次世代スーパーコンピュータ戦略委員会(第11回) 議事録

1.日時

平成21年4月24日(木曜日)17時02分~18時55分

2.場所

文部科学省13F1F2会議室

3.出席者

委員

土居主査、伊東委員、宇川委員、小柳委員、小林委員、寺倉委員、   
中村委員、平尾委員、米澤委員

文部科学省

倉持大臣官房審議官(研究振興局担当)、舟橋情報課長、井上計算科学技術推進室長、飯澤学術基盤整備室長、中井情報課課長補佐

オブザーバー

金沢大学理工学研究域数物科学系 教授 斎藤峯雄、神戸大学大学院工学研究科教授 賀谷信幸

4.議事録

【土居主査】

 それでは、ここから公開とさせていただきたいと思います。 (以下、公開)

【土居主査】

  斎藤先生、賀谷先生にはお待ちいただきまして、どうもありがとうございました。
 それでは、議題(2)の「教育利用について」に入らせていただきたいと思います。
 本日は、教育利用につきまして、実際に教育の取り組みを行っておられます有識者の方々からお話を伺いまして議論を進めさせていただきたいと思っております。
 ハイパフォーマンスコンピューティングの分野におきまして人材育成は大きな課題でございますけれども、次世代スパコンにおきましても教育利用枠を設定して人材育成を一つの柱として取り組んでいくということにしております。この教育利用枠をどのように使っていくかということはオールジャパンの人材育成体制をどのように構築していくかということに密接にかかわってまいります。
 そういうわけで、委員の先生方には人材育成のあり方についてご議論いただきたく、その論点についてあらかじめ事務局に作成してもらっておりますので、まずは事務局から説明をお願いいたします。

【井上計算科学技術推進室長】

 それでは、資料2をごらんください。「教育利用を考える上での論点」ということでまとめさせていただいております。
 まず、現状の認識ということで、現在の教育・人材育成状況をどうとらえるのか、足りない点、強化すべき点、そのほか、いろいろ現状を見た上での問題点があろうかと思います。参考までに、主な大学における人材育成プログラムがそこに列記されております。
 また、その次に目標や方向性ということでございますが、まず、どのような人材を育成する必要があるのかということが一つのポイントではないかということでございます。その中には、計算機科学の知識にたけた人材、あるいは、計算科学の知識にたけた人材、あるいは、その両方どちらの知識にもたけた人材、そういった人たちをどう育成していくのか。また、トップレベルの人材育成をどうするのか、若手研究者をどう育てていくのか、すそ野の拡大ということも一つのポイントであろうかと思います。
 また、その次ですが、オールジャパンとしてどのような体制を構築していくべきか、その中で、特に教育となりますと大学等教育研究機関が中心になると思いますけれども、そういう中で次世代スパコンがどのような役割を担っていくべきか、大学の役割、または、産業界の人材育成という視点もあると思います。また、そういうものを踏まえて、最終的、一番最後に書いてございますのは、じゃあ、具体的に教育利用枠というものはどういうふうにやっていったらいいのかと、そういうことを論点として挙げさせていただいております。
 以上でございます。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの論点を念頭に置いていただき、有識者のご発表をお聞きいただければと思います。ご議論は後ほどさせていただければと思います。
 本日はお二人の先生方にお越しいただいております。
 まず、斎藤先生でいらっしゃいますが、斎藤先生は金沢大学理工学研究域数物科学系の教授でいらっしゃいまして、物性物理をご専門とされ、日本初の計算科学科を設置されました金沢大学におきまして、計算科学教育プログラムの推進に積極的に取り組んでおられる方でございます。
 続きまして、賀谷先生でいらっしゃいますけれども、賀谷先生は神戸大学大学院工学研究科におられまして、ご専門は宇宙工学でいらっしゃいます。神戸大学、金沢大学、九州大学、愛媛大学が連携して推進しておられます組織的な大学院教育改革推進プログラムであります計算科学の最先端人材育成におきまして代表として取り組んでおられますとともに、神戸大学の新研究科計算科学専攻の設立にも深くかかわっておられるということを伺っております。
 それでは、恐れ入りますが、斎藤先生、賀谷先生の順でそれぞれ15分ずつぐらいでお話しいただければと思いますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【斎藤教授】

 土居先生、ご紹介どうもありがとうございました。
 私、金沢大学理工研究域数物科学系の斎藤と申します。
 本日は、人材育成における金沢大学の取り組み、神戸スパコン拠点における人材育成のあり方、教育利用枠のあり方に対するご提案と、この3点についてお話しさせていただきたいと思います。
 それで、まず初めに、人材育成における金沢大学の取り組みということでありますが、先ほどご紹介いただきましたように、金沢大学では平成8年に全国に先駆けて計算科学科というものを理学部に新設いたしました。また、大学院自然科学研究科におきまして、計算科学の教育を開始したわけであります。
 以来、この9年間にわたる計算科学の教育のシステムを通じて教育を行ってまいりました。13年間にわたって教育を行った結果、卒業生が280名ほど、それから、大学院の進学実績が120名ほどあります。また、現在の計算科学科のスタッフは約20名ほどであります。
 それから、平成20年に金沢大学では学部の改組というものが行われまして、現在は理工学域数物科学類の計算科学コースで計算科学の教育が行われております。
 それで、計算科学に関する主な教育・研究実績ということでありますけど、現代的教育ニーズ取組支援プログラム、IT教育用素材集の開発とIT教育の推進ということで、eラーニングの教材を開発してまいりました。また、現在行っております大学連合による計算科学の最先端人材育成におきましては、神戸大学、九州大学、愛媛大学とともにこのプログラムに取り組んでいるということであります。また、研究実績といたしましては、NEDO、CREST、あるいは、日本原子力研究所からの受託研究などの実績がございます。
 金沢大学における計算科学教育プログラムの特徴といたしましては、まず、教育用スーパーコンピュータ、あるいは、eラーニングの利用による新しい授業体系を目指しているということが挙げられます。教育理念といたしましては、次世代のコンピュータ社会に向けたニーズに合った人材を育成するということでありまして、標語としては「パソコンからスパコンへ」ということであります。また、現在行っております大学院教育改革支援プログラムにおきましては、スパコンを利用した新しい講義カリキュラムを実施しているということであります。
 それから、平成19年10月に金沢大学ではこのペタスケールコンピューティング教育研究グループというものを発足いたしまして、ペタスケールコンピューティングの教育と研究を議論するための場を設けたわけであります。その中で、特に米国におけるスーパーコンピュータのプロジェクトでありますSciDACというものを調査し、検討いたしました。そのようなことをもとにいたしまして、平成20年3月に特定高速電子計算機施設の共用の促進に関する基本的な方針に対する意見書というものを提出するに至ったわけであります。
 それで、この大学院GP、大学院教育改革支援プログラムの中で金沢大学がどういう取り組みをしているかと申しますと、まず第1には、学際計算科学の新しい教育カリキュラムを作成しております。SMASH、あるいは、分野横断というものを取り入れた教育内容となっております。
 大学院前期の学生に対しましては、高度先端計算科学概論の講義を開設いたしました。また、後期の学生に対しては特論を開設しております。それから、カリキュラムのeラーニングの教材化に取り組んでおります。昨年度は金沢大学を拠点といたしまして、テレビ会議システムを利用した遠隔講義というものを行っております。神戸シミュレーションスクールは過去4回行われまして、132名の参加者がおりますけれども、金沢大学からも多くの学生が参加しております。SMASHを意識した講義・演習内容でありまして、神戸大の教育用スパコンを利用しております。
 このように、大学院GPや大学の改組というものを経て、現在、金沢大学における計算科学の教育プログラムが次のようになっております。
 まず、1年次に数物科学類の学生として入学してきた学生に対しては、数学、計算科学、物理の共通の教育カリキュラムというものが用意されております。それから、2年次に進学する際に計算科学コースを選択した学生に対しては、数学寄りの計算数理プログラム、または、物理寄りの計算実験プログラムが用意されております。そして、4年次で卒論研究を行って卒業するということになります。
 また、大学院の前期におきましては、数物科学専攻IIコースで計算科学の教育を行っておりまして、これは計算数理講座と計算実験講座と2つに分かれております。内容は数理、マテリアル、素核宇宙、情報といったように学際性に富んだ教育内容ということになっております。また、新設された高度先端計算科学概論によって並列技術などの教育を行っております。
 後期になりますと、数物科学専攻の計算科学講座において、計算数理と計算実験の教育が行われております。大学院GPにおいて新しくつくった特論という講義において、神戸ミニスパコンを利用した教育が行われているということであります。
 パソコンからクラスタ、教育用ミニスパコン、こういったようにステップアップできるような教育内容となっております。
 それで、次に、神戸のスパコン拠点における人材育成のあり方ということについてご提案させていただきたいと思っております。
 まず最初に、計算科学と計算機科学、双方の知識にたけた人材、次々世代計算機アプリケーションの開発に適応できる人材、京速コンピュータアプリケーションの実装、チューニング、メンテナンスのできる人材が必要ではないかということをここでご提案させていただきたいと思います。それから、SMASHの理解定着の徹底が重要であろうと考えております。
 神戸のスパコン拠点と人材育成ということに関しまして、特に人材育成に関しましてはボトムアップとトップダウンという2つのアプローチが重要であるということをご提案したいと思います。特にここではボトムアップの人材育成ということに焦点を当てて説明させていただきたいと思います。
 大型高速計算機を使用しての段階的な教育がまず非常に重要であるということであります。それから、計算科学教育に計算機科学の教育を取り入れる、あるいは、計算機科学教育に計算科学の教育を取り入れるということが重要であろうと思います。
 以下、特にこの大型高速計算機を使用しての段階的な教育が重要であるということで、この点を少しお話ししたいと思います。
 それで、じゃあ、実際の今教育の利用枠の現状はどうなっているかと申しますと、大型高速計算機を実際に使用しての講義・実習はなかなか難しいというのが実情ではないかと考えております。こういったセンターでは一般研究利用枠であるとか特別研究利用枠というものはあるわけですけれども、なかなか大型計算機を実際に使用しての講義・実習というのは難しい状況にあるのではないかと考えております。
 それで、教育利用枠のあり方についての提案でございますが、博士後期課程に対する具体的な講義例といたしまして、まず、京速コンピュータの教育枠を使用する。そして、3,000コアから1万コアを1カ月単位で合計3カ月間使えるようなジョブクラスを設定してはいかがかということであります。年3回の短期集中講義を想定し、2単位に1週間、その前後1カ月使えるようにするといったような一つの例でございます。
 それから、博士前期課程の講義例といたしましては、京速コンピュータへ向けての講義実習ということで、数百コアを利用した講義実習を計算機拠点において行う。そうしてはいかがかという提案でございます。
 それで、これは今述べたことを図で示したものですけれども、年3回の集中講義というものを行うというわけであります。そして、3,000から1万コア程度の並列度の実習を行ってはいかがかと、そういうことでございます。
 これが最後のスライドになりますけれども、教育理由枠のあり方の提案ということでありまして、先ほど申しましたように、大型高速計算機を実際に使用しての講義・実習が難しい状況にあるのではないかというふうに考えているわけであります。そこで、例えばこのような教育利用枠というものを設けることによって大型計算機を実際に使用しての講義・実習というものが可能になれば、それがよろしいのではないかというのがここでの提案でございます。
 以上であります。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、賀谷先生、お願いいたします。

