HPCI計画推進委員会(第43回) 議事要旨

1.日時

令和2年7月1日(水曜日)

2.場所

オンライン開催

3.出席者

委員

伊藤(公)委員,伊藤(宏)委員,上田委員,梅谷委員,大石委員,小柳委員,喜連川委員,小林委員,田浦委員,土井委員,中川委員,藤井主査代理,安浦主査

文部科学省

村田局長,増子審議官,橋爪参事官,宅間室長,根津補佐

オブザーバー

(理化学研究所) 松岡センター長,松尾副センター長
(高度情報科学技術研究機構) 高津常務理事,森センター長

4.議事要旨

冒頭、文部科学省村田研究振興局長より挨拶があった後、資料1-1に沿って理化学研究所松岡センター長より「富岳」の整備進捗状況について説明、資料1-2に沿って事務局より「富岳」とHPCI第二階層における新型コロナウイルス対策利用について説明があった。質疑は以下の通り。

【中川委員】 松岡センター長の資料の御説明で、FWS、富岳ウェブサービスというのを、2021年度サービス開始に向けて、今年は複数のクラウドベンダーといろいろ協議を、共同研究をされているというのは、今までなかなか、「京」とかクラウド利用というのが難しかったこともあって、非常に期待が、特に産業界からは大きいのかなというふうに思います。ここでちょっと質問ですが、「富岳」に行くためには一般的なクラウドを通ってというか、経由して行きますというふうな図ですが、接続図になっていて、ユーザー企業は一旦HPCクラウド事業者に入って、そこから「富岳」を使うというふうになっているのですが、これは、このHPCクラウド事業者の中の計算リソースがフロントエンドで、バックエンドに、言わば持続的な利用として「富岳」を使うというふうな使われ方を想定しているのでしょうか。IoT使うということだとストリームデータの処理なんかも出てくるので、こういうのだと若干、企業の現場からは遠いようにも見えるのですが、そういった利用というのは考えていないのでしょうかというのが質問の内容です。よろしくお願いします。
【松岡センター長】 御指摘ありがとうございます。この図はそのクラウド事業者と組んだ戦略のみを図示しておりまして、ちょっと誤解を与えてしまったかなというふうに、今御指摘があって、反省をしております。ちょっとこの図を書き換えたいと思うのですけど、と申しますのは、まず「富岳」としてはクラウドの機能です。先ほどの様々な、例えばオブジェクトストアに対するアクセスとか、Kubernetesによるディプロイメントだとかリソースハンドリングとか、そのような機能というのは「富岳」はあまねく全てのリソース、アロケーションに対して、例えば普通の一般利用枠で、普通にバッチキューで使おうと思ったけど、普通にアロケーションしてもらうと、すぐ機能、使えるよねということで、機能としてはあまねく、今のような全てのユーザーに、フラットに提供をいたします。ですので、今、中川さんがおっしゃった、例えば産業利用で、どこかの企業、日立とか、どこかの企業が産業利用枠で、例えばアロケーションをRISTからもらって、それでオブジェクトストアを、実際アクセスしたいのだけど、例えばグーグルにあるオブジェクトストアにアクセスしたいのだけどということがもし生じたとすると、それは直接的に、普通にAPIをたたいていただければ、普通に使えます。
こちらのほうは、ですのでクラウド事業者と組むというのは、その上に、さらにバリューアウトのクラウドサービスをこの上に構築してもらう。というのは、右側の「富岳」、我々が提供するのは、言わばIaaS的なクラウド機能を提供する、つまりAWSのようなIaaS的なクラウドの機能を提供するので、実際はアマゾンもその上に様々なバリューアウトのクラウド、プロバイダーというのがいっぱいいるわけです。同じような形で、「富岳」もIaaSの機能を提供して、その上にさらに、より使いやすい、産業利用に使いやすいようなレイヤーというのをHPC、クラウド事業者にもつくってもらって、さらにアクセシビリティーを高めていくというのが、こちらのもう一つのSociety5.0にさらにフォーカスした事業でございます。ですので、どちらも短い言葉で言えば、直接「富岳」のクラウド機能にアクセスすることもできるし、このようにバリューアウトの民間プロバイダーの、さらにバリューアウトのサービスにもアクセスする、両方が可能というふうになります。
【中川委員】 ありがとうございます。ちょっとこの絵を見て、バックエンド的な使われ方しかできないのかなと思ったのですが、今の御説明で、例えばSINETを使えば、今の産総研のABCIに直接、SINETで使っていたり、日立も使わせていただいたりしているのですが、そういう使い方が「富岳」でもできるということですね。
【松岡センター長】 そうです。まさにおっしゃるとおりです。ABCIと同じようなクラウドサービス機能、クラウドのAPIの機能は。できればABCIより多くつけたいのですけれども、その辺りはArmへの対応含めて、かなりいろいろなことができていく状況です。
【中川委員】 なるほど。それは、例えばS3互換ストレージなんかも出てくると、非常に、何といいますか、クラウドで今までためてきたデータなんかの使い勝手もよくなりますし、非常に期待できるところかなと思います。ありがとうございます。
【松岡センター長】 それに関しては、こちら側もストレージのインターフェースをつくりますし、逆にプラットフォームで、例えばグーグルとかAWSで推移したり、アクセスできる、そういう機能はもちろん全て提供する予定でございます。両方とも提供、クライアント側もサーバー側も提供する予定です。
【中川委員】 どうもありがとうございました。

