今後のHPCI計画推進のあり方に関する検討ワーキンググループ(第15回) 議事録

1.日時

平成25年4月19日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室

3.出席者

委員

小柳主査,青木委員,秋山委員,石川委員,宇川委員,金田委員,小林委員,関口(智)委員,善甫委員,高田委員,常行委員,富田委員,中島委員,中村委員,平尾委員,牧野委員,松尾委員,松岡委員,村上委員,室井委員,渡邉委員
(HPCI計画推進委員会)土居主査

文部科学省

菱山審議官,下間情報課長,林計算科学技術推進室長,村松計算科学技術推進室長補佐

4.議事録

(1)スーパーコンピュータ「京」の事後評価について

資料1に基づき林計算科学技術推進室長より説明。

【小柳主査】  「京」の事後評価については報告いただいたとおりであり,報告書に記載の今後の展望などについては,我々の報告書にも反映していきたいと思う。

(2)中間報告案の取りまとめに向けた検討

資料2,3に基づき林計算科学技術推進室長より説明。質疑応答は以下のとおり。

【小柳主査】  最初に全体の構成について,論点整理から多少構成を直しているので,その点について意見をお願いしたい。
【牧野委員】  目次を見ると,2章で急にリーディングマシンの必要性が出てくるところに少し違和感がある。国家プロジェクトとしてマシンを開発するという話と,最高性能のマシンが必要であるという話がごっちゃになっている気がするので,もう少し整理できないか。2章と3章でリーディングマシンという言葉が指すことが,微妙に変わっている。
【小柳主査】  2章におけるリーディングマシンというのは,科学技術的な必要性の話で,3章では国家プロジェクトとしての研究開発の話になっているということか。
【林計算科学技術推進室長】  論点整理のときからどう整理していくべきかという議論はあったが,第2章は計算科学技術システムの在り方ということで,グランドデザインの中でトップレベルのスパコンとその次のレベルのスパコンを複層的に配置して,それをどう整備していくかという観点で記載している。一方で,リーディングマシンは基本的には開発を前提にしたシステムなので,その開発を具体的にどうしていくのかを,第3章の研究開発の進め方に記載するという整理をしている。
【松岡委員】  3章で開発の必要性を言う前に,リーディングマシンの役割は二つあるということを明白に言った方がいいと思う。一つは,アプリケーションを利用する立場で,我が国の科学技術をけん引するという役割と,もう一つは,それによってスパコンを中心としたIT技術が進化することである。特に,3章につなげていくときには後者のことを話しているということを言わないと,買ってくればいいという議論になる。
【宇川委員】  今の点は19ページのリーディングマシンの必要性に書いてあると思う。
【松岡委員】  役割が二つあると言った方がいいと思う。
【石川委員】  リーディングマシンの整備というと,開発を含んでいなくても整備になる。
【小柳主査】  今の意見を入れて,文章をもう少しはっきりするようにしたいと思う。
 次のポイントとして,計算科学技術の意義について意見を頂きたい。
【平尾委員】  ここには非常に重要なことが書かれているが,更に重要なのは分野連携だと思う。地球規模でますます複雑な課題があり,一つの分野だけではなかなか解決できない。そのときに分野連携が求められるが,シミュレーションは各サイエンスに横串を通すもので,分野連携を推進する大きな力になる。
 もう1点は,「京」が動き出して,いろいろな形で産業界でも利用されているが,このようなリーディングマシンが産学連携を推進する一つの大きなきっかけになっている。将来の方向として産学連携を推進する大きな力になるということも付け加えたい。
【秋山委員】  シミュレーションだけが計算科学技術ではなく,データ解析が第4の手法と言われて久しい。シミュレーションといった方がわかりやすいので,このような書き方で構わないが,データ解析についても少し考えていただきたい。
【林計算科学技術推進室長】  計算科学の中にデータ処理が入っているということであれば,計算科学技術の中でもデータ処理が重要になってきている,というように書けると思う。入っていないということであれば,計算科学技術と連携するような分野という形で書いていくことになると思うが,どちらの認識になるのか。
【小柳主査】  人によっても違うが,狭い意味ではシミュレーションを中心とした技術を計算科学と言い,データを中心とした技術は別の分野だという見方もある。広い意味では,その二つを含めて計算科学という言い方もあるかと思うが,秋山さん,その点はどうか。
