HPCI計画推進委員会(第33回) 議事要旨

1.日時

平成29年6月29日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省3階3F2特別会議室

3.出席者

委員

西尾主査,伊藤(公)委員,伊藤(宏)委員,梅谷委員,大石委員,小柳委員,喜連川委員,小林委員,中川委員,中村委員,藤井委員,安浦委員

文部科学省

関研究振興局長,板倉審議官,渡辺振興企画課長,原参事官,澤田参事官補佐

オブザーバー

(理化学研究所計算科学研究機構(AICS))
岡谷副機構長,庄司部門長
(高度情報科学技術研究機構(RIST))
関理事長,平山センター長,奥田副センター長
(内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(調査・企画担当)付)
岩村参事官補佐

4.議事要旨

原参事官より挨拶

 

(1)京を中核としたHPCIの産業利用の促進に向けて

伊藤(宏)委員より資料1-1に基づき説明。

梅谷委員より説明。(プロジェクター利用。配付資料なし)

RIST奥田副センター長より資料1-1に基づき説明。

質疑応答,意見交換は以下の通り。

 

【中川委員】  日立の中川でございます。一番初めの方でセキュリティの話が出ていたかと思うのですけれども,それについて,弊社も産応協に入っておりますし,また,「京」の利用もさせていただいたりしているのですが,私の立場から,セキュリティのカバー範囲のところをちょっと確認させていただきたいと思います。

 私,研究開発グループに属しておりまして,研究開発本部の中での共通のHPC的な計算を共通的に整備していく立場にございまして,なるべく,いわゆる社内のクラウドになっていて,多くの研究者がそのプラットフォームを使うように誘導をしているのですけれども,はっきり言って,お客様のデータはそういう共通なところにはなかなか出しにくいですと,社内であってもそういうことを言われる場合が多くございます。これは,セキュリティというよりも,多分,データのアクセス権限でありますとか,あるいは,画像だとか,そういうものが入っておりますと,プライバシーの問題ですとか,人間がちょっと映っているとか,そういったところが社内でも結構障害になっていて,更にHPCIを含め社外のクラウドに持っていこうとすると,ビッグデータ解析もやりたいのだけれども,データがなかなか出せないという意見が非常に聞かれます。今考えていらっしゃるプランで言うと,そういったところというのが,いわゆるセキュリティと言っているガイドラインの中に入るものなのかどうかというところをちょっとお聞きしたいと思いました。

【西尾主査】  いかがでしょうか。

【伊藤(宏)委員】  一般的な話としては,お客様のデータをどう扱うとか,社内のそういう基準がございます。それと齟齬がないか,あるいはそれとは独立して大規模解析に臨めるかというところが,やはり一番重要な課題だと考えております。今のところは,デディケーテッドな形で返ってくるということが原則保証されればそれでいいという,考え方だと思います。

【西尾主査】  中川委員,よろしいでしょうか。

【中川委員】  はい。ありがとうございます。

【西尾主査】  ほかにございますでしょうか。小林委員,どうぞ。

【小林委員】  最後のアプリケーションソフトの利用環境の整備というところで,私どもも今は第二階層にいる立場としてお聞きしたいのですが,ここで述べられたのは,「京」は基本的に最初に取り組まれて,その後,第二階層というか,基盤センター的なところも一括して扱われるというような形に持っていこうということなのでしょうか。

【奥田副センター長】  順番として「京」からスタートしますけれども,多分,そのチューニングノウハウですとかサポートノウハウというのは別にHPCIのサーバーと「京」とで違うわけではありませんので,最終的には一体化したようなノウハウの共有を目指すべきだろうというふうに考えています。順番として,「京」からスタートするというだけです。

【小林委員】  それは結局,ワンストップで全てのアプリケーションのポートフォリオというか,ディレクトリ的なところから始まって,RISTからいろんなHPCI資源の方に展開していくというイメージなのですか。最終形というか,どういう形をイメージして進めようとされているのかお聞きしたいのですが。

【奥田副センター長】  HPCIを使われる方の最初の入り口はどちらにしてもRISTのヘルプデスクになりますので,例えばHPCIとしてどこかの大学の資源を使うユーザの方が最初の質問をしてくるところは,RISTがやっていますヘルプデスクになりますのでそこで受け取れば,そこでソフトのノウハウを持っていれば,同じように一元的に対応できるかと考えています。

【小林委員】  いずれにしましても,基盤センター側でもいろいろなサービスをしておりまして,そこで独自のサポート体制も持っているというところの整合性をどういうふうにとるかというのは,いろいろ課題が出てくると思いますので,その点もご留意いただければと思います。

