国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議(第10回) 議事録

1.日時

平成29年8月1日(火曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

一橋講堂会議室 中会議場

(東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター2階)

3.議題

  1. 報告書案の検討
  2. その他

4.出席者

委員

(主査)加治佐 哲也 委員
(副主査)松木 健一  委員
(委員) 北山 敦康、蛇穴 治夫、関根 郁夫、高橋 香代、田中 一晃、古沢 由紀子、牧野 光朗、松田 恵示、水落 芳明、山崎 博敏、渡邊 恵子の各委員

文部科学省

小松 文部科学審議官、義本 高等教育局長、瀧本 高等教育局審議官、三浦 高等教育局大学振興課長、堀野 高等教育局高等教育企画課高等教育政策室長、石橋 高等教育局国立大学法人支援課企画官、長谷 初等中等教育局教職員課教員免許企画室長、柳澤 高等教育局大学振興課教員養成企画室長

5.議事録



【加治佐主査】  皆様,おはようございます。定刻となりましたので,ただいまより,第10回,国立教員養成大学・学部,大学院,附属学校の改革に関する有識者会議を開催いたします。
 前回までの御議論を踏まえまして,事務局と相談しながら報告書(案)を作成いたしました。本日はこれについて御議論いただきます。
 これまでの会議で議論はかなり煮詰まってきていると思います。また,この有識者会議の委員の任期は8月31日までとなっております。そこで,8月の下旬に次回を予定しておりますが,そこで議論は終了したいと考えております。
 初めに,事務局から人事異動の紹介をお願いいたします。
【柳澤教員養成企画室長】  7月18日付で大学振興課の課長の異動がありましたので紹介させていただきます。三浦和幸大学振興課長です。
【三浦大学振興課長】  三浦でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【柳澤教員養成企画室長】  以上です。
【加治佐主査】  よろしくお願いいたします。
 それでは,事務局から本日の資料の確認等をお願いいたします。
【柳澤教員養成企画室長】  資料についてですが,資料1が報告書(案)でございます。前回までの資料1における議論のまとめ(案)というものと,資料2,組織・体制についてのこれまでの意見や状況の整理というものを1つの資料にまとめて報告書(案)としたものが今回のものでございます。前回からの変更点は赤字にしてございますけれども,主なポイントのみ前の方から順に説明をさせていただきます。
 まず,資料1の1ページですが,タイトルを「報告書」と直し,かつ副題として「教員需要の減少期における教員養成・研修機能の強化」というサブタイトル案を付けさせていただきました。その下に「はじめに」ということで文章を入れました。
 次に2ページでございますが,従来の資料1の中では,全体のポイント的なものをこの1ページに入れておりましたけれども,その後に出てまいりますそれぞれの章ごとの枠内のポイントの文言と重複をいたしますので,それ自体は削除いたしまして,かわりに本報告書の全体像を簡潔にまとめた概要,1枚紙を作成して入れ込んでおります。
 3ページ目からは,前回いただきました御意見をなるべく多く取り入れた文言の追加修正,主語,述語関係の曖昧であった部分の修正,文言の統一,表現ぶりの適正化等の観点からの修正を行っております。
 それから,5ページからの枠内の「ポイント」と書いてある部分,ここにつきましては,後の方にも出てまいります部分も含めて,枠内はかなり赤字が増えておりますけれども,これは,その後に出てまいります各節ごとのポイントが最低1個は拾えるようにということで追加をいたしました。あるいはそれに伴い修文をしたということで,赤字がかなり増えておりますけれども,内容はその後に出てくることの要約版でございます。
 そのような観点から,ページが飛びますが, 28ページの下の方に,「(8)組織・体制についての対応案」というのがございます。この部分以下が前回までの資料2の内容の改訂版でございます。とりわけ前回の会議では,連携・統合に関しまして,より具体的に書くべきという御意見をいただきましたので,主査と御相談をいたしまして,選択肢となる例示はなるべく多く示すという方針で,考えられる方策の記述や関連する中教審での審議状況への言及などを追加させていただいております。
 それから,附属学校関係ですが,最後の29ページから30ページにかけての部分ですけれども,前回までの資料の中では,附属学校の機能強化と効率化というこの節の中で,前回までは「必要に応じて」という言葉を入れておりました。しかしながら,これは必要がないから改革・検討しなくて良いという誤解につながることを避けるということから,ここは主査と御相談の上,削除をさせていただいております。それ以外については,附属学校については,この赤字の部分以外は変更ございません。
 なお,最後の部分で,附属学校及び大学全体に係る部分といたしまして,30ページの最後の部分ですが,大学及び附属学校への共通の内容としまして,平成33年度までに一定の結論をまとめるという意味につきまして,これも前回いただいた御意見を踏まえまして,単に33年度までに考えれば良いという誤解につながらないよう,「対応可能なことは即座に開始するとともに,一定の時間を要する中期的な対応であっても,遅くとも33年度末までには結論をまとめるべき」という趣旨であるということを明示させていただきました。
 以上が資料1の大きな変更点でございます。
 そのほか,資料2は第9回会議の概要,それから,資料3は今後のスケジュール案でございます。
 なお,資料番号を付しておりませんけれども,机上配付資料といたしまして,松田委員より,前回の会議でも話題になりました子供の貧困関係の取組に関する資料をお出しいただいております。後ほど松田委員の御発言の際に御参照いただけたらと考えております。
【加治佐主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,私の方から一言補足をさせていただきます。まず,委員の皆様からは,前回の会議あるいはその後に多くの御意見をいただきました。事務局とともに1つ1つ精査いたしました。そして,なるべく多く取り入れるようにいたしましたけれども,全体の整合性やこれまでの議論の方向性などを考慮した結果,取り入れなかった意見もありますことを御理解いただけたらと思います。
 内容についてですが,特に28ページからの「(8)組織・体制についての対応策」については,現在の案は,あくまでも例示として考えられることを幅広く掲げており,各大学にどれかの方法を押し付けるというものではありません。また,この会議でも何度も言われておりますが,地域によって状況が異なることも考慮しなければなりません。最終的にどのような方法をとるかは,各大学が考えるべきことです。大事なことは,29ページの3つ目の丸の1行目にありますように,「国民の期待に応える教員養成機能の強化と効率化を着実に実現すること」,これが目的であるということです。ですから,この実現のための方策は,当然ながらこの例示したもの以外にもあると思います。
 一方で,今後の継続的な教員需要の減少が明らかである中,国立教員養成大学・学部をめぐる状況は待ったなしであることも事実です。大学にとって,方策の面及び時間的な面で自らの検討の余地がある一方で,まさに自己改革能力が問われているということのバランスを考慮した記述とさせていただいておりますことを補足させていただきたいと思います。
 それから,大きくというか,重要な点で修正があったところを私が簡単に触れておきます。1つは,今も「国民の期待に応える教員養成機能の強化と効率化を着実に実現すること」が目的だと言いましたけれども, 2ページの図示しております概要の一番下に「機能強化のための方策」という欄があると思いますが,その一番上のところに,「十分な予算,優秀かつ多様な人材,一定の規模と効率性の確保による機能強化のため」と表現して,組織・体制の改変の目的を明示したということです。
 それから,これまで国立大学は,教職大学院を活用して現職教員の研修機能に重点を移すと,そういう表現を使っていたと思いますが,教員養成もこれまでと同様に重要ですので,その意味が失われないようにするということも含めて,表現を「教職大学院を活用して,教員の養成のみならず現職教員の教育・研修の機能も強化」と,こういう表現に改めたということです。
 それから,附属学校のところで,教員研修学校という表現を使っておりましたけれども,まだなじんでいる言葉ではありませんので,教員研修にも力を尽くすといいますか,そういうことにも貢献する附属学校になると,そういう表現に変えたということです。
