか等というふうに、詳細に書かれた方が、より日本の学術情報流通のためには良いかなというように思いました。
 それから、あと二つあります。一つは、簡単な方からですが、9ページの今後の課題と対応の方向性で、学協会活動の強化の中で、これは長く問題になっているんですが、今までプロダクション費用だけを補助していた段階から、査読のために論文を海外へ送付するための費用などを、科研費の中で使用できる項目として付け加えた時期がありました。あわせて、その折に複数学協会が合同で、新しいジャーナルを出版する場合は大きな支援を行うということで、それは大きくは、学協会に知らされなかったのですが、学協会にとっては大きな変革を、文部省が舵(かじ)を取ってなされました。
 その名残が延々とまだ残っていて、複数の学協会が協力して質の高い魅力的なジャーナル、それはとっても言葉としては美しいんですが、そして、複数学協会が自分たちのジャーナルをそれぞれ廃刊して新しいジャーナルを創成するとなると、また状況が違うと考えますが、自分たちのジャーナルを持ちつつ、また新しいジャーナルを出すということが起きてしまったわけです。これは、新刊OAジャーナルを出すというのとはまた違ったコンセプトです。ジャーナル出版をやっている人間にとっては、これが気になるところです。
つまり、学会が連合するという意味をどう考えるかですが。

【浅島主査】  何ページとの。

【永井委員】  9ページ目の学協会活動の強化の一番最後のパラグラフですね。「そのためには我が国のジャーナルの質的向上が不可欠である」というところで、「複数の学協会が協力して質の高い魅力的なジャーナルを刊行しようという取組」というのがあるんですが。コンセプトは分かるし、言葉は美しいのですが、成り立ちも異なる学協会、違うコンセプトを持っている学協会が、ただでさえ、細分化しようとしているような学会が協力して質の高いジャーナルを出版するというのはなかなか難しい。現実に韓国では、このような形式でジャーナルを支援しましたが、全部失敗したという状況があります。そういった状況を踏まえた上で、日本がなぜここに、これを書かなきゃいけないのかというのが、私にはよく分からないということです。
 それから、もう一つは、これは私が不勉強で本当に申し訳ないんですが、加藤委員に是非教えていただきたいんですが、我が国のジャーナル支援の取組というところの最後に、「論文記述の際に必要となる引用情報が現在未整備の国内論文等に対して、集計・提供する事業を開始した」というのですが、これはどういう内容であるのかということを、教えていただければと思います。
 それから最後に、竹内先生の方から、そして、出版社側の立場からということで、谷藤さんや林さんがほとんど私の言いたいことをおっしゃってくださったのですが、先ほどの、佐野先生の人材育成のお話ですが、ライブラリアンが、国内のライブラリアンが優秀であるということは、一緒に仕事をさせていただいていても百も承知のことなのですが、ただ、基本的に学会と違うことは、学協会は自分でお金を作らなきゃいけないんですね。お金を生み出さなきゃいけない。佐野先生が指摘されたように、私たちの学会も脆弱(ぜいじゃく)な学会で、それでも、自分たちでお金を生み出さなければいけない。でも図書館は、自分たちでお金を生み出すということが、少なくとも今の状況では大学機関等にはないので、そこのところは全く違うところにあって、じゃ図書館の方々が、本当に自分たちでお金を生み出せるのかというのが、私にはよく分からない。かといって日本の学会が、先生がおっしゃったように、みんなお金を生み出せているかというとそうではないのですけれども。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。そうしたら、最初の方に、2ページの方からいきますと、「需要を超える利用環境を求めてしまうモラルハザード」という言葉、もうちょっと何かいいのありませんか。例えば…。

【田村委員】  ちょっとよろしいですか。私は逆の意味に取りました。研究者がただで幾らでもダウンロードできる環境になったと受け取って、不必要なものまでダウンロードしてしまうという意味ではないでしょうか。ただ、永井先生のおっしゃるような意味にとれなくもない表現になっていますよね。だから、ここはちょっと工夫した方が良いかと思います。

【浅島主査】  じゃあ文章を工夫すればいいということですね。じゃ、これはこのままにして、やっぱり研究者がいろいろなものを要求するということで。じゃ、これはちょっと文章を改定いたします。
 それから、8ページのところの著作権ポリシーのことですけれども、これについては確認し、ちょっと文章としてどういうふうにすればいいか。

【竹内主査代理】  永井委員から御指摘のあった8ページのオープンアクセスのさらなる展開の部分でのジャーナルに関する著作権ポリシーの明確化は、これは文脈から考えて、IRに登載される際のポリシーではなくて、各論文が教育等で利活用されるときに、何がオーケーなのかということを示す著作権ポリシーだと私は理解しました。

