資料5-3 独立行政法人日本学生支援機構の平成26年度業務実績に関する評価意見

 資料5- 3

 

独立行政法人日本学生支援機構の平成26年度業務実績に関する評価意見
 

独立行政法人日本学生支援機構評価委員会
委員長 松永 是

 
 本委員会は、独立行政法人日本学生支援機構が各事業年度の業務実績等に関する自己評価を行うに当たり、厳格かつ客観的な評価の実施に資することを目的として、外部の視点から業務実績を検証し、その成果や課題等について理事長に意見を述べることを任務としている。
 平成26年度は日本学生支援機構の第3期中期目標期間(平成26年度~平成30年度)の初年度であり、本委員会は、各事業及び業務効率化等に関して新たに定められた目標のもと、中期目標・中期計画の達成に向けて当該年度の計画が着実に実施され、学生支援サービスの充実が図られているかという観点から業務実績の検証を行った。
 その結果、全体としてはおおむね計画に沿った業務の実施及び改善が行われていると認められたが、幾つかの項目において計画どおりの実績を上げていないものがあり、これらについては、今後、中期目標・中期計画を確実に達成するよう業務の改善等の検討が望まれる。
 今後の評価及び業務運営に活用され、機構が行う学生支援事業のさらなる発展に寄与することを期待し、以下、各事業等の業務実績について意見を述べる。


1.奨学金貸与事業に関する意見

(1)奨学金の貸与・適格認定
 ○最新のデータに基づいて、奨学生の生活実態や家計実態を把握し、それを踏まえて奨学金貸与に係る家計基準の見直しを行ったことは、真に支援を必要としている学生に奨学金を貸与するという観点から評価できる。また、貸与額が高額となることが延滞発生に与える影響等を勘案した施策について、文部科学省と連携して検討を進めたことは評価できる。
 ○適切な貸与月額の指導等について研修会で周知を図り、各学校における指導の結果をとりまとめ公表するなど、奨学生に対して、奨学金を受けて修学する者としての自覚を促し、奨学金の必要性等を自ら判断させるための取組を強化したことは評価できる。
 ○厳格な適格認定の実施のために、「警告」及び「激励」の基準値を改定し大学等に対して周知を図るとともに、適格認定実態調査を実施し、不適切な認定のあった学校に対しては改善計画書の提出や訪問調査を行うなど、不適切な認定の防止及び制度の適切な運営に努めたことは評価できる。

(2)返還金の回収
 ○新規返還開始者への啓発、延滞初期における督促や回収委託、委託終了後の速やかな法的処理により、当年度分の回収率及び総回収率が年度計画値を大きく上回ったことは評価できる。今後は、回収率のさらなる改善に向けて、効果的な施策について検討することが望まれる。
 ○当年度新たに3か月以上延滞債権となった債権の割合については、平成25年度実績に対し改善したものの、年度計画値には達しておらず、今後、中期計画達成のために具体的な改善策を立てて取り組むことが重要である。

(3)学校との連携
 ○奨学生の返還意識の涵養のため、学校との連携を強化し、大学等に対する説明会の実施要請、機構職員の派遣、適格認定・返還指導に係る新規研修会をはじめとする奨学金担当者のための各種研修会の実施等を通じて、採用時・貸与中・卒業時の重要な節目における奨学生等への指導の徹底を図ったことは評価できる。また、学校長・学長に延滞状況等を把握させるために通知を送付し、内容を確認したかを理事長宛に回答するよう依頼したことは、延滞防止のための取組として評価できる。なお、「奨学業務連絡協議会」は学校との連携を図る上で重要な場であることから、出席率の向上が望まれる。


