国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議(第11回) 議事録

1.日時

平成29年8月29日(火曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 第2講堂(旧文部省庁舎6階)

3.議題

  1. 報告書案について
  2. その他

4.出席者

委員

(主査)加治佐 哲也 委員
(副主査)松木 健一  委員
(委員) 伊藤 幸子、北山 敦康、蛇穴 治夫、関根 郁夫、高橋 香代、田中 一晃、牧野 光朗、松田 恵示、水落 芳明、山崎 博敏、渡邊 恵子の各委員

文部科学省

瀧本 高等教育局審議官、三浦 高等教育局大学振興課長、小山 高等教育局国立大学法人支援課長、石橋 高等教育局国立大学法人支援課企画官、長谷 初等中等教育局教職員課教員免許企画室長、柳澤 高等教育局大学振興課教員養成企画室長

5.議事録


【加治佐主査】  それでは,どうも皆様,こんにちは。少しだけ定刻より早いのですが,おそろいですので始めたいと思います。
 ただいまより,第11回国立教員養成大学・学部,大学院,附属学校の改革に関する有識者会議を開催いたします。本日は最終回となります。
 前回8月1日の第10回会議において,報告書案について御議論をいただき,多くの御意見をいただきました。それらを踏まえて事務局と相談して修正案を作成し,委員の皆様にメールにて照会させていただきました。そこでいただきました意見を更に調整して再度,委員の皆様に照会をさせていただきました。本日の報告書案は,その過程を経た最終の案です。
 委員の皆様からいただいた御意見は一つ一つ確認させていただきましたが,中には全体の整合性の観点などから採用できなかったものも多くありました。大変恐縮ですが,御了承いただけたらと思っております。
 本日は皆様の御同意をいただけるのであれば,事務局から前回からの主な変更点の内容を御説明いただいた後,この報告書案の文面はこれで御了承をいただき,報告書として確定することにいたしたいと思います。その上で本日の会議の前半は,本報告書には反映できなかったものの,各委員の御意見として改めて述べておきたいことや,本有識者会議での約1年間にわたる議論についての感想・御意見など,本報告書や会議に関することについて順番に御発言をいただきたいと思っております。また後半は,この報告書を今後実効あるものとするためには,どのような手段を講じたらよいか。大学,学校,自治体等,様々なお立場の委員がいらっしゃいますので,多様なアイデアを出していただきたいと思います。なお,報告書を実効あるものにするための方策については,松木副主査から本有識者会議において議論してはどうかとの御提案をいただいていたところでもあります。
 それでは,まず事務局から本日の資料の確認及び前回会議からの主な変更点について御説明をお願いいたします。
【柳澤教員養成企画室長】  よろしくお願いいたします。
 まず資料1でございますが,報告書案です。主査から御説明をいただきましたように,最終段階ということで,前回会議における委員の皆様方からの御意見を踏まえました修正案を複数回,皆様とメール等で調整させていただきました。それの最終版としたものが資料1でございます。
 それから資料2の方は,前回8月1日の第10回会議の配付資料からの変更点を赤字で見え消しにて修正をしたものでございます。内容は資料1と同じでございます。後ほど資料2については修正点の御説明をさせていただきます。
 資料3は今回の報告書案の概要を1枚にまとめたものです。
 資料4は,今までにもこの会議でお出しをしている資料の抜粋でございますが,主なデータ等に関する資料を改めて本日お配りをしております。特に時点修正が可能なものについてはデータを新しいものにしておりますので,これが最新の資料でございます。
 資料5は前回の会議の発言要旨です。資料としては以上でございます。
 続きまして,資料2に沿って,前回8月1日からの変更点について主な点を御説明させていただきたいと思います。
 まず資料2の一番上のタイトルのところでございますが,過去の報告書に合わせまして,前回までサブタイトルとしていた文言を一部直して,「教員需要の減少期における教員養成・研修機能の強化に向けて」ということ,これをメインのタイトルとさせていただきました。サブタイトルとして,この有識者会議の報告書という形にしてございます。
 それから1ページ目の一番下と,その上に丸が2つ赤字になってございますが,これにつきましては,この会議がどのような認識で,この報告をまとめたのかをよりわかりやすく書くということで,委員の皆様からいただいた御意見を踏まえまして,文章を追加した部分でございます。
 それから前回,2ページ目に概要の1枚の紙を入れておりましたが,これは先ほど御説明した資料3で別紙にしておりますので,その部分は省いてございます。
 3ページ目,本文の5行目の部分です。末尾の方で,国立大学の附属学校の学校数について,修正をしております。これは平成29年度の学校基本統計の速報値が8月に出まして,それによりますと,258校だったのが,今は256校になっております。義務教育学校が2校増えまして,小学校・中学校が2校ずつ減ったことによる影響でございます。
 それから4ページ目ですが,中ほどのところで,「教員としての専門性の高度化」というところの前に赤い部分を入れてございます。これは教員としての専門性の高度化とは何なのかを,よりわかりやすくしようということで,個人としての専門性を高めることのみならず,「同僚と協働すること,地域や保護者と連携すること,社会の様々な専門性を有する者の力を教育に生かすことを含む」「教員としての専門性の高度化」という表現に直しております。
 同じく4ページ目の下から2つ目の丸の部分につきましても,エビデンスという言葉を使っていた部分につきまして,エビデンスという言葉の受けとめ方が人それぞれであると思われるため,特に数値的なもののみがエビデンスであるという誤解をされないようにということで,量的・質的なものを含む総合的なエビデンスというものを加えさせていただきました。
 その後しばらくは軽微な修正等でございますが,11ページで一番下のマル2のところで,大学との連携についてございます。ここは前回の附属学校に関する委員の御意見を踏まえまして,文言を整理させていただきました。
 14ページからでございますが,14ページ自体は,15ページ以降の文章の要約ですので,そこを少しずつ直した影響でかなり赤字が入っておりますが,内容・趣旨はほとんど変えていないものでございます。
 15ページですが,中ほどの枠の下の部分にあります文章のところ,10行ほど文章がございます。ここにつきましても前回の委員の御意見を踏まえて文言整理をしたことと,8行目からの3行につきましては,新たに国の動きについての記述ということの御意見があった部分につきまして追加させていだたきました。
 16ページですが,マル3の「教員就職率の引き上げ」についてです。ここも文言の整理と,あと最後の3行につきましては,幅広い視点からの検討に資するということの文言を加えて,少し記述を充実させていただきました。
 同じく16ページの最後の部分から17ページの冒頭にかけてですが,本報告書の全体の末尾の方で,他大学との間の――文言としては水平的という言葉は使っておりませんが――横の連携ということでの水平的な連携に言及していること,これに対応しまして,学内でも必ずしも十分連携がとれていない部分,そこの強化が必要ではないかという「垂直的な連携の強化」についての御意見がありましたので,17ページ冒頭の部分にその趣旨を加えさせていただきました。
 その後21ページまでは細かいものがいろいろありますが,この辺につきましては,今までの御議論を踏まえての修正でございます。
 22ページの上の部分のマル3「教科領域の教育」についてです。ここにつきましては,「新たな学力観」といった文言が入った記述にしておりましたが,その文言が少し抽象的であるということでしたので,それを改めまして,新学習指導要領で整理されている資質・能力に関する記述,そこを使いながら表現をそろえさせていただきました。
 24ページのマル4「教職大学院での学びのインセンティブ」につきまして少し削っている部分がございますが,ここは必ずしも直接的なインセンティブではないのではないかと言われた部分,あるいは内容的に他の部分と重なっているため,ここについては削除させていただきました。
