経営系大学院機能強化検討協力者会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成30年1月19日(金曜日)9時30分~11時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 協力者会議の運営について
  2. 協力者会議の公開に関する事項について
  3. 経営系大学院を取り巻く現状・課題について
  4. その他

4.出席者

委員

河野主査、小西副主査、池尾委員、今村委員、尾形委員、小宮山委員、斎藤(勝)委員、斎藤(聖)委員、坂本委員、永山委員、山村委員、吉田委員

文部科学省

義本高等教育局長、瀧本大臣官房審議官、大月専門職大学院室長、川﨑専門職大学院室室長補佐

5.議事要旨

(議題1は非公開)

【河野主査】  それでは、次に本題に入りたいと思いますが、議事に先立ちまして、僭越ですが私から本会議を開催するに当たり、一言私の考えを含めて御挨拶をさせていただきたいと思います。座ったままで失礼をいたします。
 経営系専門職大学院機能強化という非常に広範なテーマでの会議の企画がされているわけですが、日本の経営系専門職大学院あるいは経営系大学院、通称ビジネススクールを取り巻く環境を考えてみると、今のグローバル化、経済社会の変化に対して率直に言ってかなり遅れているというのが私の認識であります。欧米だけでなくアジアと比べても既にトップランクのビジネススクールが、アジア発で世界を相手に人材を育成し、研究、教育活動を行っているという状況に対して、日本の専門職大学院、経営系の数は在籍者も卒業生の数も非常に限られています。この状況は、各企業からすれば各企業あるいは業界での人材育成ということで賄える部分がある、あるいは日本固有の経営慣行があるという言い訳的なエクスキューズは、もはやこれだけ世界が狭く、早く動く状況の中では、多分通じないと思っています。ただ、産業界との連携、いわゆる産学の連携、あるいは国際連携の中で日本がもう少し着目をしてもらえる存在になるためには、各校だけの努力ではかなり限られているところがあるので、もう少し全体として仕組みとして、あるいは制度として、あるいは実際の活動として、産学あるいは国際の連携を進めていく方策を正面から議論をしたいということが主査としての考えであります。
 ビジネススクールがどう伸びるかということは、ビジネススクール各校がどう成長するかという課題だと捉えられがちですが、実は経営界あるいは経営産業界、あるいはそれを取り巻くほかのビジネス領域においてもリーダーがいるいないということは、国の経済の将来をも大きく左右するということは疑うべくもない。そこに対していかに有効な人材を輩出し、学校自体が更にそれを支える研究を行い、それが国の制度の中でどうサポートされていくか、そして産業界との連携をどう深めていくのかといった辺りについて、率直な御意見をいただき、具体的な提言として可能な限りまとめていきたい、そのために力を尽くしたいというふうに考えておりますので、皆さんからの活発な御議論とアドバイスをお願いしたいということでございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、次の議題、3番の経営系大学院を取り巻く現状・課題について、に入りたいと思います。まず、事務局から資料の御説明をお願いいたします。
【大月専門職大学院室長】  資料4と資料5をお手元に御用意願います。まず、資料4でございます「経営系大学院を取り巻く現状・課題について」ということで、これは現時点での事務局としてまとめたものでございます。
 2の我が国を取り巻く状況ということで、3ページ目にありますが、人口の推移と将来人口と。少子高齢化の進行により、2030年には年少人口が1、200万人、生産年齢人口が6、773万人まで減少すると。更に徐々に減少することが予想されているというものでございます。
 4ページ目でございますが、生産年齢人口割合の国際比較でございます。OECDの予測では2030年には日本の生産年齢人口が57.3%まで減少し、加盟国中最下位になると予想されております。
 続きまして、5ページ目でございます。我が国の労働生産性についての国際比較でございます。日本の労働生産性は米国と比較して約6割と非常に低く、OECD諸国の中での平均値も下回っていることから、今後経済成長を実現するには国民一人一人の労働生産性を向上させることが不可欠となっております。
 6ページ目でございます。我が国労働生産性、国内での状況でございます。地方においては我が国のGDPのうち、約4割が地方の非製造業が占めています。ただ、都市部と比べて労働生産性が低い状況となっており、地方における経済成長が我が国の喫緊の課題であるという中で、これをどう解決していくかということが求められていると考えております。
 7ページ目でございます。高等教育における社会人入学者の割合、国際比較でございます。日本の「学士」課程及び「修士」課程における社会人入学者の割合は、OECD平均と比較して非常に低くなっているところでございます。
 8ページ目でございます。諸外国、世界における実質GDP成長率の見通しでございますが、2018年の世界全体の成長率は3.6%でありますが、日本はかなりそれを下回る状況で、一方で中国、インド、ASEAN諸国の成長率は総じて高い状況にあるということでございます。
 9ページ目以降で、日本の経営系大学院を取り巻く状況ということでございます。10ページ目でございますが、経営系大学院に関する政府関連方針をまとめたものでございます。昨年6月の政府の未来投資戦略におきまして、専門職大学院に関しましては、既存の経営系大学院から専門職大学院への移行促進や、産業界との連携による教育プログラムの共同開発等により、企業等の高度な専門性を有するグローバル経営人材や地方の産業等を担う経営人材の養成・機能の充実強化を図るとされているところでございます。また、その下、昨年6月のいわゆる骨太の方針の2017におきまして、人材投資・教育の部分でサービス産業の生産性向上を担う経営人材を育成するため、大学等における食分野、観光分野等の実質的な専門教育プログラムの開発を促進と書かれているところでございます。また、昨年6月のまち・ひと・しごと創生基本方針2017においては、地方創生に資する大学改革として、地域の中核的な産業の振興と、その専門人材育成等に向けたすぐれた地方大学の取組に対して重点的に支援するとされているところでございます。また、28年5月になりますが、政府の教育再生実行会議の第9次提言におきまして、リーダー育成などの取組の普及、支援というところで国、大学は次代を牽引する人材を育成するため、特に専門職大学院における企業経営のリーダーやイノベーションを創出する人材等を育成する取組を強化するとされております。
 また、11ページ目でございます。これは自民党の平成28年4月の教育再生実行本部高等教育部会の提言でございますが、真ん中の赤字の部分でございますが、日本のビジネススクールの在り方として、各ビジネススクールの特徴を伸ばす振興策が必要。グローバルトップ型、地域密着型、産業分野特化型というような形で分類されているところでございます。
 また、12ページ目でございます。こちらまた政府の文章でございますが、昨年5月に一次取りまとめがされましたクールジャパンの人材育成検討会のところでございますが、下のところ、3番目の今後の対応の方向性というところで、教育機関と産業界とが連携した高度経営人材育成に向けた取組、分野特化型のMBAコース等の設置を支援する、またその下、国内教育機関等と高度経営人材の育成に関するノウハウ等を有する海外教育機関との連携、提携を推進するとされております。
 また、13ページ目でございますが、産労総合研究所の2015年の実態調査でございますが、研修内製化(社内教育)に取り組んでいる企業は67%で、前回調査2012年よりもマイナスになっていると。その理由として最も多かったのは、社員に講師になれる人材が不足し、育成にも時間が掛かる、また、人材開発部門のマンパワー不足で手が回らないというような調査結果が出ております。
 14ページ目、文部科学省の社会人の大学等における学び直しの調査研究の結果でございますが、大学等に重視してほしい教育方法として、「企業等出身の講師や実務の最先端の講師による講義」、「事例研究・ケーススタディ」が上位に上がっている。特に、大規模企業においてはその傾向が顕著であるということでございます。
 15ページ目、昨年度の文部科学省の委託調査の結果でございますが、国内の経営系大学院を修了した学生の約9割は教育内容等総合的に満足し、ほとんどの者が他の者に対して経営系大学院で学ぶことを推奨したいと考えていると。また、教員についても、非常にいい教育を行っているというふうに考えていらっしゃる方が多数。その多くが海外のビジネススクール等でも学んだ、教えた経験がある方ではあります。一方で、企業等の評価は非常に低いと。特に、国内の経営系大学院修了者が在籍していない企業等では評価をしている割合が4.6%、在籍している企業はそれに比べるとかなり多くなるといったように、認知度の低さや量的不足等の課題があると考えております。
 また、16ページ目、これは経団連のアンケート結果でございますが、企業における経営課題として、グローバル経営を進める上での課題として、「本社におけるグローバル人材育成が海外事業展開のスピードに追い付いていない」との回答が最も多く、そのほかも「経営幹部等におけるグローバルに活躍できる人材不足」、「海外拠点の幹部層の確保・定着」等が多く挙げられていると。そのための必要として次世代の経営者の育成・確保が喫緊の課題であると認識している経営者が多いということでございます。
 17ページ目でございます。こちらも経団連のアンケート結果でございますが、大学に優先的に取り組んでほしい教育方法やカリキュラムについては、一方的な講義ではなくて学生の能動的・主体的学びを促す双方向型の授業を求める意見が多いというものでございます。
 18ページ目、こちらは日本の企業役員等の最終学歴でございます。米国の管理職等については、人事部長においては6割が大学院修了者で、そのほか人事部長、営業部長、経理部長ともども約4割はMBA取得者である一方で、日本の企業役員等は大学院修了者自体が6%程度にとどまっているというデータでございます。
 19ページ目、これは世界トップ500社のCEOにおけるMBAホルダーの割合ということで、31%がMBA習得者であるというものでございます。
 20ページ目以降が、我が国の経営系大学院の現状というものでございます。高度専門職業人養成に特化したということで設置されている専門職大学院の数等については、21ページ目でございますが、総体としてはずっと横並びの状況でありまして、ビジネススクール・MOTに関しまして、22ページ目が入学者、赤字で書いているところでございますが、大体最近2、300人前後の状況であるというものでございます。
