次世代スーパーコンピュータ戦略委員会(第13回) 議事録

1.日時

平成21年6月10日水曜日 17時~18時55分

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3.出席者

委員

土居主査、宇川委員、小柳委員、小林委員、寺倉委員、中村委員、平尾委員、矢川委員、米澤委員

文部科学省

倉持大臣官房審議官(研究振興局担当)、磯田研究振興局長、奈良振興企画課長、舟橋情報課長、井上計算科学技術推進室長、飯澤学術基盤整備室長、中井情報課課長補佐

オブザーバー

財団法人高輝度光科学研究センター専務理事 大野英雄、企画課長 杉本正吾、財団法人高度情報科学技術研究機構理事長 関昌弘、理事 中村壽

4.議事録

【土居主査】

 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第13回になりますが、次世代スーパーコンピュータ戦略委員会を始めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、まず事務局から、本日の配付資料につきまして確認をお願いいたします。

【事務局】

 それでは、お手元の議事次第と照らし合わせて、資料のご確認をお願いいたします。
 本日の配付資料、資料1、「教育利用のあり方について(案)」、資料2、「産業利用のあり方について(案)」、資料3、「SPring-8」における登録施設利用促進機関(JASRI)の概要」ということで、これは後ほどJASRIの理事からお話しいただくものです。資料4、「登録施設利用促進機関の利用者支援について」、これは後ほどRISTの理事長からお話しいただく資料です。資料5-1、「登録施設利用促進機関の業務について」、資料5-2、「登録施設利用促進機関の体制について」。それに加えまして、机上にSPring-8のパンフレットとジャパンタイムズの記事を配付させていただいております。
 また、前回までの配付資料につきましては、机上のファイルにとじております。配付資料について、欠落等がございましたら、事務局までお知らせください。
 以上です。

【土居主査】

 ありがとうございました。よろしいでしょうか。また何かございませんときには、その都度おっしゃっていただければということにいたしまして、先へ進ませていただきます。
 議題(1)ですけれども、「教育利用について」に入らせていただきます。前回のご議論を踏まえまして、事務局で修正案をつくっていただいておりますので、修正箇所につきまして説明をお願いいたします。

【井上計算科学技術推進室長】

 それでは、資料1でございます。この資料につきましては、前々回から議論を始めていただいておりまして、有識者の方のご意見なども伺いながら、前回一度ご説明させていただいたものであります。変更点を中心にご説明いたします。
 まず題名でありますが、もともと「教育利用のあり方について」となっておりましたが、この内容がより幅広い人材育成のことまで及びますので、「次世代スパコンを念頭に置いた人材育成のあり方について」と題名を変更しております。それと、あとは、細かい文言はありますが、基本的には変わっておりません。
 大きな変更点は、一番最後から2ページ目でありますが、4ポツが項目として追加になっております。「産業界における人材育成」という項目を新たに追加させていただいております。ここは最初のパラグラフでございますが、産業界におけるスパコンの活用は、我が国の産業競争力の維持、強化にとって一つの鍵である。実際、企業においては生産段階、研究開発段階でのスパコンの活用の模索がなされており、既にスパコンを十分に活用している企業においては計算需要が増大している。このような中、企業においてHPCを担う人材の不足と、特に研究開発部門における計算資源の不足が顕著になっており、ここ数年、大学と連携した教育プログラムの実施や、先端研究施設共用イノベーション創出事業を通じた大学等のスーパーコンピュータを利用する試みがなされ始めている。
 その上で、産業界において求められる人材、これは各企業において様々でありますけれども、大きく分けると以下のような分類がある、としております。その中でも、特に既存のアプリケーションを用いて適切にシミュレーション技術を用いることができる人材は、即戦力として最も必要とされる人材とさせていただいております。
 そして、これは、これまでの3つの大項目で、次世代スパコンの整備を契機とした人材育成・教育システムの確立とこれを実施していく体制の構築が必要ということについて、縷々述べられておりますけれども、そういう検討の中で、産業界の人材育成についてもきちんと考えていかなければいけないということで、今後、国、理化学研究所、登録機関、大学、産業界が密接に連携し、育成方策を具体化することを期待するとさせていただいております。
 以上でございます。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 これは、基本的には前回ご審議いただきまして、最終的に、今室長から話がございましたように、タイトルを変えて、「次世代スパコンを念頭に置いた」というまくら言葉がありますけれども、人材育成のあり方ということになりましたので、4で産業界における人材育成ということで加えていただいたということになっておりますが、ある意味において、基本的にはこれでよろしいかと思いますが、ただ、系統的な人材育成だとか、教育システムの確立だとか、あるいは、これを実施していく体制の整備だとか、あるいは、これを具現化したいといいますか、具体化していくための取り組みが必要なわけですが、これをどうするかということは、前回も、この場というよりは、しかるべくメンバーに集まっていただいて、そこで検討していただき、そこでその推進方策等々までもとりまとめていただくというようなことを、そのつもりでありますがというのは申し上げましたけれども、それを検討していただくために、小柳先生と米澤先生を中心にボランタリーな検討会をおつくりいただくことを考えていただいております。したがいまして、今後はこの検討会において具体化に向けた検討を進めていただきまして、随時といいますか、節目節目にこの検討結果をまたこの委員会にご報告いただくというようなことで進めさせていただきたいと思っておりますが、それも含めて何かご意見ございますでしょうか。
 4以外のところは前回までにあったことなんですが、4が新しい文章です。それと、今申し上げましたようなことでよろしいかということですが、何かございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。それでは、そのようなことで進めさせていただきたいと思いますので、小柳先生、どうぞ、米澤先生はまだお越しになっていませんが、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、議題(2)の「産業利用について」に入らせていただきたいと思います。こちらも前回のご議論を踏まえまして、事務局で案をつくっていただいておりますので、また事務局からご説明をお願いいたします。よろしくどうぞ。

【井上計算科学技術推進室長】

 それでは、資料2「産業利用のあり方について」でございます。
 まず1番目、現状認識であります。まず最初のパラグラフで、産業界におけるスパコンの活用、これは我が国の産業競争力を強化する鍵であり、これを促進していくことが重要と。このためにも、次世代スーパーコンピュータ、特に産業利用枠が大きな貢献を果たすことが必要としております。
 そして、2番目のパラグラフでありますが、ここは産業界においていろいろな活用ニーズがあるということで、前回の議論からそのニーズ、様々なニーズがあるということをこちらに書き込ませていただいておるということでございます。
 そして、3番目のパラグラフですが、以上のように、産業界におけるスーパーコンピュータの活用ニーズは様々であり、また、計算資源ニーズはハード、ソフトともに増大している。また、これと同時に計算機を使いこなすことが出来る専門的な人材の必要性も高まっている。しかしながら、多くの企業においては概して計算資源、人材ともに不十分な状況にあり、特に、研究開発部門においてはこの傾向が著しい。このため、研究開発部門のニーズを中心に、多くの企業が次世代スパコンの利活用に期待している、ということで現状認識とさせていただいております。
 その上で、2ポツに産業利用のあり方ということでまとめさせていただいております。
 1番目が、基本的な考え方であります。産業利用は、産業界におけるスーパーコンピュータ利用を促進するという観点から、産業界における多様なニーズに応える必要がある。その際、利用目的や利用するアプリケーションが大学や公的研究機関と異なること、成果の取扱に産業利用特有の配慮が必要なこと、情報漏洩等セキュリティ上の配慮が必要なことなど、その他の一般的な利用とは異なる事情を勘案するとともに、そもそも産業界には幅広い利用者が混在していることに鑑み、利用に関し、利用者支援も含め多様な選択肢を用意することが必要である。
 次のページですが、また、いきなり次世代スパコンを利用するというのは利用者にとってハードルが高いため、まずは大学や公的研究機関におけるスパコンを、次世代スパコンのエントリーマシンとして利用できるようにするなど、主要な計算資源との連携を検討する必要がある。
 以上のような考えを念頭に置き、産業利用にあたり検討すべき事項を以下に述べる、としています。
 その上で、2番目の括弧で、利用形態でありますが、ここにはトライアルユース、また、成果非公開利用、成果公開延期制度、優先利用といった制度について述べさせていただいております。
 その上で、次に利用環境であります。まずアプリケーションでありますけれども、最初に書かせていただいておりますのは、現在、次世代スパコン向けに開発されているアプリケーションは、産業界が利用するには十分なロバスト性がないことや、従来産業界で使ってきたアプリケーションとの親和性がない。このため、これらアプリケーションを用いた成功事例を積み重ね、既存ソフトとの成果の比較を行うなどの普及活動を行い、自主開発アプリ、商用アプリからの移行を促す取組が求められる。
 また、企業における自主開発アプリや商用アプリの次世代スパコンへの移植にあたり、充分な技術支援やライブラリの整備が必要。登録機関による支援や、大学や産業界から協力を得ることも検討すべき。特に商用アプリの移植については、ソフトウェアベンダーの協力が不可欠である、とさせていただいております。
 その次に、セキュリティでございますが、作業個室の設置、入退室管理、持ち込み機器のウイルスチェック等を行うことが必要である。また、ポスト処理システムについては、知財の保護のため高いセキュリティを確保する必要がある。さらに、どのようなセキュリティ上の措置を取ったとしても、リスクアセスメント管理を行うこととし、利用企業が自らリスク要因を理解し、利用するかどうかの判断を出来るようにしていくことが必要、としております。
 そのほか、遠隔利用環境を整えること、あるいは、プリ・ポスト処理を適切に行う環境を整えることについて述べさせていただいております。
 4番目に、シームレスな利用環境の構築でございます。これは、企業にとっては、当該企業において利用しているアプリケーションにより得られる成果が、そのまま次世代スパコンの利用により得られる成果に繋がることが望ましい。このためには、企業で利用しているPCクラスタレベルのコンピュータから情報基盤センター等のNISスパコンへ、さらには次世代スパコンへスムーズに移行できる、いわばシームレスな利用環境を構築することが望まれる。この実現のためには、NISスパコンにおいて、企業で使う商用アプリケーションや次世代スパコン向きのアプリケーションを整備することが必須であり、各大学情報基盤センターの協力が必要となる。この際、アカデミックライセンスで安価に用意されている商用アプリが、企業の利用によって高額になってしまう可能性があることや、NISスパコンにおいて産業利用に割り当てられる計算資源が限られていることなどの課題があり、検討を要する。また、次世代スパコンにおける産業利用枠利用と先端研究施設共用イノベーション創出事業との連携の可能性も検討すべきである、とさせていただいております。
 以上であります。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 ということで、特段、企業にとって困られることがないような配慮をしなければいけないということで、セキュリティだとか、その他のところが盛られているわけですけれども、この点に関しましていかがでしょうか。
 基本的には、ご意見いただいたもの、及び、この間の東芝の伊藤さんに説明いただいたようなことを踏まえて、とりまとめていただいているんですけれども、いかがでしょうか。

