今後のHPCI計画推進のあり方に関する検討ワーキンググループ 産業利用アプリケーション検討サブワーキンググループ(第3回) 議事録

1.日時

平成25年9月17日(火曜日)17時~19時

2.場所

文部科学省 15階 15F特別会議室

3.出席者

委員

加藤主査,秋山委員,天野委員,伊藤委員,奥野委員,笠委員,塩原委員,常行委員,吉村委員,渡邉委員
(説明者)
富士通株式会社 藤崎統括部長
株式会社ソフトウェアクレイドル 黒石部長代理
みずほ情報総研株式会社 高山氏

文部科学省

吉田研究振興局長,生川振興企画課長,川口計算科学技術推進室長,遠藤参事官補佐

4.議事録

(1)前回までの議論について

 川口計算科学技術推進室長より資料1に基づいて説明。質疑応答は以下のとおり。

【秋山委員】  問題点に気がつきませんで,大変よいと思っていますが,強いて言えば第1章と第2章の差分が分かりにくい。第1章のタイトルにスーパーコンピュータの産業利用の必要性といった,言葉を補われると第2章との違いが分かるのかと思うのですが。
【加藤主査】  正直言うと,第1章は全体的な流れとしてはちょっと浮いているんです。全体的な流れというのは,産業界がそもそも今どういう使い方をしていて,今後どう使うか。それに対して開発側がどういう展望を持っているのか。そのギャップを埋めるために何をしないといけないかという流れですが,そういう意味では,第1章はその流れの中に入っていない。けれども,何のために産業利用を政策として推進するかや,リーディングマシンというのはどういうふうに使うべきものなのかということをきちんとどこかに述べておいた方がよいと思い,それらを第1章で述べています。
【秋山委員】  私が申し上げたのは,産業利用という語尾と産業利用の何々という拡張型になっているので,包含関係があるように見えてしまって,第1章の語尾に何か付ければ違うように見えるかなと,その程度のことでした。
【加藤主査】  考えてみます。
 細かいこと,あるいは全体的なこと,構成に関してですが何かありますか。
【吉村委員】  事業仕分のときに何でスパコンはナンバーワンでなければいけないのかという議論があったと思います。日本として産業利用という観点からもナンバーワンの計算機がなぜ必要か,それがあることが産業利用という観点で,どういう意味を持つのかということがあるのであれば,そういうことを書いておいた方がいいと思います。
 もう一点は,今,市販アプリケーションと言いながら,国産のものはほとんどないわけですよね。アプリケーションに関しては国産のものがほとんどないのに,ハードウェアのスパコンだけは,日本でナンバーワンのものを開発しなければいけないというのは,一般の人から見るとすごく奇異に感じるところもあるので,そういう点は少し煮詰めておいた方がいいのかなというように思いました。
【加藤主査】  2点目は,国産アプリが限られたものしかない中で,なぜハードウェアだけを国産で開発するのかという話ですよね。1点目は,よく分からなかったのですが。
【吉村委員】  世界ナンバーワンの計算機を開発すると言い切っているから,それが産業利用という観点からも,それをサポートするような理由付けというのがもしあるのであれば,あった方がいいかなと思うのですが。
【加藤主査】  分かりました。
 個別の議論に入っているので,それぞれの章に関していかがですか。
【秋山委員】  1.1のところに理由が,3点書いてあるかと思います。それから,2.2のところに将来の使われ方が2つ,若しくは3つ書いてあると思います。前回,委員会で出てきた資料は箇条書になっていたと思います。こうやって文章に埋もれてしまうと,たくさん書いてあるなというだけですけども,3種類に整理したというのは非常にインパクトがあると思うのですが,いかがでしょうか。
【加藤主査】  報告書の形態ですね。実は事務局から出てきたたたき台は,箇条書の究極の姿でした。箇条書しか書いていなかったのでは論理的な流れがよく分からないというのと,箇条書にされていた事柄が散りばめられていたので,もう一回整理し直して,急きょこういう形にしました。やはり,全部を箇条書にするとわかりにくいという点も出てきてしまいます。
【秋山委員】  私からお願いしたかったのは,1.1と2.2のところだけです。
 あと,細かいですが,2.2で既存のものを速くするということを何度かおっしゃったと思いますが,高精度や高速化というふうに丸められてしまっているのですけど,これでよろしいですかね。箇条書にするメリットは,どれとどれが同じぐらい重きを置かれているかということもアピールにつながるので。
【加藤主査】  分かりました。少し考えてみます。
【常行委員】  産業の中で計算機の役割の比重が増えてきていると思っているのですが,だからこそますます速いものが必要になるということを,どこかに加えてはどうかと思うのですが。
【加藤主査】  シミュレーション全体の重要性がますます大きくなっているという観点ですね。分かりました。大変重要なことです。