続いて、資料2-1に沿って事務局から「富岳」の利活用促進の基本方針案について説明があった。質疑は以下の通り。

【小柳委員】 人材育成の問題でいろいろこの中で書かれていますけれども、ここに書かれているのは連携大学院とか、大学院の学生ぐらいを考えていると思うのですが、「京」のとき要望があったのは学部学生、もしくは高校生以下の、言わば、どちらかというとアウトリーチ的な活動にも資源のごく一部を割いたら、非常に教育効果があるのではないかということがございました。「京」ではなかなかシステムが固くて実現できなかったのですが、「富岳」では、場合によってはそういうことも考えていただけるとありがたいと思います。
【安浦主査】 ありがとうございます。事務局、どこの部分でそういうものに対応するかというお考えはございますか。
【宅間室長】 ありがとうございます。今のご提案は追記しました人材育成のところに少し、例えば学部生とか、そういったことも念頭に置いたような修正をさせていただきたいと思います。
【安浦主査】 学部生とか、そういう書き方ではなくて、今、小柳先生のおっしゃったのは、次世代を担う学生を含む幅広いユーザーを想定するというような趣旨の文言を入れておけば、どこかでこれを広げるような形になるのではないかと思いますけど、いかがでしょうか。
【小柳委員】 あまり無制限に広くするという趣旨ではないのですが、「京」のときの経験からいって、そういうことが適宜行われると大変効果が高いので、そういう可能性を入れておいてほしいということでございます。
【安浦主査】 ありがとうございます。ですから、教育に利用するという幅広い書き方でもよろしいわけですね。
【小柳委員】 そうですね。
【安浦主査】 そういう言い方で教育という言葉をどこかに入れておいていただければ、これは対象が高校生であろうが学部生であろうが、そのとき本当にふさわしいところに持っていくことができるので、教育という言葉をどこかに入れていただくような工夫をお願いできますでしょうか。
【宅間室長】 事務局でございます。御指摘ありがとうございます。少し表現ぶりを検討させていただきたいと思います。
【藤井主査代理】 藤井です。今の点ですけど、私も小柳先生に賛成なのですが、ちょっと安浦先生の御意見に確認ですけど、今の表記だと、連携大学院や共同研究、インターンシップ等を通じてと、こういう記載ですよね。これだと、例えば理研になるのではないのかなと想定しますが、そういう機関を通じることになるのですが、安浦先生が言われるのは、もうちょっと幅広い形でできないかということを検討したい、それでよろしいですか。
【安浦主査】 私の趣旨は、幅広く教育というところで、大学等の教育機関を通してという表現を入れておいてはどうかという、そういう提案をしたつもりでございます。
【藤井主査代理】 私もその点については賛成させていただきます。
別件でもう一つあるのですが、よろしいでしょうか。
【安浦主査】 どうぞ、藤井先生。
【藤井主査代理】 今回の文章を見ると、一般利用や産業理論のところに、例えば、随時に募集を受け付け、より機動的な利用を可能とするという表現が1つあります。もう一つ、課金、利用料のところでも試行的利用という表現が出てきて、2か所に出てくるのですが、前者は割と今までの利用を、より機動的に、要するに回数が増やせるような形でユーザーの利便性を図ると。後者は、今までのトライアルユース的な部分をもうちょっと拡大して広げると、こういう意図であると理解してよろしいでしょうか。これは文科省に対する質問です。
【宅間室長】 はい、御指摘のとおりです。
【藤井主査代理】 ありがとうございます。
【安浦主査】 藤井先生、ありがとうございました。
【田浦委員】 5ページの理研による利用促進への取組のところの下線部のところが、前回私が発言したことを受けてのことなのかなと思いながら読みましたが、「特に、大学等の情報基盤センターがこれらの理研の取組に早期から参画し」云々というのですけれども、申し上げたかったことは、例えばフラッグシップをつくるならフラッグシップをつくるという、情報基盤センターなどにもそういうことに参画できたらいいと思っているような人たちが、そういう取組に参加できるようにしていただいたらいいのではないかというような趣旨で申し上げたので、文言のつまらないことを思っていると思われるかもしれませんが、理研の取組に大学などが参加するという、この非対称な書き方をもうちょっと、共通のゴールに向かって理研と大学などが協力できるという、そういう趣旨で申し上げたので、そこをちょっと直していただきたいです。
【安浦主査】 ありがとうございます。田浦先生の御意見は、「理研との取組に早期から参画し」とやってしまうと、もう初めから、理研のこのフラッグ、あるいはその次の話まで含んでいるのかもしれませんけど、そういう理研中心の活動だけという考え方になってしまうので、そうではなくて、オール・ジャパンの今後の、この「富岳」も含めたHPCIの取組に大学等も参加すると、そういう趣旨にしてほしいということでしょうか。
【田浦委員】 そうですね。おっしゃるとおりです。
【安浦主査】 文科省のほう、いかがですか。
【宅間室長】 ありがとうございます。先生の御指摘を正確に受け止められなくて申し訳ございませんでした。そうなると、そもそもこの節ではないかもしれないので、どこかいいところに、先生のお考えを反映できるように、考えさせていただきたいと思います。
【田浦委員】 すみません。よろしくお願いします。
【安浦主査】 田浦先生、ありがとうございました。
【中川委員】 今後のスケジュールのところを確認したいと思っております。最後の、あまり御説明がなかったかもしれないのですが、今年度、令和2年度の試行的な利用というのが、この8月の公募なのでしょうか。秋頃の公募というのは令和3年度のことなのでしょうか。この試行という言葉が、試行的利用が2年度と3年度と両方、試行という言葉になっているような気がして、利用者側から見ると、どこに応募したらいいのだろうという感じがするのですが。
【宅間室長】 事務局でございます。本文でいきますと5ページ目の3ポツで試行的利用について述べていますけれども、これに対応する公募が、「8月から試行的利用の公募を開始」というふうにしているものでございまして、公募を開始して、実際の課題が採択されて始まるのが秋ぐらいということで、ここが1セットでございます。「令和3年度における『富岳』利用に係る公募を開始」と秋頃の2行目にあるのは、本格共用の公募開始を意味しております。ちょっと分かりにくいかもしれないので、修正の余地はあるかもしれません。
【中川委員】 この秋頃の2行にまたがっているのは、1項目ではなくて、別の項目なのですね。
【宅間室長】 そのとおりです。
【中川委員】 分かりました。それがちょっと理解できていなかったので、試行的利用が2個あるのかと思ってしまいました。
【安浦主査】 まさにそのとおりですね。秋頃を2つ書いてもらえば、それでいいです。
【中川委員】 なるほど。秋頃、試行的利用を開始するのと、3年度の公募を開始するものということですね。
【安浦主査】 秋頃に2つ事象があるということです。
【中川委員】 了解しました。すみません、ありがとうございました。
【宅間室長】 事務局です。分かりにくかったので、修正します。