 それから,専門職大学,こちらの方については前回たくさんの意見があったのですが,これは1つの取り得る制度としてのツールであるということです。特に教職大学院と学部との一貫性,一体性というのがこの報告書の中では言われていますので,そういうことに活用できるのではないかと,そういう選択肢として入れたと,そういった趣旨をはっきりさせたということです。
 それでは,私の発言はこれぐらいにいたしまして,早速意見交換に入ってまいりたいと思います。今回は特に時間を分けずに,この報告書(案)のどの点についてからでも結構ですので御発言いただきたいと思います。最後のまとめも近付いておりますので,これまでと同様ですが,御発言に当たっては,何ページの何行目についてと具体的におっしゃっていただき,各委員が一緒に参照し,議論を深められるようにお願いいたします。どなたからでも結構です。御発言のある方は名立てをお立てください。
 では,まずは松木先生,それから関根委員,それから蛇穴委員,そして北山委員ですね。左側へいきまして渡邊委員と,とりあえずはこの順番で参りたいと思います。それでは,松木委員からよろしくお願いします。
【松木副主査】  どのページということではないのですが,この報告書もほとんど完成に近付いているということを踏まえて考えてみますと,もう一度この報告書の意義,あるいはこれからの効果をどうしていったら良いのかということを考えなければいけないなと思っています。そう思ったときに,まずもって国立大学の教育学部の再編・統合問題みたいなことが,どうしても話題にせざるを得ないということになります。そうしますと,否が応でも「在り方懇」との比較でこの話が論じられていくのではないかなというふうに思います。「在り方懇」を超える報告書であってほしいなというふうに思うわけです。そのためには,「在り方懇」のつまづきの部分を乗り越えられる工夫,あるいは「在り方懇」とは異なる教員養成をめぐる状況が今生まれているということも含めた報告書でありたいなと思います。そのためには,次の2点の課題を解決していくということが重要ではないかなというふうに思います。
 1点目は,教員養成の量の問題です。「在り方懇」当時は,戦後の水膨れした教員養成の整理,特に団塊の世代の子供たちが義務教育学校を修了した時点で,そこをどうやって縮小していくかということが問題の中心だったように思います。これについては,一部の大手の単科大学を除き,ほとんど新課程は廃止し,けりがついてきているのではないかなと思います。しかし,事態はその当時よりももっと深刻で,永続的に続く少子化社会にどうやって対応していったら良いのかというような課題が,より厳しく突き付けられているかなと思います。問題は,それをもっと難しくしているのは,少子化が都市一極集中による地域,あるいは地方の荒廃に結び付いているということではないかと思います。御存じのように,「在り方懇」がなかなか進まなかったのは,地方の抵抗が大きかった。つまり地方の創生ということと教育は切り離しては考えられなかったからです。つまり,「在り方懇」当時よりも少子化が一層厳しくなって,統廃合を含めた検討が必要になってきている。その一方で,地方の衰退も一層激しくなっていて,地方の創生ということを考えると,教員養成を手放すことへの抵抗というのは,「在り方懇」当時よりも一層厳しくなっているというふうに予想をすることができます。これを乗り越えていくためには,大学間の統廃合,つまり大学間の横のつながりでの機能の効率化ということだけではなくて,ほかにも幾つかある機能効率化の手立てについても示していけたら良いなと思っているということです。
 2点目は,教員養成の質の問題です。「在り方懇」当時よりも現代社会は,社会や産業構造の転換が非常に早まっています。グローバル化やICT化の進展は驚くばかりですが,この知識基盤社会に生きる子供たちに新しい学力を培う,それを可能とする教員養成の確立は,何にも増して進めなければいけない課題ではないかなとも思います。世界標準化してきているような教員養成の高度化を実現しなければいけないという課題も大きい。幸い教職大学院が全国にできて,24年の中教審答申で「学び続ける教員像」ということが打ち出され,また,同答申や今回の報告の中にも,先ほど一部訂正がありましたが,教員養成が就業前の4年も含めて教員の生涯にわたる職能成長を支える形の方向に方に大きく膨らんできている。そのことが望まれているということを踏まえますと,教師の資質能力を高めるためのシステム作りというのが,機能強化,機能効率化と同じように今求められていることではないかと思います。修士課程とは異なる教職大学院の質を担保するために,学部の教員養成と区別して,ある意味2つの教員養成組織が現在各大学の中に存在しているように思います。教師の生涯にわたる職能成長を支える方向で組織作りを進めていこうとする今日,この2つの組織,つまり教育学部と教職大学院,これがより機能的に統合したような形で高度化を実現していくという意味での効率化,そういったことも重要になってくると思います。また,同時に臨床的あるいは実践的な教員養成への転換ということを進めていかなければいけないということを考えますと,すぐれた附属学校の教員を育成して,附属学校の教員が大学教員,大学院教員を兼務できるような,一層機能統合を進めていくことによる機能的な効率化。つまり,その水平方向だけではなくて,大学の中における垂直方向での機能の効率化ということも非常に重要ではないかなと思っています。
 今回の報告が「在り方懇」の二の舞になってしまうわけにはいかないように思います。「在り方懇」を超える方向として,あるいは具体的にどの大学もすぐに手を出せることも含めて,是非ともその点についても考えていかなければいけないのではないかなと思っています。
【加治佐主査】  分かりました。それでは,関根委員,お願いします。
【関根委員】  私は,何ページだったかな,今の松木先生のお話に聞き入ってしまったものですから。21ページに「新たな役割」というのが入っているのですが,4番目に「学校現場の質を向上させる役割」と書いてあるので,ここに入るかもしれないのですが,私は3月まで現場で県の教育委員会を束ねていまして,大きな課題として,良いものの共有がなかなか進まないのです。例えば,教材にしても,指導法にしても,良いものがそこかしこにあるのですけれども,意外とそれが共有されない。それを何とかしたいというので動いてきたのですが,できれば教職大学院が学校教育の知の拠点として,学校教育の,子供たちの学力という広い意味の学力を向上させることが最終的な目標なので,教員養成の目標もそこにあるので,教職大学院が学校教育全体の知の拠点として良いものを集めたり流通させたりするその拠点になれないのかと思います。新しい役割として,日本の教育全体の質を上げていくということが教員養成大学には責任があると思うので,新たにそういうところを書き込めないかと思います。
 具体的に言うと,良いものを,各地域にあるものを教職大学院で集めて,その地域の方に,地域への新たな役割と,この地域への貢献等に関わると思うのですが,地域の方に流通させていく仕組みを各教職大学院で工夫していっていただけないかと思います。具体的に方向性をここで打ち出せたらありがたい。小中高特だけですと専門的ではありません。大学や大学院で専門の方々から理論的にもこれが良いよというものをバックボーンをいただきながら,学校現場の質を上げていくため,「新たな役割」の中に方向性だけでも書き込んでいただけたらありがたいと思っております。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 それでは,蛇穴委員,お願いします。
【蛇穴委員】  先ほど松木先生のおっしゃられたことの大半は,教員養成大学・学部に向けられた言葉だと受けとめておりまして,私もその責任を負う者として,この実現に向けて少し動かなければいけないと感じているところです。
 そのことと関連しまして,今,国大協自身の改革という中で教員養成に関するワーキンググループというものも立ち上がっております。この有識者会議での議論の中身というものは,そちらの方でも1つ1つ吟味されるということは間違いございませんので,国立大学としてどうしていくのかということが検討されていく中で,それは反映させていかなければいけないのだろうと思います。
 まずそれが1点です。次は,具体的な話でございます。2ページ目の概要を作っていただきまして,ざっと見て感じたことなのですが,矢印の次に「教員養成機能の強化」ということが書かれておりまして,これまでの議論がそこにまとめられております。1ページの概要の中で,何を入れてどれを省略するのかということは非常に難しい選択を迫られると思います。ここでは,PDCAサイクルのこと,協議会のこと,それから教職大学院と現職教員の教育・研修のことが書かれておりますが,やはりこの中では,教員養成をしている学部の教育そのものについても少し書く必要があるのではないのかと思いました。