 次に,2章の産業利用の現状ですけど,ここの部分に関しては,本日のプレゼンを受けて必要があれば修正しますが,今まで議論されたことをまとめたつもりです。そういう観点でいかがですか。
【常行委員】  32コア程度の並列計算のバルクジョブ的な利用が多く,この傾向は将来的にも続くというところですが,「この傾向」がよく分からないです。
【加藤主査】  そんなに大きな規模でないけれども,ケーススタディをたくさん実行するという傾向です。
【常行委員】  バルクジョブだけにかかっていると思えばいいですね。並列度はますます上がる。
【加藤主査】  そうです。並列度は,後で書いてあるように上がりますが,バルクジョブというか,パラメトリックスタディが多用されるという傾向は続くだろうと,そういう意味です。
【塩原委員】  最大32コア程度の並列計算とありますが,過去2回の議論では最大64コアという言葉が出てきたと思うのですが。
【加藤主査】  笠さんが前回32コアとおっしゃったので,32コアという記載にしました。
【笠委員】  32コアと言いました。
【塩原委員】  ただ,もう少し大きな規模のユーザも多いと思うので,64コアの方がいいかなと思うのですが。
【加藤主査】  分かりました。
【笠委員】  それは,そうですね。
【塩原委員】  最大って書いていますからね。
【加藤主査】  そうですね。
 それから,コストの点がいろいろ指摘されました。特に乗換えコストの点で,多分一番重要なのは,一言で言うとノウハウだと思うのですが,ノウハウの蓄積にお金と時間が非常にかかるという話と,それから,ワーキングで余り議論されませんでしたが,実際にソフトを切り替えるということは,インターフェースを替えるとか,いろいろ目に見えるお金も発生するので,そのことも書いたつもりです。
【渡邊委員】  この2.1の第2パラグラフを読んでいると,結局,32コアをやっているのか,1,000コアか数万コアをやっているのかがよくわからないのですが。
【加藤主査】  実用化されているのは最大64コアぐらいだけど,将来的な実用化を目指した実証研究としては1,000コア以上の計算も行われているという趣旨で書いたつもりです。
【渡邊委員】  実施されていると書いてあるので,変更した方がよいのではないですか。
【加藤主査】  そうですね。では,これが実証であるということを明確に書くようにします。
 それから,この解析時間というのも,梅谷さんや天野さんから御指摘があって,解析時間がクリティカルで,せいぜい1日ということは入れたつもりです。
【秋山委員】  今のところですが,1日から数日というような書き方はできないのですか。
【加藤主査】  長くても数日内という中には,そういう意味が入っていますし,1日からと書いてしまうと,半日とか,数時間と言った短いものを省いてしまうことになります。
【秋山委員】  分かりました。
【加藤主査】  たしか解析の実行が最大1日で,メッシュ作成とかいろいろ結果の評価も全部入れて数日という話だったと思います。HPCを活用したシミュレーションを産業利用に供するための必要条件としては非常に重要なことなので書いたつもりです。
 では,2.2の将来展望について,未定稿ですが,今の時点で何かお気づきの点があったらお願いします。
 まず産業界でどれぐらいの規模が使われているかということで,「京」の10分の1,つまり,1万ノード,10万コアレベルが2020年,今から7年後に使われているだろうと述べていますが,この点に関してはいかがですか。これは,単純に計算機の値段から外挿したものですが,「京」を買うと多分500億円くらいで,その10分の1の計算機は50億円くらいです。今から7年たてば計算機の値段は100分の1くらいになり,導入コストも入れて1億円くらいと推定しています。1億円くらいだったら企業でも使われているかなと考えて,10分の1と書いたのですが,いかがですか。
【笠委員】  コストという点からいけば,加藤先生のエスティメーションで,大体,感覚的に合っているような気がして,そのコストがクリアされれば,少なくともハードウェアは手に入れようとするのは間違いないと思います。ここの文章としてはこれでいいのではないかと思います。
 ただし,それとあわせて,アプリケーションの方の将来の展望というのが一緒になってこないといけないと思います。
【加藤主査】  これは10万コアの計算が実用化されているという意味ではなくて,10万コアくらいのリソースが使われているという意味です。
【笠委員】  そうですね。自社内に整備されているということですね。
【加藤主査】  この辺の認識を合わせておかないと議論がかみ合わないので,規模を書いたということです。
 今日は第3章の議論なので,第3章の各ソフトウェアの将来展望はプレゼンテーションをお聞きしてから議論した方がいいと思うのですが,報告書はだいたいここに記載しているようにまとめようと思っています。

