スーパーコンピュータ「京」事後評価委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成25年3月22日(金曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室

3.出席者

委員

有川主査,浅田委員,宇川委員,大峯委員,笠原委員,熊谷委員,辻委員,土居委員,西島委員,平木委員,南委員

文部科学省

吉田研究振興局長,森本審議官,下間情報課長,林計算科学技術推進室長,村松計算科学技術推進室長補佐

4.議事録

議題に入る前に,主査より議題2〝スーパーコンピュータ「京」の開発・整備に係る事後評価結果について″の審議部分については,スーパーコンピュータ「京」事後評価委員会の議事運営等について(平成25年1月18日委員会決定)の第4条第3項に基づき,審議の円滑な実施のために非公開で実施する旨説明があった。

(1)理化学研究所からの追加説明について

理科学研究所より,資料1に基づき説明。質疑応答は以下のとおり。

【平木委員】  半導体の世代によってコストが大きく変わるというのはそのとおりだが,「京」とTitanとSequoiaについて,特にTitanについてはメインの部分とアクセラレータというのはよくわかるが,半導体テクノロジーを確認のため教えていただきたい。「京」は45ナノテクノロジーか。
【渡辺統括役】  「京」は45ナノである。Titanは,GPUが,あれはTSMCにつくらせており,正確には確認が必要だが,32ナノだったかと思う。
【平木委員】  あとはCPUもあると思うが。
【渡辺統括役】  CPUはインテルで,32ナノである。
【平木委員】  Sequoiaはどうか。
【渡辺統括役】  Sequoiaは45ナノである。ただし,このIBMの45ナノは,「京」の45ナノとプロセスが少し違っていて,同じ45ナノだけれども,「京」よりも少し進んでいる。電源電圧が低い,消費電力が小さいなど,そういうチップになっている。
【熊谷委員】  アメリカのSequoiaやTitanという,ある意味では,汎用というよりはどこかに特化した計算機の開発がされているのだと思うが,それに対し「京」というのは汎用的であると書いてある。「京」とは違う設計思想でつくっているSequoiaやTitanは,どういう分野に特化してつくられているのか。アメリカの国家戦略上,どういう位置づけになっているかを教えてほしい。
【渡辺統括役】  まず,Titanは,資料1の2枚目表の上にCPU+GPUと書いてあるように,CPUはアーキテクチャが違うが,インテルの汎用のマイクロプロセッサである。それに,GPU,これはもともと可視化用,グラフィック・プロセッシング・ユニットと言われるものだが,可視化のチップとして開発されたものを科学技術計算により幅広く使えるように改良されたチップを使っている。そういう意味では,広くアプリケーションを使えるようにしようとしているが,普通のマイクロプロセッサと違い,このアーキテクチャを有効に活用するために,通常のプログラミング言語を少し拡張したようなものを使う必要がある。要は性能を上げるために,演算器をたくさん搭載しており,その演算器を有効に活用するためのプログラミングが必要となって,従来のソフトウエアがそのまま使えないという欠点がある。それは,それぞれのメーカー,あるいは使うところの意図によるが,性能当たりのコスト,あるいは性能当たりの消費電力を下げるということが一番大きな目的だと思う。
【土居委員】  用途を説明してほしい。
【横川運用技術部門長】  Sequoiaについては,核開発に特化してつくられているため,粒子系のシミュレーションに特化している。Titanは,GPGPUがHPCに使えるだろうと考えているのだと思う。つまり,「京」は汎用のものを追求したわけだが,彼らはGPGPUというところでHPC分野に入って,いい成果が出るのではと思ったのではないか。
【渡辺統括役】  用途というのは,この名前のとおりに,もともと可視化のアプリケーションに向いたアーキテクチャである。