【奥田副センター長】  そのあたりはどういうふうに分担するかも含め,今後御相談させていただいて、進めたいと思っています。

【西尾主査】  相当重要な点だと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。

 ほかにございますでしょうか。喜連川委員,どうぞ。

【喜連川委員】  ICSCPの資料の各企業のHPCI利活用における主な課題の大規模データの取扱いのところに「データの転送速度が遅い」と書いてあるのですけれども,我々,ネットワーク屋なのですが,遅いというのは,誰が遅いのかの主語が書いてないので,我々が努力して改善できるものであれば努力したいと思っているので,ちょっとお聞かせいただけると有り難いです。

【伊藤(宏)委員】  私どもは厳密にここを議論しているわけではございませんが,当然,計算機が高速になれば,そのあたりのニーズも出てくるだろうということに対する備えは一体どういうふうになっているのかなと。例えば,SINETが今後どうなるのかとか,あるいは,先ほど梅谷さんの方からお話がありましたように,遠隔の可視化をまずやっていただければ,必要なものを転送するという形で解決できる部分も多いですし,ファイル転送だけではなくて,利用者としての使い方、実用上のことを話しているということでございます。特に技術的スペックの課題の話をしているわけではないです。

【喜連川委員】  その前のイシューも含めて,これは全部技術的な課題だと思っているのですけれども,データ転送が遅いというのは結構難しい課題で,どこがボトルネックになっているのかというのを同定するのは難しいのが実情だと思いますので,できましたらその辺も御検討いただければ。この間,トヨタさんからは,SINETは100ギガでつないですごく速くなりましたとか,感動的なお言葉を頂いて,そんなにトヨタさんは遅いのかなと思っていたのですけれども。

【梅谷委員】  社内は絞っているかもしれませんが,喜連川先生がおっしゃるとおり,そういう意味では,技術課題というよりも,今ある中でどうやるのがよいのかいろいろやっているので,具体的にこういうところでこうなっていますというのをお伝えした上で技術課題に落としてきちんと直していくということを実際やってないものですから,それをやるような形にさせていただきたいと思います。

【喜連川委員】  それは是非お願いできれば有り難いと思いますし,SINETは,基幹の東阪あるいは福岡までぐらいは,今度,トランキングではなくて,1LAN400を考えておりますので,更なる高速化の御提供もできると思います。

 もう一つだけお伺いしたい。よく見えなかったのですが,15%うんぬんというのがあったのですけれども,残りの円グラフは一体何が描いてあるのか,さっぱり分からなかった。

【梅谷委員】  インテルか,SPARCか,GPUか,メニーコアかに割っているだけです。

【喜連川委員】  この15%は何ですか。

【梅谷委員】  Xeonを使っているのが15%ということです。

【小柳委員】  これは資源量で割ってあるのですか。

【梅谷委員】  いわゆる性能で割っているということです。

【喜連川委員】  スパコンのアプリのいわゆるトランスポータビリティというのは,これは僕が悪いのではなくて,小柳先生のエリアだと思うのですけれども,学生の頃からずっと言われてきている話で,いいかげんにHPCのPはperformanceじゃなくてproductivityにしろというようなことがアメリカで言われたこともあったりして,この委員会の中でも随分,国家基幹技術であった頃も発言したことがあるのですけれども,根源的にそういう部分に今後予算を振り向けていくことというのは非常に重要じゃないかなあという気が,それは技術開発も含めてですけれども,個人的にはする。それは是非,産業界からも強くおっしゃっていただければ有り難いと思います。

【梅谷委員】  分かりました。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。

 ほかに,御意見やコメントはございますか。

【小林委員】  今,性能ということでしたけど,例えば,単にフロップスだけだと,Xeon Phiなんかは絶対出ないピークで数字を出してきたりするので,ちょっとミスリードするのかなという印象は持ちますが。

【梅谷委員】  これだと正規化が難しいのですけど……。

【小林委員】  発熱等の制約で絶対出ないピークとか出ていますので,そこは注意しなきゃいけない。

【西尾主査】  梅谷委員から,現場からのいろいろな声をおっしゃっていただいたのですけれども,何かお答えいただけるようなことはございますか。

【庄司部門長】  余り各論を言う話ではないのかもしれませんが,先ほどのデータ転送の話で言えば,FOCUSさんと協調して,「京」のフロントエンドからより高速にデータを企業の方の手元にもお送りいただけるようなサービスを正にこの30日から開始するという状況です。それによって,これまで数日かかったのが例えば数時間で終わるとか,それぐらいのスピードアップが見込めます。

 あと,前処理でメモリが足りないという話は具体的に承知してないのですけれども,「京」のフロントエンドでは最大2テラバイトのメモリを積んだマシンを用意していまして,メッシュの生成ですとか,そういうところにもお使いいただけるような環境を御用意してございます。

