資料3-2 平成24年度大学入試センター試験に関する検証委員会報告書(骨子案)

1.はじめに

大学入試センター試験の趣旨・目的、本検証委員会の設置の経緯・検証事項等

2.平成24年度大学入試センター試験における主な変更点等について

(1)「地理歴史、公民」及び「理科」における科目選択範囲の拡大

  • 地理歴史及び公民の2教科については、従来はそれぞれ一つの試験時間帯(60分間)で設定され、地理歴史及び公民それぞれの教科の中で1科目ずつ選択することとされていた。今回、「地理歴史、公民」という一つの試験時間帯(130分間)を設定することにより、地理歴史6科目及び公民4科目の中から多様な組合せで最大2科目を選択することが可能となった(例:「世界史A」と「日本史A」)。
  • 理科については、従来は2科目ずつ3つにグループ化され、三つの試験時間帯(各60分間)が設定されていたため、同一グループ内の科目の組合せは選択できなかった。今回、「理科」という一つの試験時間帯(130分間)を設定することにより、理科6科目の中から多様な組合せで最大2科目を選択することが可能となった(例:「物理Ⅰ」と「地学Ⅰ」)。
  • 「地理歴史、公民」の問題冊子については、一つの試験時間帯となることを踏まえ、大学入試センターにおいて、2教科分を一冊とすることについても検討されたが、学習指導要領上別教科となっていること、問題冊子の取り扱いやすさ、技術面や経費面等を考慮し、従来通り教科別の分冊形態が採用された。

(2)事前登録制の導入

  • 試験当日の問題冊子の不足の懸念を解消し、試験を安全かつ円滑に実施することができるよう、また、上記の科目選択範囲の拡大に伴い、「地理歴史、公民」及び「理科」の2科目受験者と1科目受験者の試験室を分離することが必要となったことも踏まえ、受験教科の事前登録制が実施されることとなり、センター試験の出願の際に、受験する教科(「地理歴史、公民」については地理歴史及び公民の2教科のうちの受験教科及び科目数、「理科」については受験科目数も登録)を事前登録することとなった。

(3)不正行為の防止対策

  • 平成23年度の大学入試における携帯電話を活用した不正行為の発生を踏まえ、センター試験における不正行為防止対策について見直しが行われた。
  • 試験業務運営上支障が生じるおそれがあるため、不正行為防止対策の詳細については公表しないこととされているが、試験開始前に試験監督者から受験者に対して説明、指示する内容が今回より増加している。

(4)東日本大震災への対応

  • 被災地域における臨時試験場の設置については、東日本大震災の影響により従来の試験場が使用不能なために代替試験場を設けたものが2か所、交通機関の不通等のために新たに試験場を設けたものが2か所であった。
  • このうち、宮城県の気仙沼高校試験場は新たに設けられた試験場であるが、地元関係者の要望等の調整に時間を要し、他の試験場に比べ相当程度遅れた時期に設置が決定されている。

3.平成24年度大学入試センター試験における主なトラブルについて

(1)問題冊子配付トラブル

  • センター試験第1日目の「地理歴史、公民」の試験時間帯において、地理歴史及び公民の2冊の問題冊子の配付が必要な受験者に対し、いずれか1冊のみの配付で試験を開始する等の配付に係るトラブルが69大学81試験場の98試験室において発生した。これは全国の試験室総数9,843室の約1%に達し、影響は3,452名に及んだ。
  • トラブルの類型は、1.いずれか1教科の問題冊子しか配付しなかった(76室)、2.試験監督者が科目の解答順序を指示した(10室)、3.第1解答科目開始後に受験者が解答していない教科の問題冊子を回収した(1室)の3種類に大別され、これらの複合型のトラブル(11室)も発生している。
  • 大学入試センターにおいて、今回の配付トラブルの発生状況を把握するのに時間を要し、当日中に全体像の把握ができないという事態も発生した。

(2)試験時間の繰り下げ

  • 試験監督者から受験者に対する説明が長引いたり、問題冊子等の配付に手間取った等の理由により、正規の時刻に試験を開始できない事例が多数発生した。
  • 様々な理由により正規の時刻に試験を開始できないケースがあることは例年予想されることであり、そのような場合、試験開始時間を繰下げた上で必要な試験時間を確保する対応を予定していた。
  • しかしながら、今回は第1日目の「地理歴史、公民」の試験時間帯において、10分以上の繰下げを実施した試験室が44大学48試験場で発生し、影響が4,053名に及ぶ大規模なものとなった。

(3)リスニング機器の輸送ミス

  • 宮城県の気仙沼高校試験場において、リスニングテスト実施の約2時間前にリスニング機器が必要数試験場に到着していないことが判明し、急遽実施本部大学から搬送したが、到着までに2時間半を要し、予定より2時間遅れで試験を実施することとなった。これにより影響を受けた受験者は202名にのぼり、うち1名は試験室での待機中に体調を崩し、再試験を受験することとなった。