2.留学生支援事業に関する意見

(1)情報提供等の充実
 ○「日本留学ポータルサイト」の多言語化、スマートフォン対応を進めるほか、SNSによる情報発信を新たに行うなど、情報発信ツールの多様化を図り、日本留学情報の普及と日本留学への興味喚起に努めたことは評価できる。なお、SNSについては幅広く利用されるよう、周知や内容の充実を図ることが望まれる。
 ○海外留学に関する情報をとりまとめて、新たに「海外留学支援サイト」を構築するとともに、「海外留学奨学金検索システム」を運用し、海外留学を希望する利用者の利便性を図ったことは評価できる。

(2)日本留学試験の実施
 ○「日本留学試験」について、利用促進の取組の結果、渡日前入学許可実施校数が増加したことは評価できる。また、年間応募者数が前年度より増加するとともに、年度計画値を上回ったことは評価できる。今後、応募者数の一層の増加に向けた取組を期待する。

(3)国際交流会館等の運営
 ○札幌、金沢、福岡及び大分国際交流会館については、引き続き売却交渉を進めるとの処理方針を踏まえ、売却に向けた自治体等との協議を進めつつ、入居率を確保し入居者からも高い満足度を得ているなど、適切な運営に努めていることは評価できる。
 ○東京国際交流館及び兵庫国際交流会館については、機構が引き続き保有し、収支改善を図りつつ国際交流の拠点として活用するという処理方針のもと、今後の収支改善に向けて館費の改定や利用方式の見直しを行ったことは評価できる。
 ○東京国際交流館の入居率が前年度より増加し、その結果として収支の状況が改善したことは評価できる。今後は、平成26年度に決定した館費の改定を着実に実行するとともに、入居率のさらなる増加等により、収支状況についてもより健全化を図ることが期待される。
 ○兵庫国際交流会館については、入居率が低下したことにより収支が悪化し、年度計画値を達成していない。今後は入居率の増加や策定した館費改定の着実な実行等により、収支の改善を図ることが重要である。

(4)「官民協働海外留学支援制度」の創設・実施
 ○寄附金を募り、民間の力を活用して新たな「官民協働海外留学支援制度」を創設したことは、意欲と能力のある日本人留学生の海外留学を促進するとともに、学生と企業・社会とのつながりを形成する取組として評価できる。また、産業界の求める人材の選抜を目的として民間選考委員による派遣留学生の選考を行ったこと、地域の活性化に資する人材を育成する地域人材コースを設置したことなど、多様な施策が講じられている点について評価できる。
  ○留学効果を高めるために、支援企業と連携して留学前後の研修を実施するとともに、留学中の支援としてメンタリング制度を実施したことは評価できる。

 

3.学生生活支援事業に関する意見
(1)学生生活調査
  ○学生生活調査において、国立教育政策研究所との共同で新たに「大学生等の学習状況に関する調査」を追加したことは、精度の高い分析によって大学生等の学習状況と経済状況の関連を知り、より効果的な学生支援策の検討に資することが期待されるものであり評価できる。

(2)キャリア・就職支援
  ○産学連携による人材育成等キャリア教育・就職支援の充実に資するために、大学等や企業による情報交換等を目的とする「全国キャリア・就職ガイダンス」を開催したこと、大学等における入学から就職まで一貫したキャリア教育をより充実させるため、インターンシップ等をテーマとして「キャリア・就職支援ワークショップ」を開催したことは評価できる。
  ○「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」によりインターンシップの推進に関する事業の充実が図られるとともに、学生に対して産業界からの情報提供等が進められており、評価できる。

4.その他業務運営に関する意見
  ○重要な施策については理事会等において審議・決定されており、また業務運営上の重要課題については進捗状況を把握するための各種施策が講じられており、適切なガバナンスが確保されていると評価できる。
  ○コンプライアンスに関する研修について、業務都合で欠席した者に対しても別途外部講座を受講させ、対象職員全員の研修受講を実現したことは評価できる。
  ○個人情報漏えいの再発防止策の検討のため、金融機関に個人情報保護に係るヒアリングを行い情報収集に努めたことは評価できる。今後は、情報漏えい事案を踏まえ、効果的な再発防止策の策定と実施に努めることが重要である。

以上

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高等教育局学生・留学生課