【中村委員】

 (2)の利用形態の成果非公開のことなんですけれども、前回のときにたしか話があったと思うんですが、単なる成果だけではなくて、対象が何で、どういう研究をしているかという、そういうこと自身も秘匿したい、そういうことがあって、おそらく企業の方が使われるときも、申請書レベルのことが当然あると思うんですが。そこには、だから、本来であれば詳しく書かないと申請書にならないんですけれども、その際に余りに明確にしたくないということが起きるという、それの配慮というのをやはりどこかに書いておいたほうがいいかなと思うんですけど。

【土居主査】

 なるほど。ありがとうございました。これはどこかで盛り込んでおいていく必要があろうかと思います。

【井上計算科学技術推進室長】

 わかりました。

【土居主査】

 ほかにはいかがでしょうか。およそこういうところでよろしいでしょうか。
 いずれにいたしましても、前々回だったか、平尾先生から、一たん決めて、それですべて終わりではないということで、要するに手戻りといいますか、これから先、いろいろ進めていく上で見直さなければいけないというようなステップを踏む必要があろうかと思いますので、また改めてこういうことに影響が出てきましたらご議論いただくということにさせていただいて、では、本日のところはこれでよろしいですね。ありがとうございました。
 それでは、議題(3)に移らせていただきます。「登録施設利用促進機関の業務・体制について」。これから、いわゆる登録機関をどうすべきかという、ある意味において法律で縛られている面があるわけですが、そちらのほうに移っていく必要があるわけですが、本日はその導入部分といたしまして、登録施設利用促進機関、いわゆる登録機関というのが、設置者であります理化学研究所と連携しながら、利用者の一番身近な存在として課題申請受付だとか、選定だとか、あるいは利用者支援を行うというようなことが法律で書かれているわけですが、極めて重要な機関、位置づけになっております。そこで、登録機関の業務のあり方といいますのが、次世代スパコンを中心といたしました教育研究拠点の形成とも深くかかわるもので、理化学研究所が中心となって整備する共通基盤的な研究開発拠点だとか、あるいは戦略機関のあり方と密接にかかわっておるものと理解しております。
 このような拠点全体の中で、登録機関がどうあるべきかということにつきましては、先ほども申し上げましたように、今後この委員会で議論を深めていこうと考えておりますけれども、実は予算要求ということがありますので、時期的に登録機関の規模について、およそのめどを立てて、それで予算を概算要求しなければいけないということがありますので、まずは登録機関として最低限行わなければならない業務と、それを行うのに必要な体制についてご確認いただくということから、この議論に入っていただきたいと思っております。
 そこで、まずその導入部分として、本日は、既に特定先端大型研究施設として稼働しておりますSPring-8で登録機関として業務を行っておられます、高輝度光科学研究センターの大野専務理事、杉本企画課長から、登録機関としての在り方、業務の具体についてご説明いただくとともに、地球シミュレータにおいて利用者支援を含めました共同利用研究を行った経験のあります、高度情報科学研究機構の関理事長及び中村理事から、実際の経験に基づきました支援業務の具体的な作業量等についてご説明していただくことにしております。お忙しい中、おいでいただきまして、どうもありがとうございました。
 また、議論には、運営者側として、理化学研究所計算科学研究機構設立準備室の松岡副設立準備室長にも本日来ていただいております。どうもありがとうございました。
 それでは、まず、お越しいただいております方々からのお話をお伺いしたいと思います。まず高輝度光科学研究センターの大野専務理事からお話をしていただければと思いますが、よろしいでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。

