学事暦の多様化とギャップタームに関する検討会議(第3回) 議事録

1.日時

平成26年1月31日(金曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

金融庁 12階 共用第2特別会議室

3.議題

  1. 学事暦の多様化とギャップタームの推進方策について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員)浅原利正委員、小島孝夫委員、御手洗尚樹委員、鈴木典比古座長、砂田薫委員、清家篤委員、萩原なつ子委員、秦由美子委員、長谷川壽一委員、藤沢久美委員、船橋力委員、宮城治男委員、山内進委員
(講演者)砂田薫委員、国際教養大学1年男子、1年女子

文部科学省

(文部科学省)上野文部科学大臣政務官、大槻総括審議官、吉田高等教育局長、浅田高等教育企画課長、里見大学振興課長、渡辺学生・留学生課長、牛尾専門教育課長、川又青少年課長、田中高等教育政策室長、猪股大学改革推進室長、大川学生・留学生課課長補佐、西青少年課課長補佐、杉江専門教育課専門官、東條大学改革推進室専門官

オブザーバー

(オブザーバー)小林洋司オブザーバー

5.議事録

【鈴木座長】  それでは、所定の時刻になりましたので、第3回学事暦の多様化とギャップタームに関する検討会議を開催いたします。本日は、御多用の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 今回の会議の進行ですけれども、最初に、前回に引き続きまして、砂田委員から海外の大学におけるギャップイヤーの導入事例について御紹介いただきたいと思っております。次に、実際にギャップイヤーを経験した学生から生の声を聞いていただけるように、私が勤務しております国際教養大学から学生を2人連れてまいりましたので、学生の発表、それから質疑の時間も設定したいと考えております。最後に、これらを踏まえまして意見交換を予定しております。
 なお今回、下村博文文部科学大臣は国会の予算委員会に御出席のため、こちらは欠席となりましたけれども、上野文部科学大臣政務官に御出席いただいております。初めに、上野通子文部科学大臣政務官から御挨拶を頂戴いたします。よろしくお願いします。
【上野大臣政務官】  皆様、こんにちは。座ったままで失礼いたします。文部科学大臣政務官の上野通子でございます。
 これまで2回の会議において活発な議論を頂きまして、また本日もご多忙の中、御出席をありがとうございます。今回は、隣の鈴木先生の御地元の国際教養大学の学生さんが発表に来られているということで、私も大変楽しみにしております。
 さて、安倍総理も先日の施政方針演説において、グローバル化に向けた改革を断行するという大学に対しての強い熱い支援策を考えるという発言、また意欲と能力のある全ての学生に留学機会の提供、さらには2020年のオリンピック、パラリンピックの東京大会に向けて、日本人の海外留学の倍増を目指すと明言されています。
 文部科学省では来年度予算において、官民が協力して日本人学生の海外留学を支援する新たな制度を創設することとしております。
 これらに共通することは、若い人たちに将来への夢や目標をもっと持ってほしい、そしてまた、それを社会全体で応援する機運を盛り上げたいという思いです。
 私は、より多くの学生たちに、海外留学を含め国内外で多様な経験ができるような機会を提供してほしいと思っております。
 ただ、一気に全ての学生を対象に行うのは大変なことですので、まず留学、そしてインターンシップなど、学内だけに閉じた限られた教育活動ではなく、多様な体験活動を通じた教育を行おうとする大学を何らかの形で指定してまいりたいと考えております。
 私も3人の娘がおりますが、海外の方で15年以上前ですが、私も向こうの教員をしておりましたので、子供たちをグローバルに育てる気はなかったんですけれども、今となってみれば、グローバルに育てて、いい面もたくさんあるなというのを実感しておりますので、是非とも多くの日本人の子供たちに海外での苦労も体験させたいという思いもありますので、このギャップタームに関する検討会、是非とも活発な御意見を出していただいて、検討していただけたらと思います。今回も活発な御議論をよろしくお願いいたします。
 以上でございます。ありがとうございます。
【鈴木座長】  ありがとうございました。それでは、政務官からのお言葉を頂いて議題に入りたいと思います。
 まず、前回の議事録と主な意見をまとめた資料につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
【猪股大学改革推進室長】  大学改革推進室長の猪股でございます。まず、お手元の資料1をごらんください。資料の冒頭に記載しておりますとおり、この議事録(案)につきまして修正箇所などございましたら、お手数ですけれども、2月7日金曜日までに御連絡頂きますようお願いをいたします。
 続きまして、資料2をごらんください。第1回、第2回の検討会で論点として御指摘いただいた事項を中心として、これまでの頂いた御意見をまとめたペーパーを用意しております。3つの柱でくくっております。
 まず第1に、学事暦の多様化とギャップターム推進の意義。第2には、ギャップターム期間の時期や活動内容などの在り方ということで、時期ですとか、学生の身分保障、活動の内容、また資金面、また安全確保といった論点で事項立てをしております。また第3として、社会や企業の理解・協力や国などによる支援策という構成で、皆様の主な御意見を列挙しておりますので、本日の議論の参考にしていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【鈴木座長】  ありがとうございます。
 それでは、砂田委員から海外の大学におけるギャップイヤーの導入事例について御紹介いただきます。こちら、今回は残念ながら御欠席となってしまいましたけれども、大臣からのリクエストを受けての御発表だと承っております。砂田委員、よろしくお願いいたします。
【砂田委員】  それでは皆さん、こんにちは。また今回も情報共有をさせていただきますが、きょうのハイライトは学生おふたりの肉声、「リアルエクスペリエンス(実体験)」の報告が一番重要だと私は思っておりますので、お口汚しのところがあると思うのですが、どうかお付き合いください。
 前回、海外におけるギャップイヤーの状況を全般的にさらっとお話しさせて、情報共有させていただきました。今回は特に大学周りにフォーカスしたものを事例として用意いたしました。英国、米国、豪州、南アフリカ、これは意味がありまして、これで四大陸をカバーいたします。世界でギャップイヤーをいろいろ考えている、あるいは何らか人材育成に取り入れているという機運が非常にありますので、それを象徴した形になっております。
 私の言いたいことは、ここの表紙にありますように、「ギャップイヤーというのは日本のこれからのグローバル・リーダーシップに深く関与し、グローバル人材と社会的課題解決型人材の創出に資する」と、これが全てでございまして、これからのお話は、その論拠とデータを、事例をもってお示しすることだと考えております。
 次のページですが、これは前回のおさらいです。ギャップイヤーというのはいろいろ捉え方があるんですが、この4層構造を理解しないと、なかなか腑に落ちないのではないかということで、構成しております。
 上の第1階層は、大学であるとか公共機関がどんどんかんでいくようなプログラム的なものです。それから第2層は参加者が立案して、大学や公共団体に提出していく。第3層は、目的を持って世界に飛び立つ、あるいは被災地とか限界集落に飛び立つ若者です。それから最後は、もっとブレーク(お休み)ですね。休みをとって次にリフレッシュとして何かしていこうという第4層です。
 大学周りでは、この赤の破線の1層から3層の中で議論すべきではないかというお話です。きょうは特に単位取得のところですね。当然、大学が深く関与してきますと、単位認定ということになりますので、そういうことをお示ししたいということです。
 第1層のところは、アメリカでいえばTeach For AmericaとかPeace Corpsがそうですし、あるいはプリンストン大学も同じようなことをやっている。第2層は国際教養大学であるとか東大のFLYプログラムなどがあるということが前回のおさらいでございます。
 次のページはギャップイヤーの“質感”を示すデータです。大体、規模感というか、どのぐらい情報があるかという、まさに世界の情報を整理するのがグーグルですが、これはうそはつけない。ギャップイヤーと入れると、およそ3億5,000万の件数が上がっていく。マーケティングだとかuniversityを入れても遜色ないぐらいの数が上がってくる。
 それから、一番下の方にgap yearとcv。cvというのは、御存じのとおり履歴書なんですが、これを入れても750万件出てくる。そのすぐ上の「経団連 文科省」というのは非常に親和性が高いんですけれども、こういう2つのタームを入れると、やはり4分の1とか5分の1になるんですが、それに比べても物すごく多い件数が上がってくる。これは推し量ると、ギャップイヤーで身に付けるスキル、その能力の提示をどう盛り込んでいくかということ。それから採用者側ですね。それも意識しているので、こういう結果になっているんじゃないかと推測されます。
 次のページです。英国ですが、ギャップイヤーのサイトに「履歴書を引き立たせる10の方法」みたいなことがあります。これで注目いただきたいのは、6番目の「居心地良い場所」からの脱出です。これは前回も申し上げたと思うんですが、よくアメリカで「comfort zone(ぬるま湯的空間)」というキーワードが出てきます。日常や親元や教員から抜け出すことが人材育成にとって、非常に重要なんじゃないかなと。これは日本でも同じようなことが言えるんじゃないでしょうか。そして、comfort zoneから出て行った人、戻ってきた人は、人材の採用について評価されるということが推し量れます。
 次のページは、これまでのキャリアは日本は下の方だと思うんですね。こういうふうに一直線。これまでというのは一本道の連続したキャリアだったし、多かったと思うんですが、世の中の企業環境や情勢を見ると、不安定なキャリアであるとか、自主的な退職も非常に多い。そういうことを考えてみると、これを若いうちからギャップイヤーを「非連続なキャリア」の、一種の“予防注射”のように捉えていくことも重要なのではないかということでございます。
 次のページです。いよいよ英国の事例に入っていきますが、英国は習慣、慣習・個人ということでギャップイヤーは浸透してまいりました。それに対してアメリカは制度化・組織化、これが今叫ばれているということを、アメリカのギャップイヤーの協会の代表がおっしゃっています。
 これは半分当たっていて、半分当たっていないと私は思うのは、何せ、英国は、ギャップイヤーは1960年代から50年の歴史がある。慣習化している、あるいは文化として定着している。ですから、改めて大騒ぎする必要もないということですね。ある意味で成熟している。一方アメリカの方は、最近気付いたわけなので、どうしても概念の「成長期」にあるということで、拠点、フォーカスしていってやっていかないと、なかなか追い付かないという状況があるのではないかと分析をしております。
 英国の2です。これは国立大学がギャップイヤーのマッチングの相性診断のソフトを提供しているというおもしろい例がありましたので、紹介をしております。この運営しているのがキャリアセンターというのが非常におもしろいと思うんですね。キャリアセンターがギャップイヤーを1つの生き方、働き方の中で捉えているということが非常に注目される。
