大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会(第1回) 議事録

1.日時

平成24年11月21日(水曜日)

2.場所

文部科学省旧文部省庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 大学設置認可の在り方の見直しについて

4.出席者

委員

(座長)浦野光人座長
(副座長)黒田壽二副座長
(委員)相川順子,及川良一,北山禎介,佐藤東洋士,佐野慶子,清家篤,寺島実郎,濱田純一,林文子の各委員

文部科学省

田中文部科学大臣,笠文部科学副大臣,森口事務次官,山中文部科学審議官,前川官房長,板東高等教育局長,小松私学部長,浅田高等教育企画課長,岡本大学設置室長

5.議事録

【浅田高等教育企画課長】  失礼いたします。皆様お揃いですので,大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会の第1回を始めさせていただきます。
 委員の皆様にはお忙しい中,ご出席いただき,誠にありがとうございます。
 初回でございますので,出席者のご紹介までは,私,高等教育企画課長の浅田が進行させていただきます。その後,浦野座長にお願いいたしたく存じます。
 なお,この検討会は原則として公開で行うこととしております。取材,傍聴の方がおられますこと,及び,本日は開会から座長のご挨拶まで,カメラによる撮影もあり得ることをお断りさせていただきます。
 それでは,初めに田中眞紀子文部科学大臣からご挨拶をお願いいたします。

【田中大臣】  文部科学大臣を拝命いたしましております田中眞紀子でございます。今日は大学設置認可の在り方に関する検討会,第1回目を開催させていただきます。大変ご多忙でいらっしゃいますのに,また,ご遠方からも,皆様,ご参集くださって本当にありがとうございます。心から御礼を申し上げます。
 また,多数の方が傍聴に来てくださっていらっしゃることに対しましても,心から御礼を申し上げます。
 設置審につきましてはあと1年半,任期がございまして,その中で十二分によい議論を今まで積み重ねてきていただいているというふうに認識しております。浦野座長様をはじめ,今回は他にも2名の方が設置審の中からもご参加くださっておりますことを大変心強く感じています。
 今回,私がこのようなことを発案といいますか提案いたしましたきっかけを一言だけ申し上げたいと思います。その理由は,大臣を拝命してから1カ月ちょっとの段階でこういうことがありましたので,世間は驚愕して,何が始まるやらと,またトラブルメーカーがトラブルを起こすのかと思われたようでございますが,私は自分が受けてきた家庭教育,及び,実は高等学校のときにアメリカのフィラデルフィアにありますクエーカー教の学校で学んでまいりました。それは新渡戸稲造の奥様のメアリーさんもかかわっておられましたし,最後は新渡戸稲造もクエーカー教徒になられたというふうに聞いておりますし,また,現天皇陛下のご教育係であられたミセス・ヴァイニングも,私の行っておりましたジャーマンタウン・フレンズスクールというクエーカーの学校です。アメリカには2つしか,ワシントンとフィラデルフィアにしかこの高校はございませんけれども,その学校で受けた教育は,私は非常に自分が色濃く人間形成で現在も影響を受けているというふうに思っております。
 クエーカー教の教義は,平和に徹するということ,ライフスタイルが質素であるということ,もう一つは一人一人の人間を大切にして,たった1回しかない人生を自信を持って生き抜くこと,その力をつけることが教育であるということを,10代のときに繰り返し繰り返し言われてきました。現在もファンドレイジングで寄附を募るお手紙まで来ますし,また来年は同窓会があってお呼ばれもしていますし,夏には同級生も家族で来られて我が家で過ごしたりしておりまして,しょっちゅう交流があり,私の人間形成の中であるのはやっぱり教育という問題がどれだけ人生を豊かにしてくれるかということなんです。
 日本でも外国でも,特に海外に行きますと,必ず,必ずその国の学校に行くようにしています。地元の学校,いわゆるエリート校,それから幼児の学校,そういう教育現場を必ず見るようにしております。昨日,今日も地元で4つの学校に行ってきまして,35人学級の話や,また,進学校にも行きましたり,職業訓練をしている高等専門学校,そういう技術教育をして就職率が非常に高いという学校の先生方ともお目にかかってご意見を聞きました。
 どうやって自分が生きがいを持って生きるかということ,日本の戦後の教育はよかったんですけれども,2002年の規制緩和で教育まで規制緩和の対象になって,学校を経営するという経営の方にどうも重きが行ってしまっていて,少子化であるにもかかわらず,また,いじめの問題等もたくさんあるし,大学を出ても自分の就職,進路がなかなか決められないという学生さんが日本は結構多いのではないかというふうに思っています。
 そういう中で,本当にどういう大学に行くことが,あるいは,大学に行かないで,早くに自分の生きがい,収入にも結びついて,社会からも評価をされればもちろんそれはすばらしいですし,そういう自立した日本人が一人でも多くできるような教育体制を日本中がつくっていく,その折り返し点がもっと早く来ないか,来ないかと,ほぼ20年間,国会議員をやっているんですけども,ずっとこのチャンスをずっとずっと見ておりました。議員立法でもなかなかできない,難しいことでありまして,議員立法も何本か手がけたんですが,文部科学大臣を拝命したので,これはずっと私の頭に最初からあったことでありまして,着任してすぐ1カ月で思いつきでやったことなどではありません。
 これほど各界から優秀な諸先輩がおいでくださってご指導いただけることは,私の人生で本当にハイライトだと思っておりまして,本当にありがたいと思っています。日本の将来,経済だけではなくて,一人一人の自立した日本人をつくるためにどうあるべきかということの直言をいただけるかというふうに思っておりますので,どうぞよろしくご指導のほどお願い申し上げます。ありがとうございます。

【浅田高等教育企画課長】  どうもありがとうございました。
 続いて,笠浩史文部科学副大臣からご挨拶をお願いいたします。

【笠副大臣】  ご紹介いただきました副大臣の笠でございます。今日は浦野座長をはじめ,このたび検討会の委員を快くお受けいただきましたことに,まずもって感謝を申し上げたいと思います。
 今,田中大臣からもありましたように,大学の改革,質を高めていく,さらに,そこで学ぶ学生たちがどういう生きがいを持ってまた次のステージへと大学での経験を生かしていくのか。さまざまな観点から,大学のあり方を見直していく。そのためには,この設置認可のあり方ということについても,それぞれの各界の皆様方のお知恵をお借りしながら改革の方向性をつけていくということは,非常に重要なことだと思っております。
 今,大学に期待されている社会の役割は大変大きいものがあると思います。この検討会を一つの大きな契機としながら,改革を進めていきたいと思いますので,ぜひとも委員の先生方のすばらしいご意見を,また,闊達なご議論,ご指導をお願い申し上げまして,一言冒頭のご挨拶に代えさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【浅田高等教育企画課長】  ありがとうございました。
 それでは,私から本日ご出席の皆様をご紹介させていただきます。
 資料1が本検討会の設置要項であります大臣決定ですが,その2枚目に委員の皆様の名簿がございます。
 はじめに,本検討会の座長であります,株式会社ニチレイ代表取締役会長,公益財団法人産業教育振興中央会理事長の浦野光人様です。

【浦野座長】  浦野でございます。よろしくお願いします。

【浅田高等教育企画課長】  次に,座長のご指名により副座長をお願いすることになりました,金沢工業大学学園長・総長の黒田壽二様です。

【黒田副座長】  黒田でございます。よろしくお願いします。

【浅田高等教育企画課長】  一般社団法人全国高等学校PTA連合会会長,青森県高等学校PTA連合会会長の相川順子様です。

【相川委員】  相川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【浅田高等教育企画課長】  東京都立三田高等学校長,全国高等学校長協会会長の及川良一様です。

【及川委員】  及川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【浅田高等教育企画課長】  株式会社三井住友銀行取締役会長,公益社団法人経済同友会副代表幹事・教育問題委員会委員長の北山禎介様です。

【北山委員】  北山です。よろしくお願いします。

【浅田高等教育企画課長】  学校法人桜美林学園理事長・総長,大学設置・学校法人審議会会長の佐藤東洋士様です。

【佐藤委員】  佐藤です。よろしくお願いします。

【浅田高等教育企画課長】  公認会計士で日本公認会計士協会常務理事の佐野慶子様です。

【佐野委員】  佐野でございます。よろしくお願いいたします。

【浅田高等教育企画課長】  慶應義塾塾長,全私学連合代表の清家篤様です。

【清家委員】  清家でございます。よろしくお願いいたします。

【浅田高等教育企画課長】  東京大学総長,一般社団法人国立大学協会会長の濱田純一様です。

【濱田委員】  濱田でございます。よろしくお願いいたします。

【浅田高等教育企画課長】  横浜市長の林文子様です。

【林委員】  林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【浅田高等教育企画課長】  なお,林委員はご公務のため,冒頭1時間程度ご出席いただける予定と伺っております。
 このほか,一般財団法人日本総合研究所理事長,多摩大学学長の寺島実郎様が16時半から17時半ごろまでご出席いただける予定と伺っております。
 また,特定非営利活動法人NPOカタリバ代表理事の今村久美様,高知県知事の尾﨑正直様が委員でいらっしゃいますが,本日はご公務,所用のため,ご欠席です。
 次に,文部科学省側の大臣,副大臣以外の出席者を紹介させていただきます。
 森口泰孝文部科学事務次官です