【永井委員】  なるほど。

【浅島主査】  そうしましたら、この著作権ポリシー、例えば注のところに、今、竹内委員が言われたような利活用するための問題というところを明確にする必要があると。例えば、よく言われる授業で使ったときにはどうするかとか、あるいはそれを一般の人にやるときはどうするかとか、そういうことは注釈のところに入れるということにさせてもらいます。
 それから、9ページのところの我が国のジャーナルの支援のところで、「現在未整備の国内論文等に対して、JSTが集計・提供する事業も開始した」と、これは何か加藤委員ありますか、何か述べておくことは。

【加藤委員】  永井委員のおっしゃったのは、我が国のジャーナル支援の取組ということで、JSTが集計・提供する事業も開始したというお話のところですね。これは正確には、集計し、今後提供していく事業について着手しているということなんですね。まだ開始しているわけじゃないんですね。集計その他投入して、データベースに入れて、その作業を今年度実施するという予定になっております。引用情報については電子化されまして、それをデータベースに投入する事業を今年度やるということになっておりますので、御指摘ありがとうございました。開始していると言えないかもしれません。すみません、着手したというのが正確かもしれません。

【谷藤委員】  加藤委員にお尋ねしたいのですが、J-STAGEに載っているジャーナルの中で引用情報がないものがある、という現状なのでしょうか?それとも、J-STAGEに載っていないジャーナルにも(J-STAGE搭載誌の引用先としてのジャーナルの)引用情報の収録へ新たに拡大していこう、という意味ですか。

【加藤委員】  そうですね。国内誌についてという。J-STAGEだけの話を言ってはおりません。むしろJ-STAGEの方は、学会さんが引用情報を入れてきたものについては登載されておりますということになってございまして、それ以外の未整備の引用情報について、昨年来から電子化をしまして、それをJ-GLOBALの中に登載しようということを今進めているところでございます。J-STAGEのことではございません。ちょっと表現を少し訂正させていただいて。申し訳ありません。

【浅島主査】  はい、そうですね。J-STAGEは後ろの方にかかるんですね、文章としては。J-STAGEが集計し、提供する事業に着手したというところでいいんですね。前の方の文章は、これはかかっていいんですか、前の方の文章にも、J-STAGEの。「さらに」からは、J-STAGEの仕事として見てよろしいですか。

【加藤委員】  これはJ-STAGEの仕事ではなくて、JSTの中のJ-GLOBALという全体の知識インフラのところを構築しているんですけれども、そちらの方で整備を始めているという。表現をちょっと。

【浅島主査】  じゃ、「JSTが」ということですね。

【加藤委員】  はい、それは結構です。

【浅島主査】  分かりました。
 それから、9ページのところの「我が国は」云々(うんぬん)で、その取組で、「学協会、編集委員長などが情報交換をする場を設け」云々(うんぬん)について、このときに必ずしも一般に、日本は学協会が増えているので、ある面で言えば、まとまっていくような方向性をできるだけやってくださいと。そして、質のいいものを作ってくださいということを述べているんだけれども、実際にはそうなっていないところもあるということで御指摘いただいたんですけれども、一応文章としてはこのまま、なっていないところもあるかもしれませんけれども、これは今後の評価のところでまたいくこととして、あえてここでは述べないということでよろしいですか。

【永井委員】  はい。

【浅島主査】  それから、述べられたのは…。

【永井委員】  それで終わりです。

【浅島主査】  それで終わりですね。では、その次、田村委員、お願いします。

【田村委員】  2点あります。1点目は全く細かい話で恐縮なんですけれども、7ページの(2)今後の課題と対応の方向性のオープンアクセスに対する理解促進の5行目です。「研究成果の共有化と利活用の促進する」とありますが、「研究成果の共有化と利活用を促進する」じゃないでしょうか。これが1点目です。細かくて恐縮です。
 もう1点、前回欠席して議論を把握していないために確認したいことがあります。4ページから5ページにかけての、現在の価格上昇への対応の(2)ですね。対応の方向性については、中長期の対応と短期の対応というのがあります。オープンアクセスなどは中長期的な展望を持った対策だと思うのですが、我々が今すごく困っているのは短期の対策を必要とする問題なんですね。円安、消費税増税、それから消費税がどうも海外のネット配信サービスに適用されそうで、そうなると円高時とくらべて何割増しかの出費増になると予想され、大変困っています。そこの部分については、基本は各大学が対応しなさいということを、この中で提言するということでよろしいんですよね。図書館長としては、それなりの覚悟を持ってこれを提言しないといけない話なので、確認いたします。私は基本、それに賛成です。