 それと,ジョブの制約についても,これまでは24時間までだったのですけど,この春から最大で72時間まで対応しています。規模は少し小さいジョブに限られるのですけれども,一部,そういう緩和をしてございます。あと,ジョブ数の緩和についても,この間,梅谷さんから御要望いただいたのを対応していただいたとおりでございます。

 あと,画像解析のポスト処理についても,前回御説明させていただいたのですけれども,フロントエンドのところに仮想技術を使った環境を用意して,ユーザの皆さんに好きなOSとか好きなアプリを入れていただくような環境を今整えようとしております。

【西尾主査】  ということは,全部回答がなされたと考えてよろしいですか。

【梅谷委員】  そういう意味では,当然,公共のものなので,「京」側としては公平性みたいなところを担保しなきゃいけないと。公平性と利便性はトレードオフのところがあって,どういう形でトレードオフを満たしていくかというのは,もうちょっときちんと話をして決めていってもいいのかなと。ある意味,もっと具体的に庄司さんと話をさせていただいて,こういう形であれば利便性を高める形で公平性が担保できるのではないかというようなことを議論させていただく機会を持つべきかと思いましたので,そういう場を別途持たせていただければ有り難いと思っています。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。公平性と利便性という二つの尺度で考えていくことは,共用システムでは結構大切な観点になると思います。今,御提案がありましたように,今後,是非,密に議論をしていただいて,よい方向に行けばと思っています。ただし,先ほどお伺いした限りでは,既にいろいろな意味での改善がなされているということで,非常に心強く思いました。ありがとうございました。

 ほかにございますか。

【小柳委員】  先ほど喜連川委員から御指摘があった,計算機の世代が経るにつれてポータビリティができるだけあった方がユーザにとって使いやすいというのは全くごもっともなのですが,これは大変難しい問題があります。それを余り強調すると技術革新を阻害するという面があります。つまり,従来技術のまま速くなればいいのですが,そういうことは現実的には不可能ですので,そうするとやはり,新しい技術を導入するとポータビリティが損なわれる。そこをどこまでソフトウェアなりツールで解決できるかというのは重要な問題です。だから,ポータビリティだけを言うのは難しい問題があるのではないかと思います。

【梅谷委員】  小柳先生のおっしゃるとおりだと思いますけれども,今回,このHPCI計画推進委員会の3回の議論の中で,中小企業も含めて広く使っていただくということに重きを置くと,もうちょっとポータビリティのところを重視するような仕掛けというのが必要になってくるのではないかなというふうに思っています。

【小柳委員】  もちろん分かっております。

【喜連川委員】  原則,ぎりぎりのチューニングをするということで極度にマシン依存にするケースが多くみられます。それは分からなくはないのですけれども,私が申し上げたのは,むしろトランスフォームするアルゴリズムレイヤーとしてどこまでにするのかということはしっかりとやらないと,どこで一番お金がかかるかというと,先ほど本当にいいことをおっしゃったと思うのですけれども,移植というのは生産性ゼロだとおっしゃったのは本当にそうで,正に新しいアルゴリズム側の方に知恵を出すように仕向けていくことが不可欠であるというか,それがマストであるということは,多分,小柳先生もアグリーされると思いますので,その辺を国力全体として見たときにどっちをとるのかということは非常に重要です。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。

【藤井主査代理】  今の話ですけど,我々の分野は流体分野で,ヨーロッパで昨年,ゴードン・ベルの候補になって,もちろん中国がハードウェアはベストなので,結果的にはトップはとれなかったのですが,今,ヨーロッパの連中が流体ソフトをどういうに書こうとしているかというと,例えば,ユーザーインターフェースのところ,インターフェースという言い方がいいかどうか分かりませんが,Python等々で書いていると。じゃあハードウェア依存のところは一体どうなっているのだというと,それはハードウェアごとにライブラリを用意して,ユーザはそこにはタッチしないと。そういう作り方をするためには喜連川先生が言われたように手法そのものも少し変えていく必要があるのですが,そういう形にして,ユーザから見たらハードウェア・ディペンデンシーがない形にすると。じゃあ国はそういうところに投資しているかというと,今,多分投資していないので,アプリの投資でそういうところももしかしたらやるべきなのではないかということをちょっと申し上げたい。ヨーロッパが全ていいと申し上げるつもりはありませんが,例としてお話ししました。

【西尾主査】  この辺りは,事務局できっちり受けとめておいていただければと思います。

 

(3)今後のHPCI計画の推進に向けた提言

事務局より資料2の説明。

質疑応答,意見交換は以下の通り。

 

