次世代スーパーコンピュータ戦略委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成21年2月25日(水曜日)14時58分~17時06分

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3.出席者

委員

土居主査、伊東委員、宇川委員、小林委員、寺倉委員、中村委員、平尾委員、矢川委員

文部科学省

倉持大臣官房審議官(研究振興局担当)、舟橋情報課長、飯澤学術基盤整備室長、井上スーパーコンピュータ整備推進室長、中井課長補佐

オブザーバー

東海大学大学院人間環境学研究科長 内田 晴久、日本原子力研究開発機構システム計算科学センター次長 中島 憲宏、核融合科学研究所シミュレーション科学研究部研究主幹 中島 徳嘉、大阪大学レーザーエネルギー学研究センター長 三間圀興

4.議事録

【土居主査】

 定刻より二、三分前かと思いますが、おそろいのようですので、始めさせていただければと思います。本日は、たくさんの先生方にわざわざお越しいただきまして、どうもありがとうございます。この戦略委員会の主査を仰せつかっております土居でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、本日が第6回になるのですが、委員会を始めるに当たりまして、事務局から、本日の配付資料について確認をお願いいたします。

【事務局】

 それでは、お手元の議事次第と照らし合わせて、資料のご確認をお願いいたします。配付資料でございますけれども、まず最初に、「光合成に学ぶ、太陽エネルギー利用技術の構築」という資料で、後ほど東海大学の内田先生にお話しいただくものです。その次に「原子力エネルギー分野の技術革新と次世代スパコンの戦略的活用」、後ほど、原子力機構の中島先生よりお話しいただくものです。さらに、「核融合シミュレーションとその広がり」ということで、後ほど核融合科学研究所の中島先生にお話しいただくものがございます。また、前回までの配付資料につきましては、机上のファイルにとじております。配付資料に欠落等がございましたら、事務局までお知らせください。以上です。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。また足りないものがあったら、その都度おっしゃっていただければよろしいかと思いますので、進めさせていただきたいと思います。
 お手元の議事次第に沿ってといいましても、1番の「戦略分野について」しかないのですが、早速そこに入らせていただきたいと思います。本日は、エネルギー分野につきまして、東海大学の内田先生、日本原子力研究開発機構の中島先生、核融合科学研究所の中島先生に、それぞれ戦略分野にふさわしい課題につきまして、お話をしていただきたいと思っております。また、議論に参加していただくために、物質・材料研究機構から、大野センター長、日本原子力研究開発機構から、平山システム計算科学センター長、町田シミュレーション技術開発室長。それから、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターから、三間センター長にお越しいただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 お話をしていただきます流れといたしましては、各先生にお話しいただいた後に、それぞれ質疑応答、そして最後に全体の質疑応答という形にさせていただきたいと思います。早速でございますが、まず初めに、内田先生にお話しいただきたいと思いますが、内田先生は材料学、環境科学をご専門とされ、マックス・プランク金属材料研究所、神奈川科学技術アカデミーで研究に従事された後、現在は東海大学大学院人間環境学研究科の研究科長でいらっしゃいます。では、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【内田教授】

