資料4 今後の検討における共通認識について(案)

産業利用アプリケーションの開発・利用の現状及び将来の見通し等についての議論の前提となる関連事項は以下のとおりである。

<国としてスーパーコンピュータの産業利用を推進する理由>
1) 国として,スーパーコンピュータの産業利用を積極的に推進する理由は以下の通りである。
a. スーパーコンピュータの高度な利用により我が国の国際的な産業競争力の強化が期待される。
b. 産業界でのスーパーコンピュータ利用が進めば,スーパーコンピュータ本体事業,アプリケーション事業及び利用に関連する事業(HPCクラウドなど)が進展し,全体として,我が国のスーパーコンピューティング技術の競争力の強化に資することが期待される。
c. HPCIの利用が進めば将来的な課題が明確になり,それをアカデミアへフィードバックをかけることによって,学術研究のさらなる進展が期待される。

<エクサスケール時代におけるスーパーコンピュータの利用状況>
2) エクサスケール時代(2020年代)のスーパーコンピュータは超並列化とともに,ノード(CPU)のメニーコア化が進み,相対的にメモリ性能は悪化すると考えられ,このためアプリケーションの実効性能を担保することがますます困難となる(特に,現在産業界で最も多く用いられている熱・流体・構造解析等の解析分野では,ピーク性能比で1%~5%程度が限界)。

3) エクサスケール時代のスーパーコンピュータにおいて,それぞれアプリケーションの使われ方としては以下の3種類が考えられる。
a. バルクジョブ実行
b. 大規模ジョブ実行(weak scalingが要求される)
c. 1ジョブの時間短縮(strong scalingが要求される)

<産業界におけるスーパーコンピュータの利用状況>
4) 産業界では,その時代の世界トップの計算機能力の1/10から1/100程度の能力(リソース)を用いた解析の実証研究が行われ(「京」でいえば,1,000ノードから1万ノード),それが成功した場合には,数年後に実用化される。

5) 実用化された場合の計算機リソースとしては,HPCクラウドサービスや自前で設備・整備される計算機が使われる。

6) 実用化される際に実際に使用される計算機と実証研究に供される計算機は,同一あるいは大幅な変更なくしてアプリケーションの実行が可能である必要がある。

<産業利用アプリケーションの現状>
7) 産業界では以下の4通りに大別されるアプリケーションが利用されている。
a. 市販ソフトウェア
b. 国プロ開発アプリケーション
c. オープンソース・ソフトウェア(OSS)
d. インハウス・ソフトウェア

8) 現在,産業界で最も利用されているアプリケーションの多くは市販ソフトウェアであるが,必ずしも市販ソフトウェアベンダーは超並列計算に対して積極的な態度を示しているわけではない。
(その理由は,超並列スーパーコンピュータを利用した場合,超並列化や最適化に対する技術的困難さに加えて,ライセンス形態などのビジネスモデルが確立されていないことなどと推測される。)

以上の共通認識のもと,産業界で使われる市販ソフトウェア,国プロ開発アプリケーション,オープンソース・ソフトウェアについて,
・現状はどのような使われ方をしているか
・エクサスケール時代における実用的な使われ方のビジョン
・開発者がどのような将来展望を持っているか
を明確化し,国としての支援のあり方をまとめることを本サブワーキンググループの目的とする。

(参考)産業利用アプリケーション検討サブワーキンググループ報告書項目(案)

はじめに
・国としてスーパーコンピュータの産業利用を推進する理由を含んだ,共通認識について。

第1章 我が国におけるスーパーコンピュータの産業利用の現状
・市販ソフトウェア,オープンソース・ソフトウェア,国プロ開発アプリケーションの利用状況。

第2章 産業界におけるエクサスケール時代のスーパーコンピュータの使い方
・バルクジョブ,大規模ジョブ,1ジョブの時間短縮化等が見込まれる中で,実用的に,どのような効果を想定し,どのような使い方をするかのビジョン。

第3章 産業界で利用されるアプリケーションの将来展望
・エクサスケール時代に向けたソフトウェアベンダーの産業利用に対する考え方・将来展望。
・国プロ開発アプリケーションの実証・実用化に対する考え方・将来展望。
・オープンソース・ソフトウェアの将来展望。

第4章 アプリケーションの観点からのスーパーコンピュータ利用の推進
・第1章から第3章までの議論を踏まえ,産業界のスーパーコンピュータ利用を推進するために,国やソフトウェアベンダー等が今後何をすべきかを提言。
・第2章で掲げた使い方の実効性をできるだけ確保するためには,アプリケーションの開発はどうあるべきかを提言。
・開発に関する議論だけでなく,ソフトウェアの移植の考え方や市販ソフトウェアのライセンス形態等についても提言。

まとめ

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