【小柳委員】  大変短く簡潔にまとめられて,大変重要な文書になるかと思います。先週ありましたISCの国際会議でも関係者といろいろ議論したのですが,今,ポスト「京」の計画はだんだん固まりつつある段階ですが,前々から議論になっておりますように,こういうものは継続的に開発することが重要であるということで,ポスト・ポスト「京」についても,少なくとも議論を始める段階ではないかというふうに思っております。広い意味では(3)の最後に「今後のHPCのあり方」というふうに入っているわけです。なかなかこれは諸状況を考えると難しい問題はあるかと思いますが,技術的な検討を含めて,そういうことをそろそろ頭に入れる必要があるのではないかと思っております。

【西尾主査】  事務局、どうでしょうか。

【澤田参事官補佐】  今の御意見について,議題(4)で御説明する予定だったのですが,今後,ワーキンググループを立ち上げまして,准教授,助教クラスの方々に入っていただき,先生方にも是非,委員の先生を紹介していただきたいのですけれども,今後のHPCIの在り方,「ムーアの法則」の限界が見えつつある中で,どうやっていくべきかについて議論を始めたいと思っております。この検討結果を,例えば,文科省からJSTに与える戦略目標案につなげられないか等,考えていきたいと思います。

【西尾主査】  よろしいですか。ほかにございますか。どうぞ,安浦委員。

【安浦委員】  2ページ目の二つ目のパラグラフの下から2行に「課題の選定にあたっては,先駆的な科学的成果の創出に挑戦する課題を重点的に選定するべきである」と書いてあるのですけど,ここは「科学的」だけでよろしいかというのが,ちょっと疑問なのです。先ほどのお話は正に産業利用という側面であって,科学だけのことを考えているわけじゃないわけで,国の戦略として,科学でやってしまうと,物理とか,生命科学とか,そういう純粋科学の方をイメージされてしまう嫌いがあるのではないかと。今のお話を重要なポイントと見るのであれば,「技術」という言葉を入れるか,あるいは,更に「産業利用」というような言葉まで踏み込んで書き込むかしておいた方がいいのではないかというふうに思います。

【喜連川委員】  今の安浦先生の御発言にも関連するかもしれないのですけれども,私が科学官になった直後頃というのは,国家基幹技術と呼ばれておりまして,原則,「京」の開発は完全にクローズドでした。この開発をオープンにするというのは大分後になってからだと,私は理解しております。この辺の経緯は,多分,私よりも小柳先生の方がよく御存じだと思うのですけど,私は,あれは結構禍根を残したのではないかなあと思っています。今日,この会議で産業界が利用するソフトウェアうんぬんの御議論がなされていますが,当時,私が出た委員会の中で,ISVのソフトウェアというものをアーキテクチャも何もディスクローズされない開発の中で一体どうやってポートをするのですかということが質問されたのをいまだに強く覚えています。私が言いましたのは,ソフトウェアを考えないでハードウェアを作るなんていうことは100%あり得ないので,一コンピュータサイエンティストとしては,この方針はどう考えても非常におかしいというような発言をさせていただきまして,それ以降,僕は会議に出なくてよくなったので,僕の人生は大変軽やかになったので,感謝しているのですけど,どうしてああいうふうな構造になったのか,いまだに僕は分からないのですが,原則,すごくオープンに作るのだというような大前提も,過去の歴史を踏まえると,何かメッセージが入れられてもいいのではないのかなあという気がします。それが一つの申し上げたいことです。

 それから,私も正に安浦先生が御指摘になりました科学的成果というところの範囲をどのように捉えるかということに対して若干の心配を同じように持ったわけですけれども,本日,トヨタさんから,10年後に自分たちは持つけれども,持てないかもしれないからうんぬんという御心配を頂いたのですが,これに関しては半導体屋さんを招かないと分からないのですが,トランジスタ当たりのコストはずっと,減っていっているのですね。このエクストラポレーションをした場合に,システム全体のコストは,たとえムーア則が成り立とうが,成り立たまいが,これ自身は成り立っているので,恐らくは買えるのではないのかなというのが,我々の期待感じゃないかなあと思っています。そういう,産業界へスパコンを使うことによって新しいインダストリーを創出するということは,国益上,もはや避けられないというか,極めて重要なポーションであることは事実なときに,私もこの部分の書き方はもう少し配慮してもいいのかなあということが考えられますのと,もう一つは,今回大きな禍根がありますのは,これもトランスポータビリティに結構関係するのですけれども,ほとんど売れないコンピュータに対して移植をするというのは,物すごく大きなコストをかけることになるのですね。前回,あるいはESの場合もそうだったと思うのですけれども,ある意味で,カミオカンデのような,1個あればいいのだというやり方をとってきたと思うのですけれども,本当にこれでつくり続けられるのかというのは,どこかで御議論をしていただく方がいいのかなという気がします。つまり,一定程度,マーケットを前提にした,ソフトウェアを前提にしたマシンの作り方というものを考えないと,中国は,彼らの経済力からして,全部,ハードウェアを使って自分でコンパイラを作っていくことはできます。我が国は多分そうもいかないのではないかなあという現実を踏まえたときに,この提言の中にそういう生々しいことを書けるのかどうかは分からないですけれども,根幹上,かなり重要なポイントになってくるのではないかというのが,私どもの印象です。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。

