大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会(第8回) 議事録

1.日時

平成22年3月26日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学院における看護系人材養成に関する有識者からのヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

中山座長、菱沼副座長、秋山委員、倉田委員、小山委員、坂本委員、佐藤委員、西澤委員、羽生田委員、平澤委員、松尾委員、宮崎委員、村嶋委員、横尾委員

文部科学省

加藤審議官(高等教育局担当)、新木医学教育課長、小山田看護教育専門官

オブザーバー

野村看護課長(厚生労働省医政局)

意見発表者
近藤潤子意見発表者(天使大学学長)
堀内成子意見発表者(聖路加看護大学教授)
中澤幾子意見発表者(イデアフォー(乳ガン患者団体)世話人)

5.議事録

【小山田看護教育専門官】それでは、時間になりましたので、ただいまより第8回大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会を開催させていただきます。本日、審議官の加藤よりご挨拶をさせていただく予定でしたが、ちょっと遅れておりますので、後ほどご挨拶をさせていただきます。では早速、座長に議事進行をお願いしたいと思います。

【中山座長】皆様、おはようございます。

 今日は年度末のお忙しい中、あまりたくさんの欠席がない形で検討会を開かせていただけます。ありがとうございました。2回にわたって大学院教育に関するヒアリングを行う予定になっておりまして、今日はその第1回目です。高度専門職業人養成、特に助産師免許に関わる教育の実際について、また、第三者のお立場から、高度専門職業人養成をどのように考え、どんな期待を持っておられるかについてお話をいただくことを中心に進めてまいりたいと思っております。お昼までの予定ですけれども、今日はプレゼンテーションですので少し延びるかもしれません。座長としてはできるだけ時間に近い形で終わりたいと思っていますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。それでは、事務局から、今日の委員の出欠状況の報告と、配付資料についてご説明をお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】初めに、委員の出欠状況です。本日は、高田委員、富野委員、前野委員からご欠席のご連絡をいただいております。それから、西澤委員が飛行機の関係で30分ほど遅れるとご連絡を頂戴しております。次に、本日、意見発表者として3名の方にご出席いただいておりますので、ご紹介させていただきます。近藤潤子先生です。天使大学の学長で、助産研究科研究科長でもいらっしゃいます。平成16年から専門職大学院において助産師養成を行っておられます。

【近藤発表者】よろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】お隣が堀内成子先生です。聖路加看護大学大学院看護学研究科ウィメンズヘルス・助産学専攻の教授で、修士課程としては最も早く助産師養成を開始されていらっしゃいます。

【堀内発表者】よろしくお願いします。

【小山田看護教育専門官】中澤幾子先生です。1989年に設立された乳がん体験者を中心とした市民グループのイデアフォーという団体の世話人をお務めでいらっしゃいます。

【中澤発表者】よろしくお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】また、本日オブザーバーとして、厚生労働省医政局看護課の野村課長にご出席いただいております。続いて、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第と席次表がございまして、次に、資料1として、本検討会の今後の検討課題についてというものが1枚ございます。資料2として、天使大学の現状と課題という、近藤先生の資料があります。資料3が堀内先生の資料で、資料4が中澤先生の1枚ものの資料となっております。資料5として、佐藤委員から本日ご提出いただいた資料です。資料6が、「看護系大学学士課程、修士課程及び博士課程修了者の進路について」という資料になっています。参考1として、厚生労働省のチーム医療の推進に関する検討会の報告書と、その後ろに検討会の概要がついております。参考2として、前回の議事録がございます。資料は以上です。もし不備等ございましたらお知らせください。

【中山座長】ありがとうございました。資料は大丈夫でしょうか。大丈夫のようでしたら、引き続きまして、資料の説明をお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】では、ヒアリングの前に、事務局で準備をさせていただいて資料1、5、6及び参考資料1について、順番が飛んでいて恐縮ですが、ご説明させていただきます。なお、資料5については佐藤委員より、参考資料1については野村課長からご説明いただくことになっております。野村課長がお仕事の都合でこの後すぐ出なければいけないということで、まず初めに参考資料1のご説明をいただくことにしたいと思います。

【野村オブザーバー】それでは、私のほうから、チーム医療の推進に関する検討会のご説明を簡単にさせていただきます。

 チーム医療の推進に関する検討会の報告書につきましては、3月19日、先週の金曜日でございますが、検討会においてまとまったところでございます。そして、この資料に添付してあります1枚紙を見ていただきますと、趣旨、構成メンバー等がございます。この検討会は、「趣旨」のところにございますように、チーム医療を推進するために、厚生労働大臣のもとに構成された検討会でございます。これのきっかけになっておりますのは、麻生前総理からこういったことを検討するようにという指示がございました。そういった背景も受けております。そして、日本の実情に即した医師と看護師等の協働・連携のあり方について検討を行うという目的で発足いたしました。構成員は、ここにありますが、この文部科学省の検討会のメンバーと重なっている先生方もおられます。

 この検討会は、ヒアリングを中心に進めてございます。開催状況は下にありますけれども、このように9回にわたってヒアリングをし、実態を十分把握した上で検討を行ったところでございます。

 このチーム医療を進めるためにどういった報告だったかということを、この文部科学省の看護関係の教育と併せて説明させていただきます。昔から言われているところでございますが、この報告書の1ページ、「基本的な考え方」の下から2つ目の丸のところで、チーム医療を推進するためには、各医療スタッフの専門性を向上させること、各スタッフの役割の拡大が必要であること、そして各医療スタッフの間の連携を進め、また補完し合うことが重要だということが整理され、これにのっとった議論がされたところでございます。

 看護も医療スタッフの一職種でございますので、看護について、2ページ以降に書いてあります。「目的」のところにありましたように、医師と看護師の連携・協働というのが大きなテーマでしたので、検討会の議論の時間でも、かなり看護師の業務の役割拡大について議論が行われました。

 看護師の役割拡大のポイントは、「基本方針」の3つ目の丸の1のように、自律的に判断できる機会の拡大、そして看護師が実施し得る行為の拡大、こういった方向性で看護師の役割拡大を議論してまいりました。その前提となるものが、医師の指示のもと、この包括指示を活用して、こういった医療の現場での業務がスムーズにいくようにといったことも議論されて、この包括指示が整理されたところでございます。

 役割の拡大は、3ページ以降にございますが、まず、看護師全体の役割の拡大・明確化といったことに触れております。ここでは、下のほうにありますけれども、その拡大をするに当たっても、今行っている業務の中で必要な看護業務、どのような看護業務が行われているかという実態調査を早急に行って、看護師の行為の拡大について明確化していくことが必要だということが出されたところです。

 引き続いて4番目に、新たな枠組みの構築として、看護師の拡大は前提ですけれども、一番上の丸にありますが、近年、一定の医学的教育、実務経験を前提に、専門的な臨床実践能力を有する看護師の養成が進んでいるという背景を受けまして、そういった看護師の能力を最大限発揮させることが期待されています。

 しかし、そういった専門性を生かした看護師に活躍していただく前提として、患者の安全、安心を確保しつつということが重要ですので、次の丸にありますように、「特定の看護師」というふうにしました。専門的な臨床実践能力を有する看護師が、今まで一般的に診療の補助に含まれないように理解されていた一定の医行為を、医師の指示を受けて新たに行うという枠組みを構築する必要があるというところでございます。

 4ページに参ります。この特定の看護師が特定の医行為をするという部分については、上から2つ目の丸でございますけれども、試行を行って、その試行の結果を検証し、医療安全の確保の観点から、法制化も視野に入れた具体的な措置を講じるべきといった報告がされたところでございます。

 医師の指示を受けずに診療行為を行うナースプラクティショナーの導入については、基本的な論点について慎重な検討が必要だというまとめがされたところでございます。

 そして、特定の看護師の教育の要件でございます。5番の2つ目の丸ですが、一定の実務経験を有し、第三者機関が認定した大学院修士課程を修了し、その上で第三者機関による知識・能力・技術の確認・評価を受けるといった要件としてはどうかという提案がされたところでございます。

 詳細については、ア、イ、ウで触れておりますけれども、次の5ページのウに、特定看護師の養成課程のことについて少し触れております。質、量ともに充実した臨床実習、医師等――これ、当然、看護師は入るわけですけれども――、実務家の職員、そして実習病院の確保が重要だということが指摘されたところでございます。

 そして、「なお」のところ、専門看護師との関係がございます。多くの大学院の修士課程で専門看護師の養成が行われているが、特定看護師の新たな枠組みの構築を踏まえて、専門看護師の業務や養成のあり方についても、必要に応じ関係者により見直しが行われることが期待されるというふうにされたところでございます。現在そういった検討がされているということを伺っています。

 さらに、今回、助産師のことがあるということで、6ページに助産師について触れているところがございます。助産師については、産科医との連携、協力のもとに役割分担をするんですが、その専門性をさらに活用することが期待されることを前提といたしまして、その行為につきましては、現場でも判断が分かれております会陰裂傷の縫合について、これは安全かつ適切な助産を行う上で必要性の高い行為だということが出されておりますので、そういったことを考慮して、助産師が対応可能な裂傷の程度や、助産師と産科医の連携のあり方について、臨床現場での試行的な実施と検証、その結果を踏まえて最終的な結論を得るといった報告とされたところでございます。

 関連する部分については以上でございます。

 他の部分についても、今日は説明は省かせていただきますけれども、大きな方向性が示されたと思いますので、ご参考までに準備したところでございます。私からの説明は以上です。

【小山田看護教育専門官】ありがとうございました。では、審議官が到着いたしましたので、ここでご挨拶をさせていただきます。

【加藤審議官】高等教育局担当の審議官の加藤でございます。本日、先生方には年度末、学年末のお忙しい中、検討会にお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。実は私、昨年7月から現在のポストを拝命しておりますが、その後この検討会が2回ございましたけれども、たまたま海外出張などが当たりまして、本日先生方に初めてご挨拶させていただきます、大変遅くなりまして、申しわけないところでございます。先生方には、昨年3月以来、この看護教育のあり方についての検討会にご参画いただきまして、まず昨年は、立ち上げ後非常に密度高くご議論いただき、8月には第1次の報告をまとめていただきました。感謝申し上げる次第でございます。