【浅島主査】  各図書館で、各館において責任を持ってやってと。

【田村委員】  それはいいんですけれども、ただし、だからといって大学同士が協調していろいろな要望を出したりするということは妨げるものではあってはいけないと思うんですね。これを見ると、情報を共有しましょうとか、契約の在り方について一緒に検討しましょうとは言っているんですけれども、それ以外の対応も可能とする余地について言及がないんですね。ですから、できたらこの中に、どう言えばよろしいのでしょうか、例えば情報流通について協調して行動をとるようなことも望まれるとか、そういう一文を是非入れていただきたいと思っています。どこに入れればいいのかは分からないんですが。

【浅島主査】  では、4のところの5番目、6番目ぐらいに、共同購入もあり得るというようなこと、例えばそういう意味ですかね。

【田村委員】  じゃなくて、例えば共同で要望を出すとか、あるいは共同でどこか特定の出版社と何かいろいろ交渉をするとか、そういう話ですね。

【浅島主査】  それはあり得るんじゃないですか。どうぞ。

【白石委員】  すみません、それに関連して、5ページ目のところでナショナル・サイト・ライセンスについて、結論としてはやらないということが書かれていまして、ナショナル・サイト・ライセンスについて、やはり期待されていたことの一つというのは、やっぱりバーゲニングパワーを持つのではないかというところがあります。つまり、日本という国が前面に出て、交渉をしていただくことによって、価格高騰という短期的な問題に対応できるのではないかというところに期待をしていた人もいたのではないかと考えています。
 ナショナル・サイト・ライセンスはやらないということであれば、バーゲニングパワーを持つためには、共同で交渉に当たっていくということが有効であると。そうすると、JUSTICEのような既存のコンソーシアムに期待したい。そこで、ナショナル・サイト・ライセンスのところに、多分JUSTICEのようなイメージのことが書かれていると思うんですが、これをもうちょっと積極的なものに変えていただけないか。現状の書きぶりでは「やればいいんじゃないか」ぐらいに読めます。今申し上げたのは、オープンアクセス化の動きの上から3行目の、「仮に購読契約における規模のメリットを追求するのであれば、既存のコンソーシアム内」というようなことを、もうちょっと積極的な書きぶりを期待しております。

【浅島主査】  分かりました。

【竹内主査代理】  すみません、よろしいでしょうか。

【浅島主査】  どうぞ、お願いします。

【竹内主査代理】  実は私もこの点については意見を出そうと思っていて、実は挫折していたんですけれども、大学図書館間協力というものを、これからの時代にどう考えるのかということは大事な話ではあるんですが、今回の文脈の中では議論にならなかったんですね。かといって、旧来のようなILLに戻るというのも、ちょっとこれは時計の針を戻すような話なので私は賛成ではありません。これからの時代に、ジャーナルの問題に関して、どういう大学図書館間協力、あるいは大学間協力と言った方がいいのかもしれませんが、そういったことをどうやっていくのかということについて、実際ここで具体的に議論していないので、この中に書くのはかなり難しいなという印象を持ちました。
 ただ、今、田村先生、白石先生がおっしゃったように、大学間協力をいろいろな形で追求していく必要があるということは、この5ページの今、白石先生の御指摘のあった部分をより積極的に書くことで対応できるかなという気はいたしました。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。そうしましたら、ここの5ページのところのオープンアクセスについての上から4行目あたりのところに、「特に、ジャーナルの購読契約を見直す際には大学間の協力を視野に入れて」ぐらいにして入れておきます。
 また、田村先生が言われた7ページのところの「共有化と利活用の」を「を」にするということはいいですね、皆さん。じゃあこれは了解させてもらって。じゃあ次に林委員、お願いします。

