大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会(第3回) 議事録

1.日時

平成24年12月21日(金曜日)

2.場所

文部科学省旧文部省庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 大学設置認可の在り方の見直しについて

4.出席者

委員

(座長)浦野光人座長
(副座長)黒田壽二副座長
(委員)相川順子、及川良一、尾﨑正直、北山禎介、佐藤東洋士、佐野慶子、清家篤、濱田純一、林文子の各委員

文部科学省

田中文部科学大臣、笠文部科学副大臣、森口事務次官、山中文部科学審議官、前川官房長、板東高等教育局長、小松私学部長、浅田高等教育企画課長、岡本大学設置室長

5.議事録

【浦野座長】 それでは,ただいまから大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会,第3回目を始めさせていただきます。座長の浦野でございます。よろしくお願いいたします。
 委員の皆様には,大変お忙しい中,御出席いただきましてありがとうございます。また,今回も,田中大臣,笠副大臣が御出席くださっております。心より御礼申し上げます。
 本日は13名の委員のうち11名の方々に御出席をいただいております。今村委員と寺島委員は御欠席でございます。また,及川委員は15時半頃まで御出席いただける予定,そして濱田委員と林文子委員は遅れてまいりまして,濱田委員が15時頃から,林委員は15時15分頃からの御出席の予定でございます。
 それでは初めに,今日初めて御出席の委員を御紹介いたします。高知県知事の尾﨑委員でございます。
【尾﨑委員】 高知県知事の尾﨑正直でございます。この検討会の第1回目,第2回目は,公務の都合により出席できませんでした。大変失礼いたしました。
 この大学の設置に関する検討会は,非常に重要なテーマを扱っておられると考えております。浅学非才の身でございますけれども,少しでも御貢献できればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【浦野座長】 それでは,初めに,田中眞紀子文部科学大臣から御挨拶をいただきます。
【田中大臣】 浦野座長,それから黒田副座長,お忙しいところ,また委員の皆様も暮れのお忙しい時期に大勢お集まりくださいまして本当にありがとうございます。心から御礼申し上げます。
 また,傍聴人の皆様も,関心を持ち続けていただいて,本当にありがたいことだと思います。直近の――ある理由でちょっと声がかすれておりまして、本来はもう少し美声なのでございますが──かなり不祥事が続いておりまして,きょうも北大の公的研究費の不正使用や,その前も,千葉県の私学高校の問題,群馬の堀越学園、都専各の問題,それからiPS細胞の研究に関することでありますとか,本当に,大学,高校での不祥事は枚挙にいとまがありません。こうした中で検討会を開いていただきながら,将来につなげて,それぞれ一人一人が1回しかない人生を本当に有意義に過ごせるように,それが一つ。もう一つは,やはり日本の教育がどれだけ充実したものであって,知識,人間関係,その他を授ける場であるか。国際的な視野に立って「なるほどね」と言われるように。日本の教育を受けた人たちはそれぞれが生きがいを持って充実した人生を過ごし,なおかつ,世界に対して立派なメッセージを発信して牽引していく国民たちであると思ってもらえるようにするために,これは長いスパンで見ていただければと思っておりますが,より一層充実した御意見,建設的な御意見を期待しておりますので,よろしく御指導くださいませ。ありがとうございます。
【浦野座長】 田中大臣,ありがとうございました。
【浦野座長】 本日は第3回目となります。これまで2回の会議での議論を踏まえて,主な論点を整理しつつ,さらに議論を深めてまいりたいと考えております。
 本日は,前回の皆様方の御要望等を踏まえて,事務局の方で配付資料をいろいろと工夫をしていただきました。したがいまして,本日の配付資料の中で,特に詳しく事務局から説明していただくものも含めて,ただいまから20分ほどの時間で,事務局から資料の説明をしてまいります。
【浅田高等教育企画課長】  配付資料について御説明させていただきます。
 まず資料1は,前回,前々回もお配りした,本検討会の設置要綱と,委員の皆様の名簿です。
 資料2も,前回と同じものです。本検討会の主な論点としては,第1に,「大学の質の向上のためのトータルシステムの必要性」,第2に,「大学等の設置認可に関する論点」,第3に,「設置認可以外の質保証に関する論点」などに整理できるかと考えております。
 資料3は,前回までの検討会でいただいた御意見を,各論点別に整理したものです。前回お出しした資料に,第2回検討会での御意見を追記する形で作成しています。これまでの議論を振り返る意味で,主な内容を御紹介させていただきます。
 まず「1.大学の質の向上のためのトータルシステムの必要性」に関しては,既に共通の認識となっていると考えます。
 「2.大学等の設置認可に関する論点」のうち,まず「審査基準の在り方」に関しては,「基本的な考え方」として,設置段階での規制は必要である,基本的なところはきちんと審査する必要があると同時に,個性的な大学,チャレンジングな大学,小さくてもいい教育をしている大学など,多様な大学が存在できるよう,画一的にならない配慮が必要との御意見がありました。また,規制強化ではなく,審査の運用上でどこまでチェックできるかが重要との御指摘もありました。
 「社会ニーズへの対応の観点」からは,大学に対する地域の多様な期待やニーズを,設置認可の際の視点として取り入れることなど,地域との関係を重視する御意見を複数の委員からいただいています。また,社会構造の変化に伴う人材需要との関係についての御指摘もありました。これについては,後ほど参考となる資料を御説明させていただきます。
 「学生確保,経営の見通しの観点」からは,学校法人の経営で一番重要なのは安定性と継続性である,学生募集がうまくいかなかった場合のリスクシナリオを考えておく必要があるなどの御意見がありました。また,寄附金の原資について,どこまでさかのぼって見ることができるかといった課題の御指摘もありました。
 「教員,校地等についての観点」からは,教員の資格審査,学部の校地基準についての御意見をいただきました。
 「管理運営,情報公開等についての観点」からは,特に教育・経営情報の積極的な公開に関する御意見を多くいただいています。大学のガバナンスの在り方に関する御指摘もありました。平成16年の私立学校法改正の精神を徹底すること,との御意見に関しては,後ほど法改正の内容を御紹介させていただきます。
 「基準の運用等」に関しては,現行基準の運用の厳格化がすぐにできることではないかという御意見のほかに,審査に当たって不明確な規定や抽象的な規定の運用を明確化すべきものがあるのではないかとの御指摘がありましたので,これについても,後ほど具体的な例を御紹介させていただきます。
 「審査体制の在り方」に関しては,大学教育に深い見識を持つ専門家を中心に審査をする必要があるとの御意見や,特に地域の状況を把握している人が審査に参画することの必要性,また,委員の構成などについての御意見がありました。
 「審査プロセス,スケジュールの在り方」に関しては,現在も審査の過程で何重にもステップを踏んで改善を求めるなど,きちんとした大学として出発させられるよう,かなりの努力がなされているという現状の御説明をいただきました。
プロセスについては,地元自治体との話し合いやヒアリング,計画全体の枠組みを見ることなど,具体的な御提案がありました。スケジュールについては,今よりももう少し慎重に時間をかけて審査を行うほうがよいのではないかという御意見を複数の方からいただいています。
 「3.設置認可以外の質保証に関する論点」のうち,「設置後の評価を通じての質保証」に関しては,既存の大学の質の向上が重要,設置後も年次計画終了まで毎年チェックをし,7年に1度の認証評価へという流れをつくること,情報公開が重要といった御意見に加え,教育はトライ・アンド・エラーを繰り返しながら行うものなので,当初の計画の履行だけにこだわるべきでないといった御指摘もありました。
 「早期の経営判断とそれに基づく適切な対応」に関しては,仮に大学が閉鎖等をすることになった場合の学生の学習機会の確保,段階的にソフトランディングできるような仕組みの必要性,危うい傾向を早目に見て取れるようなメルクマールなどについて御意見をいただいています。
 このほか,そもそもの「大学の在り方」,今日の大学に期待される多様な役割や機能,我が国の大学の大きな課題の一つである「社会人の受け入れ」,特に学力の観点から,「初等中等教育との関係」などについても,幅広い御意見をいただいているところです。
 次の資料4も,前回,前々回と同じものです。設置認可制度の概要をまとめた基本的な資料として再度お配りさせていただきました。説明は省略させていただきます。
 資料5は,前回の,審査に当たって不明確な規定や抽象的な規定の運用を明確化すべきものがあるのではないかという御指摘を踏まえて作成したものです。具体の例で御説明させていただきます。
 1ページ目は専任教員についての規定です。
 現在の大学設置基準では,「教員は一の大学に限り専任教員となる」「専任教員は専らその大学における教育研究に従事する」とされています。つまり,二つ以上の大学の専任教員を兼ねることはできません。また,「教育研究上,特に必要があり,当該大学における教育研究の遂行に支障がないと認められる場合」は,ほかの業務に従事する者も専任教員とすることができるという例外規定もあります。
 しかし,具体的にどういう場合がこの専任教員に該当するのかしないのか,どういう場合がこの例外規定の適用対象となるかについての詳細な基準が設けられていないため,実際の審査に当たっては判断が難しい場合があります。
 御参考までに,平成15年以前は,大学設置分科会長決定で,例えば「会社の役員及び職員」,「弁護士,公認会計士,税理士,医師等」,「その大学から遠隔の地に居住しているため授業や研究に支障があると認められる者」などは,専任教員数にカウントしないという内規が定められていましたが,いわゆる準則化の際に廃止され,現在はこういった定めはありません。
