今後のHPCI計画推進のあり方に関する検討ワーキンググループ(第11回) 議事録

1.日時

平成25年1月25日(金曜日)17時~19時

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室

3.出席者

委員

小柳主査,青木委員,秋山委員,天野委員,石川委員,宇川委員,加藤委員,小林委員,関口(智)委員,善甫委員,高田委員,常行委員,富田委員,中島委員,中村委員,平尾委員,牧野委員,松尾委員,松岡委員,村上委員,室井委員,渡邉委員
(HPCI計画推進委員会)土居主査,笠原委員

文部科学省

下間情報課長,林計算科学技術推進室長,村松計算科学技術推進室長補佐

4.議事録

(1)今後の調査・検討課題について

 林計算科学技術推進室長より,資料1に基づき説明。また石川委員より,資料2に基づき説明。質疑応答は以下のとおり。

【小柳主査】  はじめに,石川委員の説明で質問があれば先に聞いておきたい。
【青木委員】  導入するマシンを決めるときに委員会で議論するということだが,その委員会はどのような形でつくられているのか。
【石川委員】  東大の場合はスパコン部門に専門委員会があり,そこで運用方針を決めている。専門委員会には学外を含むユーザを代表した人たちが入っており,その中から調達に関する委員会もつくっている。
【宇川委員】  筑波は9大学情報基盤センターの中に入っているが,歴史は大分違っている。比較的幅広の計算科学の分野,具体的には素粒子,宇宙,物性といったところを対象に計算資源を提供すると同時に,計算機科学の研究もやっているという意味で,どちらかというと附置研に性格が近いと思っている。
【小柳主査】  では資料1,資料2に基づいて項目ごとに議論したいと思う。最初に,資料1で共通認識になっている部分について意見を伺い,それをもとに検討課題に入りたい。
【青木委員】  先ほどの話では,リーディングマシンは必ず共用法のもとに行われるような説明だったが,共通認識には特にそのような記述はないと思う。リーディングマシンといった場合に,共用法の縛りはあるのか。
【林計算科学技術推進室長】  法律では,先端的な科学技術の分野において比例のない性能を有し,科学技術の広範な分野における多様な研究に活用されるという定義のもとに,極めて高度な演算処理能力を有する電子計算機となっている。基本的にはその枠組みを維持していくのが現実的ではないかということで,資料1の3.の案を書いている。
【青木委員】  逆にいうと,「京」でなくても特定高速電子計算機施設という名前をつければ,共用法のもとで運用できるということなのか。
【林計算科学技術推進室長】  法律上は理研により設置されると書いてあるので,現状では理研が設置して,その能力も10ペタ以上のものになる。これは省令で定まっているものなので,計算機の能力に応じて変えていくことになる。
【小柳主査】  1台のリーディングマシンをつくるなら話は簡単だが,イメージ2,3のように複数を考えたとき,共用法との関係をどうするかは確かに重要な問題だと思う。
【牧野委員】  共通認識として「Linpackによる性能評価は完全に無視するわけにはいかないが」となっているが,これはどう解釈すればいいのか。
【小柳主査】  言葉のとおりで,無視するわけにはいかないけれども,大事なのはどのような成果を出すかということである。Linpackについては多少意見が分かれたが,全体の共通認識をまとめるとこうなるだろうということである。ただ,「が」と書いてあるように,飽くまで一つの参考情報という位置付けであるが,Linpack中心ではないということだけははっきりしていると思う。
【牧野委員】  リーディングマシンの提言のときは,例えば世界トップレベルの性能というときに,Linpackでもトップレベルでないと駄目なのか,Linpackはそこそこでもアプリケーションで世界一であればいいのか,ということがあると思う。
【小柳主査】  確かに重要なので,(3)のときに議論したいと思う。
【富田委員】  「京」のときはLinpackの性能が重要だったが,Linpackによる性能評価をどれだけ重要視するかにかかっていると思う。何が重要かという認識をまず書くべきであり,より重要なのは,そのシステムで何を達成するかということだと思う。
【小柳主査】  Linpackへのこだわりがごちゃごちゃし過ぎているということだと思うので,書き方を工夫してみたいと思う。
