資料5 利用研究の重点分野について(ピコ・フェムト秒ダイナミックイメージング)

分野名:「ピコ・フェムト秒ダイナミックイメージング」

  X線自由電子のレーザーの大きな特徴は、ピコ秒あるいはフェムト秒と言う超高速に変化する反応過程等のダイナミクスを原子分解能で可視化することを初めて可能にする点にある。

 この特徴を最大限に発揮して貰うために設定したのが、本重点分野である。グリーンイノヴェーション、ライフイノヴェーションに関わる種々の最先端の問題を超高速過程のイメージング手法により解き明かすことを目的としている。

(1) 気相・溶液・界面・生体反応ダイナミクス

 本課題は、エレクトロニクスデバイスと気体分子の吸着などの触媒反応のような界面化学の反応だけでなく、今後のエネルギー科学の鍵となる液相反応、環境科学の土台となる気相反応など、広く気相・溶液化学、生化学分野における超高速分子変化・化学反応ダイナミクスを可視化する事を目的とする。

(2)非晶質・局所構造の超高速過程 ―原子・分子動画―

 本課題は、ナノ微粒子などの周期構造を持たない非晶質あるいは固体中の局所に生じる超高速な構造変化の過程を散乱パターンから導かれるイメージング画像を使ってピコ秒あるいはフェムト秒時間分解能で測定し、原子・分子動画として解明し、新たな構造科学分野の創成に資するような研究を対象としている。

(3)電荷発生・電荷移動ダイナミクス 

 電荷の発生あるいは電荷の移動反応は、その母体物質相を問わず、学問的にも実用的にも極めて重要な反応としての地位を占めている。例えば、色素増感太陽電池においては、色素が光を吸収して電荷を発生しTiO2半導体に移動することにより、発電が行われる。
 また、種々の電池は、正に電荷移動のプロセスそのものである。このような、電荷発生・電荷移動の素過程はフェムト秒、ピコ秒と言った超高速領域で、分子・原子レベルでの構造変化をも伴いながら起きている事が予測されており、このダイナミクスの研究を対象とするのが本研究課題である。

(4)極端条件下の超高速過程

 地球内部のように超高圧・超高温あるいは超強磁場などの極端条件下では、物質は常温・常圧とは、全く異なった構造および性質を示すことは良く知られており、又その性質の変化が地殻ダイナミクスに重要な役割を果たしている事が近年予測されている。その為、研究テーマとしては魅力的であるが、極端条件下で研究する困難さを考えると、極めて挑戦的な研究となる。
 一方でレーザー加熱超高温等は極短時間しか発生させられないため、極短時間内での構造解析技術が希求されている。そこでこのような挑戦的研究を奨励するために本研究課題を設定する。

(5)動的X線分光科学

 溶液、非晶質などの研究でよく知られているX線分光学的手法は、現在固体科学、固体材料機能解析においてもその重要性を飛躍的に増している。固体の各種機能発現に関わる構造変化や素励起の時間スケールは、ピコ・フェムト秒と言った超高速領域にあることも、通常の分光学的研究から明らかとなって来た。
 測定科学としての視点から、硬X線短パルスおよび、低エネルギー短パルスX線を包括する、新しい固体分光学分野の発展に資するための挑戦的な研究を奨励するために、本研究課題を設定した。分光学的発展に留まらず、得られた基礎的知見を基盤にして、新規な材料開拓につなげて行く事も視野に入れている研究課題である。

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