次世代スーパーコンピュータ戦略委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成21年1月21日(水曜日)17時30分~19時32分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

土居主査、宇川委員、小林委員、小柳委員、寺倉委員、中村委員、平尾委員、矢川委員
(ヒアリング)赤井大阪大学大学院理学研究科教授、加藤東京大学生産技術研究所教授、笠IHI基盤技術研究所解析技術部長、金田(株)富士通研究所ナノテクノロジー研究センター主管研究員

文部科学省

倉持大臣官房審議官(研究振興局担当)、舟橋情報課長、井上スーパーコンピュータ整備推進室長、飯澤学術基盤整備室長、中井課長補佐

4.議事録

【土居主査】

 こんばんは。定刻になりましたので、ただいまから第3回次世代スーパーコンピュータ戦略委員会を始めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 中村先生は、ちょっと遅れられるということのようでございます。
 それでは、まず、本日の配付資料につきまして事務局から確認をお願いいたします。

【事務局】

 お手元の議事次第と照らし合わせて資料のご確認をお願いいたします。
 「戦略分野について」ということで1つ目が大阪大学赤井先生の「計算機マテリアルデザインについて」、2つ目が東大加藤先生の「次世代スパコンを中核としたものづくりイノベーションの創出」についての資料、3つ目が、株式会社IHI笠部長の「戦略分野としてのものづくり分野」についての資料。この3セットになっておりますが、大丈夫でしょうか。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 よろしいでしょうか。何か足りないときには、またその都度おっしゃっていただければと思います。
 早速、本日の議事に入らせていただきたいと思いますが、本日、「戦略分野について」ということで、ものづくり分野につきましてただいま少しご紹介がございましたけれども、大阪大学大学院理学研究科の赤井先生、東京大学生産技術研究所の加藤先生、そして、産業界の観点から株式会社IHIから笠部長に戦略分野としてふさわしい課題につきましてお話をいただくという予定になっております。また、産業界からは、株式会社富士通研究所ナノテクノロジー研究センターの金田主管研究員にも議論にご参加いただくためにご出席いただいております。どうもありがとうございます。発表の流れといたしましては、各先生から20分程度ご説明いただき、10分程度の質疑応答を順番に繰り返していきたいと思っております。そして、最後に全体的な質疑応答という形で、30分ぐらいとれるのではないかと予想しておりますが、そのような形で進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず最初、赤井先生ですが、赤井先生は物理学をご専門とされておられまして、奈良県立医科大学、大阪大学で教育、研究に従事され、現在は大阪大学大学院理学研究科の教授でいらっしゃいます。
 それでは、赤井先生、どうぞよろしくお願いいたします。