 次のページの英国の3ですが、バーミンガム大学が昨年、ギャップイヤー経験者歓迎のビデオを制作しております。これはYouTubeで簡単に見れる4分のビデオなんですが、日本でいうと、この方は入試担当の方なんでしょうね。その方が、非常にバーミンガム大学は経験者を優遇しますよということをおっしゃっている。あるいはギャップイヤーを経験した、海外ボランティアだったと思うんですが、女子学生が自分の体験を話して、今の研究にどう生かしているかということをお話されております。
 この中で述べられているのは、この大学のギャップイヤー経験者は12%いるということと、ギャップイヤーの支援団体ですね。これは前回もいろいろお話ししたと思うんですが、360もあるというふうにおっしゃっています。
 それから見ても、大学が関与するというよりも、大学の前に、もうそういう支援機関がギャップイヤーを取得する人に手厚いインフォメーションだとか、アドバイスを受けられ、実際の旅行商品・経験サービス、そういうものも購入をされているということだと思います。
 次に米国に移りたいと思います。米国の1でございます。これは実は資料自体はイギリスのものですが、赤の破線の部分で明らかになっているのは、今のところ、アメリカの大学で「大学入学延期制度」があるのは全体の5%止まりだろう(実際はもっと多い)。この入学延期があるから、ギャップイヤーは非常にとりやすいわけですね。この環境整備は1つ示唆的なのではということと、ハーバードやMITはウエブの中でも推奨しておりますので、今後大きく見込まれるということが考えられます。それで、今はアイビー・リーグは基本的に「大学入学延期制度」があると聞いております。
 英国の資料なので、この赤い丸の左のところを見ていただくと、ギャップイヤーをするときの資金面ですね。このことがちょっとおもしろいと思うんですが、資金面、全て自分で何とかなるというのは、やはり10%でしかない。ですから、アルバイトをするとか、親からの資金援助。最近はクラウドファンディングでお金を集めるという手法もありますが、そういうことと、ギャップイヤーはお金が掛かるという見方もあるので、22%の人が、そんな余裕ないよと言っているんだと解釈しております。
 次は米国2-1でございますが、昨年末にアメリカで本が発売されました。これを著したのは、フロリダ州立大学の研究室長の方です。日本風に言うと、理事かもしれません。その方が本を出されていて、副題として「大学入学延期は、どのように世界が必要とする人材に変えるのか」というタイトルになっております。ギャップイヤーがどう若い学生や市民を育ててきたかを経験的な分析から考察されている。大学や教育者が、効果的なギャップイヤー・プログラムの構築のための具体的な方策を提言となっております。
 この本自体は、私まだ手に入れておりませんが、1月16日付けのオンライン上の高等教育のテーマにしたジャーナル「インサイト・ハイヤー・エデュケーション」というのがありますが、著者のジョー・オーシャさんは、いろいろなことを語られております。今現在なんですが、文の中で大学入学の合格書が届く時期ですが、大学入学を1年延期をやったらどうかと推奨されています。ギャップイヤーをとって開発途上国でボランティアをしながら生活すると、あなたの視座は非常に広くなるよという趣旨を書かれております。
 米国の2-2なんですが、この本の中、これを見ると、ギャップイヤーの勃興。ギャップイヤーは伸びているという章の中で、「この慣習は日本にさえ広がり、大学の中には、ギャップイヤー取得を推奨しているところがある」と。これは2011年のジャパン・タイムズの記事から引用、参照されたことですが、当時のことを振り返ると、国家戦略室の日本再生戦略に日本ギャップイヤーの普及・促進というのがちょうと入った時期です。私どももプレゼンをいたしました。東大が同年の7月に「秋入学とギャップターム」という構想を打ち出されました。それから国際教養大学のギャップイヤー制も評価をされていますので、こういうことが多分、背景にあったのだと考えられます。
 米国の3でございます。これは「エグザミナー・ドットコム」からの文なんですが、米国のハーバードやプリンストン、タフツ、エロンは、新入生に強くギャップイヤーを支援・推奨している。学術的なバーンアウト防止と学習への好奇心を呼び起こすためだと。御存じのとおり、アメリカの中退率は、OECDによりますと半分ぐらいが辞めてしまうということもありますし、そういう背景があると思います。
 実際、組織立ったギャップイヤーをうまく経験した学生は、普通に入ってくる新入生に比べてGPAが1、2ポイント高い傾向にあるということも書いてございます。
 4-1、これは前回の資料の補足になりますが、プリンストン大学の入学前学生に提供するギャップイヤー制度です。これで前半の部分は、08年に大学の中にワーキンググループを作って、翌年には実施しているという、このスピード感ですね。これを情報共有したかったということと、その下に赤に書いてございますギャップイヤーの目的ですけれども、入学前の1年間、異文化の中で生活し、他者のために働くことで、プログラム参加者は国際感覚を身に付け、公共心を醸成できる。それはその後のプリンストンでの4年の中で、他の学生に伝達できる。また、高校時代の勉学一辺倒の重圧から解きほぐされることが次なる学修の進展につながり、他の学生より多様な経験をした“おとなになった”新1年生を生み出すメリットがある。この“おとなになった”というのは「マチュア」という意味なので、成熟したということでもよろしいかと存じます。
 4-2なんですが、プリンストンではインドとか中国とか行くわけなんですが、どんな活動をしているかというのが記述されていましたので、簡単に訳しております。大体その土地の国際関係のNPOと組んで人材育成をしているということが挙げられます。それから地元の言葉を理解すると。これは前回紹介した韓国・サムスンの社内ギャップイヤーと非常に似ていると思うんですが、そういうことが行われているということです。
 5-1。これは、「ギャップイヤー・フェア」というのは、この一、二月に全米に繰り広げられております。8年前、06年当時は6か所で10団体の参加を見て、数百人しか来場者は来なかったという記録がございます。内容は、ギャップイヤー経験者の講演だとか個別相談会、それを実施している。参加対象は、高校のキャリアの担当教員とか、職員とか、親とか、高校生ということです。今期は30か所で50団体が参加していまして、4,000人の来場を見込んでおります。
 その中に、一番下にありますように、MITの入学業務官と訳すんでしょうか、この方は、「誰もギャップイヤー取得したことを後悔していない。多くの学生はしなかったことをむしろ後悔している」ということを公にされています。5-2を見ても、今度はハーバードの方ですが、「多くの方が、ギャップイヤーを“人生を変える経験”あるいは“ターニング・ポイント”だと言う。そして、完全な価値は測り切れないし、その人の残りの人生に配当をもたらすだろう」と書かれています。
 次、6-1、タフツ大学です。これはキャリアセンターが、卒業後並びに夏休みですね。大学期間中のギャップイヤー・プログラムを紹介するイベントをやっております。これによると、これ、今週の月曜日に行われたところなんですけれども、卒業後に、例えばピース・コーだとか、ティーチ・フォー・アメリカとか、前回御紹介したシティ・イヤーですね。そういうものを行かれたらどうかという相談会が行われております。
 6-2、同じくタフツ大学の、今度は医学・保健学系の学生へのメッセージなんですが、ギャップイヤー機会として「マッチ・コー」。ティーチ・フォー・アメリカは2年間ですけれども、これは1年間のプログラムなんですが、そういう紹介だとか、NPOで働いてみたらという問い掛けがございます。
 7-1。これはハーバード大学生が、ギャップイヤーをこれからとろうと考えている人たち向けにピアサポートですね。そういう任意のグループを誕生させました。
 7-2を見ると、旅とか、就労とか、ボランティアとか、自主的な研究とか、英国のいわゆる定義と一致しているということと、その下にあるように、1つのことをやるより、例えば課外の留学とか、インターンシップとか、ボランティアとか、そういうコンビネーションがよりいいことですねと書いてございます。
 8ですが、ノースカロライナ州、エロン大学に「ギャップセメスター(学期)」、そういうプログラムが2012年から導入されました。これはどういうことかというと、通常の、秋から当然アメリカの大学は始まりますが、選抜された、要は入学願書を出すときに、私はこのギャップセメスターをとりたいというふうに手を挙げていただいて、それで合格の暁に行けるというパターンですね。特別に奨学金とかで補助しますので、秋に普通に入学する学生と学費は変わらないということになっております。
 これは東部にある大学ですが、ここの絵にあるように、ワイオミングで、こういうリーダーシップ教育を受けながら、あとインディアンのNPOに行ったり、そして最後は中南米に行くんですね。そういうふうにリーダーシップ教育とサービスラーニングと国際経験をミックスした1学期にしている。復学は冬で、「ツーセメスターと1ターム」なんですね。冬のウインタータームというのが1月にあって、それでリエントリー(復帰)していって、通常に、また春の授業に2年生になっていくというプログラムでございます。
 9-1。これからは単位認定ですが、フロリダ南大学は、2012年からNPOのギャップイヤー・プログラムを単位化している。9-2を見ても、同じようなことで、オレゴン大学が同じような単位認定をし始めています。
 今度は、豪州、オーストラリアに飛びます。キャンベラ大学の正課目で「ギャップイヤー経験と振り返り」という授業、3単位もらえるということになっております。
 これの単位変換へのフロー。これは1-2に書いてございますが、大学への進学許可通知を受け取る、申し込みフォームからギャップイヤーを選択する。これは大学入学延期になるわけですね。大学担当者と面談をする。半年~1年のギャップイヤー活動をしていく。報告をして、それが良ければ3単位認定していくと。これは国際教養大学の今ギャップイヤー生の方とかなり近いモデルだと考えております。
 最後に、南アフリカに飛びます。ここは、大学院が専修コースとして「ギャップイヤー・プログラム」というものを実施しております。
 ステレンボッシュ大学ですが、南アフリカには4つの有名な大学があって、そのうちの1つです。座学をして、その後は中小企業とかベンチャーの現場に行って、経営の基本原則とかデザインを学んでいく。アクションラーニングとかPBLですね。Project-Based Learningとかなり近いことをやっているということが言えると思います。
 次は、アフリカの若手指導者養成学校、African Leadership Academyです。これは軽井沢にインターナショナル・スクールを作る小林りんさんも、このAfrican Leadership Academyを一種の見本にしているというのを私どものインタビューで答えてくれていますが、非常に人材育成に実績あるところですね。これ自体が実は2年間で、その後、ハーバードとかスタンフォードに行くわけで、一種のギャップイヤーですが、入学できるのはアフリカの人たちだけですね。それとは別に、1年の「ギャップイヤー・プログラム」を世界の高校卒業生から集めて活動していくというプログラムもございます。
 私が最後に申し上げたいのは、一番最後のページなんですが、このAfrican Leadership Academyの中で、「ギャップイヤー・プログラム」によって身に付くとされるソフトスキルの資質です。
 上から「国際的な視野」だとか、下の方には「独立性と自信、言語能力」がありますが、これはまさにグローバル人材、あるいは社会的課題を解決する人材、あるいはリーダーシップを持っていく若者と非常に親和性の高い能力ではないかということを申し上げて、簡単ですが発表に代えさせていただきます。