 どうもご紹介ありがとうございました。私、きょうは応用物理学会の中にございます、エネルギー・環境研究会というのがございまして、そちらの代表ということで、こちらへ出席させていただいております。応用物理学会のほうでは、ここ数年、やはりこれからのエネルギー問題を踏まえまして、いわゆる太陽エネルギーの有効利用が非常に重要ではないかということで議論してまいりました。
 きょうは、そういった意味で、この研究会のメンバー、いろいろな人間がございます。最後のほうでご紹介させていただきますけれども、実験屋、計算屋、理論屋、いろいろございます。きょうはそういったメンバーの方々が、こういった資料を持ち寄りまして、重点ポイントをご提案させていただくわけでございます。実は私は、計算が専門ではございませんで、どちらかといえば実験屋でございまして、そういった意味で、そのメンバーでもあり、またこういった研究を、今後中心的に活動していっていただく場の1つとしての、独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)の研究センター長の大野様にも、きょうご同席いただいています。また、計算に関する件に関しましてのご質問等ございましたら、私、ちょっとかわってお答えさせていただきたいと思っております。前置きが長くなりまして、申しわけございません。では、早速お話しさせていただきます。
 「光合成に学ぶ、太陽エネルギー利用技術の構築」ということで、現在、皆様よくご理解されているように、最近の地球温暖化といった問題がございます。これは主に化石エネルギー資源の大量使用による大気中の二酸化炭素の濃度の上昇、それによる平均気温の上昇といったものが非常に危惧されているわけでございますが、人為的な温室効果ガスの影響である確率が9割を超えるとも言われております。これはとりもなおさず化石燃料に依存しているわけでございますが、考えてみれば、もともとこの化石燃料も、過去2億数千万年の間の太陽エネルギーの蓄積であったというふうにも見ることができます。これを我々人類、世界が、非常に短い期間で大量に消費している。大気中のCO2も上がって当然ということでございます。また、それを急激に使っているというわけで、その内蔵量も、40年から150年と出ておりますが、この辺の数字は何が正しいというのはなかなか難しいところではありますけれども、比較的短い時間の間に枯渇することも予想されるわけであります。
 一方、太陽からのエネルギーを考えてみますと、これはよく知られておりますように、太陽定数という形で、宇宙空間に浮かぶ地球が1個の球体として、太陽からみれば1つの円盤になっているわけですけれども、その円盤に対して降り注ぐエネルギーが非常に大量であるということです。左側を見ていただきますと、地球上に降り注ぐ全太陽エネルギーは、人類が消費するエネルギーの大体1万倍ぐらいが地球に降り注いでいるわけでございます。大体人類が使うエネルギー1年分のエネルギーを、たった1時間で地球は受け取っているわけです。実は、このエネルギーが地球に降り注いできまして、ほとんどがまた宇宙空間に逃げていってしまっている。これはいわゆるエネルギーフローと言われているものですけれども、そのうちの一部が、いわゆる生物活動に伴いまして、バイオマスという形で蓄積されているというわけでございます。何とかこの流れてしまっていっているエネルギーを使えないかというのが、そもそもの太陽エネルギーの利用の最も基本的なところであろうかと思います。
 では、日本ではどのくらいかというと、実は、日本列島の面積を考えてみましても、日本が消費するエネルギーの、大体ざっと100倍ぐらいのエネルギーが降り注いでいると。1%のエネルギーということであれば、大体琵琶湖の面積ぐらいに相当するのでしょうか。そのエネルギーをうまく活用できれば、かなりのエネルギーの問題の解決が期待されるわけでございます。
 その太陽エネルギーを利用していく上で、現在最もポピュラーなものがシリコン太陽電池ということになりますけれども、変換効率30%を超えるのは、難しいのではないかと言われております。2020年が大体18%。そして、2030年に、発電コストとしては7円を目標としております。これでかなり太陽エネルギーの利用は進むかと思われますけれども、やはりもっともっと高効率のものを見つけていかないと、実は設置面積という問題がございます。やはりどこかに面積をとれば、地面に影ができるということもございます。できるだけ太陽エネルギーを高効率に変換して蓄積していく。あるいは、ほかのエネルギーの形に変えていくということが重要な課題になってまいります。
 色素増感太陽電池も、期待されているものの1つではありますが、現在の変換効率11%強、理論変換効率、大体三十数%ぐらいとも言われております。実用化は、もっともっと将来、先のことになりそうだと見られています。
 またそのほか、太陽光のいろいろな波長を有効的に使うといった形では、量子ドット型の太陽電池といったものも考えられております。それでも理論変換効率70%未満ということになっておりまして、これは海外でも、今、最も基礎的な研究が進んでいる分野の1つでもあるかと思います。
 また、人工光合成(光触媒水素生成)というものがあります。現段階では1%未満の変換効率です。ただこのメカニズムは、きょうご提案させていただきます、いわゆる植物、あるいは細菌類が行っております光合成というものがございます。かなりそれに似通った仕組みを持っている可能性がございまして、そのあたりを解明していくことができれば、将来的にはかなり有望なプロセスになっていくのではないかと考えることができます。太陽光、太陽エネルギーを非常に高効率で使っていくためには、そのエネルギーを高効率で変換していく。太陽電池の場合ですと電気に変換するわけですけれども、その場合は、例えばエネルギーの変動ですとか、あるいはいわゆる太陽エネルギーですから、晴れたり曇ったり雨が降ったり、あるいは昼、夜で下がったりということがございます。そういった意味では、蓄積型のエネルギー変換といったものも、まさに光合成に学んでいけるのかなという気がしております。また後ほどご紹介させていただきます。
 また、こういった太陽エネルギーの利用ですけれども、これは非常に今、チャンスが来ているのかなという気もいたします。昨年の秋からの経済不況の中で、例えば米国では、皆様ご存じのように、バラク・オバマ大統領がグリーン・ニューディール政策を打ち出しております。これはアメリカだけではなくて、ドイツや韓国などでも同様な動きが出ておりまして、非常に多額の予算を投資しまして、新エネルギー開発を行おうというような話が出ております。太陽エネルギーを使っていくというのがその機軸になっているわけでございますが、日本も、これを1つのチャンスとしてとらえて、日本の先進的な材料・デバイスの技術を構築していく、実際の実験技術がございます。あるいは、生産技術がございます。それに加えて、マテリアルシミュレーションでもってそれを強化して、サポートして、いわゆる世界の中でも、日本がそういった技術をリードしていくいいチャンスになるのではないかなという気がしております。
 米国の動きでございますが、やはり米国のほうでも、National Nano-technology Initiativeといったようなところで、10年近く前からこういった関連の基礎研究がスタートしております。エネルギー省では、戦略的基礎研究ということで、燃料生産、それから発電という2つのテーマで、例えばHELIOSプロジェクトといったようなものがございますが、燃料生産のところでは、光合成の機構解明とか、一部機能タンパク質の利用とか、基礎研究を進めているところでございます。
 ちょっと下のほうに書かせていただきましたけれども、米国の光触媒特許出願数が、水素等燃料生産関係で、日本の出願数を上回っているというような状況もございます。こういった自然エネルギーを使うということ、それから、日本が資源、エネルギーにあまり恵まれていないというところで、科学技術、あるいはそれにかかわる人材育成というところもあるかと思いますが、そういったところを機軸としてこれから展開していくということは、将来的にも非常に重要なポイントではないかなとも思っています。
 これはHELIOSのホームページの図面ですけれども、太陽光で、いろいろなプロセスで、電気にする場合もありますが、化学エネルギー、水素、あるいはアルコール、炭化水素にかえて蓄積していくと。これが太陽電池、それから人工光合成というところでございますが、もちろんこの中のプロジェクトには、光合成細菌とか藻類による光合成、それから、いわゆる一般の植物、バイオマスに相当するところになろうかと思いますけれども、そういったものを総合的に利用して、こういった太陽光、自然の太陽エネルギーを利用していこうといった取り組みが、現在進行中ということでございます。
 シミュレーションがどういう役割を担っていくであろうかということなのですけれども、現在の太陽電池ですと、大体量子効率90%ぐらいではないかと思われますが、エネルギーは電力で出てくるということで、その後、電力を貯蔵するということも必要になってまいります。その場合、電池を使うのか、あるいは何らかの方法で、例えば電解で水素をつくるのかといったことが出てまいりますが、そこでの変換効率のロス、あるいはいろいろな設備が必要になってくるというところでございます。今回の絡む大規模シミュレーションのニーズというものは、それほど高くないのが現状でございます。
 光触媒はどうかといいますと、これはとてもまだまだ現状では、量子変換効率は高くございません。材料探索にもっと多くの検討が必要になっておりますが、大規模というよりも中規模のシミュレーションで、当分の間対応していくことが重要かなとも思われます。
 光合成ですけれども、これは量子効率が非常に高いのです。ほぼ1となっております。その機構解明と、新デバイスの開拓というものは、非常に複雑な計算が必要になってまいります。そういった意味では、大規模シミュレーションが必要な分野として、まさにこれはテーマとしてうってつけのものではないかなと思われる次第でございます。
 光合成についてですが、先生方ご承知のように、植物等の中では光合成、太陽エネルギーを変換して、結果的には有機物がつくられていくわけです。その反応は、光が絡む明反応、この後で、いわゆる光に依存しない暗反応の、大きく分けて2つがございます。この明反応ですけれども、光がかかわる反応はさらに大きく分けて2つございまして、光化学系反応2と言われるもの、それから、光化学系1と言われる反応です。ここで水が酸化されて酸素が出てまいります。そして、ここにさらにプロトンと電子が出ます。それが伝達されていきまして、ちょっと複雑な名前なので略していいますけれども、ここではNADP-H。そして、2リン酸から3リン酸という高エネルギーのものができまして、このNADP-HとATPから、いわゆるCO2を原材料にして、いわゆるデンプンが蓄積されているといった、これが光合成の全体像でございます。
 こういった仕組みが、植物の細胞を見てみますと、こういった葉緑体が幾つも中に漂っていると。その葉緑体の中のこういったところに、こういった反応機構が組み込まれているわけでございます。特に今回のご提案で注目しておりますのが、光化学系2のところでございます。実際には、こんな分子構造をしております。この中に、いわゆるクロロフィルの色素系の分子と、それの回りを囲むような形で構成されていますタンパク質がございます。まさにここで非常に高効率な光のエネルギーが変換されている状態が実現されているのが植物の中、光合成ということでございます。
 高効率電荷分離デバイスというものが解明できれば、これが実現できるわけですけれども、その中で3つのポイントがあろうと思います。1つは、これが先ほど見ていただきました光化学反応系の、黒い線がいわゆる色素分子です。色素系のクロロフィルの集合体です。まずここの真ん中に、クロロフィルの2量体というスペシャルペアというのがございます。ここがまさに光のエネルギーを受けて、電荷分離が生じます。ここの電子とホールができるわけなのですけれども、そのできた電子が、こう右側のほうへ伝わって流れていく。そのエネルギーによって、さらにここの反対側のところで酸素が発生するということになっているわけなのですが、普通ならば電荷分離して、場合によってはそれが再結合する場合もあるわけなのですけれども、ほとんど再結合が起きていないというのが現状です。
 それがこれから次から次へと分子を伝わって、そのエネルギーが伝わっていくわけなのですけれども、クロロフィルが電子を受け取ったり、あるいは、次へ伝えていくという役割を担っております。同じクロロフィルの分子の構造をとっているにもかかわらず、非常に大きな役割の違い、機能が分かれております。ここでは27段階ぐらいだったと思うんですが、非常にエネルギー差の小さい段階をどんどん伝わっていきまして、本来ならば、また逆戻りをしてもいいのですが、非常にエネルギー損失がなく、どんどんどんどん伝わっていくと。また、このスペシャルペアのところでは、非常に高い光の吸収率が実現されていると。こういったことが解明できてきますと、ほんとうに今までにない、新しい概念でのエネルギー変換デバイスを構築することが可能になるのではないかなと考えるわけです。
 これは植物光合成の電荷分離とエネルギー変換効率ということで、光合成2と1が、今、注目しているところでございます。全体で、両側で27ステップございます。27ステップもあるにもかかわらず、全体の量子収率が悪くても0.8、ほぼ1に近いということです。ということは、一つ一つのステップの変換効率のロスが非常に少ないということで、また戻ってもいかないということなのです。この辺が非常に新しい知見を与えてくれるものであろうと期待されるわけでございます。
 これは同じタンパク質ですけれども、光合成細菌の中の同様な色素を含むところの分子モデルでございます。この中にもクロロフィルが入っております。それから、ここに同じようなクロロフィル分子を持っている、これは人の名前を略しているのですが、FMOというタンパク質がございます。ここのところは電荷分離というよりも、光エネルギーを伝搬する役目を担っております。これがまた非常に高効率で、エネルギーを伝搬していくことができると。同じような分子構造を持っているにもかかわらず、いわゆる電荷分離の機能と、エネルギー伝播の機能と何がそういった機能の違いを生んでいるのかという、その辺が解明できてくると、ほんとうに新しいデバイス概念を生む可能性があると考えております。
 光合成における高効率電荷分離メカニズムの解明ということが、この提案の主目的でございますが、原子数、2000原子とか20万原子とか、いろいろ対象を選ぶことができるのですが、非常に数多くのものを一緒に考えていかないと、非常に難しい問題が出てきております。例えば、光合成色素のところ。電荷分離が起きて電子が流れていくのですが、実はほとんど左右同じような対称の構造をしております。ところが、なぜか電子は右側だけを伝わっていくというようなことが知られております。しかも、スペシャルペアから次のところへ渡るのに、10オングストロングぐらいの空間があるのです。そこを非常に速い時間で、0.3ピコ秒ぐらいで飛んでいくと言われているのですが、その理由がまだわかっておりません。その辺が解明できてくると、それも新しい知見になろうかと思います。
 それから、もう一つ先ほどちょっと触れましたが、水から酸素をつくるマンガンクラスタというのがございます。ここはいわゆる電子エネルギー、励起状態エネルギーが飛んできまして、ここで4つのマンガンが、実はそばにカルシウムがあって何か働きをしているらしいということもわかっているのですが、どのような仕組みで水を酸化して、酸素と電子と水素、プロトンをつくるのか、そのあたりが実はわかっておりません。ここの構造解明もX線解析等でやるのですが、なかなか解析するときのエネルギー照射で非常に揺らぎが多くて、そこの構造もよくわかっていないのが現状です。
 本研究提案で、主に2つの計算を提案しているわけでございますが、そのうちの1つが、高効率の電荷分離メカニズムの解明です。1つは、タンパク質と色素分子の全電子計算です。例えば、個々のクロロフィルの計算ですと、どうしてもわからない問題がいっぱいあるのです。どうして高効率なのか。これは多分、全体の周辺のタンパク質ですとか、ほかのクロロフィル分子等の全体がつくる、例えば電場ですとか、これはまだわかりませんけれども、そういった全体のものがわかってこないと、その反応機構は解明できないだろうと考えられています。ですから、まずそれを全体として計算するということが必要だと。それから、同じようなことで、電荷分離とエネルギー伝搬ということで、この辺をやっていくことが、1つ重要なテーマになってまいります。
 これはCRESTのほうでの計算結果が一部出ているということでございまして、実は、既に試行的な計算が出ておりまして、励起スペクトルがなぜ右側だけを伝わっていくのか、それがそういった形で、少し計算結果が出ているという例でございます。全体の場がわかってくると、この辺の値が少し変わってきて、そのメカニズムがわかってくるであろうというわけであります。
 それから、2つ目が、先ほどちょっと触れました、マンガンクラスタにおける酸素発生メカニズムの解明ということでございます。マンガンクラスタですけれども、水分解をするというところで、これは光触媒であります酸化チタンと一体何が違うのか。あるいは、なぜこういった光合成系のほうであれば高効率なのかといったようなことも、部分計算ではどうしてもわからないことが多いです。構造を決定する上でも、やはりこういったシミュレーションというもの、それももっと広い領域において計算していくということが非常に期待できる効果をもたらすであろうと考えられているわけです。
 シミュレーションで計算をしまして、ではその結果をどうするかということでございますが、こういった計算をしていった結果を、先ほど触れましたように、新しい動作原理のデバイスへ応用していけるのではないかと考えております。例えば、電子・正孔対の生成のところであれば、色素分子クロロフィルのところですね。これは人工光合成で言えば、ナノ構造物質の材料設計といったところにつながってまいります。高効率の電荷分離、タンパク質をつくる場は、緩やかな場というような言葉を今回考えておりますが、ポテンシャル場の設計によりまして、いろいろな新しいデバイス概念が誕生するのではないかなと思います。それから、光触媒としてのマンガンクラスタのところです。反応場の設計、このあたりも貴重なデータが得られる。それに基づいて、新しいデバイスの提案が、実は既に幾つか研究グループでは、実際にそういったものをつくるというようなことが、今、出てきております。
 光合成は高度に組織化された複雑系であるために、種々のシミュレーション手法の適用が必須です。下記のプロジェクトで開発中のプログラムを総合的に活用していこうと考えております。CRESTでの取り組み、あるいはグランドチャレンジでの取り組みです。それから、イノベーション基盤シミュレーションソフトウェアの研究開発です。これからプログラム開発者と、そのほか関連する研究者は、ぜひ広く協力要請をしまして、展開をしていきたいなと思っている次第でございます。
 また、一番最初にもちょっと触れましたけれども、応用物理学会エネルギー・環境研究会ですけれども、2006年11月に発足いたしまして、現在、まだ30名程度。それでも今、いろいろな研究グループが合体しようとしております。そうしますと、もうじき100名ぐらいのグループになるかもしれませんが、現在でも九大、阪大、名大、あるいは、1つの特色は、いわゆるデバイス関連の企業の方々も入っているというところでございます。それから、産総研、物材機構というところで、こういったメンバーが、多分研究の中心母体になっていくのかなという気もしております。
 これまで研究会では、将来のビジョンということで、光分解の水素製造技術を、これまで2040年に向けたエネルギーロードマップというところでも、昨年まとめてきたところでもございます。この研究会、入会金も会費もただということで、学会会員である必要もないということで、非常に他の学会に対してもオープンな存在になっておりまして、応用物理学の関連分野との連携・融合で、人工光合成の研究を加速できる場になっていくのではないかと思っております。
 非常に応用物理学会、太陽電池や光・半導体デバイスの幅広い研究実績がございます。それから、光量子科学の先端研究基盤を保有しております。それから、他学会との連携活動を積極的に推進しております。特に何といっても企業が参加しているというところが、1つの特徴になっている場だということでございます。
 こういった計算科学研究者からの成果を、実際の実験研究者がつくる、施行する、あるいは学ぶということです。そして、それをまたフィードバックして、個別のシミュレーションをして、何とか次世代の人工光合成デバイスといったものへ展開していければいいかなと思っております。
 全体のまとめですけれども、光合成の初期過程のメカニズムの解明です。いわゆるスペシャルペアのところでの電荷分離、そこから反対側へのエネルギーの伝搬の仕組みです。非常に高効率のシステムでエネルギーが伝わっていくというところ。そして、マンガンクラスタのところでの酸素発生のメカニズム。これは光合成全体からしますとほんの一部なのかもしれませんけれども、ただ、そこのところの機構の解明は、多分、ほんとうに多くの知見をもたらしてくれるかと思います。また、それがわかってきますと、材料屋にとりましても、デバイスの設計・材料の選択といったところで、非常に有益な情報となってまいります。新しいデバイスの概念としまして、いわゆる単純なPN接合ということではなくて、回りのタンパク質がつくる広い場からなるデバイスというのでしょうか、穏やかな反応場というイメージで、新しい概念が出てくるのではないかなということを期待している材料研究者もいます。太陽エネルギー利用のための新動作原理の検討ということで、その基礎固めとして、いわゆる計算機を使ったシミュレーションというものが大いに役立つものと考えております。
 何とかこれからのエネルギー問題を解決していく上で、日本が置かれた状況というのもございます。資源とエネルギーがほんとうにない国ですし、その中で、いかに日本の経済を世界の中で引っ張っていくことができるのか。そういった視点で、ほんとうに重要なポイントになるのではないかなと考えている次第でございます。きょうは研究会の代表者ということでお話しさせていただきましたけれども、基本的にはこれは研究会のメンバーで、今、提案させていただいているというものでございます。ご清聴ありがとうございました。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの内田先生のご説明を踏まえまして、ご自由にご質問、あるいはご議論をいただければと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【平尾委員】