【秋山委員】  例えばゲノムという言葉が計算科学の分野で語られて10年以上たつと思うが,ゲノムがシミュレーションだったことはなく,ずっとデータ科学としてやってきた。計算科学の新しいメンバーの一員ではないかと思う。
【中村委員】  ビッグデータというデータ科学が今後重要になってくると思うので,言葉のありようではあるが,キーワードとして記述していただいた方がいいと思う。
【小柳主査】  書き方に工夫はいるが,ここで扱う次のスパコンが対象とする分野と位置づけという意味では,両方あっていいと思う。
【林計算科学技術推進室長】  計算科学を広く捉えた方がいいとは思っているので,それでよろしければシミュレーションだけではなく,データ処理なども計算科学技術の一分野として重要になってきているというような書き方をしたいと思う。
【富田委員】  計算科学をシミュレーションだけだという捉え方はおかしくて,データ解析や,実際に実測された観測データ,実験データをシミュレーションに取り込んでいく技術を含めて計算科学と捉えることが今後必要だと思う。アプリケーションFSでもシミュレーションだけではなく,社会的課題を解決するためには,ゲノム解析の話も出てくるし,衛星データといった膨大なデータをどう取り込んで,気象・気候で活用していくかということを含めて計算科学と捉えている。
【小柳主査】  気象であれば,データ同化の話もデータサイエンスの面が深いと思う。
【富田委員】  データ解析,シミュレーション,それらを融合したデータ同化も是非お願いしたいと思う。
【林計算科学技術推進室長】  先ほど平尾委員からあった産学連携については,9ページに「京」の開発による効果として記載している。また,リーディングマシンの在り方として,当該システムを中核に研究交流が促進され,我が国の計算科学技術全体の発展に貢献することが期待できる,というようにしている。
【小柳主査】  ここでもそれを一言入れた方がいいというのが平尾先生の提案だと思うので,できる範囲でその趣旨を生かしたいと思う。
【土居計画推進委員会主査】  冒頭に計算科学技術という言葉が出てきて,コンピュータサイエンスとコンピュテーショナルサイエンスのプラスアルファみたいな形で定義されているのはいいと思うが,情報科学技術という言葉とどのように使い分けているのかを役所にお聞きしたい。
【林計算科学技術推進室長】  私も明確には説明できないが,確かに似通った感じにはなっている。情報科学技術の方が,計算科学技術より広い概念だとは思うが,データ処理の話も入ってくると,その差が縮まってくるようにも感じる。
【小柳主査】  計算科学技術という言葉が適切かどうかは別として,ここで考えているのは,情報の中でハイパフォーマンスの側面を言っていると思う。
【土居計画推進委員会主査】  計算機科学という言葉が入っている限りは,必ずしもそのような捉え方になっていないと思う。世の中には情報科学や情報学といったいろいろな言葉があるが,計算機工学,要するにコンピュータサイエンス・アンド・エンジニアリングをACMとIEEEがコンピューティングと呼ぼうと言ったり,いろいろな苦労をしている。どの場面をどのように捉えるかということを明確にする必要がある。
【小柳主査】  この総体という言葉が言い過ぎのような気がする。ここは全体を議論すると収拾がつかないので,むしろ我々が今関心を持っている分野の振興についての方策を議論している。総体というと誤解があるので,文章を考えたいと思う。
【林計算科学技術推進室長】  スーパーコンピュータに関連するものという形で,最後に要約した方がよろしいか。
【小柳主査】  余り全体を大風呂敷に広げない方がいいと思うので,文章を練りたいと思う。
【小柳主査】  続いて,11ページの「シミュレーションにより解決が期待される社会的・科学的課題」に議論を移したい。これはFSのアプリケーションチームの報告書をもとにまとめられているが,特にアプリに関連した委員から意見をいただければと思う。
【牧野委員】  少し戻るが,9ページのスパコン開発の動向のところで,これからの開発では電力と熱に対してどう対応するかが大きな課題だということは皆さん同意されると思うが,そのような大きなレベルの技術的課題をどこかで述べた方がいいと思う。つまり,要素技術そのものではなく,要素技術を開発する目的を述べるという視点が要るのかもしれない。
【小柳主査】  ここは国内の状況を中心に議論しているところになる。
【牧野委員】  どこに入れるべきかというと,それがこの構成の中にはない。国際的な状況,国内の状況の前に,スパコン開発全体の方向性と,その中で解決すべき問題というのが必要なのではないかと思う。