(2)市販ソフトウェアの産業利用に対する将来展望についてヒアリング

 富士通株式会社藤崎統括部長より資料2に基づいて説明。質疑応答は以下のとおり。

【伊藤委員】  最後の点ですけれども,検証用の費用負担を,国の方で予算をとっていただかないとやりにくいというお話だった思うのですけれども,それがないとやらないですか。
【藤崎統括部長】  我々は,今のやれる範囲でやります。ただ,スピードアップしようとか,具体的にアプリケーションの数を増やそうという動きは,全体のビジネスプランの中でやるので,そのスピード感とのトレードオフという感じがします。
【伊藤委員】  でも,並列化は進めていくのですか。
【藤崎統括部長】  私どものLS-DYNAとPoyntingに関しては,お客様のニーズに合わせて進めていくというのが大きな方針です。
【加藤主査】  その点は,そんな簡単な議論では済まないと思います。1つの考え方はプライベートビジネスの中で勝手にやってくださいという考え方と,産業利用を推進するために国が非常に手厚く支援しますという考え方があります。そのどこで線を引くのがいいかという議論です。そのときに,国は何をやって,ベンダ側は何をやって,産業界ユーザは何をやるという全体としての枠組みを考えたときに,ベストソリューションはこれだということを考えないといけないと思っています。
 それに関して1つだけお聞きしたいのですが,今,超並列計算のライセンスの考え方は既にユーザ側との大方の合意はあるのですか。ライセンス料金は,かかったコストで決まるのか,価値で決まるのかといったことです。そもそもどういう考え方で,ライセンスの料金を決めようとしているのでしょうか。
【藤崎統括部長】  非常に難しいところで,そういう意味で,お客様のニーズに応じてというのは深い言葉になるかと思います。
【加藤主査】  では,ユーザが出してくれるのはどのくらいの金額だと考えているのですか。
【藤崎統括部長】  実証研究をやっているというレベルなのか,本当にもう少しジョブとして定常的に使っていくレベルなのかということで随分違います。
【加藤主査】  先ほど,ビジネス的な展望がまだ明確ではないので,そんなに自分では投資できないという話がありましたよね。そうだとすると,何でもかんでも国にお願いするというのではなくて,将来的にどういうふうなビジネスを展開するからどういう投資をするかということは自分たちでも考えているのですよね。
【藤崎統括部長】  もちろんです。だから,自分たちで投資して,ここまではやっています。それをもっと加速するかどうかというのは,自分たちの自助努力の中でやっているというのが実態です。
【加藤主査】  それを全体的に加速するために,どういうギブ・アンド・テークがいいかということは全体の議論の中でしていきたいと思います。