【森口事務次官】  よろしくお願いいたします。

【浅田高等教育企画課長】  山中伸一文部科学審議官です。

【山中文部科学審議官】  よろしくお願いいたします。

【浅田高等教育企画課長】  前川喜平大臣官房長です。

【前川官房長】  よろしくお願いします。

【浅田高等教育企画課長】  板東久美子高等教育局長です。

【板東高等教育局長】  よろしくお願いいたします。

【浅田高等教育企画課長】  小松親次郎高等教育局私学部長です。

【小松私学部長】  よろしくお願い申し上げます。

【浅田高等教育企画課長】  岡本任弘大学設置室長です。

【岡本大学設置室長】  よろしくお願い申し上げます。

【浅田高等教育企画課長】  以上でございます。
 それでは,これ以降の議事の進行につきましては浦野座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【浦野座長】  本検討会の座長を務めることになりました浦野でございます。
 初めに一言,ご挨拶を申し上げたいと思います。
 先ほど,田中文部科学大臣のほうから,ご挨拶の中で,本当にこの教育の重要性といったことをしみじみ語られまして,私も大変共感をいたしました。まさにその思いは,ここにいらっしゃる皆様方を含めて,全国民等しく共有するものだというふうに思っております。
 私,常々思いますけれども,社会の土台はまさに人,人間であります。そういった意味から,日本の将来の発展というものは,現在の教育の質と量に依存していると言っても過言ではないと思っております。そういった中で,この産業界と教育界の連携といったことにも今までも取り組んでまいりました。
 さて,大学の教育の質を高めるという視点では,この8月に中教審から,「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」という答申が出されました。この答申は全ての大学の教員,学生,職員,そして,大学を取り巻くステークホルダーの皆様方に向けて発信されたものでございまして,この内容につきましては,各地のフォーラム等を通じて,今,広範な議論が起きているところだというふうに思っております。
 このように,教学マネジメント,教学システムをいかにしていくかといったことが質を高めていく上のまさにストライクゾーンではありますけれども,本検討会に課せられました設置認可のあり方といったことも大変重要な課題でございます。
 それから,さらには,少なからざる大学がその役割を終えたほうがいいというふうな状況もあることも事実でございます。そうした場合に,その退出のあり方等もこの質保証の全体の中では看過できない問題であると思っております。
 このように,質を高めていくということは本当に設置認可から始まってトータルな全体システムの課題だというふうに存じております。本検討会は,入り口として設置認可といったことがテーマにはなりますけれども,委員の皆様方には,やはり若い人々が将来,夢を持てるような教育のあり方,そこを目指して,幅広い議論をいただければというふうに思っているところでございます。
 この検討会は,そうは言いながらも,設置認可のあり方ということが入り口になっておりますので,おおむね1カ月ぐらいをめどにして,結論といいますか,どんなあり方がいいかといったことを田中大臣の方に提言しなくてはなりません。そういった意味で,大変年末お忙しい中,ご負担もおかけすると思いますけれども,幅広い議論の中で,設置のあり方を中心にしながら議論をしていただければというふうに存じております。
 どうかよろしくお願い申し上げます。

【浦野座長】  それでは,初めに事務局のほうから資料の説明をお願いしたいと思います。

【浅田高等教育企画課長】  資料についてご説明させていただきます。
 資料1は,本検討会の設置について定めた大臣決定です。大学の設置認可のあり方について見直し,大学教育の質の向上を図るために本委員会を置き,審査基準,審査体制,審査プロセス,スケジュールのあり方などを中心にご検討いただくこととしております。2枚目に別紙として委員名簿をつけさせていただいております。
 資料2は,大学の設置認可制度についての資料です。
 公立または私立の大学の設置は,学校教育法の規定により,文部科学大臣の認可が必要です。認可を行う場合,大学設置・学校法人審議会に諮問することとされています。大学設置・学校法人審議会では大学設置分科会,学校法人分科会の2つの分科会で法令の規定に基づき審査を行います。教学面については,文部科学省告示として認可の基準が定められており,学校教育法や大学設置基準などの法令に適合すること,その他の要件を定めています。
 大学設置基準では全体の設置計画について,設置の目的・趣旨,教育課程,教員組織,資料の2枚目に移りますが,名称,施設・設備等について基準を定めています。また,教員審査も行います。
 私立大学の財政計画・管理運営については,学校法人分科会で,文部科学省告示として定められている審査基準により,施設・設備の整備状況,設置経費,経常経費,財源,管理運営などについて審査を行います。
 例年,大学新設の場合は3月末,学部などの新設の場合は5月末に申請を受け付け,5カ月から7カ月かけて審査を行い,10月末ごろに審議会から答申をいただきます。その後,認可権者である大臣が認可の可否を決定するというプロセスです。
 3枚目はこの流れを図示したものです。
 4枚目は大学設置・学校法人審議会の機構図です。大学設置分科会の下に3つの審査会を置いて審査を行いますが,さらに,学問の専攻分野に応じて専門的な審査を行うため,合計約300人からなる28の専門委員会が置かれています。また,各審査会の間の調整などを行うため,運営委員会が設けられています。
 5枚目は委員29名の方の名簿です。
 6枚目は大学新設の場合の審査スケジュールです。大学設置分科会では専門委員会,審査会での審査の結果を審査意見として申請者に伝え,申請書の補正を行うというプロセスを2度繰り返します。書類審査,実地審査のほか,必要に応じ,面接審査も実施します。学校法人分科会でも面接審査,実地審査を行います。
 資料3は,設置認可に係る平成15年の規制改革の概要です。
 平成13年に総合規制改革会議から出された答申において,高等教育における自由な競争環境の整備のため,大学・学部の設置規制の準則化,これは審査基準をあらかじめ法令上明確化しておくという意味です。届出制の導入,大学・学部の設置等に係る認可に対する抑制方針の見直し,第三者による継続的な評価制度の導入が求められました。
 これを受けて,中央教育審議会で議論を行い,平成14年8月の「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」の答申において,設置認可及び設置後の対応を含めたトータルシステムを見直すこととし,設置認可のあり方の見直し,第三者評価制度の導入,法令違反状態の大学に対する是正措置について提言がなされました。
 設置認可の見直しについては,学校教育法の改正により,学部などの改編のうち,学位の種類と分野に変更のないものは,認可でなく届出でよいことになりました。また,大学などの設置を抑制する方針を定めていた審議会の内示を廃止し,あわせて,工業等制限法の廃止に伴い,大都市圏での大学などの設置の抑制も撤廃されました。さらに,従来は審議会の内規などで定めていた審査基準について,一覧性を高め,明確化するため,原則として告示以上の法令に規定し直し,その際に従来あった基準の整理も行ったところです。
 認証評価制度の導入については,学校教育法の改正により,全ての大学が7年ごとに文部科学大臣の認証を受けた評価機関の評価を受けることが義務化されました。
 法令違反状態の大学に対する是正措置については,学校教育法の改正により,閉鎖命令に加えて,その前段階での改善勧告,変更命令という仕組みが設けられ,段階的に是正を求めることができるようになりました。
 資料の2枚目は,これらを含め,近年の大学設置認可制度に係る主な規制緩和の状況をまとめたものです。
 資料4は,最近15年間の公私立大学の新設に係る申請・認可状況です。特に,グラフのオレンジ色の矢印のところをご覧ください。従前は私立大学の新設については原則として抑制する方針がとられていました。平成16年度の開設分からこの抑制方針が撤廃されるとともに,構造改革特別区域法の改正により,株式会社による学校の設置が認められ,この年,申請件数が増加しています。平成18年度には株式会社による専門職大学院の申請が大きく増え,不認可または取り下げにより認可が認められなかったものも4件ありました。この年以降,申請・認可の件数は減少傾向にあり,申請の取り下げや不認可も増えています。
 資料5の1枚目は,平成21年度以降に開設された大学・短期大学の学部等の分野です。近年,新たに設置される大学の傾向としては,全体の2分の1が看護など,4分の1が保育などの分野で,この2つの分野で全体の4分の3を占めている状況です。
 2枚目は,平成21年度以降に開設された4年制大学32校の内訳です。短期大学の改組によるものが47%,専門学校の改組によるものが18%,この他,既に短期大学や専門学校を設置している学校法人が大学を設置したものがあわせて25%,新たに学校法人をつくって大学を新設するものは6%です。
 資料6は,平成24年度の私立大学の入学定員充足状況です。
 私立大学全体では,入学定員を100%以上充足しているのが54%,80%以上100%未満のところが25%,80%未満が21%です。このうち,右のグラフですが,平成15年度以降に開設した大学について見れば,100%以上が61%,80%以上100%未満のところが28%,80%未満が11%であり,私立大学全体と比べれば定員充足状況は高くなっています。
 2枚目は,平成15年度以降の入学定員充足状況をグラフで示したものです。一番下の青が100%以上,その上の紫が80%以上100%未満で,これらを合わせた充足率80%以上の大学の割合は平成22年度以降,ほぼ同じ水準で推移しています。
 3枚目は,1枚目の右の円グラフにあった平成15年度以降に開設した私立大学の今年度の入学定員充足率を,開設年度別に見たものです。平成16年度に開設された大学で今年度の入学定員充足状況が比較的低いといったことなどが分かります。
 資料7は,参考となるデータなどです。1枚目は,近年の大学・短大数の推移です。下の赤が大学,上の青が短期大学です。短期大学の数は,4年制大学への移行や廃止により減少しており,平成13年度以降は大学・短大の合計数も減少しています。国立大学は平成16年度以降減っていますが,公立大学は増える傾向にあります。
 2枚目は,18歳人口と進学率等の推移です。棒グラフで示した18歳人口は平成4年をピークに減少が続いておりましたが,平成21年から32年頃まではほぼ横ばいで推移します。しかし,平成33年頃からは再び減少することが予測されています。大学・短大への進学率は平成22年度で56.2%,これに高等専門学校,専門学校を含む高等教育への進学率は79.3%となっています。
 3枚目は,大学・短大・専門学校への進学率を都道府県別に見たものです。京都府の79%と青森県の57%とでは22%の開きがあります。また,4年制の大学への進学率は,東京都の62%と鹿児島県の31%とで2倍の開きがあります。
 4枚目は大学の数を都道府県別のマップで表したものです。
 5枚目はOECD,経済協力開発機構のデータによる大学進学率の国際比較です。このデータには留学生も含まれています。我が国の大学進学率は上昇していますが,OECD平均と比べればまだ高いとは言えない状況です。
 6枚目は,25歳以上の学士課程,つまり大学の学部への入学者の割合です。諸外国では25歳以上の入学者の割合が平均約2割ですが,日本では社会人学生の比率は約2%にとどまっています。
 7枚目は,高等教育機関に在学する留学生の割合です。高等教育全体に占める留学生の割合はOECD平均で8%であるのに対し,日本は3.4%とその半分以下という状況です。
 以上が配布資料として事務局でご用意したものです。
 この他に2つの冊子を委員の皆様の席上に配付させていただいております。1つは「大学改革実行プラン」,これは文部科学省が今年の6月に取りまとめたものです。この23ページには,「大学教育の質保証の徹底推進」として,設置基準の明確化などによる教学の質保証のためのトータルシステム,経営上の課題を抱える学校法人について,実地調査などを経て,早期の経営判断を促進するシステムについても整理しておりますので,ご紹介させていただきます。
 また,林委員からご提出いただきました「市内大学と地域がつながるまち」と題する横浜市の資料を,委員の皆様の席上にお配りさせていただいております。
 資料の説明は以上です。