 最近の状況でございますが、もう先生方よくご存じのところでございますけれども、保健師助産師看護師法などが改正され、4月から施行されるわけでございます。また、ただいま厚労省看護課長からご紹介ございましたチーム医療の推進に関する検討会においても、看護職の役割に対する大きな期待が出てきているわけで、大学、大学院においてますます質の高い看護系人材の養成が求められているのではないかと思うわけでございます。そういった中で、学士課程につきましては、モデル校やカリキュラムの検討をお進めいただいている状況でございます。さらに、大学院における看護系人材の養成のあり方についてなどを含めまして、看護学教育をどう改善、充実していくかということについて、引き続きご議論をお願いしてまいりたいと思います。問題が非常に多岐にわたりまして、難しいご議論かと思いますけれども、ひとつ将来の日本の看護教育の改善、充実のために忌憚のないご意見をいただきたいと思いますので、よろしくご指導、ご鞭撻をお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】先ほど申し忘れましたけれども、この後、審議官と課長のほうも途中退席をさせていただく予定になってしまっておりますが、ご了承くださいませ。

【中山座長】それでは、佐藤委員から大学院教育に関する文部科学省の検討状況についてということで資料を出していただいていますので、簡単にご説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【佐藤委員】佐藤です。お時間いただきまして、ありがとうございます。私どもの検討会も、別の視点から見れば、今、日本で非常にダイナミックに展開しております総合的な大学改革の一環であるというふうに位置づけられると思います。その大学改革の主たる議論の場であります中教審の議論の動向について踏まえることが肝要かと思うところであります。今日はそういう意味で、この検討会の、しかもこれから集中的に、大学院における看護系人材養成ということがテーマでございますので、このことに絞って中教審の議論の動向などを簡単にご説明し、情報を共有できれば幸いだと思います。

 さて、中教審の審議、実際には中教審の大学分科会でございます。現在ご覧のように、一昨年の9月の諮問、「中長期的な大学教育の在り方について」ということで、大変精力的に議論が進められております。この諮問そのもののさらなる背景といいますと、やはり私どもはきっちり踏まえておかなければいけないのが、例の平成17年の、いわゆる将来像答申でございます。とともに、その年のたしか暮れに出ました「新時代の大学院教育」、通称大学院答申についてもしっかりと踏まえなければならないと思います。また、中長期的な云々というのに多少前後したんですけれども、いわゆる学士課程答申というものが出ております。このコンセプトについても十分に踏まえなければならないところだと思います。

 この他に、中教審として、これまたこの検討会に、ある意味で非常にかかわりのあることでありますが、キャリア教育・職業教育特別部会というのが展開されております。これは、幼児期から大学に至るまでの各成長段階に応じたキャリア教育、職業教育の重要性を改めて議論し、学生の学びから就業への移行がよりスムーズになるような配慮ということで、総合的な検討がなされているところです。

 そのキャリア教育の特別部会につきましては、実は今日が22回目ということで、非常にダイナミックに展開されております。私自身は、今日は本務校の卒業関係行事があって出られないわけですけれども、今、高等教育におけるキャリア教育、職業教育が論点の中心になっております。

 さて、戻りまして、現在の大学分科会のことであります。そこにありますように、諮問は大きく3つのテーマを与えております。これに沿いまして、例によってたくさんの部会から構成されております。注目すべきところは、質保証システム部会の議論の行方は、当検討会としても十分に見ておかなければならないことだと思います。その他に、大学規模・大学経営部会、大学院部会、それから認証に関わる認証評価特別委員会なども動向を見ておく必要があると思います。併せて、大学院部会の中に設けられております様々な部会の動きも、この検討会には関わりが多いところでございます。

 このスライドの下のほうでございます。この将来像答申以来脈々と続いております検討の中で、特にポイントとなって現在も受け継がれ、展開していることについて若干挙げてみました。

 この中で、特に学位課程を中心に議論をするという第1点。それから、下のほう、キャリア教育の強化というものがにわかに焦点になってきたこと、そして大学院の充実。この辺のことがホットな論点であることを指摘しておきたいと思います。

 大学というのが学位を授与する機関であるというので、学位とはいかなるものかという定義が改めてなされております。これが将来像答申であります。併せて、現在その学位というものは、ラーニング・アウトカムズを中心として、従来、何を教えるかということが中心に議論されてきた大学の教育につきまして、そうではなくて、着地として、学んだもので何ができるようになるかを大事な視座に置いて検討していこうという国際的な動きの中に我が国もあるということでございます。

 具体的には、我が国における、学士、修士、博士というのがいかなる能力を証明するものであるかということについて、改めてきっちり整理しようという動きでございます。学士力につきましては、私どもの検討会の昨年の中間報告の中にも盛り込まれておりますので省かせていただきますが、引き続きこの学士力ということが大事なポイントであろうと思います。

 そして、キャリア教育。キャリア教育・職業教育特別部会の動きに連動して、大学分科会の質保証システム部会でも集中的に審議いたしました。その結果、既にご案内と思いますけれども、大学設置基準、短期大学設置基準の改正に結びついております。来年4月から施行されます。大学はもちろん学問の中心でありますけれども、学生が卒業後、社会的、職業的に自立をしていかなければ何もならない。その自立を促すための営みを、教育課程の内外にわたってきっちりとすることを義務づけたわけであります。

 そして、「大学院の充実」。これにつきましては、いわゆる実質化ということで、従来、ともすると曖昧でありました大学院の性格。例えば、研究機関なのか、教育機関なのかというある種の不毛の議論でありますけれども、これを改めて明確に、大学院は教育機関である、人材を育成する教育機関であるという整理がなされました。

 そして、併せて、今の専門職大学院につきましては当初想定した以上の多様な広がりを見せておりますので、今、大学院部会のもとに専門職大学院ワーキンググループが設けられまして、その質のありよう、質保証のあり方について積極的に議論が展開されております。

 さて、「わが国の大学院の課題」。これは、一つ一つご説明するまでもないと思いますけれども、このようなことが議論の中心になっております。大きく分けると、上の3つぐらいが、改めて大学院というのが教育機関であり、そのためには教育課程、コースワークが非常に重要であることが確認されつつあります。

 併せて、ラーニング・アウトカムズ。ここでも分野横断的に、先ほどのそれぞれの学位が何を証明するものであるか。例えば、看護系の中ではどのような目標を設定すべきかということをきっちりとしなければならないというふうになっております。

 そしてまた、大学院の役割。ご案内のように、伝統的な研究者の養成、高度専門職業人の養成、大学教員の養成の他に、新たに4つ目が最近つけ加えられました。看護系の人材養成については、あまりこの第4点目はポイントとならないかもしれませんけれども、知識基盤社会を支える、高度で知的な素養のある人材の養成ということで、大きく言えば、生涯学習社会の中に大学院もきっちりと位置づけられるという話であります。

 そして、博士課程の機能、修士課程の機能が改めて整理されております。修士課程はあくまでも研究者養成に関しては第1段階にすぎないという位置づけであります。とともに、修士課程における高度専門職業人の養成の重要性が改めて確認された。3点目は、ただいまの生涯学習対応であります。

 さて、その中で、高度専門職業人がこの検討会でも議論の対象になります。そこでは、いろいろありますけれども、キーワードとしては、理論と実務の架橋ということになります。そして併せて、3番目のポツにありますように、職能団体等による領域の基礎がきっちりと確立している職業につく者という整理がなされております。

 その他、これから議論の中心になります修士課程については、いくつかのキーワード――知の基盤を与える、思考能力を養う、行動力を養う、あるいは幅広い視点を養わなければならない、そして専門分野の知識、能力を習得する教育であると。そして、これは体系的に編んだ教育課程によるコースワークを重視しなければならないといったことが言われております。

 さて、この看護学系の修士課程のありようにつきましては、例の大学院答申の中の、とりわけ医療系ワーキンググループの報告書に書かれておりまして、これは私が今さら申すまでもなく、専門の先生方は熟知しておられることだと存じます。以上、限られた時間でございますけれども、こういった大学改革の流れの中での大学院教育に関する論点、コンセプト、それから今後の課題を踏まえて、この検討会で看護系人材の養成に関するさらなる議論が深まることを期待申し上げます。以上でございます。

【中山座長】佐藤先生、ありがとうございました。今日の議論の前提条件になる、大学院教育とはということでお話をいただきました。佐藤先生の今のプレゼンテーションに関しても幾つか質問あるかと思いますが、もし確認だけしたいことがありましたら受けますが。できれば、今日のヒアリング、先生方のお話しをお聞きしてから全体討論に持っていければと思っておりますが、よろしいでしょうか。それでは、今日来ていただきました、近藤先生、堀内先生、中澤先生の全体的なお話から入っていきたいと思っております。3人の先生方から意見発表をしていただくのですが、大変恐縮ですが、15分程度となっております。多少延びることもあるかと思いますが、大体そのぐらいでプレゼンテーションをしていただきまして、あとは意見交換の中でまた補足をしていただくという形で進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。それでは、近藤先生、堀内先生、中澤先生の順で進めていきたいと思いますので、近藤先生、どうぞよろしくお願いいたします。

【近藤発表者】本日は、私どもの助産専攻の現状をご報告申し上げることで、役割を果たさせていただきたいと思います。この機会を頂戴いたしまして、ありがとうございました。

 お時間の関係から省略してお話しさせていただきたいと思いますので、資料2の2枚目の裏のページから進めたいと思います。教育目標として8項挙げてございますが、専門職大学院をスタートいたしました平成12年、この課程でこの8つの目標から始めております。専門職大学院助産研究科では、女性に優しい自然出産を自律して、医療機関、地域で実践するために、正常経過の診断・ケア及び、正常からの逸脱の判断及びケアができる能力の育成。それから、科学的根拠の明らかにされている手段を、ケアの質の向上に応用する力の育成。助産管理並びに助産師教育の仕組みの理解、助産チーム及び他職種の連携・調整能力の育成。これから先は、「拡大する助産師の役割」と一般に言われているところですが、次世代育成に向けた子育て支援。5番目に、性と生殖に関する倫理的問題のアセスメント、性教育プログラムの開発等、健康教育・相談ができる能力の育成。6番目にございますのは、ライフサイクルに対応した女性のリプロダクティブ・ヘルスの増進を図るための相談・教育・援助活動ができる能力。7番目に、安心して子供を生み育てるための地域母子保健活動、他職種との連携・協働しながら主体的に実践できる能力並びに政策化できる能力の育成。8番目に、国際助産活動についての理解を深め、国際助産活動での交流や発展途上国での助産活動を通して貢献できる能力の育成を考えております。