 2ページ目は,複数のキャンパスを置く場合の規定です。この場合,それぞれのキャンパスごとに必要な教員,運動場,施設・設備を置くのが原則ですが,具体的な面積等の基準はありません。また,運動場を校舎の敷地から離れた場所に設ける例外規定がありますが,どういう場所であればそれが認められる「適当な位置」に当たるのかという基準もありません。
 これについても,平成15年以前は,例えば校舎の敷地と運動場が離れている場合,「その距離は通常の方法で片道1時間以内にあり,かつ,校舎の敷地に基準面積の2分の1以上がなければならない」などの内規がありましたが,これも廃止されています。
 3ページは,校舎等の施設をほかの学校等と共用することについてです。
 現在の規定では,大学は専用の学長室,事務室,研究室,教室,図書館,自習室などを備えた校舎を有することを原則としつつ,特段の事情があり,教育研究に支障がない場合はこの限りでないという例外規定が設けられています。しかし,例えばどういう場合にこの例外が認められるのかといった具体的な基準はありません。
 これも,平成15年以前は,大学と短期大学とが同じ敷地内にある場合の施設の共用は,教育に支障のない範囲で認めることができるが,大学・短大と,それ以外の高校以下の学校との施設の共用は原則として認めないという内規がありました。
 4ページは,4年制の学部を置かずに大学院だけを設置する,いわゆる独立大学院についてです。
 現行の規定上,教育研究上,特別な必要がある場合に,大学院大学を置くことができるとされていますが,この「特別な必要」についての具体的な基準は定められていません。また,独立大学院の施設等については,校舎の規模などの具体的な判断基準が設けられていないという課題もございます。
 平成15年以前は,大学院大学の校地・校舎の面積は,収容定員に応じ大学設置基準に定める学部等に係る基準に準じて審査するなどの内規がありましたが,これも現在は廃止をされております。
 最後に5ページは,文部科学省告示である「学校法人の寄附行為及び寄附行為の変更の認可に関する審査基準」の内容からの例です。まず,新たに大学を開設する場合,経営の安定性を担保するために,開設年度1年分の経常経費相当額を認可申請の時点で自己資金として持っていることが必要とされています。校地及び校舎が借用の場合は,さらに完成年度まで,つまり4年制大学なら4年分の資金の保有を求めています。しかし,この校地・校舎の一部だけが借用である場合のような,借用の程度に応じての規定は設けられていないという問題があります。
 次に,学校法人の役員である理事・監事の資質についてです。学校法人の管理運営に必要な知識,経験を有し,その職責を十分に果たすことができると認められるなどの規定がありますが,この「職責を十分に果たすことができる」かどうかについての判断方法などは示されていません。
 以上,幾つかの例を挙げさせていただきました。実際の審査に当たって,こういった基準の適用について課題が生じる場合があるということです。これについては,実際に設置審査に当たった御経験のある委員の方々からもお話をいただければと思っております。
 資料6は,設置認可後の大学の質保証の仕組みについてまとめたものです。
 教学・経営面では,大学の開設から完成年度までの間――この「完成年度」というのは全学年がそろうまで,4年制大学であれば4年間ということですが,その間,計画どおりに施設設備の整備や教員の確保,授業科目の開設などが行われているか,設置認可時に大学に求めた留意事項がきちんと守られているかなどを見るために,設置計画履行状況等調査,通称「アフターケア」と呼ばれているものを実施しています。これは文部科学省令と文部科学省告示に基づき,大学設置分科会の設置計画履行状況等調査委員会と学校法人分科会が実施しているものです。必要に応じて指導・助言を行い,改善すべき点があれば大学側に通知するとともに,文部科学省のホームページ等で公表することとしています。
 完成年度の後も,学校教育法の規定により,一つには,全ての大学は当該大学の教育研究,組織・運営,施設・設備の状況について,自己点検評価を行い,その結果を公表すること,二つ目に,それに加え,7年以内毎に文部科学大臣の認証を受けた第三者評価機関――これは「認証評価機関」と呼ばれていますが,その評価機関の評価を受けることが全ての大学に義務づけられています。これは平成16年度から新たに設けられた制度です。認証評価機関は,評価結果を大学に通知するとともに,公表し,また文部科学大臣にも報告しなければならないとされています。
 資料の下の部分は,経営上の課題を抱える学校法人に対する,早期の経営判断を促進するシステムについてです。文部科学省としても,計算書類,経営判断指標などの活用により,学校法人の経営状況の変化を早期に把握するよう努めており,特に平成24年度,今年度からは,より精緻化した経営判断指標を用いて分析を行っています。
 また,毎年度,一定数の学校法人を対象に,学校法人運営調査を実施しています。平成23年度からは財務・経営状況の調査に加えて,財務・経営の変化が教学にマイナスの影響を及ぼしていないかについても調査するなど,調査内容の充実を図っています。実地調査後には,必要に応じ,経営改善計画の作成を促すなどのフォローアップも行っています。
 これらの対応を通じて,学校法人の自主的な早期の経営判断を促しているところです。
資料の2ページから5ページは,これらの各制度に関する資料ですが,要点は今御説明したとおりですので,省略させていただきます。
 6ページを御覧ください。これは,前回御意見がございました,学校法人の財産処分についてまとめたものです。
 大学の設置から完成年度までのアフターケア期間は,施設整備の計画を変更する場合は,あらかじめ文部科学省に事前協議を行うこととされています。一方,学校法人における重要な財産処分については,私立学校法の規定により,理事会で議決するに当たって,理事長があらかじめ評議員会の意見を聞かなければならないという手続が定められています。
 なお,学校法人の設置する大学の校地・校舎に変更があった場合は,文部科学大臣に届け出ることとされております。
 資料7は,平成16年の私立学校法改正の概要です。
 このときの改正の主な狙いは,学校法人が様々な課題に主体的かつ機動的に対応していけるよう,体制の強化を行うことでした。
 具体的には,学校法人の管理運営機能を強化するため,「学校法人の業務に関する決定機関として理事会を置く」ということを初めて定め,また,代表権は原則として理事長が有すること,理事のうち少なくとも1名は外部の人でなければならないことなどを規定しました。また,学校法人の業務や財産の状況を監査する監事の職務に監査報告書の作成,理事会及び評議員会への提出を加え,理事と同様に必ず外部の人を1名以上選任することとしました。
 さらに,財産目録等の備え付け及び閲覧に関する規定を新設し,財産目録,貸借対照表,収支計算書及び事業報告書の作成と,これらの書類及び監査報告書の各事務所への備え置き,在学者その他の利害関係人から請求があった場合に閲覧に供しなければならないことを規定しました。
 その後,資料の2ページにありますように,この改正の趣旨の周知徹底,財務情報の公開状況についての継続的な調査と結果の公表などを通じ,各学校法人の取組を促しているところです。財務情報をホームページで公開している学校法人の割合は,平成19年度は65%でしたが,23年度には95%へと大きく改善が進んでいます。
 3ページ目以下は調査結果の詳細ですので省略させていただきます。
 最後に,資料8は,独立行政法人労働政策研究・研修機構が去年3月に出した「労働力需給の推計」から,産業別就業者数の将来推計の数値を使わせていただき,これに学校基本調査から各業種の就業者に占める高等教育修了者の割合を推算して横軸にとってみたものです。グラフの右側ほど,高等教育修了者の割合が多い傾向のある業種ということになります。
 御覧いただくとおり,高等教育修了者の割合が比較的高い業種の中では,「医療・福祉」や「情報通信業」で,今後さらに需要が高まることが見込まれるということです。
 2枚目は,経済産業省の産業構造審議会新産業構造部会が今年の6月に取りまとめた「経済社会ビジョン」の報告書より,2010年から20年にかけての産業別の就業者数の変化の予測に関するものを,御参考として抜粋したものです。
 下の図にありますが,生産年齢人口の減少が予測される中,右側のグラフにあるように,製造業をはじめ多くの産業で就業者数の減少が見込まれる一方で,医療・保健・社会保障・介護,対事業所サービス――これは具体的には専門サービス,人材育成業,新しいエネルギー産業などです。あるいはヘルスケアやクリエーティブ産業などの対個人サービス,これらについては人材需要が増加するとの試算もあります。
 以上が,今回の配付資料についての説明です。
 このほか,委員の皆様の机上に,「前回までの配付資料集」という緑色のファイルを置かせていただいております。適宜御参照ください。
 資料の説明は以上です。
【浦野座長】  ありがとうございました。
 ただいまの説明について,この場で聞いておきたいことがあれば伺いたいと思いますが,いかがでございましょう。ただいまの資料についての質問ということで。
 とりあえずはよろしいでしょうか。もしあれば,また議論の中でもぜひお願いをいたします。
 それで,本日でございますが,前回,主な論点三つのうち,やはり大学等の設置認可に関する論点ということで中心に議論をしてまいりました。今回も,まずこの設置認可の在り方を中心に議論をしていただきたいと考えておりますが,冒頭で申しましたように,本日,尾﨑委員が初めて御出席をされております。前回,尾﨑委員から出されたペーパーについては,事務局の方から簡単に御紹介をしていただいたのですが,本日,まず最初に,尾﨑委員から,特に設置認可のことにかかわらず,全般的なことで御意見を伺いたいと思いますので,御自由に御発言をどうぞ。
【尾﨑委員】 こういう機会をいただきましてありがとうございます。私は高知県の知事に就任させていただいてから,今ちょうど5年目で2期目の1年目が回ったところでございますが,この間,本県におきましても,大学の問題は大きな論点として,いろいろな取組を進めてまいりました。