資料2-2に沿って事務局からSociety5.0枠(仮称)の案について説明があった。質疑は以下の通り。

【田浦委員】 よく分からなかったので教えてほしいのですけど、これは、研究を実施するのは誰なのですか。またその公募をして、応募してきた人が研究する、その資源を提供するということをここで提案されているのか。
【宅間室長】 研究を実施する方というのは、例えば産業のコンソーシアムだとかを想定しています。公募は、いわゆる登録機関、RISTでやる広くあまねく行う公募とはまた別の枠組みで、例えばコロナにおきましても、「富岳」のコロナ利用、今5課題やっていますけれども、理研に窓口を置いていて、提案のある人は提案していただけるようにしているのですけれども、そのような形で、広く窓口は開きつつ、そこに応募してきていただいたものの中から実施する研究課題を選び、HPCI計画推進委員会で御承認を頂いて実施するということを想定しております。
【田浦委員】 分かりました。
【安浦主査】 基本的には政策課題枠的な感じで、非常に一般的に、Society5.0のために大事なテーマがありますということで、コロナの場合は理研のほうにそういう窓口をつくって募集したわけですけど、例えばAMEDのほうで、あるプロジェクトにお金を出して、そしてそのプロジェクトがSociety5.0と密接に関連するのでぜひこの枠を使いたいと言ってきたときに、この推進枠に合うかどうかをこの委員会で検討して、合っていればお認めすると。そのときに予算がもう既に向こうについていれば、有償でやっていただきたいというのが本音ですけど、どうしても無償でやらないと予算的にもたないということであれば、それは御相談に応じるという、そういう柔軟な運用を想定しているというふうにお考えいただければいいのではないかと思っております。
田浦先生、よろしいでしょうか。
【田浦委員】 はい、大丈夫です。ありがとうございました。
【小林委員】 我が国ではやはりSociety5.0だと思いますけど、ワールドワイド的にはSDGsとか、そういうキーワードがあるかと思うのですが、そういうのも関係しているのでしょうか、あるいは別物なのでしょうか。
【安浦主査】 そこは政府の考え方にかなり依存すると思うのですが、Society5.0に絞るか、SDGsとSociety5.0は必ずしもベクトルが同じではなくて、直交する考え方でもありますので、それを入れるか入れないかというのは、例えば、今、小林先生の御意見でSDGs等も入れるべきであるという御意見を頂ければ、今後の検討の参考にさせていただくということになるかと思います。
【小林委員】 国を越えてという意味ではSDGsなのかなという気がしますので、もし差し支えなければそこは入ってもいいのかなというふうにちょっと思いました。
【安浦主査】 ありがとうございます。文科省のほうは何か、Society5.0に縛られている理由とかいうのはあるのでしょうか。
【宅間室長】 事務局でございます。Society5.0がまず挙がってきているのは、CSTIなどの評価において、「富岳」について、明示的にSociety5.0の実現に貢献することというのが指摘されているということで、まずこれが挙がってきております。ただ、先生方の御指摘のとおり、Society5.0以外にもSDGsとか、世界的に見て重要な政策目標がございますので、そうしたものを排除する必要はないのではないかなというふうに思っております。目的の部分に、そういったものも含めるということも含めて御意見いただければと本日は思っていますので、御意見踏まえて、考えてみたいと思っているところです。
【安浦主査】 どうもありがとうございます。ほかにどなたかございますか。
【伊藤(宏)委員】 これは重要性だとか緊急性だとか、それこそオール・ジャパンに近いところで、非常に重要な、望ましい姿だとは思うのですが、一方で、これにはまらないようなユーザーが当然いるわけで、そうだとすると、共用法の中の公平性、透明性というのを登録機関が担わなければいけないのですね。登録機関がまるでここに出てこないというのは、このままこれが増殖するのではないかという懸念をかえって与えないかなという、ちょっとそういうことを考えています。
【安浦主査】 伊藤先生の御意見は、この委員会だけではなくて、登録機関も含めたところで議論するという、そういう意見。
【伊藤(宏)委員】 少なくとも登録機関は、この分はこういうふうに使われていますよということを、ほかの利用者に対して明示しなければいけないですね、多分。そういう義務があると思うのです。全くそれとは別に、今の政府対応枠というのは、どちらかというと、一体誰が審議しているのだろうというぐらいとんとん行っていますけれども、そういうことばかりではないということをちょっと言いたかっただけです。