 具体的に申し上げますと,14ページの「課題に対する対応策」というところで,今後の改革のために必要な事項がまとめられております。これを少し見ていきますと,例えば1つ目の黒丸はPDCAサイクルのことですので,それはもう既に使われています。このように既に使われているものを除いて,残った事項を見ていくと,4つ目の黒丸に「教員志望の高い学生等を受け入れ,教員就職率を高めるとともに,卒業生の活躍状況の分析等を行うこと」ということが書かれています。これも大事な点だと思います。それから,抜けているなと感じたのが,さらにその5つ下の「学部は,教科専門と教科教育を一体化させ」という部分です。この2つの部分が概要にも書かれていた方が良いのではないかと思いました。ここをまとめると,受け入れる学生のイメージとすれば教員志望の高い学生ということですし,受け入れた学生をどのように教育するのかという観点が今の黒丸に書いてありますので,例えば,この黒丸の文章を使えば,「実践探究の場と学問探究の場の両方に軸足を置く大学教員による体系的教育」というのが行う教育でしょうし,出口で言えば,教員就職率を高めることだということになりますので,入口と中身の教育と出口の就職率という観点から,短い文章をその概要の中に入れていただければ,教員養成の学部教育ということについてのまとめになるのではないかと感じました。
 それから,あと2点ほどあります。まず,16ページの真ん中に「学部・教職大学院・附属学校間の連携強化」とあります。内容そのものは,全くこのとおりだと思います。特に,この「三者の連携強化」ということは附属学校にとっても非常に意味があって,附属学校が教員養成の教育と研究の要でもあるということがはっきりします。つまり,学部と教職大学院をつなぐ場所に附属学校を位置付けますと教職大学院での臨床的研究の成果が,附属学校を介して学部の教育に反映されます。それだけでなく,,附属学校は公立学校ともつながるわけですから,研究成果は公立学校にも共有されます。したがって,この三者の連携強化ということは,外部の公立学校に対する貢献という観点からも非常に大事なことで,中身としては非常に良いことだと思います。ただ,主語が「国立教員養成大学・学部は」となっておりまして,その「専任教員を」「可能な限り兼務させること」という文章になっています。なかなか今の制度の中では難しい問題がこの兼務ということにはあると思いますので,この点については,制度のことも踏まえて書き換える余地があるのではないかと考えます。
 それから,24ページですが,真ん中の「学部等との一貫性ある教育の促進」のところの1行目です。1行目の最後の方の括弧書きの手前に「特例措置」という言葉がありますが,この「特例措置」というのは,専門職大学院設置基準の附則で定められているものです。このため,「学部等の専任教員が」という主語で始まるのは少し違和感が出てくると感じましたので,そこの部分をむしろ削って,「教職大学院の必置専任教員がその3分の1を超えない範囲で学部等の教員を兼務することを認める特例措置」といった文言にしないと,設置基準と齟齬が生じた文章になってしまう懸念がありますので,そこは少し変えた方が良いのではないかと思いました。
 この他に,7点ほど細かいことがありますが,これはメールで済むものですので,後で事務局に報告したいと思います。
【加治佐主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,北山委員,お願いします。
【北山委員】  お願いします。報告書(案)の全体を読ませていただきまして,これまでの議論が具体的に反映された案になっていると思いました。主査,副主査をはじめ文案作成に携わってくださいました皆様に感謝申し上げます。
 1点だけ,2ページの「報告書(案)」の概要の記述について意見を述べさせてください。
 下の方にあります「機能強化のための方策」の2つ目のドットの「近隣の国公私立大学と連携した一部教科の教員養成機能の特定大学への集約」です。これは28ページから始まる「組織・体制についての対応策」に「効率化」の手立てとして述べられていることとも関わっています。
 私は,基本的に教員養成機関の規模の縮小,あるいは必要に応じた統廃合に反対する立場ではありませんが,安易な効率化が教員養成の質の向上に悪影響を及ぼすことへの懸念を持っています。これからの教員養成においては,各教科の学習とともに教科横断的な視点で学習を成り立たせていくことが課題になっています。そのため,各教科等における学習の充実はもとより,教科等間のつながりを捉えた学習を進める観点から,とりわけ小学校教員養成においては,各教科相互の関連付けや横断を図る手立てや体制を整える必要があります。教育課程全体と各教科等の内容を往還させる「カリキュラム・マネジメント」を支えることが,国立の教員養成大学・学部の重要な課題になっているところであります。したがって,1つの養成機関において,教科のフル装備をなくすのは望ましくないというのが私の意見です。
 また,ここでは,教育学部同士や教育学部と教育単科大学との統合が話題になっていますが,総合大学における教育学部とその他の学部との連携が検討されていないのは,「効率化」の観点からも不十分ではないかという気がしています。御存じのように,国立の総合大学では,教員免許の開放制に基づいて,教育学部以外でも中学校と高等学校の教員養成が行われています。それらの免許教科は,主に国語,数学,英語,理科,社会科です。それに対して,教育学部でしか取得できない免許教科は,音楽,美術,体育,技術・家庭科です。そして,先ほど申し上げましたように,これらをフル装備しているのが国立の教員養成大学の特色であり,強みになっているわけです。もし,質の低下を伴わずに効率化を成し遂げようとするのであれば,教育学部にしかない教科を距離の離れた大学に分散させるのではなく,総合大学の中での全学教職教育の充実として,国語,数学,英語,理科,社会科の免許教科に関して,他学部の人的資源を活用することこそ「効率化」への対応策なのではないかと思っています。したがって,私は,この「機能強化のための方策」の2つ目のドットの部分を次のように修正してはいかがかという提案をさせていただきます。
 申し上げます。「総合大学の教育学部においては,全学教職の核となることを視野に入れて,学部規模の見直しと全学的な教員養成の質の向上を図ること」。ちょうど平成24年8月の中央教育審議会の答申,「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」によって,全国の総合大学で「教職センター」等の全学的な体制を整備して,教員養成カリキュラムの改善に取組んでいるときでもありますので,総合大学の有する人的資源の活用,そして教育学部に蓄積された教員養成機能の全学的な活用という観点からも極めて有効なのではないかと思います。
 よろしくお願いいたします。
【加治佐主査】  分かりました。ありがとうございます。
 それでは,左側に移ってまいりますが,まず渡邊委員,そして牧野委員,それから松田委員,それから水落委員,そして高橋委員と,田中委員ですね,その順でお願いします。
【渡邊委員】  全部で5つ申し上げたいことがありまして,1つだけ全体に関わることで,あとの4つは細かい書きぶりのことになります。
 1つは,先ほど松木先生から在り方懇のお話が出ましたけれども,在り方懇と比較して考えますと,この有識者会議が始まるときに気になっていたのが,統廃合の話が出るのか出ないのかということでした。出るとなると,受けとめる大学側は,在り方懇のときと同じように,機能強化のための改善の提案もいろいろ書いてあるのだけれども,統廃合のところだけに人的資源やエネルギーを集中してしまって,結果,統合がうまくいかなかった場合はそこで力尽きてしまい,機能強化のための課題や解決策というようなものに取組む余力がなくなってしまうのではないか,と懸念します。そのようなことにこの報告書がなってしまうと,せっかく組織以外のところにも議論を費やしてきたのに,もったいないことになってしまわないかというのが懸念していることです。
 具体的には,その懸念を持ってこの報告書の全体像を拝見しますと,まず2ページの「「報告書(案)」の概要」のところですけれども,大きく4本の柱が立っていますが,2点目が「教員養成機能の強化」,4点目が「機能強化のための方策」となっていると,教員養成機能の強化のための方策は4点目に書かれていることだけのように読めなくはない。2点目も教員養成機能の強化のための方策が列挙されていて,その中でも効率性の確保による機能強化という点に特化すると4点目の方策が考えられるということではないかと思いますので,少しこの「「報告書(案)」の概要」の構造は見直していただけないかと思います。