 26ページの附属学校に関する部分の下の方のマル1「存在意義,成果の提供先・活用方法の明確化」という部分ですが,ここにつきまして,貧困等の困難を抱える子どもの受入れという点についてでございます。この内容につきましては,本会議でも議論がありました。この貧困関係が必ずしも典型的な例としては適切ではないのではといった御意見もございましたため,いったん前回の資料では削除していた部分でございますが,その後,東京学芸大学附属学校における実例が紹介されまして,またこの文章自体としても何らかの具体的な例がないとわかりにくい文章でございましたので,ここにつきましては,実例のある取組を提供するという形で,貧困関係の文言を入れ込ませていただきました。
 27ページの中段下の方のマル4「大学によるガバナンス」につきましても一部削除しておりますが,これも前のページの教職大学院部分で似たような記述があったので,ここは重複を削除させていただいております。
 最後でございますが,30ページで,マル2からマル4の部分にそれぞれ,「することにより,機能強化と効率化を図り」という言葉を入れてございます。ここにつきましては前回御指摘をいただいたことと,それぞれにこの文言を入れておく方が,より適切に趣旨が伝わるのではないかということでございましたので,マル1の記述に合わせた追加をさせていだたきました。
 その他,特に言及しなかった部分につきましては,委員の皆様の御意見を踏まえた軽微な修正,あるいは事務的な文言の整理,あるいは数値等が微妙に違っていたといった部分,その辺を直させていただいたものでございます。
 前回からの主な変更点につきましては以上でございます。
【加治佐主査】  資料4などはよろしいですか。
【柳澤教員養成企画室長】  冒頭にも申し上げましたが,資料4は資料集,資料5につきましては前回の発言要旨を入れさせていただいております。以上です。
【加治佐主査】  わかりました。
 どうもありがとうございました。それでは,ここで皆様に最終的に本報告書案について御同意をいただく前に,もしこの場でどうしてもという御意見がある方は御発言をお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは,ここで皆様にお諮りしたいと思います。本報告書案を報告書として本日8月29日付で確定とすることに御同意いただけますか。
(「異議なし」の声あり)
【加治佐主査】  どうもありがとうございます。これで確定とさせていただきます。
 それでは,これからは最初に申し上げましたように,16時20分頃まで,本報告書には反映できなかったものの各委員の御意見として改めて述べておきたいことや,本有識者会議での約1年間にわたる議論についての感想・御意見など,本報告書や会議に関することについて自由に御発言をいただきたいと思います。皆様全員に御発言をいただきたいと思いますので,恐縮ですが,座席順に伊藤委員から1人3分ぐらい,あるいは4分以内で,申し訳ないですが,いつも最初ではないかと思いますが,よろしくお願いします。
【伊藤委員】  失礼いたします。私は教職大学院の修了者として,そしてまた公立中学校の校長の立場として,この会議に参加させていただきました。大学の先生方の御苦労,そして改革の難しさも含めてよくわかりましたし,大変勉強させていただきました。
 現役の大学院生は現職教員の方が中心なのですが,今も学校によく来てくれたり,あるいは同窓会という形で集まったりして,いろいろと交流があるわけですが,現役の院生たちは本当に学びへの高い意欲と課題意識を持っているなと感じています。
 私の勤める山口県の場合は,一人一人が研究の対象となる学校や教育委員会をあらかじめ指定され,最終的には改善プランといったような形で指定された場所の改善案を作成します。そして大学院修了後は,多くがそのプランをもとに実際に現場に入り,改善に向けて実践していくというように,はっきりとした使命を持って大学院に派遣されます。2年間の学びは本当に実効性のあるものかどうかが問われるわけです。ですから,中途半端な気持ちではやっていけないということはあるだろうと思っています。
 学校等において,古くからの課題,新たな課題を含め様々な課題がある中,今後,派遣元が指定するか,本人が自ら決めたものであるかの違いはあるにしても,現職研修等と関連づけながら,はっきりとした使命を持って教職大学院に行く。そして学んだことを現場に還元していくと。そういう形での派遣が,効果が認められれば,必ず増えていくのではないだろうかと思っています。ですから,学校としては,それに応えていただけるような学びの提供を是非お願いしたいということです。
 大学院の学びが現場を変えていくという手応え,これは大学の先生方にとってもそうだと思いますが,派遣された本人にとっても,派遣した教育委員会にとっても,学校現場にとっても,それを待ち望んでいるし,そうした手応えが全国のあちこちで出てくると。そのような光景が1つのゴールのイメージではないかと思っています。私もできるところがあれば,また協力させていただきたいと思っています。以上です。
【加治佐主査】  ありがとうございました。では,続けて北山委員,お願いします。
【北山委員】  それでは,この1年を通しての感想のようなことを少し述べさせていただきます。
 私は教員養成大学の教員としての35年,また附属学校の校長・附属学校園統括長としてのこの10年ほどの経験から,とりわけ法人化からミッションの再定義に至るまでの間に示された様々な方針に対応して変革に努める大学の動きを見てきました。この会議の最初の頃にも申し上げましたが,この10年ほどの間に教員養成大学・学部の運営やそこに勤める教職員の意識改革は大きなものがありました。当然,この間に教員の世代交代による入れ替わりもあり,これが結果的に意識改革に大きく影響したと思っております。そうした思いから,「大学は何も変わっていない」という趣旨の御発言も聞かれましたヒアリング等の際に,私は,「既に大学の意識は昔とは変わっているので,今こそ,それを有効にするための具体的な制度改革を進めるときである」というようなことを申し上げました。それに対して,どなたかから,「変わったか変わっていないかを評価するのは社会であって,それは大学人である当事者のあなたが言うことではない」というようなことを言われました。これは大変,私にとってはよい勉強になりました。その御指摘は確かにそのとおりでありまして,これからの大学運営の在り方として,単に国の方針に沿って受動的に改革を進めるのではなく,大学の主体的かつ積極的な改革の動きと,その成果を社会に向けてアピールする必要性を感じた次第です。
 これから,この有識者会議の報告書に沿って全国の国立教員養成大学,学部,附属学校園は大きな改革の舵を切ることになろうかと思います。と言うよりも,もう既に方向性を定めた上で,この報告書の最終案を待っている大学が多いのではないでしょうか。私自身は定年退職で,これからの改革に直接参画することはできませんが,全国の国立教員養成大学,学部,附属学校におかれましては,これまでにやってきたことと,その成果とともに,これからの改革の具体的な方向性について広く社会にアピールしていっていただきたいと思っています。
 なお,この報告書を実効性のあるものにするための具体的な方策については,後ほど意見を申し上げさせていただきます。
 何はともあれ,最終報告書がこれからの教員養成において前向きな姿勢で取りまとめられたことに対しまして,主査をはじめ,委員の皆様,関係の皆様に感謝を申し上げます。ありがとうございました。
【加治佐主査】  ありがとうございました。では,蛇穴委員。
【蛇穴委員】  私自身は理学部,理学研究科の出身で,教員養成というものの意味をきちんと考えずに就職した側でございます。それが縁あって,北海道教育大学に勤めることになりまして,更にこの10年間は理事,学長という立場で教員養成というものを肌で感じてまいりました。その経験と,それから,過去10年間に採用された教員のその後の進路状況を追跡調査した結果も踏まえまして,教員養成について,会議の場ではなかなか言うことができなかった部分を少しお話させていただきます。