 平尾でございます。大変興味深く聞かせていただいたのですが、先生がまとめていただいた太陽光利用技術と大規模シミュレーションというテーブルがございますよね。太陽電池、光触媒、光合成という3つのジャンルに分けて、いろいろご議論といいましょうか、ご指摘いただいたのですが、光触媒というのは、藤嶋先生なんかが一生懸命やっておられるのですが、先生のご指摘どおり、効率が極めて悪くて、これはなかなか実用化に至るのには時間がかかるという気がします。それから、光合成に関しても、今、先生がおっしゃったように、植物は非常に巧妙にやっておりますけれども、それから、メカニズムもある程度はわかってきたと私は思っているのですが、これをほんとうの意味のデバイスにくっつけるというのは、なかなかやっぱり難しいという気がします。私個人的には、やっぱりエネルギー問題というのは太陽電池だろうと思っているのです。
 それで、2000年以降、世界では太陽電池の生産は、毎年30%とか50%ぐらいでどんどん伸びているのですが、2007年とか2008年ごろから、日本は逆にマイナスになっています。これは、私はシリコン結晶の供給不足だろうと思います。これに関しては、1つは、いかにシリコンを安くつくる技術を手に入れるかということと、もう一つは、いわゆる半導体原料を少なくするという薄膜のほうですね。アモルファスシリコンとか、色素増感とか、有機を使うとか、そういう系へ転換しようということで、日本は多分、こちらのほうに力を入れているのだろうと思います。
 いずれにせよ、多分一番可能性があるのは、私は太陽電池ではないかなと個人的には思っておりますけれども、先生のおっしゃった光合成も、極めてそういう意味では有望なところではあると思うのですが、シミュレーションで機構がわかるということは、多分、ペタフロップスクラスのものを使うともっと詳細にわかりますし、非常に学術的にもおもしろい結果が出てくるのだろうと思いますが、そことほんとうの意味のデバイスとを結びつけるというのは、どういうふうに先生のほうではお考えになっているでしょうか。

【内田教授】

 ご質問ありがとうございました。今、ほんとうに太陽電池は生産量がどんどん増えておりまして、太陽電池でこれからかなりの発電量が賄われてくるのかなという気は、確かに私もしております。ただ一方では、植物がまさに非常に緻密な構造でもって、同じように太陽エネルギーを変換して、それを有機物という形で蓄積するといった機能を実際に有して実現しているわけです。太陽電池でいくというのも1つの手かもしれませんが、やはりイノベーションといいましょうか、あるいは新しい科学技術分野を切り開いていくというところで、これはやはり日本としては、果敢に挑戦していくべきテーマなのかなという気がしております。そこのところが第1点です。
 それともう一つ、光合成と同じ機構が再現できるのか。これが材料屋、実験屋からして、こういったところがほんとうに実現できるのかというと、それはなかなか難しい問題は多々あろうかと思います。ただ、そういった植物の中の反応の機構がわかってきますと、いろいろなアイデアをもたらしてくれると思うのです。実験で何かデバイスをつくるといった場合には、やはり何らかの方法、超高真空を使うのか何を使うのかわかりませんけれども、限られてきますので、当然同じことはできないのですが、その何らかの方法でデバイスをつくっていく上では、新しい概念といいますか、新しいアイデアをいろいろな形でもたらしてくれるのではないかなと思っております。また、それが出てきますと、いわゆる太陽エネルギーの変換デバイスという、いわゆるエネルギーの変換デバイスだけではなくて、もっと裾野の広い、いろいろな科学技術の発展にも、これはいわゆるエネルギー変換デバイスというような形で展開が広がっていくのではないかなという気がします。
 まさにエネルギーは重要な問題ではありますが、例えば、太陽電池ですと、そのままですと、言ってみればかなり競合相手も多いのかなと。そういった中で、新しい分野を切り開いていくというところに大きな意味があるのではないかなと、ちょっと考えております。今、思いつくところではそんなところでございますが、いかがでしょうか。

【土居主査】

 よろしいでしょうか。ほかに。では、寺倉先生。

【寺倉委員】

 光合成は非常におもしろいし、いろいろとやっておられる最近の動きは、結構いいところまで来ているような気がしていて、それは今、平尾先生がおっしゃったように、非常に挑戦的なおもしろい問題だと思うのですけれども、一方、太陽電池の表で、大規模シミュレーションのニーズは高くないというところが、ちょっと何となく腑に落ちないのですけれども。一番最初のほうにお話しされた、量子ドット太陽電池というのは、あまりちゃんとメカニズムを知らないのですが、理論変換効率が70%あるのであれば、そっちのほうは何となく平尾先生のコメントとあわせて考えると、何とかデバイスに持っていけそうなものじゃないかと考えると、そこでなぜ大規模シミュレーションのニーズが小さいのか、そこがちょっと理解できないような気がするのですけれども。

【平尾委員】

 よろしいですか。既に量子ドットレーザーなんかは実用化されておりますし、それを太陽電池のほうに使おうという動きもあって、そういう意味では私、これまでの半導体というのは、言ってみれば、古典論しか使ってないのですよね。始めて量子論を使うデバイスなのです、量子ドットレーザーなんかは。その意味では、シミュレーションでないとできないことってたくさんあると思うのです。実験ではなかなかできませんから。私は、そちらにも力を入れていただきたいなという思いがあって、さっきそういう発言をさせていただきました。

【内田教授】

 わかりました。そうしましたら、光合成、植物の機構をシミュレーションして解明していくということなのですけれども、もちろん同じ模倣するということではなくて、従来の太陽電池ですとか、あるいは量子ドットデバイスへのフィードバック、あるいは応用といったものも展開していくことが十分考えられると思いますので、出てくる結果、これは逆に、そういった量子ドットですとか、あるいは色素増感ですとか、そういった研究者にも加わっていただいて、ほんとうに裾野の広い研究テーマ、あるいは分野になっていけば、それに越したことはないかなと思います。

【土居主査】

 ほかにはいかがでしょうか。

【宇川委員】

 よろしいですか。光合成というのは、いろいろな意味ですごく大事だということは明白だと思うのですけれども、私なんかの観点からすると、生命の歴史とか、医学的な観点のほうにすごく興味があるのですが、それはちょっと別のことなのですけれども。例えば、内容をお伺いしますと、タンパク質等の機能に非常にかかわりがあるわけですよね。そうしますと、ナノ、あるいはライフ分野の研究者の方々と、非常に分野的にはオーバーラップがあると感じるのです。お話を伺いますと、応用物理学会で、ある意味、わざわざエネルギー・環境部会という形でお立てになって研究を進められていらっしゃるわけですけれども、ナノとかライフ分野との交流については、どういうふうな状況になるのか。あえて視点なり考え方が違うという観点からそういうふうにしていらっしゃるのか、ちょっとそのあたりをお伺いしたいと思います。

【内田教授】

 これはあえてほかを退けて成り立っているというわけではございませんで、実は、これは応用物理学会の中でも、エネルギーと環境、特に環境という分野は、ほんとうに横断的な分野なのです。応用物理学会も会員3万人ぐらいいるのですが、非常に分野が縦割り構造になっておりまして、横の情報交換というのは、実はあまり活発ではなかったのです。そういった意味で、環境というキーワードで、そういったいろいろな分野をつないでいきたい、そういった考えもあってつくられている研究会でございます。例えば、ナノとかバイオといったところも、考え方が違うということではなくて、ぜひそういったところの研究者も絡んでくるようであれば、ぜひ共同・協力しながら進めていくべきだとも思っております。

【土居主査】

 どうぞ。

【中村委員】

 私は蛋白研から来ている人間でして、それだけではなくて、個人的にもこういうことに関して、ごく最近論文を出したりしていて、よく知っていると思っているのですけれども、そういう意味では、科研費の申請としては非常によくできているご提案だと思うのですけれども、ちょっと言い方が悪いのですけれども、ただ、応用物理学科としてご提案される場合は、先ほどからもお話があるように、いろいろなアプローチ法で太陽エネルギーを応用していくと。そういうことに応用物理学会のいろいろな分野の方々が取りかかれるテーマというふうに、もうちょっと間口を広めてもいいのではないかと思って伺ったのですが、それはどうでしょうか。

【内田教授】

 それは十分検討できることだと思います。タンパク、バイオサイエンスといったところの研究者もぜひ加わっていただいて、例えば、同じ光関係でも、結構光触媒系と太陽電池とであまり交流がなかったりということもあるようなのですが、それは非常に残念なことでありまして、環境、あるいはエネルギー分野というのは、将来の世代に向けて、今すぐできるだけ早く解決しなければいけない、今の我々に課せられた大きな課題でもあると思うのです。ですから、そういった意味では、分野を超えて、ほんとうにいろいろな研究者が協力しあいながら解明して、そして、それを日本の新しい知恵としてつくっていくところが、一番大事なところではないかなと思います。

【土居主査】

 ありがとうございました。まだご質問等あるかと思いますが、全体の討議のところに移させていただきまして、次の中島先生のお話に移らせていただきたいと思います。
 中島先生は、計算力学、設計工学をご専門とされておられまして、日立製作所で研究開発に従事された後、日本原子力研究所を経て、現在、日本原子力研究開発機構システム計算科学センター次長でいらっしゃいます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【中島次長】

