大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会(第4回) 議事録

1.日時

平成25年1月25日(月曜日)

2.場所

文部科学省(中央合同庁舎7号館東館)3階講堂

3.議題

  1. 大学設置認可の在り方の見直しについて

4.出席者

委員

(座長)浦野光人座長
(副座長)黒田壽二副座長
(委員)相川順子、今村久美、及川良一、佐藤東洋士、佐野慶子、寺島実郎、濱田純一 の各委員

文部科学省

下村文部科学大臣、森口事務次官、前川官房長、板東高等教育局長、小松私学部長、浅田高等教育企画課長、岡本大学設置室長

5.議事録

【浦野座長】 それでは,時間になりましたので,ただいまから大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会(第4回)を始めさせていただきます。
 座長の浦野でございます。よろしくお願いいたします。
 委員の皆様には,大変お忙しい中,御出席いただきましてありがとうございます。
 また,今回は,新たに就任されました下村博文文部科学大臣が御出席くださっております。どうぞよろしくお願いいたします。
【下村大臣】 よろしくお願いいたします。
【浦野座長】 本日は,尾﨑正直委員,北山禎介委員,清家篤委員,林文子委員がそれぞれ所用のため御欠席であります。
 本検討会は原則として公開で行うこととしており,今回も取材・傍聴の方がおられますこと,及び,冒頭から大臣の御挨拶までカメラによる撮影があることをお断りしておきます。
 それでは,始めに,下村文部科学大臣から御挨拶をいただきます。
【下村大臣】 このたび安倍内閣が発足をいたしまして,文部科学大臣,そして,教育再生担当大臣を拝命いたしました下村博文でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 この大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会は,田中真紀子前文科大臣のときに設置された検討会でございます。この大学の設置認可の問題で,私も昨年の国会で田中真紀子大臣と,当時自民党のシャドウ・キャビネットの文科大臣ということで,この問題を取り上げました。田中前大臣の認識も共有する部分はありますが,我々としては,ぜひ大学における質・量ともに充実させていくことが必要であると思っております。特にこの教育改革は,今回,安倍内閣の最重要課題の一つと位置付けられまして,今週から総理官邸に教育再生実行会議を設置することになりました。「人づくり」が「国づくり」ということで,これから教育再生に向けて全力で取り組んでまいりたいと思います。
 自民党も,さきの選挙のときの公約として,「『大学力』は国力そのもの」であり,「大学教育の見直しや質・量ともに世界トップレベルとなるよう大学教育強化」をしていきたいということを選挙の公約に掲げておりまして,これから大学について引き続き重要テーマとして位置付けていきたいと思っております。
 その中で,田中前大臣が問題提起された部分について,我々も確かに,全入時代の今日において,3分の1の大学が高校以下の補習授業をしているという状況の中で,これからの認可の在り方等については議論をすべきであると思いますが,過去20年間の中で,高等教育に力を入れた国が,結果的に国の経済力のアップにもつながっているわけでございまして,規制を強化するというよりは,もちろん,既存の大学の中でも,きちっとした地域ニーズの中で,そして国民ニーズ,また健全な経営のもとで行われているかどうかということについては今後も十二分にフォローアップをしていく必要があると思いますが,いずれにしても,これから日本の大学力が日本全体の発展につながるという視点から,質・量ともに全面的な見直しとバックアップをしていく必要があると思います。
 そういう中で,教育再生実行会議においても,前半は,今喫緊の課題でありますいじめ,最近は体罰の問題もございますが,それらについて議論をし,また,教育委員会の抜本的な見直しも議論していただきますが,その後,大学教育の在り方,これは大学入学試験の在り方も含めて,議論をしていただき,その中で,さらに法律改正を伴う部分は中央教育審議会にも諮問をし,そして,我が国におけるよりよい大学教育の在り方について,抜本改革も含め,新たな時代に対応するこの国の教育力について検討していきたいと思います。
 そういう中で,浦野光人座長,黒田壽二副座長をはじめ,本検討会の委員の皆様方には,昨年11月以来,我が国の大学教育の質を一層高める視点から,御熱心に議論していただいていることに対して,感謝申し上げたいと思います。
 本検討会での御議論を今後の施策の充実に生かしたいと思っておりまして,今日は直接皆様方のお話をお聞かせ願いたいと思い,最後まで出席させていただいて,今後,検討会の皆様方の御意見を国の教育政策の中で十二分に反映するように,私も先頭に立って努力をしてまいりたいと思いますし,また,今後とも御指導を賜りますことをお願い申し上げまして,私の方からの冒頭の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【浦野座長】 下村大臣,どうもありがとうございました。
(報道陣退席)
【浦野座長】 本日は第4回目となります。これまで3回の会議を通じて,相当に議論は深まってきたと思っております。今回は改めて主要な論点についての議論,見直しの方向性について意見交換を行って,本検討会としての議論のまとめにつなげていきたいと考えておりますので,御協力をお願いいたします。
 まず,事務局から配付資料について説明願います。
【浅田高等教育企画課長】 それでは,配付資料について御説明させていただきます。
 まず資料1は,毎回お配りしている本検討会の設置要項と名簿です。この検討会は,大学の設置認可の在り方について見直し,大学教育の質の向上を図るため,11月20日に大臣決定により設置され,審査基準,審査体制,審査プロセス,スケジュールの在り方などを中心に御検討いただいてきたところです。なお,浦野座長の御指名により,黒田委員に副座長をお願いしております。
 資料2も,前回までの会議でお配りしたものです。本検討会で御議論いただく主な論点を,第1に「大学の質の向上のためのトータルシステムの必要性」,第2に「大学等の設置認可に関する論点」,具体的には「審査基準」,「審査体制」,「審査プロセス,スケジュール」の在り方,第3に「設置認可以外の質保証に関する論点」,具体的には「設置後の評価等を通じての質保証」,「早期の経営判断とそれに基づく適切な対応」,第4に「その他」と整理させていただいています。
 資料3は,過去3回の検討会でいただいた御意見を,資料2の各論点別に整理したものです。これまでの議論を振り返る意味で,主な内容を御紹介させていただきます。
 まず「1.大学の質の向上のためのトータルシステムの必要性」については,「設置認可を含む全体システムの中で考える必要がある」,「設置認可後も完成年度まで毎年行う設置計画履行状況等調査,その後の認証評価へという流れをきっちりつくることが重要」との認識は,共有されているところだと思います。