【赤井先生】

 ご紹介いただきました大阪大学の赤井でございます。
 今日はものづくり分野ということでいささか手前みそな話になるかもしれませんけれども、こういうふうな分野というのも考えられるんだということで、お聞きおきください。
 私、分野として考えておりますのは、サブミクロン物性における計算機マテリアルデザインということでございます。その内容についてお話しさせていただきます。
 ものづくりということ、次世代スパコンということとの関連から考えていきましたとき、次のようなことが考えられると思います。まず、ものづくりに必要な視点、どういったことが必要になってくるかということでございますけれども、これはあくまで次世代スパコンを頭に置いたことでございますが、現在、工業化社会から知識社会への変革が非常な勢いで進んでいるということ。それから、当然のことながら、いろいろなものづくりにおいて社会調和ということは、まず一番重要な点であるということ。さらに、100年先を見る先見性、あるいは基礎科学への寄与というふうなことが求められているということでございます。これは簡単に言えば、作る前にまずよく考えよということでございます。
 そういうふうな、作る前に考えるといったことを前提に、それじゃ、ものづくりに必要な方向性というのはどういうものかといいますと、我々の頭に描きますのはシミュレーション、あるいはシミュレーションからさらにデザインへということでございます。
 もう少し、じゃ、実際にどんなものかということを言いますと、もちろんいろいろなことが考えられるわけでございますけれども、とりあえず私の頭の中にあるのはナノからサブミクロンサイズというスケール領域でございます。もちろんそれだけでは実際のものにはなかなかつながらないということがございますので、多階層連結、これはナノから宇宙までをどうやって連結して考えていこうか、こういったことが考え方だと思います。
 こういうシミュレーションからデザインへ、あるいはナノからサブミクロン、多階層連結、ナノから宇宙までということは、多分、次世代スパコンを用いることによってのみ実現できるだろうというところがポイントでございます。
 シミュレーションからデザインへというように申しましたけれども、それについてちょっと説明させていただきたいと思います。もちろん、スパコンということを考えますときに、皆さんおっしゃるのは、シミュレーション、シミュレーション技術、あるいはどういうふうにシミュレーションを革新的にしていくか、あるいはどうやってそのシミュレーションを使っていくかというような話でございます。確かにシミュレーションというのは、非常に効率のよい情報収集の手法でございます。物事をシミュレートすることによって、新しい情報をどんどんつけ加えていくことができるということでございます。
 しかし、そのシミュレーションでもって情報を集めただけでは、実際には新しい創造、クリエーションにはなっていないというところが重要なポイントでございます。我々考えますのは、シミュレーションを高度に使いこなすことによって、何か新しいものを創造していこう、こういうことでございます。
 じゃ、どういうふうにシミュレーションを使ってデザイン、新しいものを作っていくかということなのでございますけれども、これは高度なシミュレーションを非常に多数回行うことによってデザインは可能になります。これはシミュレーションを行うことによって、機構の解明とそれを使ったフィードバックループを作ることができるということでございます。こういう手法を使い、高度なシミュレーションを行うことによってデザインをやっていこう。すなわち、それがシミュレーションからデザインということでございます。
 実際、頭の中のイメージとしては、実際に物をつくるより、まず最初に十分に考えようということで、計算機の中で物質、デバイスをつくってしまおう、そういうことでございます。計算機の中での物質の創生、あるいは構造のデザインということでございます。キーワードとして、ナノシミュレーションからナノデザイン。ナノはあってもなくてもよろしいのでございますけれども、これはサブミクロンでもよろしゅうございますけれども、シミュレーションからデザインへということでございます。こういった手法を我々は計算機マテリアルデザインと呼んでいるわけでございます。
 さあ、計算機マテリアルデザインというのは一体何かというわけでございますけれども、大げさには21世紀の錬金術とか、自由自在に物質創生と言っておりますけれども、煎じ詰めれば計算機の上の仮想実験室において、例えば環境調和材料とか、高効率エネルギー変換材料、安全・安心のためのセンサー材料とか、生体調和材料といったような、我々社会が必要としているいろいろな材料とか、構造を、非常に効率よく、しかも環境に負荷をかけずに開発することができる手法だと言えると思います。
 このような計算機マテリアルデザインは、計算機マテリアル・デザイン・エンジンによって実現可能です。CMDと書いてありますけれども、これはコンピュテーショナル・マテリアルズ・デザインの略でございます。今、CMDで検索しますと、数万の検索が引っかかりますけれども、これは多分、10年ほど前に我々がつくった造語だと思います。
 図示しますと、従来型材料開発から、計算機マテリアルデザインによって、クリーンで、ソフトで、それで環境に負荷をかけないものづくりをやっていこうということでございます。
 どうやって計算機マテリアルデザインを実現していくかというと、これは計算機マテリアルデザインエンジンと称するものを考えております。そこに示します通り、量子シミュレーション、物理機構の演繹、仮想物質の推論というようなことがありますけれども、こういうシミュレーションプロセスを毎回経るようなフィードバックループを回すことによって、新しいものを見出していこう、こういうことでございます。
 もちろんこれだけでは済まなくて、必ず実証実験というものは必要でございますので、実証実験との間のフィードバックループも進めていくということでございます。この中で、何が重要かというと、計算機シミュレーション、物理機構の演繹、仮想物質の推論ということがございますけれども、主要部分は量子シミュレーションということでございます。もちろん主力の量子シミュレーションをやっていくのはどこかというと、次世代スパコンだということになります。
 こういう計算機マテリアルデザインということを使って、例えば実際に、じゃ、どんなものを作るかということなのでございますけれども、ターゲットとして、我々計算機マテリアルデザイン分野を考えるときに一番手近に考えられるのはサブミクロン物性ということでございます。これはサブミクロンサイズ構造の丸ごとシミュレーションと、それによる材料、構造、デバイスのデザインがターゲットでございます。
 ここにさまざまなスケールが書いてありますけれども、フェムトから始まりまして宇宙サイズというところまで広がっているわけでございますけれども、こういったものはすべて我々物理的な基盤を持って考える人たちの研究対象になるわけでございますけれども、サブミクロンサイズというのは、ちょうどナノとミクロンの間、挟まれたこのあたりの領域でございます。
 実は、ナノ、あるいはナノより少し小さいオングストローム、そのあたりの物理というのは、量子力学をある程度自由自在に適用できる時代になってきております。すなわち、例えば電子状態計算とか、あるいはダイナミクスというようなものをある程度きっちりと計算していくことができます。一方、非常に大きなスケール、我々の身体スケール、あるいはそれよりもっと大きな地球スケールからのアプローチとしては、古典力学とか、巨資的手法、流体力学という手法、さまざまな手法がございます。それでもって、大きいほうから小さいところに攻めていくということもできますし、ナノから積み上げて、サブミクロンサイズに到達することもできるわけでございますけれども、実は、このサブミクロン領域というのはどちらからいっても、大変難しい領域でございます。
 ここでは量子効果がきいてきますし、しかも、ナノの世界、あるいは原子、あるいは結晶のユニットセルというサイズから眺めると、まさに巨大サイズでございます。実際にこれが重要であるというのは、現実のデバイスが実はこのサブミクロンサイズで作られていて、その機能を生じているのがサブミクロンサイズだからであるということでございます。
 なぜ重要かということをまとめますと、現実のデバイスはサブミクロンサイズにおいて機能しているということ。さらに、例えば表面、界面における触媒作用とか、化学反応、ナノダイナミクスということの主な舞台はサブミクロンの世界でございます。もちろん、もっと小さなミクロンサイズのプロセスとか、あるいはもっと巨視的なプロセスがあるのでございますけれども、実際に舞台になっているのはサブミクロンが中心の舞台でございます。あるいは、自己組織化ということを考えると、そういったナノ析出による自己組織化というのは、実際にはサブミクロンサイズにわたって出現していて、そのときに新たな機能をもたらすということがあるわけでございます。
 これは多少、応用的な側面を視野に入れたものでございますけれども、こういった意味でサブミクロンサイズというのは非常に重要なスケールサイズでございます。
 サブミクロンで一体何が問題になっているのか、何が難しいのか。これも先ほど説明申しましたけれども、量子効果が重要であって、古典力学からの延長で議論できないということでございます。それが一つ。それから、我々、第一原理計算と申しておりますけれども、電子の量子力学から出発して物の性質を究めていこうというのが第一原理計算でございますけれども、巨大サイズであるために第一原理計算が困難であると指摘されてきました。しかし、実際のところシミュレーション技術の蓄積はかなりあって、ある程度サブミクロンサイズのシミュレーションということに限って言えば、そういったシミュレーションは実際に試みられるようになってきております。けれども、そういったサブミクロンサイズのシミュレーションを超えて、シミュレーションからデザインへという方向性は、次世代スパコンによる超大規模計算によってのみ可能になると考えております。
 デザインの難しさというのがどこにあるかといいますと、ここにちょっと書きましたけれども、我々シミュレーションという場合には、どういったことを考えるかというと、物質とか、構造とかというのが与えられているわけです。そういった与えられた物質、構造に対してそれがどういう物性であるとか、あるいは機能を示しているかということを見出すのがシミュレーションでございます。デザインというのは、実は逆でございまして、物性、機能、欲しい物性とか、欲しい機能が与えられたとき、それを実現する物質である、あるいは構造であるというものがどういったものであるかということを見出すのがデザインでございまして、これは逆問題でございます。シミュレーションが簡単だとは申しませんけれども、ナノ、サブミクロンでは、量子力学という一つの原理があるわけですけれども、この逆の原理というのはないわけでございますから、これは大変難しい。従いまして、通常の計算機ではなかなか難しい。多分、次世代スパコンによる超大規模計算によってのみこういったことが可能になるのだろうということでございます。
 そういったふうなチャレンジの例として幾つか挙げてまいりますけれども、例えばデバイスの丸ごとシミュレーションが一つのチャレンジでございます。これは現実のpptのGMRセンサーでございますけれども、およそこんな格好をしているだろうというように我々想像しているわけでございます。一番下に反強磁性層があって、強磁性層が2つありまして、その間にルテニウムのスペーサーがあります。その上にノンマグネティックな層があり、さらにフェロマグネティックな層があり、キャップ層があるというような、大体こんな構造をしているわけでございます。我々物理をやっている者が想像するよりは、現実にはずっとややこしい構造でございます。大体35ナノメートルぐらいのものがあるようでございます。
 こういったものを丸ごとシミュレートして、さらに、こういったデバイスをデザインしていくということはチャレンジの一つだと思います。現状、どういうふうになっているかといいますと、例えば膜厚が25ナノ、218層になるのでございますけれども、GMR素子の丸ごと計算というのがシミュレーションですけれども、こういったシミュレーションが、実は実行できるようになっております。これは次世代スパコンでなしにできるようになっております。25ナノメートルで、例えばここにマンガンプラチナ、これはマグネティックモーメントを書いているのですけれども、上向き、下向きでございます。反強磁性のマンガンプラチナがあり、コバルト鉄があり、ルテニウム、またコバルト鉄ですね。間にカッパーを挟んで、さらにコバルト鉄とニッケル鉄があって、上にタンタルのキャップ層をかぶっているというふうな、こんな構造をしております。これを電子状態計算、第一原理に従って、すべての電子状態をパラメーターなしに計算してしまうということは実は可能になっています。これは、平行結合、こちらとこちらが強磁性的にカップルしたもの、こちらは反強磁性的にカップルしたものですけれども、それぞれの場合どうなるかというようなシミュレーションをすることはできます。
 これは1次元方向にオーダーNの計算、2次元方向には超並列というようなことをすれば、実は、こういったシミュレーションを繰り返して、デバイスの丸ごとシミュレーションとデザインも多分可能になるだろう。こういったものが現実のチャレンジとして非常におもしろいし、また、実現性も非常に高いというように思います。
 サブミクロンサイズにおいて発現する物性、機能が現実デバイスにおいて重要であるというのが、これがGMRセンサーということだからでございますけれども、それだけじゃなしに、基礎科学にとってもさまざまな問題の宝庫であります。つまり、こういう構造を計算するということ自身は、基礎科学にとって実は非常に重要なことなのであるということです。
 チャレンジの例として2番目のものを挙げてみましょう。皆さんご存じのように、NEOMAX、ネオジム磁石というのは世界一強い磁石でございます。しかし、ネオジム磁石は、大変な悩みを抱えております。どういう問題かというと、まず、ネオジム磁石は必要です。エネルギー環境問題に発して、ハイブリッドカーであるとか、電気自動車、IT機器に使われているモーターにネオジム磁石は欠かせないものでございます。従いまして、高性能磁石というのが必要なのでございますけれども、この最高性能を持っているネオジム磁石というのには弱点がありまして、これはネオジムとディスプロシウムが必要であるということでございます。ディスプロシウムはレアアース、希土類でございますけれども、これはまだ存在しますけど、ディスプロシウムというのは、実はネオジムの0.1%しか存在いたしません。ところが、どうしてもディスプロシウムをつけないと、ネオジムだけでは磁気異方性が出てまいりませんから、永久磁石としては使えないということでございます。現実には、ディスプロシウムをネオジムの10%程度入れております。けれども、実際には、まだそれでも磁気異方性は、我々シミュレーションが予測するような保磁力、つまり磁気異方性から導出される保磁力の数分の1しか出ておりません。
 こういった問題に対して、多分次世代スパコンによって微粒子永久磁石というようなものを非常に上手に設計することによって、元素戦略ではございませんけれども、こういう非常にわずかしかない希土類、軽希土類というものを使わないような磁石の開発も可能になるのじゃないかというように考えております。これは計算機マテリアル・デザイン・チャレンジの例の一つでございます。
 これはイントロダクションというか、こういう問題が計算機マテリアルデザインであるよというように紹介したわけでございますけれども、もう少し詳しく分野のサーベイということをやってみました。ふさわしい問題が存在するかどうか、それから、研究推進の体制は実際にあるかどうか。これは例えば研究実績はあるか。潜在能力でございますね。次世代スパコンが動き始めたときに、実際にそれを使いこなして、5年、10年の単位でもって、実績を出していけるような潜在能力があるかどうか。あるいは、組織、人というのが、例えば日本でアベイラブルであるかどうか。それから、こういうような次世代スパコンでは、普及とか、公開、あるいは教育というコントリビューションが求められているわけでございますけれども、そういったことは一体可能であるかどうかということでございます。
 それから、分野として十分に価値があるか。ただの個人的な好みだけで立ち上がっている分野ではないかということでございます。基礎科学の側面から、これは重要な分野であるか。それから、それは産業応用にある程度つながっていくことができるかどうかというところからも、分野のサーベイということをいろいろやっております。
 例えば計算機マテリアルデザイン分野といったときに、すぐ我々が考えられることを少し挙げました。デザインターゲットとしてどんなものを考えられるか。5年後のアウトプットは何か、10年後のアウトカムは何かということでございます。例えばデザインターゲットとして、高効率太陽電池ということを考えます。これは非常に手ごろな題材だと考えることができます。しかも、極めて重要でございます。次世代スパコンを使ったCMD計算機マテリアルデザインの実験、設計実証ループによって、これがこちらに行くだろう。さらに、次世代スパコン・コンピュテーション・マテリアル・デザインの産業用ループを回すことによって、こちらからこちらに行けるだろうというふうな、そういう図だと考えてください。
 高効率太陽電池に関して言えば、例えば5年後のアウトプットとしては量子井戸増感型の超高効率太陽電池の設計図を作ることができる。それから、おそらくその設計図をもとに、プロトタイプとしての実験を行うことができるだろうというのが5年後のアウトプットでございます。10年後のアウトカムとしては、効率80%太陽電池が可能になるだろうというわけでございます。
 それから、スピントロニクスが非常にはやっておりますけれども、スピントロニクスデバイスとしては、例えば超高速・省エネルギー材料、構造の設計図と実証をターゲットとして挙げることができるというわけです。これによって10年後のアウトカムとしては、例えばテラヘルツ、テラビット・パー・インチ・スクエアのデバイスを作ることができるようになるでしょうというわけです。
 触媒でございますけれども、これは例えば5年後のアウトプットとして、計算機マテリアルデザインループを回すことによって、自己再生高機能触媒の設計図とそれの実証実験を行うことができるようになるだろう。もちろん10年後のアウトカムは、不老不死のサステナブル触媒を生み出すことができるはずであるというわけです。
 機能性材料でございますけれども、これは先ほどの磁石と関係がございます。非希土類ナノ磁石の設計図等をつくって、それを実証することができるだろうというわけでございます。10年後にはネオジム磁石を超える、しかも環境に優しくて、しかも希土類を必要としない次世代磁性材料を産業界に送り出すことができるだろうということでございます。
 これが計算機ナノマテリアルデザイン分野で、すぐにも思いつく分野、あるいはターゲット、アウトプット、アウトカムでございます。
 可能な研究体制は、一体、それじゃ日本に存在するかどうかということでございます。これは研究体制の一つの例でございます。日本には、こういう研究体制は、複数個あると思います。その一つの候補としては、例えばナノサイエンス・デザイン教育センターというのがございます。これは大阪大学に昨年立ち上がったセンターでございますけれども、こういったナノサイエンス・デザイン教育センターは、その一つの使命として計算機マテリアルデザインを挙げております。こういったものと、次世代スパコン、理研、登録機関、戦略機関とを、研究のネットワーク、人のネットワークを結ぶことによって、こういう研究を進めていくことができるだろうというわけでございます。
 それ以外に計算機マテリアルデザインは、国内の広いリサーチトレーニングネットワーク、研究と人と教育のネットワークでございますけれども、全国各地にリサーチトレーニングネットワークに参加しているような研究グループ、研究体制がございます。
 さらに、国際リサーチトレーニングネットワークが存在いたします。これはアジアとヨーロッパにございます。アジアで言えばフィリピンとか、それから、ベトナム、インドネシアに国際リサーチトレーニングネットワーク、ヨーロッパで言うならばプサイケイを中心にしたマリー・キュリー・リサーチトレーニングネットワークがございます。従いまして、少なくとも日本でそういう研究体制を築いていくことが可能であるという結論でございます。
 ナノサイエンス・デザイン教育センターについてちょっとだけ広告させていただきますけれども、大阪大学の理学研究科、工学研究科、基礎工学研究科、産業科学研究所が連携してナノサイエンス・デザインセンターというものが去年12月1日、生まれたてでございますけれども、発足しております。さらに、ナノサイエンスデザイン・センターが産業界との連携を深めるために、ナノ理工学人材育成産学コンソーシアム、ALICE-ONEと呼んでおりますけれども、コンソーシアムが立ち上がっております。こういった産学のネットワーク、それから学内のネットワークをもって、ナノサイエンス・ナノデバイス教育研究センターは活動を開始しております。
 センター教育のCMD研究に関する実績ですけれども、かなりアクティブな方々を集めた計算機マテリアルデザインを行うことができるセンターでございます。例えば100回以上のサイテーションのある論文12件とか、40回以上のサイテーションのある論文が多数である。あるいは特許出願が現在、CMD関係で129件あるとか、あるいは延べ14回にわたって、5日間の合宿型チュートリアルコースを実施し、535人を現在まで送り出している。このうちの半分は企業からの受講生でございます。5年間にわたって社会人教育、大学院通年10単位コースを実施してきたという実績もございます。
 もう時間でございますので、あとご質問でもあればお話しいたしますけれども、計算機マテリアルデザイン分野においては、オリジナルソフトウエアパッケージというのがあります。それから、現状と5年後のアウトプットというのは、ある程度しっかりとできているということです。人材教育、育成に関しては、これまでの実績と、今後の可能性が非常に高いということ。それから、ソフトウエアの公開と普及ということに関しても、これまで5年、6年にわたって、そういったことをこのオリジナルソフトウエアパッケージについてやってきたということ。それから、知財管理の仕組みづくりを現在進めております。コピーマートでございますけれども、ソフトウエアの配付、あるいは知財管理の仕組みをつくっているということでございます。
 そういった意味で、計算機マテリアルデザイン分野というのは、次世代スパコンを進める上で、有力な分野の一つになると考えております。
 以上でございます。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの赤井先生のご発表を踏まえまして、ご自由にご質問、ご議論いただければと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【小柳委員】

 先ほどのシミュレーションからデザインということでございますけれども、利用のイメージとして、例えばある物質をデザインして、それを大学なり、共同研究なりで行って、一たん物質の構造が決まり、作り方も決まれば、あとはそれをただ作るというようなイメージなのか。それとも、いろいろなものを実用化していく際にさらに次世代クラスの大きなシミュレーションなり、計算をやって、やりながら、つまり、企業もそれを使いながらやっていくような形になるのか。その辺のイメージは大体どんなものをお考えなんでしょうか。

【赤井先生】

 私、多分5年間の先で何が出てくるかというイメージから言うならば、おそらくこの程度のところだと思います。これは何かというと、我々、いろいろなものをデザインいたしまして、それがある程度実験室レベル、企業であっても、それが実際の物になるようなものではないかもしれないけれども、プロトタイプとして、確かにこれは使えるものである。あるいは使える構造であるというなところまで、企業、あるいは研究室の方々と実証実験等協力しながらやっていこうというのが、多分5年先でございます。
 さらにもっと産業応用を目指したものというのは、おそらくそのときになると、もっと大規模な計算機が生まれているとは思いますけれども、そういったものを利用した本当のものづくりというところに発展していくというように思っております。