 まず,安浦先生,また喜連川先生からおっしゃっていただいた,「科学的成果の創出」という文言に関しては,現状を考えた上でもう少し拡大をした記述にするということについては,皆様の同意をいただけますでしょうか。

 そこで,安浦先生からは,「技術」という言葉を入れる,あるいは「産業応用」というところまで言葉として入れるということで,御提案を頂いております。この辺りに関してはどうですか。ここで明確なお答えが難しい場合は,今後の検討事項ということでもよろしいですが。

【澤田参事官補佐】  提言案の前段で科学的成果に言及していて,後段の(2)のところで産業利用のことを書いたつもりでしたが,今の御意見を踏まえて,登録機関とも協議したいと思います。前々回の委員会で,3本柱があって,科学的成果がどれぐらい見込まれるかというところと,「京」を本当に必要としているかという部分と,あとソフトウェアや体制が整っているかという,3点をフラットに見ているというような話もあったので,その中では最初の柱を抽出すべきじゃないかという御議論が前々回あって,それを受けて書いているものですから,産業利用のことを軽視しているわけでは決してないです。

【西尾主査】  ということは,該当部分の記述が産業利用に関してある程度拡大できると考えてよろしいですか。

【原参事官】  共用法に基づく共用施設として産業界にきちんと使ってもらって,それを国益に反映していくというのは,「京」に限らず,共用施設一般の考え方でありますので,そこはチャレンジングな最先端の科学と産業利用をきちんと両方やっていくというのは問題ないと思います。

【西尾主査】  分かりました。今のお答えをベースに,今後,ここの記述は少し拡張するという方向で進めさせていただいてよろしいですか。

【澤田参事官補佐】  今後,文部科学大臣告示の選定基準にかかわるところを修正していくことになりますけれども,登録機関から「技術」という言葉を加えることは可能であるとのことですので,そういった方向で検討したいと思っております。

【西尾主査】  次は,どこまでこの提言の中に書けるかどうかは別にして,オープンネスに関することですが、この辺りはどうですか。

【澤田参事官補佐】  文部科学省はオープンな役所ですので,それは書きたいと。

【西尾主査】  本当に明快な御返答に感謝します。喜連川先生にもいろいろお知恵を頂きながら,オープンな環境というものをどのように構築していくかは今後考えていくということにして,この提言でどのように具体的に記すかについて,事務局の方で検討をお願いします。

 もう一つは,ソフトウェアの移植などを考えるにしても,マシンそのものが市場的な意味の競争力を持てるような形のものを今後考えていくということが大切ではないかということですけど,小柳先生,何か御意見ございますか。

【小柳委員】  それは,エコシステムという点から見ても,大変重要なことだと思います。あとは,世界の中における日本の立ち位置というものをどう見るかという大変難しい問題があって,これも大変流動的なので,そういうことも含めてそういう点を重視していかなければいけないと思っております。

【大石委員】  よろしいですか。

【西尾主査】  どうぞ。

【大石委員】  梅谷委員の御発表で,自動車業界には役に立っているなと。非常にキラーな応用だと思うのですけど,基本的に開発されたものがずっと資産として続いていくということが重要だとすると,コンピュータはどんどん変わっていくので,1台しかなくてもいいかもしれないし,複数台あったり,売れたりするかもしれないけれど,それがデファクトスタンダードになってずっと使われていく仕組み,あるいは標準化されるみたいな。だから,ちょっと抽象化して,藤井先生も言われたのですけれど,機械が変わっても共通して,例えば自動車工業界が作っているソフト系は動きます。それは,基本的には何々が共通だとか,中は機械依存だけど,外側は標準化されているとか,そういう意味の普遍性を持つ,うまい仕組みを入れる。要するに,ハードウェアをたくさんつくって売るとか,それよりももうちょっと広い観点で資産がずっと,例えば産業的な競争力を持つし,広い意味で言えば人類のコンピューティングに対する貢献になるような標準化とかデファクトスタンダード化が行えるというような観点を持って,それは世界中の人が使っていく,あるいは標準化への議論みたいなものでやっていく,あるいはデファクトでやっていくというような,そういう観点を少し入れていくというのが重要なのではないかと。