 それと,関連して,先ほど統廃合に関する29ページのところの選択肢は,現段階では選択肢となる例示であるという御説明がありました。それと同様に,「3.課題に対する対応案」の(1)から(7)に書かれている内容も,これまでの議論としては,この会議としてお示しする具体的な提案であって,これ以外にも各大学が自分たちの課題や現状を踏まえてとり得る対応策はあるし,大学によっては,ここに書かれているものをそのまま取り入れてもうまくいかない場合もあるという理解でよろしかったと思っています。その趣旨を表しているのが,「はじめに」の最後の白丸の「本報告書が求める趣旨を汲み取り,必ずしも明示的に言及していない対応策も含めて多様な可能性を検討し」という表現だと思いますが,少し分かりにくいと思いますので,例えばですけれども,修正案としては,「ここに示した具体的な対応策は,全ての大学にとって解決策になるものではなく,ほかにも当該大学にとってはより良い解決策があり得るので,自分の大学の現状や課題を把握した上で多様な可能性を検討し」というように変えていただく方が良いのかなと思います。また,この報告書は,教員養成・研修機能の強化ということに重点があるのだということを,「はじめに」のところでもメッセージとして入れていただけると分かりやすくなるのではないかと思います。
 2つ目です。7ページの3段落目で,有識者会議アンケートの内容として,「カリキュラムと学校現場で求められる資質能力とのギャップ」ということが書いてあります。これは,きょうの机上配付資料の7番の付箋の7ページの(11)にある,学部において学んだ内容は,実際に学校で勤務する上でどの程度生かされていますかという,教員経験のある学生に尋ねた回答をベースに作られており,そのプラス評価のものとマイナス評価のものとが列挙されています。ただ,ここにマイナスだというふうに書かれているものより以上にマイナスの数値が高いものがありますので,ここにどの項目を取り上げるのかというのは,もう一度事務局と主査の方で御相談いただければありがたいと思います。
 3点目です。11ページの「大学のガバナンス不足」のところの最初の丸ですけれども,2行目に「附属学校は」というところで,「教育実習生の受け入れ先としての機能を十分に果たしていない」という文言があります。これまでの会議でも附属学校の課題として様々な資料が出てきましたけれども,「教育実習生の受け入れ先としての機能を十分果たしていない」という内容が出てきた記憶がありません。私の記憶違いでしたら申し訳ないですけれども,そういうことが本当に言えるのかどうかというところを改めて確認させていただければと思いました。
 4点目です。16ページの一番下のところの「早急に対応すべきこと」で,「教員志望の高い学生の受け入れ」のところです。ここは,「将来教員になる可能性が高い学生や,教職への熱意や適性が高いと認められる学生」というところにアンダーラインが引いてありまして,「あるいは」で「教育活動を通じて地方創生を担う意欲の高い学生等」ということが書いてあるんですけれども,これの意味が,教員としてなのか,教員ではなくてもということなのかなど,少しはっきりしないと思います。関連して,一部の単科の教員養成系大学で,チーム学校への対応というようなことも含めて,ソーシャルスクールワーカーとか,部活指導員とか,そういった教育に関する職種の養成を目指しているところもあるかと思うんですけれども,今後,チーム学校の政策を進めていくに当たっては,そういった人材確保も必要になってくると思いますので,その点への言及も必要なのではないかと思いました。
 最後です。17ページ(2)のマル1の「養成環境の整備」の丸の1つ目ですけれども,ここでいきなり「開放制の下で教員養成を行っている学部においても,各授業の4年間の系統性を整理し」というところのパラグラフは,養成学部,養成系大学の話ではなくて唐突だと思いました。先ほどの北山先生のお話をお聞きして,養成学部がコアになって総合大学における開放制の教員養成もリードしていくのだというような書きぶりになれば少し話が整理されてくるかなというふうに思いました。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 それでは,続きまして,順番から牧野委員ですね。
【牧野委員】  では,私の方から2つ,軽い話と重い話をさせていただきます。
 まず軽い方からですけれども,今の17ページのところで,(2)のマル2の「早急に対応すべきこと」で,「最新のニーズや課題への対応」というところ,その丸の2つ目。「発達障害を含む特別な支援を必要とする児童生徒等への対応」というところをさらっと書いてくれてあるのですが,今年度からの予算措置を反映して,もう少し書き込んでもらっても良いかなという感じがしましたので,申し上げます。「少子化が進行する今後においても増加が予想される」を頭に持ってきて,「発達障害を含む特別な支援を必要とする児童生徒や外国人の児童生徒等への対応」。こういった今の最新のニーズや課題への対応はきちんと踏まえているよということをここのところに出してもらえればなというのが1つ。これは軽い話であります。
 もう一つは重い方です。15ページのところですけれども,「課題に対する対応策」のところが四角に囲まれていて,最後のところに,国の役割として,「国は」から,その「改正を検討すること」ということが書かれております。これを,国の役割として求めていくというためには,その下に,「以下のような対応策を提案する」というところで,「各大学においては」ということで,「PDCAサイクルを確実に回すことが必要である」ということが書かれておりますが,この後に,「国においては」ということで,国の役割も加筆するべきではないかというふうに考えます。これは,先ほどの副主査からご指摘された「在り方懇」の対応の,轍を踏まないようにということにもつながると思うんですけれども。要は,「国においては,各大学の取組のモニタリングに努め,その状況を定期的に公表することが求められる」のではないか。これは私からの提案であります。国においては,そうしたモニタリングの機能をしっかりと果たして,その結果として,上の四角のような役割を果たすことができるのではないかというものでございます。
【加治佐主査】  分かりました。
 それでは,次は松田委員ですね。お願いします。
【松田委員】  失礼いたします。報告書のページ数に準じてできるだけ簡潔に4点お話をさせていただきたいと思います。
 まず2ページないし15ページにございます「改革の目的」についてですけれども,今回明確になってきたと自身でも非常に感じていますのが,教員養成大学・学部の改革の遅れということに対して相当厳しい批判です。それに真摯に応えないといけないということでのこの有識者会議だと思うのですが,この際,我々にさらに強く突きつけられていますのが,大学にPDCAサイクルというものが確立されていないという,評価機能の弱さということと,それともう一方では,実践的な,あるいは学校の現場というものに応じた内容を大学が提供できていないという,そういう部分が強かったと思います。
 これらの御指摘は,現在教員養成系大学におりまして,真摯に受けとめないといけない内容だと強く感じるのですが,一方で,決してこれに反対するわけではないんですけれども,特に後段の実践性ということに関しては,ここを余り強く意識し過ぎますと,教育というのは,結局は技術なんだというような,そういう部分がひとり歩きすることに対しては,非常に危惧するところがございます。
 ですので,新しい在り方として,もちろん教育の技術や実践性に配慮しつつも,学ぶということの本当の楽しさを自身が知り伝えることができ,学ぶということが未来を拓くものであるということは,教員養成がしっかりと抑えていかなければならないと思います。また,今般の学習指導要領の改訂にも見られますが,AIといった第4次社会革命みたいなことが今後予測され,あるいは,そういう時代に,人生のおもしろさとか,幸せに生きるというのはどういうことだということがますます問われる中で,幼児期には特に非認知的能力と言った言葉で関心を寄せられているような,育てることに相当,人間力が必要な内容が,教員養成の在り方に対して突きつけられていると思えます。
 教育というのは,本当に未来を拓く営みなので,教員養成がこれまでの反省点等に加えて,未来からの期待ということに応えねばならないのだということを,何とかこの2ページないし15ページのところで一言でも良いので書いてくださると,現場にいる者としては元気が出て,ある種,シンボリックな「旗印」になるのではないかというのが1つです。
 2つ目は,26ページの附属に関わる内容です。とりわけ最初の「中長期的な方針」ということで存在意義等の明確化,そしてその次に多様な選考方法について記されてございます。特に存在意義の丸の3つ目で,先進的な教育・研究の実施というものにも取組むべきだという,そういう部分があるんですけれども,前回議論になって扱いが難しいと言われた,例示として出された貧困というような現代的な課題に対しても,附属が取組んでいくことの必要性というのが,やはりあるのではないかと思えます。先導性だけではなくて,典型的な課題だとか緊急度の高い課題というものにもより積極的に向き合っていくというような趣旨を少し書き込んでいただけたらありがたいなと思いました。