 23ページ目でございますが、ずっと最近横ばい傾向にあるといえます。ただ、都市部に集中しておりますので、地方における経営人材養成機能が全くできていないという状況にあります。
 24ページ目、こちらは専門職大学院にとらわれずに経営学に関連する学位を付与する研究科数の数でございますが、まず経営系の専門職大学院は30、国立大学の経営系の大学院の修士課程は19、公立大学が11、私立大学が111となっております。
 25ページ目でございますが、経営系の専門職大学院については約6、000人が在学していると。社会人比率が90%と社会人教育の推進に一定の成果を上げていると考えております。ただ、全体として修士課程の商学・経済学の方も8、000人余り、また博士課程だと2、300人余りと、非常に数が限られている状況でございます。留学生数及び留学生比率について、これは専門職大学院に限るものでございますが、留学生数・比率とも増えている状況が分かります。
 27ページ目、これも専門職大学院のものでございますが、ビジネス ・MOT分野における実務家教員の割合としては6割ぐらいが占めているというものでございます。
 28ページ目が日米のビジネススクールの比較ということで、日本のビジネススクールは設置数、学生数とも米国を大きく下回る状況にあるということでございます。米国の修士課程においては、社会人比率が9割を超えるという状況にある。一方で、日本は専門職大学院のMBA・MOTに限るとそれに近くございますが、なかなか修士課程等については非常に低い状況にあります。
 29ページ目でございますが、アジア太平洋地域におけるビジネススクールの学生数でございます。日本では一部には学生数が数百名のそれなりの規模のビジネススクールがありますが多くは小規模となっている一方で、アジア太平洋地域では、学生数が1、000人を超える大規模なビジネススクールが存在しているというデータでございます。日本のビジネススクールも海外ビジネススクールとの連携は進められておりまして、30ページ目から34ページ目がその一例でございます。時間がないのでちょっと省略させていただきますが。
 35ページ目が欧米における分野別教育機関の例ということで、欧米では宿泊業、飲食業など特定の産業分野に特化したビジネススクール等の教育機関が設けられているという例でございます。
 また、36ページ目、日本でも観光、データサイエンスなど分野に特化したビジネススクールプログラムが設けられており、今後その数を増やしていくべきではないかという形でまとめているものでございます。
 37ページ目、ビジネススクールの世界ランキング、フィナンシャル・タイムズのビジネススクールランキングでございますが、残念ながら日本のビジネススクールは1校もランクをしていないということ、また38ページ目でございますが、このランキングの対象になるにはここに挙げている3つの国際的な認証評価機関の認証を受ける必要があるわけですが、受けている大学が日本では3校に限られているという状況でございます。
 39ページ目、国際的な評価機関からの認証取得状況及び関心度ということで、非常に国際認証に対する関心は高いということが分かります。
 40ページ目でございます。経営系の専門職大学院で国際的な認証評価機関から認証評価を受けている機関、大学は全くないと。これは一つには専門職大学院になると国内の認証評価を受けないといけないと、その負担があるということもありますことから、今年度文部科学省から大学基準協会に委託をして、認証評価機関における国際的な視点からの取組が期待されることを踏まえまして、経営系専門職大学院の認証評価における国際連携等の在り方に関する取組、海外の認証評価機関との連携方策の在り方や認証評価の効率化の在り方などについて調査研究を行っていただいているところでございます。
 41ページ目でございますが、地方における経営人材の養成ということで、国立大学経営系修士課程に期待する必要があると考えておりますが、今年の2月から3月にかけてヒアリングを行った結果として、右下にありますが、1番目の高度専門職業人養成を目的又はその養成と研究者養成を目的として掲げる修士課程において、経営系専門職大学院と同様に、主に社会人を受入れ、夜間土日開講や実務家教員の参画による地域経営人材の養成に取り組んでいるところも見られたと。一方で、実務家教員を雇っているところは約38%にとどまり、多くは研究者教員が大宗を占める教員組織となっており、学生に占める社会人比率も50%程度になっていると。専門職業人養成と研究者養成の両方をしっかりやっていただければ非常によいわけでございますが、両方を掲げている修士課程の中には、博士後期課程への進学者が極めて少ないなど、研究者養成の機能を十分に果たせていない、また、高度専門職業人養成においても十分とは言えないような取組を行っているところが見受けられたというものでございます。また、入学者の多くを外国人留学生や学部新卒者等が占めているところも見受けられたということでございます。
 42ページ目でございますが、専門職大学院の主要分野の多くは協会団体が設立されておりますが、主要分野の一つであるビジネス分野では存在していないという資料でございます。
 43ページ目以下が我が国のビジネススクールの改革の方向性というものでございます。
 44は、ピンク色の冊子で参考資料1として配付させていただいております中教審の専門職大学院ワーキンググループの報告書の概要でございます。これについて、専門職大学院は平成15年度に高度専門職業人養成に目的を特化した課程として創設以来、大学院教育の実質化や社会人教育を牽引する役割を担うとともに、一定程度の普及定着が図られてきました。一方で、社会との連携が必ずしも十分でなく、多様化するニーズを的確に踏まえたプログラムを提供できていない。また、学位の付加価値等についての理解を得られていない等のため、制度導入時に期待されたほどの広がりには至っていないということでございます。それに対して、真ん中の部分でございますが、高度専門職業人養成機能を強化する観点から、大学院全体としての議論が必要。特に、高度専門職業人養成を主たる目的とする修士課程等の専門職学位課程へ移行を促す方策についても検討が必要ということで、具体的な改善方策もなされておりまして、一部でアドバイザリーボードの設置、教育課程連携協議会ということで、学校教育法の改正を踏まえた形で平成31年4月から義務付けられることになっていますし、教員組織についても専門職大学院の必置教員が他の課程の専任教員を兼務することを一定程度認めることで、大学分科会まで了解を得られているところでございます。
 45ページ目でございますが、日本学術会議における提言も昨年5月に出されております。これは先ほどの専門職大学院ワーキングの報告書とかなり重なるところがございます。改善策の1が日本の経営系大学院の在り方として規模拡大、個性化、プログラムの多様化の推進が必要である。産業界との連携強化を推進することが必要である、グローバル化対応力を育む教育の推進が必要である。専門職大学院制度の見直しとDBAプログラムの創設が必要である。経営学大学院間のネットワーク構築が必要であるという提言がなされているところでございます。
 46ページは、事務局として考える現時点での改革の方向性ということで、ビジネススクールにおける基盤的科目の強化、多様な経営人材育成プログラムの普及、国際的通用性のあるビジネススクールの整備、地域課題の解決に資するビジネススクールの整備、経営系大学院間の連携促進が必要ではないかというものでございます。
 47ページ、48ページ、49ページ目が平成28年度の予算事業でコアカリキュラム、ビジネス分野とMOT分野について作成したということ、50ページ目が今年度の予算事業において、そのカリキュラムに関して実証・改善を行っていること、また特徴的なプログラム、開発を行っているというものでございます。その具体的な内容は51ページ目でございます。
 53ページ目からは、56ページ目までが専門職大学院制度の概要等でございますが、省略させていただきまして、57ページ目が認証評価機関の一覧でございます。経営系におきましては公益財団法人大学基準協会のほか、一般社団法人ABEST21というものが認証評価機関として活躍されています。
 58ページ目に社会人が大学院等で学ぶに当たっての教育訓練給付制度が活用され得ることから、制度の概要を載せております。
 続きまして、資料5でございますが、こちらが事務局として現時点でまとめさせていただきました経営系大学院の機能強化方策に関する主な検討課題・論点についてというものでございます。
 審議に当たっての基本認識ということで、先ほどの資料に沿ってまとめているものでございますが、日本の労働生産性は非常に低いということから、国民1人当たりの労働生産性を向上させる必要があり、経営系大学院においてすぐれた経営人材を養成することが喫緊の課題であること、我が国のGDPの中で地方の非製造業が占める割合は4割に達しておりますが、都市部と比べて労働生産性が低いということから、地方創生に資する経営人材の養成の在り方について検討する必要があること。また、我が国の経営系大学院を世界に伍するレベルに引き上げるため、グローバルに活躍する経営人材の養成の在り方について検討する必要があるということ。その下でございますが、産業界に対する大学院で得られる知識・能力や学位の付加価値等について理解が促進されるように、経営系大学院と産業界との連携方策について検討する必要があるということ。また、認証評価について、先ほど御説明申し上げたように、我が国では国際認証評価機関、3校しか取得しておらず、我が国の認証評価制度の位置付けを踏まえて検討する必要があるのではないかということ。ただ、これはあくまでも認証評価を取ればよいというものではなく、ただ、国際的な世界に伍するレベルに引き上げるためには必要条件なのかなということで検討する必要があるということで書かせていただいております。また、各大学院が相互に協力して、当該分野の振興に資するための活動を行う協会が多くの分野では設置されているが、ビジネス分野においては存在してないため、その在り方を含めて検討する必要があるということ。
 個別の論点でございますが、我が国の経営大学院教育の在り方についてということで、2ページ目の部分でございますが、現在政府において「生産性革命」「人づくり革命」が最重要テーマの1つとなっていることを踏まえて、それに寄与するような経営人材養成を今後どのように推進させていく必要があるのかと。経営系大学院、専門職大学院は30専攻、修士課程で開校するのは約140専攻ありますが、求める人材像、育成すべき人材像についてどのように考えるか。質量ともに向上させるに当たって日本の強みや特色を生かすことについてどのように考えるかと。経営系大学院の教育を向上させるに当たっては、大学院でありますので研究が必要不可欠なわけでございますが、教育と研究の在り方をどのように考えるかということ。政府や自民党の提言に各ビジネススクールの特徴を伸ばすための振興策が必要とうたわれているが、特徴をどのように推進させていくべきか。基本科目と特徴を出す科目との関係をどのように考えるべきなのか。