【安浦主査】 分かりました。文科省のほうは、宅間さん、よろしいですか。
【根津補佐】 文科省の根津でございます。「富岳」は共用法上で造られている施設ですので、透明性の確保というのは非常に重要な観点かと思っております。ただ一方で、例えば成果創出加速枠も、文科省が富岳成果創出加速プログラムとして審査して決めている課題について、RISTの協力も得ながら運用しているというところもありますし、また、このSociety5.0の枠に登録機関に、どういうふうに関わっていただくかというのは、御指摘も踏まえながらこれから文科省としても検討していきたいと思います。ありがとうございます。
【安浦主査】 どうもありがとうございます。ほかに何かございますか。喜連川さん、お願いします。
【喜連川委員】 今までの議論は、どちらかというとSociety5.0とか、いわゆるアプリばかりだと思うのですけど、やはりこれをうまく利用して、コンピューターサイエンスの基礎をやっている人たちが少し、遊べるというとおかしいかもしれないけど、こういう大規模システムを使う経験を得ながら、次に力を蓄えるということがとても重要ではないかなという気がするのですね。今回富士通さんがおつくりになられたのはいいのですけど、今後その中になるべく大学がインボルブしていくというのを考えると、これを一般枠のところで大層に申し込むというほどの、そんな感じでもないような気がするし、最後のほうについて調整枠みたいなもの、これは理研さんがと書かれているような気がするので、理研ではない大学の先生方がコンピューターサイエンスのために使うときは、やはり一般枠になるのですかね。そこはもうちょっとやわらかな措置があってもいいかなと、個人的には思うのですけど。
【安浦主査】 どうもありがとうございます。事務局のほう、何か回答ございますか。
【根津補佐】 文科省の根津でございます。喜連川先生、今まさにおっしゃっていただいたとおり、そういうふうな用途で今使おうとすると、恐らく一般利用枠に申し込んでいただいて、選定を受けるということになろうかと思います。現在、情報委員会では、そういう基礎の部分をどういうふうに進展させていくか、Society5.0を推進する上でそういう技術は非常に重要であるという議論を別途いただいているということは十分我々認識してございますので、このS5枠ではなくなるかもしれないですが、課内でもちょっと議論をしてみたいというふうに思います。ありがとうございます。
【安浦主査】 先ほどの小柳先生が御意見いただきました若手の育成というか、人材育成、それを、先ほどは学生とかいう、もっと下まで下ろせという話でしたけど、それももちろんありますけど、今、喜連川先生がおっしゃったような、次世代のコンピューターサイエンスを支える人たち、既に教員になっている人も、研究者になっている人も含めた、そういう人たちが触れる枠というか、触れることもできるような、そういう話をショートタームで申し込めるような仕掛けの中に入れていくというようなことも考えていただければいいのではないかと思いますけど、いかがでしょうか。根津さん、そういう考え方はどうですか。
【宅間室長】 事務局でございます。御指摘ありがとうございます。検討してみたいと思います。
【安浦主査】 喜連川先生、いかがですか。
【喜連川委員】 はい、ありがとうございます。
【松岡センター長】 理化学研究所からよろしいでしょうか。喜連川先生の御指摘は全く非常に重要でございまして、今回「富岳」がこのように成果を達成できたという、この一端は我々、コンピューターとしての汎用性を追求しながら性能を高めた、相反することを同時にできたということが非常に大きかったというふうに思っています。それはまさに喜連川先生がおっしゃるようなコンピューターサイエンス(が研究基盤としてあった)ということが非常に大きく、色濃く出ております。例えば「富岳」は従来の「京」から踏襲した機能に加えて、クラウド機能の整備を予定していて、そのような様々なコンピューターサイエンスの成果を実装していくという方針が、その生い立ちからあるのですね。それ以外にも様々な新機能をコンピューターサイエンスの研究開発、例えば今、Julia(プログラミング言語)のArm A64FXへの移植をしていて、JuliaをいかにAIへの適用のために日本の言語実装技術で最適化実装するにはどうしたらいいかとか、そこに(Juliaの開発者である)MITやJulia Foundationを加えたらどうですかねとか、そういう話をしているのです。ですので、まさに「富岳」の機能としては、まさに次世代のコンピュータサイエンティストを育てていくというプラットフォームという機能はできています。ですので、それに対してどのような政策的なリソースを割り当てるというのは、先生方に御判断いただいて、御指名いただければ、我々がそれに対応するという準備はできています。よろしくお願いいたします。