 そのことと関連して,選考方法につきましても,下線部分に「本来の使命・役割に立ち返り,多様な入学者選考の方法を実施すべき」だとあるんですけれども,全くそのとおりなのですが,「多様な入学者選考の方法を実施すべき」の前に,そもそも取組もうとする方向性に基づいてというような,単にこの改革だけをすれば良いのだというような,もちろんそのような捉え方はどなたもなされないとは思うのですが,より強く何のために何をするのかという関係を少し入れていただけるとより力強いものになるかなと思いました。
 関連しまして,先ほど御紹介いただきました附属学校の本学の貧困に対する取組について,今日は別添資料で色刷りのものが机上配付されていると思います。こちらは,時間もございませんので本当に簡単に御説明いたしますと,品川区と大学が協力協定を結びまして,品川区在住の就学援助受給世帯の子供たちを対象に,小学校6年生の1年間,学習支援を受けることに対して希望者を募ります。人数的に40名という枠は作るのですが,その40名に対して,大学の側が,具体的には「教育支援ネットワーク演習」という授業科目を新設して,その受講生が1対1で子供たちを週2回,タブレットによってビデオ通信機能を利用し支援を行います。加えて,月に1回から2回,品川区の方で2つの会場で学習支援を受ける子供たちに集まってもらって,学生が直接に対面して学習指導を行います。さらに,個別に生活や進路相談というものを教育支援関係の希望職を目指す学生が大学の先生をメンターとしながら行います。その中で,さらに希望者を募りまして,4名を附属竹早中学校に連絡進学者として受け入れます。本校は4つ小学校がございますが,5つ目のブランチとして連絡進学者を受け入れるという仕組み作りです。
 附属竹早地区では,多様な子供たちがともに生活するのだというダイバーシティに対する教育を,これまでも研究としては積み重ねてきているのですが,さらにそれを確実に展開していくとともに,品川区からも先生を派遣していただいて,この取組が品川区に対してもそのモデルとして跳ね返っていくような,研修機能を持たせるようなことを合わせて計画しています。中学に在学中の子供たちには,学習サポート,進路相談等に含めて,就学費用の減免制度を大学が負担いたします。さらに進路選択ということで,高校への進学までをモサポートしていくという仕組みです。
 もちろん品川区との限定的な取組であったり,あるいは40名ないし4名という数の制約性というのはあるんですけれども,1つのAffirmative  Actionとして積極的に取組んでいきたいと思っています。相当この動きを取りまとめるには確かにエネルギーが要りまして,ほぼ1年以上の検討を繰り返したわけですけれども,前回のお話し合いの中では,附属ではなかなかこういう問題を取り扱うのは難しいという御議論があったのですが,これが決してモデルとして最上のものではないのは分かっているのですけれども,やろうと思えばできることはまだまだありますので,そういう意味では,現代的な課題というものにもやはりしっかりと向き合っていくというようなことを,是非ここに書き込んでいただければありがたいなと思ったところです。
 時間がございませんけれども,あと2点,29ページです。統廃合というような議論,ないしは効率化と機能強化のために大学の連携・統合を考えていくという部分ですけれども,こちらに関しましては,3つ目の丸のマル1のところに片括弧の1と2がございまして,そちらには文末に「機能強化と効率化を図ること」というふうに,いわばこの動きの目的が入っているんですけれども,マル2,マル3,マル4には,この機能強化と効率化というのが結局は目的だと思うのですが,それが文章には入っていないというような構図になっているように見えます。ですので,こういうことを考えるのは,何のためにという,つまり教員養成機能の強化と効率化のために行うわけですので,3つ目の丸の本文の中にその機能強化と効率化ということを書いていただけた方が,より,先ほども出ましたけれども,単に統廃合という形だけを整えることが問題ではないのだという意味を明確にするということで,少し重要なことかなと思っております。
 最後,4点目ですけれども,先ほど,牧野委員からもお話があった部分なのですが,私も,これはページ数にはないんですけれども,この今回の有識者会議の報告書をより具体化していくために是非ともお力添えをいただきたいのは,国と行政の協力だと思っています。大まかに今回のこの報告書を見ましたら,教職大学院への移行というものを実質化していくというところが,内容としてはポイントになっていると思うのですが,ただ,大学現場から申し上げますと,再三にわたって出ましたけれども,教職大学院への進学の需要といいますか,あるいはそのニーズというものは,現在それほど強くないという現状を抱えています。研修という意味での教職大学院を見ても,ストレートマスターという意味での教職大学院を見ても,そのインセンティブが受験者からは見えにくいということがあります。こういうことを,デマンドサイドという言葉も出たのですが,教育現場というデマンドサイドだけではなくて,受験生という,人材というレベルでのデマンドサイドを見た場合に,これへの対応は社会全体で取組んでいかないと,とてもここに書かれた大学の努力だけで行えるものではないのではないと思えます。牧野委員の方からは,モニタリングということでPDCAのサイクルをというような側面をご指摘くださったのですけれども,併せてそういうものが実質的になっていく社会全体の動き作りということを国と行政の役割として是非少し触れていただけたらありがたいなと思います。例えば,こういう問題に対して継続的に何がしかの会議やワーキングを組織していくとか,そういうようなネットワークを作るようなサポートをしっかりといただけるようなことがあると大変力強いなと思ったところです。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 それでは,水落委員,お願いします。
【水落委員】  お願いします。報告書の作成,お疲れさまです。ありがとうございます。
 私は16ページのところ,1点です。上から2つ目の項に「学部・教職大学院・附属学校間の連携強化」がうたわれています。ここでは,国立教員養成大学・学部の「三者の間で,専任教員を可能な限り兼務させること」と書かれています。私は,ここに一定の条件を明記すべきだと考えています。例えば,「三者の連携や共同研究を進め,実務業績を有する大学教員と研究業績を有する附属教員を可能な限り兼務させること」としてはいかがでしょうか。
 というのは,この会議でも再三意見が出ましたように,特に教職大学院の教員は,教育実践と学術研究の両方の業績を有する教員が望ましいと言われてきました。しかし少ないということが言われておりました。このままの記載ですと,附属の先生方を実務教員として期限付きで,これは言葉が適切かどうかはあれですが,使い切ってしまうというか,使い捨ててしまう危険性があって,附属学校の先生方が研究業績を積むチャンスが広がらないと思うんですね。また同時に大学の教員が実務業績を積む必要もなくなってしまう。なので,先ほどのように条件を付けることで,共同研究を促して,理論と実践の往還の道を確かな形にする報告書にしていけたら良いなと考えています。
【加治佐主査】  それでは,山崎委員,お願いします。
【山崎委員】  報告書,大分完成に近付きつつありまして,主査の加治佐先生には御礼申し上げます。
 完成まで,8月末ということで,多少は時間があるわけですけれども,今日は何ページ,何行目をということでしたので,具体的に申し上げたいと思います。
 最後の再編・統合のところだけでなく,その前の部分の大事な事項も十分に読まれることを期待しております。大事なことは,学部と教職大学院の教育をどう改善・充実させるかということですが,そこのところがよく伝わるような報告書になればと思います。
 それで,具体的には,14ページの「課題に対する対応策」の「ポイント」が枠に入っております。ポイントの丸の数を数えましたらこれが19個ありました。少し多いかなと思います。もう少し整理,統合して,せめて1ページぐらいに収まるぐらいにならないかと思います。例えば,丸の順番で言いますと,7番目と8番目とか,9番目と10番目,12番目と13番目とかは,統合すると簡潔になるかなと思います。
 この「ポイント」の頭のところにPDCAサイクルという言葉が出てきているんですけれども,本文は,15ページから2,3ページ,カリキュラムのところまで見ましても,本文の中にPDCAという言葉が出てきておりません。本文のどこかにこのPDCAサイクルに関する文言を入れる必要があるのかなと思いました。具体的には16ページあたりか18ページあたりかなと思います。カリキュラム・ポリシーとかいろいろ私たち大学は作っているんですけれども,PDCAサイクルが回らないのは,このPのところが非常に抽象的だからだと思うんですね。検証可能なPを作っておかないとサイクルはなかなか回りません。それで,この報告書でも教員就職率とか,18ページにもいろいろなエビデンスについて書いてありますので,そのあたりを例示して,PDCAサイクルについて少し加えるということがあればいいかなと思いました。