 2つ目、産業界との連携方策についてということでございますが、先ほど御紹介した日本学術会議の提言においては、「日本の経営系大学院教育の最大の弱点が産業界等との連携が希薄なこと」と指摘されていることを踏まえ、出口側との連携を進めていく上で、特に企業に勤めている社会人の比率の高い経営系大学院の場合、現状どのような課題があり、それを解決するために必要となる産業界との連携方策とはどのようなものが考えられるかというようなこと。また、各企業においては、現在十分な社内教育ができていないという回答を行うところが増えていることを踏まえて、経営系大学院がどのように貢献することができるかということ。3ページ目でございますが、経営系大学院に対する企業をはじめとする社会からの認知度が低いことが、結果として企業からの社員派遣や修了生の評価向上につながっていないとの指摘がなされる中で、周知についてどのような方策が考えられるかということ。経営系大学院のうち、高度専門職業人養成の機能を果たしているところでは、ケースメソッドなど産業界が直面している課題をテーマとして、それを解決に導くための教育手法が主流となっておりますが、産業界と連携したケースの作成や共同研究等をより推進すべきでありますが、どのような方策が考えられるかと。
 3番目、経営人材のグローバル化ということで、国際的な素養を身に付けさせるための教育カリキュラムや教育体制、手法、教育環境とはどのようなものが考えられるか。その下、優秀な留学生を引き付けるためにはどのような方策を行う必要があるか。経営人材のグローバル化に当たって、特に成長著しいアジアの中でどのような取組を進めていくかということ。
 3ページ目、繰り返しになりますが、地方における経営人材育成について、再度その養成に必要な教育カリキュラムや教育体制、教育手法等とはどのようなものが考えられるか。4ページ目、地方における大学院における経営人材を養成する方策をどのように考えるかということ。また、その下、「既存の経営系大学院から専門職大学院の移行促進」が各種のところで提言されておりますが、人文社会科学系分野の改革の取組の一つとして促進されるべきではないかということ。
 国際認証評価機関について、今後取得を促進させるにはどのようにすればよいのかということ。
 4ページ目の下、経営系大学院間の連携方策として、ビジネス分野については協会団体が存在していない状況にありますが、日本の経営系大学院の底上げを図り、社会からの評価を高め、優秀なビジネス人材を輩出していくためには、経営系大学院が連携できる組織が必要ではないかということとしております。
 事務局からの説明は以上でございます。
【河野主査】  資料が大変膨大で、カバレッジが国際化から地方における人材まで非常に様々ですが、時間の制約もありますので、まず早めに出られるということで小宮山委員から一言お願いします。
【小宮山委員】  申し訳ございません、次がございまして。
 今、大変細かく伺ったんですが、基本的な認識として私が申し上げておきたいことは、最初に主査がおっしゃったことに尽きる面もあるんですが、私は10年ぐらい前に『「課題先進国」日本』という本を書きまして、日本は課題を解決する、その課題というのは世界の先進的な課題なんで、それが世界にモデルを示すことになるという、基本的にそういう考えを出しておりますが、課題を解決するというのはやはりビジネスを通じて解決するというのが不可欠だと思うんですね。そのとき人材がいないというのが我々が直面している問題で、それをかなり具体的に書いていただいたのが、今おまとめいただいたようなものだと、私はそのように考えております。主査の認識と近いのですが、かなり遅きに失したような感はいたします。ただ、今これをやらないと、もしかするともう最後のチャンスかもしれないというような時期だと思いますので、是非この委員会の議論というのを具体的な結論につながるようなものにすべきではないかと考えてございます。
【河野主査】  ありがとうございました。
 ほかに、関連することでも最初に少し御自由に意見を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。余り私が方向性を絞るよりも、自由に意見をいただきたいといっても、なかなか出ないのがまた日本の特徴なのかもしれません。
 池尾先生、お願いします。
【池尾委員】  いろいろ重要な論点はあると思うのですが、最初に生産性の話がありまして、生産性が落ちているということでした。ちょっと論点として抜けていると思うのが、現在日本は第3次産業の比率がどんどん高まっていまして、製造業における生産性というのは効率よく作るという話なのですが、サービス業における生産性というのは、アウトプットは金額ですので、高く売らなくてはいけないということです。ですから、効率よく作るということとともに、いかにお客様にとって価値のあるものを作るかということが必要で、その点を特にこの生産性の話では押さえておく必要がある。我々の言葉でWTPといいます。Willingness To Pay。お客様が支払ってもいいという金額をいかに上げるかという議論をしておかないと、現在の日本における生産性は上がってこないんではないか。ですから、そういう教育が是非必要なのではないかということを感じています。
【河野主査】  私は余り余分に言ってはいけないんですが、今御指摘いただいたことは恐らく日本の学費の問題ということとも非常に密接に関係をしていて、欧米的な社会の在り方であればMBAの学費というのは1年間1,000万円というのはざらにあります。600万円、随分安いですねとなります。もはや中国のビジネススクールでも350万から400万ですね。日本は200万というととんでもなく高い、100万円台でと言われます。この状況の中では非常に財政的独立も難しいと思います。要するに、日本のビジネススクール、経営教育に対するWillingness To Payが非常に低いという状況も問題です。余分なことを申し上げれば、国立大学はもっと安いので、そこと私立は競争しなければいけないという状況も大きな課題かと私は思っています。 永山委員、いかがでしょうか。
【永山委員】  私は余り大学あるいは経営大学の運営とかそういうことについての知識が専門的にあるわけではありませんが、きょうのお話を伺っていると、非常に課題とか現状分析、これはいろいろなところから聞こえてくるものと一致していますし、現状そうなんだろうなと思うんですが、この会議、何回かやるわけですが、例えば海外と比べた場合に、どこが弱くてなぜ日本はこんな現状になっているかというところで差があるんだという話は聞くんですが、どこに具体的に差があって、解決しなきゃいけない具体的な問題点ですね、この辺がもう少し知りたいなという気がいたします。それによって、今後実践するに当たってKPIとかそういうものが出てくるんだろうなと。ここを強化しなきゃいけない、改善しなきゃいけないというような話だけですと、終わってからも、問題点は分かっているんだけれども、じゃあどこから手を付けるのかというところがはっきりしてこないような気もするんですね。アジアの方でも大分日本より進んでいるところもあると聞いていますが、特に私が気になるのは、やっぱりアジアとの格差がもしあるとすればどういうところにあるのかという点なので、どこかで具体的に知りたいなということがございます。
 それからもう一つ、今日余り出ていなかったと思うんですが、大学を出て修士とか大学院、経営大学院に行くということになると、個人個人の財政的な負担ですね、これがどういう差が出ているのかなということです。よく聞くのは、アメリカなんかの場合は、借り入れをして将来返すというようなものが非常に普及している。一方で日本では余りないようにも聞いてますし、それから会社でMBAの生徒を出すというのを我が社もやってきたんですが、3分の1ぐらいかな、帰ってくるとすぐ辞めてしまう。辞めないような縛りというのはある程度作れるんですが、ずっとやっておくわけにもいかないわけで、流動性が高くなれば、これからむしろ外からまたこっちへ引っ張ってくればいいということになるんでしょうが。この辺の学生さんが経営大学院に行こうというインセンティブ、特にファイナンシャルな面でどういう違いがあるというようなことを教えていただけると有り難いなと思いました。
【河野主査】  はい、ありがとうございます。
【斎藤(勝)委員】  斎藤でございます。余りこの分野に知見があるわけではないのは最初にお断りしたいと思います。ここでは、ビジネススクールという言葉を使わせていただきたいと思いますが、ビジネススクールと産業界との連携の問題がいろいろ指摘されているわけですけれども、経団連で昨年11月に会員企業の主だったところに高等教育に関するアンケート調査というのをやっておりまして、それによりますと、回答企業の85%ぐらいが過去5年に大学ないし大学院等に従業員を派遣しています。分野としては経済学・経営学分野が全体の4割。それから派遣先としては海外が半分強を占めており、海外ウエートが高いという現実があります。
 私もこの分野に知見が余りありませんので、私どもの役員でアメリカのビジネススクール出身者何人かにいろいろとアメリカのビジネススクールの付加価値が何かということを聞いてみました。例えば資本政策であるとか、財務とか法務とか、そういった個別のスキルを学ぶことができるということも魅力ですが、最大の付加価値はやはり優秀な教師と世界中から集まる優秀な学生たちとで、双方向の討論の中で、ロジックをベースとして相手の言い分というものを打破していくという訓練を2年にわたって続けてきた。これが最大の付加価値だというふうに言っております。また、将来の世界のビジネスリーダーとのネットワーキングに加えて、いろいろ授業に工夫が凝らされていまして、そこに近未来をのぞくことができるといった点が非常に魅力だったとも、言っております。
 ただ、彼らも一様に、アメリカ一辺倒の時代がもう終わりつつあるのではないかとも言っています。いろいろと話が出ていますが、アジアの経済成長でビジネススクールの存在感が非常に高まってきております。その理由としては、例えば香港、シンガポールのビジネススクールでは留学生比率が9割を超えており、魅力のあるプログラムが用意され、それに合わせて世界中から大変優秀な教師を招聘しているといったことだと思います。何よりもビジネススクールとしてのランキングを1つでも上げていこうという気概といいますか勢いがあるというふうに印象付けられます。次世代のアジアのビジネスリーダーとのネットワーキングというメリットもありますので、我々も最近アジアのビジネススクールへの派遣というものを始めてきたところでございます。