 具体的には,A大学理学部からB大学理学部,C大学理学部というように,例えば助手,准教授,教授へと動いていくこと,これは自然なことだと思います。ただ,この点に関して教員養成系大学・学部の特殊性を私は感じました。つまり,A大学理学部からX大学教育学部あるいはY教育大学に先生方が来るわけですね。その後,どこの大学に移っているのかを,追跡してみました。これは北海道教育大学の例ですので,あくまでも一例として聞いていただきたいと思うのですが,先ほど言いましたように,もともと専門学部から来られた先生が本学で何年間か働いて,その後どのような大学・機関に移っていったのかを調べてみたところ,この10年間で転出した教員が60人おり,その内の25人,つまり42%弱が,もう一度,専門学部に戻っていることがわかりました。つまり言葉は悪いですが,本学の場合,専門学部に行くためのある種の人材バンクのような存在――これは言葉としては悪と思いますが――つまり業績を上げて,また専門学部に行くという面があるということです。面接をして,いい先生だなと思って採用し,その後,活躍されても出て行ってしまうことが多々あるわけです。これはやはり他の大学あるいは専門学部と違う特殊事情なのではないかと思いました。
 そうしますと,せっかく教員養成の大学・学部に来ても,すぐ出て行ってしまうのでは,ただ同じことが繰り返されるだけで,いつまでも教員養成学部としての専門性が確立されていかないわけです。つまり,在り方懇や今回の有識者会議で「教員養成の専門性」というキーワードで何度も何度も議論が繰り返されるその1つの理由は,そういう特殊性にあるのではないかと感じてきました。従いまして,こういう循環から抜け出さなければ,いつまでたっても,また同じ議論の繰り返しになるのではないかと感じています。
 その1つの突破口になると個人的に強く感じているのが,この有識者会議の中でも話題になりましたEd.D.型の博士課程だと私自身は捉えているところです。教員養成を担当する大学教員に,たとえPh.D.を持っていてもEd.D.の学位を取ってもらいたいと考えています。できればテニュアトラック制を絡めて考える必要があると感じています。そう考える背景には,本学が行っているテニュアトラック制度と私自身の経験が結びついております。具体的に申し上げますと,本学のテニュアトラック制度では,若い先生方にまず3年間,メンターをつけて,教員養成の大学に来たからには,教育に関する論文を書いてもらうという条件を設けています。そして,3年目に中間評価をし,最終的に,きちんと条件をクリアしていればテニュアにしていくという方法を採っています。そうしましたところ,テニュアにする時の役員面接の際には,なるほど,いい先生方が来たなと,やはり実感できました。このようなわけで,本学のようにメンターをつけて教員養成大学・学部に来たのだという覚悟を持って仕事をしてもらう仕組を持ったテニュアトラックもなかなかいいのかなと思った次第です。そう考えたときに,Ed.D.型のドクターコースが,たとえ定員が少ないとしても教員養成大学・学部の中にあるとすれば,自分の大学に勤務しながら,その課程に入って,ドクターの学位を取れることになりますので,先ほど申し上げたテニュア制度の中で最後はEd.D.という学位をとるのだという制度にしていけば,専門学部から来られた先生がPh.D.を持ち,更にEd.D.型の学位を持って教員養成を担っていくことになり,教員養成全体を更に高度化していくことができるのではないかと個人的には考えています。
 せっかく,この有識者会議の報告書の中でもEd.D.という項目がありますので,私自身は,HATOプロジェクトの中で他の3大学とも関わっておりますし,何とか,このEd.D.というものをもっと研究して,制度化するための具体的な相談をしていきたいと考えているところです。
 少し長くなりましたが,以上です。
【加治佐主査】  わかりました。では,関根委員。
【関根委員】  私は県の教育長をやっておりまして,教員を採用する立場,そして子どもたちの教育に直接責任を持つ立場で,この会議に参加させていただきました。そういう点で言いますと,私が現職のときに非常に危惧していたことが,一つは,今,学びの改革を進めなくてはいけないという状況で,本当にそれができるのだろうかということが大きな危機意識としてありました。
 2つ目は教員の質の多様化です。これは正直に言って,ある程度は仕方がないと思ってまいりました。しかし,それに対してどう対応しなくてはいけないのか。教員の質が全体的に言うと下がりつつ,でも,教育の質は上げるということを現実的に考えていかなくてはならないと。そういう中で,私が考えてきたことは,良いものの共有です。これがなかなか今まで進んでこなかった。学校教育についての学問として,蛇穴委員が言われたような問題もあって,きちんと蓄積されてこなかったと思うのですが,れからその蓄積をして,全国で共有をしていかなくてはならないと思います。そういうところが一番大事です。教員養成は基本的に手段です。いい教育をするための手段であって,教員養成だけを見ていたのではだめだと思います。いい教育を全体的にするために教員養成はどうあるべきか。また教員養成大学では,教員養成だけではなくて,学校教育全体の知をどういうふうに集めて,共有していくような形に動けないものかと考えます。この辺のところを是非今後,大学の改革をしていく中で,具体的にしていく中で検討していっていただければありがたいと思います。教育現場で教員がやっていくためにも,地域の中で教職大学院が核になって動いていっていただきたいし,教職大学院同士も連携して,いいものを共有し,現場から吸い上げるということも考えてやっていただけたらありがたいなと思います。そういうことを最後に期待して終わりたいと思います。1年間,ありがとうございました。
【加治佐主査】  ありがとうございました。それでは,高橋委員,お願いします。
【高橋委員】  私は,先ほどの蛇穴委員のご発言に共感しているところです。その他の点で言いますと,報告書を改めて読み直しまして,一つは,今回詳細なデータをもとに議論したことが指摘できると思います。各大学単位といいますか,各県別のデータが示されて,そういうデータをもとに議論をしたことです。もう一つは,課題について,全体的な状況から組織体制までの8つの側面から,全般的かつ詳細に課題整理ができたのではないかなと思います。今まで,ここまで詳細に,教員養成教育に関して課題を指摘したことはなかったと思います。このことを踏まえて,今後国立の教員養成大学・学部は,自ら改善・改革を本気でやっていかなければと思いました。その上で,ここも蛇穴委員と同じ意見でして,やはりEd.D.型の,本当にそこを研究する大学院の博士課程が必要と思います。
 最後に,私も10年前に教育学部長になって,20年前に県の教育委員に就任して,教員養成への意識が変わりましたが,それまでは専門知識を教えればいいと思っておりました。
特に教科専門の先生方の課題については蛇穴委員が指摘されましたが,教職科目関連の教育の理論の担当の教員の方にも,理論だけで実践に役に立たないのではないかということもあると思います。両面があるので,新しい先生方に教育学部に来ていただいたら,そこで教員養成教育について教育をしていく,そういう機能を大学の役割として,附属学校園の役割として持っていかなければと思いました。以上です。
【加治佐主査】  ありがとうございました。それでは田中委員,お願いします。
【田中委員】  失礼します。まず,委員の先生方,柳澤室長をはじめ,文部科学省の皆様には大変お世話になりましたことを心から御礼を申し上げます。どうも本当にありがとうございました。
 附属学校のことを今回初めて外から,それも一般国民の目線で考えさせていただきまして,改めて多くの課題があることに気がつきました。教員養成及び研修機能をより充実させる役割,そして国・地域の教育水準を引き上げるためのモデルとしての役割など,求められる役割をより有効に進めるための運営と組織の在り方について,全国の附属学校とともに改革できるところから進めてまいりたいと思っております。
私自身,附属学校がこれまで果たしてきた教育,研究,教育実習をはじめとする教員養成の功績は非常に大きいと思っておりますし,今後,より複雑化・多様化すると思われる我が国の将来にとって,附属学校の存在に大きな期待を寄せられることはこれからも多くあると思っています。
 附属学校に勤めていた頃,自校で教育実習を受け公立学校の教員になって2年目の方が訪ねてこられて,教員を辞めたいという話をされました。話を聞くうちに元気を取り戻し,最後はこの附属学校で生活したことを思いながら,このような理想の学校を一つでも多く作れるようにこれからも教員として頑張っていきますと言ってくれました。その方は,今は中堅教員として活躍されています。
また,公立学校の管理職,教育委員会の指導主事等に転出していく仲間たちはみんな,附属のような学校を公立学校の中にも1つでも多く作っていきたい。孤軍奮闘することもあるかもしれないが,しっかり頑張っていくといってくれました。
