次世代スーパーコンピュータ戦略委員会(第12回) 議事録

1.日時

平成21年5月26日(火曜日)17時~18時57分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

土居主査、宇川委員、小柳委員、小林委員、寺倉委員、中村委員、平尾委員、矢川委員、米澤委員

文部科学省

倉持大臣官房審議官(研究振興局担当)、磯田研究振興局長、奈良振興企画課長、舟橋情報課長、井上計算科学技術推進室長、飯澤学術基盤整備室長、中井情報課課長補佐

オブザーバー

東京大学情報基盤センター教授 中島研吾、スーパーコンピューティング技術産業応用協議会広報委員長 伊藤聡

4.議事録

【土居主査】

 それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきたいと思います。第12回になりますが、戦略委員会、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、事務局から、本日の配付資料につきまして確認をお願いいたします。

【事務局】

 それでは、お手元の議事次第と照らし合わせて、資料のご確認をお願いいたします。
 配付資料、資料1、「教育利用のあり方について(素案)」。
 資料2、「『学際計算科学・工学』人材育成プログラム」という題で、後ほど、米澤先生からお話しいただくものです。
 資料3、「産業利用を考える上での論点」。
 資料4、「次世代スーパーコンピュータプロジェクト産業利用枠のあり方について」。後ほど、東芝の伊藤さんからお話しいただく資料でございます。
 また、前回までの配付資料につきましては、机上のファイルにとじております。配付資料について、欠落等がございましたら、事務局までお知らせください。
 以上です。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。また何かありましたら、その都度おっしゃっていただければと思います。
 それでは、早速議事に入りたいとは思うのですが、その前に、ご承知とは思います。文部科学省からも委員の先生方には連絡がいったと思いますが、次世代スーパーコンピュータのベクトル部の開発を担っておりましたNECが次世代スパコンの製造段階には参画しないということになりましたので、このことにつきまして、事務局から簡単にご説明をお願いしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【井上計算科学技術推進室長】

 NECの製造段階への参画の断念の件でございますけれども、皆さん、もう既に報道等でもご承知と思いますが、5月13日に、NECから、世界的に経済状況が悪化している中、このスパコンの製造段階には参加できない旨の表明がありまして、非常に残念ではありますけれども、そういう状況になっております。
 一方、この次世代スパコンプロジェクトにつきましては、開始から3年が経過しておりますとともに、ちょうどシステムの開発が設計から製造に移行するという節目を迎えておりまして、今年の3月末に、科学技術・学術審議会のもとに、次世代スーパーコンピュータプロジェクト中間評価作業部会を設置して、中間評価を実施しているところでございます。
 これまでに、そこでも技術的な指摘をいろいろといただいておりまして、実は4月22日に、技術的な指摘を取りまとめて、それへの対応をするように理研に要請していたという状況がございました。理化学研究所においては、そういう要請に対する検討をしていたという過程にあった中で、今回、NECの話も出てきたということでございます。
 理化学研究所においては、特にこの戦略委員会では利活用について議論いただいておりますけれども、その利用の面に影響が出ないように、いち早く、スケジュールどおりに、10ペタ級のマシンを開発できるというような方向で、今、システムの見直しをしております。
 先ほど言いました中間評価の指摘、また、それに加えNECの話もございましたが、そういう話を踏まえて、実は、昨日、中間評価の作業部会が開催されておりまして、そこに理化学研究所からスカラー単一のシステムの提案がございました。それで、現在、その提案について、中間評価作業部会でご議論をいただいている、そのような状況であります。
 それで、目途としては、中間評価作業部会においては、6月の半ばぐらいまでには新しいシステム構成案の議論を終えていただくべく、みんなで努力をしていると、そういう状況でございます。
 以上でございます。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。我々、この委員会といたしますと、複合機ということで、いろいろな応用場面を想定しながら、あるいは、その内訳を考えるに当たっても複合機というのを考えたわけですが、その片方を担っておりましたベクトル部分のほうが、NECが残念ながら、100年に一度だとかと言われておりますような状況で、できないということですので、多少はその影響がないとは言えないわけですが、それは先生方にもちょっとお尋ねをして、そういうようなことは基本的には大丈夫だろうというようなお答えもいただいておりますので、特段、何かを大変更しなければいけないということはないように感じておりますが、何か、特段ございますでしょうか。

【平尾委員】

 やはり最初から複合システムということで、ベクトルのマシンもあるという前提で、これのプログラム開発をされている方もいらっしゃるわけですね。もしほんとうにスカラーだけでいくとなったら、そういう方々に対する手当て、いろんな形の支援をきちっとやらないといけないだろうと私は思いますけれども。

【土居主査】

 ありがとうございました。

【平尾委員】

 まあ、各界といいますかね。

【土居主査】

 ただ、世の中、時代の流れといいますか、アーキテクチャーの面での展開の仕方を見ていますと、地球シミュレータも、前のバージョンに比べまして、新しくなったものとのベクトルのアーキテクチャーそのものが変わってきておりますから、そういった意味でも、いろいろな点で、ベクトルということで進めていらっしゃる方々にも、手当てということはそれなりに考えなきゃいけないまでも、従前のものとは違うといったこと等々も含んでお考えいただくようなこともお願いしなければという気がいたします。
 ほかにはよろしいでしょうか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 それでは、早速、議題に移らせていただきたいと思います。議題1が教育利用についてでございますが、教育利用につきましては、前回ご議論いただきましたが、事務局として、前回の議論を踏まえて、まとめましたペーパーをつくっておられます。これは、事前に委員の皆様方にもお配りをして、検討いただいた結果、また、ご意見等もいただきましたので、それを踏まえて改訂していただいております。
 それをまず説明していただくとともに、本日は、東京大学情報基盤センター長で、本戦略委員会委員の米澤先生から、東京大学における教育利用の取り組みについてご発表いただくことにお願いしてございます。
 また、議論には、東京大学情報基盤センタースーパーコンピューティング研究部門教授の中島先生にもご参加していただくように、ご出席いただいております。中島先生は、計算力学、並列プログラミングモデルをご専門とされ、米澤先生とともに、東京大学の人材育成プログラムづくりに精力的に取り組んでおられると伺っております。
 それでは、まず事務局から説明をしていただきまして、その後、米澤先生のご発表を伺い、その後に、米澤先生へのご質問等を受け、それから、事務局の資料についてご意見をというような段取りで進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。中島先生、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず、事務局からお願いできますでしょうか。

【井上計算科学技術推進室長】

 それでは、資料1でございます。「教育利用のあり方について(素案)」とあります。
 1番目に、「現状認識」であります。最初のパラグラフにありますのは、現代の科学技術において、大規模なシミュレーションはなくてはならないものであると。このような状況の中、大規模なシミュレーションを支える人材、ここではHPC人材は必要不可欠であり、この育成は避けては通れない重要な課題であるとしております。
 また、その上で、2番目のパラグラフ2行目からでございますけれども、最も大きな問題は、系統立った人材育成・教育システムが確立していないということで述べさせていただいております。
 そして、3つ目のパラグラフでありますけれども、「このような中、次世代スーパーコンピュータの整備を一つの契機として、我が国における系統的なHPC人材育成・教育システムを確立し、これを実施していく体制を構築していくことは、真剣に検討すべき重要課題である」としております。
 それから、2行飛ばしますが、系統的な人材育成・教育システムの検討の中で、次世代スパコン、全国の共同利用情報基盤センター、各大学等の適切な役割分担がなされることが必要であり、また、これら機関が有機的に連携をした体制づくりが検討されるべきであるとしております。
 その上で、2番目に「求める人材像」でございます。ここでは、(1)から(5)まで、5つの人材をタイプ分けしてございます。
 まず1番目が、各専門分野において、それぞれの知見とともに大規模計算を行い得る知識を持つ人材。2番目が、大規模計算を行うためのアプリケーションを開発できる人材。3番目、大規模計算を行うためのシステムを開発できる人材。4番目としまして、上記(1)から(3)を橋渡しできる人材。5番目として、アプリケーションの最適化等研究支援を行い得る人材としております。
 その上で、(1)と(2)を、計算機を利用する能力にたけた人材であり、ここでは高度計算科学人材としております。また、(3)については、高度計算機科学人材、(4)は、計算科学橋渡し人材、(5)は計算科学支援人材と、ここでこういう名称でまとめさせていただいております。
 そして、3番目に「HPC人材育成に向けた取組」ということでございます。具体的に、この2番目に挙げたような人材をどう育成していくかということでございますが、そのページの一番下のほう、2番目のパラグラフになりますけれども、「次世代スーパーコンピュータ計画の大きな目的の一つは、次世代スーパーコンピュータを中核とした教育研究拠点の形成である。このため、戦略委員会としては既に、次世代スパコン施設を中核拠点、戦略機関を分野別中核拠点とし、大学等と連携した計算科学技術ネットワークを形成し、各拠点が連携した人材育成を促進していくという方針を出している。系統的な人材育成・教育システムの確立とこれを実施していく体制の構築に当たっては、この方針も考慮し、各拠点がそれぞれ役割分担を行い、有機的に連携していくことが必要である」としております。
 その上で、各拠点、施設の担うべき役割といいますか、を書いてございます。
 まず、次世代スーパーコンピュータ施設でありますが、次世代コンピュータ施設、多様な性格がありますけれども、ここでは主に3つの面から書いております。
 マル1としまして、「教育利用枠の提供施設として」ということでございます。ここでは、若手研究枠の設定、これはトップレベルの人材を育成すると、そういう部分でそういうことをやってはどうか。
 2番目としては、「超並列計算演習の実施」ということで、こちらのほうは、すそ野の拡大ということで書いてございます。ただ、演習の部分は、現状では、なかなかにわかに実施することは難しい。そのために、各者が役割分担を明確にした系統立てられた人材育成教育プログラムをつくっていくことが重要であろうということでまとめさせていただいております。
 次のページに、マル2番目、研究拠点としての性格ということでありますが、人材育成の観点から見れば、ここはまさに最先端の研究開発活動を通じた実践の場であるということにしておりまして、特に最先端の人材を育成する上で、この場を有効に活用することが望まれるとしております。
 3番目に、「研究支援組織として」でありますけれども、特にここは、登録機関もありますけれども、そういう意味で、支援人材の育成の場として非常に重要になってくるということでございます。特に2番目のパラグラフに書いてありますけれども、今後ますます増大する計算科学支援人材ニーズを考えれば、登録機関で研究支援に従事するスタッフの育成だけ行っていては、将来の人材不足は明らかという指摘をしております。
 また、次世代スパコン、戦略機関、大学が連携をして、研究や人材育成を行っていく体制を構築していくことを考えれば、情報基盤センター等主要な計算資源保有機関の技術スタッフが次世代スパコンの知識を持ち、次世代スパコン利用の支援をできる能力を持つことは重要である。このため、登録機関と大学等主要計算資源保有機関との間に人事交流のスキームをつくり、能力が高い計算科学支援人材を数多く育成していくような仕組みが求められる。また、大学等においても、研究支援を行う技術スタッフのキャリアパスとして登録機関、あるいは次世代スパコンの設置者たる理化学研究所を位置づけることを検討すべきとしております。
 次のページでございます。戦略機関について述べておりますが、ここは、基本的には研究拠点として先端的な研究開発の実践の場ということで書いてございます。また、特に、これは分野によっては産業界とのつながりもあるわけですので、産業界の人材育成についても、こういうところで検討していってはどうかということが書かれております。
 3番目に、「大学(情報基盤センター等)」と書いてございます。ここは、3行目の終わりのほうからございますが、「各大学や情報基盤センターにおいては、それぞれが持つ計算資源の能力に応じた人材育成・教育プログラムの実施を期待したい。いずれにせよ、人材育成や教育は、教育機関である大学が中心となっていくことが必要であり、主要な大学が中心となり、全国の大学の教育のハブとなるセンター機能の構築なども視野に入れ、全国的な人材育成体制を構築していくことが望まれる」としてございます。
 以上でございます。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。
 それでは、先ほど申し上げましたように、これに対するご意見等は、米澤先生のお話を伺ってからということにさせていただきたいと思いますので、まずは米澤先生のほうにお願いいたします。