【賀谷教授】

 神戸大学の賀谷です。本日はこういう機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。座って説明させていただきます。
 今回、計算科学最先端人材育成センターというものをここに提案させていただきたいと思います。
 私は神戸大学に席がありますけれども、今回はあくまでも大学院GP「大学連合による計算科学の最先端人材育成」の代表として意見を述べさせていただきたいと思います。
 先ほどから斎藤先生からもご説明がありましたように、大学院教育改革支援プログラムの中で「大学連合による計算科学の最先端人材育成」が採択されております。19年度から採択されまして、私、代表をさせていただきまして、あと、九州大学、金沢大学、愛媛大学の4大学で行っております。この取り組みを簡単にご説明して、あと、我々の提案を説明させていただきたいと思います。
 まず、大学院GPの取り組みですが、まず、講義で学んで、それから、みずから実習して学ぶと、そして、最後に指導していろんな質問に答えられて初めてマスターしたという観点で取り組みを考えております。
 まずは、講義で学ぶということで、Simulation Schoolでどういう講義がいいのか、いろんな例を検討しております。その中で、特に網羅的な研究の紹介としまして、分野横断型、いろんな分野があるかと思います。その分野横断でどのような教育をしたらいいのか。例えば、生命を研究している学生が宇宙プラズマのような他の分野のシミュレーション手法を学ぶことによって研究の幅を広げることが可能となり、新しい研究分野を創出することができるのではないかと考え、いろんなパターンでSimulation Schoolを行っております。
 また、教材の制作としまして、みずから学ぶということで自習用のeラーニングの教材や、それから、eラーニングの教材での講義、のようにやったら効率的にできるかということを検討しております。
 さらに、プログラムを自分で制作する、それに主眼を置きまして、演習に重点を置きます。他人のプログラムをまず理解できるか、それから、プログラム手法を学ぶ演習問題、計算精度を理解する演習問題というような問題を与えて、みずから解かせる。それを、ある程度マスターした後、TAとか質問室で逆に指導する、そういう指導ができて初めてマスターできたものと考えております。
 このようなシミュレーション、取組の結果、1年半行ったのですけれども、その中で、まず分野横断型教育というのは、先ほどご説明いたしましたように、新しい研究分野の創出という可能性を秘めているのではないかと考えられます。
 そして、やはりシミュレーションをするときには既成のプログラムを動かすだけではなく、自作でプログラムをつくるということが非常に重要な教育になっているのではないかと考えられます。そのためには、どうしても演習の重要性が考えられます。
 また、教育レベルに関しましても、トップレベルの教育とボトムアップというすそ野を広げる教育というものがあるかと思います。こういう教育によってなるべく幅広い人材育成が必要ではないかと思われます。
 一応これが大学院GPで行いまして感じたことでございます。
 さらに、よく言われることですけれども、ここに日本のスパコン、横軸に年代を、ちょっと見にくくて申しわけないのですけれども、1990年ぐらいからずっと、ここに地球シミュレータがございますけれども、そのときの世界のトップ20を表示しております。
 皆さんよくご存じだと思うのですけれども、近ごろどんどん日本でのスーパーコンピュータが減ってきております。いろいろ考えるに、やはり将来のスーパーコンピュータを担う人材育成というのが非常に重要ではないか。ほんとうにハードウエア、そういうものを作る人材、これが求められるのではないかと思われます。
 そうしますと、我々の人材育成の目標としましては、まず、計算科学を理解した計算機工学の人材、将来のスーパーコンピュータを作っていける人材を育成する必要があるのではないかと考えます。それから、もう一つ、計算機工学を理解し、分野横断型に、いろんな分野をある程度マスターして自分の研究の分野で生かしていく、そういう計算機科学の人材が必要ではないかと思います。この人材によって、日本の将来のHPC、ハイパフォーマンスコンピュータを担う人材になり得るのではないかと考えるわけです。
 まず、神戸でもし人材育成センターというものを考えた場合、教育目標はいろいろあるかと思います。まず、大学スーパーコンピュータによる計算科学の教育というレベル、それから、次世代スーパーコンピュータを使うレベルの教育、それから、最後、3番目としまして、次々世代、未来のスーパーコンピュータのための人材育成、いろんなレベルが考えられるかと思います。
 今、神戸という地を考えますに、神戸には当然次世代スーパーコンピュータができます。さらに、その次世代スーパーコンピュータを作った人もいらっしゃいます。それから、聞くところによりますと、理化学研究所で、計算機科学の研究センターができるという話を聞いております。こういうすばらしい環境がございますので、当然神戸の人材育成センターというものはこの3番目の次々世代、未来のスーパーコンピュータのための人材育成を目標にすべきではないかと考える次第でございます。
 この人材育成の特徴としまして、やはり全国・全世界の研究者のネットワークの構築がぜひとも必要である。やはり世界からの超一流の講師による講義というものが何よりも欠かせないと思います。それから、次世代のスーパーコンピュータを使った教育というものも考えなくてはいけないかと思います。さらに、トップレベルの教育としてはやはり少人数教育を目指したいと考えます。
 教育内容としまして、計算科学と計算機工学の融合教育というものが大事かと思います。 まず、計算科学の教育としましては、やはり先ほどありました分野横断型の教育ができるのではないか、神戸ならばできるのではないかと。また、単なる計算機シミュレーションだけではなくて、やはり実験と連携した計算科学を教育すべきではないかと考えます。
 2番目に、計算機工学の教育としましては、やはり次世代スーパーコンピュータのハード、ソフトの特性を理解しなくてはいけない。そこから、次の新しいアーキテクチャーを生み出すとか、次々世代のスーパーコンピュータを開発していくという姿勢が大事かと思います。そのためには、新しい計算機工学のアーキテクチャーの教育は欠かせない、不可欠なものだと思います。
 ただ、この人材育成ですが、この人材育成センターはあくまでもセンターでありまして、新規の研究科を設置するという話ではありません。
 それでは、実際にどういう構成にするかといいますと、ここで提案いたしますのは、大学から離れた一つの全国共同利用型の人材育成センターがいいのではないかと提案するわけです。
 このセンターに専任・客員講師、それぞれ全国のネットワーク研究者が集まりまして教育を行う。そのために、全国の大学から学生を選抜してくる。逆に、講師のほうも理化学研究所の研究センター、及び、いろんな国立研究所、それから、当然大学、海外からの研究者の講師というもので構成すべきではないかと思います。地元の神戸大学としましては、少なからず事務局等で汗を流させていただければと考える次第です。
 問題としましては、いかに人材を集めてくるか、学生を集めてくるかというのがやっぱり問題かと思います。そのためには、やはりいろんな大学からの推薦、計算科学及び計算機工学の学生から推薦を得てここに集める。それも、修士1年からポスドク、助教レベル、いろんなレベルの優秀な学生を集めたい。その異なるスキルを持っている学生に対しては、やはりTaylor-madeの教育を考えなければいけないのではないか。受け入れ定員としましても、やはり1年間に10名程度の少人数教育を目指すべきではないかと考えます。研究指導もやはり理研の研究者、センターの研究者によって、最先端研究への参加、これが何よりの学生のインセンティブになるかと思います。
 教育の分野としましては、各研究分野、生体とか材料とか流体、それぞれは研究機関、戦略機関で教育も含めて行われると思いますけれども、ここでは横糸といいますか、スーパーコンピュータ、計算機工学とか、特に計算、数理モデルとか、そういうものをきちんと横断型で教えることができないか。その横軸のためには、やはり世界から最先端の研究者による講義が何よりも必要ではないかと考えます。
 こういう教育を行うことによりまして、新研究分野が創出できると思いますし、計算科学、計算機工学の融合研究に発展していくのではないかと思います。
 実際の教育体系としましては、やはりM・D一貫、時間的に教育には時間がかかると思いますので、修士1年ぐらいからD3まで一貫して教育する。ただ、そのスキルによっては、先ほど申しましたように、Taylor-madeでいろんなカリキュラムを考えて、その学生に適した教育を行うということが重要かと思います。
 ここでは、M1は基本教育としまして計算科学の基礎、それから、計算機工学のハードの基礎とか基礎教育を行います。2年ぐらいになりまして、実践教育としていろんなシミュレーションの演習、この演習にしましても、それぞれのレベルに合った計算機を使えばいいかと思います。まずは、最初は導入としまして小さなコンピュータから始まりまして、そのスキルに合わせて徐々にレベルアップしていく。最後に、4年生、D2ぐらいになりまして、計算機シミュレーションは研究に入りますし、できましたら、計算機工学ではハイパフォーマンスコンピュータの設計演習のようなもの、どういうコンセプトが次々世代でいいのか、それを理研で実際に作った方の教育を、ディスカッションを通すことによっていろんな提案が出てくるかと思います。
 最後にはやはり博士論文でまとめることができれば、いい教育ができるかと思っております。
 最後に、教育利用枠としての希望ですが、この未来、将来の日本のハイパフォーマンスコンピュータを開発していくための教育ということで、例えば、フルスペックでの使用、そのために数十万並列のソフトはどういうものか、そういうものを実体験として理解してほしい。
 ただ、これをやるにしても、素養のない人間がやるのはむだですので、きちんと教育した後、こういう演習というか、トライといいますか、そういうものをする必要があるのではないかと思います。フルスペックですとスケーラビリティーの理解というものもできるかと思いますし、また、故障からの回避とか、そういうものを実体験として学ぶことができるのではないかと思います。
 また、チューニングの方法もプロセスチューニングとかノード間のロードバランスがあります。ハードウエアの特性の理解として、キャッシュの使用法とかいろんな問題点があるかと思います。特に今回、次世代のスーパーコンピュータはベクトルとスカラーの連携で計算ができます。そのあたりの実際にその辺を使ってみて学ぶということも重要かと思います。
 また、次世代のスーパーコンピュータ用に開発されたソフトの理解も重要でありますし、やはり実際、自分自身でシミュレーション・コードを自作するという演習にぜひともこの教育利用枠を当てたらいかがかと提案する次第でございます。
 以上でございます。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの斎藤先生、賀谷先生のご発表につきまして、まずご質問がおありになりましたら先生方からまずお伺いして、その後、先ほど井上室長のほうから説明がありました資料2の論点に沿って、1つ15分ずつぐらい時間をかけて議論していただきたいと思っておりますが、まず、両先生のご発表に対しまして何かご質問等ございましたら、いただければと思うんですが。どうぞ。

