資料2 調査・検討課題(利用の在り方)に対する議論の整理(案)

(利用の在り方)

 調査・検討課題】
○スパコンの利用を促進し,成果の創出を図るために,運営や利用環境の在り方はどうあるべきか。
○自然科学以外の分野におけるスパコンの利用をどのように進めていくか。
○産業利用の促進を図るために必要なことはどのようなことか。

(1)スーパーコンピュータの潜在的な利用要求は大学,企業ともに多いと考えられるが,実際に利用しようとした場合のハードル(採択条件,運用条件など)はまだ高いのではないか。

〇論点の詳細
・HPCIの認知度向上(誰でも利用申請できることの周知を含む)の観点
・セキュリティに対する不安感の払拭や利用申請の平易化の観点
・採択条件及び運用条件の適正化の観点
【ヒアリングにおける主な意見】
・大規模なスーパーコンピュータを運用している大学は少なく,実際の利用状況を見ると,HPCIに参画している大学以外の者が「京」を利用することは敷居が高いように感じる。
・産業界におけるシミュレーションの重要性が認識されつつあり,スーパーコンピュータの利用が増加している一方で,企業がHPCIを利用できるということが十分に浸透しておらず,また,セキュリティや難易度の点での不安が根強い。
・長期間の利用枠を確保する今のやり方では,最新のスーパーコンピュータを気軽に利用させて裾野を拡大することはできないし,真に必要なときだけ「京」を利用して成果を出すユーザーも増えない。
・大規模なスーパーコンピュータの利用経験は少ないけれどもチャレンジングである課題を選定する視点は重要だか,計算機資源の有限性を考えると,成果に結びつく課題に絞って優先的に利用させることも必要。

(2)スーパーコンピュータ利用の裾野を広げるためには,ローエンドからトップレベルまでステップアップできる環境の整備が必要ではないか。また,コード開発と検証が簡単にできる環境を整備することが必要ではないか。

〇論点の詳細
・国全体の複層的システム群の整備の観点(産業界の自主的取り組みを含む)
・複層的システム群内でのステップアップの観点
・コード開発・検証のためのHPCIの利用の観点
【ヒアリングにおける主な意見】
・ローエンドのスーパーコンピュータからトップレベルまでステップアップできる環境が必要。裾野を広げることで,いわゆる中間層の技術レベルがあがり,トップレベルのマシンの活用も進む。
・新規利用者がスーパーコンピュータ利用の第一歩を踏み出すためには,スーパーコンピュータ用にコード開発と検証が出来る環境が,簡単に手に入ることが必要。
・現時点で想定されているリーディングマシンと実際の産業界の利用形態の間には,かなりのミスマッチがある。
・「京」の活用を図るためには,むしろ最初は「京」以外のHPCI資源につなげた方が次のステップにつながりやすい。
・産業界では,最先端スーパーコンピュータを共同利用したいというニーズがある一方で,現実にはスーパーコンピュータとパソコンの中間レベルのリソースを求める声も多い。

(3)HPCIの利用促進のためには,ユーザーニーズを考慮した課題公募やシステム運用における柔軟な対応,サポート体制の充実などが必要ではないか。特に,産業界の利用促進という点では,その利用形態を理解した上で,アドバイスできる仕組みが必要ではないか。

〇論点の詳細
・システム運用方法の検討の観点(ジョブの未充填部分の有効利用やプリ・ポスト処理の実行環境など)
・課題公募の時期や回数などに関するユーザー要望とのミスマッチの改善の観点
・契約書や社外システムへの接続方法などの技術的サポートの観点
【ヒアリングにおける主な意見】
・産業界の利用形態を理解した上で,的確にアドバイスのできる窓口が必要。スーパーコンピュータで何ができるのか,どのようにしたらいいのかを相談できる窓口があるとよい。
・シミュレーションの専任者を置いている企業は少ないため,スーパーコンピュータを利用するにあたっては手厚いサポートが必要。
・「京」のジョブ充填率を少し上げるだけで企業にとっては巨大な資源量になるので,現在30%程度ある未充填部分を有効利用するための柔軟な運用が望まれる。
・オープンソースを利用する場合,独自アーキテクチャだと情報が少なく,トラブル時の原因特定が困難な場合があるため,十分なサポート体制が必要。
・投入したジョブの開始時間変更や領域の変更はしっかりアナウンスしてほしい。
・大規模な解析データをネットワークで転送するのは無理があるため,スーパーコンピュータ側でプリ・ポスト処理の実行環境を整備し,自社から使えるようにしたい。
・課題公募の時期や回数が,企業の求める時期とは必ずしも一致していない。企業にとっては,申請してすぐ使える環境が欲しい。
・契約書や社外システムへの接続方法など,きめ細かな対応が重要。

(4)産業界のスーパーコンピュータ利用を促進するためには,評価の確立された商用ソフトウェアの移植やチューニングを含めて,ソフトウェアの利用環境を充実させる支援が必須ではないか。また,よく用いられるライブラリをサポートしておくことが重要ではないか。その際,産業界と公的セクタの役割分担を決めることが重要ではないか。

〇論点の詳細
・国プロソフトウェア,商用ソフトウェアなどの利用に係る隘路の克服の観点
 ※産業アプリ検討サブWGで議論される
【ヒアリングにおける主な意見】
・企業がスーパーコンピュータを利用する際のコストの中でソフトウェアの占める割合が大きいので,それが利用の障害になっている。
・企業では商用ソフトウェアに対する利用ニーズが高い。商用ソフトウェアを利用できる環境を整備することが必要。
・商用ソフトウェアがカバーしない最先端の分野については産学官が連携した共同開発プロジェクトとも考えられるが,現在の国プロや大学のソフトウェアは必ずしも産業界のニーズに合致しているとは言えず,使いづらい面がある。
・シミュレーションを行う専属の部署を持たない企業では,使いやすい商用ソフトウェアを利用し,ベンダーの手厚いサポートを活用する形態が主であり,自社でのソフトウェア開発やチューニングは困難。
・商用ソフトウェアとともに,よく用いられるライブラリを用意しておくことが利用面では重要となる。
・計算コードがアーキテクチャに大きく依存する場合には,十分なサポート体制が必要。システムを変えるごとにソフトウェアを作り直すことはできない。
・商用ソフトウェアの移植や高速化など,産業界が担う方が効率的な部分もあるので,国プロと産業界の役割分担を決める必要がある。

(5)スーパーコンピュータの利用を促進するためには,スーパーコンピュータを利用することのメリットを理解してもらうことが必須ではないか。

〇論点の詳細
・スーパーコンピュータによる成果の発信強化の観点
・人材育成の観点
  ※本検討WGの議題「人材育成」において議論される
【ヒアリングにおける主な意見】
・「スーパーコンピュータを用いた大規模計算」という文化の伝承が学生の間で途絶えている。
・パソコンでできる計算で満足せず,スーパーコンピュータを使えばどんなすごいことができるのかという想像力こそが原動力になるので,それを育てていくことが重要。
・HPCIの利用に当たっては,その課題採択基準の点からもスーパーコンピュータをあまり利用したことの無い人がすぐに利用できる状況になく,ある程度スーパーコンピュータを利用した経験が必要となる。

 

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