資料7 X線自由電子レーザー利用推進計画(素案)

1.X線自由電子レーザー利用推進計画について

(はじめに)

  • 平成24年3月に供用が予定されるX線自由電子レーザー施設(以下「SACLA」という。)は、これまで見えなかった極微細構造の解明やこれまで捕捉できなかった超高速動態の解明などを通じて、世界最先端の研究開発の推進と幅広い分野への活用が期待される先端研究施設である。
  • 第4期科学技術基本計画を見据えたSACLAが目指すべき主な目標としては、課題解決型研究開発の実現や、革新的創薬技術の開発や新エネ技術開発などのライフ・グリーンイノベーションの推進、国際頭脳循環の拠点形成が挙げられる。
  • SACLAが、イノベーションの創出や国際競争力の強化に加え、将来につながる新たな科学の開拓にも貢献するよう、戦略的な研究推進体制を構築することが重要である。 

(戦略会議の位置づけ及び目的)

  • 23年1月に「X線自由電子レーザー利用推進協議会」(以下「協議会」という。)が取りまとめた「X線自由電子レーザー利用推進方針」(以下「推進方針」という。)において、「X線自由電子レーザー利用推進戦略会議」(以下「戦略会議」という。)の設置の必要性が提言された。
  • 戦略会議においては、24年3月に予定される「SACLA」の供用開始以降の推進方策等について、検討することが求められている(供用開始までは、推進方針に基づき進める)。
  • 具体的には、推進体制、登録機関が行う課題公募や選定の基準、戦略重点枠、利用時間の配分、産業利用の推進、ユーザーコミュニティ、今後の整備方針、等のあり方について検討し、「X線自由電子レーザー利用推進計画(仮称)」(以下「推進計画」という。)を策定することが求められている。本戦略会議としては、SACLAの供用開始に向け、推進計画を策定することとする。

(他の委員会との関係)

  • 登録利用促進機関(以下「登録機関」という。)が利用者選定等のために設置する選定委員会は、本戦略会議の方針等を踏まえ、利用者選定に関する具体的方針や課題選定等について検討し、登録機関に意見を述べるものとする。
  • 設置者(理化学研究所)が設置する利用装置検討委員会は、23年度に実施している新規提案募集課題の状況等について、戦略会議に説明するとともに、必要に応じて課題内容の見直しを行うものとする。

(中間報告の位置づけ)

  • 本中間報告は、23年9月には登録機関が公募開始予定であることから、優先順位を付けて検討を行い、取りまとめたものである。
  • 今後、供用開始までに必要な検討を更に進めるものとする。

(参考:これまでの経緯)

平成18年2月  「次世代放射光源計画評価報告書」
          (科学技術・学術審議会研究計画評価部会次世代放射光源計画評価作業部会)

平成18年2月  「X線自由電子レーザー利用推進協議会」設置

平成18年3月  「利用推進方針」とりまとめ

平成18年4月  「X線自由電子レーザー利用推進研究課題」(委託事業)開始

平成21年2月  「X線自由電子レーザー利用推進研究課題」中間評価

平成23年1月  「X線自由電子レーザー利用推進研究課題」成果発表
          「X線自由電子レーザー利用推進方針」とりまとめ

平成23年3月  「X線自由電子レーザー利用推進戦略会議」設置

2.戦略的利用推進に係る基本的考え方について

(1)重点戦略分野について

重点戦略分野の設定について

  • SACLAは、多くの潜在的利用者等にとっては、その利用方法や利用可能性が未知である可能性があるため、まずはこれまでSACLAの利用装置の開発等にあたってきた研究者等や設置者・登録機関が先導して成果を創出し、その成果を積極的に発信していくことが重要である。
  • そのため、当面2~3年間は、設置者、登録機関、課題提案者、その他利用者等が一体となり利用研究の推進にあたることを最優先に進めるべきである。
  • これに加えて、SACLAは、供用開始当初はビームラインが2本のみであり、また利用時間も有限であることから、戦略的に重点分野(重点戦略分野)を設定し、利用研究を推進していくことが必要である。

