「大学入学共通テスト」検討・準備グループ(平成30年度~)(第13回) 議事要旨

1.日時

平成30年7月25日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省第一講堂(東館3階)

3.議題

  1. 大学入学共通テスト実施方針(追加分)(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

岡本主査,荒瀬委員,笹委員,東島委員,平方委員,安井委員,吉田委員,米田委員

文部科学省

小幡国際教育課長,三浦大学振興課長,山田大学入試室長 他

オブザーバー

独立行政法人大学入試センター 山本理事長,浅田理事,米澤新テスト実施企画部長
ヒアリング対象者
 日本私立中学高等学校連合会 吉田会長

5.議事要旨

会議に先立ち,会議名が今回から「『大学入学共通テスト』検討・準備グループ」となったことと,新規の二名の委員についての紹介があった。

議題1「大学入学共通テスト実施方針(追加分)(案)について」に関して,資料1-1と資料1-2に基づき事務局から説明があり,日本私立中学高等学校連合会の吉田会長からのヒアリングを行った。吉田会長の主な発言は以下のとおり。

○ 共通テストに際しては,子供を中心に考えていただきたい。

○ 「『大学入学共通テスト実施方針』策定に当たっての考え方」には,「この際,英語4技能評価が,早期に多くの大学で実施されることが望ましいことから,各大学は,認定試験の活用や,個別試験により英語4技能を総合的に評価するよう努めるものとする。また,共通テストの出題内容について,英語4技能評価の必要性を踏まえ,必要な改善を行うとともに,その配点等のバランスについても,プレテスト等の実施を通じた検討を行うこと」としているにも関わらず,国立大学協会や東京大学に関する報道を見ると,方向性がずれているようだ。

○ 国家公務員採用総合職試験における英語試験の活用では,試験実施年度の4月1日からさかのぼって5年前の日以降に受検した英語試験のスコア等が対象となっている。なぜ,高校生については,1年生,2年生のときから努力して取得した試験結果を利用することを認めないのか。

○ 高校3年生の4月から12月に受験することとなっているが,時期が重なったらどうするのか。また,センターでこの4技能試験ができないということがはっきり確定おり,センターに限らず4技能試験を50万人一遍にできるということはあり得ないと思うので,高校2年生のときを含め子供たちが自分たちのそれぞれの余裕のあるときにしっかりと受けて,そこで取ったスコアをセンター試験で認めるべきなのではないか。

○ 平等な発想は必要かもしれないが,努力した生徒を評価できるようにすべき。試験の回数を限定し,B2以上の成績をとった場合でも何か理由のある場合にしか免除されないというのはおかしい。幾ら英検1級を持っていたとしても,高校3年生でもう一回受けて,そこでもし2級のレベルにしか行かなかったとしたら,その子たちは1級の力を持っていながら受験では認められなくなり,不公平である。

 ヒアリングの後,委員との意見交換が行われた。委員からの主な意見は以下のとおり。

○ 子供たちを中心に考えるというのは,皆,同じ気持ち。日本の子供たちが減っていく中で,一人一人が持っている力を最大限発揮できるように,小,中,高,大,全部合わせてそういう教育をしていきたいという発想である。大学としても,大学の教育を変えると同時に入試制度も変えていき,単にペーパーテストだけで評価するのではなく,人間性まで含めた学びを自ら作っていくような生徒を受け入れたいと思っている。ただ,一斉に変えるというのはなかなかできないので,個々のアドミッションポリシーに従って変えていくことになる。3年制の高校では,3年生までならないと教育課程が修了しないところが多数のため,最低限の変更として今のシステムを提案しているところ。