【米澤委員】

 私の話は10分足らずで、あとはご質問その他、中島先生にお願いしたいと思います。
 東京大学で、我々の情報基盤センターが、ハブといいますか、ある意味で中心になって、人材育成プログラムというのをつくって、実際、少しずつ動かしております。これの契機になりましたのは、やはり今度のペタコンもそうなりますけれども、超並列型の計算機であるところの、いわゆるT2Kのマシンを入れるということを決めたときに、入る前から少し、今の教育体制はよくないんじゃないかということで、考えましょうということで、実際は、ちょうど2年前の4月から試行的に始めまして、全学的な教育プログラム、正式なプログラムじゃないんですけれども、学際計算科学・工学人材育成プログラムというのを、平尾先生が当時、副学長でいらしたので、そこに委員会をつくっていただいて、各部局、何人かの関係するところの方が集まってつくり始めました。
 それで、ありますように、関係する部局は、理学系、工学系、情報理工、新領域って柏ですけれども、生研と気候システム研究センターの方々です。ここで、学際計算科学・工学という呼び方をしていますのは、学際というのは、計算科学・工学と、いわゆるコンピュータ科学、計算機科学、あるいは、プラス応用数理科学、数理学、そこのところが、ある程度、両方まざった形での人材育成をやっていかないと、今後の超並列型のマシンのアプリケーションをどんどん効率よく変えていくためには、そういう人材が必要だという、そういう認識のもと。ですから、学際というのは、コンピュテーショナルサイエンスとコンピュータサイエンスの両方にかかっているという意味の学際でございます。それを書いたのがこういうことで、左が計算科学で、右が計算機科学。ちょっとわかりにくくて恐縮なんですけれども。その両方の知見をある意味で駆使しないと、これから先の超大規模スパコンを駆使した大規模シミュレーションというのはなかなかうまく進まないよという、そういうモチベーションでございます。
 先ほど、井上室長から、この資料についてのお話がありましたけれども、その中で、どういう人材をつくるかということを明確にして、それのプログラムをつくっていくかということですけれども、アプリケーション・プログラムを上手に使える人。上手というのは、超並列計算機の上で、ある意味で上手に使えるという。それから、アプリケーション・プログラムを自分でちゃんとうまく書ける人。だから、使える人、書ける人、それから、その計算機システムに関連して、ネットワークも含めて、コンパイラその他の開発もある程度できるといいますか、それができる。よりシステム寄りな人。1、2、3、そういうアプリケーションからシステムまでの間の3つの階層というのを考えて、それぞれどのぐらいの量の人材が必要かわかりませんけれども、それがある程度バランスよくつくれるような人材。
 これは、下に(a)、(b)、(c)と書きましたのは、先ほど、井上室長が紹介された文書のものを大体とってきたんですけど、これ、ある程度、1、2、3と(a)、(b)、(c)は対応していると思います。(a)、(b)、(c)のほうがよりわかりやすい形に書いてあると思いますけど、ちょっとだけ多少気になりますのは、井上室長の文書には、橋渡しをする人材というのと、支援を専門にする人材というのが4番目、5番目という形でありました。それはどういう形、あるいはどういうレベルの人を考えているかというのは、少しまじめに考えて、ちゃんとやっていかなくちゃいけない。ですけれども、我々がやっていますのは、この1、2、3の部分でやりたいということになって、やりつつあります。
 この人材育成については、2つの柱がございます。(1)と(2)、左右に両方柱があるつもりなんですけれども、左側の人材育成というのは、いわゆる講義とか演習とかでカリキュラムに対応する。それの対象者としては、学部、大学院、社会人向けカリキュラム。
 もう一つ、これは、少しある意味で新しいかもしれませんけれども、右側の柱として、こういうつくられた人材が、常にいろんなレベルでつくられていくんですけれども、そういう人が自分自身をある意味でブラッシュアップするとか、1人で学習することができるような、右側にあります大規模並列アプリケーション開発支援システム。それは、今、ある程度、世の中に出ていたりはしますけど、それをきちんと、こういう環境をつくっていく。それを日本中にばらまくとか、あるいは講義でよく使うとか、あるいは自分の勉強で使うとか、アプリケーションを実際に開発している方が、自分のところでそういうシステムを入れて勉強していく。より人を増やしていくという、そういう、ある意味での循環型のプログラムを考えております。
 このカリキュラム、いわゆる人材育成のベースになったのは、ここにありますSMASHという、これはバークレーとか、アメリカの人が考えたり、あるいは、こちらにいらっしゃる中島先生が考えられたりしたものですけれども、SMASHというのは、上から、Science、Modeling、Algorithms、Software、Hardware。アルゴリズム以下は、わりとコンピュータサイエンスに近いとか応用数学に近いアルゴリズムとか、あるいはソフトウエアとして実装する部分、あるいは、それを使う部分。上の2層は、それぞれの応用分野にある原理とか実際のアプリケーションの話。この辺をちゃんと意識しながら、ある意味で分離を意識しながらカリキュラムをつくっていくことになっております。それ、SMASHという言い方をしているみたいです。
 東大のほうは、先ほどありましたように、右側の丸のグリーンの部分は東大の、我々の基盤センターなんですけれども、そこに特任の先生を2年前から何人か、自分たちの使えるリソースといいますか、お金を使って雇用させていただいて、そこの先生方に、工学とか理学系、あるいはそれが共通になっている部分もありますけれども、そこで出張講義をしていただく、あるいは出張演習をしていただく。もちろん、演習のマシンはT2Kマシンなんですけれども。
 そこの左下に、4つ四角がありますけれども、計算機、全くずぶの素人から並列プログラムが書けるまでの道筋が4段階で書いてございますけれども、最終的には、並列プログラミングができるところまでというのを目標にしています。
 最初のマル1、マル2は、リテラシー的なこととか、数値計算の基本的なところ。それから、マル3、マル4というのは、実用プログラムと並列プログラミングのチューニングその他。
 目標としてはといいますか、ターゲットは、博士課程の前までに、だから、修士レベルで、学部も含めて、学部の4年生ぐらいから、それは人によって違いますけど、修士が終わったところで、博士に入ったぐらいで、要するに研究者の卵になりかけたところで、もう並列プログラムがかなりできるようにしておく。それで、さっきのSMASHモデルというのは、マル1、マル2、マル3、マル4の中に、縦糸だか横糸的にそれぞれのモデルに対応する講義を、あるいは演習が入っていると、そういうつもりでございます。
 現在やっておりますのは、まだこの2年間で、上の4つ、3つ、これを2コマ、同じことを違うところでやっていたり、中身は似ていたりする。そういうのを開講して、後で聞かれるといいと思いますけれども、四、五十人とか、クラスによって違いますけれども、それでやっております。スパコンプログラムに係る演習。今だと有限要素法ぐらいしかやってないところがあって、もっと、ほかの粒子法とかいろいろあると思うんですけど。それから、今後は、21年度以降、21年度、もう決まって始めておりますけれども、幾つかの部分はあります。
 これをやっている部分で、もうちょっと充実させないといけない部分がございます。これは、後で中島先生に、実際、こういう講義を並列計算プログラミング、あるいは先端計算機演習で、例えばですけれども、実際やっているところは、理学系の地球惑星専攻を中心にやってきたとか、幾つか例がございます。
 ちょうど真ん中辺に、何人ぐらい受講者がいるかとか、実際、これ、今あるカリキュラムの中に埋め込むので、朝早く8時半からやったり、あるいは夏休みにやったり、春休みにやったり、集中的にやったりという、そういう工夫をしないと、なかなか学生も来にくいんですけれども、でも、工夫をすると、それなりに学生が来てくれて、実際、マシンを使ってやっているという状況です。MPIとかOpen MPとか、そういうのは最低できるようにしてという感じで、この方法はもう少し、もう少しというか、かなりカリキュラムを充実するという話と、さっき言った、2つ目の、こちら、柱があって、右側のほうですね。これもちゃんとシステムを構築するということをやりたいと思っているんですけれども、なかなか大学の概算要求が文科省に通らないので、予算獲得の問題がございますけれども、そういう、いや、別に、今、ここでお金をくれと言いに来たわけではないんですけれども、そういう現状がございます。
 私の話は一応。どうぞ、中島先生。

【土居主査】

 ありがとうございます。
 ただいま、東京大学で現在やっていらっしゃること、あるいは、これから先なさろうとされていることのお話を伺ったわけですが、米澤先生のお話に対しまして、何かご質問ございますでしょうか。いかがでしょう。

【小柳委員】

 先ほど、これ、中島さんにお伺いしたらいいのかもしれませんけれども、1、2と3、4の間に壁があるというような絵があったと思うんですが、ちょっと思ったんですけれども、前半のほうに、いわゆるほんとの基礎的な、並列プログラミング演習みたいなものを入れるという、そういうお考えはない、ないというか、アプリケーションを使ってから、それを並列化するという形で並列化を学ばせるというのがこのコンセプトなんでしょうか。この今のカリキュラム例で。

【中島先生】

 おっしゃるとおりです。基本的に、並列にするためには、もとのものがよくわかっていなければいけないというのがこれの考え方で、逆に、3番のところがちゃんとわかっていれば、実は並列はそれほど難しくないという考え方に基づいています。

【小柳委員】

 ありがとうございます。

【土居主査】

 よろしいですか。
 ほかにはいかがでしょうか。

【寺倉委員】

 二、三聞きたいんですけれども、人材育成、社会人教育というのはあるんですが、これは具体的にどういうことを考えておられるかということと、それから、もう一つの柱というのが具体的にわかりにくいので、少しお話ししてくださいませんか。
 もう一つは、何人ぐらい教官がこれにかかわっておられるのか。もし概数でもわかれば教えてください。

【土居主査】

 いかがでしょう。

【米澤委員】

 これをデザインしたときは、先ほど、集中講義とかそういう形でやると言ったので、それを社会人の方に来ていただいて、特にどこかの大学の教室でやる場合、基盤センターの中でやるという、そういう構想です。実際は、アナウンスをしてないので、ですけども、あとは計算機のアカウントをとるときの、そのぐらいで、それ自身、大きな問題がない。
 それから、社会人がいらしていただくときは、やっぱり会社との関係で、どういう時間帯にやるかとか、その辺をお互いによく理解してやっていかないと非常に難しくなるというので、実際には今、進んでいませんけど、進んでないというか、あまり積極的に動いてないだけで。