【米澤委員】

 斎藤先生ご発表の分ですが、現在神戸大の教育用スパコンを使われているというお話ですよね。

【斎藤教授】

 はい、そうです。

【米澤委員】

 教育用スパコンというのはマシンとしてどんなものですか。

【賀谷教授】

 神戸に教育用のコンピュータが入っております。その中で、今回導入したのは、ベクトルマシンを1台、SX-8、4CPUで1ノードです。それと、あと、74ノードのスカラーマシンを入れております。

【米澤委員】

 わかりました。
 あと、関西の周りに、周りということはないんですけど、京大とか大阪大学とか、あるいは、このGPを一緒にやっていらっしゃる九大とかにもスパコン、ある程度の規模のあるスパコンがあると思うんですけど、それを使わない理由が何かあるんでしょうか。

【賀谷教授】

 大学院GPではいろんなレベルの学生がおりますので、まず広くすそ野を広げるということで、基本的なところから講義しております。ですから、そのレベルが上がれば当然京大、阪大のスーパーコンピュータを使っていきたいと思いますし、特に九州大学はもう大学院GPのメンバーですので、そういう学生に対しては九州大学のスパコンを使っていきたいと思っております。

【米澤委員】

 わかりました。

【土居主査】

 よろしいですか。
 ほかにはいかがですか。どうぞ。

【中村委員】

 これは賀谷先生にお伺いしたいんですが、大学院GPの取り組みというのは非常にわかりやすかったんですけれども、今度新しい人材育成センターをいろんな、国外も含めて、学生を選んでくるということなんですが、やはりそれぞれ所属する大学というのはあるわけですよね。

【賀谷教授】

 はい。

【中村委員】

 それで、当然修士からですと結構単位を必要とするということもあって、その所属元とはどういう関係でこれをやられていこうと思われているのかというのがちょっとよくわからなかったんですけれども。

【賀谷教授】

 これはトップレベルの教育ということで構想したものでありまして、当然学生をどうやって集めてくるかということが一つの大きな課題かと思います。
 今考えているのは、我々研究者レベルでまずネットワークを作りまして、その研究者の所属する学生を派遣していただけないか。例えば京大の学生でしたらその京大の所属のまま神戸に来ていただいて、神戸にいらっしゃるいろんな研究者の講義を受けて、それを単位として認めていただきたい。そうしますと、京都大学なら京都大学の単位で卒業するということを考えております。

【中村委員】

 わかりました。その単位を互換でやっていくと。

【賀谷教授】

 はい。それはもちろん。

【中村委員】

 ただ、それはよくわかって、大学院GPのほうでもおそらくそういうことをSimulation Schoolというものをつくってやっておられ、大変効果的だと思うんですが、今度のセンターですと何か修士・博士一貫でもう何か拘束してやられるようなそういうイメージがあるんですが、やはり実験などとの関係ですと、ある時期だけその学生を派遣してマスターしてきて、また戻ってほしいという、そういう大学側の先生のご希望もあると思うんですけれども、そういうフレキシビリティみたいなものは考えておられるんでしょうか。

【賀谷教授】

 もちろん、ここでも述べましたように、実験と計算機シミュレーションというのは非常に重要な関係があるし、もともとの出身の研究室の研究内容というのは大事にしなくちゃいけないかと思います。そこはもうフレキシブルに個別にテーラーメードというか、カリキュラムを組んでいきたいと考えました。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 ほかには何か。どうぞ。