(4)再試験当日の受験希望者来場

  • 問題冊子の配付に係るトラブルの影響を受けた3,452名のうち、本試験の翌週(1月21日及び22日)に行われる再試験の受験を希望する者に対しては、救済措置として再試験の受験が認められた。
  • 再試験の当日(1月21日)、一大学の再試験場に、再試験希望者として登録されていない受験者が来校する事態が発生した。当該大学は大学入試センターに確認をした上で、受験は認められない旨受験者に回答した。
  • その後、大学入試センター内部において詳細を検討した結果、受験の意思を再度本人に確認した上で再試験を認めることとし、大学入試センター内で当日午後に再試験を実施することとなった。

(5)その他のトラブル等

  • 「地理歴史、公民」及び「理科」の2科目受験者の試験時間帯(9時30分~11時40分)においては、第1解答科目と第2解答科目の間に、10分間の中間時間が設定されているが、この間に原則認められていないトイレ等による一時退室が複数の試験場で発生した。そのために、第2解答科目の試験時間を繰り下げることとなった試験室があったことが報告されている。
  • リスニングテストについては、上記の輸送ミスのほか、機器の不具合や機器の落下等により162名が再開テストの対象となり、うち155名が当日中に行われる再開テストを受験した。
  • 交通機関の遅延による試験時間の繰下げは、本試験では7試験場で実施され対象者は16名、再試験・追試験では1試験場1名であった。

4.原因の検証について

(1)問題冊子配付トラブル関係

1.配付トラブルの発生状況

  • 大学入試センターの調査結果によれば、試験室の規模による配付トラブルの発生率への顕著な影響は認められず、試験室の規模に関わりなく発生していることが判明している。また、同様に地域による発生率についても顕著な偏りはなく、全国的に発生している。
  • 「地理歴史、公民」の2科目受験者試験室においては、問題冊子の配付パターンの組合せが7通りあり、具体的には、1,地理歴史1科目+公民1科目、地理歴史2科目、公民2科目の3つの配付パターンが同一試験室に混在している場合(2科目受験者試験室4,159室に対する割合:9%)、2.地理歴史1科目+公民1科目、地理歴史2科目(同14%)、3.地理歴史1科目+公民1科目、公民2科目(同11%)、4.地理歴史1科目+公民1科目(同52%)、5.地理歴史2科目、公民2科目(同0%)、6.地理歴史2科目(同8%)、7.公民2科目(同6%)となっている。
  • 4.のケースは2科目受験者試験室全体の中では52%を占めるが、配付トラブルのあった試験室の中での割合を見ると70%に拡大しており、一方で最も複雑な1.のケースは9%から3%に減少する。より複雑な混在型の試験室では配付トラブルはむしろ起こりにくく、比較的単純なケースの試験室で配付トラブルが起こりやすいという傾向がみられる。
  • 設置者別に見た場合、トラブルが発生した試験室98室のうち国立は51室、公立は12室、私立が35室の内訳となっている。試験室全体の国公私の比率と比較すると国公立で発生率が若干高く、私立では若干低いという傾向が見られる。また、1大学あたりに配置される予定の試験監督者総数の平均を国公私別に見ると、国立は約250名、公私立は70名台となっている。

2.大学入試センターから大学への周知の状況

  • 大学入試センターにおいては、大学関係者に対して平成24年度センター試験の実施方法等について説明を行うため、「入試担当者連絡協議会」を平成23年8月及び12月に実施している。8月は全国7会場で開催し2,442名が参加、12月は2会場で実施し2,065名が参加している。各大学からは、入試担当課長等3~4名が参加しており、協議会での説明を踏まえ学内で周知してもらうよう依頼している。
  • 協議会はそれぞれ1の日程で開催されており、試験全般について大学入試センターから説明が行われている。説明に際しては、大学入試センターが作成している実施提要(「実施要領」、「輸送要領」、「監督要領」、「成績提供要領」の総称。)及びポイントをまとめた説明用のスライドを用いており、スライドについては学内における説明会等で活用するよう依頼している。
  • 実施大学への調査結果によれば、入試担当者連絡協議会に関して、回数、地区数、時間、会議の形態いずれについても「現行通りがよい」との回答が7割以上を占めている。また、説明内容については、「実施提要全体(現行通り)」が約64%を占めているが、実施要領及び監督要領だけを重点的に説明する等ポイントを絞った説明などの工夫を求める回答も約26%あった。