【浦野座長】  それでは,ただいまの資料説明に対しまして,何かご質問等ございましたら,お願いをいたします。後ほどの意見交換の中で疑問点があればということでも結構でございます。とりあえずはよろしいですか。
 今,資料の中で,例えば資料5で,新設の学部ということを見たときに,改めて今必要とされている専門職に対する需要といいますか,そういったようなところがこの保健衛生とか保育のところでは見られますし,いわゆる既存の学部というのはやっぱり少ないんだなという思いが強くしましたですね。
 それから,その次のページでも,やはり短期大学からの改組ということで,全く一から大学をつくるというのは意外と少ないんだなということも改めて感じたところでございます。
 さらに,資料6を見たときに,これも,そうなんだという思いなんですけれども,必ずしも定員に達するかどうかということだけが質の保証の問題ではないんですけれども,仮に定員に達するということが一つのメルクマールだとすれば,新設のところよりも,むしろ既存校のほうが相対的には数字として悪いんだなということもここで見てとれるわけでして,そういう意味からも,やはりこの大学の質の問題というのはトータルシステムの中で考えていく必要があるんだなということをこの資料からも思った次第でございます。
 それでは,取り立てて質問もないようでございますので,意見交換に移りたいと思います。
 今日は初回でございますので,特にターゲットを絞ってこの問題ということではなくて,大学の質を高めていくという意味で,例えば大学の量と質の課題とか,あるいは,この検討会のテーマであります設置認可のあり方とか,その他,システム全体のことでも結構ですので,皆様方から一言ずついただければと思っておりますが,どなたか皮切りに,いかがでございましょうか。林委員。

【林委員】  今日は申し訳ございませんが1時間で中座させていただきますので,お先にお話しさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 先ほどの田中大臣の教育の大切さというお話は大変胸にしみました。今日は基礎自治体の長として,都市経営の現場にいる者としてお話しさせていただきたいと思います。
 私,市長職の前は,13年間,経済界で経営職をやらせていただきました。そして,今この行政の現場に入りましたが,いずれも,原点は,やはり全ては人なんだということは本当に実感しているわけでございます。人材こそが全ての基本だということでございます。
 そういう観点から,大学設置認可に当たりまして,考慮すべきと考える点を3点申し上げたいと思います。
 まず,第1に,大学の数を増やすことによって,競争原理を働かせて質の向上を図るという考え方は教育現場にはなじまないと考えます。これは先ほどの田中大臣のお話と同じ考えでございます。
 経済界におりましたので,競争が質を高めるということは実感しているのですが,人の潜在的な可能性を引き出して教え導く,成長を促すという人を育てる教育の現場が単純に競争原理にさらされるのには違和感を覚えます。
 しかし,一方で,大学の数を減らせば教育の質が上がるという議論にもやはりこれは疑問がございます。教育は私たちの社会を支える本当に重要なインフラです。成熟社会,グローバル社会において競争力を高めていくには,多くの人々に質の高い高等教育を受けていただいて,有為な人材として活躍してもらうことが必要なわけです。
 そこで,ご提案は,既存の大学の質の向上と定員の弾力化を積極的に考えることが重要だということです。
 大学の数がこれだけ増えてきた昨今,多くの人々が質の高い高等教育を受けて,産業界や地域社会で活躍していけるようにと,中央教育審議会でも時間をかけて十分に議論をし,速やかに取り組むべき項目まで明らかにしていらっしゃいます。ですから,新たな設置を目指す大学があるとすれば,こうしたことへの認識と具体的な取り組みをはっきりさせていただきたいと思います。
 そして,第2の視点でございますが,自治体や地域社会,企業との連携,貢献についての考え方を大学設置認可に際しての視点の一つとしてはどうかとご提案いたします。
 横浜市は153年前にいち早く日本で港を開いた一つの都市でございます。さまざまな困難はございましたけれども,それを乗り越えてきたのはやはり,大学の知見や,いろいろな知恵をいただいたということが支えになったわけです。現在も,今日は清家様もいらっしゃいますけれども,横浜には28の大学があり,慶應義塾のような総合大学から薬学,芸術,工科,工学などの単科大学までもあります。今日は,「市内大学と地域がつながるまち」
というパンフレットを持ってまいりました。28の大学がネットワークし,大変な地域貢献をしていただいております。それは大学の役割として非常に重要でございますから,こういうことをどのぐらい考えていただいているのかといった視点を入れていただきたいと思います。
 その際に,具体的な方策でございますが,審議会の委員の方に,こういった地域社会の状況をよく知っている方,大学への市民の方の期待であるとか,大学へのニーズを把握している人材を加えていただければ,そういう視点が入るのではないかと。これも充て職にはしないで,高等教育への造詣が深くて,地域社会の大学への期待をしっかり理解している方,こういう方を委員にしていただければと思います。
 そして,最後でございますけれども,既存大学の統廃合や閉鎖などの状況が生じた場合に,学生の学びの機会を確保する仕組みを社会全体で構築しておく必要があると思います。今,文科省や県がそれぞれのお立場で,今回の学校法人堀越学園への解散命令がございましたが,在校生の転学などの相談支援に,尽力なさっているということですが,これからこういった問題が起きてくることを念頭に,常に体制を整えておく必要があると考えております。一番の被害者になってしまう学生さんを守らなければいけないと思います。
 以上でございます。

【浦野座長】  ありがとうございました。
 ただいまのお話,まさにトータルシステムで言っていただきまして,まず既存の大学の質の向上,定員の弾力化,これはまさに直球ですね。そして,設置認可に当たって,新しい視点で地域のニーズとか,あるいは,企業との兼ね合いとか,そんなことも聞いてみたらどうだろうかと。そして,3つ目はまさに要らなくなった大学,あるいは,統廃合が必要な場合等に学生の学びの保証をしてほしいと。こんな観点で,トータルにお話をいただきました。
 そのほか,いかがでございましょうか。北山委員,お願いします。

【北山委員】  これは文科省に対する質問ということになるかもしれませんが,今日配付されましたこの「大学改革実行プラン」で,先ほどご紹介ありましたように,23ページのところに現状の設置認可に係る課題であるとか,それから,その既存の大学についてのいろいろなアフターケアの問題であるとか,認証評価の問題,一番左側のほうにいろいろな課題ということが書いてあって,それで,平成24年度から直ちに実施,すなわち今年度から直ちに実施ということで,教学の問題と経営の問題に整理されております。
 この大学改革実行プランは6月に出たものでありまして,24年度,すなわち今年度から25,26,今年度を入れた3年間で実行をしていって,次の2年ぐらいで27年度からPDCAのCとAがそこに入るということです。この資料の1枚表紙をめくって目次のページが最初に出てくるわけですが,下のほうの17が今の23ページの話になるわけですが,ここに関連して,例えばその直前の財政基盤の確立とメリハリある資金配分,それから,少し上で13番,12番,11番,客観的評価指標であるとか大学ポートレート,評価制度の抜本改革等々,わりと関連度が深いところがここにのっているわけですね。この大学設置・学校法人審議会でもこのような現状の課題というのが論点として上がっております。
 お聞きしたいのは,実際にこういった問題意識を持たれておられて,今年度から着手されていると思うのですが,私なんかは企業人ですので思うのですが,いろいろこういった設置認可,ないしは,既存の大学の質の向上,この辺の問題点をもっとクリアに具体的に出していって,今どういうプロセスでそれを直そうとしているのか,新しい基準がどうなるのかとか,その辺の今の検討状況を教えていただけると,効率的な会の運営になるのかなとも思っております。

【浦野座長】  板東局長。

【板東高等教育局長】  私のほうから簡単に触れさせていただきまして,私学の関係は私学部長からも補足をさせていただきたいと思っております。
 今ご指摘いただきました23ページのトータルとしての質保証システムのことでございますけれども,これは実は大学設置・学校法人審議会のほうでも委員の先生から,今までの何年かの経験の中から,もう少しいろいろな手続や審査のあり方などについて見直しが必要ではないかということもご指摘いただいておりますし,それを改めて整理させていただいて,これから検討していこうというような心づもりも実はあったところでございます。
 大学分科会のほうでも,例えばサテライトキャンパスについての取り扱いがちょっと明確ではないというようなことがあります。時としては,本体のキャンパスではなく,都会のサテライトキャンパスの狭いところに多くの学生、例えば中国などからの留学生を多く入れて勉強させているというような実態があるようなところがございましたので,このサテライトキャンパスの扱いなども含め,設置基準の問題などについても大学分科会のほうでの議論も始めましょうという取っかかりにさせていただいております。
 ただ,こちらの検討会でご指摘いただいたことなども含めまして,まだこれからさまざまな課題を整理させていただく必要があるというふうに思っております。
 経営判断と私学助成の話については,後で私学部長からお話を申し上げたいと思います。
 その他にも,例えば情報公開とか評価システムのあり方といったような点についてもその前の方にご指摘の箇所がございます。情報の公表につきましては,大学ポートレートのあり方などについて,今,検討会を設けまして議論を進めてきているところでございます。まだこれは途中過程ですけれども,一層の情報公開の推進を図っていきたいという検討に既に着手されているところでございます。
 それから,今後、評価のあり方についての見直しもしていきたいということで,課題の整理をさせていただきつつあるところです。
 まだ検討の途上のものも多いわけですけれども,そういったところで大学の質保証のために必要な課題について全体の中で整理をしながら検討していきたいということで,改革プランに盛り込んでいるところでございます。