 高知県には,今,国立高知大学があります。そして,県立高知女子大という大学,私立で公設民営でありました高知工科大学という大学,それから高知短期大学がございました。この大学の見直しについて,この5年間いろいろ取組をしてきたわけでありますが,論点としては二つありました。
 一つは,高知県も人口減少が,全国でも真っ先に進んでいる県であります。平成2年から人口の自然減状態になりましたから,そういう意味では,今,日本全体のこれから行く先の先端を行っている県といいますか,今後行く先の状況をまさに今,体験している県ともいえるような状況です。この人口減の問題をどうするかということが一つ。そしてもう一つが,やはり,とは言いながらも,だからこそ必要なニーズを本当に充足できているのだろうかと。そのニーズの充足に取り組まなければならないということ。この2点について取組を進めてきたわけであります。
 特に,まず人口減少の問題について言えば,先ほど申し上げましたように県立高知女子大という女子大がありました。しかしながら,今の時代,なかなか女子大だけではやっていけないのではないかということで,共学化することとし,名称も高知県立大学に改めることといたしました。さらに経営上も,この高知県立大学と高知工科大学を一法人化していけないだろうか,より経営の合理化を全般として図っていくことはできないだろうかということを,今まさに第2段階の取組として進めております。
 また,高知短期大学がございますが,この短期大学につきましても発展的解消をして,むしろ夜間の4年制の学部で対応していくほうがニーズにかなうのではないかとか,そういう議論もしてきているわけであります。これが一つ,合理化の方向です。
 ただ,他方で,こういう田舎であるからこそ,大学に対する期待感が大きい。その期待感に対応するための追加を行っていくような改革というのもあわせて行ってまいりました。
 まず第1に,県内の若者のニーズに必ずしも県内にある大学は応え切れていないということが多々あります。我々は平成20年に,4年制大学に進学したいと考えている県内の高校生で,進学校や一定県外の大学にも進学するような学校の皆さん2,500人にアンケートを行ったのですが,そのうち県外に行きたいと答えている1,700人の約6割が県内には行きたい分野がない,県内の大学に魅力を感じない,行きたい大学が県外にあると答えています。後者の方はまだいいのかもしれませんが,最初の,県内に行きたい分野がない,学部がないといったことは非常に悩ましいことであります。
 若いころ県外に出ていろいろ見聞を広めていくということもまた必要かもしれませんが,ただ,他方で高知県は,あまりうれしい話ではありませんが,県民所得でも全国最下位レベルの県であります。そういう県において,県外に子供を出すということがどれだけ経済的負担が大きいのかということを考えたとき,やはり選択肢として県内に子供たちが行きたい分野があるということは非常に重要なことではないかと考えています。
 特に足りないのが,実はいわゆる文系と言われる分野でして,社会科学系の分野,経済,経営,それから法学部系統の大学が高知県内にはないのです。また,非常に大学の定員も少ない状況です。
 社会科学系の学部をつくったらどう思いますかという質問に対して,約500名のお子さんたちが,県内にあるのだったら行きたい,残りたいというふうにお答えになりました。
 若者の県外流出防止,また経済的に苦しい御家庭の皆様方のニーズを充足するという観点からも,ぜひ,こういう学部が必要ではないかということで,先ほどのような合理化路線を図りながらも,他方,この社会科学系学部の設置は進めることとしたところであります。
 あわせまして,社会人の皆様方にとっての教育機会,学習機会をもっと多く持ちたいというのも,県内においては大きなニーズとしてあると考えております。例えば東京ですと,社会人の皆さんが学ぶ機会は多様にたくさんあるわけでございますが,地方の都市でありますと,そういう機会はあまりありません。むしろ公的にこういう機会を提供していくことへのニーズというのは非常に大きなものがあると思っております。
 そういうことでありますので,それぞれの大学におきまして,今後,社会人教育,生涯学習にとどまらない様々な機能というものを強化しようということで,今,議論しています。実際,まだ新しい社会科学系学部は立ち上がっておりませんので,その前に我々県として,別途講座を設けて,その前哨戦みたいなものを提供させていただいているということです。
 そしてもう一つあります。田舎には残念ながら大企業がないといいますか,資本的蓄積が非常に全般としては小そうございます。田舎であればこそ,足元の人口が減っているので外に打って出て,外でお金を稼いでくる取組をしないといけない。我々はそう思っていますけれども,残念ながら,そういう射程の長い仕事を達成し得るだけの十分な研究開発を行えるような,そういう資本的な蓄積がない。そういうところがあります。
 であれば,そういう射程の長いような研究をしてくれるところとして特に期待感が高まってくるのは,県内においては大学だということに,やはりなってくるわけであります。今,大学の皆さんには,できるだけ高知県の産業振興につながるような,さらには社会福祉のいろいろな諸課題の現実的な解決につながるような研究というのを,お願いをしているところでございます。かつ,それを大学の中にとどまらせず,産学官の連携会議などもつくり,具体的なプロジェクトも数件ずつ,毎年3件ずつぐらいですが新たに設定して,産学官連携で,大学の研究機能を全体として産業振興につなげるような取組を進めようとしているところでございます。産学官連携の3本の矢でもって,他の県であれば大企業が成し遂げてきているような仕事をやっていこうじゃないかと,そういう取組をしているところです。
 そういうことでございまして,以上は高知の例でございますが,地域において若い人たちのニーズを満たす,さらに若い人たちの県外流出を防ぐという点,さらには社会人の皆さんに対する教育機能を発揮しようという点,さらに,産学官連携によってより長期スパンの仕事を地方でもできるようにしていこうという点。こういう点において,地方においては大学への期待感が高いところがあると思っているところです。
 恐らく地方の大学は,そういうニーズに合わせて変わっていかなければならないと思っているところでして,そういう新しい大学像に対する期待感が強うございます。
 ぜひ,設置認可の基準などについていろいろ検討されるに当たりましては,そういう地方の期待感といいますか,そういうものに御配慮を賜れれば幸いであります。
 以上でございます。
【浦野座長】 ありがとうございました。
 ただいま,本当に地域にとって大学がいかに必要かということを,大変,力説をしていただきました。
 この件に関しましては,林委員と相川委員からも同様の御意見がございまして,設置認可の過程において,地域の意見をいかに入れていくかといったことも,この中では検討してまいりたいと思っております。
 それでは,先ほど申し上げましたように,やはり大学等の設置認可に関する部分に,まずは焦点を絞って御議論をしていただきたいと思います。
 前回,審査の基準とか審査の体制,あるいはプロセス,スケジュール等々をめぐって様々な御意見があったわけですが,中でも審査基準について,極めてファジーな部分といいますか,あるいは緩過ぎる規定といいますか,そういった御意見が出ていて,それに対して本日,事務局の方から資料も出していただきましたので,どうでしょうか,そのあたりからちょっと御議論を始めていただければなと思います。どなたからでも結構です。
 では皮切りに,黒田委員から少しいかがでしょうか。
【黒田副座長】 御指名ですので,すみません。前回も,設置認可の仕組みについて,ちょっと時間的に審査する人たちが窮屈ではないかなという感じのことを申し上げたのですが,新しく大学をつくるときに一番重要なことは,その地域を含めた設置構想といいますか,その構想自身がちゃんと機能しているかどうか,その辺のことをチェックする必要があると思うのです。これは,昔はしっかり文部科学省としてもやってきたことなのです。その部分を除いて,いきなり教員審査とかカリキュラム審査というディティールの方に入ってしまうという,その前に,やはりその大学の在り方がそれでいいのかということ,構想審査ですね,そういうものを頭につけていただくと,そんなに時間はかからないと思うのですが,非常にいいのではないかと思います。
 今現在は7か月で認可ということになっていますが,7か月で認可することも大事なのですが,認可された後の学生募集の在り方を考えますと,今,早いもので10月認可となっていますから,これはもう1か月ぐらい繰り上げてやるとか。それから申請の時期をもう少し早くにしていただく。前年の夏ぐらいには申請できるぐらいの体制をとるとか,それぐらいのゆとりを持って審査をしていくということが,私はいいと思います。
 いろいろな規則が今,規制緩和で緩くなっていますが,審査するときには,この緩くなった審査の中でも,教員の審査,それから施設設備の問題,その大学の持っている構想なども一応はお聞きしながらやってきているのです。ですから,その辺を,基準を見直して強化するということも大事なのですが,まずはやれることをやっていただければいいのではないかと思っております。
 学校法人をつくる場合もやはりそうです。学校法人をつくるときの姿勢というものが,昔は理事長候補者を面接して,本当にこの人が社会的にしっかりしているのかどうかということも審査していたのですが,今はただ名前が出てきて,ということで,認可になってからしか,本当に理事長になる人の姿勢がわからない,ペーパーだけでの審査ということになっていますから,やはりそういうところもしっかり見ていただければなと思っています。
 ですから,まずは,設置のことだけを今は話しているのですが,認可するときの条件として,面接しながらものを決めていく。書類だけでということは,私はあまりよくないと。
 最近――こんなことを言っていいのか悪いのかあれですが,大学の設置屋さんがいるのです。各大学へ,こういう学部をつくるのに私が申請をしてあげますとか,この県には大学が必要ですから大学を設置するお手伝いをしますとか,そういう人がいますから,出てくる書類というのが本当に無味乾燥な内容,基準さえ適合していればいいという,そういう書類の書き方になっていますから,その辺はやはり審査のときにしっかりと見きわめるような体制をとっていくということが必要ではないかなと思っております。