【米澤委員】

 賀谷先生の今お話があったこと、ちょっと何かその目的とかプリンシプルというのが何かよくわからなくてちょっと迷ってるんですけど、神戸のスパコンを使わなきゃならない理由、あるいはこれは教育枠の話で後で出るかもしれませんけど、これで書かれている中にはあまり神戸のマシンを使う、神戸の今度できるマシンを使うというところは実際上見えないんですけれども、それを使わなきゃいけないという理由はどこにあるのでしょうか。今、人材育成の段階で、神戸のスパコンを使わなてはいけないというターゲットを先に持ってきて話をしますと、あるいは、そういうふうに書いてあるように見えるんですけど、そうすると、中身が非常にファジーになってしまうのではないかなというのが印象でわかりにくいとそういうちょっと失礼なことを申しました。すみません。

【賀谷教授】

 ここで提案させていただきましたのは、あくまでもトップレベルの教育ができないか。そのために、トップレベルの教育をするのにはやはりトップレベルの計算機を使って教育する必要があるのではないかという提案でございます。

【土居主査】

 ありがとうございます。
 斎藤先生、ちょっとお伺いしたいのですが、先生のところの卒業生なんですが、学科及び大学院の卒業生がどのようなところへ就職してるという統計的なものは何か持っていらっしゃいますか。

【斎藤教授】

 ちょっと今統計的なものは用意しておりませんのでありませんけれど、やはり、最近は計算科学というのはものづくりのいろいろな企業にも入っておりますから、特に博士課程に入りますと、例えば私のところですとシミュレーションをやった学生が欲しいという、例えば化学系の会社であるとかそういうところの例もあります。

【土居主査】

 では、具体的にここで計算科学を学んだそのものが生かされるようなところへ就職しているのが多いということでしょうか。

【斎藤教授】

 そうです。特に博士課程、それから、マスターといった……。

【土居主査】

 大学院出であれば。

【斎藤教授】

 ええ。特に学歴が高くなるとそういう傾向にあると思います。

【土居主査】

 そうですか。ありがとうございます。

【小林委員】

 いいですか。

【土居主査】

 どうぞ。

【小林委員】

 今のに関連して。やはり斎藤先生にお伺いしたほうがいいのかもしれませんが、私はアプリケーションのほうなので、計算機科学とか計算機工学、計算科学とか、その辺の区別あたりもちょっと明確にないんですが、例えば、日本の大学において計算機工学あるいは計算科学と言われるようなものを修了したボリューム、人数というのはこれはやはり相当少ないということでよろしいんですか。

【斎藤教授】

 計算機工学、計算科学?……。

【小林委員】

 いや、両方。

【斎藤教授】

 特に計算科学という名前の学科はおそらく。

【小林委員】

 ない。

【斎藤教授】

 金沢大学以外は……。

【小林委員】

 ない?

【斎藤教授】

 これまでは。

【小林委員】

 では、それに類するものも。

【斎藤教授】

 まだ、ないかどうかわかりません。最近はあるかもしれません。

【小林委員】

 それに類するものも大きく含めた場合に、やはり圧倒的に数は少ないと。

【斎藤教授】

 例えば、物理学科の中にそういう計算物理のやっている研究室があると思いますけど。

【小林委員】

 そうですね。企業あたりですと、例えば数学科出身の方がこういうシミュレーションに対応するというようなケースがたくさんありますのでね。そういう方々も含めると、やっぱり少ないんですか。

【斎藤教授】

 ちょっとその辺は把握しておりませんが、それは定義の問題といいますか。

【小林委員】

 そうですけどね。定義が難しいからなかなか言えないのだろうと思いますが、例えばCAEなんかで日本の技術者は極めて足りないという言われ方をするし、インドとか中国のコンピュータシミュレーションのソフトウエア開発の能力というのはものすごい高いとかいうようなことは言われているわけですけれど、そういう何か定量的に示せるようなデータというのはお持ちなんでしょうか、存在しているんでしょうか。

【斎藤教授】

 ちょっと金沢大学ではまだそういう資料を作成しておりません。今後ちょっと検討してみます。

【賀谷教授】

 ちょっとコメントさせていただきたいのですけど、確かに斎藤先生がおっしゃったように、計算科学と銘打った専攻は今のところは金沢大学だけだと思うのですけれども、どこの研究分野でも計算機シミュレーションというのはやっている、そのレベルの差はありますけれども、いろんな分野でまずは計算で設計してみて、いろんなシミュレーションをしてみて、それで実験をすると思います。
 ですから、その計算機シミュレーションの人口というのは非常に多いと思っておりますし、これからさらに重要になってくるかと思います。

【小林委員】

 じゃあ、そうすると、組織的に教育できてないと。

【賀谷教授】

 はい。

【小林委員】

 それが1点。
 それから、もう一点は、賀谷先生が言われたと思うのですが、実験科学、実験も大事であるということを言われている。アプリケーションのほうの立場からいきますと、その分野のシミュレーションをやるわけですから、それは実験との比較というのは比較的頭の中に入りやすいんですが、もう計算機工学とか計算科学の教育の中で実験との交流というのはどういう位置づけになるんですかね。ある特定のものに対するシミュレーションと実験とを比較とか検討するとか、そういう形になるわけですか。

【賀谷教授】

 我々の場合、例えば宇宙プラズマのシミュレーションをやっているのですけれども、例えば宇宙で観測したデータを実際に計算機の中でシミュレーションしてその観測データの整合性はどれほどあるものか、そういう議論ができる。それから、また、シミュレーションによってどこを観測すればいいかということを逆に調べることができる。

【小林委員】

 ですから、それは縦のつながりですよね。横では別にないわけですか。

【賀谷教授】

 他分野の。

【小林委員】

 そう、他分野とか。

【賀谷教授】

 例えば今まで差分法で解いていたものを、今度ほかの分野で例えばモンテカルロでやっているものの知識を得て、じゃあ、モンテカルロにアプライできるかとか、そういういろんな可能性、それから、モデリングの仕方など、いろんな知識が増えることによって広がるのではないかと思うのですけれども。

【土居主査】

 どうぞ。

【小柳委員】

 今の賀谷先生のお話へのコメントですけれども、賀谷先生がおっしゃるように、いろんな分野で計算機シミュレーションを活用した研究というのは確かに非常に行われていて、そういう層はある程度あるというお話は、確かにそのとおりだと思うんですが、私が問題と思いますのは、そういういろんなシミュレーションをやる人たちがいわばタコつぼ的になっていて相互の交流が非常に不足している、あるいは、交流しようとしないというそういう現象があると思います。だから、今後の人材養成においてはそういう分野間のシミュレーションの連携、交流ということも非常に重要なポイントになるんではないかと思っています。
 例えば、土居先生のプロジェクトでも随分シミュレーションのことを推進しましたけれども、結局その辺の交流はしたがらないというのが私の見たところで、これが今後の課題ではないかと思います。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 先生方もちょっとお加わりいただきまして、資料2の井上室長のほうから用意していただきました論点に沿って、もう大分入っている面もあるわけですが、ちょっとご議論いただければと思います。
 まず、今もう踏み込まれていると申し上げましたのがトップのまず一番上にあるものですが、現在の教育・人材育成状況をどうとらえるかと、足りない点は、強化すべき点はということで、人材育成プログラムとしてそこの東京大学から始まりましてずっとあったりしますが、これだけのことは進められているということと、今ご紹介がありましたようなことで、金沢大学、あるいは、神戸大学をはじめとした大学等でも具体的な教育もなさっているということですけれども、要するに、足りない点、あるいは、強化すべき点というのに関しましてちょっとご意見を賜ればと思います。
 その後、目標、方向性というようなところにあります、どのような人材を育成する必要があるかということをまたご議論いただき、そして最後に、オールジャパンとしてどのような体制を構築していくべきかということと、この教育利用枠のあり方とを一緒に一体となってお話、ご議論いただければと思っておりますので、その3つを順次15分ぐらいを目途にちょっと議論していただければと思いますので。
 まず、第1番、この足りない点、あるいは、強化すべき点ということでご意見いただければと思うのですが。どうぞ。