重点的に推進すべき分野について

  • SACLAを利用した研究の実施には、人類がまだ経験したことのない光であるSACLAの光に対応できる利用装置が必須である。そのため、重点戦略分野として進める利用研究は、これまで協議会で進められてきた利用推進研究課題及び平成23年度の調整運転期間中に設置者を中心に進められる新規提案募集課題にて開発される装置を最大限活用するものであることが必要である。
  • また、取り組むべき利用研究は、先行する米国施設の後追いであってはならず、学術利用から産業応用まで幅広い研究者等がSACLAを活用することにより、第4期科学技術基本計画に向け取りまとめられた「科学技術に関する基本政策について」(平成22年12月、総合科学技術会議)に掲げられたグリーンイノベーションやライフイノベーションの創出に寄与し、我が国の科学技術の発展や国際競争力の強化に大きく貢献することが重要である。
  • SACLAの大きな特徴としては、1.原子・分子レベルでの超微細構造解析(例えば1つのタンパク質でも構造解析が可能)、2.化学反応等の高速な動態・変化の瞬時の計測・分析(例えば細孔に分子が吸着される際の細孔と気体分子の相互作用のダイナミクスの解析)であり、これらの特徴を十分活かし、他の放射光施設では実現できない成果の創出が期待される。
  • そのため、以下のような重点戦略分野等を設定することにより、SACLAの戦略的な利用を図ることとする。

(重点戦略分野・重点戦略課題の設定)

  • 重点戦略分野として、利用推進研究課題における技術開発の2つの大きな柱であった、1.「生体分子の階層造ダイナミクス」及び2.「ピコ・フェムト秒ダイナミックイメージング」を設定する。
  • また、両分野において具体的な成果の早期創出が期待され得る研究課題を「重点戦略課題」として、以下のように設定する。これら課題への取組を通じて、実験手法の確立・開拓が十分に進むことを期待する。
    1. 「生体分子の階層造ダイナミクス」の重点戦略課題は以下のとおり。
      • 創薬ターゲット膜タンパク質のナノ結晶を用いた構造解析
      • ナノ結晶及び一分子構造解析をスパコンで融合させた原子分解能ダイナミクス研究
      • 光感受性タンパク質にポンプ-プローブ法をてきようした動的構造解析
      • 超分子複合体の一分子構造解析
      • 細胞全体及びその部分の生きた状態でのイメージング
    1. 「ピコ・フェムト秒ダイナミックイメージング」の重点戦略課題は以下のとおり。
      • 気相・溶液・界面・生体反応ダイナミクス
      • 非晶質・局所構造の超高速過程(原子・分子動画)
      • 電荷発生・電荷移動ダイナミクス
      • 極端条件下の超高速過程

(重点戦略課題に対する支援について)

  • 国は、重点戦略課題として取り組む利用研究に対し、必要な支援を検討する。 
  • また、登録機関は、設置者や課題提案者等と協力しつつ知識・技術・ノウハウ等を蓄積する。また将来の支援体制の確立も念頭に置きながら、以下のような重点的な支援を実施することとする。
    • 円滑に実験・研究を行えるよう、例えば装置の構成変更等に機動的に対応するなどの重点的な利用支援を行う。
    • 各重点戦略課題に対応する成果報告会や勉強会等を開催し、研究グループの形成を図り、早期の成果創出に資する。

(重点戦略課題の選定について)

  • 重点戦略課題に該当する研究課題については、利用者選定にあたってその重要性に鑑み優先的に採択されることが望ましいが、その科学的妥当性等については登録機関において他の一般課題と同様の枠組みの下で審査することとする。

(重点戦略課題の進捗の評価について)

  • 重点戦略課題については、その進捗や成果等について、登録機関が評価し、戦略会議に報告することとする。
  • なお、これら設定した重点戦略課題の所期の目的が達成された際には、より利用者側のニーズを踏まえた課題設定へと変更することが望ましい。