 とりあえずそんなことで。
【浦野座長】 ありがとうございました。
 ただいまの御意見,大変包括的,基本的なことだと思うのですが,やはり,特に私学の場合は,建学の精神とかそういったものがはっきりあるわけですから,そういった,企業で言えば経営理念みたいなもの,そこの審査といいますか,それを委員による審査の段階でやっていっていいのではないかと。
 現状では,そういったところは今,事前相談という形で文科省の方と実態的に行われていることは存じてはいますが,今の黒田さんの御意見は,多分,そういったことも委員が加わりながらやっていけば,そうすると自然に,今の7か月ということでは済まずに,もう1年ぐらいかかるのかもしれませんが,そのことは多分,かなり大切なことなのだなというのが今の黒田さんの御意見だったと思います。
 そのほか,いかがでございましょうか。どなたからでも結構です。
【佐藤委員】 審議会の委員の構成なども含めてでよろしいでしょうか。
 林委員からもお話がございましたし,今日は尾﨑委員からも,地方のことをきちんと理解した上で設置の審査があるべきではないかというお話がありました。また,以前から,審議会の委員に地方の大学人,もしくは地方の実態をよくわかっている人に加わっていただいたらいいのではないかという声もあったと承知をしております。ただ,今の審議会の正委員をどのように構成していくかということについては,それなりに縛りがあるようなところもあると思いますが,やはり,幅広く議論をして,審査の実効性を高めるという観点からいえば,特別委員や専門委員という形で委員を加えていく,それにより十分に地方の御意見を受け入れていくことが必要ではないかと思います。
 私は個人的には,これは地方の問題だけではなくて,大都市圏でももう定員割れを起こしているところもあるという深刻な状況が見られますから,そういったことを俯瞰的に判断していく必要があると考えています。
 もう1点は,今日の資料5で,大学設置基準について,平成15年に審査基準要項の細則を廃止した部分があってということで,前回の議論にもつながっていることだと思います。細則の撤廃は大学設置分科会長の決定ということで議論ができるということのようですから,素早く対応できることではないかと思います。全てが前のように戻るというのもいかがかとは思いますが,大臣が御心配になっているようなことをある程度払拭していけるような改正は,できるのではないでしょうか。
【浦野座長】 ただいまの佐藤委員の御意見に関連して,資料4の4ページがございます。これは,今の審議会の機構図という形で,大学設置・学校法人審議会の中で,特に設置分科会の方で,下に下に委員会がおりていって,一番下の専門委員会になりますと,まさに学問別に,このことはどうなのかというところから始まるわけですが,これは,ちょっと事務局の方に改めてお伺いなのですが,先ほど来,尾﨑知事や,あるいは前回,林委員さんがおっしゃったように,地域との関連とか,あるいは地域の需要とマッチングしているのだろうかとか,そういったことはこの細かなレベルの委員会でいくとどこが担当しているのか。あるいは,私は学校法人分科会に属していて,学校法人分科会の方でもそういった質問をかなりした記憶があるのですが,その辺は現状だとどの委員会が主に中心になりますか。
【岡本大学設置室長】 お答え申し上げます。地方の需要というところに特化したわけではないのですが,学生の確保の見通しという観点でございますと,大学設置分科会の方では主に専門委員会の方で,これは大学側が示してきたデータ等をもとに,それが説明として一貫性がそれなりにあるかということを中心に審査をいたしております。
 学校法人分科会の方では,専門委員といたしましてマーケティング関係の方を現在2名委嘱しておりまして,その方々にマーケティングの観点から,大学側のそういったデータなり説明がきちんとしているかということを審査いたしまして,必要に応じて,大学側にはもっと追加の説明を求めたりというようなことを行っているところでございます。
【浦野座長】 そうしますと,先ほどの佐藤委員の御意見も踏まえて,この分科会から始まる委員会も踏まえて,そこにそういった地域の方々とか,いろいろな形で入っていただくことは十分可能だということがわかりましたので,その辺は運用上の問題かなというところも踏まえて,貴重な御意見として,この部分はしっかり捉えておきたいと思っております。
 それでは,今,佐藤委員の方から最後にちらっとありましたが,資料5の部分は,前回,北山委員を中心に質問が出たりして,そのことは現状ですとこういうことですよ,ということの御説明がございましたが,これを御覧になって,北山委員,何か感想なり御意見がございましたら。
【北山委員】 前回,非常にファジーなところについて,どういうところですかということでこの資料をつくっていただいて,わかりやすいのですが,例えば1ページ目の,平成15年以前の分と新しい分,言っていることは両方とも,詳しく言っているのかざっと言っているかの違いぐらいで,要は言っていることは,物理的・実態的に,教員になる方は時間的に十分ディボートできますよね,ということの確認だと思うのです。
 それで,先ほど別の資料で,候補になったAさん,Bさんという方が,恐らく研究であったり教育であったり,両方あるわけですが,そういう点についても今までの御経験がどうで,どういう専門知識があって云々,というところを見ておられるので,要するにほとんど専業でできているか,ということだと思うのです。
 したがって,その辺については,廃止しなくても,例えば15年以前も,弁護士であるとか作曲家であるとか書いてあるのですが,それが書いてあっても,特に廃止しなくても,それをうんとまとめて言うと上の現行規定に変わるというようなことになると思うので,今の仕組みがファジーと言えばファジーなのですが,要は時間がたっぷり使えて中身のある,質が伴う,その質のところのチェックがきちっと,先ほどの専門委員というか,そういうところでなされていると思うのです。
 一つ,ふと思ったのは,もうちょっと先のページで,5ページなどで,学校法人の役員の資質に関する基準というのがマル2にございます。それで,要は理事とか監事とかのことが書いてあって,これも,平成15年と今の規定というのは,要は,名目的な話ではなくて,きちっと中身をちゃんとできるんですよねということを確かめてください,ということを言っているわけですよね。ですから,それはそれで,今の規定も前の規定も似たようなことを言っているので,目的としてはいいと思うのですが,要は認可して,その後,いわゆる改革のPDCAがきちっと回るような形で,理事会であるとか評議員会が,目的とした機能をちゃんと発揮しているということが確認できるというのは,当然,規定ではそうなっているのですが,実態的にそうなっているかどうかということは,事後の話になると思うのです。そういった形で,新規のときにはやはり,いろいろな規定がどういう権限規定になっているかとか,そういうことをチェックされるのでしょうけれども,その後,それがワークしているかどうかという事後の方の話になるので,その辺も,入り口段階では規定の問題とか組織の在り方の問題とか権限規定とか,そういう形でのチェックなのかなと思いました。
 ちょっとまとまりませんが。すみません。
【浦野座長】 ありがとうございました。
 今の北山委員からお話がありました資料5をいろいろ見ていくと,例えば,同じ今の5ページのところで,いわゆる経常経費相当額の財源についても,借用の場合とそうではない場合とに分けてあったり,それから後ほどの資料6の方を見ていただくと,こういった財務状況の公開,あるいは,財産処分の件は先ほども説明がありましたが6ページにありますし,そういった情報の公開等については資料7の方で,現状の状況等,数字も出ておりますが,かなりしっかりした情報公開ができているところと,例えばこの資料7の6ページを見ていただくと,詳しい財務情報になってくるとどんどん数字が下がってくるといいますか,そういう公開状況になっています。
 こんなところを含めて,佐野委員,どうでしょうか。感想でも結構ですが。全般的に。
【佐野委員】 まず全般論として,私は二つのことを,この設置認可に関連して提案したいと思うのですが,まず一つは,段階的なスケジュールの透明性確保と,それと明確化です。
 今現在,冒頭,副座長からもお話がありましたように,いわゆる相談期間という中で,相談ですからマニュアル化されたものではなくて,審査機関の7か月の中で認可を受けられるように相談を事前に行っていること。この辺が,従前で言いますと,前の20か月の期間の中でされていたことなのだろうと思うのです。これが短縮されたことによって,結局,短縮では賄えないので,相談という形になっている。これはやはりルール化したほうがよろしいのではないか。そのルール化に当たっては,やはりマニュアル化できる部分についてはマニュアル化をして,作成事務の軽減を図るということ,これが大事なのではないかと思います。
 それともう一つにつきましては,やはり私学ですから寄附行為で成り立っているという原点があります。新設の場合は特に寄附財産で全てスタートする。増設の場合は学校法人の自己財産からのスタートもある。このときに,学校法人の物的財産の正確性の担保であるとか,それから実体性の担保,この辺の担保力が弱いのではないかと思っております。
 これは前回か前々回にもお話がありましたが,寄附者の財源までさかのぼろうとしてもなかなかわからない。これが架空の――架空のといいますか,虚偽の形での寄附なのか,みなしの寄附なのか,この辺の確証がとれないままに書面だけで通っている。この辺のところの担保をきちんとできるような仕組みづくりをしなければいけない。その担保をするに当たっては,やはりこの寄附財産についての,細かくなりますが財産目録が提出されるわけですから,その財産目録について作成の基準のマニュアル化ができるのであれば,できるところを全て行う。アバウトな形の記載ではなくて,きちんと設置者側が説明でき,それを第三者保証できるという形にする。この辺が大事なのではないかなと思っております。