 よろしくお願いいたします。原子力エネルギー分野からの戦略分野選定に向けた提案として、ご報告申し上げたいと思います。本日のご提案でございますが、目次に従いまして、はじめに社会的・国家的要請を。次に、次世代スパコンでなければ解決できない課題と見通し、について。そして最後に、簡単ではございますが、どういった拠点体制の構築が可能かという現状の状況を、ちょっとご報告したいと思います。
 社会的・国家的な要請でございますが、現在の日本社会の課題といたしましては、ご存じのとおり、エネルギーの安全保障の確立と、地球温暖化対策への貢献という課題が上がっております。この地球温暖化対策という課題から考えますと、低炭素社会をつくっていくというのが大きな問題だと思います。先ほどのご発表にもございましたとおり、発電は地下資源に依存する方法と、気候状態等に依存する方法の2通りがあるというのが現状です。当然のこと、地下資源につきましては、非常に電力発生量当たりの二酸化炭素の排出量が多いのですが、原子力を見てみますと、非常に特出したCO2の排出特性がございます。この数値は、気候状態に依存するエネルギーの算出方法と比べて、決して遜色ない数字であるということが言えると考えます。
 そういった背景から、国家的要請といたしまして、こういった低炭素社会をつくるという問題解決のために、環境と経済を両立し、持続可能な発展を実現していくという国家的な要請がございます。これらの要請は、総合科学技術会議、あるいは原子力委員会といったところからも報告がなされております。
 一方で、原子力エネルギーの課題として、大きくは2つございます。1つは、安全性と健全性の向上でございます。もう一つは、持続可能なエネルギー源の確保でございます。安全性の問題につきましては、昨今の中越沖地震でも見られますように、耐震性の向上であるとか、あるいは、商用1号炉が発電を始めて40年が経過すると。そして、それをまた継続的に利用していくという現状において、経年劣化対策という問題がございます。第2の課題でございますが、現行の軽水炉では、ウランを使っております。残念ながら、日本はウランという資源を持ちませんので、ウランの資源偏在の中から、全輸入という形をとっています。これでは日本国としての問題として、できるだけ輸入資源に頼らないという方向に移行するということで、科学技術のイノベーションをもちまして、エネルギー源のリサイクル、純国産エネルギーの獲得ということで高速増殖炉、さらには無尽蔵なエネルギー源を使って、核融合でやっていこうという持続可能な計画展開を、原子力分野では持っております。
 これらの課題をどういうふうに解決していくかということを、次のページで記載させていただきました。まず、軽水炉の発電施設の健全性・安全性という観点から申し上げますと、現行の発電している炉を、そのまま何か調べるわけにはいきませんので、どうしても実機実験が困難であるということから、計算科学を使った代替手段を考えていかなければいけない。また、資源依存脱却のためには、新型炉の開発が不可欠であるということで、これは効率的な研究開発が必要であるとされています。欧米等では、計算科学を使って原子力をリードするというやり方をとっておりますが、日本は、原子力分野では、安全至上主義ということが大命題となっておりますので、どうしても計算科学に対する力の入れ方が、欧米に比べて、少し不足しているというのが現状かと思います。
 しかしながら、こういった効率的な研究開発を進めなければならないというのは、現状明らかでございまして、そういったことを実現していくためには、マルチスケールとマルチフィジックスの総合工学・総合科学を展開していく必要がございます。もとより原子力分野は、多様な分野から構成されておりますので、こういったシミュレーション技術は幅広くいろいろな分野にも展開できると考えていますし、また、実績として、そのような展開を従来からしてまいりました。
 続きまして、次世代スパコンでなければ解決できない課題と見通しと題しまして、個別の問題について話していきたいと思います。ここでは、例として、4つのシミュレーションを列挙いたしました。原子力分野では、幅広い研究をやっております。いわゆる生命科学からエネルギーの発展の問題までです。今回は、エネルギーという問題に絞り込んで、これらの4つのシミュレーションを提案させていただきます。そのうち、特に次世代スパコン稼動5年後でも成果が見込まれ、さらにその後のエネルギー問題の克服につながるようなテーマを絞り込むということで、第1のテーマとして耐震シミュレーション、第2のシミュレーションとして統合シミュレーション、第3のテーマとして実機実験用炉を代替するプラントシミュレーション、そして、基礎基盤技術としての材料・物性シミュレーションという形を、現在、次世代、将来という時間的な流れの中で展開していくというご提案でございます。
 そして、こういったシミュレーションによってどんな解決をしていこうかという目標でございますが、まず耐震の分野では、施設全体の耐震性を評価する手段を。FBRの問題では、現行スパコンでは不可能な計算を、Design by Analysisという形で実現していくこと。核融合の問題では、ITER——ITERと申しますのは国際熱核融合実験炉というものですが、その実物大シミュレーションを実現していくこと。そして、原子力を支える材料研究では、マルチスケールモデリング手法の確立を目指しております。
 それでは、個別の課題に1つずつ移っていきたいと思います。まず、耐震シミュレーションでございます。実機実験が困難なために、3次元詳細大規模シミュレーションが不可欠となっております。現状でも、全体解析という形を質点系モデル、非常に単純なバネ・マスモデルという形でやっております。この問題を、今、設計データを使ってありのままに解析するという方向に転換しようとしております。そのため、実空間の分解能が向上され、詳細化されるとともに、こういった大規模計算に必要な時刻歴の分解能を、この大規模な空間で計算するということから、大規模計算という問題に広がっているという状況でございます。
 では、現状での技術とブレークスルーについて、簡単にご報告いたします。まず、大規模解析のほうですが、こういった複雑なモデルを1つの形状としてメッシュを切ってデータを扱うということは困難ですので、一つ一つのデータを部品ごとにあわせて計算するという、こういった組み立て構造解析手法というのを提案し、計算科学のブレークスルーを図っていきたいと考えております。また、大規模計算という観点からすると、神戸・淡路島沖地震で発生しました大地震によって観察された新しい現象として、従来の機器単位の解析では発現しなかった現象、つまり、部品の接合付近で座屈が起きたり亀裂が起きるという、現状では想定されなかった現象を、大規模シミュレーションによって発見していこうといったことによって、健全性や安全監視のブレークスルーができると考えております。そして、詳細化シミュレーションの分野では、安全性の評価技術を確立していくということで、これによって、次世代炉等の耐震設計へのブレークスルーを考えております。
 以上、耐震シミュレーションの概要をまとめまして、現在の実績と、今後5年間の達成目標についてご報告いたします。現状の実績ですが、HTTRという高温ガス炉の主要部品に関して、8,000万自由度の動的振動解析を実施しております。こういった振動解析の実績は、スーパーコンピュータの世界最大の国際会議でありますSCの2005年、2007年、2008年というところで受賞を受けると同時に、原子力学会でも受賞を受けております。また、読売新聞でも、組み立て構造解析手法というものを取り上げられた実績がございます。さらに、CREST課題に応募いたしまして、東京大学の吉村先生、堀先生、防災科研、JNES、東京電力といったところと連携いたしまして、地震耐力シミュレーションというものを受託して、協力関係を作りながら研究開発活動をしております。
 5年後の目標といたしましては、こういった原子炉の全体解析を実施するということで、100億自由度超というところを目指しております。そして、データの準備として、これは1次加圧水の冷却器でございますが、全部の中身を部品ごとにメッシュを作成した形でデータを用意しております。このレベルの詳細さで全体を解析していくということを目指しております。そして、詳細解析の目標としては、実際この中に水が流れていくというような、水と構造の連成問題を、スカラー・ベクトル連成等でやっていきたいと考えております。
 続きまして、FBRについてご報告いたします。FBRの課題は、増殖炉発電の要である冷却材の取り扱いにございます。ご存じのとおり、日本の増殖炉では、ナトリウム流という金属の流れを扱っております。この流れを扱うということで、非常に大きな流速や熱応力がかかる。また、大きな流速や熱応力がかかるがゆえに、流れによる流力振動等が起きてくるという課題もございます。ところが、これらの現象を把握するためには、実機実験をするための制約がございます。実大実験では実験施設を製作するための費用といった予算的な問題。一方で、これらをシミュレーションで実験しようとしますと、計算リソースの不足という問題がございます。したがいまして、これらの課題を克服して、国家基幹技術であるFBR技術の概念設計の成立へ向けていくためには、どうしても高性能な計算機が必要になるという状況でございます。
 この熱流動解析等のブレークスルーでございますが、現行は集合体のこのあたりの7本ピンだけを計算しております。この計算を徐々に高機能化していきまして、最終的には331本の全体の集合を解いていきたいと考えております。こういった詳細化・高速化を進めることによって、さまざまな複雑現象が見えてまいります。時空間の高分解能をすることによって、乱流混合の現象の解明。あるいは、マルチフィジックス大規模シミュレーションを実施することで、燃料変形というものを観察することができると考えております。
 現状の実績でございますが、例えば、現在は青色、黄色、赤の機器のごく一部の部分の解析を、それぞれ熱流動解析や流体解析で実施することができております。しかしながら、このFBRの概念設計を実現するためには、青なら青という単位、すなわち機器単位の熱流動解析を実現していかなければなりません。そうすることによって初めて、この設計の最適なパラメータが決まるという状況でございます。将来的には、実証炉・実用炉実現のために、このFBR全体を、熱流動解析していくような仕組みを開発していきたいと考えております。
 次に、核融合についてご提案申し上げます。核融合のほうは、現状の課題は、長時間の核燃焼の実現にあります。この核燃焼の実現を長時間実施することによって、初めて核融合をエネルギー源とした新型炉の実現が可能となるという状況でございます。核融合炉を実現するためには、ここにございます、トカマク型と呼ばれる強磁場閉じ込め装置が必要になります。このトカマク装置を用いて、重水素とトリチウムという三重水素を、プラズマ化しぶつけ合わせて、核融合反応を発生させます。そのとき生じてくるものが、3.5MeVのアルファ粒子。これはヘリウムなのですけれども、ヘリウムと中性子があらわれてきます。高エネルギーのヘリウムというアルファ粒子がプラズマを加熱することで、高熱の状態をプラズマ流が維持することができます。この高熱のプラズマ流が維持されることによって、初めて核融合反応が持続するということで、この長時間核燃焼を、いかに安定的に実施するかというのが大きな課題でございます。そのためには、こちら側のアルファ粒子を算出するための、プラズマ特性予測、そして、プラズマがどのように発生して発達していくかを見る乱流輸送シミュレーション、この2つのシミュレーションが、キーのシミュレーションとなります。
 現状の実績でございますが、10テラフロップス程度の計算機では、やっとGT5Dといいます第一原理乱流コードでございますが、大体6立米程度のプラズマ流を扱うことができます。しかし、これだと基礎的なデータしかとれませんので、将来的には800立米を超えるプラズマ流を扱っていく必要があります。このプラズマ流をどう扱うかということが基本的な課題でございまして、6立米から800立米までの実験をすべてやるわけにもいきませんので、その間を、シミュレーションを使ってきちんと補完をしていく。そして、核融合発電をするためには、1,000立米のところを目指していく必要がございますので、そのために、プラズマの挙動の補完データというものを外挿していくということが重要になります。
 そういった状況の中で、現在、ヨーロッパ・EU国際協力の中で、ITER/BAというような活動が行われております。その中で、1ペタフロップスの計算機を導入しようとしていますが、これは国際的にみんなで共有するスパコンであるということと同時に、せいぜいフルにスペックを使ったとしても、60~100立米程度のプラズマ流しか扱うことができません。現状の核融合発電というところに向かっていくのは、800立米という大きな壁に向かって、1つのブレークスルーが必要になります。また、1ペタ程度の計算機では、先ほど申し上げました電磁場解析、ハイブリッドコードと乱流コードそれぞれをばらばらに計算しなければなりません。これは計算機容量の問題と、メモリ等の問題からそういうことが起きています。こういった問題を解決して、800立米に挑戦するためには、どうしても10ペタの計算機が必要になる。その10ペタの計算機で、こういった2つの解析コードを、ベクトル・スカラー連成をするとかいうような手段を使いながら連成計算をして、プラズマ挙動を解析していくということに挑戦していきたいと考えております。
 核融合における5年後の目標でございますが、先ほど挙げました、アルファ粒子のところの、乱流モデルの第一原理モデルによる長時間燃焼シミュレータを実現して、炉心シミュレータへと展開していきたいと思います。こういった技術を、ペタコンピュータを使って達成することによって、ITER実験の事前予測ができるということです。そして、これができると、ITERの実験時間獲得のプライオリティーが高く上がるということで国際競争力の確保と向上のためにも、どうしてもこのシミュレーションを実施して、ITER利用の優先権をとりたいと考えております。
 将来的には、こういった技術を炉シミュレータの実現という形にしていき、できることならば、何がしかの炉のスキップをするというようなことを提案していきたいと考えております。一方、この炉シミュレータというものをつくっていくためには、材料シミュレーションが非常に重要になります。先ほど申し上げましたように、アルファ粒子や中性子の問題であるとか、こういう耐久性の問題というさまざまな材料の課題があります。
 最後の4番目の課題であります、材料研究についてご報告いたします。材料研究は、軽水炉、高速炉、核融合炉に共通するさまざまな課題や、特徴的な課題に挑戦しています。つまり、現行の軽水炉で言えば、安全・安心の意味からの研究。そして、将来のためには、新しい材料を模索していくということで、研究開発が重要だという位置づけになっております。現状の1つの技術といたしましては、原子力プラントの材料劣化の問題があります。炉心、格納容器の鉄板の劣化の問題であるというのを予測することが重要だと考えております。
 この問題を、原子レベルの問題、それから、原子の集合体である金属の粒界問題、そして全体の構造の材料力学的にどうなっていくかという3つのスケールを、分解能を上げて計算をしていくということが大きな課題です。現状では、原子レベルのところが数十原子、割れと転位が相互作用するような状況をあらわすのに、ナノレベルの領域しか扱えない。そして、実際の割れのレベルでは、数千要素というところが現状の状況でございます。これを5年後には、原子レベルでは数千原子、転位の問題ではサブミクロン、そして実際の材料力学的な割れの部分については、数百万要素というレベルで展開していきたいと考えております。
 2つ目の例といたしまして、新型核燃料(アクチナイド化合物)の物性予測をご説明申し上げます。アクチナイド化合物は、燃料サイクルの問題で扱われるような化合物でございます。ところが、このアクチナイド化合物というのは非常に扱いが難しくて、実験・観察が困難であるとされています。そういった意味からも、シミュレーションを使って、いかに実験を外挿していくか。また、物性を予測して、適正な状態は何かということを模索していく必要があります。そして、もう一つ重要なことが、プルトニウムの化合物系のところは、強相関電子系に相当いたします。この強相関電子系というものは、現状では未知の科学とされていて、どういった電子挙動をするかというようなことがわからず、物性物理のフロンティアの課題と、今、位置づけられています。こういった課題を解決していくということが、根本的な課題でございます。現状では、プルトニウム酸化物の完全結晶のみを扱うことができるという計算をしておりますが、これを実用に資するためには、プルトニウム化合物の、プルトニウム酸化物の欠陥を含んでいるような結晶を扱う必要があります。これを扱うためには、非常に大きな領域を扱わなければいけないということが、最大の課題でございます。また、強相関電子系というものを扱うためには、規模だけではなくて、例えば、ベクトルユニットを使ったクラスター動的平均場というようなものを用いて電子相関効果を取り入れて計算していくことが必要になります。したがいまして、次世代スパコンの領域で、初めてプルトニウム酸化物の欠陥を含む結晶の物性予測というものが、スカラー・ベクトル連成で計算できるのではないかという期待を持っております。
 以上をまとめまして、原子力分野で、今日ご紹介いたしました4つのシミュレーションの今後の展開について、簡単にご報告いたします。原子力分野を取り巻く状況としては、効率的研究開発の推進と安全の絶対的追求が不可欠でございます。一方で、効率化のために、計算科学による実験施設代替は不可避という状況に来ております。そういった意味から、実験炉、原型炉、実証炉、商業実証炉という多くの実験プロセスのうち、どれか1つでもスキップ、あるいは2つを一緒にできるようになれば、非常に大きな効果が生まれると考えています。
 耐震シミュレーションでは、重点安全計画を2017年に達成し、総合的な3次元シミュレーションをやろうとしておりますので、これに向けて、組み立て構造解析の機能向上を図っていきたいと考えております。FBRでは、2015年の概念設計審査に向けて、コンポーネント単位のDesign by Analysisを実施する必要があります。そして、将来的には、プラントシミュレータまで実現し、実証施設へ展開していきたい。核融合炉では、2020年にITER実験優先権の獲得を、日本としてどうしても獲得する必要がございますので、炉心プラズマ予測をできるだけ早い時期に、なるべくたくさんのデータをとって、優先権獲得に向けて動きたいと考えております。材料研究のほうでは、現行の亀裂進展の問題、そして、将来的なアクチナイド化合物の問題、さらには新型構造材料の設計というところに向けて、活動を展開していきたいと考えております。
 簡単ではございますが、現状、原子力分野で持っておりますベクトル・スカラー、あるいは並列・分散の豊富な経験と実績について、簡単にご報告しておきます。大規模計算では、地球シミュレータの利用経験が4件ほどございます。また、大規模スカラー計算では、T2Kオープンスパコンの試用というのを進めております。並列分散計算におきましては、ベクトル・スカラーの連成計算というものを実施してきています。また、こういったシミュレーションが生まれてくる大規模データ処理ということも重要ですので、可視化であるとかいうような活動を進めております。CREST課題でも、2件の課題をちょうだいし、次世代スパコンに向けての準備を進めているという状況でございます。
 最後に、簡単ですが、拠点体制の現状についてご報告いたします。人材育成の現状でございますが、現在は、e-Japanプロジェクトで進めてまいりましたITBLというものが平成17年に終了はしているのですが、その後もこういった多くのユーザの方たちからのご要望により、現在もこの活動を継続しております。こういった大学、企業等との連携で、人材育成を進めています。また、国際高等研究所多階層連結コンピューティングフォーラムや、核融合科学研究所、核融合科学ネットワーク、兵庫県立大学等と連携した人材育成プランをつくっております。原子力機構では、連携大学院制度というのも持っておりまして、14大学と連携し、大学院生の受け入れ等を実施しているという状況でございます。
 一方で、総合研究環境という観点からの連携実績では、先ほど申し上げました、e-Japan計画で進めたITBLネットワーク拠点。そして、原子力分野で独自に進めております、国際協力ネットワーク。ここにおいては、米国のDOE傘下の研究所、フランスの原子力研究所、そして日本では、NIFS、RISTといったところと連携をとって、原子力研究の国際ネットワークづくりを進めております。
 原子力シミュレーション分野における海外連携につきましては、昨今の特徴的なことでは、米国とのGNEP連携で、シミュレーションとモデリングというテーマを取り上げて、共同議長を進めております。また、EU・ITERプロジェクトとシミュレーション技術でも連携を進めております。国際競争力の現状分析をいたしますと、基礎工学、あるいは安全研究では、大体日米欧同等のレベルだとは思いますが、FBR、核融合では、特徴的な実験施設を持っているということもございますが、一歩進んでいるというのが現状の位置づけだと考えております。
 本日ご提案させていただきました4つのシミュレーションを使って、さまざまな国際的なインパクトが得られると考えております。耐震では、FBRの耐震設計をリードできると考えておりますし、FBRサイクルという技術が、世界各国で、今、原子力ルネッサンスとして起きていますが、その中で、日本が国際標準化をリードしていきたい。核融合炉のほうでは、ITER計画の先導を担う。終局的には、デモ炉の設計等を我々が主導していくということが目標です。そして、原子力を支える材料研究では、高経年化予測や、新しい科学の開拓というところで、国際的インパクトが得られると考えております。
 以上をまとめまして、提案のまとめをさせていただきます。社会的・国家的な要請では、原子力エネルギーは不可欠な存在であると考えております。また、原子力エネルギーの研究開発では、計算科学が不可欠な状況です。次世代スパコンを使わなければ解決できない課題として、耐震評価、高速増殖炉、核融合炉の研究開発の効率化。そして、原子力を支える材料研究について、ご提案申し上げました。拠点体制の構築では、現状持っている実績を生かして、人材育成、総合研究環境の確立、国際競争力の維持・向上といった研究体制を構築していきたいと思います。
 以上でございます。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。ただいまのご説明を踏まえまして、ご自由にご質問、ご議論をいただければと思います。矢川先生。