 看護教育を修了した者についての基本的な助産教育の提供の場でございますが、平成16年から、既に助産師の免許を有している者につきまして助産教育分野を設置いたしました。助産教育分野の教育目標は、この8項目に、「教育機関・臨床現場において、助産師を目指す学習者に、教授学習の理論を踏まえ、学習者の知識・技術の獲得、実践に向けて統合できるよう教育・指導する能力の育成」という目標をさらに加えてございます。

 次のスライドに参ります。入学要件等に関しては、助産基礎分野では3種類の入学資格、出願の手続がございまして、推薦、一般入試、社会人入試等を設けてございます。主として看護系大学学士の教育を修了した者でございますが、看護専門学校、短期大学等で学士の資格のない者につきましては、出願資格認定審査を行った上で一般受験を認める場合がございます。ごく少数でございますが、今まで何人か入っております。それから、助産教育分野に関しましては、助産師としての実務経験が5年以上ある者につきまして、既に助産師の免許を有しての上で、助産教育分野入学試験を特に実施して、入学させております。修了要件といたしましては、全部で56単位で、必修53単位、選択3単位、残りが選択でございます。主として基礎科目、実践専門科目、発展・展開科目、特別統合研究科目ということで、今配付していただいております資料2の2の表のページに、助産基礎分野で開講している科目の一覧が載っております。裏側には助産教育分野の科目の一覧が載っておりますので、ご参照いただきたいと思います。助産教育分野は、同じように修了要件56単位でございますが、必修が55、選択はごくわずかで、基礎科目、実践専門科目、発展・展開科目で構成されております。

 次のページの年次計画協議計画の概要をご説明させていただきたいと思います。2年課程が基礎教育分野で、上のほうの表が基礎助産の分野でございます。最初、入学して2カ月と2週間ほど学内の学習を主として行った上で、実践の実習のために、マタニティサイクル助産ケア――これは、妊娠、出産、産褥、新生児のケアでございますが――の基礎実習を9週間実施して、それから定期試験の後、11月からマタニティサイクルケアのさらに残りの部分の統合実習1がございまして、冬休みを挟んで、実践現場での学習が主体になっております。2年目に、最初の2カ月、講義、学内学習がありまして、マタニティサイクル独立助産実習が6週間、ハイリスク助産演習。その後に、発展・展開科目の実習がございますので、子育て支援を選択した者、性教育を選択した者、国際助産学を選択した者、それぞれの選択分野の実習がございます。それをもちまして2年の計画が終わります。助産教育分野は1年半のコースで、1年次の冒頭は基礎と同じ開講をしておりますけれども、この中で認定試験を実施して、約21単位分を試験によって認定いたします。認定できない者は、基礎と一緒に履修することになっております。それから、既に臨床経験がありますので、7月、8月に3例だけを助産所で実施することによって臨床能力の判定をした上で、10月から教育に特化した学習が入っておりますので、10月、11月、12月は、教育に関する事柄を含め、助産教育科目が開講されております。1月からマタニティサイクル独立助産実習が入りまして、2年目の冒頭で教育実習、臨床指導の実習、それから課題研究という形で1年半で修了いたしますので、9月末をもって修了いたします。

 主たる科目の内容に関しましては、お手元の資料の4ページでございます。その裏側に、おおよその実習の展開に関して、例数並びに期間を表示してございます。臨床実習施設1カ所では大量の学習をすることがほぼ不可能ですので、全員の規定の実習をするのに、お手元の資料にございますように、基礎実習で病院7カ所、統合実習1で病院・診療所が6カ所・1カ所の合計7カ所、独立助産――これは助産院を主として使用させていただいておりますが――7カ所、統合実習にその他5カ所ということで、学習が分散した現場で行われることから、巡回指導等、学内の教員を含めて大量の教員を動員しての教育になります。教育方法の概要は、理論と実践の架橋ということもございますが、モジュール等を用いて学習を主体的に行えるような教材を開発してございます。あと、指導に関しましては、プリセプターとかメントーシップで、少数の学習者にできるだけグループをつくって教育指導をさせることになっております。発展・展開科目の助産基礎分野では、子育て支援、性教育、ウィメンズヘルス、国際助産学の、1はすべて必修ですが、2に関しては選択となっております。教育分野では、主として教育概論、教育計画の原理、それから教授学習の理論、教育評価、教育機関の運営、そして授業等を含める教育実習並びに臨床助産指導実習を含めてここで課題研究をさせております。専任教員の構成は、専門職大学院の設置基準で15名を置かねばならないことになっておりますので、現在、教授、講師、助教等、それぞれ合わせて15名、うち半数以上が教授であることということで、8名以上の教授を確保することになっております。この分野の特徴であります臨床専任教員、いわゆる現場にいて6単位以上を大学院で開講してくださった上で、ご自分の現場に実習生を受け入れての指導という特別なみなし教員制度がございますが、2009年でご覧いただきますと、教授のうち1名がみなし教員。それから講師が2名でございます。実際には、臨床指導――先ほど7カ所ありましたので、7名のみなし教員が置ければ大変よろしいんですが、3名までというのが私どもの15名の教員のうちの規定でございますので、現在はみなし教員は3名になっております。あと、大学の学部の教員1名が兼任の発令をしております。先般、日本助産評価機構によりまして、初めての認証評価をいただきました。雑駁でございますが、以上でございます。ありがとうございます。

【中山座長】近藤先生、ありがとうございました。大分短くしていただきまして、15分で終わっていただきました。ほんとうにありがとうございました。補足もあるかと思いますが、ディスカッションのところで少し補足していただければと思います。それでは、堀内先生、続けてお願いできますでしょうか。

【堀内発表者】このたびこのような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。私たちも大学院教育、このコース(助産学の上級実践コース)を始めて5年ということで、この機会にもう一度振り返って、見直してみました。(パワーポイント(以下PPと略す。)1)

 本大学院における助産教育では、まず、助産というものは、女性との関係においてお互いに力を引き出し合うエンパワーメントを基盤にして、そして社会に向けて女性を擁護し、生活に深く根づいた援助行為というふうに考えております。本学では、看護学の学部教育を修めた者を対象に、高度な助産専門家の育成並びにエビデンスに基づく実践技術の開発と検証、それから実践から生み出される理論の開発に従事できる研究者、実践者、教育者の育成を目指しております。(PP2)

 本大学院では、2つの履修のモデルがあります。聖路加看護大学においては、看護学研究科の中に、看護学専攻と、今日ご説明しますウィメンズヘルス・助産学専攻という2つの専攻があります。その2つの専攻に、さらにそれぞれに2つの履修コースが現在まであります。ウィメンズヘルス・助産学では、1つは修士論文コースで、専門分野での専門性を高め、研究能力の開発を目指すコース。もう1つが上級実践コースです。これは、看護・助産ケアや管理のスペシャリストとして機能することができるように、より専門性を深めた実践能力の開発を目指すコースです。この中で、希望者にはということで、助産学の上級実践コースを選んだ学生には、助産師の国家試験の受験資格及び受胎調節実地指導員の申請資格を取得できるような形となっております。以前行っておりました、既に助産師の免許を持ち実践した方が、さらに大学院にいらして、そして上級実践コースという母性看護のCNS教育は行っておりません。(PP3)

 研究科全体は、看護学専攻とウィメンズヘルス・助産学専攻の2つに分かれておりますが、カリキャラムは大きく基盤分野と専門分野に分かれております。基盤分野の科目は、看護学専攻と共有の科目となっております。(PP4)

 入学要件は、大学卒業資格に本学では限っておりますので、各種学校、専修学校等は認めておりません。助産学の上級実践コースについては、看護師の国家試験を必須としております。実習も非常に多いですので、看護師資格を有している者に限っております。また、カリキュラム等が比較的込んでおりますので、社会人入学はこのコースでは認めておりません。様々な学生が入学してきますが、その中で少し学習困難な例として考えられましたのは、准看護師教育から様々積み重ねて上級教育まで来ている学生もおりますが、やはり論理的思考に難渋しておりますし、ケアの根拠を考えることがなかなか身につかないという事例がありました。(PP5)

 修了要件は、本学では32単位となっています。修士論文コースの学生は、実際は35から45単位ぐらいを履修しております。学生によって選択科目を多くとる学生もおります。一方、助産学の上級実践コースの場合で助産師の国家試験受験資格を希望する学生は、32プラス24単位以上の大体56単位が最低の必要要件となっておりまして、大体56から58というちょっとぎりぎりの感じで修了しております。(PP6)

 5年間の志願者の実績を見ますと、本学はこの専攻では定員が15名でございますが、2005年からスタートして、最近は32とか35ぐらいで、2倍ちょっとという形です。2008年度までは4年制の学部教育でも助産教育を行っておりましたが、2008年度からはなくなりましたので、学内推薦制度を設けております。合格者は定員15ですが、近年は若干多目にとっております。例えば2009年度ですと、21名合格しているうちの16名が上級実践コースで、5名が修論コースという内訳となっております。(PP7)

 どのような学生が合格しているかと申しますと、例えば修論コースの場合ですと、助産師としての臨床経験を3年から10年ぐらい経てから来ている方、助産師教育を既になさってから研究者としての基礎を学びたいといって入ってきている方がいらっしゃいます。一方、上級実践コースの場合は、大学卒業後、ストレートでいらっしゃっている方が毎年8から10名、一応ストレートなんですが、学士編入で、他の職業の経験がある方が毎年2人から3名いらしています。それから、看護師経験で、外科や婦人科、小児科などの経験を3年から5年して助産師のコースに帰ってくる方が2名から3名います。(PP8)

 5年間の修了者ですけれども、定員が15で、修了者は2006年から、12、14、15、16という形になっております。修論コースの修了者は、殆ど大学の教員として就職しております。上級実践コースの方は、殆ど病院、診療所等で実践者として就職して活躍している者があります。この5年間を振り返りますと、これまでに休学、留年、あるいは退学となった者は5名おりました。この5名の方々は、教育の機関の中でいろいろ悩み、そしてその人にとって相応しい道は助産なのか、そうではないのかというあたりを検討して、教員にとっては非常に時間も、いろいろな工夫もして、そして最後、退学という結果になるという場合もありますが、その人に相応しい道を選んでいただくというふうに考えております。以前、カナダのマクマスターへ助産教育で伺ったときに、退学率は12から15%と言っていらっしゃいましたのに比べると、もうちょっといいわけですけれども、助産でここから先、職業人としてやっていくということを考える2年間という形になっております。(PP9)

 教育目標は8つあります。1番目は、リプロダクティブ・ヘルスの概念に基づく基本的な概念で、女性を中心に置いたケア、理論を学びます。(PP10)