【熊谷委員】  そうだとすると,用途が全く違うわけで,汎用というものと,核開発などそういう類いのものと同列で比較して,性能が高い低いと言っても始まらないと思う。最後に聞きたいのは,そういうアーキテクチャや考え方の違いが,今後,この「京」の汎用性のどういうところでデメリットになってくるのか。
【渡辺統括役】  この比較でもあるように,例えば性能当たりの消費電力など,そういうものでは「京」はほかのものには劣る。要は,広いアプリケーションで性能を高めようとすると,演算器だけではなくて,そのほかのパラメータ,例えばネットワークの性能,メモリの性能,そういうものを上げる必要が生じる,要するにシステムとして全体としてバランスがとれたシステムにすると全体的に消費電力が増える。ところが,Titanのように,極端に言えば演算器だけだと性能当たりの消費電力が減るということ。
【熊谷委員】  この表を見ると,感覚的で申し訳ないが,例えば設置面積と消費電力が下がるということは,より小さなスペースで計算機が置けるということで,いろんなところで利用が進むということと思える。
【渡辺統括役】  ただ,コンピュータというのは結局アプリケーションを動かすわけで,特に今回の「京」の場合は,共用施設として広くいろいろなアプリケーションを使ってもらうということが1一つの目的でもあり,我々はそれを狙ったわけである。
 これからエネルギー問題等の関係で,低消費電力で性能の高いものを,多少使い勝手は悪くても,そういうものにならざるを得ないという方向ではある。というのは,「京」の消費電力は,通常使って大体十四,五メガワットだが,運用費などかそういう要素から考えても,それ以上電力は増やせない。そうすると,その電力の制限の中でどれだけ性能を高めるかということが将来にとっては重要で,それはTitanやSequoiaも同様だが,似たような部分を狙っているということ。
【平木委員】  今の御説明は,全く回答になってない。SequoiaやTitanは特殊用途だということを強調されており,Titanの性能はわかっていると思うが,実際にSequoiaの性能評価を行ったことはないはずである,単に雰囲気だけで言っているのではないか。
【渡辺統括役】  用途という御質問なので,補足しようと思うが,Sequoiaも,Blue Geneの最初のころは,もともとそういう核開発で粒子系であった。これはメーカーのポリシーにもよるが,だんだんその用途を広げるという方向に向かっている。これはGPGPUでも同じである。それは市場性ということを考えると用途を広げる必要があるわけで,Sequoiaもそういう意味ではだんだん広い用途に使えるようになっている。
 ただし,例えば資料のレーダーチャートを見るに,メモリが小さいなど,いろいろな部分で「京」ほど広くアプリケーションを使えるようなものではないと我々は理解している。
【平木委員】  やはりこういうものの評価は非常に重要で,細かいことになるのでここではそれほど掘り下げる必要はないとは思うが,実際に使って評価して,初めて両方を比較すべきだと思う。実は我々は両方,「京」ではないが,FX10とSequoiaについては,かなり精密な比較調査を既に実施している。浮動小数点,整数,いろんな計算をやった正直な感想としては,FXとSequoiaは非常に似ていると。「京」はその半分だけ演算器がついているので,その分だけ倍,メモリとネットワークが強い計算機かなというのが正直な我々の感想。なので,これは特殊用途だからといって,除外して考えるというのは余り当てはまらないのではないかというのが実際に比較を行った実感である。
【笠原委員】  今の用途の議論だが,どちらかというと我々がアメリカのハードウエアを見て,こうではないかと言っているだけで,実際にはローレンス・リバモアもオークリッジも,このために使いますという目標を立てて導入しているわけで,その用途を最終目的の用途でも比較する必要があるのではないか。ただアーキテクチャを見て,これはGPUを使っているから特殊であるという言い方もできるが,そうするとアメリカも「京」に対して同様のことを言うかもしれない。だから,それぞれが最終目標としている用途を明確化して御説明した方が,公開されている情報なので,その方がいいのではないかと思う。
【渡辺統括役】  私はあくまでも特殊とは言っておらず,その点は御承知願いたい。