【小柳主査】  後ほど事務局で検討していただきたいと思う。
【中村委員】  創薬・医療のところに,医療への応用が抜けている。これだと創薬と機器の開発しかないように読めるが,むしろ,シミュレーションにより体の中で何が起きているのかを理解し,それを医療に役立てることも重要だと思う。
【小柳主査】  具体的な文章の提案があれば,事務局に連絡をお願いしたい。
【常行委員】  クリーンエネルギー創出・環境問題解決のところで,二次電池や太陽電池,あるいは光合成をモデルとした高効率な物質・エネルギー変換システムといった物質絡みのものを挙げていただいているが,材料というキーワードも必要だと思う。材料は,経済的にも日本にとって大きな研究対象になる。項目としては,エネルギーというと限定的過ぎるので,例えば構造材なども含めて別に設ける方法もあると思う。
 もう1点は,基礎科学分野というとき,いつも素粒子と宇宙,原子核くらいであり,物性物理学みたいなものが入っていない。多体問題や量子現象なども基礎的なもの一つだと思うので,可能であれば入れていただきたい。
【富田委員】  FSでは基礎物理学のところは宇宙,素粒子,原子核といった分野ごとにまとめている。ここで挙げているのは素粒子物理学のバリオン間相互作用の話になるが,当然,物性の方からもリクエストはたくさん出てきているので,それらも重要であるということを何らかの形で書ければいいと思う。
【小柳主査】  基礎科学という場合に,もっと広い範囲について言及すべきということはそのとおりだと思う。
【小林委員】  アプリケーションのところでいろいろと数値が出ているが,実効性能と書いてあったり,あるいは2020年頃とか,これらの仮定が違っているのか,同じなのかよくわからないところがある。
【富田委員】  ここは精査中のところではあるが,大体実効性能から見積もって,例えばメモリバンド幅が律速になるのであれば,これくらい必要であろうというような形で書いている。現状ではざっくりとした数値であり,精査する必要があると思っている。
【小柳主査】  性能の予測を出したいので書いているが,エクサの領域までいくと性能といったときに何を意味するかがかなり微妙な問題になる。誤解を招かないように根拠のある数字を出していきたいので,精査してもらいたい。
【金田委員】  総合防災分野のところで,広域複合災害というキーワードを是非入れていただきたい。避難だけではなく,復旧・復興シナリオの構築も視野に入れた考え方の方がいいと思う。
【富田委員】  重要な話であり,直接的な被害の後,社会的にどのような経済になっていくかといったところまでを入れたものが防災の軸になっている。
【林計算科学技術推進室長】  資料に丸で書いてあるのは,各分野を発展させるというイメージで書いてあり,更に「京」の次になったときには,いろいろな分野の統合がもう一つのポイントになってくるということを入れたいと思う。
【富田委員】  そのときに,このような社会的課題を解決するために,各分野で連携が必要であるということを最初に言っておけば,その後の議論が展開しやすいと思う。
【小柳主査】  その辺を考慮してブラッシュアップしたいと思う。
【秋山委員】  防災のところで「一気通貫に行い」という言葉を使っているが,「トータルで一貫して」など別の言い方もできると思う。
【石川委員】  ある程度の幅はあると思うが,メモリ容量については書けないか。
【富田委員】  メモリ容量はリクエストがなかったので書いていないが,とても重要だと思う。各アプリについてメモリ容量は精査しているところである。
【小柳主査】  メモリ容量も可能な範囲で入れていただければ,マシンのイメージがはっきりしてくると思う。
【林計算科学技術推進室長】  文章は分かりにくい部分も多々あるので,修正していきたいと思う。特に,「京」ではどこまでできて,どのような課題があるのかをなるべく明確にしたいと思っているが,先生方にもお聞きすることになると思うので,協力をお願いしたい。
【松岡委員】  これはアプリFSの課題でもあるが,最終報告に向けて本来どうあるべきかというと,各アプリケーションによってシステムの律速要因が違っており,例えば,メモリバンド幅であったり,メモリのトランザクション回数であったり,FLOPSであったり,これらで律速されることになる。何が律速しているか,そのリクワイアメンツアナリシスは,本来何FLOPSというような数字でいうべきではなく,このアプリケーションはこれが律速要因で,その律速要因がこれだけの性能を必要としていると書くのが技術的には正しい。本来はそのような書き方をすべきで,我々はそもそもFLOPS中心主義からは避けようということを言ってきたわけで,そこでまたFLOPSと書くのはどうかと思う。