 2番目は、特に妊娠、分娩、産褥、新生児のあたりの基本的な概念というのが教育目標の2です。(PP11)

 3番目は、これが本学の特徴かなと思いますけれども、evidence-based medicineの方法論を使って、そして実践を変えていく、その基礎の能力を養うものがこの教育方法です。最終試験でも、この2年間で何ができましたかといったときに、多くの学生は、このEBMの方法論を自分で使えるようになったので、実践に戻っていったときそれを活用したいというふうに言っておりますので、やはりこれが本学の特徴と思っております。(PP12)

 4点目は、特に助産業務管理におけるリーダーシップに関するものです。サービスマネジメント論や看護管理との関連で学ぶものです。(PP13)

 5番目は、リプロダクティブ・ヘルスに関するあたりで、特に倫理や理論に重きを置いた教育目標です。(PP14)

 6点目は、国際的な視野での活動ができるものというので、選択科目に国際協働論というのがありまして、特論、それから海外での演習というのがあります。(PP15)

 7番目は、チームで働く者の、地域に根差し、かつ様々な職種の方と連携して働く能力を養うものです。(PP16)

 8番目は、主に地域に根差した教育活動や実践活動ができる能力を養うというものがあります。(PP17)

 振り返って考えますと、たくさんの獲得する能力があるわけですけれども、最終的にどこに一番重きを置いているかというのを考えたときに、6つある中で、最初の4つが重要と思っております。とにかく助産師として正常な妊産婦の診断とケアをする能力を養う。2番目は、EBMを基盤とした、ケアを変革できるリーダーになって欲しいと思っています。3番目は、職業人としての品位と強靱性です。この助産の分野でやっていくことに必要な技術と態度を養う。4点目は、助産の場合は自立して開業することができるわけですが、実践、開業する基礎力を養いたいと思っております。5、6もありますが、主に1から4が一番特徴的と考えております。(PP18)

 「プログラムの概要」で、ちょっと見にくくて申しわけありませんが、上段が1年目、下段が2年目となります。ピンクの部分は主に基盤分野等の科目です。黄色の部分が助産学に特化した部分となっています。ブルーの部分、「演習」となっておりますが、演習や実習で主に実践の場に赴いて行うクラスになっております。(PP19)

 1年目は、理論が春に入り、秋に入る。それから、ブルーのところが実習となっております。2年目は理論と実習が前半に入り、課題研究と上級実践実習になっております。教育の内容について、今の図示したものをもう少しご説明します。まず、理論期と考えられていますのが3つに分かれておりまして、1年次の春、1年次の秋、そして一、二年次ですが、主に2年次で課題研究をやる理論期3というのがあります。(PP20)

 それから、演習・実習期というのが全部で1、2、3、4と分かれておりまして、ある意味、ホップ、ステップ、ジャンプ、アドバンスという考えであります。実習期の1が復習のような形ですが、産褥の母子のケアが1年次の7月、その後、1年次の後半で、1月から3月の9週間で正常分娩の分娩介助及びケア。それから3期目が2年次の春の5週間の助産所の実習、4期目がいわゆるアドバンスの部分で、独立してさらに10例以上のところで妊娠の診断や分娩介助を行うというケアでございます。(PP21)

 教育方法の特徴といたしましては、講義もありますが、自己でワークブックをやってディスカッションするという形や、チュートリアルのものもあります。あと、実習に関しては、基本的には24時間のオンコール体制でありますし、助産所では一人ずつ配置いたしますので、とにかくコーディネートし、自分でマネジメントして実習することが必要になります。(PP22)

 これは今年度の例で、年度によって多少数値が異なりますが、ホップ、ステップ、ジャンプ、アドバンスといった中での連続した実習のところです。赤字になっておりますのが、いわゆる狭義の分娩、直接介助といったもので、ステップのところで大体平均10例、ジャンプのところで3例、アドバンスのところで6例という形になっております。(PP23)

 全体をまとめたものが、例えば妊婦健診だと平均26例、1期28……というようになっていまして、これは見学を全く除いて、責任を持って最後まで自分で診断し、ケアし、評価したものの例数でございます。分娩の1期から、直接介助、間接介助をトータルしますと、58例ぐらいを行っていくということです。助産の分野でも、技術は体にある程度身についた身体化した技術とならなければ、でき上がって外に出ていったとき、それが実施できないわけで、目、耳、足、口、手、鼻、すべての五感を通じてそのスキルを自分の体に体得していただくというのには、実習が必要かと思っています。(PP24)

 2年目にやる課題研究の例ですが、記述研究をやるもの、あるいはプログラム開発と評価をやるものと様々あります。例えば一番上のものは、自分の実習の例から、いったい人工破膜の適用は適切なのか、その後の天気は果たしてよくなっているのだろうか、あるいはうまくいかないんだろうかというものに疑問を持って、600例ぐらいの診療記録を分析したもの。プログラム開発では、助産師に対するこのBreast Awarenessの普及に向けた教育プログラムをつくって、それを評価するというような形で、やはり2年目はかなりこの課題研究を意識して過ごしております。修論コースの学生と比べると、かける時間は少ないんですけれども、中には非常に優秀な学生で、非常によい論文として学術雑誌に公表している例もございます。(PP25)

 教育で大切にしていることは、専任教員は大学院重点が5人、学部と兼任が3人という形で、あと、TAや臨床教員などと一緒になって、少人数受け持ち制の指導となっております。それから、退学のところでもお話ししましたが、学生にとってこの助産に進むのがほんとうに相応しいのかどうかというあたりを、一人一人丁寧にかかわっています。(PP26)

 最後に、以前調査しました、就職3年未満の実践能力を、大学院修了生と大学修了生を比較してもらって上司から得られた評価です。ここでは、大学院生のほうには「より探究心が多い」とか、やはり「助産という仕事に専心しようという覚悟」ができていることや、「調整し焦点化する能力」、あと「職業人としての人間的スキル」というあたりについて、周囲から見て評価が得られています。(PP27)以上です。ありがとうございました。

【中山座長】ありがとうございました。

 幾つかの質問もあるかと思いますけれども、続けてということで、社会が求める高度専門職業人ということに焦点を当てまして、中澤先生からプレゼンテーションをお願いいたします。よろしくお願いします。

【中澤発表者】よろしくお願いします。全くの医療の素人ですので、できれば、先生というのはやめていただいたほうがありがたいのですけれども。

【中山座長】わかりました。

【中澤発表者】看護教育の内容というのは私にはわからないのですが、自分の体験から、私たちがどのような看護師であって欲しいと望む場面があるかというのを3つのエピソードで考えてみました。これは実際、私が経験したことです。

 エピソード1です。非常に頑健な友人がおりまして、たまたま熱を出し、救急車で入間市にある病院に行きました。サイレンを鳴らさないで、娘に車でついてきて欲しいと言ったのは、帰れるかと思ったぐらいの症状ではあったんです。病院に行きますと、宿直のドクターがいらしたんですけれども、夜間なのでアルバイトでいらしている方です。だから、ふだん、そこにいる方ではないということです。そして、看護師の方もお一人いらして、彼女は帰れなく、入院することになりました。6人部屋、大部屋のベッドです。看護師が簡易トイレで用を済ますようにと確かに伝えたようなんですけれども、あまり必ずという認識を彼女は持たなかったというのがあります。肩で息をしている感じで、ハアハア言っていましたけれども、娘には「おやすみ」と言い、「また明日来るね」という感じで彼女は娘と別れました。私たちが知ったのは、その後、翌朝5時過ぎに彼女がトイレで倒れている。もう息をしていませんでした。死因は心不全。死んだらみんなが心不全だと思うのですが、はっきりしたことはわからないということで、原因を知りたい、やはり患者側としては原因をどうしても知りたいということで、いろいろな資料をいただきました。カルテ、心電図、看護記録を全部いただき、心電図に関して私たちは素人なのでよくわからないのですが、プロの方たちに見ていただくと、どこがどうとは言えないけれども、心臓がちょっと変という感じのご意見を皆さんからいただきました。とにかく、何があったかが一番分かるのは看護記録だと思い、それを読み解くのにかなり時間をかけました。後日、院長、婦長、担当医、担当看護師と遺族、私とで面談を持たせていただいたんですが、看護記録はほんとうに読み解くのが大変で、癖があり、人に読ませるものという感じではないんです。読みにくい上に、勝手にいろいろなマークをつけているという感じなんです。判断に迷う表現はたくさんありました。例えば、電気毛布を彼女に渡して、「寒い、寒い」とまた言ってきたので、「温度↑(矢印が上に向かって)」とあるんです。ということは温度を上げたのかなと思いまして、婦長さんに、「これは温度を上げたという意味ですかね」と聞きましたら、「さあ、どうなんでしょうね」という答えが返ってきて、ひっくり返りそうになったんです。「こういうのは書き方が決まっていて、何が起こったかというのをだれが読んでも分かるようになっているものではないのですか」と伺いましたら、「最近の子はいろいろな書き方をするので、私たちもよくわからないんですよね」と、それでいいのかという話だったんです。それを読んでいるうちに、過換気症候群、過呼吸でタオルを口に当てるよう指示するという記録がありまして、「これはどういうことですか」と聞いたら、「過呼吸だったんです」ということなんですが、担当医であるその晩の宿直医がそのことを知らなくて、その話を私たちのほうからしたときに、「えっ、それは教えてもらいたかった」とおっしゃったんです。「それを知っていたら、自分は患者のベッドわきに必ず見に行ったはずである」と。それは伝わっていなかったということで、彼女は何があってもトイレに行ったりしてはいけないと言われたと思っていないので、人間はなれていないと、できれば簡易トイレではなくて、トイレに行きたいという心理はありますから、行ってしまったわけです。医師は看護師に絶対安静だから、行っちゃだめだと伝えてと言ったつもりだったというのがあるんですけれども、お互いに意思の疎通ができていなくて、全く伝わっていませんでした。

 このケースで私が考えたことは、看護記録は全国どの病院のどの看護師のものであっても、だれもが理解できるものと信じていたのですが、そうではなかった。それはおかしいのではないか。そういう教育をすべきだと思います。それから、医師は看護記録を重視して、必ず目を通すべきなのではないでしょうか。そういうものが看護記録であるという認識を医師も看護師も持つべきだと思います。それから、看護師には医師に伝えるべき症状かどうかの判断力も必要とされると思います。これを先生に言わなければいけない、これは言わなくていいとか、そういう判断力はつけてもらわないと安心して任せることはできないというふうに考えます。それから、医師と看護師のコミュニケーションがとれていなかったというのが、今回、このケースの一番の問題点であるという認識を持ちました。