私自身,やはり今後も附属学校が周囲から大きな期待を寄せられるような学校,目標とされる学校であってほしいと願っています。
 附属学校をなくさないために,全国の附属学校は今指摘されている声に真摯に耳を傾け,まず大学の附属であることをしっかりと意識し,国・地域の課題やニーズに即した取組を進め,確かな内容を確かに発信し,確かなフィードバックを経て,更に確かな内容に改善していくといった地道で丁寧な努力を続けていかなければなりません。そして,国・地域,大学にとってなくてはならない存在,必要不可欠な存在となってほしいと願っています。
 私ども全附連は,教大協とも連携を図りながら,それぞれの附属学校がミッションを確実に果たすよう,今後責任を持って見守ってまいります。委員の先生方,文部科学省の皆様には今後とも御指導をいただき,お力添えを賜りますよう,どうぞよろしくお願い申し上げます。1年間,どうもありがとうございました。
【加治佐主査】  では,お願いします。
【牧野委員】  本当にお世話になりました。ありがとうございました。私はこの委員の中では恐らく一番の門外漢だと思うのですが,経済財政諮問会議の専門委員をやっていたり,あるいは全国市長会の副会長という立場もあったりして,また一昨年度,昨年度と文科省の予算折衝に大きく関わるようなこともあったりしまして,この有識者会議にも参加してほしいということで御要請を受けたところでありましたが,本当に今回のこの報告書を読ませていただきまして,これが実現できるようであれば,これはどこに出しても恥ずかしくないものになっていくと思ったところであります。
 一昨年度,昨年度の予算折衝等を通して見ましても,どうしても,こういったエビデンスにもとづく改革をどこまでやっているのかという厳しい問いかけに対して,しっかり答えられないと本当にばっさりと行ってしまうと。それこそ相撲で言えば,土俵の徳俵に足がかかるような状況を身をもって経験している立場から言えば,やはりこうしたことを自ら改革できるのだというものを示していくのは,今の時代,とても大事だと思うところであります。是非これを絵に描いた餅にしないで,先ほどの説明にもありましたが,最初の教員養成機能の強化のところで,確実なPDCAサイクルの実現ということがうたわれておりますが,まさにこれからの実践に期待するところであります。
 先生方が今,現場において,かなり厳しい立場にいるのは私も感じていますし,実際に資料を見させていただいても,そういう状況があると思うのですね。やはり教職員の皆さん方の働き方改革も合わせて,これは考えていかなければいけないだろうとも感じているところであります。そういった意味で,教職員の皆さん方の働く環境の整備ということになりますと,まさに自治体自らの責任もあると思いますし,また文科省の皆さん方にもしっかりと予算を獲得していただかなければいけないと思うところであります。そうしますと,やはり教職員の皆さん方の一大応援団として,地域の皆さん方の理解をしっかりと得られるような改革を,これからまた更に進めていってもらうことが重要ではないかと思うところであります。
 この1年間,私もいろいろな形で大変学ばせていただきましたことを御礼申し上げまして,感想とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【加治佐主査】  お願いします。
【松田委員】  ありがとうございました。私も1年間,本当に大変勉強になりました。委員の方々がいろいろとお話をくださっているので,簡単に感想だけを述べたいと思います。
 自分で本を書いたりするときに書き終わって,最後に「あとがき」を書くときがすごく好きなのですが,これまでの今日のお話は,その意味では「あとがき」的なイメージがあるのですが,自分にはなぜか,この報告書全体が「まえがき」にしか見えないところがあって,これから定年までまだ10年ほどありますので,これを引き受けて,教員養成大学あるいは教員養成ということをどう考えていけばいいのかと,改めて身を引き締めている状態です。
 この報告書の中で私自身がもう少し議論ができたらよかったなといいますか,こういうことも是非次までには実践を積み重ねながら,お話ができたらと思っていることの1つに,教員養成機能の強化がテーマになっているのですが,機能強化といったときに,プル型のといいますか,つまり必要なことを引き受けて答えていくという,そういう方向での機能強化と,プッシュ型といいますか,新しいことを先導していくこと,引っ張っていくという,そういう方向での機能強化の二面性があるかなと思うのですが,昨今,教育にかかわらず,どうしても物事に対する取り組みの中に「遊び」がなくて,ニーズや期待を引き受けることに身を縮めて備えるといいますか,そういうことで動いていく中で,やはり教育は未来を開いていくという営みでもあると思いますので,もっと飛び出していくとか,跳ねるだとかですね,そもそも学ぶことも遊ぶことと何ら変わらなくて,そういうエネルギーを先生方が現場で持つからこそ,子どもたちも育っていくし,国や社会も育っていくのだと思うので,プル型だけではなくプッシュ型の提案がもっとできたらなというのは強く思っているところです。ただ,それほどの積み上げたものが,やはりまだ自分にはありませんでした。だからこそ,そのようなことが次こそ言えたらなと思います。また,そういうことを言うためにも,ここで出された課題にしっかりとまずは取り組んで,具体的に改善の姿を見せることで,その思いを何らかの形にあらわせたらいいなと思いました。本当に1年間,ありがとうございました。
【加治佐主査】  お願いします。
【水落委員】  今回の有識者会議で,報道等を見ますと,最も注目を集めているのは,大学の再編統合の部分ではないかと思います。しかし,そこばかりにフォーカスされるのはいささか残念に感じています。
 私は教職大学院の実務家教員として,この会議で魂を込めて発言してまいりましたのは,理論と実践の往還に関する部分でした。もちろん大学の再編統合といった枠組みに関することも大切なことですが,教員養成の質が変わらなければ,どのように枠組みを組み直しても,今より幸せな未来を期待することはできません。大学の教員が研究成果について,学校現場への貢献を視点に評価されることが少ないのは,やはり疑問です。また附属学校の取組が実証的に評価されるというよりも,どれだけ努力したのかが中心に評価され,努力の物量作戦と言うのでしょうか,それでしか勝負できない現状となっている。これは今,世界一多忙と言われている我が国の先生方の現状とリンクした問題だと考えます。より多くの努力を重ねたことが成果として評価された方々が学校現場を動かす立場になっていくからです。教育効果をきちんと測定できる基準や仕組みの構築が待たれます。
 私はこの状況を何とかしたいと願い,及ばずながら意見を述べてきました。この報告書にその考えを少しでも反映できたことは,やり甲斐を感じています。是非質的な改革も忘れられずに実行されることを願います。もしかしたら,その先の世界では学力を偏差値や学歴ばかりで判断するのとは違った見方を生み出せるかもしれないと考えるからです。
 もう一つ,この会議に携わることを通して,文部科学省の方々が実に真剣に学校現場のことを考え,現場のことをよく理解していらっしゃるかを知りました。これはかつて現場にいるときにはわからなかったことです。これからは,このことを現場で働くみんなに伝えていきたいと思います。このことを知るだけでも,彼らは随分と救われた気持ちになると思います。これからは,よりよい未来を描けるように,大学,附属学校,教育委員会,文部科学省,学校現場が今まで以上に手を携えていけることを期待しています。1年間,お世話になりました。ありがとうございました。
【加治佐主査】  それでは,山崎委員。
【山崎委員】  広島大学の山崎でございます。この有識者会議に参加させていただきまして,ありがとうございました。
 私は1995年ぐらいから,教員需要の推計の仕事をしているのですが,当時,21世紀に入ると教員需要は増加するという結果を出しましたが,あまり注目されることがなくて残念でした。今回,2~3年前に将来は需要が減るという結果を報告しましたら,いろいろと反響がありました。今回,自分の研究を政策に生かしていただく機会を与えていただいたことにつきまして感謝をしている次第でございます。