【林計算科学技術推進室長】  この資料はこれまでの議論をまとめているだけなので,これを変えるという議論よりも,これから報告書をまとめる段階でこのような考え方をどう表現していくかということだと思う。
【小柳主査】  そもそも技術的にエクサFLOPSのレベルでLinpackが走るかという大問題もあり,この辺は技術的な動向も含めて考えたいと思う。この書き方はいままで大分議論をしてきたので,そのときのいろいろなイメージが色濃く残っている。
【関口(智)委員】  資料1の2ページ目に産業競争力のことが書かれているが,その後の論点では余り産業のことがない。例えば産業技術力強化法では,競争力強化のための施設といった文言もあったと思うので,そのあたりも一緒に考えられればいいと思う。
【小柳主査】  これは重要なポイントとして入れていきたいと思う。
 次に各論点の議論に入るが,1.は共通認識ということで今議論したので,2.国内システムの現状についてコメントがあれば伺いたい。
【渡邉委員】  報告だけだが,この表の最後の列に地球シミュレータが入っており,計算機資源の40%が一般公募枠となっている。この部分はHPCIが動き出したことに伴い,平成25年度からは一般公募枠を地球科学に絞って30%にしている。
【中村委員】  9大学情報基盤センターのシステム能力は,24システムでトータル6,300テラFLOPSとなっているが,24で割っても平均が700にはならないので意味がわかりづらい。
【林計算科学技術推進室長】  これはセンター当たりの数字になる。
【宇川委員】  全体的な考え方としてはこれでいいと思う。その上で,超高速電子計算機施設についてまる2の「計算機技術の発展に応じ,その能力を適切に更新していく」というのは,少し受け身な表現だと思う。むしろ超高速電子計算機施設は,計算機技術の発展を先導して技術開発を行うといったような積極的な言い方がいいのではないか。
 もう一つは,附置研,大学共同利用機関法人のシステムについて,ここに書いてあることに異論があるわけではないが,わりと現状維持的なイメージになっている。研究というのはどんどん動いていくもので,過去には比較的分野が細分化していって,各分野を深堀する傾向があったと思うが,そこからある種の反省があり,関係する分野が共同,連携しなければわかってこないような研究をやっていこうという方向が重要になってきている。そうすると,複数の共同利用機関,あるいは附置研が共同して,グランドチャレンジを解くための設備を設置していくようなことも推奨されるべきで,そういった観点でも書いていいと思う。
【中村委員】  bの9大学情報基盤センターのシステムのまる3,まる4について,基本的には戦略をきちんとしていくということでいいと思うが,このままでは何も変わらないのではないか。私も大阪大学のスパコン選定委員のオブザーバなどでかかわっているが,選定委員は1大学だけではなく,地域の他大学も含めた委員会を組織してやっている。そうなると,国全体としての整合性をとるのは難しく,大学も絡んだ予算の割り振りの中で,どうしても仕様が限定されてきてしまう。
 筑波大学を除く情報基盤センターは,共同利用・共同研究拠点としてネットワーク型でやっているが,例えばハードの導入についても,ネットワーク的にやることによりこれだけうまく戦略的に入れることができる,といった持っていき方を国の方で指導しないと,単に努力目標だけでなかなか現実には難しいと思う。
【小柳主査】  まる4に多少その方向へのニュアンスが入っていると思う。
【中村委員】  それをやるためにはどうするかというと,やはり今の導入委員会がもっと広いものでないといけないし,あるいは国がある程度口出しをするようなことがないと難しいと思う。ただし,大学の自主性の問題もあるので,具体的にどうするかということは考えながら進める必要があると思う。
【中島委員】  口を出すからにはついてくるものがないといけないと思う。逆にいうと,そこを覚悟した上で書かなければならない。
【小柳主査】  この辺は大学の自主性の問題もあり,国の戦略をどのように整合させ,しかも,必要な予算措置をしていくのはなかなか難しい問題だと思う。
【高田委員】  タイトルが「各機関の役割,位置付け」となっているが,超高速電子計算機だけがリソース名となっている。それ以外はシステムとなっていて,運用や人材育成のことが書かれている。運用や人材育成といった中身をもう少し整理して議論しないと,議論が横並びになっているところがあると思う。