 次に、別のエピソードになります。在宅医療に関して感じた部分です。67歳の女性で、直接、肩の痛みが原因かどうかはわからないのですが、胆管がんを発見しまして、既に余命3カ月、十二指腸にまで達していると言われました。腹水がたまっていまして、「抗がん剤治療を受けるかどうかを決めてください」と言われ、病院から追い出されまして、緩和ケアを考えなければいけないということで、赤十字病院の緩和ケア外来の受診を予約したのですが、とても不思議なことに、「もし今後、一度でも抗がん剤治療を受けたら、この予約は取り消します」と言われました。まず、このシステム自体の問題もあるのですが、だったらということで、在宅で診てくれるドクターを探そうと思いまして、神奈川県の鶴見なのですが、横浜も近いことだし、地域的にはとても都会なのでいくらでもあるかと思ったら、探し方が悪かったのかもしれませんが、ネットでは非常に少なかった。なおかつ、信頼できて、24時間体制で回ってくれそうなところが1カ所しかなくて、そこに電話をかけましたところ、「前は鶴見にも行っていましたけれども、今は患者がとても多くなってしまったので、そこまで手が回らない」と言われました。結局、どこも探せませんでした。その後、私たちイデアフォーという乳がんの患者会で在宅医療のドクターの講演会を開きました。そのときにいろいろ伺っているうちに、結局、在宅医療をするためには、訪問看護ステーションが機能していないと難しいという話で、それさえ機能していれば、ドクターが1日1回顔を出す。でも、ナースは1日に何回か顔を出して、その患者のケアをしてくれるということで、入院しないで家でも緩和ケア病棟にいるのと同じようなケアが可能であると言われました。ということは、そういうところを目指す看護士さんに増えてもらわないと、私たちは安心して在宅で医療を受けることはできないんだなということなんです。

 ここで感じたことは、在宅医療を受けるためには看護師が不可欠です。ただ、今まで、いろいろな面で見てきた医師と看護師の力関係がありますから、では、訪問看護になれば一人親方のように、看護師の方がいろいろ判断しなければいけない場面があるわけですから、そういうことに関する教育がどうなっているのかなと感じました。医師の意思の疎通はもちろんですけれども、患者とのより高いコミュニケーション能力がなければ、状態をわかってもらえないと思うのです。実際、例の女性でも、痛みがあったにもかかわらず、本人は「痛くない」と言い張って、「よりいい治療があるよ」と言われても「大丈夫」と言っていたんですけれども、腫瘍精神科医にお会いしたところ、彼女のうつの原因が痛みであったということがわかったんです。ですから、できれば訪問看護でいらしてくれる方たちにもきめ細かい、そういうものまで、コミュニケーションではかれるぐらいの能力があったら、とてもうれしいなと思いました。

 エピソード3です。これは私の父が狭心症の検査を受けることで、カンファレンスルームで家族も一緒に説明を受けたときです。私は乳がんはピンポイントで勉強しましたけれども心臓病のことは全然わからなくて、多分、医師の説明のわからないところ、そこがわからないという説明が医師にはわからなかったんだと思うんです。うまくできなくて、でも、一生懸命説明しようとしたら、すごくいらいらしていて、横にいらした看護師さんが、「私にはわかりますから、では、私から説明します」と言ったら、そのドクターが「いい、本人に説明させるから」とおっしゃったんです。本人というのは私のことですか、という感じなんですが。結局、そのときに、私はほんとうによくわからなかった。2回目のときは図書館でいろいろなものをコピーして行って、質問して答えていただいたのですが、最初のときはほんとうにわからなくて、質問すらうまくできなかったという状態で終わってしまいました。

 このケースで思ったのが、私がどう表現していいかわからない、言われたことも、こういうふうにしか理解できなかったという「患者語」が医師には伝わらないけれども、実は看護師さんにはわかってもらえていたということです。だから、より私たちに近い立場にいる人だという認識を改めて持ちました。しかし、医師は看護師を同じ医療者扱いはしていません。全く下のものと見て、「いい」という言い方をしてしまう。そこに私たちが期待するような医療のチームワークができるはずはないと思います。必要とされている「チーム医療」には、医師と同等の発言力がある看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー等がもちろん必要であると思います。前回のチーム医療の報告書を読んでいて、全部そうだと思ったのですが、ほんとうにそういう看護師でなければ、同じ土俵に立って意見を言えないと思います。よって、医師が同等のスタッフとして認めざるを得ない看護師を育てなければならないというのは当然ですが、医師の側にも看護師をそういうふうに、自分が受けた教育と違う教育を受けているのだから、自分のアシスタント程度で、下のものと見下すような態度というのは改める教育が必要ではないかと考えます。

 それから、がん専門ナースとか臨床試験専門のナースとかがいらっしゃいますけれども、専門性というのは絶対的に必要な部分があって、幅広く、ナイチンゲールのように私たちの面倒を見てくれる看護師さんというのもすごくありがたい存在ですが、やはり自分ががんになったときに、がんのいろいろなメカニズムであったり、システム、緩和の治療法、抗がん剤治療のいろいろな副作用についても看護師さんに聞けば、それはこうだと言ってもらえる。あるいは、浮腫とかありますから、そういうものはこういうところに行けば何とか解決の方法が得られるのではないかとか、そのような、いろいろな深い知識を持っている人が看護師として私たちの「チーム医療」に関わってくれれば、それはものすごくありがたいことだなと思います。以上、患者側として言いたい放題みたいな感じで、こういう人が望ましいと言いましたが、では、それをするためにどういう教育をしたらいいかというのは、私には全くわからないので、皆さんにお考えいただき、実践していただけたらありがたいと思います。ありがとうございました。

【中山座長】ありがとうございました。「先生」でないほうがいいということなので、「中澤さん」と呼ばせていただきます。

【中澤発表者】もちろんです。

【中山座長】それでは、今、3人の方にプレゼンテーションをしていただいたのですけれども、15分の時間を守っていただきまして、かなり切っていただいたのではないかと思いますので、質問をして、少し膨らませていきたいと思いますが、よろしいですか。小山田専門官どうぞ。

【小山田看護教育専門官】質問ではないんですけれども、もう1点、ご説明しておきたい事務で準備した資料がございますので、それが終わってからでもよろしいでしょうか。

【中山座長】わかりました。どうぞ。

【小山田看護教育専門官】資料6です。看護系大学学士課程、修士課程及び博士課程修了者の進路についてということで、内容は前回の検討会の際に口頭でご説明をさせていただき、次回、それを資料でお出しするということで準備させていただいたものです。出典は日本看護系大学協議会の全会員校に対する調査結果の抜粋でして、2003年度から2007年度の調査ということで、その中の学部と大学院の修了者の動向というところを拾わせていただき、資料化しています。間違いがあったら座長に訂正していただければと思うのですけれども、5年間の回収率は8割、9割という高い回収率での調査になっていらっしゃるようです。3.卒業・修了時点の進路、1)学部卒業時点の進路というのがグラフで示されたものになっております。殆どが就労し、一定割合が進学をしているというところで、進学の中でも153人が大学院に行き、助産師コースにも150人が行っているという結果が報告されていました。大学院の修了者に関しては8割が就職し、約1割が進学をしていました。4.卒業・修了時の就職状況では、就職された方が具体的にどういうところに行っているのかということですが、1)学部卒業生の就職状況は後ほどご覧いただきたいのですが、2)の図19で大学院修了生の就職状況があります。2つに分かれておりまして、図19が専門看護師課程修了者の就職先、図20が修士論文コース修了時点での就職先内訳です。専門看護師課程の修了者は多くが臨床に出られているということと、修士論文コースでも半数ぐらいの方が臨床に出られていて、3割近くの方が大学の教育研究者になっておられるということがわかります。博士後期課程の修了者については、8割から9割近い方々が大学、短大等に就職していて、大きな変化はないという結果でした。

【中山座長】ありがとうございました。補足をしていただきました。これが大体全体的な大学院修了者の動向でございます。それでは、近藤先生、堀内先生、中澤さんに対して何か質問はございますでしょうか。松尾先生、お願いします。

【松尾委員】名古屋大学の松尾です。

 先ほど、天使大学と聖路加看護大学のカリキュラムの中身を見せていただき、すばらしいと思いました。特に、聖路加はすばらしい内容だったと思うのですが、先ほどの中澤さんのご意見とも絡めまして、教育課程の中で、これは病院に行って実習をされるわけですけれども、病院の側の取組体制、実際に教員がそこに行って教えるというお話があったのですが、しかし、医療の現場を担当しているのは病院なので、病院側はどれぐらい取り組んでおられるのかということ。それから、こういうカリキュラムの中、あるいは評価に医師がどのように関与しているのか、そこをお聞きしたいです。

【中山座長】近藤先生、堀内先生、確かに実習の例数も多かったですよね。17例から20例近くまで実習の中でやっていて、その実習体制のことも含めまして、ご質問に答えていただけますでしょうか。どちらからでも結構です。

【近藤発表者】お手元にお配りしていただいております資料2の最後のページをご覧いただきますと、教員の数が書いてあります。先ほどお話しいたしませんでしたが、表下に「実習指導教員17~20名」と書いてございまして、実際に助産の場合は実習現場で、ほんとうに1対1で指導をしながら、次第に自立をさせていかなければいけないという教育方法をとりますので、実際、専任教員19名の殆ど全員が現場まで出ていって、学内で教えたことそのものを徹底して現場の指導をするわけですが、それだけでは足りないので、実習指導教員になる方を必要に応じて配置いたしますので、教育指導に当たりましては非常に人的な要素が多い。最後まで、教員の数に関します限りは、一人一人の学生に、そのときに必要であるステップ、ステップの学習を指導すること。自立するレベルに到達すれば、次第に自立させていくということでございますが、お答えになっていますでしょうか。

【堀内発表者】現場での指導に関しましては、例えば、病院が8週間の実習で3カ所に行くとしますと、大学の教員も1人ずつ、それぞれの実習場所の担当がほぼ決まっていきますが、オンコールのために昼も夜もということはまず無理で、教員が行くのは大体昼間となります。各実習場所には、大学で臨床教員という制度がありまして、それでお願いしている先生方に実習上での様々な責任といいますか、教育をコーディネートしていただいたりということがあります。ですので、実習場所での様々なケアの責任は、実習場にいらっしゃる臨床教員という形になります。単位の認定は大学の教員がすることになります。教育への医師の関与ということですが、医師が科目の単位認定者となっている場合は医師がするわけですが、本学の場合は、助産に関する科目の単位認定は全部医師ではありませんので、大学の助産専門の教員がいたします。医師には、例えば、ハイリスクの部分とか、会陰保護の実際の演習などはすべて講義や演習で教えていただきますが、単位認定に関しては大学院の医師ではない教員が認定する形になっています。