【林委員】  10ページ目の中段、評価指標等の整備の頭出しのところについて、「ジャーナルや論文の評価に際して」と書いてあって、例えばで、インパクトファクターだけで受けていると、この委員会は論文の評価にインパクトファクターを使うと言っているのかととられかねないので、「インパクトファクターや被引用数以外の指標も」と直すのが適当と思われます。「ジャーナルや論文の評価」に対して、「インパクトファクターや被引用数」と適切な対応付けをしておくことが必要かと思われます。
 そこからの流れで、あとは書きぶりの話ですけれども、例えばインパクトファクターや被引用数以外の指標も用いる、あるいは分野間の補正、「値」をとって「分野間の補正など複数の手法の導入や多角的な評価を行うことが必要である」とすると、つながりが良くなると思いました。
 あともう二つあります。一つが、9ページ目の上の我が国のジャーナル支援の取組のところの「J-STAGEを整備し」のところです。「国際的な利活用を促進させるため、使用言語について」と表現されると、論文情報の利活用を促進させる主要言語は、じゃあ英語かなと想定しながら読み進めるとXMLが出てきて少々混乱させかねません。そこで、「J-STAGEを整備し、学協会に提供しているが、登載情報の国際的な流通を促進させるため、プラットフォームの使用言語について、国際標準であるXML対応を図るなど」とした方が、より具体的になり論旨が明瞭になると思いました。
 あと最後は、議論していないのでどこまで書き込むかということを踏まえての御提案ですが、9ページ目の人社系ジャーナルの流通強化のところで、「人文社会科学系においても強化が必要である」という、これは背景としては、現在デジタル・ヒューマニティーズが注目を浴びているということがありますので、その文言を、例えば一番頭に、「人社系においても電子化並びにインターネットを利用した新しい研究体制を構築することは、デジタル・ヒューマニティーズとして注目を浴びている」というようなことを書いてから入るのはいかがでしょうか。書きぶりは改めて検討することとして、背景として、ただ「電子化が人社系にも波及」ではなくて、その背景として、より注目を浴びている新しい動き(デジタル・ヒューマニティーズ)があるということを示すことで、この会の見識が保てるのかなと思いました。以上です。

【浅島主査】  ありがとうございます。そうしますと、今、林委員に言われたことは、一つは10ページのところの評価指標の整備のところで、これ、インパクトファクターとか何かをもう少し特定しないで、文章は何と書きますかね、ここのところは。

【林委員】  私案としては、インパクトファクターのところを「インパクトファクターや被引用数以外の」。

【浅島主査】  「被引用数以外の」、はい。

【林委員】  あとは書きぶりの話です。

【浅島主査】  それからもう一つは、9ページは。

【林委員】  上のJ-STAGEのところが、「J-STAGEを整備し、学協会に提供しているが」の次のところに、「登載情報の国際的な利活用」を生かすか、「国際的な流通を促進させるため、プラットフォームの使用言語について」として、具体的に書き下して先に述べた誤解を免れるようにした方がよろしいかと。

【浅島主査】  はい、分かりました。これは加藤委員、いいですね。

【加藤委員】  はい。

【浅島主査】  それから、もう一つ言われたのが…。

【林委員】  9ページの下の人社系のところですね。

【浅島主査】  ああ、人社系のところですね。

【林委員】  デジタル・ヒューマニティーズが人文社会系で今注目されているという点を追記しておく提案です。

【浅島主査】  注目されているという、これを入れるということですね。はい、分かりました。
 そうしますと、あと白石委員は何か特別加えることはありますか。

【白石委員】  先ほど申し上げた5ページのところと、あと、よろしいでしょうか。

【浅島主査】  はい、どうぞ。

【白石委員】  基本的な質問で恐縮なんですけれども、研究成果のOA化は推奨されるべきであって、OA化を義務化していった方がいいというようなことが書かれていて、最後のまとめのところにも、有力ジャーナルに論文掲載数を誇る、競うというような状況は変えていかないといけないというようなことが書かれているんですが、そうしますとこれを読んだ研究者は、じゃあ私たちは自分の研究成果をどこに発表すればいいんだろうかと思うのではないかと。義務化されるということは、今まで有力ジャーナルに載せるということで発表してきたのに、一体どうすればいいんだろうかという素朴な疑問を持つと思うんですが、それに対してはどんなふうに答えていったらよろしいんでしょうか。
 なので、どこをどう変えるというわけじゃないんですが、全般的なメッセージとしては、今までは商業出版社の有力誌に載せていくということが研究成果の一つの発信方法だったわけですよね。でも、それは今後は、公的資金を受けた研究成果は義務化の方向に進んだ方がいいとか、研究者の評価も有力ジャーナルへの論文掲載数を競い、それを評価するというのは変えてきかなきゃいけないというふうに書かれているということは、読んだ研究者は、じゃあ今から書いたこの論文は、どこに載せればいいんだろうかと疑問を持つのではないかと思います。欧米の有力誌に載せると、それはOA義務化に反するんだろうかといったことです。研究者の皆さんはまだ余りOAジャーナルのことをよく知らないので、そういう素朴な疑問が生まれるのではないかと思ったんですが。