 それから,今御質問を座長からいただきました,この辺の,特に5ページのあたりということでしょうか。
【浦野座長】 はい。
【佐野委員】 この辺は,もう財産関係といいますか,会計について新設と増設というのはちょっと見方が違います。新設は何もないところで寄附財産をもってスタートしますので,その,まずストックとしての価値,それから今後の見通し。先ほど座長からお話がありました1年分,もしくは完成年度までの分の経常経費を持たなければいけないと。これはやはり,学校が自己財産で,借金をすることなく今後もずっと自己財産の中で設備を更新していき,教育の質を保証していくのだという中で成り立っている仕組みですので,財務書類についての透明性確保と明確化,説明責任を果たせるような仕組みづくりが必要と思います。仕組みというのは会計の,財務書類の仕組みという意味です。それが必要であろうと思います。
 それから増設に関しましては,やはり自己財産で行うので,先ほど,人的なところの,例えば教員の質保証とかありましたが,財産の面からいえば,やはり計算書類についての担保,これをきちんとするということが必要なのだろうと思っております。
 それと,ちょっと別件でございますが,私は理事長の資質の審査とかそういうことは多分,門外漢ということになるのだろうと思っておりますが,やはり私も学校法人分科会に参加させていただいていて,実際の事務をやった立場からいいますと,やはり理事長の顔が見えない。何を考えているのか,当人が来ないとわからない。そんな中で,設置事務だけをやった事務員の方が説明をしてくる。これでは学校の設置のポリシーもわからなければ,学校の行き先といいますか,それも見えないということがあります。
 設置認可に当たっては,当然,理事長,それから理事,監事の出席を求めているわけですが,それさえも十分答えられないというところは,やはり,入り口で排除すべきぐらいの覚悟を持ってやるべきではないかと思っております。
【浦野座長】 大変貴重な御意見をいただきました。特に前段の部分というのは,学校法人にとって継続性,安定性が求められる中で,御専門の佐野委員ですら見破れないような,そういった資料しかないとすれば,これはやはり大変問題でありまして,そこのところは少し,専門家の御意見も聞きながら,きちんと企業会計並みに見通せるようにしておきたい。ですから,端的な例が,寄附金の財源が本当にどこなのかというところまでさかのぼらないと認めないとか,そんなことは当然出てくるのだろうなと思います。
 そういう中で,ちょっと私の方から質問なのですが,資料6の1ページ,この赤いところで,ここに,早期の経営判断を促進するシステムということで,佐野委員がおっしゃったことの後の方,要するに認可のときの財産状況はもちろんなのだけれど,その後,認可された後,どういう経営状況なのか。それがどんな理事長さん,経営者によってなされているのかということを踏まえて,この早期の経営判断を促進するシステムというのが,この赤い枠であるわけです。
 その具体的な中身が,その資料6の5ページにありまして,これを見ると,もう昭和59年からこういう制度はあるようなのですが,であるとしたら,例えば今回の堀越の件とか,それはどういう事情であそこまで行ってしまったのかとか,その辺も少し御説明いただきながら,この,今ある制度をもう少しうまく使えないだろうかと。いろいろな指標を絡ませながら,例えばの話ですが,金融庁だったら通常の検査と同時に特別検査が当然あるわけです。何かの指標が危なければ。そんなことも踏まえて,今回の堀越の件も少し絡ませながら,どんなふうにこの運営調査制度というのが運営されているのか,少し御説明いただければと思います。
【小松私学部長】 今御指摘の資料6,ページで言えば5ページになりますが,今現在,運営されている学校法人について,昭和59年から,個別の法人についての運営状況の調査制度は御指摘のようにあるわけでございますが,一つは,この中で今,運営調査事項等と書いてありますように,かなり詳細に資料も出していただきまして,それを事前に読み込んで,専門家の先生と事務官が組になって,複数ずつで行って,一日じっくり,書類も全部見せていただくという形でいたします。そういう意味では,運営上の各法人の振る舞いの一定の水準の確保には資していると思っております。
 ただ他方,このページを見ていただきますと,例えばですが,一番下から二つ目の白丸がございます。四角で囲んだところです。運営調査対象法人は,平成24年度は35法人程度。正直言いまして,人員体制から申しますと,数名程度の室でほかの業務をやりながらやらざるを得ませんから,そうしますとどんなに頑張っても,何百かあるうちの35ぐらいしかできないということになります。
 こういう中で,これはアトランダムに選んでチェックしていきますので,変な話ですが,自分のところが当たるかもしれないと思えば,そこのところは一生懸命やるという効果はありますが,しかし,数百あるうちの35だということになりますと,その間にいろいろ悪化して,自分たちのところもあまり自覚なしになるということもあります。
 こういった意味では,抽出調査の限界というものもありますので,これをやたらに今,人員をふやせないとすればどういう工夫をするのか。今のお話を伺っておりますと,指標をもう少しはっきりするとか,学校法人がもっと自らそれを見ながら経営改善していけるような形のものを工夫しなければいけないのかなという感じがいたします。
 ちょっと長くなってすみませんが,このために,この同じページの四角の上にあります白丸印の四つ目に,早期の経営判断の促進とあって,それに資するために参考資料の作成,提供を行っているとあります。例えば,ここにこういう冊子があるのですが,こういったもので難しかったものが立ち直った事例とか,そういったものをいただいて分析したものを提供したりしておりますが,しかしながら,こういうものも日進月歩,あるいは経営環境が変わりますので,さらにそういうものを充実していかないと追いつかないのかなという点も,限界があるかもしれません。
 とりあえずそんなことでございます。
【浦野座長】 今はそういう形で私学の調査もやっているのだけれど,必ずしもそのことが経営成績の悪い状態を早期に見つけるということにつながっていないということだったと思います。
 その辺も含めて,財務の関係でも結構ですし,あるいは。どうぞ。
【佐野委員】 日本私立学校振興・共済事業団という団体がございますが,こちらと連携をとって経営判断,早い段階での経営診断などをなさっているという現状がございます。今,部長からお話があったことに加えて,そういった日本私立学校振興・共済事業団の経営判断,経営診断を受けつつ,早い時点で,割と数値的にはつかむことができる。
 実際に改善する,改革していくというのは当事者でございますが,そういったツールの提供などは文部科学省と事業団との連携の中でできているのではないかと思っております。
【浦野座長】 それでは,もう一つ,先ほど佐野委員から問題提起がありました。要するに,相談期間を,そうではなくてきちんと制度化して,少しスパンを長くとってはどうか。その際には,経営者の顔が見える形で,委員との面談等も含めて,そこもルール化していったらどうだろうかといった御提案がありましたが,この辺について,いかがでしょうか。御意見は。
【相川委員】 今のお話は,逆に,私たちとしては,そういう面談とかがあって,実際やられているものだと。逆にやられていなかったことの方が不思議と感じます。法的に時間のかかるものと,細則で座長の判断で修正できるものがあるのであれば,そういう私はこのいただいた資料を見せていただいて,15年度に廃止された中でも,これはこのまま運用しても何ら支障ないのではないかなと感じる部分もありますので,何で15年度に廃止になったのかなというような素朴な疑問もございます。
 それと,いわゆる運営調査,先ほど御説明があって,たくさんの大学の中から抽出してということですが,私が社会福祉の分野で仕事をしていた際に,公的な資金が施設側に入っているということになると,国の予算であり県の予算であり自己資金であり,公的資金がその中に入っていると,必ず年1回の指導監査というのが入ります。書面の監査もしくは2年に1回の実地監査というのが必ず入ります。それは,全て監査の項目がマニュアル化して記載するようになっています。それは,国の予算が入っていても,監査するところは県が指導して入ります。そういうふうにして,毎年毎年,その施設の運営がきちっと,経営上,財政上しっかりしているのか,そして指導面でどうなっているかという視点で指導が入りますが,これを大学に置きかえると,大学のいわゆる財務の問題,そして生徒にかかわる問題とすれば学内の教育の問題,講師,教授の先生方のカリキュラムの問題だとか,そういう視点で見ていくというところになるのかなと思います。
 だから,私の感覚としては,毎年そういう監査というのが,自分の経験上,受けてきた立場にありますので,何でないのだろうなという疑問もあるのですが。どうなのでしょう。
【浦野座長】 今の疑問は,私も五,六年前からこういう会議に出ていて,いわゆる認証評価というのは,質保証という意味では確かにあって,大学基準に合っているかどうかということはやっているのですが,今おっしゃったような意味での,適正に経営が行われているだろうかといった部分は,認証評価の中であまりないように思ったのですが,それにしても,それがなぜ7年に1回なのかといった素朴な疑問だと思うのです。
 そういったことで何か御説明があれば。
【小松私学部長】 まず一つは,そういった意味での行政なり,あるいは制度として全体の監査に近いようなことをやる制度というのは,実は全体としては割と最近発達してきたもので,その昔は,そういう制度が,正直言いまして非常に未発達であったということで,最近ようやく発達しつつある。認証評価というのも7年に1回の最初のサイクルが回ったぐらい。初めてやったことがですね。ですから,それをどう改善するかというのは,事務的には私どもとしても,本日のような御指摘を踏まえていろいろやらなければいけないのかなと感じるところです。