【小松私学部長】  失礼いたします。法人経営の方について補足させていただきます。
 お手元のこのプランの23ページの真ん中のこの青い色の「早期の経営判断を促進するシステムの確立」というところでございます。24年度から実施ということでございますけれども,まず,経営状況について,今までも私学事業団と私どもで各大学について基本的なところはさせていただいておりますけれども,この分析が今までの通りでいいのかということがありまして,もう少し詳細な分析指標等で行わなければいけないということでここでまとめておりますけれども,これはこの時期から新しいある程度詳細な経営指標を立てて,私どもは多角的に見るように,現在,いたしております。
 それから,それに基づきまして,実地調査にいろいろ行きますけれども,これの今までの最大の問題は,経営の側から見る場合と教学の側から見る場合と両方必要なんですが,実はその両者は結構相互に影響し合っておりますが,どうしても私ども縦割りの弊害が生じますものですから,大学の方も気づくべきこと,私どもの方もアドバイスできることが抜け落ちることがございました。
 そこで,私ども私学部と私学部以外の高等教育局の教学部門とが混成部隊をつくるような形に直しまして,総合的に見るようにいたしております。
 その横の経営計画の策定の段階的な経営指導,早期の経営判断の促進というのは,個別の形式としてではなくて,それが充実するような形でやろうということで,今,取り組み中でございます。なお,この後に,経営改善の見込みがなくて非常に問題が大きいところについては役員の解職勧告や解散命令となっております。この計画をつくったので行ったということではなくて,結果において,1件,解散命令に至っているものがあるという状況でございます。
 それから,この下にメリハリある私学助成,経営支援,指導とございますが,大変恐縮です,ちょっと1ページだけ戻っていただいて22ページのところでございますけれども,この22ページは私学助成の扱いでございます。一番左が現在の取り組みということで,白い丸で幾つもの項目が書いてございますが,私学助成は機械的に行うものではなくて,こうしたものにつきまして,問題があるものについては減額していく,あるいは,それを年々強化するなどの形でメリハリをつけておりまして,一番下にありますが,現状でも10校に1校程度は完全に不交付,全く行かない状態になっております。
 これを,24年度に,そこに書いてありますような赤い字で書いてあるものが新しい取り組みとして現に反映しておりまして,来年度以降については一番右側のような形で全体の重点化を図ろうとしております。
 こういった形で現在進行中という状況になっております。

【北山委員】  ありがとうございます。一言だけ。
 6月にこの大学改革実行プランを発表されて,中教審の大学分科会でも申し上げたことなのですが,いろいろこの大学教育の大きな質的転換を目指してPDCAを早く回していくということで意欲的な計画だと思います。
 大学教育,教育というのは日本の根幹というふうに大臣もおっしゃっているのですが,文教費全体,すなわち,こういった大学改革実行プランを含む教育全体の問題が,国全体の方針としてしっかり位置づけられることが大事だと思います。今,社会保障とか,そういった割と私どもの年代の方の話が多いのですけれども,若い世代に対する投資ということで,この大学,高等教育の実行プランもかなりお金がかかるところがあると思います。よく言われていますが,高等教育の公財政支出,GDP対比で0.5%というOECDでほぼ最下位というような現状に照らして,特に私学が大学のほとんどなので,その辺の予算の振り向け方というか,そういったことを,文科省だけじゃなくて,国全体のしっかりした方針ということで位置づけていただけたらなと思います。

【浦野座長】  ほかにいかがでございましょうか。佐野委員。

【佐野委員】  ご承知のように,私学,4年制大学は75%以上が私学に在籍している,短大では90%を超えているという状況の中で,日本の公教育,これを支えている私学というものを見たときに,やはりもう少し社会的な公器としての説明責任の果たし方であるとか,効果的な果たせるべく制度設計がいま一つちょっと見えにくいのかなという気がいたしております。
 この効果的に説明責任を果たせるような制度設計をしつつ,その姿勢に対する評価をこの認可のときにも経営者に求める,理事者に求めるということが1つポイント,必要ではないかなというふうに思うんですね。
 先ほど,局長からもご説明のありました大学ポートレート,この中でもいろいろトータル的な情報発信ということがうたわれておりますけれども,特に私ども公認会計士という目で社会,いろいろ事業体を見ている立場から申し上げますと,やはり,教育情報だけではなくて,経営情報,事業情報,こういった財務状況を含めた私学の経営について見える化,情報発信をしていけるような制度設計があれば,もっと社会の信頼を得ることができる。例えば日本では大変寄付金の割合が低いということもありますけれども,やはりそういったところにもつながってくるのではないかなと思います。
 また,社会全体で見える化された情報を見る,チェックをするという仕組みの中で,私学,今,大変経営困難になっている学校も多いわけですけれども,自助努力のきっかけをつかむこともできるのではないかという気がいたしております。
 そういったことで,情報公開について,教育情報のみならず,トータル的な制度設計,これは平成16年の私学法の改正で,昔に比べますと随分制度はきちんと,透明性が高まったようには思いますけれども,まだそれでもやはり不十分なところがあるのではないかと思われますので,この辺のところの制度設計を一緒にぜひ考えていただき,また,この設置認可のときのポイントにしていただければというふうに思っております。以上です。

【浦野座長】  佐藤委員。

【佐藤委員】  今日は大臣が直接おいでになって,このようにお話を伺うことができたのは,とてもよかったと思います。
 大臣はご自分のクエーカーの学校での体験からお話しくださったわけですが,やはり教育の質の向上を大学だけでするは難しいと思います。国際的に見ても,いわゆる中等教育の部分での果たすべき役割をきちんと果たしているのかどうか。大学に入って補習教育をやらなければならないというような制度というのは,本当に高等教育の質を向上させるためによいのかどうかということも,検討できたらよいと思います。
 それから,私は現在,大学設置・学校法人審議会(設置審)の会長をお引き受けしているわけですが,現状は準則化の原則によって設置認可の作業はされ,認可後は完成時までアフターケアで追跡をし,その後は認証評価として7年に一度の評価を受けるというような形で,規制緩和以降ずっと我が国の高等教育の質を維持するよう努めてきたといえると思います。
 今日の資料の3の2枚目に,平成元年以降の規制緩和がなされた項目のリストを挙げてもらいましたが,私たち審査をする立場から言うと,規制が緩和された中で,それに従って申請がなされれば,その時々の設置基準を満たしているかどうかで判断していくよりほかありません。設置基準を満たしていれば,これを不可にするという手だてもありません。それから,もう一点は教育内容については専門委員会で是正意見,改善意見,要望意見,その他の意見をしており,それに対応して申請の補正がなされれば,それを受け入れざるを得ないというような状況があるのではないでしょうか。
 したがって,今の設置基準の範囲内で現在は審査をしているわけで,現在すぐできる最大限のことは,基準の運用について厳格にしていくことではないかと思っております。
 また,最近聞いた独立行政法人労働政策研究・研修機構のいろいろな調査によると,私たちが量的に拡大をしてきた大学というものは,社会に出た後の雇用の安定性や,離職率の低下などでは,極めて有効に働いてきたと考えてよいのではないかと思っております。
 ですから,問題は大学を出て生きる力としてどれだけ身につけさせるかということを中心にして考えるべき,ということです。多分,大臣や私どもの年齢ですとせいぜい10%強しか大学に進学をしませんでしたが,今56.2%ということは,高等教育を享受する裾野が相当広がったということです。もう一点は,大学が従来と違って学問の場というより,むしろ,多くの私立大学はそうだと思いますけれども,いわゆる職業教育,プロフェッショナル・トレーニングをしていかないと社会に出せないというような状況になっています。そこをどうやってきちんと整理していくかということを考えないと,いけないのではないかと思っております。
 したがって,大臣のメディアでのいろいろなご発言を受け止めると,設置認可の在り方のみではなく,トータルとして大学教育をどうしなければならないかということを,考えていかなければなりません。認可のあり方に対してはその時々に問題になっている点を改善していくよりほかないわけで,日本の高等教育のあり方そのものにまで入っていく必要があるのではないでしょうか。また,今回の中教審の答申を受けて初めて中等教育と高等教育の連携ということについて議論が始まったところです。今まではみんな縦割りで議論してきたわけですが,そこも含めて考えないといけないと思っております。