【JASRI(大野専務理事)】

 ただいまご紹介いただきました大野でございます。膨大な資料を提出しておりますが、時間も限られておりますので、肝心なところだけ説明させていただきたいと思います。残りの資料は、これからの議論のご参考にいただければと思います。では、座って説明させていただきます。
 一番最初に、私どものSPring-8の概要について簡単に申します。ここにございますように、平成3年から6年かけて1,100億円で建設いたしまして、平成9年10月に供用を開始しております。当初の設置者は理化学研究所と日本原子力研究所でございましたのですが、事情がございまして、今は理化学研究所のみが設置者でございまして、運営主体が財団法人高輝度光科学研究センター、いわゆるJASRIと呼んでおりますところでございます。
 この下は、お手元の資料をごらんいただいたほうがはっきりしておりますが、共用ビームラインにおいては大体年間に2,000件の課題申請がございまして、1,400件の採択をしております。それから、お越しいただきますユーザーの数は、共用ビームライン・専用ビームライン合わせて年間約1万3,000人でございます。ちょうど先週、6月5日に、平成9年から供用開始いたしましてからちょうど10万人の利用者が来場していただいております。
 これはもうご存じの方も多かろうと思いますが、一番大事なところは、この蓄積リングと称します、円周が周長が1,436メートルの加速器でございまして、ここを電子がぐるぐる回りながら光を出す、それが放射光でございまして、全部で62本のビームラインの設置が可能でございまして、現在49本が稼働、5本が建設中。この一番の特徴は、ビームライン54本がすべて同時に稼働できるということでございます。このビームラインにはいろんな実験装置がついております。
 P.5をご覧下さい。これがビームラインの数でございまして、こういう具合に、お手元の資料のほうが詳しくわかりますが、赤い色がいわゆる共同利用のビームラインでございます。これは国のお金で理研が設置いたしまして、産官学の皆さん、国内外どなたでも利用できるビームラインでございます。これが今26本ございます。それから、専用ビームライン、これはある特定の団体が資金を出しましてつくりましたビームラインでございまして、これが14本ございまして、今3本建設中。この26本と専用ビームライン、これが共用促進法の対象になるビームラインでございます。
 では、いわゆる登録施設利用促進機関JASRIというのはどういうところであるかということでございますが、ちょっと細かくてビジーなパワーポイントで申しわけございませんが、平成2年に設立されておりまして、特に関西の財界を中心に資金66億を出資していただき、60億円を基本財産としておりますが、その大きな目的は、いわゆる放射光の利用に関する技術支援でありますとか、あるいは分析・解析、あるいはいろいろな啓蒙等が重要な仕事となっております。先ほど言いましたように、60億円を基本財産としておりまして、年間、これは文部科学省から直接いただきます交付金、あるいは理化学研究所から一般競争入札でいただいております運営費等を含めまして、平成21年度の年間予算は約75億でございます。
 運営体制とJASRIの役割というのは、ここにありますような、お手元の資料を詳しくお読みいただければと思いますけれども、これはパワーポイントでは見づらいと思いますが、一番重要なのは、共用促進法というのは、ここにありますように、平成18年7月に改正されております。改正前の共用促進法は平成6年にできているわけでございますけれども、このときは指定機構という制度でございまして、全国に一つしかないJASRIが「放射光利用研究促進機構」として指定されております。だから、これがすべてのことをやっていたわけでございます。それが、平成18年の7月に、「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」へ改正されましたので、非常に大きな違いは2つございまして、1つは、指定法人から登録法人に変わった。これからお示しいたします登録要件を満たせば、どなたでも参画できる法人に変わった。それから、もう1つは、運転・維持管理等も指定機構の法定業務としてやっていたのですが、これらは改正後は法定外の業務になりまして、法定の業務というのは、利用促進事業、いわゆる選定業務と支援業務、これが法定業務となっております。ほかの加速器の運転等につきましては、今のところやはりJASRIがやっておりますけれども、これはJASRIはあくまでも理化学研究所の一般競争入札に応札いたしまして、落札して運転・維持管理をしているというところでございます。今のところ、理化学研究所と登録法人高輝度光科学研究センターJASRIの2者の体制で運営しております。
 これは先ほどのことを申し上げたものでございまして、改正前の共用促進法では、いわゆる指定機構ということで、かなりの業務がJASRIがオフィシャルにやっていたところです。次、改正後になりまして、先ほども主査からお話がございましたように、利用者選定業務あるいは支援業務、これが法定の業務でございます。登録機関としての業務。ですから、JASRIの仕事は、登録機関としてのJASRIの仕事以上に、ここに書いてありますように、登録機関業務はJASRI業務の一部であるということになってきております。
 P.10をご覧ください。これは資金の流れでございますので、それほど詳しく申しませんが、文部科学省から登録法人としての業務、選定業務と支援業務につきましては、直接交付金をいただいてきております。選定委員会をつくって、ここで大きな方針を決めるということにしております。それから、加速器の運転、ビームラインの運転等につきましては、理化学研究所が文部科学省から共用補助金でいただかれたお金を、私どもが一般競争入札で応札して行っているということでございます。ただし、ユーザーに対しましては、あくまでも高輝度光科学研究センターが唯一見えるような体制をとっております。
 これが実際に私どもの組織でございまして、かなり大きな組織でございますが、その中で、登録機関の業務としては、選定業務をするところ、情報支援をするところ、それから、いわゆる利用支援、ビームラインの技術支援とか、あるいは利用者の支援をする利用研究促進部門とか産業利用推進室とか、産業と一般の学術の支援、それから安全管理、これが法定業務でございまして、それ以外のところは、いわゆる法定外業務として行っております。
 登録機関の登録要件でございますが、これはこれからいろいろ議論なされるのではございましょうが、一応私ども、大型放射光につきましては、そこにありますように、ちょっと見づらいのですが、利用者選定業務を行う部門に専任の管理者を置く、これが一つ重要なことでございます。それから、あとは、技術者、安全管理にかかわる要件がここに書いてございまして、技術支援をする者は、放射光の経験を5年以上有する者であるということ、それから、放射線管理を行う者は、3年以上の放射線に係る安全性の確保に関する技術を有している者。この人数が、先ほど申しました利用支援については50人以上、それから、安全管理については1人以上ということでございます。これが登録要件でございます。
 それから、共用促進法第4条に基づきました基本的な方針というのがございまして、これが非常に重要なところでございまして、ここに書いてございますように、SPring-8が世界における放射光の「COE(センター・オブ・エクセレンス)」になるためには、理化学研究所と財団が協働してちゃんと行うこと、それから、一番重要なことは、ここにございますように、施設研究の促進のための方策に関すること、あるいは、放射光利用研究に関する一切の知見の蓄積、こういうものを十分持っている機関であること。特にそのために共用促進法第12条に基づきまして、施設者側がちゃんと調査研究をする必然性は、ここから出てきております。それから、もっと重要なことは、ここにございますように、四で示しておりますように、登録機関自らが研究する高い能力を持っていること。これは何を意味しているかと言いますと、最高のサービスを利用者に行うためには、支援をする人たちの能力が非常に高くないとだめであるということを示しております。これが非常に重要なところでございます。
 これは、登録機関の業務は、SPring-8の共用ビームラインの場合、先ほども申しましたように、年間の課題数で1,400件、応募が2,000件でございまして、採択率は大体70%程度でございますので、2,000件の課題審査をして、1,400件を実行しております。延べ大体9,000人、1万人程度の人たち、これは共用ビームラインでございます。しかも、利用分野が約70の利用分野、物理、化学、物質科学、生命科学、いろいろなところの分野70分野ぐらい、それから、手法といたしましては、ディフラクションだけではなくて、XAFSでありますとか、いろいろな手法がございまして、40種類、こういうものを仕分けながら選定業務を行っているわけでございます。
 これは利用支援でございまして、これはちょっと省略させていただきます。お読みいただければと思います。
 これは、なぜ非常にたくさんの、50人以上というような人がいるかと申しますと、実はビームラインは26本ございますけれども、各ビームラインには実験装置が1台から3台、全部合わせますと約50数台の個別の独立した実験装置がございます。そのために、非常にたくさんの支援要員を擁しているということでございます。
 これはビームラインの利用支援の流れを示したものでございまして、細かくは申しませんが、年に2回募集しております。1カ月前に公示いたしまして、公募いたしまして、1カ月かけて課題審査をいたしまして、実験に移す、そういう流れを大体年2回のペースでやっております。
 利用制度でございます。利用制度は、いろいろな変遷をしてきております。実は平成9年の当初は、非常に平等、公平性というのが強く言われまして、研究者に対しては採択率をできるだけ100%にするというような方法でやっていたのですが、それでは国の中間評価等を受けたときに、やはり成果をもっと挙げるには重点的な研究をするべきではないか、あるいは成果を重視した課題選定の仕方をするべきではないかというご指摘を受けまして、今現在は、一般利用課題と重点利用研究課題、この二極化になっております。それから、最近は非常に実力を持っておりますユーザーに対しては、パワーユーザー制度というようなものも行っております。
 P.20、これが、詳しくは申しませんが、1997年から2009年まで、どういう利用研究制度の変遷をたどったかということでございまして、特に2003年あたりから重点課題、いわゆるナノテクノロジーでありますとか、産業利用とか、それからタンパク3000のプロジェクト、こういうものが入ってまいりましたので、重点的にこういうものに重きを置いて支援をしております。
 これが利用者選定スキームでございまして、標準のスタイルでございますが、利用研究課題選定委員会というのが一番重要なところでございまして、JASRIの下にこういうものを設けております。その中にいろんな分科会、先ほど手法については40近い、分野については70分野ぐらいあるという、その分野をある程度まとめまして、これだけの分科会をもって課題審査をしております。あと、選定委員会というのが、横に、非常に重要な位置づけにございますが、選定委員会というのは、こういういろいろな重点課題を入れるときとか、そういうときの大きな指針をここで決めていただくという委員会でございます。
 これは課題の基準でございまして、科学的な妥当性、あるいはSPring-8を必要としている理由、あるいは安全性、そういうものも全部審査いたします。ただし、成果専有と成果非専有では若干違っております。成果専有のときには、科学技術妥当性については審査いたしません。また、成果公開優先利用のときには、競争的資金等で一度審査を受けておられますので、そこは審査しないという制度をとっております。
 利用の流れにつきましては、これは先ほど申しましたとおりでございますので、省略させていただきます。
 利用研究課題の選定、これはレフェリー制をとっておりまして、20分野にわたりまして約180名のレフェリーをお願いしております。分科会に上げてまいりまして、それで50名の分科会で審査して、これはビームタイムまで配分しております。最終的には利用研究課題審査委員会、20名になっております審査委員会で最終選定をいたします。その間に、選定委員会というのは、もうこういう選定のルールとか、あるいは仕組みとか、それから重点課題の選定が妥当であるかどうかとか、そういうことの審査をここの選定委員会でやっていただいて、その意見を聞きながら課題選定を行っている次第でございます。
 今、一般利用が大体80%でございまして、先ほど申しましたように、登録機関が高度な技術を持っていないといけないということがございますので、12条枠と称しておりますが、共用促進法の第12条に定められております登録機関JASRIによる調査研究、これを約20%程度確保しながら、高い技術を維持したいと思って日々努力しております。
 では、利用状況を簡単に申します。先ほど申しましたように、課題の募集、これは半期ごとにやっておりますが、年にまとめておりますけれども、採択率は最近は大体60~70%程度でございます。60%を切る分野も出ております。
 これが利用状況でございまして、共用のビームラインが今26本でございますが、その中の利用者数、課題数を示しております。
 これが所属ごとの利用者数の分布でございまして、ご注目いただきたいのは、特に国の文部科学省等の施策によりまして、特に2003年、4年、トライアルユース、あるいは産業利用の重点化とか、いろいろな施策を行っていただきましたので、今、全共用ビームラインにおける課題数の20%は産業利用となっております。論文数については、省略させていただきます。
 共通的な留意事項、これは少しご参考になればと思ってつくっておりますが、登録機関としての共通的な留意事項といたしましては、まず登録機関とユーザーとの関係、これは非常に難しゅうございまして、ここに書いてございますように、緊張関係も持たないといけませんし、対等関係も持たないといけないのですが、一方では、すぐれた成果を出すためには密接な協力関係も必要であるというところでございまして、公平性・公正性を保つということは、それほど生易しいことではないのが現実でございます。
 それから、登録機関の研究能力、これが重要でございまして、登録機関が主体的に利用研究を先導することが必要である。これは優秀なスタッフがいないと最高の支援ができないというところがございますので、支援スタッフは利用研究に対して高度な知見を有するスタッフをなるべくそろえる必要があるということが、共通のことではなかろうかと思います。
 それから、利用フェーズに応じた支援。これは先ほど申しましたように、立ち上げ期、拡大期、成果創出期等々によりまして、いろいろなフェーズに応じて柔軟に対応する必要があろうかと思っております。そのようなことが共通的な留意事項ではなかろうかと思います。参考にしていただければありがたいと思います。
 最後ですが、SPring-8に関しましては、ウェブwww.spring8.or.jpというホームページを持っておりまして、すべての成果、制度、利用制度、あるいは申込等も含めて、すべてここに集約しております。
 以上でございます。ちょっと長くなりまして申しわけございません。

【土居主査】

 いえいえ、とんでもございません。どうもありがとうございました。
 次世代スーパーコンピュータも先ほどの改正をされた原因の一つでもあるわけですが、同じ法律のもとで——あと、J-PARCも入ったんですね——動いていくというようなことがあるわけですので、極めて密接なご関係になっているわけですが。これに先立ちます作業部会のときには、理事長にもメンバーに加わっていただいて、いろいろご経験も伺ったようなこともございますけれども。
 ただいまのお話に関しまして、何かご質問等ございましたらどうぞ。

【小柳委員】

 今のご説明の中で研究機能の重要性というのを述べられて、大変印象深く伺ったんですが、この業務というのは、もちろん、共用法の登録業務でもありませんし、それから、多分、理研から受託した仕事でもないかと思うんですが、こういうことに振り向ける予算とか人員とか、そういうものはどうしていらっしゃるのかなということを不思議に思ったんですけれども。

【JASRI(大野専務理事)】

 支援の人員につきましては、文部科学省から直接いただいておりますお金がございます。その中で、支援にかかわる人、あるいは安全にかかわる人の、先ほど申しました登録要件を満たす人につきましては、直接交付金でいただいており、それで賄っております。

【土居主査】

 どうぞ。

【宇川委員】

 ちょっと別のことなんですけど、技術的だと思うんですが、基本的だと思うんで、お伺いします。申請の粒はどういったものでしょう。もう少し詳しく言ったほうがいいと思うんですが、ある申請があったとしまして、それは1本のビームラインに対して、例えば100時間の運転時間を申請する、そういったような規模なんでしょうか。あるいは、一気に10本をそれぞれ一月専有したいとか、そのあたりの粒の間隔を教えていただきたいんですが。

【JASRI(大野専務理事)】

 前におっしゃいましたとおりでございまして、ビームタイムは1シフト8時間で提供しております。今のところ、1課題あたり平均9シフトぐらいで、しかも、ビームラインは基本的には1本でございます。ただし、複数のビームラインで実験したほうが効率がいいという判断もございますので、そういう課題もゼロではございません。

【宇川委員】

 そうすると、基本的には1本8時間をユニットとして、そのユニットが年間数千あるんだと思いますけれども、それに対して数千の要望が来て、数ユニット配分する、そのあたりを選定していくというのが課題選定機関の役割ということになりますね。

【JASRI(大野専務理事)】

 おっしゃるとおりでございます。

【宇川委員】

 わかりました。

【JASRI(大野専務理事)】

 年間4,000時間でございますから、ビームライン1本あたり500シフトでございます。

【宇川委員】

 ありがとうございました。
 もう1件お伺いしたいんですけれども、一般利用と重点利用のことなんですけれども、一般利用というのは、どういった事柄が重要かということは、申請者のほうが考えて、これは研究上重要であるからやりたいということを言ってきて、それに対して、選定委員会のほうが専門的な見地からして重要である・重要でないという判定を下しているわけですね。

【JASRI(大野専務理事)】

 そうですね。

【宇川委員】

 それに対して、重点利用というのは、むしろ国あるいは何らかの責任ある機関が、これは重要であるからそれなりのマシンタイムを配分して実施すべしと、そういうふうに決めてやっていると理解してよろしいですか。