 もう1点は,7年というのは,制度が導入されるときに,諸外国の状況を見て,どのくらいが限度かなとか負担かなと。大学というのは非常に大きな,極めて複雑な組織でございますので,それをどういうふうに見るかという点。それから,一つのサイクルが終わりますのに,例えば大学ですと,学部でも4年,理工系のように修士まで行けば6年というふうに,例えば6年たって1回監査を入れて,というようなことを考えますと,大体7年前後で1回,こういうものが必ず全部に入るというのが,諸外国での一般的な間隔のとり方でした。そうすると,世界的に見たときに,大体それに合わせたような制度をとらなければいけないというので,大きなものとしては7年に1回で全体を見るという仕組がとられたという経緯でございます。
 その項目の中では,座長のお話にありましたが,弱いかもしれませんが,経営面も教学面も一応見ることになっております。それがうまく機能しているか,項目なり見方が十分かというのは,いろいろと改善点があり得るのかもしれないと考えます。
【浦野座長】 それでは,資料7をちょっと見ていただければと思います。これは私立学校法の改正ということになっていますが,もうちょっと広く見れば,いわゆる大学のガバナンスという部分で,理事制度の問題とか監事の問題とか評議員会の問題とかいうことをきっちりさせながら,なおかつ,この財務情報の公開の促進ということも次のページ等にあるわけですが,こういった制度は,実際に大学のそういうガバナンスの強化にどのように役立てられているのかといった視点と,現状の情報公開の在り方等について,もし,できれば御自分の大学のことも含めてですが,清家委員なり濱田委員にお話しいただければと思います。
【清家委員】 まず,この財務情報については,たしか1回目のときにも発言させていただきましたが,私はこの財務情報は徹底的に公開をすることが必要だと思っております。私どもの大学の例で申しますと,例えば運用の際のポートフォリオは,個別銘柄までは公示しておりませんけれども,できる限り詳細に公表するようにしております。
 それから,先ほど佐野委員が言われましたが,もちろん,認証評価は,たまたま7年目の今年,大学基準協会の評価を私どもは受けたのですが,そういう場でも,特に理事長である私がお答えするために,いろいろな準備をするわけです。そうすると,その中でもいろいろ気づかなかったことがわかってくる。
 それから,毎年必ず監査法人の意見を伺うわけです。改善意見等がある場合に伺うわけですが,その監査法人のお話を伺うような機会も非常に勉強になりますので,先ほど佐野委員が言われたように,そういう,事後チェックの際には必ずその責任者がそれに対応すると。もちろん,全ての情報を知っているわけではないですが,そういうものを事務方からきちんと勉強して,責任者が対応するというルールを,もっと厳格に運用上もやったほうがいいのではないかと思います。
 それから,座長,少し前のところに戻るかもしれませんがよろしいでしょうか。
【浦野座長】 どうぞ。
【清家委員】 先ほどの設置基準が準則化されて,様々な細則の部分が廃止されたというお話のところですが,これは要するに,大きな図柄で言えば規制が緩和されたと。ポイントは二つあると思うのですが,一つは,規制が緩和された場合には,これは事前規制が緩和されたということですから,その分だけ実は事後チェックは強化しないとバランスがとれないわけで,これは何の場合でもそうですが,そういう意味で,本当にこの事前規制が緩和されたことを埋め合わせるような事後チェックの強化が図られたのかどうかということは検証する必要があるかと思っています。
 それからもう一つは,先ほど細則を復活したらどうかという御意見もありましたが,私もそれにかなり賛成で,つまり,規制緩和というのは,ある面でいえば実験ですから,規制は緩和したけれども様々な問題が生じた場合には,規制を緩和した部分をまた元に戻すということは当然あってしかるべきでありまして,その辺もしっかりと検証した上で,場合によれば,以前と全く同じかどうかは別として,この細則的なものを一部復活させるということも,この設置基準を考える際には,この際考えてもよろしいのではないかと私は思っております。
【浦野座長】 それでは濱田委員。
【濱田委員】 まずは財務情報等の公開ですが,国立大学法人の場合は一般的な財務情報の公開,それにあわせて経営協議会がございますので,そちらで外部の委員の方々に対して大学の財務状況について御説明をするという形,さらにまた監査法人も入っておりますし,ダブルチェックといいますかトリプルチェックといいますか,そういう構造で動いているということかと思っております。
 全般的に申しますと,この財務情報というのは,もちろん専門家が見ればそれなりに分析がよくできるものだと思いますが,特に受験生とか保護者の方々から見れば難しい数字リストがいっぱいあっても,これはわからないことでございますので,こちらの資料7を見ましても,広報誌等の刊行物に掲載しているというのは比較的少ないようですが,やはり各大学が,そういった財務状況についてはできるだけわかりやすく広報をしていただくということ。そしてまた,きちんとそういうところを広報しているというのが,その大学の一種のステータスでもあるという,そういう構造がうまく動いていければいいなと思っております。それが1点です。
 それから,すみません,先ほどの清家塾長にならって,少し,1点だけ前に行ってよろしいでしょうか。これも,さっき塾長がおっしゃったことと基本的に同じようなことなのですが,基準を,こうやって細則を廃止するということになりますと,やはり,一方では確かに規制緩和ではあるのですが,これは私は昔,法律の方をやっておりましたので,そういった感覚からしますと,昔よく言っていた「法律による行政」というのはどうなるのだろうかというのがちょっと心配になってくるのです。つまり,認可する側の裁量の余地が非常に広くなってくる。規制緩和であるように見える一方,これだけ漠たる基準だけであれば,適正な行政が担保されるのだろうかというところも不安になってくるのです。
 こういうときに,ではどうするかということで私たちがよく言っておりましたのは,一つは,もうちょっと基準,細則というものを改めてつくると。実際,こうした漠たる基準が運用されていれば,そこに累積されて,ある程度の細則的なものができてくると思いますので,そういうものを今後つくり込んでいくのかどうかということが一つと,あるいは別のやり方としては,この基準は漠たるものであっても,その基準を運用する組織,これが非常に信頼度が高いのだと。これが結局,質保証体制の在り方の問題になってくると思うのですが,漠たる基準であれば,それを体制の信頼性というところで運用を担保していくというやり方もあると思います。一体,これからの進め方でどちらがいいのか,細則を強化する,あるいは体制を強化するという,それもほどほどに両方やるというのもいいかもしれませんが,審査基準は漠たる形で置いておくのであれば体制のところをしっかり見直していく,そういった議論の仕方もあるかと思っております。
【浦野座長】 ありがとうございました。
 大変,貴重な御意見を,今,両委員からいただきまして,清家委員がおっしゃったように,確かに,一つの実験であったというふうに考えれば,後戻りという意味ではなくて,勇気を持って,間違った緩和であったら,それは見直してもいいのではないかという御意見だったと思うのです。
 濱田委員も,そうは言いながら,全て本当に政省令で基準・細則を決めていくことができないとすれば,体制の信頼性というところでというような話もありました。
 その辺,現段階で,事務局のお答えとしては非常に言いにくいところだと思いますので,一つだけお答えをいただきたいのは,事前の緩和ということでやった。それはイコール事後チェックの強化だという話が清家委員からあって,まさにそのとおりだなと思うのですが,その辺,感覚的に,事後チェックの強化ということはどのようになされたのかということについて。
【板東高等教育局長】 もともと事後チェックの仕組みというのがほとんどなかったという状況がございまして,あのときの規制改革の議論としては,設置認可のところは非常に厳しく見ていると。しかし,一旦できた後は何もないではないかということもあわせて,あのとき議論されました。ですから,事前・事後を含めまして,トータルで質を保証していくという仕組みを考えていこうと。その場合に,従来,事前規制のところで,全部そこでやろうと思っていた部分について,必ずしも事前のところだけでは質の担保ができないのではないかという部分を,事後的に大学としてある以上は当然きちんと評価して,質を担保していく必要があるのではないかと。そのために,事後評価も重要であり,第三者評価による評価のシステムというのも入れていくべきだろうということで,認証評価という仕組みができてまいりました。
 ただ,今までの御指摘のように,とにかくスタートをさせたという段階でありますので、中身がどうなのかとか,あるいは期間,スケジュールがどうなのかとか,審査,評価の在り方の問題などを含めて,これはどんどん改善していかなければいけないという部分があろうかと思います。前回も申し上げましたように,分野別評価というのがまだまだ育っていないとか,いろいろ,まだ発展途上ということであるかと思います。
 一方,そのときの議論としては,やはりトータルなシステムとしての質保証システムを確立したいということでありましたので,先ほどもバランスというお話がありましたが,事前のところが,事後との兼ね合いで,バランスが十分とれていない,事後的なところで十分に質の担保ができないということであれば,事前のところをもう少し考えていくかということも含めて,全体のシステムがうまく動いているかどうかという観点で見ていかなくてはいけないのではないかというのも,当時,当然あったわけでございます。今までの御指摘は,やはり事前のところがあまりに動かなくなっているよという御指摘だと思いますので,そのあたりの見直しというのは,全体が機能しているかどうかという観点で十分ではないという御指摘の中で考えていかなければいけない部分があろうかと思います。
【浦野座長】 ちょっとしつこいようですが,その部分は,やはり,先ほど小松部長から,非常に大学は複雑でという話がありましたが,民間も結構複雑だと思うのです。例えば,10兆円以上売り上げがあるような世界に冠たる企業が50近くあるわけですが,そういったところでも,やはり四半期毎にきちんと数字は出して,そして公的なチェックも受けているわけです。