 教員採用のサイクルがございまして,戦後第1回の不況期は1950年代末から60年代にかけてが第1回目,第2回目が1990年代でございます。最初の60年代初期までの採用不況期には,師範学校から昇格したばかりで2年課程がたくさんありました。これを4年課程に切り替えることで,教育の質を高めるという方向で入学定員の削減を実現しました。それは非常によかったと思います。90年代には2回ほど大きなステージがありまして,新課程をつくることと,その後98年からの5,000人削減計画と,合計で1万人ほど減って,2万人から1万人になったわけです。その後,21世紀になりますと,2004年から私立大学が大量に小学校教員養成課程を設け始めまして,現在,この資料にもありますように176校になっております。90年代の終わりには40校ぐらいしかなかったのですが,これが176校になって,今,小学校教員の新規採用者の多分6,7割は一般学部で,そのほとんどが私立だと思います。国立は30%台で,40%以下になっております。そういう中で第3の減少期が,多分,2020年過ぎ,東京オリンピックが終わった後に訪れるわけです。90年代は採用が悪いということで定員削減,今回もこの有識者会議のトーンは,定員削減というスタンスです。この入学定員を操作する方法での教育計画は教員養成の場合は非常に難しいと思います。教員需要の幅があまりにも大きいのです。いいときは大量採用なのですが,悪いときは極端に悪いという性質があります。大学の入学定員を増やしたり減ったりすることで就職率を一定に保つことはなかなか難しい。それほど採用の変動は大きいものがあります。ですから,機械的に就職率を一定にするために操作をすることは困難な仕事であると考えておかないといけないと思います。一時的な悪化には目をつぶることも必要であります。国には,教員採用が悪いころに35人学級でありますとか,いろいろ需要側を喚起していただいて,ぜひ教員採用が1,000人でも増えるような措置をお願いしたいと思います。
 21世紀に入りまして,国立大学というか,国立教員養成学部の義務教育学校の教員養成の独占体制はもう終わったわけなのですね。80年代までは7割いっていたと思うのですが,90年代に減って,現段階になりますと3割台ということでありまして,今度,数年後に始まる需要が悪くなったときの教員採用マーケットは凄まじい競争の時代になると思います。90年代までと異なり,今度は大量の私立大学176校が競争相手になります。その時代に国立の教員養成機関は大丈夫かなと思います。21世紀初頭の教員採用が増加したときに採用率があまり上がりませんし,採用者も思ったほど増えておりません。採用が悪くなったときにどうなるかという一抹の心配があります。今後は国立の教員養成機関が挑戦者の立場で頑張るという姿勢が必要ではないかと思っております。以上です。ありがとうございました。
【加治佐主査】  はい。では,渡邊委員,お願いします。
【渡邊委員】  約1年前に,この会議の委員にというお話があり,大変大事な会議の一員になるということで重責を感じたのをついこの間のように思い出します。機能強化ということに重点を置いて,ここまで丁寧に報告書をおまとめいただいたということで,今日はとてもホッとしています。ここまでお導きいただきました加治佐主査,松木副主査をはじめ,委員の先生方や文部科学省の皆様には改めて御礼を申し上げたいと思います。
 感想と,少し今後のことも含めて,少し肩の荷が下りたこともあるので,好きなことを言わせていただこうかなと思って参りました。この会議の報告書の作成に関わらせていただいて,一つうれしかったことと,一つ残念に思うことがあるので,それを言わせていただいて,今後のことを少しお話しさせていただければと思います。
 うれしいことは,私がここ7~8年ぐらい,教職課程の質保証ということに関わってまいりましたこととの関係で,今回の報告書の中に内部質保証が大事である,あるいはインスティテューショナルリサーチというものを進めていく必要があることを書いていただいたことです。既に岡山大学をはじめ,幾つかの大学ではインスティテューショナルリサーチを進めることによって教職課程の充実につなげていらっしゃいます。どういう教員を養成するために,どういうプログラムで,あるいはどのような工夫をして教員養成をやっているのか,ということを,データにもとづき,あるいはアンケートにもとづくような形で可視化していくことは,機能強化にとっての基盤になることだと思いますので,そういった取組を今後,この報告書をきっかけに進めていただけるといいなと思っております。そういった取組は,行く行くは,先ほど牧野委員がおっしゃったような,何をやっているかを可視化していく,エビデンスを示していくことにもつながっていくと思います。また,長期的に考えれば,海外では今,教職課程の質保証は,よりアウトカムベース,つまり,どういう教員を養成するために,どのようなプログラムを立てて,どういう工夫を各大学が行って,卒業させているのか,といったことを問う形が主流になっていて,何の科目を何単位というようなことは少なくなっていますので,将来的にそういった方向に日本の教員養成の質保証が進んでいくような一つの基礎的な取組になっていくのではないか,なっていけばいいなと期待も込めてですが,そう思っております。
 残念なことは,教科教育と教科専門の一体化という提言をこの報告書で打ち出しているのですが,教職課程の再課程認定の方では,それが反対方向に引っ張られるような運用が進んでいることです。この会議で私だけでなく他の委員からもその点について指摘がありましたので,この有識者会議という場の設定に由来する限界だと思うのですが,これから各大学・学部で改革をお進めになる執行部や担当の先生方にとっては,インセンティブがない状況の中で進めなければならない状況となってしまったことが心残りです。
 今後のことですが,私はこの会議の始まった後,国立教育政策研究所に昨年度から設けられた幼児教育研究センターのセンター長も併任することになりました。今回の報告書を踏まえて私自身が取り組めることを考えますと,国立の附属幼稚園との共同研究ということになろうかと思いますので,少し進めていければと考えております。
 最後にもう一つ,これも今後のことなのですが,主に文部科学省の御担当の方々へのお願いになります。恐らく,最も重要な時期はこれからだと思います。この報告書を関係の方々がどう受けとめて,どう実際に改革を進めていくのかが機能強化にとっては大変重要になると思います。これまでいろいろな大学の先生方のお話をお聞きし,質保証についてお尋ねをしてきた者の実感として,大学の執行部の先生ですとか,改革の推進力になっていらっしゃった先生方は,これまでも,在り方懇以来,長らく様々な改革に取り組まれて,本当に御苦労されてきていらっしゃいます。ですので,その方々が真剣に考えて,うちの大学の強みと弱みはこれだから,この解決策で行こうというような提案が出てきたら――出てくると思うのですが――それをできるだけ支援する形の方向性で取り組んでいただければと思います。この報告書には様々な対応策が示されておりますが,以前も申し上げて繰り返しで恐縮ですが,どの大学や学部が取り組んでも解決策につながるというものだけではないと思いますので,その大学・学部にとって,これが解決策につながるという取捨選択をお認めいただいてというか,尊重して,実際の改革のサポートをお願いできればと思っております。
【加治佐主査】  はい,お願いします。
【松木副主査】  私としては,この報告書が出た後,どうやったら,これを効果的に進めていくことができるかが一番気がかりなところでもあります。先ほど松田委員から,「おわりに」ではなくて,「はじめに」を書いているようなつもりだというお話がありましたが,全く同じような気持ちでいます。
 これからやるべきことを考えた場合,私の中では7つほどあります。1点目は,今回の報告書をどうやったら各都道府県の教育委員会に届けることができるのだろうかという点です。国立の教員養成学部は就業前の4年間を養成する機関から,学び続ける教員を支えていく,生涯に向けての研修機関にだんだんシフトしていくと。そうなったときに,都道府県の教育委員会の教員研修と大学院が密接な関係を持ってきます。そのことをどうやったらお伝えできるか。あるいは学部新卒生・院生が採用に当たってのインセンティブを得られるように,どういう工夫をしていったらいいのか。このような声をどうやったら教育委員会に届けることができるかが課題の1つだと思っています。
 2つ目は,教科領域のことです。教職大学院の中に教科領域を取り組んだ形で教職大学院を整備し直すことに関わって,これからが本当に教職大学院の在り方としては重要になってくるのではないかと思っています。教科領域の部分を取り込んだ上で,今までどおりの実践的なところに軸がある教職大学院として維持できるか。そこのことについて真剣に取り組まれなければと思っています。そのためにも,モデルとなるような部分を提案できるような方法を考えていかなければいけないと思っています。