【中島先生】

 今のに少し補足しておきますと、もう既に、いわゆる講習会みたいな形ではやっていまして、例えば、去年の秋には、応用数理学会と科学技術計算のためのマルチコアプログラミングというのを共催で、2日開催しました。そういうような試みはしています。今のところ、試験的な段階で、どういうのが効果的なのかというのはよくわかっていないので、まず、そういう、(社会人の方にも)来やすい形でやっていただくというふうにしています。
 2番目のご質問については、これ、細かく説明すると長くなるわけなんですけれども、いわゆる科学技術計算をやっている人にとって、ベクトル機用の最適化をやったりとか、あるいは並列計算機用の最適化をやったりということは、多くの皆さん、皆までやられてきていると思うんですけれども、これ、結構大変なことだと思うんですね。おそらく、これはどんどんこれから大変になっていくでしょうということは考えられます。ですので、なるべくその作業を軽減するというような仕組みは必要になってくるのではないかと思います。
 あと、いわゆる科学技術計算というのは、有限要素法にしても分子動力学にしてもそうだと思うんですけれども、プロセスというのは大体決まっているわけですね。同じようなプロセスを使って計算がされているということなので、そういう共通部分をある程度取り出して、最適化したものをつくっておいてあげれば、基本的にはそれをうまく組み合わせて、理想を言えば、簡単に最適化された並列プログラムができるんじゃないかということでやっています。
 なので、有限要素法なんかでは、わりとそういう試みは今まで成功してきていると思います。なので、これをほかの方向に広げるということと、あと、どうしても今までは、ある特定のアーキテクチャーに対して最適化したものをその都度つくっていくという感じになるので、これをどうやって自動化していくかとか、そういうあたりが、ここら辺はコンピュータサイエンスの力もかりなければいけないところだと思いますけれども、そういう形で提供できればと考えています。
 最後のご質問で、人数なんですけれども、先ほど予算の話もありましたけれども、今のところ、現状の人間でできる限りのことをやっている状態なので、このプログラムにかかわっている実際の教員というのは10人程度です。非常に少ないです。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 どうぞ、中村先生。

【中村委員】

 大変おもしろい仕組みだと思うんですけれども、学際ということでやっても、授業をつくるのは、阪大の例なんかでも、研究科として授業をつくらないと、なかなか単位をあげられないという、そういう問題があって、1回つくれば、その単位はシェアできるという、そういうことになると思うんですが、今の場合、例えば、教員は、やはり理学研究科の地球惑星の特任研究員、あるいはそこの教員ということにどうしてもなってしまうんですか。

【米澤委員】

 いえ、要するに、研究科から見ると、非常勤講師なんですよね。だから、センターの教員が……。

【中村委員】

 所属しているのは、必ずしも理学系だけじゃなくて、工学系にも……。

【米澤委員】

 大部分は。あとは、計算機科学のプロパーの講義とかというのは情報理工学系の方がやっていらっしゃいますし、有限要素法についても、専門家は、工学部にもいらっしゃったり、それぞれの研究科が持っている、あるいは一生懸命箱をつくってもらったんですね。それで、そこにセンターからの先生が行ったり、ほかの先生が行ったり。そこでは学内非常勤講師的な形で。一応、教育ですので、いわゆる大学的な組織論で言うと、センターというのは教育をやってないことになっていて、そうすると、責任部局というのがございまして、それは工学系と情報理工系の研究科長に責任部局をやっていただいて、それから、修士を出すとか博士を、そういう気は全然なくて、あんまりそんなこと、一応、認定証みたいのは出そうかと思っております。

【中村委員】

 単位ではないんですか。

【米澤委員】

 単位もとれますけど。 これの学際上、計算科学修士とか、そういうことはやらないです。

【中村委員】

  ちょっと気になったのは、講義例のところで、工学系がちょっと少ないかなと思って、理学系がほとんど、四十何人という感じだったので、何かそれは、時間割がそういうものになっていたようなことが、特殊事情があったんでしょうかね。

【中島先生】

 これ、すごく特殊な事情なんですけれども、今、私、情報基盤センターにいるんですが、去年の4月まで、4年ぐらい、地球惑星科学専攻におりました。実は、この講義は私がそこでやっていた講義なので、そのせいで理学部の人が多いんですが、だんだんほかのところの人も増えてきています。
 もう一つ、情報理工で有限要素法というのを教えているんですけれども、これはおもしろいことに、半分ぐらいがコンピュータサイエンスの学生で、残り半分は工学系の学生ですね。

【土居主査】

 ほかにはいかがでしょう。
 どうぞ、宇川先生。

【宇川委員】

 こういうときに難しいのは、計算機側の知識なり体験なりだけですと、やはり、ちょっとこういう言い方はよくないんですけれども、無味乾燥になりがちで、実際の応用例ですね。非常に生きた応用例をどういうぐあいにして組み込んでいくかというのが、こういう講義を受けた学生が、実地の力なり知識なりを得ていく上ですごく大事だと思うんですけれども、それがあって初めて、この学際という言葉が生きてくると思うんですね。そういった観点はどうやって工夫されているか、伺えればと思うんですが。
 拝見すると、比較的情報側からの知識提供の色がまだ濃いのかなという印象がございますので、そのあたり、コメントをいただければと思います。

【中島先生】

 そういうふうな受け取られ方をすると、多少心外なところがありまして……。

【宇川委員】

 申しわけありません。

【米澤委員】

 僕のスライドのつくり方が悪い。

【中島先生】

 実は私、もともと、完全に、いわゆる応用サイドの出身なので、基本的にはアプリケーションの話が中心になっています。むしろ、計算機科学の内容が少し足りないんじゃないかと言われているぐらいで、基本的には、理学系、工学系の人が非常にとっつきやすいようなものになっています。私自身、今から十四、五年前に、MPIとか、本を読みながら勉強した口ですので、そのときの体験などをもとに教えているような形ですので、アプリ系の人にとっては比較的とっつきやすいものになっているんじゃないかと思います。
 実際に、今受けている人は修士の学生が多いんですけれども、それを何年かたって、D論で使って、D論が書けたとかそういう話も聞いていますので、そこら辺は、わりと楽観していると言ってはあれなんですけれども、うまくいっているのではないかと思います。
 ただ、私自身はコンピュータサイエンスの知識はそれほどないので、やはりこれからのことを考えると、もうちょっとそういう要素がむしろ必要かなと思っています。

【宇川委員】

 そうですか。そうすると、この資料だけでは見えなかったんですけれども、例えば、例なんかは、いろんな、それこそ生きているアプリケーションを使って講義されていると、そういうふうに理解すればよろしいんですか。

【中島先生】

 そうですね。私の講義は基本的に、プログラムを読ませるということをやっているんですね。ですので、自分が実際に仕事で使っていたやつなんかを、1行1行読みながら講義をしているというやり方をしています。迂遠なようなんですけれども、これが一番効果的なんじゃないかなと、私は今思っています。

【土居主査】

 何かあります? 平尾先生。

【平尾委員】

 いや、コメントなんですけれども、東京大学というのはかなり大規模な大学なんですが、こうした講義、教育体系を組もうとすると、やっぱり人がいらっしゃらないんですよね。1つの研究科とかそういうところで探そうとしても、もう無理なんですよ。今、4つぐらいの組織が、理学系、工学系、あとセンターとか、そういうところが入っているんですが、そういうところから、ある意味では集めてきて、そして、この体系をつくらないといけないということなんですね。
 同時に、学内で、ダブルメジャーではございませんが、こうした全学共通的なカリキュラムに対して、それを単位として認定するという話し合いとか、積極的な方向がないとなかなかこういうのは成功しないと思うんですね。ですから、今、東京大学、ちょうど、米澤先生とか中島先生とかを中心としてスタートしていて、いい方向にいきつつあるので、この経験をやっぱりもう少し広めるということが重要ですし、多分、ほかの大学にも、同じようなことで、いろんな形で連携をとってやるということをしないと、そう簡単ではありませんし、また、人のことを考えても、やっぱりいろんなところが協力しないとやれないようなカリキュラムというか、プログラムでございますね。そのことだけ、ちょっと。

【土居主査】

 ありがとうございます。ぜひ、そういうことを進めていただきたいと思いますのが、それはコンピュータサイエンスもそうなんですが、やっぱり絶対数が少ないんですよね。一番大きい東京大学ですらこういうことが起きているわけですから、あとはそういうことに関してはなかなか難しいという状況になっているわけですが、もう一つ、さっき、寺倉先生が質問されておりましたけれども、並列アプリケーション開発環境だとかミドルウエアの開発整備なんていうのも、我が国初のこういうようなものがないのが、ある意味においてインセンティブがないといいますか、要するに、評価関数が全然違ってしまったりしているものですから、なかなか難しいということ。
 それから、仕掛けをどのようにするかということもなかなか難しくて、要するに、ある意味において、バグつきなものを置いていったら、それで済まされても困るわけですから、そういうようなもののバージョンアップまでを含めた体制等々を、ぜひこの際、東京大学で、うまい仕掛けをつくりつつ進めていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、時間との兼ね合いもございますが、もう一つ、これを踏まえてといいますか、事務局が作成した資料につきまして、資料1ですね。先ほど、井上室長から説明がございましたけれども、これに関してご意見いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 「現状認識」、「求める人材像」というのがあって、3番目で、「HPC人材育成に向けた取組」、その中が幾つかに分かれておりますが、(1)が「次世代スーパーコンピュータ施設」、その次が、飛んで、最後の紙になりますが、「戦略機関」、そして「大学」というようなことの大ぐくりで取りまとめてある資料ですけれども。

【寺倉委員】

 まず、ごく一般的な話なんですけれども、書かれていることの一般的な問題意識というのは、多分、結構共通していると思うんですが、たしか、小柳先生がコメントを出されたと思うんですけれども、実際に具体的なスキームを、これからどうやってつくっていくのかという仕組みがないと、なかなか実現しないということがあるので、その辺のことを伺いたいということ。
 それから、例えば、分野横断的なというのも、これも多分、2つほど問題点があって、1つは、手法的な観点からの、ほかの分野にも影響を及ぼすということがありますけれども、もう一つは、研究分野そのものが、研究の上での異分野間の連携というものがあって、それは必ずしも計算科学だけの話じゃなくて、科学としてのバックグラウンドに意味があると思うんですね。そういう、それぞれのところのイメージをもう少し砕いて、それぞれを実際にどうやって解決していくかということの仕組みを、どのように作っていくのかという問題が一番重要かなと思います。

【土居主査】

 もうそういうところへかかってきていると思いますが、これは……。小柳先生、何かお考えございますか。

【小柳委員】

 いや、特にないというか、この議論の進め方なんですが、この資料は、表題を見ると、「教育利用のあり方」ということで、次世代スパコンをある部分を教育的な目的に使うということは、人材育成のために大変意義があると。それは、委員の各皆さんも異論がないと思います。
 ただ、今問題になっているのは、それを離れて、もっと一般的に、そもそもこういう分野に関する人材養成をどうするかというのを、今、米澤先生なんかも議論されているわけで、そのことは、少しこの教育的利用という枠とは離れて、もう少し独立して議論したほうがいいんじゃないかという感じがいたしているところでございます。

【宇川委員】

 関係するんですけれども、いわゆる次世代スパコンの教育利用となると、資料の(1)のマル1に書かれているような「教育利用枠提供施設として」というようなところが最初に来ちゃうと思うんですけれども、でも、やっぱりもうちょっと幅広い立場に立つと、それぞれのシステムのウエートの置き方というのは当然違ってくるはずで、次世代スパコンは、その観点からマル2が重点になるわけですね。ですから、その意味からも、やはり、もうちょっと視点を整理した上で議論すべきかなと思います。