【土居主査】

 他にはいかがでしょう。矢川先生。

【矢川委員】

 今のお話で、従来のアナリシスのみならず、デザインということを強調されたわけですが、デザインが大変難しい。アナリシスよりもさらに難しいというお話だったんですが、デザインというのは何らかの新しい考え方、方法論が要ると思うんですが、その辺少しお話しいただければと思いますが。

【赤井先生】

 はい。方法論であるとか、よく皆さん、そういうソフトウエアがあるんですかというようなこともお尋ねされるのでございますけれども、ここに書いてあります──これは多分、何か新しいものを生み出すときには、大抵みんな多かれ少なかれ、そんなことをやっているのだと思うのですけれども、我々、まず何をするかというと、量子シミュレーションをやります。現在の量子シミュレーションというのは、大変精度が高うございます。例えば考えている物理量によりますけれども、何のパラメーターも入れずに、例えば1%程度の精度で物の性質というのをシミュレートしていくことができるわけですね。そういったことがシミュレートできるということは、その中に物性発現のメカニズムというのは、必ず我々シミュレーション中にとりこまれて計算しているはずなのでございます。
 問題は、じゃ、その物性発現のメカニズムは何かというのが実際にはよくわかっていないということで、実際のハードの実験を繰り返すことによって一体何が物性発現を決めているかという機構を得ようとするわけでございますけれども、我々のやり方は、シミュレーションによって計算機の中に作り出した物質において一体なぜそういう物性が生じているかということを研究しようというわけです。それによって物理機構を演繹することができるわけです。そのような物理機構の演繹のプロセスを用いることによって、逆問題というのを解くことができる。すなわち物理機構の演繹のプロセスを使って、なぜそういった性質が出ているかということがわかれば、それを使ってやって、じゃ、どういう構造、どういう材料を持ってくると、自分の欲しい性質、あるいは機能を出すことができるかということを推測することができる。これをフィードバックループとして回して、さらにもう一度量子シミュレーションということを繰り返してやることによって、今のシミュレーションからデザインへというふうな1つ上へのステップへとたどることができるというのが、基本的なアイデアでございます。
 現実問題として、我々、じゃ、そんなこと、本当にうまくいっているのかということでございますけれども、そういうふうなデザインのプロトタイプになるようなものは、ここ数年、いろいろたくさん出てきているというわけで、結局、今まで存在しなかったような物質を我々がデザインして、設計して、それが実際の実験において、そのとおりの性質を示すのだということが見出されたということが幾つか出てきているということでございます。

【土居主査】

 小林先生。

【小林委員】

 私も矢川先生と同じ質問をしたかったんですがね。結局、コンピュータの中で、シミュレーションで繰り返しやっていって、ただ、それは量的にやるんではないと。ある種のメカニズムを見つけ出して、つまり、逆問題をじゅうたん爆撃的にやるのではなくて、何かそこに法則を見つけるとか、そういうことが既に今までの研究の中で、この分野ではある程度見えているという、そういうことでよろしゅうございますか。

【赤井先生】

 はい。非常にそのことを意識して行ったシミュレーションにおいては、そういったシミュレーションから機能のメカニズムを見出したという例が出ているということでございます。

【小林委員】

 もう一つの質問なんですけれど、この計算機マテリアルデザイン分野の10年後のアウトカムというのを拝見させていただいていますと、10年後というと、2020年よりちょっと後ということになりますかね。

【赤井先生】

 はい、そうでございます。

【小林委員】

 そこで、太陽電池とか、触媒とか、太陽電池は80%というようなことが書いてありますけれど、あと何となく、これは抽象的だなという感じを持っているんですが、産業応用とか、産業との兼ね合いの中で、もう少し具体的な姿としてはとらえておられますか。

【赤井先生】

 はい、おっしゃるとおりでございます。例えば不老不死サステナブル触媒、いかにもいかがわしい名前でございますけれども(笑)、実際これは自動車メーカーさんと共同研究していらっしゃいまして、実は、被毒したものが実際に使っている間に回復するというふうなことを見出していまして、これは10年待たなくても、何かプロトタイプのようなものができるかもしれないというところまで来ております。
 それから、環境調和磁性材料でございますけれども、これは先ほどのどうやって磁気異方性を上手に生かしていこうかということなのですけれども、これは次世代ナノ統合での、ナノ磁性などと関連してくるのですけれども、これもネオジム磁石を作っておられるようなグループ、メーカーでございますけれども、そのようなところと共同研究を進めながら、こういったものを作っていこうということを考えております。
 テラヘルツ、テラビット・インチ・スクエア・デバイスでございますけれども、かなりのアイデアはございます。自己組織化によってデバイスを作っていこうということでございますけれども、現実に実験室レベルではそのような構造ができるであろうと考えています。それも、理論先行型でやっているのでございますけれども、そういった構造ができて、おそらくそれにもう一工夫することができるのであるならば、ひょっとすると、今のムーアの法則で予測されるような線に乗っかったデバイスの発展が行われるのじゃないかというような、予測はしております。
 効率も80%と言いましたけれども、実際実験室レベルではかなり高い効率。場合によっては90%を超えるような効率が出てきておりますので、10年後には何とかなるのじゃないかと思っています。

【土居主査】

 寺倉先生。

【寺倉委員】

 よくまとまった話をしてくださって、どうもありがとうございます。
 2つほど聞きたいんですけど、1つはウオーニングなんですが、計算機シミュレーションは環境に負荷をかけずにというのは、多分、我々シミュレーションをやる人間は、心してそうではないということを認識しておかないと……。最近だと計算機ほど電気を食うものはあまりないと思うんですね。これは非常に大きな環境負荷を与えているので、計算機シミュレーションというか、こういうことを、そういうことがあってもこういうことをやらなきゃならないという、そこに理由をきちっとつけるべきで、これはちょっと甘過ぎると思いますね。
 もう一つは、丸ごとシミュレーションについては、前回の発表のときに中村先生が聞かれたんですけど、我々もよく言うんですけど、例えばさっきのデバイスのモデルで、丸ごとシミュレーションをやることの基礎科学的な意義というのは何なんでしょうか。

【赤井先生】

 先ほどの基礎科学的──実は量子力学というのはまさにバウンダリーコンディションだけの問題でございますね。量子力学の興味というのは、バウンダリーコンディションを外すと、何もないわけでございます。これはただの箱の中に閉じ込めた電子ということで、それだけでは何にもできなくて、さまざまな量子力学的なおもしろいこと、興味のわくことというのは、バウンダリーコンディションを与えたときに一体どういうふうに電子が振る舞いますかという問題でございます。
 その中で、バウンダリーコンディションを与えることによって今まで気がつかなかった波動関数の干渉性とか、あるいは多体効果であるとかというようなことが見えてくる。こういうデバイスを考えて、実際に作ったときに、単純な推論からはいかないようないろいろな特性とか、機能が出てくる。それは一体何かと考えるときに、解ける問題を解いているにすぎないと思われるかもしれませんけれども、私は基礎物理としても大変興味深いものがあるというように個人的には思っているということでございます。

【土居主査】

 すみません。あとまだおありになるかと思いますが、全体的な質疑応答のほうに回していただいて、次の加藤先生に移らせていただきたいと思います。赤井先生、どうもありがとうございました。
 続きまして、東京大学生産技術研究所の加藤先生にお願いするわけですが、加藤先生は流体工学をご専門とされておられまして、株式会社日立製作所において研究をなされた後、東京大学生産技術研究所で教育、研究に従事され、現在も東京大学生産技術研究所教授としてご活躍中でございます。
 では、加藤先生、お願いいたします。