【JASRI(大野専務理事)】

 一般のほうはおっしゃるとおりでございますけれども、重点につきましては、例えば、タンパク3000のプロジェクト、これはまさしくおっしゃいました国のプロジェクトでございますので。例えば、それ以外に、重点産業利用というのを設定しております。産業利用は、やはり非常にプロモートしないといけない領域でございますので、これにつきましては、課題の審査基準を少し変えておりまして、そこで、むしろそれは国がどうのこうのということではなくて、施設としてポリシーとしてこういう方針でやるという形でやっております。

【宇川委員】

 ありがとうございます。
 それで、最後に、一般利用と重点利用の配分時間の比率を、もし教えていただけるんだったらお伺いしたいんですが。

【JASRI(大野専務理事)】

 重点利用は、結果的には全体の15~30%程度となっております。

【宇川委員】

 ありがとうございました。

【土居主査】

 ほかにはいかがでしょうか。

【小林委員】

 幾つかあるんですが、最初は小柳先生の質問に関係することですが、登録機関の研究機能の向上、非常に難しい試験をなさるわけですから、その機能を熟知した、あるいは、それをさらに向上させる人たちが必要だということはよく理解して、そうしなければ多分うまくいかないなとは思っているんですが。これ、最大で20%ということですよね。20%って、随分大きい量のような気もするんですが、これは、例えば、ほかの利用者との関係とか何かで問題になるようなことはないんですか。

【JASRI(大野専務理事)】

 12年間運用してまいりまして、20%というのはある程度落ち着いたところに来ているわけでございますけれど、当初はいろいろな数字の変遷をいたしました。ただし、やはり私どもが限られた人数でございますし、20%というのは膨大な量でございますので、現実にはやっぱり15%程度が限界かなというところは感じてはおりますけれども、約20%とご理解いただければと思います。

【小林委員】

 ありがとうございました。
 それは、この30ページによると、支援スタッフが利用すると。

【JASRI(大野専務理事)】

 そうでございますね。

【小林委員】

 これと、それから、人数50人と入っていましたよね。研究実施相談者50人。これは大体一致するんですか。この人のことをスタッフと呼んでいる……。

【JASRI(大野専務理事)】

 これは、杉本から説明いたします。

【JASRI(杉本企画課長)】

 支援人数、ビームラインで技術支援をする研究技術員的な者は、今、実際は90名ほど、予算上はついております。それは、先ほどありましたが、重点課題を推進するために、例えば産業であれば、業界ごとに精通したコーディネーターとかを重点的に配置していますので、そういう人数になっております。

【土居主査】

 よろしいですか。

【小林委員】

 もう1点。法定内と法定外のお仕事がありますね。それにかける人数というのは、大体どのくらいなんですか。法定内のほうは50人プラス1人とか、あるいは、それプラス・アルファがあるとして、法定外のほうは。例えば、保守とか、運用とか。

【JASRI(大野専務理事)】

 全部で約360人、私ども、常勤の職員を抱えてございます。法定、いわゆる登録法人としての支援につきましては、さっき杉本が申しました数でやっておりますので、残りが法定外、加速器の運転でありますとか、安全管理でありますとか、あるいは施設の維持管理とか、いろんなところに散らばっております。

【小林委員】

 ありがとうございました。
 最後に、人材の養成訓練も仕事の一つに入っておられますけれど、具体的にはどういうことをなさっているんですか。

【JASRI(大野専務理事)】

 これは非常に難しゅうございまして、私ども大学ではございませんので、定常的にドクターコースの学生とか、そういう学生の制度がございませんので、連携大学院で行うとか、あるいはサマースクールを行うとか、あるいはいろんな講習会、あるいは国際的なスクール、そういうものを開きながら、少しずつ育成をしているというところが現状でございます。一番大きいのは、やはり各大学の先生方がお連れいただきますドクターコースの学生さん、ポスドクの学生さん、あるいはそういうものがやはり一番大きな要員になろうかと思っております。

【小林委員】

 ありがとうございました。

【土居主査】

 よろしいですか。
 先ほどの20%のお話は、作業部会のときも理事長が縷々ご説明されて、あれが全体の活動を支えるために極めて重要なんだということをおっしゃっておられまして、そういうこと等々を踏まえて、共通基盤的な研究開発拠点としての理化学研究所にもそれなりの時間配分をしようというようなことが行われているわけで、今回の場合の登録機関をどうするかというのは、特段、まだ何もなっていないわけですけれども、何らかの形で考えなければいけないのかもしれないというようなことがあろうかと思います。ありがとうございました。
 ほかにはいかがですか。

【矢川委員】

 1点お聞きしたいんですが、JASRI側と外の研究者との融合というのは、どういう状況ですか。一体として研究をなさっている感じですか。あるいは、ちょっと離れた感じか。

【JASRI(大野専務理事)】

 ケース・バイ・ケースだろうとは思いますけれども、やはり重要な研究につきましては、かなり融合しないと現実にはできません。非常に高度な技術を私どもも持っておりますけれども、逆に言うと、大学の先生方は非常にすばらしい試料をお持ちだとか、そういう意味では、完全に融合に近いと私は思っております。個々に独立する仕事というのは非常に少ないと思っております。

【矢川委員】

 どうもありがとうございました。

【中村委員】

 簡単に質問しますが、同じような話ですが、研究機能の強化は大事なんですが、研究者の流動性を確立するという点が一つありますけれども、実際にはどれくらいの流動性が今起きているのかというのが一つと、もう一つは、では研究者だったら外部資金のグラントを取ってこれるんだろうかという、そういう問題もあるんですが、今はどうされているかということです。

【JASRI(大野専務理事)】

 まず流動性でございますが、流動性も、加速器部門と放射光を利用する部門、これによってかなり違っております。加速器部門の流動性というのは、正直申しまして、非常に難しゅうございます。よほど大きな加速器がどこかにできない限りは、なかなか流動性は出てこない。ただし、幸いなことに、J-PARCが走りましたので、私どものところから20数名の職員がJ-PARCに異動いたしました。
 それから、利用研究のほうにつきましては、これはキャリアパスに結構なります。ですから、大学のほうにかなり頻繁に異動していっていたり、そのかわり、大学からも移ってきていただいているというのが現状でございます。

【中村委員】

 もう一つの外部資金については。

【JASRI(大野専務理事)】

 外部資金は、私どもは競争的資金を取れる団体になっておりますので、年間計数億規模の競争的資金はいただいております。

【中村委員】

 わかりました。

【土居主査】

 米澤先生。

【米澤委員】

 この話はあまり重要ではないかもしれないんですけれども、スパコンの場合と加速器といいますか、ある意味で違うような気がするんですけれども。スパコンの場合の、スパコンをつくったメーカーとの関係というものと、今こちらの加速器といいますか、SPring-8の場合の、これを実際につくったメーカーというんでしょうね、そういうものと、今言った登録機関、あるいはほかの部分との関係はどんな感じでいらっしゃるんでしょうか。

【JASRI(大野専務理事)】

 加速器でございますので、メーカーからは、基本的にはつくり終わったら独立してまいります。

【米澤委員】

 そうですか。

【JASRI(大野専務理事)】

 はい。ただし、定期点検等が、これは法律で決められた定期点検がございまして、それはやはりおつくりになったところに若干依頼はいたしますけれども、基本的には運転・維持管理はすべてJASRIの独自性でやっております。

【米澤委員】

 なるほど。コメントなんですけど、我々の思っているスパコンですと、やっぱり日々ソフトやその他のメンテナンスといいますか、いろんな問題が生じて、相当細かい部分についてはメーカーに頼らなければいけない部分はあるので、その辺が多少違うかなという気がいたしました。

【土居主査】

 ありがとうございます。ほかには。

【宇川委員】

 多少それと関係するんですけれども、研究をしていらっしゃる方が人数80名とおっしゃったですか。

【JASRI(杉本企画課長)】

 今、90名ですね。

【宇川委員】

 90名。それで、その方々は、例えば測定器とか、そちらのほうの専門家なのか、それとも、例えば構造生物学なら構造生物学の研究自体をやっている方なのか、それのあたりをちょっとお伺いしたいと思います。

【JASRI(大野専務理事)】

 基本的にはJASRIは支援が目的ではございますが、少しバランスをとって採用しております。例えば構造生物学をやるグループなど、グループ制をとりながら、ビームラインを何本か束ねて見ておりますので、その中には構造生物学がちゃんとわかる人、機器がわかる人、それがバランスよく参加しております。そうしないと支援ができませんので。

【土居主査】

 よろしいですか。
 一つ二つお伺いしたいんですが、このビームラインの資料を見ておりますと、緑で外国は台湾だけがあるようですが、これは外国からの希望が台湾しかなかったのですが、それとも、幾つかがあったうちからこれが選定されているか。

【JASRI(大野専務理事)】

 いえ、台湾だけでございます。

【土居主査】

 そうですか。特段、外国の利用者に対しては、国内の利用者との何か違いがあるんですか。

【JASRI(大野専務理事)】

 ございません。

【土居主査】

 全くない。

【JASRI(大野専務理事)】

 はい。

【土居主査】

 そうですか。
 兵庫県というのがありますが、これは姫路工業大学?