 「2.大学等の設置認可に関する論点」のうち,まず「審査基準の在り方」については,そもそもの「基本的な考え方」として,「設置段階での事前審査は必要」,「基本的なところはきちんと審査する必要がある」,「事後的にだめだった,ということでは学生にとって取り返しがつかない」として設置認可自体の必要性を確認すると同時に,「個性的な大学」,「チャレンジングな大学」,「小さくてもいい教育をしている大学」など多様な大学ができるよう,「画一化を招かない視点が必要」という御意見が大勢であったかと思います。また,「規制強化ではなく,審査の運用上でどこまでチェックできるかが重要」という御指摘もありました。
 「社会的ニーズへの対応」の観点からは,大学が地域で果たす多様な役割を踏まえ,特に地域の視点を設置認可の視点に取り入れるべきだとする御意見や,我が国の経済・産業・社会構造の変化を踏まえ,大学と社会のリンケージに対する分析を関係省庁とも協力して行うべきとの御提言をいただきました。
 「学生確保,経営の見通しの観点」からは,「学校法人の経営で一番重要なのは安定性と継続性」であり,「発展シナリオだけでなく,学生募集がうまくいかなかった場合のリスクシナリオを考えておくことが重要」という御意見や,寄附金の原資をどこまでさかのぼって見ることができるかといった御指摘をいただいています。
 「教員,校地等についての観点」からは,教員の資格審査,学部の校地基準についての御意見がありました。
 「管理運営,情報公開等についての観点」からは,特に教育・経営情報の公開に関する御意見や,前回詳しく御紹介させていただいた平成16年の私立学校法改正の精神を一層徹底すべきとする御意見,大学のガバナンスの在り方などを視点に入れるべきとの御指摘をいただきました。
 「基準の運用等」に関しては,「現行の設置基準の運用の厳格化が,すぐにできることではないか」,「財産目録などの申請書類の作り方について,分かりやすいルールづくりが必要」などの御意見がありました。また「審査に当たって不明確な基準や抽象的な規定の運用を明確化すべき」という点については,前回の会議で御議論いただいたところです。
 次に「審査体制の在り方」に関しては,「大学教育に深い見識を持つ専門家中心に審査をする必要があり,現在の設置審の在り方は理にかなっている」という御指摘や,先ほどの「社会的ニーズへの対応の観点」とも関連して,地域の要望を把握している人が参画するとよい,特別委員や専門委員を活用してはどうかなどの御提言がありました。
 「審査プロセス,スケジュールの在り方」に関しては,「現在も審査の過程で何重にもステップを踏んで改善を求めるなど,きちんとした大学として出発させられるようかなりの努力がなされている」というお話がありました。一方で改善の視点として,審査プロセスの中に,大学が設置される自治体からのヒアリング,計画全体の枠組みについて見る構想審査,理事長候補者との面接などを明確に位置付けることなどの具体的な御提案がありました。スケジュールについては「今よりも慎重に時間をかけて審査を行う方がよいのではないか」という御意見が多かったと思います。
 次に「3.設置認可以外の質保証に関する論点」については,「設置後の評価を通じての質保証」に関して,「既存の大学の質の向上が重要」,1のトータルシステムとも重なりますが「設置後も年次計画完成まで毎年チェックをし,認証評価につなげる流れを作ること」,「情報公開が重要」といった御意見に加え,「教育はトライ・アンド・エラーを繰り返すものであり,当初の計画の履行だけにこだわるべきでない」,「事後チェックは国際的にも大学人によるピアレビューが基本である」との御意見もいただいています。
 「早期の経営判断とそれに基づく適切な対応」に関しては,仮に大学等が閉鎖等をすることになった場合の学生の学修機会の確保,段階的にソフトランディングできる仕組みの必要性,危ない傾向を早目に見取るための指標などについての御意見や,現在も文科省と私学事業団の連携によって経営判断・経営診断の取組を行っていることのお話がありました。
 「4.その他」としては,そもそもの大学の在り方,今日の大学に期待される役割や機能,我が国の大学の課題の一つである社会人の受け入れ,特に学力保証の観点から初等中等教育との関係などについて,大所高所から,また幅広い視点に立って,我が国の高等教育の将来像にかかわる貴重な御意見をいただいております。
 次に,資料4は,これまでの3回にわたる検討会での御議論を踏まえ,本検討会の主な検討事項である大学設置認可の見直しの方向性について,座長と御相談させていただきつつ,事務局で論点を整理したものです。
 大きく三つに分けて整理しています。第1に「運用の改善などにより早期の実施が期待される事項」,第2に「中教審,設置審で具体化に向けた検討が期待される事項」,第3に「大学の質の向上のため,設置認可の見直しと併せて継続的に改善,充実を図っていくべき事項」です。
 「運用の改善などにより早期の実施が期待される事項」としては,(1)学生確保の見通しや社会的人材需要等を十分に考慮することを審査基準上明確化すること,(2)大学新設の際,理事長,学長予定者から設置構想全体について直接話を聞く機会を設けること,自治体の考え方や支援内容を確認すること。
 また,学部の設置などの場合も含め,地域社会の人材需要等に詳しい人を専門委員等に加えるなど審査体制の充実を図ること,学生が計画どおり確保できなかった場合の対応方針,リスクシナリオについても確認すること,が考えられるかと思います。
 次に,本検討会での御議論を踏まえ,さらに「中教審,設置審で具体化に向けた検討が期待される事項」としては,(1)設置基準の解釈を明確にし,運用の透明性を高める観点から,抽象的基準を明確化し基準の一覧性をさらに高めること,(2)適切なガバナンスの確保や財務情報の公開について,審査基準で明確化すること,(3)より充実した審査のために審査期間を延長することや,認可時期を早めることについて検討すること,(4)事務負担の軽減などの観点から,申請書類作成のルール化やマニュアル化を進めること,(5)設置に必要な寄附財産の実態を厳格にチェックすること,仮に不正があった場合のペナルティの強化,などが考えられます。これらについては,具体化に向けて,関係の審議会で御検討いただくべき課題であると考えております。
 このほか,設置認可以外も含めたトータルシステムを整備する観点から,「大学の質の向上のため,設置認可の見直しと併せて継続的に改善,充実を図っていくべき事項」として,(1)認可後の事後チェック機能の強化を含むトータルな質保証の在り方,(2)大学の閉鎖等の場合の学生保護などの仕組み,(3)情報公開の一層の促進を挙げています。
 本日は,この資料4についても御意見をいただきたいと考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 資料5は,現在の大学設置認可制度の概要をまとめた基本的な資料として,毎回お配りさせていただいているものです。必要に応じて適宜御参照ください。