【中山座長】松尾委員、いかがでしょうか。

【松尾委員】今日、最初の資料の説明にもあったんですけれども、チーム医療という観点からして、例えば、医師がどのような指示を出して、看護師さん、あるいは助産師さんがどういうところで判断をし、何を実践するかという役割分担を明確にすることが重要だと思います。表現はしにくいんですけれども、そういった他職種というか、そことのかかわりの教育カリキュラムがどんなふうになっているのかなと疑問を持ちました。これは非常にいいと思いますので、私は持って帰って、我々の大学にも紹介したいと思いますが、具体的にそういったことがあれば、少し教えていただきたいと思います。

【中山座長】わかりました。多分、助産院や病院の場合というようにいろいろな場があって、そこの中でも違ってくると思いますが、少し話していただけますでしょうか。

【堀内発表者】実習の場所では、特に助産師は正常分娩のところですので、正常から逸脱して、これは助産師ではできない、医師に連絡とってという判断のところがあります。そこに関しては実習の場所で、その事例に対して現場の助産師と学生と医師、時には他の職種が入る場合もありますけれども、大体は産科医、小児科医との話がそこで持たれて、そのケースをどういうふうにするかということがあります。ですから、事例ごとの状況判断の場面では助産師や産科医、小児科医との連携をどういうふうにするかを学ぶチャンスがあります。

【中山座長】近藤先生、何か補足はありますか。

【近藤発表者】今、堀内先生のご発言のとおりだと思いますが、私ども助産所実習を実施しております折には、助産所はそれぞれ嘱託医を持っておりますけれども、正常に推移している範囲では助産師が判断しておりますので、そこで助産師がこれは医師の範疇であるという判断をするところを助産師である助産所の院長から学ぶという機会もしばしばございます。それから、医療機関の中でそういう事態が発生したときに、現場の助産師、あるいは指導者を交えて、医師の見解を含めての学習のチャンスもございますが、どちらかといいますと、できるだけ正常ケースを選んでの学習をしておりますので、医師と直接のやりとりの機会はあまり多くないかと思います。

【中山座長】ありがとうございました。他にご意見はございますか。どうぞ、坂本委員。

【坂本委員】今、中澤さんの資料を見せていただきながら、お話を伺っていました。私もずっと臨床で経験してきたのですが、自分で何かを判断する能力うぃつける教育は、これからますますやっていかなければいけないというふうに思っています。看護師だったら看護師、助産師であれば助産師としての判断とその教育いうのがあるのですけれども、実は、チーム医療という話になって教えていかなければいけないのは、チームみんなで共通した判断をこうだよねという同じ判断をどこでするかというところです。そのことを教育の中に入れていかなければいけないと思うのです。中澤さんの最初の事例は、これだけではよくわからないものもありますけれども、家族も含めたみんなでこうだよねという同じ判断をして、それをもとにそれぞれの役割で動いたかどうかが見えないのです。そういう意味では、助産師の大学院教育などいろいろな教育がありますけれども、看護師だけでとか助産師だけでということではなくて、また、医師がどう考えているかを知ろうとすることではなくて、チームメンバーみんなが同じ判断ができるための教育は、どのように取り入れていかれているのかというのは、どのように重視しているのか。ぜひ、松尾先生と同じように、もう一回伺いたいのです。それとも、助産師のところだけで継いでいこうとしているのか。私はそこに原点があるような気がしたのですが。

【中山座長】中澤さん、どうぞ。

【中澤発表者】すみません。補足させていただきたいのですが、私も思うのは、ディスカッションする力があるかどうかだと思うのです。ただ、コミュニケーションをとるというのではなくて、意見の交換をしてもらわなければチーム医療である意味がないと思います。先ほどの1の例は、全く、殆ど知らない同士の医師と看護師の、それはディスカッション以前の問題で、コミュニケーションが全くとれていなかったという部分です。そこの病院の看護師に対する教育が全くなっていなかったと私は思います。性格的にどうこうではないのですが、そういうことをきちんと打ち合わせをするであるとか、看護記録ひとつ見れば、どういう教育をしていたかというのは分かるのですが、そういうものがおかしいのではないかということです。私たち患者、遺族側は単に、みんなで一生懸命、それを見て、考えた結果を病院にぶつけたという形ですけれども、その辺で病院にやって欲しいと言ったのは改革なんです。どういう事態があったかということを、朝礼があるんだったら朝礼で全職員に伝えて欲しいというのが遺族の願いだったのです。できれば、娘をその場に呼んで欲しいと。それで私たちはオーケーですと伝えたのが決着ですけれども、こういうことがないように、この病院の中の問題点が何であるかということをきちんと認識し、改善に向けて動いて欲しいというのが私たちの気持ちでした。

【中山座長】どうぞ、堀内先生。

【堀内発表者】先ほど答えましたのは、助産の正常分娩の場面での医師との話し合いということを言ったのですけれども、そうではなくて、例えば、助産の分野でもややハイリスクのような状況のケアをする助産師もおります。

 例えば、出生前検査で何か異常が見つかって、その後、妊娠の継続を中断するような意思決定をした場合では、その治療をどういうふうにするかという場合に、ケースカンファレンスが行われるわけです。その場合は助産師、産科医、もちろん、遺伝医や臨床心理士、様々な方でチームを持ってケースカンファレンスをすると思うのですが、そのときに助産師の立場で、この方はどういうふうな意思決定をこれまで悩んでやってきたかとか、この先の見通しはとか、この家族にとってどうなんだろうかという話を助産師の立場でその女性を擁護したり、生活を見据えてのディスカッションはできると思うのです。ですから、そういうときに、一つのチーム医療を担うメンバーとして、しかし、遺伝医には見えない、つまり、助産師の立場で言える女性と家族、少し長い目で見た家族の物語を言えるかということだと思うのです。それはどちらかというと、修論コースとか少しハイリスクのケースの場合を演習とかでやるところでは、学ぶチャンスは多くあります。

【中山座長】ありがとうございました。坂本委員、よろしいですか。

【坂本委員】そうですね。私も看護大学の教員をしていますけれども、松尾先生が言われたことというのは、私自身もそういうところはこれから教育の中でやっていかないといけないと感じます。

 1つの職能集団だけで教育をしていくときに、他の職業の人たちとどのように話し合っていけるか、ということが重要になると考えます。そして、助産師もそうですが看護側が患者の生活を見ているわけですし、助産師もそうですから、そういうときに、先ほどの中澤さんの言われたケースの中から考えれば、患者や家族の方の代弁をし、他職種とのコーディネートをある程度できるような力が必要なのかなと今日は考えました。

【中山座長】ありがとうございました。どうぞ、宮﨑委員。

【宮﨑委員】すみません。別の質問でもよろしいですか。

【中山座長】結構です。

【宮﨑委員】近藤先生と堀内先生にそれぞれ伺いたいのですけれども、天使のコースは専門職大学院というお話が出ました。なぜ、専門職大学院というコースにされたのか。そして、専門職大学院であるという特徴について、もう少しお話を伺えればと思います。それから、堀内先生には、今日は修士論文コースと上級実践コースということでしたが、これは博士前期課程と後期課程もあるんでしょうか。前期、後期ある中の前期課程の中のコースという理解でよろしいのでしょうか。そうしますと、前期課程としての特徴の中でこの2つのコースがどのように位置づくのかということについて、追加があったら伺いたいです。それから、CNS教育は行っていないと。これはもともと行っていらっしゃらなかったのか、それとも中止されたのか、そこら辺の補足をぜひ伺いたいと思います。よろしくお願いします。

【中山座長】わかりました。では、近藤先生からでよろしいですか。

【近藤発表者】専門職大学院を選んだ理由は、設置基準等たくさん内容がございますが、主なものを申しますと、実践を中心に教育ができるというところでこの制度を選びました。特に、実践現場できめ細やかな実践上の指導ができる体制がとりやすいということで、特に教員組織、このことは実際に教育の運営をする側から見ますと、財政上には非常に大きな負担でございますが、実際には教員数15名。それから、実際に、臨床現場でさらに非常勤の指導員を雇い上げて、きめ細やかな教育指導ができるところが中心でございまして、論文等に多くの時間をかけるのではなくて、すべて現場で受け持ち制の中でそれを深く追求するという姿勢の教育に向いているというところで選択した。その他にもいろいろございますが、一番大きな理由は、実践を深く指導をしていけるということから選択したということでよろしゅうございますでしょうか。

【中山座長】いいですか。

【宮﨑委員】結構です。

【中山座長】堀内先生、どうぞ。

【堀内発表者】そのとおりで、修士論文コース、この課程は博士前期課程で、もちろん、後期課程もございます。修士論文を修了した後、そのまま博士に進む学生も多いですし、これまでも助産学の博士後期で修了した学生は20人以上おります。研究者として自立し、巣立っていきました。

 それから、CNSの話です。以前は母性看護のCNS教育をやっていた時代があります。そのときに1人だけ修了いたしましたが、それ以降はそれを行っておりません。やはり大学院での助産教育をするかどうかを考えたときに、免許を持った人に、さらにアドバンスでやるコースと、免許も取り、そこにもう1.5といいますか、そこにアドバンスをするコースを1つの課程の中で2つ持つのは、私としては自分の教育的な考えから矛盾をするので、そういう紛らわしいのはやめたいと思い、そこで中止いたしまして、1本で、助産学の上級実践コースの場合は免許を取るコースとしました。よろしいでしょうか。

【宮﨑委員】結構です。

【中山座長】横尾委員が先に挙げたようです。続けてどうぞ。

【横尾委員】近藤先生にご質問させてください。天使大学の大学院では2つの分野がありますが、例えば、基礎分野を修了された方で、これは助産師としての基本的な能力ですね。助産師の免許がある方は教育指導者になれる立場ということで教育分野があるのですが、仮に、基礎分野の方で指導ということになると、さらにここに再入学ということになるのでしょうか。その関係とかはいかがでしょうか。