【矢川委員】

 大変大きな問題を要領よくまとめていただきまして、よくわかりやすく、ありがとうございました。
 2つありまして、原子力の問題は、最初に中島さんおっしゃったように、これまでシミュレーションのような先端的な技術を、少なくとも軽水炉の開発では、あまり使ってこなかったのですね。これは原子力という許認可が非常に厳しいところで、新しい技術に対するレジスタンスが非常にありまして、そういうことであまり使われてこなかったのですが、そんなことは言っておれんということでどんどん進めているということは、非常に大事なことだと思っております。そこで、今のお話の中で、1つは、いろいろなところを原研のほうで、原子力のコンピューティングをほとんどすべてカバーするということだと思うのですが、1つは、長期廃棄物のことがなかったのですね。これは空間的な高精度化とともに、数万年の時間の現象を解明する必要がありまして、これはちょっと大問題なのです。それが解決しないと、原子力が安全の問題上、まだまだ不十分だと言われかねないので、なぜそれをここで入れてないのかと。ぜひそれを1つお考えいただきたいということと、もう一つは、この間の柏崎の地震でもありましたけれども、予想もしないことが、設計をかなり超えるようなことが起こっているわけで、そのためには、ディ-ターミスティクなアプローチだけではなくて、確率論的なアプローチが必要だとだんだん言われてきているのです。そのところがちょっとお話の中で少ないというか、ちらっとありましたけれども、その大事さというのをもう少し強調していただきたかったというのがあります。その2点、コメントをお願いしたいと思います。

【土居主査】

 では、先生、お願いします。

【中島次長】

 まず、ただいまのご質問の初めの廃棄物処理に関してですが、これは現在、原子力機構、産業界、原子力学会等も含めて、非常に大きな問題としてとらえております。現状では、これに対する対応策というのが、まだ審議している状況でございまして、今回の提案の中からは、現状ではできなかったという状況でございます。
 それから、2番目の確率論的アプローチというシミュレーション手法でございますが、ご指摘のとおり、原子力安全委員会では、損傷頻度評価手順として、決定論的なアプローチと確率論的なアプローチの両方を使っております。私どもの提案が決定論的なものに固執しているのではなくて、損傷頻度評価をするためには、当然のごとく、決定論的な部分の精度向上をしていく必要があると。これを精度向上していくことによって、確率論的なPFM解析と呼ばれているものですが、これの全体的な精度を上げていけるだろうと考えております。こういったアプローチの仕方は、原子力安全委員会のほうとも協議をしながら進めているという状況でございます。

【土居主査】

 よろしいでしょうか。では、平尾先生。

【平尾委員】

 原子力エネルギーというのは、日本のエネルギー問題を考えるときに、しばらくの間はどうしても頼らざるを得ない、非常に重要な課題だと私は思っております。原子力工学というのは、私はやっぱり総合工学だと思うのです。現象を担っている物理、科学とか、あるいは原子力の発電所をつくる材料にしろ、建築、土木というのでしょうか、あるいは電気、機械などというあらゆる工学がそこに加わってくるのだろうと思いますが、シミュレーションのほうもやはり同じように、いろいろな階層がございます。マルチフィジックスになっていて、ほんとうに材料のところのシミュレーション、それから、構造物のシミュレーション、あるいはその中の熱流動とか、流体とか、いろいろなものがそこに入ってきているのだと思いますが、原子力分野特有の、基礎になる方程式とかそういうものがあるのかどうかということを、1つお聞きしたいと。
 それから、もう一つお聞きしたいのが、多くの人たちが少し心配しているのが、やっぱり安全性の問題でございまして、特に日本の原子力、運転を始めてから随分時間がたっておりまして、逆につくることよりも、いわゆる廃炉といったらおかしいのですが、寿命が来た原子力発電所をどういうふうにするかというところに、安全性が担保できるかというのは非常に大きな課題だと思っています。それに対するシミュレーションとか、そういうことに関してはどういうふうな見通しがあるのかというのを、ちょっと教えていただきたいと思います。

【中島次長】

 ただいま2つのご質問があったと思います。まず、原子力分野の特有の方程式という問題については、核融合の問題をとらえてお話しさせていただけるとわかりやすいと思いますので、中島教授のほうから、ちょっとご説明をお願いいたします。

【中島主幹】

 核融合分野の中で、特に工学プラズマに関しましては、ボルツマン方程式とマクセル方程式、この両者でほぼ尽きることになります。それが真空第一壁という、プラズマを囲んでいる壁に近づいていきますと、そこではプラズマと壁との相互作用。そして、その辺ではニュートラルが存在する。そういったことで、そのあたりは複合物理の話になってきますので、方程式系が新たに拡張されるということになります。ですから、内部で通常私たちがプラズマと呼んでいる場合には、ボルツマン方程式とマクセル方程式というのが標準的なところです。

【土居主査】

 ありがとうございました。

【中島次長】

 続きまして、2番目の安全性の問題でございますが、私どもは、シミュレーションですべて何もかも取りかえてしまおうと言っているのではなくて、現状のものに対して、シミュレーションを加えていくと。しかも、そのシミュレーションの精度を、今の2次元とかというようなレベルからもっと高次元に上げて、より高精度化していく。まず、そこと実験等とのフィードバックを加えてやっていこうという考え方をしております。
 それから、経年問題につきましては、これは非常に大きな日本の社会問題でもあると考えております。と申しますのは、経年化した原子炉を今すぐとめてしまうと、やっぱりエネルギーが不足するという問題が出てくるということもあわせて考えねばならないと、私は理解しています。バックエンドの問題は、私どもも非常に大きな問題としてとらえておりますので、その辺も、バックエンドの実験が簡単にできるわけではないので、シミュレーション等を駆使して、人間の知恵を集めて、今現状できる最高の安全策を提案したいというのが考え方でございます。以上でよろしいでしょうか。