【土居主査】

 ありがとうございます。
 1つは、教育利用のあり方についてというのが、小柳先生もちょっとおっしゃられましたけれども、これは、ある部分的なところをとらえているわけですので、ある意味において、次世代スーパーコンピュータを念頭に置いた人材育成のあり方とか、何かそういうような、ちょっと広目にとって、そして、その中で幾つかの観点から押さえていくというようなのが必要なのと、では、どこでそれをやるかということになったときに、この場というのは、1つの案があろうかと思うんですが、いろんなものをまだやらなければいけないということ。これも、かなり精力的に、いろいろな立場の人にも加わっていただいた上で、先ほどもありましたカリキュラムだ何だといういろんなものもあった上での人材育成をやっていただくといったことが必要なわけですから、ある意味において、こことは別の場を設けて、何かやっていただくのがよろしいのではないかと思うんですが、ただ、ほうっておくわけにもいきませんので、仕掛けはしっかりした上で進めていただき、やり方は向こうに任せるというような形でいくのがいいのではないかと思っているんですが、何かお考え、聞かせていただければと思いますが、いかがでしょう。
 ここでやるというのはあれですし、この下にワーキンググループをつけてというのも、1つの手ではあろうかと思うんですが、もっと広く、いろいろな方々に入っていただいた上で、我が国での人材育成のあり方、その中の一角として、ここでの教育枠をどうするかというようなことが検討されてしかるべきではないかと思っているんですけれども。

【中村委員】

 基本的に、大変いい提案だと思うんですけれども、人材育成といいますと、企業の人材育成というのも入ってきますよね。そうすると、両方含んだ委員会みたいなもの、そういうものを立ち上げる、そういう理解でよろしいんでしょうか。

【土居主査】

 そのようにすべきだと思っております。この後、伊藤さんからもお話を伺うことになっておりますけれども、産業界の人材育成といいますのが、今、この中にはないわけですので、それも、1つ項を立てて、そういうことを含んだ上で、全体一体としてどうすべきかということを考えるのがよいのではないかと思うんですが、いかがでしょう。
 問題は、どのように、その場をつくるかということなのと、どなたに引っ張ってもらうかということがあるんですが、これは室長、何人かの方にご相談していただいた上で、何かうまい仕組みをお考えいただけますでしょうか。

【井上計算科学技術推進室長】

 そうですね。ちょっと検討しますが、今、土居先生がおっしゃった人材育成全体を考えてというのもいいんですけれども、1つ、我々が考えておりますのは、全体というと非常に幅広い、大きいですね。例えば、文科省の中でも、情報科学技術委員会とか、そういうところでも全体的な検討をしておりますので、例えば、今、次世代スパコンというのが出るのを契機に、どうしようかという話をしておりますので、その中で1つ、今、大きな問題としてご定義いただいているのは、確立、系統立った教育システムをどうつくるかということですね。それに合わせて、こういう次世代スパコンというものも、どう活用して、どう各社が役割分担した体制づくりをするかというのが1つの大きなポイントなので、例えば、そういう部分、そういうことでおまとめいただいたほうが、より議論もシャープになります。あわせて、産業界の人材育成も、同様の、次世代スパコンというものを念頭に置いていただいた上での検討ということでやっていただくのがいいのかなと思っておりますが、いかがでしょう。

【土居主査】

 それはそのように絞りませんと、文部行政そのものを全部引き受けるというわけにもいきませんので。それはそれでよろしいですよね。次世代スーパーコンピュータを念頭に置いた人材育成というようなことで。よろしければ、二、三の先生方とも御相談の上で、ちょっと考えていただけますか。

【井上計算科学技術推進室長】

 わかりました。

【土居主査】

 どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 ほかには、何かございますでしょうか。

【小林委員】

 教育利用のあり方については今の方法で大体いいと思うんですが、そのときに、人材ということで、大体どのぐらいの人数を想定したらいいんですかね。それぞれ、5つありますね。例えば、支援なんていうのは相当な数になるように思うんですけれども、どなたか、そのニュアンスお持ちですかね。このくらいの数だろうという。
 それと、もう一つは、ちょっと難しいのは、橋渡しをされる方の教育というのは、これは東大版でもまだ入ってない。

【土居主査】

 入ってない。4、5がないと言われましたよね。

【小林委員】

 5は何とかできそうな気がするんですが、4をどうやって、我々、考えたらいいのかなというのが問題のような気がいたします。

【土居主査】

 そうですね。米澤先生、中島先生、1、2、3は東京大学でもお考えだというようなことですが、その他のところも含めていただいた上で、今のような、小林先生のご質問に、直接というわけではありませんけれども、おおよそどのようなお考えを持っていらっしゃるかというのを聞かせていただけますか。

【中島先生】

 まず、人数なんですけれども、これはよく聞かれるんですけれども、基本的には、今、4レベルありましたけれども、本学において4まで終わらす人を年100人ぐらいかなと思っています。それでは少ないと言う人もいますし、そんなにできるわけないだろうと言う人もいますけれども、私、大体100人と見ています。というのが、大体アプリケーションって、4種類か5種類ぐらいあるわけですよね。1つのクラスで教えられる人間というのは、大体二、三十人が限界なので、それを考えると、100人ぐらいがいいところかなと思っています。
 今考えている教育というのは、基本的には、この冊子でいうと、1、2、3ですね。スパコンを使える人とかつくれる人までをつくるということが目標です。橋渡しというのは入ってないですね。これをつくるというのは、そこから先の段階になると思うんですよね。ですので、基本的には、そこまでをやった段階で次の人を育てていく。そういう人をどこで養成するかというのは、私は非常に難しいと思っていて、これは非常に幅広い知識が要求されると思うので、1つはやっぱり、実際に実社会で働いた人の中からそういう人を養成していくというのがあるんではないかと思います。やはり科学技術の原理だけではなくて、ソフトウエア工学とか、あるいはチューニングとか、かなり幅広い知識が必要とされるので、むしろ企業で経験があるような人をもう一度再教育して育てるというやり方が1つあると思います。
 あとは、やっぱりダブルメジャーというのは1つのやり方ではないかと思うんですね。コンピュータサイエンスを勉強している人に対して、やはり修士は、ある単位をエンジニアリングのところで勉強させて、そういう知識をちゃんと身につけさせた上で、ドクターのときは、そういう橋渡しになれるような研究をするというような、2通りぐらいが考えられるんじゃないかと私は考えています。

【土居主査】

 ありがとうございました。確かに橋渡しというのは、なかなか悩ましいんですよね。

【小林委員】

 そうですね。

【宇川委員】

 橋渡しは確かに積極的につくるというのはなかなか難しい面があると思うんですね。逆に、にじみ出てくるという側面もあると思って、サイエンスをやっているんだけども、実はコンピュータに関してもすごく興味もあり知識もあり能力もあって、にじみ出てくる。そうすると、そういう人たちがにじみ出やすいようにするためには、やっぱり東大でやっていらっしゃるような基礎的な教育がちゃんとやられていて、耳学問でやるんじゃなくて、系統的にきちっと勉強できる。そうすると、にじみ出やすくなって、残りはキャリアパスの問題なんだと思うんですね。

【土居主査】

 はい、そうですね。キャリアパスが、ほんときいてくるでしょうね。
 時間との兼ね合いもありますので、恐れ入ります、この後、産業利用というのもありますので、この教育利用といいますか、人材育成につきましては、また、この議論を踏まえて事務局で修正していただきまして、次回のこの委員会でまた確認させていただくということにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。中島先生、どうもありがとうございました。
 続きまして、議題2の産業利用についてに移らせていただきたいと思いますが、本日は、企業においてシミュレーションを使った研究をされておられますとともに、スーパーコンピュータの産業利用促進に向けた取り組みを行っておられる有識者の中から、お一方お越しいただきまして、お話を伺い、議論を進めていきたいと思っております。国の経済基盤を担う産業界において、スーパーコンピュータを積極的に活用するといいますことは、産業競争力を強化する上で非常に重要であることは、皆様ご存じのとおりだと思います。産業界におけるハイエンドのスーパーコンピュータ利用を促進していくことが必要でありますし、次世代スパコンの産業利用枠のあり方がその重要なポイントになってくるわけです。
 そういうわけで、委員の皆様方には、産業利用のあり方についてご議論いただく、その論点について、あらかじめ、まず事務局に作成してもらっておりますので、まずは事務局からご説明いただけますでしょうか。

【井上計算科学技術推進室長】

 資料3でございます。「産業利用を考える上での論点」でございます。
 まず、「現状認識」。現在の産業界でのスパコンの利活用の状況はどうか。特に産業界における利用ニーズ。
 次に、「利用環境の構築」でございます。これは、次世代スパコンにおける利用環境の構築ということでございますが、代表的な商用アプリケーション・ソフトウエアの導入、あるいはチューニング等支援の充実、利便性、セキュリティ、共用イノベーション事業との連携など、他の計算資源との連携ということでございます。
 次に、「産業利用枠のあり方」ということで、利用形態でございます。産業界のニーズを踏まえた利用形態ということで、トライアルユースというものを考えていくべきか、あるいは、データパラレル実行とありますが、通常の一般利用では利用を認めないような計算規模のものであっても、産業上の必要性にかんがみ、利用を認めるかといった話があると思います。
 また、成果の取り扱いでございますが、基本的には、既存の共用施設であるSPring-8の考え方というものがありますけれども、次世代スパコンの利用に際し特に検討すべきことはあるかということで、そこにSPring-8の例を紹介させていただいております。成果の公開に当たっては、利用の報告書というものを書くことによって、成果の公開ということで基本的にはやっておる。また、特許等の関係がある場合は、公開延期制度というもの、最長2年というものを導入したりしてございます。
 裏でございますが、利用料金につきましても、基本的には、施設の運営費、光熱水費、保守費、人件費、固定資産税等々、そういうものから利用分に応じて計算された金額ということでございます。成果占有の場合は、そういうもので計算された金額でありますが、成果公開の場合は、基本的には消耗品代を出していただくというような考えになってございます。
 また、成果公開でも、優先利用枠と、時間的に早く使うことができるといったメリットがありますけれども、例えば、科研費等の補助金で、このSPring-8の利用を前提として、評価を受け、グラントを得たようなものについては、成果公開を前提として優先利用を当てるとか、そういったことがなされております。
 それと、最後でございますが、これは、直接、産業利用枠の話とは異なるかもしれませんが、人材育成の話。これも、どうやって産業界の人材を育てていくか、そういうことを論点として挙げさせていただいております。
 以上です。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの論点を念頭に置いていただいた上で、有識者として、本日お越しいただいております株式会社東芝研究開発センター機能材料ラボラトリーの研究主幹でいらっしゃいます伊藤さんからお話を伺いたいと思います。
 伊藤さんは、物性物理をご専門とされておられまして、現在、スーパーコンピューティング技術産業応用協議会の広報委員長もなさっておられます。では、恐れ入りますが、伊藤さん、よろしくお願いいたします。