【西尾主査】  中川委員,どうぞ。

【中川委員】  今の御意見にちょっと,利用者というか,活用分野と言うべきなのか,そういう視点での御意見かなあと思うのですけど,そういうことで言うと,「society 5.0」とか,そういったワードがこの中に入ってくると,適用分野としてHPCが社会の中に浸透していくというイメージ,そこを目指して次のHPCIを考えていくのですよというビジョン的なところというのが入ると,もう少し具体的なイメージがつかみやすいのかなあと。ちょっと抽象的に言ってしまうと分からないので,「society 5.0」はある程度,皆さん,イメージが。ITを社会の中に実装して,AIとか,そういうものも入ってきますけれども,その中にはHPCという技術が必須であるということはある程度コンセンサスができているのではないかなと思うので,そういうものも考えつつ,このHPCIというのを考えていきますというメッセージというのを具体的なワードとして入れる方がよいのではないかなと思いました。

【西尾主査】  大石先生,それでよろしいですか。

【大石委員】  科学者としては技術的に期待する部分はあるのですが,そういう形で,みんなが使える,みんなの共有財産になるところを重視しますというメッセージは入れておいた方がいいような。賛成です。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。

【藤井主査代理】  先ほどの安浦先生のポイントと同じ文章なのですが,ちょっと違う観点で,この文章は,前の方に裾野拡大という話があって,ユーザの新規参入を促すという話があって,それを受けて,課題の選定に当たっては,これこれに挑戦する課題をと,そういう文章になっていますよね。今でも先駆的な科学的成果の創出に挑戦する課題は選んでいるはずなので,前後関係で,これは何が言いたいのか,私,課題選定委員長という立場もありますので明確にしたいので,ちょっと意図をお教えいただけますか。今と違うことを言おうしているのか,現状でもそうなのだけど,今のことを繰り返し言おうとしているのか,どちらの意図なのでしょうか。

【澤田参事官補佐】  文言の話ですけれども,現在の選定基準は,ブレークスルーを生み出すというようなことが入っています。それは,何か課題があって,それを解決するというイメージだと思っています。「先駆的」と書かせていただいたのは,例えば,課題にすらなっていないけれども,とても先駆的なもの,フォロワーすら生まれないかもしれないけれども,ものすごく面白い成果が生まれ得る課題というものも選ぶべきではないかという意味で,「先駆的」という文言を追加しています。

【藤井主査代理】  この文章を読んで今言われたことを理解していただけるでしょうかというのが次の質問なのですが,今のことが言いたいのであれば,言葉は増えちゃいますけど,もうちょっと工夫された方がよい気がします。

【澤田参事官補佐】  分かりました。

【西尾主査】  例えば,挑戦的とか,そういうことなのでしょうね。挑戦的なものをより積極的に採択していきましょうというような趣旨かと思います。

【藤井主査代理】  いわば萌芽的課題がそれなので,更にもう一つ先ですよね。もしかしたらリスクがあるかもしれないとか,全く違う使い方のものとか,多分,そういうことが言いたいと思うので,それが分かるような文言にしていただくといいかなあと思いました。

【西尾主査】  分かりました。

【小柳委員】  私はその前の委員長なのですが,先ほど澤田補佐がおっしゃったように,ここで言っているのは何を否定しているかというと,つまり,初期にあったように,「京」の資源を細切れにしてはいけないとか,あるいは準備が十分できてないものを採択して穴を開けてはいけないとか,そういうようなことをかなり重視していた。これはやむを得なかったと思いますが,ここまで時代が進んでくると,もちろん大事じゃないとは言いませんけれども,それよりも成果として意味のあることを第一基準にして選ぶべきだということを言っているわけで,もう少し文章をうまく表現できるといいかと思います。

【西尾主査】  それは今後工夫していくということでよろしいですね。

 ほかにございますか。どうぞ。

【中村委員】  文言をどうこう変えていただきたいということではないのですが,このパラグラフは非常に大事なことを言っていると思っていまして,多様なシステムで構成される「京」以外の第二階層があるから,先ほどのXeonを使っている15%があったわけだと思うのですね。互換機の15%は第二階層になっていると思いますので。そういう多様なシステムがあるからこそできること,そのプロダクティビティもある程度,15%ほどではなかったかもしれませんけれども,第二階層が担っている。一方で第二階層は先駆的なこともやっていく。こういう,フラッグシップと,「京」以外というか,第二階層,両輪でこれをやっていくというところを,これ以上書き込むのは難しいかもしれませんけど,そういうところを記載するのが必要なのではないかということ。