【加藤先生】

 今事務の方がパソコンをつないでいただいている間にちょっと前置きをしておきますと、私が、これからご説明する内容は、どういうことができるかという話ももちろんします。ただ、これはやっぱり重点的に推進するというからには、何か障害があるから、障害を乗り越えるために推進するという理解をしていまして、具体的にものづくり分野で、ペタコンを中核とした次世代コンピューティングを発展させるために何をやらないといけないか、あるいは何が障害になっているか、そういうところを重点的にお話ししたいと思いますので、具体論に関しては少し希薄というか、今日の発表にはあまり含めていないので、もしご質問があれば、後で幾らでもお答えしますので、よろしくお願いいたします。
 ということで、座ったまま失礼いたしますが、今日お話しする内容は、まずは1、2枚で、現状のものづくりというのはどうなっているかと、それから、HSPCを利用してどんな世界が実現されるか、さらにマクロにはどんな世界が実現されるか、あるいは実現しないといけないかということをお話し致します。それから、具体的にどんな成果が考えられるかということを少しご紹介してから、メインのポイントはここですね。放っておいても、黙っていても進むのであれば、戦略分野みたいなことをやらなくてもいいわけで、勝手にやってくださいということになるわけですから、現在で予想される障害は何であるかというのを分析した後、その障害を乗り越えるためにどんな具体策をとればいいかということを中心にお話ししたいと思います。
 まず最初に、簡単にものづくり産業の現状ですけれども、一言で言うと、ものづくり産業は見直されているといえます。国際競争の中で日本はどこで勝っていくかというと、コストではなかなか──人件費ではなかなか勝てないですね。そうすると、やっぱり高品質とか、高機能とか、そういうところで勝っていかざるをえません。勝っていくために何をするかというと、これは総合科学技術会議のものづくりプロジェクトチームでも議論されていましたが、ものづくりの可視化、あるいは科学的手法によるものづくりの高度化ということが現在の最大の課題であるといえます。これを駆使したイノベーションを加速することが、この計算科学シミュレーション分野に求められているということです。
 翻って、計算機によるものづくりの現状というのを、我々なりにもう一回冷静に見てみると、大体熱流体とか、構造とかいう分野のデジタルエンジニアリング基盤は既に確立されているといえます。これは主に欧米のソフトウエアを中心にして開発されたものですけれども、既に確立されていて、今後はバイオとか、今ご紹介があったナノも含めて、ミクロ現象の解明による革新的な要素技術、あるいはコンポーネントの創生とあわせてマクロ構造の最適化に至るまでの膨大な組み合わせを高速で実現することによって、先ほど申し上げたような科学的手段を駆使したイノベーションの創出を加速していくということが日本では最大の課題になっていると認識しております。
 そのためには、言うまでもなく、超高速で大規模な計算の戦力化が重要になってきます。ここまで前置きです。
 具体的に今後5年、10年先を見たときに、次世代のものづくりはどうなるかということをお話ししたいと思うんですが、まず最初に、どんな姿を我々は理想として、そこに行かないといけないかというゴールをまず明確にすべきだと考えています。我々がいろいろ議論した結果、ゴールとしては、トップバッター数社が次世代スパコンを利用して、しかも、次世代スパコンを利用しなければできなかったようなイノベーションの創出に成功して、それを世の中に提示しているということが絶対的に必要だと思っています。そういうことをすることによって、あるいはそういう状態になることによって、同業他社が感化されて、自分も次世代スパコンを使わないと時代に乗り遅れるということで、次世代スパコンの利用が全国的に加速度的に拡大していく。それを受けて、国も、次世代スパコンというのは一過性のプロジェクトではないと認識しています。次々世代の研究開発により一層の力が入るという姿が特にものづくり分野では目指すべきだと認識をしております。
 もう一つ具体的なことを申し上げると、さっき申し上げたように、ものづくり分野ではミクロ現象の解明とか、ここに書いてございますが、それによる高機能、あるいは高信頼性材料等の創出、それから、それを組み合わせた革新的なデバイスの創出ももちろん重要ですが、それだけではなくて、実際の製品レベルでの飛躍的な性能の向上が求められます。そのためには、当然ですけれども、全体の最適設計とか、あるいは試作の低減とか、そういうことが求められるということでございます。
 車の例をとってみると、例えばミクロ現象というと、我々が今考えているのは、乱流の渦を全部解析して、その挙動を制御することで、究極のCDというのは専門用語ですけれども、空気抵抗でございますが、空気抵抗車を実現するとか、あるいは複合材料のミクロスケール解析によって材料の破壊挙動の解明をして、超軽量、あるいは高信頼性の自動車を実現するということです。こういうミクロ現象の解明による革新もありますが、同時に、全体最適化ということもあわせて高速計算機の中でやっていかないといけないということでございます。
 既に我々は、地球シミュレーター等を使ってこういう取り組みをしていますので、次にお見せするスライドでちょっとだけこのような取り組みをご紹介します。これはある大手の自動車メーカーと一緒にやっている解析です。従来は考えられなかったんですが、実は、車両の周りの全部の乱流の渦を解いて、それを解くことによって抵抗を下げるということが可能になりつつあります。これはちょっとわかりにくいんですが、実験と計算を比較していますが、抵抗係数という係数でプラスマイナス1%ぐらいの予測精度を実現しているということでございます。
 ところで、我々がやりたいのは、シミュレーションしたいわけではなくて、デザインをしたいわけで、あるいはデザインを改良したいわけで、その後、何をやっているかということをちょっとご紹介すると、我々がある大手自動車メーカーとねらっているのは、空気抵抗の決定に最も支配的な渦を同定して、その渦を制御することによって抵抗を低減するということをねらっています。実は、この研究はうまくいっていて、今、風洞実験をやって、この実証をしているところです。
 このように、もっとどんどんいろいろなことができるということを申し上げたいんですが、それ以外に、例えば有機ELとか、高分子ELですけれども、既に実用化の間際ですけれども、特に高分子は、まだ発光寿命等の問題がありますが、次世代スパコンを利用すれば、10万原子ぐらいの第一原理計算、あるいは量子科学計算ができますし、次々世代ですと100万原子ぐらいはできますので、そういうものを使った最適設計ができるようになるということでございます。
 その次は、ちょっと夢物語的なんですが、一応ものづくりでも、こういう人工光合成といったことも将来物としては考えています。
 こういう夢のようなビジョンがあって、またさっき冒頭申し上げたように、既に一部は現実なんですが、現実やっていることをそのまま遂行していればいいのかというのが、この戦略分野を考える上で一番重要な点だと思っていまして、夢を実現するためにどんな障害があるかということをまず考えてみました。
 3つの観点で議論すべきだと思っていて、まずソフトウエア、ハードウエア環境はどうなんだ、それから、HPCソフトウエアの利用する人、開発する人は大丈夫なのか、さらに、このまま放っておいて、イノベーションが本当に出るのかという3つの観点で考えてみました。まず、ソフトウエアに関しては、超並列計算機対応の実用的ソフトウエアを充実させていかないといけないと思います。ちなみに、お手元の資料は「不足」と書いてあるんですが、「不足」というのはちょっと言い過ぎで、我々のところで既に革新プロジェクトとか、あるいはイノベーションソフトでやっているので、まだ不足しているのかと言われると、ちょっと語弊がありますが、いずれにしても、これを充実していかないといけないことは事実です。
 ただ、我々が一番重要だと思っているのは、設計者が使えるためには、単に神戸のスパコンで使えるだけではだめで、PCクラスタから次世代スパコンまでシームレスに利用できるようなHPC環境が必要であろうということを強く思っています。
 それから、全体を底上げするには、まだまだ人材の育成、利用する人、開発する人、両方の側面の人材の育成が必要であると思っています。
 さらに、イノベーションを創出するためには、これは個人的な意見といってもいろいろな方と議論した結果なんですが、我々の認識は、相当国が後押しをしないといけないと思っています。その後押しの仕方の具体策も後でご紹介申し上げますが……。我々はこういう3つの観点の障壁があると思っているんですが、それを戦略分野としてどのように推進していけば、この障壁が解決されて、ほんとうの意味で、先ほど冒頭に申し上げた、こういう世界ですね、こういう世界が実現できるかということを考えてみました。今からその具体策に関してご紹介します。
 まずこれは全体的な話なんですが、さっき申し上げたように、一言で言うと、ものづくりというのは、研究開発、それから、製品企画から生産まであって、設計者が、次世代スパコンだけで設計するわけではないということを書いた資料でございます。
 実は、この資料で、一番申し上げたいことなんですが、ぜひ日本で独自のHPCプラットフォームというものを開発したらどうかということを考えています。このHPCプラットフォームというのは、ものづくり分野で本当に設計者が使えるソフトウエア群を中核として、それだけではなくて、例えばネットワークとか、あるいはユーザインターフェースとか、全部完備している必要があります。これはあくまで例なんですが、こういうものを開発していく必要があると思っています。ここに勝手に平尾先生のUT-Chemなども入れさせていただきましたが、これはこういう非常に優れたソフトウエアがあるので、こういうものもこういう中に入れていったらどうかということでございます。
 もうちょっと具体的に申し上げると、これはぜひご提案申し上げたかったことなんですが、実用性、先端性を兼ね備えた我が国独自のHPCソフトウエア群を開発して、整備していくということです。その要件とかやり方はここに書いてあるとおりでして、さっきから申し上げているように、PCクラスタから次世代スパコンまでのスケーラビリティを保障するとともに、例えば設計者が、自分のところのPCクラスタでやっていた計算をもっとでかい計算がやりたい、あるいは、もっと速くやりたいと思ったら、そのデータが自動的にアップデートでき、神戸(次世代スパコン)にすぐ持っていけるような、そういうシステムでないといけないと思っています。
 それから、設計者が市販ソフトを使うことも当然まだあるわけですから、そのような市販ソフトからすぐにこの次世代スパコンに乗り移るためには、データの互換性を保障しないといけません。
 こういうソフトウエアを次世代スパコンだけではなくて、大学の情報基盤センターとか、あるいはES2とか、JAXAの新しい計算機とか、こういう数千CPUクラスの計算機にプレインストールしておきます。そのソフトウエアは、どういうふうにしてラインナップをそろえるかというと、さっきちょっと申し上げましたが、革新プロジェクトのソフトウエアも、今、理研で高速化していますし、それから、イノベーションプロジェクトはそもそも次世代に乗るように設計されていますが、それだけではなくて、せっかくグランドチャレンジのソフトウエアとか、それから、各研究機関とか、各大学で、いいソフトウエアを持っていると思いますので、そういうものから選定してラインナップしていけばいいと思います。そのラインナップの仕方は、協議会の──この協議会というのはスーパーコンピューティング技術産業応用協議会ですが、そのニーズによって決定して、国が開発というか、要するに、ここに載せるための国が支援をすればいいと思います。
 そのときに、当然市販ソフトも門前払いするのではなくて、技術的あるいはライセンス的ないろいろな問題もありますけれども、ぜひ市販ソフトも必要があれば載せたいと思っています。それからそういう全体的なHPCプラットフォームをぜひ作ったらどうかというのがご提案です。
 話は変わりますけど、人材育成も重要です。人材育成に関しては、ものづくりとか、産業利用というと、まずは利用者教育がまず重要になるわけですが、ただ、利用者教育だけやっていると、結局、先細りしてしまうんですね。ですから、開発者教育も同時に系統的にやっていく必要があります。
 利用者教育に関しては、何回もご紹介していますが、先ほど定義したこういうソフトウェアプラットフォームをつくっておけば、いきなり神戸には行かなくても、地球シミュレーターとか、あるいはJAXAのコンピュータとか、情報基盤センターのT2Kを使った利用者教育ができるわけですね。また、できるようにしておかないといけないというのが、私どもの提案でございます。そこでは単に計算するだけではなくて、モデリングは当然のことながら、知見の抽出とか、それから、ほんとうの意味での設計改良に生かすような、そういう実践力まで滋養しておくということです。
 それから、開発者教育の話に移ります。私のプレゼンテーションは、あえて神戸で何をするかということは入れてないんですが、口頭で申し上げると、神戸はハードウエアがあるわけですね。当然のことながら、ハードウエアがあるということに最も近いのは計算機科学者ですね。ですから、個人的な意見として申し上げたいのは、神戸に計算機科学者を結集させて、その集団とタイアップして開発者教育をしていくということが、ここには書いていないんですが、我々が考えていることでございます。
 最後の話題ですけれども、成功事例の戦略的創出です。これが最も重要なことだと認識しています。なぜかというと、まだ産業界は、そんなに一生懸命スパコンを使って何かやろうという機運にはなってないんですね。そういうことを言うと、笠さんの発表に差し支えるかもしれないんですが……。なぜなってないかというと、これは簡単な話で、成功事例がまだあまりないからですね。じゃ、このまま放っておいて成功事例ができるかというと、私はちょっとネガティブな意見を持っていまして、やはりそこはある程度国がバックアップする必要があると思っています。どういうふうにやるかという具体的なやり方がこのスライドに書いてあるんですが、5件程度のテーマを公募によって採択して、次世代スパコンのリソースをまず優先的に割り当てます。このときに重要なのは、スライドには書いてないんですが、次世代スパコンで本当に解決しようとしている課題は何かということと、それから開発全体のプロセスも提示してもらって、本当に次世代スパコンでこれができるのかという全体像をちゃんと提示してもらって、その上できちっと採択する。採択されたものは、一応、3年程度の期間を考えていまして、我々みたいなソフトウエア開発者も同時に研究開発に参画します。研究・開発費に関しては、少しは企業側にお金を出してもらった方がいいと思いますから、マッチングファンド方式でやるのがいいと思います。
 成果の取り扱いですが、成果は企業とここに参画した共同研究者に帰属しますが、重要なのは、成果だけではなくて、成果に至ったプロセスを公表していただくということです。そうすると、ほかの企業も、こういうことをやれば、こういうことができるんだという具体例がわかりますから、それで、いろいろな人が使い始めるということを考えています。ぜひこういうこともやったらいかがかというのが、私どもの議論の結果というか、ご提案です。
 まとめは今言ったとおりでして、まずは、何回も申し上げていますが、我が国独自のHPCスタンダードソフトウエアというのを開発して、それを整備しておくことが必要です。それを地球シミュレーターとか、あるいは情報基盤センターにプレインストールして、今すぐにでも使える状態にしておきます。前回の委員会で宿題になっていた国際比較というのは、このスライドには書いてないんですが、こういうアイデアはまだアメリカにはないと思うので、これを先行してやれば、絶対ものづくり分野で日本がリードできると思っています。
 そういうシステムを作っておいて、そのシステムを使う人を徹底的に教育します。つまり、このソフトウエアを使って徹底的に教育します。それと同時に、教育した人を使って、成功事例を戦略的に創出していくということが、私どもが考えたものづくり分野における計算機科学シミュレーションの推進策でございます。
 一応お金のこととか、いろいろなことも全部考えてみて、ここで申し上げたようなことはできるだろうという、絵にかいたもちではないということは申し上げておきますが、予算案等の資料は用意しておりません。
 以上です。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。大変うまくまとめていただいて、ありがとうございます。
 ちょっと申し上げておきますと、加藤先生がおっしゃられたようなプラットフォームといいますか、こちらの標準ソフトウエアの開発整備とか、あるいは人材育成に関しては、おおよそ我々もそのようなことを考えておりますし、発言してきたつもりでございますので、どうぞまたご相談させてください。
 さて、加藤先生のご発表を踏まえまして、ご意見、あるいはご質問等ございましたら。

【宇川委員】

 よろしいですか。

【土居主査】

 どうぞ。

【宇川委員】

 非常に興味深くお伺いしたんですけど、よく考えてみると、提示されたビジネスモデルというのは、計算機科学の基礎科学においてどうやったら成功例が出るか。実際、幾つも例があるわけですが、その例に非常によく似ているわけですね。実際上、それはものづくりに関しては今までなかなかそういったものはできてこなかったわけですけれども、その1つはおそらくメーカー側にとってはコストパフォーマンス、単に計算機に対する投資ということ以上に、どれだけ人に投資するかとか、そういったことが非常に大きいんじゃないかと思うんですね。その点に関しては、どういった見通しをお持ちかというのをお伺いしたいのが1点。
 もう一つ、例として挙げられた自動車の場合は流体、CFDですので、非常によく発展した分野ですね。ですから、ある意味見通しが立てやすい分野だと思うんですけれども、パワーポイントにもありましたけれども、これからはミクロレベルのシミュレーションにということですと、例えば5件程度成功例をつくろうと思ったときに、これは秘密情報なのかもしれませんが、どういった事柄を想定していらっしゃるか。もし紹介していただければと思います。