(2)利用時間の配分について

重点戦略課題と一般利用課題の配分について

  • (1)で述べた通り、重点戦略課題に該当する研究課題については、利用者選定にあたってその重要性に鑑み優先的に採択されることが望ましい。しかしながら、重点戦略課題の利用者等であっても、限られたビームタイムの中、競争的環境下で効果的・効率的な研究を実施することが重要であり、一般課題の利用者等に対しても広く門戸を開いていることも重要である。
  • そのため、利用時間の設定にあたっては、重点戦略課題に特別の枠を設けず、登録機関において他の一般課題と同様の枠組みの下で選定を実施することとする。

成果専有枠の設定について

  • SACLAは共用施設であり、供用開始以降広く研究者等の利用に供するため、その利活用方法や成果等を積極的に発信していくことが求められる。
  • そのため、当面、成果非専有(成果公開)利用を原則(P)することとする。
  • 成果専有(非公開)利用については、今後、SACLAの利活用方法等についての知見等がある程度蓄積し、成果専有利用希望者が一定程度増えた段階で、産業利用のニーズなど内外の状況も踏まえつつ、検討を進めることが適当である。
  • しかしながら、例えば自ら新たなビームラインを建設し、その利用枠の多くを供用に提供するなど、他の利用者等にとっても十分な利点がありユーザーコミュニティの理解が得られると考えられる場合には、その時点の状況を踏まえつつ、成果専有利用を認めるか否か個別に検討する。 

海外研究者等との共同研究の推進について 

  • SACLAは、我が国の国家基幹技術として、重点的な投資の下に整備されたものであり、今後、戦略的な利活用を進めることが求められている。
  • XFELは、先行する米国のLCLS、現在整備中である欧州のEuropean XFEL、我が国の3施設のみであり、成果の早期創出に向けて世界的な大競争状況にある。
  • 我が国のSACLAは、日本独自技術の結晶であり、上記3施設内で最もコンパクトかつ低コストで、品質のよいX線を発振することができるものである。今後、新しく建設を検討している国にとっては、魅力的なモデルの一つともなりうるものである。
  • 今後、この分野で世界をリードし、将来の海外市場への売り込みも視野に考えると、X線自由電子レーザー施設の開発・製作・調整・利用に関する国内の技術・知識(知的財産)・ノウハウ等を蓄積していくことが、非常に重要となる。
  • SACLAは多額の国費を投じた我が国の戦略施設であるとともに、頭脳循環の核として我が国における国際的な研究拠点となり、世界のサイエンスの発展を先導していくことが期待される重要な基盤施設である。
  • 一方、米国LCLSにおいては、現在、利用者の約6割が海外からの研究者等であり、世界中から優秀な頭脳が結集し、新たなサイエンスの開拓を進めている。
  • SACLAが世界的な研究拠点に発展していくためには、内に閉じるのではなく、世界に開かれた国際公共財として活用していくことも重要である。
  • そのため、当面の間、海外研究者等については成果公開を原則として利用できるものとする。その際、国内研究者等との共同研究が積極的に進むことが望まれる。

 <検討課題>

  • 海外施設においては、外国人が研究代表者になることを妨げている事例、分担金や拠出金を支払うことで他国の研究者等に使用されている事例がある。
  • 現在の方針(案)について、上記観点も参考に、修正等が必要ないか、改めて御議論いただきたい。
    • 修正案1:「その際、国内研究者がコンタクトパーソンを務めることとする。」
    • 修正案2:「その際、国内研究者との共同研究とすることとする。」

 (3)利用者選定の方針について

課題選定基準の基本的な方針について

  • 重点戦略課題及び一般利用課題のいずれについても、登録機関が公募し選定するものとし、重点戦略分野に係る提案課題の採択を優先するものとする。
  • 全ての課題に共通する採択の条件としては、以下のような点を考慮することが適当である。
    • SACLAでなければ実施が不可能な課題であること
    • 最先端の科学技術的価値があること(斬新性、革新性を有すること)
    • SACLAの新たな可能性の開拓に貢献すること
    • 学術的貢献度が高いこと
    • 今後の産業利用の推進に貢献すること
  • 重点戦略分野については、上記に加え、例えば重点戦略課題解決に向けた道筋が明確であるか、といった点も考慮されることが適当である。 