【中村委員】  少し違う視点からのコメントになるが,先ほどの事後評価の報告書では今後の展望として課題や問題点を指摘しているので,それに対しても答える必要があると思う。ここで抜けているのが,SPring-8,SACLA,J-PARCなどの大規模実験施設との連携になるが,今後の方向性として,どういうところにスパコンが使われるべきかを書いておくといいと思う。また,企業機密等を適切に管理することも指摘されているので,産業利用のところにこのキーワードが入っていてもいいと思う。
【小柳主査】  この評価の中の,特に将来に関する部分は,今後ワーキンググループの報告書にも反映させていきたいと思う。
 次にリーディングマシンの在り方について,初期には三つのイメージで議論していたが,その後コンソーシアムからの提言もあった。この点について意見を聞きたい。
【秋山委員】  フラッグシップシステムを支える特徴あるシステムについては,「その必要性を適切に評価するとともに」に加え,将来性,経済性も重要だと思う。それは,今そのシステムが必要でも,将来がないのであれば考え直す必要があるかもしれないし,まだ未熟な技術であっても,将来それが主流になっていくのであれば,我が国として開発すべきだと思う。また,経済性も必要性とは別の軸だと思うので,幾つかの軸を書いていただきたい。
【小柳主査】  何らかの形で意見を反映したいと思う。
 これは私の意見になるが,ここにはリーディングマシンとフラッグシップシステムという言葉が出てくる。我々はここを大分議論してきたので大体のイメージはわかっているが,外に出す文書として混乱しないようにしたい。リーディングマシンはトップクラスのコンピュータ群を想定しており,そのうちの汎用性の高いマシンをフラッグシップシステムと言っているのがここのイメージになる。
【牧野委員】  リーディングマシンの最先端の技術を,誰がどこで開発することを想定しているのかが抜けていると思う。プロセッサ技術の開発を我が国で担うのはどこなのか,それはこのHPCI計画の推進に含まれるのか,それとも,ほかでやってくれることを想定しているのかという辺りが,3章に入っていないといけないと思う。
【村上委員】  一般的にはまず状況分析があり,次に要求仕様,そしてそれに対してどう答えるのかが2章になると思う。それがグランドデザインであり,リーディングマシンの階層構造も含めて,HPCIがどのようなものになるのかをイメージとして定義する必要がある。その上で,それをどう実現するかが研究開発の方向性になる。デザインしたものをどうインプリメントするかであり,状況分析,要求仕様,要求分析,そして,それをどう実現するかという4段階が必要になると思う。
 最先端の技術はそれなりにコストがかかり,コストと技術の枯れぐあいはトレードオフの関係になる。単純にリーディングマシンだから最先端技術とはならないと思うし,コストという観点を入れると,第3章のリーディングマシンの定義は,2章で言っているリーディングマシンの定義と少し矛盾するところもあると思う。
【林計算科学技術推進室長】  リーディングマシンの定義は19ページに記載しており,世界トップレベルの高い性能を持ち,最先端の技術を利用して開発されるシステム,これをリーディングマシンとして整備していくことが必要であるとしている。これは元々論点整理で定義していたものになる。第2章のリーディングマシンの必要性については,飽くまでも日本にあることが必要だという観点で書いてあり,新たに開発するとは書いてあるものの,第2章の段階では外国から買ってくるものも理念的にはないわけではない。それを第3章では,やはり開発は国内でやるべきだという二段構えの構成になっている。国内開発の必要性までを19ページに書いた方がいいということであれば,そのように修正したい。
【小柳主査】  2章と3章の位置付けはいいと思うが,そのつながりをはっきりすることが必要だと思う。
【松岡委員】  中間報告にどのくらい入れるかわからないが,一般論として世界中のスパコン開発が直面している課題があり,それはパワーリミットによってメニーコア化しなければならないとか,バンド幅が減少するといった課題になる。これはDOEやDARPAのレポートでも指摘されており,彼らがプロジェクトを前進させるときにはそれを前面に持ってきている。そもそも開発しなければならない動機はこういう問題があり,計算科学のアプリはこういうところが律速になっているという説明になる。