 一方で、日本のビジネススクールに一足飛びにそういったレベルまで求めるのはなかなか難しいと承知しておりますが、我々としてはやはりビジネススクールと産業界との接触の面積を拡大するような努力が必要ではないかと思います。それは門戸を広げていくということです。例えばフルタイムのMBAはもちろんですが、夜間とか週末のいわゆるパートタイムのMBAも時間的な負荷がやはり大きいということで、そうそう派遣が簡単ではないという事情がございます。したがって、一部のところでやっていただいていると思いますが、幹部候補生に対する短期集中型のいわゆるエグゼクティブコースでありますとか、又は今旬なテーマの講座を開設していただくとか、そういうことですと時間的な負荷もかなり軽減され、派遣しやすくなると思います。そういったことで、ビジネススクールと産業界との接触の面積を大きくすることによって、ビジネススクールの状況に対する認識が深まるということが期待されるのではないでしょうか。
 また、アメリカ等で、例えばファイナンスではウォートンだとか、マーケティングではケロッグだとか、いろいろ1つの分野を売りにしているビジネススクールがあると承知していますが、それも一つ参考になるのではないかと思っております。例えば、私どものニーズから言えば、データサイエンスや、ヘルスケアマネジメント、こういったことを売りにしているビジネススクールがあれば大変魅力を感じますし、先ほど小宮山先生も言っておられた課題先進国という関連でのテーマで言えば、老年学、ジェロントロジーもあるでしょう。また、人生100年時代への資産運用の在り方とか、そんなことを売りにしていただくようなビジネススクールがあれば大変魅力的だというふうに思います。
 最後といたしますが、私は企業のMBAに対する関心は今後高まっていくと思います。先ほどの御説明でもありましたとおり、一つは社内教育のリソースが社内だけではもう足りないというほど世の中が複雑化しているということです。それから、従前ですとせっかくMBAの資格を取ってきても社内ではなかなか適切な業務付与ができなかったということがあったわけですけれども、御案内のとおり20年ほど前の法改正によって持ち株会社がかなり増えてきて、数百ございます。私どもも、そういった会社の一つですが、海外の企業を買収して持ち株会社の傘下につるすと、そこにグループ会社の管理を含めて、MBAホルダーに適した業務を付与することができるという状況になってきていると思います。海外の子会社の幹部職員というのは大体MBAホルダーだという現実がありまして、それを本部の人間が承知をすると、やはりMBAに対する関心がかなり高まっていくということもあろうかと思います。
 いろいろ申し上げましたが、まずは接触の面積を多くするような努力をしていただければと思います。また、従来企業では、先ほど申し上げましたようにMBAホルダーに対して社内の的確な就職口がなかったわけですが、最近はそういったことではかなり期待に応えられるような状況になってきていると思っておりますので、是非こういった状況をテークチャンスしていただいて、努めていただければなと思います。以上です。
【河野主査】  お願いいたします。
【斎藤(聖)委員】  もう一人の斎藤でございます。今、企業の立場からのお話があったのですが、MBAを取った側からの問題意識をちょっと申し上げたいと思います。
 アメリカのMBAを取りましたが、確かに学費は高いのですが、2、3年するともうペイするほどMBAの価値が認められていて、就職のチャンスが非常に多い。だからこそみんなビジネススクールに行く。それもなるべくキャリアを向上できるビジネススクールに行こうというインセンティブが働きます。
 ところが、日本でMBAを取ってそれからどうなるかというと、大体企業派遣の方が多いので、それがキャリアパスにすぐにつながりません。社内教育の一環として使われているので、ビジネススクールで自分のキャリアをどうしようという問題意識を持っている人が非常に少ない。つまり、レーバーマーケットの流動性が低いということが大きな日本の特徴になっているのではないかと思います。ビジネススクールに行きMBAを取って、これからキャリアを変えていきたいという学生は、転職しやすい海外のMBAを取りたい。そうすると、中途採用に積極的な外資系でポジションを得られるということがありますので、日本のビジネススクールにはなかなか行こうという気にはならない。その動きがずっと続いているように思います。今おっしゃったように海外の子会社にポジションを与えるとかそういうようなことを、社内だけではなく、中途採用するような形でMBAホルダーを評価し、活用するようなレーバーマーケットになってくると随分変わってくるのだと思うんですが、まだ企業中心に物を考えるというメンタリティーが強いのだなという気がいたします。その社内で育てた人材をうまく活用するという発想から、社外の人材を積極的に活用していく。そうやって多様な人材を社内に取り込むという発想になっていくと随分ビジネススクールも変わってくるのではないかというふうに思っております。以上です。
【河野主査】  坂本先生、お願いします。
【坂本委員】  坂本でございます。
 まず、私のポジションというのは、実務家教員であります。30歳近くまで大学院にいて物理の学位を取って、それから企業で20年、その後50歳ぐらいからこういうMOTの教員をしておるのですが、まず十何年やってきてこの日本のビジネススクールの総括をどこかでやらないと始まらないなというのは今非常に思っているところなのですね。日本の多くのビジネススクールは数十人規模ですが、今大月さんから詳しくいろいろなことをお話しいただいたんですが、やっぱりそれが向こうの大学は1,000人規模のものがある。そして、学生のリクルートも専門の人がやる、あるいは分業体制というか非常に組織的に行われている。一方で日本のビジネススクールの方は、実務家をたくさん入れましょう、企業のニーズや実状を良く知った人を入れて改革していきましょう、という声はあったんですが、入った実務家もどんどん従来の大学のアカデミズム系教員に同化していくと。言ってみれば、北海道のジャガイモおいしいね。でも、本州で作ると何かおいしくないな。という状況にどんどんなっていて、やっぱりこれを何かしないと、せっかく産業界の方たちが接触面積を広げたい、あるいは付き合いを深めていきたいというふうにおっしゃっていただいているんだけれども、どうも期待されているようなことができていないということだと思うんですね。ですので、やっぱり今までの大学院というものから相当変わった形のものに、一番最初に池尾さんですか、あるいは非常に短期で学べて、修了しやすいとか、仕事をしながら学ぶものにとって負荷の低いというようなことも考えるとか、形が相当変わって中身も変わらないとこういう議論がなかなか前に進まないというか、実が上がらないような気がしております。
 今、お配りいただいた資料を見ておりますと、コアカリキュラムというものも下の方に入っています。これも、何かこういう定型的な筋があるんだ、それをコアとして教えるんだということを考えている限り、前に進まないような気がします。例えば、家庭の問題の例をとれば、お父さんと息子の仲が悪いよと。じゃあどうしたらいいんだ。お父さんが息子ともっと会話すればいいのだ。それではお父さん、そうしなさい。と言われてもそれで仲が良くなるものとも限りませんね。もっともっと深いところで考えていくというようなことをしないと、なかなか現実問題と立ち向かえない。何か偉い経営者の偉人伝を読んでケースと称する、あるいは、うまくいった企業のストーリーを見てどう思うと問うというようなものではとてもとても実際の問題にものに役に立つとは思えない。だから、いろいろ申し上げましたが、よほどゼロベースでもう一回考え直すということをしないといけないのではないでしょうか。これは、何もここに至って初めてという話ではないと思うんですよね。遅きに失していると小宮山先生もおっしゃったけれども、何回もやってきてこういう上場ということは、今度こそ初心に戻って、腹を割った議論をしないと成果が出ないような気がいたしております。以上でございます。
【河野主査】  尾形さん、お願いします。
【尾形委員】  日本財団の尾形でございますが、御説明を受けまして、かなり広範囲の話でございまして、何をどのように考えたらいいのか実は迷っている最中なんですが、今MBAの存在というのは絶対必要なんだろうという議論には全く誰も異論がないようでございます。ただ、その評価というか、何で日本でMBAが育たないのかどうなのかという問題よりも、学校そのものが果たして本当にあるのかどうなのか。例えば、MBAの存在というものが国際評価で日本のMBAがいいか悪いかと議論するのか、日本の国内だけでやるのかという議論が一方にあると思います。もしも国際評価が基準になるのであれば、果たしてじゃあ外の人たちは日本をどう見ているかということをやっぱり見なくちゃいけないと思います。
 例えば、私どもと分野は違いますが、私自身も中国との仕事が多いもんでございまして、それで組織としても実は相当35年近くにわたって中国のお医者様を日本で教育するという事業をやっております。それで、最初は100人ずつ20年呼んだんですが、そのころは中国自身もあんな状態でございまして、そして改革・開放がうまくいってから、がらっと変わって、それでGDP世界第2位になっているわけですが、最近じゃあどんなことが起きているかというと、中国から外に行く、留学する生徒は世界の一流校であれば派遣費用、生活、学費全て、これは国家が持つという仕組みになっております。そのような状態のときに、果たして日本にどれだけ来ているかというとほとんど来てないと言ってもいいと思います。かつては5万人、10万人という学生が日本で勉強していたこともありますが、今果たして何人いるかというのは非常に疑問です。医療分野においても、100人ずつ受入れると粗製乱造だろうからということで、今は30人ずつ受入れています。日本のどこの先生の誰のところでこの分野について学びたいという人を呼びましょうということで進めております。
 しかし、そうしますと、人が集まってこない。大きな問題は、実は日本で中国語で教育できる人が誰もいない。英語で教育すればいいんでしょうが、日本語ですると誰も勉強しようと思わない。だから、それでもやっぱり日本の医学水準であるとか医療環境というのは物すごい高い水準にあるので、中国の学生さんでもやはり日本で勉強したい。したがって、私たち自身が今度は中国の医師たちに現地で日本語の教育をします。そして、日本の教育も日本語でできるようにならないかということで、そして日本に来てもらうということをやっているわけです。