【鈴木座長】  砂田委員、ありがとうございました。砂田委員からの御発表に対する御質問、皆さんおありと思いますが、全体の意見交換の中で御発言くださいますようお願いいたします。
 それでは、2件目は国際教養大学の学生2人によるギャップイヤー体験談であります。こちらは上野政務官からの御提案だと承っております。今回発表するのは2人とも1年生です。よろしくお願いいたします。
【発表者(1年男子)】  
 お手元の資料にも記載されていますように、高校留学先で見た教会の風景が私のギャップイヤー活動を始めるきっかけとなりました。そこは宗教の役割を超えた交流の場であり、地元住民はもちろん、留学生や移住してきた人々を結び付ける役目を果たしていました。そのようなコミュニティを私の地元である沖縄に作り出すことができれば、基地問題が大きく取り上げられてはいますが、民間レベルで、個人個人のレベルでのコミュニケーションが図れるのではないかと思い、ギャップイヤー活動を始めました。
 ギャップイヤー期間中は、沖縄にある留学会社でインターンシップを行いながら、基地内在住の外国人と県内学生を対象とした国際交流イベント作りを行いました。この企画の中心として、国際交流イベントの企画から運営までの一連の活動を行い、パンフレット作成はもちろん、県内の高校や大学を回りイベントの宣伝、会場探しから費用の交渉まで、一つ一つの活動を行っていきました。
 活動を続けることで、新しい視点から、米軍基地と沖縄住民の間のギャップが見えてきました。米軍の方々の多くは、派遣先である沖縄に好んで来たわけではありません。一方、沖縄では、米軍基地に対しての反対運動が続いています。そのため米軍の方々は、沖縄の人はアメリカ人に対し嫌悪感を抱いていると思っていることに気付きました。このことが私に双方のコミュニケーションと国際交流イベントの必要性を再実感させ、活動を続ける原動力となりました。結果として、約100名規模の国際交流イベントを2回開催することができ、新たなコミュニティが成長しつつあることを実感しました。
 ギャップイヤー活動を通して、米軍基地の問題と自分なりの方法で向き合うことができたことは何より、またリーダーシップ、そしてコミュニケーション能力を鍛えることができたと思っています。国籍や立場にかかわらず多くの方々に出会い、お話をさせていただいたことで、コミュニケーション能力の大切さ、そして、それと隣接している語学力を含めた一般教養を高めていく必要があると痛感させられました。大学生活では英語をツールとして多くのことを学んでいきたいと思っています。
 人と人とのつながりを持てるコミュニケーション能力は、私がこの活動を通して一番魅力を感じたものです。そして、そこからブロードキャスターという将来の目標も見えてきました。コミュニケーション能力が最も求められ、自分の経験や能力を基に物事を発信していく職業に魅力を感じています。この目標が見えたのも、ギャップイヤー活動を行った結果です。この貴重なギャップイヤー経験を基礎として、将来に向けて学び続けていきたいと思っています。
 以上です。ありがとうございました。(拍手)
【発表者(1年女子)】  
 私は、高校のときにアフリカの少年兵についてのレポートを書いたことがきっかけとなって、貧困問題に興味を持ちました。将来は貧困問題に関わる仕事がしたいと考えていましたが、自分がどの分野から貧困問題に関わっていけば良いのか、よく分かりませんでした。そのため、ギャップイヤーを使って、大学でどのような勉強をし、将来どのような分野から貧困問題に関わっていくことができるのかということを明確にしようと思いました。
 私は最初、海外の貧困問題に興味を持ちましたが、まずは自分の身の回りにある貧困を知ろうと思い、日本で活動することにしました。
 私は東京と北海道の2か所でギャップイヤーの活動を行いました。
 東京では、ホームレスの支援をしているNPO団体とカトリックの修道会のボランティアに参加しました。NPOでは職員の方が生活困窮者に対して行っているコンサルティングに同席させていただき、カトリックの修道会のボランティアでは、ホームレスの方に食料を作って、食料を配るという活動を行いました。
 北海道では、北海道にある、精神や身体に病気だったり障害を抱えている人のための農場で、農作業や音楽、美術のレッスンを、そこに住んでいる人とともに、一緒に生活しながら体験しました。
 ギャップイヤーを通して、私は大きく3つの発見があったと思います。
 1つ目は、貧困問題には様々な側面があるということです。事業の失敗で生活に困窮する人、身体に障害があるために健常者と同様には働けない人、ストレスから精神的な病気にかかって働けない人など、貧困の原因は様々だということが分かりました。
 2つ目と3つ目は、貧困には心理的な原因があると思ったことです。私の知識はまだ十分ではないので、間違っているところもあるか分かりませんけれども、2つ目の発見は、今の日本社会の根底には一種の生きづらさというものがあるのではないかということです。周囲の期待に応えなければならない、現在の社会で良いとされているレールから外れてはならないという心理的重圧がストレスを生み、社会からはみ出てしまう人を増やし、結果として経済的な貧困に結び付いているのではないかと感じました。
 3つ目は、グローバル化による経済優先の社会の中で、他人のことなど構っていられないという人間関係、さらには家族関係の希薄化が、生活に困窮する人を生んでいるのではないかと感じました。
 ギャップイヤーを通して貧困問題の原因を探るには、まだ私には知識が足りないということを痛感しました。このことが大学での学びのモチベーションになっていると思います。今後は、貧困を早期に発見する場として、学校が貧困問題解決の原動力になれる方法があるのではないかと考えているので、そのことを研究していきたいと考えています。
 ありがとうございました。(拍手)
【鈴木座長】  ありがとうございます。せっかくの機会ですので、委員の皆様から質問の時間を設けたいと思います。20分あるいは25分ぐらい時間がとれますので、御質問のある方は御自由に挙手をお願いいたします。はい、お願いします。
【山内委員】  大変すばらしい話、どうもありがとうございます。
 具体的な国際交流イベントを作ったということですが、どういうようにして、それをうまく立ち上げることができたのかについてのお話をもし伺えればということと、それからギャップイヤーでいろいろ具体的なこういう活動をされてきたというのは大変すばらしいと思うんですが、併せて、その間に、大学入ってからの、いわゆる勉強と言われるものがあるわけですが、そういう勉強的なものについては、どういう形で実際に行っていたのかということについて、お伺いできればと思います。
【発表者(1年男子)】  私の活動に関する件なんですが、まずはインターンシップ先を選ぶことから始まりました。そこで、そのインターンシップ先をスポンサーとして、そして窓口として、このイベントを行うために、そこを拠点として行っていきました。なので、私はそこで奨学金をとることができませんでした。なので、このインターンシップ先にお願いすることで、そこで費用を賄ってもらって、また参加者から集めたものを活動費用に与える、そういった形で、このイベント作りを行っていきました。
 この学力に対することなんですが、これからの勉強に対するモチベーションについてなのですが、私が高校留学をして得た英語力が実際、このコミュニケーションを作るためのイベント、コミュニケーションを目的としたイベント作りをするに当たって、どこまで自分の英語力が通じるのか、そして社会に出るためには、またどれだけ英語力を伸ばしていく必要があるのか、そういったことをはっきり分かったような気がします。
 以上です。
【山内委員】  どうもありがとうございます。
【鈴木座長】  どうぞ。清家先生。
【清家委員】  とても興味深いお話をありがとうございました。今の山内先生のお話とちょっと関連するんですけれども。おひとりはこの活動を通じて将来ブロードキャスターになりたい、それからもうひとりは貧困の問題などを研究していきたいとおっしゃっていたわけですが、その際に、ブロードキャスターになるとか、貧困を研究しようとするときに、具体的に、学校の中でいろいろな授業をとったりしようとすると、国際教養大の場合、必修と選択の組み合わせがどうなっているのかは分かりませんけれども、その今やりたいといわれたことを具体的に実現するためのプログラムというのは大学に全部あるのでしょうか。それとも、足りないものがあるとしたら、それは何か別の方法で獲得したいと考えているのでしょうか。その辺を、お二人から短くていいんですけれども、教えていただけますか。
【発表者(1年男子)】  私の場合なんですけれども、このブロードキャスターという目標が見えたのは、コミュニケーション能力が重要ということで、重要ということを、この活動を通して見えてきたからです。その目標に近付くために、学校ではプレゼンテーションを多く含んでいるカリキュラムがあるので、それを続けて行っていくことで、また自分のプレゼンする力、語学の能力が付いてくるのではないかと思っています。
【発表者(1年女子)】  国際教養大学はリベラルアーツの大学なので、いろいろな教科を幅広くとることができます。私は今は教職課程も履修しているので、そういった面で教育の勉強をしたりだとか、あとは、今後は経済の勉強だったり、社会システムの勉強であったりというのを大学では幅広くしていこうと思っているんですが、その後、専門的にいろいろ研究したいと考えているので、将来は、そのまま1回就職するかは分からないんですけれども、大学院に行って勉強することも視野に入れながら考えています。
【鈴木座長】  そのほか、いかがでしょうか。お願いします。
【船橋委員】  お二人それぞれにお伺いしたいんですけれども、今回ギャップイヤーという形をとって、こういう活動をしました。ただ、別に大学入って、留学だったり、夏休みとか、週末とか、いろいろな形でこういう活動できたかもしれない。そういう中で、どうして、あえてギャップイヤーという形をとったのか。あるいは、どこでギャップイヤーというものを知ったのか。もっと言うと、ギャップイヤーというセットの入試があるから国際教養大学を受けたとか、何かその辺の背景をもうちょっと教えてもらえたらなと思います。
【発表者(1年男子)】  ギャップイヤーというプログラムを国際教養が実施していたので、それは1つの理由となって、私が国際教養を志願する理由となりました。
 生まれてからずっと沖縄で生活して、基地があることを当たり前として生活してきました。その中で、メディアで大きく取り上げられていたのですが、それを不思議に思うほど、私たちからすると当たり前の現状でした。なので、その問題に対して地元住民として、ある程度の期間、その問題に向き合うことができるのも、このギャップイヤーのおかげだと思っています。なので、そのことに触れるある程度の期間がとれるギャップイヤーを私は本当にうれしく思います。
 以上です。
【発表者(1年女子)】  私は、まず自分の大学で学ぶ内容を入学する前にはっきりさせたいということが強くありました。今、基本的に大学を受けるとなると、大体の大学の場合は、例えば法学部であったり、社会学部であったりというのを事前に決めなければならないと思うんですけれども、私の場合は貧困問題に関心があったので、貧困問題というのは様々なことが絡んでくる話だと思います。では自分がどのような分野が一番、自分が将来関わっていく上で向いているのかということを考えるためには、まず自分ではっきりさせたいという思いが強くありました。その自分のやりたいことをはっきりさせたいという思いが、半年入学を遅らせるということを懸念するよりも強かったので、特にその点は、私は気になりませんでした。