 そうすると,開発や整備の必要性,特に各要素技術の開発は,それらの課題を解決しないとマシンが作れないという理由付けがないと作る意味がない。つまり,一般的にはこういう問題が物理的にあって,かつ,アプリではそれが律速になっていて,だから新たに開発するということになる。去年の作業部会ではそのような流れだったと思うが,その流れが反映されていないのがフラストレーションになっていると思う。
【土居計画推進委員会主査】  松岡先生の話は理路整然としていてすばらしいと思うが,我が国としては1番目と2番目を逆にした方がストーリーとしては明確になると思う。
【松岡委員】  確かにおっしゃるとおりで,それぞれのアプリケーションにおいては,例えばメモリバンドのデータ処理能力なり,ネットワーク能力が律速になっている。それをスパコン技術的から見ると,省電力という課題があって,それによりメニーコア化が進んでいるという全体の技術トレンドの中で,そのような技術を何らかの形で補う必要がある。一部は買ってくるものもあるし,開発するものもある,またそれを統合していくという形になると思う。
【林計算科学技術推進室長】  利用状況の後に技術的な動向を入れるということか。
【松岡委員】  そのように入れるのが形としてはいいと思う。
【宇川委員】  ワーキンググループ共通の意識として確認しておきたいのは,リーディングマシンはフラッグシップシステムとそれを支えるシステムであり,その全体をリーディングマシンと呼んでいる。そしてフラッグシップシステムを一つ作り,それを補充するシステムについては競争原理等も含めて,必要性を十分検討して計画していくということだと思うが,それでよろしいか。
【小柳主査】  そのとおりだと思う。
 次に,全国共同利用の9大学情報基盤センターのシステムについては,情報基盤センター間で意見をすり合わせていただいているので,まずは石川さんからお願いしたい。
【石川委員】  論点整理の中で幾つか指摘されていたが,それらを9大学のセンター群で話をしてまとめた。最初のパラグラフはセンターの位置付けで,旧7帝大の基盤センターは元々共同利用施設であり,論点整理では全国共同利用施設のように書いてあったが,全国共同利用を進めているという形で表現を変えている。ここは9大学がきっちりとスパコンを整備していくということを言っている。
 次のパラグラフは,各センターが開発・整備するシステムの一部をHPCIの資源として提供するということであり,センター群のマシンの全部がHPCI資源であるというわけではないことに注意していただきたい。
 3パラグラフは,論点整理では整備の主体性がどこにあるのかが分かりづらかったが,これをはっきりと分けた。HPCIは国が計画を策定するが,HPCI資源の提供に関しては基盤センター群の自主・自立性にも配慮するということ。その計画に沿って,全体の中でどうやって戦略的に更新・整備していくかを考えていくようになっている。さらに,各機関が抱えているユーザ層を考慮しながら,大学内におけるシステムの集約や複数機関での共同導入などについても,全体の中で連携を検討していくこととしている。
 最後のパラグラフは,我々は共同利用・共同研究拠点として活動してきており,人材育成についてもきちんとやっていくということを記載している。
【宇川委員】  筑波大も東工大もそうだと思うが,9大学全部押しなべて情報基盤センターではないので,注意書きにそのことを書いておくのがいいと思う。
【石川委員】  確かに注意書きがあればいいかもしれないが,長く書くとぼけてしまうので,とりあえずこのような形にしている。この点は内部でも議論しており,役割が違うという話もあったため,共同利用・共同研究拠点をしている9大学という表現にしている。【小柳主査】  これまで,特に大学法人化してからは各大学の持ち物みたいになっているが,全体をみて国レベルでの戦略的な位置付けをすることが大事だと思う。そのことをもう少し強く書いてもいいと思う。
【中村委員】  25ページの表の運用にHPCIの言葉が出てこないが,これは全くやってないということなのか。やっているのであれば,一部はHPCIに提供というように書くべきだと思う。
【林計算科学技術推進室長】  一括課題ではないが,地球シミュレータセンターがHPCI資源ということで最近入ったので,それは書いてもいいかもしれない。
【中島委員】  地球シミュレータセンターの場合は微妙な立場ではあるので,HPCI資源に出していると書くと困るかもしれない。
【中村委員】  地球シミュレータのところで「有償利用を実施」となっているが,ほかの大学の情報基盤センターでも有償はあるので,ここだけ有償となっていると特異な使い方をしているよう見える。