【土居主査】

 どうぞ。

【平尾委員】

 もう一つ聞くのを忘れたのですが、非常にマルチフィジックスになっていて、現象も多階層になっていて、ほんとうに材料のところから構造物まで、全体をシミュレートしようとするとそうなるのですが、そのときに、研究者はどういう形で、多くのそういう分野を専門とする人たちが寄り集まって、全体のシミュレーションをされているのか、あるいは、1人の方がいろいろな分野を専門家として総合的にやっておられるのか、どちらなのでしょうか。

【中島主幹】

 後者のほうでして、1人の方がやっているわけではなくて、それぞれの専門分野の方たちが、役割分担するという形です。ですから、例えば、共同利用研の核融合科学研究所の中では、プラズマをコアの領域、非常に核反応が起こる領域と、それから、その周辺の領域にまず大きく分けまして、プラズマウォールインタラクションを主体として研究する人たちは、物性のほうとの研究協力をやりながら、そちらを進める。ここのほうでほぼ完全にプラズマとしてとらえる領域においては、そのプラズマを対象としている、例えばJAEA、そしてNIFS、大学等の共同研究という形で進めるという形で、必ず裾野を広げてやっております。

【土居主査】

 ありがとうございました。ITERに関しましては、現物はフランスに置くが、計算科学関係のセンターは青森県になんていうような話があったように思うのですが、あれはどうなったのですか。

【平山センター長】

 今、ITERとITER/BAという2つのプロジェクトが進んでおりまして、ITER/BAと申しますのは、日本とEUの間で幅広く核融合にかかわる研究を進めようというプロジェクトになっております。そのBAという枠組みの中で、まだはっきりはしておりませんが、EUが1ペタフロップス程度のスパコンを調達して、青森県の六ヶ所のほうに設置をするということで、今、その仕様にかかわる検討が、国際的に進められております。

【土居主査】

 ああ、そうですか。それがその真ん中とは関係があるのですか。

【平山センター長】

 はい。そこに書かれておりますBA計算機と申しますのがそれを想定しておりまして、ただ、ご説明させていただいたと思いますが、あの程度の規模では、残念ながら足らないのです。

【土居主査】

 では、六ヶ所村に置かれるというのは、そのまま話は続いていて?

【平山センター長】

 はい。続いております。

【土居主査】

 なるほど。わかりました。ほかはいかがですか。どうぞ、宇川先生。

【宇川委員】

 きょうのお話を伺っていて、4つテーマを提案されたわけですけれども、聞いていて、大きく3つに性格が違うのかなという印象を受けたのです。一番最初の、原子力施設の耐震性評価。それから、高速増殖炉のサイクル技術開発。これは、私は素人ですけれども、実際に動く原子炉をいかに効率的、かつ安全に設計していくかという観点かと思います。それに対して、核融合研究開発というのは、ITER自身が実証炉で、物理自身も完全にはわかっていない。核融合というのが動くかどうかを実証していこうというものですので、開発的な、あるいは実験的な要素が非常に強いのではないか。最後の原子力を支える材料研究というのは、原子力特有の問題意識はあるとは思うのですが、材料研究ですので、物質科学、材料科学と非常にオーバーラップが強い。それぞれ性格が違っているということを考えて、なおかつスケジュールを見ても、この4つの課題それぞれ早い遅いがあるように見受けたのです。
 そのときに、では、どういった計算機をそれぞれのテーマに当てはめるかということも、実はよく考えてやったほうがいいのではないかというのが私の印象で、例えば、一番最初の2つの、原子炉を設計するというふうな観点をとりますと、例えば、計算モデルでありますとか、あるいは計算行動を非常な冒険をしてさらに開発をしてというよりは、ある程度手慣れた行動を、かつ手慣れた計算機で、何十ケースも計算をして、計算結果を確認しつつ進めていくのではないだろうか。実は、ペタコンというのは、10ペタを実現するために、かなり計算機科学的には新しい機軸を取り入れたりしているわけで、そういった目的には、もしかすると完全に合い取りではないかもしれない。一方で、ITERの実証炉のシミュレーションといったものは、計算モデル自身もこれからいろいろと新しいものも取り入れていくでしょうし、さらに計算規模も非常に大きいと。これを伺うと、8立米を800立米にするということで、5乗だとすると、ちょうど10ペタ、あるいは100ペタぐらい要るのではなかいと思うのですけれども、そうだとすると、計算コードも、アルゴリズムもぎりぎりのことをやらないと、おそらく何もできないだろうと。
 ですから、そういった観点からすると、何でもかんでも次世代ペタコンでやるというよりは、むしろそちらでおやりになろうとしているテーマそれぞれに分けて、この課題については、むしろこちらのほうの計算機。この課題については、どうしても次世代ペタコンでなければ無理なので、次世代ペタコンというふうな割り振りをお考えになったほうがいいのではないかと思いますけれども、そういった検討はされていらっしゃるのでしょうか。

【中島次長】

 ただいまのご質問について、総論的に申し上げますと、そういう検討をした上で、この4課題を持ってきております。私の説明が悪かったのだと思いますが、まず最初の耐震計算というものと、次のFBRの熱流動計算というのは、単純なアルゴリズムを単純に乗せているのではなくて、耐震計算自身も、これだけの大規模な問題をやると、単純な有限要素法解析だけでは解けていかないのです。そうすると、部品を集合させて解析をするという意味での手法の問題と、部品間のインタラクションをどういうふうに解いていくかという問題。それから、部品間のインタラクションというのを扱うことによって、計算アルゴリズム、計算効率をどのように向上させなければいけないかという課題が出ております。そういうことを一遍に解こうとすると、どうしてもこういう計算機が必要になる。当然分散計算みたいなのでやった経験もありますが、それですと、どうしても計算時間が膨大になってきてしまうという大きな問題があります。
 熱流動の課題についても同じでございまして、金属流の流体を扱うというのは非常に大きな課題だと思います。流体問題の中では、こういう問題を扱っているところはほとんどないのではないかと思うぐらいの課題だと思います。それがやはりマスの問題だけでなくて、金属流が起こす泡だとか、キャビテーションだとかというような問題も含めて、この中で検討していかなければいけないと考えております。

【土居主査】

 よろしいですか。

【宇川委員】

 はい。

【土居主査】

 それでは、まだご質問等おありになるかもしれませんが、時間との兼ね合いで、一たんここで区切らせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、もう一方の中島先生にお願いすることになりますが、中島先生は、核融合科学をご専門とされまして、現在、核融合科学研究所シミュレーション科学研究部LHD・磁場閉じ込めシミュレーション研究主幹でいらっしゃいます。それでは、どうぞよろしくお願いします。

