資料3 日本薬学会提出資料

日本薬学会 (教育委員会委員長 松木則夫)

 大学の教員間でコアカリキュラムの理念や大学教育における基本的位置づけを共有することは重要である。しかし、こうした認識の共有は不足しており、現在のコアカリキュラムに関する誤解や不満は、理解不足や見解の相違に起因している面がある。また、どうしても教える側の立場が優先されすぎている点も問題である。日本薬学会は平成14年に薬学教育モデル・コアカリキュラムを完成させているが、それ以降に薬学教育に参画した教員も増えている。
 従って、基本理念の共有とそれに基づく改訂方針の決定は、本事業を遂行する上で最も重要な点であると認識し、位置付けている。期間は限られているが、関係機関の協力を仰ぎながら、上意下達ではなく教員間のボトムアップな議論が展開されることが望ましい。今年度に発足した日本薬学会薬学教育委員会では、既にこうした観点から、コアカリキュラムの在り方について議論を進めてきた。
 しかし、薬学教育だけが特殊であることは難しく、医学教育、歯学教育のコアカリキュラムと整合性を取ることは国民への説明責任としても重要である。さらに、文部科学省の「薬学教育モデル・コアカリキュラム改訂に関する専門研究委員会」での議論とも整合性を取る必要がある。よって、本資料の内容は、現段階では、薬学教育委員会委員長の個人的見解に留まっている。

基本理念

 医療や医薬品に関する知識や科学技術の進歩は目覚しく、薬剤師や創薬研究者に求められる役割も変わりつつある。これらを網羅して大学で習得することは現実的には不可能であるし、最先端の知識や技術もすぐに過去のものとなってしまう。従って、どの分野に進んでも、今後の進歩にも対応できる基本的な資質と能力の涵養を図るとともに、生涯にわたって研鑽を続け、社会に貢献していく人材を輩出することが求められる。モデル・コアカリキュラムは膨大な薬学教育の内容を精選し、卒業時までに学生が身につけておくべき必須の基礎および実践的能力(知識・技能・態度)の到達目標を分かりやすく示すものとなる。

位置付け

 モデル・コアカリキュラムは各薬系大学・薬学部の教育内容や履修の順序などを細かく規定するものではなく、教育内容のコアとなる部分をガイドラインとして提示する。各大学・学部はモデル・コアカリキュラムをもとに授業カリキュラムやシラバスを決めることになる。モデル・コアカリキュラムの内容だけで薬学教育が完成するものではなく、コアの部分以外については、各大学・学部の裁量に委ねられ、各大学・学部は特色ある薬学教育を目指すことになる。全体の履修に対するモデル・コアカリキュラムの割合については、これからの議論によるところが大きいが、概ね6から7割程度と思われる。

基本的資質

 国民に有効で安全かつ安心できる医療や医薬品を提供できる人材となることが求められる。薬剤師が主体であるが、薬学教育者、創薬研究者、基礎薬学研究者、医薬品開発者、医療行政者など、多方面に有用な資質も必要となる。薬剤師に求められる資質として、現時点で医療現場に必要な知識と技術だけではなく、基本的な原理の理解や課題解決能力も求められる。

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