 資料6は,本年4月の開設を目指して昨年認可申請のあった64件について,なお審査継続中の1件を除いて審査結果が出ていますので,それらをまとめたものです。御参考までに報告させていただきます。
 今回の申請は計64件で,このうち大学の新設に係るものが5件,残る59件は学部や大学院等の設置に係るものでした。大学新設の5件の申請については,1件が6月の段階で早期不認可,1件が審査途中で取り下げられ,それ以外の3件,5分の3が,一連の経過を経て11月に認可となり,4月からの開校を目指して準備が進められているところです。
 一方,学部・大学院等の新設に係る59件については,審査の途中で約3割にあたる16件が取り下げられ,1件,これは大学院の専攻の設置に係るものですが,この1件がなお「保留」として審査を継続中です。したがって,申請があったもののうち認可されたものは約7割という状況です。
 このように,現在の設置審査においても,申請すれば認可がなされるというものではなく,大学設置・学校法人審議会で様々な角度から専門的な審査が行われていることが御理解いただけるのではないかと思います。
 資料7は,大学等の情報公開について,法令上の規定と対応状況の調査結果をまとめたものです。
 大学の教育情報の公開については,平成22年に学校教育法施行規則を改正し,社会に対する説明責任を果たす観点から,第1に「教育研究上の目的」,第2に「基本組織」,第3に「教員組織,教員数,各教員の学位,業績」,第4に「入学者の受入方針,入学者数,収容定員,在学者・卒業者数や進路の状況」,第5に「授業科目,年間授業計画」,第6に「学修成果の評価,卒業・修了認定の基準」,第7に「施設・設備,学生の教育研究環境」,第8に「授業料,入学料などの費用」,第9に「学生の修学,進路選択,心身の健康等に係る支援」の9項目について,「インターネットの利用その他広く周知を図ることができる方法によって」,「情報を公開するものとする」との規定を新たに設け,これらの情報の公開を義務化したところです。
 また,これら以外にも,「学生が修得すべき知識及び能力に関する情報を積極的に公表するよう努めるものとする」と規定されています。
 以上は全大学に適用されるものですが,私立学校の財務情報については,既に平成17年度から,私立学校法において,財務諸表及び事業報告書,監査報告書を「各事務所に備え置き」,在学者その他の利害関係人から請求があれば,正当な理由がある場合を除いて「閲覧に供しなければならない」と法律上規定されています。
 平成22年の学校教育法施行規則改正後の各大学の対応状況については現在まさに調査中であり,最新のデータがございませんので,参考までに,この改正前ですが21年度の調査結果について御紹介します。
 資料の3ページを御覧ください。母数は国公私立753大学です。御覧いただくとおり,この調査の時点で既に600以上の大学でホームページ等に掲載している情報としては,「教育研究上の基本組織」,「入学定員」,「授業科目名」,「授業料」,「入学料」,「就職支援の状況」などがあります。一方,「教員の研究業績」,「就職状況」,「各回の授業の計画」,「成績評価基準」,「卒業認定基準」などについては,この時点では大体300から500の大学でホームページ等に掲載されているという状況でした。
 4ページ目以降が,平成23年度の「学校法人の財務情報等の公開状況に関する調査結果」の概要です。大学,短大等を設置する666の学校法人を対象に行ったものです。
 5ページにあるように,この時点で既に95%以上の法人が財務情報等をインターネットのホームページに掲載することによって公開しており,この率は年々着実に増加しています。6ページにあるとおり,それぞれの書類の一般公開も着実に前進してきている状況です。
 以上が本日事務局で御用意させていただいた配付資料についての説明です。
 なお,これまでと同様に,委員の皆様の机上に「前回までの配付資料集」のファイルを御用意させていただいておりますので,適宜御参照ください。
 資料の説明は以上です。
【浦野座長】 ありがとうございました。
 ただいまの説明の中の資料6ですが,これは25年度の開設予定の設置認可状況ということで,先ほど説明がございましたけれども,佐藤委員が,大学設置・学校法人審議会の会長を務められておりますので,この辺の取下げとか不認可とか,こういったところの事情も踏まえて,少し補足説明いただければと思います。
【佐藤委員】 佐藤でございます。少し私の方から,今年度の大学設置・学校法人審議会の審議について振り返りをさせていただきたいと思います。
 原則的には,先ほど浅田課長から御説明がありましたので,繰り返す部分もあると思いますが,今年度は,43校から,64件の設置認可についての申請がございました。そのうち認可となったものは,33校,45件でありますが,11月に認可になったものが22校,32件,12月に認可になったものが13校,13件とあります。12月認可となっているのは,審査の過程で,途中で是正意見や改善意見,その他の意見をつけて,それに対応してもらっているわけですが,11月認可の時点ではまだ是正意見がついていたのが,それを補正して,12月に認可に至ったということであります。
 それまでの間で,先ほどもお話がありましたけれども,10校,17件の申請については取下げがあり,1校,1件については早期の不認可があったということですが,受付け後,専門委員会の審査が行われ,それぞれ審査の結果として是正意見の多いものについては,まず警告という形できちんと対応していただくというような形を整えております。したがって,質についての担保というのは,そのようなプロセスの中できちんとしているという理解であります。
 ちなみに申し上げますと,審査継続中の1校,1件については,この資料の後ろの方に出ておりますが,大学院の場合は,資格要件を満たす研究指導の教員を必要な人数そろえないといけないということになっておりますが,1名の教員がまだ不足しているという判断があって,それの補正をしていただいているという段階であります。
 以上が,現在の,今年度の状況であります。
【浦野座長】 ありがとうございました。
 それでは,意見交換に移りたいと思います。本日の中心的な御意見は,資料4ですね。これは,案の形で取りまとめの方向を少し記しているわけでございますが,この資料4を中心にしながらも,いや,こういった新しい視点が必要ではないかという御意見ももちろん結構でございますし,下村大臣には,今回初めて御出席いただいておりますので,ぜひ大臣に直接お聞きいただきたいということでも結構でございます。あるいは,先ほどの事務局の説明に対する質問でも結構でございます。そういった視点で,どなたか御意見がございましたらお願いいたします。
 今回は全員の方に御意見を頂戴したいと思っておりますので,順番というわけではございませんが,皮切りに黒田委員,いかがですか。
【黒田副座長】 ありがとうございます。