 あとは、御指摘のように、週末でボランティアをするとかいうことは可能だったと思うんですけれども、私は、ちょっと個人的な事情なんですけれども、高校のときに寮に入っていて、この寮が、平日外出が禁止だったり、土日も午後5時半までは帰らなければならないという、ちょっと制約が強い寮だったので、やりたいと思っていたボランティア活動だったり、社会のことを知るということを長期的にする時間がなかったので、この機会、ギャップイヤーという機会を通して、自分でまとまった時間で、このような活動をしたいなと思いました。
 あとは、私は、ここにイギリスから毎年ギャップイヤーをしている学生の方が英語の助手として来ていたので、そういう点でギャップイヤーというものになじみがありました。
【船橋委員】  大学を志望する理由の大きな要素は占めたんですか。ギャップイヤーが国際教養大になかったら、それでも行っていた……。それだったら違う大学を受けたかということ。
【発表者(1年女子)】  私は基本的にリベラルアーツの大学で様々なことを学びたいというのが基本的な姿勢、あったので、ギャップイヤーでもし落ちていたとしても、国際教養大は受験したと思います。
【船橋委員】  ありがとうございます。
【鈴木座長】  どうぞ。
【藤沢委員】  ありがとうございます。この研究会というのはギャップイヤー、ギャップタームについて考える研究会で、その意義とか、それからそれがいかに有効であるかというのは、きょうも含めて随分いろいろな方から伺ってきて、是非それを推進したいという気持ちを持って私は参加しているのですが、推進するのであれば、やはり世界で一番良い形のギャップイヤーの制度であるべきだと思うし、もし課題や障壁があるならば、それを取り除いていくというのは、この委員会で非常に重要なことだと思うんですが。
 その観点から、砂田先生と2人の学生の方に伺いたいんですけれども、砂田先生が御紹介くださったギャップイヤーという本を今ちょっとダウンロードしてみました。リスクとかディフィカルティーというところで検索してみると結構出てきて、やはり女性の場合は海外に行ったら、宗教的な課題から性的なトラブルがあるかもしれないとか、それからボランティアとか、そういったインターンシップをやるときのボランティアの人たちのメンタルの問題が大きいとか、そんなものも今ばーっと、ちょっと検索しただけで出てきていて、恐らくいろいろな課題があると思うので、砂田先生が御研究をされている中で、やはり、まだ世界的にも、前向きに取り組んでいるんだけれども、こういう課題があるというようなところがもしあれば、ここでシェアをしていただきたいなと思います。
 そして、学生のお二人に伺いたいのは、皆さんがこのギャップイヤー、ギャップタームを御経験されて、後に続く後輩たちが、もっとたくさん、このギャップターム、ギャップイヤーを体験するためには、どんなことが変わっていったらいいのか。例えば御両親の御対応だったり、学校の制度だったり、社会の空気感だったり、お友達がどんなことをおっしゃっているか。やらない学生さんのお友達は、どうしてやらないのかとか、そんなところを、もしお考えがあったら、是非伺いたいな。
 そして今回、ギャップイヤー、ギャップタームを御体験されて、こういう後押しがあって本当に助かったというお話があれば、是非伺いたいと。
【発表者(1年男子)】  ギャップイヤー期間中に私が直面した問題ということなんですが、やはりインターンシップ先を選ぶのは、お金の面で、自分がバイトをするとギャップイヤーの時間が短くなってしまう、そういったことがあったので、奨学金制度があるとギャップイヤーの幅が広がるなと思いました。
 しかし、奨学金をとるということは、学籍を頂くということになると思うんですけれども、学籍を頂くと授業料、そして入学金が必要になると思います。そうすると、この奨学金はそこに充てられてしまうので、それでは幅が広がったことにはならないのかなと思いました。ギャップイヤー専用の奨学金、そのようなプログラムがあると助かるなと思います。
【発表者(1年女子)】  私は、ギャップイヤー活動を行う上で必要なこととしては、どのようなシステムでやるかということによると思うんですけれども、定期的なフィードバックが必要なのではないかなと思いました。
 国際教養大学の場合は、ギャップイヤー期間の中間に1回、中間報告というのがあって、そこで先生にレポートを提出してフィードバックを頂くという形をとっているんですけれども、やはり、そのフィードバックが、その半分終わった時点で、その後の活動を考えるに当たって重要な、とても参考になったので。ギャップイヤーというのは、悪く言ってしまえば、怠けようと思えば怠けることもできてしまうので、本当に目標を設定して、自分で解決、それの目標に向かっていくという姿勢を育てる上では、先生方であったり、どのようなことであってもいいと思うんですけれども、定期的なフィードバックが、生徒のより良いギャップイヤーを目指すためには必要なのではないかなと思いました。
 あとは、やはり社会的な認知度がもう少し高まると、活動する上で。私はそこまで障害はなかったんですけれども、ビザがとれなかったりとかいう人もいたみたいなので、そういう面でも、制度的な意味でも必要かなと思いました。
 あとは、18歳で大学に行って22歳で就職するみたいな、そういう規定の路線を通らなくても、いろいろな生き方があるということを示すためにも、ギャップイヤーが認知度が上がったらいいなと個人的に思っています。
 あとは、私は、家族がやはり賛成してくれないと、なかなかこのような活動は難しいと思うので、周囲の人のサポートというのも重要ではないかなと思いました。
【藤沢委員】  ありがとうございます。
【鈴木座長】  砂田先生、どうでしょうか。
【砂田委員】  それでは、私は課題のところについてお答えをさせていただきたいと思います。
 確かにおっしゃるとおり、「リスク管理」って非常に重要だと思います。リスクの管理って、概念として、どんなものが考えられるか。まずリスクをなくすというのが重要ですよね。それから少なくする。それから移転する。それから放置する。4つあると思います。そのようなリスク管理を含めた認証ですね。これをどう築いていくかというのが一番の課題だと思います。
 前回御紹介したように、アメリカのギャップイヤー協会は、その認証を、54ページにわたるもので体系化しております。
 例えば1つ御紹介したいのは、ピース・コーってありますよね。ピース・コーは、「平和部隊」、JICAの青年海外協力隊の原型である国際ボランティアですね。故・ケネディ大統領が作った組織ですが。ここは2年間、国際ボランティアをやりますが、何とバイクに乗ると即首なんです。それは一種のリスク管理です。バイクは危ないよと。オフロードのところ、いっぱいあるわけですし。そういうことを、やっぱり、ちゃんと管理をやっているんですね。1つの一例なんですが、そういうリスク管理を含めた認証ですね。それをどういうふうに築いていくかというのが重要だと存じます。
【鈴木座長】  よろしいですか。じゃあ、浅原先生お願いします。
【浅原委員】  お二人に聞きたいんですけれども。非常に貴重な経験をされて、得るところは大きかったと思うんですが、お二人とも多分、大学入る前に、いろいろな課題を自分で見付けておられますよね。そういう形で、このギャップイヤーを活用して、それぞれ、御報告にありましたように、自分で意義を見出したわけですね。同じ年代の人たちが、みんなそうではない。
 では、大学入るときに、人生に対する課題というものを持っていないと言ったらおかしいけど、希薄な人もいると思うんですね。そういう人たちも、このギャップイヤーを活用することによって、お二人が経験したような、これからの学習の動機付けといいますか、あるいは人生の方向性とかいうことが、きちんと自分の意見として確立できる、持つことができるようになると思われますか。1人ずつ、教えてください。
【鈴木座長】  どうですか。
【発表者(1年男子)】  私の周りの話なんですが、なぜ私たちがこのギャップイヤーをとったのか分からない、ギャップイヤー制度を使ってこの経験をしたのかが分からないという意見もありました。それは、それこそ美沙さんがおっしゃったように、認知度がないということと、ストレートで進んでいくということに対しての美学といいますか、それに対して、それが当たり前という考えが強いからこそ、この自分が持っている、自分が抱いた疑問に対して進んでいく、そのために必要な時間をとって活動を行っていくということを踏み出しにくいのかなと思います。
 以上です。
【発表者(1年女子)】  今お話にあったように、私も実際に、なぜギャップイヤーで入ってきたのか分からないというふうに言われたことがあったんですけれども。私は、そういうふうなことを考えると、意義が見出せない人が、わざわざ全員する必要がないのかなと思います。
 ただ、もしやりたいことがあったりだとか、目標があったり、自分がギャップイヤーをとるというテーマが見出せる人なのであれば、そういう選択肢が広がるというのはすばらしいことだなと思います。定期的なフィードバックであったり、そういういろいろなサポートが必要になってくるとは思うんですけれども、その中で、やはり本当に私もいろいろな価値観が変わるような体験もあったので、そういったことを最近、この10代の間に体験できるというのはすごくすばらしいことだと思いますし、大学での勉強、大学で学びたいという気持ちもすごく強くなるので、推進していただければ、それはとてもいいことだとは思うんですけれども、みんながみんな、やる気がないのにやる必要は、正直、余りないのかなとは思います。
 ただ、大学2年、3年でやりたいとなったときにできるという制度も、またあったらいいのかなと思いました。
【浅原委員】  ありがとうございました。お二人がすごいのは、ギャップイヤーの課題を分かっていながら、それをやったということですよね。すばらしいと思います。
【鈴木座長】  じゃあ、先生お願いします。その次、お願いいたしますので。
【秦委員】  お先にどうも済みません。彼女の活動が、私が述べたいと思ったこと全て体現し、そして発言されたので本当にうれしく思っているんですけれども、年齢的に縦割りの社会に日本社会なっていますよね。どうしても年齢で区切られちゃう。そんなところで苦しまれて、そして、まさにそれを風穴を開けるような活動をされたということで非常に高く評価されると思いますし。でも、日本の社会というのは、1年でもフリーターの時間が長ければ長いほど、生涯獲得賃金は減る、あるいは年金に関わっていく。
 ですから、そのバックボーンとして社会福祉がしっかりと日本の社会で確立されているというのは非常に重要だろうと思いますし、また船橋委員がちゃんと提案していただきましたように、やっぱり大学に入ったら学習の時間を確保しないといけませんよね。また自分の時間も必要だろうし、またその資金というものも必要ですよね。だから、その意味で、国際教養大学が支援されているというのは非常に大きかった。
 だから、逆に言えば、そんな資金があれば、もっと広がっていくんだろうなと思います。本当にうれしい発言で感動しています。ありがとうございました。
【鈴木座長】  じゃあ、お願いします。
【濱田委員代理(長谷川)】  非常にお二人のお話を聞いて心強く思いました。と同時に、お二人はギャップイヤーの成功例だと思うんですね。多くの学生さんが、やっぱり一歩踏み出せないというお話がいろいろありましたけれども、やらない学生がなぜやらないのかという御発言もさっきあったんですが、そのやらない学生の多くが理科系の学生だと思うんです。お二人とも、どちらかというと文系寄りだと思います。理科系で、エンジニアリングとかサイエンスの場合には積み上げ型なので、1年間のブランクは非常に大きくなってしまうと考える学生が多いと思うんですけれども、お二人の大学で、自然科学系の学生さんがギャップイヤーをうまく活用している事例とか、そういう自然科学の学生にとってのギャップイヤーの意味みたいなことを。お二人に聞くのが正しいかどうか分からないんですけれども、もしかしたら鈴木先生に聞いた方がいいのかもしれませんが、その辺をお聞かせいただけますでしょうか。
【鈴木座長】  何か御存知ですか?