【伊藤先生】

 スーパーコンピューティング技術産業応用協議会、産応協で、本年度、広報委員長を担当しております東芝の伊藤でございます。よろしくお願いいたします。
 私から、この産応協、以後、産応協と申し上げますけれども、産応協でやってまいりましたお話をさせていただきたいんですが、産応協では、次世代スパコンだけではなくて、ハイパフォーマンスコンピューティング全般を産業界でいかにして活用していくか、それによって、それぞれの企業の競争力を高めるにはどうしたらいいか。そのために、セミナーや、あるいはシンポジウムをやってまいりましたし、お手元にこういう、委員の先生方には、『第三の科学』という、こういう本を配付させていただきましたけれども、これは、昨年度、産応協のほうで、海外のソフトウエアに関して、どういうふうになっているのかということを調べて、それに対して日本はどうしたらいいのかということを、提言という形でまとめさせていただいたものですし、さらに、2年ほど前には、この前のバージョンとして、国内のソフトウエアをやはり調べるというようなこともやってまいりました。
 また、当然、次世代スパコンということがありますので、それに関して、産業界がどういうふうにして使っていけばいいのか、効果的なのかということも、諸機関とともに議論してまいりましたので、その内容に基づいてお話しさせていただきたいと思います。
 今日の話は、実情とあるべき姿、産業界が期待する利用形態、利用目的、形態、成果の取り扱い、課金、ちょっと細かいことになりますが、利用環境。それから、最後に、今、井上室長からもお話がございましたけれども、産業界としても、今、非常に人材の問題がございますので、ちょっとだけコメントさせていただきたいと思います。
 実は私、東芝の研究開発センターでは材料系のシミュレーション全般を見ておりますけれども、その立場から、少し限った形で恐縮なんですけれども、お話しさせていただきたいと思います。
 昨今、特に産業界を取り巻く環境、とんでもない状況になりまして、どうするんだと日々言われているわけですけれども、ここで一番重要なのは、よく言われているイノベーションになります。イノベーションと一言に言いますが、大きく言って2つあって、1つは、プロセスイノベーションと呼ばれているものがあります。これは、例えば、今まで設計や開発に10年間かかっていたものを、次世代スパコンを使うと半年で設計できるとなれば、これは非常に大きなプロセスイノベーションですし、LSIのマスクパターンを今まで1,000パターン流してチェックするというのを、シミュレーションによって、それを10パターンまで絞り込めて、ほんとに流すのも10パターンでいいとすれば、これも、コストという意味では非常に大きなイノベーションになります。
 ただ、こういうプロセスイノベーションというのは、多くの企業では、主に生産部門、俗に言う、昔の言い方で言うと、事業部というところがやっていることが多いんですね。そうしますと、場合によっては、そういう設備というのは生産設備に入る場合があります。例えば、ある電気メーカーの場合ですと、特定の製品を開発するためだけに、地球シミュレータの倍ぐらいある計算機を──あっ、今の地球シミュレータだと、前の倍ですから、今の8掛けぐらいになりますが、それを2年ぐらい前に入れたそうです。ただ、そこで動いているソフトウエアというのは、私がそのとき聞いたのは2本です。もうそのためだけの、そのシミュレーションのためだけの設備ですので、それは計算機というよりは、まさに生産設備になってきていると思われます。
 一方、もう一つのイノベーションとして、昨今のような状況ですと、特に新しいもの、つまり、プロダクトイノベーションを起こして、今までになかったものをとにかくつくって、あるいは、今までになかった価値、バリューイノベーションを起こして、それをとにかくお客様に買っていただいて元気になるというのが、今、製造業では一番言われていることです。決して、リストラでシュリンクするという、それがいいことではないと言われています。
 そういうことを担当しているのは、基本的に、どこの会社も研究開発部門です。東芝の場合は、総合電機メーカーというからこういうことになるのかもしれないのですが、新材料探索からデバイスのこととか、あるいは、こういう衝突の、これは車ということではなくて、例えば、パソコンを落っことしたときに壊れないかとか、そういうシミュレーションも当然やるわけですし、あるいは、セキュリティー技術、社会インフラ、ここにはあまり書いてございませんが、新幹線システムとか原子炉プラント全体とか、そういうことまでやっています。こういうことは、大概、全部研究開発部門でやっているわけです。
 そうすると、研究開発部門でやるイノベーション、やらなきゃいけないイノベーションというのは、ニーズは非常に多様化、複雑化している。したがって、計算機ハード、ソフトともに増大しています。そういう意味で言うと、各社の計算機ソフト、ハード、ちょっと書いてありますが、人材もなんですが、非常に不十分。特に研究開発部門は不十分になっています。研究開発部門に生産部門ほど投資するという会社はありませんので、ここはぜひ、いろんな意味で、次世代スパコンの利活用に、産業界、非常に大きく期待しているということになります。この後の話は、特に研究開発部門でどういうふうにやっていくかということになるとお考えいただいてよろしいかと思います。
 この図は、昨年、文科省でまとめられた作業部会報告にもあります、例の階層的といいますか、スーパーコンピュータもヒエラルカルに発展していくでしょう。一番上に、ナショナル・リーダーシップ・システム、NLSがあり、その次に情報基盤センター等のナショナル・インフラストラクチャー・システム、NISがあり、またその下に、エンタープライズ級のものがあるだろうということになっています。これに対応してというわけではないんですけれども、実は企業のほうもある種のカテゴライズがありまして、それをこういうふうに書いてみました。
 現在、既にESとかT2Kを研究開発部門で使っている企業というのがあります。これを、HPCトップランナー企業と呼ばせていただきます。
 次に、そこまではまだいってないと。PCクラスター、例えば、128ぐらいで今やっていますと。ESもちょっと使ってみたけど、まだまだ難しいかなと、そういう企業があります。これを、HPC中堅企業と呼ばせていただきます。
 それから、HPC、興味はあるんだけども、なかなかできないという、これをHPC新規参入企業と呼ばせていただくと、大体こういうような感じになります。
 当然、下のほうが企業数としては圧倒的に多い。それから、もう一つ重要なことは、HPCトップランナー企業は必ずしも大企業だけではありません。例えば、2年前のSCの日本から出したファイナリストになりました論文の筆頭の方というのは、ソフトウエアベンチャーの方になっています。
 一方、HPC中堅企業という中には世界のトップ企業があって、うちはまだESが使えないとかという、そういうことをおっしゃる、どなたも知っているような世界のトップ企業、日本のトップメーカーの方もいらっしゃる。ですから、会社の規模というよりは、今、こういう状況になっているとお考えいただきたいと思います。
 さて、じゃあ、こういうふうにいろんな状況の中で、産業界が期待する利用形態としてどうあるべきかと、問題に対してこういうふうに整理してみました。
 今申しましたように、産業界は非常にいろいろなニーズがございます。ですので、端的に言えば、そのニーズにいろいろ合わせた形で、やはり利用形態がないとやりにくいかなというのが正直なところです。
 ここにちょっと書きましたのは、産業利用というのを、まず、課題共有型と個別課題型に分けました。課題共有型というのは、これも作業部会報告等で、あるいは、この委員会でもご議論いただいているわけですけれども、戦略拠点、あるいは戦略分野というのは決まっていく。そうすると、戦略拠点において、当然、ものづくりということが関係するのであれば、産業界も当然そこに関係するだろう。そうすると、ここというのは、基本的に戦略拠点の方針に沿った形で課題を共有できる企業が参加してやっていくということになるかと思います。
 ここに、多分参加する企業というのは、ESもT2Kも使ったことがない人がガッとここに来ることはあり得ないので、そういう意味で言うと、先ほどの図で言うと、トップランナー企業がここに入ってくると考えられます。結局、ここでトップランナー企業は、後でも申しますが、戦略拠点と協力して、ほんとに産業界における成功事例をみんなでつくっていくということが、ここでのミッションになるのではないかと思います。
 一方、やっぱりちょっと課題を共有できないという会社は当然あるわけです。だけども、使いたい。その場合、やはり2つ考えられて、1つは、下のほうから説明させていただきますと、特にこれはセキュリティというか、秘匿性が非常に高い企業というのがございます。皆さん、もうご承知だと思いますけれども、製薬というのが、やはりそれが一番高いです。製薬というのは、分子構造がわかった瞬間にもうすべておしまいなので、分子構造は出せませんということに必ずなります。そういうところは、やはり成果非公開を希望して使いたいというところがあります。これももう既にトップランナー企業の中で多分あると思われます。その方々は、やはり非公開で、そのかわり、当然お金を払って使っていただくということになるかと思います。
 一方、そうはいっても、次世代スパコンって世界に1つしかないわけですから、先ほどお話がありましたSPring-8と同じで、この課題に使えるかどうかわからないというトップランナー企業の人も当然いるわけです。ESではできた、だけども、次世代スパコンで持っていって大丈夫かというのは当然あるわけです。私自身も、実はESをずっと使っていて、ESを使う前に、東芝の中にあるPCクラスターで十分コンパイルして、バグがないと。それを持っていってESでコンパイルすると、なぜか通らないということがよくあるわけですね。
 そういう意味で言うと、やはりお試しということができないと、すぐに非公開にするから有償で使えと言われても、ちょっと使えない。というわけで、産業利用枠として、成果を公開して利用する。一種のトライアルユースということをお願いしたい。これは、新規ユーザーの掘り起こしにも重要だと思いますし、当然、無償でやらせていただくのであれば、今のSPring-8のトライアルユースもそうですけれども、基本的に成果は公開でよろしいだろうと思います。
 ただし、ここでは個別の課題なので、当然、使えれば、実際に自分たちで使っていこうと考えていますから、成果公開にするにしても、例えば、特許が登録されるまで2年間はちょっと待っていただきたいというような、これ、今、そういう制度がございますけれども、やはりそういうものもご検討いただきたいと思っています。
 一方、最後に、当然、学術的な分野として、普通に一般利用としてやっていくわけですが、こういう形で産業界の人が応募していくというのも、当然、これはありだろうと考えております。こういう形で、いろんなニーズに合わせて、利用形態を用意していただく必要があるんではないかなと思っております。
 成果の取り扱いなんですけれども、今申しましたように、基本的に成果を公開するのであれば、課金的には無償にしていただきたいなと。利用枠としては、戦略拠点のイニシアチブのもとに、実際にやっていく戦略利用枠。それから、トライアルユース的な産業利用枠という形でやっていくというのがあると思います。
 それから、非公開という形でやる。これは当然、非公開で使わせていただくわけですから、成果を独占するということになるので、有償でやっていくということになると思います。
 実は、企業が使うときに、これ、とても大事でして、知財権に関しては、基本的に発明者帰属にしていただきたいと思います。例えば、戦略利用枠なり産業利用枠として国費が投入されるという場合、それによって無償になるという場合には、日本版バイ・ドール法というか、産業技術強化法ですか、その枠内で企業側に知財権をいただきたいなと思います。これ、逆に言うと、知財権がいただけないとなると、やはり参入してくる企業は非常に少なくなると思われます。
 成果の公開も、これもいたしますけれども、特許という観点がございまして、登録されるまで1年半ぐらいかかるというのが現状ですので、1年半か2年ぐらい待っていただければと思っております。
 それから、産業界が期待する利用形態として、とにかく、今申しましたように、いろんなニーズがございますので、それに対応したアプリケーションというのも必要になります。私どもの聞いているところですと、次世代スパコンに対しては、多分、2種類のカテゴライズされたソフトウエアがあるんだと思います。
 1つは、もう最初から、次世代スパコン向けにチューニングされることが保証されているといいますか、とにかくそれなりのスピードで動くんだと言われているものがあるはずです。ここにちょっと書かせていただいたのは、それに対して、こういう問題点というか、状況だねと。それに対して、こんなふうにして解決したらいかがでしょうかということを書いてみました。
 ご説明いたしますと、まず、チューニングが保証されているものとして、いわゆるグランドチャレンジプロジェクトで進んでいるナノとかバイオのソフトウエアがございます。
 それから、あと、これは東大の生研を中心に行われているイノベーション基盤ソフト。これも、次世代スパコンでも十分動くようなものにするとプロジェクトでは言われております。
 それから、あと、CREST、ここにいらっしゃいます矢川先生や土居先生が研究統括をされているシミュレーション関係のCRESTのものでは、幾つかのものは次世代スパコンに載ると伺っております。
 こういうものは、確かに載って非常に性能が出るんですが、正直申しまして、産業界のさまざまな要求に対して、必ずしも十分でない可能性がある。特に、はっきり申しまして、ロバスト性というと、やっぱりちょっとロバスト性は不安というところがございます。
 あるいは、従来、産業界が使ってきたソフトウエア、当然、新しく開発されているものですから当たり前なんですけれども、親和性がないというところで、若干利用をヘジテートする企業もあるかと思います。
 それに対しましては、もうとにかく、成功事例を積み重ねて、そして、有用性なり実証性、あるいはロバスト性も実証していく以外にないと思いますし、また、普及・教育の推進ということを進めていかざるを得ないのではないか。それには、先ほど、米澤先生、中島先生からもお話がありましたけれども、大学の先生方だけではなくて、最後にもちょっと申し上げますが、産業界も一緒になって、普及・教育活動に取り組めればなと思っております。
 あと、もう一つ、下のほうがあって、これが実は非常に大きな問題で、今後チューニングしていかなければならないソフトウエアというのがあります。1つはインハウス。つまり、各企業が自分たちで開発したものです。これは、ある意味で、チューニングして載っけるということしかありません。
 それから、もう一つは、あと、商用ソフトウエアです。材料系で言うと、有名なGaussianですとか、あるいは機械系ですとLS-DYNAとか、大変有名なものが幾つかあります。
 こういうものに関しては、実はアンケートを産応協の中、産応協というのは、約180機関ぐらいおりまして、そういうところにアンケートをとりますと、やはりこういうものは絶対要るという声が比率的には多くなります。ただし、後で申しますが、実際に、先ほど言ったトップランナー企業の中では、そういうことを言われる方は少ないんですね。それはどういうことかというと、実際にそういう方々は、既にESとかT2Kを使われていて、単純に今まであったソフトウエアをチューニングして載っけるということが果たして技術的にできるのかという、次世代スパコンへの移植の技術的な壁というのがあるのではないかということを気にしている方が多いです。