【JASRI(大野専務理事)】

 姫路工業大学(現兵庫県立大学)だけではございませんで、県も。

【土居主査】

 県も、そうですか。ありがとうございました。
 よろしいでしょうか。

【寺倉委員】

 JASRI利用で具体的に使われるのは先ほどのご質問と関係するんですけど、支援のために技術的なことを磨くお話と、いわゆる普通の研究というのと両方あるのかと思うんですが、それらはどういうような配分になってますか。

【JASRI(大野専務理事)】

 こういう基本的なルールを持っております。
 まず、JASRIの研究者がもし一般利用するのであれば、それは一般利用課題に応募して、PAC(=共用ビームライン利用研究課題審査委員会)を通ったものしか認めないというのが原則でございます。これはもう競争の世界に入る。
 20%枠を使うのはあくまでも、例えば、寺倉先生ご存じのピンポイント計測等ございますように、非常に速いパルス光でいろんな計測をする、そういう技術開発、そういうところに実は使っております。それが20%枠の主なもの。

【土居主査】

 よろしいですか。

【寺倉委員】

 はい。

【土居主査】

 それでは、時間との兼ね合いがありますので、どうもありがとうございました。また何か伺うかもしれませんが。
 続きまして、高度情報科学技術研究機構の関理事長からお話を伺えればと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

【RIST(関理事長)】

 高度情報科学技術研究機構、略称RISTの関と申します。本日はこの機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
 私ども、利用者支援という枠組みの中で実際に仕事をしてきたことはありませんけれども、事実上、これまで行ってきた様々な共同研究、大学でありますとか研究機関との共同研究の中で、実質的にこれからご説明申し上げます利用者支援、すなわち、できたコンピュータプログラムの超並列化、高速化、そういった仕事を中心にしてきておりますので、そういった経験に基づいて、これからの登録機関の中での利用者支援の量的な問題、仕事の中身の問題、そういったことをお話しさせていただきたいと思います。
 まず利用者支援の考え方ですけれども、従来の利用者支援というのは、高度なスーパーコンピュータにかかわる利用技術とか環境を支援していこうということでありまして、どちらかというと、プログラム相談、講習会といったようなものが主体であったと考えます。特にアプリに関する技術開発の問題で言えば、利用者が自助努力で解決していくということが基本であったように思います。
 しかしながら、次世代のスパコンの利用者に対する支援ということに目を向けますと、世界の最先端の科学技術、つまり発見や発明、新産業を拓くこと、これにスパコンが応用されていくということを考えますと、当然、理論ベースも新しくなっていくでしょうし、規模、シミュレーションの問題を扱う例が非常に大規模になっていくということが当然予想されてきます。
 これに伴いまして、並列化の規模といったようなものは10倍から20倍程度に拡大していきますから、特にこれから開発していくコンピュータコードは世界最大級の超並列環境になっていくということがすぐに予想できるわけであります。したがって、利用にあたっては非常に高度な計算科学技術が必要になると予想しています。
 具体的に、次世代のスパコンの利用者に対してどんな支援をしていくのかということを考えると、2つ挙げておきました。
 1つは、幅広い先端科学技術アプリの並列化であり、さらには超並列化であり、高速化、可視化といった技術支援であります。
 もう1つは、それを超えて超並列化に向けた新しいモデル、新しいアルゴリズムの開発などへの支援にも幅広く対応していく必要があるだろうと考えます。
 現実的には、利用者のシミュレーション工程に積極的にかかわっていくことによって、計算科学技術の問題の解決を支援していくということが大事になってくるのではないかと思います。P.3に絵をかいていますけれども、並列規模が大きくなればなるほど、赤い矢印ですけれども、当然のことながら、問題の難易度はどんどん上がってまいります。そこで、問題を設定して結果を分析するプロセスの中で、特に並列化とか高速化といったあたりの問題が大きくなってくるだろうと考えています。そういった意味では、従来とは異なる利用者支援のあり方が望まれていくわけでありまして、こういった観点を踏まえて、利用支援の上手な枠組み、仕組みを設計してつくっていくことが必要なのではないかと考えます。
 2番目に、利用支援の仕組みの設計の要件についてお話をしたいと思います。まず2つ述べますが、人的な、どういう人材が必要かという問題と、仕組みとしてどんな機能を持っていることが必要かというふうに分けて考えます。
 まず人員の問題でありますけれども、人材としての必要な能力は、大型スパコンを利用したシミュレーションを経験して、そういった能力を持っていること、大規模計算科学技術コードの開発、並列化、高速化、そういった経験を持っていること、それから、科学技術分野で研究開発を経験してそういった能力を持っていること、このような能力を持っている人材が、今後利用支援にも必要になってくるだろうと思います。
 利用支援の機能といたしましては、支援項目の重点化というのがありますし、戦略的に、一般課題の広範囲な分野のアプリに対応できること、それから、支援が有効に機能するマンパワーがあること、関係する機関、研究者との一体的な連携がとれること、これがかなり重要であろうと思います。それから、人材・技術を蓄積、伝播、継承できる、そういった機能を持っていることが大事だろうと思います。この辺は、先ほど大野専務理事がお話しになったことと基本的に相当オーバーラップしていると考えます。
 要件の具体化でありますけれども、かいつまんでポイントだけ説明いたします。
 要員に求められる経験と能力の例でありますけれども、全般的に、先ほどお話ししましたように、いろいろ科学技術の分野での素養とか、ソフトウェアの知識、そういったものが必要になってくるのは当然であります。さらに、2番目の大きな四角で、アプリの経験ですとか知識などが必要でありまして、ナノですとか、ライフですとか、その他の製造技術を含む工学、原子力、防災、航空、こういった様々な分野の知識が必要になるでしょうし、基礎科学の分野の知識も当然必要になってまいります。算法としては、FDMとか、そこに書いてありますようないろいろなやり方について精通していることが必要でしょう。また、カーネルなどについても、いろいろなカーネルに知識のあることが当然望まれます。
 また、並列計算機の経験と知識ということでありますけれども、これは現在国内で使われておりますような並列計算機ですとか、米国製のマシンですとか、そういったいろいろな機械での経験があることが望ましい。それから、大規模なシミュレーションの経験があれば望ましい。言語についても、FORTRANに限らず、Cとかいろいろな言語ができることが望ましい。並列のライブラリですとか、最後になりますが、可視化の処理の経験や知識があることも望ましい。こういった望ましいことを挙げていくと、これらの条件を満たせる人材は非常に少ないというのが現状ではないかと思います。
 利用支援の組織の機能でありますけれども、四角の点についてかいつまんでご説明をいたします。
 まず、利用支援項目の重点化でありますけれども、共用法で示されておる利用者の支援業務のうち、1番目は、先ほどもお話がありましたように、課題の選定業務、支援業務といったことでありまして、これは特に委員会を適切に組織して運営していくことが必要になるでしょう。それから、研究実施相談業務、これがこれからペタコンを運用していく上で、適切なアプリを開発していく上で非常に重要なポイントになっていくと考えます。
 特に戦略的なテーマですとか一般的な課題などを含めて広範囲なアプリに対応できることが重要でありまして、この利用支援組織の中に入ってくる人として、先ほども挙げましたように、非常に優秀で多機能な人材が必要になります。そういったことを一人でこなすのは大変難しかろうと思いますので、可能であればグループ制をとって、様々な能力を有する人をグループとして仕事をしてもらうということが必要になっていくだろうと思います。これは実際に私どもが現に仕事をしている中でも、少人数ではありますけれども、20人弱の規模の人数を4人ぐらいのグループで幾つかに分けて、1グループで1つではなくて、2つ、3つの仕事をしていくということで、多くの仕事を解決していく、必要な期間で解決していくという方策をとっておりますので、そういう形をやはり今後ともとっていくことが、大勢のスーパースターを期待するよりは現実的であるだろうと考えます。複数のグループで並行して多くの課題に対応していくというのが2番目であります。3番目に、グループの構成員でどんな人がいるかということでありますけれども、「計算科学支援員」ですとか、「ソフト技術支援員」というふうに、ある意味ではレベルで若干分けることができるでしょう。グループリーダ層にあたる人は、多くのアプリの経験もあり、スパコンの特性も把握していて、グループ員全体を指揮して仕事ができる人。その指揮された中でプログラミングを最適化していくとか、そういった個々の仕事を適切にしていく人、そういう人たちを組織化していけばいいのではないかと思っています。
 また、利用者の環境を支援するものとして、ネットワーク管理者と情報安全管理者、こういったものが必要になりまして、これは共用法の中に書き込まれているとおりであります。
 支援が有効に機能するマンパワーがあることというのが重要でありまして、それは当然、人が足らなければ支援を有効に働かすことができません。実際に利用支援の対応のイメージで、どういう仕事がこれから出てくるだろうかということを考えてみますと、1番目がアドバイスレベル、これは比較的容易な並列化の場合でありまして、研究実施者の努力を支援していく。これまでに比較的多かった研究支援の例になっていくと思います。2番目に並列化支援レベルでありまして、並列化が比較的難しい場合に、研究実施者と共同して作業をする、また作業を分担してやるといった、こういったレベルがその上の段階であり、さらには、課題解決レベルとして、新並列化手法などを共同で一緒に開発していくというレベルがあるだろうと思います。我々は、今のところ、Bのレベルというのが、これからのペタコンでの支援のレベルとして最も多いのではないかと考えています。
 こういった考えに基づいて、効果的な人数とか、期間とか、対応アプリの数を次ページ以降に若干試算をしてみました。これはあくまで試算でありまして、これだけの人数が必ず要るかということになると、これからご議論をいただいたほうがよいかと思いますけれども、一つの我々の経験に基づく例であります。
 まず逐次処理プログラミングから超並列化に至るプロセスをP.8に簡単に書いてみましたけれども、1万コアの規模の並列化と10万コアの規模の並列化と分かれてあって、同じようなところに線が引いてあって、これは何だろうと思われるかもしれませんが、実は1万コアの規模の並列化をしても、それを10万コアの規模の並列化にしようと思うと、また初期に立ち戻ってアプリの特性調査・分析から始めてやらなければならない、そういった経験を絵で示したものでありまして。とは言うものの、一番下に書いておきましたけれども、最初に逐次処理から並列化していくのに比べると、ある程度並列化してある場合の仕事の量は、これまでの経験では大体3分の2ぐらいの期間で終わるかなというふうに考えています。
 支援能力の試算を概数としてざっと勘定したのがP.9の表になっていまして、並列化のプロセスというのを一番左のカラムに、逐次から並列、超並列、それから、並列から超並列というふうに分けました。並列の粒度、細かさは、1万規模と10万規模に分けております。期間としては、そこに書いたぐらいの期間が必要になるのだろうなと思います。人数としては、これまでの経験では大体4人/月ぐらいのレベルになっています。凡そ5分野程度を想定しますと、4名1チームぐらいで考えて、大体4人1チーム、5分野で、20人程度で処理ができるのかな。それから、逐次処理コードを超並列化する場合には、約2課題/年/チームぐらいで5チームを組織して、10課題/年程度が対応できる。それから、並列コードを超並列化する場合には、先ほどお話ししましたように、若干その期間が短くて済みますから、2~3課題に課題が少し増えて、5チームでやると、10~15課題に対応できると考えます。
 さらに必要なことは、関連する機関、研究者と密接な連携がとれることが必要でありまして、運用主体と密接な連携が、これはもうどうしても不可欠になります。先ほどもお話がありましたように、特にペタコンにつきましては、基盤的な技術、基盤的なプログラミングの開発といったようなものは運用主体が対応することになると思いますから、そういったものも含めて、登録機関としては相当運用主体と密接に仕事をしていかないといけないのではないか。それから、当然のことではありますけれども、先ほど来述べていますように、研究実施者と密接な意思疎通を図っていかないと、レベルの高い仕事はこなせない。それから、専門家の創意工夫を活かせるような柔軟な関係が必要になるだろうし、特に目標を共有して、やっぱり世界一ですとか、世界初ですとか、非常にチャレンジングなところで目標を共有して頑張っていかないと難しい課題を乗り越えることはできないだろうと思います。
 人材・技能の蓄積、伝播、継承が図れること。これは、今後ともペタコンからさらにその先に続いていくときに必要になると思いますけれども、並列化、高速化等の知識ですとか技術経験を蓄積しておくこと、こういったものを全部資料として残しておくことが必要になるでしょうし、さらには、こういった仕事をしていく中で、若手や学生を含めて積極的にグループの中に登用することによって、人材の育成も図っていくことができるのではないかと考えています。
 以上、まとめてみますと、P.11の5つの四角に整理ができると思います。
 次世代スパコンの利用者支援について考えると、次世代スパコンの目的、特性を活かすには、研究実施者のアプリ群を適切に超並列化するなどの計算科学技術面の支援が非常に重要です。
 その支援には有能な人材を集めて、効果的に機能するような組織づくりが必要です。
 試算をすれば、約20人前後の要員が必要になり、年間10~15課題ぐらいの対応が可能かなと思います。
 運用体と利用支援とは、目標などをきちんと共有し、密接な連携を図ることが望ましいし、これができないと効果的な運用ができなくなるだろうと思います。
 さらに、次々世代計算科学へ向けて、利用支援の人材、技術等の蓄積、伝播、継承を図っていく仕組みも必要になってくるだろうと考えます。
 以上、大変簡潔に申し述べましたが、以上でご説明を終わります。ありがとうございました。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。
 地球シミュレータでのご経験を踏まえて、予測等を含めてお話しいただいたわけですが、何かご質問等ございますでしょうか。いかがでしょう。