【加藤先生】

 まず短く答えられる後者の質問からお答えします。5件程度というのは、純粋なというか、情報通信もあわせた普通の製造業が3件程度。それから、バイオとか、創薬絡みの話とか、新材料とか、そういうところで1件ずつぐらいということを考えています。ものづくりといっても広いですから、そういうことを考えています。
 それから、コストパフォーマンスというか、企業が投資に見合った効果があるかということだと思うんですが、これはまず答えを先に申し上げると、あると思っています。というのは、企業は結構投資しているんですね。こういう分野に対して、今でも金は使っているわけですね。金を使っていて成果が出ていないというと怒られちゃうんですが。ですから、今よりもはるかに多くの金がかかるということではなくて、今と同じ程度の人材に対する投資をすることによって、今の100倍とか、今に比べて非常に大きな成果を出したいということを考えています。

【宇川委員】

 今でもそのぐらいお金をかけているんだとすると、成功の鍵はどこですか。全体に戦略を立てて、国も絡んで、こういった方針で推進するという、そういういわば戦略的なアプローチが実は今まで欠けていたから、そういうご主張ですか。

【加藤先生】

 そのとおりです。この3つのコンポーネントがありますね。このコンポーネントがすべてそろっていて、かつ一番下が一番重要だと思うんですが、そこがきっちり戦略的にできれば成功すると思っています。逆に、ここまでやって成功できなかったら、こんなことはやめたほうがいいですね。ものづくり分野でペタコンを使うと言っても、これをラストチャンスだと思ってやるくらいでないとだめだと思っています。
 ただ、一言だけ追加させていただくと、ペタコンができてからでは手遅れであり、今から始めておかないと間に合わないですよ、ということです。

【土居主査】

 平尾先生。

【平尾委員】

 大変興味深く聞かせていただいたんですが、特に最初のソフトウエアの基盤をつくるとか、人材育成に関するご意見というのは非常に参考になりますし、これまでいろいろ議論してきたことも、ある意味でそういうものと同じような形で共有できるんじゃないかなと思っています。
 問題は、一番最後、先生も言われたイノベーションをどう起こすかということだろうと思うんですが、ものづくりを例えばこういうシミュレーションでやるということは、ある程度成功し得ると私も思います。それは十分ペタコンを使えば、そういう状況になってきていると思うんですが……。イノベーションというのは、単なるものづくりじゃなくて、事起こしというか、社会を変えていくとか技術革新的なところになりますので、単なるものづくり以上のものが入ってくるわけですね。そのあたりの見通しというのは、どういうふうにお考えでしょうか。

【加藤先生】

 見通しはあります。ただ、こういうことを言うと怒られるかもしれないんですが、イノベーションといって、あんまり気構えちゃだめだと思っているんですね。要は、今までの、例えば風洞実験、あるいは今までのシミュレーションで乗り越えられなかった壁が各社あるわけですね。その壁をまず破ることが重要です。例えば自動車の例ですと、小林先生がいらっしゃるので、こんなことを言うとあれかもしれないんですが、例えば先ほどの自動車メーカーは、CDが0.01でも下がれば御の字だといっています。私が考えるのは、計算機シミュレーションによりある壁を乗り越えるということが将来的に本当の意味でのイノベーションにつながっていくと思っています。最初から、ものづくり分野におけるノーベル賞級のイノベーションなんか求めたら、多分どの企業も手を挙げないと思うんです。でも、各企業で、いろいろ壁になっているところがあるので、それを何とか、この次世代スパコンで突破していこう、そういうスタンスであれば行けると思っています。

【土居主査】

 他には。よろしいでしょうか。それじゃ、どうもありがとうございました。

【加藤先生】

 どうもありがとうございました。

【土居主査】

 また最後にまとめて質疑応答させていただきたいと思います。
 それでは、続きまして、株式会社IHIの笠部長にお願いいたしたいと思います。笠部長は、非弾性構造解析をご専門とされておられまして、株式会社IHI基礎技術研究所解析技術部長でいらっしゃいます。そして、スーパーコンピューティング技術産業応用協議会、数値シミュレーション評価普及部会の部会長もされておられます。
 それでは、よろしくどうぞお願いいたします。