【平尾委員】

 それじゃ、よろしいですか。
 私は今の日本のこうした計算科学あるいは計算機科学の教育というのはまだまだ十分ではないと思っております。
 それで、まず結論から言いますと、実は大学なんかの教育機関が持っている情報基盤センターというのがあり、そこにスパコンというのがあるわけですが、情報基盤センターがもっとやっぱり私は、米澤先生もいらっしゃるんですが、教育といいますか人材育成に向けて積極的に乗り出してほしいという気がいたします。
 今度、神戸にスパコンができますが、今度のやつはもう明らかに汎用的なスパコンなんですね、あらゆる分野に使いましょうと。ですから、そういう意味では完全なヒエラルキーが今度日本の中で計算機資源のという意味ではできるわけですね。そのトップに立つのが神戸のペタコンでございます。
 私はそれぞれのレベルで、例えば大学のスパコン、あるいは、研究所にあるスパコン、あるいは、研究室のレベルにあるPCクラスタみたいなものも含めて、それぞれのレベルでやっぱり教育というのはあるんだろうと思うのですね。
 やっぱり神戸でできるペタコンは10ペタというそういうふうな威力を持っているわけですので、いくら教育利用だといってもその能力が十分に発揮できるような目的で使うべきだと。ほんとうに切り売りなんかしたら困ると私は思っているわけです。
 それで、教育用として今度神戸にできるペタコンを使うとすれば、考えられるのは2つぐらいあるんじゃないかなという気がしていて、1つは、計算機工学、計算機科学の人たち、あるいは、次のアーキテクチャーなんかを考える人たちがミドルウエアを開発したと、それを例えばほんとうのマッシブなパラレルなマシンで試してみたいと。そういうときに、ある意味でそれを使うと、使ってみるということは十分考えられると思うんですね。そういう、あるいはMPIの開発でやってみたいと。それは僕は十分あり得ると思います。
 それから、もう一つはやはり次世代のスパコンというのはほんとうの意味で次の日本の計算科学、あるいは、計算機科学を担う人たちを教育としても育てるという観点からすれば、やっぱりほんとうに若手を育てたいと思っています。
 それで、普通、科研費なんかにいわゆる基盤研究というのがあって、それとは別に若手枠というのがございますよね。今度も戦略分野、戦略的に使う時間と一般枠というのがございます。一般枠である意味ではいろんなボトムアップで上がってきたのを採択するわけですが、その中にある種教育枠といったらおかしいんですが、若手枠と言いかえてもいいかもしれません、そういうものを入れておいて、若手の野心的なチャレンジとか、あるいは、萌芽的な研究をまず吸い上げて、若い人たちに力を発揮してもらうと。
 そういう意味の使い方というのは私は教育枠としてあるんだろうと思うんですが、一般論としてのすそ野を広げるという意味では、やっぱりもっと現在ある大学等のスパコンセンターなんかのスーパーコンピュータを大いに活用して、そして、すそ野を広げるということのほうが重要であって、まずそこできちっと、今は私はそこはまだ不十分だと思っていますので、そこをやっぱりまず力を入れるべきだと。
 そして、やっぱり研究と教育というのは不可分ですので、研究プロジェクトに参加しながら教育もやるというのがいいんじゃないかなという気がいたします。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 もとの国立大学のときには、教育用というのはかなり要するに基盤センターでは制限がされていたと思うんですが、今はそういうようなことに関してはどうなっているかということを含んでお話しいただければ。

【米澤委員】

 わかりました。
  東大での人材育成プログラム、特にカリキュラムのことがあって、もしよろしければ次回でもちょっとご説明させていただければと思うんですけど、そこでの基本的な問題点というのは、大体40人から50人ぐらいの学生、大学院の学生、学部も大体同じぐらいと聞いています。これは4つの研究科にまたがって学生が必要に応じて、朝8時半とかぐらいの講義を聞いたり、それから、演習もそこでセンターにあるスパコンを使います。そういうお話を次回できたらさせていただきたいと思っております。
 それで、今、平尾先生が言われたように、各情報基盤センターはおそらく、我々がそうなんですけれども、若手研究者枠というのをただで提供しております。それで、年に2期に分けて5人とか、5、10課題ぐらい、それを必ず発表してもらったり発表会をつくったりして、ただで我々としては64ノードを扱えたりするので、それは非常に教育的、あるいは、その萌芽的研究に対して効果がありますし、必ずちゃんとその課題を精査しますね。
 ですから、同じようなことが神戸のペタコンでできるといいんじゃないかなと思います。それは、戦略機関とかそういうのは無関係に、ある意味で。ですから、そういう意味で、平尾先生のご意見に大変賛成です。

【土居主査】

 なるほど。いわゆる教育用として使えるんですか。

【米澤委員】

 それはアカウントをとっていただければ、かなり制限された形で。

【土居主査】

 かなり制限されていますよね、昔から。

【米澤委員】

 ええ、使えます。ですけど、そこで例えば4年生の地球惑星専攻の地惑の専攻で使ったりするのはそんなに大きなものはできないわけですよね、まず初めて使ってみるわけですし。ですから、そういう大きなものは用意してないですね。大きくて8ノードとか。

【土居主査】

 それで現状として十分なわけでしょうか。

【米澤委員】

 十分だと思いますが。ノード数が多いのを別に使ってもらう必要はないですね。それ、ある程度どのぐらいプログラムがノードが増えたときにどういうふうな傾向が出るかということを知ってもらうためにちょっと大きいのを使ってもらったりすることはありますけど、そういう日常的な演習ではそんな大きいのをやる必要は全くないと。それより、もっとスキルを先に教えていく。

【土居主査】

 これは8大学とも基本的に変わらないのでしょうか?

【米澤委員】

 多分、京大と九州大学がやっているかもしれません。それから、東北大はベクトルのことで少しやっていらっしゃるかもしれない。ちょっとそこはあまり。調べてみます。

【土居主査】

 わかりました。お願いします。ありがとうございました。
 ほかには。どうぞ、宇川先生。

【宇川委員】

 私自身はこの足りない点というのはもう明らかで、それはやはりスーパーコンピュータに関する、特にアプリ側から見たときには系統的な教育ということに尽きると思います。
 ひところベクトルのころだってベクトル化するにはどうすればいいかみたいな話はあったんですが、もう今やマルチコアになり、エレジットが上がり、プログラム書いてコンパイルして動いたとしても、それだけで性能が出る時代では全くないですよね。
 そのときに、やっぱり欠けているのは、系統的に今のスーパーコンピュータはどういうものであって、それは一体どう使うのかということを教育する機会、カリキュラム、これを立てないと、いつまでたっても耳学問、習い学問でしかできない。それはやっぱり計算科学、特にアプリケーション側の目から見たときにほんとうに研究ができるわけがないので、そこが一番欠けているところじゃないかなと。
 各大学でそういうカリキュラムを立てて系統的にやろうという動きはもちろんどんどん出ているわけですけれども、これをやはりもっと強化すると。それから、そのときに例えば教育用の材料なんかをつくる上でお互いの大学が連携するといったようなことはどんどんやっていく必要があるんじゃないかと思います。

【土居主査】

 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

【中村委員】

 ちょっと前のグリッド関係の研究にかかわったときに、情報科学と計算科学のその間というのに結構距離があるというのを感じました。特に若い人でワークフローをかけるとか、そういうのと、計算科学というのはかなり何か文化が違う感じで、大阪大学の場合には情報科学科というのがあるんですが、その中に計算科学の先生もおられるんですけれども、全体的には非常に情報科学、ほんとうのインフォメーション的なことの例外的なことといいますか、そういうことが多いですけれども、そこの問題というのは、今回ご発表していただいた中にもあまり情報科学との連携といいますか、そういうこともなかったんですが、そこの人材として不足してないかというところに私は実はそういう人材というのはなかなか育ちにくいんじゃないかなと思っているんですが、どう思われますか。

【土居主査】

 ちょっとすみません、確認させて下さい。情報科学と計算科学ですか。

【中村委員】

 そうです。

【土居主査】

 計算機科学との間がとおっしゃった?