【発表者(1年女子)】  私の同じ同期で入ってきた人の中に、耐震性の高い橋の研究をギャップイヤーを使ってしている人がいました。ですので、全体的に、どちらかといえば、いわゆる文系が多いというのは確かだと思うんですけれども、何か震災関係の研究をしてみたいだとか、それに関する、さっき言った橋だったり、そういうことを、そちらは理系だと思うんですけれども、そういう課題を自分で発見して、それに関する研究だったり、それに関するフィールドトリップみたいなことをしている学生もいました。
【鈴木座長】  今の御質問ですが、本学の場合には、確かに自然科学系を専攻といいますか、の科目を多くとる学生もいるんですけれども、基本的には、3年生、4年生になって、専攻に進む方向というのが、国際ビジネス、あるいは国際関係ですね。そういう2つの分野に収れんされてきますので、基本的には、先生、今おっしゃったようなエンジニアリングとか、あるいは物理とかと、そういうところに本格的に行く学生は存在しないというところがあります。大学院に行って、そういうのをやるという学生もおりますけれども。
【濱田委員代理(長谷川)】  私ども東大ですけれども、今年、FLYプログラムで11人、今FLYをとっていて、10人海外へ出ていますが、11人中8人までが、やはり文系で、理系3名だったわけですね。だけど、大学の入学者数からいうと理系の方が多いわけですから、理系の学生へのギャップタームの宣伝といいますか、効用といいますか、その辺をはっきり示せればいいかなと思っております。
【鈴木座長】  砂田委員、どうぞ。
【砂田委員】  私ども、前から申し上げているように、JGAPはギャップイヤーを経験した学生たちにエッセーを書いてもらっていますが、長谷川様の御質問について、好例は、東工大の数学科の現役の学生が西アフリカ、非常に危ないところへ行ってきた学生がいて、彼に書いてもらっていますが、今はネットがありますから、数理能力を保とうとすればできる環境にあるということと、「人生は今は80年」だと。80年のうちに自分が一体何者かを考える時間が1年とれるということは、今後の自分の研究についても物すごくプラスになるというような趣旨のことを書かれておりました。
 以上です。
【鈴木座長】  じゃあ、お願いします。これで最後ということにさせていただきますので。
【宮城委員】  ありがとうございます。できれば砂田委員も含めて、お三方に伺いたいんですけれども、ギャップイヤーであることの意義ということ。ギャップイヤーであることの意義が、例えば1つは今回だと入学前にやるということの意味であったり、あとは、さっきの船橋さんの質問の延長でいえば、週末のボランティアとかではなくて、あるいは学校の授業で見学に行くということではなくて、今回まとまった期間、ある種、自分たちで選んで挑戦しているようなことの、ギャップイヤーであるからこそということでお感じになっている意義の面があれば、お聞かせいただきたい。それは客観的に砂田委員からも頂ければと思うんですけれども。
【鈴木座長】  どうでしょう。
【発表者(1年男子)】  入学前にギャップイヤーをすることで、自分がこの大学で何を学びたいということがはっきり私は見えてきたので、在学中に休学という形なのか、ギャップイヤーという形なのか、そういう期間をとると、その前で自分が何を学びたいのか分からないまま、少しだらけたまま進んでしまうのがもったいないなと思いました。
 以上です。
【発表者(1年女子)】  私はギャップイヤーである意義ということは、やはり目標を自分で設定して、自分で計画を立てていくことにあるのではないかなと考えています。もちろん週末にちょっと行ったりだとか、学校の先生にどこかいいところに連れていっていただくということも可能なんですけれども、その中で自分が最も興味を持ったこと、自分が将来この仕事に就きたいと考えられるようなことを、まとまった時間をとって、その中で目標を設定して、それに向かっていくというのは、もちろん、すごく責任も伴うことですし、問題にもたくさん直面することですので、そういう意味で、ギャップイヤーというまとまった時間を自分で自由に使えるということが良いことではないかなと思いました。
【鈴木座長】  砂田委員、ございますか。
【砂田委員】  私からは、もう一度5ページの表を見ていただきたいのですが、高等教育的に言うと、「高大接続のトランジション(接続)課題」であると。タイミングが非常に自然ですよね。例えば、休学して2年生から世界一周とか行くよりも、大学入学前だとかなり自然な形で考えられる。トランジションでは、要するに次の準備をする期間ということで、うってつけではないかなと。
 それから、18歳前後ですから、一番多感な時期ですね。これはどう考えても、50歳から1年とるのと全く違うということがあります。
 比喩的に言うならば、竹の節目ですね。それに相当するんじゃないでしょうか。そういうしなりというのは、節目があるから竹が強いということではないのかなと考えるわけです。
 あと、「非日常化」の大事さですね。何度も、私はキーワードだと思うのは、「comfort zone(ぬるま湯的空間)」なんですね。やはり、そこから離れる、位置を変える、立ち位置を変える、視座を変えることがいかに大切かということをアピールしたいと思います。
【鈴木座長】  ありがとうございます。多少時間を超過いたしましたけれども、皆さんから御質問頂いて、また私どもの我が1年生である。まだ彼らは、ギャップイヤーで、大学に来て5か月しかたっていないんですよね。そういう学生でございましたけれども、よくできました。学長として。(笑)(拍手)
 ありがとうございます。それでは、控えの席に移動してください。
 お時間を私の方から制限してしまったような感じになりまして大変心苦しいところですけれども、これまでの御発表を踏まえて意見交換に移りたいと思います。本日は資料2のうちの2、ギャップターム期間の時期、活動内容の在り方、及び3、学事暦の多様化やギャップタームの推進のための支援策を中心に御議論いただければと思います。お一人の発言時間は、およそ4分を目安にしていただきたいと思います。なるべく多くの委員から御意見を伺いたいと思います。どなたからでもよろしゅうございますので、よろしくお願いいたします。
【浅原委員】  よろしいですか。
【鈴木座長】  どうぞ。
【浅原委員】  ギャップターム期間中の活動内容を大学がある程度のプログラムを想定して提供するかということが議論にもあったと思うんですけれども、私もさっき、いみじくも彼女がおっしゃったように、これは自分が計画してやったから良かったという言葉は非常に重いと思います。これが生かせるような仕組みにしないと、いつまでたっても主体的に学ぶという姿勢を本当に体験を通して見据えることはできないと思いますので、それは冒頭に強調しておきたいと思います。大変貴重な学生さんの発言で、心強く思いました。
【鈴木座長】  そのほか、いかがでしょうか。どうぞ御自由にお願いします。
【川村委員代理(御手洗)】  よろしいですか。
【鈴木座長】  どうぞ。
【川村委員代理(御手洗)】  日立製作所の御手洗でございます。今お二人の話聞いていまして、もともとすばらしい人なんでしょうけれども、更にギャップタームを経験して一回り大きくなって、本当すぐにでも採用したくなるようなすばらしい方たちだったなと思うわけでございます。(笑)
 先ほど浅原先生からもありましたけれども、やっぱりギャップタームは、まずやりたい人間がやると。全員という話ありましたけれども、そうじゃなくて、やはり、やりたい人間がやるということが大原則かな。しかも、やりたいことをやると。お仕着せではなくてですね。テーマも、やっぱり自分で決めるということが、全体の成果とか、個人に返ってくる、そういうものにすごく大事だと思いますので、自分でやりたい、テーマも自分で決めるということが大事かなと思います。
 それから、自分でいろいろなことを経験するんですよね。そうすると、その間に、やっぱり、いろいろなリスクはあると思うんですが、これを自分で乗り越えるということが、すごく大事かな。過保護はだめだと思うんですね。ですから、自己責任でやるということかなと思っています。
 それから、経済的な支援等々もですが、今回の学生の発表にもありましたように、自分で活動資金を稼ぎながらやるということが、本当は一番いいのかなと思っています。ただ、なかなか、それだと活動できない部分ができてくるかもしれないので、それに対しては、どういうふうに支援していくかということは、これは別にまた考えていく必要があるのかなと思っています。
 以上でございます。
【鈴木座長】  ありがとうございます。
【浅原委員】  ちょっとそれに関して。
【鈴木座長】  どうぞ。
【浅原委員】  今、大変重要な発言をされたと思うんですね。やっぱり学生が一番求めているのは経済支援なんですけれども、じゃあ経済支援をして何かさせるようなプログラム、環境を作った方がいいのかどうかということについては、ちょっと深く議論する必要があるんじゃないかと思うんですね。
 もちろん私たちとしては経済支援は学生にとって必要だと思っているんですけれども、今いみじくもおっしゃったように、自分で働いてやったということの意義も非常に大きいと思うんですね。どっちかというわけじゃないんですけれども。そこのところも、できれば皆さんが議論されたらいいと思いますけれども。
【鈴木座長】  はい、どうぞ。
【船橋委員】  なるべく多くの事例、特にいい事例だけじゃなく、を見せないと、学生の立場からすると、必ずしも発案力があるわけじゃないと思うんですね。その事例というのは、どんな活動であっても、私は良い悪いはないと思うんです。例えば3か月間、近所を徹底的に掃除するでもいいですし、家族のサポートという練習でもいいんです。今回のようなすばらしい事例ばかりだと、こういうのじゃないとギャップイヤーをとれないんじゃないかというと、またあれなので。
 職業の選択も同じだと思うんです。どんな仕事だって崇高だし、どんな仕事だって大変だし、いいと思います。この事例をいっぱい見せるというのは1つ、私は大事かなと思います。
 それからもう一つは、御手洗さんたちの意見に根本的には大賛同な点で、みずから意思がある人がやるべき、あるいはお金も自分で稼ぐ、僕はそう思います。ただ、今の学生を見て、そこにどれだけの人が付いて来れるんだろうか。我々がこれからの日本の社会、日本において必要な人材を考えたときに、私は無理にも全員体験するという方向に1回持っていった方がいいのではないかと考えます。
 どういうことかというと、例えば極論言いますけど、大学受験1つとっても、大学進学1つとっても、全員がみんな自分の意思で受けているのだろうかと、正直思います。大学行かないと就職に結び付かないとかという観点でいうと、私はそうは思わないですね。やっぱり何らかの社会的な通念かプレッシャーの中でみんな、多くの人が受験だったり進学している。これもそうなのではないかと思っていまして、一度は極論全員がギャップイヤーをとるということも一方で考えてみた上で、何もやらないという選択肢もあっていいけれども。ギャップ期間中、何もやらないという人もいてもいいけれども、それはそれを通じて反省するかもしれませんし、後悔するかもしれない。私は、それも1個の学びであって、今の私が触れている若い世代、学生を見る限り、自分の意思を尊重するとなると、相当な数がやらないと思うので、一度、今の世代の視点にも立って。
 根本的には賛成します。ただ、海外の学生と日本の学生、また違いますので、そこら辺はよく見ながら、我々はどういう国にしたくて、どういう人材を育てたい、そのためにどういう手法をとるのかというのはいま一度、現実的にリアリティーを見て考えなくちゃいけないかなと思っています。決して反対しているわけじゃないですけれども、すごい難しいギャップを感じます。
【鈴木座長】  清家先生、どうぞ。
【清家委員】  私も浅原さん、御手洗さんのお話、大賛成で、大学の立場から言うと、ギャップタームに期待しているのは、大学としてもいろいろあるわけですけれども、私どもは、やはり文科系にしろ、理科系にしろ、自分の頭で物が考えられる人を育てたいと思っているわけです。自分の頭で物を考えるというのは、やみくもに物を考えるということではなくて、システマティックに物を考えるということです。つまり問題を見付けて、仮説を作って、その仮説を何らかの方法で検証して結論を導く。
 私どもはギャップタームあるいはギャップイヤーに一番期待しているのは、そうしたプロセスによって自分で物事を考えることです。何かやろうとするときに、まずテーマを見付けるということ。それから、そのテーマを実現するためにはどうしたらいいのかということを仮説として考えて、そしてそれを検証するプロセスですね。