 もう前回までに,資料3にありますように,相当の意見が出ております。私がちょうど大学設置・学校法人審議会の学校法人分科会の会長をやっているときに最も審査で困ったのは,規制緩和がどんどん進んで,端的に言いますと,我々が大学をつくるときは,校地面積は建物の床面積の6倍必要だったんですね。それが3倍基準になり,その後出てきたのが1人当たり10平米。10平米といいますと,定員が300名ぐらいの大学ですと,その所有する土地に建物が建たない,それでもいいのだと。足らないところは借地でいいということになります。これは特に,学部教育というのは人間形成の一番重要な時代なんですね。そういうときに学生が集うキャンパスがない,そういう中で授業を大学がやらなければならないという,そういうことが起きてきたわけですね。それが,私としては,審査をやっているときに非常に苦痛だったと記憶しています。大学院の場合と学部教育の場合では全く中身が違うということを,やはり認識していただきたいなという感じを受けております。
 それから、もう一つは,審査するときに,書類審査と面接審査と現地審査と3段階やるわけですけれども,構想段階の審査というのがなくなっていますので,いきなり細かい,大学の教員の数とか,校地・校舎がどうなっているかというところへ入るのですが,全体の構想を,その地域として本当に必要かどうかというのを審査する必要がある。それと同時に,理事長がどういう方で,学長がどういう方だということを,しっかりと面接審査をして確かめる必要があると思います。そういうことをやっていかないと,学部教育の責任を持つ,学校が責任を持ってそれを運営するということができなくなってくる。
 大学をつくれば社会貢献になる,大学町ができればそこに人が集まるという,もうそういう時代は済んできていると思います。もうだんだん終わりになっている。本当に地域に必要な大学はどうあるべきかということを考えていただきたいと思いますし,特に,新しく設置するときには,私学というのは学校法人制度で成り立っています。この学校法人制度というのは,寄附で基本的なものを賄うということになっていますので,その寄附財源がどうなっているかということを,やはりしっかり審査をする必要があると思います。だから,設置資金というものを,ただ単に書類上そろっているということではなしに,本当にこれが正当性のある財源なのかということを審査しておく必要があるのではないかと思います。
 特に最近は段階的な整備が許されています。完成年度に達する4年間の間で段階的にどう整備していくかという,そういうことになっていますから,昔みたいに,申請の段階で全ての施設・設備等をそろえてということをしなくてよくなっていますので,その辺の計画性というのも見ていく必要がある。これは法改正というよりも,運用上の改正でできることだろうと思いますので,ぜひともこれは新しい設置審でやっていただきたいなと思っているところです。
 私がちょうど分科会会長をしたときにコメントを出させていただきましたが,そのときに一番感じたのは,とにかく準備不足だということ。大学を申請する,学部を申請する際の申請書をつくるのが本当に準備不足で,書類だけそろっていればいいだろうというふうな感じでつくられている内容が多かったというので,ああいうコメントになっています。ぜひともしっかりした意識を持って,やはり大学教育というのは日本の国を支える最高の教育機関でありますので,その辺はしっかりとやっていかなければならないなと思っているところです。以上です。
【浦野座長】 そのほかの方,いかがでございましょうか。
 それでは,相川委員,よろしいですか。
【相川委員】 ありがとうございます。
 私は高校生の保護者という立場で,今回のこの委員会で,改めていろんな制度があるのだなということを知る機会もいただきました。何よりも,子どもたちが自分の目標を設定するという段階で,いろいろな審査を経て認可がなされないという事態があっては非常に子どもたちに混乱を招く。そういうことがあってはならないという立場で,いろいろと聞かせていただきました。
 その中で感じたことは,審査をする中で,子どもたちが入った後もしっかりと学ぶことができて,そして,社会に出ていくまでの途中で大学がなくなるということはあってはならないということです。審査の部分と,認可を得た後の指導というか,そういうところに関してはどういうふうになっているのだろうということで,この委員会を通して確認をさせていただくことができたのは,私にとってというよりも,私が知り得たことは,もう全国の会員にフィードバックをしておりますので,そういうことができたのはありがたいなと思っております。
 私の認識不足があるかもしれませんので,2点ほど確認をさせていただきたいことがあります。
 それは資料4でございます。4の2の,中教審,設置審で具体的に向けた検討が期待される事項の(3)のスケジュールの見直しのところですが,より充実した審査を行うために審査期間を延長する。ここのところは,前回も,審査期間が短縮されて,審査をするに当たってもとても御苦労されているのではないかというようなお話もあって,この延長するということは理解できます。しっかり審査をするということに関しては,理解はできます。
 それと,その次のところ,認可後に余裕をもって学生募集が行えるように,認可時期の早期化を決定するというところの関係です。そこが十分審査をするというので期間を延長するということと,認可時期の早期化というのがどういう意味なのだろうと。ここはちょっと相反するところなのではないかなというようなことを私は感じたのですが,もし違っていたら困るので,そこは少し説明をいただきたいというのがまず1点でございます。
 それと,資料5ですが,大学の設置の制度で,今まで資料がありました。資料5の2ページに,教員の組織,校舎等の施設及び設備については,文部科学省の告示において,段階的な整備が認められているということで,先ほども言いましたように,この問題が出されたときに,十分審査を経たものが突然不認可になるということ,受験生や保護者は不安に思ったわけです。それと,このシステムを見ていく中で,審査と同時並行的に学生を受け入れる準備が既に整っているということに対しての意見というか,それでいいのかというような声もあったと思います。
 私たちの間でも,審査と同時進行の中で,もう大学が既に建設されているということはどうなのか,認可はまだなのに,開学の予定が既に決まっている,オープンキャンパスの予定が決まっている,そういうことが同時に進められているということは,それは,ここの部分で言えば,段階的な整備が認められているというふうなことなのかどうか。それは,どこをもってゴーサインが出ているものなのかとか,事前に文部科学省で指導をして,ある程度のものの書類がそろってということで,取りかかっていいという形で進んでいるものなのかどうかというのが,私どもの組織の中でも話になった際に,私自身も明確な回答が出せなかったことですので,今日はその辺をお聞かせいただければと思っております。よろしくお願いします。
【浦野座長】 では,事務局から説明お願いします。
【岡本大学設置室長】 お答え申し上げます。