 それから,細かいことなのですが,11ページ,12ページ,附属学校の課題としていろいろ上がっておりますが,私はあまり専門家ではありませんが,少し読みにくいんですね。例えば11ページの小見出し,「大学のガバナンス不足」というふうに小見出しが出ておりますけれども,内容から見ると,むしろ「大学との連携」あたりが小見出しとしては適切かなと。それから,12ページの頭のところ,「柔軟性の欠如」となっていますが,ここのところは,「地域との連携」あたりかなと感じました。
 それから,最後の28ページですけれども,ここのところは,この(8)の下から7行目のところに「一方」というのがあります。その後に,「運営費交付金の減少により大学・学部の運営が厳しくなってきている」という一文を入れるということも適切ではないかと思いました。
【加治佐主査】  運営費交付金を。
【山崎委員】  運営費交付金が減少していて,単科大学をはじめとして教育学部もかなり厳しく,予算が厳しくなっております。そういう現状にありますので,教員の需要減少も大事ですけれども,もう一つの背景として運営費交付金の減少により,教員養成大学・学部の運営が厳しくなってきているということを追加されたらいかがでしょうかという意見でございます。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 それでは,高橋委員,そして田中委員,そして古沢委員ということでお願いします。
【高橋委員】  文言以外のところでの意見ですが,7ページでは,「(2)カリキュラム,養成環境についての課題」,「(3)質の保証,評価についての課題」と課題について述べています。しかし7ページの一番上から「養成環境の整備の不足」,「実際の課題の体験不足」,「カリキュラムと学校現場で求められる資質能力とのギャップ」,そして,「学部段階の教員養成の質保証の欠如」と続くと,そこまで言われるほど我々は努力していなかったかと思います。この一連の書き方は,だめです,だめですという表現です。もちろん反省すべき課題はありますが,表現には少し気を付けていただきたいと思います。
例えば教員養成の質保証について,「平成28年に意識・実態調査の結果を生かして科目の新設やシラバスの改訂を行った授業がある大学は11大学」で,4分の1はあるわけですね。それを「学部段階の教員養成の質保証の欠如」と表現されると,納得しにくいですね。例えば,それを本来全ての大学で行う必要があるということから,「質保証の取組が十分とは言えない」というか,「客観的な検証を踏まえて養成カリキュラムを常に改善して質保証をしていくという態度が重要である」というような書き方ができると思います。
次の「卒業生の実態把握の不足」のところですが,これは対応のところにございますように,卒業生だけではなくて,ステークホルダーについても,必要性ということで書いていただければと思います。
8ページの,「PDCAサイクルやIRの不足」についてですが,このIRの不足についても,IRによる改善という表現が良いと思いました。また「国立教員養成大学・学部に全体に共通する課題として,教員就職率が社会に期待されるほど高くない」,この指摘は後ろの文章のディプロマ・ポリシーに関連するところだと思います。突然その次の文章が,「大学教員同士の協働性や同僚性が不足している」となっています。これは教員の側の課題でして,これは,8ページでいうと,「(4)大学教員についての課題」のところに書くべきことだと思います。私は,ここには「系統的な教員養成カリキュラムの構築が十分でない」という言葉の方が適切だと思います。その後に,「必ずしも教員志望者や教員志望が強い学生を受け入れていないなど」と続いており,これはアドミッション・ポリシーが指摘されていますので,ここの文脈は再検討をお願いします。
また,PDCAサイクルの確立は重要ですが,さらに,それぞれの大学・学部の,その大学の組織の現在の教育研究について十分情報収集して,それを分析して課題解決を導き出すというIRの取組を推進することが不十分だと思いますので,IRの取組を,2ページの概要の「教員養成機能の強化」というところに入れていただけたらと思います。
8ページの「多様な評価指標の欠如」というところですが,要は,国立教員養成大学・学部が教育委員会と連携した教員研修の実施とか様々な役割を果たしているけれども,それが評価項目として取り上げられていないという意味ですね。そのような役割を評価するためには,どのような評価指標を用いるのかを提案すべきということだと思いますので,ここは「多様な指標がないのが現状である。」という表現ではなくて,様々な役割を果たしていることについてしっかりと評価できる指標を提案していくことではないでしょうか。
最後に「(4)大学教員についての課題」の最後でございます。8ページの最後の行,「教員養成大学・学部は,大学教育の場であると同時に,学校教育という実践に向けた職業教育の場」とありますが,これは,私は,専門職教育と訂正していただきたいと思います。職業教育では,趣旨に合わないと思います。
そして,この会議が,教員需要の減少を見込んで,大学・学部を単に統合するということを目指しているのではなくて,教員養成機能を強化していく中で,それぞれの大学が効率化を検討するように求めていることを確認したいと思います。また先ほどもご指摘がありましたが,教職大学院で学ぶ院生とか研修する教員に,インセンティブというものが本当にないものですから,今回沢山の教職大学院が設置されたわけですが,多分入学定員に欠員が出るのではないかという不安もあります。教員の質を高めるためには,効率化だけではなくて,現職教員が十分な研修を受ける機会を与える,そういう支援もお願いしたいと思います。
【加治佐主査】  それでは,田中委員,お願いします。
【田中委員】  失礼します。2か所修正の意見を述べさせていただきます。
 まず,11ページ,「(7)国立大学附属学校についての課題」,「大学のガバナンス不足」の1つ目の〇でございますが,「一部の附属学校は,いわゆるエリート校化し,そこに通う子供の資質能力の向上に力を注ぐあまり,教育実習生の受け入れ先としての機能を十分に果たしていない,あるいは,実験的・先導的な教育課題への取組や,地域の公立学校に対する指導的・モデル的な取組が不十分と指摘されている」箇所につきまして,一部を残して削除をしていただいた方がよろしいかと存じます。
 なぜなら,エリート校化しているからそこに通う子供の資質能力の向上に力を注いでいるということではなくて,その子供の資質能力の向上というものは,国公立,私立,どこの学校においても当然目指していることでございます。また,先ほど渡邊委員から御指摘がございましたが,教育実習を軽視して手を抜いているという附属学校はどこにもありません。どこの附属学校も情熱を持って後輩の指導に力を注ぎ,熱心に教育実習指導を行い,教育実習生の受け入れ先としての機能はこれまでも果たしてきたと考えていますし,学生からも高い評価を得ています。
 「実験的・先導的な課題への取組」につきましては,地域の課題やニーズに応じたその内容への取組というところが十分でないこと,そして,その情報の発信方法や成果の追跡,深化という点につきまして課題はあると思いますが,ほとんどの附属学校が国の将来を見据えて熱心に取組んできています。研究開発学校,SSH,SGHのほか,国や地域の研究指定校となって積極的に実験的・開発的な研究を進めてきておりまして,附属学校の公開研究会や授業研究会には,たくさんの参会者が集まってまいります。このことからも,公立学校に対する指導的役割への期待と成果が高く評価されていると判断できます。
 よって,教育実習及び実験的・先導的な教育課題への取組について,附属学校は十分に機能を果たしていないといった評価は,私は当てはまらないと考えますし,全面否定につながるようなこういった表現,これはどの附属学校も受け入れ難いであろうと推察しますので,報告書には入れない方がよろしいのかと判断しています。
 しかし,地域の公立学校に対するモデル的な取組については,ほかでも指摘されているとおり,これまでは十分でない学校が多いと判断しますので,この表現は残して,〇の1つ目は,「附属学校の中には,独自の関心に基づく教育・研究への意識が強いあまり,地域の公立学校に対するモデル的な取組が不十分で,大学によるガバナンスが十分に機能していない学校や,大学や教職大学院における教育・研究への貢献・協力が不十分な学校がある」と修正するのがよろしいかと考えます。
 続きまして,12ページ,「柔軟性の欠如」,1つ目の〇についてでございますが,最近では,特に地方におきまして,地域の教育委員会と密接に連携を取り合って良好な信頼関係にある附属学校も増えてきていることから,「一部の附属学校は,域内の教育委員会と連携が不十分と指摘されており,また,教育委員会等との交流人事をほとんど行っていないために,教員構成が長年にわたって固定化し,地域のニーズに沿った柔軟な動きや多様な観点からの生徒指導,保護者対応等の対応力に欠ける面がある」というように修正するのがよろしいかと考えます。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 それでは,古沢委員,お願いします。