【笠部長】

 どうもご紹介いただきまして、ありがとうございました。それでは、座ってやらせていただきます。
 ただいまご紹介にあずかりましたとおり、私は一介の構造屋といいますか、構造解析を会社に入って以来20年、ずっと対象に、計算分野にいたわけでございまして、ものづくりすべてを語れるかといいますと非常に不安なところもございます。ただ、実際の現場、あえて言わせていただきますが、現場で計算機を使っているという立場からいきますと、こういうことが次世代スパコンなりで実現すれば、その中で、特に企業としてこういうお願いだけはしておきたいというような要望というところを少しまとめてきたつもりです。
 ですので、分野の選定というところでは筋違いのところもあるかもしれませんけれども、そこはご容赦いただきまして、そういう視点でまとめたということをまず前置きとしては話をさせていただきます。
 失礼いたしました。それでは、始めさせていただきます。
 私のプレゼンテーションの内容でございますが、まず、先ほどもご紹介がございましたスーパーコンピューティング技術産業応用協議会という組織がございます。この活動の中身について少し触れさせていただいて、どういうところを目指している活動なのか。その中でいろいろなことを経験した、それを本日のプレゼンテーションで話をさせていただこうと思っております。
 次に、ちょっと大上段ですが、産業界におけるHPCの位置づけと期待ということで、先ほどからイノベーションに結びつくのかとか、あるいは企業は本当にやる気があるのかというようなお話をいただいておりますが、ただ、期待だけは非常に大きいというのは当然のことでございまして、その部分について話をさせていただきたい。
 それから、次世代スパコン戦略分野としてのものづくり分野、これを取り上げる意義、我々の側から見た意義ですが、それをお話しさせていただいて、少し手回しのいい話になりますが、戦略機関選定をもし行っていくというのであれば、産業界からのこういった要望があるという点。それから、産業界において特にこの場で強調させていただきたいと私個人的に思いまして、この項を入れたんですが、産業界で、要は企業でHPCを引っ張っていく人材というのをどうやって育成していくのか。その観点というのは非常に大きいと思っておりまして、それについても、半ば以上お願いでございますけれども、それを話させていただこうと思っております。
 前段は少し駆け足で。これは先ほど申し上げたスーパーコンピューティング技術産業応用協議会という組織の全体像でございます。役割だけ簡単に説明いたしますと、2つの大きなファンクションがございまして、1つ左側が数値シミュレーションソフト評価普及部会ということで、これはHPCの分野でさまざま開発されて、あるいは利用されているソフトウエア、それをさらに産業界、こういった右の機関を見ていただいて、国のプロジェクト等でさまざまなプログラムが開発されている。その開発されたものをいかに産業界の中で使っていくのか、それをどうプロモートしていくのかというのが1つの大きな役割。
 もう一つは、この場もそうでございますけれども、スーパーコンピューティング技術を、特に次世代スパコン、そういったものをどのように利活用していくのか。産業界側からも見て、それを提言していこうというような、この2つのファンクションがございまして、全体としては今181機関という、企業あるいは大学も含めてですけれども、集まった協議の場になっておりまして、その中で、それぞれ後ほど簡単に活動の一端に触れますが、活動しているというところです。
 特徴としては、この集団と右にある連携協力機関との間でコラボラティブに仕事をしているというところが一番の特徴かなというふうに思っております。これは今申し上げたところを少し文字で書いたものでございまして、今年からは、特に理研でグランドチャレンジで開始されているライフサイエンス分野についても、産業利用を考えていこうということで、新たに活動する分野を広げたいというようなところがトピックスになっておりまして、何といいますか、言い方は変なんですが、全方位外交で企業としては利用できるものはできるだけ利用していく。それをさらに広げていくためには与党を増やすんだ、そういうイニシアティブでやっている活動になっています。
 その活動の一端として、中身でどんなことを期待して、企業がこんなものに集まってきているのかということの一端でございます。一言で言うと人材育成とか、インスパイアということなんですが、大学や国の研究機関、ここがプログラムをつくるという場の開発母体になっておりまして、そことソフトウエアベンダーが入った中で、ソフトウエアが作られていっている。それに対して、我々ユーザとしてソフトを利用する側、ユーザとして、開発、一部修正、そういったものを含めて手を入れるというような、そういう使い方をする集団がいて、この中で、いろいろなことを実は議論する場を持てば、我々そういうソフトウエアは、そういう機能は要りませんとか、こういう機能がないと使えませんという話を直接開発者側とできるというところは、我々利用する側としても非常に刺激を受けるところでございまして、逆に言えば、開発者に対して刺激を与える場にもなっている。こういうコラボレーションの場ができている、作れているというのが、企業が多数集まってくる一番大きな要因だと思っています。
 一言で言うと、技術者がもっと外に出るべきだと。そこでインスパイアされて、その場所からまた企業に戻っていく。これを仕組みとして、制度として、組織としてきちんとやっていければ、産業普及というのがもっと進むだろうというような、そういう活動を続けているというところでございます。こういう、我々、何といいますか、実績を踏まえて、以下のお話をさせていただこうと思っております。
 一番最初のスライドは、HPCの位置づけということで、これは巷間でもよく言われている話でございまして、先ほど申し上げた現場という視点でもまさにこういう動きが始まっていると感じています。これは、もののつくられていく流れでございまして、それに対して今までの解析というのは、どうしても後ろがかりといいますか、つくった上で、運転した上で、なかなかうまく性能が出ない。それはなぜかというような原因究明に、アナリシスに使われていた。それをできるだけ前がかりで、こういうことを起こさないというために使う。このためにはいろいろな要件が必要で、フロントローディングと言われているような、そういうツールとして使うためには、詳細とか、大規模とか、あるがままとか、複合現象が解析できるとか、いろいろなキーワードが必要で、こういうものがないと、起こったことがわかっている単一事象について一生懸命解析する。それは一生懸命やってきたというところで、先ほどのプレゼンテーションでありましたデジタルエンジニアリングが定着したというのは、言ってみればこの部分。ある産業分野ではこちらがかなりローンチ?しているというような状態が今の状態ではないかなと思っています。
 事実、企業の中でも、数千プロセッサークラスのそういうPCクラスタを入れる動きというのは、かなり出てきていると思っておりまして、これが今の2009年の現状であろうと思っています。
 今日、スライドを用意してないので、ここでちょっとだけお話をさせていただきたいのは、先ほどからデザインというお話をいろいろされていて、その中で、我々企業としては、そういう性能、ピカ一の性能のものは、どうやったら作れるのかというお話と同時に、最適化とか、ロバスト設計と言われているような、安定した製品をいかに作るか。こういう製品を作るためには、実は、最近非常に感じるのは、ある設計領域なり、空間を考えたときに、そこに解がないということを調べられるということも、一つの大きな力になるということを最近よく感じる場面が幾つかありまして、要は詰め込み過ぎて、コンパクトにこういう製品を作りたいというコンセプトはいいんだけれども、実際にそこには解がないよ、違う場所に求めなきゃいけないよということも、数値シミュレーションで探すことができれば、我々、ものを作っていく、設計していくという中では力になるんじゃないかなと思っています。そういうことが含まれて、フロントローディングというものを考えたいと私は思っております。
 産業界でHPCがどうして使われるようになってきたかという、これも巷間言われていることで、第3の設計ツールだなということはかなり認知されてきていて、そのためにはさまざまに検証をやってきたという歴史があるかと思います。さらに、企業収益にかなりインパクトを与えるような、そういうものがなければ、引っ張られていきませんので、それも導き出されてきたと感じています。
 やはりさまざまな意味の連携ということがこういう分野を、特にHPCの分野は引っ張られてきたんじゃないかなというふうに思っておりまして、こういった要件がそろっていくということが産業界でもHPCを使っていくということだろうと思っています。
 それでは、これを取り上げる意義なんですが、実はあまり深掘りができていない点でございますけれども、私考えているのは、1つは戦略分野の選定方針、これは出されておりますので、本当にそれにフィットしているのかという話があるかと思います。次世代スパコンの能力は必要か。これは実は、ものづくり系でも、こういったキーワードに従うと、大規模な計算なりが必要だという領域はあると思っておりまして、一部、後ほどご紹介させていただきます。それから、社会的インパクトという意味では、産業波及効果が大きいイノベーション創出へ貢献できるだろう。イノベーションと言っているのは、実は、我々のものづくり企業としては、ものを作る上での作るプロセス自体を変えていくということもプロセスのイノベーションではないかと思っておりまして、もう一つの視点は、当然ながら革新的な製品ということでのプロダクトのイノベーション。どちらが起こっても、実は企業活動としては非常にインパクトがあると考えておりまして、どちらかを実現するようなものが提示できればいいのかなと思っております。
 じゃ、実際にそれで成果を出し得るのかというと、この分野は非常にシミュレーションの認知度が高くなっておりますので、そういう意味では、今の立ち位置がよくわかっているということ。それから、産学連携の実績なり、そういったことでもアドバンテージがあるのかなと思っておりまして、この分野で何らかのテーマアップをしていただくというのは少し先が見える話かなと思っております。
 我々の内部で、いろいろなアンケート調査をやりまして、どういうイノベーションとか、シミュレーション、ソフトウエア、そういうものの期待があるか。これはお読み取りいただければいいんですが、今までお話をしてきたようなキーワードというのが産業界のマスに対して出したアンケートでも言葉としては出てきていると。ただ、対象はあくまで、どちらかというと研究開発の方が多いというところはございますので、こういう言葉が出てきているのかもしれませんけれども、これが我々の、今の団体としての立ち位置というように思っております。
 それでは、戦略機関選定に対する産業界の要望ということでお話をさせていただきます。まず、戦略テーマの選定方法に関してなんですが、さまざま議論されていることはわかりつつ、ここで改めて要望という形で出させていただきたいのは、ものづくり分野というのは非常に多様でございます。先ほどからマクロ、ミクロ、ナノ、メゾからという、そういういろいろなスケールの問題もございますし、そういう分野から戦略分野の選定にふさわしいような、それを満たすテーマを複数抽出していただいて、実際に戦略機関によってハンドリングしていきながら重点化を行っていくような、そういう施策も必要なんじゃないかと1つは思います。
 それから、選定されるテーマの要件としては、先ほどから申し上げてきた企業が、結局これによって引っ張られるためには、最初の製品イメージとか、そこでどういうイノベーション、先ほど2種類と申し上げた、どちらが、何が実現できるのかというようなテーマがイメージアップできるものを選ぶべきではないかなと思っております。
 こういったものをハンドリングできて、しかも人材育成、後ほど述べますが、そういったことも実現できるような機関を選定していただきたいというのが産業界としての希望でございます。
 あり方、機会の要望、少し長くなっておりますので、簡単にまとめますが、これは産学連携が前提だろうというのは、我々、こういったものに期待するのは、科学と工学、サイエンスとエンジニアリングというのは、そこの場で触発し合って、何事かを生み出していく場であるべきだというふうに思っておりまして、そういった場をつくっていただきたい。そのためには、産業界がものをつくって実証するというステージ、それについては企業側がかなりの責任を持たなきゃいけないんじゃないか。そういったデータが提示できるような、そういう仕組みなりをつくっていただいて、そのために、例えば1つとしては、個別テーマに対してコンソーシアムを組む。それによってパテントプール化をするというような、そういう手当てもしながら、要するに、知的財産の相互保護、そういったものを含めながら、こういう機関のあり方というのを検討していただきたいというふうに思っております。
 その2でございます。これは戦略分野と一般的利用という、これもこの戦略委員会の中でご議論されるというふうに聞いておりますが、その連携ということが非常に重要だろうと。それは煎じ詰めると、企業の中の個々のイノベーションということに関っていきますと、非常に秘匿性の高いテーマというのをやっていかなければいけない。それはあくまで一般的利用というような、そういうところでやるんだろう。一方で、それをエンカレッジするような活動というのは、戦略機関での基盤的実証というところに置くべきで、こことここの間うまくつながるというような、そういう仕組み立てをしていただきたいというのがその要望の2番でございます。
 3番目は、具体的なテーマ事例でございますが、例えばこういったものがあるのではないかということで、後ほど述べますバーチャル・エンジン・コンセプトというような、我々がいろいろ提言してきたもの。それから、エレクトロニクスの分野ではナノエレクトロニクスとか、ナノデバイスというような、そういうサイエンスとそれを踏まえた上での実際にものを作るという段階のそういうシミュレーション、こういったものが候補としてはあるのかなと思っております。
 最後に、人材育成のお話でございますが、これは競争優位というのを、個別企業というのは築いていかなければいけないわけですが、その源泉というのは人に由来しているのは明らかでございます。その人というのが非常に重要で、かつそれを何といいますか、悪い言い方で言えば、抱え込む。それは当然のことでございまして、まねされないためには、自分の企業の中でこういう人材を保有しておかなければいけない。そのためには、企業は実はお金を出して人を教育しているわけですが、実はこの分野は企業1社だけじゃとてもかなわないような、それだけ広い内容を含んでいると思っております。だから、それを実現していただける。利用者と、セミ開発者といいますか、その中で開発をかいま見て、社に戻って改良することができるというような、そういう人材が欲しいなというふうに思っております。そのために具体的な人材育成プログラムなりを戦略機関できちんとつくっていただくというような課題を戦略機関に対して与えるということも必要ではないかなというふうに思っております。
 それから、この機関自体、全体としては産業競争力に結びつけていくために人が重要という話は今申し上げました。したがって、それをどうやってやっていくかというところは、両方の面。先ほど冒頭で申し上げた産業応用協議会という場がこういうコミュニティの場になっているという。それをちょうどこの戦略機関でも実現していただくような、そういう運用なり、思想というのを持っていただければ非常にありがたいなと思っておりまして、ここでつくられた人材というのは、実はきちんと追跡調査をしていただいて、本当に企業の中でどういう役割を発揮しているのかとか、そういったことを確認いただいて、さらにこれが我々の国としても、産業界としても人材プールになっていると思っておりますので、その次の次々世代のスーパーコンピュータ計画でこれをどう使っていくかということも、戦略機関としてはぜひ施策の中で検討していただきたいと思っております。
 すみません。ちょっと長くなっておりますけれども、駆け足で。
 実際の課題として、我々企業側でこういうものがあればということで、これはいわゆるプロセスイノベーションと言われるような種類の一つでございますが、バーチャルエンジンということで、このエンジン、ジェットエンジンでございますが、これをシミュレーションとして計算機の中でバーチャルに構築してやろう。これは何のためにというのは、さまざまな社会的要求とか、開発目標というものがございまして、この中で、リスクは減らしつつ、開発費用も減らして、いいものを作るというのが企業に与えられている命題でございます。そのためには、実際にこういう開発プロセスをいかに短くして、しかも信頼性を高くやるか。ということは、当然、シミュレーションが必要になってまいりまして、今、我々が非常に粗っぽいエスティメートなんですが、やっているのは、例えば次世代スパコンクラス、こちらが地球シミュレーターでほぼできるだろうと思っていることなんですが、これですと、単体のエレメントとしての性能評価。これは空力であったり、伝熱であったりなんですけれども、できるという程度かなと。それが次世代スパコンであれば、全体系を取り扱える。全体を取り扱えるのがなぜいいのかというのは、きょう、あまりお時間がないので、話をできないんですけれども、それを取り上げて、全段、全周についての定常解析というのが可能になる。これはピークといいますか、定常使っている状態の性能がきちんと評価できるという状態で、これができると非常にありがたい。さらに、次々世代であれば、それが非定常な状態であっても予測できるというふうになって、これは本当にものづくり自体が変わっていく可能性があるなと思っております。
 実際に中でどんなことをやるのかというのは、それぞれの要素別にいろいろとこういうことが実現すれば、試作の回数がうんと減るとか、そういう意味で、プロセスのイノベーションに結びつくだろうと思っております。タービンについてもそうですし、最後に全体をまとめたものについても、特にこういった各要素がきちんと計算できると。それがまとめた計算ができるということになれば、こういう全体の搭載試験なりの回数を減らしたりとか、一部代替が可能になるだろうと思っておりまして、これはものづくりのプロセス自体が変わっていくんだろうと。それの見積もった例で、期間とか、コストとか、リスク、こういったものがこういった形で低減できるだろうというのが、これは言ってみれば、我々企業側から見た場合のイノベーションの姿ではないかなと思っております。
 最後に、ナノデバイスのお話でございまして、ナノテクを利用した半導体LSIということで、今LSIの世界が40ナノメートル。この世代のモストランジスタになっていて、それに対して量子力学的なシミュレーションなり、あるいは古典的な分子動力学シミュレーションでは非常に役に立っているという背景がございます。これについては、皆様、既によくご存じだと思いますので、少し遅いんですが、さらに高性能化というようなところをねらっていけば、デバイスのもととなるような、例えばこれは高誘電率のゲート材、ゲートを、絶縁膜を作るためのハフニウム。それが実際のものづくりプロセスの中で熱処理を受けると、どういうように拡散していくのか。ここまで押さえないと実はものは作れない。そこをやらなきゃいけない領域があるというような話とか、ほかにも新しい、シリコンにかわるような材料の探索とか、あとは、さらにグラフェントランジスタというような、形成するというような、こういったシミュレーションを、それぞれ必要なシミュレーションを行って、ものをデバイスとして実現していく。そのために、量子シミュレーション等々を利用できるというような世界があると思っておりまして、これも企業としては大事なものづくりで、しかも製品のイメージができている領域かなというふうに思っております。
 すみません。長くかかってしまいました。

【土居主査】

 どうもありがとうございました。
 ただいまのご発表を踏まえまして、ご自由に、ご質問、ご議論いただければと思います。いかがでしょうか。どうぞ、中村先生。

【中村委員】

 産業界からの中核拠点の提案で、大変おもしろく感じました。特に戦略機関の活動というのは非常にベーシックなところに限定して、秘匿性の高いものというのは一般利用でやると。そういう非常にクリアな切り分けだと思うんですけれども……。それはそれで動くとは思うんですが、インパクトの高いものというのは、やはり同時に秘匿性も高くて、一方で、インパクトが高いというのは、ほんとうに先端的なことでないとなかなかオーバーカムできないという、そういう両面があるんですけど、そこのところはどういうふうな考え方でうまく実施しようと思われているんでしょうか。

【笠部長】

 共通性の高いですとか、基盤的な部分というのが、必ず、何といますか、ターゲットとして見劣りするというようなものであれば、確かに、そもそも戦略機関、戦略分野としてやって、そこが引っ張っていく、牽引していくという役割は担えないだろうと思っておりますので、それはテーマをうまく選ばなければいけないんだろうと思っています。秘匿性の高いがイコール非常にトップの性能をねらうものであって、それでなければ戦略分野としての価値がないというふうにはしたくないといいますか、そうしないようにしなきゃいけないんだろうと思っております。

【中村委員】

 そういうことでもいいとは思うんですけど、もう一つの観点として、戦略機関そのものが秘匿性の高いものも、ある程度のコントラクトを結びながら実施するという可能性もあるとは思うんですね。それを最初から捨ててしまうのはなぜかなという……。ちょっともったいない気がしているんです。

【笠部長】

 もちろんそうでございます。おっしゃるとおりだと思います。

【土居主査】

 ありがとうございました。ほかには。矢川先生。

【矢川委員】

 きょう、3人の先生方のお話は、すべてものづくりというキーワードでくくられているわけですが、ものづくり、今のお話の中の最後のエンジンの部品、形を見ますと、大変複雑ですね。それで、工学のほうの難しさは、理学の研究とちょっと性格が違って、プリプロセシングにものすごく時間がかかるんですね。今の形をつくり……。あれは、スパコンであることの有利さはあんまり出てこないんです。あの部分は、ほとんど手でやったり、あるいはPCでほとんどやっているわけですね。そこで、工学の計算というのが、ペタコンと、そういう意味では理学のほうと比べると、ちょっと親和性が悪いんですね。そこが一番大きな違いなので、いいことばかりじゃないですね。そこをよく考えておかなきゃいけないんじゃないかと、私、先ほどから思っていたんですね。そういうことでいかがでしょうか。先ほどのエンジンの、プレプロセシングの時間が100倍ぐらいしていると思うんですよ。計算そのものよりも。計算は丸1日でできても、プレプロセスは3カ月かかったりしていると思うんですね。そこをどうお考えですか。