 まず1点目の審査スケジュールの見直しの方でございますが,こちらは,具体的にどういうスケジュールにするかということにつきましては,実務を担っている設置審の方で,今後御議論いただくことが適当かなとは思っております。ここで想定していることといいますのは,基本的には,まず認可時期を少し前倒しするということが1点。それに伴って,申請の時期をあわせて前の方に持ってくるということが考えられるのかなということがございます。そのときに,全体としてのスケジュールをどのくらいまで設定するかということは,これから検討していく必要があるかなというふうには思っておりますが,認可時期の早期化によって審査期間が短縮されるということを想定して書いているものではございません。
【浦野座長】 これは,もっと言えば,要するに,1年間における時期の問題ですよね。だから,今,11月が主なので,これを例えば5月とか6月にすれば入学準備がうまくいくからという,そういう意味合いで,実質の審議期間を短縮するという意味ではないということですね。
【岡本大学設置室長】  それから、段階的整備のお話でございます。今,制度といたしまして,施設・設備,それから教員については,開設のときに全てそろっているということまでは求めておりませんで,一定の割合で準備ができていれば,開設は認められるということになっております。
 もう一つ,審査の途中段階で,例えば,施設・設備についてできていなければいけないかということにつきましては,今のところ,そこまでは求められてはおりません。ただ,現実問題として,大学といたしましては,春から募集をするということで,なるべく早い段階で,そういった施設・設備の整備も進めたいというところが多いということがございますので,大学側の御判断で,審査と並行してそういった準備を進めているということが実態かなとは思っております。
 オープンキャンパスですとか入試につきましては,基本的に認可がおりるまで学生の募集活動というものはしてはいけないというふうに文科省の方で指導いたしております。ただ,オープンキャンパスですとか広報活動につきましては,認可申請を行っているということを明確にした上であれば,やっていいという形の取扱いをさせていただいているところでございます。
 以上でございます。
【相川委員】 わかりました。
【浦野座長】 よろしいでしょうか。
【相川委員】 はい。
【浦野座長】 それでは,今村委員,お願いします。
【今村委員】 一つ質問させていただきます。資料4の運用改善などにより早期の実施が期待される事項の(1)の,「大学として社会の要請に応え,安定的,継続的な運営が確保できるよう,学生確保の見通しや社会的人材需要等を」と記載されているのですけれども,学生確保の見通しの部分については,どのように評価する仕組みになっているのでしょうか。
【岡本大学設置室長】 現状を御説明いたしますと,こちらについては,基本的に,大学の方で高校生等へのアンケート調査等を実施していただいて,それに基づいて,このくらいの学生が入るという見込みを,調査として出していただくということを基本的には求めております。その調査の仕方もいろいろございますので,その内容が妥当なものかどうかということを,現在ですと,特に学校法人分科会の方でマーケティング関係の専門家の方を専門委員として委嘱しておりまして,そういった方々に専門的な観点からも評価をしていただいているというところでございます。
【今村委員】 ありがとうございます。
 資料7の情報公開のところに,現状,入学前の学生確保の見通しという点ではなくて,現状の入学者の数,学生の数,修了した者の数,就職者等の状況という実績ベースのことが情報開示の事項になっているのですけれども,大変難しいことは重々承知でありますし,授業評価で本当に教育評価ができるかどうかという点も争点であるとは思いますが,在籍している学生たちが今本当にその大学でどのように過ごしているか,大学での学びをどう評価しているのか,卒業生たちがその大学生活についてどう評価しているのかという点を,どうにかこの情報公開の中に入れていけないのかなと思っています。長期的な議論が必要かと思いますが。
 というのは,私の仕事の現場において,高校生に対する大学選択リテラシーの観点持つためのワークショップを幾つかの高校から依頼されて実施しているんですけれども,まず先生方が,大学の選択のさせ方についてどのようなリテラシーを生徒に持たせればいいのかという点を御理解ない方が多いのが現状です。もちろん生徒達も同様です。現状は,大変広告的に見せられる数字,例えば在籍者の数,就職者の数,そして学校の満足度が掲載された大学の広報誌や広告媒体としてつくられている進学情報誌で進路選択をしています。これは設置認可の問題ではないかもしれないのですけど,どうにか歩いて出向いて実態を把握できない地方の生徒たちにも届くような中立的な情報が,難しくない形で届けられないものかと感じます。そのために今議論なさっている経営情報がきちんと開示されるというのは第一歩目です。しかし,ちゃんと生徒,保護者に伝わるような形での,分かりやすい判断軸に反映するような情報を,届けたいわけです。それには文部科学省という中立的な立場から,本当の意味での学生たちの充実感,学んでいる意欲等を伝えていける仕掛けをつくっていけないかなと思っています。
 もちろん,大学によって教育自体に苦労されている大学も多くあります。私達が関わっている大学の中にも,大変中退者が多い大学もあります。中退者が多いという実態を学校評価の基準にすべきという風潮もありますが,一概にそうとも言えないと私は思います。もともと社会に行き場のない,環境に恵まれて来なかった状態の子達をどうにかドロップアウトしないように,かなりの経営努力をされている大学もあるのが事実です。今現状の中退者,今現状の在籍数ということもそうですが,入学後どのような生活を送れているのかという点を,中立的な立場から取り出し,発信していけるような情報開示の仕方が何とかしていけないかなと考えます。少し論点がずれたら申し訳ありません。
【浦野座長】 板東局長,どうぞ。
【板東高等教育局長】 例えば,認証評価という仕組みの中で,学生とか,あるいは就職をした企業の側の評価とか,そういう様々な方々の評価をもう少し取り入れていくべきではないかということで,認証評価の中でも,最近,そういう様々なステークホルダーの評価ということは取り入れが強化されておりますけれども,特に今の御指摘のように,学生自体がどういうふうにその大学について評価をしているのかというのは,重要な点だと思っております。例えば,一つの手法としては,そういう認証評価の中で,きちんとそういうものを位置付けて,それを公表していくというようなことも,今の御指摘の一つの手段としてはあるかと思っております。