 そういう面では、経験というのは、どんな経験でも無駄な経験はないということだと思うのです。ただ、そのときに、やはり1つ心掛けなければならないのは、仮説の検証結果の意味です。仮説は、正しく検証されても、間違って検証されても意味があるということなんですね。つまり、どんな経験も意味がある。もちろん、仮説が間違っていたときに、それが非常に大きなリスクに結び付くようなことは避けなければいけない。あるいは、その場合に何らかのサポートが必要ということはあるとは思いますが。
 ですから、基本的には自分の頭で考えることが大切なので、成功も失敗も全部意味がありますから、本人に任せて、さきほど申し上げましたような問題発見から仮説の検証、結論までのプロセスを経験してもらうということは、特に大学に入ってきてからしっかり勉強してもらうためにいいことだと思います。そのときの問題として、やはり、さっきからお話出ていますけれども、仮説がうまく検証されなかったときに大きなリスクがありうる。小さなリスクはいっぱいあっていいと思うんですけれども。そういうリスクに備える制度をもし作るのであれば、やはり考えなければいけないし、あるいは、さっき砂田さんが言われたリスクについての幾つかの考え方はあるわけですけれども。それは大学がやるのか、あるいはNPOのようなものが、そういうフレームワークを作るのか、いろいろな考え方がありうると思いますけれども、そこのところだけは押さえた上で、やはり失敗も含めて、いろいろな経験をしてもらう中で、自分の頭で物を考えるプロセスとして、とても価値のある活動になるのではないでしょうか。
 そういう面では、やはり、大学に入る前にやってもらうことには意味があるのではないかと思います。
【鈴木座長】  はい。
【山内委員】  ギャップタームの話ですが、私、これ、いつでもいいんじゃないかという気がするんですね。入る前も含めて考えた方がいいのかなと、今お話を聞いていて思ったんですけれども。入ってからでも、いつでもそういうものがとれるようなシステムを作ることが大事かなと思うんですね。
 ある期間に一斉に全員というのは、物理的にもちょっとできないと思いますし、それから無理に行けといっても、やっぱり、まずい話もたくさん出てくると思いますので、そういう方向性に行く、そういうことをしたいと思ったときに行けるというスタイルを作る。
 恐らく個人差があるので、一生それには関係ない人もいれば、非常に敏感で、若い頃に早い段階でそういうのに気が付くというか、そうしたいと思う人もいれば、卒業間際になってから、やっぱりと思う人もいるし、勉強しているうちに行ってみたいと。もっと自分の勉強に直接関係するからとか、いろいろあると思うので、我々としては、そういうものの仕組みを、せっかくそういうふうに思ったときに行けるというスタイルを作った方がいいなと思います。
 ただ、お金の問題、確かに僕、大きいと思うんですが、でも、やっぱり、あれですよね。少しは援助してあげた方がいいんじゃないですかね。そういうシステムがあった方が、やっぱり行きやすいですよね。余りすごいお金をやって、ぜいたくな旅行するような感じじゃ困るかなとは思いますけれども、やはり、ちょこっと押してあげるような、そういう形のものは少なくともあった方がいいんじゃないかなという感じはします。
【鈴木座長】  そのほか。お願いします。
【宮城委員】  きょうは本当に2人の発表が余りにも立派で、とても心洗われる思いと同時に、何か未来への希望を感じられて、とてもきょうはありがたい気持ちでいるんですけれども、一方で、例えば大学に行っても何のために学ぶのかということが全然見出せないまま、そのまま大学を辞めてしまったりだとか、引きこもってしまったり、将来の希望を失ってしまうような人が山ほど彼らの背後にといいますか、いるということも、また事実だと思うんですね。
 私は、お二人の話、とても立派だと思ったんですけれども、何か特別な能力があって、才能があって、今回のギャップイヤーの機会を得られたかということでいうと、やっぱり、むしろ彼らを、こういう気付きを与えたり、自分で経験しようと思わせた環境というものがあったと思うんですね。それは恐らく高校時代とか、家庭教育だとか、大学に行く前の段階で、そういう何かしらのアシストがあったと思うんですけれども、私は、それを偶然で終わらせるわけにはいかないと思うわけですね。
 つまり、彼らがラッキーだったかもしれないですけれども、そのラッキーの確率をどう高めていくかということを我々は考えなければならない。だから、あくまでもギャップイヤー、ギャップタームは、主体性に基づいて、本人たちが意思決定して実施するというのは大原則だと思います。その大原則であることが実現されるための社会的な環境であったり、それまでの、そこに持っていくような体制ということは、我々は考えなければ、放っておいても生まれないと思うんですね。
 私は、そのラッキーが、彼らに生まれたかもしれない、今後生まれる確率をどうやって最大限高めるかということを早急に考える必要があるというのが、今回のこの場の意義なんじゃないかなということを思っています。
 そういう意味では、余りにも2人のお話が立派だったんですけれども、やっぱり、こういう現実の実物を目の当たりにして、我々もすごく心打たれるようなことを、全国の教育現場の方々と共有したい気がしますし、私は国が後押しをするような形ででも、このギャップターム、ギャップイヤーの動きはモデルを作っていくための後押しをして、要するに形を見せて、それを関係者の方であったり学生たち自身が実感していくプロセスが、今の段階では必要なんじゃないかなということも思います。
【鈴木座長】  ありがとうございます。そのほか、ございますでしょうか。どうぞ。
【萩原委員】  今の宮城さんの発言にも非常に賛成で、先ほどのお二人の御発表の中で、なぜ彼女が少年兵のことをレポートに書こうとしたのか。恐らく何らかのきっかけがあったんだと思うんですね。だから、多分そういう問題意識を持つ、そういった背景として、もしかしたら高校の教育、担任の先生かもしれませんし、例えばNPOに何らかの形で関わっただろうか。そういう問題意識、課題発見をするための環境作りをしていくことも非常に重要なのではないかと思いました。
 それと、やはり、もう一つはお金の件なんですけれども、前も発言させていただいたんですが、全面的に全部支援するのは問題だろうと。私もバイトしながら一生懸命お金ためて行った。だけど、プラスアルファ、応援基金的なものがあってもいいのではないかということを思います。
 それからもう一つは、時期とかも、やはり個々人の個性によっても違うのではないかということもあるので、一律にこうでなければならないという方向ではなく、やっぱり選択肢があった方がいいなと思います。
 それから、やはりNPOの存在。今回、私も宮城さんもNPO関係でもあるんですけれども、NPOがどういう形でここに関わっていけるのかというのは非常に大きな鍵を握っているのではないかと思っていますので、そのあたりは、また改めて議論していただきたいなと思います。
 以上です。
【鈴木座長】  ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。まだ時間ございますので。先生、お願いします。どうぞ。
【秦委員】  済みません。それでは、もう少し具体的な可能性のある学生層を3つほど例として挙げさせていただきたいんですけれども、これは砂田先生が、この南アのところで御説明いただきました27ページ目のパワーポイントの、キャリア選択に対しての方向性に時間と支援が必要な高卒者、大学を中退し、将来の展望が持てない者というところに深く関わってくると思うんですけれども、通常考えられますのは、このギャップイヤーの使うであろう若者は推薦入学者の人、AO入学者の人、そして高等専門学校の学生、そして短大生、こういう人たちが使いやすいだろうと思うんですね。ほかには4年制大学へ転入学する転入学生。そういう人たちもギャップイヤーをとることによって雇用の機会を広げられるというところ。そして、高卒と短大卒と大卒との間の雇用格差を縮めることができるんじゃないか。あるいは給料の上積みにちょっと関わって、可能になるんじゃないかという形で今提案していますけれども。
 この人たちが、例えばの例で、既に広大で経験があるんですけれども、アジア、アフリカなどの第三世界諸国へ行って働いて、そして、そこで使われている工作機器というのが日本の60年、70年代のものなんですね。振り返って日本を見ると、日本では技術の空洞化、その時代の方々が、もうお辞めになっておられますので、その工作機器の使い方を学んで帰ってきてもらって、そして、それを学ぶことによって、今後それらの発展途上国との経済協力につなげるということを、彼ら自身も国と国との架け橋になるということで、ちょっと夢があるようなものじゃないかなと思ったりもしています。
 それから2番目のものは、サムライ(士)資格といっているように、弁護士ですとか介護士、税理士といったものですね。これは広島大学なんです。M2の修士課程の学生なんですけれども、介護士を目指す若者がおりまして、中国の老人ホームでインターンをしまして、そして最終的に企業介護食で有名な新田ゼラチン社というところに就職した経験があります。だから、費用の分担に考えました、業界団体と大学と学生で3分の1ずつ費用を分担しながら学ぶということが考えられるんじゃないかと。
 最後ですけれども、今度はもう少しレベルが上がってきまして、高度専門職業人の修士課程以上の学生さんですね。国際経営修士ですとか、国際会計修士ですとか、国際行政修士、そういう人たちは海外でのインターンというのは非常に望んでいますので、そういうところでのギャップイヤーというのは具体化しやすい。
 先ほどのお話とは少し階層がずれてくるんですけれども、具体化していく上では考えられる階層なのかなと感じております。
【鈴木座長】  ありがとうございます。
 どなたか、お手を挙げていらっしゃった方がいる。浅原先生でしたか。どうぞ。
【浅原委員】  こういう場所ではいろいろな意見があった方がいいと思うので思い切って言いますけれども、さっきの2人は大学入る段階から、かなり動機付けはできた方だと思ったんです。御本人を前にして申し訳ないけれども。じゃあ、そうでない人をどうすべきかと思うんですけれども。反対に、じゃあ、このお二人がここまで、大学入るまでにたどった人生の中でのいろいろなイベントを、ビッグデータの時代ですから、集めて、解析して、何がいいかということを、もう少しアカデミックな分析があってもいいんじゃないかと、ちょっと、ふと思ったものですから。
 このお二人はすばらしいし、私たちが将来託すのに大変期待が持てる人材だと思うし、先生は幸せな学長だと思います。(笑)
【鈴木座長】  ありがとうございます。少々お待ちくださいませ。
 国際教養大学に入ってくるギャップイヤーの学生たちは毎年、定員が10人で十二、三人ということで、今年で6回目ぐらいになるかと思います。どういう学生が入ってきて、どういう思い、あるいは経験をしてきたかというのは記録として集積してございますので、そういう意味の、人生、まだ若いですけれども、それに至った道行きといいますか、それの分析等は、人権に関わるところでない限り、まとめて、こういう傾向の学生たちだということは出てくると思いますので、何か機会がありましたら、また御披露したいと思いますが。
【浅原委員】  さっき申し上げました、大学を目指すときに、ちゃんと動機付けがある生徒以外の、動機付けがない生徒──学生はまだなっていませんけれども、そういう人に対する、このギャップイヤー、ギャップタームの活用というのを、どのように皆さん、お考えでしょうかね。ちょっと大学に関わっている者として意見を聞きたいんですけれども。
【鈴木座長】  いかがでしょう。どうぞ、お願いします。
【濱田委員代理(長谷川)】  東大でも国際教養大と同じようにFLYプログラムを始めましたので、まだ1期生が現在1年目の活動をしているところです。それで、やはり先生おっしゃるとおり、グッド・プラクティスを見せていくことがとても大事で、そういう可能性があるんだということを高校生に見せれば増えていくと思います。
 東大の方でも、このFLY、あるいはこのギャップタームをどこまで広げるかということの議論しておりますけれども、やはりサポートも必要である。先ほど彼女がしたみたいに、途中でレポート出して見てくれる方がいると、やっぱり、それが励みになる。それなりに大学の方も、その面、助けなきゃいけなくてですね。先生方、ほかにたくさんある中で、例えば500人の人がギャップタームやろうとすると、先生たちの業務はパンクしてしまいます。