 そういう点から考えると,あまりにも大学の,そういう意味での事後チェックというのは相当遅れているのではないかなというのが正直な感想でございまして,ちょっと,あまりにもしつこいですけれども,そんなふうに受けとめていただければなと思っております。
【板東高等教育局長】 監査とか情報の提供というのと認証評価というのは,また並列もし得るわけでありまして,認証評価に全ていろいろなものを入れてしまうかどうか,あるいは認証評価を毎年やるという仕組みにするのかどうかは,また別問題かなと。御指摘のように,情報をもっと開示をしていく,あるいは,もちろん監査制度をうまく使って,経営のところの判断をきちんとしていく,そういうことと,7年がいいかどうかは別にしまして,きちんと,教育・研究全体の質を保証していくための仕組みをどういう形で動かしていくのかというのは,また並行して考え得る話ではないかと思っております。
【清家委員】 少しよろしいですか。板東局長が言われるように,事前の認可の基準と事後チェック,トータルで質の保証というのはおっしゃるとおりだと思うのですが,これも前に申し上げましたが,やはり教育の場合,特に高等教育の場合には,その教育を受ける人たちが,事前にその質について十分な情報を元々持ち得ないというのが最大の特徴ですので。持っていたらもう大学教育を受ける必要はないわけですから。そういう面では,事前の規制が他の領域に比べて,もちろん事後的なチェックも大切ですが,必ず必要だと思っております。
 ですから,トータルで,ということは私も全く賛成ですが,その中で,事後チェックを強化さえすれば,事前の規制はどんなに緩めてもいいかというとそれはそうではなくて,事後的にやはりだめでしたねという大学に入った学生は,もう取り返しがつかないことになりますので,事後チェックを強化すれば事前規制はそれに合わせて緩めてもいいのだというふうには思いません。そういう意味で,やはり事前規制のといいますか,認可の規制を緩めた部分について,間違いがあるのであれば,そこは細則などによって強化することが,私はむしろ望ましいのではないかなと思います。
 ついでにもう一つ言いますと,ガバナンスの件であるとかいったところで,例えば地域の声を聞くとか,産業界の声を聞くとか,あっていいと思いますが,大学を取り巻くステークホルダーの中で一番大切なのは,本当は学生なわけです。しかし,学生は大学のガバナンスにも参加できないし,そういった審議会などにも入っていないわけですから,本来は誰かが,一番大切なステークホルダーである学生のことを考えて――それは,みんながそう考えているのだと言えばそうなのですが。
 そういう視点から言うと,少しくどいようですが,ほかの分野はともかくとして,トータルで質を担保するといっても,この高等教育については,事前規制の緩和には限度があるし,私自身は,今まで少し行き過ぎていたと思っております。
【板東高等教育局長】 御指摘のとおりだと思いますが,規制という中身にも実はいろいろございまして,潰れてしまうとかそういうことにつながっていくような要素の部分,経営安定の問題とか中身の基本的な問題ということだと思いますが,そういうことと,それから,従前,かなり詳細な,中身に係るような審査の基準もあった時代がございまして,例えば教育,カリキュラムに係るようなこととか,教学的なところというのはどこまで詳細な基準の細則というものをつくったほうが,大学の発展にとっていいか悪いかという問題が一つございまして,そういう,ちょっと事柄の違う様々な……。
【清家委員】 むしろ財務とか,その肝心な部分ですね。
【板東高等教育局長】 そうですね。御指摘のように,財務とか,それから教育組織,教員組織がしっかりと。
【清家委員】 あるいは校地のお話もそうだし。あるいは教員の資格などについてもそうですね。余計なことを言ってごめんなさい。
【板東高等教育局長】 そういった基本的な枠組み的なところというのはきちんとした骨格ができていないと,その中に盛るものがきちんと豊かに育たないではないかという部分,あるいはすぐ崩れてしまうのではないかという部分については,御指摘のとおり,今の状況でいいかどうかというところは,我々もいろいろ検討すべき点はたくさんあるのではないかと思っております。
 ただ一方で,かなり,私もずっと昔の設置認可からたどってまいりますと,昔はそれこそ,慶應が湘南藤沢キャンパスなどをつくられたときも,非常に新しいチャレンジをされている,ああいったこと自体についても,なかなか従来の学問の枠組みの中でもいろいろな御議論もあったというのは事実でございましたので,そういう新しいチャレンジ,特に教育の内容などについての新しいチャレンジというものを阻害しないような形で,設置認可のきちんとした枠組みのところというのをどう担保していくのかというのは,確かに御指摘のとおり,非常に重要であると思っております。
【浦野座長】 ただいまの議論を含めまして,いかがでしょうか,尾﨑委員,何か御意見,御感想でも結構ですが。
【尾﨑委員】 確かに,私も行政をやっていまして,一番大事なのは,やはり県民の皆さんに税金の使い方をしっかり,アカウンタビリティ,これを確保して説明できること,これが一番大事だと思います。特に大学は,若い学生たちを相手にしている。公立であればなおさらであります。私立であっても,学生たちを相手にしていく,その生涯にかかわるお仕事をしておられる分,やはりアカウンタビリティ,これをしっかり確保することは大事だと思いますし,また,基礎となる部分の規制,緩めてはならないものというのは確かにあるのだろうと思いますから,そこのところはぜひ,御議論を深めていただきながら,一番いいバランスをとっていただければと思っています。
 私は一つ,最後に,局長が言われた新しいチャレンジというところ,これをぜひ,大いに今後認めていっていただきたいものだなということをすごく思っています。
 この資料8についてでもよろしいですか。
【浦野座長】 どうぞ。
【尾﨑委員】 資料8が指し示すように今後の就業形態,そこにどういう人が出てくるだろうか。多分,文部科学行政,特に大学行政というのは,20年後,30年後の日本はどうあるべきかということを見て,その定員のありよう,設置のありようを考えていくということが重要だと思いますし,また逆に言うと,20年後,30年後の姿を十分に見通せないからこそ,民間で出てきた,それぞれの新しいアイディア,チャレンジというものをできるだけ生かすように展開をしていただくことが重要ではないかと思っています。
 実は,この定員の関係で,我々が非常に今,苦労している分野があります。既にこれは改善していただいていますから過去の話なのですが,昔の対応によって非常に苦労している分野があります。それはお医者さんの分野であります。
 今も,医学部については,新規の大学の設置は多分認められないということになっていると思うのですが,残念ながら,医師については非常に不足状態が出てきていることは皆さんも御存じのとおりで,これから高齢化が急激に進展していく,特に団塊の世代が10年後,15年後には,70代の後半になってくる。そうなってきたときに,その需要は激増していくわけですが,一人のお医者さんを養成するには,大学で6年,卒業後,恐らく5,6年では事実上無理で,一人前のお医者さんになっていただくためには,15,6年はかかる。
 15年後の需要がどうかということにあわせて医師の養成をしていかないといけない。ただ,今後また人口動態は変わっていきますから,その先のこともまた見て養成していかないといけないということになってくるのだと思います。若干,それが遅れたところがあって,全国的に不足状態になってきていて,さらに地方では,臨床研修医の制度の変更などもあわせて,非常に医師不足問題が深刻化しているということになっているのではないかと思います。
 もっと言うと,確かにお医者さん全体の分野として見ればそういったことであったかもしれませんが,それで今はもう全体としての対応を図っていただいている。定員を増やしていただいています。それから地方枠も増やしていただいています。我々は10年後はこれが特効薬として効いてきて,一定対応できるようになるだろうと思っています。だから先ほど,既に対応していただいた話だと言ったのですが,例えば産婦人科は,全体として,今も多分不足していますし,臨床研修で産婦人科を選ばれる方はまだ不足したままではないかと思うのです。小児科も恐らく,それに近いだろうと思います。この問題はまだ解決されていないわけです。
 新しいチャレンジということからいけば,例えば,医師を十把一からげにとらえるのではなくて,その中でも特に産婦人科のお医者さんを先端で養成するような大学をつくっていくとか,例えばそういうチャレンジだって,本来はあってもいいのではないか。
 県内での周産期医療というのはもう崩壊寸前であります。必死に医局の皆さんにもお願いをして,何とか厳しい中で人繰りをつけていただいて,何とか回っているという状況です。二次医療圏で分娩ができないところがあったりするのです。
 これは厚生労働省さんも大いに絡む話であって,文部科学省さんだけのお話でないのはよく承知しておりますが,やはり,これから10年後,20年後,30年後にどうなっていくかということを見て対応をしていただく,こういうことを大いに考えていただくことが必要であると思います。
 このように常に大学行政を考えるに当たっては,先々の見通しを見て,どうあるべきか,長期スパンの視点で検討を加えていただくことが大事だという点。そして,先々が見通せないということがあればこそ,いろいろな方の創意工夫による新しいチャレンジをできるだけ認めていけるようにしていただいたほうがいいのではないかという点。ただ,それで大学が潰れてはいけませんから,特に財務状況などについての担保は少なくともとる。それからガバナンスやコンプライアンスを担保するための規制はぴしっとかける。そこのバランスを,ぜひしっかりとっていただければと思います。
【浦野座長】 それでは,林委員,いかがでしょうか。今日の議論を聞いていただいて。
【林委員】 遅れまして失礼いたしました。今の尾﨑知事からのお話は,我々基礎自治体の共通の課題でございまして,ぜひ,今の御意見を受けとめていただければと思います。
 それから,地域貢献に関する内容ということで,私からお願いしたことを,社会的ニーズへの対応の観点というところで整理していただき,大変感謝をしております。