 それから、あと、商用ライセンスの場合、次世代スパコンに持っていくと、これは単にビジネスモデルだけの問題ですが、今、コア数でライセンスは出しますから、128ぐらいまでが限界、それを例えば10万とか言った瞬間に何億円とかってなってしまって、何をやっているんだかわからないということになるわけですね。そういう意味では、ライセンスの問題があります。
 それから、あと、今申しましたように、商用ソフトウエアが搭載されれば、新規参入企業にとっては、その障壁が非常に低くなります。ただし、新規参入企業が一気に次世代スパコンを使うということが果たしてどうなのかというのは疑問があるかと思います。
 下に書きましたが、これに対する、こんなことがやっぱり必要だろうということで、まず、インハウスソフト等に関しましては、移植に対する十分な技術支援というのはやはり必要です。やはりこれは、実際に計算機を開発していただいた方々でないとわからないことがたくさんあると思います。
 また、ライブラリーの提供がなされていると、かなりの部分、移植しやすくなります。私も、今、ES、できてから、いろんなライブラリーをつくっていただきました。そうすると、自分たちのソフトウエアでアイスパック(EISPACK)のところをすぽっと入れかえるだけでがんと速くなるということが随分ありましたので、そういう意味では、次世代スパコンに向けたライブラリーがあると、かなり移植がしやすくなるのではないかと思います。
 あと、先ほどのライセンスの問題とか、商用ソフトをほんとうに載っけるかという意味では、これは当然、ソフトウエアベンダーの協力が必要で、これがないとちょっとできないかなと思います。
 こういうところには、幾つかのものには、やはり、例えば、ライブラリーを新たに開発していただきたいとかそういうこともありますので、いろんな意味での支援。例えば、国としての支援というのもいただければなと思っている次第です。
 ちょっと細かい話になりますが、利用環境として、次世代スパコンセンター、神戸にできるわけですが、そこで検討していただきたい要件というのを幾つか挙げてあります。
 1つがセキュリティの問題です。これは、作業個室を置いていただきたいとか、入退室管理をしていただきたい。それから、多分、持ち込みサーバー等があるんだと思うんですが、私もあまり、実はESを使っていて、ESにも上の2つはあって、3番目の持ち込みサーバーもできるんですけれども、1回もウイルスチェックをしろと言われたことがなかったので、ほんとうにしなくていいのかなとか思うわけですね。
 それから、あと、これは後で申しますが、ポスト処理に関しては非常に高いセキュリティーが要ります。最初にも言いましたけれども、製薬企業というのは非常にセキュリティを高く要求する場合があります。いくら高めても、結局使わないと言われちゃうんだという、そういう話も、正直言って、あるんです。
 そこで、我々としては、これは製薬企業の方も言われていたんですが、リスクアセスメント、これ、よく、安全衛生管理で企業では当たり前にやるんですけれども、職場のリスクアセスメント管理といって、リスク要因を洗い出して、分析してという、そういうことをしていただければ、その後、それをどうするかは企業側で考えますし、ここのところ、こういうふうに改善してくれるともっといいんだ。そうしたら、使う。そのときお金が要るんだったらば、言い出した企業が払えばいいということもあるので、このリスクアセスメントのやり方は産業界得意ですので、こういうやり方を神戸のほうで一緒になってできればいいかなと思います。
 それから、遠隔利用は、神戸ですので絶対に必要です。VPNとかssh等によるリモートアクセスは絶対必要ですし、商用インターネットで結構ですが、回線をつないでいただくことは必要です。
 それから、フロントエンドの整備というのは、これ、要するに、神戸まで行かなくても、先ほども申しましたけれども、私もESを使っているときに、自前のところでやっていて、うまく通って、ESに持っていったらだめということが結構あるので、それが確認できるようなフロントエンドがどこかにある。例えば、想定しているのは、戦略拠点ですとか、あるいはNISのようなところですとか、そういうところでこういうことができないか。
 その次に、データ郵送システムと高速ネットワークが薄字になっているのはなぜかというと、これは、産応協の中でも、パワーユーザーにいろいろヒアリングして、一番議論が分かれるのはここなんです。私はナノ系をやっておりますので、今、ESで、大体ギガバイトから数十ギガバイトぐらい吐き出すわけですね。ちょっともう転送がきつい。次世代スパコンだったら、とてもじゃないけど、今の商用ネットじゃきついので、高速ネットワークが欲しいという、そういうスタンスです。
 ところが、私以上にでかい計算をやっている流体の人たちがいます。既に、地球シミュレータで数百ギガバイトを吐き出していますね。当然、次世代スパコンになるとテラバイトを吐き出すことは明らか。もう最初から転送できない。郵送でいい。そのかわり、データを落とすのは、1晩、2晩かけてディスクにガーッと落とすから、高速ネットワークは要らない、そういうことになっています。
 確かに、高速ネットワークは膨大な投資になってしまうので、この辺はやはりよく考えなきゃいけないので、産業界といっても、絶対これがないと使えないというわけではなくて、意見としてこういう意見があるということをちょっとコメントさせていただきたいと思います。
 それから、あと、プリ・ポストなんですが、次世代スパコンに見合う強力なプリ・ポストが必要です。それで、ここの右に書いてあることがこれまた重要でして、特に郵送でいいと言っている人は、なぜ郵送でいいと言っているかというと、リアルタイムで転送されても、数テラバイトあるデータをハンドリングできるマシンが社内にないと。これが動き出すのは3年後ぐらいですが、3年後でも多分ないだろう。多分、数百プロセッサぐらいが精いっぱいです、その時期に企業で持てるのは。そうすると、やっぱりプリ・ポストまで神戸で行いたい。そうすると、ポスト処理というのは、例えば、いろんな材料をスクリーニングするために、いろんなことを計算する。ここは、比較的セキュリティが、甘くてもいいと言うと問題があるんですが、甘くてもいいんですが、そこで何をやって、どの物理理論に着目してスクリーニングしているんだということは、これは結構秘匿性が高いことになります。したがって、インタラクティブな遠隔利用ができるということは、同時に、このポスト処理システムでの高いセキュリティーをお願いしたいということになります。
 それから、次、利用環境として、今、次世代スパコンセンターのことだけを申しましたけれども、やはりシームレスな利用環境をお願いしたいと思っています。これは、左側に公的機関、先ほどの階層のものを書きましたけれども、NLS、NISがあるといたします。それから、大学の研究室。産業界側では、先ほど申しましたように、トップランナー企業、HPC中堅企業、新規参入企業、こう書きます。戦略拠点なり戦略分野を通して、次世代スパコンを使う場合は、次世代スパコン向けのアプリを使うと、こういう使い方になるんだろうと思います。ここを一気に使っていく人、これがいるはずです。これは、産業利用枠というのを使ってやっていくだろうと思われます。
 こういう人たち、それから、この下の、もう少し規模の小さい人たちは何をやるかというと、最初に申しましたように、とにかくイノベーティブな成功事例を出す。ほんとうに次世代スパコンを使うと、これだけプロダクトイノベーションができるという、そういう事例を出していきたいと思っています。
 一方、中堅企業の方とか新規参入の方々、この方々がいくらこういう仕組みをつくっても、一気に次世代スパコンにいくとは到底考えられません。そうすると、まずは、例えば、使ったことがある方は、もうちょっと規模の大きい情報基盤センター級のものを使ってみると。ここで重要なことは、ここで商用アプリを情報基盤センターで入れていただけると、商用アプリと次世代スパコンの比較というのは、レーティングという意味じゃなくて、我々はこの商用アプリになれているわけです。そこで、こうすればこんなことが出るねということがわかった上で、じゃあ、次世代スパコン向けのアプリを使ってみると、あっ、こういうふうになるんだ、こういう対応関係がつくんだということがわかると、ここからこれを経由して、ここでソフトウエアを乗りかえて、上にジャンプアップすることができます。こういう仕組みをぜひ考えていただければなと思っています。
 それから、あと、新規参入に関しては、ここまではなかなかいかないので、大学の先生方と共研させていただいて、技術を積ませていただいて上に上がっていくという形です。
 ここのところに関しては、現在、共用イノベーション事業というのがございますので、それをうまく使って利用したいし、それから、あと、共研という意味でいうと、ここでやっていくと。こういうことによって、産業界におけるHPC技術の底上げというのをやっていって、どんどん上に上がっていくというふうにしたいと思っています。
 それから、これが、ある意味で言うと、空間的なシームレスな利用環境という意味だとしますと、もう一つ、産業界にとって重要なのは、時間的な意味でのシームレスな利用環境というのがあります。製品のサイクルというのは、もちろん短いものもありますけれども、端的に言えば、原子力発電所が一番長くて、30年あるわけですね。最近はあまり言われなくなりましたけれども、一昔前は、計算機が変わっても同じ結果になるような計算機でないと原子炉の設計には使っちゃいけないとかということがあって、大変だったわけですけれども、今、大分変わりました。
 ただし、ハードウエアの寿命よりはソフトウエアの寿命が長いということは当然考えられます。現在、次世代スパコン向けにいろいろなソフトウエアが開発されておりますけれども、多分、次に次々世代となったとしたときに、また一からつくり直しというのだと、産業界はせっかく、先ほどのように、商用から次世代スパコン用のアプリに乗りかえて、使えるとなったにもかかわらず、また乗りかえなきゃいけないとなると、これもどうかな。ぜひそういう意味では、うまくそこをミドルウエア的に吸収できるような仕組みがあると、つまり、商用ソフトを一番安心して使うのはここの点でもあるんですね。つまり、今後ずっと、会社がつぶれない限りソフトは続いていくというのがありますので、そういう意味で言うと、こういう形で、時間的にもシームレスな利用環境というのをお願いしたいと思っています。
 最後に、ちょっと趣旨からずれて恐縮なんですけれども、ぜひご検討いただければと思うのは、やはり人材です。先ほど、米澤先生の資料にもあったのと非常によく似ているんですけれども、やっぱり産業界側でも、適切にシミュレーション技術を用いることができる人材というのが必要です。これは、適切にというのが大変重要でして、要するに、我々は、とにかく解かなきゃいけない課題というのがぼんぼんぼんぼん降ってきます。それに対して、場合によっては、GaussianなりLS-DYNAをブラックボックスで使ってもいいんですけれども、間違いなく、LS-DYNAが保証している範囲内できちんと使って、それで膨大な結果が出てくる中から、今、設計に必要なものは何なのかというものを抽出できるということが必要なんです。そういう人材が必要。これ、順番に書いたのは、上の人材が多分、産業界ではマストとして一番必要だという意味です。
 それから、2番目に、やはり最適なソフトウエアを開発できる人材も必要です。これからやっぱり、私自身もそうなんですが、自分で書いたことのあるプログラムって、せいぜい数百コアぐらいまでしか動かなくて、多分、1万とか10万になったら、一からつくり直しなんだろう。そういう人材をきちんとつくらないと、産業界側も必要だと思っています。
 それから、次世代スパコンが動き出すころになると、NISレベルの計算機というのは、トップランナー企業の中には入っていくと思います。そういうところでは、やはり次世代HPCシステムに精通した、支援者というとちょっと言葉があれなんですけれども、これ、技術者としては非常に高い技術を持った人でないと困るんですが、開発支援者。あるいは、超大型システムを効果的に運用できる人材というのが、やはり必要です。
 現在、その下のほうに、ちょっと細かい字で恐縮なんですけれども、HPC技術の産業利用促進のために教育活動していただくということで、産業界も一緒になって、あと、米澤先生の情報基盤センターですとか、あるいは東大生研ですとか、それから、あとJAMSTEC等々、協力して、今年度からHPC産業利用スクールというのを開催しようと思っています。
 産業界の人は、とにかく、こういう教育って、全部今までOJTでやっていたんですね。OJTって、もうせっぱ詰まってやりますから、確かに身につきます。OJTでやったことは身につくけれども、ほかは何にも身につかない。そうすると、次の問題になった瞬間に、またOJTになってしまう。やはりきちんと体系立った教育を受けていただく必要があります。
 ただし、こういうスクールではOJTを念頭に置いているので、つまり、最初にまず、成功事例ですとか、ここでは山登りに例えて、これだけ山に登ると、こんなきれいな景色が見える。それは、こんな計算をするとこんな結果が出るみたいなことを一応お話しして、それで、じゃあ、登るためにはどうするかみたいなことをやろうと思っています。
 ここでは、東大の情報基盤センター、T2Kの協力を得て、1,000コアぐらいを使わせていただくとか、あるいは、地球シミュレータを使って、1,000コアぐらい使ったらどうなるのかみたいなところまで手を動かしてやっていただこうと今考えているんですが、ほかにも、ナノのグランドチャレンジ、あるいは理研の生命体等々でやられていますが、こういうところも産応協、一緒になってやっていこうと今思っていますが、こういう教育には、ぜひ、先ほどお話がありましたスパコンセンターなり、あるいは戦略拠点の教育、人材育成に、うまくスムーズにつながっていっていただけるといいなと思っています。ぜひそういう意味で、次世代スーパーコンピュータセンター、あるいは戦略拠点が、科学と工学が出会う場となっていただけると、産業界としても非常に心強いと思っています。
 今日の話をまとめますと、産業界に関しては非常に幅広いユーザーがおりますので、多様な選択肢の設定が望まれます。HPCを既に活用しているトップランナー企業から、未体験の新規参入企業までおりますし、それから、正直言って、オープンイノベーション志向から囲い込み戦略、いろんな企業がおります。
 ですので、適切な選択肢があれば、産業界はそれぞれの状況に応じて利活用してまいります。特にトップランナー企業は、戦略利用枠なり、あるいは産業利用枠を利用して、成功事例をとにかくつくる。そして、使ってないほかの企業がうらやむような結果を出せば、絶対にみんなが使うんですね。また、トップランナー企業、あるいは中堅企業がHPC技術を底上げして、新規参入を促進していきたいと考えています。
 それから、産業界としては、効果的かつ効率的なシミュレーション環境を期待しておりまして、特にトライアルユースの充実とか、あるいは空間的にも時間的にもシームレスな利用環境。それから、産官学一体となった人材育成ということにお願いできればと思いますし、それから、我々としても、我々としてもって、ちょっと口幅ったい言い方ですが、少なくとも産応協のメンバーとしては、このようなことに積極的に関与していきたいと思っております。
 以上でございます。