○ 受検期間及び回数制限の撤廃に関する提案には,三つの理由で強く反対する。まず,「大学入学共通テスト実施方針」によって,既に高等学校,また各認定試験団体,そして大学入試センターもそれぞれ対応をし始めており,高等学校では今,1年生が4月から既に4か月の間,2020年度の3年生の4月から12月の受検に合わせて教育課程を組んで英語教育を実施しているためである。各関係者が実施方針に基づいて生徒指導やシステム構築の準備を始めている中で,不足を補う追加の案件はあったとしても,3年生の4月から12月の間に2回まで実施をするという基本の変更はあってはならない。
 また,実施方針には「受検者の負担,高等学校教育への影響(例:早期から認定試験対策に追われるとの懸念)の一方,受検機会の複数化の観点も考慮し,一定の回数制限を設けることが適当である。このため,各大学に送付する試験結果は,高校3年生の4月~12月の2回までとする。有効期限の取扱いや既卒者の対応については,今後,検討する」とあるが,受検者の負担,高等学校教育への影響,早期から認定試験対策に追われるとの懸念については,昨年の7月から今まで,特に大きな変化や大きな改善があったとは思えないため,高校3年生の4月から12月の2回までとするということに関する変更を行う必要はない。
 さらに,実施方針の中の2の「目的」で,「共通テストは,大学入学希望者を対象に,高等学校段階における基礎的な学習の到達の程度を判定し,大学教育を受けるために必要な能力について把握することを目的とする」とあるが,「学習の達成の程度を判定」するという文言からは,高校3年間の学びの達成の程度を見るものだと理解でき,決して高校2年生での早期受検を容認しているとは思えない。同じく7の「英語の4技能評価」のところでは,「共通テストの枠組みにおいて,民間事業者等の資格・検定試験を活用する」とあるが共通テストの枠組みというのは,4教科7科目の位置付けとして実施すると理解している。国語や数学や理科や社会と同じように,英語も同じ並びで考えており,他の4教科が3年生で大学直前まで学んだ学習成果を測っていると考えるのであれば,英語のみ2年生での前倒しの学習の成果を材料とするということはあり得ない。

○ 実施方針は,昨年の7月に出されているが,今後検討していくことがたくさんあるとされていたはずであり,実施方針が確定したという認識ではなかった。そのため,今回はっきりと,私立の中・高校としての懸念や疑問を申し上げているところ。

○ 大学での2020年度からの入試の議論において、特別入試の枠組みをどれだけ広げるかという問題がある。センター試験を採用する場合は,高等学校教育への配慮や,様々な経済的なレベルの受検生への配慮を条件とする必要があり,4月から12月という間に2回というのは,やむを得ないと思う。各大学がそれぞれのアドミッションポリシーに沿って入学者選抜を実施する際には,センター試験とは別の枠で従来の方法も含めて英語の資格・検定試験の結果を扱うことができるわけであり,今回出されている実施方針の追加はこの形で認めるのがいいと思う。

○ 平成32年度からの実施を考えれば,方針の変更は受検生にとっては大変であるため,基本的な方針としては変えないで,その中でよりよい方策を考えていくということになると思う。ほとんどの生徒が共通テストを受験する学校では,もし3年時までにB2までの成績を取得してその後生徒の負担が減るということであれば、学校としては当然,全体として対策を立てることになる。そうすると,基本的に特定の一つの資格・検定試験を目指して対策をとることになるが,色々な選択肢を示している中で特定のものに偏ってしまう危険性が生じてしまい,本来の狙いとは違った方向に行きかねない。もし2年のときに得た資格も生かされるということであれば,1年生からずっとその対策に走ってしまうことにもなりかねず,本来高等学校で学習指導要領の下で行うべき英語の学習そのものが崩れてしまう可能性が十分あるため,3年生の一定の時期に限定したということはそれなりの意味がある。

○ もともとは,有効期限がそれぞれの資格の独自のものがあるなら,それを使えばいいと思っていたし,もっと言えば,大学入学共通テストそのものが大学を受けるための資格試験になればよいと思っていた。複数回実施されることについても期待していたところ。ただ,現状では関係者の様々な考えを重ね合わせながら進めていくしかない。高大接続システム改革会議の最終報告をまとめる段階でも相当な議論があったが,目標とするその方向性自体は,幅はあったとしても合意があったはずである。今,最後の詰めの議論が行われているところだが,妥協点を見出していかなければならない。これで改革はおしまいということではなく,新学習指導要領導入時点でも検討する必要があり,今後もよりよいものに変えていくことが必要ではないか。

 日本私立中学高等学校連合会の吉田会長が退席し,引き続き議論が行われた。委員の主な発言は以下のとおり。

○ 前回の案にあった「『高校生のための学びの基礎診断』として認定を受けたものを受検した者」を「負担を軽減すべき理由」から消した理由は,現状として「高校生のための学びの基礎診断」に参加しようとしている民間団体のテスト自体がB2以上に該当しないためだと思うが,今後この要件に合致するようなものが出てきたときにはまた改めて考える必要があると認識している。

○ 文部科学省から3月に公表された各資格・検定試験とCEFRとの対照表についても,これまでは各テスト団体がCEFRのマニュアルを用いて試験の点数がCEFRの段階にきちんと当てはまっているかどうかという妥当性の検証を行っていたが,今回は文部科学省を中心に,もう一回,検証方法も含めて検証をやり直しているので,今回の表から基本的に大きくこれから変わることはまずないと考えている。ただ,年数がたっていくうちに多少の修正というのは必要になるかもしれないので,絶えず検証作業そのものは続けていく必要がある。