【中島主幹】

 発表の機会を与えていただき、ありがとうございました。ここでは、核融合シミュレーションとその広がりということで、以下にありますような課題に沿ってお話ししたいと思います。
 まず、プラズマの特徴。先ほども、階層性の話と複合物理の話が出てきましたが、一般に大きく分けまして、2つのことが特徴として出てきます。1つは、プラズマというのは、異なる時空間のスケールの揺らぎが常に共存しておりまして、それで特徴的な揺らぎのスケールで分類される階層というものが存在します。その相互作用が常にあるということで、階層性と階層間の相互作用というのが、1つのキーになっています。それともう1点は、核反応を伴いますので、原子物理、固体物理、プラズマ物理が共存するような複合系になっていること。こういった2点が大きなプラズマの特徴として取り上げられます。したがって、この結果としまして、このプラズマを総体としてすべて理解する、ないしは振る舞いを予測するという場合に、第一原理のシミュレーションにおいてのみならず、多様なシミュレーションのモデルを開発するということが、まず必要になってくるというのが1つあります。
 そういう流れの中で、シミュレーションの現状がどうなっているかといいますと、個別の物理現象を取り扱う、要素還元的な形で現象をピックアップしたような個別物理の解析から、次第に多階層・複合物理のシミュレーションへと、現在展開中であるというのが実情です。また、このような動きというのは、米国ではSciDAC、これはDOEが推進しているプログラムですけれども、そこで核融合のシミュレーションというのが主要要素の1つになっているということにもあらわれております。
 このようなシミュレーションを我々が進める場合に、シミュレーションの基本要素として考えているところは、ここに述べましたように、1つがモデリングであります。そして、それを具体化するための、計算機上に乗せるための具体的な数値計算手法、そしてその結果を検証するというこの3点が、基本的な要素になってくるかと思っております。この意味で、関連分野も含めた広範なモデルの開発や検証というのが、核融合シミュレーションの発展のために必要であると考えております。
 まず、磁場閉じ込め核融合シミュレーションに対する取り組みについてお話しします。この磁場閉じ込め核融合におきましては、主要な研究機関が、先ほどご発表のありました、日本原子力研究開発機構、そして大学共同利用機関法人の核融合科学研究所、そして大学と、大きく3つのグループがあるということです。この閉じ込めに関しましては、その3者がいつも研究の方向性、それから、モデリングの検討、そしてまた組織手法の共有といったことで常に議論しておりまして、その結果、ここに書いております、現在の研究の課題というのは、先ほどの提案と同じものになります。つまり、その内容の重複性というのは、JAEA、NIFS及び大学というのが、常に共同でもって核融合のシミュレーションに取り組んでいるということのあらわれだということです。JAEAの場合には、国策としての核融合研究開発の中心であると同時に、NIFSや大学共同利用機関や大学においては、それを連携しながら、しかも支えていくために、特に計算手法及びモデリングの検証といった意味での協力関係をつくっております。
 具体的に言いますと、例えば、アルファ粒子による燃焼ということを考えます場合に、これは非常に高速の粒子ですので、背景のプラズマとエネルギーのレンジが違う。速度分布関数も異なります。そのために、アルファ粒子の運動論的な効果と、それから、背景プラズマの磁気流体的な効果をどのように連成するかということで、そういう両者を結びつける連結モデルというのをつくって、実際にシミュレーションコードとして動かしています。さらには、乱流輸送のためのモデル開発、そして将来的には、これをまさに統合していこうという動きがありまして、こういうモデル開発と、そしてそれをいかに検証するかということが、共同利用機関及び大学における1つの役割と考えております。実際、日本にはさまざまなタイプの磁場閉じ込めの装置がありまして、それで同一のコードを2次元の平衡をベースとするような装置に対しても、また3次元の平衡をベースにするような装置に対しても適用することによって、そのコードが実際、適正な結果を与えているかどうかということを検証するということを、常に進めているわけです。
 そのようなやり方で、現状として、高速イオン等に関しては、かなり巨視スケールの不安定性が、実際にはこの損失をつくり出すわけですけれども、こういう巨視のスケールから、そして、背景プラズマの加熱された温度がどのように、私たちは異常輸送と呼んでいますが、乱流によって輸送されるか。かなり微視のスケールになりますが、こういったものを将来的には、次世代の計算機のレベルにおいて統合した、長時間の核燃焼シミュレーションを目指そうという考え方で、全体的なプランをつくっているということです。
 今、議論にありました、例えば、BAのコンピュータであり、また私の研究所のほうでは、来月に新しいプラズマシミュレータと呼んでいますスパコンが導入されますが、こういった計算機の位置づけというのは、次世代における本格的計算のための準備として、統合化に向けたモデリングであり、検証・改良を行っていくと。そして、さらにこれがまた難しい側面があるのですが、プラズマ側面の複合物理過程を、どのようにそこに取り込んでいくかということを考えるということを進めていきたいと考えています。
 その結果として、5年後の目標としては、まず私たちはここまで行かなければいけないだろうと。長時間の核燃焼統合シミュレーションを行うことが必要になっていく。これは実際に、既存装置の実験を予測するとか、ITERの事前予測につながりますから、当然のことながら、国際競争力の確保にもつながっていくと考えています。その後の展望としては、大きく2つに分けられまして、1つは、先ほどの話にありました、プラズマの第一壁から内側を統合的にシミュレーションできるシミュレータを開発することが、まず必要だろうと。この時点で、周辺付近のさまざまな複合物理過程が入ってくることになると。これと並行して行われているであろう壁の材質及びそこから外側の炉システムに対する研究というものを、さらに結合することによって、将来的にシステムとした核融合炉のシミュレータというのを実現していく。こういう方法であれば、開発期間の短縮とか、コストの低減ということに直結してくるのではないかと考えているということです。
 このような磁場による閉じ込めの核融合の手法に対しまして、もう一つの手法というのが、レーザーによる核融合です。レーザー核融合の場合には、母体の燃料ペレットを非常に高輝度のレーザーで爆縮しまして、プラズマの密度を固体の密度をはるかに超えるレベルに上げると。その後、プラズマを加熱するために、非常に短パルスですけれども、超強度のレーザーパルスを入れまして、温度を上げる。非常に短い時間の間に核融合反応を起こしてしまうというやり方で、FIREX計画と呼ばれ、大阪大学を中心として、この研究が進められています。研究の段階は、まず、高速点火という加熱ができるかどうかということと、それから、今度は燃焼ということを考えたときに、生成されたアルファ粒子が背景のプラズマを加熱できるかどうか。そういったことを順番に確認していこうという形になっていまして、それに対して、それぞれシミュレーションの役割があります。
 まず最初の役割というのは、こういった実験を行った場合に、まずそれを予測できるような数値的な計算手法を確立すると。この確立があれば、次のステップとして、実スケールでの大規模シミュレーションに持っていくという順番の段階を経ていこうということです。現在の段階におきましては、まず最初に、強度の輝度の高いレーザーでもって、まず爆縮を行うと。そこの段階におきましては、輻射流体モデルでもって、プラズマの密度や温度をシミュレートするというやり方がとられます。ある段階において、非常に強度の強い短パルスのレーザーで追加熱がされるわけですが、その場合には、このもとのデータと、それから、それをベースとした相対論的な電磁粒子コードで、レーザープラズマインタラクションを解きまして、高速電子の発生をシミュレートする。この両者の結果をさらに結合して、高速電子がどんなふうにプラズマ中に熱をデポジットしていくかというのを、また別のコードで見るという形の、この3者のコードというのが既に開発されていまして、これを時間的、空間的に連結する形で、1つの統一コードがつくられています。これがFI3と言われているコードです。現時点におきましては、まだ2次元で、実スケールよりも小さいところで、定性的な物理の理解であるとかいったものが中心になっていますが、これが5年後の段階になれば、まさに実スケールのレベルで、定量的な評価につながるだろうと考えられています。
 実は、FIREX計画の最初のフェーズのFIREX-1というのは、来月3月にレーザーが稼動するということで、この計画が、まず進んでいきます。既にあるレベルまで構築された高速点火統合コードを用いまして、これの精度を向上する。これは質的にも量的にも向上されると思いますが、この向上をさせることによって、またそれをFIREXの実験結果と直接的な比較をして、コードの検証、精度のチェック等を行って、統合実験の再現をするレベルになる。そうしますと、予測精度が高まりますから、それを10年後には実験炉の炉心の実スケールシミュレーションによって、最適化に使うというふうな道筋が考えられるということです。
 以上2つの核融合プラズマに関連するシミュレーションに対しまして、ここでは、核融合とは違うプラズマ物理のシミュレーションの広がりについてお話ししたいと思います。この1つが、特に太陽圏から地球磁気圏に及ぶような領域のプラズマのシミュレーションです。現在までのところでは、個別要素のモデルの大規模化というところが主眼になっていますけれども、今後の課題として、スケール間相互作用ということは階層間相互作用ですが、こういったものと、それから、領域によって支配的な物理が違いますので、そういった領域間の相互作用をどのように取り入れるかということが主要な課題になっています。個別の課題としてそれが達成されれば、例えば、宇宙天気予報であるとか、そういったところにつながると考えられています。こういったシミュレーションに関する研究というのは、先ほども出ました、核融合の基本物理をさらに深め、そして、モデリング・数値計算手法に対して、新しい知見を提供するという意味合いがあります。
 現状から展望という形を1つの絵にまとめたものなのですけれども、現在のところでは、太陽活動領域モデル、それから、爆発的な活動に伴って行われるコロナ質量放出モデル、その後の太陽圏モデルであるとか、太陽フレアがちょうど到達したときの、今度は地球磁気圏。こういったそれぞれのモデルが別々に開発されて、そして個別要素としては、ほぼ独立した形で使われているというのが現状です。
 今後の展開としましては、こういった現象は、ほぼ時系列的に起こりますので、この全体を統合して、1つのシステムシミュレーションにするというのが、1つの考え方として、今、提案されているということです。そうすることによりまして、例えば、5年後程度の目標としては、太陽フレア爆発の数値予想であるとか、太陽で何か起こったときに、地球上でどういうような擾乱が起こるかといったシステムの擾乱予測。そしてまた、磁気圏不安定性の運動論解明といったことが想定されるだろうと。その後としては、比較惑星磁気圏学の創成、他の惑星に対しても物事を言おうといった、そういう太陽系統合シミュレーションとか、宇宙環境の定量予測とか影響といったことにつながるのではないかと考えられています。
 今、こうして3つのシミュレーションに関してお話ししましたけれども、実は、こういったものを支えるような環境というのが、共同研究のネットワークとしては、既に存在しています。大学共同利用機関法人の中のシミュレーション科学研究部の中では、3つプロジェクトを立てておりまして、1つが、LHD・磁場閉じ込めシミュレーションプロジェクト、レーザー核融合シミュレーションプロジェクト、そして複雑性プラズマという形で、3つのプロジェクトを立てていると。共同利用機関法人ですので、理論共同研究ないしシミュレーション科学共同研究を介して、全国の大学やJAEA、地球シミュレータ等、他の組織との共同研究を効率的に進めるような体制というのができ上がっているということです。それをもっと広げるものとして、炉工学も含んだ核融合ネットワークというものがあり、大学等における核融合の学術研究の全国展開のネットワークが構築されているということがあります。
 そういうことも含めまして、人材育成の視点としましては、共同利用研としての共同研究、それから、同時に、総合研究大学院大学の核融合の専攻でもありますので、そういった形での学生の育成。そして、名古屋大学等で連携大学院構想を構築しておりまして、学生の受け入れ。そしてまた、それとは別の枠組みとして、特別共同利用研究員制度を利用した学生の受け入れ等、共同利用研としての役割機能と、それから、各大学の持つそれぞれのポテンシャルというものをリンクさせる形で、さらにそこにJAEAからのコントリビューション。「から」のと同時に、「へ」のコントリビューションといったものを複合的に組み合わせることによって、有機的な人材育成ができるのではないかと考えているということです。
 終わりとしまして、非常に大型の核融合プロジェクトを推進しておりますので、そういう立場からは、次世代のスパコンにおける大規模シミュレーションというのは、極めて有効ではないかと考えているということがあります。そしてまた、そういったプラズマのシミュレーションを支えるモデリングや計算手法においては、大学等との連携が非常に補完的な関係にある。ですから、大学共同利用研、そしてJAEAとの共同研究のネットワークというものが、核融合の開発研究、学術研究の発展及び人材育成を加速するものと考えているということです。以上です。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの中島先生のご説明に関しまして、もっとも1つの前の原子力機構の中島先生のご発表とも密接に関係するのかもしれませんが、その辺は構いませんので、いかがでしょうか。平尾先生、どうぞ。

【平尾委員】

 こういうプラズマとか、あるいは天体プラズマのシミュレーションというのは、言って見れば、非線型現象の宝庫だろうと私は思うのですが、そういう意味では、シミュレーションというのは非常に有効で、いろいろなところに使われるのだろうと思うのです。先生たちの分野で開発されたアルゴリズムとか、あるいは、基礎のモデリングというのが他の分野に影響を与えるということは、非常に大きなインパクトがこれまでもあったのだろうと思うのですが、そういう例を少し教えていただけるとありがたいのですが。

【中島主幹】

 数値計算手法的なところに関してもあるのですけれども、物理的なところでは、これは今のシミュレーション科学研究部の前身として、理論シミュレーション研究センターというのがありましたが、そこのところで、地球ダイナモの計算等が行われて、反転期という現象がシミュレーションの中で再現されたというところがあります。あと、物性関連では、当時、自己組織化とか複雑性ということを1つの主眼に置いて、分野にとらわれず、複雑な媒質が、いかに構造形成していくかという視点でそれを見ていこうというシミュレーション研究が実際になされて、それが例えば、その当時研究所にいた方たちが大学に広がっていって、研究者として活躍するという形で、そこで芽生えた1つのシミュレーションを使った研究というのが、大学への波及効果を持っているということは、事実として存在します。

【土居主査】

 どうぞ。

【三間センター長】

 一言つけ加えさせていただきます。自己組織化、乱流というか、小さな揺らぎから大規模構造ができるというのが、プラズマ物理の1つの学術に対する貢献でございまして、それは何の理解につながっているかといいますと、木星の大赤斑の発生でございますとか、地球大気の循環。例えば、台風のできるメカニズム等の理解に繋がっています。そこは今、平尾先生がおっしゃった、非線型性の宝庫であるというプラズマの、ほかの分野に対する誇るべきことではないかと。プラズマの非線形物理の発展には大規模シミュレーションが相当重要な役割を演じたと思っております。

【土居主査】

 ありがとうございます。それでは、中村先生。

【中村委員】

 プラズマ物理シミュレーションのところで、個別要素のモデルからシステムへということで、システムを強調されていたと思うのですが、これを見ますと、必ずしも同時にやる必要がほんとうにあるのかなというふうにも思うのですけれども、それぞれ既にできているレベルの知見を組み合わせていくというような、そういうようにも感じたのですが、もうちょっとそこを説明していただけますでしょうか。

【中島主幹】

 確かにおっしゃられましたように、太陽表面で大規模な活動があったときに、それが時系列的に地球の磁気圏にどういう影響を及ぼすかと。この意味では、それぞれ独自に開発されたモデルを、例えば、この現象のある定常状態なり途中の状態を、次の現象の初期値、境界条件として次の現象を解いていって、また、コロナ質量放出モデルのある時点での結果を、初期時境界値、次のモデルの境界値、初期値にして解くという形で、時系列に沿って、今まで開発されたものを、比較的つなぎ合わせればよいではないかということをおっしゃられたのかなと思うのですが、このショックが形成された先の話は、確かに情報の伝搬としてそれでよろしいのですけれども、そこへ行くまでのときには、実際には、この間の行って帰っての相互作用も実際には生じてしまいますので、そのレベルまで深めようとすると、時系列的に1方向にはならないという複雑さを持っている側面があります。

【土居主査】

 ほかにはいかがでしょう。どうぞ。

【寺倉委員】

 2つ聞きたいのですけれども、1つは、今の非線型性の話なのですが、そのことから来る予言の可能な時間スケールがどのくらいの予言性があるのかということと、先ほど、長時間のシミュレーションをするという話をされたので、それは具体的にどのくらいの時間スケールなのかということを伺いたい。それから、全体のシミュレーションの中で、全体を組み上げるのは大変なことはよくわかっているのですけれども、ここの中で、どこか困難な問題で、どこを開発するのがポイントなのかという話が出てくればと思うのですけれども。