【土居主査】

 大変重要な点をご指摘をいただきながら、含蓄のあるお話をありがとうございました。
 まずは、ただいまの伊藤さんのお話に関しまして、何かご質問等ございますでしょうか。

【小柳委員】

 大変示唆に富むお話で、特に、今、そこに出ていますシームレスな利用環境ということについて、ちょっとご意見を伺いたいんですが、先ほどの最初の図にもありましたように、産業界にもいろんなレベルがある、トップランナーから新規参入まで。そして、やっぱり考えてみると、トップランナーの一部は別にいたしまして、多くの企業にとって、自分たちの持っている、例えば100、将来は1,000コアぐらいは普通になるかもしれませんが、そういうハードウエアと、この次世代スーパーコンピュータであまりにもギャップがあり過ぎると。だから、シームレスにそれを移行するには、何かそれを誘導するシステムないしハードウエアないし、何かが必要だと思うんですが、そういう点については、伊藤さんのところで何かお考えがあるでしょうか。

【伊藤先生】

 そういう意味では、実はここで一番重要な役割を果たしていただけるのではないかと思っているのが、ここのNISのところだと思うんですね。ここでうまくいっているものだけがと言ったら失礼なんですが、だけが、多分、上を使うことができるんだと思うんですね。もちろん戦略拠点の場合には、これは戦略拠点のご方針、あるいは一緒になって共同でやっていきますので一気にいくと思うんですが、私、このパスは非常に少ないのではないかと正直思っています。まずは、ここできちんとやっていって、それで次世代スパコンを使っていくということになるんだろう。
 その意味で、ここで書きましたフロントエンド機能として、ここをうまく、うまくと言うとあれかもしれません。うまく使えればいいかなと思っている次第です。そこで、アプリも、ここで二重に重ねたのはそういう意味でもございます。

【土居主査】

 今のようなことだとしますと、米澤さん、以前に文科省のほうでも、今、九州大学の総長になられた有川さんをトップにして、いろいろなことを考えていただいたというのがあるわけですが、そういうことに関しては、ある程度といいますか、かなりの協力を得られるものだと理解していたんですが、よろしいんですよね。

【米澤委員】

 もちろんできる限りの協力はいたしますけれども、多少心配なのは、例えば、T2K、今我々のところにある、あるいは筑波もそうですけど、もうかなりいっぱいなんですよ。もちろん共用イノベーションとかもやりつつ、いっぱい。それを含めていっぱいなんですけど。ですから、なかなか難しいところなんですけれども、NLSとNISで、全くおっしゃるとおりで、NISでいろいろ準備して上に載せるというのがほんとうのやり方で、そのパスがなるべく太くなるといいという気がします。

【土居主査】

 そうそう。極めて重要なので、これはまた別途、何か考えなきゃいけないことが起こるかもしれませんね。

【小柳委員】

 私、もう一つ考えたのは、あるいは、伊藤さんから出てくるかと思ったんですが、次世代スパコンセンターの中か、すぐ外かは知りませんけれども、エントリーマシンがあったらいいんじゃないかと。そうすると、まあ、どのくらいの規模のものかはわかりませんけれども、テスト、人材育成。もちろん人材育成といっても、産業界だけじゃなくて、アカデミアの人材育成も含めてですが、そういうようなことというのは、これもお金のかかることですから、欲しいと言ってできるものではないですけれども、あったらいいんじゃないかという気もするんですけれども。

【伊藤先生】

 先ほど、強力なプリ・ポストが欲しいというお話をしたと思うんですが、これはやはりそういうことですね。ポストは当然だと思うんですが、プリも実は非常に問題で、流体解析等で膨大なメッシュになる。それを、地元、手前で膨大なメッシュをつくって送るかという話もありまして、そこもやっぱりそっちでやるだろうと。そうすると、エントリーマシンとはちょっと違うかもしれないんですが、プリ・ポストという意味では、やはり、つまり、次世代スパコンが1台だけあればいいのではないと思っております。

【中村委員】

 今のこともあって、大学センターとか公的研究所が、まずそこで動いてというのはよくわかるんですけれども、当然そこで動くためには、同様にセキュリティのアセスメントも必要ですよね。今のすべての大学の情報基盤センターがそれをやらなきゃいけないとか、もう一つはライセンスの問題がありまして、商用のプログラムは、アカデミアだから非常にディスカウントされて、それぞれの情報基盤センターが購入しているという面があるんですが、それが企業の方も使うんだよというと、非常に面倒くさいもので、厄介な問題が起きて、大学の中の人間さえ使えなくなってしまうとか、非常に金額が高くなってしまうとか、いろんな問題が具体的には起きると思うんですね。ですから、やはり次世代スパコンの1つ前の段階のものというのは、実はほんとうは産業界のほうで、何か1つそういうものをつくっていただいて、あるいは、それは経産省のほうがほんとうはサポートするほうがいいのかもしれないんですけれども、そういう枠組みがあって、その上に次世代があるというほうがほんとうはやりやすいかなと思ったんですけれども、どうでしょうか。

【伊藤先生】

 私、財団の人間ではないのですけれども、財団とも定期的に産応協は連絡をとっております。財団の話を伺っていると、向こうでやはり、近くにセンターのようなものをつくって、そこにミニスーパーコンピュータを入れようという話はあるんですね。規模が全然違うんですけれども。そういうのを、教育とか、ちょっとお試しに使うような、そういう話はあります。ただ、それ以上、こちらのほうで、今どうこうという話は、特にはまだ動いてございません。
 それから、今、先生ご指摘のとおり、結局、商用ソフトに関しては、やはり産業界側が、ほんとうにお願いしたいというのであれば、こちら側がベンダーにいろいろとお願いして、やっぱりやっていく。それの動くのはやっぱりユーザー側だと思うんですね。先生方に全部用意していただいて、使いますというようなのは何かおかしいのであって、やっていただくんだから、それをやるのは、多分こちら側、産業界側のきっかけはそうかなと考えております。

【米澤委員】

 非常に微妙なことなんですけれども、我々のセンターですと、大体1,000ノードぐらいのもの、完全に同時に使う時間、要するに、物理的な分け方と時間的な分け方がありますよね。例えば、月に1回、2日間は1,000ノード全部使って、そうじゃないときは256ノードと64ノードを2つとか、そういう運用でやらざるを得ないので、そういうのをわりと、まだあんまりここの委員会で議論されてないですけれども、実際、ペタコンがある程度見える段階で、今度、ある意味で、システムがユニフォームになったので、どういう運用の仕方をするかというのは1回真剣に考えて、それの考え方によっては、今言われていることはある程度はできるかもしれないです。