【笠部長】

 1つは、先ほどのエンジンの例でございますと、計算そのものをするために、ペタコン級のコンピュータが必要だろうとは思っております。ただ、一方で、今おっしゃられたとおり、プレプロセシングの部分で非常に多大な時間をかけているのももちろんでございまして、我々、企業の中のR&Dの部隊におりますと、そこをいかに速くできるか。それについても、例えば並列化なり何なりで、パラレル処理をするようなソフトウエアが出てきたりとか、もう少し帯域的に切っておいて、プログラムの中でフォーカシングするというような、そういう技術とか、それも我々が開発したというよりは、それを利用する側ですけれども、その辺の探索をすることで、プレプロセシングはどうしても避けては通れないんですが、できるだけソフトウエアの力も借りながら、数千万というような、そういうメッシュのオーダーは切れるのではないかなと思っております。それ以上になると、とてもハンドリングはできなくなりますので、そこから先はシミュレーションのソルバーの中で例えば高精細化して、その高精細化の部分でシミュレーションとしての精度の保障をするというような、そういうアイデアが必要になってくるだろうと思っていまして、ぜひそういうソフトウエアが欲しいな。まだなかなか世の中にないので、そういう思いでおります。

【加藤先生】

 すみません。ちょっと口を挟むようですが、既に我々のところでそれを考えて、現在、イノベーションプロジェクトで開発を進めています。

【土居主査】

 どうぞ。

【小柳委員】

 ちょっと別の話ですが、お話の中に、産業界においてHPCを牽引する人材育成の重要性というお話をなさいました。大変重要な問題だと思うんですが、先ほど前の方のお話にもありますように、人材育成の中にはユーザとしての育成という面とソフトウエア等々の開発者の人材育成という2つの面があるかと思うんですが、特に産業界という面で今おっしゃったことから言うと、そのどちらというか、どういうようなバランスで考えていらっしゃるのか、その辺、ちょっとお聞かせ願えないでしょうか。

【笠部長】

 企業としての基礎体力としては当然利用者としての教育、そこでの力をつけるということで、ただ、企業としての打ちかっていく、勝っていくという部分は、先ほど申し上げた、模倣の容易性をいかに下げるかですので、それは作るという部分を一部担える人材も、それを持っておかないと、最終的には競争の場に立てないんじゃないかなというふうに思っております。
 利用者側の話は、企業ですので、ほんとうにへまなことはいっぱいやっておりまして、プログラムの構造がわかっていないので、ただ単に、データをつくって流していた。でも、実際はその流れ方が、いわゆるスワップがかかっていて、ものすごい時間がかかっているのに、その人間は単に大規模な計算をやっているからそうなっているんだと。こんな間抜けなことはないわけで、それはやはりプログラムの構造からどう動いているかなんていうことがわかっていない人間が使っているということがかなりあるんですね。そこはきちんと、底上げのために基礎体力としての教育をする。それをさらに使う。本当に使い込んで勝つためには、それをやはり改良していかなきゃいけない。その部分はぜひ開発に何らかの形で加わった人材が企業に戻ってくるというような、そういう仕組みをつくっていただきたいなというふうに思います。

【土居主査】

 他にはいかがでしょうか。どうぞ。

【寺倉委員】

 さっきの加藤先生のお話の中にあった、例えば5つの戦略的課題とかいう問題があって、そういう問題を、例えば企業間の壁を破って、応用協議会で検討しているという動きってあるんでしょうか。それともやっぱり企業間で秘密で、そういうことは議論できないのか。その辺が結構、我々が何かやろうとしたときにも非常に重要な壁になっているので、その辺の様子を話してくださいませんか。

【笠部長】

 ある分野で、我々ワーキンググループという活動をやっておりまして、それは開発者の先生方と我々企業のメンバーが一堂に会して、けんけんごうごう議論するという場になっておりまして、そこの中で、議論だけではなくて、手を動かしたいとか、ほかの技術者がどういうふうにやるのか知りたい。そうすると、やはり共通の課題なりを捕まえて、それについてベンチマーク的に計算をやってみようという、そういう動きが起こってきておりまして、本当に非常に秘匿性の高いピーキーなところで共通課題が見出せるかというと、非常に難しいとは思うんですけれども、本当の意味の、そこで何が行われて、何が実現できるのかをまず見るというような課題を共通に設定して、それに企業人が取り組もうということはできるのではないかなと思います。

【寺倉委員】

 新聞かテレビで知ったんですけど、自動車のデザインのソフトが、非常に負荷が多いので、例えば日産とトヨタが共同して開発するようになったとか、維持するとかというふうな動きになってきていると思うんですが、そういうことがこの分野で起こってくれば、ほんとうに画期的なイノベーションって、私よくわからないんですけど、そういうことにつながるようなことができるんじゃないかと思うんですけど、そこまで持っていくには、こういうアクティビティは企業にとって必須であるということがもっと本気になって認識されないと、あそこまで行かないんじゃないかと思うんですけど。

【笠部長】

 例えば先ほどのエンジンの例ですと、コンバーション、燃焼の分野ですと、なかなかまだ非常にモデリングも難しいというところがございまして、そういう分野であれば、1社だけで開発する能力というのは、とてもどこも持っていないというのは自らわかっておりますので、そこは例えば日本の中でコンソーシアムを組む、アライアンスを組むということが当然できて、しかも、そういうのをほんとうに動かせるようなものが、そういう仕組みなりがあるといいなと非常に思っております。多分、今おっしゃられたトヨタと日産というようなお話に近いことができるんじゃないかなと思っております。
 すみません。長くなりました。

【土居主査】

 ありがとうございました。他には。よろしいでしょうか。
 1つお尋ねしたいんですが、実は、全体、運用までを含めて、この次世代スーパーコンピュータ、どのように持っていくかということのある意味においてフレームワークを決めるために作業部会があったんですが、その場でも産業界の方々にお加わりいただいたわけですが、その場及びその外で、おっしゃることといいますか、要望として出てまいりましたのは、要は、現在、各企業でお使いになっていらっしゃるソフトそのものがかかるようにしていただきたい。特段、いわゆるライブラリにしろ、スタンダードなモジュールにしろ、そういうものを使えるようにしていただきたいということが必ずのように出てくるんですが、それをやるにいたしますと、企業といたしますと、おそらく私の理解しているところでもリープフロッグといいますか、カエル跳びで、ぽーんと、速度的にも跳ばなければいけないというようなこともあろうかと思うんですが、そういうことを含めて、人的にも金銭的にも、リソースをかなりといいますか、ある程度提供していただいて、ご一緒させていただかなきゃいけないということが起ころうかと思うんですが、そういうことに関しましてはどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

【笠部長】

 先ほどから人材育成という視点が大事でございまして、我々としても、こういうところにいわば参加していきたい。その機関に参加していきたい。実は参加するということ自体が企業としては、何といいますか、かなりのお金をかけているというふうに認識しております。それはいわゆる手弁当という言い方でございますけれども……。その意思は当然ながらあります。しかも、みずからのプログラムであれば、プログラムの周辺の人材なり、マシンも含めて提供して、コラボラティブに仕事をするということは当然考えるだろうと思いますので、実現可能だというふうに思っております。

【土居主査】

 ありがとうございました。どうぞ。

【中村委員】

 また人材育成の話なんですけれども、要望としては必ずしもソフトウエアをどう使うかという、そういうレベルではなくて、もっとソフトを利用しながら、さらに解析をしたり、モデリングをしたりという、非常に深い利用についての人材育成だというふうに私は理解したんですけれども、先ほどの加藤先生のものでも、利用者教育、利用者としての教育というのを見ていますと、これはまさに大学の大学院の修士じゃなくて、博士課程ぐらいの、かなりベーシックな知識から経験まですべてをきちんと教育しないとなかなか生まれてこないような、そういうふうにも思うんですね。なかなかこれは大変な人材養成プログラムだというふうに思うんですけれども、例えばどんなような育成プログラムというのをイメージとしてごらんになって、考えておられるんでしょうか。例えばどこかの近くに大学院があったりとか、あるいはここが何か学位をとれるような、そういうところまで希望されているんでしょうか。

【笠部長】

 産業界の中でもいろいろなレベルの議論をしておりまして、今おっしゃられたような、例えば構造力学と計算力学のダブルスタンダードで学位をとれるとか、そういう場が欲しいというような議論をされる方もいらっしゃいますし、もう一つは、それだけ確かに深い知識なりを身につけた人材が欲しいというふうなことを考えますと、それをほんとうに1社ずつ、複数名持てるかといいますと、随分時間もかかりますし……。当面は、こういう戦略機関なりが一種の人材プール機関になっていて、そこに出入りできる人間がいて、大もとの人材の大きなプール、マスの部分はそこの戦略機関が持っていただく。先ほどの企業が持っているようなソフトウエアの改修というのも、戦略機関なり、その手助けを受けた、例えば一般利用なり何なりでやるというような、そういう枠の中で人がプールできれば、まずは企業としては御の字なのかな。それが、もっとマスが増えていけば、個々の企業がきちんと持つとか、企業の中でもさらに教育までやるということもできるかなと思うんですけれども……。そういうイメージかなと思っています。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 全体的な、一般的なあれになってまいりましたので、笠さんはそちらにお座りになったままでも結構でございますから。金田さんにも加わっていただいて、加藤先生、赤井先生、もちろん加わっていただいて、ご議論いただければと思うんですが、いかがでしょうか。

【小柳委員】

 じゃ、ひとつ。

【土居主査】

 どうぞ。

【小柳委員】

 今の話にも続くんですが、加藤さんのお話の中に、これまでは欧米のツールが中心であったということで、実際我々もいろいろな席で企業の方に聞くと、やっぱり欧米のツールを買ってきて、それをいかに使いこなすかというのが現下の問題であると。今我々が議論している次世代の理想の状況から考えると、大変距離があるような気がするんですが、そこをどうやって変えていくかというのは大変難しい問題だと思うんですが、その点についてどなたか何かお考えがありましたら。

【加藤先生】

 今までが欧米製だったということであり、これからも欧米製とは言ってないんですね。これからは計算機科学分野においていろいろな意味でパラダイムシフトがあるわけですね。そのパラダイムシフトをいかに速くやって実用化するかというところで勝っていくことが重要です。我々は勝つつもりで、もちろんプロジェクトは提案させていただいているし、推進しているということです。

【小柳委員】

 いや、それを期待しますが、ただ、パラダイムシフトは日本だけで起こるんじゃなくて、欧米のほうも多分すると思う──いろいろ考えていると思うんですが、その中での競争というのはなかなか大変なものになるかと思いますが。

【加藤先生】

 そうですね。確かに大変です。例えば、欧米だって計算機を開発してないわけじゃなくて、ペタ級の計算機は既に世の中に出ていますし、その上も出てくると聞いています。ソフトウエアだってやっていると思います。ただ、欧米の情報をソフトウエアに関して完全につかみ切っているわけではないんですが、少なくとも例えば今みたいな協議会と1対1に、ニーズとシーズのマッチングを図りながら、本当に産業界で使えるような、しかも超並列のソフトを開発して、人材も育成して、成功事例をつくるような動きまでは見えてないので、そういうところで勝っていくという戦略でございます。

【土居主査】

 さらには、今開発中のがハイブリッドなんですが、それに関してはどういうような……。

【加藤先生】

 ハイブリッドというのは……。

【土居主査】

 要するに、ベクターとスカラーで、それぞれのマスパラレルがくっついたり。

【加藤先生】

 我々はすべて使いこなすという前提でやっています。

【土居主査】

 これは楽しみ。

【宇川委員】

 よろしいですか。

【土居主査】

 どうぞ。

【宇川委員】

 今の点にも関係する話で、赤井先生にお伺いしたいんですけれども、加藤先生のようにものづくりという観点からすると、いわば外国が競争相手で、我が国の中で、じゃ、一体どうやっていくかという戦略で、ある意味いいんじゃないかと思うんですね。でも、赤井先生のお話というのは、もう少し理学的な香りがあったというふうに私は思っていまして、そうしますと、国際的な状況がどうなるのか。例えばアメリカを見ますと、既に1ペタ級の計算機がありますし、SCなんかいきますと、数百テラフロップスのマシンを使って数万原子の第一原理計算をやっているなんていう報告も出ているわけですね。そういった状況と対比して世界的な状況、その中での日本。そのあたりのことを少しお話しいただけるといいんじゃないかと思いますが。