【小柳主査】  b,c以下は組織論で,aはマシンだけしか書いていないという指摘については,確かにそれはあると思う。
【林計算科学技術推進室長】  (1)の表題が間違っていて,基本的には「各機関のシステムの役割,位置付け」という考え方で資料は書いている。ただ,そうは言っても人材育成や組織の位置付け等にも言及しないと,片手落ちになると思うので記載している。
【小柳主査】  組織論的なものを別項目で立てるという可能性もあるかと思う。
【室井委員】  aからeのそれぞれの位置付けや役割を個別に見ると,このような書きぶりになるとは思うが,それぞれの間の連携,あるいは役割分担という視点があってもいいと思う。多くの研究者あるいは利用者は複数の計算機を使っており,研究で使い分けている。そのため,研究目的などを明確に意識して使っていくことが必要になると思う。
 特にaの超高速電子計算機に関しては,bからeのシステムや,民間の計算機での基礎的な研究から,大規模計算への道筋をきちんと維持し続けることが大事だと思う。そのbからeまでのシステムを利用する研究をどうやって維持するか,あるいは大規模な計算機を使える人材をどうやって育成していくかという議論も随分あったと思うので,このようなことも取り込めればいいと思う。
【小柳主査】  マシンそのものの話だけではなく,その役割も含めて議論をまとめた方がいいのかもしれない。
【富田委員】  分野連携が必要ということは共通認識だと思う。そのような課題を9大学の情報基盤センターでも当然奨励するべきだと思うが,このような分野連携型の課題はものすごく大規模かつ複雑な計算になると思う。そのため,そのような計算は超高速電子計算機,つまりリーディングマシンで計算していくというような文言の方がいいのではないかと思う。
【小柳主査】  つまり,連携的な分野と融合的なものは,むしろそういうところの役割だということになるか。
【富田委員】  どちらも今後そのような課題はどんどん出てくると思うし,FSでも議論しているが,かなり大がかりな計算規模になると思う。もちろん9大学の情報基盤センターでもそのような奨励はされるとは思うが,超高速電子計算機,いわゆるリーディングマシンでよりエンハンスできるというような文言が必要ではないかと思う。
【小柳主査】  ここにはわりと大きなセンターの関係者が多いと思うが,資料のeではそれ以外の大学システムの話も書いてある。特にまる3では,9大学以外の大学の中からリーディングマシンへつながる可能性も視野に置くということが書いてあるが,これについてはどうか。それぞれ事情は違うが,歴史的には筑波大や東工大が7+2になったのは,このような経緯があったと思う。
【牧野委員】  eにはリーディングマシンの開発ということが書かれているが,aはもちろん自明としても,b,c,dには書かれていないので少し不自然な感じがする。
【小柳主査】  重要な指摘で,似たような視点をほかの項目にも入れるべきだと思う。
【宇川委員】  筑波の場合QCD-PAXは科研費だったが,CP-PACSはプロジェクトが認められると同時に,完成後は全国共同利用に供するものとして計算物理学研究センターが発足した。もともと全国共同利用ということが念頭に置かれていたものであり,大学等で開発されたというのとは少し差があると思う。
【小柳主査】  ここには個々のいろいろな事情は具体的には書いてないが。
【村上委員】  (1)の位置付けの確認だが,それ以降の(2),(3),(4)は今後の我が国としてのHPCIに関するグランドデザインを定めるもので,(1)はそれを考える上での現状をどのように考えるかという意識でよろしいか。
【小柳主査】  現状だけではなく,その先の展望をどう考えるかも含めてになる。
【村上委員】  将来こうあるべきだという将来ビジョンがあり,現状の認識があって,その間のギャップをどう埋めて将来のあるべき姿に持っていくかという議論をやることになると思う。(1)だけで議論すると,現在の組織ありきで,どのようにそれを維持するか,あるいは拡大縮小するかという話になってしまう。
【小柳主査】  ただ,これはフィックスしたものではなく,例えば9大学の情報基盤センターはこのまま行くわけではないというニュアンスは入っている。
