資料1 大学における教育情報の公表促進と活用支援について(これまでの議論の概要)

(基本認識)

○ 大学は,地域・学問分野の特性や,学生・教職員の状況,地域や社会からの要請と期待に応えるため,国内外の多様なニーズ対応した教育研究活動を展開しており,そうした活動に関連して大学が持つ情報も極めて多様なもの。

○ 大学の情報の扱いは,大学が教育研究活動を行う公的機関であるという特性,在学者や入学希望者,卒業生,その保護者,さらには企業関係者など,幅広いステークホルダーを有するという特性などを踏まえたものであることが必要となる。

○ こうしたことを前提とし,大学の教育情報は,その公表と活用という観点で検討を進める。

1.教育情報の公表について

(1) 現状

○ 本年4月から,すべての大学が,学校教育法施行規則に掲げられた教育情報を公表することとなり,各大学による取組がはじまっている。
 この改正は,大学の教育の質の向上と,公的な教育機関としての説明責任を果たすことの二つを目的としている。

○ 教育情報の公表は,各大学によって行われている。
 その際,学校教育法施行規則で定められた内容が概括的であることも踏まえ,大学団体によっては,大学のために参考指針を作成し,公表にあたっての留意点などを示している。
(例えば,公立大学協会や日本私立大学連盟)

<広島市立大学の取組>
・ 教員活動情報の公開による教員の意識改革,教育の質の向上
・ 公立大学協会のガイドラインに沿ったホームページによる教育情報の公表
・ 定期的に実施される調査は152件あり,大学の基礎情報の回答にも業務負担

<筑波大学の取組>
・ 学士課程,各教育組織における教育目標,教育の内容・方法,達成すべき水準などを記載した「筑波スタンダード」「教養教育スタンダード」を公表
・ 教員の業績等を集積した研究者情報システム等を活用し,「大学教員業績評価」の実施
・ 国際化を推進するための情報発信の推進や学内における教育情報の蓄積と活用が課題


○ そうした取組状況は,認証評価を通じて確認することとなる。

<教育情報の公表に関する認証評価における取組>
・ 認証評価を通じた教育情報の公表状況の確認
・ 大学の基礎的な情報の収集
・ 評価結果の公表


○ 米国では,包括的なデータベースに加え,州立大学でカレッジ・ポートレートの整備が進められている。

<米国の大学情報の公表について>
・ 全米の高等教育機関を対象とするIPEDSが包括的かつ詳細なデータベースとして整備。
・ 2007年には,州立大学を中心に,カレッジ・ポートレートが開始。1.基本的な情報,2.学生の在学中の経験や意識,3.学生の学習成果を中心に,分かりやすい形式で掲載。
・ 各大学のIR担当者を対象とする研修を,大学団体が実施。

 (2)主な議論の内容

(教育情報の公表のあり方)

○ 学内の教学改善のための情報の活用と,説明責任を果たすための公表の2つを分けて検討すること。
○ 学校基本調査で収集する基礎的な情報の公表と,教育方針などの高校生が必要とする情報や大学が提供すべきと考える情報の公表は別に考えていくこと。
○ 大学が高い自立性を保つために,社会への説明責任を積極的に果たすこと。
○ 大学の特色や限られた体制で情報公表に取り組んでいる状況を踏まえ,支援のための仕組みの構築や一律の取扱にしないなどの配慮をすること。
○ 企業や高校生などが必要としている情報が公表されているかという観点から検討していくこと。
○ 高校生を想定した情報の公表はより分かりやすいものとすること。
○ 大学での学習内容を,産業界等からも分かりやすく示すこと。
○ 認証評価を通じて,各大学の活動の状況が幅広く公表されており,この情報公表の一層の促進も考えられること。
○ 情報の公表にあたっては,分析などを含めることで,単純な序列化にならないようにすること。

(大学関係団体の役割)

○ 大学関係団体がガイドライン等を作成し,公表にあたっての留意点を示すこと。
○ 大学に関し多様な情報が見受けられる中で,信頼性のある情報の発信について,大学関係団体が支援すること。

(教育情報の公表の共通的な枠組み)

○ 各大学の情報公表とあわせて,大学を超えた共通的な情報発信の仕組みを整備する意義や効果。
○ 我が国において,アメリカのように,まず,基礎的なデータベースの構築から取り組むか,一般の者に分かりやすいものを検討すべきか。

(3) 更に検討いただきたい内容(例)