【中山座長】どうぞ。

【近藤発表者】教育分野は始まって1回生が出ただけで、今、2回、3回生まで入っているところですけれども、今のご質問は私どもにとって大きな宿題になっております。修士の学位を付与するためには免許、資格だけを持っていたのでは修士にできないということがありますが、一方では免許を持って入ってきておられる方たちなのです。実際に今、起こっているのが、1回生、2回生が教育分野に入りたいといったときに、この取り扱いといたしましては、前半の基礎教育部分の単位をすべて取得し、学位を持っていますので要らないのですけれども、必要なのが、教育分野に特化した科目をとることで、入学してこれを履修したときに、修士の学位はもう既に持っているので、高修士課程とかいう特別の取り扱いをしなければいけないのではないかということを今、検討中です。真っすぐこのコースに入ってこられる助産免許を持った方と、既に本学でそれを修了している人との取り扱いの差をつけるかどうかということがあり、現在、検討中でございます。

【中山座長】よろしいですか。

【横尾委員】もう1個いいですか。

 それでは、堀内先生にお願いしたいのですが、大学院、博士課程前期課程で56単位と聞きますと、すごく多いなというのが印象です。私どもでは研究コース以外に専門看護師のコースも持っております。それは34単位を課しているのですが、それでも学生さんにとっても、教員がきめ細やかにフォローをするにしても、その中には実習科目もあるのですが、かなり大変な、すし詰めのような状況かなと思うのです。さらにそれが56単位となると、教員は優秀な数がたくさんいればいいのだろうと思うのですが、学生さん自体がどうなのかということ。それと、昨今では特定看護師であるとか、いろいろな高度の能力が求められているという中で、一度に、修士課程の2年の中で詰め込んでしまうような教育よりも、むしろ分割されたほうがいいのかなと考えたりするのですが、そのあたりについてはいかがでございましょうか。

【堀内発表者】確かに本学でも以前、他の看護分野CNSコースの実際に取っている単位数は32が修了ですけれども、例えば、がんのCNSとかそういうコースでは大体45ぐらいは取っていました。ですから、そこら辺まではやれるのかなと思いましたが、今回は56ということでやっております。確かに長い休みということはなくカリキュラムは積んでおりますが、ただ、諸外国の大学院修士課程でやっております単位数を見ると50から60です。なので、実践コースで連続した2年間でやるという点では、これは可能ではないかと思います。特に私が思いますのは、M1からM2につながる1月、3月から春のところが有効に使えるのではないかと思います。実習場所も秋からはすごく込むのですけれども、春先、1月、4月というのはあいているのです。そこを連なった2年間でやれるという点では、56をやってきているのではないかと思います。ただ、学生はほんとうにぎりぎりしか取らないので、何かを落としてしまうと修了できない形になっております。2年間で続けて積み重ねて、理論とスキルを学ぶのには、分散するより、こちらのほうがまとまってマスターできると考えております。

【横尾委員】能力のつけ方の考え方だと思うのですけれども、このコースでは一度、助産師の資格も取らなければいけないのですよね。そして、取った中で、特に米国ではかなり看護の臨床経験があった人たちがナース・ミドワイフのコースをとるということも聞いているのですが、基本的に理論と実践を統合させて、ある一定期間という理屈はよく分かるのですが、一遍、基礎的な学習をして臨床の現場を踏んで、そこから新たな視点で自分自身の実践能力を高めようとするときに、修了した2年後はどうなるのだろうか、そこのところの担保はどうされているのでしょうか。2年の修士課程を修了した後、それ以降は博士課程があるということでしょうか、DNPとか……。

【堀内発表者】わかりました。上級実践コースの学生は、今、修了して出ていっている学生は臨床の4年目か5年目の学生だけなので、戻ってきている学生はいないのですけれども、私はこのコースを終えたら、少なくとも5年なり10年ぐらいは現場でやるようにと言い、ただ、また研究をしたくなったら博士に戻っていらっしゃいという話はしております。5年目ぐらいですと、実践を変革していくという段階で研究も必須の用件になってきますし、周囲からも大学院修了生ということで研究とかそういうことも期待されてきますので、そういう点では上級実践を終わった学生が将来的に博士に戻ってくる可能性はあると思います。でも、博士に戻ってきたときに、前の修士課程からの年数がたっていれば、どこかの科目をプラスしてとるという形もあると思いますが、少なくとも学生たちにとっては、先に博士に行くという選択肢はあります。

【中山座長】どちらかというと、修士論文コースの人のほうがそのまま博士に行く人が多くて、実践コースをとる人は、1回は臨床に出ると考えてよろしいのですね。

【堀内発表者】そうです。

【横尾委員】わかりました。

【中山座長】それでは、秋山委員、どうぞ。

【秋山委員】私は在宅の分野におりますので、中澤さんのご発表の2列目のあたりはとても期待をされている部分と、1例目は耳が痛い部分と、様々な思いで伺いました。堀内さんがプレゼンテーションをされた中の18枚目のスライドの「獲得する能力」というところに大変私は興味を覚えました。1番は助産でしょうけれども、2番のEBMを基盤にした実践変革力、3番の職業人としての品位と強靱性、そして、4番目の自立して実践開業する基礎力というふうに、ここの3つをとても興味深く伺いました。つまり、3番の職業人としての品位と強靱性、と2番のEBMを基盤にした実践変革力、このあたりがきちんと育てられていれば中澤さんの1例目のエピソードもある程度は改善するだろうと思いました。ある意味、基礎的な看護の能力を備えた大学教育はこういうところも担っていかなければいけないと考えます。それから、私は今、在宅でも開業しているような状態ですので、4番目の自立して実践開業する基礎力というのは、助産のみではなく、在宅の分野も必要とされている。そういう意味では、アドバンスというかそういう教育も、先ほど野村看護課長が言われましたチーム医療の推進特定看護師のところにも絡んでくるのではないかと、とても興味深く伺いました。それで、堀内さんに3番目の「品位」と「強靱性」という言葉はどこから出てきたのかというあたりを、突っ込んで伺いたいと思います。

【中山座長】堀内先生、お願いします。

【堀内発表者】3番目は教員を悩ませている部分でもあります。

 2番目までは方法論を身につけてということがあります。しかし、現場ではEBMに基づいた実践が行われていないもののほうが圧倒的に多いわけです。そういう現場の中にあって、すぐ折れずに、どうやって開拓していくかというある意味、強靱性が必要なわけです。先ほどのチーム医療ではないですが、チームの中で、あの人の言うことは信頼できるよねというものを獲得するには、コミュニケーションなりアサーティブに物を言う、適切な場所で適切に物を言うとか、そういう品位といいますか、そういうものが必要なわけです。しかし、ストレートで来た学生はまだ職業経験もありませんので、その場に相応しい態度を振る舞えないことも多々あります。それで、教員とそういうことについていろいろ話をするわけです。ですから、今まで、結果的には退学になっていった学生たちの教員が悩んでいたところは3番の部分にもあります。知識はあるんだけれども、この場でこの振る舞いはおかしいねという話を学生としていくというあたり。あと、若干述べましたが、看護の基礎教育のスタートが准看護師でほんとうに長く経験を詰み、ほんとうに勉強をしてきているのですが、大変残念なんですが、最初に身についた態度とかをこの2年間で、そうではないよねというのを伝えていくのはなかなか難しいのです。しかし、職業人としての品位と強靱性がなければ2番の変革力も全部が相互作用でうまくいかないと考えて、努力しているところです。

【中山座長】関連で、よろしくお願いします。

【坂本委員】それは准看護師イコールそのような態度の人だということではないですよね。

【堀内発表者】違います。

【坂本委員】違いますよね。一例を出されていますけれども、他の教育コースで教育を受けてきてもそういう人もいらっしゃるわけですよね。

【中山座長】どうぞ、秋山委員。

【秋山委員】ただいまの説明で、悩みながらこの言葉を選んで挙げているということがよくわかりました。

 先ほど、中澤さんが医師と同等のスタッフとして認めざるを得ない看護師を育てなければならないのは当然と言われました。看護界がこれまで医師との関係の中で、上下の関係はずっと歴史的なものがあるわけですが、そこでディスカッションできる能力のことは重要です。エピソード3のいらいらして「患者語」がわからず通訳にはいろうとした看護師に、「いい」と言った医師に対しても、「いや、ちょっと待ってください。やはりここは聞いていただきたい」ということを患者の視点に立って、きちんと権利を主張していくといいますか、擁護していくというか、アドボカシーというか、そういうこともできるだけ強靱性を持って、しかも、横並びの関係で発言ができるところが看護の基礎的な能力として、特に大学卒であれば、本来はそこが培われて教育されて出ていかないといけないのではないかなと。ただ、その辺のところが非常に難しくて、看護だけではなくて、先ほど、佐藤先生が説明された専門職業人の教育というあたりの要因を絡めると、ほんとうに大学で何をどう教えなければいけないのかというところにつながってくると思ったのですが、「ディスカッションできる能力」に対して中澤さんは特にどういうことを期待されていますか。

【中澤発表者】例えば、がんの治療の現場で抗がん剤治療をするときに、本人も含めて、それを受けたらどういうリスクがあって、どうというのがあるんですけれども、そこで自分の意見を、薬を使う、使わないだけではなくて、例えば、患者の状態がこうであるとかということもよりよく知っているとしたら、あの患者にはこういうのはどうだろうかということも伝えることはできると思うのです。今まで、私の周りでがんの治療に関しての話で、本人が拒否をするとかそういうのはあるのですが、看護師の方がそういう形でかかわったという話はないのです。

 実際にそういう現場を見たわけではないですけれども、ディスカッションをするときはいろいろな資料を見ながら、この患者にはどういう治療が最適であるかということを異職種の人たちが集まって話し合うと思うのです。そのときに、実践している看護師として言えること、あるいは言いたいことはきっとあると思うのです。そういうことをみんなで意見を出し合うことでよりよい治療を選んでもらえるんだろうなと私たちは期待していますから、そういうところのディスカッション能力は、そこで、「いいえ、先生、それは違います」とちゃんと言える。

 特に日本人はディスカッションが苦手な人が多いというか、私たちはそういう教育をされていないので、海外の人たちはディスカッションをするのが当たり前で、小学校のときからそういうことをやっています。私たちは人にあまり異を唱えることをよしとする教育を受けていないので、すごく苦手な分野なのです。だけれども、苦手な分野をいつまでも苦手なままではなくて、日本人も腹を立てるとか、なじるとかではなくて、きちんとディスカッションでき、ディスカッションが終わった後は肩をたたき合うようなのでいいのですけれども、そういうふうになれないかなと思っている部分の延長線上です。