 要は、外から見て日本の学校制度であるとか魅力のあるカリキュラムがあるか。もっと一番大事なのは、どうも日本で本当に勉強できるんだろうかと思っている人が多いということだと思います。その点を何とかしなければ、多分MBAの国際評価も受けることができないだろうし学生が集まってこないということが、日本から行ってもしょうがないんじゃないか、日本から行くのはどんどん外に流出していくんじゃなかろうか。さっき斎藤先生がおっしゃっていましたが、やはり我々もいろいろな人たちを今採用しておりますが、やはりうちの中で教育していくとどうしてもうちの中の伝統であるとかうちの中で使いやすい人間しか育ってこない。逆に外で勉強した人たちをどんどんうちで受入れておりますが、そういう人たちの新しい考え方がどんどん組織の中で、組織も150人足らずの小さな組織ですが、その中で実は今大きく変わりつつあります。多分、企業もそういうようなことを目指しているんじゃないか、望んでいるんじゃないだろうかと私は思っておるんですが、やはり一つ何か学校と産官が連携すれば何とかなるんじゃないかなということとかいろいろなことをおっしゃっていますが、どうもそうじゃなくて学校そのものをどうするかということをまず最初に考えた方がいいんじゃないかな、そんな思いをしております。
【河野主査】  第1回目の会ですので、なるべく多くの方に意見を言っていただいた方がいいと思っているんですが。私がしゃべり出すと主査が発言を続けるという形になってしまうので。
 ただ、今までのお話を伺っている中で、まだ論点が非常に広いんですが、もともと労働生産性、あるいは地方のサービス業の中での労働生産性というような切り口から最初の話が入っていますが、本来ビジネススクールはリーダー、マネジメントができる人材を育てるという意味で、労働生産性を上げるための施策を実行したり、その先頭に立って実行していく人材を育てるという役割があると思うんですが、労働生産性を上げるためにビジネススクールが何かやると結び付けてしてしまってよいかどうかと感じます。そこがもともとの問題としてまず第1点です。この会議体の中で労働生産性の問題から入るのがどうか、本当は経営人材、先頭に立って企画立案し、自分でそれを実行していくリーダー、トップになれる人材、こういう人の育成という面がもっと強くビジネススクールに求められている本来の機能だろうというところが、ちょっともやもやとするところです。
 そういう意味での人材を育てるという点で、斎藤委員から御指摘があったようなアメリカのようなレーバーマーケットの流動性、モビリティーがもっと高まっていかないと、ということはありますが、同時に考えなければいけないのは、いわゆる専門的経営者として様々な企業を渡り歩く、極端に言えば1社を辞めてライバル企業の同じ地位に就くということがアメリカでは多数起こりますが、日本ではなかなかそういうことが起こりにくいという環境を変えるべきだという議論でいくのか、それとも日本的な価値観は大事にすると考えていくのかについて、バランスを考える必要があるのではないのかという印象を私は持っていました。
 そういうのが、ただ――そういうのがというのは、今私が申し上げたようなことが全ての言い訳になって日本は今までのままで大丈夫なんだというメンタリティーではこれからは生き残っていけないし、大学自体も生き残っていけない、ビジネススクールも生き残っていけないし、間違いなく草刈り場になって海外のビジネススクールの分校ができることになっていくんだろうということに、私は強い危機感を持っています。そうしたときに企業の方に連携しましょうと言ってもどの企業も振り向いてくれないという状態になりつつあるのに、私はタイミングが遅れているとは思わなくて、非常にいいタイミング、危機感が明確に出てきているタイミングでこういう会議体が持たれていると考えています。
【小西副主査】  先ほど池尾委員がおっしゃった事は、多分ビジネススクールのあり方や目的に限定される事ではなく、ご指摘は、日本の教育システムとか大学、高等教育システム全体に関係している話である、と思います。いろいろな話の機会に、私は池尾委員ご指摘の事と同趣旨で次のように言っています。クラフトマンシップというのが日本の価値であり続けてきた。その得意価値の発展に集中し戦後工業化を進め、海外からお金を稼いだ。できるだけいいものをできるだけ安く大量に作り皆さんに、というのが我々のビジネスモラルというか、美徳であるかのごとく一所懸命やってきた。しかし、だんだん状況が変わってきたから、これからは、例えは私的偏見な言い方ですが「フランス流」でやってよいのではないか、と提唱しています。悪いものを高く売れば詐欺だ、まあまあのものを顧客満足がある限りできるだけ高く売るということでよい そういう戦略思考があってよいと、これは多分池尾委員がおっしゃった、我々の社会の在り方や産業の在り方、を我々がどの様に考え、どうマインドセットしなおすか、という問題である、と思います。
そうしたマインドセットを漸次定着させて行くうえで「リーダー人財の育成」が最も肝要になります。
ビジネスは必然的に国境を超えますので、それまでそれぞれがコンフォタブルにしてきた固有文化や社会構造、その価値観を必然的に溶解せしめ、企業やプレーヤーを競争環境の中に投げ込み、生存するためにはその中で自律・自立で回転する力を身に付けることが不可避・不可欠でしょう。ですから、社会変革における一般的なリーダー人財育成の必要性は、その点においてビジネスリーダー人財育成に転化される、そういうロジック順番だろうと思います。
また、先ほど永山委員がおっしゃった点についても、起点はやはり大学全体の問題として共通している、と思います。
私もビジネススクールにおける人財育成、というテーマに関係を持って以来十数年になり、産業と大学の連携テーマについての経産省・文科省が仲介する検討機会に何回か参加してきていますが、「日本の大学の人財育成」に関する大学と産業界との議論は、いつでも決まったすれ違いでした。
即ち、大学側は「我々はしかるべき立派な人財を育てている、産業界の使い方が悪い」。一方、産業界からは「大学は有用な人財を育てて来ない、実社会で直ぐに役立つ人財育成を全くやっていない」という話にしかなりませんでした。この議論の繰り返しからは何も解決策は出てきません。
私は実業界にいてビジネススクールで自分が学ぶこと、国立大学系ビジネススクールにおいてビジネス人財育成に携わる事を経験してきましたが、ともかく学問の塔という、昔言われた象牙の塔に敢えて閉じこもることを、最近は変化への対応策を打てないが故にディフェンスとして敢えて強めている感もあります。
理系には産学連携に付きそれなりのニーズがあり、ビジネスと大学がより実践的な課題や研究において積極的に結び付き出していると思いますが、文系は閉じこもりの方向に傾きがちのように見えます。
「学問」が、世の中すなわち実業と言われるものの即物的な要請に応えることに終始するものであったなら、国家・人類、100年、500年の計は成り立ちません。日本の大局にほとんど直接の関係は皆無であろう研究をしてドクターを取りそれでずっと大学で暮らす、事実暮らせる、そういう「学問の府」という世界も必要ですが、アントレプレナーというのはどうしたら生み出せるのか、どう育てるのか、育つのか、と言う様な話は、やはり、3年、5年、の時間スケールで応えないといけないのも、高等教育人財育成機関としての大学の義務でしょう。
尾形委員のお話にも関係して更に私見を敷衍します。
今大学が自ら組織として世間・社会に対し答えなくてはならない事は、大学は決して営利組織でも短期目的達成組織でもないし、そうあってはならないが、しかし同時に「組織として」しっかりと自分のミッション・ビジョン・戦略を定めこれを運営する(=マネージする)そのこと一つです。中でも「経営を教えるビジネススクール」こそが、その事を一番問われる組織であるのは言を待たない、と考えます。
経営を教えていると称しながら、多くのビジネススクールではまともに経営は教えているとは思えません。そもそも組織単位として自立「経営」が成り立つはずがないビジネススクールが殆どです。一学年、30人、50人の学生規模では経営単位にはなりようがありません。授業料も50万円、100万円ではたとえ副業をうまくやったとしても収支がとれるはずもありません。ところがそれで平気で経営を教えています。また、一部の先進的ビジネススクールにおいては私見でも近時は状況が違ってきていることを良く認識していますが、未だ一般的には、経営を教えているという教員はどのような人か?というと、人格高潔、識見豊かかどうかは別として、実務経験教員と言われる人も「経営」経験が余りない人が大概です。どうしても研究部門であるとかアナリストだとかいう人が行きやすい。いい経営をやったかどうかさておき、具体的に「経営」をやった人間が入ってはいない、それでどうして経営が教えられるのか、と思います。
だから例えば次のような「謳い文句」が、人財育成のミッションになったりする、それを評価機関が、そのビジネススクールの「特徴」としてほめたりする、という、私見では何とも言い難いおかしなことが起きています。即ち、ある大学で掲げられた理念は、「戦略的リーダーを育てる、それが我が大学のミッションである、」こう掲げてある。これはそもそもナンセンスです。リーダーは戦略があるから(いろいろな戦略があります。競争戦略だけではありませんが)リーダーになるのであって戦略がなければリーダー足りえない。リーダーは戦略と一体のものです。従って「戦略的リーダーを育てる」ことは循環論法にすぎませんから、ビジネススクールのミッションとしては余りにお寒い、というべきでしょう。経営がわかっていない、経営がない、からこういう謳い文句を書くことになる、そういう事ではないか、と疑います。
「経営」とは金銭的に利益をだすということだけではない。フィナンシャルに、儲けることがミッションである経営も、ボトムラインフラットで活動成果を出すことが期待される経営も、一定の公的・社会的補助を前提にするファイナンシャルにはアンダーザボトムラインの経営もある、そのいずれも、掲げるミッションと規定した戦略に従ってやり遂げること、それが経営です。
今の日本の大学組織というのはその視点から見たときに、どの尺度においても経営がない、と言わざるを得ない。そして最も経営に敏感で経営をしていなくてはならないビジネススクールにおいて、極一部の先進的機関を除き、実は経営意識と能力がなく、経営がない、故に経営を教える場と称すことはできない、と思わざるを得ない。そういう結論になります。
こういう日本のビジネススクール「経営」と対比して海外を見ますと、「欧米では、海外では」と言って海外知見の豊富さをひけらかす、日本人はそれが大好きでありこれを「出羽守」と言いますが、あえて出羽守で語らせてもらいますと、実は「エデュケーション・フォー・ビジネス」という考え方が明確であり、エデュケーションであってもそれはビジネス、すなわち「組織経営」として成り立たなければいけない、海外ビジネススクールの「人財育成と経営」においてはこの循環プロセスをしっかりと認識し組織経営をしています。