 あとは,申し上げておきたいのは,本当にこれは当たり前の話ですが,少子高齢化の到来,労働人口の減少ということで,横浜市も今,待機児童対策というのを一生懸命取り組んでおります。女性の経済進出を図らないと,この行く末を考えても非常に厳しい状態でございます。女性が結婚して出産・育児のところで立ちどまってしまう,いわゆるM字カーブが,これだけの国でいまだにあるというのは信じられないことです。アメリカのデータを見るとM字に全くならないのです。日本はM字カーブがひどくて,特に30代から40代ぐらいのところが急に下がってしまいます。
 横浜市も,実は日本全国の平均よりM字カーブが深いところでございます。そこで,大学においても,一旦子育てをしたりする女性たちの学びの場をいろいろな形で御提供いただきたいというニーズが高まっています。最近では,そういう場を設置している大学がございますが,もう少し全体的に配慮していただいてそういった環境を整えていくことが大事かと思います。
 それから先ほど,各委員から御発言がありましたが,私も同じ意見でございまして,理事長と面談をしないというのは考えられません。ちょっとびっくりしてしまいました。例えば私も,企業経営に携わっていたころ,銀行からお金を借りるのは,結局最後は経営者を見て貸すということでございますので,ここはすごく大事な要素です。まさにPDCAを大学にも入れなくてはいけないのではないかと思いました。
 以上です。
【浦野座長】 それでは,ここから先は特に設置認可のことにかかわらず,前段の話でも後段の話でも結構でございますが,大学全般について何か。
 はい,佐藤委員。
【佐藤委員】 まず,理事長の出席に関わる御意見ですけれど。大学を新設する場合は必ず出席をしていただいて,意見は聞いております。学部増であったり大学院の課程増であったり,そのほかのところは,大体は学長さんがいらして構想を説明しておられるのがほとんどだと思いますから,私ども,審査をしている立場から言えば,全くそれを聞いていないということではないと理解しております。
 それから,今までそれぞれの委員が御発言になったこと,そのとおりだなと思っているのですが,事後チェックをしっかりさせてということがあって,評価機関を国が認証して認証評価をするようになったのですが,これはどこの国へ行っても,基本的にはピアレビューですよね。国が直接対応するというのではなく,評価そのものはやはり大学人が自己規制をして,できるだけレベルの高いものをつくっていく,質の担保をしていくことが基本だと思っております。自己規制がない中で改善するということはあり得ないと思います。その期間が7年に1度というのは,私も前から,どこからその7年というのが来たのかと疑問ではありました。アメリカは10年が基本で,ミッドタームという5年毎に軽いレポートを出さなければなりません。また,大学院,専門職は今,5年でやっておりますよね。いずれにしろ,国が評価機関を認証するというところはきちっと厳しくして,あとはそれぞれが,やはりお互いに見ながら行くというのが本来の筋ではないかと感じています。
【田中大臣】 3回ではありましたが,本当に,極めてインテンシブな,集中的な議論をしていただけて,本当にすばらしいと思いました。
 御存じのとおり,今回のきっかけは,教育というもの,学校現場,それと経営ということから,この2002年の規制緩和以降,この10年間でいろいろなトラブルが出てきている。しかし,そのことについて,政治がなかなかそこまで意識が行かなかった。場合によっては政治家側が癒着していたことも結構あったりしてもどかしい思いがありましたのに,ここに来て本当に,こういうことがどういうふうにあるべきか,学校のガバナンスもそうですが,清家委員がおっしゃったように,事前規制の緩和が事後チェックの強化になるべきだということは,もうベーシックなことであると思ったにもかかわらず,そう流れていかなかったという日本社会の,日本人の心,マインドセットアップの在り方とか,そういうふうなこと。
 そして,先ほど尾﨑知事がおっしゃったように,日本の将来に対する予測。世界で,医療とか,もちろん林市長がおっしゃったように女性の立場もありますが,他方,世界が経済でどういうふうに動いていくのか,そういう経済的な側面も見ながら,先を見て準備をしていくという計画性は,やはり国家の意思としてある程度持たなければいけないという面もあると思うのです。
 したがって,今のような状態が続いていくと,現在の状態が続いていくと,確実に日本は文化国家ではないと。世界的な視点から見ますと,極めて恥ずかしい状況にあるということでありますので,今回,またさらに続けてやっていただければ,私どもが不在であっても大変光栄なことでありますし,こういうことをもっとインスパイアして,国民にも,関係者も役所も,また政治家がもっと積極的に,大きな政治家の使命として考えていくべきいいチャンスになったと思って,感謝を申し上げたいと思います。
 何か,副大臣。
【笠副大臣】 大丈夫です。
【田中大臣】 大丈夫? 大丈夫って何が大丈夫なの。
【笠副大臣】 続けていただいて。
【浦野座長】 今の田中大臣の御意見に触発されて,何か一言申し上げたいという方がいらっしゃったら。どうぞ。
【佐藤委員】 まず,感謝を申し上げたい。というのは,やはり設置審査をしている中で,審議会の審査を担当している委員たちは,やはりもどかしく思っていた部分はあったのは事実です。規制緩和,規制緩和で,今日のような状況になってきて,準則化ですから,決められたことに従ってその評価をしていくのが与えられた立場です。今年でも申請をしたうちの半数が11月の答申時点で保留か取り下げか不認可になっていますから,かなり厳しく審査はしてきたつもりです。しかし,取り下げ不認可案件には,果たして十分に準備をなさってこれを申請してこられたのかなと思うような件もありました。
 そういう意味では,今まで,自分たちで審査方針を変えたいと言ってもなかなか実現しなかったことですから,今回,こういう形で検討する場が設けられたのは,非常によい機会になったと思います。大臣の御指摘について,こういう機会をつくったということについては,非常に私どもは感謝したいと思います。
【北山委員】 今年最後のこの検討会ということで,3回目になったわけですが,ここ数年間,世界の環境がどんどん急変していく中で,日本のこれから進むべき道ということで,その中における教育の在り方,高等教育をはじめ初等教育も全てですが,あと企業も,とにかくこれをキャッチアップというか,先んじてやっていかなければいけないということで,私も教育関係に,専門家ではないわけですが3年ぐらいかかわってきました。そういった意味で,この6月に文科省が出された大学改革実行プランの中身を見てみますと,認証評価の問題であったり新設の問題であったり質保証の問題であったり,それから地域とのかかわり合いの問題であったり,あらゆることが全て入っているのです。
 問題は,お金がどれだけかかるのか,予算との関係もありますが,24年度は今年度ですので,24,25,26年度というタイムスケジュールというか実行プランにのっとって,国の方針としてこれを着実に実行していくことができればすばらしいと思っているのです。
 我々,産業界の方ですが,産学協働人材育成円卓会議なども,今,実際にアクションをとれるところからとっていこうというフェーズに入っていますので,ぜひ,このモメンタムが今,高まっていますので,それを絶やさないで,マスコミの関係者の方も含めて,国民的な意識を高めていく必要がある時に,非常に大きな契機になったのではないかと思っており,田中大臣にも感謝しております。どうもありがとうございます。
【浦野座長】 ということで,各委員,今,佐藤委員と北山委員に代表していただきましたが,今回のチャンスは非常にいいオポチュニティだったなと思いますし,今後どういうふうに進めていくかということについては,座長の私も何もわかっていないのですが,政治のことも含めていろいろあるかと思いますが,現状での事務局なりの,今後の進め方についてお考えがあれば,ちょっとお伺いしたいと思います。
【浅田高等教育企画課長】 今のところ,次回の日程は未定ですが,できればまた,委員の皆様方の御都合をお伺いした上で調整をさせていただいて,開催させていただきたいと思っております。
【浦野座長】 ここまで論じてきましたので,我々もこれで終わりなんていうことがもしあれば,それこそ怒り爆発ということになるわけですけれども。ぜひ,次回以降,どんな形でやっていくかということは,新しい体制も含めて御相談をいただきまして,必ずやるという方向で。
【板東高等教育局長】 当然,早くやらせていただきますので。大変,国民的にも関心を高めていただいたというのはそのとおりだと思っておりまして,これはやはり,大学の質というものが非常に重要だということに対して,現状は十分ではないのではないか,いろいろな仕組みがその担保のために十分ではないのではないかという,各分野からの御指摘でもあるかと思っておりますので,それについては着実に進めていきたいと思っております。
【浦野座長】 それでは,きょうはこれで終わりということにしたいと思いますが,先ほど,田中大臣,御意見は言われましたが,最後に御挨拶ということで。
【田中大臣】 先ほどの繰り返しになりますが,暮れのお忙しいところ,それぞれの立場で御遠方からおいでいただいて,忌憚のない御意見をいただきまして,本当に心から厚く御礼申し上げます。
 そして,政治に関係なく,日本は世界をリードする,尊敬される,立派な安定した文化国家でありたい。そのために,私たち,みんな立場は違っても努力をしているわけでございますし,生を受けて,この地球上に生きるみんな,一人一人のために,役に立つような会合であったと思いますし,そのエネルギーとお時間をいただきましたことに対しまして,心から御礼を申し上げます。
 政党がかわるとか大臣がどうかわるとか,そういう小スパンではなくて,やはりこういうことが常に発信されている日本であるということが,これがまた,より建設的な,ポジティブな方向に日本を牽引していくことになると思いますので,引き続きお力添えを心から申し上げまして,私からの言葉といたします。ありがとうございました。
【浦野座長】 それでは,どうもありがとうございました。

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