国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議(第11回) 議事要旨

1.日時

平成29年8月29日(火曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 第2講堂(旧文部省庁舎6階)

3.議題

  1. 報告書案について
  2. その他

4.議事要旨


(主な発言要旨)
<報告書の決定>
【主査】
・第10回会議における意見を踏まえて事務局と修正案を作成し,委員とメール等で複数回調整したのが本日の報告書の最終案である。
・本報告書案を報告書として本日8月29日付で確定とすることに同意いただけるか。(「異議なし」の声あり。)これで確定とさせていただく。

<1年間議論しての意見・感想等>
・現職研修等と関連付けながら,明確な使命を持って教職大学院に行き,学んだことを現場に還元するという派遣の効果が認められれば,教職大学院のニーズは必ず高まる。大学院の学びが現場を変えていくという手応えが全国で出てくるような光景が,一つのゴールのイメージ。
・この約10年間で,教員養成大学・学部の意識は大きく変わっており,今こそそれを有効にするための具体的な制度改革を進める時であると申し上げたが,変わったか変わっていないかを評価するのは社会であって,大学人である当事者が言うことではないと指摘され,よい勉強になった。大学運営の在り方として,単に国の方針に沿って受動的に改革を進めるのではなく,大学の主体的かつ積極的な改革の動きと,その成果を社会に向けてアピールする必要性を感じた。報告書が前向きな姿勢で取りまとめられたことに感謝したい。
・北海道教育大学の一例だが,専門学部から来た先生が本学で何年かやってどこに行くのかを調べたら,60人のうちの25人,42%弱は,専門学部に戻る形で出て行っていた。これは他大学あるいは専門学部と違う特殊事情。このような循環から抜け出さなければ,いつまでも同じ議論の繰り返しになる。一つの突破口が,Ed.D.型の博士課程。専門学部から来た先生がPh.D.とEd.D.の二つの学位を持って教員養成を担うことで質を高めたい。
・教員の質が全体的に下がっていると感じられる中で,教育の質は上げなくてはならない。そのために,いいものの共有・蓄積を全国で行うことが大事。教員養成はいい教育をするための手段であって,教員養成だけではなくて,学校教育全体の知を集めて共有することを,今後の大学改革の中で具体化すべき。
・今回の報告書を改めて読み直して,詳細なデータをもとに議論ができ,また,全体的な状況から組織体制まで,8つの側面から全般的かつ詳細に課題整理ができたと思う。ここまで詳細に教員養成に関して課題を整理できたことは過去にはなかった。これを踏まえて,国立の教員養成大学・学部が自ら改善・改革を本気でやらなければいけない。
・附属学校が果たしてきた教育,研究,教育実習をはじめ教員養成の功績は非常に大きく,今後,複雑化・多様化する我が国の将来にとって,附属学校の存在に大きな期待が寄せられる。全国の附属学校は,今指摘されている声に真摯に耳を傾け,まず大学の附属であることをしっかりと意識し,国・地域の課題やニーズに即した取組を進め,確かな内容を確かに発信し,確かなフィードバックを経て,確かな内容に改善するという地道で丁寧な努力を続け,国・地域,大学にとって必要不可欠な存在となってほしい。
・この報告書が実現できれば,どこに出しても恥ずかしくない。一昨年度と昨年度の予算折衝等を見ても,エビデンスに基づく改革という厳しい問いかけにしっかり答えられないとばっさりとやられる。自ら改革できることを示すことがとても大事。絵に描いた餅にしないよう,確実なPDCAサイクルの実現に期待する。教職員の働く環境の整備は,自治体の責任もあるし,文科省にもしっかりと予算を獲得してほしい。そのためには,教職員の一大応援団である地域の皆さんの理解をしっかりと得られる改革を進めることが重要。
・この報告書を受けて,教員養成大学や教員養成をどう考えるべきか,改めて身が引き締まる。機能強化には,必要なことを引き受けて応えるプル型の機能強化と,新しいことを先導するプッシュ型の機能強化の二面性がある。昨今,遊びがなくて,引き受けることに身を縮めて備えることが多いが,教育は未来を開く営みであり,もっと飛び出していくことも必要。学ぶことも遊ぶことと同様で,そういうエネルギーを先生方が現場で持つからこそ,子どもたちも育っていくし,国や社会も育っていく。
・報道等で注目を集めるのは大学の再編統合だが,そこばかりがフォーカスされるのは残念。教員養成の質が変わらなければ,どのように枠組みを組み直しても,今より幸せな未来を期待することはできない。大学の教員の研究成果について,学校現場への貢献を視点に評価されることが少ないのは疑問。附属学校の取組も,実証的に評価されず,どれだけ努力したのかが中心に評価されている。これは世界一多忙と言われている我が国の先生方の現状とリンクした問題。教育効果をきちんと測定できる基準や仕組みの構築が待たれる。
・教員需要の幅が大きい中,大学の入学定員の増減で就職率を一定に保つことは難しい。国は,教員採用が悪い時期には35人学級など需要を喚起して,教員採用が1,000人でも増えるような措置をお願いしたい。国立教員養成学部の義務教育学校の教員養成のシェアは,現在は3割台であり,数年後から教員需要が悪くなる時の教員採用マーケットは凄まじい競争の時代になる。21世紀初頭に教員採用が増加した時にも,国立の採用率があまり上がらず,採用者数もあまり増えていない中,国立の教員養成機関は大丈夫かという心配がある。今後は国立の教員養成機関が挑戦者の立場で頑張る姿勢が必要。
・機能強化に重点を置いて丁寧に報告書をまとめていただいたことにホッとしている。うれしいことは,今回の報告書の中で,内部質保証の大事さやインスティテューショナルリサーチを進める必要があることが書かれたこと。データやアンケートに基づいて何をやっているかを可視化することは,機能強化の基盤。一方,残念なことは,教科教育と教科専門の一本化という提言を打ち出しているが,教職課程の再課程認定の動きの中で,それが反対方向に引っ張られる施策が進んでいること。各大学学部で改革を進めるにあたり,インセンティブがない状況の中でやらなければいけないところが心残り。
・この報告書が出た後,どうやったらこれを効果的に進められるかが最も気がかり。これからやるべきこととして,報告書を各都道府県教育委員会にしっかりお伝えすること,教科領域の部分を取り込んだ上で今までどおりの実践的なところに軸がある教職大学院として維持すること,教科領域を含んだ教員養成学について,学会や教大協,教職大学院協会も含めてその在り方を議論すること,学部と教職大学院との連携,附属学校と大学が一体化した教員養成の在り方,国としてEd.D.の制度設計をきちんと検討するための会を設けること,私学と国立との連携を進めながら改革を進めること。
・私としては80%ぐらいの満足度。これまで「在り方懇」や様々な答申が出たが大きな改革ができなかった。この報告書が教員養成大学・学部の大変革の突破口になることを切に希望する。教員養成大学・学部は,それなりに考えて一生懸命やってきたが,時代の変化に即応する改革を自ら進んでできなかった。今般,このような報告書が出ることを待っていた面もあると思われ,内容的にはさほど違和感は持たれないと思う。
・この報告書は,国立大学の機能強化によって存在意義を高めることを目指している。再編統合については,前向きに考えるべき。国立大学の優秀な人材が再編統合によって力を結集することで,単独ではできないことができるようになる。この報告書が,国立教員養成大学・学部の文化を変えることを期待する。