供用開始後の募集及び選定の計画・方法について

  • 募集及び選定時期については、設置ビームライン本数や想定される各実験ハッチの有効ビームタイム等の状況を踏まえ、また課題毎の特徴や状況等に応じてある程度柔軟に設定することとする。
  • SACLAの利用期間は、隣接するSPring-8の利用期間も考慮し、また理化学研究所により策定される運転計画に基づき、年2回の公募を行い、公募開始から利用者選定まで速やかに行えるよう配慮する。
  • また、同一利用期にビームタイムを複数回配分し、初回の利用実験結果を迅速に次の利用実験に反映させるような仕組みも考えられる。
  • 更に、ビームタイムを有効に活用するため、状況に応じて、臨時の公募枠を行うことも考えられる。
  • 採択された課題の「有効期間」については重点戦略課題及び一般利用課題のいずれについても、SPring-8と同様の半年とする。
  • 以上を踏まえると、供用開始から当面の間は簡素な利用制度で運用しつつ、今後の運営状況や利用者等のニーズ等を踏まえ、選定委員空き等の意見を聴きつつ、見直しを図ることが適切であると考えられる。なお、募集及び選定の計画及び方法については、透明性及び公平性を確保しつつ、利用者等に充分な周知を行っていくことが必要である。

(4)利用支援及び運営の方針について

  • SACLAは、特定放射光施設として、利用者本位の運営を実施することが設置者及び登録機関に求められる。

運転スケジュールについて

  • 限られた予算を効果的かつ効率的に有効活用することが重要であり、SPring-8でのノウハウを活かしつつ、利用者視点に立った運転が求められる。
  • その際、先行する米国LCLSの運転・運営の状況も参考にすることも必要である。

利用者支援について

  • XFEL施設の利用経験を有する国内の研究者等は非常に限られており、登録機関においては、自らも学びつつ利用者支援を実施することが求められる。
  • また、当面の間は、設置者、登録機関、課題提案者、その他利用者等が利用研究の推進にあたることから、将来の研究支援体制の確立も念頭に置きながら、知識・技術・ノウハウ等の獲得・向上に努めることが必要。
  • SACLAの施設情報や利用制度等に関する情報支援については、SPring-8における様々な情報支援ツールやノウハウを活用しながら、必要に応じてSPring-8と一体的に行うことが重要。

利用支援業務を行う者等の人材育成方策について

  • SACLAは、国内唯一の施設であり、XFELに習熟している研究者等は非常に限られていることも踏まえると、支援者等の育成は大変重要な課題であり、今後の利用研究の成果の創出にも大きな影響を及ぼすものである。
  • そのため、国においては、利用支援業務が適切に行えるよう必要な支援を継続的に続けることが必要である。
  • また、登録機関は、設置者と協力し、大学等とも連携しつつ、人材育成を積極的に進めることが必要であり、より充実した支援ができるよう常に支援業務の質の向上等に努めることが重要である。このため、当面は、設置者とも協力・連携しつつ、技術支援要員に可能な限り現場経験を積ませることが重要である。

23年以降の登録機関と設置者が用意すること等について

  • 設置者と登録機関は、課題提案者、その他利用者等と一体となり利用研究の推進にあたる。
  • 設置者は、重点分野及び重点戦略課題の推進にあたり、必要な研究及び施設・設備の整備を行う。また、施設・設備等の整備については、利用者等のニーズや利用状況等を聴取しつつ、登録機関や登録機関が行う実験手法の開拓等と十分連携して進めることが必要である。
  • 登録機関は、共用法(※)12条に基づく利用枠も活用し、例えば設置者や大学等との共同研究などを通じて、研究支援能力の向上等に努めるとともに、潜在的利用者等の開拓について、設置者とも十分な協力をしつつ、啓発活動等を進めることが必要である。なおこの利用枠の活用については、重点戦略課題や一般課題の実施に支障のない範囲で行うこととする。
  • また、一般利用が拡大していく段階においては、トライアルユース制度により潜在的利用者等の開拓につなげていくことも考えられ、SACLAの利用状況等を踏まえつつ、検討することとする。
  • 国は、設置者及び登録機関が進める事業に必要な支援をすることが必要である。