 それから、資金面でいうと、現在、東大の後押し料──料って、ちょっと表現は適切じゃないかもしれませんが、支援は最大50万で今やっています。これは結構僕は高いと思っていまして。ただ、最初でしたから、どれぐらい学生が手を挙げてくれるか分からないということで、それぐらいで考えたんですが、もしこれが増えてくれば、総額は同じで、だんだん減らしていくことになるのかなと。ただ、やはり、ある程度背中を押してあげるということは大事。
 ただ、その支援の額が大きいと、みんな、じゃあ海外に行こうというふうになります。もし、その支援の額が小さければ、国内でできることを探すかもしれませんし。大学がどれぐらいリソースを出すかによって、このギャップタームの運用の仕方も随分変わってくるような気がしております。
【鈴木座長】  どうぞ、清家先生。失礼しました。どうぞ。
【藤沢委員】  今のお話の延長だったら、どうぞ。
【清家委員】  そうですか。さっき少し申しましたけれども、私ども大学の視点から言うと、ギャップタームというのは、自分の頭で物を考える習慣を付けてもらうための非常に良い機会、方法だと思います。きょうお話しいただいた2人の方は、まさにそういうケースだったと私は思います。
 ただ同時に、高校卒業してすぐに、何か目的意識があるわけではないけれども、とにかく大学で勉強したいんだ、そういう人たちも、もちろんいるわけですね。そういう人たちは、とりあえず勉強しながら、いろいろな問題意識を持っていくということもあります。そして途中で、さっき山内さんも言われたように、1年ぐらい、またどこかで勉強したいと思う人もいる。
 実際、私どもの大学でも、これは特色GPなどを頂いて、入ってきた学生にすぐ勉強に取り組んでもらえるようなプログラムというのを、これまでずっと長年やってきていますので、そういう面で言いますと、やはり私は、全員がギャップターム、ギャップイヤーを持つということはないと思いますし。それから、その時期についても先ほど、きょうのお二人のように入学前というのも1つあると思いますけれども、入学後もあり得ると思いますので、その対象者であるとか、あるいはその時期については、私は基本的には多様であるのは、むしろよろしいんじゃないかなと思っています。
【鈴木座長】  そのほか、いかがでしょうか。じゃあ、どうぞ。
【藤沢委員】  いえ、学校の話だったら、どうぞ。私、別の観点なので。
【鈴木座長】  そうですか。じゃあ、どうぞ。
【小林オブザーバー】  私の立場ですと、大学の方へ生徒というか、学生として今度送り出す高校の側なんですけれども、高校側からすると、進路指導のときに、もう高校生の中でも、自分は将来こういう職業に就きたいんだとか、当然そういう子は結構、今おります。ですから、それだったら、こういう大学にこういう学部があるよとか、そういう指導をするわけですね。大学に限らず、専門学校の方で、こういう方向に進みたいんだということがあれば、当然それでいくんですが、何も今目的がなくて、とりあえずはギャップタームを利用して、自分は何なのか、自分探しの旅に1年出ますというと、学校の方としては、高校側としては少し不安になるのが現状かなと思っております。
 ただ、高校の方も、前回申しましたように、特に東京都では次世代リーダーの育成ということで、1年間ですね。これは主に目的は語学を身に付けさせるということで、ホームステイをさせるということで、これは資金も出して、生徒も行くわけですけれども。それで1年間掛けて、本校でも戻ってきた女子生徒がいるんですけれども、相当、やっぱり力を付けて帰ってきて、自分の国際機関で働くんだという意識を強くして戻ってきているということで、良かったなと思うんですが。
 ただ、そういう子たちの戻ってくるときに一番気にするのは何かというと、これは高校生として気にしているわけですが、自分の高校に戻るときの籍が当該の学年、今度5年生になる、つまり高校2年生になる。それが高校1年をもう1回経験しなきゃいけないんじゃないか、そこのところを一番気にしているわけです。それは当然こちらの方でも分かっていますので、海外で1年間勉強したことを30単位を上限として、それ全部認めるよということで、一括して認めて、そして当該の学年に入って進路選択していくと、そういう処置をとっています。
 ですから、やっぱり学生さんも似たようなところがおありになるんじゃないかなと思いまして。当然、ギャップタームを経験されて、それを非常に社会として受け入れて、受け皿作りというのが非常に大事なのかなと。先ほど企業の方も、こういう方なら採りたいということをおっしゃっていただいて、本当に心強いなと思ったんですけれども、是非そういう点も大事なのかなと感じました。
 高校の側からですと、まだまだ改善の余地があるかなということは感じられます。以上でございます。
【鈴木座長】  先ほど藤沢さんでいらっしゃいますか。どうぞ。
【藤沢委員】  ありがとうございます。取りまとめに当たって少し御提案をと思います。
 いろいろな観点からいろいろな議論があって、そしてこの委員会というのはいろいろな角度の立場の方がいらっしゃるので、それぞれにやれることがあるんだと思うんですね。ですから、例えば国ができること、そして学校ができること、やるべきこと、それが高校と大学、また違うと思うんですけれども。そして市民社会としてのNPOができること、そして財界ができること。そういったものを一度マトリックス的に整理してみるとどうかというような気がするんですね。実は協働できる部分も随分あるんじゃないかと、そんなふうに思います。
 それで、じゃあ、これを横軸に立てたときに、縦に置いたときに横に何を置くかというときに、また、どうやってもっと認知度を上げるか。先ほどのやる気のある人だけ行くというのは、私もそのとおりだとは思うんですけれども、例えば私なんかは田舎で育って、そんな制度があるなんて親も知らなければ先生も教えてくれない。留学なんて考えたこともなかった、そういう生き方をしてきたわけですけれども。そういう意味では、やはり高校ぐらいのときにギャップタームというものがあるんだと。こういう学校に行く、最初に問題意識を自分で設定するような学校もあるんだということを教えていただくだけでも全然子供たち、学生たちにとっては違うと思いますので、そういったものは国が指導するとか、学校がそういうものを教えるとか、伝えるとか、そういうものもあるでしょうし、何かそういった認知のやり方も、それぞれの立場からやれることがあるんじゃないかと、そんなふうに思います。
 また、私は清家先生おっしゃった多様性というのは物すごく大事だと思うんです。全ての大学がみんな同じプログラムを持つ必要、全くないと思うんですが、ただ国が、もし本当にこのギャップタームを有用であると皆さんで合意をした場合に、じゃあ、ギャップタームを導入する学校に関しては、スーパーグローバルユニバーシティーじゃないですけれども、何らかの国としての厚めの手当を出しますよとかというのはやってもいいんだろうと。そんなふうに思いますので、例えばこういう気付き、認知の部分であるとか、それから物理的な安心をどう担保するかということで経済的な支援を、例えば先ほど日立のおっしゃいましたけれども、こんな学生たち、すぐ採用したい。であるならば、そういうことを支援するために財政的な支援もあるだろうし、各地にある企業でのインターンシップを積極的に受け入れるという物理的支援もあると思うし、そういうものとかも一度整理してみるといいと思いますし。
 そして3番目には精神的な安心という意味で、砂田先生がおっしゃってくださった認証の機関は大変重要だと思うんですね。これは国が作るのか、市民社会が作るのか、こういったところも、ちょっとマトリックスで整理をしてみて、ないところをどう埋めていくかというのを、またここで議論できたらいいかなと、そんなふうに思います。
【鈴木座長】  ありがとうございます。
 このマトリックスで一応やってみると。ここまで議論が進んでいるということを中間的にまとめるのは非常に重要なことだと思いますので。まして、ここのギャップイヤーあるいはギャップタームというのは非常に多方面からアプローチのできる、あるいはしなければいけないテーマですので、非常にあらあらではありますけれども、マトリックス的に全体を眺めるというまとめの作業がだんだん必要になってくるかなと私も思っております。
 どうぞ。
【宮城委員】  その役割分担ということの延長で、この場は大きなテーマが高等教育というところにあってできている場ではあると思うんですけれども。私、先ほども申し上げましたが、先ほどの発表の2人が実際に高等教育の前の段階での経験がすごく今回の成功に影響していることは間違いないと思うんですが、一方で、今回、国際教養大としてギャップイヤー入試ということを提供し、彼らにこの経験を実施させてあげる機会を作ったということの意義も物すごく大きいと思うんですね。
 このすばらしい取組であるにもかかわらず、鈴木先生や長谷川先生にもお伺いしたいんですけれども、なぜ大学に広がっていないのかを考えたときに、やっぱり、いわば、どうやったら広がるのかという点で、その突破すべきボトルネックであったりということを我々考えなければならないことということで、改めて御意見を頂けたらなと思ったんですけれども。
【鈴木座長】  長谷川先生、いかがでしょうか。(笑)それでは。
 これは、やはり本学の場合には、一番直截にギャップイヤー入試というものがございまして、それに応募してくる──この2人の学生も、そのカテゴリーに入るわけですけれども。一番直截に言えば、そういう入試のカテゴリーを設ければ、必ずそれに行きたい、あるいはそれにやってみようという学生は出てくるとは思います。
 ただ、先ほど浅原先生が、そういう動機がない学生がいる場合に、大学がどういう形で動機を提供するか、大学としてどうお考えになりますかと御質問なさいましたけれども、その辺のところですね。いわゆる、恐らくそれがマジョリティーだと思うんですけれども、その学生たちの中から、じゃあ自分もやってみようか──山内先生が言っていた、いつでもいいんですけれども、やってみようかと、そういう気持ちを起こさせるメカニズムといいますか、仕掛けといいますか、それを作る必要があると思うんですね。
 ですから、一番直截には、本学の場合には10名ですけれども、各大学が、そういう定員を設けて入学試験を行うと。
 私も入学試験の学生たちのプレゼンテーションに参加して、それを拝見していたんですが、やっぱり入学試験で15分の間に自分がやりたいことをプレゼンテーションしなさいということになると、すごい構想を持ってプレゼンテーションするんですね。それに対して先生たちが質問をするんですけれども。要するに、自分はやりたいんだ、この時期でなきゃだめなんだということを、ちゃんと自分の論理で答えるということがございます。
 それで、先ほどフィードバックの話がありましたけれども、要するに入学した学生は、これは11月の頃に入学試験をやって一応決まるんですが、2月ぐらいの段階に大学に来てもらって、そして担当の先生と、その計画について、やっぱり詰め直すといいますか、これでやれるか、やれないかを話すというあたりが大学との、実際にギャップイヤーのテーマを持った学生との接触の初めですね。それで4月から始まるとしても、中間的なフィードバックを学生にさせるという形で、いつでも、ある意味、大学としては手放していながらも見守っているというスタンスでやるわけです。
 先ほど長谷川先生から、500人もいたら大変だということをおっしゃいましたけれども、私もそう思います。そう簡単に大学としては、全員ということはなかなかできないとは思います。
 ただ、各大学で、限られた数であっても、かなりの大学がやるとすれば、何千人という単位でギャップイヤーというのを経験する学生が出てくるはずで、これは、やはり社会にとっても非常に大きな教育の効果だなとは思っておりますけれども。
【宮城委員】  そういう意味で、ほかの大学に広がるという意味では、やっぱり、とはいえ、まだ、どんどん導入していこうという流れにはなっていないと思うんですが、それが加速していくためには、それは例えば、こういう場とか国とかの役割も含めて何が必要なのか。
【鈴木座長】  私は、先ほど来、学生も2人言っておりましたけれども、認知の問題というのは非常に重要で、これは特にギャップイヤーの場合には就職がどうなるんだとか、先ほど年金にも関わってくるのではないかというお話もありましたけれども、やはり認知の問題。大学と産業界が、特に産業界が、そういうのにサポーティブな発言を、あるいはその仕掛けを作っていっていただくことが非常に重要だと。