 株式会社ソフトウェアクレイドル黒石部長代理より資料3に基づいて説明。質疑応答は以下のとおり。

【加藤主査】  共通認識の誤解というところですが,恐らく,誤解の誤解かなと思います。書いてあるとおり,「必ずしも」なんです。一般的にという意味でとっていただきたいと思います。
【秋山委員】  今,ソフトウェアを作っていらっしゃる側からたくさんの宿題を突きつけられたと思うのですが,使っている側から言うと,やはり並列数を上げていったときに完全にリニアではないけれども,ライセンス料がどんどんかかっていくというところが非常に大きな問題だと思っております。できるだけ一般論で言うと,TOP500なんかを見ていても,10年で1,000倍,スーパーコンピュータは速くなっていくわけですけど,そのうち1桁分ぐらいが大体ノード数の増加によって賄われているというふうに私は認識していまして,我々の研究の分野でも,大体10年たつとノード数で10倍使っている。つまり,ライセンス料は,10年たったら,n=100に対して10分の1になってもらわないと払い続けられないわけです。そのときに恐らくソフトウェアを作っていらっしゃる方は,1ノードで使われるライセンス料まで10年で10分の1にはされないと思います。つまり,1ノード,2ノード使う人からは取ってよくて,100ノード,500ノードとる人からは本当に数倍しか取らないというような,対数尺的な感じの価格体系にしていかないと,ハードウェアの進歩に合わなくなってくるわけです。ただし,貸し借りをしてしまう等の問題もあるので,どこかがインセンティブを与えないといけないと思っていますが。
【加藤主査】  分かりました。ライセンス料金は非常に大きな問題だとは思うのですが,このワーキングでどこまで検討するべきかということもあります。基本的にはライセンス料金はマーケットが決める話だと思うのですよね。つまり,ユーザ側と提供側の折り合う点がライセンス料金になるということです。多くの競合ソフトが出てくることによって,相対的な価値も変わってきますから。
【秋山委員】  加藤先生がおっしゃったことにはほとんど賛成しますので,ソフトウェアベンダさんの側から,こういう条件がないとできないよという宿題をたくさん頂きましたよね。それをもし仮に国が半分でも出すのであれば,ユーザ側からはライセンスのビジネスモデルをきちんと最初に出してもらわないと,1,000ノードで1,000倍払えと言われちゃうと国がお金を出しても意味がない。そこは交換条件として一緒に考えていくべきものだと思います。
【加藤主査】  私は,ライセンス料金はコストで決まると思っているんです。価値という考え方もありますが,基本的に恐らくコストですよね。幾らの経費がかかっていて,それに対して幾らの粗利をのせないといけないかというところから決まるということです。だから,このワーキングでは,どのコストを誰が負担するのが適正なのかという議論をすればいいかなと思っています。
【秋山委員】  大体分かりました。引き下がりますが,繰り返しますけれども,ハードウェアの進歩は指数的に進んでいくのに,ただ市場に任せると言っているだけではブレーキがかかってしまうと思います。
【加藤主査】  それは重々感じているのですが,今の話だと,アプリを超並列(高並列)に対応させるためには,いろんな新たなコストがかかるので,そう簡単には超並列環境には適用できませんよという話ですよね。だから,ライセンス料金はこうしろということではなくて,国は,飽くまでコストを下げるための環境を提供するということでいいと思っています。
【秋山委員】  全体としてのコストは回収していただかなきゃいけないので,ノード数が少ないユーザからは今までどおり取っていただいていいのですけれども,何らかの政策的なお金を入れるなり,インセンティブを入れるなりして,高並列のユーザの優遇政策をしないと,苦労して移植していただいても,結局払えないということになると思います。
【加藤主査】  ユーザに対して,そのライセンス料の一部を国が負担するということですか。分かりました。考えてみます。