【古沢委員】  まず, 14ページの「ポイント」の6つ目の丸のところで「協議会」というのが出てきますが,ここをぱっと読んだときに分かりにくいのではないかと思います。。その後に「地域の最新のニーズを踏まえた」とあるので,地域ごとの教育協議会ということだと分かるとは思うのですが,構成や教育委員会が入ることなどを含めて少し書き加えていただくと分かりやすいのではないでしょうか。
 それから,17ページ,(2)のマル1の1つ目の丸の開放制のところです。大学の外から見ると,国立の教員養成学部だけではなくて,開放制の下で幅広い大学が養成を行っているわけで,そちらの質の向上というのも非常に大きな課題だと思います。先ほど指摘がありましたように,教員養成大学と連携して質を向上させるということをさらに書き加えていただいても良いのではないでしょうか。
 先ほど松田先生の方から受験生のニーズという問題の指摘がありました。これも特に都市部ではいろいろな要素はありますが,教員養成大学で専門的な教育を受けた人がより円滑に教員になれるような構造的な改革がなされれば,そのニーズの問題というのもかなり変わってくるのではないかと思います。国立教員養成大学できちんと教育を受けた方が多く教員になれるような仕組みがあればと思っております。
 先ほどから「在り方懇」と比較する御指摘がありますけれども,私もその少し前に担当記者として取材をしていた当時を思い出すと,当時の方が効率化に対する社会の要請は大きかったと思っております。今は,確かに少子化も進んでおりますし,財政的にも厳しいのですけれども,社会の変化に対応するために,教員養成学部の質の向上への期待には大きいものがあります。他県に行って下宿して通うことが,家計の状況から非常に難しい学生が多くなっているという現実もあります。そういったことも含めて,地域の核として引き続き教員養成大学の機能強化という方向で効率化をしていただきたいと思います。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 それでは,出席している全員から一渡り,全体にわたることと詳細な意見を幅広くいただいたと思います。また,これをいろいろ取捨選択して取り入れるのは大きな作業になる感じがしますが,ただ,基調は変わらないというか,基調には皆様が同意いただいていると。要するに,特に機能強化をどう図るかとか,効率化をどう図るか,それをどう表現するかということでいろいろな御提言があったと思うんですね。だからそういうことを入れまして,より良いものにできればと思います。そういう努力を今後いたしますが,一渡り皆様の意見を聞かれまして,まだ今日は時間がありますので,何かそれに加えて御発言があれば。
 とりあえず渡邊さんと山崎委員からお願いします。
【渡邊委員】  ありがとうございます。1つだけ申し上げたいと思います。
 「3.課題に対する対応策」に書かれていることがチェックリストのように受けとめられないかということを懸念しております。そういう点で申し上げますと,例えば,四角囲みの下にあるリード文のアンダーラインが引いてある「各大学においては,教員需要の長期的な推移など地域の実情を踏まえつつ」の後に,「以下に提案する対応策を含め多様な対応策を検討し,自らの課題の解決に努力すべきである」というようなことを入れていただけると,それぞれの大学が十分に検討した上で解決策を探るというような趣旨として受けとめていただけるのではないかというふうに考えました。
 もう一つは,ここの部分に書いてある様々なことの語尾ですけれども,「べきである」というものと,「何々すること」というものと,「何々するよう努めること」というものと,「何々が期待される」というものと,「何々が求められる」というものと混在しています。普通に考えると「べきである」が一番強く,「期待される」,「求められる」は若干トーンが穏やか,というふうに思います。全部をチェックできてはいませんが,その語尾の使い方と内容とが十分に精査できているのか不安に感じる部分もありました。そういったところも,報告書が公表されると意外に注目されると思います。次回,8月31日まで時間もありますので,丁寧に見ていく必要があるかと思いました。
【加治佐主査】  それでは,山崎委員。
【山崎委員】  小さなことですけれども,28ページの一番上の行の,「地域住民の参画を含む学校運営の改革」のところでございます。附属学校につきましては,各所で地域住民の参画という言葉が随所に出てきます。私は,それに賛成ですけれども,附属学校の場合,地域の範囲がすごく広いんですね。通常の公立の義務教育の小中学校は通学区域が指定されていまして,学校の近くに大体徒歩で歩いていける範囲が通学区域になっている。これが大体地域と考えて良いのですが,国立の附属学校の場合は,多分1つの県ぐらいが地域ではないかと思うんですね。その中で地域住民と言われても,具体的なイメージが湧きません。ほかのところに,域内の教育委員会と連携を図るべきだという箇所がございますので,このあたりは,書きぶりが地域住民の参画でも良いんですけれども,地域とか域内の自治体,教育委員会の参画も含める書き方もあるかなと思いました。
【加治佐主査】  それでは,水落委員。
【水落委員】  ありがとうございます。
 私,先ほど16ページの「学部・教職大学院・附属学校間の連携強化」の部分で意見を申し上げましたが,そこに付け加えて,学部・教職大学院・附属の連携に加えて地域学校の連携という意見とさせていただきたいと思います。
 といいますのは,今後教職大学院への修士課程の移行が進みます。そうなった場合に,学生たちの数も増えますので,附属学校だけでは賄い切れない,また連携の規模としても賄い切れない部分があると思いますし,附属学校の先生方の交流人事等も進むわけですので,そうした先生方が異動後も継続的な連携や共同研究ができる道を開く。こうすることで,チーム学校と言うのでしょうか,チーム大学と言うのでしょうか,そうした道を開くことにつながるのではないかなと考えました。
【加治佐主査】  関根委員。
【関根委員】  15ページなのですが,この対策に対して,(1)から以下というのは,本有識者会議としての対策の提案ですよね。各大学がやるべきことというのは,その上に書いてある「各大学のおいては,教員需要の長期的な推移など」云々で,「多様な手段により自らの課題の解決に努力すべきである」。簡単に言うと,大学は全てのこの1行ですよね,あとは例示ですからね。ということは,私は,できれば,大学がやるべきことは,まず1つは,課題とその大学の強みと良さ,この明確化をまずすべきだと。その上で,各大学は自らの課題の解決に努力すべきだと,そういう形で,要するに大学は何をすべきなのかというところをここに明確に書いていったらどうか。要は,あとは,ある部分の提案ですから,これを全部必ずやれというわけではないわけですから,各大学が何を課題としてどういうことをするのかというのをきちんと明示してやるべきだという,そこを明確に書いておかないと,大学は何をすれば良いかというのが分からないのかなという気がしました。
【加治佐主査】  分かりました。よろしいですか。皆様大変しっかり読んでいただいて意見をまとめて表明していただいたので,非常に効率的な運営ができたかなというふうに思っております。
 私,最後に一言だけ言わせてもらうと,確かにこれは1つのこの有識者会議としての提案であるわけです。当然ながら,国立大学といえども大学は自治がありますので,自ら運営し,自ら発展・改善すると,これは当然なわけです。ただ一方で,国立大学ですので,国税という公費を使って運営されている大学でもあるわけです。そういうことで,特に国立大学に対しては,私学とは違うような国立大学行政というのがあるわけであって,国立大学行政の面での役割とか責任というのも当然あるのだと思います。そのことを牧野委員と松田委員が言われたと思うんですけれども,私もそれは感じるところで,とにかく行政と国立大学が一体となって国立大学の機能強化,効率化を図ると,そういう姿勢が大事だと思うんですよ。だから,当然報告書の文面の中で書き込むことも大事だと思いますが,これが出た後の推進といいますか,実行といいますか,実現といいますか,そういうことに国の行政の担当者の方々には是非ともお願いしたいというふうに思います。あえて言いますけれども,本報告書の実現度はそれで決まるというふうに言っても過言ではないと思うんですね。