【村上委員】  要するに,現在のところからスタートすると,ミスリーディングになるのではないかということを危惧している。インフラとして見たときのマシンというのは,集中,分散,集中というような大きなウェーブになっていると思う。大計センターがスタートしたときには,集中型でセンターがつくられおり,その当時はネットワークもないし,センターに行かないと浮動小数点演算性能を出すような計算はできなかったということで,7プラス筑波と東工大というように徐々に増えていったと理解している。その後,計算機がコモディティになってきて,ここで分類するところのeになってきたと思う。最近はまた集中化が起こっていて,センター以外の大学でHPCのサーバを持ち続けることはいろいろな意味で難しくなってきており,また7センターのところに回帰してきていると思う。現在の状況は過去の経緯を踏まえて出てきたものなので,それをそのまま引きずっていくと,そのときの技術,あるいはユーザのニーズに合わなくなってくるのではないかという危惧がある。(2),(3),(4)のところから議論して,それに持っていくために,現在の(1)をどう変えていくかという議論になるのではないか。
【小柳主査】  これは難しい問題で,現状より先に理想像というのは議論しにくい面があると思う。
【林計算科学技術推進室長】  少し補足させていただくと,現状は2.でまとめており,3.はこれからのことを書くように整理している。その意味で,余り変わっていないように見えるところは議論していただければと思う。端的にいうと,aについては共用法に基づいて今後もやっていくというのが基本的なスタンスであり,bの9大学情報基盤センターのシステムは人材育成等も含めていろいろな役割があるが,我が国トップレベルの演算処理能力を持つことが重要で,その上で一部はHPCIに提供してもらって国全体として運用するというようにしている。そのために必要があれば,共同導入,運用といったことも検討することになる。今まで9大学情報センターの役割の中でどこに焦点を当てるかが明確ではなかったように思えたところを,とにかく計算機能力と,それに付随する計算機研究開発機能や利用者支援機能が存在意義としてあるのではないかということを書いている。
 附置研と独法については,それぞれ法的な根拠があるので特定領域の研究や法人の研究に使うことが第一義としてあるとしても,リーディングマシンのような形で国の戦略に沿って位置付けられるのであれば,それは国全体のインフラとして活用できるような形にしておくべきではないかというのがc,dで言っていることである。
 その上で,我が国全体のグランドデザインといった場合に,aからeまで全部やるということではなく,戦略に書いてあるように基本的にはaとbであり,それにリーディングマシンとして位置付けられるものを戦略的にやっていくということで,我が国全体の計算科学技術の発展をしていけばいいのではないかということを書いている。
【青木委員】  bのところを戦略的にやるのであれば,大学がどう考えているかに左右されてしまうので,ある程度文科省で押さえていかないといいグランドデザインが描けないと思う。
【小柳主査】  法人化以来その問題があるので,それはちゃんとうたいたいと思う。
 次に(2)の地理的な配置についての意見はどうか。
【石川委員】  ネットワーク経由で利用できるといっても,ネットワークを今後も充実していかないことには使えないので,ちゃんとしたインフラが必要だということを書いておく必要があると思う。
【青木委員】  確かにネットワークということもあるが,システムの周りに研究所ができて,そこに人が集まってくるという側面もあるので,研究者が集まる場所,計算科学の拠点が1か所だけでいいのかというのは若干気になる。
【小柳主査】  別に計算科学者が集まる拠点が1か所とは書いていない。
【青木委員】  どうしてもそうなりがちだと思う。トップマシンの周りに集まるようにしていかないと,マシンだけあって人がいないというのは寂しい気もする。
【宇川委員】  確かに大事な点で,まる1はシステムについて書いてあり,まる2は研究等の拠点であり,本来対比されるものではない。システムについては,そのシステムだけではなくそれを利用し,支えるような計算機科学,計算科学の研究者の拠点機能も大事だということを書いておくべきだと思う。
【小柳主査】  拠点機能は重要なポイントだと思う。
 次に(3)のリーディングマシンの考え方について,意見を伺いたい。
【室井委員】  質問になるが,イメージ2と3の違いがよくわからない。イメージ3は複数あって,そのうち一つが超高速電子計算機となると,イメージ2と何が違うのか。