【伊藤委員】  ミクロな議論かもしれないのですが,今,御指摘されたいろいろな課題というのは,完全には解決していないですけど,ライセンスの問題も含めて,今の「京」の産業利用の制度を設計したときも検討されたことです。ただ,16ページにあるライセンスライブラリーの件ですが,これは知らなかったです。何を伺いたいかというと,このようにソフトウェア開発の上で利用することができないものは,ほかにも何かあるでしょうか。
【黒石部長代理】  基本的には,これだと思います。あとは要求されたスピードが出るかです。
【加藤主査】  もっと本質的には,富士通の「京」でチューニングしても,お客さんが主に使っているIntel系のPCクラスタではそんなに性能がでないといった,直接的な理由があったように思うのですが。
【黒石部長代理】  はい。ただ,「京」で言えば,みようによっては普通の分散並列クラスタですので,動かすこと自体は造作ないと私は思っています。
【伊藤委員】  動かすかどうか,あるいはチューニングするかどうかに関しては,最近の自動チューニングのような技術もあるので,何とか技術開発はいくかもしれないですが,ライセンスライブラリーみたいにないものに関してはどうしようもないわけですよね。そういうライブラリー的なものというのはほかにあるかどうかということを伺いたいのです。
【黒石部長代理】  そうですね。我々の中では,基本的にないと思っております。
【塩原委員】  藤崎さんの最後のスライドで,スピードアップに関して産業利用枠の維持・拡充,リソース配分に関しては更なる拡充を望みたいと言っていますが,これは,こういうアプリの移植とか,動作確認のために別に枠として配分するようなリソース枠が欲しいということなのか。単に今,「京」だと5%という枠をもっと拡大した方がいいと言っているのか,どちらなのでしょうか。
【藤崎統括部長】  産業利用枠というところの中に,性能検証みたいなものも含めた利用を想定した使い方というのをやらせていただきたいということです。時間はそんなに要らないですけど,企業が自らの設備で実行できないような並列度がすごく高いという,割と特徴的なジョブを試したいです。そういうことに関する枠組みというものは特に今ないと思いますので。
【塩原委員】  アプリケーション・ベンダが高並列をちゃんと検証できる,開発できるような環境ということですか。
【藤崎統括部長】  はい。エンドユーザという意味ではなくてということです。
【加藤主査】  その議論に関しては,特にエクサの開発だとチューニングとか,並列化とか,最適化に非常に時間がかかるので,それを行える環境を早めに提供して,既存アプリがどこまで行けそうかという見通しを早く立ててもらった方がいいという議論は既に出ています。
 それから,先ほどの計算機のアーキテクチャというか,ユーザの数とマーケットニーズの関係ですが,ユーザが実際に使う環境と実証に供されるHPCIの環境が違っていると,アプリケーションを書き換えないといけないので,コストがかかり,それでは駄目ですよと,報告書の中に書き込んだつもりです。今,次期システムの検討をやっていますが,親ワーキングを通して,そういうところに反映させていくつもりです。
 多分,共通的に出た話がテストベッドとか,チューニングとか並列化する環境がなかなかないと言うことだと思います。これは,是非提供すべきだと私も思いますが,それを推進する理屈に関して何か御意見をお願いします。
【伊藤委員】  それは,高並列な計算を普及させるためでいいのではないですか。そこのところはそのようにして,国が施設を使って高並列なジョブをどんどんできるようにするのだから,高並列なジョブに関してはライセンス料金を大幅に値下げしてもらわないといけないというふうになると思います。
【加藤主査】  高並列のジョブを普及して,それによってスパコンの産業利用を推進する,それが大義名分だという話ですか。
【伊藤委員】  はい。
【秋山委員】  誤解しているかもしれませんけれど,テストベッドというのはアカデミアの研究者で,先んじてチューニングしたい人にも使わせるような環境だと思ってよろしいですか。それとも産業利用だけですか。