 それに絡んで,教科領域を含んだ教員養成学といったことが今回提案されています。これを本当に実現していくためには,いろいろな学会も含め,あるいは教大協も含めて,教員養成学の在り方について論議をしていくことが非常に重要になってくると感じます。そこへどうやって働きかけていくかも考えなければならないと思っています。日本の教員養成学部を考えてみますと,海外と違って,非常にたくさんの教科専門の先生方を抱えています。それがある意味,非常に特色のある教育学部,あるいは教員養成をできる可能性を秘めている部分でもあるのではないかとも考えています。その財産を生かして,新しい教員養成学を作ることと同時に,日本型の教員養成及び日本の教育を海外に向けて展開をしていかなければいけないのではないかとも思っています。それが3点目です。海外へ向けての展開,その窓口を文科省等がやっていただいて,各教員養成学部が積極的に海外へ目を向けていけるような仕組みを作っていただけたらと思っています。
 4点目は,学部との連携についてです。今まで教職大学院はその独自性を維持するために,教員を学部とは別枠で用意をする形で進めてきました。しかし,振り返って考えれば,学部自身も専門職の養成をしているわけです。この2つがより密接に連携し,強化をしていくためには,今後,専門職大学院等の法的整備についても再度検討していただかなければならないのではないかなと思っています。
 それから5つ目は,附属学校についてです。今回,附属学校不要論が出てきました。その背景には,大学と附属両方ともがやはり本当に真の意味での教員養成をしてこなかったのか,その振り返りが必要だったのではないかと思っています。教員養成は臨床学あるいは実践学ですので,臨床する場あるいは臨床について検討する場がなくて,教員養成が成り立つわけがない。にもかかわらず,不要論が出てきたことは,大学がきちんとやっていなかった,あるいは附属と連携をしていなかった証でもあるような気がしています。今後,附属と大学が一体化した形での教員養成の在り方,附属の中で大学の授業が開かれたり,あるいは附属の先生が大学で授業を担当したりするようなことを含めて,より密接な形での実践学の構築を進めていかなければいけないのではないかというようなことを思っております。
 6つ目は,蛇穴先生,高橋先生からも出てきましたが,Ed.D.の制度設計をきちんとしていくべきではないかということです。各大学が単独でEd.D.の設置を申請することではなくて,国としてEd.D.をどういう形にするのかについての検討を委員会等あるいは検討する会をやはり設けていくべきではないかという気がしております。
 7つ目は,私学の教員養成に関してです。今回,国立の教員養成についてずっと論議してきましたが,再三,先ほども出ていますように私学の教員養成の量的な割合も非常に高まってきています。私学と国立の連携を進めながら,改革を進めていくことが日本全体の教員養成の質の向上に結びついていくと思います。どのようにしたら私学の教員養成と一緒にやっていけるのか,その検討が必要だとも思います。と同時に,今後,教員養成の在り方等を検討していくためには,課程認定の在り方,免許法の在り方等も含めて継続して検討していく必要が出てきているのではないかとも思っています。
 以上,今後に向けて7点ほど,やらなければいけない課題が自分の中では出てきたなと思っております。以上です。
【加治佐主査】  ありがとうございました。それでは私が最後に簡単に申し上げたいと思います。
 本当に1年間,御協力いただきましてありがとうございました。私としては80%ぐらいの満足度かなと思っております。これまでの在り方懇もそうですし,いろいろな答申が出て,いろいろ言われてきたにもかかわらず,なかなか大きな改革ができない。教員養成系の大学・学部の大変革の突破口になることを本当に切に希望をしております。
 これも会議の中で申し上げてきましたが,各教員養成大学・学部は,それなりにちゃんと考えていて,それなりに一生懸命やっているわけです。ただ,なかなかそれが,この時代の変化の中でその変化についてきていないというか,変化に即応するような改革を自ら進んで,なかなかできてこなかったことも実際ですし,かつそういう自覚もあると思いますね。ですから,こういうものが出るのをある意味,待っているという部分もあるのではないかと私は思っています。必ずしも内容的に違和感はそれほど持たれないと思っています。だから,あとはこれをいかに実行するかだと思うのです。各大学がこれをいい意味での踏み台にしていただいて,本当に皆さんがおっしゃるように,教員養成系の大学・学部を改善する,よくするものにつながることをまずは切にお願いしたいと思います。
 この報告書自体,皆さんがおっしゃいますように,国立大学の機能強化をして存在意義を上げるということなわけです。そのために私は皆さんが述べたこと以外では2つのことを述べてみたいと思います。
 1つは,やはり皆さんがおっしゃるように,最後の再編統合のところがどうしても話題になってしまうのですが,やはり再編統合を積極的に考えなければいけない,前向きに考えるべきだと思うのです。単独の大学や学部ではできないことができるようになる可能性が高くなるわけです。国立大学には優秀な人材がいっぱいいます。はっきり言って,かなりおるわけです。間違いありません。いろいろな分野でですね。ところが,そういう人々がなかなか生かされていない面もあると思います。そういう人々が再編統合によって力を結集する部分が出てくると思うのです。例えば教職大学院で学校管理職の養成をすることが強く,この報告書でも言われていますが,その学校管理職養成を担当できるような大学教員が実際どれぐらいいるかというと極めて限られているのですね。だけれども,すべての教職大学院でやらなければいけないことになっています。私は1つのセンターというか,そういう機能を特定大学,大学院に集めて,そこで大きなプログラムを作って,それを各大学でやってみるとか,あるいは,その大学教員の養成自体を,管理職養成ができる人材の養成を実務家教員も含めてやるとか,そういう機能につながっていくと思います。あるいは私は前の大学で,市町村の教育長養成というプログラムを始めましたが,あれははっきり言って単独大学では難しいです。だから,これをいろいろな優秀な人材,あるいはその他の資源を結集してやらないと難しいと思うのです。しかも,これは私立大学では絶対やりません。コストが合わないから。だから,国立大学はコストをかけるべきです。そのためには効率化も含めて機能を集約することが必要なのだと思います。ほかにもICT対応,サイバーセキュリティー対応,AIへの対応とか,いろいろな課題がありますので,そこに人材を結集することが可能になっていくのだということで,再編統合を考えるべきだと思っております。
 それから2つ目は,私は,これは教員養成大学・学部の文化を変えるようなものになるのだということを期待しています。教員養成の文化は,教員養成大学・学部ですから,あるのは当たり前なのですが,蛇穴委員の意見にも象徴されるように,必ずしもそうではないわけです。これがずっと続いてきたということです。教員養成学が提言されました。これを実現するのは,皆さんおっしゃるように,そう簡単ではありません。だけれども,これは是非やらなければいけないということがうたわれました。あるいは非常に実践性の高いカリキュラムあるいは現代的な教育課題を踏まえたカリキュラムを作るとか,何よりも大学教員が実践と理論・研究の両面に軸足を置くとか,そのためにEd.D.を設けるとか,そういうことがうたわれていますので,本当にそれが実現すれば,私は大学の雰囲気というのか,教員の中での文化が変わると期待しています。結果として,これから,学部はおそらく定員は削減されると思いますが,教職大学院に行く者も増えると思いますが,学部の教員就職率は結果としては格段に上がると思います。80%,90%になる可能性は十分にあると思います。ですから,そういう目に見える成果というか,そういうものにもつながることが期待されますので,後の話になりますが,是非実行・実現しなければいけないと思っているところです。
 それでは,どうもありがとうございました。
 では,もう既に何人かの方々からは御意見をいただいているような気もするのですが,ここからは,この報告書を今後,実効あるものにするためにどのような手段を講じたらよいのかをアイデアを,御意見のある方のみで結構ですので,御発言いただけたらと思います。既に言われた方もあるのですが,またそれに加えてということがあればよろしいかなと。それでは,北山さん,どうぞ。