3.各大学における学内への周知の状況

  • 各大学に対しては、大学入試センターより、1.各試験監督者に対する説明会を開催し、試験監督者の出席を義務付けること、2.やむを得ず出席できない試験監督者に対しては、別途説明会の内容を伝達すること、を求めている。
  • 試験監督者に対する説明会等の実施状況については、2時間以内としているところが約7割となっている。説明資料としては、大学入試センターの作成した監督要領及び各大学が独自に作成した資料を用いているところが大半となっているが、大学入試センターが作成し入試担当者連絡協議会で使用したスライドを利用しているのは5割に満たない。
  • 各大学が実施した監督者説明会への出席率については、9割以上と回答した大学が約84%となっている。配付トラブルのあった大学となかった大学とで比較すると、配付トラブルのあった大学はなかった大学よりも9割以上出席したという回答が約8%低い結果となっている。
  • 監督者説明会に出席できなかった者への対応については、約7割の大学で入試担当者から個別に説明する機会をつくっているが、説明会資料の配付のみという大学もあり、配付トラブルのあった大学では約31%、なかった大学でも約23%にのぼる。

4.試験監督者用マニュアル(監督要領等)の記載内容

  • 大学入試センターにおいては、各大学の試験監督者用のマニュアルとして「監督要領」という冊子を作成している。「監督要領」には試験監督者向けの説明事項が記載されているほか、2日間全ての試験時間ごとに試験監督者が発言すべき内容や実施すべき事項が時系列に読み上げ形式で記載されているため、全体で206ページの分量となっている。
  • 「監督要領」における「地理歴史、公民」の試験時間帯での試験監督者への指示としては、「各受験者に「問題冊子等配付確認表」を参照しながら、登録した教科の問題冊子と第1解答科目の解答用紙(緑色)を配付する。」と記載されており、具体的には各試験室ごとに作成される「問題冊子等配付確認表」を見ながら問題冊子を配付することとなっている。
  • 「問題冊子等配付確認表」においては、座席表上、「地歴+公」と記載されている受験者に対しては、「地理歴史1冊、公民1冊」を配付するよう指示されている。同様に、「地歴」と記載されている受験者に対しては地理歴史の問題冊子1冊を、「公民」と記載されている受験者に対しては公民の問題冊子1冊を配付することとされている。
  • この「監督要領」及び「問題冊子等配付確認表」については、各大学から、「2科目受験者・1科目受験者」、「第1解答科目・第2解答科目」、「地歴+公」等の用語が、試験監督者にとってはわかりにくいとの回答が多数寄せられている。また、「監督要領」及び「問題冊子等配付確認表」においては、「試験開始前に2冊同時に配布する」との明確な記載がなく、このような点が試験監督者が十分に理解できなかった一因となったと考えられる。
  • 大学入試センターが12月に大学向けに開催した入試担当者連絡協議会において配付した説明用のスライドにおいては、「2科目受験者試験室では、問題冊子と問題訂正紙(地理B)は、問題冊子等配付確認表に基づき、すべて第1解答科目の開始前に配付。」と記載されていた。しかしながら、上述のとおり、当スライドを大学内での説明会で使用している大学は5割に満たず、十分に周知されていなかった可能性が考えられる。

5.問題冊子の形態

  • 「地理歴史、公民」と異なり、「理科」の試験時間帯では問題冊子の配付に係るトラブルが発生していないことにかんがみれば、分冊となっていたことがトラブルが発生した最も大きな要因であったと考えられる。
  • 実施大学に対する調査結果においても、分冊となっていたことがトラブルの要因であったと回答する割合が高く、再発防止策としても合冊化を回答する割合が高くなっている。

6.関係者の意識の問題

  • 試験監督者個々の意識について正確に把握することは困難であるが、実施大学に対する調査結果においては、監督者説明会への参加意欲について、「熱心に参加している」と回答している大学は半数程度であった。また、センター試験の実施が「大学入試センターと大学との共同実施である」との認識についても尋ねているが、「(試験監督者の)大半が認識している」との回答は6割強であり、「共同実施との認識が少ない」との回答も1割強存在した。
  • 配付トラブルがあった大学となかった大学とを比較してみると、監督者説明会への参加意欲や共同実施についての認識において、配付トラブルがあった大学の方が低い傾向が見られた。

7.その他実施体制、実施方法等全般

  • 大学入試センターにおいて、今回の配付トラブルの発生状況の把握に時間を要したが、各大学との連絡のために設置した32台の電話回線が一時パンクするという事態が発生しており、大規模なトラブルが発生した場合の各大学との連絡体制についての対策が不十分であったと考えられる。

