資料2 J-PARCの利用方策の在り方に関する懇談会報告書(案) 1.はじめに

  大強度陽子加速器(J-PARC)計画は、世界最高レベルのビーム強度を有する複合陽子加速器施設を建設し、多様な2次粒子(中性子、中間子、ニュートリノ、ミュオン等)を用いて最先端の研究を推進する計画である。
  具体的には、中間子やニュートリノを用いた自然界の基本原理を探求する原子核・素粒子物理学や世界最高強度の中性子やミュオンを用いた物質科学や生命科学の研究など、科学のフロンティアを開く基礎研究から新産業創出につながる応用研究に至る幅広い分野の研究が期待されている。

  本計画は、独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)と大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)による共同プロジェクトとして、平成13年度から、茨城県東海村において施設の建設が開始され、本年度後半のビーム供用開始に向けて、着実に施設の整備及び試験を進めてきている。
  平成20年7月現在、リニアック、3GeV(ギガ電子ボルト)シンクロトロン及び50GeV(ギガ電子ボルト)シンクロトロンの複合加速器施設や、中性子・ミュオンを利用して様々な実験を行う物質・生命科学実験施設の整備は終了し、ビーム試験を実施しており、本年12月には中性子等を利用した実験が開始される予定である。また、原子核・素粒子実験施設及びニュートリノ実験施設についても本年度中には整備が終了し、来年度の初めまでにはすべての実験施設で実験が開始される予定である。

  このように、J-PARC計画は、施設の整備という段階から、施設の利用という段階に移行してきており、建設費1,524億円(第一期)にふさわしい成果の創出、すなわち、成果の質・量の充実、またその成果をいかに社会・経済に還元していくか、ということが重要な課題となってきている。
  こうした中で、本施設で発生する大強度のパルス中性子ビームは、従来の国内施設の100倍以上の強度を有するとともに、水素等の軽元素の分析や物質の磁性解析に強みを持ち、金属等への透過力も強いなど、放射光(X線)とは異なる特長を有することから、産業界も含め幅広い分野の研究者・技術者から、多様な利用ができる測定・解析手段として期待が高まっている。
  また、日本中性子科学会では、ユーザーコミュニティの立場から、J-PARCのような大型研究施設の利用の在り方や中性子装置のグランドデザイン等について活発に議論を行うなど、J-PARCにおける中性子利用の開始に向けて活動を行っている。
  このような状況を踏まえ、本年4月に、文部科学省研究振興局では「J-PARCの利用方策の在り方に関する懇談会」を開催し、J-PARCの中性子利用施設の本格的な運転段階において、当該施設が産業界も含めて多くの研究者・技術者に最大限利用されるための方策について検討を行い、ここに結果をとりまとめた。

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