 具体的に申し上げれば、やはり産業界あたりが、そういうことに声を上げていただく。大学自体も、いつやってもいいということはあるんですけれども、やはり、このギャップイヤーに掛ける大学のエネルギーといいますか、リソースはかなりのものになりますので、それに覚悟を決めなきゃいけない。それに対して文科省あたりが、こういうことをサポートしますというスタンスで実際にやっていただければ、車輪が動いていくのではないかと思いますけれども。
【宮城委員】  ありがとうございます。
【鈴木座長】  どうぞ。長谷川先生、そして砂田先生、お願いします。
【濱田委員代理(長谷川)】  補足させていただきます。今、鈴木先生がおっしゃったとおりだと私も思います。まだ周知が十分でない、認知されていないというところが現状で、確実にこれは広がっていくと思います。これ、教育プログラムですので、東大でこういうことを始めて、国際教養でこういうことを始めて、彼らの4年間の学びがこんなに向上して、更に社会でこれだけ活躍するという効果が出てくるのが、やっぱり5年、10年掛かることですので、少し時間を頂きたいと思います。そこで企業からの御支援を頂く。それから、マスコミにも是非取り上げて。学生、ちょっとかわいそうなんですけれども。
 うちでも釜石の市役所で1年間働いているギャップイヤーの学生がおりますけれども、やはりそういうのを見て、今年の夏、1年生がギャップイヤーの学生の下にボランティアに行ったとか、いい話はたくさんあるわけで、そういうのが広がっていけば、これは後戻りすることはないと思っています。
 ただ、じゃあ全員にこれを当てはめるかというと、そうではなくて、やりたいことが決まっている、やりたい人がやるというのが、やはり基本だろうなと私も思います。
【鈴木座長】  砂田先生。
【砂田委員】  私も長く話をさせていただいたので、手短にさせていただきます。
 藤沢委員のおっしゃるとおりですね。私は「産官学民」という言葉を使っていますが、その産官学民がそれぞれ何ができるかということを考えていくことが非常に重要であろうと考えます。
 例えば学でいえば当然、大学と高校になるんですが、高校は是非キャリア教育の中にギャップイヤー的なものですね。私は5ページに示したように、これまでストレートで来たキャリアだったと思いますが、これ本当に「大量生産、大量消費型」の時代のものだと思うんですね。それを、まだ引きずっている。どう見ても世の中的には「非連続なキャリア」になっているわけですね。
 そういう意味からも、ギャップイヤーという概念を植え付ける必要を感じています。ギャップイヤーは空白じゃなくて、機会、オポチュニティーです。そういうものを高校生に概念として受け取ってもらうというのは非常に重要ですし、同様に親ですね。親世代は非常に頭が固く、保守的なので、そのあたりもアピールしたい。親も、ちょっとよく見たら、みんなリストラに遭ったり、会社が消えていたり、そういうものがいっぱいあるわけで、どう考えても直線的なキャリアじゃないよねと考えれば、やはり、こういうことの重要さが分かってもらえるんじゃないのかなと思います。
 東大と国際教養大学は現にギャップイヤー制度がありますので、是非オープンな成果報告会を実施いただきたい。どういうものを体験して、自分はどのように考えたか。きょうみたいなお二人の場を是非作っていただきたいと思います。
 産業界については、やはり先ほどから、おふたりのような人材が欲しいという力強いお言葉を頂戴したので、それを、前回もどなたか言われたと思うんですが、ウエブサイトで発信していただけたら、私たちはどんどん騒ぎますから。今1か月に5万2,000人もユニークユーザーが私どもで来ていて、12万ページビューの閲覧ページ数がありますので、ちっちゃなさざ波ぐらいはできる範囲に来ていますので、是非そういうことをお願いしたいです。
 それと、私の横におられるのは日本貿易会さんなので、是非御意見を頂戴したいと思います。
【鈴木座長】  じゃあ、小島先生、どうぞ。
【市村委員代理(小島)】  ありがとうございます。日本貿易会の小島です。きょうは市村の代理で出席させていただきました。
 きょうお話を伺って、産官学民、それと学生さん出席されたわけですけれども、その中で、じゃあ我々は何ができるかということなんですが、1つには、先ほど来お話が出ているように、ギャップタームが就活に不利になると、そういう不安が学生さんにあるのであれば、そんなことはないよ。企業というのは、いわゆる優秀な人材を均一に採ろうとしているわけではなくて、この会議であるように、タフな、多様な人材を採っていかなきゃいけない。
 冒頭、第1回の会議だったと思いますが、濱田先生がおっしゃったように、それは待ったなしなんだという思いも、私ども業界は認識しています。そういった中で東大のFLYプログラム、これについても実は私ども貿易会として後援団体にさせていただいておりまして、陰ながら応援させていただいているところです。
 2つ目として何が業界としてできるかというときに、先ほどお話があったように、何かギャップタームでやろうというときに、学内に全部カリキュラムがそろっていますかという話がありましたけれども、私ども商社のOB、OGで2,400人ほど登録している、NPOで国際社会貢献センターというのがあるんですけれども、そこの人材を、例えば出前授業で各大学の要請を受けて派遣するということもできます。現に今40大学ほどと提携持たせていただいて、講師の派遣ということもやっております。
 そういった形で、できる限りの協力はさせていただきたいし、また熱意ある学生さんで、こういうところへ行きたいということであれば、OBは現地の文化とか伝統とかを説明できる人もいますし、その国の将来が明るいということを熱々と語る現地社員を紹介することもいとわないと思っております。
 そういった中で、是非、提案というか、こういうのはどうなんだろうなというのは、先ほど来話が出ている中で、やっぱり学生の皆さんの主体性と、あと家族、一般社会の理解が問題だというお話ありましたけれども、例えば学生の組織で主催していただいて、ギャップタームあるいは大学教育の在り方を考えるようなシンポジウムを学生の皆さんに開いていただいて、学生の皆さんに学事暦とかギャップタームを語っていただいて、そして参加者は例えば一般社会、これはもちろんですけれども家族の方、そして学生の方、参加していただいて、皆さんの中で議論してみる。我々も、その組織に呼ばれれば、産業界がいかに多様な人材を求めているかということも発言させていただきたい。親御さんの方から資金とかそういった問題があれば、そういうのも政府からスキーム等を表明していただくような、そういうチャンスがあればいいのではないかなと思っております。
 雑駁な意見ですけれども、よろしくお願いします。
【鈴木座長】  ありがとうございます。そういう御提案も頂きました。
 そのほか。まだ御発言いただいていない委員の先生方いらっしゃいましたら、どうぞ、きょうの機会にお願いしたいと思いますが。あるいは、もう一言という方ございましたら、どうぞ。どうぞ。
【砂田委員】  1つ忘れました。発表の中で何度か私、大学の入学の延期制度というのを申し上げたと思うんですが、日本の大学に大学の入学延期制度というのは、まだないですね。これはちょっとお話ししたと思うんですが、是非そういうものを制度を設けていただくと、それ自体、ある意味で、大学の外の、自分の責任、自己責任でギャップイヤーをとる人が出てくると思いますので、是非ここにおられる大学の学長の皆様には前向きに検討していただきたい。
 濱田総長は、たしか入学延期を考えているということも、お話を伺ったことがあります。
【鈴木座長】  それからもう一つ、学籍の問題なんですね。うちの学生からも学籍の問題、それから、それと関連してビザの問題ですね。それが、学生ビザはなかなか難しいということがありました。
 4月に入学はしてくるんですけれども、実際に大学に来るのは9月以降ということなので、その間の学籍をどうするか。その間学籍がないと、学生ビザでとにかく海外に行くやら何やらができないということがありますので、これなども具体的に考えなければいけないことだと思います。
 本学の場合には、4月から学籍を与えることにいたしましたので、国際教養大学の学生としてギャップイヤーの活動をするというふうにこれからなっていくことになっております。
 そのほか、ございますか。あと数分ございますけれども、もしないようでしたら、きょうは非常にたくさんの御意見を頂きまして。
 政務官、何かございますか。どうぞ。
【上野大臣政務官】  大変すばらしい検討会ができたと思います。ありがとうございます。本当に学生のお二人がすばらしい成功例を作ってくださって、それが皆さんの役に立ったと思うので、良かったなと思いますが。
 最後に、実は失敗例というのはなかなか表に出ないので、その失敗例を知っているので、ちょっとお話しさせていただきたいんですが。うちの子供、2人ですが。(笑)イギリスの大学で4年間過ごしまして、真ん中の子は建築を専攻してノッティンガム大学に行っていたんですが、大学中にギャップタームをとってヨーロッパの歴史的な建造物を見に行くという。向こうはギャップターム、グループでもとれますので、同じ意識のあるグループ数名と車で出掛けたわけですが、もうそれがサバイバル旅行でして、お金がなくなって、結局は、向こう、ハンティング、自由に許可があってできます。大学生、野鳥を捕ったり、ウサギを撃ったりして、それを食べて生活したという物すごいサバイバルを聞きまして、二度とやりたくない。そちらの方ばかり印象に残って、何の歴史の勉強してきたか。大して建物は見なかったようで、大失敗をしましたけれども、学校としては、これも認めてくれましたし。(笑)
 もう一つは、生物を専攻した三女なんですが、環境問題でアフリカの方に生態系の実態を見に行きたいということ。これは自分で事前にアルバイトしてお金をためて、やはり同じ環境問題に取り組む仲間と3名ほどで行ったんですが、このアフリカのサバイバルは、この次女のサバイバルを更にはるかに超えたもので、物すごい危険なところに女の子だけで3人行ってしまったわけで、後で聞いたら命懸けだと。自分はこんなにひどいとは思わなかったということなんですが、現地の人に助けられながら乗り越えたということです。
 しかし、コウモリの生態系とか、夜中にとらなきゃならないということで、ひもでコウモリを昼間寝ているときに結んで、それで、それがどこに行くか、寝ながらこうやったりとか、いろいろやったらしいんですが。成功はしたものの、3名で行って、その中の2人がいろいろな病気になりまして。アフリカで、注射はしていったんですが、1人は皮膚病になったりとか、1人は何かガの幼虫が頭の中に卵を産んでしまったとか、大変なことになって。本人もウニに刺されて、刺された針を抜くと毒が回ると現地の人に教えていただいて、その針を抜かないままで1週間過ごしたとか、そういうサバイバルも経験。
 これも失敗談かもしれないんですが、でも、そこから生き延びる力とか人間力は付きますので。(笑)
 だから、こういう体験とかも、これから日本でも認めてあげるようにすれば、また人間的には大きくなる。ただ、それが自分たちの目標や目的が達成できたかということになると多少問題ありますが、大学の方でこういうことも、生き延びて、命はあって帰ってきたということを認めていただくような、すごくおおらかなところをとっていただければ、日本の大学も変わるんじゃないかというのも思ったので、失敗談ですが、ちょっとお話しさせていただきました。
 本日はありがとうございました。
【鈴木座長】  どうもありがとうございます。政務官から御家族として思いを述べていただきました。ありがとうございます。
 それでは、本日頂きました御意見を踏まえまして、文部科学省において御意見を整理していただいて、これから審議をまとめられるよう、たたき台となる資料を用意していただいて、次回以降、更に議論を進めていきたいと思います。
 最後に、今後の開催日程について、事務局から説明をお願いします。
【猪股大学改革推進室長】  次回第4回の検討会議につきましては、資料5の今後のスケジュールにございますように、3月頃に開催する方向で、改めて日程調整の上、追って御連絡をいたします。
【鈴木座長】  ありがとうございます。
 それでは、本日の議事は終了いたします。活発な御議論を頂きまして、ありがとうございました。失礼いたします。

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高等教育局大学振興課大学改革推進室

(高等教育局大学振興課大学改革推進室)