【林計算科学技術推進室長】  独法のシステムは基本的に設置機関の研究者が使用する前提になっており,表にはそのように記載している。地球シミュレータは設置機関の利用だけではないということを言うためにこのように書いている。有償かどうかの話ではなく,運用の仕方を書いていると理解していただきたい。
【中村委員】  理屈は分かるが,今後HPCIに資源を出すことも視野に入れるということもあり,それに対してこのように書かれていると,有償となるのかなど要らぬ推測をされる可能性もあるので,注意して書いた方がいいと思う。
【青木委員】  9大学と附置研との関係について,大学内におけるシステムの集約と書いてあるが,例えば大学にある他の附置研などを集約するということなのか。
【石川委員】  筑波大と東大は既に連携しているが,大学によっても状況が違うので,ここは併記という形にしている。これは大学の自主性,自立性の話になるので,どう考えるかはそこに委ねられている。
【小柳主査】  次に26ページのリーディングマシンの研究開発について意見を聞きたい。リーディングマシン,特にフラッグシップマシンの具体的な内容については,大体のターゲットとスケジュールを示すことがワーキンググループの仕事になる。その際には,まず開発する主体から提案を聞き,それをもとに議論するという形になると思う。スケジュールについては,FSアプリのサイエンスロードマップで,どの段階で,どういった資源が必要になるかが出ているので,この検討を踏まえてスケジュールを議論したいと思う。FSのアプリチームの立場として,まずは富田さんからフラッグシップシステムのスケジュールとスペックについてコメントを頂きたい。
【富田委員】  アプリFSでは,先ほど松岡先生がおっしゃったように,どこがボトルネックになるかということを含めて具体的な数値をまとめている。必ずしも性能重視の議論ではなく,社会的課題あるいは科学的課題の解決を目指すことになるが,大まかに2020年頃にエクサスケール以上のものが欲しいというのがFSアプリチームの一つの目安になると思う。ただし,その計算規模は非常に幅広く,アンサンブル系のようなケース数が多い計算や,全系を使うものも多い。その意味では,エクサFLOPS以上の計算機がないとできない計算も多くある。このほかにも,整数演算が必要なアプリや,言語解析,データ解析などでも,それを取り巻くインフラの整備も含めて有効活用していくための議論がある。
【宇川委員】  リーディングマシンについては,スケジュール,スペックと合わせて,開発運用主体をどうするかという議論が大事だと思う。これについてはワーキンググループでもほとんど議論できていない。この部分について,コンソーシアムではかなり時間をかけて慎重に議論してきており,前々回紹介させていただいたとおり,困難はありつつも2018年にエクサFLOPSを目指すべきというのがマシンに関する提言で,運用開発主体に関しては,まずは国が決めるべきであるとしている。ただし,それには満たすべき条件があり,開発する上で人的体制が整っていること,あるいは開発後の運用をするための体制が整っているといったことを記載している。
 ここまでは,いわばコンソーシアム理事長としての立場の発言だが,ここから先は私個人の考えと捉えていただきたい。中間報告案にどこまで書き込めるかは,ワーキンググループ,開発主体,コンソーシアム,それぞれでの議論の進み方によると思うが,もうそろそろどういったシステムを開発し運用していくのかを,開発主体として想定されるところに作業を始めてもらった方がいいのではないかと思う。そもそも「京」のプロジェクトは「京」を開発するだけではなく,世界的な計算科学のCOEとなるべき拠点を作ることもターゲットとしており,その実現として理研に計算科学研究機構ができている。計算科学研究機構はマシンを運用するだけではなく,計算機科学と計算科学の両方から成るチームを作って整備が進められてきている。そういったことを考えると,機構にどういったシステムをどういった考え方で作り,運用していくのかを検討していただき,何らかの機会を設けて,それをお伺いするという段階に進んでいいのではないかと思う。
【小柳主査】  この点について文部科学省からコメントはあるか。
【林計算科学技術推進室長】  宇川委員からコメントがあったとおり,我々としても開発主体と想定されるところでスペック,コストなどを含めて検討してもらい,それを反映させていくことが必要ではないかと思っている。その意味では,5月8日に中間報告案を取りまとめてパブリックコメントをしている間にヒアリングをして,その議論の結果を中間報告に反映させるのがいいのではないかと思う。ヒアリングは,技術的に企業秘密に触れるような部分が出てくる可能性もあるので,非公開で行うことになると思う。