【赤井先生】

 先ほど欧米製のソフトであるとかというのが非常に強いというふうなことがございましたけれども、例えば我々、計算機マテリアルデザインと申した場合、煎じ詰めれば物性理論でございますけれども、その世界では、我々、オリジナルのプログラム、日本で開発されたものを使って、実際に計算しております。もちろん、欧米で開発されたものは非常に使いやすいものがありまして、そういったものを企業で使っている例というのはたくさんあるのでございますけれども、じゃ、その差が何かというと、インターフェースが非常によくできている。それから、アフターサービスが非常によろしい。もちろん値段も高いわけでございますけれども、そういったソフトができ上がっていて、企業の方でそういったものを使っている、導入されているところはたくさんあることは現実でございますけれども、じゃ、何が計算できるか、何がそれでわかるかという内容は、別に欧米製が優れているわけでも何でもございません。我々が計算機マテリアルデザインというときに頭に置いておりますのは、もっぱら自前のソフトウエアということでございますし、それを皆様に配布するというふうなことをやってきております。
 けれども、そこのところで、じゃ、どうして外国製──ヨーロッパが多いのでございますけれども、ヨーロッパ製の非常によくできたプログラムを皆さんが導入してこられるかというと、そこのところで、ある程度のインターフェースに関するお金のかけ方が違いますし、人もそこに投入しているという考え方の違いがあるのだと思います。
 じゃ、今度、プログラムを使うという意味での、どういう格好でユーザを教育していくかというふうな問題があると思いますけれども、そこのところは工学系の場合と理学系の場合で少し違うのかもしれません。私ども、5年間にわたりまして、ナノマテリアル・ナノデバイス・デザイン学という、夜間社会人向けの講義を5年間にわたって10単位の大学院の講義がございますけれども、やってまいりましたけれども、結局、そこのところでやっておりますのは、ユーザとしての教育というわけではなしに、そういう計算機マテリアルデザインをすることによってどんな展開が開けるか、どういう展望が開けるかということの教育が主でございます。そういった中で、さまざまな企業の人たちを教育いたしまして、それから、使い方としては5日間の合宿形式での使い方のチュートリアルもやりますけれども、そういった中で感じるのは、単に人材育成をしたからといって、決して使えるようにはならないということでございますね。結局、1つ我々ができるのは、そういったプログラム、計算機マテリアルデザイン関係のプログラムを使ってどういったことができるか。一体何を考えなければいけないかということを企業の方が、研究者、開発者が知っていただく。もし何か問題があったときに、我々にそれが協力できるという体制を作っていくことが、1つの教育なのではないかという見方をしております。

【土居主査】

 ありがとうございました。他はいかがでしょうか。どうぞ。

【平尾委員】

 よろしいですか。プログラム開発というか、ソフトウエアの開発というようなことで話題になっていますので、コメントしたいんですが、特に赤井先生なんかがやっておられる、ああいうデザインというんでしょうか、第一原理的なところを解いて、そして、新しい物性を見つけたり、あるいは物質をデザインするという方法は、基礎になっている方程式を改良しないといけないというところがあるわけですね。方法論を改良しながら、同時にソフトウエアも開発するということですので、どうしても既にある既存のプログラムを使っているわけですと、その範囲でしかできないんですね。自分たちで新しく理論を開発して、あるいは独自の開発をしてやろうとすると、どうしても自前で持たないといけない。これに対して、国もある程度きちっとした位置づけをして、そうしたことに支援するということは非常に重要だろうと思いますね。そうしないと、本当の意味のデザインというのはできないんだろうと思いますね。

【土居主査】

 ありがとうございました。確かにそうだと思いますね。
 赤井先生のは、何年走りましたかね。JSTで。

【赤井先生】

 4年間やりました。

【土居主査】

 4年間でしたかね。
 ほか、いかがでしょうか。まだもう少し。

【小柳委員】

 アクトJSTでしたっけ。

【赤井先生】

 はい。

【土居主査】

 そうですよね。
 まだもう少し時間がございますが、いかがでしょう。

【矢川委員】

 よろしいですか。

【土居主査】

 どうぞ。

【矢川委員】

 時間があるということですので。日本と欧米のソフトウエア開発の大きな違いで今まで話題に出てこなかったのは、ベンチャービジネスが非常に強いんですね、欧米は。日本と比べて。そこがソフトウエアをもっぱら開発しているんです。非常に優秀な人がそこに入っているんですね。日本はIHIとか、大手企業が、先ほどのようなお話があったんですが、実際には現実には、こう言っては失礼ですけど、大手の会社では、昔は開発されていたんですが、今はほとんど開発されていないのが現状じゃないかと思うんですね。ですから、欧米のようなベンチャービジネスをもっと強力に育てていかないと、これはやはり大きな違いがそのまま残ってくると思いますね。

【土居主査】

 ありがとうございました。小柳先生。

【小柳委員】

 今の矢川委員のお話の関連ですけれども、別の言葉で言えば、ソフトウエアというのは、一度作ったらいいというものではなくて、よく生ものだと。ちゃんと手入れしないと腐っちゃうということを言いますけど、ベンチャービジネスってそれを腐らずにちゃんとどんどん改良していく、一つの方法だと思うんですが、従来、先ほどのアクトJSTのお話が出ましたけれども、それでも何かソフトウエアの成果を出せとかいうこと、我々も随分言ったんですが、出して、公開してそのままというようなことになりがちなわけで、先ほどの何人かのお話がありましたように、ソフトウエアというのは、改良し続けないと腐る。インターフェースとか、プレポストの処理とか、サービスとか、そういうのを総合的に作っていかなきゃいけないわけで、しかも、そのためにはかなりのお金が要る。そういうことを研究施策としても作っていかないと、先ほどから我々が希望しているような事態には到達しないんじゃないかと思います。

【加藤先生】

 ちょっと一言よろしいですか。

【土居主査】

 どうぞ。

【加藤先生】

 矢川先生もご存じのように、我々もそれを強く認識していて、これまでもそういう活動を続けてきていますし、これからも続けていくつもりです。基本的なスタンス、あるいはやり方は、国が本質的なところをプッシュし、あとは、ビジネスベースでやってもらうということです。だから、本質的なところをプッシュするときに、いいものを、あるいは先進的なもの、世の中に残るものを作っておかないと幾ら後でベンチャーがやろうとしてもだめだということで、ベンチャーにも開発に入っていただいて今やっています。これまである会社と一緒にやって、これからもやっていくのですが、さらにその層を広げたいと思っています。
 もう一つつけ加えると、そこに優秀な人材が行かないとだめなんですね。そこに開発者教育をした、本当に優秀な、計算機アーキテクチャーもわかっている人がそこにいかないとだめで、そういうオーバーオールの循環をつくらないと、全体としての底上げはできなく、まさに先生のおっしゃるとおりだと思います。

【土居主査】

 そう思いますね。

【宇川委員】

 よろしいですか。

【土居主査】

 どうぞ。

【宇川委員】

 多分一言つけ加えるとすると、そこにいわば基礎研究をやっている方がもっと入ってこられるような場なり何なりができるといいんじゃないでしょうか。

【加藤先生】

 そうですね。はい。

【宇川委員】

 つまり、最先端の研究開発を反映したプログラムなり、アルゴリズムなりが実用化に向けて流れていくという、その起点になるという意味ですが。

【加藤先生】

 そうですね。おっしゃるように、方法論ですね。方法論をやっている方も、アーキテクチャーをやっている方も、そういう方がそこにいるという世界の実現を目指さないといけないと思っています。

【土居主査】

 どうぞ。

【平尾委員】

 私、ソフトウエアというのは1つではだめだと思っているんですね。同じ分野のもの、例えば加藤先生のやっているものづくりのところでも、例えば第一原理の計算でも、1つにまとめてしまおうという動きもあると思うんですが、例えば日本で非常にいいものが1つあれば、もういいじゃないかという、そういう議論もあるんですが、私は必ずしもそういう立場に立ってなくて、やっぱり競争というのは非常に重要で、こういうサイエンスとかテクノロジーの世界ではヘルシーなコンペティションというのは非常に重要だというふうに思っているんですね。たまたま私の分野ですと、世界中で、ガウシアンという、非常に強力なプログラムパッケージがあるんですが、もちろん使いやすくて、非常にいいプログラムであることは認めるんですが、ある種の制限があるわけですね。いろいろなことができないとか、自分がそれをさらにするにはどうしたらいいかということを考えると、やっぱり1つにまとめてしまおうというのはあまりよろしくなくて、いろいろな特徴のあるプログラムがあるというのが重要だろうと思いますね。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 せっかくですから、金田さん、お越しいただいて。

【金田主管研究員】

 1つだけ。先ほどからいろいろな議論があって、あまり申し上げることもそんなにはないんですけれども、1つだけつけ加えさせていただきたいのは、産業界で、シミュレーションの利用ということを考える場合に、特にナノ分野ですけれども、産業界全体もそうなんですけれども、コストのほかに時間という要素が非常に重要になってきまして、特にナノ分野で、原子レベルのシミュレーションをやろうとしたときに、時間がとにかくすごくかかって、とても実用には──基礎研究としてはいいんですけれども、実用にはちょっと耐えないかなというのがありまして、そういう状況もありますので、何種類かというより、何種類ものいろいろな多様なソフトウエアがそろっていて、計算機がある程度潤沢に使えるというような環境が必要なのかなと思います。
 ものづくりというのは、単一の要素で決まっているわけではありませんので、デザインした後、さらにそれをどうやって作るかということを考えると、プロセスのシミュレーションやなんかもしなければいけませんし、そういうプロセスのシミュレーションというのは非常に時間のかかるものですから、そこをうまく、ここが重要なんですけど、ある限られた時間の中でやっていくにはどうしたら、何をツールとしてそろえたらいいかというようなことも、少し整備していかないといけないかなというふうに思います。

【土居主査】

 ありがとうございました。
 時間が来たようでございますので、まだまだいろいろと議論させていただきたいと思うのですが、本日はお忙しい中をご出席いただきまして、ありがとうございました。また、今後とも詰めていかなければいけないというような段階が来るわけですので、その折にはいろいろとお知恵を拝借する、あるいはご協力いただくというようなことも起こると思いますので、ぜひよろしくお願い申し上げます。
 次回は、ライフ分野についてのヒアリングを予定しておりますので、委員の先生方、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の議題は以上でございますが、ほかには何か、全体にわたりまして、ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 事務局から何か連絡事項等ございますでしょうか。

【事務局】

 それでは、次回の第4回戦略委員会ですが、1月28日水曜日、午後5時から7時まで、17時から19時までの開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 それと、本日机上に配付しております次世代スーパーコンピュータ戦略委員会配付資料というピンクのファイルでございますけれども、次回以降も本戦略委員会にて使用させていただく資料ですので、そのままお残しいただきたいと思います。ただし、ご自宅等で参照するためにお持ち帰りいただく場合は、事務局にご連絡してお持ち帰りいただきたいと思います。
 あと、現在、第2回、前回の戦略委員会の議事録案をお送りさせていただいているんですけれども、その締め切りを1月26日の月曜日ということにさせていただきますので、提出のほう、よろしくお願いいたします。提出していただいた後にホームページに掲載させていただきたいと思っております。
 それと、今回の第3回戦略委員会の議事録案につきましても後日メールで照会させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それと、本日、既に2階の出入り口が閉まっておりますので、ご退室の際は1階の通用口からお願いいたします。
 以上でございます。

【土居主査】

 それでは、これで本日の委員会を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

— 了 —

お問合せ先

研究振興局情報課スーパーコンピュータ整備推進室

(研究振興局情報課スーパーコンピュータ整備推進室)