資料4-1 第1回会議における主な意見

総論

  • 現在の工学教育の負のスパイラルを正のスパイラルに変えていきたい。スパイラル構造とは工学教育・工学研究・工学による社会貢献がバラバラに行われており、結びつきがはっきりしていないことで、その結果、工学教育の社会貢献という面が希薄になり、研究のための研究になり負のスパイラルとなってしまう。負のスパイラルになって学生にしわ寄せが行き、学部教育に空洞化が起きてしまっているのが問題である。
  • 大学を目指す中学生、高校生に科学の面白さを教えるのは大学の使命であり、大学の入り口の段階で工学に目覚めた学生たちを増やしていくことが必要である。
  • 女性にとって工学が魅力的なものになればいい。企業で働くことが女性のキャリア開発にも非常に有効である。女性の管理者教育という面でも検討してもらいたい。 
  • 大学の価値とは入学時からの卒業するまでにいかに学生を伸ばすかであると思う。たとえ入学時のバイアスは高くなくとも、卒業時にしっかりとした人間にして出すことが必要である。 
  • イノベーション創成能力を持つ人材の育成は、日本が世界に先行して行く必要があるが、現実として工学離れという問題が起きているのが一番の問題である。
  • 学生に対するインプットだけではなく、アウトプットをどうすべきかという議論が必要ではないか。

 

知識及び資質・能力について

  • 資質・能力と知識は分けて考える必要があり、資質・能力の育成にはPBLなどのトレーニングが必要である。
  • 基礎力というものをしっかりと定義づけを行う必要がある。
  • 教育を行うときは理論だけではなく、同時にツールを教えていく必要があるが、基礎をしっかり教えていかないとツールを教えてもうまくいかない。基礎をしっかりと教えていく必要があるのではないか。
  • どの分野でも最終的には「もの」にする必要があるが、現状はその分野のことしか知らないのでものを作れない。ものを作るために製図や材料力学など各分野の基礎をしっかり身につける必要があると思う。そういったものづくりにシフトした教育体系ができるとよい。
  • 物事に対して幅広く考えられる人材やものづくりを実体験している人材を大学で育てていければいい。
  • ものづくりには知識が必要だが、知識だけではできない。その教育が欠けてきているのではないだろうか。
  • 社会人基礎力という言葉は曖昧なので、産業界と連携しながら分野ごとあるいは分野共通の社会人基礎力を構築していく必要がある。
  • 社会人基礎力やコミュニケーション能力、実行力、問題解決能力などを身につけさせるためにも、インターンシップなど学生に実践する機会を与えることが必要である。
  • 研究開発費の重点配分によって研究内容が先端技術側にシフトしてしまい、結果として学部で教えられなければならない基本的な基盤となる知識(設計等)が偏ってきてしまっているのが問題である。
  • 日本はアメリカに比べて専門性という部分では決して引けをとらないが、日本の教育も変わってきているし、研究も先端化している。アメリカでは伝統的な学問分野の学部教育は変わっていない。日本が必ずしも遅れているわけではないことを認識して議論する必要がある。

 

大学教員の教育能力や評価について

  • 大学教員は教育よりも研究にスタンスがあり、教員免許もない。みな我流で講義や実習を行っている。
  • 大学教員にとって教員免許は必ずしも必要なものではない。博士号を取るまでに研究をしながら教授らと共同教育というかたちで後輩学生を教育してきている。大学教員を採用する段階で確かめるとともに、最初から教育能力が備わっている人はいないのだから時間をかけて教育能力をトレーニングしていく必要がある。
  • 学生から評価を行い、それを大学教員が毎年どう反映していくかを冊子やウェブで共有化を、教授会などでお互いにいい例を共有できればいいのではないか。
  • 日本技術者教育認定機構(JABEE)の認定によって、大学教員の意識を変えていこうと思った。
  • どんな教育上のシステムを作っても、運営する教職員がしかるべき形で動いていかなければならない。
  • 大学教員の教育能力をどう評価するか。実務上の能力は、技術士や建築士といった資格で、研究上は論文の数などで評価することができるが、教育上はまったくない。
  • 学生や教員を褒めることが重要。褒めることで人はやる気になる。ただそのためには評価の尺度をしっかりとする必要がある。
  • 教員に対しても評価は必要。いい評価に対しては処遇を良くしていくべきである。評価例として学生に授業を評価させ、ベスト授業として教員を表彰する。こういったことを継続的に行うことによってシステムとして続いていく。

 

技術者教育の質の保証について

  • JABEEのシステムで、素晴らしい学生が育つかどうか質の保証ができなければいけない。
  • 工学共通の卒業試験などを行って学生の質の保証をしていくことも必要ではないか。
  • 医学のCBTに近いかたちで試験的にでも分野別にコンセンサスをとる必要があるのではないか。
  • 産業界からも指摘があるとおり、大学として公表したかたちで卒業生の保証をすべきではないかと思う。
  • 日本は英語のコミュニケーション能力が他国に比べて低い。例えばTOEICなどを使って卒業時の能力を大学として保証していく必要があるのではないか。

 

初等中等教育について

  • 初等中等教育段階で理科・数学の授業時間が増えたのはいいが、技術を通して社会にどう結びついているかという教育は全く手つかず。今回の会議では高等教育のみならず初等中等教育まで踏み込んで議論していくべきである。
  • 科学教育と技術教育が現在マッチングをしていない。科学教育とは真理を教える学問であり、技術教育はそれがどのように社会に役立っているか教えるものだが、技術教育は全く教えられていない。その結果、小中校生で科学に興味を持っても高校の段階で興味を失ってしまう。それが工学離れの大きな原因の一つではないかと思う。
  • 現在の高校教員には工学系がほとんどいない。だから工学を教えようとしても難しいので、そこを変えていくべきではないか。
  • アメリカで理数系の高校教員を対象に工学の面白さを教えている教授がいて、その人を日本に呼び、高校生や高校の理科教員などにも講義をしてもらうのは非常に有効ではないか。

 

大学院教育について

  • 大学院の教育のあり方についても課題である。(博士課程修了者の産業界でのミスマッチ等)
  • ドクターは企業の方で使いづらいのではないか。奨学金などを活用しながら、できるだけ早期にドクターとして社会に送り出せば、企業の方も魅力を感じてくれるのではないだろうか。

お問合せ先

高等教育局専門教育課科学・技術教育係