【加藤主査】  いいえ,両方です。今後は(ハード,アプリ,利用技術の)三位一体の開発がますます重要になってくると思うので,少なくともボードが何枚か出るとか,あるいは似たようなアーキテクチャのCPUなりが出たら早めに単体性能をテストするという環境をできるだけ早く構築してアプリの開発者に提供するという意味です。だから,別に産業界だけではありません。
【秋山委員】  もし,そうであれば,理由付けはかなり明確で,産業界だけじゃないので,できるだけ早くハードウェアをオープンにしないとソフトウェア,一般が間に合わないからという理由だけで,次の予算の何%かをそのシステムに充てるというのは極めて真っ当な提案だと思います。
【加藤主査】  分かりました。
 それから,先ほど知財の留保の件が出ましたが,これに関しては,特段,問題ないと思っています。アプリの最適化やユーザと連携した実証計算の過程において出てきたノウハウなんていうのがまさに貴重な知財ですが,それを国が吸い上げるなんていうことは考えていないです。
【吉村委員】  この後の私の発表でも話そうと思っていたんですが,産業用のアプリケーションのメインのユーザ層というのは,そんなに大規模な並列を使っていないです。「京」クラスの,あるいは超並列のマシン環境そのものは,もちろん将来を見越せば当然ビジネスのスコープに入ってくるはずだから,民間が自分たちで努力しなさいということはあるけれども,これらの間のギャップを若干国側が埋めてあげないと,産業界のニーズ主導だけでは,超並列環境でチューニングするみたいなことは起こってこない。ですから,次の産業界がそういうHPC環境をフルに活用するということを国側が少し先に見越すのであれば,現在の産業界と国が見える少し先の産業界のニーズとのギャップを埋めるためのいろんなサポートをあえてした方がいいのかなというふうに私は感じるところです。
【奥野委員】  バイオの業界でも全くそのとおりです。私は,11社の製薬会社と,2社のIT会社と,アカデミアでコンソーシアムを組んでソフトを開発しているのですけれども,そのソフトができたときに,製薬会社に買ってもらえますかということを初めに聞いても,精度を見てみないと,それを導入するか分からないといわれる。では,精度が出るか分からない状態でIT会社が開発するのかというと,それはかなりリスクがある。では,アカデミアに専門的にやらすかというと,やはりアカデミアが作ったものは,それほど製薬会社は使ってくれないというような状況になっていますので,そこの間を埋めるようなことをしないと本当に回る状況にはならないのではないかと思います。
【加藤主査】  先ほどLS-DYNAの場合に数年かけて産業界ユーザと連携して実証するとありましたが,結論的に言うと,そういう実証研究の支援事業みたいなものが必要だということになりますよね。
【藤崎統括部長】  そのとおりだと思っていて,先ほどの検証費用という話も実はそこで,企業がビジネスをする上でのエンジンをかけるまでのところがすごくハードルが高くて,アプリベンダの社長が技術的にすごく興味持っていてやるベンダはちゃんとやるけれども,割とマーケティング志向の会社というのは基本的にやらない。そんなリスクは負わないです。ですから,やり始められる人からスタートして,それを立ち上げた上で,ほかの人たちを呼んでくるというようにやって,市場の環境自体を変えていかない限りは多分変わらないという気がします。
【笠委員】  産業界のユーザサイドは,テストベッドですとか,実証研究なり何なりの仕組み,ツールも用意した上で,ユーザ側からのオファーがあったときに受けてくれるかどうかというのでソフトウェアを見極めればいいということになると考えてよいですか。
【藤崎統括部長】  そうだと思います。ただ,そこの最初のアピールのところも1つハードルがあるかもしれないので,どうやって欧米のベンダも含めて,呼んできたいところをちゃんとセレクトした上で,超並列に向いていない限り最初からアルゴリズムを変えるなんていうことはあり得ないので,その辺も踏まえた上で,必要なところのベンダに声をかけて,仕組みを作った上でやるという以外に僕はないと思います。