【矢川委員】

 先ほどのJASRIさんと比較しますと、JASRIさんのほうは研究所的なニュアンスがかなりあったんですが、今のRISTさんのほうはあくまでも支援に撤するというふうに聞こえたんですね、比較上。その場合に、おそらくRISTのほうも、研究者がたくさんおられますので、研究者としてのプライドといいますか、そういうものが、極端な話、支援に撤するということは、ファーストオーサーになれないのかと。そういう意味で、研究者としてのプライドのようなものはどういうふうに考えておられますか。先ほどA、B、Cがあって、Bが中心というのがちょっと気になってですね。あまり独自性を出すようなことではなくて、あくまでも支援であるというふうに聞こえたものですから。

【RIST(関理事長)】

 JASRIのように既に存在している登録機関で、その中でどういう仕事をやっているか、その大部分では支援であるけれども、JASRIとしては研究も行っている。今、私が重点的に申し上げましたのは、我々、RISTとして登録機関業務をどうやっていくかというよりは、むしろ登録機関、利用者支援どうあるべきかということを中心にお話ししました。ですから、その中で、もし私どもが利用者支援をしていくとすれば、こういうことは当然やっていきますし、現にこういうことを行っていますけれども、それを超えて、一部、研究者と共同研究的なことをこれまでも続けておりますから、そういったことを中心に、それぞれ中の構成員の希望によっては、若干仕事も展開できて、今JASRIさんがお話しになったような立場で独自な仕事もできるかなというふうには考えています。

【土居主査】

 小柳先生。

【小柳委員】

 今とも関係があるんですが、資料の後ろのほうに、工数の推定という表が出てまいりましたけれども、私の理解では、自分のアプリケーションを並列もしくは超並列のマシンに乗せるための作業というのは、基本的にユーザー側の仕事であって、それをいかに支援機関が助けるかというふうなものだと理解しているわけでございます。産業界の場合には若干違うかもしれませんけど。
 というわけで、この人数の推定というのは、そういう意味での推定なのか、それとも、むしろこの並列化をある意味で請け負ってやるときの口数なのか、その辺はどういうようなベースで考えていらっしゃるんでしょうか。

【RIST(中村理事)】

 では、お答えします。
 このケースの算定の基準というのは、先生がおっしゃるように、ユーザーとなるべき研究者はもともと並列のプログラムを持ってくるというのが前提ですけれども、その問題が難しかった場合、持ってこられないケースもあるだろう、しかし、その問題を現状として解かなければならない(喫緊の)ケースもあるだろう、そういうことも想定することを考えています。ですので、例えば、もし逐次のプログラムはあるのだけれども並列を何とかしたいという問題があれば、それにも対応することが必要なのではないか。我々の経験としては、意外とそういう問題が多かったですので、その様にやっていかざるを得ないなと考えました。

【小柳委員】

 わかりました。ありがとうございました。

【土居主査】

 よろしいですか。ほかにはいかがでしょう。

【宇川委員】

 なかなか難しいかもしれないんですけれども、個々の非常に詳細なことは結構ですけれども、例えば、地球シミュレータで、ある種一番大規模なこういうソフトウェア開発をやった事例に関して、ざくっと言って、テーマが何であって、どこから出発してどこまで持っていくのに、どの程度の期間とどのぐらいの人数がかかったか、それに対して、研究者のかかわりはどういったようなものであったのか、ほとんどかかわりがなくて、RISTさん側でもうほとんどやるような、ある種請負みたいにしてやったのか、そのあたりの例をベースにして少し話していただけるとイメージがつかめると思うんですが。

【RIST(中村理事)】

 わかりました。地球シミュレータの場合の例で申しますと、例えば、固体系のGeoFEMという並列有限要素法、のかなり大きなコードを開発、並列化した経験があります。その場合は、振興調整費研究でしたから5年の期間はありましたけれども、実質3年ぐらいで完成したという経験があります。
 そのときの研究者のかかわり方というのは、ほとんど融合的にかかわっていた。例えば、奥田先生や東大に行かれました中島先生もおられましたけれども、そういう方々と一緒に、新しい当時の大規模並列を行ったことがあります。その中でまた新しいアルゴリズムを開発いたしましたし、それが固体地球分野に利用されたという経験もあります。
 ほかには、ナノテクでカーボンナノチューブのシミュレーションの計算をしたこともあります。それはCRTMDというコードでしたが、それはもともと並列ではなくて、逐次処理だったのですが、それをベクトル化、並列化、そして大規模化をして計算をしました。そのときには、研究者はそれを書いた人で、並列については全くご存じありませんでした。このため、我々でコードを全部分解、理解、分析、その背景にある理論との対応を全部つけて、それを並列化した。それを地球シミュレータのフルノードでやってみたら世界一程度の計算ができた、そういう経験があります。
 ですので、そういう経験からすれば、先ほどのような幅広い対応を考えておかないといけないかなというのが提言として出てくるわけです。

【宇川委員】

 そのときの人数が1チーム4人ぐらいで、期間としても1年から1年半ぐらいかけてやったと、そういうことと理解してよろしいですか。

【RIST(中村理事)】

 そうですね。大体チームというのは、リーダーが1人いて、大体5~6人という時期もありましたけれども、長い時間でみると、4人程度が一番効率的かなとは思います。あまり(人数を)多くすると、やはり上下関係ができますし、4人ぐらいだったら大体水平で、リーダーと言っても、実際は水平関係ですね。必ずしも、「おまえ、これやれよ」という関係ではない。つまり、(ほぼ同じレベルの)専門家が集まっていたと思いますの。ただ、年齢差はありますけれども、そういう隔てはない関係でした。お互い、例えば、この問題が世界一になるというような目標を共有しますと、かなり燃え上がるような経験でございました。ですので、あまり人数は多くなくて、4人ぐらいが妥当かなという形にしました。

【宇川委員】

 それで、そのときソフトウェアの開発、特にコードの開発の場合には、私はレベルが2層あると思っていて、研究段階でとにかく計算ができるというレベルのコードと、それから、もう少し汎用的に、ほかの人もある種使えるというレベルと全然違うと思うんですね。今おっしゃっていた人なり期間なりは、非常に汎用とは言わないまでも、ほかの人も使えるようなレベルまで持っていくときの工数と思ってよろしいんですか。

【RIST(中村理事)】

 そうですね。一般的に公開して使えるようにということで、GeoFEMの開発の時には、(最初から)もう頭の中に公開ということがありました。そのため、(他の方が)大体使えるようなコードになっていたというような経験です。

【宇川委員】

 ありがとうございました。

【土居主査】

 よろしいですか。ほかにはいかがでしょう。

【理研(松岡副準備室長)】

 委員ではないんですけれども。

【土居主査】

 どうぞ。

【理研(松岡副準備室長)】

 ちょっと気になったことがありまして、RISTさんに質問なんですけれども、例えば、普通の研究者は、自分のコードを開発するのに、これまで何年も研究しながら、それなりにモデルをつくって、並列化したコードをつくって、それである段階で、例えばRISTさんに高並列化あるいはベクトル化みたいなことをお願いしますよね。そのときに、多分、ユーザーの気持ちとしては、この自分が何年かかけてきたノウハウも全部わかっちゃうわけで、RISTさんを通じてほかのユーザーにそのまま、自分が何年も考えてきたアルゴリズムとかそういうものがすっと利用されてしまうとやっぱり気になるなというので、守秘義務とか、それから、何となく自分のわかったことをほかのユーザーにそのまま教えてくれるなみたいな、そういう要望は、契約とかそういうときになかったでしょうか。

【RIST(中村理事)】

 そういうことはありました。まず我々の立場は中立・公益ですので、一応その立場を説明して、どの辺まで公開できるかというのは、最初に調整をいたします。例えば、我々も民間の企業さんと共同研究を行うこともあります。その場合でも、中立・公益という関係で、どこまでの公開ができるかを決めてやります。
 もう一つのアルゴリズムですが、従来のサイエンスのアルゴリズムは、大体分類されて今7つ程度で考えられますので、新しい(アルゴリズムを自ら開発したなど)ということを言うよりも、むしろそれを広く公開して使っていただいたほうがいいかなとは思っております。