 もう一つ、高度な看護教育のところで思ったのですが、先ほど正常ケースを実習するとおっしゃっていました。私たちが思うのは、正常ケースだけではなくて、何かあったときに危機管理能力のようなものを育てる教育はできないのかなというところです。

 それと、ディスカッション能力にもつながると思うのですが、例えば、ニュースなどで薬を注射する液を看護師が間違ったというニュースが出たときに、画面に出てくる2つの薬の違いが私たちにはパッと見、全然わからないというのがすごく多いのです。それは現場で、第一線で活躍して、実際にそういうのを使っている看護師が、これはわかりにくいということはわかっていると思うのです。明らかに赤だ、青だみたいに分かれているとか、一目見て、これは違う薬だと分かるようにすることは絶対に必要だと思っているのが現場だと思うのです。例えば、そういうことを提案する。きちんとそういう場で、何かミーティングがあれば、私はこういうことに関してこう思いますということをきちんと言える。それを医師や病院側、あるいは薬剤会社、製薬会社などとも話し合えるコミュニケーション、あるいはディスカッション能力と危機管理がきちんとできるということ、何が危なくて、こういう場合にはだれに伝えたらいいか、こういう場合にはどう動いたらいいかというのは、そのときになって、急に固まってしまうということは絶対にあると思うのです。ですから、全部の例は無理だと思いますが、正常な分娩の場面だけではなくて、いろいろなケースに関して、こういうのもあり得る、ああいうのもあり得るという教育はしておいていただいたほうがいいのではないかと考えています。

【中山座長】ありがとうございました。今の中澤さんの発言に対して、堀内先生、近藤先生、何かありますか。

【堀内発表者】助産師の免許が正常分娩に限っているということが説明不足だったかと思うのですけれども、実習においては正常から移行した場合に、どのタイミングで医師に電話し、どのようにして搬送し、搬送した方のケアもしていくかというグレーライン、それから、ハイリスクになった方へのケアも含まれております。周産期は様々なセーフティ・マネジメントが重要な場所ですので、それに関しての演習等も含まれております。

【中山座長】ありがとうございました。村嶋委員、お待たせしました。どうぞ。

【村嶋委員】堀内先生に2つほどお伺いしたいのですが、先ほどの品位と強靱性を持つ学生を教育の中で、2年間で育てる際に、もともとの学生の素質とか適性、成熟度みたいなものが響くのではないかと思っております。そこら辺を入試で選抜なさるときに、どのように加味していらっしゃるかということをお伺いできればと思います。

 2点目は、国家試験受験資格者を修士課程で与えていらっしゃいます。私は聖路加は学費が結構かかると聞いておりますので、4年間で看護師をとって、なおかつ、2年間修士に行くんですね。学内推薦制があるということですが、6年間行ってでも助産師を取りたいという学生が実際にそれだけいるんだなということを感じました。

 もし、ここで免許を与えなければ聖路加の場合にはどのくらいの修士課程の入試の倍率があったと思われるかということもお伺いしたいと思います。というのは、修士課程の大学院が全国的に見ましたときに、必ずしも充足率が高くないということも伺っております。逆に、免許を修士課程で与えることによって、それは学生にとっても魅力になるのではないかと。そういう大学経営上のことも含めてお話しいただければと思います。

【中山座長】これはきっと近藤先生のところもそうですね。

【村嶋委員】はい。

【中山座長】私学ですので、国公立とは違うと思います。その辺のコメントも含めまして、堀内先生からお願いします。

【堀内発表者】1点目の学生の適性に関するものですが、入試に関しては特別な適性試験等は行っておりませんので、面接ということになります。面接は1人に15分から20分程度となります。ただ、私どもは入学生に説明会を開催しておりまして、説明会はこちらも説明するのですが、そのとき、こちらも見させていただいております。いつも年に1回、説明会を行いまして、説明会には学年を越えて60から70人ぐらいがいらっしゃいますので、8人の教員が手分けで全員をその場でどのようになっているかをよく見ております。そして、その中から志願者が来るという形でありますので、私たちは学生に2回会うチャンスがありますので、そこら辺で見るということですが、しかし、適性あたりは入試ではちょっとはかれないかな、難しいかなと思っています。

 2点目は免許に関してです。それまでは助産の研究者コースだけの学生たちも毎年いない年はありませんでした。修士論文コースだけでも四、五人、多い年は6人をみていましたけれども、最近は全国に大学院ができましたので、4人以下という感じになるのが研究者コースです。免許のコースができたということで、新しい志願者の層、大学からストレートで来る学生がきておりますので、私どもも大学の学部教育を終えるときに専攻科にするか、あるいは大学院にするかということで長い間検討してきましたが、学生にとってもメリットがあるのは2年間の大学院ではないかということでやってきておりますので、そういう点では新しい志願者の獲得ができたのではないかと思います。

 本学もそれまで1研究科1専攻だったのが、1研究科2専攻になっておりますので、経営的にもプラス15名の定員という形になっております。プラス、お金がかかりますので、助産に関しての奨学金の獲得には日々、奔走している状況です。

【中山座長】ありがとうございます。近藤先生、何かありますか。

【近藤発表者】適性をどういうふうに判別するかというのは大変大きな宿題でございますが、通常、大学院の助産研究科の入試に関しましては、全員に小論文試験を課してありまして、その中で思考の様式、アブストラクト、抽象思考能力とか幾つかのことをテストすること。それから、臨床看護に関する試験がございますのと、英語がございます。英語に関しましては、推薦入試と社会人の場合には除外となっております。あと、出身看護教育機関からの成績も併せて、その中で判断しております。あと、面接で志望動機等に関しましての試験をしております。現在のところは選抜よりも志望者の数が大体ぎりぎりのところでございますので、選抜するというよりは、入って、続けられるかどうかということを確認するレベルになっております。

【中山座長】よろしいですか。時間がちょうど12時になりましたけれども、まだ、どうしても発言したい方がございましたら、どうぞ、お願いします。坂本委員。

【坂本委員】近藤先生に伺いたいのですが、専任教員の構成のところで、「臨床専任教員(みなし教員)」とされていますよね。ここに「みなし教員」というのがあって、♯のところで兼任教員というのがありますが、これは臨床で働いている方たちを教員にされているということでしょうか。

【近藤発表者】表の中にあります15名のうち、♯がついている教員は学部から兼任で、助産カウンセリングの部分を担当していらっしゃる方が兼任の形で15名の中の1人に含まれております。その他の実習指導教員というのは、15名の枠以外に実際に臨床実習に出しております機関の中で、臨床指導を補佐していただくための方を選んでございまして、大体2レベル以上の実習になりますと、昼夜、24時間のオンコール体制をとりますので、1人の大学からの教員だけではカバーし切れないところを実習指導教員でカバーすることになっております。この方たちは5年以上の臨床経験があって、臨床指導の能力ありということを教授会で認定した上でお願いすることになっております。

【坂本委員】わかりました。

【中山座長】他にございますか。大体大丈夫でしょうか。どうぞ、羽生田委員。

【羽生田委員】大学院に資格を持って入ってくる方と、看護師の資格で入ってきて助産師を取る方がいるようにお伺いしたんですけれども、免許を持っている方と持っていない方とは実習が変わってくるんですか。同じ実習というわけにはいかない。免許を持っていれば、実習もかなりのことができるのか、でも、学生だったら同じなのか、その辺のシステムがよくわからないのですけれども、その辺はどうなっているのでしょうか。

【中山座長】修論コースでも実習はありますよね。修論コースの人たちは免許を持って入ってきて、なおかつ実習もやるのですか、やらないのですか。そこのところの問題だと思います。

【近藤発表者】ご質問のところで、一つ、基礎助産教育の中に、本来でしたら看護師の免許以外を持っていなくて、助産師の免許がない方が入るのが本来ですが、この中にも何人か希望者で、既に助産の免許を持っているが、もう一度勉強し直したい方も入っております。

 それから、教育分野は完全に5年以上の臨床経験を持った助産師が入りますので、こちらは有資格者でございますが、基礎分野に免許を持って入ってきている人の場合も、一応は授業科目に関しては認定試験、いわゆる学習指導要領が渡っておりまして、それに関しまして、全部認定試験をしておりまして、一部認定することがあります。

 それから、実習に関しましては免除しておりませんので、ほぼ同じ実習をすることになりますが、経験がある方であるということで、一応、実習指導先でそれを踏まえて指導をしていただくことになりますが、もうできると思い込んでいる場合でも、ステップをもう一度見直させてから本格的に勉強してもらいたいということから、完璧に実習を免除することは全くいたしません。その線で教育分野も、免許を持って何年もの経験がありますが、必ず3例はみなし教員がついて、3例全部を最初から全部点検した上で認められるようにということで、臨床の技術に関しては基本的なものが必ず確認されるということを大事にしております。

【堀内発表者】私のほうは天使大学とは違いますので、修論コースの学生は助産師免許を持っている。上級実践コースは看護師免許を持っているということで、実習科目と演習科目は全く違いますので、行う内容は全く違います。

【中山座長】羽生田委員、よろしいでしょうか。他に何かございますか。

 今日は特に結論を出すということではありませんで、助産師の養成をいち早く専門職大学院で行った天使大学、それから、修士課程に踏み切った聖路加看護大学からプレゼンテーションをしていただきました。これを参考にしまして、最初に佐藤委員から出された大学院教育とはどうあるべきなのかということをまじえまして、今後の検討に進めていきたいと思っています。

 それから、今日は中澤さんからは、チーム医療に対して、看護師の判断力の問題も含めまして、いろいろなご提言をいただきました。高度専門職として、今後、看護職がそれを目指していく上において、どういう能力、どういうことが社会の人々から期待されているのかが、かなり印象深く語られたのではないかと思っております。

 ほんとうに3人の方々、忙しい中をありがとうございました。感謝申し上げます。それでは、事務局から、今後のことにつきましての連絡事項をお願いいたします。

【小山田看護教育専門官】今年度、平成21年度は本日で終了になります。ただ、検討会自体は引き続き、続けさせていただきますので、また4月に入りましたら、改めて委嘱のお願いをさせていただきます。そして、次回は今のところ、5月20日、15時半からの予定で計画しておりますが、詳細は改めてご連絡を申し上げます。次回も引き続き、ヒアリングをお願いしたいと思っております。以上です。

【中山座長】ありがとうございました。5月はちょっと時間を長くしてという計画もあるようですので、よろしくお願いします。それでは、ちょっと時間を過ぎましたが、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

 

 

 

お問合せ先

高等教育局医学教育課看護教育係