基礎科学力強化懇談会のご意見と検討の方向

1.理念・目標

【ご意見】

  • 「新しい知の開拓」、「豊かな社会」、「人類の存続」等の視点が必要。
  • 社会に役立つ応用面が重視されているが、基礎なくして応用は発展しない。
  • オバマ次期大統領は、10年間に研究開発予算倍増、若手育成や重要テーマの基礎研究強化を公約しており、こうした面で国際競争も視野に入れるべき。
  • 人文科学も含めた幅広い視野を持ち、総合的に発展させるべき。
  • 基礎研究は何かを作る。何を作るかは国是である。科学技術、基礎科学と言った視野は狭く、日本でどのような国是を立てるのかが重要。

 【検討の方向】:例示

 ◇基礎科学振興をはじめ科学技術創造立国の実現を国是として位置付けた上で、例えば、「新しい知の開拓」、「豊かな社会」、「人類の存続」等の視点に立ち、基礎科学力強化の総合的な理念・目標を検討。
 ◇基礎科学振興のための投資の拡充、研究予算の執行の柔軟性の拡大等の目標を検討。また、関連税制の改正を検討。

2.研究者への支援

【ご意見】

(研究費)

  • 「さきがけ」のように若手が自由に研究できる構造を作るべき。
  • きらりと光る人材を発掘し、思い切って投資することが必要。
  • 若手への眼差しが必要。限られた期間に一定の成果を出すシステムを当てはめるのは問題。
  • ERATOは才能ある人へ投資する制度で有効。また、今の競争的資金制度では、予算の面から採択数が少なく、落ちた人達が批判をし、採択された人達は萎縮する。

(研究者養成)

  • 自信を与えることが重要。「根暗」とか「KY(空気が読めない)」とか言われても、他人がやっていないことをやる人材への勇気づけが必要。
  • 若者が良き師、良き仲間に支えられ研究に没頭することが重要。
  • 特に若手研究者には安心して研究に専念できる基盤が必要。
  • 創造的成果を上げるためには、自由闊達な環境と優れた経験者との触れ合いが重要。
  • 人材育成には最先端の実験施設などに触れさせることが有効。
  • 産学連携など異分野交流、横のコミュニケーションが重要。
  • 優秀な人材を外国に送りノーベル賞受賞者等に会わせることが有効。

(ポスドクのキャリアパス) 

  • 大学での研究は向いている人が続ければよい。人材として企業などで活躍する道が必要。 
  • やりがいとか自分が役立つ途を本人に気付かせることが必要。
  • ポスドクの就職については、色々な問題に対処できる人間を育てることで対処すべき。

 【検討の方向】:例示

 ◇自由な発想研究、創造的研究等に対する研究費の拡充・充当方策等を検討。
 ◇若手研究者、女性研究者、ポスドク、優秀な大学院生(博士課程)等が研究や修学に専念できるよう生活面等の支援方策を検討。
 ◇研究の独創性に配慮した課題の審査、評価方法等を検討。
 ◇若手研究者等の資質向上のため、国際研鑽のための海外派遣、国内における国際シンポジウム等の開催を検討。
 ◇科学技術の強化・先導を担う研究者、技術者のリーダー養成について検討。
 ※ポスドク支援、活用は重要な課題であるが、キャリアパスについては、第4期科学技術基本計画での論点として検討予定であり、基礎科学力強化委員会においては必要に応じて課題を整理の上、科学技術・学術審議会に引き継ぐ。  

3.研究環境の整備

【ご意見】

(研究システム)

  • 刺激があり、日常的に議論雰囲気や若手研究者が研究に専念できる基盤と厚みが必要。
  • 研究者へのサポートが不足。研究設備を運用する専門スタッフ等が諸外国に比べて貧弱。
  • 頭脳流出が問題。日本では創造性を促すシステムがない。
  • 自由な発想で行うもの、一定の目標管理下で行うものなど、性格に応じた体制整備が必要。
  • 授業や教授会出席で研究に十分な時間が確保できないことも問題。
  • 外国には賞がたくさんある。賞を創設することは評価プロセスを作ることであり、重要。

(研究資金)

  • 大学運営費交付金や私学助成金が年々減ってることが問題。
  • 個々の研究者が地道に使う研究費が重要である。
  • 国立大学法人化後、基盤的研究費が減少している。毎年一定額が配分されることにより、じっくり腰を落ち着けて研究することが重要である。科学技術基本計画において、基盤的経費について制度まで踏み込んだ記述が必要。
  • 基盤的経費により、じっくり腰を落ち着けて、10年、20年のスパンで捉える研究も重要。
  • 近年、競争性が強調されすぎている。日本の大学はサポートが貧弱で人の年齢構成が逆三角形の無理な構造となっており、基盤的資金の確保が重要。
  • 科研費は研究者個人に渡り、実態として基盤的な経費になっている。近年、伸び率が鈍化し、結果として直接経費が減っていることは問題。
  • 自然科学系や人文社会系など分野によって違いがあり、きめ細かいファンディングが必要。
  • 日本の大学は税制の問題から寄付講座を設立する魅力が薄い。

(グローバル化)

  • 研究人材の養成だけではなく、踏み込んで世界最高水準の人材を「確保」することが必要。
  • 世界情勢が変化。我が国に人材を引き寄せる有効な施策をしかるべきタイミングで講じることが重要。日本にはポテンシャルがあり、受け入れについては博士課程などをてこ入れすることで対応可能。
  • 学部の留学生をもっと受け入れ、英語の講義の導入や学位取得制度の改善を図るべき。

 (施設・設備整備)