○ 各大学が,それぞれの使命(ミッション)を明確化し,どのような教育に取り組んでいるかを公表することについて。
 例えば,修得すべき知識・能力を分かりやすく示すことなど。
○ これに関し留意すべき事項について。

2.教育情報の活用について

(1) 現状

○ 大学の教育情報について,活用という観点も重視されつつある。
・ 例えば,大学によっては,自己点検・評価や,自らの大学に関する情報を基に,教学改善に生かす取組が見られる。
・ その際,他大学と連携し,互いの活動に関する情報を共有しながら,教学改善に生かす取組も想定される。

○ また,我が国の大学情報の国際的な発信という観点も考えられる。
 これについては,大学分科会が,国際競争力の向上の観点からの情報発信の考え方の参考指針を示している。
○ 教育内容を発信する取組として,オープンコースウェア(OCW)が提唱され,ウェブによる授業内容の公表が行われている。

<OCWについて>
・ 2001年にMITにより提唱され,ウェブ上に大学の正規の授業映像が多く公表(現在1.8万コース)。公表することにより,教員が自らの授業を見直すきっかけにもなっている。
・ 大学として世界中から優秀な高校生を集める観点も重視。
・ 講義内容を公開している大学に対する利用ニーズは7割に達する。また,居住地近くの大学の公開講座を受講したいと考える者は8割。

(2) 主な議論の内容

(大学の強み・特色の発信)

○ 地域に大学の教育活動の状況を発信していくこと。その際,オープンキャンパスなど実際に大学教育の内容を経験できる取組も考えられる。
○ 各教員の教育、研究、社会貢献活動への取組を発信し,大学の存在感を高めること。
○ 教育情報を,国内だけでなく,世界に向けて発信すること。その際,複数の大学がまとまって発信したり,海外の人にも分かりやすい方法で情報を発信すること。

(教育情報を教育の質の向上に生かす)

○ 教育の質の向上や大学運営の改善を進めるため,関連する情報を蓄積し,有効に用いることができる仕組みなどを整備すること。
○ 収集した教育情報を分析し,教職員にフィードバックすることで,教育研究活動の改善を促すこと。

(大学関係団体の役割)

○ 認証評価の際に,データベースを活用することについて。
○ データを分析、作成するための体制の整備や、そのための人材の育成を支援すること。

(3) 更に検討いただきたい内容(例)

○ 大学のどのような活動を強み・特色として発信するか,また,それらを分かりやすく発信する仕組みについて。
 例えば,国公私立を通じた優れた大学改革の事例などについて。
○ 学生の学習状況や意識に関する情報の分析と活用について。
○ これらに関し,留意すべき事項について。

3.大学の負担軽減について

(1) 現状

○ 大学では各種の統計などの調査に対応しているが,類似の項目が繰り返し調査されている場合がある。
○ 認証評価機関は,評価の実施にあたり大学の基礎的な情報を収集しているが,統計など各種の調査と共通する項目もある。
○ ホームページ上での教育情報の公表や各種調査への対応などに関して,大学では十分な事務体制を整備することが困難な場合がある。

(2) 主な議論の内容

○ 学校基本調査など,大学が定期的に作成する調査のデータを活用すること。
○ 大学の基礎的な情報については共通的な公表の仕組みを構築し,外部から大学への調査の負担を減らすこと。
○ 評価団体が連携して,認証評価の際に収集するデータの一定の共通化に取り組むこと。

(3) 更に検討いただきたい内容(例)

○ 教育情報の公表・活用に関する,大学の負担軽減について,上記の他にどのような観点があるか。
○ データベースを構築する場合のコストの抑制について,どのような観点があるか。

これまでの議論の整理(骨子案)

1.基本的な考え方

(1) 教育情報の特性と重要性

(2) 教育情報に関する経緯・現状
 1 教育情報の公表等に関する制度改正
 2 データベースなどの見直し

(3) 教育情報の公表・活用に関する留意点

2.教育情報の公表・活用の促進

(1) 教育情報の公表・活用に関し,各大学における工夫の奨励
 1 大学関係団体による,質保証・向上の取組の情報収集と発信
 2 各大学における情報の取りまとめを支援

(2) 教育の質の向上に資するための情報の分析の促進
 1 各大学において,教育活動の状況を分かりやすく示す
 2 学生の学習状況に関する情報

(3) 大学の負担の軽減

(4) 教育情報の活用と公表を進めるための場の整備

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