【中村委員】

 私が理解していたのは計算科学のほうですね。

【土居主査】

 計算機科学と情報科学と計算機工学といろいろばらばらなんですが、基本的には日本全体からしますと、それぞれ工学寄りか科学寄りかというような見方で特色を持たせてはいますけれども、総じて大差がないと思っています。
 というのは、何でもありをやりたいというのが我が国のくせでして、それで、要するに人材が、例えば東京大学を見ても、私なんかからしますとまだ要するによその国から比べると座布団の数が少な過ぎるんですけれども、ほかのところもずっと少ないんですが、少なくても全部自分たちでやろうというようなことを何か心がけていると言ってはおかしいんですが、やらなくていいことまでやろうとしているものですから深みがなくなってしまうというのが私の考えなのですけど、全体といたしますと、いわゆるアメリカでいうコンピュータサイエンスが要するに核にあって、それがどちらかにちょっと力が入っているかどうかということですね。
 我が国で情報科学といったのは、一番最初につけたのが慶應で情報科学研究所をつくった。その翌年に5大学で専門学科ができたときにいろいろもめたんですが、計算機科学だと即物的だとか何とかいろいろ哲学的な面が出てまいりまして情報科学というのをやったんですが、インフォメーション・サイエンスという言葉が英語ではないわけではないんですが、これはインフォメーション・アンド・ライブラリー・サイエンスのほうが先行してたということと、ヨーロッパでインフォメーションというようなことになってきますとスパイ学が出てきますものですから、要は昔のほうが全部諜報だとかああいうところにいきますものですから、嫌われたんですね。
 ですから、コンピュテーションだとか、イギリスの、あるいは、言葉としてロジーがつくかクスがつくかということで学問分野で、それで、要するにイクスがついてインフォマティクスというような言葉が出てきたというようなことで、やっていることのど真ん中はそう大差がない、実は。で、そのどちら寄りかというのが多少阪大だとか京都だとか、あるいは、ほかだとかというところでちょっといらっしゃる先生方によって違っている。
 それぞれが特色を出す意味においてちょっと違うだけの話だと私は認識しております。
 どうぞ。

【小柳委員】

 ただし、それを今いわゆる情報科学と計算機学、コンピュータサイエンスですね。それ、計算機工学をどうするかは別です、その辺の話ですね。

【土居主査】

 そうそう。

【小柳委員】

 今議論になっているのは計算科学、あるいは、計算諸科学ですね。その間のギャップが非常に大きいというのが今ここで問題になっていることなので。

【土居主査】

 そうそう。

【小柳委員】

 それは多くの、今、中村さんがご指摘なさったのも全くその点だと思います。このギャップを埋める、それで、もちろん計算諸科学の間の相互のギャップを、あるいは、その連携を埋める、これが大変足りない点、あるいは、強化すべき点として大変重要なことではないかと思います。

【土居主査】

 ですから、ものづくりといったときに、このスーパーコンピューティングに関してはスーパーコンピュータ、プラス、コンパイラだとか何とかだといったような道具立てをずっとやる、あるいは、アルゴリズムだというようなことになってきているところ、あるいは、出力というようなところに関しましては、コンピュータサイエンスのほう、だから、日本でいうと情報科学という、計算機科学といったようなところが要するに得意、専門としているところで、中のところで計算機をぶん回している、実際の問題を解こうとしているところが計算科学というような形になっているわけですよね。
 ですから、その辺のギャップは埋めていって、全体として我が国のいわゆるスーパーコンピューティング、ハイパフォーマンスコンピューティングの要するに馬力を出すためには、相互がうまく乗り入れてブレークスルーをというようなことを求めなければいけないと、こういうことだろうと思います。

【中村委員】

 はい。

【土居主査】

 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

【米澤委員】

 いいですか。先ほど宇川先生が言われたことは非常に正しいと思うんですけれども、今、土居先生が言われたように、計算機、スパコンを使うほうもアプリケーション・プログラムはだれかがつくって、それをただ流せばいいというのではもう済まなくなっていて、もっと自分でチューニングするなり、プログラムの書き方からある程度注意して書かないと全然動かないというか、パフォーマンスが全然出ないというのがある。
 それの基礎はやっぱりある程度計算機科学なりそういうものの知識というものをどこかで聞いておかないと、それが今日本ではそれを聞くようなチャンスが大学のシステムの中でほとんどないんですよね。ですから、それをうまい形でうまくそれぞれの分野の中に折り込んでいくというのがまず最初にやるべきこと。それによって、計算機の特性、スーパーコンピュータの特性を比較的よく知って、各分野の専門の方が、各アプリケーション分野の専門の方がたくさん出ていくということがまず第一にやらなきゃいけない、そういうための実現体制というのをしていくのがこのペタコンに対する一つの契機になっていると思います。

【土居主査】

 そうですね。ありがとうございました。
 どうぞ。

【平尾委員】

 私はやっぱり日本の持っている計算機資源の有効利用というのを、もっとほんとうに今度は連携をとって考えないといけないと思っています。
 それで、特に情報基盤センターあたりは、米澤先生にもお願いしないといけないかもしれませんが、もっとHPC教育に乗り入れて積極的にやっていただいて、それをしないとほんとうの意味のシミュレーションのいいもののブレークスルーというのはないわけですよ。次の世代をほんとうに育てないといけないわけで、これは非常に重要な問題なんですが。
 すべての問題をこの神戸にできるペタコンに持ってくればいいという問題じゃなくて、やっぱり下からほんとうに積み上げていかないといけないわけで、そのことを考えないと、上だけ変えたらいいというものでは私はないと思うんで、だから、この戦略委員会でも場合によってはそれぞれの大学の持っている基盤センターがもっと教育に積極的にやってほしいというふうなことを出してもいいような気もするんですけどね。

【土居主査】

 そうですね。
 有川さんが長となられて、基盤センター、これとの連携というようなことで何かまとめられていますよね。

【井上計算科学技術推進室長】

 そうですね。はい。

【土居主査】

 あれは去年、? ありますよね。

【舟橋情報課長】

 はい。情報基盤作業部会のほうでまとめて頂いております。

【土居主査】

 ですよね。だから、積極的に、要するに神戸の頂として下からのところで、各大学の基盤センターが下支えするというか、そういうような役割を演ずるというような形のレポートですよね。

【舟橋情報課長】

 はい。今後、連携し、また、適宜分担してやっていくという。

【土居主査】

 ですから、そういう覚悟はしていただいてるわけですから、しっかりとそことの密に連携をとって、やっぱり先生がおっしゃったようなことを展開していく必要があるかと思いますよね。
 基盤センター代表として米澤先生に来ていただいているので、できないとは言えない。

【米澤委員】

 はい。何でもいたします。実際にいろんな形で連携させていただきたいと思います。8つの大学のセンターも今わりと強く連携しつつありまして、それを含めて神戸の話とうまい連携ができ、役割分担ができればと思っております。

【土居主査】

 ぜひお願いいたします。
 どうぞ、寺倉先生。

【寺倉委員】

 前からこの委員会でも議論されていると思うんですけど、情報科学とか計算機科学、計算機工学の人がアプリケーションのほうに協力してくれるということがこれまで非常に少なくて、それをエンカレッジしようとすると、それらの分野でこの次世代スパコンプロジェクトというのはどのくらい盛り上がっているのかというのが多少気になるんですよね。
 アプリケーションのほうのコミュニティはかなり一生懸命次世代スパコンをどう使うかという議論をしてると思うんですけど、情報科学とか計算機工学、計算機科学のコミュニティーでどのくらいこのプロジェクトが意味を持っているのか、そこが非常にキーになるんじゃないかという気がするんですが。
 具体的に、例えば金沢大学ではアプリケーションと計算機科学か計算機工学の両方あると思うんですけど、そのあたりの連携が結構難しいということは前にも伺ったことがあるんですが、実際的にはどういうふうに進んでいるか、何かコメントがあれば聞かせていただければと思います。

【斎藤教授】

 そうですね。金沢大学の計算科学の場合は、シミュレーションのほうに重きがある。それで、今後並列のコンピュータなどがありますとやはりもっと連携が必要である、また、教育の中にもそういうものを取り入れていかなきゃいけないということで、現在取り組んでいるという段階です。

【土居主査】

 実際問題どこから始めるかというのは、米澤先生がさっきおっしゃったようなことで、計算機科学のほうからすると、プログラミングも一つの学問分野としてあるわけですよね。ですから、どのようにプログラムはやはりつくるべきかというようなものもあるわけですし、ベストプラクティスもあるわけですから、そういうようなところからもきっちりそれぞれがそれぞれに教え合うと言ってはおかしいんですが、切磋琢磨する中で、一緒になってやっていくというようなことが重要なんだと思うんですけどね。
 それから、どんな人材を育成する必要があるかというのが多少かかわってまいりましたけど、こちらのほうはいかがでしょうか。計算機、ここでは計算機科学の知識にたけた人材、計算科学の知識にたけた人材、あるいは、両方の双方の知識にたけた人材ということで、今、寺倉先生がおっしゃられたようなこと、それと、ここの下にありますトップレベルの人材の育成から、先ほどご指摘もありましたが、要するに一番すそ野でやる人材、及び、具体的には要するに今度のスーパーコンピュータに最適化をするような人たちまで含めた何かをしなきゃいけないわけですが、そういうようなことに関してはいかがでしょうか。どうぞ。