【土居主査】

 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

【宇川委員】

 今の点に関するコメントなんですけれども、やっぱりアルゴリズムってすごく大事で、しょっちゅうではないですけれども、やっぱり革新は起こると思うんですね。私、幾つも例を知っていますけれども。そういうときはやっぱり論文をちゃんと研究者としては書きますし、それによってある種の研究成果の帰属は保証すると。それ以外は、一昔前は、コードはある種の知財としてオープンにしないほうが多かったと思いますけれども、最近のトレンドは、むしろオープンにして幅広く使ってもらう、そういう方向だと思うので、あまりそのあたりのことは、注意はしないといけないですけれども、気にはならないのではないかと思います。

【土居主査】

 ありがとうございます。

【RIST(中村理事)】

 1点だけ補足させていただきたいのですが、矢川先生のご質問に、研究者としてどう考えるかというお話がありました。我々、長い時間やっているうちに、ある事実に気がついたんですが、計算科学というのはやっぱり実験、実践科学なのですね。やってみないとわからないところがあって、実験に近いところがあります。ですので、その経験をかなり突き詰めないと全体が見えてこない、断片的なところしか見えてこないことが多いと思います。ですので、そういう経験からすれば、この利用者支援の中にも結構宝の山があって、しかも、その中に新しい計算科学のモデルが出てくると、また新しい側面が出てくると思います。むしろそういうところが実験場になっていて、それをまとめていく場合が論文になると思います。今、計算科学としての論文が受け入れられるようになりましたので、サイエンス的な新発見というのはサイエンティストに頑張っていただいて、計算科学として、もしくは計算機技術としては、そういう場を提供させていただく。そうすれば(研究と支援とが)両立するのではないかと思います。

【土居主査】

 そういうことがないとやっぱり難しいとは思いますね。ありがとうございました。
 4人で請け負ってどうとかというような感じのは、昔、米澤先生なんかもよくご存じですけど、一時、ソフトウェア工学でチーフプログラマーチームというのがもてはやされたことがあったんですが、ちょっとは違いますけれども、何かそんなのを思い出したようなことなんですが。
 よろしいですか。

【中村委員】

 前からの話で、市販ソフトを並列化するかとか、そういう必要性があるんじゃないかというような議論があったんですが、今までそういうご経験とか、あるいは、そういうことがあったときの問題点などを教えていただけますか。

【RIST(中村理事)】

 確かに、市販ソフトを並列をして欲しいということで対応した経験がございます。第一原理のコードも多かったと思います。あまり(並列)性能は良くなかったかなと思います。むしろ、大規模並列、超並列にする場合は、今研究なされているコードを使われたほうがよいかなとは思っています。ただし、企業さんでコードをそのまま持ってきて、そのままで使いたいという方もおられますので、そういう場合はそういう形でできると思いますが。
 ただし、問題は、超並列をする場合に、単なる(従来の)並列のアルゴリズムを使うだけでは駄目ですね。つまり、超並列になると、非並列部(に比率)をかなり下げなければいけません。そうすると、今までは見逃してきた部分も並列化をせざるを得ない。例えば、第一原理では、バンドとか、格子とか、そういう(並列軸)で並列化はできるのですが、もしできないとすると、その並列の部分に対して、新しいアルゴリズムを考えなければならない。そうすると、結局、その後ろの理論ベースまで立ち入って考えざるを得ない。そうしたときに、そこまで、例えば版権、それが保障されているかどうか、そういう問題が出てくる。ですので、今、国や公的な資金で開発されているコードだったら細部まで行けますので、そちらのほうがいいかなとのお答えです。

【中村委員】

 今までのご経験として、ベンダーさんとの関係というのはどういう形で整理をされて、その中の変更というのをされているんでしょうか。

【RIST(中村理事)】

 ベンダーというのは、計算機のベンダーさんですか。

【中村委員】

 いやいや、ソフトのほう、市販ソフト、もしくは、それを開発している企業さんということです。

【RIST(中村理事)】

 私どもも海外のベンダーのコードを使ってきました。例えば、欧州のコードの例では、「改良していいかと、例えば、地球シミュレータに向けて改良してもいいか」と聞きましたけれども、やはり「だめだ」ということを言ってきました。結構バリアは高いと思います。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 それでは、時間とも兼ね合いがありますので、この辺で打ち切らせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、事務局作成の資料5-1、5-2というペーパーがございますので、これは今のご説明をいただきました登録施設の利用促進機関に関するものでございます。これをまず事務局のほうから説明をしていただきたいと思います。お願いいたします。

【井上計算科学技術推進室長】

 資料5-1と5-2でございますが、資料5-1は、この登録機関が行う業務というものが、最低限これはやらなければいけないというものが法律で決まってございます。それについて、事務局のほうで関係者のお話なども聞いたり、相談しながらブレークダウンをしたものでございます。
 まず一番上に四角で囲んであります、これが法定業務でありまして、利用者選定業務と利用者支援業務であります。
 それと、項目で、星印は必須事項と思われるもの、普通のポチは業務として実施することが望ましい事項ということで書かせていただいております。
 まず1ポツは、利用者選定業務であります。まず有識者で構成される選定委員会の意見を聞きつつ、課題を選定する。透明性・公正性を確保するための審査体制を整備する。戦略利用、一般利用の計算リソースの配分、利用者のための研究棟スペースの配分、こういうものをやるということでございます。
 2ポツが、利用者支援業務であります。
 まず利用者への情報提供業務といたしまして、施設や施設利用に関する最新情報の提供、また、次世代スーパーコンピュータのシステムに関する技術情報の提供、利用者講習会等の実施、そのほか、海外の情報等を収集・提供や知財の関係の支援、そういうこともできたら望ましいということで書かせていただいております。
 その次に、利用に関する相談及び利用支援でございます。まず研究課題の申請の前段階での技術的相談。申請前の利用希望者に対する利用に向けての技術的相談や助言を行う。その次に、アプリケーションの実行やデータ処理、可視化、並びに利用者が利用する機器の操作等に関する支援ということで、次世代スパコン施設で利用者に提供している機器の操作支援、次世代スパコン施設で提供しているアプリの実行、データ処理等を含めた利用支援(可視化も含む)ということです。利用者からの質問や不具合に対する問い合わせなどの受付窓口業務。また、さらに、利用者が利用しているアプリケーションの施設へのインストール支援、これも行えれば望ましいということでございます。
 その次に、アプリケーションの調整・高度化の支援。ここが最もメーンになる、難しいところだと思いますが、まずアプリケーションの調整が円滑に行われるよう、必要な技術情報の提供、利用者講習会等の開催をする。高並列化等のアプリケーションの高度化に対する技術的相談・助言。戦略機関や大学の情報基盤センター等と協力した技術的相談・助言。利用者講習会等の実施等、幅広い支援体制の構築。
 その次に、その他の支援といたしまして、セキュリティ事項等の問い合わせ窓口、情報提供。ネットワークを介したリモートアクセスに関する支援。また、できましたら産学官の共同研究等に対するコーディネートなどもできたらいいということです。
 3番目は、研究成果の公開や理解増進について、本来の法定業務ではありませんが、このようなことができたら望ましいということで書いております。
 それと、4番目に書いてありますのは、これまでも、今日の委員会でも出てきましたが、いわゆる12条の研究ですね。登録機関による利用ということで、こういう研究もできるということで書かせていただいております。
 引き続きまして、資料5-2でありますが、そういう業務を行うとした場合の体制について書かせていただいております。
 まず1ポツは、課題選定を行うための体制。これは主要分野毎に有識者による委員会を設置する。このための事務局体制といたしまして、専任の管理者とスタッフ数名が要るであろうということです。
 2番目に、支援を行う体制であります。これは法律上は、研究実施相談者、ネットワーク管理者、情報処理安全管理者という、こういう3種類の人間がもう既に法定されておりまして、こういう人たちを置くべしとなっております。それで、さらに、これはどんな人かということを、ここで我々なりに考えたものを記載させていただいております。
 まず研究実施相談者ですが、これは3つのカテゴリーを考えました。
 まずは高度化支援員です。この高度化支援員は、計算科学または計算機科学の分野の一定レベル以上の知識を有し、アプリケーションソフトウェアの高度化支援を行う。次世代スパコンでの利用が想定される各分野の知識を有し、支援を行うことができる者。次世代スパコンで利用可能なアプリケーションソフトウェアの支援が行える者。利用者講習会等の実施、支援が行える者。これはいわゆるリーダークラスの方を想定しております。
 次に技術支援員であります。技術支援員には、プログラマやSEなどの実務経験が豊富な人材が必要。また、利用者からの相談や問い合わせに対して、どこに問題があるのかの切り分けや必要な対処の判断を行い、必要があれば高度化支援員や設置者等と協力して、解決に向けた支援を行うということでございます。下にポチで書いてありますが、アプリケーションソフトウェアの支援が行える者。また、相談や問い合わせに対して、問題がシステムにあるのか、アプリにあるのか、そういう切り分けが行える者。必要な対処、そういうことができる者ということです。また、プリ処理に関する支援等々でございます。
 それと、可視化支援員でございます。これは基本的に次世代スパコン施設において、特にサイトに可視化のサーバーも置くことが想定されておりますので、特にはそういう現地にある可視化の装置を使う利用者に対する支援を想定しております。具体的には、可視化手法等に対する支援が行える者。次世代スパコンで整備される可視化環境を熟知し、支援できる者。利用者が利用している可視化ソフトウェアの施設へのインストール支援が行える者としております。裏でございますが、ポスト処理が行える者と書いています。
 さらに、ネットワーク管理者につきましては、ネットワーク利用に関する支援ということで、大容量ファイルの転送等が行える者。
 また、情報処理安全管理者につきましては、不正侵入等々への対応ができる人、セキュリティポリシーの立案等が行える者ということでございます。
 それと、これは規模感でございますが、これは、我々、予算要求等もありますが、最低限どのくらいの人数が必要というのを、省令に人数を実際書き込んでいかなければなりません。これは先ほどJASRIの例がありましたけれども、あそこで50人とされている、それに対応する数でございます。
 それで、ここには課題選定専任の管理者ということで、少なくとも専任の管理者1名ということを書いてございます。また、利用者支援員でございます。省令上には研究実施相談者何人、ネットワーク管理者何人、情報処理安全管理者何人と書かなければいけませんが、ここでは研究実施相談者、高度化支援員については8名程度、技術支援員については8~16、可視化支援員については2~3名と書いていますが、それぞれ下に支援員算出の考え方と書いてありますが、基本的に次世代スパコン施設では非常に幅広いユーザーが想定されますので、少なくともそれぞれいろいろな分野に対応できるということで、高度化支援員につきましては想定される分野の数、この中には特に産業利用も数に入れておりますけれども、そういうことで8名程度とさせていただいております。技術支援員も基本的には同じ考えでして、各分野毎に1~2名ということです。可視化支援員につきましては、これは地球シミュレータセンターの例が、今2名ぐらいでやっておられるということも思いまして、2~3名としております。あと、ネットワーク管理者等々については、これまでのその他の施設の業務などを参考にして挙げさせていただいております。
 以上でございます。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。
 本来的には理化学研究所として全体的な運営体制まで、基盤としての研究開発を含めてもやった上で、それではこの部分が登録機関に該当するだろうというような一気通貫的なものを審議した上で、こういうものにお願いするというのが本来的だと思うんですが、できたときには、もう既にこういう人たちはいなければいけないし、準備期間というのがありますので、それで粗々のところで概算要求だけは出しておかなければいけないという、そういう苦しい立場に今ありますので、法律上最低限のところは踏まえた上で、プラス・アルファのところを加えていただいて、また、これをもとに、次回も登録機関に関するとりまとめをここの場でさせていただきたいと思っているんですけれども、一応省令等々——省令はミニマムを書けばいいんですね。

