資料2-1 平成24年度大学入試センター試験の検証報告書(概要)〔大学入試センター提出資料〕

 大学入試センター提供資料

平成24年度大学入試センター試験の検証報告書(概要)

1 検証の概要

 平成24年度大学入試センター試験では、「地理歴史、公民」及び「理科」において、同一の試験時間帯(130分)に最大2科目の選択を可能とする科目選択の弾力化をめざし受験方法、実施方法等の変更を行った。その結果、「地理歴史、公民」の試験時間帯において問題冊子の配付ミスが一部の試験室(98室:1%)において発生し、試験時間の繰下げも多数の試験室で生じた。また、宮城県の1試験場ではICプレーヤー等の輸送ミストラブルが発生した。大学入試センターは、これらのトラブルに対し、外部有識者で組織された検証委員会を設置した。検証委員会は、再発防止に向けて、短期間ながらさまざまな観点から検証を行い、平成25年度の大学入試センター試験の実施に向けて、対応可能かつ有効な改善策を提案した。

 

2 検証(1):平成24年度大学入試センター試験の実施にともなうトラブル

    1. 「地理歴史、公民」問題冊子の配付ミス等(報告書P.11~12)

     多数の試験室を抱え、監督者数が多い大学では配付ミス等が生じやすい傾向がみられる。監督要領等の周知徹底のむずかしさが推察されるが、配付ミスを生じた大学では、センター試験の実施に対する教員の認識等(監督者説明会への参加意識、センター試験実施に関する認識)にも他大学との違いがみられた。
     配付ミス等の発生については、地域差、試験室規模、問題冊子の配付パターンとの関係に着目して検証したが、地域差に著しい偏りはなく、試験室規模の大小にも関係なく配付ミスは発生しており、配付パターンがより複雑な試験室ではむしろ配付ミスが抑制される傾向がみられた。

    2. ICプレーヤー等の輸送ミス(報告書P.12~13)

     ICプレーヤー等の輸送ミスが宮城県気仙沼高等学校試験場で発生した。リスニング機器等の輸送は1次輸送(大学入試センター→実施大学)と2、3次輸送(大学→試験場、試験室)に分かれるが、後者は実施大学が分担している。実施大学に対する調査によると、2、3次輸送を実施する大学の1割強は輸送要領なしで輸送を実施していた。

    3. 試験時間の繰下げ(報告書P.13)

     試験開始前の説明や注意事項(不正行為等)、試験に関する指示内容は分量が増えており、「地理歴史、公民」2科目受験室では問題冊子配付に時間を要し、試験時間の繰下げが多数発生した。

 

3 検証(1):平成24年度大学入試センター試験のリスクマネジメント

    1.リスクマネジメントとしての事前準備(報告書P.14~15)   

     大学入試センターから実施大学への説明(入試担当者連絡会議等)、また実施大学での監督者への説明(監督者説明会等)が十分とは言えなかった。この改善のために、大学入試センター作成のスライドの利活用、説明方法の改善等を図るよう要望した。監督者説明会に欠席した者への対応にも改善の余地がある。
     監督要領の記述は、受験方法、実施方法の変更にともない、特別の用語、表記が加わったため、わかりにくさが増した。実施大学に対する調査でも配付ミスのあった大学では6割がその旨を回答しており、監督要領の改善を要望した。

    2.本試験当日のリスクマネジメント(報告書P.16)

     本試験当日の実施において「地理歴史、公民」の試験時間帯に電話連絡が殺到し、大学入試センターと実施大学との円滑な連絡交信、センター側の迅速な事故対応に欠けるところがあった。影響を被った受験者に対してはその場で、解答科目の順序の入替希望を確認させ、転記を行わせたが、再試験の必要なケースもあり、実施大学と大学入試センターの間で協議を行った。

    3. 事後における受験者への救済措置(報告書P.17)

     「地理歴史、公民」の冊子配付ミス等により影響を被った受験者に対してはその影響の度合いにかかわらず、当該試験室に在室した全員に対して、解答科目の順序の入替及び再試験の希望を確認し、再試験の必要な者に対しては再試験を行った。救済措置が遅れると、個別大学の入学試験にも影響がでる恐れがあり、対象者は最大限に拡げた。厳しい時間的な制約の下での対応であり、この措置はやむを得なかったと判断される。

 

4 トラブルの再発防止に向けて

 平成25年度大学入試センター試験の実施までに対応可能な改善策を示すことを重視して論点をしぼった。中長期的な検討が必要な課題については、別途検討の場が設けられることを期待する。

    <改善策>

    1.問題冊子の形態(報告書P.18)

     合冊化(または2冊パッケージ化)を行う方向を要望する。なお、合冊化によって生じる受験方法、実施方法上の新たな変更についても十分な工夫・配慮が必要である。

    2.監督要領の改善(報告書P.18)

     ミスの防止及び説明に要する時間を短縮する観点から、監督要領のスリム化を要望した。経験のない監督者にも容易に理解できるような平易で明確に記述に改善する。また、監督者向けに簡明なリーフレットの作成及び説明DVDの作成等、また監督者の口頭での説明等を減らすため、問題冊子表紙へ注意事項を記載する方法(チェックリスト付)、受験方法等の情報についてWeb配信する等の検討も必要である。

    3. 業務連絡システム(報告書P.19)

     大学入試センターから実施大学、監督者へ的確な情報伝達を行うため、監督要領の用語、表記の工夫・改善を図るとともに、実施大学での監督者説明会に欠席した者への対応等、監督者への周知徹底や各大学の2次、3次輸送要領の整備を要望する。
     本試験当日、各大学から大学入試センターへ電話が殺到し連絡交信が滞り、迅速な事故協議・対応が進められない事態が生じた。これを回避するため、事務連絡体制のハードとソフトの両面の改善が必要である。

    4. 「地理歴史、公民」及び「理科」2科目受験者試験室における中間時間(10分間)について(報告書P.19)

     「トイレ等への一時退室は、原則認めない」ことについて受験者側及び監督者側の両者に周知徹底する。また、中間時間における連絡要員の増員の検討も必要である。

    5.試験時間割の検討(報告書P.20)

     「地理歴史、公民」及び「理科」をどの試験時間帯に配置するかについては、現行またはそれ以外の変更したいずれの時間割にもメリットとデメリットがあり、トラブルの未然防止を図る観点からさらに検討する必要がある。

    6.新たな変更を加えた場合に必要な周到なチェック(報告書P.20)

     試験時間や説明時間等の設定のあり方、具体的な実施方法等の検討に当たっては、前年度と変更が行われる部分について十分なシミュレーションとチェックが必要である。

 

 

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