【安浦主査】 松岡センター長、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
先ほどの梅谷委員、今、発言できますでしょうか。
【梅谷委員】 先ほどの民間の有償利用の件なのですけれども、ヨーロッパ調査のときには、民業圧迫にならないようにということを注意されていたので、その文言を追加いただければというふうに思います。
【安浦主査】 ありがとうございます。調査をしていただいて、やはり民業圧迫という問題はきちんと考えないといけないということを書く。
【梅谷委員】 はい。特に産業界としてはやはり成果を、国プロのコンピューターについて成果を公表しなくていいというのはやはり重大なことだというふうに思いますので、ある意味、民間のクラウドと同じような使い方をするのであれば、民業圧迫にならないようにというのはちょっと考えるべきだというふうには考えています。
【安浦主査】 ありがとうございます。事務局のほう、これは重要な問題だと思いますので、よく文書のほうに反映するようにお考えいただきたいと思います。
【宅間室長】 事務局でございます。4ページ目の利用料金のところに「国内外の事例を参考にしつつ」というのを入れたのですけれども、そこにそういう民業圧迫だとか、そういったところも想定しつつ書いたつもりでございました。ちょっとこれだと不足しているのかもしれないので、表現を再考してみたいと思います。
【喜連川委員】 テレビ会議のレイテンシーが大きいので、さっき梅谷先生の御発言の前に松岡先生にと思ったのですけど、松岡先生の先ほどの御回答は、こっちで決めたら理研はやりますという、結構素っ気ないというか、冷たい御発言で、やや。そうは言うけど理研さんも自分でやはり考えるところがたくさんあるわけなので、御自身でも何か御提案しながら、その次の、やはりCSの人材を、巨大なおもちゃとは言わないですけど、CCSというようなトイをどう使って育てるかというのは、みんなでやはり考えていくべきではないかと、そんなそっけないこと言わないでくださいと言いたかっただけです。
【松岡センター長】 大変失礼いたしました。そのような意図で発言したのではなくて、我々は非常に積極的にセンターとしての、センターは研究部門が半分、コンピューターサイエンスですので、非常に積極的に次世代の技術を含めて大局的に研究しております。先ほど準備ができていると申し上げたのは、やはり理研として、登録機関等の関係上、何でもかんでも我々が先導、研究は先頭を切っていいですけれども、「富岳」のリソース、アロケーションとなると、我々が過度に出ると、やはりそれは共用法との関係がありますので、そういうところはちょっと抑えている。ただ、理研自身の調整枠、高度化枠等もございますし、その中の制度も含めて、我々は非常に積極的にオープンサイエンス、次世代の高性能計算、次世代のコンピューターサイエンスを支えていく、ほかの大学や研究機関とともに、民間とともに支えていくミッションを負っているというのは重々承知しております。ですので、全然素っ気ないつもりはなかったのですけど、そういうふうに聞こえたら誠に申し訳ございません。非常に積極的に、外部ともぜひ協力していきたいと思っています。
【喜連川委員】 はい、結構です。
【安浦主査】 この件、先ほどの田浦先生の基盤センターとの関係とも関係してまいりますので、そこのいわゆるコンピューターサイエンスのアカデミアの発展という視点も含めた表現が、このSociety5.0枠という考え方ではなくて、資料2-1、2-2全体通してきちんと表現できるように工夫をしていただければと思います。
【宅間室長】 事務局でございます。承知いたしました。
【伊藤(公)委員】 私としては質問とかではなく、コメントですけれども、「富岳」が今回、早々に流体で飛躍的なシミュレーションができたということは、あれは本当に使いやすさのあかしだというふうに受け止めました。ということで、いろいろなサイエンティストが、これは使いやすいシステムだということが分かったと思いますので、そういう意味では、このコロナを乗り越えながらでも、物理、科学、またいろいろな工学もあると思うのですけれども、本当にサイエンティフィックな成果が出るようにということを期待しますので、この資源利用の考え方に関しても私は賛成だということだけを述べておきたいと思います。