(2)試験時間の繰下げ関係

1.試験監督者の説明内容と説明時間の設定

  • 平成24年度センター試験においては、科目選択範囲が拡大されたことに伴う説明事項や不正行為防止対策に係る注意事項が増加しており、「監督要領」における試験開始前までの記載内容が大幅に増加している。
  • 大学入試センターにおいては、試験開始前の説明等に必要な時間について平成23年6月に検証を実施しており、その結果、20分間の時間配分で実施可能と判断し、仮に何らかのトラブル等により時間が不足した場合には、各試験室ごとに開始時間を繰り下げて試験時間を確保することとされた。
  • しかしながら、10分以上の繰下げを実施した試験室が多数発生し、試験開始前の説明等に必要な時間が十分に確保されていなかったことが原因であると考えられる。実施大学への調査においても、時間繰下げの理由として、「受験者入室終了時刻から試験開始時刻までにやらなければならないことが多かった」との回答が約8割と最も多数を占めている。

2.問題冊子の形態及び問題訂正紙配付の影響

  • 説明すべき内容等の増加に加え、科目選択範囲の拡大に伴い問題冊子の配付の複雑化や、問題訂正紙の配付が必要となったことにより、これらの配付に手間取ったことも試験時間の繰下げの発生した原因と考えられる。
  • 実施大学への調査においても、時間繰下げの理由として、「問題冊子・解答用紙の配付に時間がかかった」との回答が約7割にのぼっている。

3.繰下げの心理的影響

  • 大学入試センターにおいては、予定の時間に試験を開始できない場合、開始時間を繰り下げて対応することとしていたが、受験者の立場からは、結果として60分間の試験時間が確保できたとしても、試験開始が遅れることにより、受験者の微妙な心理状態に影響を与えることについて十分に配慮すべきとの意見も寄せられている。

(3)リスニング機器の輸送ミス関係

3.各大学内における問題冊子や試験用機器等の輸送体制

  • 大学入試センターから各大学に対する問題冊子や試験用機器等の輸送については、大学入試センターが作成した「輸送要領」に従って対応することとなっているが、各大学内での複数の試験場や各試験室への輸送については、各大学の責任において実施されている。
  • 各大学においては、それぞれの実態に合わせた方式により実施しているが、実施大学への調査によれば、独自の輸送要領を作成している大学は9割に満たず、1割強の大学が未整備であることが判明した。

2.気仙沼高校試験場についての検証内容

  • 宮城県の気仙沼高校試験場で生じたリスニング機器の輸送ミスの原因については、東北大学の総括によれば、1.各試験場への仕分け時や問題冊子等の搬送時のチェックもれ、2.宮城県気仙沼高校試験場でのリスニング機器等の個数確認もれであるとされている。また、体制上の問題点として、1.気仙沼高校試験場への仕分け等の統一した試験関連物品チェック責任者の未配置、2.気仙沼高校試験場への試験関連物品の確実な個数確認方法マニュアルの未作成、があげられている。

(4)再試験当日の受験希望者来場関係

1.課題発生時における連絡体制

  • 再試験の当日に、再試験希望者として登録されていない受験者が来場する事態が発生した際、大学入試センターから大学に対していったん回答した内容と結果として異なる対応となった点については、前例のない事態に限られた時間で対応することが求められていた状況下で起こったことを勘案しても、大学入試センター内での意思決定プロセスに課題があったと考えられる。

2.再試験受験の意向等の確認方法

  • 再試験は本試験の1週間後に実施することとされており、センター試験後に実施される各大学の入試日程に大きな影響を与えることから、その延期は困難な状況にあった。このため、極めて短期間に再試験受験の意向等を確認する必要があった。
  • 大学入試センターにおいては、救済措置の対象者に漏れが生じないことを最優先に措置を講じたが、過剰な対応であるとの不公平感を主張する受験者もおり、公平性をどの程度まで求めるべきかという観点からの課題を残した。

(5)その他のトラブル等

1.リスニングテストの実施方法

  • 平成24年度のリスニングテストにおいては、162名の再開テスト対象者が発生した。これらのうち、機器の分析が必要な138件については回収の上で全数調査を行うためその分析には時間を要することとなっている。
  • 昨年度までの分析結果によると、機器の不具合が原因と考えられるケースは十数件から30件程度であり、それ以外の原因として、受験者の勘違い、長押しの失敗、落下・鼻血等となっている。

2.第1解答科目と第2解答科目の中間時間の設定

  • 第1解答科目と第2解答科目の中間時間(10分間)の設定については、大学入試センターにおいて平成23年2月に検証を実施している。その結果、今回の時間配分で実施可能と判断し、仮に時間が不足した場合には、各試験室ごとに開始時間を繰り下げて試験時間を確保することとされた。
  • 今回の中間時間におけるトイレ等による一時退室については、原則認められないこととされていたが、許可された試験室もあり、許可されなかった試験室の受験者からの不満等も出ているところである。

5.再発防止に向けて

6.中長期的な課題について

7.おわりに

お問合せ先

高等教育局大学振興課大学入試室

電話番号:03-5253-4111(内線2469)

(高等教育局大学振興課大学入試室)