 開発主体の候補については,フラッグシップシステムは共用法に基づくシステムになるだろうということで,まずは現在「京」を開発して運用している理化学研究所に検討してもらい,その結果を見て判断していくことが現実的なのではないかと考えている。
【小柳主査】  平尾機構長からコメントはあるか。
【平尾委員】  ワーキンググループの議論もこういう形で煮詰まってきているので,来年度の概算要求にのせることを考えるのであれば,そろそろ具体的なシステム,スペック,スケジュール,費用について考えないといけないと思う。皆さんの方から,計算科学研究機構で一度案を作りなさいということであれば,それに応えたいと思う。
【渡邉委員】  この段階で中間報告に入れる必要はないが,共用法の是非を問うことも検討していいのではないか。共用法はコンピュータに向かないと思っており,例えば理研が権限を持ってやれるならいいが,登録機関,理研,文部科学省などがあり,その運用が難しくなっていると思う。
【小柳主査】  私も課題審査などに関係していると,全く同じ考えを持っている。
【村上委員】  法律的な部分で縛られているところがあるかもしれないし,技術的なところで縛られているかもしれないが,前振りのところでアメリカやヨーロッパのことを紹介しているので,ユーザ視点で見たときに我が国と利用形態がどう違っているのかを見ていくことも必要だと思う。ユーザ視点としての要求仕様が規定され,それに対してどう応えるか,どう実現するかという論点が必要だと思う。
【小柳主査】  最後に資料3の要素技術について意見を頂きたい。要素技術を開発するとしたら,その根拠も含めて考える必要がある。特にプロセッサを開発するとかどうかも重要だと思う。
【牧野委員】  私や松岡さん,村上さんが言うように,こういう問題があってという視点からまとめ直す必要があるのではないか。
【小柳主査】  ここは一般的なコンピュータ技術みたいに書いているが,サイエンスドリブンということをいうならば,もう少しアプリの観点から要素技術を捉え直す必要があるということだと思う。
【秋山委員】  システムソフトウェアの欄にスケジューラが抜けていると思う。超巨大システムになってくると,それが全体の性能に大きくかかわってくると思う。
【小柳主査】  スケジューラは加えてもいいと思う。
【松岡委員】  広い意味での資源管理なので,資源管理ソフトウェアになると思う。また,ビッグデータ向けのシステムソフトウェアも考える必要があると思う。
【小柳主査】  現在はシミュレーションを中心に考えた要素技術になっているので,その点はつけ加える必要があると思う。
【石川委員】  資料の20ページで,全国共同利用ではなく,全国共同利用・共同研究と書いたはずだが,その部分が修正されていない。資料としては,全国共同利用・共同研究としてほしい。
【高田委員】  中間報告案を公開して意見聞くとき,産業界の人にとって分かりやすい面と分かりにくい面があると思う。第1章の最後に「スパコンが『研究開発の基盤』から『社会の基盤』へ発展していくことが期待される」と記載されており,「社会の基盤」と「研究開発の基盤」が分けて書いてあるのは分かりやすいと思う。つまり,リーディングマシンとフラッグシップの研究開発が,最終的に社会の基盤につながっていくということが大事だと思う。産業界では,すぐにはフラッグシップのマシンを使えないかもしれないが,それが最終的に社会の基盤として国内のいろいろなところに役に立つということを書くと,一般の人にも分かりやすいと思う。
【室井委員】  リーディングマシンの必要性のところで複数のマシンということが書かれているが,ここはいろいろな指摘があるところだと思うので,なぜその結論に至ったかをもう少し詳しく書いてもいいと思う。これまでのアプリFSの検討によって,一つでは厳しいということが資料としてあればいいと思う。
【小柳主査】  そもそも我が国の計算インフラのあるべき姿として1点豪華では駄目だという議論があり,また,特にエクサになると分野別の特徴が重要になってくるという両方のポイントがあると思う。
 本日頂いた意見を整理して,中間報告にまとめていきたいと思う。また,追加の意見や訂正などがある場合には事務局までメールを送っていただきたい。

(3)その他

 村松計算科学技術推進室長補佐より,次回の日程(5月8日水曜日,17時,3F1特別会議室)を報告。

小柳主査より閉会発言

 

お問合せ先

研究振興局情報課計算科学技術推進室

電話番号:03-6734-4275
メールアドレス:hpci-con@mext.go.jp

(研究振興局情報課計算科学技術推進室)