【笠原委員】  オークリッジとローレンス・リバモアが言っている用途というのも,先ほどの質問に対しては答えていただいた方がいいと思う。
【浅田委員】  このコスト面とパワー面,性能当たりということでいろいろ議論されているが,私の理解と少し違っているのは,コストをムーア法則とリンクさせるというのは少しいかがなものかなと思う。つまり,通常は同じジェネレーションと先ほどおっしゃいました。45なら45。そうした場合は,ラーニングカーブで決まるのであって,つまり,そのプロセッサが確立してからどれぐらい時間がたって歩どまりが上がっているかによって書くので,実はかなり大きく変わるはず。なので,特に同じジェネレーション,近いジェネレーションで,1年のラグで1.6分の1というのは少しおかしな議論で,本来は,歩どまりであるからわからないが,もっと大きな差があるように思う。それが一点疑問である。
 もう一つ,消費電力について,これはムーア法則と関係が非常に深いと思っているが,同じジェネレーションでこのように性能が2倍で,Sequoiaと「京」で,消費電力が少なくなると。これはジェネレーションが同じであるということと少し相矛盾するような気もするが,この調査は確かなのか。
【渡辺統括役】  これはメーカーが言っている,そのジェネレーションで言っているので,それと比較しているのだが,Sequoiaの場合は電源電圧が低い。我々は1Vである。Sequoiaは0.8だったと。それでかなり消費電力が違っている。
【浅田委員】  もちろんテクノロジーが違うので正確なことは言えないが,一般論では,電源電圧を下げるというのは,消費電力では有利だが,速度ではかなり不利になる。これはノード当たりの性能が非常に高い,2倍程度あるという。もう少し情報がないと,これは全部つじつまが合わない議論になっているように思う。それで本当に確かなのか,出典はどういうところかと思ったが。
【渡辺統括役】  出典は,IBMの資料で,今ここにはないが…。
【浅田委員】  承知した。それはよろしいとして。
【渡辺統括役】  それからもう一つ,先ほどのラーニングカーブ,我々も承知しているが,簡単に比較できないものであり,非常に粗っぽい見積りではある。
【浅田委員】  私が申し上げたいのは,Sequoiaの方がもっとコストが安いはずであると。そう思ったので,これは違ったテクノロジーノードについて評価するときは大体こういう考え方でもいいと思うが,特に同じノードだったら少し違うのではないかと。
【平木委員】  浅田先生の疑問に数字だけ答えると,Sequoiaのクロックが1.6Gで「京」は2G。演算器の数が,60のビットの数がSequoiaの方が2倍ワンチップに入って,「京」は半分。FXとSequoiaは同じなので。以上でこの数字は理解できると思う。
 それからもう一つ,製造時期について,本当に半導体というのは難しいが,設計の時期というのは「京」とSequoiaはほとんど同じなので,何らかの理由で向こうの機械が遅れて出てきたという状況もある程度勘案しなければいけないかなと思っている。
【有川主査】  ありがとうございました。出典のことなどの言及があったので,資料としてお使いになるときはその辺がわかるようにしておいていただければと思う。それから,比較の観点などはしっかり記述していただいた方がいいだろうと思う。もう一つは,先ほどの議論にもあったが,目的があってつくられているわけで,それに対してどの程度達成できたのかということである。前回の質問に対して理研から御説明いただき,幾つかの質問もあり,理解は深まったのではないかと思う。
 

(2)スーパーコンピュータ「京」の開発・整備に係る事後評価について

冒頭で申し上げたとおり主査よりスーパーコンピュータ「京」事後評価委員会の議事運営等について(平成25年1月18日委員会決定)の第4条第3項に基づき,審議の円滑な実施のために非公開で実施する旨説明があり,理研及び傍聴の方々が退室。
以降は非公開で審議を行い,事後評価結果のまとめについては,各委員から主査に一任を頂き終了。

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