【林計算科学技術推進室長】  結果的には似てきている。今までの議論ではイメージ1,2,3と分けており,そこに共用法に基づく計算機を当てはめたときにどうなるかを書いている。
【青木委員】  例えばイメージ1であれば,実際にそれができるのであれば非常にいいと思うが,技術的なことを無視してイメージを議論しても意味がないと思う。むしろ技術的なものがあって,最適解は何かという考え方になると思う。
【小柳主査】  もちろんそのとおりで,そのためにFSをやっている。
【青木委員】  もう一つ気になったのは,分野とアプリケーションという言葉が1対1のように見えるが,FSの感じだと,むしろアプリケーションタイプのようなものがあり,それはいろいろな分野が入っているというイメージになる。そこは気をつけないと,すごく狭い分野というイメージになってしまうが,決してそうではないと思う。
【中島委員】  落としどころとしてイメージ2というのは当然あると思う,それを余り柔軟に考えてしまうと幾らでも広がってしまうので,歯止めがかかるようにしないといけない。イメージ1で行くのか,行かないのかというのは程度の問題だということを常に頭の中に入れておく必要があると思う。こちらの方が速い,遅いというのは程度の問題ではないので,どのくらいならイメージ1でいいと思うのかといったことも考える必要がある。
【高田委員】  9大学情報基盤センターのシステムで,まる1に「世界トップレベルのシステムの数分の一から数十分の一程度」と書いてある。この差は大きく,数分の一であれば,かなりのものがそのマシンでできると思うが,数十分の一のものがたくさんあったとしてもそれは使えず,その場合はやはりリーディングマシンでやらなければならないということになると思う。イメージ1,2のときに,次の9大学情報基盤センターなどの構成がどうなっているかのイメージも同時につくっていく必要があると思う。
【石川委員】  (4)の戦略的推進の在り方にセンター群の更新計画といったことが書いてあるが,現状でも「京」のピーク性能10ペタに対しては,数年後にはそれを上回るマシンがセンター群に入ってくる状況にはあるので,結局は時間軸を見ないといけない。イメージ2,イメージ3が本当にできるのかは懐疑的で,そもそもリーディングマシンをどういうスペックで決めるのかが書いていないため,その下のマシンのスペックを決めることもできない。そうこうしているうちに普通にセンター群にそれなりのマシンが入ってくるというような状況になってしまう。最初にイメージ1があった上で,そこできちんと議論していった方がいいのではないかと思う。
【中島委員】  高田さんのおっしゃりたいことがよくわからないが,少なくとも十分の一を目指せという話なのか。要するに,いつの段階で何十分の一かという話になる。今現在,「京」の10%以上のものを持っている大学は二つしかないが,もう少したてばそれが増えてきて,更にもう少したつと「京」を上回ることになり,そのころには「京」の次の話が始まっているというようなサイクルで動く。
【高田委員】  石川先生が補足してくださったように,時間軸を考えていただけるのはいいと思う。「京」と同じものが何年サイクルで出てくるのか。時間的にどこの時間でもいいが,その時点の日本の計算資源の構成がイメージにあればいいと思う。
【中島委員】  「京」がいつ動いたかという定義もまた難しい。オフィシャルな見解として去年の9月に動き始めたとすると,その時点で10%を超えているマシンが二つあった。その1年前だと,TSUBAMEがあったかどうかという話になる。そのくらいは多分行くと思うし,それくらいを目指すんだと思う。
【石川委員】  それは各センターがどれだけの電力を供給できるかにかかっていて,そうすると,うちの場合は十分の一以上のものは出せるということになる。あとは時間軸で,それがエフィシエントに仕上がることによって,更に上に行く。
【加藤委員】  1ページ目にリーディングマシンの定義と必要性があり,「科学技術の新たな展開を切りひらいていくシステム」となっていて,「世界トップレベルの高い性能を持ったシステム」と「最先端の技術を利用し,新たに開発されたシステム」と書いてある。世界トップレベルというのは,10番とか20番をトップレベルとは言わないと思うので,大体3番,4番までではないか。ところが7ページ,8ページを見ると,リーディングマシンがいっぱいあるような文章で,少し小振りになっているように見える。この部分が整合していないように思う。また,1ページ目では最先端の技術を利用し,新たに開発すると書いてあるが,7ページ,8ページは必ずしもそうではなく,設置するようなイメージになっている。