【浦野座長】  それでは,清家委員。

【清家委員】  ありがとうございます。
 冒頭に田中大臣が規制緩和の問題を提起されて,今,佐藤委員もそのことに触れられたわけでございますが,ここで言われるときのいわゆる規制緩和の規制というのは事前規制ということだと思います。そして,設置審査というのは典型的な事前規制でございます。私はこれはどうしても,しかも,厳格な事前審査が大学の設置においては必要だというふうに思っております。これは皆さん,同じようにお考えだと思いますが,改めてその点を確認したいと思います。
 その最大の理由は,大学教育においては,小・中・高でもかなりそういうところはございますけれども,とりわけ大学教育においては,教育を提供する大学と教育を受ける学生の間の情報の非対称性が非常に大きいということですね。教育の質についてもそうですし,教育の内容についても,端的に言えば,学生は大学に行って,勉強するために大学に行くわけですから,事前に勉強する内容が全てわかっていて,その質がどんなものであるか評価できれば,そもそも大学に行く必要はないわけで,そういう面では,大学にこれから行こうとする学生と,その教育を提供している大学の間には,圧倒的な情報量の差,非対称性があるわけですから,その意味では,その大学が提供する教育の質というものがどういうものであるかということを,しっかりと事前に何らかの形で担保しておかなければいけないわけです。そして,そのことは,今言ったような理由から,やはり大学教育について深い見識を持っている専門家が中心にその審査をしないと,その質についてはわからないということで,私はその意味では,今の設置審のあり方というのは,そういう,経済的に見た大学教育という視点から,まことに理にかなったものだというふうに,これからそのスキームについて細かくいろいろ見直すことは必要だとしても,私はそういう意味で理にかなったものだというふうに思っております。
 それから,事前規制,しかもかなり強力な事前規制が必要なもう一つの理由は,例えば,悪い教育をしている大学は,やがてつぶれて,悪い教育サービスが提供されなくなるというふうに,事前規制を緩和して,事後的な淘汰にまつのがよろしいんだという考え方に立ったときに,これは通常のサービス等ならばまだ良いわけですが,教育の場合,例えば,若いときの何年間かを棒に振るような若者が出てきてしまうというのは,その本人にとっても大きなロスですし,また,社会にとってもロスですので,そういう意味でも,やはりきちんとした教育が施されることが,教育の内容だけではなくて,経営的にも担保されていなければいけない。
 そういう意味で,私は,後で申しますように,退出のルールというようなものをより明確にする必要はあると思いますけれども,基本的には,やはり大学は,ひとたび設置された大学が退出するというようなことは,よほどのことがなければないというふうに考えなければいけないと思っております。だからこそ,これはまたちょっと別の視点になりますけれども,例えば,投資効率が上がらなければすぐに退出するといったような営利企業が教育に参加することは,その意味でも許されないというふうに思っております。
 しかし,さはさりながら,万やむを得ず,大学の経営がさまざまな理由で,これは大学経営主体だけの責任ではなく,立ち行かなくなるような場合もあるかもしれない。その際には,やはり,今般,創造学園閉鎖命令のケースはそれなりに私も理解しておりますけれども,段階を経て,学生等にも準備ができるようなプロセスで,ちょうど設置が明示された基準に基づいて認可されていくように,退出の場合も,あらかじめ明示された基準に基づいて,段階的に,ここまではどうで,ここまで来たらどうというような,より透明性の高いルールにしていったほうが良いのかなという感じがいたします。
 最後に,私ども私立大学の立場から申しますと,先ほどから北山委員,佐野委員から,大変温かいご理解をいただきまして,私ども大変ありがたいと思っておりますが,まず佐野委員が言われたように,情報の徹底的なディスクローズ。特に私は佐野委員が言われたことで大切だと思いますのは,経営についての情報のディスクローズですね。財政,財務状況等についてのディスクローズというのを,もっと徹底しなければいけないというふうに思ってございます。
 ただ,さきほどの話に戻りますけれども,教学の内容については,どんなに情報をディスクローズしても,残念ながら,それをこれから受けようとする学生には,完全にそのことを評価することはできないので,だからこそ,やっぱり情報の開示だけでは不十分で,むろん事前の規制による質の担保が必要だということはあると思いますが,しかし,その前の段階として,情報のディスクローズを徹底することは必要だと思います。
 ただ,そのときに,もう一つお願いをしたいのは,教育の質というのは,全ての大学に共通の基準を満たすということと同時に,私立大学の場合には,やはり一つ一つの大学が建学の理念を持って,例えば,大臣の行かれた高校ならばクエーカー教徒の理念であるとか,私どもの大学であれば福澤諭吉の精神であるとか,その建学の理念に基づいて,やはり個性のある教育が行われているということが私立の大学の最大の特徴でございます。この個性ある教育が行われるということは,すなわち社会の中に高等教育の多様性を担保するという意味でも非常に大切でございますので,この設置基準を考える際には,国公私立を問わず,共通に満たすべき基準ということと同時に,私立の場合には,とりわけその建学の理念が最大限に生かされるような仕組みになっているように,あるいは別の言い方をしますと,この事前審査の在り方が,私立大学も含めて,大学の画一化を招いたりすることがないように,そういう視点を,ぜひ取り入れていただきたいなというふうに思ってございます。どうもありがとうございました。

【浦野座長】  それでは,濱田委員。

【濱田委員】  ありがとうございます。
 冒頭で大臣がおっしゃいましたように,やはり人生,一人一人の人生にとって教育の重みというのは非常に大きいものがあると思います。また,特にこれから少子・高齢化社会と言われる中で,若者の数が減るというふうに,何となく悲観論ばかりあるんですが,そういう時代には,やはり一人一人の価値をどれだけ高めていくかということが,この日本社会にとっては非常に大きな課題だと思っております。
 そうした中で,先ほどご説明いただいた資料を見るにつけても,ほんとうに何で日本の社会は進学率がこの程度なんだろうという思いを強くいたします。これだけの文化的な力,知的な力があり,さらにそれを伸ばしていこうという国家であれば,もっと進学率があってもおかしくないというふうに思いますし,それを担保する大学の数という意味では,私は大学がまだあってもいいのではないかというふうに思っております。
 そしてまた,大学が増えれば,当然,そこには競争というものが起こるわけで,そこでの淘汰ということが議論になってくるわけですが,ただ,私はよく競争と淘汰というふうにセットで言われるんですが,同時に競争ということは必ずしも淘汰だけではなくて,それぞれの生き残り,生き延びつつ,かつ質を向上させていくという,そういう側面が必ずあると思います。そういう意味では,どうも今までの規制緩和以降の競争というのが,質の高い競争ではなくて,とにかく質の悪いところには退場をいただくという,そちらの方向に専ら働いていた嫌いがないわけではない。それをどう転換していけばいいんだろうかという気がしているところです。
 1つは,そうした質のよい競争を生み出していくためには,やはり審査基準というものを考えなければいけない,見直さなければいけないという,そういう側面があると思います。
 それと同時に,そうした質の高さというものを大学が担保していく際に,これは大学だけに任せておけばいいのか,大学の自己責任だというだけで済むのかというところも少し気になります。つまり大学が質の高い競争をしていこうということを社会がもっと助けられないのかと,そういう思いがするんです。例えば,こちらのグラフにもございましたように,進学率の低さはそうなんですが,この進学率の低さというのは,25歳以上の入学者の割合が少ないというのが,1つ,日本の大きな問題であるんですね。そうすると,やはり,このリカレント教育というものを考えていかなければいけない。これは大学の立場でもそうなんですが,同時に社会としてリカレントの在り方をどういうふうに位置づけるのか,また,そういう余裕みたいなものをどうやって職場でつくっていくのか,あるいはキャリアの中でつくっていくのか,そういうことも社会のほうで真剣に考えていただく必要がある。それとセットになって,大学の教育の質の改善というものがあり得るのだろうというふうに思っております。
 そういうことで,このたび大臣が提起いただいた課題を出発点にして,確かに大学の設置審査の在り方そのものを検討していくということ,これが正面的な課題ではございますけれども,これからの大学の在り方,大学の位置づけ,それから大学の教育と,またリカレント等の教育の関連,そういうものをどうとらえていくのかという,これは社会全体としても議論いただかなければいけない,そういう課題になってきているというふうに思っております。
 冒頭ですので,ちょっとそのような感想だけ申し上げさせていただきます。

【浦野座長】  相川委員,お願いします。

【相川委員】  感想という形になるかと思いますが,高校生の保護者という立場から言いまして,大臣がご自身の受けてきた高校教育について冒頭にお話をいただいて,やはり一人一人が振り返ったときに,自分が高校のときに,中学生から高校に上がるときに,どういう生き方をしていくかとか,そういうことがすごく後々大事になってくるのかなと,大切になってくるのかなというふうに思っております。
 今回のことで,保護者の中でもいろいろな意見がありまして,まず高校生の夢を実現するためには,やはり大学進学を選択する子どももいますし,すぐ実社会に就職という形で入る子どももいますが,そういう子どもたちが確実に学べる場所ということは,やっぱり最低限確保してほしいという思いが強くあります。
 そして,大学の設置をするに当たって,新設する学校がある。それは今まで設置審のシステムに従って認可された大学を,子どもや保護者はどういう基準でそこを選んでいくかという,その新しくできた大学,今まだある大学を選ぶに当たって,当然,自分の学力的な問題もありますけれども,保護者にしてみればとても大きな問題で,いわゆる学費の問題,そして,どういうカリキュラム,そこを卒業するとどういうことが得られるのか,そんな視点でやっぱり選びます。
 子どもたちは,自分がやりたいこと,自分が資格を取得するためにこの分野に進みたいというようなところで,まず選んでいくと思うんです。そして,それから成績が,とついてくるわけですが,そこはいわゆる子どもの学力の問題,これは高校の教育の部分でも話し合いになっていますが,これは中学,小学,いわゆる積み重ねのところで不足の部分があるのも実際としてあるのかなというふうに思っております。だから,大学の質というところだけの1点だけではなくて,高校教育,中学校,小学校の,ここの質も,またきちんと積み上げていかなければいけないのではないかなというふうに思っております。
 そして設置後の,今これらの資料を少し見せていただいた段階での感じた部分ですが,設置後,先ほどもどなたかの委員がおっしゃったように,既存の大学が閉校になることが起きては,本当はならないと思うんです。そういうことが起きないように審査をして,「ここは大丈夫ですよ」というふうに認可を出しているというふうに私たちは判断していますが,そこで自分の子どもたちが学んでいる大学が統廃合になったとか,閉校になるだとかといったときに,一番不安になるのは子どもたちです。そういう閉校というような方向になる前の段階で,7年ぐらいチェックするというようなことで,もし間違っていたら,後で訂正をお願いしたいですが,そういう途中でチェックをするという過程で,もう少し厳格なチェック機能がなされなければ,やっぱり最終的に被害を受けるのは,経営している大学側の被害はそうですけれども,私たちは子どもたちの立場から見たら,被害を受けるのは子どもたちだろうと。それはやっぱりあってはならないというふうに思っております。
 それで,先ほどもお話が出たように,やっぱり情報を,保護者も子どもも,どの大学がどういう形で今まで経営していたのか,新しい学校であれば,どういうプログラムがあるのか,どういう資格が得られるのか,そして,その資格が自分の将来のために,自立していくためにどういうふうに役立っていくのかという,そのような情報がきちんと提示していただけるようにしなければならないということは強く感じております。そういう子どもたちの思いを,社会で自立するために学んでいきたいという,この思いを私たちは大事にしたいと思っておりますし,認可を出した後の評価というところも,とても大切なところだなというふうに思っております。以上でございます。