【小柳委員】

 このどのような人材をということで、例えば計算機科学の知識にたけた人材、つまりCSですね、コンピュータサイエンスの知識にたけた人材というのはCS学科が多分おつくりになるし、事実もう既につくられている。
 計算科学というとき、例えば科学、1つ例として計算物理の知識にたけた人材というのは計算物理の分野の人が多分それはつくられると思うので、じゃあ、我々がここで考えている人材は何かというと、やはりさっき私が何度も申し上げているように、計算科学の諸分野の連携ができる人材という、ちょっとなかなかうまく表現できませんが、違った分野の計算科学、場合によっては計算機科学を含めてですが、間の通訳というか交流ができる人、こういうのが一つの理想像ではないかと思います。
 どうしても、さっきから言っているように、このいろんな各分野がタコつぼになっていまして、例えば先日もある分野の方で新しいアルゴリズムを発見したといっていろいろご説明を聞いたんですが、よく考えると、これはもうCSの分野では20年前から既に確立している分野で、多少もちろんアプリ寄りですから違うんですが、そういうようなことがよくあるわけで、この点の率がよくなれば、もっと全体の進歩に寄与することができるのではないかと思っております。

【土居主査】

 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

【米澤委員】

 すみません、何度も。このどういう人材をつくるべきかという話で、我々の今情報基盤センター、東大の中でやっているプログラムでの言い方は、アプリケーション・ソフトウエア、アプリケーションが使える、それも、上手に使える人、それが1つ。それから、アプリケーション・プログラムを書けるようになる人、それから、もうちょっとコンピュータの中のシステム、あるいは、ミドルウエアまでいじれる人という、そういう3層、3レベルと言ったほうがいいかもしれませんね。
 ですから、最初の1レベル、アプリケーションがちゃんと使える人というのは、ちゃんとというところが難しいんですけど、それぞれの分野の中でアプリケーションを、既に書かれたアプリケーション・プログラムを使える人はたくさんいるけども、上手に使える人というのは少ない。それはどういう方かというと、もともとそのアプリケーションのドメインの研究をされている方ですね。
 それから、実際にアプリケーションを書けるというのは、この辺になるとここでいう両方わかっている人にかなり近くなってくると。
 それから、システムまである程度いじれる人となると、それはやっぱり計算科学、いわゆる情報科学をちゃんと学んだ人じゃないといけないだろうというような、そういうふうな見方というんですか、分け方をしてカリキュラムをつくるという感じにしているんですけど。

【土居主査】

 なるほど。これは今の分野もさることながら、下のほうが、例えばいろいろな戦略等々を含めますと、トップレベルの人材の育成というのはそれなりに進められると思うんですが、要するに、最適化を含めてお手伝いできる方々というのはどのように育っていったらいいかと。これ、とにかく早急に育てなきゃいけないわけですよね。
 それで、神戸に張りつかれるというだけでなくて、基盤センター等のところでも協力いただかなきゃいけないんですが、この点に関して何かアイデアはありませんでしょうかね。
 要するに、下支えしていただく、ある意味において、こういう方々がいらっしゃらないと、上でうまく走らせられないというような面だって出てくるわけですからね。何かお考えありますか。

【宇川委員】

 よろしいですか。

【土居主査】

 どうぞ。

【宇川委員】

 やっぱりそこが教育の問題ではないかと思うんですね。ちょっと時間かかってしまうと思うんですけども。
 だから、今の状況というのはアプリケーション・ドメインはそれぞれで人はどんどん出している。それから、計算機科学のほうも人はどんどん出していると。でも、その両者の知識なり経験なりのオーバーラップがほとんどない。だから、その中間を埋めるような人も出てこないし、お互いが何をやってるかもよくわからない。
 そこのところを考えると、アプリケーション・ドメイン側の人にとっては、計算機工学、そういった知識をもっと教育をされつつ育っていけば、そちらのほうにしみ出てくる人ももっと出てくるでしょうし、計算機工学の人にとってはアプリケーションをもう少し全般的な知識でもいいから持って育ってくれば、そちらのほうにしみ出ていく必要も増えるんじゃないかと。
 だから、ちょっと時間がかかるんじゃないかと。

【土居主査】

 どうぞ。

【小柳委員】

 今のお話ですが、じゃあ支援を担当してくれる人材をどうやって養成するかというお話だと思うんですが、早い話が、ばりばりの研究者でドクターを取って、さらに研究者として進んでいくというような人をそういうところに使うわけには多分いかないだろうと思われますね。
 ですから、実際のイメージ、例えば修士を出たぐらいでわりにそういうことに詳しくて、ある程度アプリケーションを知っているし、計算機も知っていると。だけども、研究者としてほんとうにユニークなことをやっていくというほどの興味も能力もないという人が多分そういう支援の人の一つのモデルじゃないかと思うんですが、問題は、キャリアプランとしてそういう人が今後の人生を生きていけるような道をちゃんとつくるかどうか、これが大変重要な問題ではないかと思います。

【土居主査】

 まさにそういうことだと思うんですが。
 どうぞ。

【平尾委員】

 私は今度神戸にできるマシンというのは、そういう意味ではほんとうに世界最速に近くて、最速のものを、そして、部品の数でもものすごい数になるわけです。そういう意味では、これまでの支援の仕方とはもう全く違うわけですね。だから、そういう意味では世界で初めて新しい支援体制とか、オペレーションにしても運用方式を自分たちがつくるんだという形の、そういう意味では非常にやりがいのある仕事でも私はあると思うんですね。
 そういう中で人を育てていく。それから、小柳先生が言われたように、そういうきちっとした評価システムをつくって、そういう人たちが後に育っていくというのをやっぱりつくらないといけないと思うんですね。それはほんとうに神戸の拠点でやっぱりつくらないといけないし、導入しないといけないしというのはあると思いますね。

【土居主査】

 どうぞ。

【米澤委員】

 一言だけ。
 小柳先生、平尾先生がおっしゃったことは全く私も同感で正しいと思います。
 1つだけ、手前みそなんですけど、我々のセンターにはちゃんと学位を持って、いわゆるチューニングというのを一つの研究テーマとして、それは別にその人が変わっているわけじゃなくて、アメリカだったらバークレーにも、それから、イリノイにもいますし、それなりのキャリアパスじゃなくて、ちゃんとした研究者としての道ももちろんあるので。
 ですけども、基本的にはマスターを終わってもうちょっと何かと言われた、小柳先生の大部分になると思いますけれども、そういう方もいらっしゃいますし、そういうコミュニティをエンカレッジ、そういうコミュニティというのはそういうのを研究テーマにして自動チューニングあるいは何とかチューニングとかというのを研究分野としてやっていらっしゃる方をエンカレッジして、そういう方にまた次の代を教えてもらうということは大事だと思います。

【土居主査】

 ほんとうに評価関数をうまくとらないとデータベースみたいなことになったら困るわけで、そうすると全体として我が国に何もデータベースができないというようなあれにもなって、いや、実は違うんです、地学のほんの一部は世界的に貢献しているんだそうですが、それ以外はだめだと、こういう話になっているものですから、それはデータベースをつくるということに関しての評価関数が違う、別のものをつくっていただかなきゃいけないんですけど、それと同じようなことになりますとパスが途切れてしまうというか、行き手がいなくなるということだけが要するに懸念されるので、何かそれは心が高まる話を全部つくらなきゃいけないというんだと思うんですが。
 中村先生、どうぞ。

【中村委員】

 今のどういう人があり得るかということなんですが、日本のSPring-8とかフォトン・ファクトリーでビームラインのお世話をしている人というのは大体きちんと博士を持った研究者で、我々の研究所でもビームラインを持っているところで一般利用というのがあって、その面倒を見る人は必ずいないといけないんですね。それはきちんと動いております。
 それをやるのはもうきちんと学位を取ってそれなりの専門家がやっているんですけど、もちろんそういう仕事と別に、自分自身の研究の時間というのもある程度持てると。そういう形であれば、全くキャリアパスがないとかそういうことにはなり得ないんじゃないかと、その見本があると思います。

【土居主査】

 なるほどね。ありがとうございます。
 ほかはよろしいですか。
 そうすると、次へ移るとして、今日だけの話じゃありませんので、たびたびこういう問題はそれなりにいつでも問題として取り上げなきゃいけない問題だと思うんですが。
 その次にありますオールジャパンとしてどのような体制を構築していくべきか、そのために、また教育利用枠のあり方はどうだというようなことで、先ほどもご提案が両先生からもあったわけですけれども、この辺に関しましてはいかがでしょうか。