【青木委員】  多分そうではなく,むしろ特定なアプリタイプに適用したようなマシンをそれぞれ同時期に開発し,アプリタイプに対して世界有数の性能であれば,複数あり得ると思う。
【加藤委員】  そうであればそういうニュアンスで書かないと,7ページ,8ページだとリーディングマシンがごろごろしていて,そのうちのフラッグシップ的なものを法律で定義するような書きぶりになっている。
【林計算科学技術推進室長】  これは検討課題にもなっているが,高い性能といったときに必ずしも演算処理能力だけのことを言っているわけではないというのが1ページの定義で,ここのところは今までの議論でもまだ明確になっていないと思う。したがって,リーディングマシンの要件としてトップレベルの高い性能を持つと言ったとしても,イメージが三つに分かれているように,複数あり得るということになっている。
【宇川委員】  確かに性能をどう定義するかは難しいと思うが,計算性能と言ってしまっていいのではないかと思う。それをどう定量化するかは,Linpackもその一つの指標であるし,バイト/フロップも要素の一つである。しかし,ある課題を解くためにある一定量の計算をしなければならないとすると,それをいかに速く計算できるかが重要であり,その意味での計算性能と言っていいと思う。
 (3)はリーディングマシンをトップレベルで,なおかつ開発が必要なマシンだと考えると,それをどのような枠組み,体制でやっていくのかがポイントになると思う。「京」の場合は,開発と同時に共用促進法の枠組みの中に入れて特定高速電子計算機施設という位置付けでやっている。次をどのような考え方でやるのかに関して,同じような枠組みで考えたらどうかということが書かれていて,私はそれでいいのではないかと思う。
 その観点からすると,実はイメージ1のまる1と,イメージ2のまる2は同じことを言っていることになると思う。イメージ2が違っているのは,それを補完するシステムをどうするかが書いてあるので,その意味でイメージ2の方が全体を記述している文章になっている。その意味ではイメージ3は中途半端で,イメージ2でいいということであればイメージ3は要らないかもしれない。
【村上委員】  要はプログラムやデータをインメモリにして,結果が出るまでが計算性能だと思う。ユーザの視点から見ると,タイム・トゥー・ソリューションがポイントになる。産業界の利用を考えるとタイム・トゥー・マーケットであり,市場に出るまでが生命線なので,どんなにソルバとしての性能が高くても,タイム・トゥー・ソリューションにそれが直結しなければ意味がない。非常に長いスパンで見たときに,ソルバなのか解析なのか,どこにマシンリソースなりお金をかけるのかがポイントになってくると思う。
【小柳主査】  HPCIも同じような思想だと思うが,定量化は難しい。この辺についてはまた議論が必要と思う。既に議論に入っているが,最後に8ページの(4)戦略的推進の在り方について議論をしたいと思う。
【秋山委員】  (4)というよりは全体になってしまうかもしれないが,資料で繰り返し出てきている超高速電子計算機という言葉は,共用法では理研に置くものを指すと定義されている。このワーキンググループの立場として論ずるときには,言い方を変えて特定先端大型研究施設に置くべきであるというような言い方の方がいいのではないか。別の法人ということを言うつもりは全くないが,将来の在り方について論じた紙に,理化学研究所に設置される特定名を書いてよいのかが疑問である。
【石川委員】  そんな回りくどいことしなくてもいいと思う。FSは来年の3月に終わる予定なので,報告書が曖昧なまま出ていって,そこでまた議論されるということになると計画が遅れることになる。
【秋山委員】  遅れたりすると大変困るが,東西に1台ずつリーディングマシンを置いて,交互に更新していくというようなイメージではなく,この時点で神戸に縛ってしまうことになると思う。
【小柳主査】  それはちょっと極端な意見だと思う。
【中島委員】  プラクティカルなソリューションは,これはいつできるマシンなのかということだと思う。報告書がずっとバイブルになって,20年くらいたってこれを開けると,ここに理研に置くと書いてあるよね,というようなことにはならず,次は6年後にまた集まって検討することになると思う。そのときに理研がしっかりやっていれば理研でいいし,現実として,理研がスーパーキャンディデートとなることは明らかなので,それでいいのではないか。