 これもあえて言いますけれども,教員養成大学・学部自体はかなり危機感を持っていると思います,間違いなく。ただ,それをいつどういう形でやれば良いのかはっきりしないという面。一方で,今日も意見がありました運営費交付金が削減されていく中で,非常に不安がある。不安の中で何とかしたいという思いはあるんだけれども,いつどういう形でやっていけば良いというのもよく分からないというところ,これはあるんですね。 特に最後のところの再編・統合が話題になりますけれども,そこを注目すると思います。ただ,私はさほど違和感を持って受けとめられないと思います。これは我々の間ではもうしょっちゅう何年も前から言われてきていることですので,あるいは「在り方懇」のある意味繰り返しでもありますので,ただそれをどう実行するかですね。だからそこを国と大学が一体になって推進できるようになれば良いかなと思います。ですから,是非,この報告書の中にそのような文言を補足できる部分があれば補足していただくと同時に,あとの実行のところをしっかりお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。もちろん財政支援を含めまして,当然ながら。
 それでは,事務局の方,よろしいですか,少し早く終わることになりますけれども。小松審議官,途中退席されてまたお戻りになりましたけれども,何か御発言されますか。
【小松文部科学審議官】  一言よろしいですか。
【加治佐主査】  どうぞ,時間はありますので。
【小松文部科学審議官】  今日はありがとうございました。これでまとめになっていくことと思いますし,皆様方の御意見を伺ってまとまったものを政策に移していくというのも私どもの仕事だと思いますので,お任せをいたしたいと思いますが,おまとめに当たられましては,私の立場は,直接というか,そこを専門的に扱う高等教育局ではなくて,初等中等教育局とか,あるいは社会教育の関係等を束ねる観点から希望を申し上げますと,既に十分考慮されてはおりますけれども,机の上にこういう緑のファイルがあるかと存じますが,この中の1という付箋がついているかと思うんですけれども,ここを少しめくっていただきますと,これは資料3というのでしょうか。初等中等教育の財務課というところがクレジットになっておりますが,その数枚目に,少し見えにくいかもしれませんが,こういう図が入っております。分かりますでしょうか。
【加治佐主査】  7ページですか。
【小松文部科学審議官】  7ですね,7ページです。
 今後の教員養成,特に国立としていろいろな機能を発揮してリードしていただく上では,先ほど何人かの委員の方から出ていることと関連をいたしますが,学校の先生の専門性を高めると書いてあるんですけれども,この専門性とは何だろうというのが変わってきているような感じがいたします。もちろん,例えば教科を担当される方については,教科の専門性も伝統的にあるわけですし,生徒指導とかそういうこともほかの人ができない専門性としてあるわけですが,その学校というものがチーム学校になり,それから,チーム学校というのは,これは学校の中の専門性がいろいろな人が入ってくると。そのスクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーというのは話題になりますが,これもいろいろな職種の人が入ってくるというだけではなくて,別の専門性を持った人たちが入ってくるということですから,協力し合ってうまくできれば非常にすばらしいと同時に,専門性がぶつかることもあって,そこをうまく調整しながらチームの力が発揮できるようにしていくということを学ばなければいけない。これは養成かもしれませんし研修かもしれませんし,そういうことが専門性ということになってくる。
 それから,教員改革というのが一番左にあるんですけれども,これの一番下のところの教員の養成指標,都道府県が策定,こういうところの協議会にも積極的に参加するようにとなっていますけれども,ここの法律を3本併せて去年の秋に改正された趣旨は,その指標を作ることというよりは,そこにあります教員のライフステージに応じた資質の向上というのをどういうふうにシステムとして応援していくかという仕組みを作ろうと。その基本的な支えとしてその協議会みたいなものがあるということですから,この教員のライフステージに応じた,これは養成段階からですけれども,それにどのように対応していくかという観点から,どういうふうに教員養成学部が中身を発展させていったら良いのかという目で位置付けをして,是非そのモデルというか,そういったものになっていただきたいなという希望を持っております。
 そして,一番右の方,ここでは,そのコミュニティ・スクールや地域学校協働本部ということで,今回は社会教育法の改正なども行われておりまして,この中だけで8本ぐらい法律が去年から今年にかけて変わって,それらを動員して新しい地域と学校の関係というのを作ろうとしております。
 翻りまして,教員養成学部と言われるところでは,社会教育の関係の人材も養成されておりますし,それから,地域との協働などについても学生に教えていただいているわけでございます。そこで,国全体としては,地方創生であるとか,あるいは「社会に開かれた教育課程」という中で,さらに情報手段としては,第4次産業革命とかSociety5.0とかというようなことが言われております。一般論としてこうあるべきだということは大事ですけれども,今ここで出されるものは,先ほど「在り方懇」との比較等がありましたけれども,あれは平成13年当時で,今は違いがあるという御議論が盛んに出ていますが,地域が抱えている課題,地域づくりの課題というのも,たった今というのがあって,これは非常に社会変化が激しくても1年,2年で変わるわけではなくて,5年,10年,15年というスパンで各地域は考えていらっしゃると思います。その現時点での課題ということに,これは一応,もう既に今日も十分御議論をいただいているのですが,できるだけ直接に反映していただけるようなところを点検して,事務局とも先生との間でもよく御相談いただいていると思いますが,反映して,いろいろな弁説が飛び交うと思うんです,政府からもいろいろなものが出てきますし,そのときに国立の教員養成学部の運営をされる先生,あるいは今日参加していらっしゃる方が,そこをつかまえて取組みやすいような具体性をさらに入れていただくように,最後の段階で御点検いただいたり御提案いただければ非常にありがたいというふうに思います。
 長くなって申し訳ないのですが,あと,今日も出ていましたし,ここにも書かれているのですが,教員ということで,先ほど申しましたように,チーム学校とかそういうことを考えますと,今教員が非常に多忙化したり無理がいったりしている中で,学校運営の在り方とか,事務の効率化とか,教員の職務の見直しということが議論になっております。ここでも附属学校の取組課題としてそういうことが書かれておりますけれども,恐らく附属学校そのものにおいても同じ問題があると同時に,附属学校において,それをどういうふうに考えていくかと。事務統括などの観点からの御意見も先ほど出ましたけれども,そういったものに取組んで,そちらでもリードしていただくと。これは公立学校と国立では,かなり条件が違っているわけですけれども,それは学問ですので,違う条件を差し引いたり変換しながら,その本質が各公立学校へ行けるような形で,その学校運営なり,職務の見直しなり,事務の効率化,ICT化とか,そういったことについてもここに書かれていますので,しっかり取組んでいただければありがたいなと思っております。
 最後に1点だけですが,実践性ということが大事だということも書かれているわけですが,先ほど松田先生でしたか,御指摘がありましたけれども,そうするとすぐ技術という話にいってしまうかもしれない,これは大変恐ろしいことではありますが,一方で先ほど来くどくど述べていることから申し上げますと,この実践性というのは,松田先生がおっしゃられた,未来を拓くとか,学ぶ喜びを経験するとか,そういったところへつなげるということこそが実践性だという共通理解を是非ともするような形で,このトーンとしてくだされば非常にありがたいなと思います。
 長くなりましたけれども,学校段階を超えたり,学校の内外ということから,これは非常にしっかりまとめていただいておりますので,そこへうまくつながるように最後の段階でいろいろ御指導,お知恵をお借りできれば大変ありがたいと思いますので,おまとめに当たって,どうぞよろしくお願いを申し上げます。
【加治佐主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,少し時間は残っておりますが,義本局長,よろしいですか。
 それでは,本日の議論はここまでとさせていただきます。活発な御意見をどうもありがとうございました。
 それでは,今後のスケジュールについて,事務局からお願いいたします。
【柳澤教員養成企画室長】  本日はどうもありがとうございました。
 次回は,最終回を8月29日,火曜日,14時から開催させていただきたいと考えております。内容の御連絡は追ってお送りいたします。今日はどうもありがとうございました。
【加治佐主査】  それでは,どうもありがとうございました。これで終わります。

―― 了 ――

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