 (※)特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律
 (登録施設利用促進機関による利用)
 第十二条 登録施設利用促進機関は、施設利用研究の促進のための方策に関する調査研究その他の目的で、特定大型研究施設のうち研究者等の共用に供する部分を利用しようとするときは、文部科学大臣の承認を受けなければならない。

(5)産業利用の促進について

産業利用の促進に向けた方法、体制等について

  • 当面、重点戦略課題の研究グループに、産業界の積極的な参加を促し、利用の手法や成果を共有していくことで、今後の産業利用の拡大につなげることが重要である。その際には、SPring-8にと同様に産学が密接に連携して進める体制が求められる。

利用料金の考え方について

  • 成果専有(成果非公開)利用がなされる場合には、従来の国際ルールを踏まえ、原則、運営費回収方式とする。具体的な料金体系等については、内外の諸状況も踏まえつつ、引き続き検討を進めるものとする。
  • なお、成果非専有(成果公開)利用においても、消耗品などの諸経費については、SPring-8同様、実費相当分を利用者等が負担するものとする。(P)

知的財産のあり方について

  • 特許等の知的財産の扱い等については、特許法等と各当事者の規程に基づき当事者同士で取り決めるものとする。
  • 特にSACLA立上げ時には共用施設の整備に設置者以外も参画することとなるため、今後の施設整備・運転に必要な知的財産を設置者以外も持つ可能性がある。従って、これを原因として十分な調整・運転が行われない状態とならないよう十分留意する必要がある。

(6)ユーザーコミュニティについて

利用に係るユーザーコミュニティのあり方について

  • SACLAは、共用施設であり、利用者本位の整備・運営を基本とすべきである。
  • そのため、様々な分野の研究者等の意見を集約し、今後の整備・運営方針について国・設置者・登録期間に対し意見を提出する機能がユーザーコミュニティには求められる。
  • また、今後の利用研究について、コミュニティから新たな重点分野の提案がなされるといったことも期待される。
  • そのためには、例えば、失敗事例を含めた研究成果の報告会を定期的に開催し、大学と企業等の出会いの場として活用されるなどの取組が進められることが必要である。
  • 限られた利用時間の中で新規参入者を増やしながらSACLAの共用を促進することが重要であり、コミュニティには開放的かつ競争的な環境を維持することが期待される。

レーザー分野など、これまで放射光分野と関わりが薄かった分野からの参入促進方策について

  • オープンで定期的な勉強会を開くことで、いつでも企業が参加できる仕組みを構築することが期待される。
  • また、SACLAは、多様な分野に新たな展開を生み出す可能性があることから、幅広く様々な分野の学会や大学、企業等に対して、例えばメールマガジンなどといった情報ツールを活用しつつ、広くその情報を展開していくことが望ましい。
  • SACLAの専用HPにおいて、失敗事例も含めた成果やノウハウを公表し、利用者等の習熟に貢献していくことも必要である。
  • 登録期間が行う講習会等を有効活用し、積極的にSACLAの潜在的利用者等の掘り起こしを図ることも重要である。

(7)成果の公表及び普及・啓発活動について

利用研究の進捗や成果の状況等についての公表方策について

  • SACLAの専用HPにおいて、失敗事例も含めた成果やノウハウを公表し、利用者等の習熟に貢献していくことが必要である。

広報・普及・啓発のあり方について

  • 登録期間が行う講習会等を有効活用し、積極的にSACLAの潜在的利用者等の掘り起こしを図ることが重要である。
  • 例えば、オープンで定期的な勉強会を開くことで、いつでも企業が参加できる仕組みを構築することが期待される。(再掲)
  • SACLAは、多様な分野に新たな展開に生み出す可能性があることから、幅広く様々な分野の学会や大学、企業等に対して、例えばメールマガジンなどといった情報ツールを活用しつつ、広くその情報を展開していくことが望ましい。(再掲)
  • 事業仕分けへの反省として、設置者においては登録期間の協力を得て、広く国民に事業内容を知らせる努力を行うことが必要である。
  • また、SACLAが国家的な最先端大規模研究プロジェクトであり、国民からの期待も高いことに鑑み、広く国民を意識した施設運営状況や研究成果等の分かりやすい情報発信が重要である。なお、当面は失敗事例も含め、積極的に研究成果を発信していくことが重要である。