【秋山委員】  私が言いたいのは,理研であることは99%書いておいてもいいと思うが,この毎秒10ペタ以上の,つまり,イコール「京」と書くのは文法的に間違っていませんかということである。
【小柳主査】  それはもちろん違います。この法律の用語,定義されている用語として使われているということですね。
【牧野委員】  法律には10ペタとはなくて,10ペタと書いてあるのは施行規則の方です。だから,法律上の定義はあくまでも先端大型研究施設で,特定高速電子計算機施設は理研に置かれるものになる。そこにはスピードは書いていない。
【林計算科学技術推進室長】  5ページの(1)のaのところには,括弧書きで「共用法に基づき設置される極めて高度な演算処理能力を有する電子計算機」としている。
【小柳主査】  戦略的推進の在り方についての議論をもう少ししたい。
【中村委員】  9大学の情報基盤センターについては,スパコンの能力が世界に比較して相対的に低くなっているとなっており,だから,それを戦略的にやるというようになっている。なおかつ,bのまる4では複数機関での共同導入ということが書かれており,読み方によっては,情報基盤センターを整理していくというようにもとれる。ここでは今後10年程度という,かなり先のことが書いてあるが,10年先も果たして9センターが今と同じようにあっていいのかということも含め,戦略的な議論があるべきだと思う。今と同じような組織で行くのか,あるいはもっと選択と集中をやるべきというようにこのワーキンググループで言うのか,ここは非常に重要な点ではないかと思う。
【石川委員】  これはセンター群が考えなければいけないことだと思っている。10年後は9大学情報基盤センターではなく,HPCIにかかわるセンターとして担っていくところと,それなりのユーザを抱えて学内に提供していくセンターという形になっていくと思う。どちらを選ぶかは,それぞれの大学の独立性になっていくので,大学や基盤センター長が考えるべきであり,このワーキンググループでこうだというように持っていくのは難しいと思う。ちなみに,東大と筑波大は共同で柏にそれなりの規模のマシンを設置することを考えている。
【中村委員】  その話は大変いい方向だと思う。ただ,それを各大学に任せておいていいのかというと,やはり国としての戦略も必要なのではないかとも思う。
 eのところでは更にリーディングマシンが増える可能性もあり,もちろん可能性としてはいいが,読み方によっては9大学ではなく,十一,十二となるのかというようにも読めるわけで,ワーキンググループの報告書ではもう少し明確な方向,10年後であればこういう方向性があるといったことが言えればいいと思う。今の東大と筑波大の例をとれば,そちらの方向が合理的な将来の姿というようにも見えると思う。
【小林委員】  もっともだと思うし,そこまでやるなら附置研のスパコンも交えて,もう一回全体をトータル設計し直すぐらいやって,そういったところの運用体系ともうまく連携して,それぞれ拠点化していくことが必要になるのではないか。
【中島委員】  繰り返しになるが,先立つものを考えた上でということであり,10年後についても誰がお金をコントロールしているかが最大の問題になる。情報基盤センターが責任を持っているのは,何のためにHPCIに入ったのかという話は当然あり,その方向で行くわけだが,ここで10年後になったら,9ではなくて5だと言われて,それを実現する方法は何なのかということである。
【平尾委員】  この問題は9大学の情報基盤センター群が答えを出さないといけないと思う。ここで五つに減らしなさいとか六つにしなさいといったことは書けないと思うが,日本全体のことを考えて,センター群でいつまでにこういう形にやりましょうということを協議してもらって,答えを出すことが必要だと思う。
【石川委員】  各情報基盤センターでバラエティがあるため,センター群としてまとめられるかどうかは懐疑的なところがある。ワーキンググループの議論はリーディングマシンをどうするかであり,各センターのバラエティに関しては書いていないので,この枠の中で議論するものとは少し違うと思っている。ただ,センター群の議論はきちんとやりたいと思っている。
【土居計画推進委員会主査】  最終的には是非そうしていただきたい。中島さんが心配されていることは,8ページ(4)の戦略的推進の在り方のまる2に,国として必要な関与の在り方について検討が必要であるということがぼんやりと書いてあるが,そのようなことも含めて,きっちりまとめていただくのが重要だと思う。