【宇川委員】

 よろしいですか。

【土居主査】

 どうぞ。

【宇川委員】

 これは明らかに役割分担なんだと思うんですね。例えば、学部段階の教育まで全部、じゃあ、神戸でやるかと、そんなことはあり得ないわけで、それは各大学でやるんでしょうと。それから、修士レベルまでもそうかもしれないですよね。でも、例えば後期になって非常にアドバンスなことをやり始めたら、それはある意味、神戸で実際の生きた研究をやりつつやっていくと、それが1つですね。
 それから、そのときに役割分担というときに、それぞれが固定化するというのは非常によくないので、そこの教員の交流、それから、学生の行き来、それが地理的にもこのピラミッド型の上下でもできるような仕組みをつくるというのが大事なことじゃないかと思います。

【土居主査】

 ありがとうございます。
 ここにあります産業界の人材育成なんていうようなことになったときに、伊東さん、どんな案が出てきますかね。

【伊東委員】

 2つあると思うんですけど、1つ、私が感じているのはやっぱりスパコンと一言で言うんですけど、マッシブのnが違ってくると質が変わってくるというか別物になってくると思うんですね。
 だから、今回の数は半端な数じゃないんで、これが従来の皆さんが今例えばつくられているスパコンの延長線上にあるのかどうかということをちょっと考えないといけないと思うんですね。
 何を言いたいかというと、ある程度、nの普通の数の大きさを一回こなしてないと、この莫大な数はこなし切れないだろうなというのが1つあります。
 それから、もう一つ、先ほどインドとか中国でスパコンというのが割合うまく使われているという話もあったんですけど、一方では、使われてないという話もあって、なぜかというとシミュレーションってリアルな世界との照合をとりながらフィードバックをしていかなくちゃいけないんですけど、インドの人はリアルの世界に絶対に行きたがらないというか、むしろ職制上行けないというか、現場には入れないとかいろんな制約があるみたいで、バーチャルな世界とリアルな世界をつなぐというのはインドの、あんまりこれ以上言いませんけど、すごく難しいと。日本はもう研究者でも別に現場に行ってもいいんですけど、そういうことができないというのがあるので、そこは逆に日本としては何か生かせるところがあるんじゃないかと。

【土居主査】

 なるほど。ありがとうございます。 小林先生、何か特段この辺は。

【小林委員】

 今、伊東さんの言われたことは確かにそうだと思うんですね。今度のスパコンは地球シミュレータまでで、地球シミュレータでやったことがそのままできるかどうかというのはちょっとわからない、未知の世界で、そういう面で支える人たちという方々が非常にレベルを上げてもらわないといい成果が出ないおそれがあると。それをどうやって支えるような形をつくるのかというのは、多分産業界の方々はそれが今度のペタコンが使えるかどうかというあたりを非常に強く意識していますのでね。それが1点と。
 それから、産業界の人たちの人材育成というのは、私は機械工学の分野にいますのでそれほどでもないんですが、創薬とかそちらのほうの人は産業界の人たちがプログラムをつくるとかいう部分も相当多い。だから、これは産業界の人たちが独自に次世代スパコンの中に入ってそういう計算機科学と組んで一緒にやりたいと、やらなきゃいけないというニーズは多いんじゃないかなと思ったんですね。

【土居主査】

 なるほど。

【小柳委員】

 賀谷先生のところで、このパイロットプロジェクトみたいな産業界の人材をやっていらっしゃったと思うんですけど、何かその観点からご提言なり、何かございますでしょうか。

【賀谷教授】

 今年に神戸の計算科学振興財団と一緒に、社会人に対する教育を始めました。
 まず最初に、MPIとかOpenMPとかその辺の技術を教えるということでスタートしておりまして、それで、反響としてはぜひシミュレーションのモデリングとかそういうところまで発展するようなこともやりたい。我々も今後、いろいろなプログラムをつくっていく予定で計画しております。

【土居主査】

 現実問題、どれぐらいの方々が参加されているのですか。

【賀谷教授】

 今回は部屋の関係とか計算機資源の関係で16名来られました。

【土居主査】

 なるほど。

【賀谷教授】

 それはもう申し込みを公募したらすぐに応募がありましたので、そこで切りました。

【土居主査】

 そうですか。

【賀谷教授】

 はい。

【土居主査】

 米澤先生。

【米澤委員】

 ちょっとあれですけど、文科省の先端研究施設共用イノベーション創出事業でしたっけ、何かそういうプログラムを契機にして、いわゆる情報基盤センターも民間にマシンを使ってもらおうという、一部お金をもらったり、ただでやったりと、それが随分課題が進んでいて。
 それの延長として、多分7月か、もうすぐ今ポスターをつくっているんですけど、産応協と、それから、東大の生研と、それから、我々の情報基盤センターでその社会人向けのスパコン、HPCの講習会というか人材育成というか速成のプログラムを多分3日ぐらいで全部やってしまうとか、何かそんな。速習ですよね、講習会ですから。それが多分五、六十人の定員にしてると思います。
 

【土居主査】

 産業応用に関しましては、次回でしたっけ。

【井上計算科学技術推進室長】

 そうです。

【土居主査】

 次回ちょっとまた取り上げようと思っておりますので、またそちらのほうでもご議論いただければと思いますが。
 教育利用枠のあり方というのはどういうようにしたらいいかというお考えを。どうぞ。

【小柳委員】

 先ほど平尾先生がおっしゃったようなこと、そのとおりだと思うんですが、もう一つちょっとつけ加えますと、精神的効果というのもございまして、世界トップクラスのスパコンを使ったという経験がやはり若者、若手の今後のその以後の発展にプラスになることもあるので、ある程度はちょっと柔軟に考えていただければいいなと思っております。

【土居主査】

 なるほど。

【平尾委員】

 ちょっと誤解されるとあれかもしれませんが、私は全く排除すると、そうじゃなくて、例えば集中の講義とかそういうときに利用するとかそういうことは十分あり得ると思うんですね。あるいは、何か学生たちがコンテストをやるときに使うとか、そういうことはあると思うんですが、常時カリキュラムとして置いていて演習として使うというのはちょっとやっぱり10ペタのマシンを使うにはほんとうにそれでいいのかなという気がしているということです。

【土居主査】

 なるほど。どうぞ。

【中村委員】

 各大学の情報基盤センターとかそういうところの利用とうまくカップルできるような、そういう仕組みになっているといいなと思いますね。もともとそういうところでもうかなりの並列性能を出しているということを基盤にすれば、比較的試みていいですよという、そういうほうがいいんじゃないかなと思うんですが。

【土居主査】

 そうですね。
 ほかには何かありますか。
 基盤センターのレポートにもあったのだと思いますが、要は次世代のソフトの開発の場として使えるようにするというような、そういうようなしくみづくりがあったと思うんですよ。ですから、縦方向にはつながっていくような形にはなるというようなことで協力体制がしけるんだろうと理解しているんですけど、そうでしたよね。

【米澤委員】

 基本的にはそうです。

【土居主査】

 そうですよね。

【米澤委員】

 あと、何か例えばアーキテクチャーの話なんかももし新しいことをやろうとすると、かなり実験材料にはなるんですね。次世代の、次々世代のために使う。
 そういうことはありますけども、教育枠としては枠という形ではとらないで、何か一般枠の中でスポット的にやるとか、それか、あと、コンテストとか何か人をそういうアスピレーションを持たせるようなものがあるといいと思うんですけど、カリキュラムの中に埋め込むにしてはちょっと大き過ぎるというか、やりにくいんじゃないかなという気がしますね。

【土居主査】

 なるほど。もっとも、先ほどの賀谷先生のご提案のような形の使いようも考えるというようなこともあろうかとも思うんですけどね。
 今日のところはこんなところですかね。よろしいですか。
 じゃあ、時間も迫ってまいりましたので、また繰り返しご議論をさせていただきたいと思います。
 それでは、次回の戦略委員会では、先ほどもちょっと申し上げましたけれども公開ということで、まずは戦略分野の設定に向けた議論ということをさせていただきたいと思います。

【井上計算科学技術推進室長】

 はい。

【土居主査】

 それから、今回の利用、教育利用に引き続きまして産業利用のあり方についてもご議論いただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 その他に移りますが、本日の議題としますと以上でございますが、先生方、ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、これで本日の委員会を終わらせていただきたいと思います。 どうもありがとうございました。
 両先生、ほんとうにどうもありがとうございました。

【賀谷教授】

 ありがとうございました。

【斎藤教授】

 ありがとうございました。

— 了 —

お問合せ先

研究振興局情報課計算科学技術推進室

(研究振興局情報課計算科学技術推進室)