ですから、先ほど斎藤委員からも注文が出ましたが、何のためにビジネススクールがあるか?何故社員をビジネススクールに派遣するか?何故企業人がビジネススクールに通うのか?それはバリューが出るからです。なぜバリューが出るか?それは学びを求める個人レベルでは受講生に対し一定レベル以上の知識・判断力を獲得形成し、己が立脚のプラットフォーム形成を助けるからであり、企業レベルでは大学と実務界とが互恵的な関係、前進的なネットワークを形成共有発展させる、そのようなある種のビジネスモデルとして機能しているからです。この典型的「経営」をうまくやっているのがハーバードでしょう。残念ながら、このような在り方に挑戦し発展途上にある一部の大学は存在しますが、かかるビジネスモデルを完成しているビジネススクールは日本にはありません。
尾形委員は先ほど、「中国から学生が来ている」とおっしゃっていました。十何年前は比較的優秀な学生が来ました。今はそういう学生は経済水準が上がっていますから、どんどん別のところに行く。いま日本にきているのは優秀な層とは異なる学生です。したがって、日本のビジネススクールは、中国人学生受け入活発をもって、アジア・国際化と称しているところがありますが、厳しく言うなら、結局は下請養成機関になっているに過ぎないのではないか、という疑問が残ります。こういうことを持って、国際連携が進んでいると言っていても、ほとんど意味はなさないのではないでしょうか。
ここで私の問題意識の基本に返らせていただきます。
これまでの日本のビジネススクール改革については、私自身も密に関係してきましたが、そもそもこの流れを支えリードしてきたのは、単体では慶應ビジネススクールです。慶應は日本のビジネススクール先駆者として50年の歴史を持って国際的に頑張ってきた。その先端を切ってきたリーダーが、おととし亡くなった青井教授(元慶応ビジネススクール&明治大学ビジネススクール研究科長)です。故青井教授とその後を引き継いだ河野主査が国際的に頑張ってこられました。
だけれども、この二人の様に国際的人脈の広がりを持ち活動している、そういう方々は他の大学や教育機関にはほとんどいません。
これでは日本のビジネススクールを発展強化せしめ実社会要請に応えうるものにして行くアップスパイラルな循環は作れません。
世界標準比較、あるいはアジアパシフィック比較でもよい、どこがおよんでいないか?と言ったら、一つ一つ言ってもしょうがないくらい、ファシリティーも駄目、教員スタッフィングも駄目、カリキュラムも駄目。
日本でも近時国際的なアクレディテーションマークを取る処はありますが、それは先方も商売だから先方の形式基準に達するようなトレーニングプロセスを、お金を払って指導を受ければもらえることはありますが、それが、他国・他大学から人財を引き付けるチャームと実力が付く、活発な人財交流の場になる、ということとは全く異なります。
現在「はやり病」の様に、猫も杓子も「グローバル」を唱え、皆な国際認証を取りに行きますが、私はそういうところに尋ねています。「皆さん大学は国際的マークを取ると学生は来るんですか?」と。そうなっているのなら、「それは一つの経営戦略ですよ」と。またそういう戦略をもって「国家に益するビジネス人財育成の場をつくる、というのであれば、それはそれで立派な戦略ですよ、」と。
ヨーロッパ大陸は、EC時代において、対米に対する「欧州」という立場を確りと踏まえビジネス人財育成の場であり機関であるビジネススクールを発展させるために、初期段階においてそういう政策をとりました。アメリカは、今アメリカ・ファーストと言っていますが、昔からアメリカはワールドであり、バイデフィニション「グローバル」ですから、要するにカントリーウエスタンをやっているようなところの大学もグローバルだと思っている検定団体もあります。これでやられちゃ困るから、ヨーロッパはECのときにECが実業界と一緒になり主導権をとって産業人財の育て方について、特に技術者ではありません、経営人財の育て方について団体を作りました。それが今アメリカと世界を二分するビジネススクール評価機関になっていて、この二つの機関は、中国を睨みながら、アジアパシフィック地域で様々な手を打ち競争しています。そして当然の帰結として、入り込みにくかった日本の重要性を改めて再認識し、日本に手を打ち始めています。
私の話のポイントは、そういう状況の中で、日本はジオポリティカルに、ジオエコノミカルにどうするのですか?ということです。日本の、ビジネス・政治共に国際的繁栄の足場はアジアパシフィックでしょう。今や、中国が政治・経済にとどまらず教育分野でも強力な勢力としてチャイナ・ウエーを広げてきています。日本の新聞等報道には、経済の中国の影響力、軍事の影響力について大きく報道されますが、人財育成に関する影響力の話はあまり出てきません。しかし、ビジネス教育においても中国の水準は他国に見習いを指導できるほど(米国流ではありますが)非常に高くなっています。アメリカから手っ取り早く教育手法を取り入れ、レベルの一気向上を図った、そして今、お金はある。したがって、東南アジアの有力大学に対し「一緒にやりましょう、奨学金も出します」そういうことをどんどんやりだしている。これは明らかにチャイナ・ウエーであり、一帯一路、と同根です。
我々は別に国家としての中国に真っ向から対抗しようとか、狭隘なナショナリズムに凝り固まる必要はないですが、ますます人口が減り、成長力が衰えているときに我々が今後どういう生き方をするかできるか、それを確かなものとするためにこそ、我々自身が人財育成において、その制度において、しっかりとビジョンを持ち足場を固め、ポジションをとっていく、そういう国にならなければいけないでしょう。
小宮山委員も言われましたが、社会構造変化、諸環境変化に対し、ビジネスは日々・短期の成果が求められる世界であるからこそ、逆にその世界において確かに社会構造変化、地政学的ポジション変化を反映する事ができるビジネスリーダーを育成する、リーダーシップを確立する、ビジネスマインドを涵養する、ビジネスモデルを創設する、そういうことに努めることが最も肝要である、と信じます。
最後に今一度重複することですが、人財育成と「グローバル」という点に触れさせてもらいます。今、「グローバル」と言う「はやり病」みたいな言葉がやたらと言われます。ビジネスは、最終的には国境を否定しますから、ビジネスにおいて「グローバル」という行動・思考を新規概念として規定しようとすることは、あまり意味はりません。しかし例えば、マルチナショナル・ユニバーサル企業で一番の典型は、オランダに本拠を置くユニリーバですが、ユニリーバトップに突然日本人がなるでしょうか?なりません。日本人がなることが未来永劫ないというのではないですが、たとえグローバルスーパーインターナショナル、と言う様な組織体であっても、合理的・合目的にインクルージョンは進めることがあっても、組織文化として一切の文化人種性別性向の固有属性を無視して機能面メリットのみに着目しリーダーが選定される、ということはまずないでしょう。故郷とその匂いがあり、ある種のプレファレンスが残る、というのが人間の集まりにおいては当たり前でしょう。だからこそ、そうなれるスーパーインターナショナルな日本企業・国際企業を率いうるリーダーを日本は育てなくてはならない、と考えます。
因みに、「グローバル」というのは、色で言えば、「無色透明」です。だからいろいろなことのこだわり、引っ掛かり、相性の問題、が一見出てこない。しかし、例として光の三原色を考えてください。光は無色透明ですが、分光器にかければ三原色が出る。これこそがグローバルの本質です。ですから、グローバルだと言って、あっちのまね、こっちのまね、全部取り入ればいいものでは全くない。
ましてや、「グローバル」と「ナショナル」とは、狭隘な意味じゃなくてやはり対立するところがある。だから、アメリカで近時、GAFA等IT・情報・ソフトビジネスがたたかれるとリパトリエーションで何千億円かアメリカに戻る、という話になるわけですけれども。そういうようなことを日本はこれからどんどん考える。そういうための人財育成というのを考えなくてはならない、これまで申し上げてきているように、そのことは大学という組織全体の課題ですが、その中でビジネスを担う人財育成の機関であるからこそ、あるいはそうありたいのであればこそ、ビジネススクールがまず変わらなきゃいけない。ところが、それが経営になっていない、そのことを何はさておき何とかしなきゃいけない、これが私の問題提起の骨子・結論です。
委員の皆さんが提起された問題や課題については私も全部共有しますが、個々の事象にとらわれずに論点を大局的に明確にして議論を進めることができたらば、と考えます。

【河野主査】  非常に広範に御指摘を頂いたと思いますが、補足でまだお話されてない方とか、追加の御意見がある方、いかがでしょう。
【吉田委員】  一言よろしいでしょうか。
 私は大学に籍を置いておりますが、経営学とは全く違う領域でこれまで仕事をしてきております。なぜここにいるかというのが不思議に思われると思いますが、私の専門は教育社会学という領域で、特に高等教育の問題を中心にやってきました。専門職大学院なり、あるいはいわゆる文系の修士課程というのがどういう機能を果たしているのかというようなことについてこれまで調査を幾つかやってきました。この問題を考えるに当たって、今大学と労働市場の話は出ているんですが、やはりもう一つの軸として学生の問題をどこかに視点として入れる必要があるんじゃないかというのを強く感じています。
 それはどうしてかと言いますと、大学と労働市場がうまく連携したら優秀な人材が大学に来るのかどうかという、そこの問題が一つです。それは、幾つかの調査結果を見ますと、特に専門職大学院やあるいは文系の修士課程を出て企業に勤めているような学生たちの調査をしますと、彼ら彼女らは非常に勉強熱心ですし真面目ですし、あるいは受けた教育に対する満足度も非常に高いです。それは本日配付された資料の中にもそういう結果が出ていますが、ただ、よくそこを見ていきますと、大学院で学んだということを労働市場の中で生かすという発想が極めて薄いというのが気になります。それはなぜかと申しますと、自分自身の自己実現的な学習欲求はあっても、それによって社会から評価されてプロモーションなりあるいは何か結び付けるために頑張ろうという発想が非常に弱い。それは先ほどお話が出ましたように、大体調査対象の7割ぐらいが修士の学位を取っても、あるいは専門職の学位を取っても何ら変化がないという回答をしているわけです。