【浅島主査】  これは文章の書き方によっては、いわゆる今までの評価が著しいというか、言葉としては誤解を招くかもしれませんが、インパクトファクターの高いものだけが評価されるようなシステムだったけれども、これからはオリジナリティとか、必ずしも問題だけではなくて、先ほどのサイテーションとかその他も含めて、総合的に評価していくことが望まれるというぐらいの文章ですね。ですから、何もインパクトファクターだけが全てじゃないということを言うことが必要だろうと思って書かれたんだと思います。
 それで逆に言うと、この裏側には、全て今まで海外の出版社だけに頼っていたけれども、日本にもちゃんとしたいいジャーナルがあれば、そこにも出してくださいよということが含まれるんだろうと、私は理解していますけれども。ですので、それは著者の選択だということです。

【白石委員】  なるほど。

【浅島主査】  そのように理解しています。
 じゃ、加藤委員、何かありますか。

【加藤委員】  特にないんですけれども、私、これを見させていただいて、JSTの中でも意見を頂くという形もしまして、少し意見を出させていただいたということです。少なくとも10ページに書いています、日本発のプラットフォームの強化というところで、やっぱり今、学協会の皆さん方の意見をいろいろお伺いをしていますと、日本の学協会が少しグローバルに展開する必要があるということで、少なくともアジアのコアになりたいというような学協会の方もたくさんおられるので、そういうところについても対応していきたいというふうに考えておりまして、それもきちんと記述されておりますので、よろしいかなと。
 それから一方で、その後いろいろお話を聞いていますと、海外の有力学協会のジャーナルとどうやって連携するかということも、当面の対策としてはいいんじゃないかというようなアドバイス等も頂いておりまして、その内容につきましても、どこでしたっけ、幾つか記述されておりますので、よろしいのではないかということで、非常に分かりやすく提言がされているのではないかなというふうに考えております。以上でございます。

【浅島主査】  どうもありがとうございます。最後の方に言われたことについては、幾つかの学会が海外の有力学協会と結びつきながら、国際ジャーナルを発信していると。物材機構発行のジャーナルもそうでありますし、そういうような例が出てきたので、今後の一つの在り方だろうと思っています。
 そうしましたら、ほかにまだ意見がある方、述べてくださいますか。どうぞ。

【竹内主査代理】  一番最初のページなんですけれども、1ページの第3パラグラフの冒頭の部分ですが、「このような状況から、ジャーナルの整備は」というのがあるんですが、このジャーナルの整備というのがとても実は曖昧な表現になってしまっていて、ここ半世紀の課題というのは、実は我が国において研究に必要な海外のジャーナルをどう整備するかというところが大きな課題であって、ジャーナルの整備というと、日本からジャーナルを出すということに読めてしまうので、ちょっと制約を付けて、「このような状況などから、特に海外のジャーナルの国内利用環境整備は」というふうにしておいたらいかがかと思いました。

【浅島主査】  「このような状況などから」…。

【竹内主査代理】  「特に海外ジャーナルの国内利用環境整備は、半世紀にわたって、我が国の大学や研究機関における学術情報基盤構築の最も重要な政策的課題の一つであり続けた」と。

【浅島主査】  分かりました。
 ほかに。どうぞ。

【谷藤委員】  竹内委員の御提案はよく理解するのですけれども、(海外ジャーナルの購読に関係する様々な取組の変遷に言及すると同時に)過去50年というスパンでこれを見たとき、並行して、日本はJ-STAGEという大がかりな学術情報発信整備にも取り組み、紙でしか見られなかった国産ジャーナルの多くをインターネットで見られるようにした、という大きな実績を上げていますので、これについても触れておくべきではないかと思います。このまとめの後半で、J-STAGEをもっと利用していきましょうと提言を展開しているわけですし。

【浅島主査】  このままでいいということですかね。

【谷藤委員】  いえ、ジャーナルを買うという図書館の問題だけに限定するのではなく、国産ジャーナルの電子化という政府の大規模投資の成果についても触れ、両方相まった強化の取組について、この半世紀を振り返った記述にするべきではないか、という意見です。

【竹内主査代理】  なぜそれをそういうふうにした方がいいかというと、「これまでの対応として」というところが、これは雑誌を買う方の話なんですよ。なので、その前提としては、「ジャーナルの整備は」というのは、これは外国雑誌の整備という文脈に限定した方がいいだろうと思ったわけです。なので、もし、谷藤委員から御指摘があったような、日本発の雑誌に関する情報基盤の整備ということを入れるのだとすれば、パラグラフ全体を少し修正する必要があるのではないかと思います。

【浅島主査】  今のことは、少し文章のこともありますので、竹内委員が言われたことと谷藤委員が言われたことを、少しここを整備したいと思っております。ちょっと文章については、お任せいただきたいと思っています。
 ほかに何かありますか、全体的に見て。安達先生。