【浦野座長】 今のお話について,少し企業のお話も兼ねますと,企業も,多分ここ10年ぐらい,すごく情報開示が進んできまして,昨今の社会環境報告書に属するようなものですと,企業の場合には,自分のところのマイナスの部分をしっかりと開示しながらやっています。ですが,さすがに企業でも,社内の従業員満足度調査とか,あるいは顧客満足度調査にまで社会環境報告書で触れている企業は,本当にまだ少ないところです。ただ,負の材料というのは決してもう企業は隠すようなところはないというようには進んできていますので,大学も,このことが進んでいくと,そんなところが多分企業並みになってくるのかなと私も十分期待しています。おっしゃることは非常によくわかりますので,少し先になるかもしれませんが,期待して待っていたいなと思っております。
 それでは,及川委員,よろしいですか。
【及川委員】 まず,実は私はある私立大学で一コマ講座を担当しておりますが,その大学が26年度に新しい学科を新設するということで,私自身もその申請書類,自分が担当している講座の申請書類を何度となく書き直しをさせられました。本当にこんなに細かいところまでチェックするのかと,正直言って,驚きました。そういう経験が実はあったものですから,今回こういう検討会に出させていただいて,そのように厳しく細かく審査するというのは,大学の社会的な使命を考えたときに,当然のことだなというふうに実は思いました。そういう意味では,もちろん,見直しすべきところは見直しすべきとは思いますけれども,ほぼ適正に設置認可は行われているのではないかなと私は思いました。
 それと,先ほど大臣が御挨拶の中でおっしゃった,今現在,リメディアル教育というのでしょうか,補習が必要な大学生が多いという,大学教育の質のことに関わることだと思うのですけれども,私自身は,大学というのは,やはり教養教育を充実してほしいという気持ちがすごくあります。大学設置基準の大綱化以来,教養教育が切り捨てられて,研究と教育で言うと,教育の方が切り捨てられたという認識を私は持っていて,そういう教育の方が切り捨てられるようなことが,設置認可の基準の中で,追認されてしまうような在り方ではいけないのではないか。そういう部分に係る審査基準は厳格化し,質を保っていただきたいと思っています。
 それから、もう1点,リメディアル教育の常態化のことで言えば,第1回目のときにお話ししましたけれども,これは結局,高大接続の面で,高校教育が高校教育としての質の保証をしっかり行っているかどうかという問題で,こちら側にはね返ってくる問題であるというふうに,改めて高校現場の者としては受け取りました。
 以上です。
【浦野座長】 それでは,佐藤委員,お願いします。
【佐藤委員】 今回,資料4を中心に,見直しの方向性についてということですけれども,私がこの場に出ている立場としては,設置基準に合わせて審査をしていくというのが原則ですから,それに合わせて作業をしております。ただし,個人として,大学人として考えた場合に,アメリカの教育学者,マーチン・トロウが,進学率10%はエリート教育の段階,25%はマスで,50%を超した場合,ユニバーサル教育の段階で,現在は,情報システムの発達に伴って,ユニバーサル・アクセスの時代になったというふうに言葉をかえていますが,私たちは,今日,進学率が大学だけで言うと51%を超したという段階ですから,そういう環境の中で大学づくりをしなければならないということを常に頭の中に置かなければなりません。
 大臣が冒頭に,質と同時に量的にも拡大をすべきであるとおっしゃったけれども,先回の資料では,オーストラリアの大学進学率は98%,日本では51%,韓国は71%,アメリカが74%ですから,ディスタンスラーニング等も含めながら,とにかく諸外国には高等教育にアクセスができる機会というのがそれだけあるということです。したがって私は,日本の高等教育政策においても,手を挙げて学びたいという者には機会を与えるというようなシステムが必要なのではないかと感じております。
 それから、今まで申請を見ていると思い起こすのですが,私は20数年前に桜美林大学で国際学部を設置したことがあります。そのときには,国際関係とか国際経済,国際政治など国際ばやりでした。最近は,これが看護であったり,理学療法であったり,保育であったりというところにシフトされてきている。社会の必要性に応じて大学はできているのだという認識もやっぱり必要かなと感じています。ですから,大学の質,教育の質というのも,それぞれの時代の必要性に応じながら,どのように社会に出たときに付加価値がついていくのか,それぞれ専門職として,あるいは教養人としてと言ってもいいのかもしれませんが,どれだけの力をつけるかという観点で大学づくりをしていかないといけないのではないでしょうか。
 様々な議論がある中で,大学設置・学校法人審議会といっても,学校法人分科会と大学設置分科会,仕事が二つに分かれています。ですから,黒田委員が発言されたところは,どちらかというと,学校法人分科会できっちり押さえなければならない部分だと思いますし,教育の質の部分については,大学設置分科会がきちんと押さえていかなければならないのではないかと思っています。
 そういう意味では,今回出されている様々な御意見が,すぐに取りかかれることと,いろいろ整備しなければならないことがありますので,すぐに取りかかれるところとしては,先ほど来説明があったように,前倒しをして受付けて,審査期間はそう変えずに,7月ぐらいには認可できるように持っていけば,その後の受験生たちも混乱が起きないと思います。
【浦野座長】 では,佐野委員,お願いします。
【佐野委員】 これまで出ました資料3にまとめられた意見,これに基づく資料4の論点整理,これにおおむね言い尽くされていると思います。私の思いも入っているということでございますけれども,あえて意見ということで申し上げさせていただきますと,どの局面においても,一定の透明性の確保というのは必要であり,この確保をどういうふうにしていくかが,大事なことだと思います。この透明化された情報,もしくは透明化するための情報,これを正しく理解して,読み手も理解し,それから、利用者ももちろん読み手ですから,利用者が理解し,運用していくか。そのためには,それを正しく評価するためのルールが必要である。ですから,資料4に書かれておりますように,ルールの明確化,これは当然必要であろうと思います。また,このルールの明確化というのは,明らかにするということであって,何も金縛りにするとか,そういったことではなくて,時代の要請に合った適度な伸び代を確保した上でのルールの明確化が必要であろうと考えております。
 また,そのルールを落とし込んだマニュアルもきちんとしていただかないと,これまでたまに見られたように,申請者側も,また審査側も,お互いの思いで,その伸び代を拡大的に解釈してしまって,迷うところ,もしくは時間の浪費につながるところがあったということですので,適度な伸び代を確保した上でのルールの明確化とこのマニュアル化,これは透明化確保のためには設置の観点から必要であろうかと思います。