  • 実験施設は理論の実証に不可欠。その点を国がもっと真剣に考えるべき。 
  • かつてはビッグサイエンスの計画は、ボトムアップを適切に拾い上げ、評価をしてプライオリティーをつけるプロセスがあったが現状では不十分。
  • 将来の線形加速器は若者向けの基礎科学センターとしてアジアに設置してはどうか。
  • 医学・生物学の受賞が少ない。日本は米国に比べ、ライフ分野の実験のための体制・資金への支援が不足。
  • 得意分野を伸ばすのも良いが、創薬分野など遅れをとっている分野を伸ばしていくことが必要。基礎研究をトップダウンでやるべき。
  • 定年後の経験のある教授を文科省が一定期間雇い、審査委員として内外の状況をつぶさに把握させ、施設整備の計画を評価させることが良い。

 【検討の方向】:例示 

 ◇大学等における基盤的な研究を支える経費の確保を検討。 
 ◇基礎科学推進に必要な先端的大型研究施設の整備・運用方策を検討。  
  ・大学共同利用機関等(ビックサイエンス等)
  ・研究開発独法の先端大型研究施設等(共用の促進方策等)
 ◇世界的な知のネットワークの中で、世界トップクラスの研究者や若手研究者、学生等の我が国の国際的流動性の強化方策を検討。
 ◇世界水準のCOE、グローバル化に向けた大学等の拠点整備の充実について検討。
 ◇研究者が研究そのものに専念できるよう、研究資源・時間を最大限効率的に活用する研究体制(研究支援者、技術支援者の確保を含む)の改善を検討。
 ◇研究環境の整備は、研究費の確保、人材の育成等と密接に関連することから、基礎科学力強化を軸とした分野横断的な政策パッケージを検討。  

4.創造的人材の育成

【ご意見】

(初等中等教育)

  • 子供の才能を伸ばすには、褒めることが必要。子供は大人の背中を見て育つ。理科離れは大人に自信が無いからではないか。 
  • 理数強化に異存はないが、イマジネーションや構想力が重要であり、理数系の問題は人文も含めて広く捉えることが必要。
  • 子供達に自然に興味を抱かせることが大事であり、親をもっと啓蒙する必要がある。ビデオゲームなどは有害無益である。
  • 論文や報告書を学会誌などで発表するだけでなく、科研費の成果を中高生にわかりやすく説明する日本学術振興会のひらめき☆ときめきサイエンスなど社会に対して説明すべき。
  • 初等中等教育でクラスの規模はあまり大きくない方がよい。先生と児童の接触の密度が重要。
  • 「深く考える」、「正確に判断する」ことが重要。時間を限ってたくさん問題を解かせる日本の一般的なテスト方法では、ノーベル賞をもらうような人材をふるい落とす。

(大学教育)

  • 制約がなく、自分から発想し、それを大切に育てる。分野の違う人と接する環境が重要。
  • 才能をいかに育てるか。自分を最大限生かせるよう、そのシナリオを書く能力を育てることが求められている。
  • 先生は自分より優れた弟子を育てる義務がある。その点、日本では構造的な問題があるのではないか。
  • 大学院生への給費(給付型財政支援)が重要。
  • 欧米の寄宿舎制は良い。先生と学生が高い密度で接することも必要。

(大学の在り方)

  • 高等教育の格段の充実が不可欠。
  • 教育と研究は違う。教育と研究ははっきり区別し、教育重視の大学と研究重視の大学に分けることも必要ではないか。
  • 現在の評価基準では多くの論文を書く必要がある。論文の数だけでの評価は百害あって一利なし。
  • 国立大学が現在の規模・数では生き残れない。文科省主導で大学の統廃合を進めるべき。
  • 地方大学が成り立たなくなれば地方が「凋落」してしまう。
  • もっと寄付金を活用すべき。税制上の優遇措置が不十分。財務省と協議し、大学への寄付税制をアメリカ並みにすべき。
  • 入試問題を作成出来る教官が少なくなっており、入試問題を作成できないような大学は研究所にすべき。ポスドクも学内の教育問題。弱体化し統合の対象となっている教養部を昔の状態に戻して欲しい。
  • 基礎科学力は自然科学に留まらず、人文、社会、芸術を学ぶことにより、専門の自然科学でも力を発揮。大学の教養文化を強化すべき。
  • 理系・文系を早期に切り分けるのは過去の産物。世の中には様々なリンケージがあり、教育の細分化は問題。

 【検討の方向】:例示

 ◇初等中等教育段階から研究者育成に至るまで連続性を持った取組について総合的に検討。
 ◇理数教育の推進について、理数に興味・関心の高い生徒・学生の個性・能力の伸長、理数好きな子どもの裾野拡大の観点から、関連施策の推進方策を検討。
 ◇創造的人材を輩出する大学院教育について検討。
 ◇持続発展教育(ESD)の更なる推進を検討。また、持続可能性に関する諸課題に対する科学の果たすべき役割を議論し、サスティナビリティ・サイエンスの推進と世界科学会議等を通じた国際的な発信を検討。
 ◇ノーベル賞受賞者と子どもの対話フォーラム等のイベントについて、文部科学省主催のフォーラムを本年春休みに開催するとともに、本年度各実施主体が開催するイベント等ともタイアップし、全体として連携して実施する方向で検討。(「基礎科学力強化年」に留意)
 ※大学の在り方については中教審大学分科会で審議を行っており、基礎科学力強化委員会で課題を整理の上、必要に応じて中央教育審議会大学分科会に引き継ぐ。

 (以上)

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(研究振興局振興企画課学術企画室)