【安達委員】  大変些細(ささい)なことで、5ページ目のナショナル・サイト・ライセンスの9行目に「ナショナルライセンス」というのが出てきますが、これは「ナショナル・サイト・ライセンス」だと思います。

【浅島主査】  どうもありがとうございます。
 ほかに何かありますでしょうか。では、はい。

【谷藤委員】  8ページ目の「オープンアクセスのさらなる展開」ということで、永井委員から奇(く)しくも指摘が出た著作権ポリシーの件なんですが、オープンアクセス化を推進する二番目の大きな目的である研究開発、民営活性ということがありますから、(オープンアクセス出版をするときに)著作者が持っている権利は何かという話と、言い換えれば著作者が持っていない権利は何かということに触れる必要があると思います。さらに、第三者が次に利用するときに、許諾されている権利が何か、許諾されていないことが何かということも理解される必要があると思います。(この二つが科学者から支持されないと)日本が政策としてオープンアクセス化を推進したことになりません。そのことがはっきり伝わるように、この脚注に書くときには、論文を出した著作者が持っている権利、オープンアクセスされた論文を第三者が利用するとき。言うまでもなく、図書館がリポジトリを入れるという場合もあるでしょうし、民間の人がデータベース化して売るということもあるでしょう。利用する側が許諾されていることが何か、ということを示す必要があるのではないかと思いました。以上です。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。
 ほかに何かございますか。どうぞ。

【永井委員】  ちょっとしつこいようなんですが、谷藤さんが一つ前におっしゃった問題意識のところなんですが、これは日本が学術情報基盤といったときに、まさに…。

【浅島主査】  それは何ページのところですか。

【永井委員】  1ページ目です。さっきおっしゃった、つまり、長くJ-STAGEをみんなで支援するという形でたくさんの学協会のジャーナルが載っているという投資を我が国がしてきたということ。それから、学協会を強化しようという話もこの後出てくるのですが、竹内先生が指摘された言葉は、これはこれでいいと思うんです。でも、学協会を支援するということと、日本のジャーナルを強化するということが、何らかの形で問題意識の中に出てきてほしいと考えます。
 一方で、こういった形は、致し方ないのかとも考えます。なぜかというと、戦後から、日本は学術情報基盤整備というのは、ジャーナルを購入し、特に、竹内先生がおっしゃった外国雑誌の購入と、資料の整備に終始してきたと言ってもいいと思います。科研費でジャーナルを支援するということも、文部科学省は率先してやってきている。しかし、その二つが合わさった形で書かれる、若しくは活動するということがなかったのです。
 それを初めて具現化したのは、SPARCでした。SPARCの運動によって、最初の何年間はNIIが明確に書かれていたように、日本の電子ジャーナルを海外に販売するということで、図書館と学協会と研究者のステークホルダーで頑張ろうということを明確に示されたのでした。もちろん支援されたのは文部科学省なので、そのときはそういうお考えがあったと思うのですが。是非ともここでは、谷藤さんのおっしゃったことをもう少し詳しく書いていただければ、と思います。
 そうすることによって、ジャーナル問題といったときの在り方が、最終的に利用環境整備だけに終わらないことになると思います。それをここで書かれるということは、大変画期的なことですし、非常に大きな意味を持つと思っています。よろしくお願いします。

【浅島主査】  どうもありがとうございました。ほかに何か。
 それでは、先生方におかれましては、これまで本当に有意義な御意見、御審議をありがとうございました。改めて御協力に感謝します。
 なお、この審議のまとめについては、今後一つ一つ、一応確認はいたしましたけれども、軽微な修正等が必要な場合は、主査の私に判断を一任させていただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。そして、一応これはまた事務局の方から先生方の方にも校正をお願いすると思いますので、もし御意見があればそこで述べていただくというふうにさせていただきたいと思っております。
 これをもちまして、初めに申し上げたとおり、検討会については審議はこれにて終了したいと思っております。審議のまとめ(案)につきましては、本日頂いた御意見等を踏まえまして修正し、取りまとめるということで、最終判断については主査の私に一任していただきたいと思いますので、改めてよろしくお願いします。

【竹内主査代理】  最後に1点よろしいですか。

【浅島主査】  はい、どうぞ。

【竹内主査代理】  今回の審議のまとめの文章の一番最後が、「継続的な討議の場を持つことが必要である」ということで閉じられているのですけれども、この継続的な討議の場を持つということについて、文部科学省が今回のような検討の場を、この検討会が終わった後も、設定していただくということは可能性としてはあると思ってよろしいのでしょうか。