資料2-2に関しては、他にも意見がある場合には、別途事務局に直接御意見等を出していただくこととなった。

資料3-1について、高度情報科学技術研究機構(RIST)森センター長より説明があった。質疑は以下の通り。

【喜連川委員】 ちょっとピンぼけな質問かもしれないですけれども、教えていただけるとありがたいのは、これを見ていますと、「京」は9年間運用されたというふうに見えまして、多分文部科学省もコンピューターサイエンスの人間も一番知りたいのは、要するに9年間の中でHPCのデマンドがどういうふうに応用がシフトしていったのかと。つまり、9年前に一番マジョリティーであったアプリケーションがスケール、今もマジョリティーヘッドなのか、それとも運営が大分変容しているのではないかと思うのですね。我々、ドッグイヤーとかラットイヤーなので、9年というのはめちゃくちゃ長い年月に当たる。それをつぶさに御覧になっておられたのではないかなと思うのですが、何かそれを示すような資料がここには載っていないような気がしていて、肌で感じておられるのではないかと思いますので、例えばそういうものを「京」の中でどう見たか、それがグローバルと見たときとどう合っているのか、ちょっと差分があるのかとか、何かそういうのをちょっと教えていただけるとありがたいのですけど。よろしくお願いします。
【森センター長】 研究分野についてどういったような、開始の頃からどういうふうに変化してきたかというふうな御質問だと理解しました。
【喜連川委員】 研究分野ではなくて、事業分野。研究分野ではなくて、利用者がどう変わってきたかを。スパコンを……。
【森センター長】 利用者が利用された分野ということですね。
【喜連川委員】 そうですね。
【森センター長】 そういう意味では、割と物質材料科学系統あたりが多い傾向が最初のほうから、それから平成31年度あたりまで継続してそういう傾向があるというふうな感じです。一般課題については、そんなような感じです。それから産業利用課題については、やはり工学・ものづくり、ここら辺が割と大きい比率を占めていて、これについてもそれほど大きな変化はないですかね。最近になって物質材料科学、それも比率としましては物質材料科学だとか工学・ものづくりあたりが割とメジャーで多い分野に、産業利用ではそのような形になってございます。
的確な答えになっているかどうか分かりませんけれども、そこら辺の資料につきましては、参考データの7ページに関連の資料がございます。
【安浦主査】 喜連川先生、御質問はシミュレーションとか、そういった意味合いでの使われ方がどう変わったかという御質問ではないですか。
【喜連川委員】 というか、今お答えいただいたので大体気持ちは合っているのですけど、物材というか、資料を見させていただきますと、ネズミ色の部分ですよね。
【森センター長】 そのとおりです。
【喜連川委員】 ですから日本はやはり物材系が非常に、三菱ケミカルだとか住友とか、ああいうところはもう圧倒的に強いので、そこの母体がでかいというのは何となく分かるなと。ただ、物材と創薬というのも結構、ほとんど同じなので、もう少し細かく見ていくと、どの辺がこれから沸騰していくのかなという、今後のHPCIの狙うべきターゲットというか、お客さんがどこら辺にいるのかというようなことが、解析すれば少し見えてくるのかなと思ってお伺いした次第ですが、ちょっと分類が粗いので、なかなかこれだけでは、推察するのはちょっとしんどいかもしれないですね。ありがとうございました。
【安浦主査】 産業利用に関しては、参考資料の3-3の11ページにグラフがあって、輸送用機器というのは、これは完全に車屋さんですよね。それから医薬品があって、ゴム製品、建設という、こういう並びになっている。これも時間軸的に変化があったのかどうか、その辺も知りたい部分になるのではないかと思いますけど、この辺のデータというのは、もう少し細かいデータはあるのでしょうか。
【森センター長】 データはございますので、後でまた資料なり何なりお出ししたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