【浦野座長】  寺島委員,お願いします。

【寺島委員】  遅れて来て申し訳ございません。何点か発言させていただきたいと思います。
 私,中央教育審議会に,もう10年ぐらい関わらせていただき,今現在も国立大学の評価委員とか,キャンパスアジアを含む大学の世界展開力のところで文科省の事業にも参画させていただいていますし,私立大学の学長として直接学生にも向き合っていると,そういう視点で,まず申し上げたいんですけれども。
 1点目ですけれども,先ほどから議論が出ていることはすごく大事で,やはり高等教育に関する世界の大きな流れを踏まえて,日本の高等教育の在り方について,哲学,基軸のところをしっかりもう一回考え直さなきゃいけないところに来ているのかなと。過去20年間を振り返って,日本の高等教育に対する改革論の背景には,間違いなくグローバル化かけるIT革命の世界が進行していると。それに日本の高等教育がどう対応するのかという形で,ある種のグローバリゼーション対応型の高等教育に再編していこうという考え方が哲学として根底に間違いなくあったと思います。その象徴が,産業界のニーズもあるんだということで,例えばMBAとか法科大学院なんていうものを日本にも的確に導入してくるのが大事だというふうに本気で思った時代があるんですね。ところが,例えばMBA,法科大学院なるものが現実にどうなっているのかということは,重大な反省と省察をもって向き合わないといけないテーマが,ここに見えてきます。高等教育における基本的な思想の在り方みたいなことは,世界の潮流も変わってきています。そういう意味で,どう我々が考えればいいのかというのが問われているというふうに僕は思います。
 それから2点目ですが,さっき清家委員も言っておられたんですけれども,やっぱりインとアウトと両方のプランを持って,この設置という問題を考えなきゃいけないと思います。明らかに,いわゆる私立大学のかなりのパーセントで,学生も集まらないというような現実がそこに横たわっているということは,必ず遅かれ早かれ統廃合という問題にぶつかるだろうと思います。そういったときのアウトの制度設計を,つまり退出の制度設計をしっかり段階的に準備していくということが今問われているんだろうなというのが2点目です。
 つまり,例えば,さっきのMBA,法科大学院でも,現実に統合大学院のような形にして,学生に迷惑のかからない形でソフトランディングさせていくというプランはものすごく重要でしょうし,私立大学において,地域ごとに,要するにカテゴリーをきちっと分けて,学生に迷惑のかからない形で段階的に収束させていくようなことも,クオリティーを担保する意味では絶対に必要になってくるかもしれない。それを準備しながら,新しい,個性的な,チャレンジングな大学というものを一方で設置審でしっかり認めていくという,この両立でないと,多分プランは成り立たないであろうと思います。
 それから,3点目なんですけれども,私立大学を中心にして,大学の経営基盤が非常に危ういというときに,先ほど濱田先生言っておられましたけれども,僕が一番気にしているのは,OECDと日本で,25歳以上の社会人が大学に所属しているパーセンテージが,OECD20%,日本は2%,つまり社会人が学ぶ場になっていないんですね。20歳前後の若い人が学ぶのが大学だということに日本ではなっているんです。
 ところが,例えば社会のニーズ,例えばNPOだとかNGOの活動なんかが,社会を支える仕組みとしてものすごく重要になってきています。そのマネジメントにも一定のスキルとエキスパティーズが要ります。そういうものを地域の社会で,NPO,NGOマネジメントなんかの講座を,1つの資格制度設計なんかをしっかりつくって,大学で学んで,その資格を取った人がNPOやNGOに立ち向かうということにしないと,NPO,NGOのクオリティーも,日本の場合は,どんどん乱立しているけれども劣化しているみたいになっちゃうと。
 要するに,高等教育の場で,そういうものを社会人に開放して,ただ単に教養を高めるための社会人講座じゃなく,きちっとした社会参画の場として大学を生かしていくというか,そういう形の制度設計があり得るだろうというのが3番目のポイントです。
 それから,4番目なんですけれども,現実を直視したいという問題意識なんですが,大学と社会のリンケージのところに対する解析・分析を,この際,文科省としても,ほかの省庁と力を合わせながら,しっかりと,もうやるべきところに来ているんじゃないかと。
 例えばというと,まず問題意識で申し上げると,去年,日本の大学院を卒業して,修士・博士号を取ったという形で世の中に出た人が9万7,000人います。ところが,そのうち2万4,000人が無業者です。わかりやすく言うと失業者です。要するに,高等教育を出ながら,大学院さえ出ながら,早い話が,いわゆる生活も不安定だというような形をつくっているんですね。それは何かというと,日本の経済・産業・社会構造が,この20年間で,ものすごい勢いで変わってきた。
 なぜ大学進学率が高まらないかという濱田先生の問題意識にも,私の勘では,右肩上がり時代の時代から,大学も迎える側も,いわゆる時代の変化がしっかり掌握されていない部分があるといいますか,明らかに日本の貧困化がものすごい勢いで進んでいます。例えば,200万円以下の所得で働いている人が,今,労働人口の34%を超えた。大学なんかに行っている余裕をなくしている家計の人が,どんどんどんどん増えていると。あまり余計なことを言いませんけれども,過去10年間に,製造業,建設業から400万人雇用が減ったと。サービス業で420万人,雇用を増やしたと。だけど所得は,建設業,製造業に比べて,サービス業は平均120万円低いと。ですから,ジョブは何となくあるけれども,この10年来,所得水準は極端に下がっているんですね。そういう中で,少子・高齢化に向かっていきます。だから,大学のいわゆる制度設計が,例えば,建築・土木なんていうところが,社会の構造の中でものすごくニーズが落ちてきているのに,いまだに土木学科だとか建築学科という形でもって,一旦学部を構えたら,どんどんとり続けるんですね。社会の構造変化に合ってないんですね。
 しかも大学は,私自身も含めて,研究力と教育力のうち,私学が現実に向き合っているのは教育力です。つまり世界レベルの研究水準を高めようということより,現実に向き合っている学生の社会人としての基礎力を高めて,何とか世の中で立派に生きていけるような力をつけて送り出してやりたいということで,教育で学生に向き合うというところで,大部分の私学の文科系は立ち向かっているんだろうと思います。そういう中で,仮に「世界に一つだけの花」と言って個性を強調して送り出していっても,社会が期待している人材というのは,現実には,時給1,000円ぐらいでバーコードをなでるような仕事というのかな,要するに,平準化したタイプの仕事しかニーズとして社会にないから,さっき言ったようにミスマッチが起こるわけですね。そこで学生に個性を身につけろ,いわゆる文化力を身につけろ,人間力を身につけろと言ってけしかけても,迎え入れている社会の構図がそう変わってきているわけですね。
 さて,そういう状況下で,世の中をより良くして,参画して,高める側に回る人材をどうつくっていくのかですね。ですから,社会が現実に迎え入れている人材と,大学が本気になって向き合って教育プログラムをつくっているニーズとにギャップが起こり始めている。それに対して,冷静で的確な分析が要る。この局面ですね。きれい事を言っていられない部分があるわけです。そこのところを,もうそろそろ本格的に分析しなきゃいけない,あるいはそれに対して制度設計を変えて,改革というのは制度設計を変えなきゃどうにもならないわけですから,そういう意味で,向き合わなきゃいけないところに来ているのかと。そういう意味では,設置審ということを一つのきっかけにして,大変いい転換点に差しかかっているのかなというふうに思います。

【浦野座長】  それでは,及川委員。

【及川委員】  ありがとうございます。高校の側からの感想です。
 数年前,高大接続テストが議論されたとき,高校側の大方の受けとめ方は,大学教育を受けるのに必要な学力を身につけないまま入学をしてきている学生が多く学力の低下は明らだ,高校側は,もっとしっかりと基礎学力を身につけさせてほしい,そのために基礎的な学力を把握する仕組みとして検討されたというものでした。これに対し,それは大学の経営の問題だろうというふうな受けとめ方でした。つまり大学入試の選抜機能が低下をしてきて,大学の方が学生確保の必要性から,例えば,推薦とかAOといったような形で,それが全て悪いとか,そういうことではありませんけれども,いわゆる非学力選抜を行っている,また少数科目主義にどんどん走っているという状況の中で,大学が求める学生の質を確保できていないという側面があるわけだから,大学が求める学力の学生を選抜するための選抜方法をとればいいだけの話であるという思いです。結果として定員割れを起こす大学が出てくるのは仕方がないことだろうと受けとめていました。
 そういう意味では,大学の質の確保をするのであれば,募集定員を抑制したり設置基準,審査基準を厳しくすることが筋だろうと思います。
 ただ,先ほどから出ていますように,OECDの大学進学率の平均に比べると,日本の場合はまだ低く,知識基盤社会に向けた質の高い高等教育人材の需要が今後も高まっていくことを考えると,本質的な問題は,募集定員の抑制や設置基準の厳格化といった問題ではないのだろうと思います。
 先ほど佐藤先生が仰いましたが,中等教育との接続が大学教育の質の保証には欠かせないことだと受けとめております。その接続の部分で,高校教育の質の保証を前提とした上で教学面での学士課程教育の質の確保の仕組み,手だてが求められているのだと思います。以上です。