【浅島主査】  この文章を読む範囲では、文部科学省、もし違ったらまた述べていただくとして、今、ジャーナルとかOA化とか、あるいはこういう問題は非常にドラスティックに世界中で動いています、グローバル化で動いております。それでまたいろいろな動きがあったときには、文科省の方でこのような場を持つというふうに考えていいんですか。それでよろしいでしょうか。

【長澤学術基盤整備室長】  ここのステークホルダーの会議については引き続き、インフォーマルかもしれませんけれども、継続したいと、協力してやっていきたいとは思っております。公式なこういった審議会形式では、一旦ここでは終わるという形で考えております。

【浅島主査】  それでよろしいでしょうか。
 そうしましたら、そのほか何か関連して言っておきたいことがございましたら、フリーディスカッションで行いたいと思います。永井委員、何か発言があれば。

【永井委員】  余り時間がないので、簡単に。1枚資料として出した要望書ですけれども、実は一番苦労して調書を全部書き直しまして、幾つかの評価というのを考えてみたものが出ていないのと、それから、現在の国際情報発信強化の調書が出ていないので、ちょっと残念なんですけれども、かいつまんでお話をします。
 まず、前回お話ししたように、調書が非常に大部で、しかも何度も同じことを書かされる。その上で、本当に重要なことというのはわずかなスペースしかなく、科研費を申請してみようとなかなかならないようです。私自身は、A4裏表3枚をWordで、別紙2枚Excelで作ったものを用意してみました。なぜWordにしてほしいかというと、Excelに文字を書く――書いたことがある方は分かると思うのですが、書いたものがそのまま印刷されないという苦しいことになってしまっています。学協会は苦肉の策で、私どもは、テキストボックスをそこに張って書くということになっています。とにかく応募数を増加に転じるために、調書の様式の変更というのを検討いただきたいと思っています。
 また、前回も申し上げましたように、私自身はジャーナルを定量的に評価する必要があると考えます。
 次の要望は、これはあえて書きました。採択ジャーナルについて、年々で、方向性を決めて採択できるようなことができると良いのではと考えますが、運用上難しいということが想像されます。同時に、A4で実際作りましたWordの調書は、その調書の内容をよく分かってくれる審査員に審査をお願いしたい。つまりは、調書の様式の変更と審査方式の変更というのは、実は大きくリンクしているというふうにお考えいただければ有り難いなと思います。
 大事なことは、あるジャーナル、そのジャーナルに対して、ここのジャーナルにおける新しい活動とは何かということが分かる審査員。例えばCrossCheck、APC、Authorshipといった言葉の内容を聞いたときに、これが何を意味し、何に今後影響を与えていくかというようなことがすぐに分かるような、そういった審査員。
 それから、一番大事なところですけれども、これは科研費ですけれども、やっぱり研究をするのではなく、ジャーナル出版そのものは資金を獲得するための活動なのだということ。つまり、学会がより強くなって、そのジャーナルにサステイナビリティを獲得するために行う活動であること。同時に、教育等々にそこの資金を回したいというのが学協会の意思なので、大事なことは、申請学会の現在の収支をよく理解できるような審査員が必要です。同時に、これは前から申し上げていることなのですが、現実には、走っても走っても追い付かないぐらい、商業出版社はどんどんどんどん洗練されていってしまう。洗練されない私たちは、どんなにお金をもらっても難しいような状況というのもあります。そのときに、やはり商業出版社の方の新しい目、それから図書館情報学、特に若手研究者からも審査員を選出していただきたいということです。ここで、作成した調書をお見せしたかったなというのがちょっと残念です。
 今までの調書には、アクセスダウンロード数を書けというのがぼーんと出ているのですが、それは、どういうシステムを使ったかによって随分違うでしょうという状況もございます。ロボットによるアクセスは除いたんですかという話もあると考えますし、オープンアクセスとそうでなかった場合に、そのアクセス数や、そのアクセスの内容を学協会がどう考えているかといった問題もあろうかと思います。この点に関しては、専門家の方に話を伺ったのですが、アクセス数だけを書くことはナンセンスだと言われました。ですから、それは次の調書からは是非とも削除していただきたいと考えています。
 そして最後に、人社系は、やはり独自の科研費枠を創生する必要が、私はあると思います。STMとは違いますし、でも、私自身もアイデアはありません。
 大事なことは調書の変更と、それに関わる審査員の検討。そしてもう一つは、人社系は別枠で考えるべきではないかということです。以上です。