 また,設置後に学校法人がどのように運営されていくか,運営面についても,透明性の確保は非常に重要な事項だと思っております。この論点にもございますけれども,また,先ほど担当の方から御説明もありましたが,財務情報の公開,これが当然必要なことは皆様御承知の上で,私学さんも独自にいろいろな方法で開示していらっしゃる。ただ,この辺の仕組みが,私学法の規定に基づいて,利害関係人に閲覧開示するとともに,インターネット等のウェブサイトで自主的に公開されている部分もありますけれども,この公開された情報を,今,社会ではやはり第三者保証,第三者による担保というのが必要になっているというのは御承知のことかと思います。私学法に基づく財務情報の公開に対する社会的な保証を与える仕組みをきちんとしないと,これは読み手にとっても,また開示側にとっても,誤解を招く原因になると思っています。
 また,この第三者保証をつけるということは,開示側にとって,自分たちのやっている学校法人運営をいかに上手に説明するかという,説明責任をうまく果たすための努力を促すことになる。これは,ひいては,やはり次の,例えば学部・学科の増設にもつながってくるガバナンスの強化につながっていくのだと思います。したがいまして,この透明性の確保という言葉でくくりますけれども,設置面においては,この論点にありますようなルール,マニュアル化の徹底,一定の伸び代を持った徹底をお願いしたいと思いますし,設置後については,学部・学科の増設を含む設置認可後の学校法人の運営の透明性確保,また,透明性の確保においては,情報公開と,その情報公開に対する担保力の強化,これをぜひ検討していただければと思っております。
 以上です。
【浦野座長】 それでは,寺島委員,お願いします。
【寺島委員】 これまでの論点整理については,大きな流れとしてはいいかと思いますが,資料5の3ページに,大学を設置するまでの流れという図解したものが書かれてあります。与えられた情報をベースに,設置基準にのっとって,個別に下から申請されてくるものをチェックし,申請を認可していくシステムとしては,今までのやり方,あるいは,出てきた問題をもう一回吸収して,このシステムの中でやっていく方向感で,そんなに問題はないのだろうと思います。
 ただ,私が気になるのは,文部科学省と書いているほうの,まさにここでの戦略的な視点ということですけれども,資料3の論点整理の2ページに,日本の経済・産業・社会構造の変化を踏まえて,大学と社会のリンケージに対する解析・分析が,この判断のベースに必要になってくるということに関わるということです。
 途方もなく強烈な数字が一つありまして,おととしの日本の大学院を卒業したという博士課程・修士課程を終えて大学院を卒業した人というのは,9万7,000人いるんですね。このうち,無業者というのが2万4,000人いるんですね。3万人近くが,非常勤に近いような,非常に不安定な状況で就業しているということです。
 それはなぜだというと,例えば,現実にこういうミスマッチが起こっているなと現場で思うのですけれども,今でも毎年,原子力工学科という名前のもとに,これは学部の話ですけれども,卒業してくる人が700人います。しかし,原子力工学に700人の新卒者を必要とするような環境が今あるのかといったら,もう常識的に考えても,よほど分野を変えていかなければジョブはないだろうなという気がします。
 それから、日本は高度成長期に,ほとんどの大学の工学部が土木工学科なんていうのをつくって,土木工学の卒業生は続々とところてんのように出てくるけれども,今や土木工学でもって飯が食えるなんていう人は非常に限られているということですね。
 そういう中で,何が言いたいかというと,産業の現場にあって,今,アルジェリアの問題が起こっていますけれども,実際にどういう人材が本当に欠けているのだろうかということですね。これから高等教育を卒業したどういう人材をつくっていくべきかというときに,例えば,決定的に日本の人材の中で欠けていて,どうしても日本人は使えないという分野が,国際プロジェクトにおけるエンジニアなんですね。要するに,プロジェクトエンジニアスペシャリストというのが日本では育たない。どうしてなのだろうかと。多分,大学の体制等にも問題があるのだろうと思います。そのプロセスの中で,国際社会で,わかりやすく言うと,多国籍軍を率いてプロジェクトマネジメントができるような人材になっていくような人はほとんど育たない。
 そうなってくると,申し上げたいのは,設置を申請してくる人たちは,時代のニーズを反映して,こういう学部が必要なんだ,学科が必要なんだという思いで,どんどん上げてくるわけですけれども,大事なのは,それを基準に照らして問題ないから,あるいは,手続き上問題ないからという形での認可だけではなくて,例えばのイメージで言うと,九州なら九州全域の今後の産業構造だとか方向感の中で,九州にもいろいろな大学がありますけれども,その中でどういう学部にどれだけの人間がいて,この先,こういう変革のプロセスの中で,こういう人材が必要になってくるというような視点です。文部科学省がそれを全部準備すべきだとは思いませんけれども,そういう戦略的な視点を相当充実させたものにしていかないと,上がってくる申請に対して,基準を満たしているということと,与えられた我々だけの判断の中で,これは多分リーズナブルだろうというあたりで認可することになる。そこが難しいのだと思います。
 したがって,それこそ各省庁を越えて,日本の産業構造とか,エネルギー戦略の方向感の中で,例えば,どういう人材を養成する学部なりが必要になってくるのか。今,常識的には看護だとか介護だとかというところに方向感がとられやすいというのは,わからなくもないですね。前回,1回目のときにも申し上げましたが,やはり競争至上主義徹底という大きな90年代の流れの中で,例えば,法科大学院をつくってみたり,MBAコースをつくってみたりすることが高等教育の改革なんだと思った時代がありますけれども,やはり我々は,そういうものの教訓も踏まえる必要がある。法科大学院をつくってみたけれども,実際問題として,その分野は相当に混乱が起こっていることも間違いないですね。文科省の側で,そういう問題意識を,どういう強い意識を持って戦略的な設計図を書くかが,この手続き論を越えたところで重要になってくるのではないか。私としては,そこにやはり戦略的なタスクフォースなり,省庁を越えた,どういう高等教育人材というものを必要とするのかという図柄が必要な段階に入ってきているなという気がします。
【浦野座長】 それでは,濵田委員,お願いいたします。
【濵田委員】 ありがとうございます。
 私も今までの議論をお伺いし,それから、この論点整理,資料4も拝見して,随分煮詰めてくださったと思います。この方向自体,私も賛成したいと思っておりますが,そこからプラスのところで,幾つか気になるところもあります。それは,今寺島委員がおっしゃったこととも重なりますが,こうやって基準を精緻化していくということ,それをやればやるほど,本来の大学教育の私たちが目指しているもの,そういう姿と離れてくるのではないかなという思いもないわけではありません。そこを補うものが,今寺島委員がおっしゃった,戦略的な視点で人材育成をやっていくということだと思いますし,それから、もう一つは,これは大きな話ではありますけれども,やはり教育という視点をどこまで,こうした設置認可というものを考えていくときに持ち込むかということもあるのかなという気がします。