【安浦主査】 できればそういう、いわゆるコンピューターを作る側の人間にとってみれば、次どういう人たちがたくさん使ってくれるのかというのは非常に大きな目標を与えてくれる指標なので、もしそういうデータが出るのであれば、いろいろ解析して出していただければ助かります。
【森センター長】 検討いたします。
【安浦主査】 よろしくお願いいたします。喜連川先生、どうもありがとうございました。
ほかに何か御質問ございますでしょうか。
【田浦委員】 スライドの10番の利用促進、高度な技術支援・講習会の開催による利用促進というところで、29年度以降、「京」以外のHPCIを利用する課題22件に対して支援を実施したとあるのですけれども、まず体制としては、これはHPCIの資源であれば、どんなマシンに対する高度化支援をサポートしているということなのでしょうか。あともう一つは……、そうですか。どの大学のマシンでも支援しているわけですか、RISTが。
【森センター長】 HPCIの実施課題者がRISTのほうに支援要請をしていただければ、特にどの計算機でないといけないということはなくて、支援をしております。
【田浦委員】 実態として、この22件はどの辺りのマシンが中心とかというのは分かりますか。
【森センター長】 ちょっと今すぐには分からないです。またそれについても、22件、どういったマシンに対してやったかというのを整理してお出ししたいと思いますけれども。
【田浦委員】 ありがとうございます。
【安浦主査】 それでは、その辺も整理して出していただければと思います。その辺は個別に事務局に出していただいて、事務局のほうから配付していただくということでよろしいですか。
【宅間室長】 事務局でございます。全体通じて、この会議で時間が足りずに言えなかった御意見とか、事務局に後ほどいただきたいと思います。特に回答を要する今の御質問については、こちらで記録をしまして、RISTのほうから回答いただいたものを委員の先生方にお返しさせていただきたいと思います。
【安浦主査】 よろしくお願いいたします。
ほかに何か御質問とかございますか。よろしいでしょうか。
【松岡センター長】 すみません、1つだけよろしいでしょうか。度々申し訳ございません。
先ほど喜連川先生の御指摘で、それは我々が次世代等の計算基盤をどうつくっていくか、大変重要な御指摘で、ありがとうございます。それで、これはやはり全体で、「京」だけではなくて、HPCI全体を見る必要があるというふうに感じております。というのは、やはり「京」は10年前の前提でつくられていますので、例えばディープラーニングなんていうと、我々実際それをテストしているのですが、「京」でディープラーニングはもう、ある意味で仕方がないのですが、からきし駄目なのです。最新のGPUとか、もう全く歯が立たないので。したがって、「京」におけるディープラーニング、もう全くなかった。「富岳」は大分対抗できるのですけれども、ですので、これは10年前の前提でつくられた機械というのは、やはりその10年前のアサンプションがどうしても確定してしまう。じゃあそれはどうするのかと、やはり第二階層の各基盤センターが、そのために第二階層の基盤センターがあって、例えばTSUBAMEのようなマシンですと、ディープラーニング系のワークロードというのは物すごく動かせたわけですね。ですので非常に多くのAI系のワークロードというのは、やはりそのTSUBAMEや、今はABCIなんかで、HPCI全体でサポートしたというような認識であります。ですので、先ほどの話というのは、「京」1台のマシンではなくて、やはりHPCI全体でワークロードをどのように併用していたかというふうにデータを出していただけると、我々理研としても大変助かるというふうに思いますので、発言させていただきました。
【安浦主査】 松岡センター長、ありがとうございます。やはり細かな粒度でデータを出していただけると、コンピューターサイエンス側も非常に助かるということですので、RISTのほうでもできる範囲で御努力いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【森センター長】 承知しました。