 あと,確かに「課題の選択にあたっては」は何かを否定しているように見えちゃうので,もう少し前向きに,この文章でいいと思うのですが,HPCIといっても,「京」以外で,HPCI課題にはなってないけれども,基盤センター群での共同研究の枠組みでいろいろやっているようなものがありますし,基盤センター群の拠点活動での共同研究が一部,HPCI課題としても認定されるような仕組みになっていますので,そういう仕組みを使って更に萌芽的なことをやるというふうにした方が,裾野拡大を進める上での現実的な解になるかなと思っています。HPCIは,そうそうたる課題選定委員長がされていることから分かるように,非常にソリッドな選定になるのに対して,第二階層においてHPCI資源を利用する共同研究課題は,割と毎年,選定基準を変えるとか,募集要領を変えるとかして非常に機動力を持ってやっていて,採択されるとHPCIに認定されるという枠組みがありますので,そういうのを活用しながらやるというふうに,全体でやっていくというフレーズがあった方がいいかなと思ってます。文言としては,「具体的な裾野拡大の方策」と書いてあるので,そこに含まれると思うのですけれども,もう少しそういうふうにやっていった方が,共用法に基づく「京」,あるいはポスト「京」だけじゃなくて,センター群はセンター群で裾野拡大して,自分たちのお客さんをつかまえるということは当然やっているわけなので,そういうことと両輪になってウイン・ウインの関係になっていくというのは非常に大事かなと思っています。

【西尾主査】  中村先生,ありがとうございました。ただ,できましたら,記述を具体的にどのように改訂したらよいか,事務局の方に委員会の後にお伝えいただけると有り難いです。

【中村委員】  分かりました。後で入れます。課題選定の方法を問題視しているような文章に見えるので,そこだけじゃない,もう少し何かあった方がいいかなという。

【西尾主査】  分かりました。どうもありがとうございます。

 ほかにございますか。

 貴重な御意見をいろいろとありがとうございました。一つ一つの御提案や御意見は非常に重い内容のことばかりだったように思います。今後,この提言をブラッシュアップしていきますけれども,そのブラッシュアップの過程におきましては,御意見を頂いた委員の方々に再度御相談するというようなことも,是非させてください。もちろん,最終案は皆様方に必ずお送りして御意見を伺いますけれども,そのようなプロセスも含めて主査一任ということでお願いできませんでしょうか。よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【西尾主査】  それでは,そのようにさせていただきます。

 

(3)重点化促進枠ヒアリング

事務局より資料3-1,資料3-2に基づき説明。

内閣府岩村参事官補佐より資料3-3に基づき説明。

質疑応答は以下の通り。

 

【伊藤(公)委員】  南海トラフの結果とかは,どのように活用されているのですか。

【岩村参事官補佐】  今回申し上げた長周期地震動の場合ですと,例えば国土交通省の住宅局みたいなところで,これぐらいの揺れが想定されるというのを,彼らも我々と連携してやっているのですけど,そういったもので,例えば建築物の耐震に対する審査の仕方とかを実際に検討するというようなところに活用されております。

【西尾主査】  ほかにございますか。

 重要な課題かと思いますので,この委員会としまして,「京」の重点化促進枠を利用するということに関して,承認すべきということで結論を出してよろしいですか。

(「異議なし」の声あり)

【西尾主査】  それでは,本件に関しましては,内閣府の提案課題が「京」の重点化促進枠を利用するということについて承認をしたという結論にします。どうもありがとうございました。

【岩村参事官補佐】  ありがとございました。

【西尾主査】  今後の成果を期待しております。

  

(4)今後の予定

事務局より資料4-1,資料4-2,資料4-3,資料4-4に基づき説明。

審議での発言は以下の通り。

 

【西尾主査】  この推進委員会の下に,今お話しいただきましたように,ワーキンググループを立ち上げていただきまして,今後,鋭意議論をいただくということになっております。資料4-2のポスト「京」に係るシステム検討ワーキンググループ,これは平成29年度についての改訂(案),それから資料4-4の将来のHPCIの在り方に関する検討ワーキンググループの開催について,御意見や御質問はございますでしょうか。このワーキングの議論においても,先ほどの提言を踏まえた議論になっていくかと思っています。

 特段,御意見ございませんか。説明のような形で,今後,ワーキングの活動を展開していただくということで,よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【西尾主査】  それでは,資料4-2,4-4のワーキンググループの開催(案)につきましては,原案のとおり決定をさせていただきます。

 その開催等につきましては,今後,事務局で進めていかれるということで,よろしくお願いします。

 

