教育内容等に関するワーキンググループ(第4回) 議事要旨
1.日時
平成22年1月20日(水曜日)15時~17時
2.場所
文部科学省東館16階2会議室
3.議題
- 大学における実践的な技術者教育のあり方(案)について
- その他
4.出席者
委員
野口委員(主査)、篠田委員、岩熊委員、大場委員、岡崎委員、工藤委員
(※本会議委員)大西委員
文部科学省
加藤高等教育担当審議官、澤川専門教育課長、神田専門教育課企画官、神田専門課長補佐、その他関係官
5.議事要旨
(1)開会
事務局より、第3回本会議(12月7日開催済)の内容を本会議資料をもとに報告。
事務局より、資料2-1、2-2を参考資料を参照しつつ説明。
(2)技術者教育モデル・コア・カリキュラム等について
委員から以下の意見が出された。
【技術者の定義】
- 技術者の定義に「サービスも含む」とあるが、「サービス」が何を指すかその意味をはっきり書く必要がある。ソフト的なものを使ってシステム等を提供しても「サービス」。バーチャルなものも含む。建設コンサルタントも「サービス」。しかし、一般的な「サービス」とは少し違う。
【求められる技術者像】
- 医師や弁護士と違い、技術士の資格にはあまりインセンティブがない。求められる技術者像の最終ゴールは技術士のみではない。
- 電気主任技術者第1種(電気工作物の工事、維持、運用の保安監督者資格)などは、資格保有者が約1万人、年数人しか合格しないが、コンサル料として1件20万円も受け取れ魅力的。
- 産業界が「求められる技術者像」を本来示してきてしかるべきだが、示されないからといって大学が何も出来ないというのでは困る。
- 求められる技術者像は、大学によっても違うのではないか。
- 技術者像は多様であり、一つにしようとすれば極めて抽象的になる。
- 「学士技術者」の像を、最低一つでも今まで示してこなかったことが問題。
【学習成果評価規準】
- 「規準」とすべきか、「基準」とすべきか、確認すること。
- 「~ができること」というアウトカムズを実現するためにカリキュラムやシラバスがある。「~学」とあるのは知識で科目に対応させやすいが、人間力、協働力、コミュニケーション力のような「~力」はデザインプロジェクト、実験など様々な科目で養成するものであり定型化された科目で身につけるということではないと思う。
【モデル・コア・カリキュラム】
- 資料中の学協会の例示には全学協会を挙げた方がいい。日本建築学会、技術士会等も入れるべき。
- 技術者教育モデル・コア・カリキュラムは、技術分野共通の部分、技術分野間で異なる部分の二層構造。さらに各大学独自の「3層目」がある。範囲は4分類(数学・自然科学・基礎工学・専門工学)というイメージだが、具体的にどんなものか三層構造の絵を描いてみてほしい。
- 一層目には、普遍教育、デザイン、人間性、社会性などが含まれるのではないか。企業が求める力でもある。
- 医学教育モデル・コア・カリキュラムの中身は、アウトカムズを詳細化したものだが、「~ができる」の深さ、広がりは、大学毎の理念によって、各大学に委ねられている。型にはめないように留意すべきである。
- 技術士を育てるためだけの技術者教育ではないので、技術士試験にこだわるのは適切でない。
- 全部の層の中を通る軸のような「人間力」等の串の部分があるのではないか。
- 工系は、理系、数系を含むだけでなく文系も含む。マネジメント力、人間力も必要。
- 工学は、理学をベースに、心理学、経済学などあらゆる分野と連携する時代である。
【学習成果の適切な評価方法】
- 学生の知識やスキルの評価方法が一貫していないから、JABEEをはじめ誰も判定できないということが問題。
- アメリカの土木学会では「人間力」の能力要素をかなり細かく規定している。
- 測定するといっても、1人の教員が何百人の学生のコミュニケーション能力をチェックすることは困難。案として、メンタルチェックができる外部試験やルーブリックスを使って学生に自己申告をさせる方法がある。グループ作業で相互に他者評価をさせて平均を出す方法もある。人間力というより、分解してこういうことがアウトカムズで求められるということを明確にすべき。
- JABEE認定の形式は、1人でも基準に満たないと認定されないというシステムなので、特に「人間力」等については統計的な処理は必要だと思う。
【国際性を踏まえた技術者教育認定制度の改善】
- 日本ではJABEE認定課程修了すれば技術士1次試験が免除され修習技術者になるが、アメリカではABET認定の技術者教育を受けた修了者でもProffesional
Engineerの1次試験(FE試験)は免除されない。
- 今のJABEEの技術者教育認定システムでは、「~ができる」ということは分かるが、実際の中身の程度は分からないので、企業がなかなか評価しない。
- アメリカではABET認定を受けるときに、「本学の学生はFE試験でこれだけの点数を取っている」とか、CLAなどの外部試験を活用した結果を材料に使っているので、企業も評価する。また、FE試験は、技術士1次試験と比べ、レベルが高い。
- JABEEは、強制的に試験を課すことができないとすれば、ある程度のルールを残して、教育課程と試験結果で証明できた学生だけ修了認定させてはどうか。知識は試験で保証できるが、人間力やスキルは教育課程で保証すればいい。
- JABEEはデザイン力等は評価しているが、今のところ「人間力」「社会性」は詳しく評価できていない。
【その他】
- 技術者を育てていこうという提唱するだけでは動かない、支援する仕組みを作らないと動かない。
- シンガポールは自然科学系学生に授業料減免など強烈なサポートをしている。日本は「科学・技術立国」をうたうならもっと特定の基準を満たしている大学をサポートすべきでないか。
(3)大学教員に求められる教育能力及びその評価方法について
- 野口委員(主査)より、資料2-3の説明
- 大場委員より、参考資料1(山形大学)の紹介
- 岡崎委員より、参考資料2(東京工業大学)の紹介
- 工藤委員より、参考資料3(芝浦工業大学)の紹介
- 篠田委員より、参考資料4(中央大学)の紹介
委員から以下のコメントがあった。
- カナダでは、全教員が技術士になっている。試験に受からない場合でも、各分野での活躍を評価して技術士会が認定する。
- FD活動は、もっと自由に、外部の活動に参加したものもFD活動として同等に扱わないといけない。今のFD活動の多くは、自分の大学に他機関の人を呼ぶか、内部の身内だけでやるばかりだから、成長度合いが分からない。
- 日本では学習指導要領の影響かもしれないが、最低限の量の教科書を使用しているケースが多い。教科書で教えない部分があることを避けていることもあるが、あまり詳しい内容まで教えきれない教員がいることも理由。
(4)教育、研究、イノベーションの三位一体を推進し社会を支える技術者教育について
事務局より、資料2-2(P9~P12)の説明。
委員から以下のコメントがあった。
- 国立大学は今は講義ばかりで、スキルより知識獲得に偏重している。特に電気、情報分野はその傾向が強い。他方、スキルに偏重すると、創造性、基礎力が不足しがちになる。
- 日本でもアメリカでも一番苦労しているのは、チームワーク力やグループ力の育成。指導方法の考慮が必要。
- 高専、技術科学大学の例示が多いが、その他の大学でも多くの取組みがある。企業等との連携による良好事例の一部であると認識すべき。
(5)その他
事務局より、参考資料5(図表3)の説明。
(6)閉会
資料9「今後の日程(案)」の確認。
次回第5回WGは、2月16日(火曜日)15時~17時。
委員各位には、次回までに今日の議論を踏まえた資料の加筆修正を依頼。