 つまり,例えば,ここの資料でも,リスクシナリオを確認するとか,あるいは,大学の閉鎖等の場合の保護,それから、退出の制度の検討,こういったことは確かにそうなのですが,これは大学の経営として見れば当然の要望ですが,一方で,これは学生の立場から見たときに,こういう言葉はどう映るのだろうかというふうに考えますね。教育の現場でこういう言葉が飛び交う事態というのは,これは日本の学校教育の在り方として,決していいこととは思えない。事実として,こういう退出等を行うのは,あるいは競争があるというのは,これはもうしょうがないことですが,しかし,この言葉だけで片づけられるのかなというのが,やはり教育の現場というのを考えたときに残る思いです。
 そういう意味では,具体的に何か名案があるというわけではないのですが,やはりもともとの教育というのは,松下村塾ではありませんけれども,金がなくてもとにかく教えたいことを教えるんだという,そういう理想というもの,これがやはり必要だと思いますし,そういう意味では,一つは,ここでも提案されているように,理事長・学長予定者に面接をされるというのはとてもいいアイデアだと思います。と同時に,やはり大学の教育,それから、建学の精神という言葉がありますが,そういった教育にかける思いというものが,しっかり大学の設置の際に確認ができる,あるいは,それが大学を継続していくときに,常にそういったものが,一般的な経営情報に加えて,しっかり世の中にメッセージとして出していける,やはりそういうことが教育の本質論からすれば大切なのではないかなという思いがどうも抜けないんですね。
 ですから,ある大学が危機に陥ったときなど,確かに,競争だから退出というのもあるのですが,そういうときは,場合によっては,周りの大学が一緒に支えるとか,地域が一緒に支えるとか,そういった,単に経営的な観点だけではない,社会全体で一つの大学をつくった以上は支えていくんだという,そういう発想も取り入れられないものかなという思いは持っております。
 無い物ねだり風にはなりましたが,やはり教育というものの原点というものを,あまり基準論ばかりやっていると見失いがちですので,そういうところも改めてということで,発言させていただきました。
【浦野座長】 ありがとうございました。
 各委員のそれぞれのお立場から問題提起も新たにしていただいたところもございまして,今回のこの設置認可制度という枠組みを越えた御意見もございました。そういった御意見も参考にさせていただきながら,この資料4については再度まとめていきたいと思っておりますが。
 私も一委員として意見を言わせていただきますと,今回のこの件というのは,冒頭にも大臣が触れられましたように,質も量もというところは全く妨げるわけではなくて,むしろその入り口を絞るのではなくて,質を伴った量的拡大といったことをいかに達成していくかといったところが,もともとの狙いだったと思います。
 それと,もう一つは,質といったときに,この認可制度そのものが大学の質向上のグランドデザインの中の一環なんだ,一つなんだというところの意識も非常に大事だと思います。今,寺島委員,あるいは濵田委員が触れられたようなことでいけば,大学全体をあらゆる側面でひとくくりにして議論するということは,やはりもう難しいと思います。大学の設置という法律そのものは一つでいいのかもしれませんけれども,いろいろな諸施策を考えていくときに,どうしても機能分化という部分は避けて通れない。大学側は,もちろん研究型の大学もいるでしょうし,教育に特化した大学もいるし,あるいは,本当に専門的な職業養成という立場の大学もそれぞれいると思います。そういった意味で,どうもひとくくりにして大学の設置認可制度ということ自体が無理になってきているのかもしれないなといったような印象も私は持ちました。
 そうは言いながら,今回のこの見直しについての主な論点というのは,資料4でほぼ整理できたということで,皆様方も,寺島委員から,もう少しこれにマクロの視点で,国家戦略的な視点を入れることもという御意見はございましたけれども,基本的に資料4で間違いという御意見はなかったと思います。
 そこで,今後の取扱いでございますけれども,この検討委員会,できるだけ早く結論を出してということもございました。それで,この資料4をベースにしながら,一つ目は,今の体制の中で早期の実施ができる部分と,それから二つ目は,中教審等で具体的に検討した上で,法的な,あるいは省令等の改正が要るものもあるのだと。また,大学質向上の全体の中の一部分というような記載もございますので,この資料4をトレースしながら,皆様方の御了解を得られましたら,座長である私の責任において修正を加えた上で,本検討会としての取りまとめとして,後日,私の方から下村大臣に御提出させていただくということでいきたいと思います。御了解いただけますでしょうか。
(一同了承)
【浦野座長】 それでは,御了解いただいたということでございますので,そのようにさせていただければと思います。
 委員の皆様方には,大変御多忙であるにも関わらず,これまで4回の検討会に非常に建設的な御提言をいただきまして,まことにありがとうございました。
 文部科学省におかれましても,この検討会の議論の成果を,ぜひとも今後の施策に生かしていただければと思う次第でございます。
 それでは,最後に,事務局から御発言をいただければと思います。
【板東高等教育局長】 それでは,担当しております事務局から,一言お礼を申し上げさせていただきたいと思います。
 この検討会は,たびたびお話がございましたように,3大学の設置認可の問題をめぐりまして,いろいろ御議論がある中で,やはり設置認可自体,あるいは,大学の質の担保ということ自体についても,様々に検討すべき点もあるのではないかという,これは社会的な御議論も踏まえて,そういった問題提起がございまして,早速,その設置認可の在り方自体について,きちんと検討すべきところを検討していこうということで,昨年の11月以来御議論いただいたものでございます。
 大変熱心な御議論をいただきまして,今までの4回の中で,今日も大分論点としては集約いただきましたように,本当に必要なポイントにつきましての,非常にバランスのとれた御意見をいただいたのではないかと思っております。
 あとは,御指摘をいただきましたことを,あるいは,さらに検討すべき点も踏まえまして,早急にアクションを起こしていくということだと思っておりますので,また引き続きまして御指導いただきながら,この実現に向けて,事務局としても努力をさせていただきたいと思います。
 本日はどうもありがとうございました。また,座長,それから副座長をはじめといたしまして,本当に皆様には大変お忙しいところをお集まりいただきまして,御意見をいただきましたことを,本当に感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
【浦野座長】 それでは,これで本検討会を終了いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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