(3)国のプロジェクトで開発されたアプリケーションの実証・実用化及びオープンソース・ソフトウェアの産業利用についてヒアリング

 吉村委員より資料4に基づいて説明。次いで,みずほ情報総研株式会社高山氏より資料5に基づいて説明。質疑応答は以下のとおり。

【伊藤委員】  吉村先生にお伺いしたいのは,ADVENTUREで開発したものを,あるところでちゃんと商用化できれば,将来的には,そちらへ吸収されると考えていいのか。それとも, OSSのようなものは,ある種,コミュニティーソフトとしてずっと回さなきゃいけないから,インキュベートするような場所として恒常的なものが必要だけれども,永続的に国が持つということはあり得ないと思うので,何か違う仕組みを考える必要があるのか。その点についてはどう考えますか。
【吉村委員】  商用ソフトというのはクローズドされてしまうというのが最大の問題で,そこで技術が外部からも利用できなくなってしまうのですよね。一方で,シミュレーション環境がどんどん変わっていきますので,あるところに戻って,みんなが活用できる蓄積というものを持っていないといけない。そういう意味で,オープンソースというのはずっと必要かなというふうに僕は思っています。ですから,オープンソースがあって,商用コードもある。それらが,うまく連携しながら両方が発展するかなと思います。
 ただし,オープンソースといえども,マーケットメカニズムの中で自立できないと,金を幾ら費やしても無駄ですので,甘えは許されないというふうに思っているところです。
【伊藤委員】  最後の点ですけれども,オープンソースとして自立するという意味とADVCとして自立していく,ここの違いはどこにあるのですか。
【吉村委員】  ADVCは,いわゆる解析機能を産業界なりユーザは利用する。オープンソースは,ソースコードそのもの,あるいは,そこに蓄積された技術そのものを次の技術の種として活用できるというふうに思っています。
【伊藤委員】  なるほど。
【加藤主査】  勝手に整理してみると,成熟度が非常に高くて,既にかなり多くの企業で実用化されていて,もとの開発形態がもうなくなっているようなものがいわゆる市販ソフトであって,新たに出てきた新しい技術に対応したようなものがオープンソースであったり,国プロのソフトであったりすると思っています。
 高山さんの話や,ADVCのことを考えると,産業界が使う上では何らかの意味での事業化がないと使えないと思います。事業化されたソフトに関してはこうやっていくということを,この前段で議論したので,事業化される前のソフトに関してどういうことをやっていくかを議論すれば,大体,問題はクリアになるかなと思うのですが,そういう観点で考えるとどうですかね。
【吉村委員】  ADVENTUREは作ってから,地球シミュレータのときは,全く金銭的な支援も何もなくて自前でやりましたが,「京」に関してはCRESTプロジェクトの中でチューニングの費用をもらったり,理研と組んだりしていろいろと作業をしました。それらがかなり助かったところがありました。対応するマシン環境がかなり大きく変わるようなときは,やはり自分たちの研究開発力だけだとどうしても間に合わないところがあるかなと思います。
【加藤主査】  そういう部分は,やっぱり支援すべきということですね。その点については,国プロ開発ソフトウェアの維持管理とか,機能強化の拠点の中で是非やっていきたいと思います。
【伊藤委員】  今の支援というのは開発している人に対する支援ですよね。一方で,オープンソースのものがきちんと普及していくためには,ユーザがきちんと使えないといけない。そうすると,お試しのテストベッドの環境を開発側だけではなくて,ユーザ側も使える環境も考えていただければと思います。
【加藤主査】  分かりました。では,それも入れましょう。
 今,議論していて気になったことですが,実証までやったけれども,実用化しようとするともっと別な事業的な枠組みが必要だと思うのですが,そういう点はいかがですか。それとも,実証までやって,ユーザからのニーズが高くなれば,マーケット原理で,放っておいても事業化までされるだろうという考えでいいですかね。
【渡邊委員】  私は自動車工業会と研究したときに思ったことですが,地球シミュレータ上で非常に速くできていたものではなくて,このプログラムでないと駄目だという要請がある。そこの部分をどう扱ったらいいのでしょうか。
【加藤主査】  それも難しいところですが,それは前回も議論があったように,ちょっと性能がいいぐらいでは乗り換えられないというところがあるのは事実なので,そういう障害があっても乗り越えられるような国プロソフトを開発するべきだということだと思います。

(4)その他

 遠藤参事官補佐より,第4回は9月30日に開催予定である旨を報告。

 加藤主査より閉会発言

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