<報告書を実効あるものにするための手段について>
・教職大学院を中心にした教員養成機能の充実は,関連する法令等との調整が必要。教職大学院を中心にした教育学部の充実のためには,教職大学院と学部との教員配置のダブルカウントの見直しが必要であるし,教職大学院に教科領域を整備して内容を充実させるためには,研究者教員と実務家教員の比率や,その区分けの仕方の必然性の検討も必要。
・教員養成大学・大学院には,研究者教員でも教育現場や教育行政に関する知見が豊富な者や,実務家教員でも著書・論文等の研究業績を持つ者が増えてきた。他の専門職大学院との整合性もあり,中教審の専門職大学院ワーキンググループで検討されているが,報告書を実効性あるものとするために,教職大学院については新たな基準を検討いただきたい。
・専門職学位であるEd.D.の制度設計が重要。教員養成大学の教員を養成する意味で大きな役割を持つ。働きながら学ぶ学校教員がより学びやすい環境を整えるために,論文博士による学位の授与制度等も検討の対象としていただきたい。
・県教育委員会のみならず,広く首長や市長会・町村会等に対する働きかけが重要。改革の応援団になってもらうには,首長の理解が非常に大事。一昨年度の教職員の削減問題のときに,なぜ市長会が頑張ったかと言えば,文科省がもし土俵を割ったら,そのつけが全部,地方に来ることがわかっていたから。いろいろな方々がステークホルダーとして関係してくることを考えて理解を得る動きが必要。
・実効性のあるものとするために最も大事なことは,大学自らが改善・改革を続けること。その前提の上に,教員研修をどう考えるかが課題。教職大学院の現職派遣の学生数が減ってきており,是非,教育委員会等からの派遣を増やしていただきたい。また,課程認定や設置審査における審査委員にも,教員養成教育の改革についての理解を深めていただき,教員審査に生かしていただければ変革が進む。
・教職大学院への現職教員の派遣の増加については,教員定数の問題がある。予算と研修等定数の拡大をお願いしたい。教育委員会に対する働きかけについては,教育長が本気でやるかどうかにかかってくるため,大学が教育長に対して直接,具体的に提案すべき。
・提言にもあるように,ラーニングポイント制度など,学校現場にいながら学ぶ仕組みについても教育委員会に理解いただき,より短期のプログラムを受けやすい支援をしていただくことも重要。
・大学は,改革がどんな果実をもたらすのか,どんな成果が出てくるのか,自分たちにどんな意味があるのかを具体的に示すことが不可欠。少子化で教員ニーズが減る中で,人員削減はやむを得ないが,国立大学法人なので,教員や事務職員の雇用や待遇の保障はなされており,その意味をより高めるためにも次の段階に踏み出しましょうということが示されないと,教職員の気持ちが前向きにならない。

【文部科学省】
・昨年9月以来,1年間で11回にわたり会議を重ねていただいた。国立の教員養成大学の学部,教職大学院をはじめとする大学院,更には附属学校という非常に幅の広いテーマについて熱心に御議論をいただいことに感謝を申し上げる。
・委員の皆様はもとより,ヒアリングで発表していただいた皆様のおかげにより,議論に広がりが出て,非常に中身が充実した報告書を取りまとめていただけた。今後,文科省が施策を進めていく上での指針となる報告書である。
・学校現場では,教員は一生懸命頑張り,疲弊している。とりわけ期待を担っている国立教員養成大学・学部が,学生に学校現場で役立つ実践的な内容を身に付けさせることについては,この報告書でも機能強化が強く期待されている。この報告書を受けて,文部科学省では,教員の需要が急激に減少する現実を踏まえながら,各国立教員養成大学・学部との間で,年内には意見交換をさせていただきたい。また,教育委員会はもとより,首長の方々にも力強い応援団になっていただけるよう努力したい。

【主査】
・今後,大学と文部科学省が一体となって,国立教員養成大学・学部の教員養成・研修の機能を再興し,最高に機能強化することにつながることを祈念して,お礼の言葉としたい。


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