 それはどういうことかというと、今さんざん出ましたように、要は労働市場の側から見れば、学習したことに対する評価というのがどこでもなされない仕組みになっている。それでは学生の方も、自分の自己満足のためには学習しても、その自分の学んだことを自分の職業生活あるいは企業の中で生かそうという発想が非常に弱くなるのはある意味当たり前だと思います。そうしますと、第一線で活躍している職業人が大学院に来ているのかどうなのか。そこの部分は測定のしようがありませんが、やや気になるところです。また、企業の側も大学院に送り出すというところが最近増えてきたというお話ですが、本当にこの人に将来を託そうと思うような人材を大学院に送り出してくださっているのかどうか。そこも何となく気になるところです。
 なので、学生という視点から見たときに、果たして労働市場と大学の結び付きだけで問題が解決するのかどうか。やっぱりこの3者のトリレンマみたいな部分があって、労働市場は学歴に期待をしない、あるいは大学に期待をしない。学生は自己満足のために学習をしても、それでもって自分のプロモーションは期待しない。大学の方はどうやっているのかというと、ここが非常に難しいところですが、やはり大学の方は外を見ている部分が弱いところが多いという気はします。なので、大学は教育熱心で教育をしているんですが、果たしてその教育を社会の中に生かしていくということをどのくらい教育の中に重要なミッションとして入れているのかどうかというところも気になるところです。なので、労働市場と大学と学生とこの3者が、ある意味悪循環になってしまっている部分のどこにくさびを入れたらそれが好循環に回るのかどうなのかというところが鍵ではないのかなと思っているところです。以上です。
【河野主査】  御指摘のように、悪循環という部分のどこにということを言い出すと、企業の側にとか大学の責任とか、あるいは社会制度がまだ未整備であるからとかいろいろな議論が成立すると思うんですが、私は様々な改革施策の中で、今までのお話を伺っていると、やはり大学側が大きく変わらねばいけないという側面が強くあるだろうと率直に感じます。私が大学にいるからですけれども。
 斎藤委員からも御指摘があったように、例えばカレントなトピックスで短期で産業界の人材と議論をすることができる教員が経営系の大学院にどれだけいるでしょうか。慶應のビジネススクールは企業の人を相手にしてケースメソッドで先端トピックについて議論しますが、その裏に、アカデミズムの論理があるのです。アカデミズムの論理をただ説明するレクチャーは我々はやりません。実問題と結び付けて議論するという教え方をしているので、教える側は大変です。私は生産の領域ですが、ファイナンスも人事も分からないと議論にはならないわけです。 ただ、そういう教員ですら企業の経営を本当にやっているのかという観点ではまだまだ足りないわけです。本当に企業の経営者としてトップに立って意思決定をするということと、クラスでケースメソッドによって議論をして、お昼になったら終了ですというのとは全然厳しさが違います。だから、そのぐらいの実務的な感覚を持ちながら教育をできる人材が教員の中にどれだけいるか、端的な言葉でいえばFDになるのかもしれませんが、もっと実務に即した教育、ケースメソッドとか実践的教育とかフィールドワークを引っ張っていける人間が必要です。ただし、それが理論なく、ただ面白いお話をという大学教員では何の価値もないので、裏打ちをできる研究であるとかバックグラウンドがある教員がもっといなければいけないというのは、大学側が抱えている大きな問題だと私は感じています。
【池尾委員】  大学が変わらなくてはいけないというのはそのとおりだと思います。ただ、ビジネススクールにおいて実務家の先生が果たす役割と、アカデミシャンが果たす役割は違うと思うのです。実務家のばりばりの経営者の方に来ていただくと学生はすごく喜びますし、それはそれで非常に価値があると思いますが、他方でアカデミックなバックグラウンドを持ちながら実務経験、実務意識がある教員がたくさん必要だということについて私は間違いないと思います。慶應のビジネススクールが完璧だというつもりは全くないですし、変えていかなくてはいけない点も多いのですが、もう一つ大事なのがやはり実務界の理解です。先ほど実務界がビジネススクールのMBAを評価してくれないというような御意見がありましたが、実は必ずしもそうとは言えなくて、結構高い給料で就職していく人間がいるわけです。どういう会社なのかというと、ほとんどが外資系の会社ですね。外資系というのは欧米系とは限りませんが、日本のMBAホルダーであっても優秀な人間は日本以外の企業に勤めていくと、何かそんな傾向が特に最近見てとれます。ですから、実務界が変われというのではなくて、実務界とビジネススクールとの相互理解というものを図るということ、これは当たり前のことなんだけれども、特に昨今重要になっているのではないかというふうに感じております。
【山村委員】  済みません、私もビジネススクールで教えている立場で一言だけ。
 今ちょうど河野先生、池尾先生、それから小西先生からお話あったということなんですが、関連して。1つは大学の人事制度というところも大きく影響しているところだと思います。河野先生がおっしゃったように、いわゆる日本型の経営なのか、それともいわゆる欧米型の経営なのかというお話がございましたが、全てではないと思いますが、多くの日本の大学はいわゆる日本型の経営をしていると思います。いろいろと各委員の先生方からお話があったように、大学の教員に求められているもの、特に経営系の大学院に求められているものというのはスピードであったり、いわゆる経営の先端でということがあろうかと思いますが、その中で、今のお話で関連すると、例えば人事制度です。通常我々のところも実際そうなんですが、一旦テニュアになってしまうと人材そのものが日本の大学の中でも流動化してないというのがある部分では現実だと思います。その中で、例えば給与とかも含めてこれを我々の経営系の大学院だけで変えていくというのは実際問題なかなか難しくて、いわゆる我々のような一般的に大きい大学になってくると、全学的な給与あるいは人事システムという中で動かざるを得ないところがあります。もちろん、我々自身の努力としてそれを変えていかなきゃいけないというのはそのとおりではあるんですが、何らかの形で我々の人事システム、今の教育と研究というお話であれば、例えば海外の大学院であればある程度研究に特化する教員であったり、教育に特化する教員であったりというところを認めているところがある。あるいは、それをミックスして運用されているというところもあるかと思うので、我々自身の問題としてそこのところ、人事制度のところについては考えていかなきゃいけないというのはそのとおりだというところであると思います。
【河野主査】  どうでしょう。お願いします。
【斎藤(聖)委員】  済みません、今までの御議論の中で余り出てこない単語があるなと思ったんですが、投資ということが余り言われてない気がいたします。アメリカのビジネススクールでいつも感じていたのは、みんな投資というのを非常に重視していたことです。学生は当然ながら時間とお金を投資して自分のキャリアを積んでいこうと考えますので、ビジネススクールに行くのは大きな投資でした。ビジネススクールの方はどうかというと、原石がいい学生、磨けば非常に良い経営者になるだろうという人を発掘して教育を2年間投資する。それによってその人がいい経営者になれば、それはそのビジネススクールに寄附もするだろうし、ビジネススクールの名声も上がるし、産業界にいい影響を与えることができるということで、人材、学生を選ぶところからビジネススクールも投資が始まっている。その人材を採用して会社の業績を伸ばそうと、当然ながら企業は思っている。ですから、いつも3者とも投資を考えて行動しているんですが、日本の場合にはそれが余りないような気がいたします。
 日本において、先生を聖職として見る傾向がまだ非常に大きいと思います。今サラリーのことや、人事制度のことがお話に出ましたけれども、聖職ではなくてやはり投資をすることによって先生方のリウォードというのをもっと考えていいんではないか、特に経営の専門職大学院ですから、もう少し投資について考えるメンタリティーがあっていいのではないかというのを感じました。以上です。
【河野主査】  率直な御指摘だと思います。うちの大学の例をとれば、投資をする先生はほとんどいないといえます。塾長まで含めて基本的には教員ですから。アメリカの――別にアメリカに限りませんが、海外のビジネススクールではディーンあるいはプレジデントというのはファイナンスの責任も持ったCEOですから、そういう意味ではトップとして経営をして、投資をして、プログラムを開発し、ファシリティーを作り、人を集め、集まらなかったらクビになるのです。資金回収できてレピュテーションが上がったらもっといいランクの学校のディーンになるというプロフェッショナルな仕事です。日本ではディーン・アンド・プロフェッサーです。どっちが大事なのというとプロフェッサーとなってしまう。これではなかなか経営ができない、投資もできないという実情があるというのは確かにそのとおりです。ただ、それは日本の大学の在り方として理事会制度にも関係をしてくる問題と認識しています。
 小西さん、お願いいたします。
【小西副主査】  さっきの私の話と関連して、河野主査が大学自身の問題をおっしゃっていただいたのは、これは大変僕はいいことだと、というか大変失礼ながら有り難いことだと思います。片方で私はいろいろ見てきた結果、実は池尾委員の意見にむしろ重きを置いています。それは、例えば、ハーバードに送る、あるいはウォートンに送るとどのくらい掛かりますか。機会費用は抜きにして実際にテュイションと渡航費と滞在費と入れれば、2年間やると4、5千万掛かるんです。で、戻ってきます。これは日本の人事とか雇用制度に問題がありますが、2、3年いると日本ではやっぱり働けない、駄目だ、話にならない。そこで海外に行くか外資系に行くという話になる。こういうことに企業は投資して何の意味があるんですかということを考える。
 そこで、じゃあ日本の大学頼りにならないと言っていても、ここで申し上げますが、京セラの稲盛さんじゃないけど、日航が危うくなった、衰退企業になっている、外から見て分かります。だが、中に入らないとどこが悪いのかが分からない。でも、今産業界の方々は駄目だ、悪いと言っているが入ってこられない、前よりはお金を出すようになったが、でも入ってこられない。今日、偶々、経産省の伊藤さんがおられるので、私を超えたいいお考えを持っていらっしゃいますが、例えばハーバードに1人そうやって派遣してそのくらい金を掛けるんだったら、真っ当な大学を作るために中堅幹部、課長とかそのくらいのクラスを1年リザーブして送って、大学の中に送り込んでいくと。経団連がこういう人材プールを作れば1,000人や1,500人できます。これはビジネススクールに限らず日本の大学を変えることができるし、逆に日本の企業にとっても人材育成にもなれば、最終的な利益にもなるんです。実は、人材育成の最終的なベネフィシアリーというのは誰かといえば、最終的には国民です。でも、一義的にそのベネフィシアリーは最初に来るのはビジネスなんで、やっぱりビジネスがこの際もっとコミットしてもらいたい。