最後に全体を通した質疑を行った。

【小柳委員】 「富岳」が最近マスコミに取り上げられていることは喜ばしいことだと思うのですが、私が最近、大分怒っているのは、「富岳」の記事の中に、「京」がほとんど使われなかったというようなことを複数のマスコミが述べていて、大変遺憾なことだと思っております。もちろん「富岳」は「京」に比べて、いろいろな経験を生かして、いろいろな新しい、いい点を達成したことはもちろんですが、「京」がほとんど無駄であったかのごとき記事があるのは大変遺憾に思っておりますので、「富岳」を宣伝することは大変重要ですが、その反動で「京」をおとしめるようなことにならないように、関係者の方々に御留意いただければと思います。私の感想でございます。
【安浦主査】 やはりああいう表現されるというのは、非常に日本全体の科学技術に対して、国民に対して悪いメッセージを与えますので、そこは何らかの形で我々も反論していく必要があるのではないかと思いますけど、そこはちょっと慎重にやらないと、今、専門家というのは逆に揚げ足を取られやすい状況でございますので、文部科学省とも相談しながら対応を考えたいと思います。
【小柳委員】 よろしくお願いいたします。
【小林委員】 時間がなければ結構ですけど、1つ、先ほどの民業圧迫のところ、私もちょっと気にはなっていたのですが、例えば松岡先生のスライドの12ページあたりが圧倒的高性能みたいな感じで書かれているのが少し、そこは誤解を与えるのかなと。どれぐらいクラウドにリソース出すのか分かりませんけれども、このスライドはそういうことを示しているような気もいたしましたので、御注意いただければなと思いました。

事務局から以下を説明した後、安浦主査により閉会した。

・RISTのHPCIの中間評価についての質問のRISTからの回答は後日委員へ事務局から共有する。
・次回開催は9月から10月で別途日程調整を行う。

 

お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付計算科学技術推進室

電話番号:03-6734-4275
メールアドレス:hpci-con@mext.go.jp

(研究振興局参事官(情報担当)付計算科学技術推進室)