【中島主幹】

 それは核融合の磁場閉じ込めの話でよろしいでしょうか。

【寺倉委員】

 はい。

【中島主幹】

 そうしますと、まず、長時間ということに関して答えさせていただきます。これは、生成されたアルファが、まず閉じ込められるかどうかということが1つの問題になりまして、そのアルファが存在しますと、言ってみればフリーエナジーを持つものがそこにありますので、巨視的なバックグラウンドの波と相互作用して、不安定性を励起してしまって、アルファ自身が逃げるということが起こります。これは比較的短時間で起こるのですが、今度、このアルファが背景のプラズマを加熱するためには、アルファ粒子が3.4MeVの非常に高いエネルギーを持っていまして、背景のプラズマはせいぜい10KeV以下ですので、そこまでスローイングダウンしてきて、エネルギーをやりとりするプロセスをかけなければいけません。
 その場合には、それをきちっとやろうとすると、スローイングダウンタイムというのが非常に長いものですから、実際にアルファが、まずきれいに閉じこもっていますよという短時間のシミュレーションに加えて、非常にバックグラウンドに熱を与える長い時間のシミュレーションをしなければいけない。さらに最初は、そのアルファのエネルギーは、速度の速いエレクトロンのほうに行くのですが、今度はそうしますと、エレクトロンがイオンと温度が変わってきますので、それがサーマライズする、等しくなるタイムスケールまでやるということで、それぞれの物理的な事象を、一通りシミュレートできてというまで行こうとすると、長時間という意味は、実際にアルファによってプラズマが温められるまでの時間というのは、かなりの時間になってしまうということになります。

【寺倉委員】

 具体的には、参考のために、どのくらいの時間だと思えばいいですか。

【中島主幹】

 実際の現象の時間として考えると、ミリセックから秒のオーダーになります。それはもちろん、背景のプラズマの温度によってきます。それが1つありまして、予言性の問題で言われたのは、それは済みません……。

【寺倉委員】

 非線型問題だから、そのプレディクションが、やっぱりどこかできっと信頼性を失いますでしょうね。それがどのくらいの時間スケールまで予言性を持っているのかという。よく気候の変動とか、天気予報とかで、似たような乱流の問題が出るときには、大体何日分ぐらいは正確そうだとか。

【中島主幹】

 例えば、私たちが今までの事実として言えるところは、ここにあります比較的巨視的スケールのノンリニアインタラクションというものは、かなり確度が高いというか、信頼性があるというふうに認識しています。それは波長の長いものを介した相互作用になりますので、非常に細かいシステムサイズの、何グリッドとったとか、あまりそういった数値計算の結果に依存しない、信憑性の高いものになっている。ところが、短波長の解析は、どの程度のグリッドサイズを持っているかということと、どの程度微視的な事柄に対する物理を取り込んだかということで、その結果が変動する高い可能性もあります。

【寺倉委員】

 済みません、そうすると、ミリセカンドぐらいまではリライブルなシミュレーションをやりたいということですか、先ほどの。

【中島主幹】

 それで、リライビリティーの問題で、こちらの巨視のスケールのほうが信頼性が高いという言い方をしましたが、どうしてもここで長時間をするときには、乱流スケールとのカップリングが必要になります。まず考え方ですが、この2つをカップリングするときに、もともとの乱流の運動方程式を、一たん流体近似して、ただし、ウェーブ・パーティクル・インタラクションを線形の段階で入れるとか、幾つかのモデルの構築の考え方があります。ですから、一気に乱流側も運動論をすべて取り入れた形で、第一原理的にいってくっつけるか、それとも、巨視のアルファの損失ということが、ものごとに非常に大きな影響を与えているとするのであれば、そこの精度を高めて、熱輸送の損失のレベルは、多少エラーバーがあってもいいという形で、一たんそういうシミュレーションをして、さらにそれをリファインするか。やはり段階的に上げていかないと、知見の今攻めている方向がほんとうに正しいのかどうかに対して、私たち自身も不安になるところがありますので、そういうステップ・バイ・ステップのやり方になると思います。

【土居主査】

 どうぞ。

【矢川委員】

 こういう基礎研究のところに、核融合炉を実際につくっていくには、材料とプラズマとの問題があるというお話がありましたよね。それでこれまでは、ほとんど実験的に材料選択なんかをされてきたのだと思うのです。実際に材料を設計していくということに、こういう計算科学が使われた例はあるのですが、薬品の設計なんかはどんどんコンピュータでやろうとかなってきていますが、やっぱり材料設計というのは、ものすごい大きいんですよね。それで、新しい材料をつくっていかなきゃいけないのですよね。そういうのに、やっぱりインタラクションの研究が進めばできるのじゃないかなと思うのですけれども、そこまで行っているんですか。

【中島主幹】

 ほかの研究所のことが、私自身がわからないので、核融合科学研究所のことで述べますと、まず実験が先行しているというのがありまして、実験の結果を解釈する際にシミュレーションを持ってきて、そこから普遍性を出して、ほかの組み合わせでどうなるかというふうなのが、現在の当研究所でのアプローチだと思います。

【平山センター長】

 核融合の材料の開発というのは、また非常に大きなもう一つのミッションでございまして、それをやはり国際協力のもとでやっていこうというプロジェクトがございます。これをIFMIFと申します。このIFMIFの開発活動というものも、現在のITER/BAの1つとして行おうということで、今、検討が進んでおります。そこでは、中性子照射の施設をつくるのがまずメインの目的でございますが、そこの開発の過程の中で、いわゆる材料シミュレーションというものが非常に大きな役割を果たすということで、各方面の材料のシミュレーション研究者が、国際的に協力した活動を展開しております。

【土居主査】

 ありがとうございました。ほとんど時間がなくなってしまったのですがちょっと時間が超過するのを許していただくとして、冒頭の内田先生に提供いただきました話題も含めて、全体にわたって、何かご質問、ご議論があれば。では、中村先生。

【中村委員】

 2番目の原研のほうの中島先生に主に関係すると思うのですが、国際比較の国際競争力のところを拝見しますと、私、この分野は素人なので見当違いを申し上げるのじゃないかと思って心配なんですが、そもそもスパコンの世界での発展というのは、アメリカの原子力関係のシミュレーションでもって、これまでずっと伸びてきたというふうに私は理解しているんです。それから言いますと、この最後の国際協力の現状分析では、むしろヨーロッパと日本が進んでいるという解析なのですけれども、アメリカの位置づけというのは、これでよろしいのでしょうか。ちょっと教えていただきたいと思います。

【中島次長】

 計算科学の観点でいくと、アメリカが引っ張ってきたのは、紛れもない事実でございます。ただ、ご存じのとおり、原子力の活動というものが、アメリカで必ずしも全面的にいろいろな分野で進んだわけではない。FBRのような例でいきますと、日本よりかなり早い時期に実験をやめて、シミュレーションに変わっていくというような動きをしています。そういう観点から見ますと、実験施設であるとか、いろいろシミュレーションと実験との間でためてきたデータだとか、そういう観点からすると、現在、日本の地位が非常に高くなっているというのが、原子力委員会の分析でございます。

【土居主査】

 ありがとうございました。いかがでしょうか。どうぞ、宇川先生。

【宇川委員】

 ちょっとテクニカルなのですけれども、核融合シミュレーションというのは、粒子と流体ですよね。流体というか、電磁場と粒子ですよね。粒子のほうは荷電粒子でしょうからクーロン相互作用をして、なおかつ核融合であれば、お互いぶつかって核融合反応をやると。そうしますと、1つのアプローチとして、粒子側は、例えば専用ボードを使ってNEG計算を加速して、電磁場のほうは汎用の計算機を使ってというようなアプローチが、既にいろいろなところでやられていると思うのですけれども、核融合プラズマシミュレーションに関しては、そういったアプローチは今まではとられていなかったのでしょうか。これは申しわけないです。質問ですけれども。

【中島主幹】

 今までそのやり方は、とられておりません。まず、核融合でシミュレーションをする場合に、例えば、天体のときの星の重力多体問題としてとらえるようなやり方とはちょっと違うやり方をしていまして、それは実際のシミュレーションをする対象としての粒子の数は、どう考えましても、実際のプラズマの数よりはるかに少ないというのが事実としてあります。ですから、一個一個の粒子にウエートをかけまして、変換をするやり方をします。そうしますと、粒子の数が少ないことから来るノイズの問題がありまして、ですから、粒子をスーパーパーティクルという表現で、短波長のノイズをカットするようなやり方をしたりすることもあります。ですから……。

【宇川委員】

 済みません、実際のプラズマの場合にそうしている、核融合シミュレーションの場合は、そうしているということなのですか。

【中島主幹】

 はい。粒子シミュレーションのときは、そういうことをやります。

【宇川委員】

 それは、粒子を大きくできないからですか。

【中島主幹】

 ええ。まず1つのところで、現実問題としての数をそのまま持ってこられないのですね。

【宇川委員】

 どのぐらいの数なのでしょう。

【中島主幹】

 ごめんなさい、それはシステムによるのですが、ただ申し上げたかったことは、数が少ないために、短波長のノイズが伴ってしまいまして、協同現象としての平均場が正しく再現されないことになってしまいます。そのためにウエートをかけて、短波長をカットするとか、そういった手法を使ったりするのです。そういうアプローチを使うために、もし現実の粒子と同じものが実際にシミュレートできるのであれば、それとある意味1対1の対応になりますから、アクセラレータのようなものを使ってということは考えられるかもしれませんけれども、現状では、粒子にウエートを持たす形で、短波長のノイズをカットするというやり方になります。
 それともう1点、そういうやり方は、やはり短波長ノイズのカットということが入るのでブラソフ型といいまして、位相空間で直接解こうということが、例えば、JAEAとかNIFSでも行われていまして、いろいろ今までのアプローチにとって問題があるところを、別のやり方でやろうと。ですから、ブラソフのときには、5次元の系にはなりますけれども、流体として解くのと同じ格好になってきます。

【土居主査】

 どうぞ。

【平尾委員】

 これは全く個人的な興味で、非常に高速の電子なんかを扱っていますよね。ですから、相対論が相当効くわけですが、相対論効果を取り入れるのに、ディラクライックのフォンコーポーネントの方程式を解いているのか、あるいは、もっとそれを丸めた形で入れているのかちょっと教えていただきたいのですが。

【三間センター長】

 幸いエネルギーがばらついているものですから、クラシカルな特殊相対論の範囲内でやります。ただ問題は、相対論的になると非常に強い放射光が出てくるのですが、すなわちX線が出ます。その効果をシミュレーションに取り入れるためには、数値モデルを考える必要があります。

【平尾委員】

 わかりました。

【土居主査】

 ほかにはいかがでしょう。よろしいでしょうか。
 本日は、ほんとうにお忙しい中を、各先生方、お越しいただきましてありがとうございました。また、これを最終的に取りまとめていくに当たりましても、その都度、場合によったらまたご意見等をお伺いしたいということが出てくるかと思いますので、その節にはどうぞよろしくお願い申し上げます。
 次回は、素粒子、原子核、宇宙流体分野についてのヒアリングを予定しておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 ほかに何かございますでしょうか。事務局から何かありますか。

【事務局】

 次回、第7回になるのですけれども、戦略委員会は、あす2月26日木曜日の午前10時より12時までの開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。それと、机上に配付しております本日の配付資料は、次回以降の本戦略委員会で使用する資料ですので、お持ち帰りいただく場合には、事務局に一言お声かけを行ってください。以上でございます。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。先生方、何かございますか。よろしいでしょうか。それでは、本日は、これで終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

— 了 —

お問合せ先

研究振興局情報課計算科学技術推進室

(研究振興局情報課計算科学技術推進室)