 危機感を持っていますからいろいろやっていますが、昔バブルの時にだんだん製鉄業が駄目になったときに、川崎製鉄が千葉の製鉄所で何をやったと思いますか。製鉄の排水が温かいからウナギ養殖をやると。今の大学がやっているのはみんなそうです。衰退企業がやるような、見かけ上多角化でやっているように、文科省からやたらと拡散してもしょうがないしもっと合理化を図れというと、実際の影響力が及ばないような形にして、総合政策部とか、総合生活部とか総合社会学部などを作って一緒にすると、お互いのコストの負荷がぼやけてきますので、これで先生とか事務職員をセーブできる、こういう状態なんですね。これは中に入っていかないと分かりません。だから、やっぱり僕は自分が実務をやって産業界から大学に入ってみた中で、私学はもう少し厳しいですが、でもやっぱり実業界がもっと入っていかれる方がよっぽど全体のためになる。そこはもう一つ実業界の人に、お前ら駄目だと言ってないで、どっちにしたって金を出させられるんだから、出させられるんだったら金を出して口も出して人も出して変えるというのが一番利口なんじゃないかなと思います。
 今、エデュケーション・フォー・ビジネスで全くないに等しいとおっしゃいました、慶應は別にして。全く新しいやり方で成功してきているのは、きょう傍聴に来ていらっしゃいます、グロービスです。唯一定員の単位が数百人、600人かそのくらいに達していて、経営の規模として成り立っている。これはリーダーの堀さんという人が、もちろん教育だけじゃなく、ちゃんと経営者としてのビジョンを持っていて、じゃあ教育をするならどういう教育機関であるべきか、ビジネス教育をちゃんと持っている。中堅幹部を中心に生きのいいビジネスマンを常時取り替えながらやっているので、企業にとってはとても有り難い存在になってきているということなんですね。これはいい刺激だと思います。やっぱりアウトサイダーが入ってきているんですね。ただ、そのやり方でグロービスがアジアに羽ばたけるかどうかはちょっと分かりませんが、ともかく新しいやり方ということです。
 こういうやり方をどんどんさせるようにするためには、やっぱり産業界が積極的に踏み込んでいただく必要があると思います。これは産業界の人材の新しい活用、あるいは小宮山委員がリードしているプラチナと、シニアがもっと継続関与して社会に貢献する。幼児教育でもいいです。そういう話とも通じる議論なんで、やっぱり産業界に是非考えていただきたいなというのが、私は産業界を経てきてやった結果の考え方です。大学だけに求めても、なかなか大学はその能力がないから、なかなか難しいなという気はします。
【河野主査】  恐らく小西先生が今言われたような点で産学がこうして集まっているという場に大枠としての意味はあると思います。ただし、一方で実際に慶應の中で運営をしている人間の立場からいうと、各校がそういう努力をする。産業界の人に入ってきてもらってアドバイスをもらいながら学校の在り方を考えていく、プログラムを考えていく、出口人材のイメージを改定していく。KPIを定めてストラテジーを決め、PDCAサイクルを回すというようなことを各校が努力しないと、仕組みだけで作ってもなかなか難しいところがあります。ただし、もちろん仕組みも必要だと認識しています。各校が努力するときに30人、40人の規模で赤字ですと嘆いているのではなく、各校が人を集めるなりプログラムを開発するなり、お金を集めるといったことを各校がやらない限り、仕組みとして国のサポートも必要だと思うんですが、両面が必要じゃないかなと思いました。
【永山委員】  いいですか。いろいろ課題は多いんですけれども、きょうは出てなかったんですが、さっき池尾委員からもアカデミシャンの話が出ましたが、ビジネススクールといってもやっぱりアカデミシャン側がやはりこれからビジネス、世界の環境がどう変わるかという研究機能が必要だと思うんですよね。そういう意味で、ちょっと私が聞いているのは、慶應も含めて研究機能、これがなかなかないと。それだけのお金もないということなんだと思うんですが、この辺をやっぱり、いろいろな課題が今日出ているわけですが、こういうものを解決しながら一方でビジネススクールの、特にアカデミシャン側がやはりフューチャーをよく観察をして先んじていろいろな構想を練るということが必要だと思うんですが、この点については河野先生が詳しいと思いますが、いかがなんでしょうか。
【河野主査】  池尾先生に言っていただいたポイントですが、私の考えになってしまう部分はあるかもしれませんが、産学連携という話が出ると、しばしば教育であるとか人材育成の側にフォーカスが当たるということが起こります。実際には大学のアカデミズムとして冷静に、世の中で今こういうことが起きているけれども、その将来あるいは課題、他の領域への影響というようなことを客観冷静的に考察できる学問としての研究は非常に大事であり、一番最初に小宮山委員が言われたように、課題先進国という意味で様々な課題に対して政策も含めいち早く対応をしてきたのです。地震の問題であるとか、高齢化の問題とか、環境問題ももちろんそうです。中国の空気が汚いとよく言いますが、日本の空気はもっと汚かった、ということに対して様々努力をしてきた。もちろん技術的な努力もありますが、企業の努力、大学の活動の努力をほとんど発信していないんです。ですから、大学の研究としてまとめて成果を発信していくという機能が必要です。その成果を続けていくためには、経営の人材教育が必要であり、その循環が回っていかないと、研究だけとか人材育成だけとなると、その人材は、幾らで採用してくれるんですかとかというような、手段側の話がすぐ出てきてしまいます。もっと中長期の課題を抽出するような方法論とか、分野横断的な研究であるとか、そういうところに産学連携という切り口の大きな意味合いがあると思っています。
【永山委員】  今のような点ですね、できれば冒頭に申し上げたように、ベンチマーキング、例えば恐らく世界のトップランクの大学が今河野先生がおっしゃったようなことを実践していると。どう実践しているのか、具体例としてできれば知りたいなと思いますし、それを大学というシステムの中で誰がどうやってファイナンスしていくのか、その辺も一番重要なのかなという気がするんですが、その具体例を知ることは、非常参考になると思います。ほかの課題もやっぱりこういう課題がある。だからこれを強化しなきゃいけないというところで終わってしまうと、なかなかいい文章ができるのかもしれないが、道筋が見えてこないという気がしますので、そういう点でお願いしたいと思います。
【斎藤(勝)委員】  先ほどもう一人の斎藤さんの方から投資という観点のお話がありましたが、一方でアメリカのビジネススクールに派遣するコストというのは大変に高くなっております。これは例えば個人のレベルで考えると、派遣時期といいますかMBA等に行く時期というのは若ければ若いほどいいのかと思うのですが、企業の方はいろいろなリスクがあるわけです。例えば退社リスクです。
 最近、御案内のとおり、日本の企業等々で当局の方からガバナンス強化の一環としてサクセッションプランをしっかり作るようにとの言及もなされており、またグローバルの企業になっていく過程でそういったことが当然必要になってくるかと思います。そうすると、一つの可能性としては、サクセッションプランのショートリストに載るような何名かの候補については、30代後半から40代が対象となるかと思いますが、そういう人を派遣対象にするという方がいろいろな意味でリスクが少ないといえます。投資という観点でいうと、こういうような考え方もできつつあると思っております。
【河野主査】  いろいろな御意見をいただきながら、定刻終了時刻に近付いてしまっているんですが、永山委員が言われたベンチマーク、これは非常に大事なことだと認識をしています。やはり具体例で語るということをしないと、御指摘のとおりと感じます。
 ただ、1点だけ、余分なことかもしれませんが、その前にも永山委員が言われた、海外と差がつくというところの、今ビジネススクールを取り巻いている環境について、ITとかIoTとか、どんどん新しいことが起きてきて、新しいことを研究をする、そういう人材を育成するというところがビジネススクールのビジネスとして成立しています。ただ、一方で、アントレプレナーにしても、ファイナンス、アカウンティング、ヒューマンリソースからオーガニゼーション、マーケティング、ストラテジー、オペレーション等を、分かっていないと経営者にはなれない、トップリーダーになれないのです。下手をすると今世の中で流行していることを追っかけて、ほかの学校もやったらどうですかと提言するのは非常に危ないと思います。海外のビジネススクールはそこの基盤のところをきちっと押さえて、うまくネットとか書籍を使いながら、その次のところを教えています。この循環をうまく作っていくというのはすごく大事なことではないかと思うんです。
 今、余分なことを申し上げたのは、世の中どちらかというと、ITがとかベンチャースピリットとかすぐに流れて行くので、そればかりではないところに本当のビジネススクールの価値があると思うからです。流行だけでは売りものにはならないが基礎だけでも売れないという、このところが差が付く一つの要因であると私が感じているからです。
 いろいろ活発な御議論を頂いて、時間がぎりぎりになってしまっていますが、本日の議論について、シナリオでは「事務局に取りまとめていただきたいと思います」と発言しろと書いてあるんですが、こんな発言を皆まとめろというのは大変な仕事だと思いながら、なるべく具体例を入れながら、提言を作っていくというのは大切な作業だと認識しています。
 それでは、最後に当面のスケジュール案について、事務局から御説明お願いしたいと思います。
【大月専門職大学院室長】  お手元に資料の6を御用意願います。今後のスケジュール案でございます。
 第2回については3月5日水曜日1時から、第3回については3月23日金曜日の16時からを予定しております。その後は事務局といたしましては月1回をめどに報告書の取りまとめに向けた議論を行って、夏頃をめどに取りまとめを行っていただきたいと考えております。委員の皆様におかれましては、御多忙なところ大変恐縮ですが、引き続き御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
【河野主査】  今後、本会議においては可能であれば関係する団体等から、あるいは個人の方からプレゼンテーションという機会も設けながら具体的に進めていきたいと考えておりますので、本日の議事を終了とさせていただきたく思います。
 御協力、ありがとうございました。

―― 了 ――

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