【土居主査】

 ありがとうございました。もうどこかの点で、今のようなことは真剣にとにかく考えた上で、向こうのスケジューリング等々やらなきゃいけないと思っておりますが、ほかにはいかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 あとは、論点というのが、資料3がありますが、今の伊藤さんのお話も踏まえて、この論点に沿ってご意見をいただければと思います。論点、これ、極めて要点だけが列記されている形になっておりますので、これをどのように間を埋めていくかというのが必要なわけですが、ただ、そのときに、今も多少お話しいただきましたけれども、産業界のニーズとしてほんとうにどのようなものがあって、今、話題になっておりましたような利用環境だとか利用形態だとか、そういうものを踏まえた上で、産業利用枠というのはどうあるべきかというようなところへ、とにかく落としていかなければいけないということと同時に、これも先ほど来のセキュリティー等々がありますと、今、建てつつある建屋をどのようにするかというようなところへもフィードバックしなきゃいけないというようなこともありますので、簡単な話ではないと思いますが、何とかやらなきゃいけないと思っているんですが、差し当たって、この論点に関しまして、現状認識というようなところ、あるいは利用環境の構築、産業利用枠のあり方というようなことで、最後に人材育成というようなことがありますけれども、どこからでも結構でございますので、ご意見をいただければと思いますが、いかがでしょう。

【小柳委員】

 先ほどの伊藤さんの話の中で議論されている、この論点に出てないこと、特に環境の点ですが、つまり、ユーザーにとっての環境という問題がここに書いてありませんけれども、それを入れていただくといいんじゃないかと。これは、センターがやるべきなのか、その周辺の関連組織がやるべきなのかはいろいろあるかと思いますけれども、とにかくユーザーにとって使いやすい、あるいはそういうセキュリティ上の問題のない環境といったことは当然考えていくべきではないかと思います。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょう。
 利用環境というところに関しましては、今、ちょうど出していただいている表を、ここのところへできる限り取り込ませていただいた上で、充実させる必要があろうかと思います。

【米澤委員】

 あんまり大したことじゃないんですけど、さっきのセキュリティの話で、例えば、最近、我々のほうでも、共用イノベーションで民間の方に使っていただくということがあって、セコムの認証みたいな、セキュリティーレベルの認証みたいのをやったりしたんですよね。そうしないと、ご心配でしょうからという。それは、そんな大したことはしなかったんですけど、次世代スパコンでどのぐらいのセキュリティーレベルが、どこまで必要かというのをよく考えて、それもそんなにコストがかからないでできるんじゃないかという気がしますけどね。でも、よく考えないといけないと思います。そのほうは、全然まだ頭がいってないので。

【土居主査】

 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。

【寺倉委員】

 人材育成のことなんですけれども、多分、伊藤さんもきっちりした教育を受けさせるということを言われたんですが、現在、企業にいる方にきちっとした教育を受けさせるという仕組みは、多分、実行するのは非常に難しいと思うんです。その仕組みを公的な機関と相談しながら、何かつくっていかなきゃいけないと同時に、大学でこれから育てていくいろんな人材が、キャリアパスとしてどういうふうに企業に生かしていくのかという議論をすることが、さっきの小林先生の、何人ぐらいそういう人材を育てるのかということと関係して、非常に重要な問題だと思うんです。そういうことを議論しようとすると、大学での教育の中で、既に何らかの形で企業の意見が反映されるようなものが必要な気もするんです。逆に、教育で沢山人材を育てても、先に行くところがないということになったら非常に困るわけで、そのあたりの問題点を、やっぱりどこかできちっと議論しないといけなくて、それは、さっきの教育の委員会ができるのであれば、キャリアパスの問題というのはきちっと検討していただく必要があると思います。

【土居主査】

 そうですね。キャリアパスをちゃんとしておきませんと、人として来にくいというか、来てくださらないというようなことになってしまうと大変なことですので、そういう点を踏まえて検討していただく必要があろうかと思います。ともかく、我が国はキャリアパスというか、動きにくいというか、モビリティーが極めてない国なものですから難しい面が多々あるとは思うんですけれども、やっぱりそうも言ってられませんし、今後はそういう展開を求めていかなければいけないと思いますので、それはぜひ検討していただく必要があろうかと思います。

【中村委員】

 かなり当たり前のことなので書いてないということだと思うんですが、産業利用枠のあり方というところに、計算機資源を産業枠にどう割り当てるのかという、そのバランスというのは非常に重要な問題で、例えば、費用を払っていただけるという、そういうところがあったら、じゃあ、ちょっとたくさん使ってもいいんですかという、そういうことまで起きかねないですね。ほかの教育枠であるとか一般枠、戦略と、いろいろありますので、どういう観点で産業枠というのを考えるかというのも、やはりこれはきちんと議論しないといけないことだと思います。

【土居主査】

 全体のいろいろな枠に関しまして、先ほどの教育もそうですが、要するに、基盤としての整備をしてもらうために、理化学研究所にというようなものもありますし、それから、戦略のがありますし、一般のもあるわけですから、そういうところの枠組みをどうするかということに関しては、この場できっちり決めていただかなきゃいけない事項ですので、いずれさせていただきたいと思っております。お願いいたします。
 前にやりました作業部会なんかも、産業界の方に、あのときは3人ぐらいの方にお入りいただいたんですが、要は、先ほど来、伊藤さんのお話もありましたけれども、商用のソフトをとにかく載せてもらわないと、我々、使えませんということとか、ライブラリーを整備してもらえませんと、我々、使えませんという声がかなり強かったんですよね。ですけれども、もうとにかくスタートするときに、なきゃ困るということだとすると、またそれまでにどうするかというようなことだとか、あるいは、あまりおくれても、やはりお困りになるようですしというようなことがあって、そういうような観点から、やっぱり産業界の方々と、学といいますか、研究者との共同での作業をいかに進めるかというのも重要な観点だろうと思うんですね。ですから、そういうことに関しましては、伊藤さん、どのようなことを考えればよろしいでしょうね。

【伊藤先生】

 ちょっと細かい話ですが、商用パッケージの件に関しましては、先ほども申しましたとおり、現状でパワーユーザー、トップランナー企業のユーザーに伺うと、さほど強い要求は出てこない。ただし、これは、今、先生がおっしゃったように、時間軸の問題だと思うんですね。じゃあ、ずっと要らないのか、ずっとどこかで乗りかえてくれるのかというと、やっぱりそうではないと思うので、どこかでその議論はしていく必要がある。やはり代表的なものが載っかれば、確かに中堅企業が使いやすくなるのは間違いないので、そういう時間軸は必要だろう。それは、必ずベンダーを巻き込まなきゃいけないので、そのトリガーは、先ほど申しましたように、やはりユーザーとなる企業側から、まずはきっかけをベンダー側に出すのかなという気がいたしております。
 それから、あと、後半のかなり大きなお話で、大学の先生方と我々産業界がどういうふうに連携していくかということなんですが、今、産応協のほうでは、幸いにも、ナノのグランドチャレンジ、理研のバイオのグランドチャレンジ等で、いろんな形で協同の場というのをつくらせていただいております。こちら側からいろいろお願いして、こういうふうにしていただくといいとか、あるいは、ナノのほうで言えば、公募研究のような形で、昔のように非常に厳しい共同研究ではなくて、比較的、緩いと言うと、またちょっと問題があるんですけれども、でも、緩い形で、参画しやすい形で一緒にやらせていただくという枠組みもあります。
 また、東大のほうでは、特に東大のイノベーションのほうでも、同じように、ユーザーとして、企業の人たちが入ったワーキンググループというのを幾つもつくらせていただいております。そういう形で、かなりロードマップ的なんですけれども、実作業のレベルではかなりできてきているのかな。あとは、先生がおっしゃったみたいに、大きな方向、それをどういうふうにしていくのかというのは、ぜひここでご議論いただけると大変ありがたいなと思っております。

【土居主査】

 実作業としての、先ほど、ありがたいとおっしゃったライブラリーの整備等々、そういうことに関しても、ほんとうに力作業をやらなきゃいけないというのがあるわけですが、産応協なんかは、そういう場としては期待できる場ですか。

【伊藤先生】

 大変お恥ずかしいところがあって、なかなかそれは難しいと思いますが、ただ、産応協の中には、もちろんコンピュータベンダーの方もいらっしゃるわけで、受け皿になると言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、受け皿のポテンシャルはあるかもしれないという形です。
 それから、やはり産応協に入っているアクティブに活動している人間は、とにかくこういうものをうまく使って、うまく自分たちの、自分たちというのは、自分の企業だけではなくて、産業界でうまくやっていきたいと考えていますので、技術的にも可能な限りはやはりご協力させていただきたいと考えております。

【土居主査】

 ぜひそういうこともお考えいただかなければ、うまくいかないんじゃないかという気がしますので、よろしくお願いいたします。
 ほかにはいかがでしょう。よろしいでしょうか。
 まだ、先ほどの利用環境の構築等は、伊藤さんのスライドから拝借してきたり、いろいろなところ、拝借させて、この場をかりて、ちょっとお断りをしておく必要があるかと思いますが、拝借させてください。それで、お役に立つようなことを考えさせていただきたいと思っておりますので。また、メール等でも、委員の皆さん方にはお願いするということになろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように、産業界のニーズ、それを踏まえて、利用形態どうあるべきだ、それから、利用環境がどうあるべきだということ等々をきっちりやった上で、それでは産業利用枠どうするんだというようなことをしっかり考えなければいけないと思いますので、また引き続き、この話題はこの場で検討させていただきたいと思います。
 そのときには、伊藤さん、またご面倒をおかけするかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
 それでは、そろそろ時間になりますが、そのほか、何かご質問、ご意見等ございますでしょうか。

【平尾委員】

 ちょっと確認したいんですが。

【土居主査】

 どうぞ。

【平尾委員】

 非常に課題が多くて、考えないといけないことがたくさんあるんですが、例えば、今日の教育枠とか産業利用枠というのは、一応、既に資料として出ている案がございますよね。これに少し修正したり、あるいは肉づけをするというような形をしていただいて、そして、もう一度委員に何らかの形で回していただき、こういう場でもう一回議論する機会はあると考えていいんですね。

【土居主査】

 はい。と思います。特段、産業とか人材というのは重たい話題ですので、やるつもりでおります。

【平尾委員】

 はい、わかりました。

【土居主査】

 どっかで、これとこれとこれとはこういう段取りでやらなきゃいけないというのを全部そろえておく必要がある。ロードマップじゃないですけれども、やる必要があると思うんですよ。

【平尾委員】

 実は、同じように議論しないといけない、例えば、登録機関の問題とか、時間をどういうふうに割り当てるか、いろんな問題、こういう問題とかなり重なっているんですね。これだけ先に独立してやって、その後、これをやりましょうというわけにはなかなかいかなくて、ですから、私、一たんどっかでまとめるというのはいいんだと思うんですが、また、もう一度返っていただいて、全体がうまくconsistentにいくようにお考えいただければと思います。

【土居主査】

 そうですね。縦横にこんがらがってくるものがありますから、そうさせていただきたいと思います。
 よろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。
 次回は、今のことを踏まえて、産業利用の一たんの取りまとめと、それから、今、平尾先生からも出ましたが、登録機関の業務について、ちょっと入り口のところを検討させていただこうと思っております。
 その他は何かございますか。事務局から何かありますでしょうか。連絡事項等ございますか。

【事務局】

 次回なんですけれども、第13回戦略委員会は、6月10日、水曜日、17時より19時まで、一応、16階の16F特別会議室での開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 机上のとじたファイルは、もしお持ち帰りいただく場合には事務局までお知らせください。
 以上でございます。

【土居主査】

 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 それでは、本日の戦略委員会、これで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。中島先生、伊藤さん、どうもありがとうございました。

— 了 —

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研究振興局情報課計算科学技術推進室

(研究振興局情報課計算科学技術推進室)