【石川委員】  まる2の各機関と言っているのはセンター群を指しているのか。
【土居計画推進委員会主査】  9大学の情報基盤センターも含めて,要するに,インフラ整備ということで読んでいいと理解している。
【宇川委員】  まる3にある使用料の記載は「計画を進めていくために,適切な使用料を徴収していくことも検討していく」となっており,計画のための財源にするというようにも読める。使用料については,本来無料であるべきだという考え方もあり,要するに,研究リソースとしての競争的資金だという考え方もある。したがって,ここに何らかの文言を書くとすると,使用料に関する適切な考え方も検討していく,といった表現で徴収することを前提とした書き方は避けた方がいいのではないかと思う。
【常行委員】  産業利用については,最初の共通認識と超高速計算機のところに出てくるが,ほかには出てこない。文科省のワーキンググループなので,産業界とのかかわりをどこまで踏み込んで書くのかわからないが,問題提起としてここで少し議論してもいいのではないかと思う。
【小柳主査】  ここには産業界に関係ある方も何人かいるが,例えば自動車業界におられた天野さんは何か御意見ございますか。
【天野委員】  我々がこのマシンをどう使うかと考えたときに,これだけの大きな計算機を使うのは民間では非常に難しいし,市販のソフトウエアをインストールしなければいけないということも含めて,多分普通には使えない。その意味でも,民間がお願いしたときに,お金を払ってでもいいから使いたいときに使えるようなリソースを提供できるようにしていただけるのがいいと思う。自動車業界はそれで納得できると思う。
【善甫委員】  別の自動車会社の話を聞いたときに,なぜ100%使わせてくれるチャンスがないんだ,ということを言っているところもあった。先ほど時間軸の話があったが,使うのにも時間軸がある。非常にたくさん使いたいときというのがあるだろうし,そのときに次のマシンがどのような使い方になるのか,そのような観点から考えるのも必要だと思う。
【高田委員】  産業界でもいろいろな議論がありユーザによってそれぞれ違うが,ハードの仕様がどうこうというよりは,天野さんが言われたように,利用したいときに使えるとか,ソフトウエアや人材などが全部セットで必要になる。この中にどう書くかは難しいが,アカデミアの議論とは少し違う,産業界独自の視点でも検討していく必要があると思う。
【平尾委員】  リーディングマシンのときに東西に二つ置いて交互にという話があったが,私も理想的には複数拠点があった方がいいと思っていたし,今でもそう思っている。ただ,日本の財政は厳しく,そんな余裕はないというのが本当のところだと思う。ポスト「京」にしても,コミュニティで一丸となってやらないと,本当にやれるかどうかすらわからないと思う。我々が次にやりたいサイエンス,あるいはテクノロジがどうあるべきかをよく考えて,選ばないといけないと思う。
【青木委員】  (4)のまる1のところで財政的な面を含め,リーディングマシンと情報基盤センターという形で日本のHPCIを戦略的に進めていくということを言ってもいいのではないかと思う。
【牧野委員】  このワーキンググループについて,今後のスケジュールのイメージを説明いただけるといいと思う。
【林計算科学技術推進室長】  論点整理が議論の途中になっているので,次回は今日の議論も踏まえて,論点整理をまとめたいと思っている。その後は,3月までに論点整理の検討課題について議論を深め,報告書に具体的に入っていくというように考えている。
【牧野委員】  年度内に一応の検討を終えるということか。
【林計算科学技術推進室長】  報告書の形ができてくるのは年度を越えると思う。4月か5月の頭くらいには案をつくってパブコメを行い,夏までに中間報告書をまとめたいと思っている。
【小柳主査】  今日は貴重な議論を頂いたので,事務局で整理し,資料に反映させていきたいと思う。次回は論点整理をした後,それに基づいて,残っている論点の議論を進めたいと思う。

(2)その他

 村松計算科学技術推進室長補佐より,次回の日程(2月18日月曜日,17時から19時)を報告。

小柳主査より閉会発言

お問合せ先

研究振興局情報課計算科学技術推進室

電話番号:03-6734-4275
メールアドレス:hpci-con@mext.go.jp

(研究振興局情報課計算科学技術推進室)