【浦野座長】  黒田委員。

【黒田副座長】  私は一地方の大学を運営している立場でありますが,随分前ですけれども,学校法人分科会の会長をやっているときに,申請者から提出されるデータが,財務計画が曖昧なんですね。これでは2年ももたないだろうなと思うところまでも,準則化された基準に適合していますから,認可せざるを得なかったというのが,その当時のことなんです。ですから,その辺のことを,先ほど佐野委員も言われたように,私学の財政状況というのは,私学をつくるときは施設・設備は全部設置者負担主義で,設置者が負担することになっているんですね。それを忘れて,学生が入ってきたら,その授業料で建物も建てるというふうな話になってしまうものですから,財政状況が設置した途端に悪くなってしまうという,そういう状態が起こっていた。当時,ちょうど規制改革が起きたときなので,教育に経済的規制の緩和を取り入れることはおかしいんじゃないかと。大学というのは人を育てる,将来,何十年もかかって日本の国を支える人材を育てるところであるから,ある程度,設置するところの入り口は規制が必要なんだと。
 例えば,「道路交通法を緩和して,右でも左でも走りなさいといったときには車社会は成り立つのですか」という話をしたことがあるんです。それと同じように,大学というのは人材を養成するところなので,一定の日本の将来の方針というのがある。その方針に従った人材,これは世界を眺めて,日本はどういう立ち位置に行くかということも含めてですけれども,高等教育というのは,それぐらいの自覚を持ってやらなきゃならない。特に大学というのは,その中の最高学府であると言われている。それが日本の将来を担える人材をつくるというのが非常に重要なんですね。そのためには,この入り口をどうするか。それから入った後の,これは実行プランに,今後24年度からこういうふうに変更するのだということが示されていますけれども,これは非常に重要なことなんですね。
 アフターケアといっても,完成年度に達しないと大学に行かないというふうなことでは困るので,毎年毎年,やっぱりきっちり基準に則ったことをやっているかどうかということはチェックする必要があると思います。それをやりながら,最終的に7年目に認証評価を受けるという,そういう流れをきっちりつくっていくことが重要だろうと思うんですね。
 先ほどから,皆さんからも問題提起されて,そのとおりになったら本当にすばらしい高等教育機関ができ上がるのではないかというふうに思いますが,一番問題になるのは,社会と大学の関係なんですね。これが今,現実問題としては,しっかり,しっくりいっていない,ですから卒業しても就職できない,ミスマッチが起きているという,そういう状態があるわけです。これは先ほどのOECDのデータでも示されているように,社会人が大学に入ってこられないシステム。私のところも社会人対象の大学院を持っていますけれども,来るときは会社を辞めて来る,あるいは会社に黙って夜来て,土日の時間を使って勉強しているという。「なぜ会社にちゃんと言わないんですか」と聞くと,「それをやったら,辞めるか休職するかしろと言われちゃう」という,そういう状態だと言うんですね。だから,社会全体が,先のことを見据えた改革に人材をどう生かしていくかということをしっかり考えていただかないと,社会人の受け入れというのはなかなか進まないと思うんです。出入り自由なシステムづくりといいますか,社会と大学とを自由に行ったり来たりできるような,そういうシステム。
 それと大学でも,これだけ細分化されてきていますので,大学間で渡れるようなシステムづくりですね。自分の大学でこういう分野を,Bという大学ではまた別の分野を勉強するという,そういうことができるようなシステムづくりですね。そういうことができるような基準といいますか,そういうものをつくり上げていくという,そういうことが必要だろうというふうに思います。
 切実な問題としては,地方にある大学が,非常に今,苦しんでいるわけですね。その地方で人口がどんどん減って,もう大学が成り立たなくなってきているという,現実として,そういうところもあるわけです。それは18歳人口だけを頼っているからそういうことになるわけでして,ある地域へ,私も行ったことがあるんですが,そこは社会との関わりで,18歳人口と言われる学生数は定員割れを起こしているんですけれども,すごく活発に地域を支えている大学があるんですね。そういうことが地方では必要だろうと思うんです。これが地域の経済界と官公庁と地域住民との連携といいますか,そういうことで大学というのは支えられるんだという一つの見本ではないかと思うんです。そういうこともありますので,ぜひとも,この18歳人口だけで,財政上がいいとか悪いとかじゃなくして,社会との関わりにおいて,その大学がどう生きていっているかということもチェックの中に入れていただくと,もう少し様子が変わってくるんではないかというふうに思っています。以上です。

【浦野座長】  佐藤委員,どうぞ。

【佐藤委員】  今日は大学設置認可の在り方に関する検討会ということですから,若干,資料について述べさせていただきたいと思います。ある意味で質問になるかもしれません。
 資料7の4ページに都道府県別の大学数というのが出ています。ここには国立86,公立92,私立605校となって学校数が増えていることが示されているわけですが,それだけではありません。従来は恒常的学生定員の抑制ということを掲げて管理をしていましたから,抑制の例外分野を除いて学生数や大学数は増えなかったのですが,最近は大きな大学がさらに大きくなるという現象がずっと続いています。
 例えば,各私立大学の定員を一番大きな大学,多分6万8,000人ぐらい在籍者がいると思いますが,筆頭に順番に並べると,日本の私立大学に在籍している学生の2分の1は55大学に在籍していて,それ以外の550の私立大学は残る50%を細かく分けているような形に,現実問題はなっているのです。そういう意味では,今,認可の在り方に関してだけ言いますと,全ての大学が定員を自由に増やせるとした場合,制度としては成り立たないと思います。しかし私は一方で,小さな大学でよい教育をしているところがつぶれるような国のシステムはよくないと思っていますから,それをどうやってバランスをとっていくかということも考えながら整備をしなければなりません。したがって,議論をするときに大学数だけではなくて,学生がどこに今いるのかということも含めて,データとして出していただいていったらいいのではないかと思っております。

【浦野座長】  ここまでいろいろご意見をいただきました。
 冒頭,期待申し上げましたとおり,ほんとうに設置認可のところから退出のところまで含めて,幅広いご議論をいただいたというふうに思っております。
 この検討会は設置認可というところに一応焦点が当たっていますので,今,いろいろお話していただいた部分で,この部分を設置認可のところで見ておいたらいいだろうなというようなことがあれば,それをとりあえずは求めていきたいというふうには思っているところでございます。その辺のところを,今後いろいろ議論をしていきたいというふうに思っております。
 ここから先,ちょっと私が個人的に,皆さん方のお話も伺いながら思ったことなんですけれども,濱田委員の方から,まだまだ日本の進学率は足りないんだというお話がありました。これはやはり,言い方が少しおかしいかもしれませんけれども,普通の市民のレベルは,日本全体として,海外に比べて,やっぱり劣っているんだというようなことが,その進学率の差になって表れているとしたら,これはもう,やはり日本の国力の差なんですよね。かつてのようにリーダーだけが改革への意気込みを示して,問題解決策も示して,後についてこいというのではなくて,ごく普通の人が,それぞれの課題解決に向けて,考えることもできる,発言することもできる。そういう意味で,かつて教育を受けた人がリカレントという形で再教育を受けていくということは,やっぱりものすごく日本の国力の充実にとって大事なことだと思うんです。そんな視点も含めて,私はこの日本の高等教育というのが,ごく普通の市民のレベルが,世界の中で日本は1番なんだというところに行けるようにしたいなというふうに思うわけでございます。
 そんな視点も含めまして,この後,まだもう少し時間がありますので,次回以降,この設置認可というところを主に踏まえながら,こんなことを議論したらいいんじゃないかということがもしありましたら。今,佐藤委員からは,もう既にそういうご議論をいただいているわけですけれども,いかがでございましょうか。
 先ほど黒田委員のほうから,いろいろ具体例も挙げてお話があったんですが,例えば,事前の認可の場合で,教員の問題とか,あるいは図書館とか,あるいは校地の問題とかというところが,今,準則化された中で,かなり昔とは違っているというような話も聞くわけですが,そういった大学の質の根幹に当たるような部分で,どんなふうに黒田委員はお考えでしょうか。

【黒田副座長】  教員の資格審査というのは,私も厳格にやっていただきたいなと思うんです。大学の教員だけが免許を持たずになれる資格なんですね。ですから,ドクターコースを担当するにもかかわらずドクターを持っていない教授の方が結構いらっしゃると。そういうことがないように,やはり改善をしていかなきゃならないと思うんです。
 昔は日本はドクターは最後の最後にしか出さない,もう死ぬ間際にお土産でドクターを出すんだというふうなことがあったわけですけれども,そういうことではもうないわけですね。今,課程制になって,ちゃんと課程を修めたらドクターを出すというシステムになっていますから,それでいて教える先生がドクターを持っていないというのでは困るわけで,その辺は資格審査というのはしっかりとやっていただきたいなと思います。
 それから,これはもう規制緩和されてしまっているので,規制強化につながるということになるんですが,大学の校地ですね。これは一番若い活発な学部の学生が集う場所というのが,やはり必要なんですね。そこでいろんな会話ができて,人間形成ができてくる,そういう遊びの場が必要なんです。それを学生1人10平米でよろしいというふうな土地の規定にしたんですね。6倍基準が3倍基準になって,それが10平米まで落ちちゃったと。10平米で受け入れる学生の校舎が建つかといったら建たないんです。計算すると。そうしますと建たない部分は借地でよいと。それで不足する校舎は借家でいいというふうなことで認可されてしまうということが起きてきたわけですね。それを強化の方向に持っていけるのかどうか,私,わかりませんけれども,やはり学部学生を教育するならば,それにふさわしいキャンパスが必要だろうというふうに思います。
 社会人の受け入れとか,もう一度大学院というのは,街の真ん中で,一番集まりやすいところでやっていただければいいと思うんですけれども,学部教育をやるという,そういうところは,ちょっと考え方を変えていただいたほうがいいかなというふうに思っています。そういう面で,新しくつくる大学は,そういうところをちゃんとやって,私学の場合は設置者負担主義というのを,やっぱり守っていただけるような財政状況をチェックするという,そういうことが必要だろうというふうに思っています。