【北山委員】  お願いいたします。既に先ほどの皆様のお話,あるいは松木副主査の今後に向けてというお話も出ておりましたので重複することがあるかもしれませんが,私の言葉で,今後この報告が実効性あるものになることを願ってお話をさせていただきたいと思います。
 大学及び学部の広域的な再編統合,あるいは大学・学部の規模の縮小に伴って見直さなければならないこと,あるいは附属学校の統廃合について,これは大変難しいこととはいえ,現在,中央教育審議会の大学分科会将来構想部会でも検討が進んでいることだと思いますので,当事者あるいは当事者間の努力で,できるのではないかと思います。しかしながら,今回の改革の目玉である教職大学院を中心にした教員養成の機能の充実については,先ほど副主査からも出ておりましたが,関連する法律等との調整が必要になってくるかと思います。
 教職大学院を中心にして教育学部を充実させるためには,教職大学院と学部との教員配置におけるダブルカウントの見直しが必要になってきますし,教職大学院に教科領域を整備して内容を充実させるためには,従来の「研究者教員」と「実務家教員」の比率,あるいは根本的に,そういった区分けの仕方の必然性についての検討が必要になってくるかと思います。既に教員養成大学・大学院には「研究者教員」でありながらも,教育現場や教育行政に関する知見の豊富な人も多くおりますし,「実務家教員」の中にも,著書・論文等の研究業績を持つ人も多くなってまいりました。また今後,ますますそうなっていかなければいけないと思います。
 しかし,こうした制度改革は教職大学院だけでできることではなく,法科大学院をはじめとする他の専門職大学院との整合性もあろうかと思います。現在,中央教育審議会大学分科会大学院部会の専門職大学院ワーキンググループでも検討していただいているところですが,本日のこの報告書を実効性のあるものとするためには,教職大学院に関しての新たな基準について御検討いただきたいと思います。
 加えて重要なことは,専門職学位であるEd.D.の制度設計であります。これについても教員養成大学の教員を養成するという意味で大変大きな役割を持ってくると思います。また,働きながら学ぶ学校教員にとって,より学びやすい環境を整えるために,教員養成大学における従来の連合大学院や共同大学院などの課程博士の制度だけではなくて,論文博士による学位の授与制度等も検討の対象としていただきたいと思います。
 こうしたことを「規制緩和」と言っていいかどうかわかりませんが,いずれにしましても,この改革に関わる周辺の法整備を早急に進めていただく必要があろうかと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【加治佐主査】  具体的にありがとうございました。何かお答えになることは今の段階でありますか。報告書の中にも書いてあることもあるのですが,何か。よろしいですか。希望的なことを何かおっしゃっていただくとか,そういうことでも。どうぞ。
【瀧本高等教育局審議官】  今御指摘があった,この改革を進める上での様々な制度的な改善についてのということでは,そのとおりだと思います。具体事例の1つとして挙げられた教職大学院と学部との教員のカウントの問題ですが,御指摘いただいたとおり,まずは専門職大学院全体の制度のこともありますので,先ほどお示しいただいた専門職大学院ワーキンググループは今日も午前中に開かれていましたが,今日のそこでのテーマは,まさに大学院と学部との間の教員のダブルカウントについての議論で,何かを決めたとか,話をまとめたというわけではまだありませんが,それについても熱心に検討がなされておりましたので,引き続き,そうしたところでの議論が進むことを期待しつつ,我々としてはきちんとまとめていただいたものを着実に実行に移していかなければいけないと思っております。一例についてだけでしたが,お答えさせていただきました。
【加治佐主査】  何かいかがでしょうか。
 今後,文科省におかれては,各大学に対して,当然,本報告書の内容を確実に周知していただかなければいけないと思います。当然のことですが。そして,大学との個別の意見交換も行いながら,進捗状況の確認を行っていただきたいと思います。これは報告書の中にも書かれていることですが,改革に積極的に取り組む大学に対しては,是非財政的な支援をお願いしたいと思います。それがやはりインセンティブになると思いますので,是非よろしくお願いしたいと思います。
 今,法制的な整備の面を含めた具体的な御提言があったわけですが,他にも例えば大学関係者・学部関係者にどういう働きかけをしていくと理解が得やすいのかとか,あるいは外部のステークホルダーである自治体関係者や教育委員会関係者,世論などに対して,どのように訴えかけていくのが効果的か。そのような観点もあればおっしゃっていただけたらありがたいかなと思うのですが,いかがでしょうか。どうぞ。
【牧野委員】  先ほど松木副主査から県の教育委員会に対しての働きかけのお話がありましたが,ここは広く,首長に対してもそのような働きかけをしていくことが大事かなと。それぞれ立地しております県でありますとか,あるいは県の市長会や町村会,いろいろとやり方はあるかと思いますが,教育委員会にはもちろん教職員の受入先ということで,よく御理解をいただくことが大事だと思いますが,このような改革の応援団になってもらうためには,首長の皆様方の御理解が非常に大事かなと思っています。一昨年度の教職員の削減問題のときに,市長会がかなり頑張って,とにかく教職員の削減については,そのようなやり方ではよろしくないという主張をしたときに,私の聞いた話では,なぜ市長会がそんなに頑張るのだと言われたようですが,それは明らかで,文科省でもしそこで土俵を割ってしまったら,そのつけは全部,地方に来ることがわかっていたからです。だからこそ市長会が頑張った経緯があったというように,やはりいろいろな皆様方が,先ほど主査からも話がありましたようにステークホルダーとして関係してくることを考えますと,そういった皆様方の御理解を得ていくのは非常に大事かなと。そのように思うところであります。
【加治佐主査】  では,高橋委員,どうぞ。
【高橋委員】  実効性のあるものとしていくために,最も大事なことは,大学自らが改善・改革を続けていくことだと思います。教育委員会や,先ほどおっしゃいました首長さんとの連携,協力,支援をお願いすることについても,大学自らが自覚的に動かないといけないことを前提として,継続して常に現代的な教育課題に取り組む中で信頼関係が形成していけると思います。
 それを前提にした上で是非お願いしたいのは,教員の働き方改革もございますが,教員研修をどう考えるかです。教職大学院での現職派遣の数が少なくなっています。教育現場の課題が多くて,現職派遣をする定数に余裕がなく,数が少なくなっていると思いますが,教育現場の課題については,現職研修で教職大学院に派遣していただいて,具体的な地域の教育課題を解決する方向で考えていただけないかと思います。そして学部や学部の教員養成のもいい影響を与えていただきたい,教職大学院の機能を向上させるためにも,是非,現職派遣を継続させていただきたいし,もっと豊富に派遣をしていただきたいというお願いです。
 また先ほど法的なことも検討していただくということでしたが,課程認定とか,設置審査でも,このような教員養成教育の改革について,審査委員の先生方にもご理解をいただいて,教員審査にも生かしていただけたら,なお変革が進むかなと思います。以上です。
【加治佐主査】  関根委員,どうぞ。
【関根委員】  高橋委員は教職大学院への派遣をより多くと言われたのですが,私は現場でやっていまして,なかなか難しいのです。教員定数の問題があって,派遣したいのですが,なかなか派遣するだけの県としての県単定数がとれないということで,この辺は文科省で,研修等定数の拡大をお願いできたらありがたいと思います。