【浅島主査】  はい、どうも。これは飽くまで要望書としてお聞きしておいて。というのは、ここはやはり文部科学省も含めてですけれども、学術振興会も含めまして特別委員会というのがありまして、ここでいろいろな様式とかその他人員を選任しておりますので、そこまで踏み込みますので、飽くまで要望書ということでお聞きしておきたいと思います。どうもありがとうございました。

【永井委員】  すみません、一つだけ。代表で私の名前が書いてありますけれども、幾つかの学会の方に、特に調書を書いている方に御意見を聞きました。ただ、文責は私にあるということで、私の名前にしています。申し訳ありません。

【浅島主査】  どうもありがとうございます。
 本日の審議は以上ですが、本日をもってこの検討会は終了になりますので、本日御出席いただいた皆様方には、本当にありがとうございます。本当は委員の皆様からお言葉を頂こうかなと思ったんですけれども、時間の都合もありますので、それでは最後に、下間参事官から一言御挨拶をお願いいたします。

【下間参事官】  ありがとうございます。ジャーナルに関する検討会が本日最後でございますので、改めて御礼の御挨拶を申し上げたいと思います。本来、小松局長が参りまして御挨拶申し上げるところでございましたけれども、他の公務で参ることができませんので、私の方から御礼申し上げます。
 大変御多忙の中、この3月から精力的にそれぞれの御知見をもって御審議を賜りまして、本当にありがとうございました。このジャーナルの問題は、大変難しい問題でございます。これまでジャーナルの、先ほどもございましたけれども、購入と、それからジャーナルを作っていくという二つのことを併せてしっかりと議論するようなことが、私どもとしても十分にできておりませんでしたので、今回、そうした両面から、まだ不十分なところはあろうかとは思いますけれども、このように整理することができまして、大変有り難いことというふうに思っております。
 短期的には、先ほど来議論がございますけれども、画期的なジャーナルの問題の解消策というようなことは見当たらないわけではございますけれども、問題を共有する大学間、あるいは大学図書館間で一層の連携協力を進めることでございますとか、また、既に対策が講じられている大学の情報を共有し、それを生かしていくということ。またその際に、各大学で運営やマネジメントとして必要なジャーナルの確保ということについて、十分に分析に基づいて議論していただくことというような対応すべき方向性について御議論いただきましたし、またジャーナルの購読契約を見直す場合のセーフティネットとしてのみならず、今後の長期的な展望としては、オープンアクセス、また機関リポジトリの普及充実を進める必要があるというような方向性について整理をしていただけたのではないかと考えてございます。
 私ども、日本のジャーナルに関しまして、科研費の支援、あるいはJ-STAGEの機能向上といったことにつきまして一層取り組みますとともに、ジャーナル問題というのは我が国の研究力をしっかりと維持向上させるために、学協会が刊行するジャーナルの評価を高めるということで、やはり国内外から優れた研究成果が我が国にいかに集まるような体制も構築していけるかというふうな問題だというふうにも考えておりますので、学協会の取組を支え、強化をするような方向性で、更に私どもとしても取り組み、国内外の優れた成果というのを我が国から発信していくことによって、グローバルなコミュニティの中で、今後日本のサイエンスの競争力をしっかりと維持・強化をしていきたいというふうに考えているところでございます。
 そうした中で、今回の取りまとめ、まだまとまっていませんが、いろいろ御意見を賜りました。この内容につきまして、必要に応じまた御意見を頂きながら、最終的に主査と御相談をさせていただきまして、早急に冊子として取りまとめまして、関係の皆様方に周知し、また関係の皆様方の取組に、参考に供しますとともに、文部科学省として来年度の予算も含め、今後の施策にしっかりと生かしてまいりたいと考えております。
 また、先ほど今後の継続的な協議の場というお話もございましたけれども、私どもといたしまして、今後とも様々な形で先生方に御指導、御助言を賜りながら、継続的にこの問題について考えていきたいというふうに考えておりますので、引き続きどうぞ御協力を賜りますよう、改めてお願い申し上げたいと存じます。甚だ簡単でございますけれども、本当に5回にわたりまして、大変精力的な御審議を賜りましてありがとうございました。これをもちまして、御礼の御挨拶とさせていただきます。

【浅島主査】  どうも下間参事官、ありがとうございました。
 それでは、事務局より、連絡事項等があればお願いいたします。

【松本参事官補佐】  本日の会議の議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上、公開とさせていただきます。以上でございます。

【浅島主査】  今言ったように、本日の会合の議事録については、各委員に確認していただいた後、公開させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、これにて閉会とさせていただきます。先生方、事務方、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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