【井上計算科学技術推進室長】

 そうです。ですから、JASRIの例でいきますと、省令に50と書いてありますけど、実際、予算で、先ほどもありましたけど、約90人の方が働くことになっております。

【土居主査】

 なるほど。といったようなこれからの進行に備えて、粗々のところでも何かやっておかなければいけないというような段階に来ているようですので、そういうことを頭の隅に置いていただいて、これをご議論いただければと思いますが、いかがでしょうか。

【平尾委員】

 この後、おそらく神戸の拠点をどういうふうにつくるかとか、ペタコンを有効に利用するにはどうしたらいいかという、そういうことをやはりきちっと考えないといけないと思うんですね。おそらくそのときには、神戸にできるいろいろな拠点と、この登録機関の関係というのは、改めて議論が求められるんだと思うんですね。ですので、さっき土居主査が言われたように、今日はこの最低の要件と言ったらおかしいんですが、それをまず議論していただく。だけれども、もう一度全体を話をさせていただいて、その中で一番コンシステントとなるような形でまとめていただければと思っています。それだけちょっとお願いです。

【宇川委員】

 この件は結構難しい問題だと、私、個人的には思っていて、かなりいろんな意見があるんじゃないかと思うんですね。それで、私自身、一番懸念に思うことは、この登録機関という法律の中身がどういったことを想定してつくられているのかというところに、今回の次世代スーパーコンピュータと、それから、もともとのJASRIとでかなりの差があるんじゃないかということを懸念するんですね。
 今日のお話でも、それでいろいろ技術的なことも伺わせていただいたんですが、JASRIの場合は、SPring-8というのは、非常にたくさんのユニットがリソースとして用意されていて、そこに課題はたくさん来るけれども、でも、それぞれを当てはめていけばいいというタイプの課題選定であるし、業務なんですよね。ところが、例えば、地球シミュレータの場合を例にとると、30程度の課題が選ばれて、それが年間動いているわけですね。ですから、数千の課題を配分するというのと、巨大ではあれ30程度の課題にどうやって配分していくかということに関しては、全く考え方が違う可能性が大いにある。
 そういうことを考えたときに、この登録機関の法律の中に決められているかもしれないけれども、その要項をどう満たしていけば次世代スーパーコンピュータがうまく使えるかということは、やはりかなり違う考え方をする必要があるんじゃないか。例えば、戦略利用と一般利用もそうだと思うんですね。JASRIの場合は、今お伺いしたところですと、一般利用は100%で始まって、すなわち、戦略利用というような考え方はない状況で始まって、その後、戦略利用というものが入ってきている。入ってきたけれども、でも、15%くらいまでなわけですよね。で、じゃ例えば次世代スーパーコンピュータはというと、これは人によって違うかもしれませんけれども、そもそも戦略委員会というようなものが立ち上がって、戦略的に使っていこうということですから、むしろ一般利用もあるんですけれども、逆の考え方から出発していると言ってもいいと。
 そのあたりのことを考えますと、やはり登録機関の役割というものは、概算要求等々で最低限はつくっておかなければいけないということはあるにせよ、やはり全体のことを考えて改めて考え直すというところは非常に重要ではないかと思います。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 全くそのとおりであると思いますし、宇川先生も今ちょっとおっしゃいましたように、要するに、SPring-8とコンピュータということになりますと、全く性質が違うものですから、そういったことはきっちりわきまえた上でやっておかなければいけないということがありますので、本来的には、先ほども申しましたように、全体を一気通貫で考えた上で、この部分をというのをやらなければいけないとは思うんですが、今、段階的にそういうようなことをやっているような時間がないようですので、一たんはこれを出しましても、全体を、齟齬を来さないように、また練った上で、修正を加えていく必要があろうかと思いますので、ぜひその点はご理解いただければと思います。
 ほかにはいかがでしょう。

【小柳委員】

 今のことと同じことなんですが、ここの我々の次世代スパコンの場合には、理研の果たす役割とこの登録機関の果たす役割の調整というのは大変重要になると思われます。特に先ほどから問題になっている支援業務、特にかなり高度な支援業務については、おそらく理研にもある程度の役割を期待せざるを得ないのではないかということもありまして、今こういう案を出さざるを得ない理由はよくわかりますけれども、先ほどから多くの方がおっしゃっているように、今後、もう少し具体的に詰めていく必要があると思います。

【土居主査】

 ありがとうございます。
 どうぞ、米澤先生。

【米澤委員】

 特に大きい話ではないんですけれども、今登録機関について多少議論して、今度は登録機関の募集をするわけですよね。その募集の要件とか、あるいは募集要項とか、そういうタイミングがいつごろで、それで、今おっしゃったような全般的な、ある種の役割分担とか、運用上のいろんな問題をちゃんとよく考えるというのは、いつごろのタイミングでどうやるかというのを、ある程度我々の側でコンセンサスを持っていたほうがいいのではないかと思います。

【土居主査】

 ありがとうございます。
 それは、今、おおよそ。

【井上計算科学技術推進室長】

 今、次世代スパコン本体がシステム構成の見直しという状況にありますので、現時点で明確にスケジュールを申し上げることはできませんが、少なくとも稼働する半年ぐらい前には立ち上がっていなければいけないと思うんです。そうすると、当初のシステム構成前でも、23年度末には一部稼働と言っていましたから、そういう稼働する前には少なくとも立ち上がっていなければいけないとすると、22年度中には立ち上がっておかなければいけないわけです。

【土居主査】

 登録機関。

【井上計算科学技術推進室長】

 登録機関がですね。ですから、基本的には22年度には立ち上がれるように、しかるべき時期には登録、または選定ということをやっていきたいと考えています。

【土居主査】

 22年度というのが来年度なんですよ、実は。

【平尾委員】

 来年ですね。

【井上計算科学技術推進室長】

 ただ、準備もありますので、早めにやはりやっていかないと。

【土居主査】

 ですから、とにかく動く前にはいろいろ準備をしてもらわなければいけない。人材を整えていただかなければいけないということを含めて、いろいろなことをやっていただかなければいけないわけですから、今、少なくとも半年とおっしゃいましたけど、本当にそれで済むのかというようなこともありますから、できるだけ早くこういうことは、実際の内容とも決めていかなければいけないんだと思っております。
 どうぞ、中村先生。

【中村委員】

 ちょっと違うことですけど、よろしいでしょうか。当然、これは将来のことになると思うんですけれども、やはり利用者負担という、そういう考え方が常に出てくる問題があると思うんですね。先ほど宇川先生が、重点課題のほうにシフトしてきたということで、非常に理想的なようなことをおっしゃるんですけど、私はタンパク3000にかかわっていて、実はあれはお金に絡んだことでもあって、タンパク3000に非常にたくさんの研究費が回ったと言って、皆さん、それがほんとうに構造生物学だけに使われていると思うと、実は違っていて、SPring-8の運営費に一部は使われているという、そういうことがあるんですね。それは、だから、少し利用者負担という、そういう考え方が常に入ってきていて、重点課題と一般課題と、そういうことを分けたときに、重点課題というのはトップダウン的なことだということで、実は利用者負担的な考え方というのが入ってくるという問題があると思っています。
 ちょっとコメントだけして、だからどうだと言っても難しい問題だとは思うんですけれども、そのことをちょっとコメントしておきたいと思います。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 ですから、開発費とは別途予算を文部科学省のほうでしっかり考えていかなければいけないという、もっとも考えていらっしゃるんですが、ということがついて回っています。
 ほかにはいかがでしょうか。
 よろしいでしょうか、と言いますのも、今日のところは、これをお持ち帰りになっていただいて、ごらんになっていただき、次回に改めて登録機関に関するとりまとめをさせていただきたいと思いますので。
 では、本日のところは、この辺で、これに関しましては閉じさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 そろそろまた時間になってまいりましたが、今申し上げましたように、次回は登録機関のとりまとめ及び次世代スパコン施設の運営に関しての留意事項についてなんかも頭出しとしてご議論いただきたいと思っております。また、本日いただきましたご意見等を踏まえまして、議論の進め方につきましては、適宜事務局のほうで考えていただくというようなこともありますので、その点もまたメール等ででもご意見いただければと思っておりますが、こういうことに関しまして、何か事務局からご説明が必要ですか。

【井上計算科学技術推進室長】

 いえ。

【土居主査】

 よろしいですか。それでは、最後にその他がありますが、本日の議題そのものは以上でございますけれども、何かほかに先生方からございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、最後に事務局から事務連絡等、お願いいたします。

【事務局】

 それでは、次回の第14回戦略委員会は、6月30日火曜日の17時より19時まで、ここと同じ部屋なのですが、16F特別会議室での開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
   以上でございます。

【土居主査】

  それでは、本日の戦略委員会はこれで閉会とさせていただきますが、JASRI及びRISTの皆様方にはほんとうにありがとうございました。また今後ともよろしくどうぞお願いいたします。また、理研からも松岡さんにご出席いただきまして、ありがとうございました。
 それでは、これをもちまして終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

— 了 —

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(研究振興局情報課計算科学技術推進室)