 それと直接関わるわけではないのですが,教育委員会に対しての働きかけの問題で言えば,教育長には権限が結構ありますので,教育長に具体的に提案されたらいかがかと思います。埼玉県では大学の助教の方を指導主事で任期付きで採用しました。人事委員会を説得するのはなかなか大変でしたが,埼玉県の場合は,総合教育センターの指導主事として研修担当で入れました。埼玉の場合は東京大学CoREFと協調学習を共同研究してきていましたので,その関係の専門家を指導主事として入れて,研修に中心的にやっていただきました。今年からはやれていないのですが,3年間やってきましたので,その辺の工夫が各教育委員会でできると思うのです。ただ,教育長が本気でやるかどうかにかかっていますので,大学で具体的に教育長に直談判して提案されれば,かなり受け入れられると思います。,現在制度の中でも,そういう形でできますので,教員の交流というのですか,現職教員を大学に使っていただくこともあるのですが,大学の先生をセンターなどの指導主事で期間限定で来ていただいて,そこで研修内容を変えていっていただくことは可能だと思います。今回の報告書の改革の提案が教育委員会と連携をとってできていくのではないかと思いますので,具体的に動いていただけると道が開けるのではないかと思います。
【加治佐主査】  派遣については,もちろんたくさん送ってくれるのが一番いいのですが,働きながらというか,学校現場にいながら学ぶ仕組みですね。そういう提言もありますので,ラーニングポイント制度とか,そういうことにも教育委員会側も理解を示していただいて,そういう方がより短期のプログラムを受けやすいようないろいろな支援をしていただくとか,そういうことも重要かなと思います。
 あとはいかがでしょうか。よろしいですか。あとは文部科学省に頑張ってもらうことになるのですが。
 私からは,皆さんがもうほとんどおっしゃっていますので特に言うことはないのですが,ただ,大学経営を経験した者として一言だけ申し上げたいのは,この改革は,特に再編統合はそうだと思うのですが,学長を含めて,そういう経験が皆さんにはありませんので,自ずと抵抗があると思うのです。これはある意味,致し方ないのですが。そこで重要なことは,改革がどういう果実をもたらすのかが外から示されるのか,あるいはこのこと自体が大学の経営陣の責任であるような気もするのですが,そういうものを示さないといけないと思います。どういう成果が出てくるのか,自分たちにそれがどういう意味があるのかを具体的に示すことがまず不可欠だと思います。そうでないと,結局,マイナスだけに考えてしまいますので。
 そういうときに最低限やらなければいけないのは,人員削減は致し方ないと思います。少子化でニーズも少なくなっていきますから,やむを得ない。ただ,現職の教員や事務職員の雇用とか,あるいは待遇の保障はちゃんとやらなければいけないのだと思います。国立大学法人の教職員ですから,守られてはいるわけです。それは大丈夫なのですが,どうしてもそこら辺に必ず来ますので,そうではないのだと。ちゃんとそこは保障された形でいくのだからと。それで,その保障されていることの意味をより高めるためにも次の段階に踏み出しましょうとかといったことがされないと,なかなか気持ちが前向きになっていかないのかなという気はします。だから,そこらがどういう形で言った方がいいのかわかりませんが,これは文科省が言うことではないと思いますが,ただ,大学経営陣としては,そういうところに配慮しないと,なかなか……。経験がないだけに不安が高いので必要かなということは,大学経営を経験した者としては思うところです。今のことは,ある意味,余計なことかもしれないですが,そう思ったりもします。
 それではよろしいですか。
 それでは予定の進行時間よりも早くなっていますが,最後に文部科学省から一言,いただけたらと思います。今日は瀧本審議官に出席いただいていますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【瀧本高等教育局審議官】  それでは文科省から代表しまして一言,ご挨拶を申し上げたいと思います。
 昨年9月以来の1年間で11回にわたり,この会議を重ねてきていただきました。国立の教員養成大学の学部,教職大学院をはじめとする大学院,更には附属学校という非常に幅の広いテーマについて本当に熱心に御議論をいただいてきました。ただいまの各委員の方々からの御発言でも,魂を込めて発言をしてきたとか,本当にこの議論を重ねてきていただいたことにまずもって感謝を申し上げたいと思います。
 それぞれ大学の先生のお立場であったり,附属学校の関係であったり,テーマによって,様々な御自身のお立場上,発言するに当たって,いろいろ考えなければいけない点もあったかと思いますが,一大学やそのお立場だけにとらわれず,大局的な観点から前向きな御議論・御意見をいただけたものと思っております。ここにいらっしゃる委員の先生方はもとより,ヒアリングの際に様々な取組について発表していただいた方々も含めて,この報告書の中での議論に非常に広がりを持たせていただいて,最終的に非常に中身が充実したものに取りまとめていただけたと思っております。今後,私ども文科省として施策を進めていく上での取組の指針となる報告書でございます。これまでの皆様の御尽力に感謝を申し上げたいと思います。
 そういうところが公式な御挨拶でございますが,本当に学校現場は,小中・高等学校を含めて,先生方は一生懸命頑張っておられて,本当に疲弊している実態があります。大学の,とりわけ期待を負わされている国立大学の教員養成学部でも,私立も公立もそうですが,小学校,中学校も大部分ですが,免許を取って,4月からほとんどが担任として任されるわけですが,大学の4年間でどこまで学校現場で役立つ実践的な内容を身につけてこられたか。それは学生側の責任もあるでしょうが,もっともっと,この報告書で言うところの機能強化が期待されているところだと思います。今回,この報告書を取りまとめていただいて,もちろん各国立大学については,私どもとしては順次,意見交換を年内にはさせていただこうと思っておりますし,御発言もありました教育委員会はもとより,今は教育長・教育委員が参加した総合教育会議が首長さんとの間でございますので,それぞれの地域における教員養成は非常に大きなテーマだろうと思いますから,首長さんの方々にも力強い応援団になっていただくことも含めて,御理解を得ていただけるように我々としても努力をしていかなければいけないだろうと思っております。
 牧野委員からもありましたが,絵に描いた餅にならないように,それから加治佐先生からもありましたが,これが大きな突破口になるように,まさにこの報告を受けた文科省として,これからしっかりと制度面,予算面を含めて,現実,もう32年,33年あたりからは教員の需要が急激に減少していくのは目に見えているわけですので,こうした現実を踏まえながら,しっかりと各大学とも意見交換を重ねていきたいと思います。最終的には機能強化された大学で養成された先生方がよりよい教育をしていただくこと,すなわち我々の未来を支えてくれる子どもたちのために,よりよい教育をしていくためのところにつながってくると思いますので,報告書を受けた改善について文部科学省としてもしっかりと努めていきたいと思います。また報告書は,今日,まとめていただきましたが,今後,文科省の様々な施策を進めていく中でも,今回,委員をお務めいただいた先生方から,またお気づきの点,そのときそのときの折々に,また御指導・御指摘をいただけたらありがたいと思っております。
 改めまして,昨年来,本当にいい報告書を取りまとめていただいた委員の先生方に心から感謝を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
【加治佐主査】  どうも力強いお言葉をありがとうございました。
 最後になりますので,私からもごく簡単に御挨拶を申し上げたいと思います。
 本当に1年間,ありがとうございました。いろいろな立場の方から,学識や御経験にもとづいた本当にいい意見をいただけたと思います。それを教員養成企画室で本当にうまい具合にまとめていただいたと思っております。今後は,今,皆さんがおっしゃいましたように,あるいは今の瀧本審議官のお話にもありましたように,大学と国立大学行政を担当する文部科学省が一体となって,国立の教員養成大学・学部の教員養成研修の機能を再興するというか,あるいは機能強化すると。そういうことにつながることを祈念いたしまして,私のお礼の言葉としたいと思います。本当にどうもありがとうございました。
 それではよろしいですか。それでは少し早いのですが,本日の議事及び本有識者会議の議論を全て終了いたします。皆様の御協力のもと,非常に有益な意見交換ができた会議だったと思います。1年間にわたり,本当にありがとうございました。これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――


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