(8)他施設等との連携について

米国LCLSやEuropean XFELとの連携・競争のあり方について

  • SACLAは、LCLSやEuropean XFELと連携し、装置性能の向上や成果創出の促進に努めることが重要である。
  • SACLAの特徴的な性能を生かした競争を展開することが重要である。

効果的な予備実験の推進方策(SCSS試験加速器の活用方策等)について

  • SACLAの利用資源が限られることも踏まえ、予備的な実験については、積極的にSCSS試験加速器やSPring-8等を活用していくこととする。
  • 公募の選定に際しては、SACLAで行うべきか、SCSS試験加速器やSPring-8でまずは実施すべきか、といった観点も含め審査されることが望ましい。
  • その際、SPring-8で実施すべきとされた場合、SPring-8の課題選定と適宜連携し、研究の進展が遅れることがないよう配慮されるべきである。

SPring-8との相互利用実験基盤の活用方策について

  • 相互利用実験基盤については、米国や欧州の施設にはない特徴であり、その実験開始が期待されていることから、今後、共用施設として広く活用されることを念頭にしつつ、関係者間で調整を進め、平成24年からの利用開始を目指し、引き続き整備・調整を進めることが適当である。
  • 当該施設を利用した研究については、その可能性を探求することが不可欠であることから、当面、設置者と登録機関が協力し、大学等の研究者も巻き込みながら利用研究の開拓にあたることが適切である。
  • 研究計画の策定に際しては、SPring-8とSACLA等の利用者等から広く意見を受け、世界唯一の成果を目指し、利用研究を推進することが期待される。

他の量子ビーム施設との連携方策について

  • 様々な分野において、SACLAの新しい光の可能性について探求を進める必要があることから、広く情報を公開していくことが重要である。
  • 放射光だけでなく、例えば中性子線など他の量子ビームも活用した研究の展開など、我が国独自の研究開発の探求を進めることも期待される。

京速コンピュータ「京」との連携方策について

  • SACLAの実験においては、膨大なデータの高速解析が必要になる課題(膜タンパク質の単分子解析等)があり、現時点での施設側の計算能力には限界があるため、データ処理等に多くの時間を要する恐れがある。「京」を用いることにより、迅速な解析が可能となり、実験結果の質を高めることが出来る。
  • 平成23年度から予備的な検討を開始し、平成24年度からは機器の整備及び予備的な試験を行い、平成25年度からの運用開始を目指す。

(9)今後の整備方針について

今後必要となる測定装置等について

  • 当面、まず早期に成果を創出するために必要な装置等の整備を優先する。
  • その後、内外の状況等を踏まえつつ、共用施設にふさわしい新たなビームラインの整備について、設置者及び登録機関において検討、戦略会議において検証し、整備方針を決定することとする。

施設・装置の整備の進め方(専用施設のあり方含む)について

  • 専用ビームライン・ハッチ及び設置者ビームライン・ハッチについては、SACLAのビーム取り出し口数が現時点においては最大5本と少ないことも踏まえ、様々な状況を踏まえつつ、国・設置者・登録機関が密接に連携し、その必要性を慎重に検討するものとする。
  • また、現在あるSPring-8の研究交流施設については、ピーク時の利用率が90%程度に及んでおり、今後増加することが想定されるSACLAの利用者等のため、研究環境の整備が必要である。
  • 施設設置者においては、今後の整備方針と併せてその必要性等については検討を進めるものとする。

(10)検証・評価と利用推進計画の見直しについて

利用研究の進捗や成果の検証・評価等について

  • 利用研究の進捗状況について、戦略会議において検証を行い、必要に応じて有識者等からも意見を受けつつ、適宜、計画の見直しを行うものとする。
  • その際、利用者等のSACLAに対する習熟度や、産業利用の推進状況、海外動向等を十分踏まえることが重要である。

お問合せ先

研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室

電話番号:03-5253-4111(内線4336)

(研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進)