(5)その他

【西尾主査】 その他でございますけれども,例えば,先週のISCの国際会議について,小柳先生から御紹介いただけますでしょうか。

【小柳委員】  二,三感じたことを申し上げます。HPCの会であるにもかかわらず,ディープラーニング一色になりつつありまして,ちょっと様変わりという感じでございました。今後どうなるか,何が本質的な進歩なのか,私はいろいろ疑問もあるのですが,そういう変化を感じました。

 それと併せて,これは公式には初めてとなるのですが,ポスト「京」の富士通さんが担当している計算機も,半精度,16ビット実数演算に対応するという発表がございました。だから,ポスト「京」もいわばディープラーニングなんかにも使えるマシンになるということでございます。

 もう一つは,前回から注目されているのですが,中国がとにかく頑張っておりまして,恐ろしいものがまた出ています。Top500で上位二つを独占していることは変わりませんが,それぞれの次世代機が出てくるのではないかと言われております。「太湖之光」は今260コアですが,倍ぐらいになるのではないかとか,「天河2号」の後継は,「天河2A」を考えていたのをやめて,「天河3号」。これは,ARMベースのメニーコアになるのではないかとか,いろんな説があります。とにかく,中国も頑張っております。人口もGNPも多いので,それに対抗することは大変難しいことです。

 Top500は,10位まではメンバーは替わらなかったのですが,前回8位のスイスのスパコンセンターのマシンが倍に増強して3位に割り込んだので,表彰台からアメリカがいなくなったという珍事件がございました。これは2度目でございまして,1996年11月,日本が表彰台を独占しました。筑波大のCP-PACS,航空宇宙技術研究所の数値風洞,東大のSR2201,これが独占してアメリカを排除した以来の2回目で,大変話題になっておりました。アメリカはこれからどうするか。例のCORALという計画がありますが,「Summit」とか,「Sierra」とか,IBMプラスNVIDIAで何百ペタをやるのかどうかも,大変重要なところですね。

 Green500では,東工大の新しいマシン,「TSUBAME 3.0」がトップを占めました。上位10位のうち,実は6件が日本でした。それから,上位10位のうち,9件がNVIDIAの新しいGPGPUであるTesla P100を使ったものでございました。例外の一つが,PEZYのマシンでしたね。とにかく,この辺は大きく変わっております。

 それから,HPCGという新しいベンチマークとGraph500というのもありまして,これも老体である我が「京」コンピュータが1位を死守いたしました。HPCGは2回目,Graph500は5回目か6回目だと思います。参加者が少ないなどいろいろ悪口を言う人もいるのですが,「京」は,いろいろ批判を受けながらも,ピークだけじゃなくて,メモリ周りや接続周りにかなり資源を投入したので,そういうことに向いているということもありますし,それから,もちろん担当者の腕という大変重要なものがあります。稼動開始以来6年経っていわば前期高齢者になっている「京」ではございますが,故障せずに全ノードが動くというのは世界では非常にまれな状態になっておりまして,これも老体でありながらトップを維持できた理由じゃないかと。そういうわけで,「京」は,Top500では8位に落ちてしまいましたけど,頑張っているということでございます。

 最後に,エクサスケールへと着実に接近してきたというのが,全体の印象でございます。簡単ではございますが。

【西尾主査】  簡潔で本当にインパクトのあるお話しをいただき,どうもありがとうございました。

 どうぞ。

【岡谷副機構長】  たくさんお褒めいただいて,ありがとうございます。私も同じように行ってきましたが,一つ補足させていただきますと,ARMのエコシステムをつくるという話が,我々とフランスだけでなくて,最近,アメリカからも出てきていまして,いくつかのベンダーが音頭をとって,いろんなところ,DOEの研究所を巻き込んで,検証していこうという話が動いております。なので,HPCにARMを使っていこうという動きは徐々にですが広がっていて,先ほど中国の話もありましたけれども,ARMというのがだんだん広がってきていると。これは,先ほど喜連川先生からありました,ポータビリティを確保するためにも,共通のエコシステムをどうつくっていくべきかというのを私たちは視野に入れてポスト「京」の開発をしていかなきゃいけないと思っておりますので,そういう観点では好ましい傾向かなあとは思っております。

【西尾主査】  貴重な補足をしていただきまして,どうもありがとうございました。

 御出席された小林先生はいかがですか。

【小林委員】  アメリカとかの動きを見ると,ターゲットは今年のSC17で,ISCは少し静かな感じだったと思っています。その中で,PEZYがユニークさで取り上げられておりましたね。社長自ら,アピールしておりました。

【西尾主査】  そうですか。どうもありがとうございました。非常に貴重な情報で,我々,いろいろな意味で元気づけられました。どうもありがとうございました。

 

西尾主査より閉会発言 

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