○ 他の会議でも,負担を軽減すべき理由として「学びの基礎診断」は異質であるという意見が強かったので,削除したことで分かりやすくなったと思う。

○ 「高校生のための学びの基礎診断」は,国レベルでの基礎学力担保のための取組であり,それを受けなければならない高校生からすれば負担軽減の理由になってしかるべきものではないか。「基礎診断」にどのような内容で申請があるかによって,これが場合によって大学入学共通テストで使えるようなものと合致する可能性もあったが,結果的にはそうではなかったということかと思う。今回はレベル的にはどうかは別として,実施形態等や試験監督等も含めて合致しなかったということなので,今後は,「基礎診断」が負担を軽減すべき理由の一つに入るということもあるのではないか。

○ 今の段階ではもうこれでいくしかないと思うが,ずっと2024年の指導要領の改訂も含めてこれでいくということではないだろう。共通テストは,入試に使用するものであるが,高等学校の方向性の達成度の試験という意味合いもあり,それを基に大学は個別入試でいろんな人を採るし,それを基に大学教育を積み上げていく。そういう意味で,特別入試も含め,大学を縛らないような方向で,方針を固めていきたい。

○ 資格なのか,入試なのかという整理をする必要がある。一旦資格を取得すれば大学入試の時期でも同じ力があると判断するのか。他の科目は入試のこの時期のことを測っていて,英語だけはいつでもいいという話にならないようにしないと,高校3年の4月から12月という根拠がなくなってしまうので,その辺の議論も必要である。

○ 過去に取得した成績は,あくまでもその時点でのポイントであり,語学というのは,今どういう力があるかというのが一番大事だろう。高校生の中でもある一定の3年生という時期を選んで,そこでどのような力を持っていたかということを見るというのは,考え方としては当然であり,共通テストであればそれがいいと思う。

○ やはり高校3年の4月から12月の2回という枠はどうしても外せないという観点で話を進めていただきたい。非課税と離島という,軽減すべき理由が完全になくなってしまうと,高校2年生のときにCEFR対照表のB2を目指して取っておいた方がいいというふうな誤解も生じる。早期受検を助長することにならないよう,軽減すべき理由をしっかりと付けておいていただきたい。

○ 未来永劫ずっとこの方針で実施するわけではなく,あくまでも今議論しているのは2020年度から出発するときにどうするかということ。

○ 高3の4月から12月に2回ということを反対してきた立場としては,最後までそれに固執するつもりはないが,高1や高2のときに英語力を習得した者が,資格が取れたからもう英語の勉強をやめるなんて考えられない。それを励みにしていろんなことに挑戦していくというのが成長だと思うので,余り限定するのはよくないと思っている。負担軽減すべき理由のところで前回の「C1以上」から「B2以上」になっているが,もしかしたらB1でも良いかもしれない。そういうことはきちんと考えてほしい。

○ 2020年度から実施するものについてどうするのかということを決めるというのが非常に大事。ただ,決めると,そのままずっと続く可能性がある。前にこう決めたからということにならないように,まずは2020年度について決めていかないといけないと思う。また,障害のある受検生について,今回の案では「積極的に配慮するよう努める」とあるが,「努める」だけではなく,どう具体的に配慮するのか,いつまでにその内容を出すのかということを各大学は公表する必要があると思う。

○ 各大学での障害のある受験生への配慮については,通常センター試験に準じた対応をとっている。今回,それがなく,各資格・検定試験実施団体が設定する内容の具体がよく分からない状況なので,各大学,非常に苦労する。

○ ここへ来る段階まで,いわゆる外形基準としての基準設定をしてきたが,質的な話というのを更にもっと深めていかないと,皆が納得できるようにはならない。もう一度,外形基準と質的基準の整合性についての議論が必要。

 議論を踏まえ,「大学入学共通テスト実施方針(追加分)(案)」が了承された。
続いて,前回の会議以降に大学入試センターから公表された資料として,山田大学入試室長より,参考資料2-1・2-2・2-3の紹介があった。
最後に,岡本主査より,今後「大学入学共通テスト実施方針(追加分)(案)」については,文部科学省で正式な手続きを経た上で速やかに決定・公表する予定であるとの説明があった。

以上

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文部科学省高等教育局大学振興課大学入試室

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