【浦野座長】  寺島委員。

【寺島委員】  設置審の佐藤委員にちょっと質問なんですけれどね。知識をしっかりしておきたいからなんですけど。
 例えば,今回の3つの大学という新設のうち,看護関係の学部というか大学が1つありましたよね。例えば,看護なんていうのは,地域社会のニーズというのかな。あれは北海道だったと思いますけれども,例えば,北海道の医療にとって看護学部のニーズがどの程度のものなのか。例えば,厚生労働省的な情報だとか,現地のニーズだとかに照らしてですね。つまり,設置基準的なものをクリアしていればいいじゃないかという判断以外に,そういう社会的現実みたいなものも,ある程度,判断材料として現実に検討しておられるんですか。そこの事実関係だけ。

【佐藤委員】  学生確保の見通しや,社会に出るときの受け入れについての見通しなどは,それを証明するための,いわゆるエビデンスを全て説明されて審査をしております。
 専門委員会,審査会,大学設置分科会各々がきちんと審査をしているということではありますが,明らかに不可であると言う法的なきちんとした理由が構成できない場合には,審査は継続しなければいけないということになると思っています。
 今回の新設校は3校だけですが,学校法人分科会ではかなりの数の審査をしております。それは学部の増設であったり大学院の増設であったりというようなことですが,新たな大学の申請数は,減ったと思います。学校法人審査会については,むしろ浦野座長からお話しいただいた方がよろしいのではないかと思います。
 最後に,今,マイクを持っているものですから,大臣にぜひお願いしたいことがあります。国際的に見ると,国連はアカデミック・インパクトという取り組みをしております。事務総長直接のイニシアチブで始めたことですが,世界の高等教育機関でそれぞれ取り組むべき課題を10の原則として決めて,各大学に取り組むことを促しています。現在120カ国,約600の大学がこれに取り組むということになっておりますが,その中の原則の1つに,人は誰でも欲すれば高等教育の機会を得られるということを目指そうではないか,というものがあります。我が国では進学率の問題とか,あるいは社会人の受け入れとか,いろいろな議論があるわけですが,私は,人間,人生を終えるまでの間に,本当に高等教育機関で学びたいと思ったら,いつの時点でも学ぶチャンスがあるというような哲学を持って日本が教育制度をつくらなければ,この時期,この時期という議論しか出てこないのではないかと思います。ですから,そういう意味では,日本の高等教育はどこを目指すかということは,是非大臣のご発言の中で触れていただけるとありがたいと思っています。

【田中大臣】  心得ました。

【浦野座長】  岡本室長,どうぞ。

【岡本大学設置室長】  少し補足をさせていただきたいと思います。
 ご指摘の看護の大学でございますけれども,札幌保健医療大学,北海道のものですが,こちらは北海道の看護師需給予測につきまして,厚生労働省が出しておりますものですと,平成23年度時点で4,335名の供給不足ということで,全国で2番目に供給不足が高い状況です。平成27年度予測でも1,723名の供給不足で,同じく全国で2番目に高くなっているということがございます。
 また,医療現場でも,チーム医療というものが志向されている中で,看護師の資質の高度化が求められているということがございますけれども,北海道の看護師養成の75%が専門学校に頼っているという状況があるということも,1つ,その必要性の審査の中では勘案したところでございます。以上でございます。

【浦野座長】  今の寺島委員の質問から始まった部分でいきますと,1つは,私も学校法人分科会で,いろいろ審査等,あるいはアフターケア等に行くと,思うんです。
 1つは,我々企業ですと,いろんな計画をつくるときに,ちょっと言い方がおかしいかもしれませんが,松竹梅というプランをつくりますよね。一番いいプランだけつくって,これでいくんだということはないわけですよね。そういう意味で,必ず私はアフターケアのときでも,そういう設置審のときでも,「あなた方にとってリスクは何ですか」と聞くんですけれども,ほとんど答えていただけないんですね。
 私たちはこういう教育でやるんだということで,それから落ちこぼれるようなことは全く考えていないのかもしれませんが,やはり経営面とか,あるいは学生に対する責任といったことからすると,最悪のプランでいったときに,それでも我々はこういうことで,あなた方の学習については担保しますみたいな,そういうようなことがないと,やはり間違ってくると思うんですね。その辺も,私は一つ,大学経営と企業経営の大きな違いかなということを感じている次第です。

【北山委員】  設置審でということで,これから議論していくという中に,もう既に現状の設置審がされているのかどうかわからないのですが,新設の大学といった場合に,ほんとうに真っさらな新設と,短大からの四年制への転換とか,いろいろなパターンがあると思うんですが,申し上げたいのは,いわゆる審査基準というか,そういった中で,ガバナンスがどうなっているのかという点で明確な権限規定があるか等をいれるべきではないかと。私学法の改正で,平成16年でしたっけ,もうがらっと国立大学みたいに変わるということで法律はできていると思うのですが,既存の大学について,改革が進まない大きな理由の1つに,教授会の力というのがよく指摘されるんです。そればっかりじゃありませんけれども。したがって,真の意味でのガバナンス,意思決定の在り方といった点も,ぜひ,こういう議論をするときに入れたらいいのではないかなというふうに思うのですが。

【浦野座長】  清家委員,どうぞ。

【清家委員】  ガバナンスについて一言。
 今おっしゃったことで,ちょっと1つ気になったのは,私立大学も国立大学と同じような,きちんとしたガバナンスと言われたんですけれども,濱田先生に大変申しわけないですけれども,私立大学は昔からしっかりとした経営をやっています。国立大学が新たに,今までそういう経営がなかったのを始められただけでありまして。

【北山委員】  法律上のですね。

【清家委員】  はい。ですので,これはちょっと誤解のないように。私立大学は,以前からしっかりとしたガバナンスをやっていて,国立大学が,そこに新たにその仕組みを取り入れられたというふうに私どもは考えておりますので,決して国立大学のまねをするのがいいガバナンスだとは私は思っておりませんので,その点だけは,ちょっとよろしくお願いします。

【浦野座長】  ただいまの点ですけれども,確かに設置審の段階でも,ガバナンスの外形だけは,もちろんきちんと見ますよね。例えば,親族だけに偏っていないかとか,あるいはお年寄りばっかりいないかとか,そういう外形的なことは見ますけども。あとはアフターケアの段階で,ガバナンスというのは,かなり私は重点的に質問をいつもするんですけれどもね。それでも北山委員がおっしゃったような意味での期待感からいくと,当然,面談で答えてもらえるところというのは限界がありますので,この辺もどんなふうにしていくかというのは,今後の課題だというふうに思います。
 それでは,最後にちょっと,先ほど相川委員のほうから,認証評価の件で,7年に1回というようなことでは,どうも心もとないみたいなご意見もあって,それで,今,現実に進んでいる,学部別のといいますか分野別の認証評価のところも含めて,相川委員の漠然とした不安にお答えできる部分があれば,お願いしたいと思うんですが。

【板東高等教育局長】  先ほどお話のように,今の認証評価という仕組みは7年以内に1度という形になっておりまして,今の社会の変化の中で,もうちょっとその間隔を短くしたらというお話も,当然ご指摘があろうかと思います。専門職大学院は5年に1回という形になっております。
今のお話で,座長からご質問がございました分野別の認証評価というところは,実はまだ十分に育っていないという状況がございまして,工学関係については,国際的なワシントン・アコードというような取り組みの中で,日本でもJABEEというところが評価をしたりしております。専門職大学院も基本的には分野別評価ということだと思いますが,学部の方はなかなかそれが育っていないというところが,1つ大きな課題としてあろうかと思います。
 評価のところは,まだ期待ほどに育っていないのではないかというご指摘はあろうかと思いますので,この設置認可の問題だけではなく,全体として,評価の問題は,大変重要な点ではないかと思っております。

【浦野座長】  ということで,清家委員がおっしゃった情報の非対称性というのは,まだ当分続きそうだということで,ご理解いただければと思います。
 それでは,ぼちぼち時間にもなっております。本当に今日は幅広いご意見を頂戴いたしまして,誠にありがとうございました。次回以降,今日のご意見を踏まえた上で,事務局とも相談しながら,議題を絞り込んで,審議を深めてまいりたいと思っております。
 冒頭申し上げましたように,約1カ月という期間の中で,どんな提言ができるかというところでございますので,皆様方,この委員会が終わっても,日頃,頭の中に,この1カ月間,ずっとこのことを思い浮かべていただければというふうに思っているところでございます。
 それでは,事務局のほうから何か連絡がございますでしょうか。

【浅田高等教育企画課長】  本日はどうもありがとうございました。
 次回以降の日程につきましては,委員の皆様方のご都合を伺った上で調整させていただきます。まだご回答いただいていない委員におかれては,恐縮ですが,早めに事務局にご連絡いただきますようよろしくお願いいたします。

【浦野座長】  それでは,どうも今日はありがとうございました。

―― 了 ――

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